説明

イベント検出装置、イベント検出システム、イベント検出方法、およびイベント検出プログラム

【課題】確実にイベント検出を行うことが可能なイベント検出装置を提供する。
【解決手段】本イベント検出装置は、所定のエリアにおけるイベントを検出する親機100としてのイベント検出装置であって、イベントの種類に対応する複数のイベント検出モードのいずれかを設定して、設定されたイベント検出モードに従ってイベントの検出条件を決定するモード設定部145と、その検出条件に基づいてイベントの発生を検出する検知処理部140と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イベント検出装置、イベント検出システム、イベント検出方法、およびイベント検出プログラムに関する。特に、防犯目的や高齢者の見守りなどのために利用可能なイベント検出装置等に関し、例えば家庭内のコードレス電話システムなどに適用することが想定される。
【背景技術】
【0002】
例えば、独居高齢者が具合が悪くなり、家で一人で動けなくなった際には、他の誰もその状況を知ることができないので助けるすべがない。また、高齢者は転倒しやすく、転倒した際には骨折し、その場を動けなくなるリスクが高い。更に、独居高齢者が転倒により動けなくなった場合は、自分では助けを呼ぶことができない状況になり、この発見が遅れると最悪の場合は死に至るケースも考えられる。
【0003】
一方、高齢者宅の環境を考慮すると、インターネット(ADSL回線、光回線)などの特別な通信回線が導入されていないケースが多く、情報を外部へ伝達する手段は電話線のみである場合が多い。また、監視カメラでモニタリングされるのはプライバシーの侵害となり高齢者は嫌がることがある。また、携帯電話端末については、基本的に置き場所が限定されず、様々な場所(かばんの中など)に置かれることになるし、バッテリー切れの可能性があるため、センシング機器としての利用はふさわしくない。
【0004】
従って、独居高齢者の見守りに適した特別なイベント検出システムが望まれている。また、独居高齢者の見守りに限らず、例えば留守宅の防犯目的の監視が可能なイベント検出システムも望まれている。
【0005】
この種のイベント検出に適用可能な従来技術として、例えば特許文献1や非特許文献1に開示された技術が知られている。
【0006】
特許文献1においては、送信機が送信した電波を複数のアンテナで受信し、受信した信号を受信ベクトルとして相関行列を演算し、この相関行列を固有値展開して信号部分空間を張る固有ベクトルを演算し、固有ベクトルの経時変化からイベントを検出することを開示している。
【0007】
非特許文献1においては、特許文献1と同様に、固有ベクトルを検出することにより、電波の空間的な伝わり方の変化をとらえ、ドアなどの開閉や人の侵入による変化を検出できることを開示している。また、非特許文献1においては、電波の送信源として、室内に1つの発信機を設置したり、無線LANのアクセスポイントを利用したり、放送波を使用する可能性について言及している。
【0008】
なお、電波の受信強度に基づいてイベントの発生を検出する方法も考えられる。しかし、その場合は他の機器が発生するノイズの影響を受けてしまうので、誤検出が生じやすい。従って、特許文献1、非特許文献1のように固有ベクトルを用いてイベントを検出するのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−216152号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】大槻 知明、”時空間信号処理に基づく電波セキュリティシステム”、[online]、[平成23年3月4日検索]インターネット<http://www.mod.go.jp/trdi/research/S1/S1-5.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1、非特許文献1に開示された技術のように固有ベクトルを用いてイベントを検出する場合であっても、実際には誤検出が発生する場合があった。特に、複数の用途についてそれぞれイベントを検出しようとすると、誤検出が生じる頻度が高くなる傾向にあった。例えば、留守宅への人の侵入や、高齢者の見守りなどの複数の状況について、共通の方法でイベントを検出する場合には、誤検出が生じることが多かった。
【0012】
本発明は、複数種類の状況のそれぞれについて、確実にイベント検出を行うことが可能なイベント検出装置、イベント検出システム、イベント検出方法、およびイベント検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のイベント検出装置は、所定のエリアにおけるイベントを検出するイベント検出装置であって、イベントの種類に対応する複数のイベント検出モードのいずれかを指定するモード指定部と、前記モード指定部により指定されたイベント検出モードに従って、イベントの検出条件を決定する検出条件決定部と、前記検出条件決定部により決定された検出条件に基づいて、イベントの発生を検出するイベント検出部と、を備える。
【0014】
このイベント検出装置によれば、指定したイベント検出モード毎に個別に最適な検出条件を用いてイベント発生を検知できるので、それぞれのイベント検出モードについて誤検出の発生を抑制できる。従って、確実にイベント検出を行うことが可能になる。
【0015】
また、本発明のイベント検出装置は、前記モード指定部が第1のイベント検出モードを指定した場合、前記イベント検出部が、前記エリアにおける環境の変化があるときにイベントが発生したことを検出し、前記モード指定部が第2のイベント検出モードを指定した場合、前記イベント検出部が、所定時間継続して前記エリアにおける環境の変化がないときにイベントが発生したことを検出するように構成される。
【0016】
このイベント検出装置によれば、イベント検出モード毎に適した検出条件で、異なるイベントを検出することができる。
【0017】
また、本発明のイベント検出装置は、前記イベント検出部によりイベントが発生したことが検出された場合、通信回線を介して、所定の連絡先へ所定のメッセージを送信する送信部を備える。
【0018】
このイベント検出装置によれば、イベントとして異常な状況が発生した場合に、検出地点から離れた場所にいる特定の関係者(システム管理者や家族など)に対してイベントの発生状況を知らせることができる。
【0019】
また、本発明のイベント検出装置は、他の通信装置からの電波を受信する受信部を備え、前記イベント検出部が、前記受信部により受信された電波に基づいてイベントの発生を検出するように構成される。
【0020】
このイベント検出装置によれば、他の通信装置の周辺でイベント発生時に発せられた電波を用いて、イベントの発生を検出することができる。
【0021】
また、本発明のイベント検出装置は、前記イベント検出部が、前記受信部により受信された電波に含まれる信号から、前記エリア内の電波伝搬環境を検出し、前記電波伝搬環境に基づいてイベントの発生を検出するように構成される。
【0022】
このイベント検出装置によれば、イベントの発生により変化する電波伝搬環境を基に、イベントの発生を検出することができる。
【0023】
また、本発明のイベント検出装置は、前記イベント検出部が、前記受信部によりされた電波に含まれる信号から、前記エリアにおける電波の到来方向の情報を含む固有ベクトル情報を前記電波伝搬環境として取得し、前記固有ベクトル情報に基づいてイベントの発生を検出するように構成される。
【0024】
このイベント検出装置によれば、固有ベクトル情報を利用するので、他の機器が発生するノイズ等の影響を受けにくくなり、イベント検出の信頼性が向上する。
【0025】
また、本発明のイベント検出装置は、前記イベント検出部が、前記エリア内で発生した音響信号を検出し、前記固有ベクトル情報と前記音響信号とに基づいてイベントの発生を検出するように構成される。
【0026】
このイベント検出装置によれば、固有ベクトル情報だけでなく、音響信号も用いてイベント検出を行うので、誤検出しにくくなる。例えば、エリア内で音が発生する可能性がない場合には、音の発生を契機として固有ベクトル情報の取得を行うことで、より確実にイベント検出を行うことができる。
【0027】
また、本発明のイベント検出装置は、前記モード指定部が第1のイベント検出モードを指定した場合、前記イベント検出部は、前記固有ベクトル情報を基準ベクトル情報として取得し、前記基準ベクトル情報の取得後に第1の固有ベクトル情報を取得し、前記基準ベクトル情報と前記第1の固有ベクトル情報とに基づいてイベント発生を検出するための評価値を算出し、前記評価値が所定閾値以下である場合、イベントが発生したことを検出するように構成される。
【0028】
このイベント検出装置によれば、第1のイベント検出モードを指定した場合に新たに基準ベクトル情報を取得し、これを基準として前記評価値を算出する。したがって、例えば第1のイベント検出モードとなったときに人が存在する場合であっても存在しない場合であっても、その状況からの変化分を評価することになり、確実にイベント検出を行うことができる。
【0029】
また、本発明のイベント検出装置は、前記イベント検出部が、前記音響信号の信号レベルが所定レベル以上である場合に、前記第1の固有ベクトル情報の取得を開始するように
構成される。
【0030】
このイベント検出装置によれば、検出した音響信号の信号レベルに基づいてイベントとしての異常発生の可能性を認識することが可能であり、異常発生の可能性が高くなった時にのみ、確実にイベント検出を行うことができる。
