説明

インクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法およびインクジェット塗布方法

【課題】 スペーサ粒子によるムラを効果的に防止することが可能なインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法およびインクジェット塗布方法を提供する。
【解決手段】 多数のスペーサ粒子分散液の吐出口から吐出条件を変えてスペーサ粒子分散液を吐出する吐出工程と、吐出されたスペーサ粒子分散液の画像データを取得する画像データ取得工程と、スペーサ粒子分散液の液滴の面積を測定する面積測定工程と、吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴を撮影する吐出状態撮影工程と、スペーサ粒子分散液の吐出速度を計測する吐出速度計測工程と、ピエゾ素子への印加電圧を決定する吐出条件調整工程と、スペーサ粒子分散液を吐出するタイミングを調整する吐出タイミング調整工程とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置の製造に使用されるインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法およびインクジェット塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、2枚の基板の間に、透明電極、カラーフィルターおよびブラックマトリックスが配置され、さらに透明電極間の空間に液晶が封入された構成を有する。このときに、2枚の基板の間隔を規制し、液晶層の厚みを適正にするために、スペーサが形成される。
【0003】
従来、このスペーサは、フォトリソ法を利用して形成されていたが、マスクを使用した工程が必要となり作業工程が煩雑となるばかりではなく、材料の使用効率が悪いという問題がある。このため、基板にインクジェット方式でスペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を吐出することにより、スペーサ粒子でスペーサを形成する液晶表示装置の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−4094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような液晶表示装置の製造方法においては、インクジェット塗布装置が使用される。すなわち、多数の吐出口を備えたインクジェットヘッドを複数個列設したインクジェットヘッドユニットを、液晶表示装置用の透明基板に対して相対移動させ、それらのインクジェットヘッドから透明基板にスペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を吐出させることにより、透明基板の表面にスペーサ粒子を含むスペーサ領域を形成している。
【0006】
ところで、このようなインクジェット塗布装置においては、各インクジェットヘッドの吐出口から吐出されるスペーサ粒子分散液の液滴量には微妙なバラツキが生ずる。このため、最終的に製造された液晶表示装置に、スペーサ粒子によるムラが生じるという問題がある。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、スペーサ粒子によるムラを効果的に防止することが可能なインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法およびインクジェット塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、液晶表示装置の製造時に、基板間にスペーサ粒子を介在させることにより液晶層封入用のギャップを形成するため、基板の表面に複数のインクジェットヘッドを有するインクジェットヘッドユニットからインクジェット方式によりスペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を塗布するインクジェット塗布装置におけるインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、前記インクジェットヘッドの多数のスペーサ粒子分散液の吐出口から、吐出条件を変えてスペーサ粒子分散液を吐出する吐出工程と、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出状態を検出する吐出状態検出工程と、前記吐出状態検出工程で検出したスペーサ粒子分散液の吐出状態から、各インクジェットヘッドの吐出条件を調整する調整工程とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記吐出状態検出工程においては、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴の面積に基づいて、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出状態を検出する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記吐出状態検出工程においては、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の画像データを取得し、当該画像データを画像処理することにより、前記吐出工程でスペーサ粒子分散液が吐出された基板におけるスペーサ粒子分散液の液滴の面積を測定する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明において、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度を測定する吐出速度測定工程と、前記吐出速度測定工程で測定した吐出速度に基づいて、スペーサ粒子分散液の吐出タイミングを調整する吐出タイミング調整工程とをさらに備える。