説明

イソオレフィンの製造法

【課題】安価および/または簡単な装置中でイソオレフィン誘導体をイソオレフィンならびにアルコールまたは水へ接触気相分解するための選択的方法を提供する。
【解決手段】触媒帯域中での任意の位置での最大温度低下が50℃未満に調節され、熱媒体が向流で(別個の空間内で)反応器を貫流し、反応器への流入位置と反応器からの流出位置との間で熱媒体の温度差が40℃未満である場合には、強い触媒失活が観察されることなく、アルキル−第三アルキルエーテルおよび第三アルコールは、固体の触媒で200〜400℃の温度範囲内の気相中で0.1〜1.2MPaの圧力で、簡単な管状反応器中または液状熱媒体で加熱される管束反応器中で簡単に4〜6個のC原子を有するイソオレフィンならびにアルコールまたは水に分解される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソオレフィン、殊にイソブテンをアルキル−第三アルキルエーテルまたは第三アルコールの分解によって製造する方法に関する。殊に、本発明は、アルキル−第三アルキルエーテル、殊にMTBEをイソオレフィンおよびアルコール中で分解する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソオレフィン、例えばイソブテンは、数多くの有機化合物を製造するために重要な中間生成物である。イソブテンは、例えば数多くの生成物を製造するため、例えばブチルゴム、ポリイソブチレン、イソブテン−オリゴマー、分枝鎖状C5−アルデヒド、C5−カルボン酸、C5−アルコールおよびC5−オレフィンを製造するための出発物質である。更に、イソブテンは、殊に第三ブチル芳香族化合物を合成するためのアルキル化剤として、および過酸化物を製造するための中間生成物として使用される。更に、イソブテンは、メタクリル酸およびそのエステルを製造するための前駆体として使用されることができる。
【0003】
イソオレフィンは、工業的流れの中で多くの場合に別のオレフィンおよび同一かまたは異なる数の炭素原子を有する飽和炭化水素と一緒に存在する。殊に、イソオレフィンを別のオレフィンおよび1分子当たり同じ数の炭素原子を有する飽和炭化水素と一緒に有する混合物から、イソオレフィンを単に物理的分離方法で分離することは(経済的に)不可能である。例えば、イソブテンは、通常の工業的流れの中で飽和C4−炭化水素および不飽和C4−炭化水素と一緒に存在する。イソブテンは、僅かな沸点差またはイソブテンと1−ブテンとの間の僅かな分離ファクターのために、前記混合物から蒸留によって経済的に分離することはできない。
【0004】
従って、イソブテンは、工業用炭化水素混合物から、イソブテンを反応させて誘導体に変え、この誘導体を残りの残留する炭化水素混合物と簡単に分離させ、単離された誘導体を再分解し、イソブテンおよび誘導体化剤に変えることによって通常、取得される。
【0005】
通常、イソブテンは、C4留分、例えば水蒸気分解炉のC4画分から、次のように分離される。ポリ不飽和炭化水素の大部分、主にブタジエンを抽出(蒸留)または選択的水素化によって線状ブテンに除去した後、残留する混合物(ラフィネートIまたは水素化クラック−C4)は、アルコールまたは水と反応される。メタノールを使用する場合、イソブテンからメチル−第三ブチルエーテル(MTBE)が生成され、水を使用する場合には、第三ブタノール(TBA)が生成される。双方の生成物は、それらの分離後に双方の生成物の形成の反対に分解され、イソブテンに変わる。
【0006】
MTBEは、TBAよりも安価である。それというのも、イソブテン含有炭化水素とメタノールの反応は、水との反応の場合よりも簡単であり、MTBEは、オットー燃料の成分として大量に生産されているからである。従って、MTBEの分解のためにTBAの分解と同様に良好な方法が提供される場合には、MTBEからのイソブテンノ取得は、TBAからの場合によりも潜在的に経済的である。
【0007】
第三アルキル基を有するエーテルを相応するイソオレフィンおよびアルコールに分解することならびに第三アルコールを相応するイソオレフィンおよび水に分解することは、酸性触媒の存在下で液相中または気−液混合相中、または純粋な気相中で実施されることができる。
【0008】
液相中または気−液相での分解は、液相中に溶解された、生じる生成物が副反応をまねきうるという欠点を有する。例えば、MTBEの分解の際に生じるイソブテンは、酸性触媒による二量体化またはオリゴマー化によって望ましくないC8成分およびC12成分を形成する。望ましくないC8成分は、主に2,4,4−トリメチル−1−ペンテンおよび2,4,4−トリメチル−2−ペンテンである。更に、分解の際に生じるメタノールの一部分は、水を分解しながら反応し、ジメチルエーテルに変わる。
【0009】
分解温度が上昇するにつれて、副反応、例えば水素または脱水素化は増大する。更に、温度が上昇するにつれて、特殊なエネルギー消費量は増大する。更に、高い分解温度は、反応器のためによりいっそう大きな資本金の投入が必要とされる。従って、イソオレフィン誘導体の分解を400℃未満の温度で実施することは、好ましい。
【0010】
MTBEを気相中で分解することによってイソブテンを製造するための種々の方法が公知である。
【0011】
ドイツ連邦共和国特許第10227350号明細書およびドイツ連邦共和国特許第10227351号明細書には、MTBEを気相中で分解することによって、イソブテンを製造する方法が記載されている。双方の方法において、150〜300℃の温度が使用される。米国特許第6072095号明細書および米国特許第6143936号明細書には、同様にMTBEを分解することによって、イソブテンを製造する方法が記載されている。この方法の場合には、50〜300℃、特に100〜250℃の温度が使用される。
【0012】
比較的低い温度で気相中で分解を実施する場合の問題は、触媒が急速に失活することである。
【0013】
触媒は、運転中に活性が低減するので、変換率を維持するために、温度上昇を制御することは、好ましい。従って、触媒を用いての運転をできるだけ長く維持しうるために、新しい触媒を使用する場合には、設けられた温度範囲内でできるだけ低い温度が望ましい。
【0014】
イソオレフィン誘導体の分解は、吸熱反応である。従って、イソオレフィン誘導体を分解する場合には、第1の触媒帯域中で著しい温度低下が起こりうる。これは、低い入口温度から出発し、触媒中の温度が特に著しく低下し、それによって触媒がよりいっそう急速にかまたは強く失活することをまねきうる。
【0015】
吸熱反応の実施ためには、反応熱が内部からかまたは外部から供給されるような反応器が使用されうる。内在する加熱部(加熱棒、または熱媒体によって貫流される板または管)を備えた反応器は、費用のかかるこうぞうのために、高い資本金の投入を必要とする。外部から加熱される反応器は、多くの場合に管状反応器であるかまたは管束反応器である。これらの反応器は、多くの場合に、単数の管または複数の管を包囲する閉鎖されたジャケットを貫流する熱媒体により加熱される。吸熱反応の場合、反応器中での温度低下を制限するために、単数の反応器の代わりに、異なる温度で運転される、並列接続された多数の管が使用されうる。異なる温度を有する熱媒体が装入されうる異なる範囲内でジャケットが分割されている反応器が使用されてもよい。しかし、この構造も費用がかかり、高い資本金の投入を必要とする。その上、運転費用は、熱循環路だけを備えた管状反応器中での反応の場合よりも高額である。
【0016】
触媒帯域中での温度低下を減少させるために、管状反応器中で異なる活性の触媒を使用することも可能である。即ち、例えば第1の触媒帯域中で次の帯域よりも僅かな活性を有する触媒を使用することができる。種々の触媒の代わりに、触媒と種々の割合の不活性物質との混合物が種々の帯域中で使用されてもよい。この方法は、種々の触媒を準備しなければならないかまたは種々の触媒混合物を製造しなければならないという欠点を有する。更に、管状反応器を多数の触媒または触媒混合物で層状に充填することは、1つの触媒での充填よりも費用がかかる。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第10227350号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第10227351号明細書
【特許文献3】米国特許第6072095号明細書
