説明

インキ

【課題】シリコーンブランケットの表面に対して適度の濡れ性と離型性とを兼ね備え、前記シリコーンブランケットの表面に縦スジやムラ、ピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成するとともに、基板等の被印刷体の表面に厚みが均一なインキパターンを形成でき、しかも安全性の問題等も生じにくい反転印刷法用のインキを提供する。
【解決手段】バインダ樹脂、着色剤、および溶剤を含み、前記溶剤が、25℃での表面張力21mN/m以下の低張力溶剤を50質量%以下の割合で含有しているとともに、前記低張力溶剤100gに対する23℃での溶解度が10g以下であるフッ素系界面活性剤を、インキの総量中の0.01質量%以上、10質量%以下の割合で含有しているインキである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる反転印刷法に用いるインキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)を構成するカラーフィルタ等の、基板の面積と比較してごく微細なインキパターンを、前記基板のほぼ全面に形成して前記カラーフィルタ等を製造するために、従来はいわゆるフォトリソグラフ法を利用した形成方法が採用されてきた。
しかし近時、前記フォトリソグラフ法に代えてできるだけ工程数を少なく、消費エネルギーを小さく、使用する材料の無駄を少なく、そして短時間で生産性良くパターン形成をするために印刷法、特に凹版オフセット印刷法を利用することが普及しつつある。
【0003】
前記凹版オフセット印刷法では、印刷するインキパターンに対応した凹部を有する版(凹版)の前記凹部に充填したインキを、前記版から印刷用ブランケットの表面に転写させ、次いで前記印刷用ブランケットの表面から被印刷体としての基板の表面に再転写させることで、前記基板の表面にインキパターンが形成される。
しかし凹版オフセット印刷法によって基板の表面に形成されるインキパターンは厚みのばらつきが大きくなる傾向がある。すなわち凹版オフセット印刷法では、前記工程から明らかなようにインキの転写が2度行われ、それぞれの転写の度に、インキが転写先に転写される分と転写元に残る分とに引き裂かれるいわゆるインキの分離を生じるため、最終的に基板の表面に転写されるインキパターンに、前記分離の痕跡として高低差の大きい凹凸が残留して厚みのばらつきが大きくなる傾向があるのである。
【0004】
そこで、特に各画素内および各画素間で色濃度を均一化するために厚みができるだけ均一であることが求められるカラーフィルタ等を形成するために、凹版オフセット印刷法に代わる新たな印刷法として反転印刷法が開発された(特許文献1〜3等参照)。
前記反転印刷法では、印刷用ブランケットの表面の略全面にインキを供給してベタのインキ層を形成し、前記インキ層を、表面に所定のインキパターンに対応した凹部を有する版の前記表面に接触させて前記凹部以外のインキ層を前記版の表面に転写させることで前記印刷用ブランケットの表面から選択的に除去して、前記印刷用ブランケットの表面に前記凹部に対応したインキパターンを形成したのち、前記インキパターンを基板の表面に転写させることで、前記基板の表面にインキパターンが形成される。
【0005】
かかる反転印刷法によれば、インキパターンを形成するインキの転写回数を、印刷用ブランケットの表面から基板の表面への転写時の1回に減らすことができるため、従来の凹版オフセット印刷法に比べてインキパターンの表面に残留する凹凸の高低差を小さく、そして厚みのばらつきを小さくすることができる。
印刷用ブランケットとしては、少なくともその表面がシリコーンゴムによって形成されたシリコーンブランケットが広く用いられる。シリコーンブランケットはインキの離型性に優れるため、その表面から基板の表面へのインキパターンの転写性を向上できる。
【0006】
しかしシリコーンブランケットの表面はインキの濡れ性が低く、工程の最初に前記シリコーンブランケットの表面の略全面にインキを塗布してインキ層を形成する際にはじき等を生じやすいため、前記はじき等が原因で生じるムラやピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成するのが難しいという問題がある。
そこで、シリコーンブランケットの表面に対して適度の濡れ性と離型性とを兼ね備えた反転印刷法用のインキを得るべく、前記インキの表面張力を低下させることが検討されている。
【0007】
またインキの表面張力を低下させることで、シリコーンブランケットの表面にベタのインキ層を形成してから基板の表面に転写されたインキパターンが乾燥して固化されるまでの間に、いわゆるセルフレベリング効果によって、インキパターンの厚みをより一層均一化する効果も期待されている。
インキの表面張力を低下させるためには、例えばn−ヘキサン、イソプロピルアルコール、フッ素系溶剤等の表面張力の低い溶剤(以下「低張力溶剤」と記載することがある)を単独で用いるか、あるいは他の溶剤と併用したり、さらにシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の界面活性剤を含有させたりすることが考えられる(特許文献4、5等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−58921号公報
