説明

イソシアネートの製造方法

【課題】脱ホスゲン化されたイソシアネート流中に必要とされる溶剤の量を減少させる可能性を提供し、この場合このイソシアネート流は、後処理中に分離されなければならず、全体として循環路中で実施される溶剤中のよりいっそう高いホスゲン濃縮により、溶剤不含のイソシアネートを生じる。
【解決手段】適当なアミンをホスゲンと反応させ、それによって得られたガス混合物を凝縮させ、それによって得られた液相をストリッピングし、こうして液体の形で保持された溶剤を、アミンとホスゲンとの反応に戻す。
【効果】選択可能な方法の場合には、循環路中での溶剤の全体量は、同じままであり、塩化水素を精製するための溶剤の量は、適当に選択されたその後の処理がこうして必要とされる場合には、さらに増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2008年2月19日付けで出願されたドイツ連邦共和国特許出願第102008009761.9号の35U.S.C.§119(a)〜(d)の下で優先権主張された特許保護を請求するものである。
【0002】
本発明は、適当なアミンをホスゲンと反応させ、それによって得られたガス混合物を凝縮させ、それによって得られた液相をストリッピングし、こうして液体の形で保持された溶剤を、アミンとホスゲンとの反応に戻すことによって、イソシアネートを製造する方法に関する。その後に、ガス状成分は、吸収法で後精製される。
【背景技術】
【0003】
イソシアネートの製造は、比較的長期間の間、公知技術文献から十分に公知であり、この場合ホスゲンは、アミンまたは2つ以上のアミンの混合物に対して化学量論的過剰量で使用される。有機イソシアネートを第一級アミンとホスゲンとから製造するための方法は、例えばUllmann′s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、A19巻、390頁以降、VCH Verlagsgesellschaft mbH,Weinheim,1991及びG.Oertel(Ed.)Polyurethane Handbook、第2版、Hanser出版、Munich,1993,60頁以降ならびにG.Wegener他著のApplied Catalysis A:General 221(2001)、303−335頁、Elsevier Science B.Vといった文献に記載されている。アミンホスゲン化に使用されるホスゲンの合成は、十分に公知であり、例えばUllmann′s Enzyklopadie der industriellen Chemie、第3版、13巻、494−500頁に記載されている。更に、ホスゲンを製造する方法は、例えば米国特許第4764308号明細書およびWO−A−03/072237に記載されている。工業的規模で、ホスゲンは、一酸化炭素を塩素と、好ましくは触媒としての活性炭上で反応させることによって主に製造される。強い発熱性の気相反応は、少なくとも250℃〜600℃以下の温度で一般に管状反応器中で行なわれる。反応熱は、種々の方法で散逸させることができる。反応熱を散逸させるための1つの方法は、例えば液体の熱交換剤、例えばWO−A−03/072237中に記載された熱交換剤を用いるかまたは二次的冷却循環路を介する蒸気冷却によって行なわれ、一方では、例えば米国特許第4764308号明細書の開示内容と同様に反応熱を用いて蒸気を生じさせる。
【0004】
アミンのホスゲン化において、未反応のホスゲンは、多くの場合に少なくとも部分的にガスの形で、遊離された塩化水素と一緒に得られる。イソシアネートの後処理中に、液体のイソシアネート輸送生成物流中に依然として存在するホスゲンおよび塩化水素成分が分離される。一般に、この生成物流は、依然として溶剤のフラクション、不活性ガス、例えば窒素および一酸化炭素、ホスゲン合成の二次生成物、例えば二酸化炭素、および随伴されていてよいイソシアネートを含有していてよい。イソシアネートの製造方法をできるだけ経済的に操作するために、過剰のホスゲンを最少の損失で回収し、このホスゲンを当該の濃度で、当該の溶剤中で、即ち処理のためにできるだけ最適にホスゲン処理に再び供給し、ならびに化学量論的に得られた塩化水素ガスを分離し、および適当な使用に供することは、本質的なことであり、この場合この特殊な使用は、純度の点で塩化水素に対する異なる要求に対応する。
【0005】
塩化水素の予想される用途は、例えば水溶液(塩酸)の市販であるか、または他の工業法もしくは化学プロセスで塩酸を使用することを含む。ガス状塩化水素の最も一般的と考えられる使用の1つは、エチレンを塩化水素でオキシ塩素化して、二塩化エチレンを得ることである。他の好ましい方法は、塩化水素ための再循環法と、塩化水素が得られる製造方法に塩素および/または水素を返送することとを含む。このような再循環法は、例えばDeacon法による塩化水素の接触酸化、ガス状塩化水素の電気分解および塩化水素の水溶液(塩酸)の電気分解を含む。WO−A−04/14845には、Deacon法による接触酸化のための方法が開示されており、WO−A−97/24320には、塩化水素の気相電気分解のための方法が開示されている。電気化学的な再循環法のレビューは、Dennie Turin Mahにより"12th International Forum Electrolysis in Chemical Industry − Clean and Efficient Processing Electrochemical Technology for Synthesis, Separation, Recycle and Environmental Improvement"(1998年10月11〜15日、フロリダ州クリアウォータービーチのシェラトン・サンド・キー)で公表された文献"Chlorine Regeneration from Anhydrous Hydrogen"中に示されている。
【0006】
塩化水素の水溶液(塩酸)を、カソードとしてガス拡散電極を用いて電気化学的に酸化することは、WO−A−00/73538およびWO−A−02/18675に記載されている。
【0007】
水性塩化水素をダイヤフラム法またはメンブレン法によって電気分解するにあたり、塩酸は、アノード空間中およびカソード空間中の双方の電解質として使用される。該電気分解において、塩素は、アノードで生じ、水素は、カソードで生じる。
【0008】
塩化水素の前記された予想される用途は、純度の点で特殊な要求に対応し、したがって大多数の他の成分をホスゲン/塩化水素ガス流から分離した後の精製費用を決定する。Deacon法による塩化水素の接触酸化は、触媒を用いて実施されるが、この接触酸化には、ホスゲン化法からの塩化水素を、精製床での吸収によって予備精製することや塩化水素中に含まれる残留溶剤を触媒燃焼させることが必要となる(WO−A−04/014845参照)。WO−A−97/24320号に記載されたようないわゆる固体電解質系を用いた塩化水素の気相電気分解において、イオン交換膜または触媒活性材料の汚染は、ユニットの取り替えを避ける上では許容できるものではない。ガス核酸電極をカソードとして用いた塩化水素水溶液の電気化学的酸化において、WO−A−02/18675には、塩酸を活性炭により精製し、場合によっては塩酸を付加的に交換樹脂により精製することが提案されている。オキシ塩素化において塩化水素ガスを使用するためには、溶剤残分のような妨害不純物を分離するために二段階の凝縮が使用されてよい(米国特許第6719957号明細書)。
【0009】
例えば、食物分野で使用するための塩化水素の水溶液(塩酸)は、相応する高度な純度を必要とする。高度な純度は、例えば先行技術から公知であるように、活性炭床での吸着による後精製によって達成させることができる。
【0010】
先行技術によるイソシアネート製造からのホスゲンおよび塩化水素を含有する物質流の処理は、以下に記載されている。
【0011】
一般的な目的は、ホスゲンまたは望ましい濃度のホスゲン溶液をアミンのホスゲン化に再使用しかつ塩化水素を適当な使用に供給するために必要とされる純度でできるだけ経済的に、ホスゲンおよび塩化水素の物質流を、該物質流中に含有されている二次成分、例えば溶剤から単離することである。凝縮、部分凝縮、洗浄、吸収、吸着および蒸留の方法は、前記目的のために常用されており、例えば欧州特許出願公開第1849797号明細書A1中に記載されている。
【0012】
プロセスガスからのホスゲンの部分凝縮は、高められた圧力下、例えば10〜50バールでのエネルギーにより冷却水を用いて有利に達成させることができる。また、溶剤中でのホスゲンの可溶性は、反応の加速化を生じることによって増大されることが報告されている。しかし、前記方法が工業的規模で実施される場合、ホスゲンの逃出を生じる漏れに関連する増大された安全策は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3212510号明細書の記載と同様に考慮されるべきである。
【0013】
また、ホスゲン化反応および高められた圧力下での気相の後処理は、米国特許第3544611号明細書中に記載されている。この処理ガスは、化学量論的過剰量で使用される大部分のホスゲンを凝縮させるために、10〜50バールで水で冷却される。更に、該塩化水素流中のホスゲンの除去には、冷却剤の使用が必要とされる。更に、高められた圧力でのプロセスガスの後処理を伴なうアミンのホスゲン化の経済的な利点は、ホスゲンを凝縮するための冷却エネルギーに関連する節約にあり、この節約は、操作をよりいっそう濃縮された溶液中で実施することを可能にし、同様に1つのエネルギーの節約を構成する。他の選択可能な方法によれば、米国特許第3544611号明細書には、プロセスガス流からの塩化水素を33バールおよび−20℃の冷却剤温度で凝縮するという1つの実施態様が記載されている。それによって、ホスゲンは、予備工程で凝縮され、一方で、水で冷却され、および分離される。2つの成分に必要とされるそれぞれの純度は、二段階の凝縮段階の間の蒸留/ストリッピング塔によって達成される。米国特許第3544611号明細書の記載と比較して、本発明の発明的利点は、ホスゲンおよび塩化水素の分離および精製の処理工程で精製された溶剤流を製造することであり、この溶剤流は、ホスゲンまたはアミン溶液の製造にそのまま使用されてよい。