【0031】
また、本発明のイベント検出装置は、前記モード指定部が第2のイベント検出モードを指定した場合、前記イベント検出部が、第1の固有ベクトル情報を取得し、前記基準ベクトル情報として取得されていた固有ベクトル情報と前記第1の固有ベクトル情報とに基づいてイベント発生の有無を識別するための第1の評価値を算出し、前記第1の固有ベクトル情報の取得後に第2の固有ベクトル情報を取得し、前記基準ベクトル情報と前記第2の固有ベクトル情報とに基づいて第2の評価値を算出し、前記第2の評価値と第1の評価値との差分が所定閾値以下である状態が所定時間継続した場合、イベントが発生したことを検出するように構成される。
【0032】
このイベント検出装置によれば、固有ベクトル情報の時間経過に伴う変化に基づいたイベント発生の評価を行っている。したがって、例えば人が倒れた後で動かなくなったような異常な状況をイベントとして検出することができる。
【0033】
また、本発明のイベント検出装置は、前記イベント検出部が、前記音響信号の信号レベルが所定レベル以上であり、かつ、前記音響信号が転倒音を示す場合に、前記第1の固有ベクトル情報の取得を開始するように構成される。
【0034】
このイベント検出装置によれば、検出した音響信号の信号レベルおよび特徴(音質)に基づいてイベントとしての異常発生の可能性を認識することが可能であり、異常発生の可能性が高くなった時にのみ、確実にイベント検出を行うことができる。
【0035】
また、本発明のイベント検出装置は、前記他の通信装置に対して電波の送信を指示するための電波送信指示信号を送信する送信部を備える。
【0036】
このイベント検出装置によれば、実際にイベント検出動作が必要な時以外は電波の送信を停止するよう指示することができるので、無駄なエネルギー消費を抑制させることができる。
【0037】
また、本発明のイベント検出装置は、前記イベント検出部が、前記送信部によりメッセージが送信された後、他の通信装置からの着呼に対して着信処理を行う自動着信オン状態に設定するように構成される。
【0038】
このイベント検出装置によれば、エリア内の監視対象者が身動きはとれないが意識がある場合には、他の通信装置からの着呼に伴って自動的に通話を行うことができる状態となり、通話相手に助けを求めることができる。
【0039】
また、本発明のイベント検出装置は、所定のエリアにおけるイベントを検出するイベント検出装置であって、他の通信装置からの電波を受信する受信部と、イベントの種類に対応する複数のイベント検出モードのいずれかを指定するモード指定部と、前記モード指定部により指定されたイベント検出モードに従って、イベントの検出条件を決定する検出条件決定部と、前記検出条件決定部により決定された検出条件に基づいてイベントの発生を検出すると共に、前記受信部により受信された電波に基づいてイベントの発生を検出するイベント検出部と、を備える。
【0040】
このイベント検出装置によれば、指定したイベント検出モード毎に個別に最適な検出条件を用いてイベント発生を検知できるので、それぞれのイベント検出モードについて誤検出の発生を抑制できる。従って、確実にイベント検出を行うことが可能になる。さらに、他の通信装置の周辺でイベント発生時に発せられた電波を用いて、イベントの発生を検出することができる。
【0041】
また、本発明のイベント検出装置は、前記モード指定部が、ユーザが入力可能なモード入力部であるように構成される。
【0042】
このイベント検出装置によれば、ユーザが意図するイベント検出モードを選択することができる。
【0043】
また、本発明のイベント検出システムは、第1の通信装置と第2の通信装置との間で通信を行い、所定のエリアにおけるイベントを検出するイベント検出システムであって、前記第1の通信装置は、イベントの種類に対応する複数のイベント検出モードのいずれかを指定するモード指定部と、前記モード指定部により指定されたイベント検出モードに従って、イベントの検出条件を決定する検出条件決定部と、前記検出条件決定部により決定された検出条件に基づいて、イベントの発生を検出するイベント検出部と、を備え、前記第2の通信装置は、前記モード指定部により指定されたイベント検出モードに従って動作する。
【0044】
このイベント検出システムによれば、通信装置間の無線通信機能を利用して電波の送受信を行うことができるので、第2の通信装置から第1の通信装置が受信した信号から所定エリアにおける電波伝搬状況の変化を把握できる。また、指定したイベント検出モード毎に個別に最適な検出条件を用いてイベント発生を検知できるので、それぞれのイベント検出モードについて誤検出の発生を抑制できる。したがって、確実にイベント検出を行うことができる。
【0045】
また、本発明のイベント検出方法は、所定のエリアにおけるイベントを検出するためのイベント検出方法であって、イベントの種類に対応する複数のイベント検出モードのいずれかを指定するステップと、前記指定されたイベント検出モードに従って、イベントの検出条件を決定するステップと、前記決定された検出条件に基づいて、イベントの発生を検出するステップと、を有する。
【0046】
このイベント検出方法によれば、指定したイベント検出モード毎に個別に最適な検出条件を用いてイベント発生を検知できるので、それぞれのイベント検出モードについて誤検出の発生を抑制できる。従って、確実にイベント検出を行うことが可能になる。
【0047】
また、本発明のイベント検出プログラムは、上記イベント検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0048】
このイベント検出プログラムによれば、確実にイベント検出を行うことが可能になる。すなわち、指定したイベント検出モード毎に個別に最適な検出条件を用いてイベント発生を検知できるので、それぞれのイベント検出モードについて誤検出の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、確実にイベント検出を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態におけるイベント検出システムの概略を示す図
【図2】本発明の実施形態におけるイベント検出システムの親機の外観の一例を示す斜視図
【図3】本発明の実施形態におけるイベント検出システムの子機の外観の一例を示す斜視図
【図4】本発明の実施形態における親機のハードウェアの構成例を示すブロック図
【図5】本発明の実施形態における子機のハードウェアの構成例を示すブロック図
【図6】本発明の実施形態における親機の検知処理部に関する機能上の構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施形態における子機の検知処理部に関する機能上の構成を示すブロック図
【図8】本発明の実施形態における親機および子機の主要な動作例(防犯モードの動作例)の一部分を示すフローチャート
【図9】本発明の実施形態における親機および子機の主要な動作例(見守りモードの動作例)の一部分を示すフローチャート
【図10】本発明の実施形態における親機および子機の基準ベクトル情報の取得時の動作例を示すフローチャート
【図11】本発明の実施形態における親機および子機の動作の変形例(見守りモードの変形動作例)を示すフローチャート
【図12】本発明の実施形態における電波伝搬環境の変化に対応した評価値P(t)の変化の第1例を示すグラフ
【図13】本発明の実施形態における電波伝搬環境の変化に対応した評価値P(t)の変化の第2例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0052】
本実施形態のイベント検出システムの概略が図1に示されている。本実施形態においては、親機100、子機200、および子機300で構成されるコードレス電話システムを、イベント検出システムの主要な構成要素としている。なお、親機100は、親機として機能するイベント検出装置のことを指す。また、子機200、300は、子機として機能するイベント検出装置のことを指す。親機100は、子機200、300を管理する。
【0053】
図1に示す構成例においては、独居高齢者宅700の屋内に親機100および子機200、300を設置してあり、高齢者等の見守り対象者800をこのシステムが見守る状況を想定している。また、このイベント検出システムは見守り動作に限らず、留守宅への他人の侵入等を検知することもできる。また、子機200、300のいずれか一方については省略しても良い。
【0054】
本実施形態のイベント検出システムは例えばコードレス電話システムであるため、親機100と子機200、300との間で無線通信を行うことができる。したがって、親機100及び子機200、300は、通信装置としての機能を有する。本実施形態においては、子機200、300が送信した電波を親機100のアレーアンテナ101で受信することにより、屋内の電波伝搬環境を検出し、その結果に基づいて高齢者の見守りや留守宅への人の侵入などに関するイベント発生を検知できるように構成してある。本実施形態において、イベントとは通常起こりえないエリア内の特別な状態(異常事態)や、例えば人や物が要因となるエリア内の環境の変化の有無などである。これらのイベントが検出されるエリアは、例えば住宅やオフィス等であり、特に限定するものではない。
【0055】
