説明

イミダゾピラン誘導体の製法

【課題】 イミダゾピラン誘導体の新規製造法を提供すること。
【解決手段】 ジニトロイミダゾールと、2,3−エポキシ−1−プロパノールを出発物質として用いた、下記式(9)
【化1】


(式中、RはC−Cアルキル基、アリール基、アリール基置換C−Cアルキル基、ハロゲン原子、または水素原子を意味する。)
で表わされるイミダゾピラン誘導体の5つの工程からなる新規製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダゾピラン誘導体の製法、その中間体およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記式(9A)に代表されるイミダゾピラン誘導体は、例えば結核菌に対して抗菌活性を有する化合物であるPA−824の合成中間体として有用な化合物である。
【化1】

【0003】
従来、イミダゾピラン誘導体を製造するには、下記の(スキーム1)に示された方法が報告されている(特許文献1参照)。この方法は、原料としてグリシドール−t−ブチルジメチルシリルエーテルを用い、2,4−ジニトロイミダゾールを反応させ、得られたシロキシアルコールの水酸基をジヒドロピランで保護し、得られたテトラヒドロピラニル(THP)エーテル体を脱シリル化すると同時に環化してイミダゾピラン骨格を形成し、最後にTHP基を脱離させるものである。
【特許文献1】特表平11−508270号公報(スキーム1)
【化2】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この方法はグリシドール(A)から一旦グリシドール−t−ブチルジメチルシリルエーテル(B)を合成・単離精製した後、ジニトロイミダゾールと反応させなければならず、操作が煩雑であるのみならず、化合物(A)から化合物(C)の収率は50%弱と低く、また、化合物(C)から化合物(F)の収率も46%と低いという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく種々検討した結果、2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシドール)とジニトロイミダゾールとを出発物質として、イミダゾピラン誘導体をより効率よく合成できる方法を見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記に示すイミダゾピラン誘導体の製法に関する。本発明は、また、下記に示すその中間体並びにその中間体の製法にも関する。
【0006】
本発明に係るイミダゾピラン誘導体の製造行程は下記(スキーム2)のごとく図示される。
(スキーム2)
【化3】

