説明

イノシシ亜目用誘引剤及びイノシシ亜目用誘引タブレット

【課題】時間と手間をかけずに確実にイノシシを誘引できるイノシシ亜目用誘引剤及びイノシシ亜目用誘引タブレットを提供すること。
【解決手段】チョウジ及び/またはその抽出物を有効成分として含有し、上面から下側及び下面から上面に凹んだ凹部を有するイノシシ亜目用誘引タブレットを、イノシシを捕獲するための檻等の中等に配置することでイノシシをメンテナンスと時間の手間を大幅に軽減させて捕獲することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イノシシ亜目を誘引するイノシシ亜目用誘引剤及びイノシシ亜目用誘引タブレットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、森林伐採や土地開発等により、イノシシをはじめ様々な動物の居住領域が狭められている。特に秋や冬になるとイノシシの居住領域内の餌が不足し、イノシシは、餌を求めて農地に出没して農作物を荒らす。また、少子高齢化に伴い、イノシシの天敵である人間が山で活動する機会が減少したことによりイノシシの行動範囲が広がり、餌を求めて農地に出没して農作物を荒らす。このように、農作物の被害が極めて深刻な問題となっている。
【0003】
このような問題を解決するために、網、柵やトタン等で農地全体を囲む方法が取られてきた。この方法は、小規模の農地や少数の樹木等が保護の対象であればそれほど問題にならないが、現実には、広大な農地や極めて多数本の樹木を保護の対象にしなければならない。その場合、持ち運ぶ際の重量が大きくなり少しずつしか持ち運べず、作業効率が極めて悪いという問題があった。また、この方法は費用や手問がかかり、風雪やイノシシにより倒されたりして被害を抑制するには至らなかった。
【0004】
また、捕獲するための檻の中に餌を入れておき、イノシシを檻の中へ誘引して捕獲する方法も採られており、例えば、特許文献1のように、イノシシを誘引しやすくするように檻の中の餌の臭いを送風する方法も採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−218896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この方法は、農作物を荒らすイノシシを確実に捕獲するので農作物の被害を最小限に抑えることができるが、餌は生ものなので腐りやすい。このため、定期的に餌を交換する必要があり、メンテナンスに時間と手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、時間と手間をかけずに確実にイノシシを誘引できるイノシシ亜目用誘引剤及びイノシシ亜目用誘引タブレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、イノシシ亜目に属する動物は、従来から知られているミミズよりもチョウジを非常に好むという知見を見出し、本発明をするに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
請求項1に記載の発明は、チョウジ及び/またはその抽出物を有効成分として含有するイノシシ亜目用誘引剤である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、粒剤である請求項1に記載のイノシシ亜目用誘引剤である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、イノシシ亜目は、イノシシである請求項1または2に記載のイノシシ亜目用誘引剤である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のイノシシ亜目用誘引剤を含有し、上面から下側及び下面から上側に凹んだ凹部を有するイノシシ亜目用誘引タブレットである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記イノシシ亜目用誘引剤の含有量は0.25g/cm以上である請求項4記載のイノシシ亜目用誘引タブレットである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記上面から下側に凹んだ凹部の外周縁部から該イノシシ亜目用誘引タブレットの外周縁部に向かって傾斜する傾斜面が形成されている請求項4または5に記載のイノシシ亜目用誘引タブレットである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記下面から上側に凹んだ凹部の外周縁部から該イノシシ亜目用誘引タブレットの外周縁部に向かって傾斜する傾斜面が形成されている請求項4から6のいずれかに記載のイノシシ亜目用誘引タブレットである。