【特許文献2】特開平11−198337号公報
【特許文献3】特開2000−289320号公報
【特許文献4】特開2005−126608号公報
【特許文献5】特開2005−128346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし一般的な低張力溶剤は極性が低く、インキに用いられる高極性のバインダ樹脂に対する溶解性が低いため、特に前記低張力溶剤を単独で用いたり、他の溶剤との併用系中に、例えば50質量%を超える高い割合で含有させたりした場合にはバインダ樹脂を良好に溶解させることができず、インキ中に、前記バインダ樹脂等の固形分が異物として析出しやすい。
【0010】
そして析出した異物が原因となって、シリコーンブランケットの表面に形成するベタのインキ層に縦スジを生じたり、前記縦スジが原因となってインキパターンの形状に乱れを生じたりしやすいという問題がある。
すなわち反転印刷法では、シリコーンブランケットの表面の略全面にインキを供給してベタのインキ層を形成するために、例えば形成するインキ層の幅に対応した幅と厚みに対応した間隔とを有するスリットを備えたスリットダイコータ等を用いるのが一般的である。
【0011】
シリコーンブランケットを一定の速度で回転させながら、その表面に、前記スリットダイコータのスリットを通して所定量のインキを連続的に供給することで、前記スリットの幅と間隔に対応した幅と厚みとを有するベタのインキ層が、前記シリコーンブランケットの表面に形成される。
ところが、前記のようにインキ中に異物が析出すると、前記異物がスリットを部分的に塞ぐ等してインキの供給を前記スリットの幅方向の一部で妨げる結果、シリコーンブランケットの表面に形成されるインキ層の幅方向の、前記異物によって塞がれた部分に対応する位置に縦スジが生じる。また縦スジによるインキ層の厚みのばらつき等に基づいて、インキパターンの形状に乱れが生じる。
【0012】
また前記低張力溶剤の多くは沸点が低かったり、あるいは引火点が低かったりするため、特にインキ中に多量に含有させた際に安全性の面で問題を生じるおそれもある。
さらに沸点の低い低張力溶剤はインキ中から揮発しやすいため、かかる揮発が原因となって、例えば前記スリットダイコータ等を用いたインキ層の形成時に縦スジやムラを生じたり、前記縦スジやムラが原因となってインキパターンの形状の乱れを生じたりしやすいという問題もある。
【0013】
すなわち沸点が低く揮発しやすい低張力溶剤を多量に含むインキを用いた場合、たとえインキの調製時には先に説明した異物が析出していなくても、前記スリットダイコータ等を用いたインキ層の形成を繰り返すうちに、前記低張力溶剤の揮発によるインキの乾燥、および凝集に伴ってインキ中にバインダ樹脂等の固形分が異物として析出しやすくなり、析出した異物がスリットを部分的に塞ぐ等してインキの供給を前記スリットの幅方向の一部で妨げる結果、シリコーンブランケットの表面に形成されるインキ層の幅方向の、前記異物によって塞がれた部分に対応する位置に縦スジが生じる。
【0014】
また前記異物の析出とそれに伴う縦スジとを生じないまでも、インキの粘度上昇によってインキ層にムラを生じたり、前記縦スジやムラによるインキ層の厚みのばらつき等に基づいて、インキパターンの形状に乱れが生じたりする。
これに対し界面活性剤を含有させる場合は、前記低張力溶剤の含有割合を少なくして前記各種の問題が生じるのを抑制できる。
【0015】
前記界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤よりもフッ素系界面活性剤の方が、インキの表面張力を低下させる効果の点で優れている。
しかし発明者の検討によると、フッ素系界面活性剤を含有させた従来のインキをシリコーンブランケットの表面に均一に塗布するのは難しく、前記シリコーンブランケットの表面に縦スジやムラ、ピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成するとともに、基板の表面に厚みが均一なインキパターンを形成するのは容易でない。
【0016】
本発明の目的は、シリコーンブランケットの表面に対して適度の濡れ性と離型性とを兼ね備え、前記シリコーンブランケットの表面に縦スジやムラ、ピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成するとともに、基板等の被印刷体の表面に厚みが均一なインキパターンを形成でき、しかも安全性の問題等も生じにくい反転印刷法用のインキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、シリコーンブランケットの表面の略全面に形成したインキ層を、表面に所定のインキパターンに対応した凹部を有する版の前記表面に接触させて前記凹部以外のインキ層を前記版の表面に転写させることで前記シリコーンブランケットの表面から選択的に除去して、前記シリコーンブランケットの表面に前記凹部に対応したインキパターンを形成したのち、前記インキパターンを被印刷体の表面に印刷する反転印刷法に用いるインキであって、バインダ樹脂、着色剤、および溶剤を含み、前記溶剤が、25℃での表面張力21mN/m以下の低張力溶剤を50質量%以下の割合で含有しているとともに、前記低張力溶剤100gに対する23℃での溶解度が10g以下であるフッ素系界面活性剤を、インキの総量中の0.01質量%以上、10質量%以下の割合で含有していることを特徴とするインキである。
