説明

イミン水素化により2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を製造する方法

一般式(IV)の化合物が、対応する一般式(III)の2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体に水素化され、A基が記載中に説明されたような意味を有する、2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を製造する方法が開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,2−ジフルオロエチルイミン誘導体から開始する2,2−ジフルオロエタンアミン誘導体を調製するための方法に関する。本発明は、本発明によるこの方法において出発化合物として使用される2,2−ジフルオロエチルイミン誘導体、その調製および2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製するためのその使用をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
2,2−ジフルオロエチルアミンの誘導体は、農薬活性成分を調製するための重要な中間体である。適切な2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体は、例えば、4−アミノブト−2−エノリド化合物等の殺虫剤活性のエナミノカルボニル化合物等として使用することができる。2,2−ジフルオロエチルアミノユニットを含有するエナミノカルボニル化合物は、例えばWO2007/115644およびWO2007/115646から知られている。
【0003】
WO2007/115644は、2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体、例えば下記の式(IIIa)の化合物が、式(Ia)のアミンを置換されていてもよい式(IIa)のクロロメチルピリジンでアルキル化されることにより調製できることを開示している(DE102006015467Aのスキーム1:出発化合物の調製を参照、式(III)の化合物、III−1:N−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−2,2−ジフルオロエチル−1−アミン)。
【0004】
【化1】

【0005】
この方法の欠点は53%という低収率であり、その低収率は窒素原子の起こりうるポリアルキル化によって生じる。このポリアルキル化の比率は、大過剰のアミンを使用することでしか低減できないが、高価なアミンの場合は不経済である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/115644号
【特許文献2】国際公開第2007/115646号
【特許文献3】独国特許出願公開第102006015467号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来技術から進めて、好ましくは簡便で安価に実施できる、2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製するための方法を提供することが本発明の目的である。この所望の方法により得られる2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体は、好ましくは高収率および高純度で得られるべきである。さらに詳しくは、所望の方法は、所望の目的化合物が複雑な精製方法を必要とせずに得られることを可能にするべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製するための方法により達成される。
【0009】
本発明による方法は、一般式(IV)の2,2−ジフルオロエチルイミン誘導体が、以下のスキーム2によって対応する一般式(III)の目的化合物に水素化されることを特徴とする。
【0010】
【化2】

【0011】
本発明は、このため、所望の一般式(III)の2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体が、対応する一般式(IV)の2,2−ジフルオロエチルイミン誘導体の水素化により調製されることを想定している。所望の一般式(III)の2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体は本発明の反応条件下および以下に具体的に記載する好ましい反応条件下で、良好な収率で高純度で得られ、その結果本発明による方法は上記の欠点を克服する。所望の化合物は、一般的に、直接の反応生成物を大幅に後処理する必要がない純度で得られる。従来からの技術として知られている、スキーム1によってアルキル化されるアミンから開始する方法と比較すると、本発明による方法によって収率が改善されうる。さらに、ポリアルキル化が起こらないので、本発明による方法により得られた所望の目的化合物の純度はより高い。
【0012】
本発明の文脈において、誘導体とは、問題とする有機基本構造(ユニット)から誘導される類似の構造を指す。すなわち、2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体は、例えば、2,2−ジフルオロエチルアミンユニットを含む化合物を意味すると理解される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記の一般式(III)および(IV)において、A基は以下のように規定される。
【0014】
・ピリド−2−イルもしくはピリド−4−イルもしくはピリド−3−イル(フッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチルもしくはトリフルオロメトキシにより6位が置換されていてもよい。)、またはピリダジン−3−イル(塩素もしくはメチルにより6位が置換されていてもよい。)、またはピラジン−3−イル、または2−クロロピラジン−5−イル、または1,3−チアゾール−5−イル(塩素もしくはメチルにより2位が置換されていてもよい。)、または
・ピリミジニル、ピラゾリル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾリルもしくは1,2,5−チアジアゾリル(フッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、C−Cアルキル(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)、C−Cアルキルチオ(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)またはC−Cアルキルスルホニル(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)により置換されていてもよい。)、または

