説明

イソパラフィンの存在下におけるオレフィンのイオン性液体オリゴマー化により生成される潤滑油又は燃料ブレンド原料

【課題】材料の平均分子量及び枝分かれを好ましくは維持しながら又はより好ましくは増加させながら、低度の不飽和(低濃度の二重結合)を有する潤滑油又は留出燃料出発原料を生成し、それにより深い水素化の必要性を減少させる方法を提供する。
【解決手段】酸性クロロアルミネートイオン性液体触媒系を使用する、オレフィン及びイソパラフィンを含む混合物のオリゴマー化/アルキル化によりアルキル化(「キャップした」)オレフィンオリゴマーを生成することによる、高品質の潤滑油又は留出燃料成分を生成する過程及び方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
オレフィンオリゴマー及び比較的長鎖のオレフィンは、燃料及び潤滑油成分又はブレンド原料の製造に使用することができる。上記の使用の双方におけるオレフィンの使用に関する1つの問題は、オレフィン二重結合が望ましくない場合があることである。オレフィン二重結合は、燃料及び潤滑油の両方において問題を生じる。オレフィンは、燃料中でオリゴマー化して「ゴム」沈殿物を形成し得る。燃料中のオレフィンは、大気環境問題にも関係している。オレフィンは、酸化することもあり、このことは、潤滑油において特に問題になり得る。問題を最小化する1つの方法は、二重結合の一部又は全部を水素化して飽和炭化水素を形成することである。これを行う方法は、米国公開出願第2001/0001804号に記載されており、これは本明細書にその全体を組み込む。水素化は、潤滑油又は燃料中のオレフィンの濃度を最小化する有効な方法であり得るが、それは水素及び水素化触媒の存在を必要とし、これらの両方とも高価であり得る。同様に過剰な水素化は水素化分解をもたらし得る。水素化分解は、オレフィンをますます低濃度に水素化しようとするにつれて増加し得る。オリゴマー化における目標がより高分子量材料を生成することである場合に、水素化分解は、それがより低分子量の材料を生成することから一般的に望ましくない。方向的には、材料の平均分子量を減少させるのではなく、増加させることは一般的に好ましいと考えられる。したがって、水素化法を使用する場合、任意の水素化分解又は水素化脱アルキル化を最小化しながら、オレフィンをできるだけ深く水素化することが望ましい。これは本質的に難しく実現し難い傾向がある。
【0002】
わずかに枝分かれした炭化水素材料の水素化分解は、より少ない枝分かれをもたらすこともある。分解は、三級中心及び二級中心において好まれる傾向がある。例えば、枝分かれした炭化水素は、二級中心で分解して2つのより直鎖状の分子を形成することがあり、このことも方向的に望ましくない。
【0003】
潜在的には、イオン性液体触媒系は、オレフィンオリゴマーを生成するための、直鎖αオレフィンなどのオレフィンのオリゴマー化に使用することができる。ポリαオレフィンを生成するためのイオン性液体触媒の使用を記載している特許は、米国特許第6395948号であり、これはその全体を参照により本明細書に組み込む。イオン性液体中のαオレフィンのオリゴマー化方法を開示している公開特許出願は欧州特許第791643号である。
【0004】
イオン性液体触媒系は、イソパラフィン−オレフィンアルキル化反応にも使用されている。オレフィンによるイソパラフィンのアルキル化方法を開示している特許は米国特許第5750455号及び米国特許第6028024号である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
材料の平均分子量及び枝分かれを好ましくは維持しながら又はより好ましくは増加させながら、低度の不飽和(低濃度の二重結合)を有する潤滑油又は留出燃料出発原料を生成し、それにより深い水素化の必要性を減少させる方法を有することは望ましいと考えられる。本発明は、まさにこのような所望の特徴を有する新規な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、オレフィンオリゴマーの残余の二重結合の少なくとも一部を「キャップ」するためのイソパラフィンを用いるオレフィンオリゴマーのアルキル化によって所望の鎖長範囲のオレフィンオリゴマーを生成するためのオレフィンのオリゴマー化による燃料又は潤滑油成分を生成する方法を提供する。
【0007】
本発明の特定の実施形態は、ブレンステッド酸の存在下で、1種又は複数のオレフィンを含む流れ及び1種又は複数のイソパラフィンを含む流れを、酸性クロロアルミネートイオン性液体を含む触媒と接触させて、4未満の臭素価を有するアルキル化オリゴマー生成物を形成することを含む、留出燃料成分又は潤滑油成分を生成する方法を提供する。