【特許文献4】米国特許第6143936号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の課題は、安価および/または簡単な装置中でイソオレフィン誘導体をイソオレフィンならびにアルコールまたは水へ接触気相分解するための選択的方法を提供することであった。この場合には、触媒の失活は全く起こらないかまたは触媒の僅かな失活が起こるにすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ところで、意外なことに、触媒帯域中での任意の位置での最大温度低下が50℃未満に調節され、熱媒体が向流で(別個の空間内で)反応器を貫流し、反応器への流入位置と反応器からの流出位置との間で熱媒体の温度差が40℃未満である場合には、強い触媒失活が観察されることなく、アルキル−第三アルキルエーテルおよび第三アルコールは、固体の触媒で200〜400℃の温度範囲内の気相中で0.1〜1.2MPaの圧力で、簡単な管状反応器中または液状熱媒体で加熱される管束反応器中で簡単に4〜6個のC原子を有するイソオレフィンならびにアルコールまたは水に分解されることが見い出された。
【0019】
従って、本発明の対象は、式I
1−O−R2 (I)
〔式中、R1は、4〜6個の炭素原子を有する第三アルキル基であり、R2は、Hまたはアルキル基である〕で示される化合物を気相中で固体触媒で200〜400℃の温度範囲内で0.1〜1.2MPaの圧力で、加熱ジャケットを装備しておりかつ液状熱媒体で加熱される反応器中で分解することによってイソオレフィンを製造するための連続的方法であり、この方法は、触媒帯域中での温度低下が入口温度に関連して全ての任意の位置で50℃未満であり、反応器中の反応混合物とジャケット中の熱媒体とが並流で反応器を貫流し、反応器への流入位置と反応器からの流出位置との間の熱媒体の温度差が40℃未満に調節されることによって特徴付けられる。
【0020】
本発明による方法は、殊に明らかに僅かな触媒失活を観察することできるという利点を有する。例えば、MTBE(メチル−第三ブチルエーテル)、ETBE(エチル−第三ブチルエーテル)またはTBA(第三ブタノール)をイソブテンおよびアルコールまたは水中で気相中で分解する場合には、生じるイソブテンを冷却水に対して凝縮するために、反応は、特に高められた圧力、例えば0.7MPaで実施される。しかし、この圧力の場合には、既に200℃未満の温度で触媒の強化された失活が観察されうる。従って、イソオレフィン、殊にイソブテンを製造するためには、200℃〜400℃の範囲内の温度での分解は、特に好ましい。これは、できれば本発明による方法の実施によって、場合によっては触媒の失活に貢献する触媒上での高沸点の成分の凝縮を減少させることができるかまたは回避させることができることにある。
【0021】
本発明による方法は、さらに次の利点を有する:分解は、有利に加熱循環路だけを有する管束反応器中で実施される。これから、費用の掛かるように構成された反応器系と比較して、僅かな資本金の投資および僅かな運転費用がもたらされる。反応器は、触媒だけで充填されているので、触媒の交換は、迅速で安価に実施されうる。更に、触媒失活は、減少されるかまたは遅延され、このことは、触媒の可使時間を延長する。このことから、触媒費用の減少およびそれによって必然的に引き起こされた、触媒交換による生産の中止が生じる。
【0022】
以下に、本発明を例示的に記載するが、本発明は、特許請求の範囲及び明細書からその特許保護範囲が生ずるものであり、例示的な記載に制限されるものではない。特許請求の範囲自体も本発明の開示内容に含まれる。以下に、範囲、一般式または化合物種を示すときに、これらの開示は詳細に挙げられている化合物の相応の範囲または群のみが明示されるだけではなく、幾つかの値(範囲)または化合物を、より良好な明瞭さの理由から詳細に挙げずに省いて得られる化合物の全ての部分範囲および部分群も明示していることが望ましい。
【0023】
式I
1−O−R2 (I)
〔式中、R1は、4〜6個の炭素原子を有する第三アルキル基であり、R2は、Hまたはアルキル基、殊に1〜3個の炭素原子を有するアルキル基である〕で示される化合物を気相中で固体の触媒で200〜400℃の温度範囲で0.1〜1.2MPa、特に0.5〜0.9MPa、特に有利に0.7〜0.8MPaの圧力で、加熱ジャケットが装備されかつ液状熱媒体で加熱される反応器中で分解することによって、4〜6個のC原子を有するイソオレフィンを製造するための本発明による連続的な方法は、触媒帯域/反応帯域中での温度低下が入口温度に関連して全ての任意の位置で50℃未満であり、反応器中の反応混合物とジャケット中の熱媒体とが並流で反応器を貫流し、反応器への流入位置と反応器からの流出位置との間の熱媒体の温度差が40℃未満に調節されるように分解を実施することを示す。
【0024】
本発明による方法において、式Iの化合物として、例えば4〜6個のC原子を有する第三アルコールを使用することができる。殊に、第三ブタノール(TBA)は、イソブテンおよび水に分解されうる。TBAは、種々の工業的プロセスに由来しうる。最も重要なものの1つは、イソブテン含有C4炭化水素混合物と水との反応である。TBAを製造するための方法は、例えば、ドイツ連邦共和国特許第10330710号明細書および米国特許第7002050号明細書中に記載されている。TBAは、例えば純粋な形で、TBA/水−共沸物または他のTBA−水混合物として使用されうる。
【0025】
本発明による方法において、式Iの化合物として、例えばアルキル−第三アルキルエーテルが使用されてもよい。本発明による方法により分解されうるアルキルー第三アルキルエーテルは、例えばMTBE、ETBEまたはTAME(第三アミル−メチルエーテル)である。MTBEを製造するための方法は、例えばドイツ連邦共和国特許第10102062号明細書中に記載されている。ETBEを製造するための方法は、例えばドイツ連邦共和国特許第10 2005 062700号明細書、ドイツ連邦共和国特許第10 2005 062722号明細書、ドイツ連邦共和国特許第10 2005 062699号明細書およびドイツ連邦共和国特許第10 2006 003492号明細書中に記載されている。
【0026】
式Iの化合物として、本発明による方法において、特に第三ブタノール、メチル−第三ブチルエーテル、エチル−第三ブチルエーテルおよび/または第三アミルメチルエーテルが使用される。式Iの少なくとも2つの化合物の混合物を使用することは、好ましい。これは、例えば既に式Iの分解すべき化合物の製造方法において、使用される出発物質のために式Iの化合物の混合物が得られる場合である。殊に、本発明による方法でイソブテンを製造する場合には、例えば第三ブタノールおよびメチル−第三ブチルエーテルを有する混合物を使用することができる。式Iの化合物は、純粋物質としてかまたは別の化合物との混合物で本発明による方法に供給されることができる。殊に、本発明による方法に式Iの1つ以上の化合物を有する工業用混合物を供給することができる。
【0027】
MTBEを有する混合物として、本発明による方法において、異なる品質のMTBEを使用することができる。MTBEを有する混合物として、例えば純粋なMTBE、MTBEとメタノールとの混合物、種々の品質の工業用MTBEまたは工業用MTBEとメタノールとの混合物を使用することができる。殊に、種々の品質の工業用MTBEまたは工業用MTBEとメタノールとの混合物を使用することができる。工業用MTBE(燃料品質)は、殊に経済的な理由から有利な使用物質である。第1表には、例えばOXENO Olefinchemie GmbH社の工業用MTBEの典型的な組成が示されている。
【0028】
【表1】

【0029】
工業用MTBEは、公知方法により、ポリ不飽和炭化水素が十分に除去されているC4−炭化水素混合物、例えばラフィネートIと選択的に水素化されたクラック−C4とメタノールとを反応させることによって製造されうる。MTBEを製造するための方法は、例えばドイツ連邦共和国特許第10102062号明細書中に記載されている。
【0030】
本発明による方法において、全部または部分的に低沸点物を場合による処理工程でMTBEを有する流れから分離することによって得られる、MTBEを有する流れを使用することは、特に好ましい。
【0031】
低沸点物の分離は、殊にMTBEを含有する流れが、例えばC4−炭化水素および/またはC5−炭化水素を有する場合に好ましい。場合による処理工程において、流れからの低沸点物、例えばC4−炭化水素および/またはC5−炭化水素の分離は、特に蒸留塔中で行なうことができる。蒸留塔は、特に低沸点物が塔頂生成物として分離されうるように運転される。
【0032】
特に、低沸点物の分離は、30〜75段の理論的分離段、有利に40〜65段、特に有利に40〜55段の理論的分離段を有する蒸留塔中で実施される。特に、この塔は、実現される段数、使用されるMTBEの組成およびC4−炭化水素およびC5−炭化水素の必要とされる純度に依存して150〜350、殊に200〜300の返送比で運転される。場合による処理工程での塔は、特に0.2〜0.6MPa(絶対)、有利に0.3〜0.4MPa(絶対)の運転圧力で運転される。塔を加熱するために、例えば0.4MPAの蒸気を使用することができる。凝縮は、選択される運転圧力に応じて、冷却底面、冷却水または空気に対して行なうことができる。塔の塔頂処理液は、完全にかまたは部分的にのみ凝縮されることができ、したがって塔頂生成物は、液状または蒸気状で取り出すことができる。塔頂生成物は、熱的に利用されうるかまたは合成ガス装置の使用物質として利用されうる。塔底生成物は、直接に分解に供給されることができる。