【0016】
請求項8に記載の発明は、水分と接触すると徐々に崩壊する請求項4から7のいずれかに記載のイノシシ亜目用誘引タブレットである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のイノシシ亜目用誘引剤及びイノシシ亜目用誘引タブレットによれば、時間と手間をかけずに確実にイノシシを誘引できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】イノシシ亜目用誘引タブレットの平面図である。
【図2】イノシシ亜目用誘引タブレットの断面図である。
【図3】イノシシ亜目用忌避誘引タブレットの斜視図である。
【図4】イノシシ亜目用忌避誘引タブレットの崩壊する様子の概略を示す図である。
【図5】イノシシ亜目用誘引タブレットの使用方法の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、イノシシを確実に誘引させるという課題を、イノシシを誘引させる新規なイノシシ亜目用誘引剤を用いてイノシシ亜目用誘引タブレットとしたことによって解決した。
【0020】
本明細書において、イノシシ亜目とは、イノシシ亜目に属する動物全般を指しており、具体的には、イノシシ、ベッカリー等の動物をいう。
【0021】
以下、図面等を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明のイノシシ亜目用誘引タブレットの平面図、図2は、図1に示す本発明のイノシシ亜目用誘引タブレットの断面図、図3は、本発明のイノシシ亜目用誘引タブレットの斜視図、図4(A)から(D)は、本発明のイノシシ亜目用誘引タブレットの崩壊する様子の概略を示す図、図5は、本発明のイノシシ亜目用誘引タブレットの使用方法の一例を示した図である。1はイノシシ亜目用誘引タブレット、2Aは上面から下側に凹んだ凹部、2Bは下面から上側に凹んだ凹部、3は上面から下側に凹んだ凹部または下面から上側に凹んだ凹部の外周縁部、4はイノシシ亜目用誘引タブレットの外周縁部、5は雨水、6はイノシシ、7は檻を表している。
【0022】
[イノシシ亜目用誘引剤]
発明者らは、鋭意研究の成果により、イノシシはチョウジの臭いをよく好み、イノシシに対する誘引効果は従来の誘引剤と比べて極めて高いことを見出した。本明細書において、チョウジとは、別名クローブともいい、フトモモ科のSyzygium aromaticumのことをいう。
【0023】
本発明のイノシシ亜目用誘引剤の有効成分であるチョウジは、チョウジの全草、葉、蕾、樹皮、枝、果実、根等をそのまま用いたり、または粉砕して用いることができるが、蕾を使用することが好ましい。
【0024】
また、発明者らは、チョウジを抽出した抽出物にもイノシシの誘引効果が極めて高いことを見出した。チョウジの抽出物は、チョウジを常温または加温下にて抽出するかまたはソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる。
【0025】
チョウジの抽出物を得るために用いられる抽出溶媒としては、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができ、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類、ポリエチレングリコール等のポリエーテル類、スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、二酸化炭素等が挙げられ、これらは混合溶媒として用いることもできる。
【0026】
チョウジの抽出物は、そのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈、濃縮若しくは凍結乾燥した後、粉末またはペースト状に調製して用いることもできる。
【0027】
また、チョウジの抽出物は、クロマトグラフィー等の分離技術により、チョウジの抽出物から不活性な夾雑物を除去して用いることもできる。
【0028】
[イノシシ亜目用誘引タブレット]
