説明

イチゴ栽培用の空調システム

【課題】イチゴ栽培用の空調システムに関し、消費エネルギーを低減する。
【解決手段】空気調和装置(11)を備えたイチゴ栽培用の空調システム(10)に、イチゴの苗(30)が植えられた鉢(12)を設置面(GL)よりも上方において支持する高設ベンチ(13)と、該鉢(12)に植えられたイチゴの苗(30)のクラウン部(31)が挿通される開口部(14a)を有し、少なくとも上記鉢(12)が内包された内部空間(S1)を形成するフィルム部材(14)と、該内部空間(S1)に上記空気調和装置(11)において加熱又は冷却された空気を導入するダクト(15)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関し、特に、イチゴ栽培用の空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、農業用のビニルハウス内においてイチゴの周年栽培が行われている。一般的に、イチゴは所定の温度環境下(10℃〜13℃程度)において花芽分化が促進される。そのため、11月〜12月にイチゴを収穫するためには、夏場に苗を低温の環境下におく一方、冬場には苗を暖める必要がある。従来、空気調和装置を用いて上述のような外気温度と異なる温度環境を作り出すことによってイチゴの周年栽培を可能としていた。
【0003】
図4は、従来のイチゴ栽培用の空調システムの構成を示す模式図である。ビニルハウス(100)には、該ビニルハウス(100)内の空気の温度を調節する空気調和装置(101)が設けられている。また、ビニルハウス(100)内には、パイプ部材が棚状に組み立てられてなる高設ベンチ(102)が設けられ、該高設ベンチ(102)上にはイチゴ栽培用の鉢(103)が据え付けられている。
【0004】
従来のイチゴ栽培用の空調システムは、上記空気調和装置(101)によって構成され、該空気調和装置(101)を用いてビニルハウス(100)内全体の温度を調節することによってイチゴの生育に適した温度環境を作り出し、周年栽培を行っていた。
【特許文献1】特開平5−308859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようにビニルハウス(100)内全体の空気の温度を調節することとすると、多大なエネルギーを消費するために多大なコストがかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、イチゴ栽培用の空調システムに関し、消費エネルギーを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、空気調和装置(11)を備えたイチゴ栽培用の空調システムであって、イチゴの苗(30)が植えられた鉢(12)を設置面(GL)よりも上方において支持する高設ベンチ(13)と、上記鉢(12)に植えられたイチゴの苗(30)のクラウン部(31)が挿通される開口部(14a)を有し、少なくとも上記鉢(12)が内包された内部空間(S1)を形成するフィルム部材(14)と、上記内部空間(S1)に上記空気調和装置(11)において加熱又は冷却された空気を導入するダクト(15)とを備えている。
【0008】
ここで、クラウン部(31)とは、イチゴの苗(30)の地際の茎の生長点のことをいう。また、上記「内部空間(S1)」には、フィルム部材(14)で鉢(12)全体を包み込むことによって該フィルム部材(14)のみによって形成された空間と、フィルム部材(14)を鉢(12)上方から覆い被せ、その下端を設置面に到達するように延長することによって該フィルム部材(14)と設置面とによって形成された空間の両方が含まれる。
【0009】
第1の発明では、空気調和装置(11)を稼働させると、加熱又は冷却された空気がダクト(15)を介してフィルム部材(14)によって形成された鉢(12)が内包された内部空間(S1)に導入される。また、フィルム部材(14)には、イチゴの苗(30)のクラウン部(31)が挿通される開口部(14a)が形成されている。そのため、上記内部空間(S1)に導入された空気は、フィルム部材(14)と鉢(12)との間及びフィルム部材(14)と培地との間を通過してフィルム部材(14)の唯一の開口部(14a)から外部へ吹き出される。つまり、ダクト(15)を介して上記内部空間(S1)に導入された空気は、必ずイチゴの苗(30)のクラウン部(31)付近を通って外部へ吹き出されることとなる。その結果、イチゴの苗(30)のクラウン部(31)は、ダクト(15)を介して上記内部空間(S1)に導入された空気によって効率よく加熱又は冷却される。
【0010】