【0007】
(式中、Rは、C−Cアルキル基、アリール基、アリール基置換C−Cアルキル基、ハロゲン原子、または水素原子を意味し、R、R、およびRは、それぞれ同一あるいは異なってC−Cアルキル基、アリール基、またはアリール基置換C−Cアルキル基を意味し、Rは、アリール基またはアリール基置換C−Cアルケニル基を意味し、Xは、ハロゲン原子を意味し、そしてYは、水酸基、ハロゲン原子またはカルボン酸エステル残基を意味する。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来法に比べ、収率よくイミダゾピラン誘導体製造することが可能になった。
また、本発明によれば[I]から[II]の行程、[III]から[V]への行程をそれぞれワンポット法で行うことができ、各工程の反応を段階的に行うことに比べ、一層操作が簡便であるだけでなく、格段に収率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記製造行程に沿って、工程ごとに以下に詳説する。
(第I工程)
まず、一般式(1)で表わされるジニトロイミダゾールと、式(2)で表わされる2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシドール)とをフッ化物塩の存在下、反応させることにより、一般式(3)で表されるジオール体を得ることができる。
【0010】
式(1)の化合物のRは、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、クロル原子、ブロム原子、水素原子が好ましく挙げられ、特に水素原子が好ましい。例えば、化合物(1)が4−ジニトロイミダゾールの場合には、市販の4−ニトロイミダゾールを発煙硝酸等のニトロ化剤でニトロ化することで容易に得ることができる。
一方、式(2)の化合物は、3−クロロ−1,2−プロパンジオールを塩基で処理することで容易に得ることができる。
フッ化物塩は、フッ素のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が例示される。フッ化セシウムが最も好ましい。例えばフッ化セシウムを使用する場合の使用量は0.01〜0.5当量が好ましく、特に好ましくは、0.05〜0.3当量である。
【0011】
また、溶媒を適宜使用することができるが、無溶媒で反応させるのが好ましい。
反応温度は−10〜50℃が好ましく、特に好ましくは10〜35℃である。また、反応圧力は、常圧〜1MPaまででよく、従って常圧であっても問題無く反応は進行する。反応時間は原料が消失するまでであるが、通常は3時間〜24時間である。
得られる化合物(3)は、次の反応にそのまま用いられるが、反応後、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製方法により単離することも可能である。
【0012】
(第II工程)
次いで、式(3)のジオール体に対して、塩基の存在下、一般式(4)で表わされるシリルハライドを反応させ、シリルエーテル化することにより、一般式(5)で表わされるシロキシアルコール誘導体を得ることができる。
【0013】
式(4)の化合物としては、具体的には、R、RおよびRが、同一あるいは異なってメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基などである化合物が挙げられ、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基である化合物が好ましい。また、シリルハライド(4)、特に好ましくはシリルクロライドの使用量は、1当量以上であれば特に問題ないが、反応性や後処理のし易さから1.1〜1.8当量が好ましい。
【0014】
使用する塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、イミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデック−7−エン(DBU)等のアミン類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物などが挙げられ、その中でもイミダゾールが好ましい。塩基の使用量は1当量以上であれば問題ないが、特に好ましくは2〜5当量である。
さらに、助触媒を共存させてよく、その例として、4−N,N−ジメチルアミノピリジンが挙げられ、その使用量は1モル%〜20モル%である。
【0015】
さらに、反応は化合物(3)を溶媒で希釈して行うのが好ましい。使用可能な溶媒としては、該(3)および(4)の化合物を溶解し、かつ、反応しない溶媒であれば特に限定されず、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン等の塩素系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましく用いることができる。
本工程の反応温度は、0℃以上であればよく、特に好ましくは20〜40℃である。
得られる化合物(5)は、反応後、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製方法により単離することができる。
【0016】
(第III工程)
次いで、式(5)の化合物と一般式(6)で表される化合物を反応させ、アシル化することにより、一般式(7)で表されるジニトロイミダゾール誘導体が得られる。
【0017】
式(6)の化合物の具体例としては、カルボン酸、カルボン酸ハライド、カルボン酸エステルが挙げられる。Rが、C−C10アリール基、例えばフェニル基、およびC−C10アリール基置換C−Cアルケニル基、例えば2−フェニルエテニル基などが好ましい。これらの使用量は1当量以上であればよいが、好ましくは1.1〜1.8当量である。
【0018】
反応には溶媒を使用してよく、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン等の塩素系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒を好ましく使用することができ、加えて、化合物(6)がカルボン酸ハライド、特にカルボン酸クロリドの場合にはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン等のアミン類も使用でき、ピリジンが好ましく使用される。化合物(6)がカルボン酸の場合には特にジクロロメタン、テトラヒドロフランの溶媒が好ましく使用される。
【0019】
化合物(6)がカルボン酸の場合、縮合剤が好ましく使用される。縮合剤としては、カルボジイミド系の化合物が好ましく、特に好ましくはジシクロヘキシルカルボジイミドである。また、その際に塩基を併用してもよく、使用可能な塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、DBU等のアミン類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物などが挙げられ、その中でも特に4−N,N−ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0020】
一方、化合物(6)がカルボン酸ハライド、特にカルボン酸クロリドの場合、塩基が好ましく使用される。使用する塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、DBU等のアミン類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物などが挙げられ、その中でも特にピリジンが好ましい。この場合、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン等のアミン類は溶媒を兼ねることができる。
【0021】
反応温度は、化合物(6)がカルボン酸の場合で0℃以上が好ましく、特に好ましくは20〜40℃であり、一方、化合物(6)がカルボン酸ハライド、特にカルボン酸クロリドの場合は−20〜20℃が好ましく、特に好ましくは−5〜10℃である。
得られる化合物(7)は、次の反応にそのまま用いられるが、反応後、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製方法により単離することができる。
【0022】
ジニトロイミダゾール誘導体(7)は、文献未載の化合物である。R=水素で、R=R=R=メチル基またはR=R=メチル基かつR=t−ブチル基で、R=フェニル基または2−フェニルエテニル基であるジニトロイミダゾール誘導体が好ましい。
【0023】
(第IV工程)
次いで、式(7)の化合物に、脱シリル化剤を作用させ、脱シリル化および環化させることにより、一般式(8)で表されるイミダゾピランエステル誘導体を得ることができる。脱シリル化剤を作用させることで化合物(7)のシリル基が外れてフリーの水酸基が発生し、それに引続き、該水酸基がニトロ基の直結した炭素原子を攻撃することで環化反応が生じて化合物(8)が生成する。
【0024】
脱シリル化剤としては、シリル基を外すことができるものであれば特に限定されないが、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化水素・ピリジン錯体、フッ化セシウム等のフッ化物等が用いられ、その中で好ましくはテトラブチルアンモニウムフルオリドである。脱シリル化剤の使用量は、基質の化合物(7)に対して1当量以上であれば問題ないが、より好ましくは1.1〜2当量である。
【0025】
使用できる溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン等の塩素系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にテトラヒドロフランが好ましい。
本脱シリル化反応を行う際の反応温度は、0℃以上が好ましく、特に好ましくは20〜100℃である。
得られる化合物(8)は、そのまま次の反応に用いられるが、反応後、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製方法により単離することができる。
【0026】
イミダゾピランエステル誘導体(8)も文献未載の化合物である。R=水素で、R=フェニル基または2−フェニルエテニル基であるイミダゾピランエステル誘導体が好ましい。
【0027】
(第V工程)
最後に、式(8)の化合物に、金属触媒の存在下、アルコールの保護基を脱保護することで、一般式(9)で表されるイミダゾピラン誘導体を得ることができる。
【0028】
使用できる金属触媒は、ルイス酸性を有する有機金属触媒が好ましく、中でも好ましいのはチタン系、スズ系の触媒であり、さらに好ましくはチタンアルコキシドに属するチタンテトライソプロポキシド、およびビス(ジブチルクロロチン)オキシドである。金属触媒の添加量は、0.005〜1.0当量であり、好ましくは0.01〜0.7当量である。
【0029】
使用可能な溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が好ましく、中でもアルコール類が好ましく、特にメタノールが好ましい。
反応温度は、0℃以上が好ましく、特に好ましくは40〜100℃で、メタノールの還流温度が最良である。
得られる化合物(9)は、反応後、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製方法により単離することができる。
【0030】
(ワンポット法)
本発明の2,3−エポキシ−1−プロパノール(2)とジニトロイミダゾール(1)とを出発物質として、イミダゾピラン誘導体(9)あるいはその中間体を製造する方法においては、必ずしも反応工程毎に生成物を単離精製することを要しない。
即ち、第I工程と第II工程はワンポットで行うことができ、第I工程の生成物を単離精製することなくそのまま連続的に第II工程を行うことができる。
また、第III工程〜第V工程をワンポットで行うことができ、第III工程の生成物を単離精製することなくそのまま連続的に第IV工程を行うことができ、そして、次いで第IV工程の生成物を単離精製することなくそのまま連続的に第V工程を行うことができる。
【0031】
本発明は、化合物(7)及び(8)にも関する。本発明はまた、化合物(1)と(2)を原料とする化合物(5)の製造法、化合物(5)を原料とする化合物(7)、(8)および(9)の製造法、化合物(7)を原料とする化合物(8)の製造法、並びに化合物(8)を原料とする化合物(9)の製造法にも関する。
(光学活性体)
本発明の製造方法で得られる中間生成物(3)〜(8)、および最終生成物(9)は、使用する化合物(2)に由来する不斉炭素を有することからその光学活性体が存在する。ジニトロイミダゾール誘導体(7)、該イミダゾピランエステル誘導体(8)、およびイミダゾピラン誘導体(9)の光学活性体は、光学活性2,3−エポキシ−1−プロパノール(2)を原料として用いることにより、その不斉が維持された光学活性体を得ることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]
化合物(5a)の合成
【化4】