【0015】
【化3】

(Xは、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルであり、
Yは、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アジドまたはシアノである。)。
【0016】
好ましい、特に好ましい、および非常に特に好ましい上記の一般式(III)および(IV)中に示されるA基の規定は、以下で説明される。
【0017】
Aは、6−フルオロピリド−3−イル、6−クロロピリド−3−イル、6−ブロモピリド−3−イル、6−メチルピリド−3−イル、6−トリフルオロメチルピリド−3−イル、6−トリフルオロメトキシピリド−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、6−メチル−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルまたは2−メチル−1,3−チアゾール−5−イル、2−クロロピリミジン−5−イル、2−トリフルオロメチルピリミジン−5−イル、5,6−ジフルオロピリド−3−イル、5−クロロ−6−フルオロピリド−3−イル、5−ブロモ−6−フルオロピリド−3−イル、5−ヨード−6−フルオロピリド−3−イル、5−フルオロ−6−クロロピリド−3−イル、5,6−ジクロロピリド−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリド−3−イル、5−ヨード−6−クロロピリド−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリド−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリド−3−イル、5,6−ジブロモピリド−3−イル、5−フルオロ−6−ヨードピリド−3−イル、5−クロロ−6−ヨードピリド−3−イル、5−ブロモ−6−ヨードピリド−3−イル、5−メチル−6−フルオロピリド−3−イル、5−メチル−6−クロロピリド−3−イル、5−メチル−6−ブロモピリド−3−イル、5−メチル−6−ヨードピリド−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−フルオロピリド−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−クロロピリド−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−ブロモピリド−3−イルおよび5−ジフルオロメチル−6−ヨードピリド−3−イルからなる群から好ましく選択される。
【0018】
Aは、6−フルオロピリド−3−イル、6−クロロピリド−3−イル、6−ブロモピリド−3−イル、6−クロロ−1,4 −ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−クロロピリミジン−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリド−3−イル、5,6−ジクロロピリド−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリド−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリド−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリド−3−イル、5,6−ジブロモピリド−3−イル、5−メチル−6−クロロピリド−3−イル、5−クロロ−6−ヨードピリド−3−イルおよび5−ジフルオロメチル−6−クロロピリド−3−イルからなる群からより好ましく選択される。
【0019】
Aは、6−クロロピリド−3−イル、6−ブロモピリド−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリド−3−イルおよび5−フルオロ−6−ブロモピリド−3−イルからなる群から最も好ましく選択される。
【0020】
用語「アルキル」は、本発明の文脈において、単独または例えば、ハロアルキル等のように、さらなる用語との組み合わせのどちらでも、分岐または非分岐でよい1から12個の炭素原子を有する飽和の脂肪族炭化水素基を意味すると理解される。C−C12アルキル基の例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、へキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシルおよびn−ドデシルが挙げられる。これらのアルキル基の中で、C−Cアルキル基が特に好ましい。C−Cアルキル基が、とりわけ好ましい。
【0021】
本発明によると、用語「アリール」は、6から14個の炭素原子を有する芳香族基を意味すると理解され、好ましくはフェニルである。
【0022】
用語「アリールアルキル」は、本発明により定義される「アリール」基および「アルキル」基の組み合わせを意味すると理解され、この基は一般的にアルキル基を通じて結合される。この例は、ベンジル、フェニルエチルまたはα−メチルベンジルであり、特に好ましいものはベンジルである。
【0023】
本発明の文脈において、例えばハロアルキル等のハロゲン置換した基は、一箇所または一箇所を超えて置換基の可能な最高数までハロゲン化された基を意味すると理解される。ポリハロゲン化の場合、ハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素または沃素を表し、とりわけフッ素、塩素または臭素である。
【0024】
用語「アルコキシ」は、本文脈では、単独または例えば、ハロアルコキシ等のような、さらなる用語との組み合わせのどちらでも、O−アルキル基を意味すると理解され、用語「アルキル」は上記で定義されている。
【0025】
置換されていてもよい基は、単置換または多置換されていてよく、多置換の場合は置換基が同一または異なる。
【0026】
一般式(IV)の2,2−ジフルオロエチルイミン誘導体は、それ自体が当業者には知られている還元剤を用いて、対応する一般式(III)のアミンに水素化できる。例えば、以下により還元を実施することができる。
【0027】
−錯体水素化物
−非錯体金属または半金属水素化物
−Na/EtOH、または
−触媒的水素化
錯体水素化物は、少なくとも1つのハイドライド配位子を含有する荷電金属錯体を意味すると一般的に理解される。その例は、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)、LiAlH(O−tert−ブチル)、LiAlH(O−メチル)、NaAIEt、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)等である。非錯体金属または半金属水素化物の例は、AlH、DIBAL−H(AlH(イソブチル))等である。これらの中で、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)の使用が特に好ましい。錯体金属水素化物または非錯体金属もしくは半金属水素化物を用いる反応は、減圧下、標準圧で、または昇圧下、−30から150℃、好ましくは−10から60℃の温度で実施できる。