なお、ここで、一般的に、イチゴの苗(30)はクラウン部(31)において温度を検知することが知られている。そして、例えば、クラウン部(31)が所定の低温となると花芽分化が開始され、所定の高温となると果実が形成される。よって、クラウン部(31)が加熱又は冷却されることにより、イチゴの苗(30)の生育が促進されることとなる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記高設ベンチ(13)は水平方向に長く形成され、上記ダクト(15)は、上記内部空間(S1)において、上記高設ベンチ(13)の長手方向の一端部から他端部に亘って長く形成されると共に、上部に上記高設ベンチ(13)の長手方向に等間隔に配列された複数の吹出口(15a)が形成され、上記空気調和装置(11)において加熱又は冷却された空気は、上記複数の吹出口(15a)から上記内部空間(S1)に吹き出され、上記クラウン部(31)が挿通される開口部(14a)を通過して上記フィルム部材(14)の外部に吹き出される。
【0012】
第2の発明では、ダクト(15)の上部には、高設ベンチ(13)の長手方向に等間隔に配列された複数の吹出口(15a)が形成されている。そのため、空気調和装置(11)において加熱又は冷却された空気は、内部空間(S1)において、高設ベンチ(13)の長手方向において満遍なく吹き出されることとなる。これにより、高設ベンチ(13)の長手方向に並ぶイチゴの苗(30)の各クラウン部(31)に、略均等に加熱又は冷却された空気が行き亘る。そして、該空気は、各クラウン部(31)が挿通されたフィルム部材(14)の開口部(14a)からフィルム部材(14)の外部に吹き出される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、イチゴの苗(30)のクラウン部(31)が挿通される開口部(14a)が形成されたフィルム部材(14)によって少なくとも鉢(12)が内包された内部空間(S1)を形成し、該内部空間(S1)に空気調和装置(11)によって加熱又は冷却された空気を導入し、開口部(14a)より外部に放出することにより、培地及びイチゴの苗(30)のクラウン部(31)を局部的に加熱又は冷却することができる。従って、ビニルハウス内全体の空気の温度を調節する場合に比べて、小型の空気調和装置(11)を用いてクラウン部(31)を同程度に加熱又は冷却することができる。よって、消費エネルギーを低減することができ、イチゴの周年栽培を低コストで行うことができる。
【0014】
また、本発明によれば、フィルム部材(14)によって少なくとも鉢(12)が内包された内部空間(S1)を形成し、該内部空間(S1)内にダクト(15)を設置するといった簡単な構成によってイチゴの苗(30)のクラウン部(31)を集中的に加熱又は冷却することができる。
【0015】
また、第2の発明によれば、ダクト(15)の上部に、高設ベンチ(13)の長手方向に等間隔に配列された複数の吹出口(15a)を形成したため、空気調和装置(11)において加熱又は冷却された空気を、高設ベンチ(13)の長手方向に並ぶイチゴの苗(30)の各クラウン部(31)に略均等に行き亘らせることができる。従って、複数のイチゴの苗(30)を同程度に加熱又は冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
−全体構成−
図1は、本発明の実施形態に係るイチゴ栽培用の空調システム(10)(以下、単に「空調システム(10)」と称する。)は、ビニルハウス(1)に設けられている。
【0018】
上記空調システム(10)は、空気調和装置(11)と、イチゴの苗が植えられた鉢(12)を設置面(GL)よりも上方において支持する高設ベンチ(13)と、フィルム部材(14)と、ダクト(15)とを備えている。
【0019】
上記空気調和装置(11)は、ビニルハウス(1)の内外に跨って設置されている。該空気調和装置(11)の吸込口は、ビニルハウス(1)の内部において開口している。一方、空気調和装置(11)の吹出口には上記ダクト(15)の一端が接続されている。これにより、空気調和装置(11)は、ビニルハウス(1)の内部の空気を吸い込み、加熱又は冷却した後、ダクト(15)内に加熱空気又は冷却空気を吹き出すように構成されている。
【0020】
図2に示すように、上記高設ベンチ(13)は、複数のパイプ部材によって構成されている。具体的には、高設ベンチ(13)は、水平面上に平行に配置された2本の水平パイプ(13a)と、この2本の水平パイプ(13a)を支持する複数の鉛直パイプ(13b)とによって構成されている。2本の水平パイプ(13a)は、水平方向に長く(例えば、30m程度)形成されている。一方、2本の鉛直パイプ(13b)は、高さが110cm程度となるように形成されている。
【0021】
また、2本の水平パイプ(13a)は、20cm程度の間隔を空けて配置され、該2本の水平パイプ(13a)にはイチゴ栽培用の鉢(12)が据え付けられている。該鉢(12)内にはイチゴ栽培用の培地が形成され、培地には複数のイチゴの苗(30)が高設ベンチ(13)の長手方向に略等間隔に植えられている(図1参照)。