【0008】
本発明の別の実施形態においては、オリゴマー化/アルキル化条件において、オレフィン及びイソパラフィンを含む混合物を、酸性クロロアルミネートイオン性液体を含むオリゴマー化/アルキル化ゾーンに通して、模擬蒸留(SIMDIST)で少なくとも1000度のTBP@50及び4未満の臭素価を有するアルキル化オリゴマー生成物を形成することを含む、燃料又は潤滑油を生成するための方法が開示される。
【0009】
2個以上のオレフィン分子のオリゴマー化は、1個の残余の二重結合を有する長い分枝鎖分子を一般的に含むオレフィンオリゴマーの形成をもたらす。本発明は、二重結合の濃度を減少させて同時に所望の燃料又は潤滑油の品質を高める新規な方法を提供する。本発明は、低オレフィン濃度を有する所望の生成物を達成するのに必要な水素化仕上げの量も減少させる。オレフィン濃度は、臭素指数又は臭素価によって求めることができる。臭素価は、ASTM D1159試験によって求めることができる。臭素指数は、ASTM D2710によって求めることができる。試験法D1159及びASTM D2710は、参照によりその全体を本明細書に組み込む。臭素指数は、事実上、試験の条件下で100グラムのサンプルと反応する臭素(Br)のミリグラム数である。臭素価は、事実上、試験の条件下で100グラムの試料と反応する臭素のグラム数である。
【0010】
本出願においては、いくつかの生成物について蒸留データを模擬蒸留(SIMDIST)によって求めた。模擬蒸留(SIMDIST)は、必要に応じてASTM D6352又はASTM D2887の使用を伴う。ASTM D6352又はASTM D2887は参照によりその全体を本明細書に組み込む。蒸留曲線もASTM D86を用いて求めることができ、このASTM D86は参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0011】
本発明の好ましい実施形態においては、HCl又は陽子を供給する成分が反応混合物に添加される。理論によって制限されることを望むものではないが、HClなどのブレンステッド酸の存在は、イオン性液体触媒系の活性及び酸性度を非常に高めると考えられる。
【0012】
他の要素の中で、本発明は、水素化を用いずに又は最小の水素化仕上げしか用いずに減少した濃度のオレフィンを有する潤滑油基油又は燃料ブレンド原料を製造する驚くべき新方法を含む。本発明は、オリゴマーの分子量を増加すること及びイソパラフィン基のオリゴマー骨格への組込みによって枝分かれを増加することによって得られるオレフィンオリゴマーの価値も増加させる。これらの性質は共に、特に、本発明に好ましい原材料(すなわち、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素)などの高度に直鎖状の炭化水素で開始する場合に、生成物に重要な価値を添加することができる。本発明は、比較的穏和な条件下においてイソパラフィンでオレフィン又はオリゴマー化オレフィンをアルキル化するための酸性クロロアルミネートイオン性液体の使用に基づく。驚くべきことに、アルキル化は、オリゴマー化と事実上同じ条件下で起こり得る。好ましくは、アルキル化及びオリゴマー化反応は、所望の性質を有するアルキル化オリゴマーをもたらす共通の反応ゾーンにおいて一緒に起こる。
【0013】
本発明の好ましい触媒系は、酸性クロロアルミネートイオン性液体系である。より好ましくは、酸性クロロアルミネートイオン性液体系は、ブレンステッド酸の存在下で使用される。好ましくは、ブレンステッド酸はハロハロゲン化物であり、最も好ましくはHClである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、イオン性液体媒体中におけるオレフィンの酸触媒化オリゴマー及びイソパラフィンを用いるアルキル化によって、減少したオレフィン含有量及び改良された品質を有する生成物を形成することによる、燃料又は潤滑油成分の生成用の新規な方法を提供する。驚くばかりに、本発明者らは、オレフィンのオリゴマー化及びオレフィン及び/又はそのオリゴマーのイソパラフィンを用いたアルキル化は、単一の反応ゾーンにおいて一緒に実施することができることを見出した。生じるアルキル化又は部分アルキル化オリゴマーの流れは、燃料又は潤滑油ブレンド原料としての使用に非常に望ましい性質を有する。特に、本発明は、増加した枝分かれ、より高い分子量、及びより低い臭素価などの改善された性質を有する、留出燃料、潤滑油、留出燃料成分、潤滑油成分、又は溶剤を製造する方法を提供する。