フッ化セシウム(15mg、0.1mmol)を反応器に入れ、アルゴン雰囲気下、フレームドライを行った。続いて2,4−ジニトロイミダゾール(158mg、1mmol)を入れ、グリシドール(0.066ml、1mmol)を滴下し、室温で12時間攪拌した。
薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応が完結したのを確認後、N,N−ジメチルホルムアミドを入れ、ジオール体を完全に溶かした。さらにイミダゾール(204mg、3mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(6mg、0.05mmol)を加えて30分間攪拌した。そこへt−ブチルジメチルシリルクロリド(301mg、2mmol)を加えて12時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5ml)でクエンチした。塩をセライトで濾去し、濾液を酢酸エチル(10ml×3)で抽出し、有機層を水(10ml)飽和食塩水(10ml)の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。エバポレーターで減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=3/7)で精製し、化合物(5a)が58%の収率で得られた。
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ 0.03 (s, 6H), 0.83 (s, 9H), 3.48 (dd, J=10.6Hz, 6.7Hz, 1H), 3.60 (dd, J=10.5Hz, 4.9Hz,1H), 3.91 (m, 1H), 4.33 (dd, J=13.7Hz, 8.85Hz,1H), 4.72 (dd, J=13.6Hz, 3.05Hz, 1H).
【0034】
[実施例2]
化合物(7a)の合成−1
【化5】