本発明のイノシシ亜目用誘引剤は、チョウジまたはその抽出物をそのままの形状で使用することもできるが、イノシシ亜目用誘引タブレットに加工することで、イノシシを捕獲するためのメンテナンスに時間と手間がかからなくなる。また、詳細は後述するが、イノシシ亜目用誘引タブレットは、水分等と接触することで徐々に崩壊することでイノシシ亜目用誘引タブレットの有効成分であるイノシシ亜目用誘引剤が徐放されるので、イノシシの誘引効果をより向上させることができる。
【0029】
本発明のイノシシ亜目用誘引タブレットは、図1から図3に示すように、イノシシ亜目用誘引タブレット1と同心円であり、イノシシ亜目用誘引タブレット1の上面から下側に凹んだ凹部2Aと、凹部2Aと対向する面に位置し、イノシシ亜目用誘引タブレット1と同心円であり、イノシシ亜目用誘引タブレット1の下面から上側に凹んだ凹部2Bとを設けた構成である。
【0030】
凹部2Bは、詳細は後述するが、地面にイノシシ亜目用誘引タブレット1を配置する場合、地面から放出する水蒸気や露等で徐々にイノシシ亜目用誘引タブレット1を崩壊させるために設けられている。凹部2Bの大きさ、深さは、イノシシ亜目用誘引タブレット1の使用箇所、使用目的等に応じて適宜変更することができるが、イノシシ亜目用誘引タブレット1を使用する便宜上、凹部2Aと同一形状であることが好ましい。凹部2Aと凹部2Bとを同一形状とすることで、イノシシ亜目用誘引タブレット1を反転させても凹部2Bを凹部2Aの代わりに使用することができるとともに、凹部2Aを凹部2Bの代わりに使用することができる。
【0031】
本発明のイノシシ亜目用誘引タブレット1には、凹部2A及び凹部2Bの外周縁部3からイノシシ亜目用誘引タブレット1の外周縁部4に向かって傾斜する傾斜面が形成されている。傾斜面を設けることで、凹部2Aからあふれた雨水及びイノシシ亜目用誘引タブレット1上に降った雨等の水分を効率的にイノシシ亜目用誘引タブレット1の外周縁部4へ流すことができるので、イノシシ亜目用誘引タブレット1を効果的に崩壊させることができる。
【0032】
本発明のイノシシ亜目用誘引タブレット1は、イノシシ亜目用誘引剤をいったん粉末にしてそのままタブレット状に打錠(加圧成型)することで得ることができ、あるいは、顆粒に造粒したのち打錠することで得ることもできる。顆粒状の造粒物は、イノシシ亜目用誘引剤に水を加えて混合し、押し出し成型器等を用いて造粒し、得られた造粒物を乾燥することにより得ることができる。
【0033】
本発明のイノシシ亜目用誘引タブレット1は雨水等の水分で徐々に崩壊させるために、水溶性のバインダーを使用することが好ましい。水溶性のバインダーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、カルボン酸系ポリマー、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系の陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、澱粉、澱粉加水分解物、糖類、ケイ酸ソーダ、デキストリン等が挙げられる。
【0034】
イノシシ亜目用誘引剤の粉末または顆粒状の造粒物をタブレット状に打錠する方法に特に制限はないが、通常に行われる打錠成型の設備及び技術をそのまま利用することができる。打錠の打錠圧力に特に制限はないが、打錠圧力が3kNから4kNとなるように圧力を加えることが好ましい。
【0035】
本発明のイノシシ亜目用誘引タブレット1中に含有するイノシシ亜目用誘引剤の含有量は0.25g/cm以上となるようにすることが好ましい。イノシシ亜目用誘引剤の含有量が0.25g/cm未満であると、効果的にイノシシを誘引させることができない。
【0036】
本発明のイノシシ亜目用誘引タブレット1には、イノシシ亜目用誘引剤の効果を妨げない程度に防腐剤、殺菌剤、芳香剤等を含有させてもよい。また、視認性を向上させるためにイノシシ亜目用誘引タブレット1に色素を含有させてもよい。
【0037】
本発明のイノシシ亜目用誘引タブレット1は、雨水等の水分に接触すると徐々に崩壊する。地面に配置したイノシシ亜目用誘引タブレット1上に雨が降ると(図4(A))、凹部2A上に雨水5が溜まる(図4(B))。また、凹部2Aからあふれた雨水5及びイノシシ亜目用誘引タブレット1上に降った雨は傾斜面に沿ってイノシシ亜目用誘引タブレット1の外周縁部4へ流れる。
【0038】