【0018】
反転印刷法用のインキにおいては、主に低張力溶剤等の溶剤がシリコーンブランケットの表面に対するインキの濡れ性を維持するために機能している。フッ素系界面活性剤自体の、前記シリコーンブランケットの表面に対する濡れ性は、前記溶剤やあるいはシリコーン系界面活性剤ほど良好ではない。むしろ悪い方である。
しかもフッ素系界面活性剤として、従来はインキの均一性を高めるべく、前記インキ中に含まれる低張力溶剤等に対して良好に溶解してインキ中に均一に分散されるものを選択して用いるのが一般的である。
【0019】
そのため溶剤に固有の良好な濡れ性が、インキ中に均一に分散されたフッ素系界面活性剤によって阻害されて、インキの全体としての、シリコーンブランケットの表面に対する濡れ性が却って低下してしまう傾向がある。
またフッ素系界面活性剤は、その名の通りシリコーンブランケットや基板の表面との界面、あるいはインキ層やインキパターンの表面(インキの液面、すなわち空気との界面)において、前記界面でのインキの活性を高めることでインキの表面張力を低下させるために機能するものであり、それを界面に偏在させずにインキ中に均一に分散させのでは、前記フッ素系界面活性剤を含有させてインキの表面張力を低下させることによる効果(前述したセルフレベリング効果等)が不十分になってしまう。
【0020】
そのため従来のインキを用いた場合には、シリコーンブランケットの表面にムラやピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成することができない。またインキ層の厚みを均一化できないことと、セルフレベリング効果等が十分に得られないこととが相まって、基板の表面に厚みが均一なインキパターンを形成することができない。
これに対し本発明のインキにおいては、先に説明したようにフッ素系界面活性剤として、インキ中に含まれる、25℃での表面張力が21mN/m以下の低張力溶剤100gに対する23℃での溶解度が10g以下であって、実質的に前記低張力溶剤に対して不溶性のフッ素系界面活性剤を選択して用いているため、前記フッ素系界面活性剤はインキ中に均一に分散されずに偏在する。
【0021】
そのためインキの、シリコーンブランケットの表面に対する濡れ性は溶剤が支配することになり、フッ素系界面活性剤を含んでいるにも拘らず前記インキの全体としての濡れ性が低下するのを抑制して、シリコーンブランケットの表面に対して適度の濡れ性と離型性とを兼ね備えた状態を維持することができる。
しかもフッ素系界面活性剤を含有させる分、低張力溶剤の含有割合を少なく、具体的には溶剤の総量の50質量%以下に抑えて縦スジやムラ等の問題、あるいは安全性の問題が生じるのを抑制することもできる。
【0022】
したがって、前記シリコーンブランケットの表面に縦スジやムラ、ピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成することが可能となる。
また前記フッ素系界面活性剤は、前述した濡れ性の低さに基づき、シリコーンブランケットの表面に形成されたインキ層中、および前記インキ層から形成されたインキパターン中で、前記シリコーンブランケットの表面から離れたインキ層やインキパターンの表面近傍に偏在する。またインキパターンが基板の表面に転写された後は、前記基板の表面から離れたインキパターンの表面近傍に偏在する。
【0023】
そのためインキの表面張力を、前記偏在したフッ素系界面活性剤によって良好に低下させて、先に説明したセルフレベリング効果等を有効に発揮させることができ、前記のようにインキ層の厚みを均一化できることと相まって、基板の表面に厚みが均一なインキパターンを形成することが可能となる。
フッ素系界面活性剤としては、重量平均分子量Mwが6000以上、80000以下であるものが好ましい。
【0024】
またフッ素系界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤が好ましい。
