説明

イソシアネートの製造方法

本発明は、アミン化合物からイソシアネートを製造する方法に関する。本発明の方法は、a)塩素を供給する工程;b)一酸化炭素を供給する工程;c)該塩素と該一酸化炭素とを反応させてホスゲンを得る工程、ここで一酸化炭素は、調整可能な過剰量(モル)で供給される;d)アミン化合物を供給し、ホスゲンでアミン化合物をホスゲン化してイソシアネートを得る工程;を含み、該調整可能な過剰量(モル)(すなわち、過剰量(モル)の一酸化炭素)を調整してイソシアネートの色を調整することをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、淡色化イソシアネート、淡色化イソシアネートの製造方法、淡色化イソシアネートのウレタン配合物(特に、ポリウレタンフォームなどのポリウレタン)における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート及びイソシアネート混合物は、対応するアミンのホスゲン化による公知の方法によって製造される。ポリウレタンフォームの場合、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート系の二官能性もしくは多官能性芳香族イソシアネートが使用される。これらイソシアネートの製造プロセスに起因して、ホスゲン化とその後の精製処理(溶媒の除去;モノマーMDIの分離)の結果、暗色生成物が生じることが多いため、これらを使用すると、黄色のポリウレタンフォームあるいは同様に変色した他のPUR材料が得られる。こうしたことは好ましくないことである。なぜなら、このような変色のために全体的な視覚的印象が悪くなり、またわずかな不均等性(例えば、得られるフォーム中のすじ)が観察されることがあるからである。したがって原材料としては、淡色化イソシアネート又は色付与成分の含有量を低減させたイソシアネートが好ましい。
【0003】
淡色のポリイソシアネート(特に、ジフェニルメタンジイソシアネート系のポリイソシアネート)を得るためのさまざまな試みが常になされている。実験的にMDIの色を薄くする方法が多く知られている。しかしながら厄介な着色物質の特質について、その解明は、これまで不十分である。
【0004】
これまでに知られている方法は、5つのグループに分けることができる。
1.出発物質であるアミン〔例えば、ジアミノジフェニルメタン(MDA)もしくはそのオリゴマー〕対する処理及び/又は精製
欧州特許出願第0546398号は、出発物質として使用されるポリメチレン−ポリフェニレン−ポリアミンを酸性化してからホスゲン化する、というポリマーMDIの製造方法を開示している。
【0005】
欧州特許出願第0446781号は、ポリメチレン−ポリフェニレン−ポリアミンモノマーとポリメチレン−ポリフェニレン−ポリアミンオリゴマーを最初に水素で処理し、引き続きホスゲン化に付す、というポリマーMDIの製造方法(比較的淡色のMDIが得られる)に関する。
【0006】
上記の方法は、色に関してほんのわずかな改良をもたらすにすぎない。なぜなら、MDI中の着色物質は、ある特定のMDA二次的成分から形成されるだけでなく、ホスゲン化時の二次反応によって形成される色前駆体からも生じる、ということが実際に分かっているからである。
【0007】
2. アミン出発物質に施されるホスゲン化プロセスにおけるプロセス工学的な対応
米国特許第5,364,958号は、ホスゲン化後にホスゲンを低温で完全に除去し、引き続きイソシアネートを高温HClガスで処理する、というポリイソシアネートの製造方法に関する。
【0008】
ドイツ特許第19817691.0号は、塩素化副生物の含量を低減させた、そしてホスゲン化反応の明確なパラメーターを順守することによってヨウ素色数を低減させたMDI/PMDI混合物の製造方法を開示している。ここでは特に、反応工程において特定のホスゲン/HCl比を順守することが要求されている。この製造方法は、ホスゲン化のパラメーターを変更することが難しいため、ホスゲン化の品質が極めて影響されやすい、という欠点を有する。さらに、ホスゲン化のパラメーターのフレキシビリティが欠如しているため、ホスゲン化を実際に行うのが極めて困難となり、高額なエンジニアリング費用が必要となる。
【0009】
上記タイプのプロセスは、変色成分を除去するための試みを説明しているけれども、これらのプロセスは十分に効率的とは言えない。エンジニアリング費用が高額で高コストであるし、薄色化効果に関しても、化学反応が不完全なためにほんのわずかしか色前駆体が分解されない。
【0010】
欧州特許第1890998号には、より高いHunterLab明度(L)を有する、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートを含む混合物の製造方法が開示されており、対応するジフェニルメタンジアミンとポリフェニルポリメチレンポリアミンとの混合物とホスゲンとを1種以上の溶媒の存在下で段階的に反応させることによって行われる。この製造方法によれば、第1段階で、対応する塩化カルバモイルとアミン塩酸塩を生成させ、次の段階において、残留塩化カルバモイルを、対応するポリイソシアネートと塩化水素に解離させ、そしてアミン塩酸塩をホスゲン化して、最終的に対応するポリイソシアネートを形成させる。このとき幾らかのアミン塩酸塩は、残留している過剰のホスゲンが反応混合物から除去される時点で未反応のままである。
【0011】
上記の製造方法は、ホスゲン化のパラメーターを変えると問題が生じる場合があるため、ホスゲン化の品質が影響されやすい、という欠点を有する。
3. ホスゲン化後であって精製処理前に得られる粗製イソシアネート生成物に対して淡色化剤を添加
欧州特許出願第0581100号は、ホスゲン化の後で且つ溶媒を除去する前に化学的還元剤を添加する、というポリイソシアネートの製造方法に関し、この文献によれば、淡色生成物が得られるという。
【0012】
米国特許第4,465,639号によれば、ホスゲン化後に得られる粗製生成物の色を薄くするために、粗生成物に水を加える。欧州特許出願第538500号、欧州特許出願第0445602号、及び欧州特許出願第0467125号は、同じ目的のために、ホスゲン化の後にカルボン酸、アルカノール、又はポリエーテルポリオールを加えることを開示している。
【0013】
色を薄くする上記方法は効果的ではあるけれども、添加剤は、薄色化だけでなく、生成物として得られるイソシアネートとの反応を引き起こすため、一般には、例えばイソシアネート含量の望ましくない減少を引き起こす、という欠点を有する。さらに、望ましくない副生物がMDI中に形成されるというリスクがある。
【0014】
4. 得られるイソシアネート最終生成物の後処理