【0028】
一般式(IV)の化合物を還元するために触媒的水素化を使用する場合、使用する触媒は任意で所望の水素化触媒でよい。適切な触媒は、任意で所望の通例の無機担体上に、1種または複数の周期表の8−10族の金属を含有する。有用な触媒は、例えば、ルテニウム触媒、パラジウム触媒、白金触媒およびロジウム触媒等の貴金属触媒、ラネーニッケル触媒およびリンドラー触媒が挙げられる。また一方、これらの不均一触媒と同様に、例えばウィルキンソン触媒等の均一触媒による水素化を実施することも可能である。対応する触媒は、例えば炭素(非活性または活性の炭素)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムまたは二酸化チタン等に適用された担持形態で使用されることもできる。対応する触媒は、それ自体が当業者には知られている。ラネーニッケル触媒が、とりわけ好ましい。
【0029】
触媒的水素化は、オートクレーブ中の昇圧下、または水素ガス雰囲気中の標準圧で実施することができる。水素ガス雰囲気は、例えばアルゴンまたは窒素等の不活性ガスをさらに含んでもよい。触媒的水素化は、好ましくは10から60℃、より好ましくは20から40℃の温度で実施される。水素圧は、典型的には0.1から50バール、好ましくは0.1から30バールである。
【0030】
イミンの水素化に使用されるさらなる試薬および水素化条件は、Pataiシリーズ中のHaradaの著書「The chemistry of the Carbon−Nitrogen Double Bond」、276から293頁およびRylanderの著書「Catalytic Hydrogenation over Platinum Metals」、Academic Press、New York、1967の291から303頁に記載されている。
【0031】
一般的に、イミンの水素化のために、本発明による方法を溶媒(希釈剤)の存在下で実施することは有利である。還元工程全体で、溶媒は反応混合物が効率よく攪拌可能であり続けるような量で有利に使用される。本発明による方法を実施するための有用な溶媒として、反応条件下で不活性であるすべての有機溶媒が挙げられる。使用される溶媒の種類は、還元が実施される手段、すなわちより詳しくは還元剤の種類による。
【0032】
例としては、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、塩化メチレン、ジクロロブタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンおよびトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、とりわけ塩素化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノール等のアルコール、エチルプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテルおよび酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンのポリエーテル等のエーテル、トリメチル−、トリエチル−、トリプロピル−、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、アルキル化ピリジンおよびテトラメチレンジアミン等のアミン、ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、および塩化メチレン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、フルオロベンゼン、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼン等のフッ素原子および塩素原子により置換されていてもよい人工的炭化水素、例えば、40℃から250℃の範囲の沸点を有する成分を含む、例えばいわゆる揮発油、シメン、70℃から190℃の沸騰範囲内の石油留分、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ニトロベンゼン、キシレン等の脂肪族、環状脂肪族または芳香族炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルおよび炭酸ジメチル、炭酸ジブチルまたは炭酸エチレン等のエステル、およびメタノール、エタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノールおよびn−ブタノール等の脂肪族アルコールが挙げられる。
【0033】
上記の溶媒の中でも、アルコール、特にメタノールおよびエタノール、とりわけメタノールが好ましい。
【0034】
本発明の反応における溶媒の使用量は、広い範囲内で変えることができる。一般的に、それぞれの場合、使用される一般式(IV)の2,2−ジフルオロエチルイミンに基づいて、1から50倍の範囲の溶媒の量、好ましくは2から40倍の溶媒の量、とりわけ2から30倍の溶媒の量が使用される。
【0035】
さらに、水素化試薬としての水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)と溶媒としてのアルコール、とりわけメタノールとの組み合わせが、とりわけ好ましい。
【0036】
本発明の反応は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)およびメタノールからなるこのシステムで、とりわけ以下のように実施できる。イミンが初めにアルコール内に投入され、冷却しながら水素化ホウ素ナトリウムが少しずつ添加される。続いて、この混合物は30から50℃の温度で攪拌され、次に、アルコールの量に基づいて約1から3当量の水が添加される。これは、続いて有機溶媒を用いて通例の方法で抽出される。
【0037】
水素化は、イミン基が飽和基に水素化されるが分子内に存在する他の官能基が同時に変化することがないこれらの反応条件下(圧力、温度、化学量論等)で一般的に達成される。
【0038】
水素化されたイミンの後処理(精製)および単離は、例えば結晶化および/または蒸留により達成できる。
【0039】
本発明は、上記の方法で開示されるように、さらに、一般式(III)の化合物を調製するための一般式(IV)の化合物の使用にも関する。
【0040】
本発明の反応に必要な一般式(IV)の化合物は、一般式(VI)のアルデヒド
【0041】
【化4】