また本発明のインキの、25℃での表面張力は22mN/m以下で、かつ25℃での粘度は5mPa・s以下に調整するのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、シリコーンブランケットの表面に対して適度の濡れ性と離型性とを兼ね備え、前記シリコーンブランケットの表面に縦スジやムラ、ピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成するとともに、基板等の被印刷体の表面に厚みが均一なインキパターンを形成でき、しかも安全性の問題等も生じにくい反転印刷法用のインキを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のインキは、印刷用ブランケットとしてシリコーンブランケットを用いた反転印刷法に用いるものであって、バインダ樹脂、着色剤、および溶剤を含み、前記溶剤が、25℃での表面張力21mN/m以下の低張力溶剤を50質量%以下の割合で含有しているとともに、前記低張力溶剤100gに対する23℃での溶解度が10g以下であるフッ素系界面活性剤を、インキの総量中の0.01質量%以上、10質量%以下の割合で含有することを特徴としている。
【0027】
前記本発明のインキにおいて用いるフッ素系界面活性剤の、低張力溶剤100gに対する23℃での溶解度が10g以下に限定される理由は先に説明したとおりである。
なお前記溶解度は、前記範囲内でも0.5g以上であるのが好ましい。溶解度が前記範囲未満であるフッ素系界面活性剤はインキ中で過剰に凝集してピンホールの核となってインキ層にピンホールを生じやすくなったり、縦スジやムラの原因となったりしやすい。
【0028】
なおフッ素系界面活性剤の溶解度は、前記各種の問題が生じるのをより一層有効に抑制して、シリコーンブランケットの表面に縦スジやムラ、ピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成すること等を考慮すると、前記範囲内でも1g以上であるのが好ましく、4g以下であるのが好ましい。
なおフッ素系界面活性剤の溶解度を、本発明では、温度23℃の環境下、低張力溶剤100gをかく拌しながらフッ素系界面活性剤を徐々に滴下して、前記フッ素系界面活性剤が低張力溶剤に溶解せず白濁を生じるまでに滴下できたフッ素系界面活性剤の質量(g)でもって表すこととする。
【0029】
また本発明において、前記フッ素系界面活性剤の含有割合がインキの総量中の0.01質量%以上、10質量%以下に限定される理由は、下記の通りである。
すなわちフッ素系界面活性剤の含有割合が前記範囲未満では、前記フッ素系界面活性剤を含有させることによる、インキの表面張力を低下させる効果が得られず、セルフレベリング効果等によって、基板の表面に厚みが均一なインキパターンを形成することができない。
【0030】
また、フッ素系界面活性剤の不足を補うために低張力溶剤を前記50質量%以下の範囲を超えて多量に含有させた場合にはインキの表面張力が低くなりすぎて、前記インキがスリットダイコータの先端部分から上面へ不規則に濡れ拡がる、ノズルの汚れと呼ばれる現象を生じる。適度な表面張力を有するインキは、スリットダイコータの先端部分において一定幅に付着してそれ以上濡れ拡がらない上、垂れたりするおそれがないのに対し、前記のように不規則に濡れ拡がったインキは、それ自体の表面張力が低いことと相まって、その一部が液滴として塗布面上に垂れたりしやすい。そして垂れたインキがインキ層に混入することでインキ層に乱れを生じやすくなる。
【0031】
一方、フッ素系界面活性剤の含有割合が前記範囲を超える場合には、過剰のフッ素系界面活性剤によって、溶剤に固有の良好な濡れ性が阻害されて、インキの全体としての、シリコーンブランケットの表面に対する濡れ性が低下する結果、シリコーンブランケットの表面にムラやピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成できないおそれがある。
また、前記過剰のフッ素系界面活性剤がインキパターン中に残留して、例えばLCDのカラーフィルタの場合は前記カラーフィルタ上に積層されるITO膜や配向膜の接着性が低下して剥離を生じやすくなる結果、前記LCDの生産の歩留まりを低下させるといった問題を生じるおそれもある。
【0032】
なおこれらの問題が生じるのをより一層有効に抑制することを考慮すると、フッ素系界面活性剤の含有割合は、前記範囲内でも0.3質量%以上であるのが好ましく、8質量%以下であるのが好ましい。
前記含有割合は、フッ素系界面活性剤を1種単独で用いる場合は、前記1種類のフッ素系界面活性剤の、インキの総量中に占める含有割合であり、2種以上のフッ素系界面活性剤を併用する場合は、その合計量の、インキの総量中に占める含有割合である。
【0033】
前記フッ素系界面活性剤の重量平均分子量Mwは6000以上、特に20000以上であるのが好ましく、80000以下、特に60000以下であるのが好ましい。
重量平均分子量Mwが前記範囲未満である低分子量のフッ素系界面活性剤は低張力溶剤に対する溶解性が高いため、前記低張力溶剤100gに対する23℃での溶解度が10g以下の範囲を超えてしまい、インキ中に均一に分散されて先に説明した様々な問題を生じるおそれがある。
【0034】
また重量平均分子量が前記範囲を超える高分子量のフッ素系界面活性剤は、逆に低張力溶剤に対する溶解性が低いため、前記低張力溶剤100gに対する23℃での溶解度が低下しすぎてインキ中で過剰に凝集して、先に説明した様々な問題を生じるおそれがある。