【0014】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10260084号明細書には、前記の加圧法の結果として漏れの場合には、増加された潜在的な危険性に関連して米国特許第3544611号明細書が引用されている。また、記載した方法において、ホスゲン化のためのホスゲン中に不所望にも高い濃度の塩化水素が存在し、ホスゲンが塩化水素流とともに失われることについても言及されている(第1の変法)。第2の変法において、既述された潜在的な危険性に関する引例以外に、エネルギーに関連して不利である、低い温度および高い圧力での塩化水素の液化に関しても引例が挙げられている。塩化水素は、後使用すべき場合には、一般に、エネルギーを用いてその後に再び蒸発されなければならない。
【0015】
英国特許第827376号明細書においては、アミンのホスゲン化は、約3バールで実施される。反応が完結された場合には、形成された過剰量のホスゲンおよび塩化水素は、高められた温度で頭頂部から分離される。ホスゲンは、気相から凝縮され、塩化水素は、除去され、および搬出される。このような簡単分離の場合には、塩化水素中の大量の残留量のホスゲンを予想することができ、ならびに回収されたホスゲン中での望ましくない高い塩化水素含量を予想することができ、それ故に、アミンのホスゲン化のためのホスゲン溶液中での望ましくない高い塩化水素含量を予想することもできる。
【0016】
クロロベンゼン中でのTDIおよびMDIへのアミンのホスゲン化は、米国特許第3381025号明細書中に記載されている。反応が完結した場合には、溶剤は、ホスゲンおよび塩化水素と一緒に留去され、クロロベンゼンおよびホスゲンは、凝縮され、再びホスゲン化に供給され、一方で、無視することができない残留量のホスゲンと一緒に塩化水素は、吸収装置を介してホスゲン分解部に供給される。この場合も、2つの流れ中でのホスゲン/塩化水素の分離は、不完全であり、したがって塩化水素によるホスゲンの損失が生じ、望ましくない大量の塩化水素がホスゲン中に含有されており、最終的には、ホスゲン溶液中に含有されており、こうして、アミンのホスゲン化において不利なアミン塩酸塩の形成が促進される。
【0017】
ソ連特許第1811161号明細書中に開示されたアミンのホスゲン化は、液体の溶剤/イソシアネート生成物流から分離されたホスゲン含有および塩化水素含有のプロセスガス流は、幾つかの凝縮工程および吸収工程の後で依然として塩化水素ガス中にホスゲン4%を含有し、後精製および後使用のために取り出されることを教示する。このガス流は、ホスゲン吸収装置からの廃ガスと結合され、この場合には、ホスゲンの製造からのガス流および後凝縮されることができないホスゲン化からの流れが処理される。吸収装置からの前記廃ガス流は、塩素4%の含量を有することが記載されている。前記部分流中で挙げられた塩素およびホスゲンの不純物は、ホスゲンの製造方法が不利であること、および不完全なホスゲン/塩化水素の分離によりホスゲン化法が改善されうることを示す。本発明に類似しているような循環される溶剤(クロロベンゼン)を最少化する処理工程は、記載されていない。
【0018】
気相中でのアミンのホスゲン化に関連する文献である欧州特許出願公開第0570799号明細書には、自体公知の方法で形成されたイソシアネートの凝縮後に過剰のホスゲンを分離することについて記載されている。このことは、コールドトラップか、−10℃〜8℃の温度に維持された不活性溶剤(例えばクロロベンゼンまたはジクロロベンゼン)中での吸収か、または活性炭上での吸着および加水分解によって行なうことができる。この後者の加水分解による変法は、大規模に実施した場合には、経済的な価値を有しないように思われる。ホスゲン回収段階を貫流する塩化水素ガスは、自体公知の方法で再循環させて、ホスゲン合成に必要な塩素を回収することができる。
【0019】
米国特許第3226410号明細書には、液相中での連続的な二段階でのアミンのホスゲン化が記載されている。ホスゲン溶液は、化学量論的過剰量でアミン溶液と90℃までの温度で管状反応器中で混合される。第二の段階は、ボイラー中で110〜135℃で行なわれる。ホスゲン、塩化水素および溶剤のフラクションとからなる気相は、第2の段階の塔頂部で除去され、2つの段階で凝縮され、ホスゲン溶液の容器に供給される。凝縮不可能なフラクションが吸収塔中に通過されるが、そこでは、ガス流中に依然として含まれるホスゲンが、ホスゲン化の液相から留去される溶剤によって吸収され、そしてホスゲン溶液容器に供給される。大部分の塩化水素ガスのための吸収されなかった吸収塔からのフラクションは、水で操作されるHCl吸収塔に供給され、この吸収塔中で塩酸が製造される。本発明とは異なり、米国特許第3226410号明細書には、ホスゲン溶剤の循環路中でのアミンのホスゲン化において、ホスゲン溶液の全体量に対して溶剤の量が制御され、即ち最適化されるかまたは最少化されるような処理工程は記載されていない。
【0020】
塩化水素とホスゲンとの化学的分離は、物質流の溶剤、ホスゲンおよび塩化水素の処理および後処理に関連して大規模のイソシアネート製造にとってはあまり重要ではなく、それというのも、例えば使用される大量の塩基により、塩化水素の損失および大量の二次的生成物が形成されるからである。例えば、欧州特許出願公開第1020435号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第1233854号明細書では、第3アミンが塩化水素受容体として使用され、該アミンは、固体として塩酸塩の形で得られる。特開平09−208589号公報においては、この目的のために、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩または酸化物が使用されている。
【0021】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10260084号明細書の目的は、常法でイソシアネートの製造においてアミンとホスゲンとの反応によって形成されるような物質混合物から最大の純度の塩化水素および純粋なホスゲンを得ることである。この刊行物には、原理的に4つの段階を有する方法が記載されており、この方法の基本的な段階には、2個の別々の塔ならびに付加的なユニットが必要とされる。イソシアネート製造によりプロセスガスは、主にホスゲン、塩化水素、溶剤フラクションならびに低沸点物および不活性物質から構成されており、この場合には、例として一酸化炭素および二酸化炭素が挙げられる。第1の処理工程は、プロセスガスの部分凝縮であり、それは1つまたはそれ以上の段階で行なうことができ、この場合には、設定圧力に応じて、冷却水による40℃ないしブライン冷却による−40℃の範囲で作業することを可能にする。次に、こうして得られた部分凝縮された混合物は、ストリッピング区間と精留区間との間で、後続の蒸留塔に案内される。クロロベンゼンを溶剤として用いる指示された例において、この塔は、ストリッピング区間に22個のトレイおよび精留区間に11個のトレイを有する泡鐘トレイ塔の形で存在する。この塔は、ホスゲンから塩化水素を分離する目的に使用され、この目的のために循環蒸発装置(ロバート蒸発缶)と管状熱交換器を塔頂凝縮器として備えている。24.5℃の供給温度、38℃の底部温度、−9℃の塔頂部での温度および2.5バールの塔頂部での圧力で、塔の塔頂部での部分凝縮生成物の還流温度は、−20℃である。この条件下で底部で除去される生成物は、0.01質量%の塩化水素含量を有することが指示され、ホスゲンは、89質量%と記載され、およびクロロベンゼンは、10質量%と記載される。この流れは、イソシアネート合成の反応部に供給される。
【0022】
蒸留塔中の上記の蒸発装置に対して選択可能な方法の場合には、塩化水素の除去は、不活性ガス、例えば窒素、プロセス溶剤蒸気、ホスゲンまたは別のガス状物質、または処理すべきプロセス廃ガス流から蒸発される物質でストリッピングすることによって実施されてもよい。
【0023】
塩化水素74質量%とホスゲン26質量%とからなる、蒸留塔の塔頂凝縮器中の凝縮されていないフラクションは、金網リングの3区間を備えた吸収塔の下方領域に−20℃で通過される。クロロベンゼンは、−25℃で洗浄器の頭頂部から導入され、クロロベンゼン中の塩化水素の溶液の熱は、−30℃で操作される中間冷却器によって散逸される。洗浄器の頭頂部には、得られた蒸気が存在し、この蒸気は、デミスターの下流で−30℃で操作される頭頂部の凝縮器に供給される。それによって保持された液滴は、少量の凝縮された蒸気と一緒に吸収装置または洗浄器の底部に供給される。塔の頭頂部は、2.2バールおよび−8℃で操作され、塔の底部は、6℃で操作される。頭頂部から凝縮器の下流に除去された生成物は、99.5質量%の塩化水素含量、0.1質量%のホスゲン含量および同様に0.1質量%のクロロベンゼン含量を有する。底部から排出される生成物は、ホスゲン19質量%、クロロベンゼン78質量%および塩化水素3質量%を含有する。
【0024】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10260084号明細書の実施例では、塔頂部から排出されたガス状生成物は、GC分析またはIR分光分析法によってホスゲンまたはクロロベンゼン残分を検出しうることなく活性炭フィルターで後精製される。
【0025】
本発明によれば、ホスゲンおよび塩化水素の上記含量を有する、吸収装置の底部から排出される生成物は、反応塔に供給されることができるか、ホスゲン分離のための塔に供給することができるか、または反応混合物を後処理するために還流として供給することができる。後者の場合には、還流を生じさせるための蒸気凝縮器を使用しない可能性について言及されている。
【0026】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10260084号明細書A1には、アミンのホスゲン化で得られたような物質混合物から出発して、再使用または後処理のための塩化水素およびホスゲンまたはホスゲン溶液の分離および回収の特許保護が請求されている。本発明で特許保護が請求された方法または設定圧力の顕著な増加なしに比較可能な技術によって達成される、ホスゲン溶液中のホスゲン濃度を最適化することまたはこのホスゲン濃度を増加させることは、記載されていない。
【0027】
先行技術から出発して、1つの技術目的は、イソシアネートを製造するための方法を提供したが、この方法は、当該方法によって得られた、塩化水素、ホスゲンおよび低沸点物、および不活性物質を含有する流れを精製し、その際、溶剤、ホスゲンおよび塩化水素を再び簡単に経済的に高い純度で得ることができることによって特徴付けられる。同時に、この技術的目的は、簡単で経済的な方法で、吸収ユニットおよび濃縮ユニット(欧州特許出願公開第1849767号明細書A1、以下、略して吸収装置と呼称されている)の底部でホスゲン溶液中のホスゲンの濃度を増加させることができたか、或いは吸収装置の塔頂部で得られた塩化水素の塩化水素純度をさらに増加させることができ;一方で、吸収装置の底部でのホスゲン溶液中のホスゲン濃度は、供給された洗浄液の量の増加によって同じままである。