欧州特許出願第0133538号は、イソシアネートを抽出によって精製し、これにより淡色MDIのフラクションを得ることを開示している。
【0015】
欧州特許出願第0561225号は、イソシアネートもしくはイソシアネート混合物の製造方法を開示しており、この文献によれば、混合物は色付与成分を含有しないという。この方法では、対応するアミンのホスゲン化後に得られるイソシアネートを、1〜150バールの圧力及び100〜180℃の温度にて水素処理に付す。この特許出願に記載の実施例によれば、イソシアネート最終生成物が、それ自体として、あるいは適切な溶媒を使用する溶液の形で水素化される。
【0016】
高温にて溶媒を完全に除去した後のイソシアネート最終生成物に対するこれら色改良後処理も、それほど効果的ではない。なぜなら、精製処理時〔特に、溶媒の蒸留時、及び(ポリマーMDIを製造する場合は)モノマーMDIの除去時〕に生じる高温によって、(化学分解させるのが困難な)安定した着色物質の形成が生じてしまっているからである。
【0017】
5. アミン出発物質をホスゲン化するのに使用されるホスゲンの品質の制御
アミンを対応するイソシアネートに転化させるのに使用されるホスゲンは従来、塩素と一酸化炭素を、例えば非特許文献1に記載の通常の既知プロセスにて反応させることによって工業規模で製造されている。ホスゲンの製造は通常、必要に応じて表面処理又は他の処理を施した1種以上の高純度炭素触媒上で行われる。遊離塩素をイソシアネート製造システムに供給すること(相当量の望ましくない副生物が生じる)を避けるために、ホスゲンは通常、COを化学量論的過剰量に保持しつつ製造される。未反応のCOは、分離することができ、必要に応じて精製することができ、そして引き続きホスゲンプラントに戻すことができる。さらに、一部のCOは塩化水素ガスとともにホスゲンプラントを出ていき、この塩化水素ガスは通常、1つ以上のさらなる化学プロセスにおいて使用される。遊離塩素をイソシアネート製造プラントに供給すると生じる望ましくない副生物(特に、ホスゲン化プロセスにおける)は、例えばX線蛍光分光法による最終生成物中の全塩素の測定を含めた種々の分析法によって定量化することができる。
【0018】
例えば米国特許出願第20070167646号は、イソシアネートの製造において、元素形態もしくは結合形態の硫黄の含有量が約100ppm未満(好ましくは約60ppm未満、さらに好ましくは約20ppm未満)であるホスゲンを使用することによって淡色化イソシアネートを製造できることを開示している。「約100ppm未満の硫黄」という範囲の記載は、使用されるホスゲンの重量を基準として約100ppm未満の硫黄が、使用されるホスゲン中に含有されていることを意味する。ホスゲン中の硫黄分は、実質的には、ホスゲンを製造するのに使用される一酸化炭素(CO)(その由来に応じて一定割合の硫黄を含有する)が原因である。硫黄分はさらに、COを製造するのに使用される原材料の硫黄分から大部分がもたらされる。本発明の製造方法において使用される低硫黄分のホスゲンは、当業者に公知の種々の方法によって製造することができる。ホスゲン中の硫黄含量を確実に低くする1つの方法は、例えば、もともと硫黄分の少ない対応する出発化合物をホスゲンの製造において使用することであり、硫黄含量の少ないCOを使用することが特にここでは適切である。低硫黄含量のCOの製造方法は当業者に公知である。したがって、例えば石炭ガス化、水蒸気改質、CO改質、炭化水素の部分酸化、又は他のプロセスによって得られるCOを使用することができる。COはさらに、COを含有するガス混合物からの分離によって得ることもできる。COを製造ないし取得するためのこのタイプのプロセスが、例えば非特許文献2に説明されている。
【0019】
さらに、ホスゲンの品質に対する厳しい要求について、例えば、米国特許第6,900,348号に記載されており、アミンもしくは2種以上のアミンの混合物と、50ppm未満の分子形態もしくは結合形態の臭素又はヨウ素あるいはこれらの混合物を含有するホスゲンとを反応させることによって淡色化イソシアネートを製造する方法が開示されている。米国特許出願第20040024244号には、淡色化イソシアネートを製造する際に使用する低臭素含量の塩素を、イソシアネート製造プロセスにおいて得られる塩化水素を酸化して生成させ得ること、が説明されている。
【0020】
塩素は、岩塩、海塩、又は天然塩化カリウムから工業的に製造されている。塩素は通常、岩塩溶液の電気分解による副産物として、ナトリウム又は水酸化ナトリウムとともに得られる。塩化カリウムは、カリウムもしくは水酸化カリウムとともに塩素を製造する際に同様に使用される。電気分解において使用される塩は通常、臭素化合物やヨウ素化合物を30〜3000ppmの量にて含有し、これらの化合物は、電気分解時に臭素やヨウ素を形成する。上記プロセスの欠点は、ホスゲン合成に使用される塩素中の臭素含量とヨウ素含量を、イソシアネートの製造において使用すべき得られるホスゲンが、臭素、ヨウ素、臭素含有化合物、又はヨウ素含有化合物を必要な低含量にて含有する程度に減少させるのに必要とされる精製コストが高いことである。イソシアネート製造プロセスで生じる塩化水素の転化によって高純度塩素を製造することの大きな欠点は、高い資本コストのプロセス装置と高い電気料金がさらに広範囲にわたって必要とされることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許出願第0546398号
【特許文献2】欧州特許出願第0446781号
【特許文献3】米国特許第5,364,958号
【特許文献4】ドイツ特許第19817691.0号
【特許文献5】欧州特許第1890998号
【特許文献6】欧州特許出願第0581100号
【特許文献7】米国特許第4,465,639号
【特許文献8】欧州特許出願第538500号
【特許文献9】欧州特許出願第0445602号
【特許文献10】欧州特許出願第0467125号
【特許文献11】欧州特許出願第0133538号
【特許文献12】欧州特許出願第0561225号
【特許文献13】米国特許出願第20070167646号
【特許文献14】米国特許第6,900,348号
【特許文献15】米国特許出願第20040024244号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Ullmannsによる“Enzyklopadie der Industriellen Chemie,第3版,pp.494−500”
【非特許文献2】Chemische Technik(editors: Dittmeyer,Keim,Kreysa,Oberholz),5.sup.th edition,Vol.4,pp.981−1007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