親機100は、一般の電話機と同様に電話線400を介して通信回線としての公衆通信網と接続されている。従って、親機100は電話局の交換機を経由して任意の相手先を呼び出して通信を行うことができる。また、携帯電話端末600を所持している家族900との間で基地局500を経由して通信回線を接続することもできる。
【0056】
図1に示したシステムの親機100及び子機200の外観例がそれぞれ図2及び図3に示されている。なお、子機300については子機200と同様である。
【0057】
図2に示すように、親機100は、アレーアンテナ101、マイク102、スピーカ103、操作部110、および表示部120を備える。また、操作部110には留守ボタン104が含まれている。
【0058】
本実施形態では、イベント検出モードとして後述する見守りモードと防犯モードとのいずれか一方をユーザが指定する操作のために、モード入力部としての留守ボタン104が使用される。なお、モード入力部は必ずしも留守ボタン104のように親機100に設けられる必要はなく、リモコン、携帯電話端末等の遠隔操作可能なものでもよい。また、アレーアンテナ101を用いているのは、親機100が受信する電波の到来方向を識別するためである。
【0059】
また、図3に示すように、子機200は、アンテナ201、マイク202、スピーカ203、操作部210、および表示部220を備える。
【0060】
次に、親機100のハードウェアの構成例が図4に示されている。
図4に示すように、親機100は、操作部110、表示部120、制御部130、オーディオ部150、無線部160、電源部170、およびインタフェース部(I/F部)180備える。
【0061】
制御部130は、マイクロコンピュータを主体とする制御回路で構成されており、予め用意されているプログラムを実行することにより、コードレス電話システムの親機としての機能を実現する。また、制御部130にはイベント検出を行うために必要な検知処理部140が含まれている。
【0062】
操作部110は、テンキーなどの様々なボタンで構成されており、ユーザからの入力操作を受け付ける。例えば、操作部110に含まれている留守ボタン104の操作により、イベント検出モード(防犯モードや見守りモード)を指定する。
【0063】
表示部120は、親機100の動作状態を表示したり、相手先の電話番号などの情報を表示したりする。これにより、ユーザに必要な情報を知らせることができる。オーディオ部150は、音声などの音響信号をマイク102から取り込んで入力したり、受信した音響信号を再生してスピーカ103に出力したりする。
【0064】
無線部160は、アレーアンテナ101を介して電波の送信及び受信を行い、子機200との間の無線通信を行う。また、アレーアンテナ101が受信した電波の信号は、イベント検出のために利用される。
【0065】
電源部170は、AC電源またはDC電源から電力供給を受け、親機100における他の構成部への電力供給を行う。
【0066】
インタフェース部180は、電話線400を介して親機100を公衆通信網と接続し、外部の電話機との間で音声通話を行うために利用される。
【0067】
次に、子機200のハードウェアの構成例が図5に示されている。
図5に示すように、子機200は、操作部210、表示部220、制御部230、オーディオ部250、無線部260、および電源部270を備える。
【0068】
制御部230は、マイクロコンピュータを主体とする制御回路で構成されており、予め用意されているプログラムを実行することにより、コードレス電話システムの子機としての機能を実現する。また、制御部230にはイベント検出を行うために必要な検知処理部240が含まれている。
【0069】
操作部210は、テンキーなどの様々なボタンで構成されており、ユーザからの入力操作を受け付ける。表示部220は、子機200の動作状態を表示したり、相手先の電話番号などの情報を表示したりする。これにより、ユーザに必要な情報を知らせることができる。オーディオ部250は、音声などの音響信号をマイク202から取り込んで入力したり、受信した音響信号を再生してスピーカ203に出力したりする。
【0070】
無線部260は、アンテナ201を介して電波の送信及び受信を行い、親機100との間の無線通信を行う。また、アンテナ201が送信する電波の信号は、イベント検出のために利用される。電源部270は、AC電源またはDC電源から電力供給を受け、子機200における他の構成部への電力供給を行う。
【0071】
次に、親機100側の検知処理部140の詳細な構成について説明する。
親機100側の検知処理部140に関する機能上の構成例が図6に示されている。
【0072】
図6に示すように、親機100側の検知処理部140は、固有ベクトル演算部141、音量検出部142、イベント検出部143、子機通信部144、モード設定部145、およびメッセージ送信指示部146を備える。
【0073】
固有ベクトル演算部141は、アレーアンテナ101が受信した電波の信号を無線部160から入力して固有ベクトルを演算する。アレーアンテナ101の出力する信号には、受信信号強度と電波の到来方向の情報が含まれている。しかし、受信信号強度については、空間内の物体の状態に変化が生じなくても時間の経過に伴って変化しやすい。そこで、アレーアンテナ101の出力として得られる受信データの相関行列を固有値展開することにより、電波の到来方向を表す固有ベクトルの成分のみを取得(抽出)する。
【0074】
この固有ベクトルは、検出対象空間(例えば独居高齢者宅700内の空間)における電波伝搬環境を反映している。従って、検出対象空間内で人等の物体が動いている状態と動いていない状態とを、固有ベクトルに基づき区別できる。
【0075】
音量検出部142は、マイク102で収集した音響信号をオーディオ部150から入力し、イベントの発生に関連して発生する特別な音響信号を検出する。例えば、音圧(音響信号の信号レベル)が所定レベル以上の大きい音や転倒音の特徴(音質)を有する音響信号などを検出する。
【0076】
ここでの転倒音の特徴とは、例えば、音の種類であり、転倒音を検出するための音の種類は、純音や楽音ではなく、物の壊れる音や、ぶつかる音、打撃音等に相当する噪音である。また、独居高齢者宅700内で見守り対象者800が転倒した場合、転倒音が繰り返して発生することは考えにくいので、単発的な、または、突発的な噪音を検出することによって転倒音と判断することが望ましい。
【0077】
また、検出した音響信号の周波数を利用して、転倒音かどうかを判断してもよい。例えば、検出した音響信号の中心周波数が125Hz以下のときに転倒音と判断してもよく、あるいは、検出した音響信号の低周波数成分の持続時間が長く、検出した音響信号の高周波成分の持続時間が短い場合に、転倒音と判断してもよい。
【0078】
モード設定部145は、操作部110の留守ボタン104等の操作入力に従って、イベント検出モードを切り替える。本実施形態においては、例えば「見守りモード」と「防犯モード」とを切り替える。イベント検出モードは、イベントの種類(何者かがエリア内に侵入したというイベントや長時間人が動いていないというイベントなど)に対応するものである。そして、モード設定部145は、イベント検出モードに従って、イベントを検出するための検出条件を決定する。
【0079】
イベント検出部143は、モード設定部145で指定されたイベント検出モードに割り当てられた検出条件に従って、イベントの発生を検出する。つまり、イベント発生の有無を識別する。例えば、固有ベクトル演算部141が取得した固有ベクトルの特徴に基づいて、イベント発生の有無を識別する。また、例えば、検出した音響信号の特徴と、固有ベクトル演算部141が取得した固有ベクトルの特徴とに基づいて、イベント発生の有無を識別する。
【0080】
このとき、イベント検出部143は、音響信号の特徴について、事前にサンプリングした音響信号の情報を内部のメモリに保存しておき、保存してある音響信号の特徴と、新たにマイク102等で収集した音響信号の特徴との類似性を調べることにより、イベント発生との関連を識別する。
【0081】
子機通信部144は、親機100と子機200との間の通信に関する処理を行う。例えば、モード設定部145で指定されたイベント検出モードに従って子機200に現在のイベント検出モードを指示する。また、必要な時に子機200に対して電波の送信開始を指示するための電波送信指示信号を送信する。また、子機200側がマイク202で収集した音響信号の情報を受信し、イベント検出部143に引き渡す。
【0082】
メッセージ送信指示部146は、イベント検出部143によりイベント発生が検出された時に、メモリ等に予め登録されている相手先(例えば家族900の所持している携帯電話端末600)の電話番号に対して発呼し、接続された電話回線を経由して、例えばメモリ等に予め親機100に録音され記憶されている音声のメッセージを音声信号として送出する。
【0083】
次に、子機200側の検知処理部240の詳細な構成について説明する。
子機200側の検知処理部240に関する機能上の構成例が図7に示されている。
【0084】
図7に示すように、子機200側の検知処理部240は、電波送信指示部241、音量検知部242、および親機通信部243が備わっている。
【0085】
電波送信指示部241は、親機100から電波送信の指示があった場合に、すなわちイベント検出のための電波送信指示信号を受信した時に、子機200の無線部260に対して電波送信の指令を出す。
【0086】
音量検知部242は、マイク202で収集した音響信号をオーディオ部250を介して入力し、予め定めた音量よりも大きい音を検知した場合、つまり音響信号の信号レベルが所定レベル以上である場合に、その音のデータを親機通信部243を経由して親機100のイベント検出部143に引き渡す。