【0015】
イオン性液体
イオン性液体は、完全にイオンで構成され、処理温度以下で一般的に液体である化合物の種類である。しばしば、完全にイオンで構成された塩は高融点、例えば450℃超を有する固体である。これらの固体は、その融点を超えて加熱された場合に、「溶融塩」として一般的に知られている。例えば、塩化ナトリウムは、800℃の融点を有する一般的な「溶融塩」である。イオン性液体は、それらが低融点、例えば−100℃から200℃を有するという点で「溶融塩」と異なる。イオン性液体は、非常に広い温度範囲にわたって液体である傾向があり、あるものは300℃以上までの液体範囲を有する。イオン性液体は一般的に不揮発性であり、事実上蒸気圧を有さない。多くは空気及び水に安定であり、広範囲の無機、有機、及びポリマー材料用の良好な溶媒であり得る。
【0016】
イオン性液体の性質は、カチオンとアニオンの組合せを変えることによって調整することができる。イオン性液体及びいくらかのその商業的用途は、例えば、J.Chem.Tech.Biotechnol、68:351〜356(1997);J.Phys.Condensed Matter、5:(supp 34B):B99〜B106(1993);Chemical and Engineering News、Mar.30、1998、32〜37;J.Mater.Chem.、:2627〜2636(1998);及びChem.Rev.、99:2071〜2084(1999)に記載されており、この内容は参照により本明細書に組み込む。
【0017】
多くのイオン性液体はアミンベースである。最も一般的なイオン性液体の中には、窒素含有複素環(環状アミン)、好ましくは窒素含有芳香族環(芳香族アミン)を、アルキル化剤(例えば、ハロゲン化アルキル)と反応させて四級アンモニウム塩を形成すること、及び種々のルイス酸又はその共役塩基とイオン交換又は他の適切な反応を実施してイオン性液体を形成することによって形成されるものがある。適切な芳香族複素環の例には、ピリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、並びにピロール及びその誘導体が含まれる。これらの環は、窒素を含む直鎖、分枝又は環式C1〜20アルキル基に、様々なアルキル化剤でアルキル化して広範囲のアルキル基を組み込むことができるが、C1〜12を超えるアルキル基はイオン性液体よりも望ましくない固体生成物を生成し得るので、好ましくはC1〜12アルキル基である。ピリジニウム及びイミダゾリウムベースのイオン性液体は、おそらく最も一般的に使用されるイオン性液体である。環式及び非環式四級アンモニウム塩を含めた他のアミンベースのイオン性液体は頻繁に使用される。ホスホニウム及びスルホニウムベースのイオン性液体も使用されている。
【0018】
使用されている対アニオンには、クロロアルミネート、ブロモアルミネート、塩化ガリウム、テトラフルオロボレート、テトラクロロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ナイトレート、トリフルオロメタンスルホネート、メチルスルホネート、P−トルエンスルホネート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、テトラクロロアルミネート、テトラブロモアルミネート、パークロレート、ヒドロキシドアニオン、二塩化銅アニオン、三塩化鉄アニオン、アンチモンヘキサフルオリド、二塩化銅アニオン、三塩化亜鉛アニオン、並びに種々のランタン、カリウム、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、及び他の金属イオンが含まれる。本発明に使用されるイオン性液体は、好ましくは酸性ハロアルミネートであり、好ましくはクロロアルミネートである。
【0019】
本発明におけるイオン性液体のカチオンの形態は、ピリジニウム、及びイミダゾリウムからなる群から選択することができる。本発明の方法において特に有用であることが見出されたカチオンにはピリジニウムが含まれる。
【0020】
本発明の方法において使用することができる好ましいイオン性液体には、酸性クロロアルミネートイオン性液体が含まれる。本発明において使用される好ましいイオン性液体は、酸性ピリジニウムクロロアルミネートである。本発明の方法において有用であるより好ましいイオン性液体は、アルキル−ピリジニウムクロロアルミネートである。本発明の方法において有用である更により好ましいイオン性液体は、長さが1から6個の炭素原子の単一の直鎖アルキル基を有するアルキル−ピリジニウムクロロアルミネートである。有効であることを立証した特定のイオン性液体は1−ブチル−ピリジニウムクロロアルミネートである。