またフッ素系界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤としてアニオン系もしくはカチオン系のものを用いた場合には、例えばLCDのカラーフィルタの場合、前記界面活性剤が液晶中に混入すると前記液晶の配向に影響を及ぼして表示の不良等を生じるおそれがあるが、ノニオン系界面活性剤であればかかる問題を生じるおそれはない。
【0035】
本発明において、低張力溶剤の25℃での表面張力が21mN/m以下に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち低張力溶剤として表面張力が前記範囲を超えるものを用いた場合には、前記低張力溶剤による、インキの表面張力を低下させて濡れ性を向上する効果が得られない。そのため、シリコーンブランケットの表面の略全面にインキを塗布してインキ層を形成する際にはじき等を生じやすく、前記はじき等が原因となってインキ層にムラやピンホール等を生じやすくなる。
【0036】
なお低張力溶剤の表面張力は、前記範囲内でも12mN/m以上であるのが好ましい。
表面張力が前記範囲未満では、低張力溶剤の含有割合や、あるいは組み合わせる他の溶剤の種類等にもよるが、シリコーンブランケットの表面に対するインキの濡れ性が高くなりすぎて、インキパターンを、前記シリコーンブランケットの表面から基板の表面に良好に転写させることができず、転写されたインキパターンの形状に乱れを生じるおそれがある。
【0037】
またインキの、スリットダイコータ等に対する濡れ性も高くなって特にスリットの付近に付着しやすくなり、付着したインキが乾燥してバインダ樹脂等が異物として析出してスリットを部分的に塞ぐと、インキ層に縦スジを生じたり、前記縦スジによるインキパターンの乱れを生じたりするおそれがある。
なおムラやピンホール等のない良好なインキ層をシリコーンブランケットの表面に形成し、かつ形状の乱れ等のない良好なインキパターンを基板の表面に形成することを考慮すると、低張力溶剤の表面張力は、前記範囲内でも16mN/m以下であるのが好ましい。
【0038】
なお低張力溶剤の表面張力を、本発明では温度25℃の環境下、英弘精機(株)製の動的表面張力計シータt60を用いて、最大泡圧法によって測定した値でもって表すこととする。
前記表面張力の範囲を満足する低張力溶剤としては、例えばn−ペンタン(16.0mN/m)、n−ヘキサン(18.4mN/m)、n−ヘプタン(19.6mN/m)、イソプロピルアルコール(20.8mN/m)、フッ素系溶剤、低分子量シリコーンオイル(18〜19mN/m)等が挙げられる。
【0039】
またフッ素系溶剤としては、分子中にフッ素原子を含み、前記表面張力の範囲を満足する種々のフッ素系溶剤が使用可能であるが、特に前記各種の効果に優れると共に塩素を含まないハイドロフルオロエーテル類、およびハイドロフルオロカーボン類からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
かかる条件を満たすハイドロフルオロエーテル類としては、例えばエチルノナフルオロブチルエーテル(13.6mN/m)、メチルノナフルオロブチルエーテル(13.6mN/m)等の1種または2種以上が挙げられる。またハイドロフルオロエーテル類としては、例えば住友スリーエム(株)製のNOVEC(登録商標)HFE−7200(13.6mN/m)等も挙げられる。HFE−7200は、ともにハイドロフルオロエーテル類であるエチルノナフルオロイソブチルエーテルとエチルノナフルオロブチルエーテルとの混合物である。
【0040】
また前記条件を満たすハイドロフルオロカーボン類としては、例えばトリデカフルオロペンタン(14.1mN/m)、トリデカフルオロヘキサン(12.5mN/m)等の1種または2種以上が挙げられる。
低張力溶剤の含有割合が、溶剤の総量の50質量%以下に限定されるのは、下記の理由による。
【0041】
すなわち低張力溶剤を、前記範囲を超えて多量に含有させた場合には、先に説明したメカニズムによってシリコーンブランケットの表面に縦スジやムラ、ピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成できなかったり、特にフッ素系溶剤以外の低張力溶剤を使用する際に安全性の問題を生じたりする。
なお低張力溶剤の含有割合は、前記範囲内でも5質量%以上であるのが好ましい。
【0042】
含有割合が前記範囲未満では、低張力溶剤を含有させることによる、インキの表面張力を低下させてシリコーンブランケットの表面に対するインキの濡れ性を向上する効果が得られない。そのため、シリコーンブランケットの表面の略全面にインキを塗布してインキ層を形成する際にはじき等を生じやすく、前記はじき等が原因となってインキ層にムラやピンホール等を生じやすくなる。
【0043】
なお縦スジやムラ、ピンホール等のない良好なインキ層をシリコーンブランケットの表面に形成し、かつ形状の乱れ等のない良好なインキパターンを基板の表面に形成することを考慮すると、低張力溶剤の含有割合は、前記範囲内でも40質量%以下であるのが好ましい。
前記含有割合は、低張力溶剤を1種単独で用いる場合は、前記1種類の低張力溶剤の、溶剤の総量中に占める含有割合であり、2種以上の低張力溶剤を併用する場合は、その合計量の、溶剤の総量中に占める含有割合である。