【0033】
本発明による方法は、触媒帯域の位置で温度が200℃未満に低下しないように実施される。従って、特にガス状エダクトの入口温度は、200℃を上廻り、有利に明らかに200℃を上廻る。エダクトの入口温度は、反応器に前接続された加熱器中で調節されることができる。エダクトとして、式Iの化合物を有するエダクトとしてのMTBEを使用する場合には、入口温度は、特に少なくとも230℃、有利に250℃を上廻る。
【0034】
新しい触媒を使用する場合、殊にMTBE分解の際に新しい酸化マグネシウム/酸化アルミニウム/酸化珪素触媒を使用する場合には、入口温度は、有利に250〜270℃である。運転の経過中に、変換率を一定に維持するために触媒の失活が増大するにつれて入口温度を400℃にまで上昇させることは、好ましい。400℃に到達した際に変換率をもはや維持することができない場合には、触媒を全部かまたは部分的に交換することは、好ましい。
【0035】
触媒帯域中での温度低下は、全ての任意の位置で入口温度に関連して50℃未満、特に40℃未満、特に有利に1〜30℃である。最大の温度低下は、数多くのパラメーター、例えば加熱に使用される熱媒体の温度ならびに熱媒体がジャケットを貫流する速度によって調節されることができる。
【0036】
反応器は、特に0.1〜5h-1、殊に1〜3h-1の空間速度(Weight Hourly Space Velocity(WHSV)、毎時触媒1kg当たりのエダクトのkg数)で真っ直ぐの通路内で運転される。
【0037】
この反応器は、全ての任意の空間方向に配置されていてよい。反応器が反応管を有する場合には、この反応管は、同様に全ての任意の空間方向に向いていてよい。しかし、好ましくは、反応器は、反応器または反応管が垂直方向に向いているように設置されている。垂直方向に向いている反応器の場合、熱媒体は、有利にジャケットの最も高い位置にかまたは最も高い位置に隣接して供給され、反応器の最も低い位置でかまたは最も低い位置に隣接して取り出されるかまたは反対に供給されかつ取り出される。反応帯域中の反応混合物およびジャケット中の熱媒体は、反応器を同じ方向に貫流する。特に好ましくは、熱媒体および反応混合物は、反応器のジャケットまたは反応器の反応帯域を上方から下向きに貫流する。
【0038】
反応帯域の均一な加熱を達成させるために、熱媒体を1つの位置だけでなく、数多くの位置でほぼ同じ高さで反応器中に供給することは、好ましい。管束反応器を使用する場合に縁部管と比較して中央管での大きな温度低下を回避させるために、熱媒体の単数の供給管または複数の供給管に、中央管への熱媒体の運搬を有利に行なうノズルを設けることは、好ましい。こうして、管束の横断面に亘っての温度変動は、回避されうる。
【0039】
熱媒体は、1つ以上の位置で反応器を去ることができる。反応器に熱媒体が上方から下向きに貫流する場合には、構造的手段によって、反応帯域、例えば反応管の周囲が完全に熱媒体で洗われることを保証することができる。
【0040】
熱媒体は、反応器の外側で直接的または間接的な加熱によって望ましい温度にもたらすことができ、反応器を通してポンプ輸送することができる。
【0041】
熱媒体として、塩溶融液、水または熱媒油を使用することができる。200〜400℃の温度範囲のために、熱媒油を使用することは、好ましい。それというのも、熱媒油での熱循環は、別の工業用溶液と比較して僅かな資本金の投入で済むからである。使用することができる熱媒油は、例えばMarlotherm(例えば、Sasol Olefins & Surfactants GmbH社のMarlotherm)、Diphyl(Bayer社)、Dowtherm(Dow社)またはTherminol(Therminol社)の商品名で販売されている熱媒油である。前記の合成により製造される熱媒油は、本質的に熱安定性の環状炭化水素をベースとする。
【0042】
特に、反応器中に流入するエダクトの温度よりも10〜40℃、有利に10〜30℃高い温度を有する熱媒体は、反応器の加熱ジャケット中に導入される。反応器上の液状熱媒体の温度差、即ち加熱ジャケット中の入口での熱媒体の入口温度と加熱ジャケットからの出口での熱媒体の出口温度との温度差は、特に40℃未満、有利に30℃未満、特に有利に10〜25℃である。この温度差は、加熱ジャケットを通る単位時間当たりの熱媒体の質量流(単位時間当たりのkg数)によって調節されることができる。
【0043】
本発明による方法において、200〜400℃の温度範囲内でイソオレフィンへの第三アルコールおよびアルキル−第三アルキルエーテルの分解を可能にする全ての固体の触媒を使用することができる。特に、反応器中で最大400mol(h−kgKAT)、有利に1〜400mol(h−kgKAT)の反応速度を達成する触媒が使用される。
【0044】
本発明による方法で使用される触媒は、例えば金属酸化物、金属混合酸化物、殊に酸化珪素および/または酸化アルミニウムを含有するもの、金属酸化物担体上の酸または金属塩、またはその混合物であることができる。
【0045】
本発明による方法において、MTBEを気相中でイソブテンおよびメタノールに分解するために、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウムおよび酸化珪素からなる触媒が有利に使用される。このような触媒は、例えば米国特許第5171920号明細書の実施例4および欧州特許第0589557号明細書中に記載されている。
【0046】
特に有利には、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウムおよび酸化珪素を有し、かつ0.5〜20質量%、有利に5〜15質量%、特に有利に10〜15質量%の酸化マグネシウムの含量、4〜30質量%、有利に10〜20質量%の酸化アルミニウムの含量および60〜95質量%、有利に70〜90質量%の酸化珪素の含量を有する触媒が使用される。触媒が酸化マグネシウムと共にアルカリ金属酸化物を有することは、好ましい。このアルカリ金属酸化物は、例えばNa2OまたはK2Oから選択されてよい。特に、触媒は、アルカリ酸化物としてNa2Oを有する。有利に使用される触媒は、特に200〜450m2/g、有利に200〜350m2/gのBET面積(DIN ISO 9277による窒素で容積測定された)を有する。本発明による触媒を活性質量として担体上に施こした場合には、活性質量だけは、記載された範囲内のBET表面積を有する。これに対して、触媒と担体からなる材料は、担体の性状に応じて明らかに偏倚するBET表面積、殊によりいっそう小さいBET表面積を有していてよい。
【0047】
触媒の細孔容積は、特に0.5〜1.3ml/g、有利に0.65〜1.1ml/gである。この細孔容積は、特にシクロヘキサン法によって測定される。この方法の場合、試験すべき試料は、最初に110℃で質量が一定になるまで乾燥される。引続き、0.01gに正確に計量供給された試料約50mlは、清浄化されかつ質量が一定になるまで乾燥された含浸管中に充填され、この場合この含浸管は、下側に研磨コックを備えた流出口を有する。流出口は、ポリエチレンからなる小さな板で覆われ、それによって試料による流出口の閉塞は、回避される。試料での含浸管の充填の後、管は、注意深く気密に閉鎖される。引続き、含浸管は、水流ポンプと結合され、この水流ポンプは、研磨コックを開き、水流ポンプにより含浸管中の真空を20ミリバールに調節する。真空は、平行に接続された真空計で試験することができる。20分後に研磨コックは閉鎖され、引続き排気された含浸管は、研磨コックを開くことによって、シクロヘキサンが受器から含浸管中に吸い込まれるように、正確に測定された容積のシクロヘキサンが装入されるようなシクロヘキサン受器と結合されている。研磨コックは、全部の試料がシクロヘキサンと一緒に注入されるまでの間、開かれたままである。引続き、研磨コックは、再び閉鎖される。15分後、含浸管は、注意深く通気され、吸収されなかったシクロヘキサンは、受器中に排出される。含浸管中、または流出口またはシクロヘキサン受器との接続部に付着するシクロヘキサンは、個々の注意深い圧力衝突によって吸込ボール(Saugball)から通風管を経て受器中に輸送されることができる。受器中に存在するシクロヘキサンの容積は、記録される。細孔容積は、試験された試料の質量によって除し、測定前の受器中のシクロヘキサン容積から測定後の受器中のシクロヘキサン溶液を差し引くことにより測定される、吸収されたシクロヘキサン容積から明らかになる。
【0048】