【0021】
本発明のより好ましい実施形態においては、1−ブチル−ピリジニウムクロロアルミネートがブレンステッド酸の存在下で使用される。理論によって制限されるものではないが、ブレンステッド酸は促進剤又は助触媒として作用する。ブレンステッド酸の例は、硫酸、HCl、HBr、HF、リン酸、HIなどである。陽子供与体である他の強酸も適切なブレンステッド酸であり得る。
【0022】
原材料
本発明の方法においては、重要な原材料の1つはオレフィン炭化水素を含む。オレフィン基はオリゴマー化反応及びアルキル化反応のための反応点を提供する。オレフィン炭化水素は、かなり純粋なオレフィン炭化水素留分であってよく、又は異なる鎖長、したがって広い沸点範囲を有する炭化水素の混合物であってよい。オレフィン炭化水素は末端オレフィン(αオレフィン)であってよく、又は内部オレフィン(内部二重結合)であってよい。オレフィン炭化水素鎖は、直鎖又は分枝鎖又は両方の混合物のいずれかであってよい。本発明に使用可能な原材料は直鎖パラフィンなどの非反応性の希釈剤を含むことができる。
【0023】
本発明の一実施形態においては、オレフィン原材料はCから約C30の大部分直鎖オレフィンの混合物を含む。オレフィンは大部分αオレフィンであるが完全にαオレフィンではない。
【0024】
本発明の別の実施形態においては、オレフィン原材料は少なくとも50%の単一のαオレフィン種を含むことができる。
【0025】
本発明の別の実施形態においては、オレフィン原材料は、エチレンオリゴマー化によって製造される、高純度の直鎖αオレフィン(NAO)方法からのNAO留分を含むことができる。
【0026】
本発明の一実施形態においては、本発明の方法へのオレフィン原材料の一部又は全部は、熱分解された炭化水素、好ましくは分解ワックス、より好ましくはフィッシャー−トロプシュ(FT)法からの分解ワックスを含む。FT生成物の分解によってオレフィンを製造する方法が米国特許第6497812号に開示されており、これは参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0027】
本発明の方法においては、別の重要な原材料はイソパラフィンである。最も簡単なイソパラフィンはイソブタンである。イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、及び他のより高級なイソパラフィンも本発明の方法に使用可能である。経済性及び供給力がイソパラフィン選択の主要な要因である。より軽いイソパラフィンは、その低いガソリンブレンド価値(その比較的高い蒸気圧により)によって、より安価であり、より入手が容易である傾向がある。軽いイソパラフィンの混合物も本発明に使用することができる。C〜Cイソパラフィンなどの混合物を使用することができ、分離コストが低いので有利であり得る。イソパラフィン原材料流れは直鎖パラフィンなどの希釈剤を含有することもできる。これは、接近した沸点のパラフィンからイソパラフィンを分離することのコストを削減することによってコスト削減となり得る。直鎖パラフィンは本発明の方法において非反応性の希釈剤になる傾向がある。
【0028】
本発明の任意選択の実施形態においては、本発明において製造された得られたアルキル化オリゴマーは水素化してオレフィンの濃度及びしたがって臭素価を更に減少させることができる。水素化後に、潤滑油成分又は基油は0.8未満、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.3未満、更により好ましくは0.2未満の臭素価を有する。
【0029】
本発明の方法のためのオリゴマー化/アルキル化条件には、約0から約200℃まで、好ましくは約0から約150℃まで、より好ましくは約0から約100℃まで、最も好ましくは20から70℃までの温度が含まれる。
【0030】
要約すると、本発明の方法の潜在的な利益には、
水素化処理法/水素化仕上げ用の減少した資本経費
減少した水素及び大量の水素化の必要性によるより低い運転経費
1段階過程におけるオリゴマー化及びアルキル化用の同一イオン性液体触媒系の使用
生成物の改善された枝分かれ特性
生成物の増加した全体分子量
高価な留出燃料又は潤滑油成分の液体収量を増加させるための低コスト原材料(イソパラフィン)の組込み