分子形態もしくは結合形態の臭素を50〜500ppmの範囲で含有する塩素を使用して得られるホスゲンとアミンとを反応させることによって淡色化イソシアネートを製造する方法が求められている。本発明の目的は、上記した先行技術の方法の短所もしくは欠点を少なくともある程度は回避する方法によって淡色化イソシアネートを提供することである。
【0024】
本発明の目的は、分子形態もしくは結合形態の臭素を50〜500ppmの範囲で含有する塩素を使用して得られるホスゲンを使用して、対応するアミンのホスゲン化によって淡色化イソシアネート(特に、PMDI系のイソシアネート)を製造する方法を提供することである。
【0025】
本発明の目的は、イソシアネートの色を制御、調節することができ、より淡い色もしくはより暗い色に変えることができ、及び/又は、許容しうる範囲内に保持することができる、というイソシアネートの製造方法を提供することである。
【0026】
上記目的の1つ以上は、本発明に従ってイソシアネートを提供する方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0027】
驚くべきことに、こうした要求は、プロセス中に存在する過剰COの量を慎重に制御するという条件下でホスゲンを製造することによって満たすことができる、ということを本発明者らは見出した。
【0028】
本発明の第1の態様によれば、アミン化合物からイソシアネートを製造する方法が提供される。本発明の製造方法は、a)塩素を供給する工程;b)一酸化炭素を供給する工程;c)ホスゲンを得るために前記塩素と前記一酸化炭素とを反応させる工程、このとき一酸化炭素は、調整可能な過剰量(モル)にて供給される;及びd)アミン化合物を供給し、前記ホスゲンを使用して前記アミン化合物をホスゲン化し、これによって前記イソシアネートを得る工程;を含む。本発明の製造方法はさらに、イソシアネートの色を調整するために、前記調整可能な過剰量(モル)(すなわち、過剰量(モル)の一酸化炭素)を調整することを含む。
【0029】
特に明記しない限り、「一酸化炭素の過剰量(モル)」は、ホスゲンをもたらす反応器中での、塩素に対する一酸化炭素の過剰量(モル)を意味する。
一酸化炭素の過剰量(モル)は、一酸化炭素:塩素のモル比として表わすことができる。過剰量(モル)は、モル比が1より大きいこと、すなわち、1:1より大きいことを意味する。
【0030】
さらに、一酸化炭素対塩素の過剰量(モル)もしくはモル比についての正確な限界(限界の間で調整すると、許容しうる範囲内でイソシアネートの色が変化する)は、物理的特性;反応器の条件(1種以上の触媒を含めて);ホスゲン供給プロセスとアミンのホスゲン化プロセスにおいて使用される機器;の関数である。
【0031】
本発明による実在の一酸化炭素:塩素のモル比に関する適用可能範囲は1.025:1.000以下である。適用可能なモル比の範囲としては、例えば、1.000:1.000より大きく1.025:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜2.5モル%以下、例えば、0.00001モル%〜2.5モル%)。例えば1.000:1.000より大きく1.020:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜2.0モル%以下)。例えば1.000:1.000より大きく1.015:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜1.5モル%以下)。例えば1.000:1.000より大きく1.010:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜1.0モル%以下)。
【0032】
アミンを対応するイソシアネートにホスゲン化するのに使用すべきホスゲンを製造するために、一酸化炭素を過剰に使用してホスゲン製造を行うことは一般的に知られている。アミン化合物をイソシアネートにホスゲン化するためのホスゲンを得る際、一酸化炭素:塩素の典型的なモル比は1.030:1.000〜1.100:1.000(すなわち3モル%〜10モル%)である(米国特許第4,764,308号に記載)。塩素を過剰に使用すると、結果としてホスゲン中に塩素が存在することになる。このようなホスゲンをホスゲン化反応に使用すると、塩素含有イソシアネート化合物と他の塩素含有非イソシアネート化合物(例えば、ホスゲン化溶媒と塩素との反応生成物)が生じてしまう。これらの化合物は、例えばポリウレタンフォーム等のポリウレタンを得るのに使用されるとイソシアネートの性能と特性に悪影響を及ぼし、及び/又は、イソシアネートプロセスもしくはイソシアネート生成物から除去するために、一時的な追加のプロセス装置を必要とする。したがって、ホスゲン中の塩素の存在は防止しなければならない。
【0033】
本発明によれば、驚くべきことに、工程(c)における過剰量(モル)又は一酸化炭素:塩素のモル比の程度を化学量論より若干高めに(特に、より低めのモル比範囲に)調整することによって、工程(d)で、ホスゲンを使用して得られるイソシアネートの色に影響を及ぼすことができる(所望の値に制御することができる、所望の値に調整することができる、及び/又は所望の値に保持することができる)ことが見出された。このようなモル比の範囲としては、例えば1.000:1.000より大きく1.025:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜2.5モル%以下、例えば0.00001モル%〜2.5モル%)。例えば1.000:1.000より大きく1.020:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜2.0モル%以下)。例えば1.000:1.000より大きく1.015:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜1.5モル%以下)。例えば1.000:1.000より大きく1.010:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜1.0モル%以下)。これは特に、使用される塩素が相当量(例えば、30ppm〜500ppmの範囲や50ppm〜500ppmの範囲)の臭素を含む場合である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
従って本発明の幾つかの実施態様によれば、本発明の製造方法において使用される塩素は、分子形態もしくは結合形態の臭素を30〜500ppm(例えば50〜500ppm)含んでよい。