【0022】
上記フィルム部材(14)は、本実施形態では、白色のビニルシートによって構成されている。該フィルム部材(14)は、イチゴ栽培用の鉢(12)と高設ベンチ(13)を一体的に覆い、その下端部(14b)が設置面(GL)よりも下方に至るように設けられている。つまり、フィルム部材(14)の下端部(14b)は、地中に埋設されている。これにより、フィルム部材(14)の内部には、該フィルム部材(14)と設置面(GL)とによって内部空間(S1)が形成されることとなる。
【0023】
また、フィルム部材(14)の上部には、複数の開口部(14a)が高設ベンチ(13)の長手方向に略等間隔に形成されている。この複数の開口部(14a)は、鉢(12)に植えられた複数のイチゴの苗(30)の根元に形成されるクラウン部(31)を挿通するために形成されており、複数のイチゴの苗(30)の間隔と略等しい間隔で形成されている。なお、該開口部(14a)は、本実施形態では、直径5cm程度の丸穴形状に形成されている。
【0024】
上記ダクト(15)は、軸方向に長く形成された有底筒状体によって構成されている。該ダクト(15)の開口側端部は、上記空気調和装置(11)の吹出口に接続され、他端部を含む大部分が上記フィルム部材(14)によって覆われた内部空間(S1)内に挿入されている。具体的には、ダクト(15)は、内部空間(S1)の下端部に載置され、高設ベンチ(13)の長手方向の一端部から他端部に亘って長く延びるように設けられている。なお、本実施形態では、ダクト(15)は、直径26cm程度のポリダクトによって構成されている。
【0025】
また、上記ダクト(15)の上部には、高設ベンチ(13)の長手方向に等間隔に配列された複数の吹出口(15a)が形成されている。該吹出口(15a)は、本実施形態では、直径5cm程度の丸孔形状に形成され、50cm間隔で設けられている。
【0026】
−各種動作−
次に、上記空調システム(10)の動作について説明する。なお、以下では、周年栽培用の空調の一例として、空気調和装置(11)において冷房運転を行い、イチゴの苗(30)を冷却する場合について説明する。
【0027】
上記空気調和装置(11)を稼働させると、ビニルハウス(1)内の空気が空気調和装置(11)内に吸い込まれ、内部において冷却された後、吹出口を介してダクト(15)内に排出される。
【0028】
ダクト(15)内に排出された冷却空気は、ダクト(15)の先端部側へ流れると共に、該ダクト(15)の上部に形成された複数の吹出口(15a)を介してフィルム部材(14)によって覆われた内部空間(S1)に吹き出される。
【0029】
内部空間(S1)の空気は、上記ダクト(15)を介して供給された冷却空気によって冷却される。また、鉢(12)及び該鉢(12)内の培地は、内部空間(S1)の冷却空気によって冷却される。
【0030】
また、内部空間(S1)の冷却空気は、フィルム部材(14)と鉢(12)及び高設ベンチ(13)との隙間を通過して鉢(12)上方に至り、該鉢(12)内の培地とフィルム部材(14)との隙間を通って、フィルム部材(14)の開口部(14a)から外部(ビニルハウス(1)内)に流出する。
【0031】
ここで、フィルム部材(14)の開口部(14a)には、イチゴの苗(30)のクラウン部(31)が挿通されている。そのため、内部空間(S1)に吹き出された冷却空気は、複数のイチゴの苗(30)のクラウン部(31)の周囲を必ず通過してビニルハウス(1)内に噴出されることとなる。
【0032】
−比較実験−
本願発明者らは、本発明に係る空調システム(10)を用いてイチゴの苗(30)のクラウン部(31)を局所的に冷却する局所冷房例、従来型の空調システムを用いてビニルハウス全体を冷却する全体冷房例、ビニルハウス内において何ら空調を行わない無冷房例を設定し、これらの環境下でイチゴを栽培する比較実験を行った。
【0033】
具体的には、局所冷房例では、本発明に係る空調システム(10)が設けられたビニルハウス(1)において、平成20年6月3日から10月31日までの20時から翌朝6時までの間、空調システム(10)の空気調和装置(11)を運転してイチゴの苗(30)のクラウン部(31)を局所的に冷却した。また、全体冷房例では、局所冷房例で用いたものと同一規格のビニルハウスに同一能力の空気調和装置を設け、同一期間、同一時間帯に同一設定で該空気調和装置を運転してビニルハウス内全体を冷却した。さらに、無冷房例では、局所冷房例で用いたものと同一規格のビニルハウスにおいて何ら空調を行わなかった。
【0034】
図3は、比較実験中の所定の24時間において、外気温の変化と、上記局所冷房例、全体冷房例及び無冷房例におけるクラウン部の温度の変化とを示したグラフである。
【0035】
図3に示すように、20時に局所冷房例及び全体冷房例において空気調和装置の冷房運転が開始されると、クラウン部の温度は、局所冷房例では速やかに低下し、全体冷房例では局所冷房例よりも緩やかに且つ無冷房例よりも速やかに低下した。