が含まれる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
新しい1−ブチル−ピリジニウムクロロアルミネートイオン性液体の調製
1−ブチル−ピリジニウムクロロアルミネートは、不活性雰囲気中でニートな1−ブチル−ピリジニウムクロリド(固体)をニートな固体三塩化アルミニウムと混合することによって調製される室温イオン性液体である。1−ブチル−ピリジニウムクロリド及び対応する1−ブチル−ピリミジウムクロロアルミネートの合成を以下に記載する。2LのTeflonでライニングしたオートクレーブ中で、400グラム(5.05mol)の無水ピリジン(純度99.9%、Aldrichより購入)を650グラム(7mol)の1−クロロブタン(純度99.5%、Aldrichより購入)と混合した。このニートな混合物を密閉して125℃において自然圧下で終夜撹拌した。オートクレーブを冷却して通気させた後、この反応混合物をクロロホルム中に溶解し、3リットル丸底フラスコに移した。過剰な塩化物、未反応のピリジン及びクロロホルム溶媒を除去するための、減圧下におけるロータリーエバポレーター(湯浴中)でのこの反応混合物の濃縮によって、淡褐色の固体生成物が得られた。この得られた固体を温アセトン中に溶解し、冷却及びジエチルエーテルの添加により純粋な生成物を沈殿させることによって、この生成物の精製を行った。ろ過及び真空下の乾燥及びロータリーエバポレーターでの加熱によって750グラム(収率88%)の所望の生成物がオフホワイトの光沢のある固体として得られた。H−NMR及び13C−NMRは所望の1−ブチル−ピリジニウムクロリドに理想的であり、不純物の存在はNMR分析で観測されなかった。
【0032】
以下の手順により乾燥1−ブチル−ピリジニウムクロリド及び無水塩化アルミニウム(AlCl)をゆっくりと混合することによって、1−ブチル−ピリジニウムクロロアルミネートを調製した。1−ブチル−ピリジニウムクロリド(上記に記載のとおり調製された)を真空下80℃において48時間乾燥して残余の水を除去した(1−ブチル−ピリジニウムクロリドは吸湿性(hydroscopic)であり空気への曝露から容易に水を吸収する)。500グラム(2.91mol)の乾燥1−ブチル−ピリジニウムクロリドをグローブボックス中の窒素雰囲気中の2リットルビーカーに移した。次いで、777.4グラム(5.83mol)の無水粉末状AlCl(99.99%、Aldrichから)を、極めて発熱性の反応の温度を制御するために少しずつ(撹拌しながら)添加した。全てのAlClを添加するとすぐに、得られた琥珀色に見える液体をグローブボックス中で終夜穏やかに撹拌させた。次いで、この液体をろ過して溶解されていない任意のAlClを除去した。得られた酸性1−ブチル−ピリジニウムクロロアルミネートを、本出願における実施例用の触媒として使用した。
【化1】

【0033】
(実施例2)
イソブタンの存在下でのイオン性液体中の1−デセンのオリゴマー化
10モル%のイソブタンの存在下で酸性1−ブチル−ピリジニウムクロロアルミネート中で、1−デセンのオリゴマー化を実施した。促進剤としてのHClの存在下で反応を行った。以下の手順は過程を一般的に記載する。高架式撹拌機に取り付けられた300ccオートクレーブ中の42グラムの1−ブチル−ピリジニウムクロロアルミネートに、101グラムの1−デセン及び4.6グラムのイソブタンを添加し、オートクレーブを密閉した。次いで、0.4グラムのHClを導入し、撹拌を開始した。この反応物を50℃に加熱した。この反応物は発熱性であり、温度は88℃に急速に上昇した。温度は数分のうちに44℃に戻り、50℃にもっていき、反応物を自然圧(この場合は大気圧)で1時間、約1200rpmで激しく撹拌した。次いで、撹拌を停止し、反応物を室温に冷却した。この内容物を放置して沈殿させ、この有機層(イオン性液体に非混和性)をデカントし、0.1N KOH水溶液で洗浄した。この無色の油を模擬蒸留及び臭素分析で分析した。臭素価は2.6であった。臭素価は、イソブタンの不存在下での1−デセンオリゴマー化で通常観測されるそれに比べて非常に少ない。iCの不存在下での1−デセンオリゴマー化の臭素価は、オリゴマー化反応に使用される触媒、接触時間及び触媒量に基づき7.5〜7.9の範囲である。
【0034】
表1は、出発原料1−デセン、iCの存在下の1−デセンオリゴマー化生成物、iC無しでの1−デセンオリゴマー化生成物、及び過剰なiCを用いた1−デセンのアルキル化生成物の臭素価を比較している。