【0028】
WO 2006/029788 A1には、イオン性溶剤を用いて塩化水素とホスゲンを個々の物質に必要とされる純度で分離する方法が記載されている。エネルギー分野における可能な節約に関連して、この方法は、例えばアミンのホスゲン化方法に1つを上廻る溶剤が必要とされるという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】米国特許第4764308号明細書
【特許文献2】WO−A−03/072237
【特許文献3】WO−A−04/14845
【特許文献4】WO−A−97/24320
【特許文献5】WO−A−00/73538
【特許文献6】WO−A−02/18675
【特許文献7】米国特許第6719957号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1849797号明細書A1
【特許文献9】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3212510号明細書
【特許文献10】米国特許第3544611号明細書
【特許文献11】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10260084号明細書
【特許文献12】英国特許第827376号明細書
【特許文献13】米国特許第3381025号明細書
【特許文献14】ソ連特許第1811161号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第0570799号明細書
【特許文献16】米国特許第3226410号明細書
【特許文献17】欧州特許出願公開第1020435号明細書
【特許文献18】ドイツ連邦共和国特許出願公開第1233854号明細書
【特許文献19】特開平09−208589号公報
【特許文献20】欧州特許出願公開第1849767号明細書A1
【特許文献21】WO 2006/029788 A1
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Ullmann′s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、A19巻、390頁以降、VCH Verlagsgesellschaft mbH,Weinheim,1991
【非特許文献2】G.Oertel(Ed.)Polyurethane Handbook、第2版、Hanser出版、Munich,1993,60頁以降
【非特許文献3】G.Wegener他著のApplied Catalysis A:General 221(2001)、303−335頁、Elsevier Science B.V
【非特許文献4】Ullmann′s Enzyklopadie der industriellen Chemie、第3版、13巻、494−500頁
【非特許文献5】Dennie Turin Mahにより"12th International Forum Electrolysis in Chemical Industry − Clean and Efficient Processing Electrochemical Technology for Synthesis, Separation, Recycle and Environmental Improvement"(1998年10月11〜15日、フロリダ州クリアウォータービーチのシェラトン・サンド・キー)で公表された文献"Chlorine Regeneration from Anhydrous Hydrogen"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
先行技術と比較して、本発明による方法は、脱ホスゲン化されたイソシアネート流中に必要とされる溶剤の量を減少させる可能性を提供し、この場合このイソシアネート流は、後処理中に分離されなければならず、全体として循環路中で実施される溶剤中のよりいっそう高いホスゲン濃縮により、溶剤不含のイソシアネートを生じる。この方法は、エネルギーに関連して顕著な利点を提供する。選択可能な方法の場合には、循環路中での溶剤の全体量は、同じままであり、塩化水素を精製するための溶剤の量は、適当に選択されたその後の処理がこうして必要とされる場合には、さらに増加させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0032】
ところで、これは、本発明による方法によって達成させることができることが見い出された。
【0033】
本発明による方法は、エネルギーの導入によって塩化水素およびホスゲンをガス状の形で駆出させることができる、塔のストリッピング区間(回収塔とも呼称される)中での精製を有するという事実によって区別される。この塔の下部(ストリッピング部とも呼称される)で、最も大量と思われる程度に精製された溶剤は、回収塔の底部から除去され、さらにホスゲンおよびアミンの双方の溶剤として再びアミンのホスゲン化プロセスに供給されることができる。この回収塔の上流には、有利に1個またはそれ以上の凝縮ユニットが配置されており、この凝縮ユニット中で、塩化水素、ホスゲン、溶剤ならびに低沸点物および不活性物質を含有する、本発明による方法の工程a)で得られたガス状の流れは、部分的に凝縮される。工程b)により、この部分的な凝集は、有利に1つまたはそれ以上の工程で実施され、この場合前記工程から得られた、実質的に溶剤、ホスゲンおよび塩化水素から構成されている液相は、回収塔の塔頂部に案内され、実質的に塩化水素、ホスゲン、溶剤ならびに低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れは、吸収装置中に通過される(例えば、欧州特許出願公開第1849767号明細書A1中の記載と同様、この場合この刊行物は、本明細書中に参考のために引用されている)。工程c)により回収塔中に導入された液相は、前記塔の底部で除去されかつホスゲン残分を含有しない溶剤相と、前記塔の塔頂部で除去されかつ実質的にホスゲン、塩化水素、溶剤(ガス状の流れの質量に対して30質量%以下の濃度で)、低沸点物および不活性物質から構成されているガス状の流れ(気相)とに分離される。エネルギーの導入のために、回収塔の底部は、有利に蒸気操作される循環蒸発器を備えている。前記物質の必要とされる分離を達成させるために、前記塔は、有利にパッキングまたは充填体を備えている。一般に、蒸留技術または吸収技術に使用されているように、金属材料、セラミック材料またはプラスチック材料から形成された、適当な、例えばパッキング(織物または金属)または充填剤(リングまたはサドル)が存在する。
【0034】
更に、回収塔の塔頂部から工程c)により得られた低溶剤型気相(low-solvent gas phase)は、それ自体直接に吸収装置中に通過させることができるかまたは工程b)で得られたガス流と一緒に直接に吸収装置中に通過させることができ(例えば、欧州特許出願公開第1849767号明細書A1の記載と同様、この場合この刊行物は、本明細書中に参考のために引用されている)、好ましくは、最初に1つまたはそれ以上の工程で部分凝縮に通過させることができる。適当な熱交換器は、先行技術による任意の適当な凝縮器である。必要に応じて、新たに製造されたガス状ホスゲンは、前記流れと一緒に吸収装置中で凝縮させかつ溶解させることができるかまたはホスゲン製造中に別のホスゲン凝縮で凝縮させることができ、吸収装置の底部中に供給させることができるかまたは別々に反応区間に通過させることができる(工程f)。ホスゲン製造から得られる任意のホスゲン含有溶剤流、例えば洗浄液は、回収塔の塔頂部から導入させることができるかまたは吸収装置の底部から導入させることができる。
【0035】
記載された回収塔を使用することによって、工程e)でのホスゲン吸収前であっても、塩化水素、ホスゲン、溶剤および低沸点物および不活性物質を含有する工程a)で得られた流れ中に存在する大部分の溶剤は、エネルギーに関連して有利である方法で、工程a)でのホスゲン化への使用に対してアミン溶液およびホスゲン溶液の製造に使用するのに十分である高純度で底部生成物として分離除去されることができる。しかし、場合によっては下流の吸収部を備えている部分凝縮の後に、よりいっそう多くのホスゲンが気相中に残留し、このホスゲンは、吸収装置の塔頂部で相応する増加された溶剤流によって吸収されなければならない。しかし、通常、気相との反応から得られる溶剤は、本明細書中で記載されたように回収塔によって予め分離されなかった場合には、さらに有利に吸収装置の塔頂部の下で単にガスの形で並流で吸収塔中に導入される。それ故に、その後に吸収塔の底部で引き抜かれたホスゲン溶液中に含有されている前記溶剤の一部分は、吸収装置の塔頂部で向流で導入された溶剤よりも吸収剤として活性の点であまり有効ではない。この効果により、ホスゲン溶液中でのよりいっそう高いホスゲン濃度を、吸収装置の塔頂部での塩化水素流中の同じホスゲン濃度と共に達成することが可能である。その結果、ホスゲン吸収の領域内でのプロセス溶剤のための循環流およびイソシアネートからの溶剤の分離は、最少化され、それによって全体的に見てプロセスのエネルギー消費量は、最少化される。この事実は、殊に、回収塔のために、ホスゲン化の蒸気系中での低い圧力であっても極めて有効であることに注目すべきである。
【0036】
この経済的な利点に対する選択可能な方法として、本発明により、欧州特許出願公開第1849767号明細書A1の記載と比較して吸収装置の塔頂部を介して放出された塩化水素のために適当に増加された量の洗浄液を使用することができ、このガスの十分に高い純度を達成することができ、この場合このガスは、生じたガス流の使用に応じて利点を有することができる(例えば、ディーコン法での使用または食品用のHCl)。この場合、回収塔によって減少された溶剤の量は、例えば吸収装置の塔頂部での導入のために使用されることができ、この場合元来のホスゲン溶液の濃度、またはアミンのホスゲン化の循環路内での元来の溶剤量は、保持されている。
【0037】
従って、本発明は、イソシアネートの製造法に関する。この方法は、次の工程を有する:
a)少なくとも1つのアミンをホスゲンと溶剤の存在下に反応させ、こうして相応するイソシアネートおよび場合によっては溶剤を含有する液状の流れ、ならびに塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを形成させ、
b)塩化水素、ホスゲン、溶剤、ならびに低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを部分凝縮によって分離し、こうして液相とガス相を形成させ、実質的に溶剤、ホスゲンおよび塩化水素から構成されている液相を回収塔の塔頂部に案内し、実質的に塩化水素、ホスゲン、ガス状の流れの質量に対して30質量%以下、有利に10質量%以下の濃度の溶剤、ならびに低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを回収塔の塔頂部に案内し;
c)実質的に溶剤、ホスゲンおよび塩化水素から構成されている、工程b)で回収塔中に導入された液相を、溶剤相とガス相とに分離し、この場合この溶剤相は、液体の形で回収塔の底部から除去され、および底部の液体流の質量に対して0.1質量%未満、有利に0.01質量%未満、特に有利に0.001質量%未満のホスゲン濃度を有し、ガス相は、前記塔の塔頂部から除去され、およびホスゲン、塩化水素、低沸点物および不活性物質、ならびに気相の質量に対して30質量%未満、有利に10質量%未満、特に有利に5質量%未満の濃度の溶剤を含有し;
d)工程c)で形成された溶剤相を工程a)でのホスゲン化反応に返送し;
e)工程c)で形成されたガス相を吸収装置中に導入し、この吸収装置中でガス相中に含有されたホスゲンを、工程a)でのホスゲン化反応に使用された溶剤と同じ溶剤中に吸収し、それによってホスゲン溶液の質量に対して20〜80質量%、有利に50〜80質量%のホスゲン濃度を有するホスゲン溶液を形成させ;
f)場合によっては工程e)で得られたホスゲン溶液を付加的なホスゲンと混合し、濃縮されたホスゲン溶液を形成させ;
および
g)工程e)で形成されたホスゲン溶液または工程f)で形成された濃縮されたホスゲン溶液を工程a)でのホスゲン化反応に返送する。
【0038】
本発明による方法は、好ましくは付加的に次の工程をさらに有する:
h)工程b)、e)およびe)で形成されたガス状の蒸気を合わせ、塩化水素流の質量に対して0.5質量%以下、有利に0.2質量%以下、特に有利に0.1質量%以下の濃度のホスゲンを含有する塩化水素流を形成させる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、一段階または多段階の部分凝縮を組み合わせた、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを分離し、引続き生じる凝縮生成物をストリッピングし、さらに吸収塔中で蒸気流を分離することを示す略図である。
【図2】図2は、一段階または多段階の部分凝縮を組み合わせた、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを分離し、引続き生じる凝縮生成物をストリッピングし、さらに回収塔の上流の部分凝縮よりもそれ相応に低い温度で一段階または多段階で部分凝縮し、さらに吸収塔中で蒸気流を分離することを示す略図である。
【図3】図3は、一段階または多段階の部分凝縮を組み合わせた、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを分離し、引続き生じる凝縮生成物をストリッピングし、さらに回収塔の上流の部分凝縮よりもそれ相応に低い温度で一段階または多段階で部分凝縮し、さらに吸収塔中で蒸気流を分離し、ならびにホスゲン溶液をストリッピングすることを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
工程a)でのアミンとホスゲンとの反応は、有利に溶剤の存在下に液相中で実施される。本明細書中で使用される溶剤という用語は、有機溶剤、例えばo−ジクロロベンゼンを意味するが、不活性ガス、例えば窒素または低温で沸騰する成分、例えばクロロホルムを意味するものではない。不活性ガスは、以下、不活性物質と呼称され、そして低温で沸騰する成分(例えばクロロホルム)は、低沸点物と呼称される。
【0041】
工程a)でのアミンとホスゲンとの反応が溶剤の存在下で液相中で実施される場合には、ホスゲン化工程a)で溶剤として使用されるのと同じ溶剤が工程e)でのホスゲンのための吸収剤として使用される。更に、工程f)で吸収塔中で得られかつ溶剤が欠乏されたホスゲン流は、有利に溶剤に加えて、ホスゲン溶液の質量に対してホスゲン50〜80質量%を含有する。この液体のホスゲン流(即ち、ホスゲン溶液)は、実質的に溶剤およびホスゲンを含有し、さらに有利には、他のホスゲンの先の脱着なしに工程a)(工程g))でのホスゲン化反応に返送されることができる。工程a)でのホスゲン化反応におけるホスゲン消費量を補償するために、ホスゲン溶液は、好ましくは先に付加的な有利に新しいホスゲンと混合される。しかし、新しいホスゲンは、例えばアミン溶液に添加されてもよい。
【0042】
工程a)でのアミンとホスゲンとの反応が液相中で実施される場合には、相応するイソシアネートおよび場合によっては溶剤を含有する液体流も得られる。この流れは、好ましくは特にイソシアネートがTDI(トルエンジイソシアネート)またはMDI(ジフェニルメタン系列のジイソシアネートおよびポリイソシアネート)である場合に、液体流の質量に対して溶剤を75質量%未満、より好ましくは20〜70質量%、最も好ましくは40〜60質量%含有する。これは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19817691号明細書中に記載されているように、先行技術に公知で記載された常用の液体ホスゲン化法と比較して、全液体流の質量に対して溶剤約10質量%の液体流中の溶剤含量の減少に相当する。
【0043】
最終的に好ましくは、工程h)で回収塔およびホスゲン吸収装置からのガス流の組合せにより、吸収装置の塔頂部には、塩化水素流の質量に対して0.5質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下の濃度でホスゲンを含有する塩化水素の精製された流れ(工程h))が得られる。この精製された塩化水素流は、後使用に供給されることができる。
【0044】
工程b)および次の工程での塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れの分離は、好ましくは最初に塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有する流れからホスゲンおよび溶剤を部分的に凝縮させることによって実施される(工程b))。この液体流は、供給原料として回収塔の塔頂部中に導入され(工程c))、殆んどホスゲンを含有せずかつ再びプロセス中での使用のための溶剤として塔の底部から排出される液体の溶剤流と、塔の塔頂部から取り出される、ガス状の低溶剤型流とに分離される。好ましくは、塔の塔頂部から工程c)で得られたガス状の流れは、最初に部分的凝縮に再びフィードバックされる。
【0045】
更に、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有する、部分凝縮から生じるガス状の全体の流れは、ホスゲン吸収装置中で分離され、このホスゲン吸収装置は、少なくとも1つの等温吸収工程および少なくとも1つの断熱吸収工程を含む。他の選択可能な方法によれば、工程c)で得られたガス状の流れは、工程e)を実施するために直接にホスゲン吸収装置中に通過させることもできる。
【0046】
1つの好ましい実施態様において、回収塔のための供給原料を供給する、工程b)で部分凝縮から生じるガス流は、再び工程b)で実施される先行する部分凝縮の温度よりも有利に低い温度で部分凝縮に通過され、その後に生じたガス流は、さらにホスゲン吸収装置中で分離される。上記したように、好ましくは、ホスゲン吸収装置は、少なくとも1つの等温吸収工程および少なくとも1つの断熱吸収工程を含み、生じる液体流は、吸収装置の底部に導入される。
【0047】
また、プロセスからのホスゲン含有溶剤流(例えば、ホスゲン製造からの洗浄液、真空系からの環状液体、溶剤蒸留からの凝縮生成物等)が付加的に回収塔の塔頂部に導入され、場合によっては等温吸収工程(向流)または吸収塔の底部に導入されることは、好ましい。
【0048】
工程a)で使用される溶剤が吸収剤として使用される、工程e)での等温吸収は、有利に向流で実施される。工程a)で使用される溶剤が吸収剤として使用される、工程e)での断熱吸収は、同様に特に有利には向流で実施される。
【0049】
向流での断熱吸収に続いて、残留する溶剤は、有利に塩化水素流から凝縮される。次に、凝縮された溶剤は、有利に工程a)での反応にフィードバックされ、場合によってはその前に、工程c)で得られたホスゲン流と結合される。
【0050】
本明細書中では、吸収とは、液体中のガスおよび蒸気の摂取および溶解を意味する。この吸収は、熱分離法であって、補助物質、いわゆる洗浄剤溶液または吸収剤が使用される方法である。被吸収物質は、脱着またはストリッピングによって再び再生することができる。溶剤(いわゆる吸収剤)中へのガスの摂取は、一般に、低温および高圧によって促進され、反対に脱着の場合には、より高温およびより低圧を使用することができる。溶剤(吸収剤)中でのガスの吸収は、発熱的に操作され、即ちいわゆる熱は、放出されるが、僅かな熱伝達のために、僅かにのみ気相に伝達され、主に液相に伝達される。ヘンリーの法則により、溶剤(吸収剤)の温度上昇の結果は、溶解されるべき物質のための溶剤(吸収剤)の吸収能力が減少することである。これは、工業的方法でより高い溶剤要件を意味し、他方、吸収剤の量は、一定である。吸収の熱が、散逸されないかまたは吸収が行われた後にのみ散逸される場合には、断熱吸収の用語が使用される。吸収の熱が、吸収の間に一様に取り除かれ、かつ溶剤の温度がそれによって実質的に一定に維持される場合には、等温吸収の用語が使用され、これは、実際には、既に記載したように、溶剤(吸収剤)をより良く利用するために好ましい。
【0051】