アルゴン雰囲気下、反応器をフレームドライした。化合物(5a)(346mg,1mmol)、安息香酸(147mg,1.2mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)(24.4mg、0.2mmol)を入れ、続いて塩化メチレン(5ml)を加えて完全に均一系にした。さらにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(0.84ml、1mmol)を滴下し、室温で20時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)でクエンチし、反応混合物を酢酸エチル(10ml×3)で抽出した。有機層を水(10ml)、飽和食塩水(10ml)の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=3/7)で精製し、化合物(7a)が86%の収率で得られた。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6): δ-0.06 (s, 6H), 0.82 (s, 9H), 3.95 (s, 2H), 4.79-4.97 (m, 2H), 5.45 (m, 1H), 7.48-7.67 (m, 3H), 8.87 (s, 1H).
【0035】
[実施例3]
化合物(7a)の合成−2
アルゴン雰囲気下、反応器をフレームドライした。化合物(5a)(346mg,1mmol)、塩化ベンゾイル(0.174ml,1.5mmol)を入れ、0℃でピリジン(5ml)を滴下し、室温で15時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)でクエンチし、反応混合物を酢酸エチル(10ml×3)で抽出した。有機層を水(10ml)、飽和食塩水(10ml)の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=3/7)で精製し、化合物(7a)が77%の収率で得られた。
【0036】
[実施例4]
化合物(7b)の合成−1
【化6】

安息香酸の代わりに桂皮酸を用いた以外は実施例2と同様の操作を行い、化合物(7b)が86%の収率で得られた。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6): δ 0.05 (s, 6H), 0.79 (s, 9H), 3.85 (d, J=4.38Hz, 1H), 4.85 (d, J=14.5Hz, 1H), 5.30 (m, 1H), 6.47 (d, J=16.1Hz, 1H), 7.39 (t, J=3.11Hz, 3H), 7.54-7.63 (m, 3H), 8.79 (s, 1H).
【0037】
[実施例5]
化合物(7b)の合成−2
塩化ベンゾイルの代わりに桂皮酸クロリドを用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、化合物(7b)が73%の収率で得られた。
【0038】
[実施例6]
化合物(8a)の合成−1
【化7】