【0087】
親機通信部243は、音量検知部242から入力された音のデータ(音量のデータ、音質のデータ、など)を親機100へ送信する。また、親機100から指示があった場合に、その指示に従ってイベント検出モードの切り替えを実施する。つまり、親機100のモード設定部145により設定されたイベント検出モードに従って、子機200が動作するよう制御する。
【0088】
次に、イベント検出と関連のある親機100および子機200の動作について説明する。本実施形態における親機100および子機200の主要な動作が図8〜図10に示されている。なお、図8〜図10に示す動作の大部分については、親機100側の制御部130のマイクロコンピュータ又は子機200側の制御部230のマイクロコンピュータが予め用意されたプログラムを実行することにより、検知処理部140又は240の動作として実現される。また、子機300についても子機200と同様の動作を行うことが可能である。
【0089】
親機100においては、電源が投入され、検知処理部140が起動された状態になると、図8のステップS11からS12の処理に進む。また、子機200においては、電源が投入され、検知処理部240が起動された状態になると、図8のステップS31からS32の処理に進む。
【0090】
親機100の検知処理部140は、マイク102からの信号入力をオン状態に切り替える(ステップS12)。また、子機200の検知処理部240は、マイク202からの信号入力をオン状態に切り替える(ステップS32)。
【0091】
続いて、イベント検出モードを設定するために、親機100の検知処理部140が、親機100の留守ボタン104が押下されたかどうかを識別する(ステップS13)。留守ボタン104の押下が検知された場合には「防犯モード」の指定とみなしてステップS14に進み、留守ボタン104の押下が検知されなかった場合には、「見守りモード」の指定とみなして図9のステップS41に進む。
【0092】
ここで、「防犯モード」は、留守中に親機100や子機200、300が設置されている留守宅内で泥棒などの人物の侵入をイベントとして検出するためのイベント検出モードである。また、「見守りモード」は、独居高齢者等の見守り対象者が、親機100や子機200、300が設置されている宅内で、転倒などにより動けなくなり救助が必要な状態になったことをイベントとして検出するためのイベント検出モードである。
【0093】
「防犯モード」が指定された場合、親機100の検知処理部140は、子機200を「防犯モード」に設定するために、親機100から子機200にモード指示信号を送信する(ステップS14)。この場合、子機200の検知処理部240は、親機100から受信したモード指示信号に従って、「防犯モード」の動作を起動する(ステップS33)。
【0094】
図8に示すステップS14〜S24は「防犯モード」に関する検知処理部140の処理であり、ステップS33〜S39は「防犯モード」に関する検知処理部240の処理である。
【0095】
子機200の検知処理部240は、「防犯モード」が起動するとそれから所定時間J(例えば15分)を経過した後で、無線部260を制御してアンテナ201から一定時間(例えば5分間)だけ電波を送信する(ステップS34)。
【0096】
親機100の検知処理部140は、子機200からの電波の受信を検出すると、この時に受信した信号を順次にサンプリングし、これに基づいて固有ベクトル演算部141が出力する固有ベクトル情報を、「NoEvent」データ(Vno)としてイベント検出部143内部のメモリに保存する(ステップS15)。すなわち、イベントが発生していない基準状態(初期状態)における宅内空間の電波伝搬環境を表す固有ベクトル情報(基準ベクトル情報)を保存する。
【0097】
続いて、親機100の検知処理部140は、マイク102で収集した音響信号の音量を検出する(ステップS16)。同様に、子機200の検知処理部240は、マイク202で収集した音響信号の音量(信号レベル)を検出する(ステップS35)。そして、子機200の検知処理部240は、検出した音量を閾値Pow1と比較する(ステップS36)。
【0098】
子機200の検知処理部240は、閾値Pow1以上の音量の音を検知すると、この音量データを親機100に送信する(ステップS37)。親機100の検知処理部140は、親機側のマイク102で検出した音量、又は子機200側のマイク202で検知され子機200から送信された音量データが示す音量を、閾値Pow1と比較する(ステップS17)。そして、この音量が閾値Pow1以上であることを認識すると、ステップS17からS18の処理に進む。
【0099】
つまり、親機100のマイク102で収集した音響信号と、子機200のマイク202で収集した音響信号の少なくとも一方の音量が閾値Pow1を超えていれば、イベント発生の可能性が高い状況とみなし、検知処理部140は、ステップS18以降の処理を実行する。
【0100】
なお、図8に示す動作例においては、マイク102、202で収集した音響の音量だけをステップS17で識別しているが、他の特徴を識別しても良い。例えば、音響波形の周波数帯や、音量変化のパターンの特徴から、衝撃音かどうかなどを識別しても良い。また、事前に登録した波形と検出した音響信号の波形とを比較して識別しても良い。
【0101】
親機100の検知処理部140は、子機200に対して電波の送信を指示するための電波送信指示信号を送信する(ステップS18)。この電波送信指示信号を子機200が受信すると、検知処理部240は、無線部260を制御してアンテナ201から少なくとも所定時間に渡って電波を送信する(ステップS38)。
【0102】
親機100の検知処理部140は、子機200からの電波の受信を検出すると、この時に受信した信号を順次にサンプリングし、この信号に基づいて固有ベクトル演算部141が出力する時刻tにおける固有ベクトル情報(Vob(t))(第1の固有ベクトル情報)を取得し、次式で表される評価関数に従って評価値P(t)を算出する(ステップS19)。
【0103】
【数1】

H:共役(エルミート)転置
Vno:ステップS15で保存した参照ベクトル
イベント発生がない状態で|Vno|=|Vob(t)|=1とし、正規化した評価値P(t)を算出する。
【0104】
上記の評価関数は正規化してあるので、算出される評価値P(t)は1又はそれよりも小さい値になる。つまり、何もイベントが発生していない状態では評価値P(t)は1に近い値になり、イベントが発生した状態においては評価値P(t)は1よりも小さい値になる。換言すると、イベントが発生した状態の評価値P(t)は、何もイベントが発生していない状態の評価値P(t)よりも1より離れた値となる。評価値P(t)は、イベント発生の有無を識別するためのものである。
【0105】
評価値P(t)の変化に関する具体例が図12及び図13に示されている。図12に示す例は、オフィス環境で計測された評価値P(t)の変化を表しており、図13に示す例は、一戸建ての屋内環境で計測された評価値P(t)の変化を表している。図12、図13に示されるように、評価値P(t)は所定のエリア内での環境の変化(人、物が動く等)により変化すると共に、1から離れた値となる。
【0106】
図8に戻り、検知処理部140は、ステップS19で算出した評価値P(t)に基づいてイベント発生の有無を識別する(ステップS20)。この例では、(1−P(t))を事前に定めた閾値Q1と比較し、((1−P(t))>Q1)の条件を満たす時にイベント発生ありとみなし、次のステップS23に進む。すなわち、イベントが発生していない基準状態(P(t)=1)と比べて現在の評価値P(t)が十分に小さいので、検出対象空間内で誰かが動いている状態であると認識する。
【0107】
((1−P(t))>Q1)の条件を満たさない時には、検知処理部140は、検出動作を開始した時刻(t=0、ここではステップS18における電波送信指示信号の送信時)から事前に定めた時間T1(例えば3分間)が経過したか否かを識別する(ステップS21)。時間T1が経過してなければステップS22に進み、時刻tのカウンタを1つカウントアップしてステップS19に戻り、時間T1が経過した場合にはステップS24に進む。
【0108】
そして、親機100の検知処理部140は、所定のメッセージを送信する(ステップS23)。すなわち、メモリ等に事前に登録した音声メッセージの内容を読み込むと共に、メモリ等に登録してある相手先、例えば図1に示す家族900の携帯電話端末600の電話番号宛てに発呼を行い、電話回線を接続して音声メッセージを送信する。例えば、「留守なのに人がいる」のような音声メッセージを送信することが想定される。
【0109】
音声メッセージの送信が完了した後、親機100の検知処理部140は、子機200からの電波送信を終了させるために、子機200に対して電波の送信の停止を指示するための電波送信停止指示信号を送信する(ステップS24)。子機200の検知処理部240は、親機100から電波送信停止指示信号を受信すると、子機200からの電波送信を停止する(ステップS39)。
【0110】
一方、図8のステップS13において「見守りモード」が指定された場合には、親機100の検知処理部140は、子機200を「見守りモード」に切り替えるために、見守りモード指示を含むモード指示信号を子機200に送信する(図9のステップS41)。子機200の検知処理部240は、親機100から見守りモードに設定するためのモード指示信号を受信すると、見守りモードの動作を起動して(図9のステップS61)、ステップS62以降の処理に進む。