凹部2Aに溜まった雨水5により、凹部2Aの底部が徐々に崩壊していくとともにイノシシ亜目用誘引タブレット1の有効成分であるイノシシ亜目用誘引剤がより徐放される。また、地面に雨が染込むことにより、地面から水蒸気が放出され、凹部2Bの頭頂部が徐々に崩壊し、イノシシ亜目用誘引タブレット1の有効成分であるイノシシ亜目用誘引剤が徐放される(図4(C))。イノシシ亜目用誘引剤がより徐放されるので、イノシシをより誘引しやすくなる。
【0039】
凹部2Aの底部の崩壊と凹部2Bの頭頂部の崩壊が進行すると、イノシシ亜目用誘引タブレット1の中央部付近に穴が開き、さらに崩壊が進行すると二つに分割される(図4(D))。分割されたイノシシ亜目用誘引タブレット1は、その後も雨水6、水蒸気及び露等によって徐々に崩壊し、やがて完全に崩壊する。
【0040】
イノシシ亜目用誘引タブレット1が崩壊することでイノシシ亜目用誘引剤が地面に染込むので、イノシシ亜目用誘引タブレット1がなくてもイノシシをある程度は誘引することができる。また、イノシシ亜目用誘引タブレット1は無害のチョウジが主成分として含まれているので、崩壊しても自然界を汚染する問題を防止することができる。
【0041】
[イノシシ亜目用誘引タブレットの使用方法]
以下、本発明のイノシシ亜目用誘引タブレットの使用方法を説明する。例えば、図5に示すように、イノシシ6を捕獲するための檻7の中にイノシシ亜目用誘引タブレット1を配置する(図5(A))。イノシシ亜目用誘引タブレット1は、複数個配置してもよく、使用目的等に応じて適宜変更することができる。
【0042】
イノシシ亜目用誘引タブレット1の臭いに引きつられたイノシシ6は、イノシシ亜目用誘引タブレット1を配置した檻7に近づき(図5(B))、イノシシ6は、イノシシ亜目用誘引タブレット1が配置されている檻7の中に入る(図5(C))。イノシシ6が檻7の中に入ると同時に檻7の柵が下りてイノシシ6を捕獲する(図5(D))。
【0043】
なお、図5に示した本発明のイノシシ亜目用誘引タブレット1の使用方法はこれに限定されず、例えば、イノシシ6をある場所に誘引したい場合、イノシシ亜目用誘引タブレット1を一定間隔ごとに配置することで、イノシシ6をある場所まで誘引することができる。また、イノシシ6を誘引したい場所にイノシシ亜目用誘引タブレット1を複数配置することでイノシシ6を誘引したい場所に誘引し、誘引されたイノシシ6全てを一斉に捕獲するようにしてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について図面を参照にしながら詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0045】
イノシシ亜目用誘引タブレット1、凹部2A及び凹部2Bは円形状であることを前提に説明したがこれに限定されず、例えば、四角形等であってもよい。
【0046】
また、イノシシ亜目用誘引タブレット1の代わりにイノシシ亜目用誘引剤を粒剤にしたものを用いてもよい。
【0047】
例えば、イノシシ6をある場所に誘引したい場合、イノシシ亜目用誘引タブレット1または粒剤を一定間隔ごとに配置、撒くことで、イノシシ6をある場所まで誘引することができる。また、イノシシ6を誘引したい場所に粒剤をばら撒くことでイノシシ6を誘引したい場所に誘引し、誘引されたイノシシ6全てを一斉に捕獲するようにすることもできる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
[イノシシ亜目用誘引剤]
(実施例1)
茶葉袋にチョウジの蕾を入れた状態で、予め捕獲した3匹のイノシシに近づけてイノシシの反応を試験した。また、チョウジを食べようとするか否かも併せて試験した。
【0050】
(比較例1)
チョウジの代わりにイノシシの好物であるサツマイモにした以外は実施例1と同様に試験した。
【0051】
(比較例2)
チョウジの代わりにイノシシの好物であるミミズにした以外は実施例1と同様に試験した。
【0052】
積極的にハナで臭いを嗅ごうとしており、臭いをかいだ瞬間茶葉袋ごと食べたイノシシの反応を「反応1」、何度かハナで臭いを嗅いでから食べたが茶葉袋ごと食べることはなかったイノシシの反応を「反応2」とし、3匹のイノシシが反応1から反応2のいずれかを示すか試験した。全てのイノシシが反応1を示した場合は「○」、全てのイノシシが反応2を示した場合は「△」とした。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1より、実施例1において、全てのイノシシは、一度ハナで臭いをかいだ瞬間に茶葉袋ごと食べようとするほどチョウジに顕著な反応を示した。イノシシは、餌を食べる前に必ずハナで臭いをかぐ習性を持つことから、イノシシにとってチョウジの臭いは非常に好ましいものであると考えられる。一方、比較例1及び比較例2では、全てのイノシシは、何度かハナでサツマイモ及びミミズの臭いを確認してから食べたが、実施例1のように茶葉袋ごと食べることはなかった。このように、チョウジはイノシシにとって好ましい臭いであり、チョウジはイノシシの誘引効果が極めて高いことがわかる。