【表1】

【0035】
上記のデータは、in situオリゴマー化/アルキル化(イソパラフィンをオリゴマー化反応器に導入する場合)はオレフィン濃度の低い油をもたらすことを示唆している。表1中のデータは、in situオリゴマー化/アルキル化からの生成物、純粋なオリゴマー及び2段階反応におけるオリゴマーのイソブタンによるアルキル化から得られた生成物のオレフィン性(olefinicity)を比較している。
【0036】
(実施例3)
イソブタンの存在下でのαオレフィンの混合物のオリゴマー化
1−ヘキセン:1−オクテン:1−デセンの1:1:1混合物を、イソブタンの存在下で、1−デセンのイソブタンの存在下におけるオリゴマー化について前述した反応条件(100グラムのオレフィン、20グラムのIL触媒、助触媒としての0.25グラムのHCl、50℃、自然圧、1時間)でオリゴマー化した。この生成物をIL触媒から分離し、IL層をヘキサンですすぎ、このヘキサンをデカントし生成物に添加した。この生成物及びヘキサン洗浄液を0.1N NaOHで処理して残余のAlClを除去した。この有機層を集め無水MgSO上で乾燥した。濃縮(約70℃の湯浴中における減圧下のロータリーエバポレーターでの)によって、粘性の黄色の油としてのオリゴマー生成物が得られた。下記の表2に、イソブタンの存在下のオレフィン混合物のアルキル化オリゴマー生成物の模擬蒸留、粘度、並びに流動点及び曇り点データを示す。
【表2】

【0037】
(実施例4)
様々なイソブタン濃度の存在下におけるイオン性液体中の1−デセンのオリゴマー化
様々なモル%のイソブタンの存在下で酸性1−ブチル−ピリジニウムクロロアルミネート中で、1−デセンのオリゴマー化を実施した。促進剤(助触媒)としてのHClの存在下で反応を行った。以下の手順は過程を一般的に記載する。高架式撹拌機に取り付けられた300ccオートグレーブ中の42グラムの1−ブチル−ピリジニウム−クロロアルミネートに、101グラムの1−デセン及び4.6グラムのイソブタンを添加し、オートクレーブを密閉した。次いで、0.2〜0.5グラムのHClを反応器に導入し、次いで撹拌を開始した。反応は発熱性であり、温度は88℃に急速に上昇した。温度は40℃台の中間に急速に落下し、50℃までもっていき、残りの反応時間の間、約50℃に保った。この反応物を自然圧で約1時間激しく撹拌した。撹拌を停止し、この反応物を室温に冷却した。この内容物を放置して沈殿させ、この有機層(イオン性液体に非混和性)をデカントし、0.1N KOH水溶液で洗浄した。回収した油を、模擬蒸留、臭素分析、粘度、粘度指数、及び流動点と曇り点によって特徴づけた。
【0038】
下記の表3は、様々な1−デセン/イソブタン比の得られた油の性質を示す。全ての反応を20グラムのイオン性液体触媒の存在下で50℃において約1時間行った。
【表3】

【0039】
表3に示されたデータは反応物に添加されたイソブタンの量は生成された油の沸点範囲に影響を及ぼすことを明らかに示している。表3に示されたとおり、反応物中のイソブタンのより高い濃度において、より低い沸点留分により多くの炭化水素がある。これは、より多くのイソブタンが存在する場合に、より多くのアルキル化が反応に関与していることを示している。より多くのイソブタンが存在する場合、イソブタンのより低い濃度に比べて、C14を生成するiCとの1−デセンアルキル化及びC24を生成するデセン二量体アルキル化がより優勢になる。したがって、枝分かれ及びオリゴマー化の程度を、オレフィン、イソパラフィン、オレフィン/イソパラフィン比、接触時間及び反応条件の選択によって調整することができる。アルキル化オリゴマーは、そのオレフィン部位(olefinic site)を「キャップすること」のために更なるオリゴマー化にもはや関与せず、最終的なオリゴマー鎖は、おそらく直鎖オリゴマー生成物に比べてより短いが、より多くの枝分かれを有することになる。オリゴマー化経路は主要な機構であるが、イソブタンを用いる1−デセン及びそのオリゴマーのアルキル化は化学反応に関与することは非常に明確である。
【0040】
下記の表4は表3の反応から得られた生成物のいくらかの物理的性質を比較している。
【表4】

【0041】
5.5の1−デセン/iC比において行ったオリゴマー化/アルキル化を同一の原材料比及び条件で数回繰り返した。繰り返したサンプル中の100℃における粘度(viscosity@100)は6.9〜11.2の範囲に及んだ。VIは156〜172の範囲に及んだ。全ての繰り返したサンプルは10%〜15%の範囲に及ぶ低沸点留分(775°F未満)を含んだ。低沸点留分はVIに影響を及ぼすと考えられる。