アルゴン雰囲気下、反応器をフレームドライした。化合物(7a)(450mg,1mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(5ml)を加えて完全に均一系にした。続いて0℃にしてテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)のテトラヒドロフラン1M溶液(1.5ml,1.5mmol)を滴下し、その後室温で3時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)でクエンチし、反応混合物を酢酸エチル(10ml×3)で抽出した。有機層を水(10ml)、飽和食塩水(10ml)の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=8/2)で精製し、化合物(8a)が65%の収率で得られた。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6): δ 4.47 (dd, J=10.3Hz, 8.61Hz, 1H), 4.76 (s, 2H), 5.73 (s, 1H), 7.58 (t, J=4.29Hz, 2H), 7.73 (t, J=4.39Hz, 1H), 7.96 (d, J=4.56Hz, 2H), 8.14 (s, 1H).
【0039】
[実施例7]
化合物(8b)の合成−1
【化8】

原料として化合物(7a)の代わりに化合物(7b)を用いた以外は実施例6と同様の操作を行い、化合物(8b)が65%の収率で得られた。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6): δ 4.31 (d, J=13.9Hz, 2H), 4.44 (d, J=5.74Hz, 2H), 5.55 (s, 1H), 6.71 (d, J=15.9Hz, 1H), 7.42 (t, J=2.48Hz, 1H), 7.67-7.76 (m, 3H), 8.10 (s, 1H).
【0040】
[実施例8]
化合物(8b)の合成−2
アルゴン雰囲気下、反応器をフレームドライした。化合物(5a)(346mg,1mmol)、桂皮酸(179mg,1.2mmol)、DMAP(24.4mg,0.2mmol)を入れた。続いて塩化メチレン(5ml)を加えて完全に均一とし、さらにDCC(0.84mL,1mmol)を滴下し、室温で20時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、0℃にしてTBAFのテトラヒドロフラン1M溶液(1.5ml,1.5mmol)を滴下し、その後室温で3時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)でクエンチし、反応混合物をエバポレーターで減圧濃縮した。酢酸エチル(10ml×3)で抽出し、有機層を水(10ml)、飽和食塩水(10ml)の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=8/2)で精製し、化合物(8b)が57%の収率で得られた。
【0041】
[実施例9]
化合物(8b)の合成−3
アルゴン雰囲気下で反応器をフレームドライした。化合物(5a)(346mg,1mmol)、桂皮酸(179mg,1.2mmol)、DMAP(24.4mg,0.2mmol)を入れ、続いてテトラヒドロフラン(2ml)を加えて完全に均一系にした。さらにDCCを滴下し、室温で5時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、テトラヒドロフラン(1.7ml)を加え、0℃にしてTBAFのテトラヒドロフラン1M溶液(1.5ml,1.5mmol)を滴下し、その後室温で13時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)でクエンチし、反応混合物をエバポレーターで減圧濃縮した。酢酸エチル(10ml×3)で抽出し、有機層を水(10ml)、飽和食塩水(10ml)の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=8/2)で精製し、化合物(8b)が68%の収率で得られた。
【0042】
[実施例10]
化合物(9a)の合成−1
【化9】

