インクジェットによるプリント方法
【課題】前縁および後縁とテキストのプリント品質を改良するプリントモードを提供する。
【解決手段】プリント媒体の上方をプリントヘッドが走査して通過する度に、多数のインク滴をプリントヘッドから画像のそれぞれの列にデポジットすることによって、インクジェットのスウォースプリンタでインクリメントプリントを行う方法において、前記画像を得るステップと、前記画像を分析して、どのインク滴が、走査方向110に関して画像要素のそれぞれの行における後縁104を規定するかを判定するステップと、前記それぞれの行における後縁104を規定する滴108より前のインク滴を少なくとも1つ除去するステップと、前記媒体の上方で走査方向110にプリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を前記媒体上にデポジットするステップと、を含む方法。
【解決手段】プリント媒体の上方をプリントヘッドが走査して通過する度に、多数のインク滴をプリントヘッドから画像のそれぞれの列にデポジットすることによって、インクジェットのスウォースプリンタでインクリメントプリントを行う方法において、前記画像を得るステップと、前記画像を分析して、どのインク滴が、走査方向110に関して画像要素のそれぞれの行における後縁104を規定するかを判定するステップと、前記それぞれの行における後縁104を規定する滴108より前のインク滴を少なくとも1つ除去するステップと、前記媒体の上方で走査方向110にプリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を前記媒体上にデポジットするステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱インクジェットプリンタに関し、より詳細には前縁および後縁とテキストのプリント品質を改良するプリントモードに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、グラフィックスのプロッタ、ファクシミリ、および複写機等の熱インクジェットハードコピー装置は、広く受けいれられている。こういったハードコピー装置は、W.J.LloydおよびH.T.Taubによって、Output Hardcopy Devices(Ed.R.C.Durbeck and S.Sherr,San Diego:Academic Press,1988)(非特許文献1)の第13章「Ink Jet Devices」において説明されている。本技術の基本原理については、その全体を引用することによって本明細書の一部をなす、Hewlett−Packard Journalのいくつかの版における様々な論文[Vol.36,No.5(May 1985)、Vol.39,No.4(August 1988)、Vol.39,No.5(October 1988)、Vol.43,No.4(August 1992)、Vol.43,No.6(December 1992)、およびVol.45,No.1(February 1994)]において更に開示されている。インクジェットハードコピー装置は、高品質のプリントを行い、コンパクトかつポータブルであり、インクのみが紙に当たるのでプリントが高速かつ静かである。
【0003】
インクジェットプリンタは、そのプリント媒体について規定したアレイの特定の位置に個々のドットからなるパターンをプリントすることによって、プリント画像を形成する。好都合なことに、こういった位置は、1つの直線アレイ内の小さな各ドットとして視覚化される。こういった位置は、「ドット位置」、「ドット場所」、または「画素」と呼ばれることがある。従って、プリント動作は、ドット位置のパターンをインクのドットで満たすことであると考えることができる。
【0004】
インクジェットハードコピー装置は、非常に小さなインク滴をプリント媒体上に噴射することによってドットをプリントし、通常、それぞれがインクを噴射するノズルを有する1つまたはそれよりも多いプリントヘッドを支持する、可動キャリッジを含む。可動キャリッジはプリント媒体の表面の上方を横切り、ノズルは、マイクロコンピュータその他制御装置の命令に従って適切な時点でインク滴を噴射するように制御される。インク滴を施すタイミングは、プリントしている画像の画素パターンに対応するように意図されている。
【0005】
典型的なインクジェットのプリントヘッド(すなわち、シリコン基板、基板上に形成した構造、および基板への接続)は、液体のインク(すなわち、溶剤内に分散した、溶解した着色剤または顔料)を用いる。このプリントヘッドは、プリントヘッド基板に取り付けた、精密に形成したオリフィスまたはノズルのアレイを有する。プリントヘッド基板は、インク槽から液体のインクを受け取るインク噴射チャンバのアレイを組み込んでいる。それぞれのチャンバは、ノズルに対向して配置されており、インクがチャンバとノズルとの間にたまることができ、それぞれのチャンバは、チャンバ内に配置された噴射抵抗器を有する。インク滴の噴射は、通常マイクロプロセッサの制御の下にあり、マイクロプロセッサの信号は、導電トレースによって抵抗器要素に搬送される。電気プリントパルスがインクジェット噴射チャンバの抵抗器を加熱すると、その隣にあるごく一部のインクが気化し、プリントヘッドからインク滴を噴射する。適切に配置されたノズルは、ドットマトリクスパターンを形成する。それぞれのノズルの動作を適切に配列することによって、プリントヘッドが紙を通り過ぎて動くにつれて文字または画像が紙上にプリントされる。
【0006】
インクジェットのプリントヘッドにおいて、インクは、プリントヘッドと一体のインク槽または「オフ・アクシス」のインク槽から供給される。「オフ・アクシス」のインク槽は、プリントヘッドと槽とを接続する管を通して、インクをプリントヘッドに供給する。インクは次に、基板の底中央に形成した細長い孔を通じて、または基板の外縁を回って、様々な気化チャンバに供給される。前者を「センター供給(center feed)」、後者を「縁供給(edge feed)」と呼ぶ。
【0007】
インク噴射用のノズルを含むインクカートリッジは、その上にプリントを行う媒体の幅を横切って、繰り返し動く。この、媒体を横切る動きが指定数だけインクリメントされる度に、制御マイクロプロセッサのプログラム出力に従って、それぞれの抵抗器がインクを噴射するかインクを噴射しないかのどちらかになる。媒体を横切る動きが完了する度に、1列に配置したインクカートリッジのノズル数に、ノズルの中心間距離を掛け合わせたものと略等しい高さの、スウォース(swath)をプリントすることができる。このような動きすなわち1回分の印刷(swath)が完了する度に、媒体が1回分のプリントの高さまたはその何分の1かだけ垂直な方向に前進し、インクカートリッジが次の1回分のプリントを開始する。信号を適切に選択しタイミングを取ることによって、所望のプリントが媒体上に得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Output Hardcopy Devices(Ed.R.C.Durbeck and S.Sherr,San Diego:Academic Press,1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
線、テキスト、およびグラフィックは通常、均一な密度でプリントされる。その結果、通過が1回または2回のプリントモードにおいて、ブラックおよび純色については噴射頻度が高くなる。噴射頻度が高いと、噴射される滴の滴速度、滴体積、滴形状、および滴飛翔経路に悪影響がある。高頻度および均一密度のテキストおよび線でプリントした出力は、噴射状態が最適ではないために、欠陥を示す。従って、テキストおよびグラフィックの劣化、そしてより一般的には、高頻度の噴射に関連する縁の粗さ、の問題に対する解決法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、プリント媒体の上方をプリントヘッドが走査して通過する度に、多数のインク滴をプリントヘッドから画像のそれぞれの列にデポジットすることによって、インクジェットのスウォースプリンタ(inkjet swath printer)でインクリメントプリントを行う方法を提供する。該方法は、画像を得るステップと、画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における後縁を規定するかを判定するステップと、それぞれの行における後縁を規定する滴より前のインク滴を少なくとも1つ除去するステップと、媒体の上方で走査方向にプリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を媒体上にデポジットするステップとを含む。他の実施形態は、プリント媒体の上方をプリントヘッドが走査して通過する度に、多数のインク滴をプリントヘッドから画像のそれぞれの列にデポジットすることによって、インクジェットのスウォースプリンタでインクリメントプリントを行う方法を提供する。該方法は、画像を得るステップと、画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における前縁を規定するかを判定するステップと、それぞれの行における前縁を規定する滴より後のインク滴を少なくとも1つ除去するステップと、媒体の上方で走査方向にプリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を媒体上にデポジットするステップとを含む。
本発明の他の実施形態は、プリント媒体の上方で走査するインクジェットプリントシステムでプリントする方法である。該方法は、インク供給容器(supply ofink)と、プリント媒体上にインクを噴射する複数のインク噴射チャンバとを有する、プリントヘッドを設けるステップであって、インク噴射チャンバはそれぞれ、インクを対応する行上にデポジットし、インク噴射チャンバは基本噴射頻度と最大噴射頻度との間の範囲の頻度でインク滴を噴射するステップと、画像を得るステップと、画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における後縁を規定するかを判定するステップと、最大噴射頻度よりも低い噴射頻度でそれぞれの行の後縁を規定するインク滴を噴射するステップと、媒体の上方で走査方向にプリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を媒体上にデポジットするステップとを含む。本発明の他の実施形態は、プリント媒体の上方で走査するインクジェットプリントシステムでプリントする方法である。該方法は、インク供給容器と、プリント媒体上にインクを噴射する複数のインク噴射チャンバとを有する、プリントヘッドを設けるステップであって、インク噴射チャンバはそれぞれ、インクを対応する行上にデポジットし、インク噴射チャンバは基本噴射頻度と最大噴射頻度との間の範囲の頻度でインク滴を噴射するステップと、画像を得るステップと、画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における前縁を規定するかを判定するステップと、最大噴射頻度よりも低い噴射頻度でそれぞれの行の前縁を規定するインク滴を噴射するステップと、媒体の上方で走査方向にプリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を媒体上にデポジットするステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を組み込んだインクジェットプリンタの1実施形態の斜視図である。
【図2】単一のプリントカートリッジの上から見た斜視図である。
【図3】本発明の好適な実施形態による熱インクジェットプリント装置の概略ブロック図である。
【図4】図2の実施形態のプリントヘッド回路の詳細図である。
【図5】前縁および後縁を含むマークのついた領域と、前縁および後縁を規定する滴との図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の図である。
【図9】本発明の第4の実施形態の図である。
【図10】ブラックおよびカラーのテキストを、後縁のプリントについて本発明を用いてプリントしたものと本発明を用いずにプリントしたものとを示す図である。
【図11】カラーのテキストを、前縁のプリントについて本発明を用いてプリントしたものと本発明を用いずにプリントしたものとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明を利用するのに適したインクジェットプリンタ10の一実施形態の、カバーを取り外した状態の斜視図である。一般的に、プリンタ10は、新しい紙を保持するトレイ11Aを含む。プリント動作が開始すると、紙のシートが、シートフィーダを用いて入力トレイ11Aからプリンタ10内に送られ、次に、方向をU字型に変えられ、反対方向に出力トレイ11Bに向かって動く。シートはプリントゾーン13で停止し、1つまたはそれよりも多いプリントカートリッジ12を支持する走査キャリッジ16がシート上のプリントゾーンを横切って通過して、その上にインクのスウォースをプリントする。プリントは、キャリッジがどちらの方向に通過している間に行ってもよい。これを双方向プリントと呼ぶ。1回または多数回通過した後、従来技術のステッパモータおよび送りローラを用いて、使用しているプリントモードをベースにした量だけ、シートをインクリメントにシフトして、プリントゾーン13内の次の位置にし、キャリッジ16が再びシートを横切って通過して、インクの次のスウォースをプリントする。このシート上へのプリントが完了すると、このシートはトレイ13上の位置に送られ、その位置に保持されてインクが確実に乾くようにし、その後開放される。
キャリッジ16の走査機構は従来技術のものであってもよく、一般的に、それに沿ってキャリッジ16が摺動する摺動ロッドと、電気信号をプリンタの制御装置からキャリッジ16に、そしてキャリッジ16上の電極に送る、フレキシブルケーブル(図1には示さず)とを含む。キャリッジ16上の電極は、プリントカートリッジ12をプリンタ内に取り付けると、プリントカートリッジ12上の電気接点86とかみ合う。従来技術の駆動ベルトと滑車との装置を用いるキャリッジ16に接続されたモータ(図示せず)を用いて、キャリッジ16をプリントゾーン14を横切って運搬してもよい。
【0013】
図2は、プリントヘッド装置22を取り付けたプリントカートリッジ12を示す。プリントヘッド装置22は、ノズル82と電気接触パッド86とを含むフレキシブルテープ80を含む。接触パッド86は、キャリッジ16上の電極(図示せず)と整列し電気的に接触している。プリントカートリッジ12はまた、製造ライン上でまたはその後に決定される較正情報を記憶するメモリ装置も含む。情報の値としては通常、動作電圧、動作エネルギー、ターンオン・エネルギー、通常の寄生抵抗を含むプリントカートリッジの抵抗、および滴体積を含む。この情報は、プリントカートリッジがプリンタ内に取り付けられる時に、プリンタが読み取って記憶することができる。
【0014】
図3は、プリントカートリッジ12を接続したインクジェットプリンタ10の概略ブロック図を示す。プリンタ10内の制御装置14は、コンピュータまたはマイクロプロセッサ(図示せず)からプリントデータを受け取り、そのデータを処理して、プリンタ制御情報または画像データをプリントヘッドドライバ回路15に提供する。制御電圧電源17が、制御した電圧を電源バス18に供給する。プリンタ10内のメモリリーダ回路19が、制御装置14に接続されて、プリントカートリッジ12からメモリライン20を通して受け取った情報を送信する。プリントヘッドドライバ回路15は、制御装置14によって制御されて、画像データを制御バス24を通してプリントカートリッジ12上のプリントヘッドのダイ88に送る。
【0015】
カートリッジ12は、取り外し可能に交換することができ、制御バス24、電源バス18、およびメモリライン20によって、プリンタ10に電気的に接続されている。コネクタのインターフェース26は、カートリッジ12上のフレキシブル回路テープ80上の対応するパッド86に接触する、プリンタのキャリッジ側のそれぞれのラインについての導電ピンを有している。カートリッジ上のメモリチップ31は、カートリッジの製造中にプログラムされ、かつ、動作中にプリンタに用いられる、プリンタ制御情報を記憶する。フレキシブル回路80は、電極87への接着によって、プリントヘッドのダイ88に接続されている。プリンタ内のアナログデジタル変換器34は、プリントヘッドに接続されて、プリントヘッドの温度を示すデータをプリントヘッドから受け取る。
【0016】
図4は、プリントヘッド22上の、噴射制御回路40および、多くの抵抗器44のうちの例示的な一部を示す。プリントヘッド22は、テープ80内に噴射抵抗器44およびノズル82を有する基板88を含む。噴射制御回路40は、プリントヘッド22の基板88上にあり、薄膜噴射抵抗器44の組42に共通に接続された、電源バス18からの単一のパッド間電圧入力(「Vpp」)46を有する。それぞれの噴射抵抗器44は、対応する噴射スイッチ48に接続されており、噴射スイッチ48は、接地ライン50に接続されていて噴射パルス変調器52の出力54に接続された制御入力を有する。噴射パルス変調器52は、バス60上のプリントデータを受け取り、噴射信号を出力ライン54でそれぞれの選択した噴射スイッチ48に出力する。選択したグループの抵抗器の組42を噴射するには、プリンタはライン46で入力電圧Vppを送り、ライン56でフルの継続時間の噴射パルス58を送信する。この噴射パルスに応答して、噴射パルス変調器52は、噴射パルス58を抵抗器の噴射スイッチ48に送信し、それによって、そういった選択したスイッチが閉じ、抵抗器を接地に接続して、電流が抵抗器44を流れて噴射エネルギーを発生することができるようにする。
【0017】
プリントヘッド装置22は、多数のノズル82を有し、それぞれのノズル82には、噴射抵抗器44が関連している。各抵抗器に個々にアドレスすることはできるが、プリンタ10とプリントカートリッジ12との間のラインの数は限られている、プリントヘッド装置を供給するために、統合ドライブプリントヘッドにおける抵抗器44への相互接続は、多重化されている。プリントドライバ回路は、基本要素のライン46、基本要素の共通部分(commons)50、およびアドレス選択ライン54を含み、インク噴射要素44を制御する。プリントヘッド22は、それぞれが別個に電力を供給され特定の数の抵抗器を含む特定の数の基本要素を有する、いかなる数の多数のサブセクション、例えば四分の一ずつ、に分けて配置してもよい。アドレスライン54と基本要素のライン46とを特定すれば、1つの特定のインク噴射要素44が一意的に識別される。1つの基本要素内の抵抗器の数は、アドレスラインの数と等しい。アドレスラインと基本要素の選択ラインとはいかなる組み合わせにして用いてもよいが、アドレスラインを一巡するのに必要な時間を最小限にするように、アドレスラインの数は最小限にするのが有効である。
【0018】
それぞれのインク噴射要素は、その制御入力アドレス選択を1つの基本要素におけるすべての噴射要素44と共有する、自身の駆動トランジスタ48によって制御される。それぞれのインク噴射要素は、共通ノード基本要素選択によって、他のインク噴射要素44に連結されて(tied)いる。従って、ある特定のインク噴射要素を噴射するには、そのアドレス選択端子において制御電圧を、その基本要素選択端子において電力源を、印加することが必要である。プリンタからのプリント命令に応答して、それぞれの基本要素は、関連する基本要素選択相互接続に電力を供給することによって、選択的に作動される。ヒータインク噴射要素当たり均一のエネルギーを供給するために、基本要素当たり、一度に1つだけ、インク噴射要素が作動される。しかし、いかなる数の基本要素選択を同時にエネーブルにしてもよい。従って、エネーブルにされた基本要素選択はそれぞれ、電力と、エネーブル信号の1つとの両方を、ドライバトランジスタに送出する。他方のエネーブル信号は、一度にそのうちの1つだけがアクティブになるそれぞれのアドレス選択ラインが供給するアドレス信号である。それぞれのアドレス選択ラインは、すべてのスイッチングトランジスタ82に連結されており、相互接続がエネーブルになるとすべてのこのようなスイッチング装置が導通するようになっている。あるインク噴射要素について、基本要素選択相互接続とアドレス選択ラインとの両方が同時にアクティブである場合には、そのヒータインク噴射要素が作動する。アドレス選択ラインは、一度に1つだけエネーブルになる。これによって、基本要素選択とグループ帰線(return lines)とは、一度に多くても1つのインク噴射要素に電流を供給する、ということが保証される。その他の場合には、ヒータインク噴射要素に送出されるエネルギーは、同時に作動しているインク噴射要素の数の関数である。
【0019】
インクジェットのプリントヘッドの制御に関する更なる詳細は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす、「Hybrid Multi−Drop/Multi−Pass Printing System」という名称の1998年1月30日出願の米国特許出願番号第09/016,478号、および「Ink Delivery System for High SpeedPrinting」という名称の1997年10月31日出願の米国特許出願番号第08/962,031号において説明されている。
【0020】
スマート集積ロジックをプリントヘッド上に有するプリントヘッドにおいては、データがプリントヘッドに送信され、プリントヘッドはこのデータを、アドレスおよび基本要素の制御信号に復号する。すべてのアドレスラインについてのデータは、それぞれのアドレスラインについて順次プリントヘッドに送られなければならない。時間領域においては、これは1噴射期間である。物理的位置領域においては、これは1列と呼ばれる。こういったスマート駆動プリントヘッドには、多数の抵抗器があり、それによって、アドレスライン、基本要素のライン、および基本要素の接地について直接接続を有することが困難になっている。従って、スマート駆動プリントヘッドにおいて、それぞれの噴射抵抗器は、専用の接続を有していないかもしれない。専用の接続がなければ、寄生抵抗のために、抵抗器に送出されるエネルギーにばらつきが生じる可能性がある。1組の抵抗器、または1つの基本要素は、プリントカートリッジの電気パッド86と、プリンタのキャリッジ16上の対応するパッドとの間の電気的相互接続を通して電力を受け取る単一の電圧ラインによって、電力を供給される。プリンタ10上の調整電圧72からキャリッジ16への電力は、フレキシブルケーブルまたはリボンケーブルによって供給される。電圧ラインは、フレキシブル電気テープ回路80上の電気接触パッド86から、プリントヘッドのダイ88上の電極87への接合接続まで続いている。プリントヘッドのダイ88は、噴射抵抗器44および駆動トランジスタ48等のその他の制御エレクトロニクスを含んでいる。電圧ラインは、プリントヘッドのダイ88からプリントヘッドのダイ88上の電極87への接合接続を経由して、フレキシブル電気テープ回路80を通って、プリントカートリッジの電気パッドまで続いている。電圧ラインは、プリントカートリッジの電気パッド86と、プリンタのキャリッジ16上の対応するパッドとの間のキャリッジの電気的相互接続まで続いている。電圧ラインは、キャリッジ16から電圧調整器72まで、フレキシブルケーブルまたはリボンケーブルを経由して続いている。
【0021】
それぞれの通過において媒体上に配置される特定のドットパターン、および、こういった異なるドットパターンが結局最終の完成画像ということになる方法は、「プリントモード」として知られている。プリントモードという概念は、プリントヘッドのそれぞれの通過において画像のそれぞれのセクションに必要なインク全体のうちの何分の1かのみをつけて、それぞれの通過において白紙のままであるいかなる領域も、1つまたはそれよりも多いその後の通過によって充填されるようにしている、有用かつ周知の技術である。通過が1回のモードの動作は、高スループット用に用いられる。通過が1回のモードは、所与のドット行上で噴射するすべてのドットが、プリントヘッドの1スウォースにおいて媒体上に配置され、次にそのプリント媒体が次のスウォースについての位置に前進する、というものである。
【0022】
通過が多数回のプリントモードは、スウォース当たり利用できるドットのうちの所与の行について利用できるドットのうちの何分の1かがプリントヘッドのそれぞれの通過でプリントされ、所与の行についてのプリントを完了するのに多数の通過が必要なようになっている、プリントパターンである。通過が多数回のプリントモードにおいては、それぞれの通過では一般的に、通過数の逆数と略等しい、プリントするすべてのインク滴の何分の1かがプリントされる。従って、噴射される抵抗器の数もまた、通過数の逆数と略等しい、何分の1かである。
【0023】
線、テキスト、およびグラフィックは通常、均一な密度でプリントされる。そのため、通過が1回または2回のプリントモードにおいて、ブラックおよび純色については高い噴射頻度が必要である。噴射頻度が高いと、噴射される滴の滴速度、滴体積、滴形状、および滴飛翔経路に悪影響がある。高頻度および均一密度のテキストおよび線でプリントした出力は、高頻度で噴射したことによって噴射状態が最適ではないために、欠陥を示す。従って、テキストおよびグラフィックの劣化、そして、高頻度の噴射に関連する縁の粗さ、の問題に対する解決法が必要とされている。本発明は、ペンのアーキテクチャ(滴重量、再充填速度、方向性)、プリント解像度、またはプリントスループット、のいかなる面も変更する必要なく、縁の粗さおよびテキストプリント品質を劇的に改良する。この画像処理の変更は、いかなるインクジェットプリントシステムとも互換性がある。
【0024】
インクジェットプリンタは通常、単一の滴を噴射することによって、または多くの滴を連続して噴射することによって、動作する。噴射するそれぞれの滴は、有効噴射頻度が1/(直前の滴の噴射からの時間)に等しい。従って、連続する一連の滴のうちの1番目の滴の有効噴射頻度は低い。このような滴は通常、飛翔経路が良好であり形状も良好である。一連の滴のうちの残りのすべての滴の有効噴射頻度は、これよりも高い。このような滴は通常、飛翔経路が不良であり形状も不良である。これによって、既にプリントされているものの前縁および後縁102、104の外観が、わずかにぼんやりし、不揃いになり、あるいは汚くなる。この状態は噴射が中断されるまで続き、システムは安定する時間を有する。このプロセスが繰り返される。
【0025】
本発明は、縁および領域の充填を識別する画像処理を作り出すことから成っている。従って、プリンタのファームウェアが、プリントする画像を分析して、縁および領域の充填を識別する。このような分析では、縁の最適の幅や高さを上回る画素の列や行をグループ分けするための、画像全体またはその各部分を走査することが必要である。原理上、この画像要素を識別する、または感知するステップを行って、画像のいかなる部分のプリントが開始される前にも画像全体について完了してもよく、ある画像要素のいかなる部分のプリントが開始される前にもその要素について行ってもよい。更に他の可能性は、この分析を進行的なベースで行って、プリントが進行する間に感知が続くようにする、というものである。このタイプの画像処理は、当業者には周知である。
【0026】
図5を参照すると、本明細書において用いる前縁102および後縁104という用語は、プリンタのキャリッジ16の走査方向110によって決定される。前縁102は、マークのついた領域100の最初の縁を示し、後縁104は、マークのついた領域100の最後の縁を指す。こういった領域は、大変重要である。こういった領域は、プリントカートリッジ12の最大噴射頻度でプリントされることが多く、高噴射頻度に関連する効果に特に影響されやすいからである。
【0027】
単一のプリントスウォースは通常、マークのついた領域100とマークのついていない領域の両方を含む。一連の滴が噴射されると、それによってマークのついた領域100が作り出される。このようなマークのついた領域100は、前縁102と後縁104とを有する。これは、前縁を規定する滴106および後縁を規定する滴108によって作り出される。テキスト、線、およびグラフィックのプリント品質、そして特にそういったものの前縁102および後縁104の品質は、前縁を規定する滴(1)106と後縁を規定する滴(n)108の両方、およびそれらの近傍の滴、例えば滴(2)および(n−1)、によって影響を受ける可能性がある。
【0028】
本発明は、縁を規定する滴106、108の近傍の滴を除去することによって、プリント品質を改良する。例として、図6を参照して、位置2およびn−1に噴射する滴の除去を考える。このようにする結果として、2つの理由からプリント品質が有利になる。第1に、後縁を規定する滴(n)108が低頻度で噴射される。この場合、本発明の利点なしでのプリント頻度の半分である。このように噴射数波数を低くすると、その結果、滴の飛翔経路が良好になり、滴の形状が良好になる。これによって、後縁104のプリント品質が改良される。第2の利点は、すべての高頻度の噴射の配置から生じる。すなわち、すべての高頻度の噴射が、異常が見えないマークのついた領域100の内部に更に動かされる。これによって、前縁102と後縁104の両方の品質が改良される。
【0029】
図7Aを参照すると、前縁102において、本発明がなければ、噴射される2番目の滴は、高頻度で位置2に噴射される。この飛翔経路は不良であり、滴の形状も不良である。この滴は、マークのついた領域100の前縁102の非常に近傍に配置されているので、前縁102のプリント品質に与えるその影響を見ることができる。図7Bを参照すると、本発明に従って、噴射される2番目の滴は、位置3にあり、図7Aの1/2の頻度で噴射されるので、滴の飛翔経路および滴の形状が良好である。位置4に噴射される、噴射される3番目の滴のみが、高頻度で噴射される最初の滴となる。これは、マークのついた領域100の内部に遠く離れて配置されているので、前縁102のプリント品質に与える影響は最小限である。
【0030】
図8Aを参照すると、後縁104において、本発明がなければ、噴射される最後の隣の滴は、高頻度で位置n−1に噴射される。従って、この飛翔経路は不良であり、滴の形状も不良である。この滴は、マークのついた領域100の後縁104の非常に近傍に配置されているので、後縁104のプリント品質に与えるその影響を見ることができる。図8Bを参照すると、本発明に従って、噴射される最後の隣の滴は、位置n−2にある。この滴は、高頻度で噴射されるが、マークのついた領域100の内部に遠く離れて配置されているので、後縁104の品質に与える影響は最小限である。
【0031】
図9Aを参照すると、本発明の他の実施形態において、位置2、3、n−2、およびn−1からの滴は、除去される。除去される滴数は、高頻度で噴射する時のプリント品質の欠陥の深刻さと、すべての位置内にはプリントしないことから来る縁の暗さがなくなることとを、天秤にかけて、決定する。本実施形態においては、位置「n」に噴射する滴の噴射頻度は、本発明がない場合の噴射の1/3に過ぎない。高頻度噴射の位置は、マークのついた領域100の更に内部まで進んで、位置5およびn−3になる。
【0032】
図9Bを参照すると、本発明の他の実施形態において、位置2、4、n−3、およびn−1からの滴は、除去される。これによって、縁の暗さは良好に保ちながら、高噴射頻度の滴を、マークのついた領域100の更に内部まで動かして、位置6およびn−4とする。
【0033】
もちろん、本発明は、上述したもの以外の多くの他の組み合わせが可能である、ということが理解されよう。上述の実施形態は、いくつかの可能性を例示するよう単に意図するものである。
【0034】
図10Aは、本発明により、1秒当たり30インチのキャリッジ速度で、通過が1回のプリントモードにおいてプリントした、10ポイントのタイムズ・ニュー・ローマンのフォントでの、ブラックのテキストの拡大画像を示す。図10Aは、最後の滴を36kHzで噴射する標準のテキストプリントを示し、本発明に従って後縁104の直前の滴が除去されるように修正されたテキストのプリントを示す。図10Aにおいて、2つの滴が除去されて、縁における最後の滴の有効噴射頻度が12kHzになっている。本発明に従ってプリントすると、後縁104の粗さがはるかに少ない。
【0035】
図10Bは、同じ技術をカラープリントテキストに適用したものを示す。この場合、テキストは4ポイントのタイムズ・ニュー・ローマンのフォントである。図10Bにおいて示すように、後縁104において単一の滴をスキップして18kHzの有効噴射頻度の滴を作り出すことによって、36kHzの滴の後縁104よりも優れた結果がもたらされる。
【0036】
同じ方法で前縁12を減らすことによって、同様の利点を達成することができる。図11は、10ポイントのタイムズ・ニュー・ローマンのフォントのテキストでの前縁102を減らす利点を示す。図11Aにおいて、前縁102をフルに飽和させて(saturated)テキストをプリントする。こういった文字は、前縁102が不良であり、「ファング(牙)(fangs)」が特徴になっている。こういったファングは、36kHzで噴射される2番目の滴によって作り出される。図11Bは、前縁102の後の2番目の滴を除去することによって、前縁102を減らした、図11Aと同じ文字を示す。このようにすることによって、2番目の滴が18kHzで噴射される。その結果、画素当たり滴が2つの状態で、1番目の36kHzの滴は、前縁102からフルで1ドット列だけシフトする。この滴でもなおファングは作り出されるが、そのファングは、白紙の空間ではなくカラーで充填した内部につくので、欠陥を作り出すことはない。必要な最小数のスキップする滴の噴射は、説明した利点と、滴の除去の結果、飽和がなくなることとを、天秤にかけて選択される。
【0037】
具体的なおよび他にとり得る実施形態に関して上で説明したが、本発明はそれらに限定されるように意図するものではない。本発明の上述の技術は、いかなる噴射頻度、インチ当たりのドット数のプリント解像度、画素当たりの滴数、またはプリンタのキャリッジの速度にも、適用することができる。
【0038】
本発明の原理、好適な実施形態、および実施例を上で説明した。しかし本発明は、説明した特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。従って、上述の実施形態は、限定的ではなく例示的であるとみなされるべきであり、当業者であれば、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、こういった実施形態を変形することができる、ということが理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の方法によれば、線、テキスト、およびグラフィック等の均一な密度でのプリントが要求され、噴射頻度が高い場合に、テキストおよびグラフィックの劣化が少なく、そして、高頻度の噴射に関連する縁の粗さの問題が生じない、高品位のプリントが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
10 インクジェットのスウォースプリンタ
22 プリントヘッド
102 前縁
104 後縁
106 前縁を規定する滴
108 後縁を規定する滴
110 走査方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱インクジェットプリンタに関し、より詳細には前縁および後縁とテキストのプリント品質を改良するプリントモードに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、グラフィックスのプロッタ、ファクシミリ、および複写機等の熱インクジェットハードコピー装置は、広く受けいれられている。こういったハードコピー装置は、W.J.LloydおよびH.T.Taubによって、Output Hardcopy Devices(Ed.R.C.Durbeck and S.Sherr,San Diego:Academic Press,1988)(非特許文献1)の第13章「Ink Jet Devices」において説明されている。本技術の基本原理については、その全体を引用することによって本明細書の一部をなす、Hewlett−Packard Journalのいくつかの版における様々な論文[Vol.36,No.5(May 1985)、Vol.39,No.4(August 1988)、Vol.39,No.5(October 1988)、Vol.43,No.4(August 1992)、Vol.43,No.6(December 1992)、およびVol.45,No.1(February 1994)]において更に開示されている。インクジェットハードコピー装置は、高品質のプリントを行い、コンパクトかつポータブルであり、インクのみが紙に当たるのでプリントが高速かつ静かである。
【0003】
インクジェットプリンタは、そのプリント媒体について規定したアレイの特定の位置に個々のドットからなるパターンをプリントすることによって、プリント画像を形成する。好都合なことに、こういった位置は、1つの直線アレイ内の小さな各ドットとして視覚化される。こういった位置は、「ドット位置」、「ドット場所」、または「画素」と呼ばれることがある。従って、プリント動作は、ドット位置のパターンをインクのドットで満たすことであると考えることができる。
【0004】
インクジェットハードコピー装置は、非常に小さなインク滴をプリント媒体上に噴射することによってドットをプリントし、通常、それぞれがインクを噴射するノズルを有する1つまたはそれよりも多いプリントヘッドを支持する、可動キャリッジを含む。可動キャリッジはプリント媒体の表面の上方を横切り、ノズルは、マイクロコンピュータその他制御装置の命令に従って適切な時点でインク滴を噴射するように制御される。インク滴を施すタイミングは、プリントしている画像の画素パターンに対応するように意図されている。
【0005】
典型的なインクジェットのプリントヘッド(すなわち、シリコン基板、基板上に形成した構造、および基板への接続)は、液体のインク(すなわち、溶剤内に分散した、溶解した着色剤または顔料)を用いる。このプリントヘッドは、プリントヘッド基板に取り付けた、精密に形成したオリフィスまたはノズルのアレイを有する。プリントヘッド基板は、インク槽から液体のインクを受け取るインク噴射チャンバのアレイを組み込んでいる。それぞれのチャンバは、ノズルに対向して配置されており、インクがチャンバとノズルとの間にたまることができ、それぞれのチャンバは、チャンバ内に配置された噴射抵抗器を有する。インク滴の噴射は、通常マイクロプロセッサの制御の下にあり、マイクロプロセッサの信号は、導電トレースによって抵抗器要素に搬送される。電気プリントパルスがインクジェット噴射チャンバの抵抗器を加熱すると、その隣にあるごく一部のインクが気化し、プリントヘッドからインク滴を噴射する。適切に配置されたノズルは、ドットマトリクスパターンを形成する。それぞれのノズルの動作を適切に配列することによって、プリントヘッドが紙を通り過ぎて動くにつれて文字または画像が紙上にプリントされる。
【0006】
インクジェットのプリントヘッドにおいて、インクは、プリントヘッドと一体のインク槽または「オフ・アクシス」のインク槽から供給される。「オフ・アクシス」のインク槽は、プリントヘッドと槽とを接続する管を通して、インクをプリントヘッドに供給する。インクは次に、基板の底中央に形成した細長い孔を通じて、または基板の外縁を回って、様々な気化チャンバに供給される。前者を「センター供給(center feed)」、後者を「縁供給(edge feed)」と呼ぶ。
【0007】
インク噴射用のノズルを含むインクカートリッジは、その上にプリントを行う媒体の幅を横切って、繰り返し動く。この、媒体を横切る動きが指定数だけインクリメントされる度に、制御マイクロプロセッサのプログラム出力に従って、それぞれの抵抗器がインクを噴射するかインクを噴射しないかのどちらかになる。媒体を横切る動きが完了する度に、1列に配置したインクカートリッジのノズル数に、ノズルの中心間距離を掛け合わせたものと略等しい高さの、スウォース(swath)をプリントすることができる。このような動きすなわち1回分の印刷(swath)が完了する度に、媒体が1回分のプリントの高さまたはその何分の1かだけ垂直な方向に前進し、インクカートリッジが次の1回分のプリントを開始する。信号を適切に選択しタイミングを取ることによって、所望のプリントが媒体上に得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Output Hardcopy Devices(Ed.R.C.Durbeck and S.Sherr,San Diego:Academic Press,1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
線、テキスト、およびグラフィックは通常、均一な密度でプリントされる。その結果、通過が1回または2回のプリントモードにおいて、ブラックおよび純色については噴射頻度が高くなる。噴射頻度が高いと、噴射される滴の滴速度、滴体積、滴形状、および滴飛翔経路に悪影響がある。高頻度および均一密度のテキストおよび線でプリントした出力は、噴射状態が最適ではないために、欠陥を示す。従って、テキストおよびグラフィックの劣化、そしてより一般的には、高頻度の噴射に関連する縁の粗さ、の問題に対する解決法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、プリント媒体の上方をプリントヘッドが走査して通過する度に、多数のインク滴をプリントヘッドから画像のそれぞれの列にデポジットすることによって、インクジェットのスウォースプリンタ(inkjet swath printer)でインクリメントプリントを行う方法を提供する。該方法は、画像を得るステップと、画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における後縁を規定するかを判定するステップと、それぞれの行における後縁を規定する滴より前のインク滴を少なくとも1つ除去するステップと、媒体の上方で走査方向にプリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を媒体上にデポジットするステップとを含む。他の実施形態は、プリント媒体の上方をプリントヘッドが走査して通過する度に、多数のインク滴をプリントヘッドから画像のそれぞれの列にデポジットすることによって、インクジェットのスウォースプリンタでインクリメントプリントを行う方法を提供する。該方法は、画像を得るステップと、画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における前縁を規定するかを判定するステップと、それぞれの行における前縁を規定する滴より後のインク滴を少なくとも1つ除去するステップと、媒体の上方で走査方向にプリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を媒体上にデポジットするステップとを含む。
本発明の他の実施形態は、プリント媒体の上方で走査するインクジェットプリントシステムでプリントする方法である。該方法は、インク供給容器(supply ofink)と、プリント媒体上にインクを噴射する複数のインク噴射チャンバとを有する、プリントヘッドを設けるステップであって、インク噴射チャンバはそれぞれ、インクを対応する行上にデポジットし、インク噴射チャンバは基本噴射頻度と最大噴射頻度との間の範囲の頻度でインク滴を噴射するステップと、画像を得るステップと、画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における後縁を規定するかを判定するステップと、最大噴射頻度よりも低い噴射頻度でそれぞれの行の後縁を規定するインク滴を噴射するステップと、媒体の上方で走査方向にプリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を媒体上にデポジットするステップとを含む。本発明の他の実施形態は、プリント媒体の上方で走査するインクジェットプリントシステムでプリントする方法である。該方法は、インク供給容器と、プリント媒体上にインクを噴射する複数のインク噴射チャンバとを有する、プリントヘッドを設けるステップであって、インク噴射チャンバはそれぞれ、インクを対応する行上にデポジットし、インク噴射チャンバは基本噴射頻度と最大噴射頻度との間の範囲の頻度でインク滴を噴射するステップと、画像を得るステップと、画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における前縁を規定するかを判定するステップと、最大噴射頻度よりも低い噴射頻度でそれぞれの行の前縁を規定するインク滴を噴射するステップと、媒体の上方で走査方向にプリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を媒体上にデポジットするステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を組み込んだインクジェットプリンタの1実施形態の斜視図である。
【図2】単一のプリントカートリッジの上から見た斜視図である。
【図3】本発明の好適な実施形態による熱インクジェットプリント装置の概略ブロック図である。
【図4】図2の実施形態のプリントヘッド回路の詳細図である。
【図5】前縁および後縁を含むマークのついた領域と、前縁および後縁を規定する滴との図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の図である。
【図9】本発明の第4の実施形態の図である。
【図10】ブラックおよびカラーのテキストを、後縁のプリントについて本発明を用いてプリントしたものと本発明を用いずにプリントしたものとを示す図である。
【図11】カラーのテキストを、前縁のプリントについて本発明を用いてプリントしたものと本発明を用いずにプリントしたものとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明を利用するのに適したインクジェットプリンタ10の一実施形態の、カバーを取り外した状態の斜視図である。一般的に、プリンタ10は、新しい紙を保持するトレイ11Aを含む。プリント動作が開始すると、紙のシートが、シートフィーダを用いて入力トレイ11Aからプリンタ10内に送られ、次に、方向をU字型に変えられ、反対方向に出力トレイ11Bに向かって動く。シートはプリントゾーン13で停止し、1つまたはそれよりも多いプリントカートリッジ12を支持する走査キャリッジ16がシート上のプリントゾーンを横切って通過して、その上にインクのスウォースをプリントする。プリントは、キャリッジがどちらの方向に通過している間に行ってもよい。これを双方向プリントと呼ぶ。1回または多数回通過した後、従来技術のステッパモータおよび送りローラを用いて、使用しているプリントモードをベースにした量だけ、シートをインクリメントにシフトして、プリントゾーン13内の次の位置にし、キャリッジ16が再びシートを横切って通過して、インクの次のスウォースをプリントする。このシート上へのプリントが完了すると、このシートはトレイ13上の位置に送られ、その位置に保持されてインクが確実に乾くようにし、その後開放される。
キャリッジ16の走査機構は従来技術のものであってもよく、一般的に、それに沿ってキャリッジ16が摺動する摺動ロッドと、電気信号をプリンタの制御装置からキャリッジ16に、そしてキャリッジ16上の電極に送る、フレキシブルケーブル(図1には示さず)とを含む。キャリッジ16上の電極は、プリントカートリッジ12をプリンタ内に取り付けると、プリントカートリッジ12上の電気接点86とかみ合う。従来技術の駆動ベルトと滑車との装置を用いるキャリッジ16に接続されたモータ(図示せず)を用いて、キャリッジ16をプリントゾーン14を横切って運搬してもよい。
【0013】
図2は、プリントヘッド装置22を取り付けたプリントカートリッジ12を示す。プリントヘッド装置22は、ノズル82と電気接触パッド86とを含むフレキシブルテープ80を含む。接触パッド86は、キャリッジ16上の電極(図示せず)と整列し電気的に接触している。プリントカートリッジ12はまた、製造ライン上でまたはその後に決定される較正情報を記憶するメモリ装置も含む。情報の値としては通常、動作電圧、動作エネルギー、ターンオン・エネルギー、通常の寄生抵抗を含むプリントカートリッジの抵抗、および滴体積を含む。この情報は、プリントカートリッジがプリンタ内に取り付けられる時に、プリンタが読み取って記憶することができる。
【0014】
図3は、プリントカートリッジ12を接続したインクジェットプリンタ10の概略ブロック図を示す。プリンタ10内の制御装置14は、コンピュータまたはマイクロプロセッサ(図示せず)からプリントデータを受け取り、そのデータを処理して、プリンタ制御情報または画像データをプリントヘッドドライバ回路15に提供する。制御電圧電源17が、制御した電圧を電源バス18に供給する。プリンタ10内のメモリリーダ回路19が、制御装置14に接続されて、プリントカートリッジ12からメモリライン20を通して受け取った情報を送信する。プリントヘッドドライバ回路15は、制御装置14によって制御されて、画像データを制御バス24を通してプリントカートリッジ12上のプリントヘッドのダイ88に送る。
【0015】
カートリッジ12は、取り外し可能に交換することができ、制御バス24、電源バス18、およびメモリライン20によって、プリンタ10に電気的に接続されている。コネクタのインターフェース26は、カートリッジ12上のフレキシブル回路テープ80上の対応するパッド86に接触する、プリンタのキャリッジ側のそれぞれのラインについての導電ピンを有している。カートリッジ上のメモリチップ31は、カートリッジの製造中にプログラムされ、かつ、動作中にプリンタに用いられる、プリンタ制御情報を記憶する。フレキシブル回路80は、電極87への接着によって、プリントヘッドのダイ88に接続されている。プリンタ内のアナログデジタル変換器34は、プリントヘッドに接続されて、プリントヘッドの温度を示すデータをプリントヘッドから受け取る。
【0016】
図4は、プリントヘッド22上の、噴射制御回路40および、多くの抵抗器44のうちの例示的な一部を示す。プリントヘッド22は、テープ80内に噴射抵抗器44およびノズル82を有する基板88を含む。噴射制御回路40は、プリントヘッド22の基板88上にあり、薄膜噴射抵抗器44の組42に共通に接続された、電源バス18からの単一のパッド間電圧入力(「Vpp」)46を有する。それぞれの噴射抵抗器44は、対応する噴射スイッチ48に接続されており、噴射スイッチ48は、接地ライン50に接続されていて噴射パルス変調器52の出力54に接続された制御入力を有する。噴射パルス変調器52は、バス60上のプリントデータを受け取り、噴射信号を出力ライン54でそれぞれの選択した噴射スイッチ48に出力する。選択したグループの抵抗器の組42を噴射するには、プリンタはライン46で入力電圧Vppを送り、ライン56でフルの継続時間の噴射パルス58を送信する。この噴射パルスに応答して、噴射パルス変調器52は、噴射パルス58を抵抗器の噴射スイッチ48に送信し、それによって、そういった選択したスイッチが閉じ、抵抗器を接地に接続して、電流が抵抗器44を流れて噴射エネルギーを発生することができるようにする。
【0017】
プリントヘッド装置22は、多数のノズル82を有し、それぞれのノズル82には、噴射抵抗器44が関連している。各抵抗器に個々にアドレスすることはできるが、プリンタ10とプリントカートリッジ12との間のラインの数は限られている、プリントヘッド装置を供給するために、統合ドライブプリントヘッドにおける抵抗器44への相互接続は、多重化されている。プリントドライバ回路は、基本要素のライン46、基本要素の共通部分(commons)50、およびアドレス選択ライン54を含み、インク噴射要素44を制御する。プリントヘッド22は、それぞれが別個に電力を供給され特定の数の抵抗器を含む特定の数の基本要素を有する、いかなる数の多数のサブセクション、例えば四分の一ずつ、に分けて配置してもよい。アドレスライン54と基本要素のライン46とを特定すれば、1つの特定のインク噴射要素44が一意的に識別される。1つの基本要素内の抵抗器の数は、アドレスラインの数と等しい。アドレスラインと基本要素の選択ラインとはいかなる組み合わせにして用いてもよいが、アドレスラインを一巡するのに必要な時間を最小限にするように、アドレスラインの数は最小限にするのが有効である。
【0018】
それぞれのインク噴射要素は、その制御入力アドレス選択を1つの基本要素におけるすべての噴射要素44と共有する、自身の駆動トランジスタ48によって制御される。それぞれのインク噴射要素は、共通ノード基本要素選択によって、他のインク噴射要素44に連結されて(tied)いる。従って、ある特定のインク噴射要素を噴射するには、そのアドレス選択端子において制御電圧を、その基本要素選択端子において電力源を、印加することが必要である。プリンタからのプリント命令に応答して、それぞれの基本要素は、関連する基本要素選択相互接続に電力を供給することによって、選択的に作動される。ヒータインク噴射要素当たり均一のエネルギーを供給するために、基本要素当たり、一度に1つだけ、インク噴射要素が作動される。しかし、いかなる数の基本要素選択を同時にエネーブルにしてもよい。従って、エネーブルにされた基本要素選択はそれぞれ、電力と、エネーブル信号の1つとの両方を、ドライバトランジスタに送出する。他方のエネーブル信号は、一度にそのうちの1つだけがアクティブになるそれぞれのアドレス選択ラインが供給するアドレス信号である。それぞれのアドレス選択ラインは、すべてのスイッチングトランジスタ82に連結されており、相互接続がエネーブルになるとすべてのこのようなスイッチング装置が導通するようになっている。あるインク噴射要素について、基本要素選択相互接続とアドレス選択ラインとの両方が同時にアクティブである場合には、そのヒータインク噴射要素が作動する。アドレス選択ラインは、一度に1つだけエネーブルになる。これによって、基本要素選択とグループ帰線(return lines)とは、一度に多くても1つのインク噴射要素に電流を供給する、ということが保証される。その他の場合には、ヒータインク噴射要素に送出されるエネルギーは、同時に作動しているインク噴射要素の数の関数である。
【0019】
インクジェットのプリントヘッドの制御に関する更なる詳細は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす、「Hybrid Multi−Drop/Multi−Pass Printing System」という名称の1998年1月30日出願の米国特許出願番号第09/016,478号、および「Ink Delivery System for High SpeedPrinting」という名称の1997年10月31日出願の米国特許出願番号第08/962,031号において説明されている。
【0020】
スマート集積ロジックをプリントヘッド上に有するプリントヘッドにおいては、データがプリントヘッドに送信され、プリントヘッドはこのデータを、アドレスおよび基本要素の制御信号に復号する。すべてのアドレスラインについてのデータは、それぞれのアドレスラインについて順次プリントヘッドに送られなければならない。時間領域においては、これは1噴射期間である。物理的位置領域においては、これは1列と呼ばれる。こういったスマート駆動プリントヘッドには、多数の抵抗器があり、それによって、アドレスライン、基本要素のライン、および基本要素の接地について直接接続を有することが困難になっている。従って、スマート駆動プリントヘッドにおいて、それぞれの噴射抵抗器は、専用の接続を有していないかもしれない。専用の接続がなければ、寄生抵抗のために、抵抗器に送出されるエネルギーにばらつきが生じる可能性がある。1組の抵抗器、または1つの基本要素は、プリントカートリッジの電気パッド86と、プリンタのキャリッジ16上の対応するパッドとの間の電気的相互接続を通して電力を受け取る単一の電圧ラインによって、電力を供給される。プリンタ10上の調整電圧72からキャリッジ16への電力は、フレキシブルケーブルまたはリボンケーブルによって供給される。電圧ラインは、フレキシブル電気テープ回路80上の電気接触パッド86から、プリントヘッドのダイ88上の電極87への接合接続まで続いている。プリントヘッドのダイ88は、噴射抵抗器44および駆動トランジスタ48等のその他の制御エレクトロニクスを含んでいる。電圧ラインは、プリントヘッドのダイ88からプリントヘッドのダイ88上の電極87への接合接続を経由して、フレキシブル電気テープ回路80を通って、プリントカートリッジの電気パッドまで続いている。電圧ラインは、プリントカートリッジの電気パッド86と、プリンタのキャリッジ16上の対応するパッドとの間のキャリッジの電気的相互接続まで続いている。電圧ラインは、キャリッジ16から電圧調整器72まで、フレキシブルケーブルまたはリボンケーブルを経由して続いている。
【0021】
それぞれの通過において媒体上に配置される特定のドットパターン、および、こういった異なるドットパターンが結局最終の完成画像ということになる方法は、「プリントモード」として知られている。プリントモードという概念は、プリントヘッドのそれぞれの通過において画像のそれぞれのセクションに必要なインク全体のうちの何分の1かのみをつけて、それぞれの通過において白紙のままであるいかなる領域も、1つまたはそれよりも多いその後の通過によって充填されるようにしている、有用かつ周知の技術である。通過が1回のモードの動作は、高スループット用に用いられる。通過が1回のモードは、所与のドット行上で噴射するすべてのドットが、プリントヘッドの1スウォースにおいて媒体上に配置され、次にそのプリント媒体が次のスウォースについての位置に前進する、というものである。
【0022】
通過が多数回のプリントモードは、スウォース当たり利用できるドットのうちの所与の行について利用できるドットのうちの何分の1かがプリントヘッドのそれぞれの通過でプリントされ、所与の行についてのプリントを完了するのに多数の通過が必要なようになっている、プリントパターンである。通過が多数回のプリントモードにおいては、それぞれの通過では一般的に、通過数の逆数と略等しい、プリントするすべてのインク滴の何分の1かがプリントされる。従って、噴射される抵抗器の数もまた、通過数の逆数と略等しい、何分の1かである。
【0023】
線、テキスト、およびグラフィックは通常、均一な密度でプリントされる。そのため、通過が1回または2回のプリントモードにおいて、ブラックおよび純色については高い噴射頻度が必要である。噴射頻度が高いと、噴射される滴の滴速度、滴体積、滴形状、および滴飛翔経路に悪影響がある。高頻度および均一密度のテキストおよび線でプリントした出力は、高頻度で噴射したことによって噴射状態が最適ではないために、欠陥を示す。従って、テキストおよびグラフィックの劣化、そして、高頻度の噴射に関連する縁の粗さ、の問題に対する解決法が必要とされている。本発明は、ペンのアーキテクチャ(滴重量、再充填速度、方向性)、プリント解像度、またはプリントスループット、のいかなる面も変更する必要なく、縁の粗さおよびテキストプリント品質を劇的に改良する。この画像処理の変更は、いかなるインクジェットプリントシステムとも互換性がある。
【0024】
インクジェットプリンタは通常、単一の滴を噴射することによって、または多くの滴を連続して噴射することによって、動作する。噴射するそれぞれの滴は、有効噴射頻度が1/(直前の滴の噴射からの時間)に等しい。従って、連続する一連の滴のうちの1番目の滴の有効噴射頻度は低い。このような滴は通常、飛翔経路が良好であり形状も良好である。一連の滴のうちの残りのすべての滴の有効噴射頻度は、これよりも高い。このような滴は通常、飛翔経路が不良であり形状も不良である。これによって、既にプリントされているものの前縁および後縁102、104の外観が、わずかにぼんやりし、不揃いになり、あるいは汚くなる。この状態は噴射が中断されるまで続き、システムは安定する時間を有する。このプロセスが繰り返される。
【0025】
本発明は、縁および領域の充填を識別する画像処理を作り出すことから成っている。従って、プリンタのファームウェアが、プリントする画像を分析して、縁および領域の充填を識別する。このような分析では、縁の最適の幅や高さを上回る画素の列や行をグループ分けするための、画像全体またはその各部分を走査することが必要である。原理上、この画像要素を識別する、または感知するステップを行って、画像のいかなる部分のプリントが開始される前にも画像全体について完了してもよく、ある画像要素のいかなる部分のプリントが開始される前にもその要素について行ってもよい。更に他の可能性は、この分析を進行的なベースで行って、プリントが進行する間に感知が続くようにする、というものである。このタイプの画像処理は、当業者には周知である。
【0026】
図5を参照すると、本明細書において用いる前縁102および後縁104という用語は、プリンタのキャリッジ16の走査方向110によって決定される。前縁102は、マークのついた領域100の最初の縁を示し、後縁104は、マークのついた領域100の最後の縁を指す。こういった領域は、大変重要である。こういった領域は、プリントカートリッジ12の最大噴射頻度でプリントされることが多く、高噴射頻度に関連する効果に特に影響されやすいからである。
【0027】
単一のプリントスウォースは通常、マークのついた領域100とマークのついていない領域の両方を含む。一連の滴が噴射されると、それによってマークのついた領域100が作り出される。このようなマークのついた領域100は、前縁102と後縁104とを有する。これは、前縁を規定する滴106および後縁を規定する滴108によって作り出される。テキスト、線、およびグラフィックのプリント品質、そして特にそういったものの前縁102および後縁104の品質は、前縁を規定する滴(1)106と後縁を規定する滴(n)108の両方、およびそれらの近傍の滴、例えば滴(2)および(n−1)、によって影響を受ける可能性がある。
【0028】
本発明は、縁を規定する滴106、108の近傍の滴を除去することによって、プリント品質を改良する。例として、図6を参照して、位置2およびn−1に噴射する滴の除去を考える。このようにする結果として、2つの理由からプリント品質が有利になる。第1に、後縁を規定する滴(n)108が低頻度で噴射される。この場合、本発明の利点なしでのプリント頻度の半分である。このように噴射数波数を低くすると、その結果、滴の飛翔経路が良好になり、滴の形状が良好になる。これによって、後縁104のプリント品質が改良される。第2の利点は、すべての高頻度の噴射の配置から生じる。すなわち、すべての高頻度の噴射が、異常が見えないマークのついた領域100の内部に更に動かされる。これによって、前縁102と後縁104の両方の品質が改良される。
【0029】
図7Aを参照すると、前縁102において、本発明がなければ、噴射される2番目の滴は、高頻度で位置2に噴射される。この飛翔経路は不良であり、滴の形状も不良である。この滴は、マークのついた領域100の前縁102の非常に近傍に配置されているので、前縁102のプリント品質に与えるその影響を見ることができる。図7Bを参照すると、本発明に従って、噴射される2番目の滴は、位置3にあり、図7Aの1/2の頻度で噴射されるので、滴の飛翔経路および滴の形状が良好である。位置4に噴射される、噴射される3番目の滴のみが、高頻度で噴射される最初の滴となる。これは、マークのついた領域100の内部に遠く離れて配置されているので、前縁102のプリント品質に与える影響は最小限である。
【0030】
図8Aを参照すると、後縁104において、本発明がなければ、噴射される最後の隣の滴は、高頻度で位置n−1に噴射される。従って、この飛翔経路は不良であり、滴の形状も不良である。この滴は、マークのついた領域100の後縁104の非常に近傍に配置されているので、後縁104のプリント品質に与えるその影響を見ることができる。図8Bを参照すると、本発明に従って、噴射される最後の隣の滴は、位置n−2にある。この滴は、高頻度で噴射されるが、マークのついた領域100の内部に遠く離れて配置されているので、後縁104の品質に与える影響は最小限である。
【0031】
図9Aを参照すると、本発明の他の実施形態において、位置2、3、n−2、およびn−1からの滴は、除去される。除去される滴数は、高頻度で噴射する時のプリント品質の欠陥の深刻さと、すべての位置内にはプリントしないことから来る縁の暗さがなくなることとを、天秤にかけて、決定する。本実施形態においては、位置「n」に噴射する滴の噴射頻度は、本発明がない場合の噴射の1/3に過ぎない。高頻度噴射の位置は、マークのついた領域100の更に内部まで進んで、位置5およびn−3になる。
【0032】
図9Bを参照すると、本発明の他の実施形態において、位置2、4、n−3、およびn−1からの滴は、除去される。これによって、縁の暗さは良好に保ちながら、高噴射頻度の滴を、マークのついた領域100の更に内部まで動かして、位置6およびn−4とする。
【0033】
もちろん、本発明は、上述したもの以外の多くの他の組み合わせが可能である、ということが理解されよう。上述の実施形態は、いくつかの可能性を例示するよう単に意図するものである。
【0034】
図10Aは、本発明により、1秒当たり30インチのキャリッジ速度で、通過が1回のプリントモードにおいてプリントした、10ポイントのタイムズ・ニュー・ローマンのフォントでの、ブラックのテキストの拡大画像を示す。図10Aは、最後の滴を36kHzで噴射する標準のテキストプリントを示し、本発明に従って後縁104の直前の滴が除去されるように修正されたテキストのプリントを示す。図10Aにおいて、2つの滴が除去されて、縁における最後の滴の有効噴射頻度が12kHzになっている。本発明に従ってプリントすると、後縁104の粗さがはるかに少ない。
【0035】
図10Bは、同じ技術をカラープリントテキストに適用したものを示す。この場合、テキストは4ポイントのタイムズ・ニュー・ローマンのフォントである。図10Bにおいて示すように、後縁104において単一の滴をスキップして18kHzの有効噴射頻度の滴を作り出すことによって、36kHzの滴の後縁104よりも優れた結果がもたらされる。
【0036】
同じ方法で前縁12を減らすことによって、同様の利点を達成することができる。図11は、10ポイントのタイムズ・ニュー・ローマンのフォントのテキストでの前縁102を減らす利点を示す。図11Aにおいて、前縁102をフルに飽和させて(saturated)テキストをプリントする。こういった文字は、前縁102が不良であり、「ファング(牙)(fangs)」が特徴になっている。こういったファングは、36kHzで噴射される2番目の滴によって作り出される。図11Bは、前縁102の後の2番目の滴を除去することによって、前縁102を減らした、図11Aと同じ文字を示す。このようにすることによって、2番目の滴が18kHzで噴射される。その結果、画素当たり滴が2つの状態で、1番目の36kHzの滴は、前縁102からフルで1ドット列だけシフトする。この滴でもなおファングは作り出されるが、そのファングは、白紙の空間ではなくカラーで充填した内部につくので、欠陥を作り出すことはない。必要な最小数のスキップする滴の噴射は、説明した利点と、滴の除去の結果、飽和がなくなることとを、天秤にかけて選択される。
【0037】
具体的なおよび他にとり得る実施形態に関して上で説明したが、本発明はそれらに限定されるように意図するものではない。本発明の上述の技術は、いかなる噴射頻度、インチ当たりのドット数のプリント解像度、画素当たりの滴数、またはプリンタのキャリッジの速度にも、適用することができる。
【0038】
本発明の原理、好適な実施形態、および実施例を上で説明した。しかし本発明は、説明した特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。従って、上述の実施形態は、限定的ではなく例示的であるとみなされるべきであり、当業者であれば、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、こういった実施形態を変形することができる、ということが理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の方法によれば、線、テキスト、およびグラフィック等の均一な密度でのプリントが要求され、噴射頻度が高い場合に、テキストおよびグラフィックの劣化が少なく、そして、高頻度の噴射に関連する縁の粗さの問題が生じない、高品位のプリントが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
10 インクジェットのスウォースプリンタ
22 プリントヘッド
102 前縁
104 後縁
106 前縁を規定する滴
108 後縁を規定する滴
110 走査方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント媒体の上方をプリントヘッドが走査して通過する度に、多数のインク滴を該プリントヘッドから画像のそれぞれの列にデポジットすることによって、インクジェットのスウォースプリンタでインクリメントプリントを行う方法において、前記画像を得るステップと、前記画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における後縁を規定するかを判定するステップと、前記それぞれの行における前記後縁を規定する滴より前のインク滴を少なくとも1つ除去するステップと、前記媒体の上方で前記走査方向に前記プリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を前記媒体上にデポジットするステップとを含む方法。
【請求項2】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記後縁を規定する前記滴の直前の1つの滴である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記後縁を規定する前記滴の直前の2つの滴である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記後縁を規定する前記滴の前の1番目および3番目の滴である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
プリント媒体の上方をプリントヘッドが走査して通過する度に、多数のインク滴を該プリントヘッドから画像のそれぞれの列にデポジットすることによって、インクジェットのスウォースプリンタでインクリメントプリントを行う方法において、前記画像を得るステップと、前記画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における前縁を規定するかを判定するステップと、前記それぞれの行における前記前縁を規定する滴より後のインク滴を少なくとも1つ除去するステップと、前記媒体の上方で前記走査方向に前記プリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を前記媒体上にデポジットするステップとを含む方法。
【請求項6】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記前縁を規定する前記滴の直後の1つの滴である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記前縁を規定する前記滴の直後の2つの滴である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記前縁を規定する前記滴の後の1番目および3番目の滴である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
プリント媒体の上方で走査するインクジェットプリントシステムでプリントする方法において、インク供給容器と、前記プリント媒体上にインクを噴射する複数のインク噴射チャンバとを有する、プリントヘッドを設けるステップであって、該インク噴射チャンバはそれぞれ、前記インクを対応する行上にデポジットし、前記インク噴射チャンバは基本噴射頻度と最大噴射頻度との間の範囲の頻度でインク滴を噴射する、ステップと、画像を得るステップと、前記画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における後縁を規定するかを判定するステップと、前記最大噴射頻度よりも低い噴射頻度で前記それぞれの行の前記後縁を規定するインク滴を噴射するステップと、前記媒体の上方で前記走査方向に前記プリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を前記媒体上にデポジットするステップとを含む方法。
【請求項10】
プリント媒体の上方で走査するインクジェットプリントシステムでプリントする方法において、インク供給容器と、前記プリント媒体上にインクを噴射する複数のインク噴射チャンバとを有する、プリントヘッドを設けるステップであって、該インク噴射チャンバはそれぞれ、前記インクを対応する行上にデポジットし、前記インク噴射チャンバは基本噴射頻度と最大噴射頻度との間の範囲の頻度でインク滴を噴射する、ステップと、画像を得るステップと、前記画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における前縁を規定するかを判定するステップと、前記最大噴射頻度よりも低い噴射頻度で前記それぞれの行の前記前縁を規定するインク滴を噴射するステップと、前記媒体の上方で前記走査方向に前記プリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を前記媒体上にデポジットするステップとを含む方法。
【請求項11】
前記噴射するステップにおいて、前記噴射頻度は、前記最大噴射頻度の1/2である、請求項9および10記載の方法。
【請求項12】
前記噴射するステップにおいて、前記噴射頻度は、前記最大噴射頻度の1/3である、請求項9および10記載の方法。
【請求項1】
プリント媒体の上方をプリントヘッドが走査して通過する度に、多数のインク滴を該プリントヘッドから画像のそれぞれの列にデポジットすることによって、インクジェットのスウォースプリンタでインクリメントプリントを行う方法において、前記画像を得るステップと、前記画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における後縁を規定するかを判定するステップと、前記それぞれの行における前記後縁を規定する滴より前のインク滴を少なくとも1つ除去するステップと、前記媒体の上方で前記走査方向に前記プリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を前記媒体上にデポジットするステップとを含む方法。
【請求項2】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記後縁を規定する前記滴の直前の1つの滴である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記後縁を規定する前記滴の直前の2つの滴である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記後縁を規定する前記滴の前の1番目および3番目の滴である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
プリント媒体の上方をプリントヘッドが走査して通過する度に、多数のインク滴を該プリントヘッドから画像のそれぞれの列にデポジットすることによって、インクジェットのスウォースプリンタでインクリメントプリントを行う方法において、前記画像を得るステップと、前記画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における前縁を規定するかを判定するステップと、前記それぞれの行における前記前縁を規定する滴より後のインク滴を少なくとも1つ除去するステップと、前記媒体の上方で前記走査方向に前記プリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を前記媒体上にデポジットするステップとを含む方法。
【請求項6】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記前縁を規定する前記滴の直後の1つの滴である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記前縁を規定する前記滴の直後の2つの滴である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記除去するステップにおいて、前記少なくとも1つの滴は、前記前縁を規定する前記滴の後の1番目および3番目の滴である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
プリント媒体の上方で走査するインクジェットプリントシステムでプリントする方法において、インク供給容器と、前記プリント媒体上にインクを噴射する複数のインク噴射チャンバとを有する、プリントヘッドを設けるステップであって、該インク噴射チャンバはそれぞれ、前記インクを対応する行上にデポジットし、前記インク噴射チャンバは基本噴射頻度と最大噴射頻度との間の範囲の頻度でインク滴を噴射する、ステップと、画像を得るステップと、前記画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における後縁を規定するかを判定するステップと、前記最大噴射頻度よりも低い噴射頻度で前記それぞれの行の前記後縁を規定するインク滴を噴射するステップと、前記媒体の上方で前記走査方向に前記プリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を前記媒体上にデポジットするステップとを含む方法。
【請求項10】
プリント媒体の上方で走査するインクジェットプリントシステムでプリントする方法において、インク供給容器と、前記プリント媒体上にインクを噴射する複数のインク噴射チャンバとを有する、プリントヘッドを設けるステップであって、該インク噴射チャンバはそれぞれ、前記インクを対応する行上にデポジットし、前記インク噴射チャンバは基本噴射頻度と最大噴射頻度との間の範囲の頻度でインク滴を噴射する、ステップと、画像を得るステップと、前記画像を分析して、どのインク滴が、走査方向に関して画像要素のそれぞれの行における前縁を規定するかを判定するステップと、前記最大噴射頻度よりも低い噴射頻度で前記それぞれの行の前記前縁を規定するインク滴を噴射するステップと、前記媒体の上方で前記走査方向に前記プリントヘッドを通過させる間に、残りのインク滴を前記媒体上にデポジットするステップとを含む方法。
【請求項11】
前記噴射するステップにおいて、前記噴射頻度は、前記最大噴射頻度の1/2である、請求項9および10記載の方法。
【請求項12】
前記噴射するステップにおいて、前記噴射頻度は、前記最大噴射頻度の1/3である、請求項9および10記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−264761(P2010−264761A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163035(P2010−163035)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【分割の表示】特願2001−130510(P2001−130510)の分割
【原出願日】平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願人】(398038580)ヒューレット・パッカード・カンパニー (91)
【氏名又は名称原語表記】HEWLETT−PACKARD COMPANY
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【分割の表示】特願2001−130510(P2001−130510)の分割
【原出願日】平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願人】(398038580)ヒューレット・パッカード・カンパニー (91)
【氏名又は名称原語表記】HEWLETT−PACKARD COMPANY
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]