【0111】
図9、図10に示すステップS41〜S54及びステップS71〜S72は「見守りモード」に関する検知処理部140の処理であり、ステップS61〜S68及びステップS73は「見守りモード」に関する検知処理部240の処理である。
【0112】
親機100の検知処理部140は、マイク102で収集した音響信号について音量及び音質を検出する(ステップS42)。
【0113】
また、子機200の検知処理部240は、親機100と同様に、マイク202で収集した音響信号の音量及び音質を検出し(ステップS62)、検出した音量を閾値Pow2と比較する(ステップS63)。そして、マイク202の音量が閾値Pow2を超える場合には、子機200の検知処理部240は、収集した音響信号の音量及び音質のデータを親機100に送信する(ステップS64)。
【0114】
親機100の検知処理部140は、検出した音の音量及び音質について所定の転倒音かどうかを識別する(ステップS43)。すなわち、親機のマイク102及び子機のマイク202で検出した音響信号の音量の少なくとも一方が閾値Pow2を超え、かつ音質が転倒音の特徴と類似している場合には、転倒音の検出とみなしてステップS44に進む。転倒音でなければステップS42に戻り、音響信号の検出を継続する。
【0115】
なお、転倒音の特徴と類似しているかどうかは、例えば、音響波形の周波数帯や、音量変化のパターンの特徴から識別しても良いし、事前に登録した波形と検出した音響信号の波形とを比較して識別しても良い。
【0116】
親機100の検知処理部140は、内部メモリの状態を参照し、イベントが発生していない基準状態(初期状態)における宅内空間の電波伝搬環境を表す固有ベクトル情報(Vno)が既に保存されているか否かを識別する(ステップS44)。
【0117】
まだ保存されていない場合は、図10のステップS71〜S73を実行した後でステップS46に進み、保存されている場合はステップS45からS46に進む。
【0118】
内部メモリに固有ベクトル情報(Vno)が保存されていない場合、現在の電波伝搬環境を表す固有ベクトル情報を検出するために、親機100の検知処理部140は、子機200に対して電波送信指示信号を送信する(図10のステップS71)。この場合、子機200の検知処理部240は、親機100から受信した電波送信指示信号に従って、子機200の電波送信を少なくとも所定時間行う(図10のステップS73)。
【0119】
親機100の検知処理部140は、子機200からの電波の受信を検出すると、この時に受信した信号を順次にサンプリングし、これに基づいて固有ベクトル演算部141が出力する固有ベクトル情報を「NoEvent」データ(Vno)としてイベント検出部143内部のメモリに保存する(図10のステップS72)。つまり、イベントが発生していない基準状態(初期状態)における宅内空間の電波伝搬環境を表す固有ベクトル情報(基準ベクトル情報)を保存する。
【0120】
図9に戻り、親機100の検知処理部140は、子機200に対して電波送信指示信号を送信する(ステップS45)。この場合、子機200の検知処理部240は、親機100から受信した電波送信指示信号に従って、子機200の電波送信を少なくとも所定時間行う(ステップS65、S66)。
【0121】
親機100の検知処理部140は、子機200から受信した信号を順次にサンプリングし、この信号に基づいて固有ベクトル演算部141が出力する時刻tの固有ベクトル情報(Vob(t))(第1の固有ベクトル情報)を取得する。そして、メモリに保存されている固有ベクトル情報(Vno)を利用し、前述の第(1)式で表される評価関数に従って時刻tの評価値P(t)(第1の評価値)を算出する(ステップS46)。
【0122】
続いて、親機100の検知処理部140は、時刻tを表すカウンタの値を更新する(ステップS47)。
【0123】
続いて、親機100の検知処理部140は、子機200から受信した信号を順次にサンプリングし、この信号に基づいて固有ベクトル演算部141が出力する時刻tから所定時間後の時刻(t+1)の固有ベクトル情報(Vob(t+1))(第2の固有ベクトル情報)を取得する。そして、メモリに保存されている固有ベクトル情報(Vno)を利用し、前述の第(1)式で表される評価関数に従って時刻(t+1)の評価値P(t+1)(第2の評価値)を算出する(ステップS48)。
【0124】
続いて、親機100の検知処理部140は、前回の時刻tで検出された第1の評価値P(t)と、所定時間後の時刻(t+1)に検出された第2の評価値P(t+1)との差分ΔP(t)(時刻t〜t+1の間の変化分)を求め、ΔP(t)と閾値Q2とを比較する(ステップS49)。
【0125】
(ΔP(t)<Q2)の条件を満たす場合には、電波伝搬環境が経時的にほとんど変化していないので、高齢者等の見守り対象者が静止状態であると認識し、ステップS50に進む。(ΔP(t)<Q2)の条件を満たさない場合は、見守り対象者が動いていると認識し、ステップS42の処理に戻る。
【0126】
続いて、親機100の検知処理部140は、時刻tと閾値T2の比較を実施する。すなわち、見守りを開始した時点(ステップS45でt=0になった時)からの時間経過の長さを事前に定めた閾値T2と比較する。閾値T2としては、代表例として5分間に定めることが考えられる。
【0127】
(t>T2)の条件を満たす場合は、イベントが発生した、つまり人が倒れて動かなくなった可能性があると認識し、次のステップS51に進む。(t>T2)の条件を満たさない場合は、ステップS47に戻って見守りを継続する。
【0128】
続いて、親機100の検知処理部140は、所定のメッセージを送信する(ステップS51)。すなわち、メモリ等に事前に登録した音声メッセージの内容を読み込むと共に、メモリ等に登録してある相手先、例えば図1に示す家族900の携帯電話端末600の電話番号宛てに発呼を行い、電話回線を接続して音声メッセージを送信する。例えば、「人が倒れた可能性あり」のような音声メッセージを送信することが想定される。
【0129】
この音声メッセージの送信が完了した後、親機100の検知処理部140は、子機200に対して電波送信停止指示信号を送信する(ステップS52)。子機200の検知処理部240は、親機からの電波送信停止指示信号を受信すると、子機200からの電波の送信を、この指示に従って停止する(ステップS67)。
【0130】
続いて、親機100の検知処理部140は、親機100側における「見守りモード」の動作を終了し(ステップS53)、「見守りモード」の動作を終了するように子機200に対して指示信号を送信する(ステップS54)。子機200の検知処理部240は、親機からの見守りモードを終了するための指示信号を受信すると、「見守りモード」の動作を終了する(ステップS68)。
【0131】
図8〜図10に示した動作について以下に説明を補足する。
【0132】
図8に示した動作においては、留守ボタン104の押下を検出して「防犯モード」を起動した後に、イベントが発生していない基準状態を表す固有ベクトル情報(Vno)を取得している。また、子機200は防犯モードが起動した後、更に所定時間(J)を経過してから電波送信を行う。従って、ユーザが留守ボタン104を押した後、実際に外出した後で電波の送信が開始され、固有ベクトル情報(Vno)のサンプリングが行われる。これにより、ユーザにわざわざサンプリングするための手間を求めることなく、宅内に人がいない状態で固有ベクトル情報(Vno)を取得することができ、誰かが侵入してきたときにすぐに検知することができる。
【0133】
また、防犯モードに切り替わる度に新たに固有ベクトル情報(Vno)を取得するので、宅内のレイアウトの変更(家具の移動など)があったとしても、最新の固有ベクトル情報(Vno)を取得することができる。これにより、家具の配置が変わった時に評価値P(t)が1から離れた値となり、侵入者がいないにも関わらずメッセージを送信してしまう、などの誤検知を抑制することができる。
【0134】
また、図8に示した動作においては、「防犯モード」を起動した後に大きな音を検知した場合のみ、子機200からの電波送信を行い、固有ベクトル情報(Vob(t))に関する検出動作が終了すると、子機200からの電波送信を停止している。従って、必要な時以外は電波の送信を停止して、無駄な電力の消費を抑制できる。ただし、音響信号に関係なく、子機200(または子機300)が親機100に電波送信を行ってもよい。
【0135】
また、図8に示した動作では、「防犯モード」において固有ベクトル情報に基づく評価値P(t)を比較してイベント発生の有無を識別しているが、「見守りモード」の場合と同様に、評価値P(t)の変化分(ΔP(t))を比較して識別を行うようにしても良い。
【0136】
図9に示した動作においては、「見守りモード」の場合に、単位時間あたりの固有ベクトル情報の評価値の変化分ΔP(t)(=P(t+1)−P(t))を用いて人がいるか否かを判断している。なお、評価値の変化分ΔP(t)を算出するための時間の間隔(時刻tと時刻t+1との差)は特に限定するものではない。
【0137】