アルゴン雰囲気下、反応器をフレームドライした。化合物(8b)(315mg,1mmol)、チタンテトライソプロポキシド(27mg,0.1mmol)を入れ、メタノール(40ml)を加えて加熱し、12時間還流した。
TLCで反応が完結したのを確認後、チタンテトライソプロポキシドを除去するため、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて吸引濾過を行った。続いてエバポレーターで減圧濃縮すると固体の混合物が得られた。次に、吸引濾過を行って、濾紙上に残った固体をクロロホルムで洗浄すると化合物(9a)が収率93%で得られた。
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ 3.97 (dt, J=13.1Hz, 2.4Hz, 1H), 4.20 (dd, J=13.1Hz, 3.3Hz, 1H), 4.28 (m, 1H), 4.32 (dt, J=11.6Hz, 2.7Hz, 1H), 4.42 (d, J=11.9Hz, 1H), 5.67 (d, J=3.3Hz, 1H), 8.01 (s, 1H)
【0043】
[実施例11]
化合物(9a)の合成−2
チタンテトライソプロポキシドの代わりにビス(ジブチルクロロチン)オキシド(276mg,0.5mmol)を使用した以外は実施例10と同様の操作により、化合物(9a)を収率77%で得た。
【0044】
[実施例12]
化合物(9a)の合成−3
アルゴン雰囲気下で反応器をフレームドライした。化合物(5a)(346mg,1mmol)、桂皮酸(179mg,1.2mmol)、DMAP(24.4mg,0.2mmol)を入れ、続いてテトラヒドロフラン(2ml)を加えて完全に均一系にした。さらにDCCを滴下し、室温で5時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、テトラヒドロフラン(1.7ml)を加え、0℃にしてTBAFのテトラヒドロフラン1M溶液(1.5ml,1.5mmol)を滴下し、その後室温で13時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、チタンテトラヒドロイソプロポキシド(2.84mg,0.01mmol)およびメタノール(7ml)を加えて加熱し、16時間還流した。
TLCで反応が完結したのを確認後、チタンテトライソプロポキシドを除去するため、シリカゲルクロマトグラフィーを用いてメタノールで吸引濾過を行った。続いてエバポレーターで減圧濃縮した。
反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=9/1)で精製し、エバポレーターで減圧濃縮すると、個体の混合物が得られた。次に吸引濾過を行って濾紙上に残った固体をクロロホルムで洗浄すると、化合物(9a)が64%の収率で得られた。
【0045】
[実施例13]

化合物(9a)の合成−4
アルゴン雰囲気下で反応器をフレームドライした。t−ブチルジメチルシリル(TBS)基をトリイソプロピルシリル(TIPS)基に換えて、実施例1および2と同様にして合成した光学活性化合物(7c)(1.037g,2mmol,98%ee)およびテトラヒドロフラン(10ml)を加え、0℃にしてTBAFのテトラヒドロフラン1M溶液(2.2ml,2.2mmol)を滴下し、その後室温で1時間攪拌した。
TLCで反応が完結したのを確認後、チタンテトラヒドロイソプロポキシド(5.7mg,0.02mmol)およびメタノール(80ml)を加えて加熱し、19時間還流した。
TLCで反応が完結したのを確認後、エバポレーターで減圧濃縮した。
反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、エバポレーターで減圧濃縮し、メタノールで結晶化すると、化合物(9a)が86%の収率で得られた。
得られた化合物(9a)の水酸基をアセチル化し、高速液体クロマトグラフィー(カラム:CHIRALCEL OD−H、溶離液:イソプロピルアルコール/ヘキサン=8/2、流速:0.5ml/min)で分析すると、保持時間12.7分にS体のピークのみが観測された(R体の保持時間は、14.7分)。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、イミダゾピラン誘導体を基にした医薬品工業分野、例えば結核菌に対して抗菌活性を有する化合物であるPA−824の価値ある合成中間体の製造法として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、Rは、C−Cアルキル基、アリール基、アリール基置換C−Cアルキル基、ハロゲン原子、または水素原子を意味する。)
で表されるジニトロイミダゾールと、下記式(2)
【化2】

で表される2,3−エポキシ−1−プロパノールとを、フッ化物塩の存在下、反応させ、下記式(3)
【化3】

(式中、Rは、上記に同じ。)
で表されるジオール体を得、この化合物と下記式(4)
【化4】

(式中、R、RおよびRは、それぞれ同一あるいは異なってC−Cアルキル基、アリール基、またはアリール基置換C−Cアルキル基を意味し、そしてXはハロゲン原子を意味する。)
で表されるシリルハライドを塩基の存在下、反応させ、下記式(5)
【化5】

(式中、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物を得、この化合物と下記式(6)
【化6】

(式中、Rは、アリール基またはアリール置換C−Cアルケニル基を意味し、そしてYは水酸基、ハロゲン原子またはカルボン酸エステル残基を意味する。)
で表される化合物を反応させ、下記式(7)
【化7】

(式中、R、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物を得、この化合物を脱シリル化および環化し、下記式(8)
【化8】