【0036】
局所冷房例のクラウン部(31)の温度は、冷房運転開始時から2時間後には、無冷房例におけるクラウン部の温度(約26℃)よりも10℃程度低い温度(約16℃)となる。その後、局所冷房例におけるクラウン部(31)の温度は低下し続けて、冷房運転停止時(運転開始から10時間後)には12℃付近まで低下する。
【0037】
一方、全体冷房例のクラウン部の温度は、冷房運転開始時から2時間後の時点では、無冷房例におけるクラウン部の温度(約26℃)よりも4℃程度低い温度(約22℃)までしか低下しない。その後、全体冷房例のクラウン部の温度は低下し続けるものの、冷房運転停止時(運転開始から10時間後)においても18℃程度までしか低下せず、該温度は、同じ時刻における無冷房例におけるクラウン部の温度(約23℃)よりも5℃程度低いだけであり、局所冷房例におけるクラウン部の冷房開始から2時間後の温度にほぼ等しい。
【0038】
また、翌朝6時に局所冷房例及び全体冷房例において冷房運転が停止すると、クラウン部の温度は、局所冷房例及び全体冷房例のいずれにおいても上昇する。しかしながら、局所冷房例では、培地及びクラウン部(31)の一部がフィルム部材(14)で覆われているにも拘わらず、クラウン部(31)の温度は、正午頃まで全体冷房例におけるクラウン部の温度よりも2〜3℃程度低い温度で推移する。また、午後に入り、15時頃を境に局所冷房例においても全体冷房例においてもクラウン部の温度は下降するが、18時頃までは局所冷房例の方が全体冷房例よりも低い温度で推移し、18時から冷房運転が開始される20時までは局所冷房例と全体冷房例とでほぼ等しい温度で推移した。
【0039】
なお、培地の温度は、局所冷房例においても全体冷房例においても上記クラウン部の温度よりも2〜3℃程度高い温度でほぼ同様に推移した。
【0040】
以上より、同能力の空気調和装置を用いた場合、局所冷房例では全体冷房例に比べてイチゴの苗(30)のクラウン部(31)がより速やかに且つより低い温度まで冷却された。また、冷房運転停止後においても、冷房運転時に局所冷房例の培地が全体冷房例の培地よりも低い温度まで冷却されるために、局所冷房例では全体冷房例に比べてイチゴの苗(30)のクラウン部(31)が低い温度で推移した。
【0041】
また、上記実験において、全体冷房例と局所冷房例のクラウン部の温度と外気温度との差について、冷房効果が発揮される22時から翌朝の6時までの平均値に注目すると、全体冷房例のクラウン部の温度が外気温より4.2℃低くなっているのに対し、局所冷房例のクラウン部(31)の温度は外気温より8.6℃低くなっていた。このことから、上記実験では、全体冷房例と局所冷房例に同等の冷房負荷をかけているにも拘わらず、本発明に係る空調システム(10)を用いた局所冷房例のクラウン部(31)では全体冷房例のクラウン部に比べて倍以上の冷却効果が得られることが判明した。従って、本発明に係る空調システム(10)を用いると、従来型の空調システムを用いた場合に比べて半分以下の冷房負荷で同等のクラウン部冷却効果が得られることが容易に推定でき、消費エネルギーの低減が可能であることが判る。
【0042】
また、詳細については説明を省略するが、本願発明者らは、本発明に係る空調システム(10)を用いてイチゴの苗(30)のクラウン部(31)を局所的に加熱する局所暖房例、従来型の空調システムを用いてビニルハウス全体を加熱する全体暖房例を設定し、冬場にイチゴの苗のクラウン部が10℃を下回らないように暖房運転を行った。その結果、外気温度が0℃のときに、全体暖房例では所定能力の空気調和装置2台を用いてビニルハウス内の温度が13℃になったのに対して、局所暖房例では同一能力の空気調和装置を1台用いるだけでクラウン部の温度はほぼ同様の温度(約13℃)になった。この結果から、イチゴの苗(30)を加熱する場合においても、本発明に係る空調システム(10)を用いると、従来型の空調システムを用いた場合に比べて消費エネルギーを低減することができることが判る。
【0043】
−実施形態の効果−
以上より、本空調システム(10)によれば、イチゴの苗(30)のクラウン部(31)が挿通される開口部(14a)が形成されたフィルム部材(14)によって少なくとも鉢(12)が内包された内部空間(S1)を形成し、該内部空間(S1)に空気調和装置(11)によって加熱又は冷却された空気を導入し、開口部(14a)より外部に放出することにより、培地及びイチゴの苗(30)のクラウン部(31)を局部的に加熱又は冷却することができる。従って、ビニルハウス(1)内全体の空気の温度を調節する場合に比べて、小型の空気調和装置(11)を用いてクラウン部(31)を同程度加熱又は冷却することができる。よって、消費エネルギーを低減することができ、イチゴの周年栽培を低コストで行うことができる。
【0044】