【0044】
バインダ樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリエステルメラミン樹脂、メラミン樹脂、エポキシメラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
特にLCD用のカラーフィルタ等の耐久性を向上することを考慮すると、バインダ樹脂としては熱硬化性、紫外線硬化性、光硬化性等を有するバインダ樹脂が好ましい。
【0045】
着色剤としては、種々の顔料、染料が挙げられる。特にLCD用のカラーフィルタの場合は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、耐光性等に優れたインキパターンを形成することを考慮すると有機、無機の各種顔料が好ましい。
低張力溶剤と併用される他の溶剤としては、前記バインダ樹脂を良好に溶解させて析出を防止しうる種々の溶剤が挙げられる。
【0046】
前記他の溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル(別名「メチルセロソルブ」「2−メトキシエタノール」)、エチレングリコールモノエチルエーテル(別名「セロソルブ」「2−エトキシエタノール」)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名「1−メトキシ−2−プロピルアセテート」、以下「PGMEA」と略記する場合がある。)、エチレングリコールモノブチルエーテル(別名「ブチルセロソルブ」、2−ブトキシエタノール)等の1種または2種以上が挙げられる。特にPGMEAが好ましい。
【0047】
前記他の溶剤の、溶剤の総量中に占める含有割合は、低張力溶剤の残部、すなわち50質量%以上とされる。
前記含有割合は、他の溶剤を1種単独で用いる場合は、前記1種類の他の溶剤の、溶剤の総量中に占める含有割合であり、2種以上の他の溶剤を併用する場合は、その合計量の、溶剤の総量中に占める含有割合である。
【0048】
また前記他の溶剤と低張力溶剤とを合わせた全ての溶剤の、インキの総量中に占める含有割合は、例えばフッ素系界面活性剤の種類や分子量、含有割合、バインダ樹脂の種類や分子量、含有割合、着色剤の種類や含有割合等に応じて、前記インキが反転印刷法に適した粘度となるように任意に設定できる。
インキは、さらに顔料分散剤、レベリング剤、チキソトロピック粘性付与剤、消泡剤等の各種添加剤を任意の割合で含有してもよい。
【0049】
インキは、前記各成分を所定の割合で配合し、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、アトライタ、サンドミル等を用いて混練して調製することができる。
インキの、25℃での表面張力は22mN/m以下、特に20mN/m以下であるのが好ましく、15mN/m以上、特に16mN/m以上であるのが好ましい。
表面張力が前記範囲を超える場合には、シリコーンブランケットの表面に対するインキの濡れ性が不足して、シリコーンブランケットの表面の略全面にインキを塗布してインキ層を形成する際にはじき等を生じるおそれがあり、また前記はじき等が原因となってインキ層にムラやピンホール等を生じるおそれがある。
【0050】
また表面張力が前記範囲未満では、シリコーンブランケットの表面に対するインキの濡れ性が高くなりすぎて、インキパターンを、前記シリコーンブランケットの表面から基板の表面に良好に転写させることができず、転写されたインキパターンの形状に乱れを生じるおそれがある。
またインキの、25℃での粘度は、シリコーンブランケットを用いた反転印刷法によって良好なインキパターンを形成することを考慮すると0.5mPa・s以上、特に1mPa・s以上であるのが好ましく、5mPa・s以下、特に3mPa・s以下であるのが好ましい。
【0051】
本発明のインキは、前記シリコーンブランケットを用いた反転印刷法に用いて、例えばLCD用のカラーフィルタ等を、先に説明した様々な問題を生じることなく、効率よく製造するのに適している。
シリコーンブランケットとしては、少なくともその表面がシリコーンゴムからなるブランケットが挙げられる。
【0052】
前記シリコーンブランケットとしては、その全体が単層のシリコーンゴムからなるものや、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、金属箔等からなる基材の片面にシリコーンゴムの層を積層した積層構造を有するもの等が挙げられる。
このうち全体が単層のシリコーンゴムからなるシリコーンブランケットは、例えば平盤上に液状のシリコーンゴムをコーティングし、架橋反応させたのち前記平盤から剥離する等して形成できる。
【0053】
また積層構造を有するシリコーンブランケットは、例えば金型内に基材を装着した状態で、前記金型内に液状のシリコーンゴムを注入して架橋反応させたり、基材の表面に液状のシリコーンゴムをコーティングしたのち架橋反応させたりして形成できる。