例えば、図12に示すグラフにおいて、横軸(time(sec))の45〜55での評価値P(t)は、静止している状態であるにも関わらず、他の静止している状態のときの評価値P(t)に比べて、1から離れた値となっている。例えば、P(t)が0.95より大きいときを「静止状態」と判断し、0.95より小さいときを「人が動いている状態」と判断するように閾値を設定する場合、横軸(time(sec))の45〜55での評価値P(t)は人が動いている状態と判断される。従って、P(t)が1に近いかどうかで識別するだけでは、人が長時間静止している場合には誤検出する可能性が高い。そこで、図9の動作においては、「見守りモード」のときに評価値の変化分ΔP(t)を用いて識別している。
【0138】
また、図9に示す動作においては、検出した音の音質が転倒音か否かを親機100側で識別しているが、子機200側で音質を識別しても良い。また、両方で音質を識別しても良い。
【0139】
図10に示した動作においては、基準状態の固有ベクトル情報(Vno)を取得する際に、宅内に人がいる状態でこれを実行する場合もある。しかし、「見守りモード」においては、評価値の変化分ΔP(t)に基づいてイベントの有無を識別しているので、人がいる状態で取得した固有ベクトル情報(Vno)を利用しても、見守り動作で誤動作は生じない。よって、固有ベクトル情報(Vno)をまだサンプリングしていない状態であっても、ユーザにわざわざサンプリングするための手間を求めることなく、「見守りモード」を実施することができる。
【0140】
また、図8、図9の動作における音量の閾値Pow1及びPow2については、事前に(Pow1<Pow2)の関係を満たすように決定しておく。すなわち、「防犯モード」の時には、通常、屋内に人がおらず、音がないものと推測される。このため、音を検出するための閾値Pow1を低めに設定することにより、侵入者検出の精度を高めることができる。
【0141】
また、図8、図9の動作における評価値の閾値Q1及びQ2については、(Q1<Q2)の関係を満たすように決定しておく。すなわち、「防犯モード」の時には、通常、屋内に人がおらず、基本的に評価値P(t)が常に1に近い状態となるはずである。このため、人の存在を検出するための閾値Q1を低めに設定することにより、侵入者検出の精度を高めることができる。一方、「見守りモード」の時に、仮に、高齢者が転倒したとしても、転倒後すぐ全く動かなくなるとは考えにくい。例えば、手足のみ動かすことによって、多少評価値P(t)が変化してしまうことにより、「静止状態」を検出できない状態が生じうる。これを抑制するためにも、閾値Q2はわずかな変化も検出したいときに用いる閾値Q1に比べて、大きい値とすることが好ましい。
【0142】
次に、前述の「防犯モード」と「見守りモード」との違いについて説明を補足する。
【0143】
「防犯モード」は、「人が動いている状態」ではなく、「人がいる状態」を検出することを目的としている。すなわち、留守中の宅内(エリア内)に人が侵入することによる宅内(エリア内)の環境の変化を検出することを目的としている。留守中に宅内に人がいるはずはなく、宅内の環境が変化するはずはないためである。このことから、人が宅内にいない状態でサンプリング(固有ベクトル情報(Vno)を取得)し、その後、人がいる状態でP(t)を算出すれば、少なくともP(t)は1から離れた値になる。これにより、精度良く侵入者を検出することができる。逆に、もしもΔP(t)を用いて侵入者の有無を判断すると、侵入者の動きが少ないときに検出できない可能性があり好ましくない。
【0144】
「見守りモード」は、「人が静止している状態」を検出することを目的としている。すなわち、人が活動しているはずの在宅中の宅内(エリア内)において、所定時間以上継続して宅内(エリア内)の環境の変化がない状態を検出することを目的としている。このことから、上述した通りΔP(t)を用いて判断する。また、見守りモード時では、宅内で人が生活しているので、宅内の物体が移動する可能性がある。物体が移動した時、宅内の状態が、サンプリング(固有ベクトル情報(Vno)を取得)した状態(基準状態)に対して常に異なることとなり、人の動きに関係なく、常にP(t)が1から離れた値となってしまう。このため、P(t)が1から離れている理由が、人の動きによるものなのか、物体の動きによるものなのかの区別がつきにくくなる。よって、人が一定時間静止している状態を検出するためには、評価値の変化分ΔP(t)を利用する方が良い結果が得られる。
【0145】
なお、本実施形態の場合、エリア内の環境の変化がないと判断されるときは、常に評価値P(t)が同じ値(すなわち、評価値の変化分ΔP(t)が0)となるときではなく、評価値の変化分ΔP(t)が所定の範囲内(所定の閾値以下)のときである。
【0146】
次に、見守りモードの変形例について説明する。
この見守りモードの変形例に関する親機100および子機200の動作が図11に示されている。すなわち、親機100の検知処理部140の処理は、図8に示すステップS13で(NO:見守りモード)であった場合に、図9のステップS41の代わりに図11のステップS81に進む。
【0147】
親機100の検知処理部140は、内部メモリの状態を参照し、イベントが発生していない基準状態(初期状態)における宅内空間の電波伝搬環境を表す固有ベクトル情報(Vno)が既に保存されているか否かを識別する(ステップS81)。
【0148】
まだ保存されていない場合は、図10のステップS71〜S73を実行した後でステップS82に進み、保存されている場合はステップS81からS82に進む。
【0149】
続く図11のステップS82〜S86については、図9のステップS45〜S49とほぼ同一の内容である。
【0150】
すなわち、現在の電波伝搬環境を表す固有ベクトル情報を検出するために、親機100の検知処理部140は、子機200に対して電波送信指示信号を送信する(ステップS82)。この場合、子機200の検知処理部240は、親機100から受信した電波送信指示信号に従って、子機200の電波送信を少なくとも所定時間行う(ステップS101、S102)。
【0151】
また、親機100の検知処理部140は、子機200から受信した信号を順次にサンプリングし、この信号に基づいて固有ベクトル演算部141が出力する時刻tの固有ベクトル情報(Vob(t))(第1の固有ベクトル情報)を取得する(ステップS83)。そして、メモリに保存されている固有ベクトル情報(Vno)を利用し、前述の第(1)式で表される評価関数に従って、時刻tの評価値P(t)(第1の評価値)を算出する。
【0152】
続いて、親機100の検知処理部140は、時刻tを表すカウンタの値を更新する(ステップS84)。
【0153】
続いて、親機100の検知処理部140は、子機200から受信した電波の信号を順次にサンプリングし、この信号に基づいて固有ベクトル演算部141が出力する時刻(t+1)の固有ベクトル情報(Vob(t+1))(第2の固有ベクトル情報)を取得する(ステップS85)。そして、メモリに保存されている固有ベクトル情報(Vno)を利用し、前述の第(1)式で表される評価関数に従って、時刻(t+1)の評価値P(t+1)(第2の評価値)を算出する。
【0154】
続いて、親機100の検知処理部140は、前回の時刻tで検出された第1の評価値P(t)と、所定時間後の時刻(t+1)に検出された第2の評価値P(t+1)との差分ΔP(t)(時刻t〜t+1の間の変化分)を求め、ΔP(t)と閾値Q2とを比較する(ステップS86)。
【0155】
(ΔP(t)<Q2)の条件を満たす場合には、電波伝搬環境が経時的にほとんど変化していないので、高齢者等の見守り対象者が静止状態であると認識し、ステップS87に進む。(ΔP(t)<Q2)の条件を満たさない場合は、見守り対象者が動いていると認識し、ステップS84の処理に戻る。
【0156】
続いて、親機100の検知処理部140は、時刻tと閾値T3との比較を実施する(ステップS87)。すなわち、見守りを開始した時点(ステップS45でt=0になった時)からの時間経過の長さを事前に定めた閾値T3と比較する。閾値T3としては、代表例として20分間に定めることが考えられる。
【0157】
(t>T3)の条件を満たす場合は、人が一定時間(T3)に渡ってほとんど動いていない可能性があると認識し、次のステップS88以降の処理を実行する。(t>T3)の条件を満たさない場合には、ステップS84に戻って見守りを継続する。
【0158】
つまり、音響信号の検出の有無とは関係なしに、固有ベクトル情報(第1の固有ベクトル情報)の取得を開始し、固有ベクトル情報の評価値の変化分ΔP(t)を一定時間(T3)だけ監視する点が、図9の動作とは大きく異なっている。また、ステップS88以降の処理についても図9の動作とは異なっている。
【0159】
続いて、親機100の検知処理部140は、所定のメッセージを送信する(ステップS88)。すなわち、メモリ等に事前に登録した音声メッセージの内容を読み込むと共に、メモリ等に登録してある相手先、例えば図1に示す家族900の携帯電話端末600の電話番号宛てに発呼を行い、電話回線を接続して音声メッセージを送信する。例えば、「人が動いていない可能性あり」のような音声メッセージを送信することが想定される。
【0160】
続いて、親機100の検知処理部140は、音声メッセージの送信を完了した後で、音声メッセージの宛先の人と監視対象者との間の通話が可能になるように制御する。すなわち、親機100の検知処理部140は、親機100は宛先からの自動的な着信が可能な状態(自動着信オン状態(自動着信ON))に移行する(ステップS89)。
【0161】
この場合、送信した音声メッセージを受け取った家族900は、実際の状況を確認するために、例えば携帯電話端末600により親機100の電話番号に対して発呼する。
【0162】
