インクジェットプリンタの粒子除去デバイス
【課題】インクジェットプリンタのインクから粒子を除去するための手法を提供する。
【解決手段】粒子除去デバイスは、第1の分離器内のインク流路に対して横方向へ延びる少なくとも2列の障害物611a、611b、612a、612bを含む障害物の配列を備える第1の分離器650を含む。障害物の列は、列オフセット率によって互いからオフセットされる。障害物の配列は、臨界直径Dcより大きい直径を有するより大きい粒子630をこの配列を通って、かつインク流路の方向に対してある角度に曲げられた第1の軌跡ベクトルに沿って選好的にルーティングするように構成される。インク流路に対する第1の軌跡ベクトルの角度は、列オフセット率の関数である。臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子640は、この配列を通って、かつインク流路に対して事実上ある角度に曲げられていない第2の軌跡ベクトルに沿って進む。
【解決手段】粒子除去デバイスは、第1の分離器内のインク流路に対して横方向へ延びる少なくとも2列の障害物611a、611b、612a、612bを含む障害物の配列を備える第1の分離器650を含む。障害物の列は、列オフセット率によって互いからオフセットされる。障害物の配列は、臨界直径Dcより大きい直径を有するより大きい粒子630をこの配列を通って、かつインク流路の方向に対してある角度に曲げられた第1の軌跡ベクトルに沿って選好的にルーティングするように構成される。インク流路に対する第1の軌跡ベクトルの角度は、列オフセット率の関数である。臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子640は、この配列を通って、かつインク流路に対して事実上ある角度に曲げられていない第2の軌跡ベクトルに沿って進む。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0001】
本開示において論じる実施形態は、インクジェット印刷において使用される方法及びデバイスに関する。例えば、実施形態の中には、インクジェットプリンタのための粒子除去デバイスを包含するものがある。粒子除去デバイスは、少なくとも2列の障害物を含む障害物の配列を備える第1の分離器を含む。各障害物は、第1の分離器内でインクの流路に対して横方向に延びる。障害物の列は、列オフセット率によって互いからオフセットされる。障害物の配列は、臨界直径より大きい直径を有するより大きい粒子をこの配列を通って、かつインク流路の方向に対してある角度に曲げられた第1の軌跡ベクトルに沿って選好的にルーティングするように構成される。インク流路に対する第1の軌跡ベクトルの角度は、列オフセット率の関数である。障害物の配列は、臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子をこの配列を通って、かつインク流路に対して事実上ある角度に曲げられていない第2の軌跡ベクトルに沿ってルーティングするように構成される。第1の分離器は、インクの約100Pa未満の圧力降下を生じさせる。
【0002】
事例によっては、列オフセット率は約0.1から約0.25までの範囲内である。事例によっては、臨界直径は約10μmから約20μmまでの範囲内である。事例によっては、障害物の断面の大きさは約25μmである。事例によっては、列内の障害物間の間隙は臨界直径の約1.5倍より大きい。
【0003】
実装によっては、第2の分離器は第1の分離器へ流体的に結合され、第2の分離器は、より大きい粒子とより小さい粒子とをさらに分離するように構成される挟まれた流れの分別機能を含む。例えば、第2の分離器は、合流させる機能と分出する機能とを含むことが可能である。第2の分離器は、第2のチャネルを流れるより大きい粒子が事実上存在しないインク部分が、第1のチャネルを流れるより大きい粒子を含むインクに接合するシース液体を提供することを可能にすべく構成される1つまたは複数の集束する入口を含んでもよい。
【0004】
実施形態の中には、インクジェットプリンタのための粒子除去デバイスを包含するものがある。粒子除去デバイスは、第1のチャネル及び第2のチャネルと障害物の配列とを備える少なくとも1つの分離器を含む。障害物の配列は、少なくとも約2列かつ約10列以下の障害物を含む。各障害物は、インクの流路に対して横方向に延びる。障害物の列は、オフセット率によって互いからオフセットされる。障害物の配列は、臨界直径より大きい直径を有するより大きい粒子をこの配列を通って、インク流路に対してある角度に曲げられた軌跡ベクトルに沿って第1のチャネル内へルーティングし、かつ臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子をこの配列を通って第1のチャネル及び第2のチャネル内へルーティングするように構成される。実装によっては、分離器内の圧力降下は約100Pa未満である。
【0005】
実施形態の中には、インクから粒子を分離するための層状デバイスを包含するものがある。層状デバイスは、ベース層と、ベース層上へ配置された層状スタックとを含む。層状スタックは、第1のチャネルと、第2のチャネルと、少なくとも2列のバーを備えるバーの配列とを含む分離器を形成する。バーは、分離器内でインクの流路に対して横方向に延び、バーの列は互いからあるオフセット率でオフセットされる。バーの配列は、臨界直径より大きい直径を有するより大きい粒子をこの配列を通って、インク流路に対してある角度に曲げられた第1の軌跡ベクトルに沿って第1のチャネル内へと選好的にルーティングするように構成され、上記第1の軌跡ベクトルの角度はオフセット率の関数である。バーの配列は、臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子を、インク流路に対して事実上ある角度に曲げられていない第2の軌跡ベクトルに沿って第1のチャネルまたは第2のチャネル内へとルーティングするように構成される。
【0006】
事例によっては、この配列は、分離器において約100Pa未満というインクの圧力降下を保全するように構成される。事例によっては、この配列は約2列から約10列までの間のバーを含む。事例によっては、粒子は気泡である。
【0007】
実施形態の中には、インクジェットプリンタ内のインクから粒子を取り除くためのデバイスを製造する方法を包含するものがある。このような方法の1つは、多層スタックの複数の層を形成することと、複数の層のうちの各々を隣接する層へ付着することを含む。多層スタックのうちの各層は、バーの配列のうちの少なくとも1つのバーを形成する。バーの配列は、少なくとも2列のバーを含む分離器を形成し、これらのバーは分離器を横断して横方向へ延びる。バーの列は、オフセット率によって互いからオフセットされる。バーの配列は、より小さい粒子をこの配列を通って第2の軌跡ベクトル沿いにルーティングし、かつより大きい粒子をこの配列を通ってオフセット率の関数である第1の軌跡ベクトル沿いに選好的にルーティングするように構成される。
【0008】
実装によっては、複数の層は、化学エッチング、レーザ切断、打抜き、機械加工及びプリントのうちの1つまたはそれ以上によって形成される。実装によっては、複数の層は、拡散接合、プラズマ接着、接着剤、溶接、化学結合及び機械的接合のうちの1つまたはそれ以上によって付着される。
【0009】
実施形態は、粒子除去装置を含むインクジェットプリンタを包含する。このインクジェットプリンタは、インクを印刷媒体へ向かって予め決められたパターンに従って選択的に噴出するように構成されるインクジェットと、印刷媒体とプリントヘッドとの間に相対移動を提供するように構成される移送機構と、インクがジェットへ入る前にインクから粒子を取り除くように構成される粒子除去装置とを含む。粒子除去装置は、第1のチャネルと第2のチャネルと少なくとも2列の障害物を含む障害物の配列とを備える第1の分離器を含む。障害物は各々、第1の分離器内でインクの流れに対して横方法へ延び、障害物の列はある列シフト率で互いからオフセットされる。障害物の配列は、より大きい粒子をこの配列を通って第1の軌跡ベクトル沿いに第1のチャネル内へルーティングするように構成される。第1の軌跡ベクトルは、列シフト率の関数である。粒子除去装置の大きさは、約100Pa未満のインクの圧力降下を引き起こすように構成される。
【0010】
事例によっては、粒子除去装置は複数の分離器を含んでもよい。例えば、第2の分離器は第1の分離器へ結合されてもよい。分離器は、第2のチャネル内を流れるより大きい粒子の流路を連続して合流させかつ分出するように構成される合流及び分出機能を含むことが可能である。また第2の分離器は、第2のチャネル内を流れる「クリーンな」インクの一部が第1のチャネル内を流れる汚染されたインクに接合するシース液体を提供することを可能にすべく構成される集束入口も含んでもよい。実装によっては、第1の分離器内のオフセットされた列によって引き起こされるより大きい粒子の変位距離は約50μmから約500μmまでの間である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】インクジェットプリンタの粒子除去デバイスを組み込んだ部分を示す内部ビューである。
【図2】インクジェットプリンタの粒子除去デバイスを組み込んだ部分を示す内部ビューである。
【図3】ある例示的なプリントヘッドを示す図である。
【図4】ある例示的なプリントヘッドを示す図である。
【図5】フィンガマニホールド及びインクジェットの図であり、フィンガマニホールドとインクジェット本体との間のインクジェット入口近くにおける粒子除去デバイスの可能な位置を示している。
【図6】障害物の配列を含む粒子分離器を示す断面図である。
【図7】障害物アレイ分離器を含む粒子除去デバイスの一部を示す等角切欠き図である。
【図8】障害物アレイ分離器を含む粒子除去デバイスの一部を示す等角切欠き図である。
【図9】障害物の列毎の正規化された圧力降下をアレイの幾何学的形状の関数として示したものである。
【図10】臨界直径/間隙比とオフセット率との理論的関係を表すグラフである。
【図11】障害物アレイと合流及び分出機能とを含む粒子除去デバイスの等角切欠き図である。
【図12】合流及び分出機能を組み込んだ分離器の動作を示す。
【図13】粒子の分離が重力によって強化されるように配向された合流及び分出機能を含む分離器を示す。
【図14】アレイを利用しない障害物タイプの分離器の形状を描いたものである。
【図15】別の配列の障害物アレイ分離器を示す。
【図16】別の配列の障害物アレイ分離器を示す。
【図17】粒子除去デバイスの製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
インクジェットプリンタは、液体インクの小さい液滴を予め決められたパターンに従って印刷媒体上へ噴出することによって動作する。実装によっては、インクは、用紙等の最終印刷媒体上へ直に噴出される。実装によっては、インクは、例えば印刷ドラムである中間印刷媒体上へ噴出され、次いで中間印刷媒体から最終印刷媒体へ転写される。インクジェットプリンタの中には、インクジェットを供給するために液体インクのカートリッジを使用するものがある。固体インクプリンタは、室温では固体であって、印刷媒体表面上へ噴射される前に溶融される相変化インクを使用するケイパビリティを有する。室温で固体であるインクは、効果的には、インクが、液体インクの場合に典型的に用いられるパッケージまたはカートリッジなしに固形で移送されかつインクジェットプリンタ内へ装填されることを可能にする。実装によっては、固体インクは、溶融インクを中間ドラム上へページ幅のパターンで噴射するページ幅プリントヘッド内で溶融される。中間ドラム上のパターンは、加圧ニップを介して用紙上へ転写される。
【0013】
液体状態では、インクは、インクジェット経路の通過を遮ることができる泡及び/または粒子を含む場合がある。例えば、泡は、固体インクプリンタにおいて、プリンタがパワーダウンされる際のインクの凝固及びプリンタが使用のためにパワーアップされる際のインクの溶融に伴って発生するインクの凝固−溶融サイクルに起因して形成される可能性がある。インクは凝固して固体になるにつれて収縮し、インク内には空気で略充填される空所が形成される。固体インクがインク噴射に先行して溶融するとき、空所内の空気は液体インク内の泡になる可能性がある。インク内の粒子は、インク流路の形成に使用される材料からはげて取れる際にインク内へ導入される場合がある。本明細書で論じる「粒子」という用語は、泡を含むインク内の任意の望ましくない物質を記述するために用いられる。
【0014】
インクジェット経路内の粒子は、結果として最終的な印刷パターンに望ましくない目に見える傷を生じさせる的外れの、断続的な、欠けた、または弱いインク噴射を引き起こす可能性がある。インクジェットプリンタの中には、粒子がプリントヘッドのジェット領域へ到達することを防止するために、インクをフィルタ、フローブリーザ、浮力ベースの分離器または他のデバイスに通すものがある。しかしながら、これらの技法は幾つかの問題点を提示する。フィルタリングは、フィルタがプリンタの稼動寿命期間中に詰まってくる可能性があることから最適ではない。合着された粒子がフィルタを詰まらせないことを保証するためには、かなりの工作が要求される。さらに、フィルタエレメントはインクの流れをある程度妨害し、かつプリントヘッドの動作には望ましくない場合がある圧力降下という不利益を誘発する。この圧力降下は、フィルタ表面がインクから濾過された粒子で覆われていくにつれて悪化される。泡を取り除くためにフローブリーザが使用されているが、これによりプリントヘッド設計がより複雑になる。泡の浮力に依存するデバイスは、プリントヘッドのかさを増大させる。小さい泡、即ちプリントヘッドオリフィス規模の泡の特徴的な上昇速度は極く小さく、よって結果的に分離時間は長大である可能性がある。その結果、分離器エレメントのための専用容積が必要とされ、プリントヘッドのサイズが増大する。
【0015】
本開示に記述される実施形態は、インクジェットプリンタのインクから粒子を除去するための手法を包含する。本開示において論じられる手法の中には、インクから粒子を分離するための手段として障害物アレイ及び/または他の分離エレメントの使用を包含するものがある。障害物アレイは、異なるサイズの粒子に障害物アレイを介する予め決められた異なる軌跡経路を辿らせる。粒子が障害物アレイを介して移動するにつれて、臨界サイズより小さい粒子は臨界サイズを超える粒子から分離される。臨界直径を超える粒子は、アレイを通ってインク流路に対してある角度に曲げられた第1の軌跡ベクトルを辿る。臨界サイズより小さい粒子は、アレイを通ってインクの流れに対して略平行である第2の軌跡ベクトルに沿ってジグザグの経路を辿る。第1の軌跡に沿って流れる粒子は第1のチャネルに集められることが可能であり、かつ第2の軌跡に沿って流れる粒子は第2のチャネルに集められることが可能であり、よって、より大きい粒子はインクジェットへと流れるインクから分離される。
【0016】
図1及び図2は、本明細書で論じているような粒子除去デバイスを組み込んだインクジェットプリンタ100の部分を示す内部ビューである。プリンタ100は、ドラム120をプリントヘッド130に対して移動させかつ用紙140をドラム120に対して移動させるように構成される移送機構110を含む。プリントヘッド130は完全に、または部分的にドラム120の長さに沿って延びてもよく、かつ幾つかのインクジェットを含む。ドラム120が移送機構110によって回転されるにつれて、プリントヘッド130のインクジェットはインクジェット開口を介してインク液滴をドラム120上へ所望されるパターンで溶着する。用紙140がドラム120の周りを進むにつれて、ドラム120上のインクのパターンは加圧ニップ160を介して用紙140へ転写される。
【0017】
図3及び図4は、ある例示的なプリントヘッドをより詳細に示したものである。当初リザーバ内に含まれる溶融インクの経路は、ポート210を介してプリントヘッドのメインマニホールド220へ流入する。図4において最も良く分かるように、事例によっては、1つのインクカラーにつき1つのマニホールドの方式で4つのメインマニホールド220が重ね合わされて存在し、かつこれらのマニホールド220の各々は編み込まれたフィンガマニホールド230へ接続する。インクはフィンガマニホールド230を通過して、インクジェット240内へ進む。図4に示されているマニホールド及びインクジェットの幾何学的配置は矢印の方向へ反復され、所望されるプリントヘッドの長さ、例えばドラム全幅が達成される。
【0018】
本開示において論じられる例によっては、プリントヘッドはインク液滴を噴出させるために圧電トランスデューサ(PZT)を用いるが、インク液滴を噴出させる他の方法も既知であって、このようなプリンタも本明細書に記述されているような粒子除去デバイスを用いてもよい。図5は、フィンガマニホールド230及びインクジェット240をより詳しく示した図であり、フィンガマニホールド230における粒子除去デバイス250の可能な位置を示している。粒子除去デバイス250は、他に、例えばメインマニホールド等に位置決めされてもよい。プリントヘッドは、1つまたは複数の位置に位置合わせされた複数の粒子除去デバイスを含んでもよい。
【0019】
PZT275の起動は、インクジェット本体265へのインクの引き込み及びインクジェット出口270及び開口280を介するインクの放出を交互に行うポンピング行動を生じさせる。粒子除去デバイス250は、障害物の配列及び/またはインク内の粒子と相互に作用する他の機能の配列を含んでもよい。粒子除去機能は、様々なサイズの粒子の流路を制御するために使用されることが可能である。臨界直径を超える大部分の粒子は、臨界直径より大きい直径を有する粒子を事実上含まない「クリーンな」インクがインクジェット本体265へ流れ込めるように迂回されることが可能である。
【0020】
図6は、第1の分離器650を含む粒子除去デバイスを示す断面図である。障害物611a、611b、612a、612b間の間隙距離gより小さい様々な直径dの粒子で汚染されているインクは、分離器650の入力側610から流入する。多くの粒子を抱えたインクは、分離器650内で611a、611b、612a、612bの配列と出合う。この配列は、臨界直径Dcより大きい直径を有するより大きい粒子630を、事実上より大きい粒子630を含まない、かつ/または臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子640を含むインクから分離するように構成される。分離器650内の障害物611a、611b、612a、612bは、大部分のより大きい粒子630はインク流路の方向624に対してある角度で曲げられた第1の軌跡経路に沿って迂回されるが、より小さい粒子640は障害物間をジグザグに進みかつインクの流れの方向624に対して略平行である第2の軌跡経路を辿るように配列される。より小さい粒子は事実上迂回されず、第1及び第2のチャネル651、652の双方へ流入する。より大きい粒子のある角度に曲げられた軌跡に沿った迂回により、かなりの数のより大きい粒子が分離器650の第1のチャネル651へ向かって移動する。事実上より大きい粒子を含まない、かつ/またはより小さい粒子640及びより小数のより大きい粒子630を含むインクは、分離器650の第2のチャネル652へ流入する。従って、第1のチャネル651におけるより大きい粒子630の濃度は、第2のチャネル652におけるより大きい粒子630の濃度より高い。
【0021】
障害物611a、611b、612a、612bの配列は、列611、612による、かつ列毎の幾つかの障害物によるアレイとして見ることができる。図6において、インクの流れが出合う第1の列611は2つの障害物611a、611bを有し、第2の列612は2つの障害物612a、612bを有する。図6は例示を目的として提示されているものであり、よってより多くの列及び/または列毎により多くの障害物が用いられてもよいことは理解されるであろう。列611、612は、列オフセット率εによって互いからオフセットされる。列オフセット率εは、図6に示されているように、後続の各列がシフトされる距離ελをアレイ周期λ(列の障害物間距離)で除算した割合である。粒子分離に関連づけられる臨界直径Dcは、障害物の大きさ、即ち幅w及び長さl、列内の隣接する障害物間の間隙距離g及び列オフセット率εの関数として決定されることが可能である。事例によっては、間隙gはより大きい粒子の直径の約1.5倍より大きくてもよい。事例によっては、列オフセット率は0.1から0.25までの間である。
【0022】
ある粒子が臨界直径Dcより小さい直径を有していれば、この粒子は、粒子640に関連づけられる流路623によって示されているように、障害物の配列を介してジグザグの経路を辿る。ジグザグの経路はインクの流れの方向624に沿うものであり、かつ分離器650を介するインク流路に対して略平行する。臨界直径Dcより大きい直径を有する粒子630は障害物611a、611b、612a、612bにぶつかり、流路621及び622によって示されているように角度αに沿って曲げられる軌跡を辿る。
【0023】
障害物611a、611b、612a、612bのアレイを介して進んだ後、分離器650の第1のチャネル651内を細長い障害物625の第1の側面627に沿って流れるインクは、より大きい粒子630を比較的多く含む。分離器の第2のチャネル652内を細長い障害物625の第2の側面626に沿って流れるインクは、より大きい粒子630を比較的少なく含む。言い替えれば、より大きい粒子630の濃度は、第2のチャネルよりも第1のチャネルにおいて高い。事例によっては、第2のチャネル652内を流れるインクは、より大きい粒子630を事実上含まないものである場合がある。この例示的な実施形態では、第1のチャネル内を流れるインクの流路は、分離器650の出力側613において、細長い機能625によって第2のチャネル652内を流れるインクの流路と位置合わせされる。
【0024】
図7及び図8は、図6に示されている分離器650にある点で類似する分離器750を含む粒子除去デバイスの一部を示す等角切欠き図である。この例示的な実装において、分離器750は、ベース層761と、カバー層762と、多層スタック763とを含む複数の層で形成される。図示されているこの実施形態において、多層スタックは4つの層771−774を含み、4層771−774は各々、分離器750内の障害物配列における少なくとも1つの障害物720を形成する。障害物の配列は、分離器750を横断するx軸に沿って横方向へ延びる2列711、712のバー720を含む。図7及び図8の分離器750では層771−774毎に1つのバー720が示されているが、代替実装が図7及び図8に描かれているものより多いバー列、列毎のより多いバー及び/または層毎のより多いバーを含み得ることは認識されるであろう。分離器750は、より大きい粒子を含む汚染されたインクを含んで運ぶ第1のチャネル751を、より少ない濃度のより大きい粒子を含みかつ/または多数のより大きい粒子を含まない「クリーンな」インクを含んで運ぶ第2のチャネル752から分離する細長い障害物725を含む。図7及び図8に示されている例では、クリーンなインク及び汚染されたインクの分離された流路は、細長い障害物725のそれぞれの側のチャネル752、751において位置合わせされる。第1のチャネル751内を流れるより高い濃度のより大きい粒子を含む汚染されたインクは廃棄ポート及び/またはダンプチャンバ(不図示)へルーティングされてもよく、かつ/または追加的な粒子除去プロセスを施されてもよい。
【0025】
インクジェットプリンタにおいて、適切な噴射を達成するためのインク圧力は典型的には約500パスカル(Pa)であって流量は約0.25g/秒であり、パージ操作の間は平方インチ当たり(psi)約10ポンド及び流量約1g/秒である。インクジェットのアプリケーションは、噴射及び/またはパージに必要とされる最低圧力より下へインク圧力を低下させる過剰な圧力降下を引き起こす粒子分離器を許容することができない。圧力降下は、障害物の列が増えるごとに起こる。粒子分離器デバイスの構成は、圧力を過剰に低下させることなく十分な粒子分離をもたらすように調整されなければならない。アレイの設計は、障害物の大きさ及び/または臨界サイズより大きい粒子の分離の達成に必要とされる列の数及び列毎の障害物の数を決定することを含む。この設計は、許容範囲内のインク圧力低下を達成することによって制約される。
【0026】
事例によっては、インクジェットプリンタのための粒子除去デバイスは、各列に約10個の障害物が存在する約2列から約10列までの間の障害物を備える唯一の障害物アレイを含んでもよい。例えば、半径aを有する円形の障害物、及び障害物間の間隔が半分、λ/2であるアレイについて考察してみる。従って、閉塞比は、β=2a/λである。図9は、障害物の列毎の正規化された圧力降下(ΔProw)を、β及び列内の障害物数の関数として示している。図9は無次元プロットであり、列当たりの圧力降下、単位パスカル、の取得は、ΔProw=μ*U/2aとして計算されてもよい。但し、μは粘度であり、Uはインクの流速であり、2aは障害物の直径である。図9は、ΔProwをアレイ周期(列内の障害物間間隔)に対する障害物直径の比であるβの関数として示している。幅1cm、深さ550μm(Wa=1cm、Ha=550μm、図11参照)の入口の場合、印刷流量0.25g/秒を用いれば、障害物間間隔が25ミクロンであって列毎に直径5.25ミクロンの障害物を有する列は、圧力降下が約5Paになる。従って、列毎に5つの障害物を有する約16列の障害物は、約100Pa以下の圧力降下割当量内に留まることになる。所定のチャネルサイズに対しては、低減された圧力降下を達成するために、より少ない列数、及び/または列毎により少ない障害物数が用いられてもよいことに留意されたい。
【0027】
臨界サイズより大きい粒子の変位量は、アレイ設計によって決定される。この変位は、1つの粒子が第1のチャネルへ到達するために、ある角度に曲げられた軌跡に沿ってy軸沿いに進む距離である。例えば、事例によっては、変位は約50μmから約550μmまでの間であってもよい。バー720は、断面図では長方形または正方形として示されているが、これらは、例えば円形、三角形、菱形、六角形、他である任意の断面形状を有してもよい。障害物の断面形状は、図10に示されているように、臨界直径/間隙比(Dc/g)と列シフト率εとの関係性に影響する場合があると判断されている。図10は、三角形(正三角形)910及び円形912の断面を有する障害物の場合の、εの関数として理論的に導出されたDc/gのグラフを示す。図10のグラフにおいて、曲線910または曲線912より上の領域は、ある角度に曲げられた(インクの流れの方向に対して曲げられた)軌跡を辿る粒子に関連づけられる。曲線910または曲線912より下の領域は、事実上インクの流れの方向に沿ってジグザグの軌跡を辿る粒子に関連づけられる。
【0028】
図7及び図8のそれに類似する基本構成を有するインクジェットプリンタの障害物アレイの設計は、図10におけるグラフ912において提供される理論上のデータを基礎として説明することができる。例えば、分離器750に類似する粒子分離器は、約25μmの層厚を有してもよい。この場合、バー720は厚さ約25μm、及び特定のより大きい粒子は直径約10μm、Dc=10μm、であるものと仮定する。これにより、粒子の臨界直径対間隙値は10/25、即ち0.4になる。グラフ912を基礎とすると、この例の場合、列オフセット率εは約0.12である。図7−図8の構成の上半分においてより大きい粒子による第1のチャネル751への変位を達成するためには、約50μmの変位が必要とされる。バー720に対する各「ぶつかり」は、より大きい粒子を約0.12*25μm=3μmだけ変位させる。この例示的な事例では、約50μmの変位を達成するために、約16列の25μm障害物が必要とされる。この実現においては、16列の各々において列毎に約5個の障害物を用いれば、前述の圧力降下推定で述べたような所望される変位を達成することが可能である。
【0029】
事例によっては、粒子除去デバイスは、直列及び/または並列に配列された複数の分離器を含んでもよい。直列接続式の複数の分離器を含む粒子除去デバイスは、図11に示されている。事例によっては、複数の直列及び/または並列接続式分離器は同じタイプの分離器であってもよく、例えば、2つ以上の分離器が障害物アレイであってもよい。事例によっては、複数の直列及び/または並列接続式分離器は異なるタイプの分離器であってもよい。図11は、障害物タイプの分離器である第1の分離器950と、第2の分離器980とを含む粒子除去デバイスを示し、本例において、第2の分離器980は、徐々に広がる流線形を有する流体力学的フローパターンを生成することによって「クリーンな」インク流路からより大きい粒子を含んで運ぶ流路を分離するように構成される合流及び分出機能を含む。事例によっては、粒子除去デバイスは、各タイプの分離器を1つのみ含んでもよい。
【0030】
図7及び図8に示されている粒子分離器750と同様に、図11の粒子除去デバイスは層状の構造体である。同じく分離器750と同様に、障害物タイプの分離器950は、分離器950を横方向に延びる2列の障害物920(バー)を含む。バー920の列は、図8にさらに詳しく描かれているように、互いからオフセットされる。
【0031】
列のオフセット角、及び列内のバー間の間隙距離は、臨界サイズより大きい直径を有するより大きい粒子を迂回させるように構成される。これらのより大きい粒子を含む汚染されたインクは、細長い障害物925の第1の表面927に沿って延びる第1のチャネル951内へ迂回される。事実上より大きい粒子を含まないクリーンなインクは、細長い障害物925の第2の表面926に沿って延びる第2のチャネル952へ流入する。より大きい粒子が障害物によって迂回される結果、第1のチャネル951内を流れるインクはより大きい粒子を多く含み、より大きい粒子の濃度は第2のチャネル952内を流れるより大きい粒子の濃度より高い。第2のチャネル952内を流れるインクは、より大きい粒子を含まない、またはほとんど含まない比較的「クリーンな」流れである。
【0032】
図6−図8及び図11に示されている障害物タイプの分離器650、750、950は、10μmを超える大きさを有する粒子を10μmより小さい大きさを有する粒子から分離するように構成されてもよい。障害物の配列の間隔は、粒子のサイズに対して比較的大きくてもよく、目詰まりが減じられる。より大きい粒子はインクジェットシステムから除去されるのに対して、例えば約10μmより小さい大きさを有するより小さい粒子は噴射機能に影響する可能性がなく、よって除去されなくてもよい。この分離を達成するように配列される分離器は、断面の大きさ、w及びhを有するバーを含むことが可能である。但し、wは約30μmであり、hは約30−100μmである。列のバー間の間隙gは、約12−25μmであってもよい。バー間の間隙が25μmの場合、列シフト率は0.1以下であってもよい。図11において最も良く分かるように、障害物分離器950への開口は、例えば約1000μmx約250μmである大きさWaxHaを有してもよい。層化された構造体として形成される場合、各層は約25μmの厚さを有してもよい。
【0033】
図11に示されている粒子除去デバイスは、クリーンなインクからより大きい粒子をさらに分離するために用いられる第2の分離器980も含む。事例によっては、第2の分離器980は、より大きい粒子を多く含む第1のチャネル951内を流れるインクに作用する挟まれた流れの分別を適用する。例示的な分離器980の挟まれた流れの分別機能は、より大きい粒子を含むインクの流れを狭い経路に沿って狭窄する合流機能981を含む。合流機能981を通過した後、インクは分出機能982へ流入する。分出機能982に出合うと、より大きい粒子の流路はより小さい粒子の流路から分岐する。サイズに依存して、より大きい粒子は主として分出機能982の中心領域983内を流れ、かつより小さい粒子は主として分出機能982の端領域984に沿って流れる。より大きい粒子は、ダンプチャンバへ向かって、またはベントへとルーティングされることが可能である。合流/分出機能を基礎とする分離器の動作については、図12を参照してさらに詳しく説明する。
【0034】
分離器980は、場合により、流れを合流機能981へと集中させるためにシース液体を用いてもよい。事例によっては、シース液体は、より大きい粒子をより低い濃度で含む「クリーンな」流れからの液体の一部であってもよい。図11の第2の分離器980は、シース液体として、第2のチャネル952内を流れるインク、即ち第1の分離器950からの「クリーンな」インクを用いる。図11は、第2のチャネル952へ流体的に接続される第1のチャネル951の両側における入口961、962を示している。入口961、962は、第1のチャネル951の両側に、汚染されたインク内のより大きい粒子の流れを合流機能981内へ集中させるために第2のチャネル952から第1のチャネル951内へのシース液体(「クリーンな」インク)の導入を可能にする面外のマニホールド機能を提供する。
【0035】
図12は、インクジェットプリンタにおける粒子分離に使用されることが可能な挟まれた流れの分別を提供する合流及び分出機能1081、1082をさらに示す。挟まれた流れの分別は、「流線増幅」の原理に基づいて作用する。この場合、例えば収縮を用いて粒子を密な帯状に集束することにより、異なるサイズの粒子によって遭遇される流線には僅かな差が存在する。流れが拡張部を通るにつれて、流線の差は増幅され、粒子は確定的に拡散する。図11及び図12の例は合流及び分出機能を示しているが、挟まれた流れの分別を達成する他の流体配置も可能であることに留意されたい。
【0036】
合流機能1081に出合う前に、より大きい粒子1030とより小さい粒子1040とが混合されたインクは、長さLc0を有する最初のチャネル1051へ流入する。最初のチャネル1051内のインクの流路は、例えば最初のチャネル1051の片側または両側において最初のチャネル1051内に導入されるシース液体1091、1092によって集束されてもよい。チャネルの壁は合流機能1081において距離Lc1に渡って狭まり、この低減された幅Wc2を距離Lc2に渡って維持してもよい。チャネルの壁は、分出機能1082において距離Ld1に渡って幅Wd0に至るまで拡散し、この幅は長さLd0に渡って維持されてもよい。合流機能1081における流路の収縮の後、インクは、所定の直径より小さい粒子を含み得るクリーンなインクを分出チャネル1082の端の方へ近い流路1091、1093に沿って移動させる分出機能1082内で分岐する。より大きい粒子は、チャネルの中心の方へ近い流路1092に沿って移動する。
【0037】
粒子の流れの中心1094間の距離Dpcは、
Dpc = (Wc0/Wc2)*(D1−D2)/2
によって与えられる。
但し、この場合、Wc0は広いセクションの幅であってWd0に等しく、Wc2は狭められたセクションの幅であり、D1はより大きい粒子の直径であり、かつD2はより小さい粒子の直径である。
【0038】
より大きい粒子の集中された流れは、より小さい粒子の流れから約100μm離れていることが望ましい。ある例では、D1=30μm、及びD2=10μmである。この例では、Wc0/Wc2は約10:1である必要がある。これらの大きさの特定のサイズは、収縮において許容できる圧力降下に依存する。例えば、1cmx550μm断面のインクジェットマニホールドチャネルの場合、長さ1mmの4:1収縮は約80Paの圧力降下を与える。
【0039】
本明細書において提供している先に論じたもの等の例は本来単に例示的なものであること、かつ、当業者であれば、本開示を読んだ時点で、様々な特定の圧力降下が、特定の粒子サイズについて様々な圧力降下制約をサポートする大きさを有する適切な障害物アレイを用いて達成され得る点を理解することは認識されるであろう。
【0040】
実装によっては、合流及び分出機能を含む分離器は重力によって強化される粒子分離をもたらすように配向されてもよい。図13は、合流機能1181及び分出機能1182を含む分離器1150を示す。分離器1150は、重力Fgがより大きい粒子1130を底部チャネル1102へ向けて押し、一方でFgによってさほど影響されないより小さい粒子1140は上部チャネル1101を介して流れるように作用すべく配向される。事例によっては、y方向及びx方向双方の分岐する流れは、粒子の分離に有益であり得る。泡分離の場合、図13に示されている配置は逆転されてもよく、よってチャネルの拡張は重力Fgの方向とは反対方向に発生し、泡の上昇かつクリーンなインクからの分離を可能にする。
【0041】
粒子除去デバイスは、幾つかの様々なタイプの分離器を含んでもよい。図14は、粒子を除去するためにインクジェットプリンタ内に実装され得る分離器の別の例1250を示す。分離器1250は、分離器1250内に配向されるタブ1220と障害物1221とを含む。例えば、ある実装において、配向は図14の軸によって示されるようなものであってもよく、かつ平面図において、タブ1220は分離器チャネルの側壁1201へ付着され、かつ障害物1221は分離器のベースに付着される。
【0042】
図15及び図16は、インクジェット粒子除去デバイスに使用され得るさらに別の障害物タイプの分離器構成を示す。図15は分離器1350の断面図であり、図16は分離器1350の等角切欠き図である。図16に示されているように、分離器は層状の構造体として形成されてもよい。この例では、分離器1350からの流路1355、1356は、分離器1350内への流路1353に対して略直角に曲げられる。分離器1350は、図16に示されているように、バーの配列として構成され得る障害物1320のアレイを含む。図15及び図16に示されている分離器は、層状の構造体の1つまたは複数の層内に形成される出力チャネル1351、1352へ粒子を移動させる垂直形状で配向されることが可能である。図15及び図16に示されている垂直形状は、例えば図7、図8及び図11に描かれているものである何らかの水平形状より小さい設置面積を提供することができる。
【0043】
バー1320の各列は、隣接する列からオフセットされる。先に論じたように、より大きい粒子1330は、列のオフセット角と略位置合わせされた流路内を出力チャネル1351へ向かって進む。より小さい粒子1340はバー1320による迂回を最小限に抑えられ、よって出力チャネル1351、1352の双方へ向かって進む。この具体的な形状では、より大きい粒子1330及びより小さい粒子1340は分離器1350の頂部1357と衝突する。障害物アレイによってより大きい粒子1330が迂回される結果として、出力チャネル1351から流出する液体は、より大きい粒子1330を、出力チャネル1352から流出する液体より高い濃度で有する。出力チャネル1351、1352を介して流れる液体は、他のオペレーションにおいて分路または使用されてもよい。例えば、より大きい粒子1330をより高濃度で有する、出力チャネル1351を介して流れる液体は、廃棄エリアへと分路されてもよい。より大きい粒子1330をより低濃度で有する、出力チャネル1352を介して流れるクリーンな液体は、インクジェットオペレーションに用いられてもよい。
【0044】
粒子除去デバイスは、直列及び/または並列に配列された複数の分離器を含んでもよい。直列接続式の分離器は、多段粒子除去を実装するために用いられてもよく、各段は追加の粒子を除去し、かつ/または連続的にサイズが小型化する粒子を除去する。並列接続式の分離器は、例えば、インク流路における、インク噴射の中断を引き起こすと思われる例えば約100Paより大きい過剰な圧力降下を回避するように実装されてもよい。粒子除去デバイスは、並列に配列された幾つかの分離器及び直列に配列された幾つかの分離器を用いてもよい。より大きい粒子を組み入れている汚染されたインクは、廃棄チャネルを介してルーティングされて廃棄されることが可能である。所定のサイズを超える粒子が排除されているインクは、別のチャネルを介して出て、最終的にプリンタのインクジェットへとルーティングされることが可能である。
【0045】
本明細書において論じている分離器は、単層の構造体として製造されても、複層の構造体として製造されてもよい。図7、図8、図11及び図16は、層状の構造体として形成されている分離器を示す。先に論じたように、層状の構造体は、ベース層と、障害物配列の障害物を形成する多層スタックと、カバーとを含んでもよい。図17は、層状の粒子除去デバイスを製造するための方法を示すフロー図である。本方法は、例えばベース層及び多層スタックの複数の層の各々を含むデバイスの様々な層を形成すること、1610、1620を含む。事例によっては、多層スタックの各層は、例えば、先に論じたように分離器を横断して延びるバーである分離器の障害物を形成する。実装によっては、多層スタックは、図11に示されているような合流及び分出機能を形成してもよい。これらの層は、金属またはプラスチック等の任意の適切な材料で、レーザ切断、打抜き、機械加工、エッチング、蒸着、成形及び/またはプリント等の方法によって作られてもよい。これらの層は、例えば貼り合わせ、拡散接合、プラズマ接着、接着剤、溶接、化学結合及び機械的接合のうちの任意の組合せである任意の適切な方法によって互いに付着されることが可能である1630、1640。
【0046】
本明細書に開示されているシステム、デバイスまたは方法は、本明細書に記述されている特徴、構造、方法またはこれらの組合せのうちの1つまたはそれ以上を含んでもよい。例えば、デバイスまたは方法は、下記の特徴及び/またはプロセスのうちの1つまたはそれ以上を含むように実装されてもよい。このようなデバイスまたは方法は、本明細書に記述されている全ての機能及び/またはプロセスを含む必要はなく、有益な構造及び/または機能性を提供する選択された特徴及び/またはプロセスを包含するように実装されてもよいことが意図されている。
【0047】
先に論じた好適な実施形態に対しては、様々な変形及び追加を行うことができる。従って、本開示の範囲は、これまでに記述された特定の実施形態によって限定されるべきではなく、後述されるクレーム及びその同等物によってのみ画定されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0001】
本開示において論じる実施形態は、インクジェット印刷において使用される方法及びデバイスに関する。例えば、実施形態の中には、インクジェットプリンタのための粒子除去デバイスを包含するものがある。粒子除去デバイスは、少なくとも2列の障害物を含む障害物の配列を備える第1の分離器を含む。各障害物は、第1の分離器内でインクの流路に対して横方向に延びる。障害物の列は、列オフセット率によって互いからオフセットされる。障害物の配列は、臨界直径より大きい直径を有するより大きい粒子をこの配列を通って、かつインク流路の方向に対してある角度に曲げられた第1の軌跡ベクトルに沿って選好的にルーティングするように構成される。インク流路に対する第1の軌跡ベクトルの角度は、列オフセット率の関数である。障害物の配列は、臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子をこの配列を通って、かつインク流路に対して事実上ある角度に曲げられていない第2の軌跡ベクトルに沿ってルーティングするように構成される。第1の分離器は、インクの約100Pa未満の圧力降下を生じさせる。
【0002】
事例によっては、列オフセット率は約0.1から約0.25までの範囲内である。事例によっては、臨界直径は約10μmから約20μmまでの範囲内である。事例によっては、障害物の断面の大きさは約25μmである。事例によっては、列内の障害物間の間隙は臨界直径の約1.5倍より大きい。
【0003】
実装によっては、第2の分離器は第1の分離器へ流体的に結合され、第2の分離器は、より大きい粒子とより小さい粒子とをさらに分離するように構成される挟まれた流れの分別機能を含む。例えば、第2の分離器は、合流させる機能と分出する機能とを含むことが可能である。第2の分離器は、第2のチャネルを流れるより大きい粒子が事実上存在しないインク部分が、第1のチャネルを流れるより大きい粒子を含むインクに接合するシース液体を提供することを可能にすべく構成される1つまたは複数の集束する入口を含んでもよい。
【0004】
実施形態の中には、インクジェットプリンタのための粒子除去デバイスを包含するものがある。粒子除去デバイスは、第1のチャネル及び第2のチャネルと障害物の配列とを備える少なくとも1つの分離器を含む。障害物の配列は、少なくとも約2列かつ約10列以下の障害物を含む。各障害物は、インクの流路に対して横方向に延びる。障害物の列は、オフセット率によって互いからオフセットされる。障害物の配列は、臨界直径より大きい直径を有するより大きい粒子をこの配列を通って、インク流路に対してある角度に曲げられた軌跡ベクトルに沿って第1のチャネル内へルーティングし、かつ臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子をこの配列を通って第1のチャネル及び第2のチャネル内へルーティングするように構成される。実装によっては、分離器内の圧力降下は約100Pa未満である。
【0005】
実施形態の中には、インクから粒子を分離するための層状デバイスを包含するものがある。層状デバイスは、ベース層と、ベース層上へ配置された層状スタックとを含む。層状スタックは、第1のチャネルと、第2のチャネルと、少なくとも2列のバーを備えるバーの配列とを含む分離器を形成する。バーは、分離器内でインクの流路に対して横方向に延び、バーの列は互いからあるオフセット率でオフセットされる。バーの配列は、臨界直径より大きい直径を有するより大きい粒子をこの配列を通って、インク流路に対してある角度に曲げられた第1の軌跡ベクトルに沿って第1のチャネル内へと選好的にルーティングするように構成され、上記第1の軌跡ベクトルの角度はオフセット率の関数である。バーの配列は、臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子を、インク流路に対して事実上ある角度に曲げられていない第2の軌跡ベクトルに沿って第1のチャネルまたは第2のチャネル内へとルーティングするように構成される。
【0006】
事例によっては、この配列は、分離器において約100Pa未満というインクの圧力降下を保全するように構成される。事例によっては、この配列は約2列から約10列までの間のバーを含む。事例によっては、粒子は気泡である。
【0007】
実施形態の中には、インクジェットプリンタ内のインクから粒子を取り除くためのデバイスを製造する方法を包含するものがある。このような方法の1つは、多層スタックの複数の層を形成することと、複数の層のうちの各々を隣接する層へ付着することを含む。多層スタックのうちの各層は、バーの配列のうちの少なくとも1つのバーを形成する。バーの配列は、少なくとも2列のバーを含む分離器を形成し、これらのバーは分離器を横断して横方向へ延びる。バーの列は、オフセット率によって互いからオフセットされる。バーの配列は、より小さい粒子をこの配列を通って第2の軌跡ベクトル沿いにルーティングし、かつより大きい粒子をこの配列を通ってオフセット率の関数である第1の軌跡ベクトル沿いに選好的にルーティングするように構成される。
【0008】
実装によっては、複数の層は、化学エッチング、レーザ切断、打抜き、機械加工及びプリントのうちの1つまたはそれ以上によって形成される。実装によっては、複数の層は、拡散接合、プラズマ接着、接着剤、溶接、化学結合及び機械的接合のうちの1つまたはそれ以上によって付着される。
【0009】
実施形態は、粒子除去装置を含むインクジェットプリンタを包含する。このインクジェットプリンタは、インクを印刷媒体へ向かって予め決められたパターンに従って選択的に噴出するように構成されるインクジェットと、印刷媒体とプリントヘッドとの間に相対移動を提供するように構成される移送機構と、インクがジェットへ入る前にインクから粒子を取り除くように構成される粒子除去装置とを含む。粒子除去装置は、第1のチャネルと第2のチャネルと少なくとも2列の障害物を含む障害物の配列とを備える第1の分離器を含む。障害物は各々、第1の分離器内でインクの流れに対して横方法へ延び、障害物の列はある列シフト率で互いからオフセットされる。障害物の配列は、より大きい粒子をこの配列を通って第1の軌跡ベクトル沿いに第1のチャネル内へルーティングするように構成される。第1の軌跡ベクトルは、列シフト率の関数である。粒子除去装置の大きさは、約100Pa未満のインクの圧力降下を引き起こすように構成される。
【0010】
事例によっては、粒子除去装置は複数の分離器を含んでもよい。例えば、第2の分離器は第1の分離器へ結合されてもよい。分離器は、第2のチャネル内を流れるより大きい粒子の流路を連続して合流させかつ分出するように構成される合流及び分出機能を含むことが可能である。また第2の分離器は、第2のチャネル内を流れる「クリーンな」インクの一部が第1のチャネル内を流れる汚染されたインクに接合するシース液体を提供することを可能にすべく構成される集束入口も含んでもよい。実装によっては、第1の分離器内のオフセットされた列によって引き起こされるより大きい粒子の変位距離は約50μmから約500μmまでの間である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】インクジェットプリンタの粒子除去デバイスを組み込んだ部分を示す内部ビューである。
【図2】インクジェットプリンタの粒子除去デバイスを組み込んだ部分を示す内部ビューである。
【図3】ある例示的なプリントヘッドを示す図である。
【図4】ある例示的なプリントヘッドを示す図である。
【図5】フィンガマニホールド及びインクジェットの図であり、フィンガマニホールドとインクジェット本体との間のインクジェット入口近くにおける粒子除去デバイスの可能な位置を示している。
【図6】障害物の配列を含む粒子分離器を示す断面図である。
【図7】障害物アレイ分離器を含む粒子除去デバイスの一部を示す等角切欠き図である。
【図8】障害物アレイ分離器を含む粒子除去デバイスの一部を示す等角切欠き図である。
【図9】障害物の列毎の正規化された圧力降下をアレイの幾何学的形状の関数として示したものである。
【図10】臨界直径/間隙比とオフセット率との理論的関係を表すグラフである。
【図11】障害物アレイと合流及び分出機能とを含む粒子除去デバイスの等角切欠き図である。
【図12】合流及び分出機能を組み込んだ分離器の動作を示す。
【図13】粒子の分離が重力によって強化されるように配向された合流及び分出機能を含む分離器を示す。
【図14】アレイを利用しない障害物タイプの分離器の形状を描いたものである。
【図15】別の配列の障害物アレイ分離器を示す。
【図16】別の配列の障害物アレイ分離器を示す。
【図17】粒子除去デバイスの製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
インクジェットプリンタは、液体インクの小さい液滴を予め決められたパターンに従って印刷媒体上へ噴出することによって動作する。実装によっては、インクは、用紙等の最終印刷媒体上へ直に噴出される。実装によっては、インクは、例えば印刷ドラムである中間印刷媒体上へ噴出され、次いで中間印刷媒体から最終印刷媒体へ転写される。インクジェットプリンタの中には、インクジェットを供給するために液体インクのカートリッジを使用するものがある。固体インクプリンタは、室温では固体であって、印刷媒体表面上へ噴射される前に溶融される相変化インクを使用するケイパビリティを有する。室温で固体であるインクは、効果的には、インクが、液体インクの場合に典型的に用いられるパッケージまたはカートリッジなしに固形で移送されかつインクジェットプリンタ内へ装填されることを可能にする。実装によっては、固体インクは、溶融インクを中間ドラム上へページ幅のパターンで噴射するページ幅プリントヘッド内で溶融される。中間ドラム上のパターンは、加圧ニップを介して用紙上へ転写される。
【0013】
液体状態では、インクは、インクジェット経路の通過を遮ることができる泡及び/または粒子を含む場合がある。例えば、泡は、固体インクプリンタにおいて、プリンタがパワーダウンされる際のインクの凝固及びプリンタが使用のためにパワーアップされる際のインクの溶融に伴って発生するインクの凝固−溶融サイクルに起因して形成される可能性がある。インクは凝固して固体になるにつれて収縮し、インク内には空気で略充填される空所が形成される。固体インクがインク噴射に先行して溶融するとき、空所内の空気は液体インク内の泡になる可能性がある。インク内の粒子は、インク流路の形成に使用される材料からはげて取れる際にインク内へ導入される場合がある。本明細書で論じる「粒子」という用語は、泡を含むインク内の任意の望ましくない物質を記述するために用いられる。
【0014】
インクジェット経路内の粒子は、結果として最終的な印刷パターンに望ましくない目に見える傷を生じさせる的外れの、断続的な、欠けた、または弱いインク噴射を引き起こす可能性がある。インクジェットプリンタの中には、粒子がプリントヘッドのジェット領域へ到達することを防止するために、インクをフィルタ、フローブリーザ、浮力ベースの分離器または他のデバイスに通すものがある。しかしながら、これらの技法は幾つかの問題点を提示する。フィルタリングは、フィルタがプリンタの稼動寿命期間中に詰まってくる可能性があることから最適ではない。合着された粒子がフィルタを詰まらせないことを保証するためには、かなりの工作が要求される。さらに、フィルタエレメントはインクの流れをある程度妨害し、かつプリントヘッドの動作には望ましくない場合がある圧力降下という不利益を誘発する。この圧力降下は、フィルタ表面がインクから濾過された粒子で覆われていくにつれて悪化される。泡を取り除くためにフローブリーザが使用されているが、これによりプリントヘッド設計がより複雑になる。泡の浮力に依存するデバイスは、プリントヘッドのかさを増大させる。小さい泡、即ちプリントヘッドオリフィス規模の泡の特徴的な上昇速度は極く小さく、よって結果的に分離時間は長大である可能性がある。その結果、分離器エレメントのための専用容積が必要とされ、プリントヘッドのサイズが増大する。
【0015】
本開示に記述される実施形態は、インクジェットプリンタのインクから粒子を除去するための手法を包含する。本開示において論じられる手法の中には、インクから粒子を分離するための手段として障害物アレイ及び/または他の分離エレメントの使用を包含するものがある。障害物アレイは、異なるサイズの粒子に障害物アレイを介する予め決められた異なる軌跡経路を辿らせる。粒子が障害物アレイを介して移動するにつれて、臨界サイズより小さい粒子は臨界サイズを超える粒子から分離される。臨界直径を超える粒子は、アレイを通ってインク流路に対してある角度に曲げられた第1の軌跡ベクトルを辿る。臨界サイズより小さい粒子は、アレイを通ってインクの流れに対して略平行である第2の軌跡ベクトルに沿ってジグザグの経路を辿る。第1の軌跡に沿って流れる粒子は第1のチャネルに集められることが可能であり、かつ第2の軌跡に沿って流れる粒子は第2のチャネルに集められることが可能であり、よって、より大きい粒子はインクジェットへと流れるインクから分離される。
【0016】
図1及び図2は、本明細書で論じているような粒子除去デバイスを組み込んだインクジェットプリンタ100の部分を示す内部ビューである。プリンタ100は、ドラム120をプリントヘッド130に対して移動させかつ用紙140をドラム120に対して移動させるように構成される移送機構110を含む。プリントヘッド130は完全に、または部分的にドラム120の長さに沿って延びてもよく、かつ幾つかのインクジェットを含む。ドラム120が移送機構110によって回転されるにつれて、プリントヘッド130のインクジェットはインクジェット開口を介してインク液滴をドラム120上へ所望されるパターンで溶着する。用紙140がドラム120の周りを進むにつれて、ドラム120上のインクのパターンは加圧ニップ160を介して用紙140へ転写される。
【0017】
図3及び図4は、ある例示的なプリントヘッドをより詳細に示したものである。当初リザーバ内に含まれる溶融インクの経路は、ポート210を介してプリントヘッドのメインマニホールド220へ流入する。図4において最も良く分かるように、事例によっては、1つのインクカラーにつき1つのマニホールドの方式で4つのメインマニホールド220が重ね合わされて存在し、かつこれらのマニホールド220の各々は編み込まれたフィンガマニホールド230へ接続する。インクはフィンガマニホールド230を通過して、インクジェット240内へ進む。図4に示されているマニホールド及びインクジェットの幾何学的配置は矢印の方向へ反復され、所望されるプリントヘッドの長さ、例えばドラム全幅が達成される。
【0018】
本開示において論じられる例によっては、プリントヘッドはインク液滴を噴出させるために圧電トランスデューサ(PZT)を用いるが、インク液滴を噴出させる他の方法も既知であって、このようなプリンタも本明細書に記述されているような粒子除去デバイスを用いてもよい。図5は、フィンガマニホールド230及びインクジェット240をより詳しく示した図であり、フィンガマニホールド230における粒子除去デバイス250の可能な位置を示している。粒子除去デバイス250は、他に、例えばメインマニホールド等に位置決めされてもよい。プリントヘッドは、1つまたは複数の位置に位置合わせされた複数の粒子除去デバイスを含んでもよい。
【0019】
PZT275の起動は、インクジェット本体265へのインクの引き込み及びインクジェット出口270及び開口280を介するインクの放出を交互に行うポンピング行動を生じさせる。粒子除去デバイス250は、障害物の配列及び/またはインク内の粒子と相互に作用する他の機能の配列を含んでもよい。粒子除去機能は、様々なサイズの粒子の流路を制御するために使用されることが可能である。臨界直径を超える大部分の粒子は、臨界直径より大きい直径を有する粒子を事実上含まない「クリーンな」インクがインクジェット本体265へ流れ込めるように迂回されることが可能である。
【0020】
図6は、第1の分離器650を含む粒子除去デバイスを示す断面図である。障害物611a、611b、612a、612b間の間隙距離gより小さい様々な直径dの粒子で汚染されているインクは、分離器650の入力側610から流入する。多くの粒子を抱えたインクは、分離器650内で611a、611b、612a、612bの配列と出合う。この配列は、臨界直径Dcより大きい直径を有するより大きい粒子630を、事実上より大きい粒子630を含まない、かつ/または臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子640を含むインクから分離するように構成される。分離器650内の障害物611a、611b、612a、612bは、大部分のより大きい粒子630はインク流路の方向624に対してある角度で曲げられた第1の軌跡経路に沿って迂回されるが、より小さい粒子640は障害物間をジグザグに進みかつインクの流れの方向624に対して略平行である第2の軌跡経路を辿るように配列される。より小さい粒子は事実上迂回されず、第1及び第2のチャネル651、652の双方へ流入する。より大きい粒子のある角度に曲げられた軌跡に沿った迂回により、かなりの数のより大きい粒子が分離器650の第1のチャネル651へ向かって移動する。事実上より大きい粒子を含まない、かつ/またはより小さい粒子640及びより小数のより大きい粒子630を含むインクは、分離器650の第2のチャネル652へ流入する。従って、第1のチャネル651におけるより大きい粒子630の濃度は、第2のチャネル652におけるより大きい粒子630の濃度より高い。
【0021】
障害物611a、611b、612a、612bの配列は、列611、612による、かつ列毎の幾つかの障害物によるアレイとして見ることができる。図6において、インクの流れが出合う第1の列611は2つの障害物611a、611bを有し、第2の列612は2つの障害物612a、612bを有する。図6は例示を目的として提示されているものであり、よってより多くの列及び/または列毎により多くの障害物が用いられてもよいことは理解されるであろう。列611、612は、列オフセット率εによって互いからオフセットされる。列オフセット率εは、図6に示されているように、後続の各列がシフトされる距離ελをアレイ周期λ(列の障害物間距離)で除算した割合である。粒子分離に関連づけられる臨界直径Dcは、障害物の大きさ、即ち幅w及び長さl、列内の隣接する障害物間の間隙距離g及び列オフセット率εの関数として決定されることが可能である。事例によっては、間隙gはより大きい粒子の直径の約1.5倍より大きくてもよい。事例によっては、列オフセット率は0.1から0.25までの間である。
【0022】
ある粒子が臨界直径Dcより小さい直径を有していれば、この粒子は、粒子640に関連づけられる流路623によって示されているように、障害物の配列を介してジグザグの経路を辿る。ジグザグの経路はインクの流れの方向624に沿うものであり、かつ分離器650を介するインク流路に対して略平行する。臨界直径Dcより大きい直径を有する粒子630は障害物611a、611b、612a、612bにぶつかり、流路621及び622によって示されているように角度αに沿って曲げられる軌跡を辿る。
【0023】
障害物611a、611b、612a、612bのアレイを介して進んだ後、分離器650の第1のチャネル651内を細長い障害物625の第1の側面627に沿って流れるインクは、より大きい粒子630を比較的多く含む。分離器の第2のチャネル652内を細長い障害物625の第2の側面626に沿って流れるインクは、より大きい粒子630を比較的少なく含む。言い替えれば、より大きい粒子630の濃度は、第2のチャネルよりも第1のチャネルにおいて高い。事例によっては、第2のチャネル652内を流れるインクは、より大きい粒子630を事実上含まないものである場合がある。この例示的な実施形態では、第1のチャネル内を流れるインクの流路は、分離器650の出力側613において、細長い機能625によって第2のチャネル652内を流れるインクの流路と位置合わせされる。
【0024】
図7及び図8は、図6に示されている分離器650にある点で類似する分離器750を含む粒子除去デバイスの一部を示す等角切欠き図である。この例示的な実装において、分離器750は、ベース層761と、カバー層762と、多層スタック763とを含む複数の層で形成される。図示されているこの実施形態において、多層スタックは4つの層771−774を含み、4層771−774は各々、分離器750内の障害物配列における少なくとも1つの障害物720を形成する。障害物の配列は、分離器750を横断するx軸に沿って横方向へ延びる2列711、712のバー720を含む。図7及び図8の分離器750では層771−774毎に1つのバー720が示されているが、代替実装が図7及び図8に描かれているものより多いバー列、列毎のより多いバー及び/または層毎のより多いバーを含み得ることは認識されるであろう。分離器750は、より大きい粒子を含む汚染されたインクを含んで運ぶ第1のチャネル751を、より少ない濃度のより大きい粒子を含みかつ/または多数のより大きい粒子を含まない「クリーンな」インクを含んで運ぶ第2のチャネル752から分離する細長い障害物725を含む。図7及び図8に示されている例では、クリーンなインク及び汚染されたインクの分離された流路は、細長い障害物725のそれぞれの側のチャネル752、751において位置合わせされる。第1のチャネル751内を流れるより高い濃度のより大きい粒子を含む汚染されたインクは廃棄ポート及び/またはダンプチャンバ(不図示)へルーティングされてもよく、かつ/または追加的な粒子除去プロセスを施されてもよい。
【0025】
インクジェットプリンタにおいて、適切な噴射を達成するためのインク圧力は典型的には約500パスカル(Pa)であって流量は約0.25g/秒であり、パージ操作の間は平方インチ当たり(psi)約10ポンド及び流量約1g/秒である。インクジェットのアプリケーションは、噴射及び/またはパージに必要とされる最低圧力より下へインク圧力を低下させる過剰な圧力降下を引き起こす粒子分離器を許容することができない。圧力降下は、障害物の列が増えるごとに起こる。粒子分離器デバイスの構成は、圧力を過剰に低下させることなく十分な粒子分離をもたらすように調整されなければならない。アレイの設計は、障害物の大きさ及び/または臨界サイズより大きい粒子の分離の達成に必要とされる列の数及び列毎の障害物の数を決定することを含む。この設計は、許容範囲内のインク圧力低下を達成することによって制約される。
【0026】
事例によっては、インクジェットプリンタのための粒子除去デバイスは、各列に約10個の障害物が存在する約2列から約10列までの間の障害物を備える唯一の障害物アレイを含んでもよい。例えば、半径aを有する円形の障害物、及び障害物間の間隔が半分、λ/2であるアレイについて考察してみる。従って、閉塞比は、β=2a/λである。図9は、障害物の列毎の正規化された圧力降下(ΔProw)を、β及び列内の障害物数の関数として示している。図9は無次元プロットであり、列当たりの圧力降下、単位パスカル、の取得は、ΔProw=μ*U/2aとして計算されてもよい。但し、μは粘度であり、Uはインクの流速であり、2aは障害物の直径である。図9は、ΔProwをアレイ周期(列内の障害物間間隔)に対する障害物直径の比であるβの関数として示している。幅1cm、深さ550μm(Wa=1cm、Ha=550μm、図11参照)の入口の場合、印刷流量0.25g/秒を用いれば、障害物間間隔が25ミクロンであって列毎に直径5.25ミクロンの障害物を有する列は、圧力降下が約5Paになる。従って、列毎に5つの障害物を有する約16列の障害物は、約100Pa以下の圧力降下割当量内に留まることになる。所定のチャネルサイズに対しては、低減された圧力降下を達成するために、より少ない列数、及び/または列毎により少ない障害物数が用いられてもよいことに留意されたい。
【0027】
臨界サイズより大きい粒子の変位量は、アレイ設計によって決定される。この変位は、1つの粒子が第1のチャネルへ到達するために、ある角度に曲げられた軌跡に沿ってy軸沿いに進む距離である。例えば、事例によっては、変位は約50μmから約550μmまでの間であってもよい。バー720は、断面図では長方形または正方形として示されているが、これらは、例えば円形、三角形、菱形、六角形、他である任意の断面形状を有してもよい。障害物の断面形状は、図10に示されているように、臨界直径/間隙比(Dc/g)と列シフト率εとの関係性に影響する場合があると判断されている。図10は、三角形(正三角形)910及び円形912の断面を有する障害物の場合の、εの関数として理論的に導出されたDc/gのグラフを示す。図10のグラフにおいて、曲線910または曲線912より上の領域は、ある角度に曲げられた(インクの流れの方向に対して曲げられた)軌跡を辿る粒子に関連づけられる。曲線910または曲線912より下の領域は、事実上インクの流れの方向に沿ってジグザグの軌跡を辿る粒子に関連づけられる。
【0028】
図7及び図8のそれに類似する基本構成を有するインクジェットプリンタの障害物アレイの設計は、図10におけるグラフ912において提供される理論上のデータを基礎として説明することができる。例えば、分離器750に類似する粒子分離器は、約25μmの層厚を有してもよい。この場合、バー720は厚さ約25μm、及び特定のより大きい粒子は直径約10μm、Dc=10μm、であるものと仮定する。これにより、粒子の臨界直径対間隙値は10/25、即ち0.4になる。グラフ912を基礎とすると、この例の場合、列オフセット率εは約0.12である。図7−図8の構成の上半分においてより大きい粒子による第1のチャネル751への変位を達成するためには、約50μmの変位が必要とされる。バー720に対する各「ぶつかり」は、より大きい粒子を約0.12*25μm=3μmだけ変位させる。この例示的な事例では、約50μmの変位を達成するために、約16列の25μm障害物が必要とされる。この実現においては、16列の各々において列毎に約5個の障害物を用いれば、前述の圧力降下推定で述べたような所望される変位を達成することが可能である。
【0029】
事例によっては、粒子除去デバイスは、直列及び/または並列に配列された複数の分離器を含んでもよい。直列接続式の複数の分離器を含む粒子除去デバイスは、図11に示されている。事例によっては、複数の直列及び/または並列接続式分離器は同じタイプの分離器であってもよく、例えば、2つ以上の分離器が障害物アレイであってもよい。事例によっては、複数の直列及び/または並列接続式分離器は異なるタイプの分離器であってもよい。図11は、障害物タイプの分離器である第1の分離器950と、第2の分離器980とを含む粒子除去デバイスを示し、本例において、第2の分離器980は、徐々に広がる流線形を有する流体力学的フローパターンを生成することによって「クリーンな」インク流路からより大きい粒子を含んで運ぶ流路を分離するように構成される合流及び分出機能を含む。事例によっては、粒子除去デバイスは、各タイプの分離器を1つのみ含んでもよい。
【0030】
図7及び図8に示されている粒子分離器750と同様に、図11の粒子除去デバイスは層状の構造体である。同じく分離器750と同様に、障害物タイプの分離器950は、分離器950を横方向に延びる2列の障害物920(バー)を含む。バー920の列は、図8にさらに詳しく描かれているように、互いからオフセットされる。
【0031】
列のオフセット角、及び列内のバー間の間隙距離は、臨界サイズより大きい直径を有するより大きい粒子を迂回させるように構成される。これらのより大きい粒子を含む汚染されたインクは、細長い障害物925の第1の表面927に沿って延びる第1のチャネル951内へ迂回される。事実上より大きい粒子を含まないクリーンなインクは、細長い障害物925の第2の表面926に沿って延びる第2のチャネル952へ流入する。より大きい粒子が障害物によって迂回される結果、第1のチャネル951内を流れるインクはより大きい粒子を多く含み、より大きい粒子の濃度は第2のチャネル952内を流れるより大きい粒子の濃度より高い。第2のチャネル952内を流れるインクは、より大きい粒子を含まない、またはほとんど含まない比較的「クリーンな」流れである。
【0032】
図6−図8及び図11に示されている障害物タイプの分離器650、750、950は、10μmを超える大きさを有する粒子を10μmより小さい大きさを有する粒子から分離するように構成されてもよい。障害物の配列の間隔は、粒子のサイズに対して比較的大きくてもよく、目詰まりが減じられる。より大きい粒子はインクジェットシステムから除去されるのに対して、例えば約10μmより小さい大きさを有するより小さい粒子は噴射機能に影響する可能性がなく、よって除去されなくてもよい。この分離を達成するように配列される分離器は、断面の大きさ、w及びhを有するバーを含むことが可能である。但し、wは約30μmであり、hは約30−100μmである。列のバー間の間隙gは、約12−25μmであってもよい。バー間の間隙が25μmの場合、列シフト率は0.1以下であってもよい。図11において最も良く分かるように、障害物分離器950への開口は、例えば約1000μmx約250μmである大きさWaxHaを有してもよい。層化された構造体として形成される場合、各層は約25μmの厚さを有してもよい。
【0033】
図11に示されている粒子除去デバイスは、クリーンなインクからより大きい粒子をさらに分離するために用いられる第2の分離器980も含む。事例によっては、第2の分離器980は、より大きい粒子を多く含む第1のチャネル951内を流れるインクに作用する挟まれた流れの分別を適用する。例示的な分離器980の挟まれた流れの分別機能は、より大きい粒子を含むインクの流れを狭い経路に沿って狭窄する合流機能981を含む。合流機能981を通過した後、インクは分出機能982へ流入する。分出機能982に出合うと、より大きい粒子の流路はより小さい粒子の流路から分岐する。サイズに依存して、より大きい粒子は主として分出機能982の中心領域983内を流れ、かつより小さい粒子は主として分出機能982の端領域984に沿って流れる。より大きい粒子は、ダンプチャンバへ向かって、またはベントへとルーティングされることが可能である。合流/分出機能を基礎とする分離器の動作については、図12を参照してさらに詳しく説明する。
【0034】
分離器980は、場合により、流れを合流機能981へと集中させるためにシース液体を用いてもよい。事例によっては、シース液体は、より大きい粒子をより低い濃度で含む「クリーンな」流れからの液体の一部であってもよい。図11の第2の分離器980は、シース液体として、第2のチャネル952内を流れるインク、即ち第1の分離器950からの「クリーンな」インクを用いる。図11は、第2のチャネル952へ流体的に接続される第1のチャネル951の両側における入口961、962を示している。入口961、962は、第1のチャネル951の両側に、汚染されたインク内のより大きい粒子の流れを合流機能981内へ集中させるために第2のチャネル952から第1のチャネル951内へのシース液体(「クリーンな」インク)の導入を可能にする面外のマニホールド機能を提供する。
【0035】
図12は、インクジェットプリンタにおける粒子分離に使用されることが可能な挟まれた流れの分別を提供する合流及び分出機能1081、1082をさらに示す。挟まれた流れの分別は、「流線増幅」の原理に基づいて作用する。この場合、例えば収縮を用いて粒子を密な帯状に集束することにより、異なるサイズの粒子によって遭遇される流線には僅かな差が存在する。流れが拡張部を通るにつれて、流線の差は増幅され、粒子は確定的に拡散する。図11及び図12の例は合流及び分出機能を示しているが、挟まれた流れの分別を達成する他の流体配置も可能であることに留意されたい。
【0036】
合流機能1081に出合う前に、より大きい粒子1030とより小さい粒子1040とが混合されたインクは、長さLc0を有する最初のチャネル1051へ流入する。最初のチャネル1051内のインクの流路は、例えば最初のチャネル1051の片側または両側において最初のチャネル1051内に導入されるシース液体1091、1092によって集束されてもよい。チャネルの壁は合流機能1081において距離Lc1に渡って狭まり、この低減された幅Wc2を距離Lc2に渡って維持してもよい。チャネルの壁は、分出機能1082において距離Ld1に渡って幅Wd0に至るまで拡散し、この幅は長さLd0に渡って維持されてもよい。合流機能1081における流路の収縮の後、インクは、所定の直径より小さい粒子を含み得るクリーンなインクを分出チャネル1082の端の方へ近い流路1091、1093に沿って移動させる分出機能1082内で分岐する。より大きい粒子は、チャネルの中心の方へ近い流路1092に沿って移動する。
【0037】
粒子の流れの中心1094間の距離Dpcは、
Dpc = (Wc0/Wc2)*(D1−D2)/2
によって与えられる。
但し、この場合、Wc0は広いセクションの幅であってWd0に等しく、Wc2は狭められたセクションの幅であり、D1はより大きい粒子の直径であり、かつD2はより小さい粒子の直径である。
【0038】
より大きい粒子の集中された流れは、より小さい粒子の流れから約100μm離れていることが望ましい。ある例では、D1=30μm、及びD2=10μmである。この例では、Wc0/Wc2は約10:1である必要がある。これらの大きさの特定のサイズは、収縮において許容できる圧力降下に依存する。例えば、1cmx550μm断面のインクジェットマニホールドチャネルの場合、長さ1mmの4:1収縮は約80Paの圧力降下を与える。
【0039】
本明細書において提供している先に論じたもの等の例は本来単に例示的なものであること、かつ、当業者であれば、本開示を読んだ時点で、様々な特定の圧力降下が、特定の粒子サイズについて様々な圧力降下制約をサポートする大きさを有する適切な障害物アレイを用いて達成され得る点を理解することは認識されるであろう。
【0040】
実装によっては、合流及び分出機能を含む分離器は重力によって強化される粒子分離をもたらすように配向されてもよい。図13は、合流機能1181及び分出機能1182を含む分離器1150を示す。分離器1150は、重力Fgがより大きい粒子1130を底部チャネル1102へ向けて押し、一方でFgによってさほど影響されないより小さい粒子1140は上部チャネル1101を介して流れるように作用すべく配向される。事例によっては、y方向及びx方向双方の分岐する流れは、粒子の分離に有益であり得る。泡分離の場合、図13に示されている配置は逆転されてもよく、よってチャネルの拡張は重力Fgの方向とは反対方向に発生し、泡の上昇かつクリーンなインクからの分離を可能にする。
【0041】
粒子除去デバイスは、幾つかの様々なタイプの分離器を含んでもよい。図14は、粒子を除去するためにインクジェットプリンタ内に実装され得る分離器の別の例1250を示す。分離器1250は、分離器1250内に配向されるタブ1220と障害物1221とを含む。例えば、ある実装において、配向は図14の軸によって示されるようなものであってもよく、かつ平面図において、タブ1220は分離器チャネルの側壁1201へ付着され、かつ障害物1221は分離器のベースに付着される。
【0042】
図15及び図16は、インクジェット粒子除去デバイスに使用され得るさらに別の障害物タイプの分離器構成を示す。図15は分離器1350の断面図であり、図16は分離器1350の等角切欠き図である。図16に示されているように、分離器は層状の構造体として形成されてもよい。この例では、分離器1350からの流路1355、1356は、分離器1350内への流路1353に対して略直角に曲げられる。分離器1350は、図16に示されているように、バーの配列として構成され得る障害物1320のアレイを含む。図15及び図16に示されている分離器は、層状の構造体の1つまたは複数の層内に形成される出力チャネル1351、1352へ粒子を移動させる垂直形状で配向されることが可能である。図15及び図16に示されている垂直形状は、例えば図7、図8及び図11に描かれているものである何らかの水平形状より小さい設置面積を提供することができる。
【0043】
バー1320の各列は、隣接する列からオフセットされる。先に論じたように、より大きい粒子1330は、列のオフセット角と略位置合わせされた流路内を出力チャネル1351へ向かって進む。より小さい粒子1340はバー1320による迂回を最小限に抑えられ、よって出力チャネル1351、1352の双方へ向かって進む。この具体的な形状では、より大きい粒子1330及びより小さい粒子1340は分離器1350の頂部1357と衝突する。障害物アレイによってより大きい粒子1330が迂回される結果として、出力チャネル1351から流出する液体は、より大きい粒子1330を、出力チャネル1352から流出する液体より高い濃度で有する。出力チャネル1351、1352を介して流れる液体は、他のオペレーションにおいて分路または使用されてもよい。例えば、より大きい粒子1330をより高濃度で有する、出力チャネル1351を介して流れる液体は、廃棄エリアへと分路されてもよい。より大きい粒子1330をより低濃度で有する、出力チャネル1352を介して流れるクリーンな液体は、インクジェットオペレーションに用いられてもよい。
【0044】
粒子除去デバイスは、直列及び/または並列に配列された複数の分離器を含んでもよい。直列接続式の分離器は、多段粒子除去を実装するために用いられてもよく、各段は追加の粒子を除去し、かつ/または連続的にサイズが小型化する粒子を除去する。並列接続式の分離器は、例えば、インク流路における、インク噴射の中断を引き起こすと思われる例えば約100Paより大きい過剰な圧力降下を回避するように実装されてもよい。粒子除去デバイスは、並列に配列された幾つかの分離器及び直列に配列された幾つかの分離器を用いてもよい。より大きい粒子を組み入れている汚染されたインクは、廃棄チャネルを介してルーティングされて廃棄されることが可能である。所定のサイズを超える粒子が排除されているインクは、別のチャネルを介して出て、最終的にプリンタのインクジェットへとルーティングされることが可能である。
【0045】
本明細書において論じている分離器は、単層の構造体として製造されても、複層の構造体として製造されてもよい。図7、図8、図11及び図16は、層状の構造体として形成されている分離器を示す。先に論じたように、層状の構造体は、ベース層と、障害物配列の障害物を形成する多層スタックと、カバーとを含んでもよい。図17は、層状の粒子除去デバイスを製造するための方法を示すフロー図である。本方法は、例えばベース層及び多層スタックの複数の層の各々を含むデバイスの様々な層を形成すること、1610、1620を含む。事例によっては、多層スタックの各層は、例えば、先に論じたように分離器を横断して延びるバーである分離器の障害物を形成する。実装によっては、多層スタックは、図11に示されているような合流及び分出機能を形成してもよい。これらの層は、金属またはプラスチック等の任意の適切な材料で、レーザ切断、打抜き、機械加工、エッチング、蒸着、成形及び/またはプリント等の方法によって作られてもよい。これらの層は、例えば貼り合わせ、拡散接合、プラズマ接着、接着剤、溶接、化学結合及び機械的接合のうちの任意の組合せである任意の適切な方法によって互いに付着されることが可能である1630、1640。
【0046】
本明細書に開示されているシステム、デバイスまたは方法は、本明細書に記述されている特徴、構造、方法またはこれらの組合せのうちの1つまたはそれ以上を含んでもよい。例えば、デバイスまたは方法は、下記の特徴及び/またはプロセスのうちの1つまたはそれ以上を含むように実装されてもよい。このようなデバイスまたは方法は、本明細書に記述されている全ての機能及び/またはプロセスを含む必要はなく、有益な構造及び/または機能性を提供する選択された特徴及び/またはプロセスを包含するように実装されてもよいことが意図されている。
【0047】
先に論じた好適な実施形態に対しては、様々な変形及び追加を行うことができる。従って、本開示の範囲は、これまでに記述された特定の実施形態によって限定されるべきではなく、後述されるクレーム及びその同等物によってのみ画定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の分離機を含むインクジェットプリンタのための粒子/泡除去デバイスであって、前記第1の分離器は、
少なくとも2列の障害物を含む障害物の配列を備え、前記障害物は各々、前記第1の分離器における流路に対して横方向へ延び、前記障害物の列は互いから列オフセット率によってオフセットされ、前記障害物の配列は、前記第1の分離器におけるインクの圧力降下約100Paを維持しながら、臨界直径より大きい直径を有するより大きい粒子を前記配列を通って、かつインク流路に対してある角度に曲げられた第1の軌跡ベクトルに沿って選好的にルーティングするように、かつ前記臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子を、前記配列を通って前記インク流路に対して事実上ある角度に曲げられていない第2の軌跡に沿ってルーティングするように構成され、前記第1の軌跡ベクトルの角度は前記列オフセット率の関数である粒子/泡除去デバイス。
【請求項2】
前記第1の分離器へ流体的に結合される第2の分離器をさらに備え、前記第2の分離器は前記より大きい粒子を前記より小さい粒子からさらに分離するように構成される挟まれた流れの分別機能を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2の分離器は、
合流機能と、
分出機能と、
第2のチャネル内を流れる前記より大きい粒子が事実上存在しないインクの一部が第1のチャネル内を流れる前記より大きい粒子を含むインクに接合するシース液体を提供することを可能にするように構成される1つまたは複数の集束入口とを備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記列オフセット率は約0.1から約0.25までの範囲内である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記臨界直径は約10μmから約20μmまでの範囲内である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
各障害物の断面の大きさは約25μmである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
列内の障害物間の間隙は臨界直径の約1.5倍より大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記障害物の配列は、少なくとも2列でありかつ約10列以下の障害物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の分離器は多層スタックを備え、前記障害物の配列はバーの配列を備え、前記多層スタックの各層は前記バー配列のうちの少なくとも1つのバーを形成する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
インクジェットプリンタにおいてインクから粒子/泡を除去するためのデバイスを製造する方法であって、
ベース層を形成することと、
多層スタックの複数の層を形成することと、
前記多層スタックの第1の層を前記ベース層へ付着することと、
前記多層スタックの各層を前記多層スタックの隣接する層へ付着することを含み、前記多層スタックの各層はバーの配列のうちの少なくとも1つのバーを形成し、前記バーの配列は少なくとも2列のバーを含む分離器を形成し、前記バーは前記分離器を横断して延び、前記バーの列は互いからオフセット率によってオフセットされ、前記バーの配列は、より大きい粒子を前記配列を通って前記オフセット率の関数である第1の軌跡ベクトルに沿って選好的にルーティングするように、かつより小さい粒子を前記配列を通って第2の軌跡ベクトルに沿ってルーティングするように構成される方法。
【請求項1】
第1の分離機を含むインクジェットプリンタのための粒子/泡除去デバイスであって、前記第1の分離器は、
少なくとも2列の障害物を含む障害物の配列を備え、前記障害物は各々、前記第1の分離器における流路に対して横方向へ延び、前記障害物の列は互いから列オフセット率によってオフセットされ、前記障害物の配列は、前記第1の分離器におけるインクの圧力降下約100Paを維持しながら、臨界直径より大きい直径を有するより大きい粒子を前記配列を通って、かつインク流路に対してある角度に曲げられた第1の軌跡ベクトルに沿って選好的にルーティングするように、かつ前記臨界直径より小さい直径を有するより小さい粒子を、前記配列を通って前記インク流路に対して事実上ある角度に曲げられていない第2の軌跡に沿ってルーティングするように構成され、前記第1の軌跡ベクトルの角度は前記列オフセット率の関数である粒子/泡除去デバイス。
【請求項2】
前記第1の分離器へ流体的に結合される第2の分離器をさらに備え、前記第2の分離器は前記より大きい粒子を前記より小さい粒子からさらに分離するように構成される挟まれた流れの分別機能を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2の分離器は、
合流機能と、
分出機能と、
第2のチャネル内を流れる前記より大きい粒子が事実上存在しないインクの一部が第1のチャネル内を流れる前記より大きい粒子を含むインクに接合するシース液体を提供することを可能にするように構成される1つまたは複数の集束入口とを備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記列オフセット率は約0.1から約0.25までの範囲内である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記臨界直径は約10μmから約20μmまでの範囲内である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
各障害物の断面の大きさは約25μmである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
列内の障害物間の間隙は臨界直径の約1.5倍より大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記障害物の配列は、少なくとも2列でありかつ約10列以下の障害物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の分離器は多層スタックを備え、前記障害物の配列はバーの配列を備え、前記多層スタックの各層は前記バー配列のうちの少なくとも1つのバーを形成する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
インクジェットプリンタにおいてインクから粒子/泡を除去するためのデバイスを製造する方法であって、
ベース層を形成することと、
多層スタックの複数の層を形成することと、
前記多層スタックの第1の層を前記ベース層へ付着することと、
前記多層スタックの各層を前記多層スタックの隣接する層へ付着することを含み、前記多層スタックの各層はバーの配列のうちの少なくとも1つのバーを形成し、前記バーの配列は少なくとも2列のバーを含む分離器を形成し、前記バーは前記分離器を横断して延び、前記バーの列は互いからオフセット率によってオフセットされ、前記バーの配列は、より大きい粒子を前記配列を通って前記オフセット率の関数である第1の軌跡ベクトルに沿って選好的にルーティングするように、かつより小さい粒子を前記配列を通って第2の軌跡ベクトルに沿ってルーティングするように構成される方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−131224(P2012−131224A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270580(P2011−270580)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
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