【0042】
表4に示された臭素価は、イソブタンの不存在下での1−デセンオリゴマー化で通常観測されるのと比べて格段に小さい。iCの不存在下での1−デセンオリゴマー化の臭素価は、オリゴマー化反応に使用される触媒、接触時間及び触媒量に基づき7.5〜7.9の範囲である。上記に示されたように、同時のアルキル化及びオリゴマー化は、所望の臭素価、VI、粘度、並びに流動点及び曇り点を有するオリゴマー生成物をもたらす。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
留出燃料成分又は潤滑油成分を生成する方法であって、ブレンステッド酸の存在下で、1種又は複数のオレフィンを含む流れ及び1種又は複数のイソパラフィンを含む流れを、酸性クロロアルミネートイオン性液体を含む触媒と接触させて、4未満の臭素価を有するアルキル化オリゴマー生成物を形成することを含む上記方法。
【請求項2】
前記アルキル化オリゴマー生成物が3未満の臭素価を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルキル化オリゴマー生成物が燃料又は燃料ブレンド原料として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルキル化オリゴマー生成物が潤滑油基油又は潤滑油ブレンド原料として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
オレフィンとイソパラフィンのモル比が少なくとも0.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アルキル化オリゴマー生成物が2.7未満の臭素価を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
燃料又は潤滑油を生成する方法であって、オリゴマー化/アルキル化条件で、オレフィン及びイソパラフィンを含む混合物を、酸性クロロアルミネートイオン性液体を含むオリゴマー化/アルキル化ゾーンに通して、SIMDISTで少なくとも1000°FのTBP@50及び4未満の臭素価を有するアルキル化オリゴマー生成物を形成することを含む上記方法。
【請求項8】
オリゴマー化/アルキル化ゾーンがブレンステッド酸を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
イソパラフィンが、イソブタン、イソペンタン、並びにイソブタン及びイソペンタンを含む混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アルキル化オリゴマー生成物が水素化を受けて低オレフィン潤滑油基油を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記低オレフィン潤滑油基油がASTM D1159で0.2未満の臭素価を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1種又は複数のオレフィンを含む流れが少なくとも1種のαオレフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
オレフィンを含む混合物が少なくとも50モル%の単一のαオレフィン種を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
オレフィンを含む混合物がαオレフィンの混合物からなる、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
アルキル化オリゴマー生成物が水素化を受けて低オレフィン含有アルキル化オリゴマーを形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
低オレフィン含有アルキル化オリゴマーがASTM D1159で測定して0.2未満の臭素価を有する、請求項15に記載の方法。


【公開番号】特開2013−79390(P2013−79390A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−274330(P2012−274330)
【出願日】平成24年12月17日(2012.12.17)
【分割の表示】特願2008−547283(P2008−547283)の分割
【原出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】