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記速度測定工程においては、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴をCCDカメラで撮影し、その撮影画像に基づいて、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度を計測する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記吐出状態検出工程においては、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度に基づいて、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出状態を検出する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記吐出状態検出工程においては、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液をCCDカメラで撮影し、その撮影画像に基づいて、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度を計測する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記吐出状態検出工程においては、スペーサ粒子分散液の吐出タイミングと同期して点灯するLED光源により照明されたスペーサ粒子分散液の液滴をCCDカメラにより撮影し、その撮影結果を画像処理することにより前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度を測定する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の発明において、前記吐出状態検出工程で測定した吐出速度に基づいて、スペーサ粒子分散液の吐出タイミングを調整する吐出タイミング調整工程をさらに備える。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の発明において、前記インクジェットヘッドは、ピエゾ素子の駆動によりスペーサ粒子分散液を吐出するものであり、前記吐出工程においては、前記各ピエゾ素子に印加する駆動電圧を変更することにより吐出条件を変更する。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の発明において、前記インクジェットヘッドは、ピエゾ素子の駆動によりスペーサ粒子分散液を吐出するものであり、前記調整工程においては、前記吐出状態検出工程において検出したスペーサ粒子分散液の吐出状態から、前記ピエゾ素子に印加する駆動電圧を調整する。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法を実行した後に、インターレース走査方式で基板に対してペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を塗布する塗布工程を実行することを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、液晶表示装置の製造時に、基板間にスペーサ粒子を介在させることにより液晶層封入用のギャップを形成するため、基板の表面に複数のインクジェットヘッドを有するインクジェットヘッドユニットからインクジェット方式によりスペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を塗布するインクジェット塗布方法において、前記インクジェットヘッドの多数のスペーサ粒子分散液の吐出口から、吐出条件を変えてスペーサ粒子分散液を吐出する吐出工程と、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出状態を検出する吐出状態検出工程と、前記吐出状態検出工程で検出したスペーサ粒子分散液の吐出状態から、各インクジェットヘッドの吐出条件を調整する調整工程とからなるキャリブレーション工程を実行した後、インターレース走査方式で基板に対してペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を塗布する塗布工程を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、スペーサ粒子によるムラを効果的に防止することが可能となる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、スペーサ粒子分散液の吐出状態を容易に検出することが可能となる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、スペーサ粒子分散液の液滴の面積を正確かつ容易に測定することが可能となる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、基板に対するスペーサ粒子分散液の吐出位置を均一とすることが可能となる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、スペーサ粒子分散液の吐出速度を正確かつ容易に測定することが可能となる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、スペーサ粒子によるムラを効果的に防止することが可能となる。
【0027】
請求項7および請求項8に記載の発明によれば、スペーサ粒子分散液の吐出速度を正確かつ容易に測定することが可能となる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、基板に対するスペーサ粒子分散液の吐出位置を均一とすることが可能となる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、スペーサ粒子分散液の吐出条件を容易に変更することが可能となる。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、スペーサ粒子分散液の吐出量を容易に調整して、スペーサ粒子によるムラを効果的に防止することが可能となる。
【0031】
請求項12および請求項13に記載の発明によれば、スペーサ粒子によるムラを防止した上で、一つの領域に対して複数回に分散してスペーサ粒子分散液の塗布が実行されることから、ムラの影響をさらに弱めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】インクジェット塗布装置の斜視図である。
【図2】ガントリー13をその下面から見た斜視図である。
【図3】インクジェットヘッドユニット12をその下面から見た斜視図である。
【図4】インクジェットヘッド18の一部をその下面から見た斜視図である。
【図5】吐出ユニットの概要図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係るキャリブレーション方法のフローチャートである。
【図7】ダミー基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の画像データを示す模式図である。
【図8】ダミー基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の面積とピエゾ素子53へ印加する駆動電圧との関係を示すグラフである。
【図9】インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴を撮影するための吐出状態撮影ユニットの概要図である。
【図10】吐出状態撮影ユニットにより取り込まれたスペーサ粒子分散液の液滴の画像データを示す模式図である。
【図11】キャリブレーション動作を実行した前後のスペーサ粒子分散液の吐出状態を示すグラフである。
【図12】この発明の第2実施形態に係るキャリブレーション方法のフローチャートである。
【図13】インターレース方式で透明基板1にスペーサ粒子分散液を塗布する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
まず、スペーサ粒子分散液を塗布するために使用されるインクジェット塗布装置の構成について説明する。図1は、インクジェット塗布装置の斜視図である。
【0034】
このインクジェット塗布装置は、透明基板1を支持するテーブル11と、12個のインクジェットヘッドユニット12を支持するガントリー13とを備える。テーブル11は、基台14上に配設されたリニアモータ15の駆動を受け、一対のガイド部材16により案内された状態で、ガントリー13におけるインクジェットヘッドユニット12の列設方向と直交する主走査方向に往復移動する。
【0035】
ガントリー13の両端部には、一対のリニアモータ21が配設されており、ガントリー13はこれらのリニアモータ21を介して基台14に支持されている。このため、ガントリー13は、これらのリニアモータ21を個別に駆動することにより、テーブル11による透明基板1の搬送方向との交差角度を変更することができる構成となっている。また、各インクジェットヘッドユニット12は、図示しないリニアモータの駆動により、そのピッチを変更しうる構成となっている。
【0036】
基台14の一端には、インクジェットヘッドユニット12を洗浄する洗浄部22が配設されている。この洗浄部22は、テーブル11による透明基板1の搬送方向と直交する方向に往復移動可能となっている。また、この洗浄部22の移動経路に沿って、インクジェットヘッドユニット12の乾燥を防止するための、12個の乾燥防止部23が配設されている。後述する各インクジェットヘッド18は、待機時においては、これらの乾燥防止部23と対向配置される。
【0037】
図2は、ガントリー13をその下面から見た斜視図である。また、図3は、インクジェットヘッドユニット12をその下面から見た斜視図である。さらに、図4は、インクジェットヘッド18の一部をその下面から見た斜視図である。
【0038】
これらの図に示すように、ガントリー13に支持された12個のインクジェットヘッドユニット12には、ヘッド支持板17が配設されており、このヘッド支持板17には、5個のインクジェットヘッド18が配設されている。このインクジェットヘッド18には、図4に示すように、多数のスペーサ粒子分散液の吐出口19が一方向に列設されている。
【0039】
図5は、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19からスペーサ粒子分散液を吐出するための吐出ユニットの概要図である。
【0040】
この吐出ユニットは、スペーサ粒子分散液の供給口52と、上述したスペーサ粒子分散液の吐出口19とを備え、その内部にスペーサ粒子分散液を貯留する貯留部51を有する。この貯留部51は、駆動電圧を受けて駆動するピエゾ素子53により押圧されることで、スペーサ粒子分散液の液滴を吐出する。
【0041】
以上のような構成を有するインクジェット塗布装置を使用して透明基板1にスペーサ粒子分散液を塗布するときには、最初に、透明基板1をテーブル11上に位置決めして固定する。また、透明基板1におけるブラックマトリックスのピッチに対応させて、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19の列設方向と透明基板1の搬送方向との交差角度と、インクジェットヘッドユニット12のピッチとを変更する。
【0042】
この状態において、テーブル11を透明基板1とともに主走査方向に移動させながら、12個のインクジェットヘッドユニット12における各インクジェットヘッド18からスペーサ粒子分散液を吐出することにより、透明基板1におけるブラックマトリックス上にスペーサ粒子を含むスペーサ領域を形成することができる。
【0043】
ところで、このようなインクジェット塗布装置においては、各インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されるスペーサ粒子分散液の液滴量には微妙なバラツキが生ずる。このため、最終的に製造された液晶表示装置に、スペーサ粒子によるムラが生じるという問題がある。また、スペーサ粒子分散液の吐出口19からのスペーサ粒子分散液の吐出タイミングにもバラツキが生ずることがある。このため、この発明に係るキャリブレーション動作が実行される。
【0044】
図6は、この発明の第1実施形態に係るキャリブレーション方法のフローチャートである。
【0045】
キャリブレーションを行う場合には、最初に、スペーサ粒子分散液を吐出する(ステップS1)。この場合には、インクジェット塗布装置におけるテーブル11上にダミーの基板等を載置し、インクジェットヘッド18より吐出条件を変えてスペーサ粒子分散液を吐出する。より具体的には、吐出ユニットにおけるピエゾ素子53に印加する駆動電圧を変化させた状態で、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19よりスペーサ粒子分散液の液滴を吐出させる。
【0046】
次に、吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出状態を検出するため、吐出されたスペーサ粒子分散液の画像データを取得する(ステップS2)。この画像データの取得は、例えば、スペーサ粒子分散液を吐出したダミーの基板をスキャナで走査することにより行われる。そして、この画像データより、スペーサ粒子分散液の液滴の面積を測定する(ステップS3)。
【0047】
図7は、ダミー基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の画像データを示す模式図である。
【0048】
この画像データは、3個の異なるスペーサ粒子分散液の吐出口19から、連続して3回スペーサ粒子分散液の液滴を吐出した場合のものである。そして、図7(a)はピエゾ素子53への印加する駆動電圧をV1とし、図7(b)はピエゾ素子53への印加する駆動電圧をV1より高いV2とし、図7(c)はピエゾ素子53への印加する駆動電圧をV2よりさらに高いV3とした場合を示している。この図に示すように、ピエゾ素子53への印加する駆動電圧を高くした場合には、ダミー基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の面積は大きくなる。
【0049】
図8は、ダミー基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の面積とピエゾ素子53へ印加する駆動電圧との関係を示すグラフである。
【0050】
上述したように、吐出ユニットにおけるピエゾ素子53に印加する駆動電圧を変化させた状態で、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19よりスペーサ粒子分散液の液滴を複数回吐出し、そのときのスペーサ粒子分散液の面積を測定することにより、図8に示すように、スペーサ粒子分散液の面積とピエゾ素子53への駆動電圧との関係を示すグラフを求めることができる。このグラフを利用した場合には、スペーサ粒子分散液の液滴の面積で表現される必要なスペーサ粒子分散液の液適量Dtを得るために必要なピエゾ素子53への駆動電圧Vtを求めることができる。
【0051】
このスペーサ粒子分散液の液適量Dtとピエゾ素子53への駆動電圧Vtとを求める工程(ステップS2、ステップS3)と並行して、スペーサ粒子分散液の吐出速度を測定する。この吐出速度の測定は、スペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴を撮影する吐出状態撮影工程(ステップS4)と、そのときの撮影画像に基づいて吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度を計測する吐出速度計測工程(ステップS5)とにより実行される。
【0052】
図9は、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴を撮影するための吐出状態撮影ユニットの概要図である。
【0053】
インクジェットヘッド18の吐出口から吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴100は、LED63により照明され、CCDカメラ62により撮像される。このLED63は、パルス信号61と同期して点灯し、CCDカメラ62はパルス信号61と同期して画像を取り込む。また、図5に示す吐出ユニットは、パルス信号61と同期して吐出動作を実行する。すなわち、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19からは、パルス信号61と同期してスペーサ粒子分散液が吐出される。このため、この吐出状態撮影ユニットを使用した場合においては、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されるスペーサ粒子分散液を、静止画として取り込むことができる。
【0054】
図10は、この吐出状態撮影ユニットにより取り込まれたスペーサ粒子分散液の液滴の画像データを示す模式図である。
【0055】
この図において、左側はスペーサ粒子分散液がインクジェットヘッド18の下面より離隔した直後の状態を示しており、右側はスペーサ粒子分散液がインクジェットヘッド18の吐出口19より吐出された直後の状態を示している。このため、図10に示す距離Hと、スペーサ粒子分散液がこの距離Hを移動するのに要する時間とを測定することにより、スペーサ粒子分散液の吐出速度を計測することが可能となる。
【0056】
再度図6を参照して、以上の工程が完了すれば、吐出条件調整工程を実行する(ステップS6)。この吐出条件調整工程においては、予め求めたスペーサ粒子分散液の液適量Dtとピエゾ素子53へ印加する駆動電圧Vtとの関係に基づいて、図8に示すように、必要なスペーサ粒子分散液の液適量Dtを得るためのピエゾ素子53へ印加する駆動電圧Vtを、インクジェットヘッド18の各吐出ユニット毎に決定する。
【0057】
また、吐出条件調整工程に引き続き、吐出タイミング調整工程を実行する(ステップS7)。この吐出タイミング調整工程においては、予め求めたスペーサ粒子分散液の吐出速度に基づいて、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19からスペーサ粒子分散液を吐出するタイミングを、インクジェットヘッド18の各吐出ユニット毎に調整する。より具体的には、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されたスペーサ粒子分散液の速度が速い場合には、その吐出ユニットにおけるスペーサ粒子分散液吐出タイミングが遅くなるように調整する。また、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されたスペーサ粒子分散液の速度が遅い場合には、その吐出ユニットにおけるスペーサ粒子分散液吐出タイミングが早くなるように調整する。
【0058】
以上のキャリブレーション動作を実行することにより、スペーサ粒子分散液の液滴量を均一にして、スペーサ粒子によるムラを効果的に防止することができると同時に、スペーサ粒子分散液の吐出位置を均一とすることができる。
【0059】
図11は、上述したキャリブレーション動作を実行した前後のスペーサ粒子分散液の吐出状態を示すグラフである。この図においては、横軸はインクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19の位置を示し、縦軸は吐出されたスペーサ粒子分散液量を示している。また、この図においては、丸印はキャリブレーション動作を実行する前を、また、三角印はキャリブレーション動作を実行した後を、各々示している。さらに、図11(a)と図11(b)とは、異なるインクジェットヘッド18のデータを示している。
【0060】
図11から明らかなように、上述したキャリブレーション動作を実行することにより、一つのインクジェットヘッド18における各スペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されたスペーサ粒子分散液の液適量が均一となる。そして、各スペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されたスペーサ粒子分散液の液適量は、複数のインクジェットヘッド18間においても均一となる。
【0061】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図12は、この発明の第2実施形態に係るキャリブレーション方法のフローチャートである。
【0062】
上述した第1実施形態にかかるキャリブレーション方法においては、画像処理を行ってスペーサ粒子分散液の液滴の面積を測定することによりスペーサ粒子分散液の液適量を測定して、スペーサ粒子分散液の吐出状態を認定している。これに対して、この第2実施形態に係るキャリブレーション方法においては、スペーサ粒子分散液の吐出速度に基づいて、スペーサ粒子分散液の吐出状態を認定している。
【0063】
すなわち、一般的に、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されるスペーサ粒子分散液の速度と液適量とは比例関係にある。すなわち、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されるスペーサ粒子分散液の速度が早いほど、その液適量も多くなる。このため、この第2実施形態においては、スペーサ粒子分散液の吐出速度のみに基づいて、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出するスペーサ粒子分散液の液適量と、その吐出タイミングの両方を調整するようにしている。
【0064】
この第2実施形態においても、最初に、スペーサ粒子分散液を吐出する(ステップS11)。この場合には、上述した第1実施形態と同様、インクジェット塗布装置におけるテーブル11上にダミーの基板等を載置し、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19から、吐出条件、すなわち、各ピエゾ素子53に印加する駆動電圧を変えてスペーサ粒子分散液を吐出する。
【0065】
次に、スペーサ粒子分散液の吐出速度を測定する。この吐出速度の測定は、上述した第1実施形態と同様、スペーサ粒子分散液の吐出口19から吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴を図9に示す吐出状態撮影ユニットにより撮影する吐出状態撮影工程(ステップS12)と、そのときの撮影画像に基づいて吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度を計測する吐出速度計測工程(ステップS13)とにより実行される。
【0066】
次に、吐出条件調整工程を実行する(ステップS14)。この吐出条件調整工程においては、吐出速度計測工程において計測したスペーサ粒子分散液の吐出速度に基づいて、各吐出ユニット毎に、ピエゾ素子53へ印加する駆動電圧Vtを調整する。より具体的には、スペーサ粒子分散液の吐出速度が速い場合にはVtが小さくなる方向に調整し、スペーサ粒子分散液の吐出速度が遅い場合にはVtが大きくなる方向に調整する。
【0067】
そして、吐出条件調整工程に引き続き、吐出タイミング調整工程を実行する(ステップS15)。この吐出タイミング調整工程においては、スペーサ粒子分散液の吐出速度に基づいて、インクジェットヘッド18におけるスペーサ粒子分散液の吐出口19からスペーサ粒子分散液を吐出するタイミングを、インクジェットヘッド18の各吐出ユニット毎に調整する。
【0068】
この第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様、スペーサ粒子分散液の液滴量を均一にして、スペーサ粒子によるムラを効果的に防止することができると同時に、スペーサ粒子分散液の吐出位置を均一とすることができる。
【0069】
以上のようなキャリブレーション動作により、スペーサ粒子によるムラを効果的に防止することが可能となるが、このようなムラの発生をより確実に解消するためには、スペーサ粒子分散液の塗布方式として、インターレース方式を採用することが好ましい。
【0070】
図13は、インターレース走査方式で透明基板1にスペーサ粒子分散液を塗布する状態を示す説明図である。
【0071】
上述したインクジェット塗布装置においてスペーサ粒子分散液を塗布するときには、図13(a)において矢印1で示すように、テーブル11を透明基板1とともに主走査プラス方向に移動させながら、12個のインクジェットヘッドユニット12における各インクジェットヘッド18からスペーサ粒子分散液を吐出することにより、透明基板1におけるストライプ状の領域A、C、E、G・・・にスペーサ粒子分散液を吐出する。
【0072】
次に、12個のインクジェットヘッドユニット12を、その列設方向(副走査方向)にストライプ状の領域の半分の距離(各インクジェットヘッドユニット12によるスペーサ粒子分散液の副走査方向の塗布領域の2分の一の距離)だけ、副走査方向に移動させる。
【0073】
そして、図13(b)において矢印2で示すように、さらにテーブル11を透明基板1とともに主走査マイナス方向に移動させながら、12個のインクジェットヘッドユニット12における各インクジェットヘッド18からスペーサ粒子分散液を吐出することにより、透明基板1における既にスペーサ粒子分散液が塗布された領域と半ピッチ分だけずれたストライプ状の領域にスペーサ粒子分散液を吐出する。
【0074】
次に、12個のインクジェットヘッドユニット12を、その列設方向(副走査方向)にストライプ状の領域の半分の距離(各インクジェットヘッドユニット12によるスペーサ粒子分散液の副走査方向の塗布領域の2分の一の距離)だけ、さらに副走査方向に移動させる。
【0075】
次に、図13(a)において矢印3示すように、テーブル11を透明基板1とともに主走査プラス方向に移動させながら、12個のインクジェットヘッドユニット12における各インクジェットヘッド18からスペーサ粒子分散液を吐出することにより、透明基板1における既にスペーサ粒子分散液が塗布されたストライプ状の領域B、D、F、H・・・にスペーサ粒子分散液を吐出する。
【0076】
次に、12個のインクジェットヘッドユニット12を、その列設方向(副走査方向)にストライプ状の領域の半分の距離(各インクジェットヘッドユニット12によるスペーサ粒子分散液の副走査方向の塗布領域の2分の一の距離)だけ、さらに副走査方向に移動させる。
【0077】
そして、図13(b)において矢印4で示すように、さらにテーブル11を透明基板1とともに主走査マイナス方向に移動させながら、12個のインクジェットヘッドユニット12における各インクジェットヘッド18からスペーサ粒子分散液を吐出することにより、透明基板1における既にスペーサ粒子分散液が塗布された領域と半ピッチ分だけずれたストライプ状の領域にスペーサ粒子分散液を吐出する。
【0078】
このようなインターレース走査方式で透明基板1にスペーサ粒子分散液を塗布することにより、一つの領域に対して複数回に分散してスペーサ粒子分散液の塗布が実行されることから、一走査毎のムラの影響を弱めることが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 透明基板
11 テーブル
12 インクジェットヘッドユニット
13 ガントリー
14 基台
15 リニアモータ
16 ガイド部材
17 ヘッド支持板
18 インクジェットヘッド
19 吐出口
51 貯留部
52 供給口
53 ピエゾ素子
61 パルス信号
62 CCDカメラ
63 LED
100 スペーサ粒子分散液の液滴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置の製造時に、基板間にスペーサ粒子を介在させることにより液晶層封入用のギャップを形成するため、基板の表面に複数のインクジェットヘッドを有するインクジェットヘッドユニットからインクジェット方式によりスペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を塗布するインクジェット塗布装置におけるインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記インクジェットヘッドの多数のスペーサ粒子分散液の吐出口から、吐出条件を変えてスペーサ粒子分散液を吐出する吐出工程と、
前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出状態を検出する吐出状態検出工程と、
前記吐出状態検出工程で検出したスペーサ粒子分散液の吐出状態から、各インクジェットヘッドの吐出条件を調整する調整工程と、
を備えたことを特徴とするインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記吐出状態検出工程においては、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴の面積に基づいて、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出状態を検出するインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記吐出状態検出工程においては、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の画像データを取得し、当該画像データを画像処理することにより、前記吐出工程でスペーサ粒子分散液が吐出された基板におけるスペーサ粒子分散液の液滴の面積を測定するインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度を測定する吐出速度測定工程と、
前記吐出速度測定工程で測定した吐出速度に基づいて、スペーサ粒子分散液の吐出タイミングを調整する吐出タイミング調整工程と、
をさらに備えるインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記速度測定工程においては、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴をCCDカメラで撮影し、その撮影画像に基づいて、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度を計測するインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項6】
請求項1に記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記吐出状態検出工程においては、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度に基づいて、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出状態を検出するインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記吐出状態検出工程においては、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液をCCDカメラで撮影し、その撮影画像に基づいて、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度を計測するインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記吐出状態検出工程においては、スペーサ粒子分散液の吐出タイミングと同期して点灯するLED光源により照明されたスペーサ粒子分散液の液滴をCCDカメラにより撮影し、その撮影結果を画像処理することにより前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出速度を測定するインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれかに記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記吐出状態検出工程で測定した吐出速度に基づいて、スペーサ粒子分散液の吐出タイミングを調整する吐出タイミング調整工程をさらに備えるインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記インクジェットヘッドは、ピエゾ素子の駆動によりスペーサ粒子分散液を吐出するものであり、
前記吐出工程においては、前記各ピエゾ素子に印加する駆動電圧を変更することにより吐出条件を変更するインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法において、
前記インクジェットヘッドは、ピエゾ素子の駆動によりスペーサ粒子分散液を吐出するものであり、
前記調整工程においては、前記吐出状態検出工程において検出したスペーサ粒子分散液の吐出状態から、前記ピエゾ素子に印加する駆動電圧を調整するインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のインクジェットヘッドユニットのキャリブレーション方法を実行した後に、インターレース走査方式で基板に対してペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を塗布する塗布工程を実行することを特徴とするインクジェット塗布方法。
【請求項13】
液晶表示装置の製造時に、基板間にスペーサ粒子を介在させることにより液晶層封入用のギャップを形成するため、基板の表面に複数のインクジェットヘッドを有するインクジェットヘッドユニットからインクジェット方式によりスペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を塗布するインクジェット塗布方法において、
前記インクジェットヘッドの多数のスペーサ粒子分散液の吐出口から、吐出条件を変えてスペーサ粒子分散液を吐出する吐出工程と、前記吐出工程で吐出されたスペーサ粒子分散液の吐出状態を検出する吐出状態検出工程と、前記吐出状態検出工程で検出したスペーサ粒子分散液の吐出状態から、各インクジェットヘッドの吐出条件を調整する調整工程とからなるキャリブレーション工程を実行した後、
インターレース走査方式で基板に対してペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液を塗布する塗布工程を実行することを特徴とするインクジェット塗布方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−217670(P2010−217670A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65939(P2009−65939)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【出願人】(392007566)ナトコ株式会社 (42)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】