版としては、鉄−ニッケル合金(42アロイ等)、ステンレス鋼等の金属や、ソーダガラス、無アルカリガラス等のガラスからなり、片面に、先に説明したようにフォトリソグラフ法等によって、印刷するインキパターンの形状に対応した凹部を形成したものを用いることができる。
【0054】
また版の耐久性を向上するため、前記版の、凹部の内面を含む表面には、例えば硬質クロムめっき等を施してもよい。
シリコーンブランケットの表面の略全面にインキを塗布してインキ層を形成するには、従来同様にスリットダイコータ等を用いればよい。
本発明のインキを用いてLCD用のカラーフィルタを製造するためには、まずインキとして赤(R)、緑(G)、青(B)の3色に着色されたものを用意する。
【0055】
次いでガラス基板等の基板の表面に、任意の形成方法で、LCDの画素を区画するブラックマトリクス層を形成する。
そして前記ブラックマトリクスで区画された基板の表面に、前記3色のインキを順次、反転印刷法によって印刷したのち乾燥させて溶剤を除去し、さらに必要に応じて焼き付けることでカラーフィルタが製造される。
【実施例】
【0056】
以下の実施例、比較例におけるインキの調製、および試験を、特記した以外は温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で実施した。
〈実施例1〉
バインダ樹脂としてのポリエステルメラミン樹脂〔重量平均分子量Mw=10000〕100質量部、着色剤20質量部、低張力溶剤としてのn−ヘキサン100質量部、他の溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)300質量部、フッ素系界面活性剤としてのサーフロン(登録商標)S−611〔AGCセイミケミカル(株)製、重量平均分子量Mw=44000〕2.64質量部、および顔料分散剤5質量部を、プラネタリミキサを用いて混合し、次いでビーズミルを用いて混練してインキを調製した。
【0057】
前記サーフロンS−611の、低張力溶剤としてのn−ヘキサン100gに対する23℃での溶解度は2g、インキの総量中の含有割合は0.5質量%であった。
なお着色剤としては、それぞれ一次粒子径が1〜100nmである赤色顔料〔アントラキノン系顔料〕、緑色顔料〔臭素化フタロシアニン〕、または青色顔料〔銅フタロシアニン〕を用いて赤、緑および青の各色のインキを調製した。
【0058】
また顔料分散剤としては、リューブリゾル社製のソルスパース(登録商標)5000(顔料誘導体タイプ)と、同社製のソルスパース24000GR(SC)とを質量比1:1で配合した混合物を用いた。
〈実施例2〜4、比較例1、2〉
サーフロンS−611の配合量を調整して、インキの総量中の含有割合を0.005質量%(比較例1)、0.015質量%(実施例2)、5質量%(実施例3)、9.5質量%(実施例4)、および12質量%(比較例2)としたこと以外は実施例1と同様にしてインキを調製した。
【0059】
〈比較例3〉
サーフロンS−611に代えて、フッ素系界面活性剤であるサーフロンS−651〔AGCセイミケミカル(株)製、重量平均分子量Mw=5400〕2.64質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインキを調製した。
前記サーフロンS−651の、低張力溶剤としてのn−ヘキサン100gに対する23℃での溶解度は15g、インキの総量中の含有割合は0.5質量%であった。
【0060】
〈比較例4〉
サーフロンS−611に代えて、フッ素系界面活性剤であるメガファック(登録商標)F−444〔DIC(株)製、重量平均分子量Mw=4800〕2.64質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインキを調製した。
前記メガファックF−444の、低張力溶剤としてのn−ヘキサン100gに対する23℃での溶解度は20g、インキの総量中の含有割合は0.5質量%であった。
【0061】
〈実施例5〉
低張力溶剤として、n−ヘキサンに代えてNOVEC(登録商標)HFE−7200〔住友スリーエム(株)製〕100質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインキを調製した。
サーフロンS−611の、前記低張力溶剤(HFE−7200)100gに対する23℃での溶解度は3gであった。
【0062】
〈比較例5〉
低張力溶剤として、n−ヘキサンに代えてNOVEC(登録商標)HFE−7200〔住友スリーエム(株)製〕100質量部を用いたこと以外は比較例3と同様にしてインキを調製した。
サーフロンS−651の、前記低張力溶剤(HFE−7200)100gに対する23℃での溶解度は20gであった。
【0063】
〈表面張力測定〉
実施例、比較例で調製したインキの表面張力を温度25℃の環境下、英弘精機(株)製の動的表面張力計シータt60を用いて、最大泡圧法によって測定した。
〈粘度測定〉
実施例、比較例で調製したインキの粘度を温度25℃の環境下、コーンプレート型粘度計〔ブルックフィールド社製のデジタル粘度計LVDV−I〕を用いて、日本工業規格JIS Z8803−1991「液体の粘度−測定方法」所載の「円すい−平板形回転粘度計による粘度測定方法」によって測定した。測定条件は、円すいの直径φ=48mm(半径R=24mm)、円すいと平円板とがなす角α=3°とした。