携帯電話端末600等から発呼して親機100を呼び出すと、親機100が自動着信オン状態なので、親機100又は子機200を特に操作することなく、親機100の検知処理部140が自動的に着信(自動着信)する(ステップS90)。
【0163】
続いて、親機100の検知処理部140は、親機100自体をハンズフリー通話を行うためのハンズフリー状態(ハンズフリーON)に切り替え(ステップS91)、通話を開始する(ステップS93)。また、親機100の検知処理部140は、子機200もハンズフリー通話を行うために、ハンズフリー状態に移行するよう指示するためのハンズフリー指示信号を子機200に送信する(ステップS92)。子機200の検知処理部140は、親機からのハンズフリー指示信号を受信して、子機200側をハンズフリー状態に切り替え(ステップS103)、通話を開始する(ステップS104)。
【0164】
従って、高齢者等の監視対象者が全く動けない状態であったとしても、意識があって声を発することができる状態であれば、親機100又は子機200のハンズフリー通話機能を利用して、発信元の携帯電話端末600等との間で通話することができる。なお、ここでは携帯電話端末600、親機100、および子機200を含めた複数者通話の状態となる。
【0165】
通話(ステップS93又はステップS104)が終了し、発信元の携帯電話端末600等が電話回線を切断すると、親機100の検知処理部140が、その電話回線の切断を検出し、自動着信オン状態を解除する。つまり、自動的な着信が不可能な状態(自動着信オフ状態(自動着信OFF))に切り替える(ステップS94)。更に、親機100の検知処理部140は、親機100のハンズフリー状態を解除し、ハンズフリーオフの状態に切り替える(ステップS95)。そして、親機100の検知処理部140は、ハンズフリー状態を解除するためのハンズフリー解除信号を子機200に送信する。子機200の検知処理部240は、子機200のハンズフリー状態を解除し、ハンズフリーオフの状態に切り替える(ステップS105)。
【0166】
このように、携帯電話端末600等からの着呼に対して自動的に着信処理を行う自動着信オン状態とすることで、携帯電話端末600等からの着呼に伴って自動的に通話を行うことができる状態となり、通話相手に助けを求めることができる。
【0167】
なお、図11に示した「見守りモード」では、発信元の携帯電話端末600等が電話回線を切断すると、親機100の検知処理部140は自動着信オン状態を解除し(ステップS94)、ハンズフリー状態を解除したが(ステップS95)、自動着信オン状態およびハンズフリー状態を一定時間解除しなくてもよく、ユーザが自ら解除するまではこの状態を維持したままでもよい。これにより、再度、発信元の携帯電話端末600等から着信があった場合においても、ユーザは通話することができ、自身の状態を通知することができる。
【0168】
なお、図9、図11の動作における時間の閾値T2及びT3については、(T2<T3)の関係を満たすように決定するのが望ましい。すなわち、図8〜図10に示す動作の「見守りモード」においては、音の発生をきっかけに、電波を用いて「人が静止しているかどうか」を検出している。つまり、高齢者が転倒した可能性が高い条件で電波を用いた検出をスタートするので、比較的短い時間(T2)の監視であってもイベントの誤検出は生じにくい。
【0169】
一方、図11に示した「見守りモード」の変形例においては、音の発生の有無とは無関係に、常に電波を用いて「人が静止しているかどうか」を検出している。従って、高齢者の昼寝などのように、人が静止しているが健康状態に問題はない状況であってもイベントとして検出し、不必要なメッセージ送信をしてしまうことが考えられる。そこで、誤検出を抑制するために、図11の変形例では、図9の動作よりも監視時間を長くして、時間T3以上の間に渡りΔP(t)の値が閾値Q2以下のときにメッセージ送信を行う。
【0170】
なお、図9に示した「見守りモード」と図11に示した「見守りモード」とを変更できるようにしてもよい。この場合、親機100の検知処理部140はイベントの検出条件の異なる「見守りモード」にそれぞれ対応可能である。例えば、ユーザがボタンやリモコン等で異なる「見守りモード」に適宜変更できるような構成としてもよい。これにより、ユーザの環境に適した「見守りモード」をユーザが選択することができる。
【0171】
また、図11に示した「見守りモード」のように音響信号を利用しない場合、予め設定されたユーザの生活スタイルに基づいて、時刻を利用して自動的に時間の閾値T3を変更してもよい。すなわち、ユーザの生活スタイルに基づいてイベントの検出条件を変更可能としてもよい。例えば、ユーザの就寝時間における閾値T3を8時間とし、ユーザの活動時間における閾値T3を20分とする。これにより、ユーザの睡眠中を「静止状態」と検出するといった誤検出を抑制することができる。
【0172】
さらに、ユーザが起床し、活動を開始することにより、ΔP(t)が閾値よりも大きくなったことを検出してから「見守りモード」を切り替えてもよい。これにより、予め設定されたユーザの生活スタイルに関係なく、ユーザの睡眠時の「見守りモード」とユーザの活動時の「見守りモード」を、その日のユーザの起床時間によって自動的に変更することができる。すなわち、自動的に時間の閾値T2またはT3等を変更することができる。また、音響信号をイベント検出に利用するといった変更をすることもできる。
【0173】
なお、本実施形態では、異なる「見守りモード」を説明したが、この異なる「見守りモード」は適宜組み合わせ可能である。
【0174】
なお、本実施形態では、高齢者の異常を電話回線を用いて家族に通知したが、特にこれに限定するものではなく、有線または無線のインターネット回線を利用してもよく、通知先が病院や警察であってもよい。
【0175】
なお、本実施形態では、イベント検出装置(親機100)自身でイベントを検出し、メッセージ送信を行ったが、イベント検出装置単体でこれらすべての処理を行わなくてもよい。すなわち、イベントの検出条件や、この検出条件に基づいて行うイベント検出はイベント検出装置の外部の機器によって行われてもよい。例えば、親機100は子機200、300からの電波を受信し、この電波に基づく情報を外部の機器に送信し、この外部の機器がイベント検出の判断を行ってもよい。このとき、外部の機器がメッセージ送信を行ってもよいし、外部の機器の指示により親機100等の通信装置がメッセージ送信を行ってもよい。
【0176】
なお、図8〜図11に示した動作を実行するために必要なプログラムについては、親機100や子機200に内蔵されたメモリ(ROM等)に予め保持しておくこともできるし、所定の記録媒体から読み込んで実行することもできるし、所定のネットワーク上に存在するサーバからダウンロードして実行することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、確実にイベント検出を行うことが可能なイベント検出装置、イベント検出システム、イベント検出方法、およびイベント検出プログラム当に有用である。例えば、家庭内等で使用されるコードレス電話システムなどの機器に組み込んで使用することが想定される。勿論、コードレス電話以外の機器に組み込むことも考えられる。本発明の用途については、例えば、家庭内における高齢者の見守りや、留守宅の防犯のために利用することが想定される。
【符号の説明】
【0178】
100 親機
101 アレーアンテナ
102,202 マイク
103,203 スピーカ
104 留守ボタン(モード指定部、モード入力部の一例)
110,210 操作部
120,220 表示部
130,230 制御部
140,240 検知処理部
141 固有ベクトル演算部
142 音量検出部
143 イベント検出部
144 子機通信部(送信部の一例)
145 モード設定部(モード指定部、検出条件決定部の一例)
146 メッセージ送信指示部(送信部の一例)
150,250 オーディオ部
160,260 無線部
170,270 電源部
180 インタフェース部
200,300 子機
241 電波送信指示部
242 音量検知部
243 親機通信部
400 電話線
500 基地局
600 携帯電話端末
700 独居高齢者宅
800 見守り対象者
900 家族

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリアにおけるイベントを検出するイベント検出装置であって、
イベントの種類に対応する複数のイベント検出モードのいずれかを指定するモード指定部と、
前記モード指定部により指定されたイベント検出モードに従って、イベントの検出条件を決定する検出条件決定部と、
前記検出条件決定部により決定された検出条件に基づいて、イベントの発生を検出するイベント検出部と、
を備えるイベント検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイベント検出装置であって、
前記モード指定部が第1のイベント検出モードを指定した場合、
前記イベント検出部は、前記エリアにおける環境の変化があるときにイベントが発生したことを検出し、
前記モード指定部が第2のイベント検出モードを指定した場合、
前記イベント検出部は、所定時間継続して前記エリアにおける環境の変化がないときにイベントが発生したことを検出するイベント検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部によりイベントが発生したことが検出された場合、通信回線を介して、所定の連絡先へ所定のメッセージを送信する送信部を備えるイベント検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載のイベント検出装置であって、更に、