【0035】
標準的な塩素ガスからの臭素を精製する必要がないと同時に、結果的に得られるイソシアネートに対して許容しうるカラーグレードを得ることができる、というのが利点である。
【0036】
本発明の幾つかの実施態様によれば、前記調整可能な過剰量(モル)を調整することは、得ようとするイソシアネートに対して要求される色に基づいて、前記一酸化炭素の過剰量(モル)の目的値の範囲を決定すること;及び、塩素と一酸化炭素の供給を制御・調整して、一酸化炭素の実在の過剰量(モル)を過剰量(モル)の目的値に近づけ、必要に応じて過剰量(モル)の目的値に合わせることを含む。
【0037】
前記調整可能な過剰量(モル)を調整することによってイソシアネートの色を適合させることは、得ようとするイソシアネートに求められる色に応じて、前記一酸化炭素の過剰量(モル)の目的値の範囲を決定すること;及び、塩素と一酸化炭素の供給を制御・調整して、工程c)における一酸化炭素の実在の過剰量(モル)を過剰量(モル)の目的値に近づけ、必要に応じて過剰量(モル)の目的値に合わせること;を含む。
【0038】
一酸化炭素の過剰量(モル)が調整可能であるということは、実在の過剰量(モル)が、例えば一酸化炭素:塩素のモル比を測定することによって本発明のプロセスの操作時に制御・調整することができる、ということを意味している。実在の過剰量(モル)または一酸化炭素:塩素のモル比の調整は、例えば、供給する一酸化炭素の量を変えることによって、供給する塩素の量を変えることによって、あるいはその両方によって行うことができる。
【0039】
一酸化炭素とハロゲン〔ここでハロゲンは、分子状塩素、分子状臭素、又は分子状ブロモ塩素(bromochlorine)等を含む〕に対するオンライン分析器、あるいはイソシアネート(例えば得られるPMDI生成物)中の全塩素又は全臭素のオンラインもしくはオフライン測定、を使用することによってプロセスを制御するための手段を利用することができる。プロセスを制御することは、種々の流体ストリーム中の一酸化炭素の量もしくは含量、及び/又は、塩素の量もしくは含量を算出すること;ならびに、プロセスパラメーターとプロセス設定の計算値もしくは実測値に基づいて一酸化炭素と塩素との比を算出すること(該パラメーター及び/又は設定は、イソシアネートを製造するためのプロセスからもたらされる);を含んでよい。
【0040】
塩素と一酸化炭素はどちらも、フレッシュなそのままの原料ストリームとして供給することもできるし、あるいは一部を再循環材料として供給することもできる。再循環一酸化炭素は、工程段階c)の後に得られるホスゲンを精製することにより、及び/又は、工程段階d)によって得られるイソシアネートを精製することにより得ることができる。再循環塩素は、ホスゲン化工程段階において形成されるHClから得ることができる。ホスゲンやイソシアネートの精製は、当業者によく知られている方法を使用して行うことができる。
【0041】
周知のように、原材料ストリーム又は必要に応じて再循環材料ストリームの調整は、化学プロセスを実施する上での、当業界によく知られている任意の方法にて〔例えば、適切な弁セッティングの調整に関する手動操作によって;あるいは制御ソフトウェアと、前記制御ソフトウェアによって制御される自動弁とを組み合わせて、制御された仕方で流れを調整することによって〕行うことができる。
【0042】
一酸化炭素の実在の過剰量(モル)を制御・調整することは、得ようとするイソシアネートの色に基づいて、過剰量(モル)又は一酸化炭素:塩素のモル比に対する標的値を特定もしくは設定すること;プロセス中に存在する実在の過剰量(モル)又は一酸化炭素:塩素のモル比に関する情報(例えばリアルタイム情報)を得ること;及び、実在の過剰量(モル)又は一酸化炭素:塩素のモル比を、標的とする過剰量(モル)又は一酸化炭素:塩素のモル比に近づけるために、実在の過剰量(モル)又は一酸化炭素:塩素のモル比を調整すること;を必要に応じて含んでよい。
【0043】
一酸化炭素の実在の過剰量(モル)を制御・調整することは、得ようとするイソシアネートの変色要件に基づいて、及び/又は工程c)及び/又はd)において変更されるプロセス条件に基づいて、及び/又はプロセスにおいて使用される原材料もしくは必要に応じて再循環される材料の特性変化に基づいて、過剰量(モル)又は一酸化炭素:塩素のモル比に対する標的値を再決定もしくは変更することを必要に応じて含んでよい、あるいはさらに含んでよい。プロセスにおいて使用されるこれらの原材料及び/又は再循環材料は、例えば、一酸化炭素、塩素、及びアミン化合物のほかに、プロセスにおいて必要に応じて使用される物質(例えば、添加剤や溶媒)であってよい。
【0044】
本発明の幾つかの実施態様によれば、アミン化合物はジアミノジフェニルメタンを含んでよい。
ジアミノジフェニルメタンはDADPM又はMDAと呼ばれることもある。このアミン化合物は、実質的に、ジアミノジフェニルメタンの異性体(例えば、4,4’−MDAや2,4’−MDA)とMDAのより高級のオリゴマーもしくは同族体とが組み合わさった混合物からなってよい。
【0045】
ジアミノジフェニルメタン(すなわち、MDAの異性体や同族体)を含むベース物質をホスゲン化すると、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)〔通常はMDIの異性体(例えば、4,4’−MDIや2,4’−MDI)の混合物〕とMDIの同族体やポリイソシアネートオリゴマーを含むポリイソシアネート混合物が得られる。こうして得られるポリイソシアネート混合物は、ポリメリックMDI又はPMDIと呼ばれることが多い。
【0046】
これらの実施態様の利点は、PMDIの色を許容しうるカラーグレード(イソシアネートの最終用途によって決まる)内に制御・保持することができる、ということである。
イソシアネート〔例えば、TDIや他のイソシアネート(例えば非MDI−イソシアネート)〕を製造するためのホスゲンの製造においてCO/塩素比を慎重に制御することはさらに、不純物の生成を抑える好ましい効果をもたらす(これらの効果が、最終的な色に影響を及ぼそうと、生成物中の不純物に影響を及ぼそうと、あるいはプロセス効率に影響を及ぼそうと)という点で有用でありうる。
【0047】
本発明の幾つかの実施態様によれば、アミン化合物はトルエンジアミンを(個々の実質的に純粋な異性体の形態にて、あるいは異性体の混合物の形態にて)含んでよい。