断熱吸収は、工程a)で使用される溶剤に相当する新たな溶剤(吸収剤としての)中で有利に実施される。本発明による方法では、塩化水素、ホスゲンおよび場合により溶剤、低沸点物ならびに不活性物質を含有する流れ中に含まれる大部分のホスゲンを、場合により部分凝縮後に、等温向流吸収によってできるだけ少量の溶剤(吸収剤)中に吸収させ、次に残留量のホスゲンを、断熱向流吸収によって、新たな溶剤(吸収剤)を用いて、断熱温度を僅かしか増大させずに除去することが特に好ましいことが見い出された。等温吸収から得られた蒸気流(これは、塩化水素、ホスゲンおよび場合によっては、溶剤、低沸点物および不活性物質を含有する)中のホスゲンの最適な出口濃度は、溶剤(吸収剤)の吸収能力に関連して断熱吸収中に許容されうる断熱吸収および断熱時の温度上昇における溶剤(吸収剤)の量によって調整される。断熱温度は、0.1℃から20℃へ、好ましくは2℃から5℃へ上昇し、本明細書中では有利であることが見出された。
【0052】
等温吸収への入口での溶剤とホスゲンとの質量比は、有利に0.1:1〜10:1、より有利には1:1〜3:1が使用される。等温吸収に使用される溶剤の全部または一部分は、断熱吸収部の塔頂部から導入されてよい。
【0053】
工程e)でのホスゲン吸収塔の設計および操作条件は、例えば米国特許第20070249859号明細書に相当すると思われる欧州特許出願公開第1849767号明細書A1中の記載と同様に選択されてよく、この場合この刊行物は、本明細書中に参考のために引用されている換言すれば、適当な操作条件は、有利に−40℃〜0℃、より有利に−30℃〜−20℃の範囲内にある、ホスゲン吸収塔の塔頂部での温度を含む。ホスゲン吸収塔の塔頂部での絶対圧力は、有利に1〜35バール、より有利に1.2〜3バールである。
【0054】
工程f)において、工程e)で得られたホスゲン溶液は、場合によっては付加的なホスゲンと混合されてよく、濃縮されたホスゲン溶液を生じる。この工程f)が実施されることは、好ましい。
【0055】
工程g)の起因である工程a)でのホスゲン化反応への工程e)で得られたホスゲン溶液および/または工程f)で得られた濃縮されたホスゲン溶液の返送は、工程e)で得られたホスゲン溶液の全部および/または工程f)で得られた濃縮されたホスゲン溶液の全部が返送されるような方法であってよい。しかし、工程e)で得られたホスゲン溶液の一部分および/または工程f)で得られた濃縮されたホスゲン溶液の一部分だけを返送することも可能である。工程e)で得られたホスゲン溶液および/または工程f)で得られた濃縮されたホスゲン溶液の好ましくは10%超、よりいっそう好ましくは50%超、最も好ましくは60〜100%、殊に最も好ましくは65〜99.95%は、工程a)でのホスゲン化反応に返送される。
【0056】
工程a)でのアミンとホスゲンとの反応、即ちいわゆるホスゲン化反応によるイソシアネートの製造は、常法により液相中で大規模に実施され、この場合には、ホスゲンおよびアミンは、溶剤中に溶解させることができる。好ましい溶剤は、塩素化された芳香族炭化水素、例えばクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、相応するクロロトルエンまたはクロロキシレン、クロロエチルベンゼン、モノクロロジフェニル、α−ナフチルクロリドまたはβ−ナフチルクロリド、安息香酸エチルエステル、フタル酸ジアルキルエステル、ジイソジエチルフタレート、トルエンおよびキシレンならびに塩化メチレン、ペルクロロエチレン、トリクロロフルオロメタンまたはブチルアセテートである。例として挙げた溶剤の混合物が同様に使用されてよい。適当な溶剤の他の例は、刊行物から公知である。刊行物(例えば、米国特許第5925783号明細書に相当すると思われるWO−A−96/16028、この刊行物の開示は、参考のために本明細書中に引用されている)中に公知でありかつ記載されているように、生じるイソシアネートそれ自体は、ホスゲンのための溶剤として使用されてもよい。
【0057】
原理的に、ホスゲン化、特に適当な芳香族ジアミンおよび脂肪族ジアミンのホスゲン化は、気相中で、即ちアミンの沸点を上廻る温度で実施されてもよい。気相でのホスゲン化は、例えば米国特許第5449818号明細書に相当すると思われる欧州特許出願公開第570799号明細書中に記載されており、この刊行物の開示は、参考のために本明細書中に引用されている。他の点で常用されている液相でのホスゲン化と比較して前記方法の利点は、高価な溶剤およびホスゲンの循環の最少化により生じるエネルギーの節約にある。溶剤は、一般に気相でのホスゲン化に使用されてもよいが、しかし、例えば米国特許第6800781号明細書に相当すると思われるドイツ連邦共和国特許出願公開第10245704号明細書中に記載されているように液相でのホスゲン化よりも少量で使用され、この場合この刊行物の開示は、参考のために本明細書中に引用されている。従って、気相でのホスゲン化の場合には、対象は、原理的にホスゲンと塩化水素と溶剤との分離でもある。
【0058】
本発明による方法にとって適当な有機アミンとしては、原理的に1個またはそれ以上のイソシアネート基を有する1つまたはそれ以上のイソシアネートを形成させるために、ホスゲンと反応させることができる1個またはそれ以上の第1アミノ基を有する任意の第1アミンが存在する。適当なアミンは、少なくとも1つ、好ましくは2つ、または場合により3つもしくはそれより多くの第1アミノ基を有する。有機第1アミンとして適当なのは、例えば脂肪族、脂環式、脂肪族芳香族、芳香族のアミン、ジアミンおよび/またはポリアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ステアリルアミン、アニリン、ハロゲン置換されたフェニルアミン、例えば4−クロロフェニルアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノシクロヘキサン、リジンエチルエステル、リジンアミノエチルエステル、1,6,11−トリアミノウンデカンもしくは1,5−ナフチレンジアミンまたは1,8−ナフチレンジアミン、1,4−ジアミノベンゼン、p−キシリレンジアミン、過水素化された2,4−ジアミノトルエンおよび/または2,6−ジアミノトルエン、2,2′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンおよび/または4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンまたはこれらの混合物、4,4′−ジフェニルメタンジアミン、2,4′−ジフェニルメタンジアミンもしくは2,2′−ジフェニルメタンジアミンまたはこれらの混合物ならびに前記したアミンおよびポリアミンの高分子異性体誘導体、オリゴマー誘導体またはポリマー誘導体である。他の好ましいアミンは、刊行物から公知である。本発明にとって好ましいアミンは、ジフェニルメタン系列のジアミンおよびポリアミン(MDA、モノマー型、オリゴマー型およびポリマー型のアミン)、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン(TDA、トルエンジアミン)、例えば2,4−ジアミノトルエンと2,6−ジアミノトルエン(TDA、トルイレンジアミン)との質量比80:20の工業用混合物、イソホロンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンである。ホスゲン化反応において、相応するイソシアネートが得られる:例えば、ジフェニルメタン系列のジイソシアネートおよびポリイソシアネート(即ち、MDI:モノマー、オリゴマーおよびポリマーのイソシアネート)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)。
【0059】
前記アミンは、1段階、2段階または場合により多段階の反応でホスゲンと反応させることができる。連続的方法および非連続的方法の双方が可能である。
【0060】
気相中での1段階のホスゲン化を選択した場合に、この反応は、アミンの沸点より高温で、有利には0.5〜5秒間の平均接触時間内で200℃〜600℃の温度で実施される。
【0061】
液相でのホスゲン化の場合には、20℃〜240℃の温度および1〜約50バールの絶対圧力が通常使用される。液相中でのホスゲン化は、1段階または複数の段階で実施されることができ、この場合、ホスゲンは、化学量論的過剰量で使用することが可能である。アミン溶液とホスゲン溶液は、好ましくは静的混合要素により合わされ、次に2つまたはそれ以上の反応塔に、例えば底部から塔頂部へ貫通され、その際に混合物は、完全に反応し、望ましいイソシアネートを生じる。適当な混合要素を備えた反応塔以外に、攪拌装置を有する反応容器を使用することも可能である。静的混合要素以外に、特殊な動的混合要素を使用することもできる。適当な静的混合要素および動的混合要素は、刊行物から公知である(米国特許第5931579号明細書に相当すると思われる欧州特許出願公開第0830894号明細書A1、この刊行物の開示は、参考のために本明細書中に引用されている。米国特許第4915509号明細書に相当すると思われる欧州特許出願公開第0291820号明細書、この刊行物の開示は、参考のために本明細書中に引用されている)。
【0062】
工業的規模での連続的な液相でのイソシアネートの製造は、一般に、2段階で実施される。第1の段階で、一般に220℃以下、好ましくは160℃以下の温度で、塩化カルバモイルは、アミンおよびホスゲンから形成され、アミン塩酸塩は、アミンおよび開裂された塩化水素から形成される。この第1の段階は、高度に発熱性であり、第2の段階で、塩化カルバモイルは、イソシアネートと塩化水素に開裂され、アミン塩酸塩は、反応され、塩化カルバモイルを生じる。第2の段階は、一般に、少なくとも90℃、有利には100℃〜240℃の温度で実施される。
【0063】
アミンのホスゲン化の処理工程後、ホスゲン化で形成されたイソシアネートは、一般に分離される。これは、例えば第1にホスゲン化の反応混合物を液体の生成物流とガス状の生成物流とに分離することによって行なわれる。それ故に、適当な方法、例えば凝縮または洗浄は、一般に公知であり、例えば米国特許第3544611号明細書中に記載されており、この刊行物の開示は、参考のために本明細書中に引用されており、および英国特許第827376号明細書中に記載されており、この刊行物の開示は、参考のために本明細書中に引用されている。この液体の生成物流は、実質的にイソシアネートまたはイソシアネート混合物と、使用されていてよい溶剤と、少ない割合の未反応のホスゲンとを含有する。ガス状の生成物流は、実質的に塩化水素ガスと過剰のホスゲンと熱力学的平衡に相当する量の溶剤とホスゲン製造による二次生成物、例えば二酸化炭素とから構成されている。更に、残留量のホスゲンの分離は、場合によっては液体の生成物流のさらなる後処理によって実施される。