他の通信装置からの電波を受信する受信部を備え、
前記イベント検出部は、前記受信部により受信された電波に基づいてイベントの発生を検出するイベント検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記受信部により受信された電波に含まれる信号から、前記エリア内の電波伝搬環境を検出し、前記電波伝搬環境に基づいてイベントの発生を検出するイベント検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記受信部により受信された電波に含まれる信号から、前記エリアにおける電波の到来方向の情報を含む固有ベクトル情報を前記電波伝搬環境として取得し、前記固有ベクトル情報に基づいてイベントの発生を検出するイベント検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記エリア内で発生した音響信号を検出し、前記固有ベクトル情報と前記音響信号とに基づいてイベントの発生を検出するイベント検出装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のイベント検出装置であって、
前記モード指定部が第1のイベント検出モードを指定した場合、
前記イベント検出部は、前記固有ベクトル情報を基準ベクトル情報として取得し、前記基準ベクトル情報の取得後に第1の固有ベクトル情報を取得し、前記基準ベクトル情報と前記第1の固有ベクトル情報とに基づいてイベント発生を検出するための評価値を算出し、前記評価値が所定閾値以下である場合、イベントが発生したことを検出するイベント検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記音響信号の信号レベルが所定レベル以上である場合に、前記第1の固有ベクトル情報の取得を開始するイベント検出装置。
【請求項10】
請求項6または7に記載のイベント検出装置であって、
前記モード指定部が第2のイベント検出モードを指定した場合、
前記イベント検出部は、
前記固有ベクトル情報を基準ベクトル情報として取得し、前記基準ベクトル情報の取得後に第1の固有ベクトル情報を取得し、前記基準ベクトル情報と前記第1の固有ベクトル情報とに基づいてイベント発生を検出するための第1の評価値を算出し、
前記第1の固有ベクトル情報の取得後に第2の固有ベクトル情報を取得し、前記基準ベクトル情報と前記第2の固有ベクトル情報とに基づいて第2の評価値を算出し、
前記第2の評価値と第1の評価値との差分が所定閾値以下である状態が所定時間継続した場合、イベントが発生したことを検出するイベント検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記音響信号の信号レベルが所定レベル以上であり、かつ、前記音響信号が転倒音を示す場合に、前記第1の固有ベクトル情報の取得を開始するイベント検出装置。
【請求項12】
請求項6に記載のイベント検出装置であって、更に、
前記他の通信装置に対して電波の送信を指示するための電波送信指示信号を送信する送信部を備えるイベント検出装置。
【請求項13】
請求項3に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記送信部によりメッセージが送信された後、他の通信装置からの着呼に対して着信処理を行う自動着信オン状態に設定するイベント検出装置。
【請求項14】
所定のエリアにおけるイベントを検出するイベント検出装置であって、
他の通信装置からの電波を受信する受信部と、
イベントの種類に対応する複数のイベント検出モードのいずれかを指定するモード指定部と、
前記モード指定部により指定されたイベント検出モードに従って、イベントの検出条件を決定する検出条件決定部と、
前記検出条件決定部により決定された検出条件に基づいてイベントの発生を検出すると共に、前記受信部により受信された電波に基づいてイベントの発生を検出するイベント検出部と、
を備えるイベント検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記受信部により受信された電波に含まれる信号から、前記エリア内の電波伝搬環境を検出し、前記電波伝搬環境に基づいてイベントの発生を検出するイベント検出装置。
【請求項16】
請求項15に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記受信部により受信された電波に含まれる信号から、前記エリアにおける電波の到来方向の情報を含む固有ベクトル情報を前記電波伝搬環境として取得し、前記固有ベクトル情報に基づいてイベントの発生を検出するイベント検出装置。
【請求項17】
請求項16に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記エリア内で発生した音響信号を検出し、前記固有ベクトル情報と前記音響信号とに基づいてイベントの発生を検出するイベント検出装置。
【請求項18】
請求項16または17に記載のイベント検出装置であって、
前記モード指定部が第1のイベント検出モードを指定した場合、
前記イベント検出部は、前記固有ベクトル情報を基準ベクトル情報として取得し、前記基準ベクトル情報の取得後に第1の固有ベクトル情報を取得し、前記基準ベクトル情報と前記第1の固有ベクトル情報とに基づいてイベント発生を検出するための評価値を算出し、前記評価値が所定閾値以下である場合、イベントが発生したことを検出するイベント検出装置。
【請求項19】
請求項18に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記音響信号の信号レベルが所定レベル以上である場合に、前記第1の固有ベクトル情報の取得を開始するイベント検出装置。
【請求項20】
請求項16または17に記載のイベント検出装置であって、
前記モード指定部が第2のイベント検出モードを指定した場合、
前記イベント検出部は、
前記固有ベクトル情報を基準ベクトル情報として取得し、前記基準ベクトル情報の取得後に第1の固有ベクトル情報を取得し、前記基準ベクトル情報と前記第1の固有ベクトル情報とに基づいてイベント発生を検出するための第1の評価値を算出し、
前記第1の固有ベクトル情報の取得後に第2の固有ベクトル情報を取得し、前記基準ベクトル情報と前記第2の固有ベクトル情報とに基づいて第2の評価値を算出し、
前記第2の評価値と第1の評価値との差分が所定閾値以下である状態が所定時間継続した場合、イベントが発生したことを検出するイベント検出装置。
【請求項21】
請求項20に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記音響信号の信号レベルが所定レベル以上であり、かつ、前記音響信号が転倒音を示す場合に、前記第1の固有ベクトル情報の取得を開始するイベント検出装置。
【請求項22】
請求項14ないし21のいずれか1項に記載のイベント検出装置であって、更に、
前記他の通信装置に対して電波の送信を指示するための電波送信指示信号を送信する送信部を備えるイベント検出装置。
【請求項23】
請求項14ないし22のいずれか1項に記載のイベント検出装置であって、更に、
前記イベント検出部によりイベントが発生したことが検出された場合、通信回線を介して、所定の連絡先へ所定のメッセージを送信する送信部を備えるイベント検出装置。
【請求項24】
請求項23に記載のイベント検出装置であって、
前記イベント検出部は、前記送信部によりメッセージが送信された後、他の通信装置からの着呼に対して着信処理を行う自動着信オン状態に設定するイベント検出装置。
【請求項25】
請求項14ないし23のいずれか1項に記載のイベント検出装置であって、
前記モード指定部は、ユーザが入力可能なモード入力部であるイベント検出装置。
【請求項26】
第1の通信装置と第2の通信装置との間で通信を行い、所定のエリアにおけるイベントを検出するイベント検出システムであって、
前記第1の通信装置は、イベントの種類に対応する複数のイベント検出モードのいずれかを指定するモード指定部と、前記モード指定部により指定されたイベント検出モードに従って、イベントの検出条件を決定する検出条件決定部と、前記検出条件決定部により決定された検出条件に基づいて、イベントの発生を検出するイベント検出部と、を備え、
前記第2の通信装置は、前記モード指定部により指定されたイベント検出モードに従って動作するイベント検出システム。
【請求項27】
所定のエリアにおけるイベントを検出するためのイベント検出方法であって、
イベントの種類に対応する複数のイベント検出モードのいずれかを指定するステップと、
前記指定されたイベント検出モードに従って、イベントの検出条件を決定するステップと、
前記決定された検出条件に基づいて、イベントの発生を検出するステップと、
を有するイベント検出方法。
【請求項28】
請求項27に記載のイベント検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのイベント検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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