【0055】
[イノシシ亜目用誘引タブレット]
(実施例2)
イノシシ亜目用誘引剤であるチョウジの蕾を粉末にしたチョウジ粉末210gをデキストリン(パインデックス社製)90gと混合し、2分間攪拌して十分に混合させた後、水150gを加えてさらに2分間攪拌した。チョウジ粉末、デキストリン及び水からなる混合物を40℃で100分間乾燥させ、直径45mm、厚さ9mmに形状を整えた後、押し出し成形器(株式会社富士薬品機械社製FY−TP−10N)を用いて打錠圧力3.5kNで打錠したことにより、直径45mm、厚さ9mmのイノシシ亜目用誘引タブレット1を得た。なお、凹部2Aと凹部2Bの深さは2.4mmであり、凹部2Aと凹部2Bの直径は22mmであった。
【0056】
(実施例3)
実施例2のイノシシ亜目用誘引タブレット1を1.3m×1m×2mの檻7の中に配置し、イノシシ6が誘引されるか試験した。
【0057】
イノシシ亜目用誘引タブレット1が徐々に崩壊するとともにイノシシ亜目用誘引剤が徐放し、1日でイノシシ6を檻7まで誘引して捕獲することができた。
【0058】
(比較例3)
イノシシ亜目用誘引タブレット1の代わりに従来の糠にした以外は実施例2と同様に試験した。3日後、糠は腐敗しており腐敗臭が発生していた。
【0059】
この腐敗臭が発生している糠を実施例3と同一の檻7の中に配置したが、1月経ってもイノシシ6を捕獲することができなかった。
【0060】
なお、この腐敗臭が発生している糠を新鮮な糠に交換して檻7の中に配置したところ、2日でイノシシ6を捕獲することができた。
【0061】
比較例3より、従来法では糠の交換等メンテナンスと時間の手間がかかることがわかる。一方、本発明のイノシシ亜目用誘引タブレット1は放置しても腐敗することなく、メンテナンスと時間の手間を抑制できることがわかる。また、本発明のイノシシ亜目用誘引タブレット1は、イノシシ亜目用誘引剤を徐放しながら崩壊するので、従来の糠等に比べて効果的にイノシシを誘引できることがわかる。
【符号の説明】
【0062】
1 イノシシ亜目用誘引タブレット
2A 凹部
2B 凹部
3 上面から下側に凹んだ凹部または下面から上側に凹んだ凹部の外周縁部
4 イノシシ亜目用誘引タブレットの外周縁部
5 雨水
6 イノシシ
7 檻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョウジ及び/またはその抽出物を有効成分として含有するイノシシ亜目用誘引剤。
【請求項2】
粒剤である請求項1に記載のイノシシ亜目用誘引剤。
【請求項3】
イノシシ亜目は、イノシシである請求項1または2に記載のイノシシ亜目用誘引剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のイノシシ亜目用誘引剤を含有し、上面から下側及び下面から上側に凹んだ凹部を有するイノシシ亜目用誘引タブレット。
【請求項5】
前記イノシシ亜目用誘引剤の含有量は0.25g/cm以上である請求項4記載のイノシシ亜目用誘引タブレット。
【請求項6】
前記上面から下側に凹んだ凹部の外周縁部から該イノシシ亜目用誘引タブレットの外周縁部に向かって傾斜する傾斜面が形成されている請求項4または5に記載のイノシシ亜目用誘引タブレット。
【請求項7】
前記下面から上側に凹んだ凹部の外周縁部から該イノシシ亜目用誘引タブレットの外周縁部に向かって傾斜する傾斜面が形成されている請求項4から6のいずれかに記載のイノシシ亜目用誘引タブレット。
【請求項8】
水分と接触すると徐々に崩壊する請求項4から7のいずれかに記載のイノシシ亜目用誘引タブレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−220564(P2010−220564A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72659(P2009−72659)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(509072560)
【Fターム(参考)】