【0064】
それ故に、殊に経済的視点から、ホスゲン化への後使用のためにできるだけ完全に過剰のホスゲンを回収し、経済的に有利な最小へ溶剤循環量を減少させ、および後使用のためにできるだけ純粋である塩化水素を単離することが望ましい。
【0065】
蒸留による液体の生成物流からの溶剤の分離、この溶剤の精製およびアミンのホスゲン化の段階への返送は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102006022448号明細書(および該刊行物中に含まれている引用例)中に記載されているような先行技術から公知の方法の1つによって実施されることができ、このドイツ連邦共和国特許出願公開明細書は、米国特許第20070265456号明細書に相当すると思われ、この刊行物の開示は、参考のために本明細書中に引用されている。
【0066】
通常は、工程a)で脂肪族または芳香族のアミンとホスゲンとを液相ホスゲン化で反応させて、相応のイソシアネートを生じさせることで得られる、塩化水素、ホスゲン、溶剤、ならびに低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れは、好ましくは、この流れの質量に対してホスゲン20〜75質量%、溶剤5〜50質量%および塩化水素5〜50質量%を含有する。ホスゲン化のために異なる方法を使用することが可能であるので、塩化水素、ホスゲン、溶剤、ならびに低沸点物および不活性物質を含有する流れの組成における変動の幅が生じ、この場合この方法は、異なる圧力、温度およびプロセス溶剤によって特徴付けられるかまたはホスゲン化は、場合によっては気相中で実施されてもよいし、溶剤なしに実施されてもよい。
【0067】
実質的に溶剤と塩化水素とホスゲンとから構成されている工程b)で得られた凝縮生成物のストリッピングは、本発明による方法で工程c)で回収塔中で実施される。これは、通常、ストリッピング部(即ち、供給は塔の塔頂部で行なわれる)と塔底エバポレーターとから構成されている塔であり、この場合この塔底エバポレーターは、通常、自然循環エバポレーター、強制循環エバポレーターまたは流下薄膜エバポレーターの形である。付加的なストリッピング剤を添加することは、可能であるが、しかし、ストリッピング剤を添加しないほうが好ましく、この場合には、回収塔の底部で蒸発されるホスゲンおよび塩化水素は、ストリッピング剤と役立つ。工業的規模で塔の本体は、好ましくは0.1〜4.0m、好ましくは0.5〜2.0mの直径を有する。材料交換のための内部構造物を装備した塔の領域は、通常、型に依存して、1.0〜10.0m、好ましくは2.0〜8.0m、よりいっそう好ましくは4.0〜6.0mである。
【0068】
できるだけ大きな材料交換表面積を備えさせるための内部構造物としては、刊行物から公知でありかつ当業者に周知である、任意の充填体、パッキングまたは材料交換トレイを使用することができる。前記の内部構造物は、現行の条件下で物質系に対して耐性を有する、当業者に公知の材料から形成された、商業的に入手可能な寸法の常用のタイプのパッキング、例えばB1、C1(Montz)またはMellapak、Kerapak(Sulzer)またはRalupak(Raschig)またはRombopak(Kuehni)、または任意の他の常用のタイプの精留用パッキングまたは充填体(別記しない限り、VFFからの全て)、例えばラシヒリング(Raschig rings)、パルリング(Pall rings)またはタイプIntalox、Beri、Super−Torus(Raschig)またはSuperのサドル、Interpack、Top−Pak、Hacketten、Igel、VSPまたはHiflowリング(Rauschert)である。充填体またはパッキングへの回収塔の頭頂部での供給原料の導入は、好ましくは材料交換トレイの場合には、先行技術による液体ディストリビューターを介して実施されることができ、供給原料は、先行技術による供給トレイを介して導入されることができる。回収塔の塔頂部での絶対圧力は、使用される吸収塔の塔頂部での圧力および塔中で発生する圧力損失によって必然的に定められ、したがって好ましくは1〜35バール、よりいっそう好ましくは1.2〜3バールである。底部温度は、塔中の圧力損失および使用された溶剤に応じて、好ましくは130〜410℃、よりいっそう好ましくは135〜230℃である。回収塔の底部からの溶剤流(溶剤相)は、液体の溶剤流(溶剤相)に対して0.1質量%未満、好ましくは0.01質量%未満、よりいっそう好ましくは0.001質量%未満のホスゲン濃度を有する。
【0069】
工程a)でのホスゲン化への工程c)で得られた溶剤相の回収は、工程d)の主題であり、工程c)で得られた溶剤相の全部が回収されるような方法であることができる。しかし、工程c)で得られた溶剤相の一部分だけを回収することも可能である。好ましくは、工程c)で得られた溶剤相10%超、よりいっそう好ましくは50%超、最も好ましくは60〜100%、最も殊に好ましくは65〜99.95%は、工程a)でのホスゲン化反応に返送される。
【0070】
更に、本発明は、図1〜3に関連して以下に詳細に説明される。図1は、一段階または多段階の部分凝縮を組み合わせた、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを分離し、引続き生じる凝縮生成物をストリッピングし、さらに吸収塔中で蒸気流を分離することを示す略図である。図2は、一段階または多段階の部分凝縮を組み合わせた、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを分離し、引続き生じる凝縮生成物をストリッピングし、さらに回収塔の上流の部分凝縮よりもそれ相応に低い温度で一段階または多段階で部分凝縮し、さらに吸収塔中で蒸気流を分離することを示す略図である。図3は、一段階または多段階の部分凝縮を組み合わせた、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを分離し、引続き生じる凝縮生成物をストリッピングし、さらに回収塔の上流の部分凝縮よりもそれ相応に低い温度で一段階または多段階で部分凝縮し、さらに吸収塔中の蒸気流を分離し、ならびにホスゲン溶液をストリッピングすることを示す略図である。
【0071】
よりいっそう詳述すれば、図1は、一段階または多段階の部分凝縮を組み合わせた、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを分離し(即ち、特許保護を請求した方法の工程b))、引続き生じる凝縮生成物をストリッピングし(即ち、特許保護を請求した方法の工程c))、さらに吸収塔中で蒸気流を分離する(即ち、特許保護を請求した方法の工程e))ことを示す略図である。
【0072】
本発明の1つの好ましい実施態様において、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れ1は、通常、脂肪族または芳香族のアミンとホスゲンとの反応で得られ、相応するイソシアネートを生じ、最初に、分離のために一段階または多段階の部分凝縮aに通過される。イソシアネート処理からのホスゲン含有溶剤流5は、通常、ホスゲン製造からの洗浄液、真空系からの環状液体、溶剤蒸留からの凝縮生成物等として得ることができるように、付加的に前記目的のために供給されることができる。適当な熱交換器は、公知技術水準による任意の凝縮器である。凝縮工程は、通常、空気冷却された冷却ブラインを用いて、有利に25〜59℃、よりいっそう有利に30〜40℃で実施される。それによって形成された凝縮生成物2は、回収塔50の塔頂部から供給原料として導入される。この供給原料は、前記塔の構造化されたパッキング部b中で、できるだけ最大限になるように溶剤が除去されかつ第1の部分凝縮段階aに再び通過される塔頂部の蒸気流3と、前記塔の底部cでできるだけ最大限になるようにホスゲンが除去された溶剤流4とに分離される。それ故に、必要な蒸気は、塔底エバポレーターdによってパッキング部bからの液体流により形成される。
【0073】
第1の部分凝縮段階aからの蒸気流6は、さらに分離のために、等温吸収部gおよび断熱吸収部hと溶剤の後凝縮iおよび極めて少量のホスゲンまたは溶剤を含有する塩化水素流からのエネルギー回収部jとを組み合わせたホスゲン吸収塔51中に通過される。付加的に、場合によってはクロロベンゼン中で洗浄塔によって大部分が回収された、ホスゲン製造からの凝縮されたホスゲン9および凝縮されていない残りのホスゲン10は、吸収塔51の底部fから導入される。等温吸収部gの塔頂部での供給原料12は、溶剤から構成され、この溶剤は、場合によっては(例えば、ホスゲン製造からの洗浄液、真空系からの環状液体、溶剤蒸留からの凝縮生成物等のような)少量のホスゲンで汚染された溶剤流によって代替されていてよい。等温吸収部の冷却は、好ましくは、冷たいブラインを用いて、有利に−40〜+0℃の温度、よりいっそう有利に−20〜−10℃の温度で実施される。
【0074】
等温吸収部gによって予め精製された塩化水素流は、断熱吸収段階hに内部供給され、さらにそこでホスゲンが除去される。吸収のために、熱交換器kによって冷たいブラインで有利に−50℃〜+0℃、よりいっそう有利に−40℃〜−20℃の温度に冷却された溶剤13は、流れ14として断熱吸収段階hの塔頂部から向流で導入される。断熱吸収段階hでホスゲンが除去されかつ後凝縮部iで溶剤が除去された塩化水素流15は、吸収塔51の塔頂部に留まる。後凝縮での冷却は、冷たいブラインを用いて有利に−50〜+0℃、よりいっそう有利に−40〜−20℃の温度で実施される。エネルギーを回収するために、溶剤流13は、熱交換器j中で予め冷却され、塩化水素流15は、加熱される。
【0075】
濃縮されたホスゲン溶液11は、ホスゲン吸収塔の底部fから取り出され、かつ反応段階にフィードバックされる。
【0076】
図2は、一段階または多段階の部分凝縮を組み合わせた、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを分離し(即ち、本明細書中の処理の工程b))、引続き生じる凝縮生成物をストリッピングし(即ち、本明細書中の処理の工程c))、さらに回収塔の上流の部分凝縮よりもそれ相応に低い温度で一段階または多段階で部分凝縮し、さらに吸収塔中で蒸気流を分離する(即ち、本明細書中の処理の工程e))ことを示す略図である。
【0077】