得られたイソシアネートの色は、インライン法もしくはオフライン法を使用することによって特性決定することができる。実測した色は、種々の「色空間」系(例えば、HunterLabやCIE L)に関して表示することができ、最初のイソシアネート材料に対して、又はイソシアネートを適切な溶媒に溶解して得られる溶液に対して決定することができる。イソシアネートの色をCIE Lの色空間ないし色空間系で表示すると、本発明の製造方法(すなわち、溶液状態にしない)で得られるイソシアネートは、30より大きい、好ましくは35より大きい、さらに好ましくは40より大きい、さらに好ましくは45より大きいカラーグレードのL値を有する。CIE L色空間では、カラーグレード又はL値は必ず100以下である。得ることのできるイソシアネートに対し、CIE L色空間にて得られるカラーグレード又はL値は、一般には80以下(例えば60以下)である。
【0048】
本発明の幾つかの実施態様によれば、本発明の製造方法によって得られるイソシアネートの色は、30より大きいCIEカラーグレードのL値を有する。
本発明の結果として、イソシアネート生成物に対して決定されるCIE色空間のaパラメーター又はbパラメーターの変化が生じることがあり、こうした変化は、用途によっては有用な場合がある。
【0049】
HunterLab色空間又はCIE L色空間にてカラーグレードを測定するには、一般には、当業界によく知られているHunterLab試験装置が使用される。
【0050】
本発明に従って一酸化炭素の過剰量を慎重に調整することによって〔特に、一酸化炭素:塩素のモル比が1.000:1.000より大きく1.025:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が0モル%超〜2.5モル%以下、例えば0.00001モル%〜2.5モル%)である場合〕、ホスゲンを得る前の塩素中に存在している臭素の相当部分が、最終的には、得られるイソシアネートに、あるいは得られるイソシアネート中の種々の化学種のいずれかに結合した臭素となる〔これは特に、より多くの量の臭素を含む塩素(例えば、塩素中に50ppm〜500ppmの臭素が存在する)を使用して行うときに当てはまる〕、ということが見出された。このような一酸化炭素:塩素のモル比としては、例えば1.000:1.000より大きく1.020:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜2.0モル%以下)。例えば1.000:1.000より大きく1.015:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が0モル%超〜1.5モル%以下)。例えば1.000:1.000より大きく1.010:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜1.0モル%以下)。ホスゲンの製造を一酸化炭素の高過剰にて行うと、イソシアネート中に見出される結合形態の臭素はより少なくなる。
【0051】
本発明の製造方法の幾つかの実施態様によれば、得られるイソシアネートは、30〜500ppmの結合形態の臭素を、例えば30〜150ppmの結合形態の臭素を、例えば50〜150ppmの結合形態の臭素を含んでよい。
【0052】
したがって本発明のさらなる態様によれば、本発明の第1の態様に従った製造方法によって得られるイソシアネートが提供される。
本発明の第2の態様に従ったイソシアネートは、30〜500ppmの結合形態の臭素を、例えば30〜150ppmの結合形態の臭素を、例えば50〜150ppmの結合形態の臭素を含んでよい。
【0053】
幾つかの実施態様によれば、イソシアネートは、CIEカラーグレードにおけるL値が30より大きい色を有してよい。
本発明のさらなる態様によれば、本発明の第1の態様に従った製造方法によって得られるイソシアネートは、例えば硬質ポリウレタンフム、軟質ポリウレタンフォーム、ポリウレタン塗料、及びポリウレタン接着剤等のポリウレタンを得るのに使用することができる。
【0054】
本発明に従って得られた結果は驚くべきことであった。なぜなら、イソシアネートの製造に使用するためのホスゲンの製造に使用されるCOの過剰量をこのように変えると、望ましい態様にて生成物の色に相当な影響を及ぼす、ということはこれまでわかっていなかったからである。イソシアネート(例えばPMDI)の1つの品質面である色は、ホスゲンの製造に使用される塩素に対するCO過剰を調整することによって決定することができる。
【0055】
独立クレームと従属クレームは、本発明の特定の特徴と好ましい特徴を説明している。従属クレームからの特徴は、必要に応じて、独立クレーム又は他の従属クレームの特徴と組み合わせることができる。
【0056】
本発明の上記の特性、特徴及び利点、ならびに他の特性、特徴、及び利点は、例えば、本発明の原理を説明している以下の詳細な説明から明らかとなろう。この説明は、単に例を挙げるためのものであって、これによって本発明の範囲が限定されることはない。
【0057】
本発明を特定の実施態様に関して説明する。理解しておかねばならないことは、クレームにおいて使用されている「含む」は、そのあとに記載の手段に限定されると解釈すべきではなく、他の要素もしくは工程を除外しない、という点である。従って、「含む」は、明記されている特徴、工程、又は言及成分の存在を明記しているものと解釈すべきであるが、1つ以上の他の特徴、工程、もしくは成分、又はこれらの組み合わせの存在もしくは付加を除外してはいない。従って、「手段AとBを含む装置」という表現の範囲は、AとBだけからなる装置に限定されないものとする。該表現は、本発明に関して、装置の唯一の関連成分がAとBである、ということを意味している。本明細書全体を通して、「1つの実施態様」又は「ある実施態様」という言及がなされている。このような言及は、その実施態様に関連して説明されている特定の特徴が、本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれていることを示している。従って、本明細書全体を通して種々の場所で「1つの実施態様において」又は「ある実施態様において」というフレーズが現われても、必ずしも全てが同じ実施態様に言及しているわけではない(そういうことはありうるけれども)。さらに、当業者にとってはこの説明から明らかなように、特定の特徴もしくは特性を、1つ以上の実施態様において任意の適切な仕方で組み合わせることができる。
【0058】
下記の用語は、単に本発明の理解に役立つように用いられている。
「分子形態の臭素」とは、完全に臭素原子からなる分子を意味している。「結合形態の臭素」とは、臭素だけでなく、特定の原子とは異なる原子も含む分子を意味している。
【0059】
特に明記しない限り、「ppm」は100万重量部当たりの重量部を意味する。
本発明のプロセスによるイソシアネートの製造は、当業者に公知の反応スキームと反応シーケンスを使用して、すなわち、アミンもしくは2種以上のアミンの混合物と化学量論量を超える量のホスゲンとを反応させることによって行われる。基本的には、第一アミンもしくは2種以上の第一アミンの混合物とホスゲンとを反応させて、1つ以上のイソシアネート基を形成させる方法は全て使用することができる。