(式中、Aは上記で規定されたとおり。)
を2,2−ジフルオロエチルアミンと反応させて、縮合により一般式(IV)の化合物とすることにより得ることができる。
【0042】
【化5】

【0043】
この反応に必要な2,2−ジフルオロエチルアミンは市販されており、文献の方法(J.Medicinal Chemistry (1989)、32(5)、957−961)により調製できる。
【0044】
式(II)のアルデヒドは市販されており、または文献の方法(例えば、6−メチルニコチンアルデヒド:EP0104876A2、2−クロロピラジン−5−カルボキシアルデヒド:DE3314196A1)により調製できる。
【0045】
反応に触媒として酸を添加して一般式(IV)の化合物を得ることは、可能である。その例は、酢酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸である。酢酸の使用が好ましい。
【0046】
この種類の触媒が使用される場合、その量は、使用する2,2−ジフルオロエチルアミンに基づいて、0.01から10重量パーセントであってよい。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、2,2−ジフルオロエチルアミンは塩の形態で使用される。これにより、ルイス酸の添加を省略または低減することができる。有用な塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩または硫酸塩が挙げられる。
【0048】
一般式(IV)の化合物を調製するための反応は、縮合によりアミンとアルデヒドとの間の反応で形成される水が、反応混合物から除去されるような手段でさらに実施されてもよい。これは、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、もしくはモレキュラーシーブ等で例示される水結合剤の使用を通じることにより、または水分離用の装置の使用を通じることにより可能である。
【0049】
一般式(IV)の化合物を調製するための反応は、減圧下、標準圧で、または昇圧下で一般的には実施できる。使用される温度は、使用される物質によって同様に変化してよく、当業者が所定の試験により決定することは容易である。例えば、一般式(IV)の化合物を調製するための反応は、−20から200℃、好ましくは10から100℃の温度で実施できる。標準圧において10から100℃の温度で反応を実施することが好ましい。
【0050】
一般式(IV)のイミンを調製するための反応は、さらに溶媒(希釈剤)の存在下で実施されてもよい。この方法のステップにおいても、還元工程全体で、溶媒は反応混合物が効率よく攪拌可能であり続けるような量で好ましく使用される。一般式(IV)の2,2−ジフルオロエチルイミン誘導体を調製する目的で、本発明による方法を実施するために有用な溶媒としては、反応条件下で不活性であるすべての有機溶媒が挙げられる。
【0051】
例としては、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、塩化メチレン、ジクロロブタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンおよびトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、とりわけ塩素化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノール等のアルコール、エチルプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチル−エーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテルおよび酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンのポリエーテル等のエーテル、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、クロロニトロベンゼン、o−ニトロトルエン等のニトロ炭化水素、アセトニトリル、メチルニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチルニトリル、ベンゾニトリル、フェニルニトリル、m−クロロベンゾニトリル等のニトリル、テトラヒドロチオフェンジオキシドおよびジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ベンジルメチルスルホキシド、ジイソブチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジイソアミルスルホキシド等の化合物、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジヘキシルスルホン、メチルエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホンおよびペンタメチレンスルホン等のスルホン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、および塩化メチレン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、フルオロベンゼン、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼン等のフッ素原子および塩素原子により置換されてもよい人工的炭化水素、例えば40℃から250℃の範囲の沸点を有する成分を含む、例えばいわゆる揮発油、シメン、70℃から190℃の沸騰範囲内の石油留分、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ニトロベンゼン、キシレン等の脂肪族、環状脂肪族または芳香族炭化水素が挙げられる。上記の溶媒の中でも、キシレン、クロロベンゼン、シクロヘキサンおよびトルエンがとりわけ好ましい。
【0052】
さらなる実施形態で、アミンとアルデヒドとの反応は、物質中でも達成できる。
【0053】
反応が溶媒中で実施される場合、反応終了後の蒸留により溶媒は除去できる。これは、標準圧または減圧下、室温または高温で実行できる。混合物は、直接水素化に移動することもでき、これはとりわけ経済的考察の結果として有利である。本発明による方法のこの実施形態では、2,2−ジフルオロエチルイミン誘導体の後処理は、その後省略される。
【0054】
本発明は、一般式(III)の目的化合物の調製の中間体として使用される、一般式(IV)の化合物をさらにそのうえ提供する。
【0055】
【化6】