本発明の1つの好ましい実施態様において、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れ1は、通常、脂肪族または芳香族のアミンとホスゲンとの反応で得られ、相応するイソシアネートを生じ、最初に、分離のために一段階または多段階の部分凝縮aに通過される。イソシアネート処理からのホスゲン含有溶剤流5は、通常、ホスゲン製造からの洗浄液、真空系からの環状液体、溶剤蒸留からの凝縮生成物等として得ることができるように、付加的に前記目的のために供給されることができるか、或いは回収塔の下流の部分凝縮段階eに供給されることができる。適当な熱交換器は、公知技術水準による任意の凝縮器である。凝縮工程は、通常、空気冷却された冷却ブラインを用いて、有利に25〜50℃、よりいっそう有利に30〜40℃で実施される。それによって形成された凝縮生成物2は、回収塔50の塔頂部から供給原料として導入される。この供給原料は、前記塔の構造化されたパッキング部b中で、できるだけ最大限になるように溶剤が除去されかつ第1の部分凝縮段階aに再び通過される塔頂部の蒸気流3と、前記塔の底部cでできるだけ最大限になるようにホスゲンが除去された溶剤流4とに分離される。それ故に、必要な蒸気は、塔底エバポレーターdによってパッキング部bからの液体流により形成される。
【0078】
第1の部分凝縮段階aからの蒸気流6は、凝縮段階aよりも低い温度で操作される第2の一段階または多段階の部分凝縮部eを介して通過される。適当な熱交換器は、公知技術水準による任意の凝縮器である。凝縮工程は、有利に冷たいブラインを用いて有利に−40〜+19℃、よりいっそう有利に−20〜−10℃の温度で実施される。生じる蒸気流7および凝縮生成物流8は、さらに分離のために、等温吸収部gおよび断熱吸収部hと溶剤の後凝縮iおよび極めて少量のホスゲンまたは溶剤を含有する塩化水素流からのエネルギー回収部jとを組み合わせたホスゲン吸収塔51中に通過される。付加的に、場合によってはクロロベンゼン中で洗浄塔によって大部分が回収された、ホスゲン製造からの凝縮されたホスゲン9および凝縮されていない残りのホスゲン10は、吸収塔51の底部fから導入される。等温吸収部gの塔頂部での供給原料12は、溶剤から構成され、この溶剤は、場合によっては(例えば、ホスゲン製造からの洗浄液、真空系からの環状液体、溶剤蒸留からの凝縮生成物等のような)少量のホスゲンで汚染された溶剤流によって代替されていてもよい。等温吸収部の冷却は、好ましくは、冷たいブラインを用いて、有利に−40〜+0℃の温度、よりいっそう有利に−20〜−10℃の温度で実施される。
【0079】
等温吸収部gによって予め精製された塩化水素流は、断熱吸収段階hに内部供給され、さらにそこでホスゲンが除去される。吸収のために、熱交換器kによって冷たいブラインで有利に−50℃〜+0℃、よりいっそう有利に−40℃〜−20℃の温度に冷却された溶剤13は、流れ14として断熱吸収段階hの塔頂部から向流で導入される。断熱吸収段階hでホスゲンが除去されかつ後凝縮部iで溶剤が除去された塩化水素流15は、吸収塔51の塔頂部に留まる。後凝縮での冷却は、冷たいブラインを用いて有利に−50〜+0℃、よりいっそう有利に−40〜−20℃の温度で実施される。エネルギーを回収するために、溶剤流13は、熱交換器j中で予め冷却され、塩化水素流15は、加熱される。
【0080】
濃縮されたホスゲン溶液11は、ホスゲン吸収塔の底部fから取り出され、かつ反応段階にフィードバックされる。
【0081】
殊に図3は、一段階または多段階の部分凝縮を組み合わせた、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを分離し(即ち、本明細書中の処理の工程b))、引続き生じる凝縮生成物をストリッピングし(即ち、本明細書中の処理の工程c))、さらに回収塔の上流の部分凝縮よりもそれ相応に低い温度で一段階または多段階で部分凝縮し、さらに吸収塔中で蒸気流を分離し(即ち、本明細書中の処理の工程e))、ならびにホスゲン溶液をストリッピングすることを示す略図である。
【0082】
図3に図示されたようなプロセスの実施態様において、殊にホスゲンまたは溶剤中で可溶性の低沸点物、例えば塩化水素に関連して、吸収塔51の底部から取り出される液体のホスゲン流11(ホスゲン溶液)の純度は、再び増加されてよい。
【0083】
本発明の1つの好ましい実施態様において、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れ1は、通常、脂肪族または芳香族のアミンとホスゲンとの反応で得られ、相応するイソシアネートを生じ、最初に、分離のために一段階または多段階の部分凝縮aに通過される。イソシアネート処理からのホスゲン含有溶剤流5は、通常、ホスゲン製造からの洗浄液、真空系からの環状液体、溶剤蒸留からの凝縮生成物等として得ることができるように、付加的に前記目的のために供給されることができるか、或いは回収塔の下流の部分凝縮段階eに供給されることができる。適当な熱交換器は、公知技術水準による任意の凝縮器である。凝縮工程は、通常、空気冷却された冷却ブラインを用いて、有利に25〜50℃、よりいっそう有利に30〜40℃で実施される。それによって形成された凝縮生成物2は、回収塔50の塔頂部から供給原料として導入される。この供給原料は、前記塔の構造化されたパッキング部b中で、できるだけ最大限になるように溶剤が除去されかつ第1の部分凝縮段階aに再び通過される塔頂部の蒸気流3と、前記塔の底部cでできるだけ最大限になるようにホスゲンが除去された溶剤流4とに分離される。それ故に、必要な蒸気は、塔底エバポレーターdによってパッキング部bからの液体流により形成される。
【0084】
第1の部分凝縮段階aからの蒸気流6は、よりいっそう低い温度で操作される第2の一段階または多段階の部分凝縮部eを介して通過される。適当な熱交換器は、公知技術水準による任意の凝縮器である。凝縮工程は、有利に冷たいブラインを用いて有利に−40〜+10℃、よりいっそう有利に−20〜−10℃の温度で実施される。生じる蒸気流7および凝縮生成物流8は、さらに分離のために、等温吸収部gおよび断熱吸収部hと溶剤の後凝縮iおよび極めて少量のホスゲンまたは溶剤を含有する塩化水素流からのエネルギー回収部jとを組み合わせたホスゲン吸収塔51中に通過される。付加的に、ホスゲン製造からの典型的にホスゲンに対してなお不活性のガスも含有する、凝縮されたホスゲン9および凝縮されていないホスゲン流10は、吸収塔51の底部fから導入される。等温吸収部gの塔頂部での供給原料12は、溶剤から構成され、この溶剤は、場合によっては(例えば、ホスゲン製造からの洗浄液、真空系からの環状液体、溶剤蒸留からの凝縮生成物等のような)少量のホスゲンで汚染された溶剤流によって代替されていてもよい。等温吸収部の冷却は、好ましくは、冷たいブラインを用いて、有利に−40〜+0℃の温度、よりいっそう有利に−20〜−10℃の温度で実施される。
【0085】
等温吸収部gによって予め精製された塩化水素流は、断熱吸収段階hに内部供給され、さらにそこでホスゲンが除去される。吸収のために、熱交換器kによって冷たいブラインで有利に−50℃〜+0℃、よりいっそう有利に−40℃〜−20℃の温度に冷却された溶剤13は、流れ14として断熱吸収段階hの塔頂部から向流で導入される。断熱吸収段階hでホスゲンが除去されかつ後凝縮部iで溶剤が除去された塩化水素流15は、吸収塔51の塔頂部に留まる。後凝縮での冷却は、冷たいブラインを用いて有利に−50〜+0℃、よりいっそう有利に−40〜−20℃の温度で実施される。エネルギーを回収するために、溶剤流13は、熱交換器j中で予め冷却され、塩化水素流15は、加熱される。
【0086】
部分凝縮部eおよび等温吸収部gから流れかつなお低沸点物を含有するホスゲン溶液は、パッキング部l中で向流のガス状のホスゲン流10によってストリッピングされ、この場合このガス状のホスゲン流は、ホスゲン製造にとって典型的な不活性ガスも含有する。
【0087】
ストリッピング部1の構造は、公知技術水準に相当する。この構造は、底部の流れ中の望ましい低沸点物含量に関連して当業者に公知の方法でこのような分離のための常法で設計されている。この装置の関連した設計は、パッキング塔、充填体を有する塔または段塔の分野であることができる。
【0088】
濃縮されたホスゲン溶液11は、ホスゲン吸収塔の底部fから取り出され、かつ反応段階にフィードバックされる。
【0089】
図3に図示された本発明の実施態様において、ホスゲン溶液(液体のホスゲン流)中の塩化水素および他の低沸点物の濃度は、等温吸収部gの下方に配置されたストリッピング区域lによって、付加的な熱交換器を備えた付加的な分離塔の必要とすることなく、ストリッピングガスとしてのイソシアネート合成のホスゲン製造によるホスゲン含有蒸気流(即ち、前記流れの質量に対してホスゲン少なくとも50質量%を含有する流れ)を使用しかつストリッピング中に凝縮させることによってさらに減少させることができる。この蒸気流は、通常、イソシアネート合成において別の凝縮で液化され、次いでホスゲン溶液に添加される。本発明による方法においては、凝縮は、場合により、等温吸収から流入するホスゲン溶液の潜熱によって実施される。
【実施例】
【0090】

a)イソシアネートの製造およびそれによって実施される、塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有する流れの分離を、本発明による方法によって実施し、この場合この流れは、脂肪族アミンまたは芳香族アミンとホスゲンとの反応で形成され、公知技術水準に相応する反応段階で相応するイソシアネートを生じる。そのために、この分離を二段階の部分凝縮によって実施し、この場合この部分凝縮の第1段階からの凝縮生成物は、供給原料として回収塔の塔頂部から導入され、回収塔の塔底生成物は、新しい溶剤タンクにフィードバックされ、回収塔の塔頂部の蒸気は、部分凝縮の第1段落に再び返送され、第1の部分凝縮からの蒸気の全部は、第2の部分凝縮に供給され、その後にホスゲンとクロロベンゼンとは向流で部分的に等温吸収され、引続き残りのホスゲンとクロロベンゼンとは向流で断熱吸収され、最終的に低ホスゲン型塩化水素流(low-phosgene hydrogen chloride stream)および低溶剤型塩化水素流(low-solvent hydrogen chloride stream)からの残りのクロロベンゼンは、後凝縮される。このような方法は、上記したように図2に関する。
【0091】