【0060】
ホスゲンは、直列、並列、又はこれらの任意の組み合わせにて操作することができる1つ以上の反応器において、一酸化炭素(CO)と塩素(Cl)とを1種以上の炭素触媒上で反応させることによって製造される。異なる触媒を、異なった反応器中にて同時に使用することができる。得られたホスゲン中に残存している未反応COは、分離することができ、必要に応じて求められる程度に精製することができ、そしてホスゲンプラント再循環することができる。
【0061】
一酸化炭素と塩素からのホスゲンの製造は、一酸化炭素と塩素をホスゲンに転化させるための後続の反応器を使用して、一段階反応もしくは多段階反応にて行うことができる。ホスゲンを得るのに多段階反応が行われる場合(すなわち、一酸化炭素と塩素を反応させてホスゲンに転化させるために2つ以上の反応器を順々に使用する場合)、イソシアネートの色を適合させることは、少なくとも、一酸化炭素が過剰である反応器において(例えば、少なくとも、ホスゲンを製造するための反応器シーケンスの最後の反応器において)、一酸化炭素対塩素比を調整することによって行うことができる。これは特に、反応器のうちの1つから後続の反応器(例えば最後の反応器)へと流れていく生成物ストリーム中に塩素及び/又は一酸化炭素を加える、という場合である。反応器の幾つかは、化学量論量未満の量の一酸化炭素を使用して行うことができる。一酸化炭素過剰で行われる反応器においては、実在の過剰量(モル)又は一酸化炭素:塩素のモル比を、化学量論量よりやや高めに、特により低めのモル比範囲〔例えば、1.000:1.000より大きく1.025:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜2.5モル%以下、例えば0.00001モル%〜2.5モル%以下)〕に調整することで、供給されるホスゲンを使用して得られるイソシアネートの色を調整もしくは制御することが可能となる。このような一酸化炭素:塩素のモル比の範囲としては、例えば1.000:1.000より大きく1.020:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜2.0モル%以下)。例えば1.000:1.000より大きく1.015:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が、0モル%超〜1.5モル%以下)。例えば1.000:1.000より大きく1.010:1.000以下の範囲(すなわち、一酸化炭素の過剰分が0モル%超〜1.0モル%以下)。
【0062】
これとは別のケースでは、多段階反応において、後続の反応器間にさらなる一酸化炭素や塩素は加えられない。従って、イソシアネートの色を適合させることは、ホスゲンを製造するための反応器シーケンスの第1の反応器における過剰量(モル)を調整することによって行うことができる。
【0063】
さらなる工程において、ホスゲンと少なくとも1種のアミン化合物とを反応させて(すなわち、アミンのホスゲン化)イソシアネートを得る。
アミンのホスゲン化後、一部のCOが塩化水素ガスとともにプラントを出る。一般には、この塩化水素ガスが1つ以上のさらなる化学プロセスにおいて使用される〔「エクスポートされる」〕。一酸化炭素(必要に応じて、フレッシュな一酸化炭素、及びホスゲンの製造後に再循環される一酸化炭素)、塩素、ホスゲン、エクスポート−HCl、及び再循環ガスストリームの組成は、ガスクロマトグラフィー、質量分析法、又は分光学的方法(紫外線−可視光線、赤外線、又は近赤外線等)等のオンライン分析法によってモニターすることができる。
【0064】
ホスゲンプラントの制御操作(すなわちホスゲンの製造)、ならびにその後の、対応するアミンのホスゲン化によるイソシアネート製造の制御操作(供給ガスストリームの所望比の達成に関して)は、手動介入によって、あるいは制御ソフトウェアと対応する弁システムによって行うことができ、必要に応じて、イソシアネート生成物の組成(例えばMDI生成物の組成)だけでなく、種々のガスストリームの1つ以上の組成及び/又は体積に基づいたインプットを含んでよい。
【0065】
本発明の1つの実施態様では、本発明のプロセス(すなわち、アミンもしくは2種以上のアミンの混合物とホスゲンとの反応)は、溶媒もしくは2種以上の溶媒の混合物中にて行われる。溶媒としては、イソシアネートの製造に適した全ての溶媒を使用することができる。これらの溶媒は、不活性の芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、又はこれらのハロゲン化誘導体であるのが好ましい。このような溶媒の例は、モノクロロベンゼン(MCB)やジクロロベンゼン(例えばo−ジクロロベンゼン)、トルエン、キシレン、及びナフタレン誘導体(例えば、テトラリンやデカリン)等の芳香族化合物;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、又はデカン等の、約5〜12個の炭素原子を有するアルカン;シクロヘキサン等のシクロアルカン;酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、又はジフェニルエーテル等の不活性エステルと不活性エーテル;である。
【0066】
アミンとしては、基本的には、ホスゲンと適切に反応してイソシアネートを生成することができる全ての第一アミンを使用することができる。適切なアミンは、基本的には、直鎖状又は分岐鎖状で、飽和又は不飽和の、全ての脂肪族第一モノアミンもしくはポリアミン、脂環式第一モノアミンもしくはポリアミン、又は芳香族第一モノアミンもしくはポリアミンである(但し、これらのアミンを、ホスゲンによってイソシアネートに転化させることができるという条件で)。適切なアミンの例は、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、この系列の対応する高級同族体、イソホロンジアミン(IPDA)、シクロヘキシルジアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、フェニレンジアミン、p−トルイジン、1,5−ナフチレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、2,4−トルエンジアミンと2,6−トルエンジアミンとの混合物、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ジフェニルメタンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミンと2,4’−ジフェニルメタンジアミンと2,2−ジフェニルメタンジアミンとの混合物、そしてさらに、上記アミンや上記ポリアミンの、より高分子量の異性体誘導体、オリゴマー誘導体、又はポリマー誘導体である。本発明の好ましい実施態様では、使用されるアミンは、ジフェニルメタンジアミン系のアミン又は2種以上のこのようなアミンの混合物である。