【0056】
これらの中間体において、置換基Aは以下のように規定される。
【0057】
・ピリド−2−イルもしくはピリド−4−イルもしくはピリド−3−イル(フッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチルもしくはトリフルオロメトキシにより6位が置換されていてもよい。)、またはピリダジン−3−イル(塩素もしくはメチルにより6位が置換されていてもよい。)、またはピラジン−3−イル、または2−クロロピラジン−5−イル、または1,3−チアゾール−5−イル(塩素もしくはメチルにより2位が置換されていてもよい。)、または
・ピリミジニル、ピラゾリル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾリルまたは1,2,5−チアジアゾリル(フッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、C−Cアルキル(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)、C−Cアルキルチオ(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)またはC−Cアルキルスルホニル(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)により置換されていてもよい。)、または

【0058】
【化7】

(Xが、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルであり、
Yが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アジドまたはシアノである。)
好ましい、特に好ましい、および非常に特に好ましい置換基または上記の一般式(III)および(IV)で示されるA基の範囲は、以下で説明される。
【0059】
Aは、6−フルオロピリド−3−イル、6−クロロピリド−3−イル、6−ブロモピリド−3−イル、6−メチルピリド−3−イル、6−トリフルオロメチルピリド−3−イル、6−トリフルオロメトキシピリド−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、6−メチル−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルまたは2−メチル−1,3−チアゾール−5−イル、2−クロロピリミジン−5−イル、2−トリフルオロメチルピリミジン−5−イル、5,6−ジフルオロピリド−3−イル、5−クロロ−6−フルオロピリド−3−イル、5−ブロモ−6−フルオロピリド−3−イル、5−ヨード−6−フルオロピリド−3−イル、5−フルオロ−6−クロロピリド−3−イル、5,6−ジクロロピリド−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリド−3−イル、5−ヨード−6−クロロピリド−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリド−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリド−3−イル、5,6−ジブロモピリド−3−イル、5−フルオロ−6−ヨードピリド−3−イル、5−クロロ−6−ヨードピリド−3−イル、5−ブロモ−6−ヨードピリド−3−イル、5−メチル−6−フルオロピリド−3−イル、5−メチル−6−クロロピリド−3−イル、5−メチル−6−ブロモピリド−3−イル、5−メチル−6−ヨードピリド−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−フルオロピリド−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−クロロピリド−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−ブロモピリド−3−イルおよび5−ジフルオロメチル−6−ヨードピリド−3−イルからなる群から好ましく選択される。
【0060】
Aは、6−フルオロピリド−3−イル、6−クロロピリド−3−イル、6−ブロモピリド−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−クロロピリミジン−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリド−3−イル、5,6−ジクロロピリド−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリド−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリド−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリド−3−イル、5,6−ジブロモピリド−3−イル、5−メチル−6−クロロピリド−3−イル、5−クロロ−6−ヨードピリド−3−イルおよび5−ジフルオロメチル−6−クロロピリド−3−イルからなる群からより好ましく選択される。
【0061】
Aは、6−クロロピリド−3−イル、6−ブロモピリド−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリド−3−イルおよび5−フルオロ−6−ブロモピリド−3−イルからなる群から最も好ましく選択される。
【0062】
一般式(IV)の化合物は、一般式(III)の2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製するための反応物質として使用できる。
【0063】
本発明による方法により得られる一般式(III)の化合物から進めて、例えば国際特許出願第2007/115644号および第2007/115646号に記載されている、2,2−ジフルオロエチルアミノユニットを含む殺虫剤活性のエナミノカルボニル化合物を調製することが可能である。
【0064】
この目的のために、一般式(III)の化合物は、
【0065】
【化8】