クロロベンゼン中の洗浄塔によって回収された、ホスゲン製造からの凝縮されたホスゲンおよび凝縮されていない残りのホスゲンを、同様に吸収塔の底部中に通過させる。それによって、底部で得られた濃縮されたホスゲン溶液をアミンとの反応のために再び反応段階に返送する。この循環法の結果として、分離されるべき塩化水素流は、再び元来の組成および量で得られる。
【0092】
39.1kg/hの反応段階からのガス状の塩化水素流1を、45℃で操作される(冷却ブライン)、第1の部分凝縮段階aの熱交換器中に供給する。この塩化水素流1は、塩化水素23.8質量%、クロロベンゼン49.3質量%、ホスゲン26.9質量%および少量のイソシアネート合成に典型的な低沸点物を含有する。低沸点物は、物質流の次の組成の点でそのつど明確に述べられていない。それによって形成された凝縮生成物2 20.4kg/h(塩化水素0.7質量%、ホスゲン9.7質量%、クロロベンゼン89.6質量%)を供給原料として回収塔50の塔頂部から導入する。この塔の構造化されたパッキング部bは、2mの高さを有し、塔は、55mmの直径を有する。回収塔50の塔頂部の蒸気2.3kg/h(塩化水素5.8質量%、ホスゲン86.5質量%、クロロベンゼン7.7質量%)を再び第1の部分凝縮段階a中に通過させる。パッキング部bからの液体流を回収塔50の底部c中で捕集し、塔底エバポレーターdによって部分的に蒸発させるかまたは精製されたクロロベンゼン塔底流4として排出する。それによって、約10ppmの残りのホスゲン含量を有する精製されたクロロベンゼン18.1kg/hが得られる。
【0093】
第1の部分凝縮段階aからの蒸気流6 21.0kg/h(塩化水素44.4質量%、ホスゲン50.2質量%、クロロベンゼン5.4質量%)をその後の第2の部分凝縮段階e中に案内し、この場合この第2の部分凝縮段階eは、−17℃(冷たいブライン)で操作される。図2で示したような真空系からの液体のホスゲン含有クロロベンゼン5の付加は、実施例中では実施しなかった。
【0094】
等温吸収および断熱吸収と廃ガスからの溶剤の後凝縮とのその後の組合せは、前記例中で複数の装置を組み合わせて実施され、この場合これらの装置は、実施される工程が塔の本体内に配置されているように結合されたものである。
【0095】
14.8kg/hおよび−16.5℃の蒸気流7(塩化水素61.55質量%、ホスゲン38.4質量%、クロロベンゼン0.05質量%)および6.2kg/hおよび−16.5℃の凝縮生成物流(塩化水素3.7質量%、ホスゲン78.0質量%、クロロベンゼン18.3質量%)を、等温吸収段階gの下方でホスゲン吸収塔の底部f中に供給する。付加的に、11.2kg/hの凝縮されたホスゲン9(塩化水素0.3質量%、ホスゲン99.7質量%)およびホスゲン製造からクロロベンゼン中で洗浄塔によって大部分が回収された、1.1kg/hの凝縮されていない残りのホスゲン10(塩化水素0.4質量%、ホスゲン19.4質量%、クロロベンゼン80.2質量%)を吸収塔51の底部f中に供給する。等温吸収のために、管を備えた垂直方向の熱交換器を使用した。冷却を−17℃で冷たいブラインで行なう。前記管は、54.4mmの直径、3mの長さを有し、15×15mmのポールリング(Pall ring)で充填されている。等温吸収部gの塔頂部からの供給原料12は、−38℃の温度で3.7kg/hの量のクロロベンゼンから構成されている。更に、等温吸収工程で断熱吸収塔のパッキング部からの内部液体還流が存在する。等温吸収部gによって精製された塩化水素流を断熱吸収段階hに供給する。43.2kg/hおよび−6℃の生じるホスゲン溶液11(塩化水素2.1質量%、ホスゲン50.8質量%、クロロベンゼン41.7質量%)を反応段階にフィードバックする。
【0096】
断熱吸収を55mmの直径を有するパッキング塔h中で実施する。吸収のために、冷たいブライン(−35℃)で操作される熱交換器kによって−30℃に冷却されたクロロベンゼン14 14.9kg/hおよび−35℃で冷たいブラインで操作される、後凝縮iからの内部凝縮生成物流を、断熱吸収段階hの塔頂部から向流で導入する。断熱吸収段階hでホスゲンが除去されかつ後凝集iでクロロベンゼンが除去された、8.5kg/hの塩化水素流15は、塩化水素99.5質量%、クロロベンゼン0.05質量%、ホスゲン0.4質量%およびイソシアネート合成に典型的な低沸点物0.05質量%から構成されている。塔頂部での圧力は、1.45バール絶対であり、塔頂部での温度は、−34℃である。図2に示したように、冷却すべきクロロベンゼン14による塩化水素流15の伝熱式再加熱は、実施例では実施されなかった。
【0097】
b)ホスゲン溶液11の濃度が増加した際の回収塔の効率と同時に、吸収塔51の塔頂部での塩化水素流15による低いホスゲン損失を検査するために、実施例a)を循環モードで境界条件下で、回収塔の操作なしに実施する。従って、第1の部分凝縮段階aからの凝縮生成物2を、蒸気6と一緒に第2の部分凝縮段階e中に導入する。同量のアミン溶液および同じ濃度、および反応および吸収における同じ処理パラメーター、ならびに吸収塔51の塔頂部での塩化水素流中の同量の残りのホスゲンを用いて、60.6kg/hにすぎないホスゲン溶液11が得られる(塩化水素2.6質量%、クロロベンゼン61.2質量%、ホスゲン36.2質量%)。
【0098】
本発明を、説明を目的として前記において詳説したが、このような詳細は単にこの目的のためだけものであり、請求項により限定され得るものを除き、当業者によって本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく変法が形成されうるものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0099】
1 塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れ、 2 凝縮生成物、 3 塔頂部の蒸気流、 4 溶剤流、 5 ホスゲン含有溶剤流、 6 蒸気流、 9 凝縮されたホスゲン、 10 凝縮されていない残りのホスゲン、 11 濃縮されたホスゲン溶液、 12 供給原料、 13 冷却された溶剤流、 14 流れ、 15 塩化水素流、 50 回収塔、 51 ホスゲン吸収塔、 a 一段階または多段階の部分凝縮段階、 b 構造化されたパッキング部、 c 底部、 d 塔底エバポレーター、 e 回収塔の下流の部分凝縮段階、 f 吸収塔51の底部、 g 等温吸収部、 h 断熱吸収部、 i 溶剤の後凝縮、 j エネルギー回収部、 k 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
a)少なくとも1つのアミンをホスゲンと溶剤の存在下に反応させ、こうして相応するイソシアネートおよび場合によっては溶剤を含有する液状の流れ、ならびに塩化水素、ホスゲン、溶剤、および低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを形成させ、
b)塩化水素、ホスゲン、溶剤、ならびに低沸点物および不活性物質を含有するガス状の流れを部分凝縮によって分離し、こうして液相とガス相を形成させ、この場合回収塔の塔頂部に案内される液相は、実質的に溶剤、ホスゲンおよび塩化水素から構成されており、ガス状の流れは、実質的に塩化水素、ホスゲン、低沸点物および不活性物質、ならびにガス状の流れの質量に対して30質量%以下の溶剤を含有し;
c)実質的に溶剤、ホスゲンおよび塩化水素から構成されている、工程b)で回収塔中に導入された液相を、溶剤相とガス相とに分離し、この場合この溶剤相は、液体の形で回収塔の底部から除去され、および底部の液体流の質量に対して0.1質量%未満のホスゲン濃度を有し、ガス相は、前記塔の塔頂部から除去され、およびホスゲン、塩化水素、低沸点物および不活性物質、ならびに気相の質量に対して30質量%未満の溶剤を含有し;
d)工程c)で形成された溶剤相を工程a)でのホスゲン化反応に返送し;
e)工程c)で形成されたガス相を吸収装置中に導入し、この吸収装置中でガス相中に含有されたホスゲンを、工程a)でのホスゲン化反応に使用された溶剤と同じ溶剤中に吸収し、それによってホスゲン溶液の質量に対して20〜80質量%のホスゲン濃度を有するホスゲン溶液を形成させ;
f)場合によっては工程e)で得られたホスゲン溶液を付加的なホスゲンと混合し、濃縮されたホスゲン溶液を形成させ;
g)工程e)で形成されたホスゲン溶液または工程f)で形成された濃縮されたホスゲン溶液を工程a)でのホスゲン化反応に返送することを有することを特徴とする、イソシアネートの製造法。
【請求項2】
工程e)でガス相を1回または数回部分凝縮し、その後にガス相を吸収部に導入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
付加的に、
h)工程b)、c)およびe)で形成されたガス状の蒸気を合わせ、塩化水素流の質量に対して0.5質量%以下の濃度のホスゲンを含有する塩化水素流を形成させる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
生じる塩化水素流は、塩化水素流の質量に対して0.2質量%以下の濃度のホスゲンを含有する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
生じる塩化水素流は、塩化水素流の質量に対して0.1質量%以下の濃度のホスゲンを含有する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
a)ホスゲン化反応を液相中で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一部分のアミンを最初に工程d)に返送される溶剤相と混合し、次に生じるアミン溶液を工程a)でホスゲン化反応に導入する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一部分のホスゲンを最初に工程d)に返送される溶剤相と混合し、次に生じるホスゲン溶液を工程a)でホスゲン化反応に導入する、請求項6記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−196991(P2009−196991A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−29230(P2009−29230)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(504213548)バイエル マテリアルサイエンス アクチエンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】