【0067】
本発明のプロセスが完了すると、上記化合物は対応するイソシアネートの形態をとる〔例えば、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、フェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4−トリルイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネート、トリレン2,6−ジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネートとトリレン2,6−ジイソシアネートとの混合物、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートとジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネートとジフェニルメタン2,2’−ジイソシアネートの2種以上の混合物、又は上記イソシアネートの、より高分子量のオリゴマー誘導体もしくはポリマー誘導体として、あるいは上記イソシアネートもしくはイソシアネート混合物の2種以上の混合物として〕。
【0068】
本発明の好ましい実施態様では、使用されるアミンは、第一アミンであるジフェニルメタンジアミン(MDA)異性体、又はそれらのオリゴマー誘導体もしくはポリマー誘導体(すなわち、ジフェニルメタンジアミン系のアミン)である。ジフェニルメタンジアミンとそのオリゴマーもしくはポリマーは、例えば、アニリンとホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られる。このようなオリゴアミンもしくはポリアミン又はこれらの混合物も、本発明の好ましい実施態様において使用される。
【0069】
本発明に従って製造され、本発明の目的に沿って使用されるホスゲンと、上記アミンの1種又は2種以上のこのようなアミンの混合物との反応は、1つ以上の段階にて連続方式又はバッチ方式で行うことができる。一段階反応が行われる場合、この反応は約60〜200℃(例えば、約130〜180℃)の温度で行うのが好ましい。ホスゲン化反応は、例えば二段階で行うことができる。ここでは最初の段階において、アミンもしくは2種以上のアミンの混合物とホスゲンとの反応が約0〜130℃(例えば、約20〜110℃や約40〜70℃)の温度で行われ、アミンとホスゲンとの反応に対しては、約1分〜約2時間の反応時間が許容される。引き続き次の段階において、温度を、例えば、約1分〜約5時間で(好ましくは、約1分〜約3時間で)約60℃から約190℃に(特に、約70℃から約170℃に)上昇させる。本発明の好ましい実施態様では、反応は二段階で行われる。
【0070】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、ホスゲン化反応時に、大気圧より高い圧力(例えば約100バール以下、好ましくは約1〜50バール、又は約2〜25バール、又は約3〜12バール)を加えることができる。しかしながら反応は、大気圧下でも、あるいは周囲圧力未満の圧力でも行うことができる。
【0071】
過剰のホスゲンは、反応後に約50〜180℃の温度で除去するのが好ましい。微量の残留溶媒の除去は減圧下(例えば約500ミリバール、好ましくは100ミリバール未満)で行うのが好ましい。一般には、種々の成分がそれらの沸点の順序で分離される。種々の成分の混合物を単一の工程段階にて分離することも可能である。
【0072】
本発明はさらに、本発明のプロセスによって製造することができる淡色化イソシアネートを提供する。当業者によく知られている、イソシアネートの特性決定に一般的に使用される全ての分析法と同様に、全塩素含量(例えば蛍光X線によって)、全臭素含量(例えば蛍光X線によって)、及び色(例えば、HunterLab値やCIE L値)を測定することにより、本発明によって製造される淡色化イソシアネートをさらに特性決定することができる。
【0073】
本発明はさらに、ウレタンコンパウンド(特にポリウレタン)を製造するために、本発明のプロセスによって製造できるイソシアネートを使用することを提供する。本発明の好ましい実施態様では、本発明のイソシアネートは、ポリウレタンフォーム(例えば、硬質フォーム、半硬質フォーム、インテグラルフォーム、及び軟質フォーム)を製造するのに使用される。
【0074】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
【実施例】
【0075】
比較例1・2
比較例1(工業プロセス)においては、約100ppmの臭素(形態は未特定)を含有する塩素ガスとCOガスを、炭素触媒を収容するホスゲン化反応器に、CO対塩素の過剰量(モル)が17.10モル%(すなわち、一酸化炭素:塩素のモル比が1.171:1.000)となるように供給した。反応器はチューブ・シェル反応器であり、この反応器では、管に触媒が充填され、管中の触媒上で塩素と一酸化炭素を反応させることによって得られる熱エネルギーを取り除くための冷却液がシェル側に供給される。得られたホスゲンを液化し、MCBと混合し、撹拌容器のカスケードにおいて、粗製ポリメリックMDAをMCB中に溶解して得られる溶液と反応させてイソシアネートを製造した。ホスゲン化反応器を出た混合物からホスゲンとモノクロロベンゼンを除去し、先行技術に従って熱的に後処理した。得られたMDIの(CIE L色空間における)L値は24.7であった。17.1モル%のCO対塩素の過剰量(モル)を標的値として設定したが、実在のモル比又は過剰量(モル)は、工業プロセスにおいて適用可能な、一般的に許容可能な範囲内で変動した。
【0076】
比較例2の場合は、約100ppmの臭素(形態は未特定)を含有する塩素ガスと一酸化炭素ガスの体積を、CO対塩素の過剰量(モル)が5モル%(すなわち、一酸化炭素:塩素のモル比が1.050:1.000)となるように変更し、これらのガスを、比較例1にて使用したのと同じ反応器に供給した。得られたホスゲンを液化し、MCBと混合し、撹拌容器のカスケードにおいて、粗製ポリメリックMDAをMCB中に溶解して得られる溶液と反応させてイソシアネートを製造した。ホスゲン化反応器を出た混合物からホスゲンとモノクロロベンゼンを除去し、先行技術に従って熱的に後処理した。得られたMDIの(CIE L色空間における)L値は24.2であった。5モル%のCO対塩素の過剰量(モル)を標的値として設定したが、製造時においては、ほぼ受け入れ可能な範囲内で、実在の過剰量(モル)とのずれが見られた。