触媒の平均孔径(特に、DIN 66133により測定された)は、特に5〜20nm、有利に8〜15nmである。特に好ましくは、3.5〜50nm(中間細孔)の直径を有する細孔上の触媒の全細孔容積(DIN 66133により水銀多孔度測定法により測定された3.5nm以上の細孔直径を有する細孔の細孔容積の総和)の少なくとも50%、特に70%超が発揮される。
【0049】
本発明による方法において、好ましくは、10μm〜10mm、特に0.5mm〜10mmの平均粒度(篩分析によって測定した)、特に有利に1〜5mmの平均粒度を有する触媒が使用される。特に、2〜4mm、殊に3〜4mmの平均粒度d50を有する固体の触媒が使用される。
【0050】
本発明による方法において、触媒は、成形体として使用されてよい。成形体は、全ての形を取ることができる。好ましくは、成形体としての触媒は、球体、押出品またはタブレットの形で使用される。この成形体は、特に上記の平均粒度を有する。
【0051】
触媒は、担体上、例えば金属担体、プラスチック担体またはセラミック担体、特に触媒が使用される反応に関連して不活性である担体上に施こされうる。殊に、本発明による触媒は、金属担体、例えば金属板または金属織物上に施こされることができる。本発明による触媒が装備されたこのような担体は、例えば反応器または反応蒸留塔中の取付け物として使用されてよい。担体は、金属ボール、ガラスボースまたはセラミックボール、または無機酸化物のボールであってもよい。本発明による触媒が不活性の担体上に施こされている場合、不活性担体の質量および組成は、触媒の組成を測定する場合には考慮されていない。
【0052】
特に有利に使用される、形式的に酸化マグネシウム(MaO)、酸化アルミニウム(Al23)および二酸化珪素(SiO2)を有する触媒は、次の工程
a)アルミノ珪酸塩を酸性のマグネシウム塩水溶液で処理する工程および
b)マグネシウム水溶液で処理されたアルミノ珪酸塩でか焼する工程を有する方法で製造されうる。この場合、アルミノ珪酸塩は、本質的に形式的に酸化アルミニウム(Al23)および二酸化珪素(SiO2)の含量から構成されている化合物である。しかし、アルミノ珪酸塩は、なお僅かな含量のアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物を含有していてもよい。前記方法において、アルミノ珪酸塩としては、ゼオライト、例えばゼオライトA、X、Y、USYまたはZSM−5、または無定形ゼオライト(例えば、Mobil Oil社のMCM 41)が使用されてもよい。前記方法で使用されるアルミノ珪酸塩は、無定形であっても結晶であってもよい。本発明による方法において出発物質として使用されることができる適当な商業的アルミノ珪酸塩は、例えば沈殿、ゲル化または熱分解によって製造されたアルミノ珪酸塩である。前記方法において、特に酸化アルミニウム5〜40質量%、有利に10〜35質量%および二酸化珪素60〜95質量%、有利に65〜90質量%を有する(乾燥質量に対して;処理:850℃で1時間の灼熱)アルミノ珪酸塩が使用される。使用されたアルミノ珪酸塩または得られた触媒の組成の測定は、例えば古典的な分析法、硼砂を用いての溶融分解およびRFA(Roentgenfluoreszenzanalyse蛍光X線分析)、エネルギー分散X線分析、フレーム分光分析(AlおよびMg、Siなし)、湿式分解および引続くICP−OES(誘導結合した高周波プラズマを用いての発光分光分析)または原子吸光分析によって行なうことができる。前記方法に使用されることができる特に好ましいアルミノ珪酸塩は、13質量%のAl23の形式的含量および76質量%の二酸化珪素の含量を有する。このようなアルミノ珪酸塩は、Grace Davison社によってDavicat O 701の名称で販売されている。
【0053】
アルミノ珪酸塩は、異なる形で前記方法において使用されることができる。即ち、アルミノ珪酸塩は、成形体、例えばタブレット、ペレット、顆粒、ストランドまたは押出品の形で使用されることができる。しかし、アルミノ珪酸塩は、アルミノ珪酸塩粉末として使用されてもよい。出発物質として、異なる平均粒度および異なる粒度分布を有する粉末から出発することができる。好ましくは、本発明による方法において、粒子の95%が5〜100μm、特に10〜30μm、特に有利に20〜30μmの平均粒度を有するアルミノ珪酸塩粉末が使用される。粒度の測定は、例えばMalvern社の粒子分析器、例えばMastersizer 2000を用いてのレーザー回折によって実施されることができる。
【0054】
マグネシウム塩水溶液を製造するために、水溶性であるかまたは酸の添加によって水溶性化合物に移行するマグネシウム化合物が使用される。特に、塩として硝酸塩が使用される。好ましくは、マグネシウム塩として強鉱酸の塩、例えば硝酸マグネシウム六水和物または硫酸マグネシウム七水和物を有するマグネシウム塩溶液が使用される。使用される酸性のアルカリ金属塩水溶液および/またはアルカリ土類金属塩水溶液は、特に6未満、有利に6未満ないし3、特に有利に5.5〜3.5のpH値を有する。pH値の測定は、例えばガラス電極または試験紙を用いて実施されうる。塩溶液が6以上であるpH値を有する場合には、pH値は、酸、特にアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩が溶液で存在している酸を添加することによって調節されうる。特に、アルカリ金属塩溶液および/またはアルカリ土類金属塩溶液が塩として硝酸塩を有する場合には、酸として硝酸が使用される。使用されるマグネシウム塩溶液のマグネシウム含量は、特に0.1〜3mol/l、有利に0.5〜2.5mol/lである。
【0055】
工程a)での処理は、アルミノ珪酸塩をマグネシウム塩溶液と接触させるのに適している種々の方法で行なうことができる。可能な処理方法は、例えばマグネシウム塩溶液でのアルミノ珪酸塩の含浸、浸漬、噴霧または注型である。アルミノ珪酸塩の処理を、マグネシウム塩溶液が少なくとも0.1〜5時間、有利に0.5〜2時間、アルミノ珪酸塩に作用されうるように行なうことは、好ましい。このような作用時間は、殊に処理を簡単な浸漬によって行なう場合に好ましい。
【0056】
本発明による方法の本発明による工程a)の好ましい実施態様において、マグネシウム塩溶液でのアルミノ珪酸塩、殊にアルミノ珪酸塩成形体の処理は、例えばそのために適した真空含浸装置中での真空含浸によって行なうことができる。この種の処理の場合、アルミノ珪酸塩は、真空含浸装置中で最初に排気される。引続き、マグネシウム塩溶液は、パイル型担体の上縁部にまで吸い込まれ、したがって全部のアルミノ珪酸塩は、溶液で被覆されている。特に、0.1〜10時間、有利に0.5〜2時間の作用時間後、担体によって吸収されなかった溶液は、放出される。
【0057】
本発明による方法の本発明による工程a)の他の好ましい実施態様において、アルカリ金属塩溶液および/またはアルカリ土類金属塩溶液でのアルミノ珪酸塩、殊にアルミノ珪酸塩成形体の処理は、例えばアルミノ珪酸塩の噴霧または注型によって行なうことができる。特に、マグネシウム塩溶液でのアルミノ珪酸塩の噴霧または注型が行なわれ、この場合この溶液は、ドラム中で回転するアルミノ珪酸塩上に噴霧されるかまたは注入される。この処理は、一気に行なうことができ、即ちアルミノ珪酸塩には、開始時に全体量のマグネシウム塩溶液が一工程で添加される。しかし、塩溶液は、少量ずつでの噴霧または注入によって供給することもでき、この場合添加の時間は、特に0.1ないし10時間、有利に1〜3時間である。塩溶液の量は、特にアルミノ珪酸塩の全部の溶液が吸収されるように計量される。殊に、浸漬は、しかし、噴霧または注入も通常の工業用装置中、例えばEirich社によって提供されている円錐形ミキサーまたは強力ミキサー中で実施されることができる。
【0058】
工程a)におけるマグネシウム塩溶液でのアルミノ珪酸塩の処理は、一工程でかまたは多数の部分工程で行なうことできる。殊に、処理を2つ以上の部分工程で実施することは、可能である。個々の部分工程の全ての工程において、それぞれ同じマグネシウム塩溶液を使用することができるかまたは全ての部分工程において、濃度が異なるマグネシウム塩溶液を使用することができる。例えば、アルミノ珪酸塩には、最初にマグネシウム塩溶液の一部分だけを添加することができ、場合によっては中間乾燥後に、同じかまたは別の温度で使用されるマグネシウム塩溶液の残存量を添加することができる。工程a)を2つ以上の部分工程で実施することだけが可能なわけではない。同様に、本方法は、数多くの工程a)を有することも可能である。この場合も、種々の工程a)において、濃度に関連して同じかまたは異なるマグネシウム塩溶液を使用することができる。
【0059】
工程a)での処理は、特に10〜120℃、有利に10〜90℃、特に有利に15〜60゜の温度、殊に有利に20〜40℃の温度で実施されることができる。
【0060】