(式中、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物を得、ついでこの化合物を金属触媒の存在下、脱保護することを特徴とする下記式(9)
【化9】

(式中、Rは、上記に同じ。)
で表されるイミダゾピラン誘導体の製造法。
【請求項2】
下記式(1)
【化10】

(式中、Rは、上記に同じ。)
で表されるジニトロイミダゾールと、下記式(2)
【化11】

で表される2,3−エポキシ−1−プロパノールとを、フッ化物塩の存在下、反応させ、
下記式(3)
【化12】

(式中、Rは、上記に同じ。)
で表されるジオール体を得、ついでこの化合物と下記式(4)
【化13】

(式中、R、R、RおよびXは、上記に同じ。)
で表されるシリルハライドを塩基の存在下、反応させることを特徴とする、下記式(5)
【化14】

(式中、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表されるシロキシアルコール誘導体の製造法。
【請求項3】
無溶媒下、ジニトロイミダゾール(1)と、2,3−エポキシ−1−プロパノール(2)とをフッ化物塩の存在下反応を行うことを特徴とする請求項1または2記載の化合物の製造法。
【請求項4】
下記式(5)
【化15】

(式中、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物と、下記式(6)
【化16】

(式中、RおよびYは、上記に同じ。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする、下記式(7)
【化17】

(式中、R、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表されるジニトロイミダゾール誘導体の製造法。
【請求項5】
下記式(5)
【化18】

(式中、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物と、下記式(6)
【化19】

(式中、RおよびYは、上記に同じ。)
で表される化合物を反応させ、下記式(7)
【化20】

(式中、R、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物を得、ついでこの化合物を脱シリル化および環化することを特徴とする、下記式(8)
【化21】

(式中、RおよびRは、上記に同じ。)
で表されるイミダゾピランエステル誘導体の製造法。
【請求項6】
下記式(5)
【化22】

(式中、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物と、下記式(6)
【化23】

(式中、RおよびYは、上記に同じ。)
で表される化合物を反応させ、下記式(7)
【化24】

(式中、R、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物を得、この化合物を脱シリル化および環化し、下記式(8)
【化25】

(式中、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物を得、ついでこの化合物を金属触媒の存在下、脱保護することを特徴とする下記式(9)
【化26】

(式中、Rは、上記に同じ。)
で表されるイミダゾピラン誘導体の製造法。
【請求項7】
下記式(7)
【化27】

(式中、R、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物を脱シリル化および環化させることを特徴とする、下記式(8)
【化28】

(式中、RおよびRは、上記に同じ。)
で表されるイミダゾピランエステル誘導体の製造法。
【請求項8】
脱シリル化および環化をフッ化物塩の存在下、行うことを特徴とする請求項1、5、6または7記載の化合物の製造法。
【請求項9】
下記式(8)
【化29】

(式中、RおよびRは、上記に同じ。)
で表される化合物を金属触媒の存在下、脱保護することを特徴とする下記式(9)
【化30】

(式中、Rは、上記に同じ。)
で表されるイミダゾピラン誘導体の製造法。
【請求項10】
金属触媒がルイス酸性を有する有機金属触媒であることを特徴とする請求項1、6または9記載の各誘導体の製造法。
【請求項11】
各反応工程の生成物を単離せずに全行程をワンポットで行うことを特徴とする請求項2、5または6記載の各誘導体の製造法。
【請求項12】
出発物質として光学活性体を使用し、生成物として光学活性体を得ることを特徴とする請求項1〜11記載のいずれかの化合物の製造法。
【請求項13】
下記式(7)
【化31】

(式中、R、R、R、RおよびRは、上記に同じ。)
で表されるジニトロイミダゾール誘導体、またはその光学活性体。
【請求項14】
下記式(8)
【化32】

(式中、RおよびRは、上記に同じ。)
で表されるイミダゾピランエステル誘導体、またはその光学活性体。

【公開番号】特開2006−111615(P2006−111615A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262564(P2005−262564)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】