【0077】
上記のことから明らかなように、一酸化炭素/塩素モル比を1.171:1.000から1.050:1.000に調整もしくは変更しても、得られるMDIの色に対してはほんのわずかな影響しか及ぼさない。約12モル%の一酸化炭素の過剰分に対し(CIE L色空間における)L値について単に0.5ポイントの差が生じただけなので、この範囲でモル比を調整しても、得られるMDIの色を調整又は制御できない。
【0078】
実施例1〜7
本発明による実施例1においては、同じ工業プロセスにて、そして同じ反応器を使用して、約100ppmの臭素(形態は未特定)を含有する塩素ガスと一酸化炭素ガスを、炭素触媒を収容するホスゲン反応器に、CO対塩素の過剰量(モル)が0.4モル%となるように供給した。得られたホスゲンを液化し、MCBと混合し、撹拌容器のカスケードにおいて、粗製ポリメリックMDAをMCB中に溶解して得られる溶液と反応させてイソシアネートを製造した。ホスゲン化反応器を出た混合物からホスゲンとモノクロロベンゼンを除去し、先行技術に従って熱的に後処理した。得られたMDIのL値(CIE L色空間における)は42.9であった。
【0079】
第2の実施例は、同じ工業プロセスにて、約100ppmの臭素(形態は未特定)を含有する塩素ガスと一酸化炭素ガスを、炭素触媒を収容するホスゲン反応器に、CO対塩素の過剰量(モル)が0.8モル%となるように供給して、実施した。得られたホスゲンを液化し、MCBと混合し、撹拌容器のカスケードにおいて、粗製ポリメリックMDAをMCB中に溶解して得られる溶液と反応させてイソシアネートを製造した。ホスゲン化反応器を出た混合物からホスゲンとモノクロロベンゼンを除去し、先行技術に従って熱的に後処理した。得られたMDIのL値(CIE L色空間における)は41.1であった。
【0080】
同じ工業プロセスを、一酸化炭素:塩素のモル比を種々設定して、表1の実施例3〜7に記載のように実施した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から明らかなように、一酸化炭素の過剰分を少なめに保持した場合(例えば、0モル%〜2.5モル%の範囲、0モル%〜2.0モル%の範囲、好ましくは0モル%〜1.5モル%の範囲、さらに好ましくは0モル%〜1.0モル%の範囲)、一酸化炭素の過剰分を若干調整するだけで、供給されるホスゲンから得られるイソシアネートの色の調整又は制御が可能となる。一酸化炭素の過剰分を調整することで、他のファクターに起因してプロセスにおいて生じる色のずれや変化を、少なくともある程度は埋め合わせることができる。
【0083】
比較例と実施例との結果を比較すると、約100ppmの臭素を含有する塩素とCOから、COの過剰分を慎重に制御して製造されるホスゲンを使用すると、粗製MDIの色が淡色化されることがわかる。イソシアネートの色を改良することができ、制御された状態に保持することができることがわかった。
【0084】
当然であるが、本発明に従った実施態様を提供する上で好ましい実施態様及び/又は材料について説明してきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良や変更を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)塩素を供給する工程;
(b)一酸化炭素を供給する工程;
(c)塩素と一酸化炭素とを反応させてホスゲンを得る工程であって、一酸化炭素が、調整可能な過剰量(モル)で供給される工程;
(d)アミン化合物を供給し、ホスゲンでアミン化合物をホスゲン化してイソシアネートを得る工程;
を含む、アミン化合物からイソシアネートを製造する方法であって、
調整可能な過剰量(モル)を調整してイソシアネートの色を調整することをさらに含む上記方法。
【請求項2】
工程cにおける一酸化炭素:塩素のモル比が、1.000:1.000より大きく1.025:1.000以下の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩素が、分子形態もしくは結合形態の臭素を50〜500ppmの範囲で含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記過剰量(モル)を調整することが、
得ようとするイソシアネートの要求される色に基づいて、一酸化炭素の過剰量(モル)の目的値を特定すること;
塩素と一酸化炭素の供給を制御および調整して、一酸化炭素の実在の過剰量(モル)を過剰量(モル)の目的値に近づけ、必要に応じて過剰量(モル)の目的値に合わせること;
を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アミン化合物がジアミノジフェニルメタンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
イソシアネートの色が、CIEカラーグレードで30より大きいL値である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記イソシアネートが、結合形態の臭素を30〜150ppm含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得られるイソシアネート。
【請求項9】
イソシアネートの色が、CIEカラーグレードで30より大きいL値である、請求項8に記載のイソシアネート。
【請求項10】
前記イソシアネートが、結合形態の臭素を30〜150ppm含む、請求項8又は9に記載のイソシアネート。
【請求項11】
ポリウレタンを得るための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得られるイソシアネートの使用。

【公表番号】特表2012−509853(P2012−509853A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536819(P2011−536819)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064703
【国際公開番号】WO2010/060773
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(500030150)ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】