工程a)で1つ以上の添加剤をアルミノ珪酸塩またはマグネシウム塩溶液に添加するかまたは混入することは、好ましい。このような添加剤は、例えば結合剤、滑剤または成形助剤であることができる。適当な結合剤は、例えばベーム石または擬ベーム石であることができ、例えばDisperal(約77質量%の形式的Al2O3含量を有するベーム石)の商品名でSasol Deutschland GmbHによって販売されている。ベーム石、殊にDisperalを結合剤として添加する場合には、これは、特に、例えばDisperal197質量部を1.28質量%の硝酸水溶液803質量部中に攪拌混入し、60℃で3時間徹底的に攪拌し、室温に冷却し、場合によっては蒸発された水を補充することによって得ることができるゲルとして添加される。成形助剤として、例えば珪酸、殊に熱分解法珪酸、例えばDugussa AG社によってAerosilの商品名で販売されている熱分解法珪酸、ベントナイト、粘土、カオリン、カオリナイト(Kaolinit)、ボールクレーおよびこのために当業者にとって通常の別の物質が使用されてよい。改善されたタブレット化にとっての使用が好ましい滑剤として、例えば黒鉛が添加されてよい。
【0061】
工程a)での1つ以上の上記添加剤の添加は、種々の方法で行なうことができる。殊に、この添加は、マグネシウム塩溶液でのアルミノ珪酸塩の処理中に行なうことができる。例えば、アルミノ珪酸塩、添加剤およびマグネシウム塩溶液は、工業的装置中に充填されることができ、引続き緊密に混合されることができる。別の方法は、最初にアルミノ珪酸塩を添加剤と混合し、引続きマグネシウム塩溶液を添加することにある。もう1つの変法において、アルミノ珪酸塩には、添加剤およびマグネシウム塩溶液が同時に供給されうる。この添加は、1回の注入でか、少量ずつでか、または噴霧によって行なうことができる。添加時間は、特に5時間未満、有利に3時間未満である。この混合物を0.1〜10時間、有利に0.5〜3時間さらに混合することは、好ましい。
【0062】
有利に使用される触媒の製造方法は、少なくとも1つの処理工程b)を有し、この場合アルカリ金属塩溶液および/またはアルカリ土類金属塩溶液で処理されたアルミノ珪酸塩は、か焼される。か焼は、特にガス流中、例えば空気、窒素、二酸化炭素および/または1つ以上の希ガスを含有するかまたは前記成分の1つ以上からなるガス流中で行なわれる。好ましくは、か焼は、ガス流としての空気を使用しながら行なわれる。
【0063】
処理工程b)でのか焼は、特に200〜1000℃、有利に300〜800℃の温度で実施される。か焼は、特に0.1〜10時間、有利に1〜5時間で行なわれる。特に有利には、か焼は、200〜1000℃、特に300〜800℃の温度で0.1〜10時間、有利に1〜5時間実施される。
【0064】
好ましくは、工業的か焼は、高炉中で実施されることができる。しかし、か焼は、別の公知の工業用装置中、例えば渦動床か焼炉、回転管炉または乾燥炉(Hordenoefen)中で実施されてもよい。
【0065】
工程a)とb)との間で工程c)を実施することは、好ましく、この場合には、マグネシウム塩溶液で処理されたアルミノ珪酸塩が乾燥される。工程c)での乾燥は、100〜140℃の温度で行なうことができる。特に、乾燥は、ガス流中で行なわれる。乾燥は、例えば空気、窒素、二酸化炭素および/または1つ以上の希ガスを含有するかまたは前記成分の1つ以上からなるガス流中で実施されてよい。
【0066】
アルカリ金属塩溶液での処理後およびか焼前の乾燥の中間工程によって、か焼の際に大きな"水蒸気量"が放出されないことが達成されうる。その上、乾燥によって、か焼の際に自然に蒸発する水により触媒の形状が破壊されることが回避されうる。
【0067】
どのような望ましい形で触媒が存在するかに応じて、製造方法を付加的な処理工程によって相応して適合させることは、好ましい。前記方法で例えば粉末状の触媒を製造する場合には、アルミノ珪酸塩は、アルミノ珪酸塩粉末の形で使用されることができ、例えば円錐形ミキサー中でマグネシウム塩溶液で処理されることができ(例えば、含浸によって)、場合によっては乾燥されることができ、引続きか焼されることができる。しかし、粉末状の触媒は、触媒成形体を微粉砕および篩別によって粉末状の触媒に加工することによって製造されることもできる。
【0068】
触媒成形体は、例えばストランド、球体、ペレットまたはタブレットの形で存在することができる。成形された触媒(触媒成形体)を得るために、それぞれの成形変法に依存して処理工程と共に、処理、乾燥、か焼、他の処理工程、例えば成形、微粉砕または篩別を実施することができる。成形助剤は、プロセスの種々の位置で導入されてよい。触媒成形体の製造は、異なる方法で行なうことができる:
第1の実施変法において、触媒成形体、殊にアルミノ珪酸塩成形体を酸性のマグネシウム塩水溶液で処理することによって得られる本発明による触媒成形体は、場合によっては乾燥されることができ、引続きか焼されることができる。
【0069】
第2の実施態様において、触媒成形体は、アルミノ珪酸塩粉末を最初に酸性のマグネシウム塩水溶液で処理し、次に場合によっては乾燥し、引続きか焼し、引続き得られた触媒粉末を工業的に常用の方法、例えば圧縮、押出、ペレット化、タブレット化、造粒またはコーティングによって触媒成形体に加工することによって得ることができる。この場合、成形に必要な添加剤、例えば結合剤または他の助剤は、製造方法の種々の位置で、即ち例えば処理工程a)で添加されることができる。成形体を出発物質としてのアルミノ珪酸塩粉末から製造する場合には、種々の平均粒度および種々の粒度分布を有する粉末から出発することができる。好ましくは、成形体の製造のために、粒子の95%が5〜100μm、特に10〜30μm、特に有利に20〜30μmの粒度(レーザー回折によって測定した、上記参照)を有するアルミノ珪酸塩粉末が使用される。
【0070】
本方法の第3の実施態様において、触媒のペレットは、処理工程a)でアルミノ珪酸塩粉末を酸性のマグネシウム塩水溶液で処理し、場合によっては乾燥し(処理工程c))、引続き処理工程b)でか焼し、こうして得られた触媒粉末を、例えばアイリッヒミキサー(Eirichmischer)中で結合剤の添加下にペレット化し、得られたペレットを他の処理工程c)で乾燥し、引続き他の処理工程b)でか焼することによって得ることができる。
【0071】
本製造方法の第4の実施態様において、触媒のペレットは、処理工程a)でアルミノ珪酸塩粉末、結合剤および酸性のマグネシウム塩水溶液を混合し、こうして処理されたアルミノ珪酸塩粉末を、例えばアイリッヒミキサー(Eirichmischer)中でペレット化し、得られた湿ったペレットを処理工程c)で乾燥し、引続き処理工程b)でガス流中でか焼することによって得ることができる。
【0072】
本製造方法の第5の実施態様において、触媒のタブレットは、処理工程a)でアルミノ珪酸塩粉末、結合剤、場合による滑剤および酸性のマグネシウム塩水溶液を混合し、こうして処理されたアルミノ珪酸塩粉末を、例えばアイリッヒミキサー(Eirichmischer)中で、特に0.5〜10mm、有利に1〜5mm、特に有利に1〜3mmの平均直径(粒度の測定は、例えば篩分析によって行なうことができる)を有するマイクロペレットにペレット化し、得られた湿ったペレットを処理工程c)で乾燥し、引続き場合によっては処理工程b)でガス流中でか焼することによって得ることができる。更に、得られたペレットは、処理工程a)がなお行なわれない場合には、滑剤、例えば黒鉛と混合されることができ、引続き市販のタブレット成形機、例えば循環成形機上でタブレット化されうる。タブレットは、なお処理工程b)が実施されなかった場合には、処理工程b)でか焼されることができるかまたは場合によってはさらにか焼されることができる。
【0073】
本製造方法の第6の実施態様において、触媒のタブレットは、前成形された選択的に水素化された触媒成形体、例えばペレットとして第3または第4の実施態様において得ることができるような触媒成形体を微粉砕し、得られた顆粒/粉末を篩別し、したがってタブレット化能を有する顆粒を触媒から得、この顆粒に滑剤を混入することによって得ることができる。引続き、こうして準備された顆粒は、タブレット化されることができる。タブレットは、なお処理工程b)が実施されなかった場合には、処理工程b)でか焼されることができる。滑剤の混入は、既にペレットの製造の際に、例えば処理工程a)で滑剤が添加されている場合には、不要である。
【0074】
本発明による方法の第7の実施態様において、触媒で被覆された材料/担体を製造することができる。この実施態様の場合、最初に触媒粉末は、処理工程a)でアルミノ珪酸塩粉末を酸性のマグネシウム塩水溶液で処理し、場合によっては乾燥し(処理工程c))、場合によってはか焼する(処理工程b))ことによって製造される。引続き、こうして得られた触媒粉末は、懸濁剤、例えば水またはアルコール中に懸濁され、この場合には、場合によって結合剤を懸濁液に添加することができる。更に、こうして製造された懸濁液は、全ての任意の材料上に施こされうる。施与の後、場合によっては乾燥され(処理工程c))、引続きか焼される(処理工程b))。こうして、好ましい触媒で被覆された材料/担体を準備することができる。このような材料/担体は、例えば反応器または塔、殊に反応蒸留塔内で取付け物として使用することができるような金属板または金属織物、または金属玉、ガラス玉またはセラミック玉、または無機酸化物の玉であってよい。