【0064】
〈印刷試験〉
実施例、比較例で調製した各色のインキを用いて、シリコーンブランケットを用いた反転印刷法によって、ガラス基板上に赤、緑および青の各色のストライプ状のインキパターン(線幅100μm、ピッチ300μm)を順に印刷してLCD用のカラーフィルタを製造した。
【0065】
前記シリコーンブランケットとしては、厚み0.35mmのPETフィルムの片面に厚み0.6mmのシリコーンゴムの層を積層した積層構造を有するものを用いた。
また、シリコーンブランケットの表面の略全面にインキ層を形成するためにはスリットダイコータを用いた。
そして反転印刷法による先に説明したカラーフィルタの製造工程を通して、下記の各項目を評価した。
【0066】
(インキ層の状態)
前記スリットダイコータを用いてシリコーンブランケットの表面の略全面に形成されたインキ層を目視、および光学顕微鏡を用いて観察して縦スジの有無、およびムラの有無を、それぞれ下記の基準で評価した。
*縦スジ
◎:インキ層に縦スジは全く見られなかった。
【0067】
○:インキ層にわずかながら縦スジが見られたが、実用上差し支えのない程度であった。
×:インキ層に多くの縦スジが見られた。
*ムラ
◎:インキ層にムラはなく均一であった。
【0068】
○:インキ層に光学顕微鏡でわかる程度のわずかなムラが見られたが、実用上差し支えのない程度であった。
×:インキ層に目視でもわかる程度のムラが見られた。
(印刷形状)
ガラス基板上に印刷されたインキパターンを目視、および光学顕微鏡を用いて観察して、形状の乱れを下記の基準で評価した。
【0069】
◎:インキパターンに形状の乱れは全く見られなかった。
○:インキパターンに光学顕微鏡でわかる程度のわずかな乱れが見られたが、実用上差し支えのない程度であった。
×:インキ層に目視でもわかる程度の乱れが見られた。
以上の結果を表1、表2に示す。なお表2には、比較のため実施例1の結果を併記している。両表中の記号は下記の通り。
【0070】
n−Hex:ノルマルヘキサン
HFE:HFE−7200
S−611:サーフロンS−611
S−651:サーフロンS−651
F−444:メガファックF−444
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
表1、表2の実施例1〜5、比較例3〜5の結果より、低張力溶剤100gに対する溶解度が10g以下である実質的に溶剤不溶性のフッ素系界面活性剤を用いることにより、シリコーンブランケットの表面に対して適度の濡れ性と離型性とを兼ね備え、前記シリコーンブランケットの表面に縦スジやムラ、ピンホール等のない厚みが均一なインキ層を形成するとともに、基板等の被印刷体の表面に厚みが均一なインキパターンを形成でき、しかも安全性の問題等も生じにくい反転印刷法用のインキが得られることが判った。
【0074】
また表1の実施例1〜4、比較例1、2の結果より、前記効果を得るためには、前記フッ素系界面活性剤を、インキの総量中の0.01質量%以上、10質量%以下の割合で含有している必要があること、中でも0.3質量%以上、7質量%以下であるのが好ましいことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンブランケットの表面の略全面に形成したインキ層を、表面に所定のインキパターンに対応した凹部を有する版の前記表面に接触させて前記凹部以外のインキ層を前記版の表面に転写させることで前記シリコーンブランケットの表面から選択的に除去して、前記シリコーンブランケットの表面に前記凹部に対応したインキパターンを形成したのち、前記インキパターンを被印刷体の表面に印刷する反転印刷法に用いるインキであって、バインダ樹脂、着色剤、および溶剤を含み、前記溶剤が、25℃での表面張力21mN/m以下の低張力溶剤を50質量%以下の割合で含有しているとともに、前記低張力溶剤100gに対する23℃での溶解度が10g以下であるフッ素系界面活性剤を、インキの総量中の0.01質量%以上、10質量%以下の割合で含有していることを特徴とするインキ。
【請求項2】
前記フッ素系界面活性剤は、重量平均分子量Mwが6000以上、80000以下である請求項1に記載のインキ。
【請求項3】
前記フッ素系界面活性剤はノニオン系界面活性剤である請求項1または2に記載のインキ。
【請求項4】
前記インキの、25℃での表面張力は22mN/m以下で、かつ25℃での粘度は5mPa・s以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインキ。

【公開番号】特開2011−252063(P2011−252063A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125913(P2010−125913)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】