例えばテトロン酸またはその誘導体との反応により、2級アミン窒素上にアルキル化できる。対応する反応が、DE102006015467のスキーム1に詳細に記載されており、殺虫剤活性のエナミノカルボニル化合物に直接導く。
【0066】
本発明は、続く実施例により詳細に説明されるが、実施例は、本発明を制限するような方法で解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0067】
調製例:
74.34gの6−クロロピリジン−3−カルバルデヒドの46gのトルエン中溶液に、41.8gの2,2−ジフルオロエチルアミンを室温で添加する。反応混合物を、室温で2時間攪拌する。続いて、120gの無水硫酸マグネシウムを添加し、混合物を50℃でさらに5時間攪拌する。反応混合物を室温に冷却して濾過する。濾残をトルエンで洗浄する。溶媒を減圧下で除去し、100.2gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチリデン)]−2,2−ジフルオロエチルアミンを95.5%の純度で得る(これは、94%の収率に対応する。)。
H NMR(CDCl,298K)δ:4.05 m(2H)、6.5 t(1H,C)、7.63 d(1H)、8.20 d(1H)、8.56 s(1H)、8.75 d(1H)
【実施例2】
【0068】
74gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチリデン)]−2,2−ジフルオロエチルアミン(実施例1から)の343gのエタノール中溶液に、5gのラネーニッケル触媒を添加し、水素化を20バールの水素を用いて室温、24時間で達成する。触媒を濾過で取り除き、残留物を100mlのエタノールで洗浄して、溶媒を減圧下で除去する。これにより、71.4gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル)]−2,2−ジフルオロエチルアミンを95%の純度で得る(これは、94%の収率に対応する。)。
NMR(d−DMSO):1H(s,8.35ppm);1H(dd,7.8ppm);1H(d,7.46ppm);1H(tt,6.02ppm);2H(s,3.8ppm);2H(td,2.9ppm)
【実施例3】
【0069】
5gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチリデン)]−2,2−ジフルオロエチルアミンの23gのエタノール中溶液に、1.1gの水素化ホウ素ナトリウムを少しずつ添加し、混合物を室温で攪拌する。続いて、混合物を短時間で50℃に加熱し、次に100mlの水に注ぎ込む。混合物を各回100mlの塩化メチレンで2回抽出し、合わせた有機層を減圧で濃縮する。これにより、4.5gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル)]−2,2−ジフルオロエチルアミンを93%の純度で得る(これは、86%の収率に対応する。)。
NMRデータ:実施例2参照

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(IV)の2,2−ジフルオロエチルイミン誘導体が、対応する一般式(III)の2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体に水素化されることを特徴とする、2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製する方法
【化1】

(式中、一般式(III)および(IV)のA基は以下のように規定される:
○ピリド−2−イルもしくはピリド−4−イルもしくはピリド−3−イル(フッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチルもしくはトリフルオロメトキシにより6位が置換されていてもよい。)、またはピリダジン−3−イル(塩素もしくはメチルにより6位が置換されていてもよい。)、またはピラジン−3−イル、または2−クロロピラジン−5−イル、または1,3−チアゾール−5−イル(塩素もしくはメチルにより2位が置換されていてもよい。)、または
○ピリミジニル、ピラゾリル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、または1,2,5−チアジアゾリル(フッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、C−Cアルキル(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)、C−Cアルキルチオ(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)またはC−Cアルキルスルホニル(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)により置換されていてもよい。)、または

【化2】

(Xはハロゲン、アルキルまたはハロアルキルであり、
Yはハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アジドまたはシアノである。))。
【請求項2】
水素化が、錯体水素化物、非錯体金属または半金属水素化物、Na/EtOHを用いて、または触媒的水素化により実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(IV)
【化3】

の化合物を調製する方法であって、一般式(VI)のアルデヒドの化合物
【化4】

(式中、Aは上記のように規定される。)
が2,2−ジフルオロエチルアミンと反応させられることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法で得られる一般式(IV)の化合物が出発化合物として使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
一般式(IV)の化合物
【化5】

(式中、A基は以下のように規定される:
○ピリド−2−イルもしくはピリド−4−イルもしくはピリド−3−イル(フッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチルもしくはトリフルオロメトキシにより6位が置換されていてもよい。)、またはピリダジン−3−イル(塩素もしくはメチルにより6位が置換されていてもよい。)、またはピラジン−3−イル、または2−クロロピラジン−5−イル、または1,3−チアゾール−5−イル(塩素もしくはメチルにより2位が置換されていてもよい。)、または
○ピリミジニル、ピラゾリル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、または1,2,5−チアジアゾリル(フッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、C−Cアルキル(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)、C−Cアルキルチオ(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)またはC−Cアルキルスルホニル(フッ素および/または塩素により置換されていてもよい。)により置換されていてもよい。)、または

【化6】

(Xはハロゲン、アルキルまたはハロアルキルであり、
Yはハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アジドまたはシアノである。))。
【請求項6】
請求項1または2に記載の方法により一般式(III)の化合物を調製するための、請求項5に記載の一般式(IV)の化合物の使用。

【公表番号】特表2010−539202(P2010−539202A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525231(P2010−525231)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007272
【国際公開番号】WO2009/036901
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】