【0075】
本製造方法の第8の実施態様において、触媒の押出品、殊に本発明による触媒は、処理工程a)でアルミノ珪酸塩粉末、酸性のアルカリ金属塩水溶液および/またはアルカリ土類金属塩水溶液、結合剤、例えばDisperalおよび押出にとって通常の他の成形助剤、例えば粘土、例えばベントナイトまたはアタパルジャイトを混練機またはEirichミキサー中で混合し、押出機中で特に0.5〜10mm、有利に1〜5mm、特に有利に1〜3mmの平均直径を有する押出品に押出し、得られた湿った押出品を場合によっては処理工程c)で乾燥し、引続き処理工程b)でガス流中でか焼することによって得ることができる。
【0076】
イソオレフィン、殊にイソブテンを、固体触媒で気相中での第三アルコールまたはアルキル−第三アルキルエーテルの分解によって製造するための本発明による方法は、熱媒体が流れる加熱ジャケットと空間的に分離されている、触媒を有する反応帯域(触媒帯域)を有する全ての適当な反応器中で実施されることができる。特に、本発明による方法は、板状反応器、管状反応器、多数の互いに平行に接続された環状反応または板状反応器、または管束反応器中で実施される。有利に、本発明による方法は、管束反応器中で実施される。
【0077】
触媒が存在する中空体は、通常の語法で管に限る必要がないことが指摘される。中空体は、円形の横断面を有しなくともよい。この中空体は、例えば楕円形または三角形であってよい。
【0078】
反応器の組立に使用される材料、殊に反応帯域を加熱ジャケットと分離する材料は、特に高い熱伝導率(40W/(m・k)を上廻る)を有する。好ましくは、高い熱伝導率を有する材料として鉄または鉄合金、例えば鋼が使用される。
【0079】
本発明による方法を管束反応器中で実施する場合には、個々の管は、特に1〜15m、有利に3〜9m、特に有利に5〜9mの長さを有する。本発明による方法で使用される管束反応器中の個々の管は、特に10〜60mm、有利に20〜40mm、特に有利に24〜35mmの内径を有する。本発明による方法で使用される管束反応器の個々の管が1〜4mm、特に1.5〜3mmの管壁の厚さを有することは、好ましい。
【0080】
本発明による方法で使用される管束反応器中には、管は、特に平行に配置されている。好ましくは、管は、均一に配置されている。管の配置は、例えば正方形、三角形または菱形であることができる。特に好ましくは、相互の隣接した3つの管の潜在的に結合した中心点が正三角形を形成する、即ち管が等しい距離を有するような配置である。好ましくは、本発明による方法は、管が3〜15mm、特に有利に4〜7mmの距離を互いに有する管束反応器中で実施される。
【0081】
本発明による方法は、特に式Iの化合物に対する変換率が70〜98%の範囲内、殊に90〜95%の範囲内にあるように運転される。
【0082】
本発明は、殊にイソブテンおよびメタノールをMTBEの分解によって製造することに関する。本発明による運転される反応器は、イソブテンを工業用MTBEから製造するための方法の不可欠な成分であることができる。このような方法は、既にしばしば公知技術水準に記載されている。
【0083】
分解混合物は、公知方法で、例えば公知技術水準の記載と同様に後処理されることができる。好ましい種類の後処理は、次に記載される。
【0084】
分解生成物混合物を後処理するために、分解生成物混合物は、第1の蒸留工程でイソオレフィンを有する塔頂流と式Iの反応されていない化合物を有する塔底流とに分離されうる。イソオレフィンを有する塔頂流および式Iの反応されていない化合物を有する塔底流中に分解生成物を蒸留分離することは、少なくとも1つ塔、有利には正確に1つの蒸留塔中で行なわれる。
【0085】
蒸留分離で有利に使用される蒸留塔は、特に20〜55段の理論的分離段、有利に25〜45段、特に有利に30〜40段の理論的分離段を有する。返送比は、実現された段数、反応器搬出物の組成ならびに留出物および塔底生成物の必要とされる純度に依存して、特に5未満、有利に1未満である。塔の運転圧力は、特に0.1〜2.0MPa(絶対)に調節されうる。圧縮機を節約するために、塔を分解反応器が運転される圧力よりも低い圧力で運転することは、好ましい。イソブテンを冷却水に対して凝縮しうるために、約0.5MPa(絶対)の圧力が必要とされる。分解が例えば0.65MPa(絶対)の圧力で運転される場合には、蒸留を0.55〜0.6MPa(絶対)の運転圧力で実施することは、好ましい。蒸発器を加熱するために、例えば0.4MPAの蒸気を使用することができる。塔底生成物は、有利に式Iの反応されていない化合物、アルコールまたは水ならびに場合によっては副生成物、例えばジイソブテンおよび/または2−メトキシブタンを含有する。塔底生成物は、特にイソオレフィン、殊に全部の塔底生成物に対して95質量%を上廻る純度を有するイソブテンである。
【0086】
場合によっては、分解生成物混合物の後処理は、少なくとも反応蒸留塔として記載された塔内で実施されることができる。本発明による方法の前記の実施態様は、全ての方法において式Iの化合物の変換率を、分解で式Iの反応されていない化合物の一部分が反応蒸留塔の反応部で分解されてイソオレフィンおよびアルコールまたは水に変わることによって上昇させることができるという利点を有する。
【0087】
触媒として、反応蒸留塔の反応部で、式Iの化合物の分解に適している全ての触媒を使用することができる。好ましくは、触媒として酸性触媒が使用される。反応蒸留塔の反応部での使用のために酸性触媒の特に好ましい群は、固体の酸性イオン交換体樹脂、殊にスルホン酸基を有する、固体の酸性イオン交換体樹脂である。適当なイオン交換体樹脂は、例えばフェノール/アルデヒド縮合体のスルホン化または芳香族ビニル化合物のコオオリゴマーのスルホン化によって製造されたイオン交換体樹脂である。コオリゴマーの製造のための芳香族ビニル化合物の例は、次のものである:スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルエチルベンゼン、メチルスチレン、ビニルクロロベンゼン、ビニルキシレンおよびジビニルベンゼン。特に、スチレンとビニルベンゼンとの反応により生じたコオリゴマーは、スルホン酸基を有するイオン交換体樹脂の製造のための前駆体として使用される。この樹脂は、ゲル状、マクロ孔又はスポンジ状に製造することができる。これらの樹脂の特性、特に比表面積、気孔率、安定性、膨潤性または収縮性および交換容量は、製造プロセスによって変化させることができる。
【0088】
反応蒸留塔の反応部中で、イオン交換樹脂は、H形または少なくとも部分的にH形で使用される。スチレン−ジビニルベンゼン型の強酸の樹脂は、特に次の商品名で販売されている:Duolite C20, Duolite C26, Amberlyst 15, Amberlyst 35, Amberlite IR-120, Amberlite 200, Dowex 50, Lewatit SPC 118, Lewatit SPC 108, K2611, K2621, OC 1501。
【0089】
使用されるイオン交換樹脂の細孔容積は、特に0.3〜0.9ml/g、殊に0.5〜0.9ml/gである。この樹脂の粒度は、特に0.3mm〜1.5mm、有利に0.5mm〜1.0mmである。この粒度分布は狭くまたは広く選択することができる。例えば、極めて単一な粒度を有するイオン交換体樹脂(単分散樹脂)を使用することができる。イオン交換樹脂の容量は、供給形に対して特に0.7〜2.0eq/1、殊に1.1〜2.0eq/1である。
【0090】
場合によっては反応蒸留塔として記載された塔の反応部中で、触媒は、充填物の形で、例えばKataMax(登録商標)(欧州特許第0428265号明細書に記載されている)またはKataPak(登録商標)(欧州特許第0396650号明細書またはドイツ連邦共和国実用新案第29807007.3号明細書U1に記載されている)充填物の形で組み込まれていてよいか、または成形体上に重合されていてよい(米国特許第5244929号明細書に記載されている)。
【0091】
有利に、前記反応蒸留塔は、触媒充填物の上方で、単なる蒸留分離の領域を有する。有利に、触媒充填物の上方の帯域は5〜25段、特に5〜15段の理論的分離段を有する。触媒の下方の分離帯域は、特に5〜35段、有利に5〜25段の理論的分離段を有する。反応蒸留塔への供給は、触媒帯域の上方または下方に、有利に触媒帯域の下方に行なうことができる。
【0092】
イソオレフィンおよびアルコールまたは水への式Iの化合物の反応は、反応蒸留で特に60〜140℃、有利に80〜130℃、特に有利に90〜110℃の温度範囲内で行なわれる(触媒が存在する塔の範囲内での温度;塔底温度は、明らかによりいっそう高く存在していてよい)。
【0093】
反応蒸留塔の運転圧力にとって原理的には、純粋な蒸留塔として上記された記載と同様の運転条件を選択することができる。即ち、反応蒸留塔の運転圧力は、0.1〜1.2MPa(絶対)に調節される。圧縮機を節約するために、塔を分解反応器が運転される圧力よりも低い圧力で運転することは、好ましい。イソブテンを冷却水に対して凝縮しうるために、約0.5MPa(絶対)の圧力が必要とされる。分解が例えば0.65MPa(絶対)の圧力で運転される場合には、反応蒸留を0.55〜0.6MPa(絶対)の運転圧力で実施することは、好ましい。蒸発器を加熱するために、例えば0.4MPAの蒸気を使用することができる。
【0094】
塔の触媒充填物中の液圧ローディング点は、有利にそのフラッディング点の10%〜110%、特に20〜70%である。蒸留塔の液圧ローディングとは、上昇する蒸気質量流と還流する液体質量流とによる塔断面積の均一な流動工学的要求である。このローディング上限値は、蒸気および還流液による最大のローディング点を表わし、最大のローディング点より高くでは分離効果は、上昇する蒸気流による還流液のエントレイメントまたは堰き止めによって低下する。このローディング下限値は、最小のローディング点を表わし、最小のローディング点を下回ると分離効果は、塔、例えばトレイの不均一な流動または空転の結果、低下するか又は崩壊する(Vauck/Mueller, "Grundoperatonen chemischer Verfahrenstechnik", 第626頁,VEB Deutscher Verlag fuer Grundstoffindustrie)。
【0095】
塔を反応蒸留塔として記載した場合も、特に式Iの反応されていない化合物およびアルコールまたは水ならびに場合によっては副生成物、例えばジイソオレフィンを含有する塔底生成物を得ることができる。塔底生成物は、特に95質量%より高い純度を有するイソオレフィンを有する。
【0096】
前記蒸留の際に得ることができかつ特に95質量%超がイソオレフィンからなる塔底生成物は、直接に販売製品として使用されることができるかまたはさらに後処理されることができる。
【0097】
イソブテンは、メタノールと一緒に最小共沸物を形成するので、第1の蒸留工程で得られた塔頂生成物は、主要生成物と共にイソブテン、殊にメタノールを含有する。他の成分として、塔頂生成物中には、例えばメタノールの凝縮によって生成されてよいジメチルエーテル、および例えば2−メトキシブタンの分解によって生成されてよい直鎖状ブテン(1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン)および水が含有されていてよい。
【0098】
凝縮器が蒸留塔に対して運転されるかまたは反応蒸留塔が部分凝縮器として運転されることにより、塔頂生成物から、ジメチルエーテルの一部分は、場合によっては既に蒸留工程で分離されることができる。この蒸留工程で、塔頂生成物中に含有されている留分は、凝縮されることができ、塔頂生成物中に含有されているジメチルエーテルの一部分は、ガス状で取り出されうる。
【0099】
市場向きのイソオレフィン品質、殊にイソブテン品質は、通常、実際にアルコール、殊にメタノールを含有しない。メタノールは、第1の蒸留工程で得られた塔頂生成物から自体公知の方法により、例えば抽出によって分離されることができる。塔頂生成物からのメタノールの抽出は、例えば抽出剤としての水または水溶液で、例えば抽出塔内で実施されることができる。特に、抽出は、水または水溶液を用いて、特に4〜16段の理論的分離段を有する抽出塔内で実施される。特に、抽出剤は、抽出すべき流れに関連して、向流で抽出塔に導通される。抽出は、特に15〜50℃、有利に25〜40℃の温度で実施される。例えば、0.9MPa(絶対)の圧力および40℃の温度で運転される、6段を上廻る理論的分離段を有する抽出塔を使用する場合には、水飽和のイソオレフィン、殊に99質量%を上廻るイソオレフィン含量またはイソブテン含量を有するイソブテンを得ることができる。
【0100】
抽出の際に得られるメタノール含有水抽出物は、蒸留により水およびメタノールに分離されることができる。水は、抽出剤として抽出工程に返送されることができる。メタノールは、通常の工業的合成、例えばエステル化またはエーテル化に利用されてよい。
【0101】
抽出塔からの湿ったイソオレフィン流またはイソブテン流は、他の蒸留塔内で水および場合によってはジメチルエーテルを分離することによって乾式イソオレフィンまたはイソブテンに後処理されることができる。この場合、乾式イソオレフィンまたはイソブテンは、塔底生成物として得られる。塔の頭頂部での凝縮系内で、相分離後に水は、液状で取り出されることができ、ジメチルエーテルは、ガス状で取り出されることができる。乾燥に有利に使用される蒸留塔は、特に30〜80段の理論的分離段、有利に40〜65段の理論的分離段を有する。返送比は、実現された段数およびイソオレフィンまたはイソブテンの必要とされる純度に依存して、特に60未満、有利に40未満である。乾燥に使用される前記の蒸留塔の運転圧力は、特に0.1〜2.0MPa(絶対)に調節されることができる。
【0102】
抽出および蒸留によるイソブテンの後処理は、例えばドイツ連邦共和国特許第10238370号明細書中に詳細に記載されている。有利に、第1の蒸留工程で得られる、イソオレフィンまたはイソブテンを有する塔頂流から、メタノールは、抽出によって分離され、抽出されたイソオレフィンまたはイソブテンから、ジメチルエーテルおよび水は、蒸留により分離される。
【0103】
本発明による方法でイソブテンが製造される場合には、これは、例えば塩化メタリル、メタリルスルホネート、メタクリル酸またはメチルメタクリレートの製造に使用されうる。殊に、メタノールならびにイソブテンを分解生成物から分離することは、好ましく、メタノールならびにイソブテンは、メチルメタクリレートの製造に使用される。メチルメタクリレートを製造するためのこのような方法は、例えば欧州特許第1254887号明細書中に記載されており、この場合この刊行物は、参考のために指摘されている。
【0104】
第1の蒸留工程で得られた塔底生成物は、式Iの分解で反応されていない化合物(例えば、MTBE)および式Iの化合物の分解の際に生じたアルコールの大部分または水を含有する。塔底生成物は、直接に分解に返送されうるかまたは第2の蒸留工程で後処理されることができる。特に、第1の蒸留工程の塔底生成物から第2の蒸留工程でアルコールの大部分は、蒸留分離され、残分は、少なくとも部分的に分解に返送される。
【0105】
本発明による方法において塔を使用する場合には、この塔には、例えばトレイ、回転する取付け物、不規則な堆積物および/または規則的な充填物が設けられていてよい。
【0106】
棚段塔の場合には、例えば次のタイプのものが使用されてよい:
棚段中に孔またはスロットを備えたトレイ。
泡鐘、キャップまたはフードで覆われている、頸部または煙突部を備えたトレイ。
可動性の弁で覆われている、棚段中に孔を備えたトレイ。
特殊な構造を有するトレイ。
【0107】
回転する取付け物を備えた塔内で、返送流は、例えば回転する漏斗によって噴霧されうるかまたは回転子により被膜として加熱された管壁上に拡散されうる。
【0108】
本発明による方法においては、既に述べたように、種々の充填体を有する不規則な堆積物を有する塔が使用されてよい。充填体は、殆んど全ての原材料、殊に鋼、特殊鋼、銅、炭素、陶器、陶磁器、ガラスまたはプラスチックからなることができ、種々の形、殊に球、平滑な表面または異形成形された表面を有するリング、内部ウェブまたは壁破壊個所を備えたリング、リング状金網、鞍部状体および螺旋体の形を有することができる。
【0109】
規則的/不規則な幾何学的寸法を有する充填物は、例えば薄板または織物からなることができる。このような充填物の例は、金属またはプラスチックからなるSulzer Gewebepackung (織物充填物)BX、金属薄板からなるSulzer Lamellenpackungen(層状充填物) Mellapak、Sulzer社の高性能充填物、例えばMella-pakPlus、Sulzer社の構造充填物(Optiflow)、Montz(BSH)およびKuehnu(Rombopak)である。
【0110】
本発明による方法により得ることができるイソブテンは、冒頭に記載された目的のために利用されることができる。
【0111】
次の実施例は本発明を詳説するが、明細書および特許請求の範囲から生じる本発明の適用範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0112】
実施例
例a:アルミノ珪酸塩成形体の製造
アルミノ珪酸塩粉末500g(製造業者:Grace Davison, タイプ:Davicat O 701, 形式的Al23含量:13質量%、形式的SiO2含量:76質量%、形式的Na2O含量:0.1質量%、850℃での灼熱減量:約11%)、Disperal197g、Sasol Deutschland GmbH社の77質量%の形式的Al23含量を有するベーム石を1.28質量%の硝酸水溶液803g中に攪拌混入し、引続き徹底的に攪拌し、その際に形成されるゲルを絶えず剪断し、こうして流動性の状態に覆われた容器中で60℃で3時間維持し、このゲルを室温に冷却し、場合によっては蒸発された水で代替することによって得ることができる、Disperalゲル363g(形式的Al23含量:15.6%)および完全脱塩水370g(VE水)を、最初に徹底的に互いにEirich社の強力ミキサー中で混合した。引続き、ペレット化をEirich社の強力ミキサー中で行ない、30〜40分間で約1〜3mmの直径を有する均一に円形のペレットを得た。湿ったペレットを最初に120℃で空気流中で乾燥させ、引続き2K/分で550℃に加熱し、この温度で10時間空気流中でか焼した。こうして得られたアルミノ珪酸塩ペレットは、形式的にAl2376質量%およびSiO224質量%を含有していた。更に、製造された触媒は、ナトリウム化合物0.12質量%を含有していた(酸化ナトリウムとして計算した)。アルミノ珪酸塩ペレットの組成を出発物質の量および組成から計算した。アルミノ珪酸塩ペレットは、上記のシクロヘキサン法で測定した細孔容積1.15ml/gを有していた。
【0113】
例b:成形された触媒の製造(本発明による)
水道水および硝酸マグネシウム六水和物から、4.7質量%のマグネシウム含量を有する含浸溶液を製造した。この溶液のpH値は、5.1であった。真空含浸により、実施例1で製造されたアルミノ珪酸塩担体の篩別された画分(直径1.0mm〜2.8mm)を酸性の硝酸マグネシウム溶液に浸漬した。そのために、ペレットをガラス管中に充填し、このガラス管を約30分間排気した(約25hPaの水流ポンプ真空)。引続き、この含浸溶液を下方から固体堆積物の上縁部にまで吸い込ませた。約15分間の作用時間後、担体によって吸収されていない溶液を放置した。湿ったペレットを最初に空気流中で140℃で質量が一定になるまで乾燥させ、引続き3K/分で450℃に加熱し、この温度で12時間か焼した。製造された触媒は、形式的に二酸化珪素68質量%、酸化アルミニウム21質量%および酸化マグネシウム11質量%から構成されていた。更に、製造された触媒は、ナトリウム化合物0.11質量%を含有していた(酸化ナトリウムとして計算した)。触媒の組成を出発物質の量および組成ならびに流出された含浸溶液から計算した。ナトリウム量は、実施例1で使用されたアルミノ珪酸塩の成分であった。上記のシクロヘキサン法で測定された細孔容積は、1.1ml/gであった。
【0114】
例1(比較例):
二重ジャケットを装備した、特殊鋼からなる実験室用管状反応器中で、触媒の長時間試験のための試験を実施した。反応器を1〜2.8mmの粒度分布を有する、実施例bに記載の触媒で充填した。これは、283gの触媒質量に相当した。反応媒体の加熱のために、Sasol Olefin & Surfactants GmbH社のMarlotherm SHを使用した。この場合、エダクトを管に、およびMarlotherm SHをジャケットに並流で導通した。試験を第1表中に記載の条件下で実施した。
【0115】
【表2】

【0116】
この条件下でMTBEの反応率に対して22%の初期値および164℃の管内部での最小温度を達成した。イソブテンに対する選択率は、99.99%であった。4000時間の間に、不変の選択率で反応率は、2.5%に減少した。
【0117】
例2(本発明による)
二重ジャケットを装備した、特殊鋼からなる実験室用管状反応器中で、触媒の長時間試験のための試験を実施した。反応器を1〜2.8mmの粒度分布を有する、実施例bに記載の触媒で充填した。これは、283gの触媒質量に相当した。反応媒体の加熱のために、Sasol Olefin & Surfactants GmbH社のMarlotherm SHを並流で二重ジャケット中に使用した。試験を第2表中に記載の条件下で実施した。
【0118】
【表3】

【0119】
この条件下でMTBEの反応率に対して85%の初期値および218℃の管内部での最小温度を達成した。イソブテンに対する選択率は、99.98%であった。4000時間の間に、不変の選択率で反応率は、70%に減少した。
【0120】
例1と例2の結果の比較は、本発明による方法によって触媒の可使時間が明らかに上昇されうることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
1−O−R2 (I)
〔式中、R1は、4〜6個の炭素原子を有する第三アルキル基であり、R2は、Hまたはアルキル基である〕で示される化合物を気相中で固体触媒で200〜400℃の温度範囲内で0.1〜1.2MPaの圧力で、加熱ジャケットを装備しておりかつ液状熱媒体で加熱される反応器中で分解することによって4〜6個のC原子を有するイソオレフィンを製造するための連続的方法において、触媒帯域中での温度低下が入口温度に関連して全ての任意の位置で50℃未満であり、反応器中の反応混合物とジャケット中の熱媒体とが並流で反応器を貫流し、反応器への流入位置と反応器からの流出位置との間の熱媒体の温度差が40℃未満に調節されるように分解を実施することを特徴とする、4〜6個のC原子を有するイソオレフィンを製造するための連続的方法。
【請求項2】
式Iの化合物として第三ブタノール、メチル−第三ブチルエーテル、エチル−第三ブチルエーテルおよび/または第三アミルメチルエーテルを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式Iの少なくとも2つの化合物の混合物を使用する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
式Iの化合物の混合物として第三ブタノールおよびメチル−第三ブチルエーテルを有する混合物を使用する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
触媒帯域中での温度低下が30℃未満である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
熱媒体を反応器中に流入するエダクトの温度よりも10〜30℃高い温度で反応器の加熱ジャケット中に導入する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
固体触媒として金属酸化物、金属混合酸化物、金属酸化物担体上の酸または金属塩、またはその混合物を使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
2〜4mmの平均粒度を有する固体触媒を使用する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
化合物IとしてMTBEを使用する場合に、このMTBEを酸化マグネシウム、酸化アルミニウムおよび酸化珪素からなる触媒で分解し、イソブテンおよびメタノールに変える、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
方法を管状反応器、管束反応器または板状反応器中で実施する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
方法を管束反応器中で実施する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
方法を個々の管が1〜15mの長さを有する管束反応器中で実施する、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
方法を個々の管が10〜60mmの内径を有する管束反応器中で実施する、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
方法を個々の管が1〜4mmの管壁の厚さを有する管束反応器中で実施する、請求項10から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
方法を管が3〜15mmの距離を互いに有する管束反応器中で実施する、請求項10から14までのいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2008−56671(P2008−56671A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222534(P2007−222534)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】