また、本空調システム(10)によれば、フィルム部材(14)によって内部空間(S1)を形成し、該内部空間(S1)内にダクト(15)を設置するといった簡単な構成によってイチゴの苗(30)のクラウン部(31)を集中的に加熱又は冷却することができる。
【0045】
また、本空調システム(10)によれば、ダクト(15)の上部に、高設ベンチ(13)の長手方向に等間隔に配列された複数の吹出口(15a)を形成したため、空気調和装置(11)において加熱又は冷却された空気を、高設ベンチ(13)の長手方向に並ぶイチゴの苗(30)の各クラウン部(31)に略均等に行き亘らせることができる。従って、複数のイチゴの苗(30)を同程度に加熱又は冷却することができる。
【0046】
《その他の実施形態》
上記各実施形態は、以下のように構成してもよい。
【0047】
フィルム部材(14)は、イチゴ栽培用の鉢(12)と高設ベンチ(13)を一体的に覆い、その下端部(14b)が設置面(GL)よりも下方に至るように設けられている。
【0048】
上記実施形態では、フィルム部材(14)を、その下端部(14b)が高設ベンチ(13)の設置面(GL)よりも下方に至るように設け、該フィルム部材(14)によってイチゴ栽培用の鉢(12)と高設ベンチ(13)とを一体的に覆うこととしていた。しかしながら、本発明に係るフィルム部材は上記実施形態のものに限られない。例えば、フィルム部材は、高設ベンチ(13)の設置面(GL)まで到達することなく該設置面(GL)の上方において鉢(12)全体を包み込むように形成されていてもよい。つまり、上記実施形態のようにフィルム部材と高設ベンチ(13)の設置面(GL)とで内部空間(S1)を形成するのではなく、フィルム部材のみで内部空間(S1)を形成することとしてもよい。
【0049】
上記実施形態では、フィルム部材(14)の開口部(14a)は、直径が5cm程度の丸穴形状に形成されていたが、開口部(14a)の形状及び径はこれに限られない。クラウン部(31)を挿通可能で且つ内部空間(S1)の空気を排出可能であればいかなるものであってもよい。
【0050】
上記実施形態では、本発明に係るダクトとしてポリダクト(15)を用いていたが、ダクトはポリエチレン製に限られない。また、該ダクト(15)に形成された吹出口(15a)の形状、大きさ及び間隔についても上記実施形態のものに限られない。
【0051】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明は、空調システムに関し、特に、イチゴ栽培用の空調システムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るイチゴ栽培用の空調システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、図1のII−II断面図である。
【図3】図3は、実施形態に示す比較実験における外気温度とクラウン部の温度の変化を示すグラフである。
【図4】図4は、従来のイチゴ栽培用の空調システムの構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 空調システム
11 空気調和装置
12 鉢
13 高設ベンチ
14 フィルム部材
14a 開口部
15 ダクト
15a 吹出口
30 イチゴの苗
31 クラウン部
S1 内部空間(空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和装置(11)を備えたイチゴ栽培用の空調システムであって、
イチゴの苗(30)が植えられた鉢(12)を設置面(GL)よりも上方において支持する高設ベンチ(13)と、
上記鉢(12)に植えられたイチゴの苗(30)のクラウン部(31)が挿通される開口部(14a)を有し、少なくとも上記鉢(12)が内包された内部空間(S1)を形成するフィルム部材(14)と、
上記内部空間(S1)に上記空気調和装置(11)において加熱又は冷却された空気を導入するダクト(15)とを備えている
ことを特徴とするイチゴ栽培用の空調システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記高設ベンチ(13)は水平方向に長く形成され、
上記ダクト(15)は、上記内部空間(S1)において、上記高設ベンチ(13)の長手方向の一端部から他端部に亘って長く形成されると共に、上部に上記高設ベンチ(13)の長手方向に等間隔に配列された複数の吹出口(15a)が形成され、
上記空気調和装置(11)において加熱又は冷却された空気は、上記複数の吹出口(15a)から上記内部空間(S1)に吹き出され、上記クラウン部(31)が挿通される開口部(14a)を通過して上記フィルム部材(14)の外部に吹き出される
ことを特徴とするイチゴ栽培用の空調システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate