説明

インクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物

【課題】本発明が解決しようとする課題は、非常に優れた耐擦過性や耐アルカリ性を備えた高発色の印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダー及び該バインダーを含むインクジェット印刷用インクを提供することである。
【解決手段】本発明は、芳香族ポリエステルポリオール(a1)と、親水性基含有ポリオール(a2)とを含むポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を反応させることによって得られるポリウレタン(C)、ならびに、水性媒体(D)を含み、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)が、芳香族構造を1000mmol/kg〜5000mmol/kg有するものであることを特徴とするインクジェット印刷インク用バインダーに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷に使用可能なインク用のバインダー及びそれを含むインクジェット印刷用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、成長が著しいインクジェット印刷関連業界では、インクジェットプリンターの高性能化やインクの改良等が飛躍的に進み、一般家庭でも容易に銀塩写真並みの高光沢で高精細な画像を得ることが可能となりつつある。
【0003】
なかでもインクについては、従来の染料インクから顔料インクへの移行や、溶剤系から水系への移行等の、高画質化と環境負荷低減とを目的とした改良が急速に進められており、現在は、水系の顔料インクをベースとしたインク開発が積極的に行われている。
【0004】
また、前記インクには、インクジェットプリンター等の高性能化に伴って、年々、一層高いレベルの性能が要求されるようになっており、例えば、印刷画像表面に外力が加わった場合に生じうる摩擦等によって、顔料の欠落に起因した印刷画像の色落ちや劣化等を防止できるレベルの耐擦過性や、ガラスクリーナーをはじめとする各種洗浄剤が印刷画像表面に付着した場合に印刷画像のにじみや色落ちを引き起こさないレベルの耐薬品性等の耐久性が、近年強く求められている。
【0005】
前記耐擦過性に優れたインクとしては、例えば、顔料、水性樹脂及び水性媒体を含むインクジェット記録用インクにおいて、前記水性樹脂が有機ジイソシアネートと、ポリオキシエチレン構造を有するジオールとを反応させて得られるポリウレタン樹脂であって、前記ポリウレタン樹脂がカルボキシル基を有し、かつ特定の酸価、数平均分子量、及び特定量の前記ポリオキシエチレン構造を有するものであるインクジェット記録用インクが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
前記インクジェット記録用インクを用いて印刷して得られた画像は、例えば紙間の擦れ等に起因した顔料の脱落を防止できる等、ある程度の耐擦過性を有するものであった。
【0007】
しかし、インクジェット印刷物の使用分野が広範となるのに伴い、より一層の高いレベルの耐擦過性が求められるなかで、前記インクジェット記録用インクを用いて形成された印刷画像は、例えば極所的に強い外力が加わった場合等に、依然として顔料の脱落等に起因した印刷画像の色落ちや劣化や損傷を引き起こす場合があった。また、前記インクジェット記録用インクを用いて印刷して得られた画像は、その表面に、例えばアルカリ性洗浄剤等が付着した場合に、印字表面に浮きやにじみが発生するという問題があった。
【0008】
また、インクジェット印刷物の使用分野が広範となるのに伴い、従来よりも鮮明で高発色の印刷画像を形成可能なインクやインク受容層が求められているなかで、前記特許文献1記載のインクでは、従来品を上回る高発色の印刷画像を形成することが困難な場合があった。
【0009】
以上のように、非常に優れた耐擦過性とともに、優れた耐アルカリ性とを両立でき、かつ、高発色の印刷画像を形成できるインクジェット印刷用インクが産業界から求められているものの、それらを備えたインクジェット印刷用インク及びその製造に使用可能なインクジェット印刷インク用バインダーは、未だ見いだされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−1639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、非常に優れた耐擦過性や耐アルカリ性を備えた高発色の印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダー及び該バインダーを含むインクジェット印刷用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記課題のうち、特に高発色の印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インクを見出すべく、ポリウレタンの製造に使用するポリイソシアネート及びポリオールの様々な組み合わせを検討した。
【0013】
具体的には、印刷画像の発色濃度を向上させるためには、ポリウレタン中に含まれる芳香族構造の割合を増加させることが有効ではないかと考え、ポリイソシアネートとして芳香族ポリイソシアネートを使用することを検討した。
【0014】
しかし、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをはじめとする芳香族ポリイソシアネートを用いて得られたポリウレタンは、一般に、経時的に黄変色するという問題があるため、前記ポリウレタンを用いて得られたインクでは、所望の印刷画像を形成することができない場合があった。
【0015】
そこで、ポリウレタンの製造に使用するポリオールとして、芳香族ポリオールを使用することを検討した。
【0016】
しかし、従来、インクジェット印刷インク用に使用されるポリウレタンの製造には、水の影響による加水分解を防止する観点から、ポリオールとしてポリエーテルポリオールやポリカーボネートポリオールを使用することが一般的であり、また、前記ポリエーテルポリオールやポリカーボネートポリオールとして、芳香族構造を有するものは、あまり知られておらず、それらを用いてポリウレタン中に芳香環構造を導入することは、困難な場合があった。
【0017】
そこで、本発明者等は、前記ポリオールとしてポリエステルポリオールを使用することを検討した。具体的には、前記ポリエステルポリオールのうち、ポリウレタン等を製造する際の原料として従来から知られている芳香族ポリエステルポリオールを使用することを検討した。
【0018】
しかし、ポリエステルポリオールは水の影響によって加水分解しやすいというのが、本願出願時において技術常識であるため、単に芳香族ポリエステルポリオールを使用することのみでは、本発明の課題を解決することは困難であると考え、様々な芳香族ポリエステルポリオールやポリイソシアネート等との組み合わせを検討した。
【0019】
その結果、前記芳香族ポリエステルポリオールのうち、特定量の芳香族構造を有するポリエステルポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させることによって得られたポリウレタンであれば、ポリエステルポリオールの加水分解に起因する印字物の発色濃度等の低下を引き起こすことなく、非常に優れた耐擦過性や耐アルカリ性を備えた高発色の印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダーに使用できることを見出した。
【0020】
すなわち、本発明は、芳香族ポリエステルポリオール(a1)と、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)以外の親水性基含有ポリオール(a2)とを含むポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を反応させることによって得られるポリウレタン(C)、ならびに、水性媒体(D)を含むインクジェット印刷インク用バインダーであって、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)が、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)全量に対して芳香族構造を1000mmol/kg〜5000mmol/kg有するものであることを特徴とするインクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のインクジェット印刷インク用バインダーを含むインクジェット印刷用インクであれば、強い外力が加わった場合であっても顔料の脱落等を引き起こすことなく、高精細な印刷画像を維持することが可能となり、銀塩写真並みの耐擦過性、優れた耐アルカリ性、更には、高発色性を付与できることから、例えば、インクジェット印刷による写真印刷や、インクジェット印刷による高速印刷によって得られた印刷物を、屋外広告等をはじめとする様々な場面で使用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、芳香族ポリエステルポリオール(a1)と、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)以外の親水性基含有ポリオール(a2)とを含むポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)及び必要に応じて鎖伸長剤等を反応させることによって得られるポリウレタン(C)、水性媒体(D)、ならびに、必要に応じてその他の添加剤を含むインクジェット印刷インク用バインダーであって、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)が、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)全量に対して芳香族構造を1000mmol/kg〜5000mmol/kg有するものであることを特徴とするインクジェット印刷インク用バインダーである。
【0023】
はじめに、本発明で使用するポリウレタン(C)について説明する。
本発明で使用するポリウレタン(C)は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)等とを反応させることによって得られるポリウレタンのうち、前記ポリオール(A)として、芳香族ポリエステルポリオール(a1)全量に対して芳香族構造を1000mmol/kg〜5000mmol/kg有する芳香族ポリエステルポリオール(a1)と、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)以外の親水性基含有ポリオール(a2)とを含むものを使用して得られるポリウレタン(C)である。
【0024】
本発明では、芳香族構造を1000mmol/kg〜5000mmol/kg有する芳香族ポリエステルポリオール(a1)を使用することが、非常に優れた吐出安定性を備え、かつ、高発色な印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得るうえで重要である。
【0025】
ここで、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)の代わりに、芳香族構造が800mmol/kgである芳香族ポリエステルポリオールを用いることによって得られたポリウレタンを含むインクジェット印刷インク用バインダーでは、水の影響による加水分解が進行しやすく、インクの保存安定性が著しく低下し、高発色の印刷画像を形成することが困難な場合がある。また、得られる印刷画像の耐擦過性や耐アルカリ性もまた、実用上十分でない場合があった。
【0026】
一方、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)の代わりに、芳香族構造が5500mmol/kgである芳香族ポリエステルポリオールを用いることによって得られたポリウレタンを含むインクジェット印刷インク用バインダーは、保存安定性や吐出安定性の点で十分でなく、発色濃度や耐擦過性等の著しい低下を引き起こす場合がある。
【0027】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)としては、インクの吐出安定性を損なうことなく、非常に優れた耐擦過性や耐アルカリ性を備えた高発色の印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得る観点から、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)の全量に対して芳香族構造を1000mmol/kg〜5000mmol/kgの範囲で有するものを使用することが好ましく、1500mmol/kg〜4500mmol/kgの範囲で有するものを使用することがより好ましい。
【0028】
また、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)は、非常に優れた耐擦過性や耐アルカリ性を備えた高発色の印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得る観点から、前記ポリウレタン(C)の製造に使用する前記ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)の合計質量に対して30質量%〜80質量%の範囲で使用することが好ましく、40質量%〜70質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0029】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)としては、具体的には、分子中に1個以上の芳香族環構造を有するものを使用することができる。
【0030】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)としては、例えば低分子量ポリオール(a1−1)と、ポリカルボン酸(a1−2)またはそのエステル化物またはその酸無水物等とを、従来知られる方法によって脱水縮合反応して得られるものを使用することができる。
【0031】
前記ポリオール(a1−1)としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2-ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ポリオールや、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキサイド付加物などの低分子ポリオールを使用することができる。
【0032】
また、前記ポリオール(a1−1)としては、例えば1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2-ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の炭素原子数1〜6のアルキル基を側鎖に有するグリコールを使用することができる。
【0033】
なかでも、前記ポリオール(a1−1)としては、炭素原子数1〜6のアルキル基を側鎖に有するグリコールを使用することが、加水分解を抑制し保存安定性や吐出安定性に優れ、かつ、高発色の印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得るうえで好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基を側鎖に有する1,3−プロパンジオールや、炭素原子数1〜6のアルキル基を側鎖に有する1,5−ペンタンジオールを使用することがより好ましい。
【0034】
前記炭素原子数1〜6のアルキル基を側鎖に有するグリコールは、前記ポリオール(a1−1)の全量に対して5質量%〜60質量%の範囲で使用することが、加水分解を抑制し保存安定性や吐出安定性に優れ、かつ、高発色の印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得るうえで好ましい。
【0035】
また、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)を製造する際に使用するポリカルボン酸(a1−2)としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ポリカルボン酸、及びこれらの無水物またはエステル化物を使用することができる。
【0036】
前記低分子量ポリオール(a1−1)及び前記ポリカルボン酸(a1−2)の組み合わせとしては、いずれか一方または両方に芳香族構造を有するものを使用することが必須である。具体的には、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)としては、エチレングリコールやジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、前記炭素原子数1〜6のアルキル基を側鎖に有するグリコール等の脂肪族ポリオールと、テレフタル酸やイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ポリカルボン酸と、必要に応じて前記脂肪族ポリカルボン酸とを組み合わせ反応させることによって得られるものを使用することが好ましい。
【0037】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)としては、加水分解を抑制し保存安定性や吐出安定性に優れ、かつ、耐擦過性や耐アルカリ性に優れた高発色の印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得るうえ、800〜6000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
【0038】
前記ポリウレタン(C)を製造する際に使用するポリオール(A)としては、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)とともに、芳香族ポリエステルポリオール(a1)以外の親水性基含有ポリオール(a2)を使用する。
【0039】
前記親水性基含有ポリオール(a2)は、前記水性媒体(D)中におけるポリウレタン(C)の良好な水分散安定性を付与し、保存安定性や吐出安定性に優れたインクジェット印刷インク用バインダーを得るうえで必須である。
【0040】
また、前記親水性基含有ポリオール(a2)としては、例えば、アニオン性基含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及びノニオン性基含有ポリオールを使用することができ、なかでもアニオン性基含有ポリオールまたはカチオン性基含有ポリオールを使用することが好ましく、アニオン性基含有ポリオールを使用することが好ましい。
【0041】
前記アニオン性基含有ポリオールとしては、例えばカルボキシル基含有ポリオールや、スルホン酸基含有ポリオールを使用することができる。
【0042】
前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等を使用することができ、なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。
【0043】
前記スルホン酸基含有ポリオールとしては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸、及びそれらの塩等を使用することができる。
【0044】
前記カルボキシル基含有ポリオールやスルホン酸基含有ポリオールは、前記ポリウレタン(C)の酸価が5〜100の範囲で使用することが好ましく、10〜70となる範囲で使用することが特に好ましい。なお、本発明で言う酸価は、前記ポリウレタン(C)の製造に使用したカルボキシル基含有ポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。
【0045】
前記アニオン性基は、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されていることが、良好な水分散性を発現するうえで好ましい。
【0046】
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の沸点が200℃以上の有機アミンや、NaOH、KOH、LiOH等を含む金属水酸化物等を使用することができる。前記塩基性化合物は、得られるインクの分散安定性を向上させる観点から、塩基性化合物/アニオン性基=0.5〜3.0(モル比)となる範囲で使用することが好ましく、0.9〜2.0(モル比)となる範囲で使用することがより好ましい。
【0047】
また、前記カチオン性基含有ポリオールとしては、例えば3級アミノ基含有ポリオールを使用することができ、具体的にはN−メチル−ジエタノールアミンや、1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオールなどを使用することができる。
【0048】
前記カチオン性基は、その一部または全部が、蟻酸、酢酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、アジピン酸等の酸性化合物で中和されていることが好ましい。
【0049】
また、前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部または全部が4級化されていることが好ましい。前記4級化剤としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、エチルクロライド等を使用することができ、ジメチル硫酸を使用することが好ましい。
【0050】
また、前記ノニオン性基含有ポリオールとしては、エチレンオキサイド由来の構造単位を有するポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0051】
また、前記ポリオール(A)としては、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)や前記親水性基含有ポリオール(a2)以外に、必要に応じてその他のポリオール(a3)を使用することができる。
【0052】
前記その他のポリオール(a3)としては、例えば前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)や前記親水性基含有ポリオール(a2)以外のポリエーテルポリオールやポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール等を使用することができる。前記その他のポリオール(a3)を使用する場合、前記ポリウレタン(C)の製造に使用する前記ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)の合計質量に対して1質量%〜50質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0053】
前記その他のポリオール(a3)として使用可能なポリエーテルポリオールとしては、たとえば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0054】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0055】
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0056】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるもの等を使用することができる。
【0057】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0058】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2-ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0059】
また、前記その他のポリオール(a3)としては、前記したものの他に、脂肪族環式構造含有ポリオールを使用することが、耐擦過性や耐アルカリ性や耐アルコール性を向上するうえで好ましい。
【0060】
前記脂肪族環式構造含有ポリオールとしては、例えばシクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン−ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ−ルA、1,3−アダマンタンジオール等の、概ね100〜500程度の低分子量の脂肪族環式構造含有ポリオールを使用することができる。なお、上記脂肪族環式構造含有ポリオールの分子量は、式量に基づくものである。
【0061】
また、前記脂肪族環式構造含有ポリオールとしては、前記100〜500程度の低分子量の脂肪族環式構造含有ポリオールと他の成分とを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオールや脂肪族環式構造含有ポリエステルポリオールや脂肪族環式構造含有ポリエーテルポリオール等を単独または2種以上併用して使用することができる。
【0062】
前記脂肪族環式構造含有ポリオールとしては、100〜500の分子量を有する脂肪族環式構造含有ポリオールを使用することが、非常に優れた耐擦過性や耐アルカリ性や耐アルコール性を付与するうえで好ましい。より具体的には、前記脂肪族環式構造含有ポリオールとして1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用することが好ましい。
【0063】
前記100〜500の分子量を有する脂肪族環式構造含有ポリオールは、前記ポリウレタン(C)の製造に使用する前記ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)の合計質量に対して1質量%〜15質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0064】
また、前記その他のポリオール(a3)としては、前記したものの他に、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等を使用することができる。
【0065】
前記ポリウレタン(C)の製造に使用可能で、前記ポリオール(A)と反応しうるポリイソシアネート(B)としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートあるいは脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートを使用することができる。なかでも、黄変色を防止する観点では脂肪族ポリイソシアネートを使用することが好ましく、前記変色防止とともに、耐擦過性や耐アルカリ性や耐アルコール性のより一層の向上を図る観点では、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0066】
前記ポリウレタン(C)は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させることによってポリウレタンを製造し、次いで、前記ポリウレタン中の親水性基の一部または全部を必要に応じて中和したものを、水系媒体(D)中に混合し水性化する際に、必要に応じて鎖伸長剤と混合し、反応させることによって製造することができる。
【0067】
前記ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応は、例えば、前記ポリオール(B)が有する水酸基に対する、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0068】
また、前記ポリウレタン(C)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を、単独で使用または2種以上を使用することができる。
【0069】
本発明で使用するポリウレタン(C)は、ポリウレタンの分子量を高めることを目的として、必要に応じて鎖伸長剤を好適に使用することができる。
【0070】
前記ポリウレタン(C)を製造する際に使用できる鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
【0071】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
【0072】
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーの保存安定性が低下しない範囲内で単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0073】
前記鎖伸長剤は、例えばポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比が、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3〜1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。
【0074】
前記鎖伸長剤を使用して得られたポリウレタンは、分子中にウレア結合を有するため、耐擦過性に優れた印刷画像を形成するうえで好適に使用できる。一方、前記ポリウレタンは、ウレア結合の影響によって耐アルコール性を低下させる傾向にあるため、前記耐擦過性や耐アルカリ性とともに耐アルコール性に優れた印刷画像を形成する場合には、前記親水性基含有ポリウレタン(C)として、鎖伸長剤を使用せずに得られたポリウレタンや、その使用量を最小限に制限して得られたポリウレタン、具体的には、前記ポリウレタン中に含まれるウレア結合の割合が10質量%以下であるものを使用することが好ましい。
【0075】
前記方法で得られたポリウレタン(C)は、ポリウレタン(C)の全量に対して芳香族構造を600mmol/kg〜3000mmol/kgの範囲で有するものであることが好ましい。前記芳香族構造の含有量は、前記ポリイソシアネート(B)として芳香族ポリイソシアネートを使用した場合にポリウレタン(C)中に供給される芳香族環構造を含むものである。
【0076】
また、前記方法で得られたポリウレタン(C)は、水性媒体(D)中に安定して分散または一部が溶解した状態で存在するうえで、親水性基を有する。
【0077】
前記親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、及びノニオン性基を使用できるが、アニオン性基またはカチオン性基を使用することが好ましく、アニオン性基を使用することがより好ましい。
【0078】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、前記カルボキシル基やスルホン酸基の一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散安定性を付与するうえで好ましい。また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等を使用することができる。
【0079】
前記親水性基は、前記ポリウレタン(C)全体に対して50mmol/kg〜2000mmol/kgの範囲で存在することが好ましく、150mmol/kg〜1500mmol/kgの範囲であることが良好な水分散安定性を維持するうえでより好ましい。
【0080】
また、前記ポリウレタン(C)としては、耐擦過性や耐アルカリ性や耐アルコール性をより一層向上する観点から、脂肪族環式構造を有することが好ましい。
【0081】
前記脂肪族環式構造は、前記ポリウレタン(C)の全質量に対して1000mmol/kg〜5500mmol/kgの脂肪族環式構造を有するものであることが、より一層優れた耐擦過性や耐アルカリ性や耐アルコール性を向上するうえで好ましい。
【0082】
なお、本発明でいう、前記ポリウレタン(C)の全質量に対する、前記ポリウレタン(C)中に含まれる脂肪族環式構造の割合は、前記ポリウレタン(C)の製造に使用するポリオール(A)やポリイソシアネート(B)等の全原料の合計質量と、前記ポリウレタン(C)の製造に使用した脂肪族環式構造含有化合物が有する脂肪族環式構造の物質量に基づいて算出した値である。
【0083】
前記脂肪族環式構造としては、例えばシクロブチル環、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、シクロオクチル環等を使用することができ、なかでも、シクロヘキシル環構造であることが好ましい。
【0084】
また、前記方法で得られたポリウレタン(C)としては、15000〜200000の重量平均分子量を有するものを使用することが、非常に優れた耐擦過性と耐アルカリ性とともに、優れた耐アルコール性とを備えた高発色の印刷画像を形成し、かつ、良好なインクの吐出安定性を付与するうえで好ましく、15000〜80000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましく、20000〜75000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが特に好ましい。
【0085】
また、前記方法で製造したポリウレタン(C)の水性媒体(D)中への分散は、例えば、次のような方法で行うことができる。
【0086】
〔方法1〕ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られたポリウレタン(C)の親水基の一部又は全てを中和又は4級化した後、水を投入して水分散せしめ、その後に前記と同様の鎖伸長剤を用いて鎖伸長することによりポリウレタン(C)を水分散させる方法。
【0087】
〔方法2〕ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られたポリウレタンと、前記と同様の鎖伸長剤とを、反応容器中に一括又は分割して仕込み、鎖伸長反応させることでポリウレタン(C)を製造し、次いで得られたポリウレタン(C)中の親水基の一部又は全てを中和又は4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
【0088】
前記〔方法1〕〜〔方法2〕では、必要に応じて乳化剤を使用してもよい。また、水溶解や水分散の際には、必要に応じてホモジナイザー等の機械を使用しても良い。
【0089】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤が挙げられる。なかでも本発明のコーティング剤の優れた保存安定性を維持する観点から、基本的にアニオン性又はノニオン性の乳化剤を使用することが好ましい。また、本発明のコーティング剤の混和安定性を維持可能な範囲であれば、例えばカチオン性の乳化剤と両性の乳化剤とを併用してもよい。
【0090】
本発明のインクジェット印刷インク用バインダーで使用する水性媒体(D)は、前記ポリウレタン(C)が分散するものである。前記水性媒体(D)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0091】
前記水性媒体(D)は、前記インクジェット印刷インク用バインダーの全量に対して、50質量%〜90質量%含まれることが好ましく、65質量%〜85質量%含まれることがより好ましい。
【0092】
一方、前記ポリウレタン(C)は、インクの保存安定性と非常に優れた吐出安定性と優れた耐擦過性と耐アルカリ性と高発色性とを両立する観点から、インクジェット印刷インク用バインダーの全量に対して、10質量%〜50質量%の範囲で含まれることが好ましく、15質量%〜35質量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0093】
また、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーには、ポリウレタン(C)の水分散性を助ける助剤として、親水基含有化合物を使用してもよい。
【0094】
かかる親水基含有化合物としては、アニオン性基含有化合物、カチオン性基含有化合物、両性基含有化合物、又はノニオン性基含有化合物を用いることができるが、本発明のインクの優れた保存安定性を維持する観点から、ノニオン性基含有化合物を使用することが好ましい。
【0095】
前記ノニオン性基含有化合物としては、分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有し、かつエチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、及びエチレンオキシドの繰り返し単位とその他のアルキレンオキシドの繰り返し単位からなる基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する化合物を使用することができる。
【0096】
例えば、エチレンオキシドの繰り返し単位を少なくとも30質量%以上含有し、ポリマー中に少なくとも1個以上の活性水素原子を含有する数平均分子量300〜20,000のポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン共重合体グリコール又はそのモノアルキルエーテル等のノニオン基含有化合物又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリエーテルポリオールなどの化合物を使用することが可能である。
【0097】
また、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーには、保存安定性やインク吐出性を低下させない範囲で、必要に応じて硬化剤や硬化触媒を併用しても良い。
【0098】
前記硬化剤としては、例えばシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する化合物、ポリエポキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリイソシアネート等を使用することができ、前記硬化触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸カリウム等を使用することができる。
る。
【0099】
以上の方法で得られたポリウレタン(C)と水性媒体(D)等とを含むポリウレタン組成物は、印刷物の耐擦過性や耐アルカリ性と発色性とを飛躍的に向上させることができるため、もっぱらインクジェット印刷向けインク用バインダーに好適に使用することができる。
【0100】
本発明のインクジェット印刷用インクは、前記インクジェット印刷インク用バインダー、顔料や染料、その他必要に応じて各種の添加剤を含有するものである。
【0101】
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
前記無機顔料としては、例えば酸化チタン、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等を使用することができる。
【0102】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、アゾ系顔料等の有機顔料を使用することができる。
【0103】
これらの顔料は2種類以上のものを併用することができる。また、これらの顔料が表面処理されており,水系媒体に対して自己分散能を有しているものであっても良い。
【0104】
また、前記染料としては、例えばモノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系等を使用することができる。
【0105】
また、前記添加剤としては、例えば高分子分散剤や粘度調整剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、防腐剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤をはじめ、従来のインクジェット印刷用インクのバインダーに使用されていたアクリル樹脂等を使用することができる。
【0106】
前記高分子分散剤としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等を使用することができ、それらはランダム型、ブロック型、グラフト型のいずれのものも使用することができる。前記高分子分散剤を使用する際には、高分子分散剤を中和するために酸または塩基を併用しても良い。
【0107】
前記インクジェット印刷用インクは、例えば以下の製造方法によって調製することができる。
【0108】
(1)前記顔料または染料と前記水系媒体と前記インクジェット印刷インク用バインダーと必要に応じて前記添加剤とを、各種の分散装置を用いて一括して混合しインクを調製する方法。
【0109】
(2)前記顔料または染料と前記水系媒体と必要に応じて前記添加物とを、各種の分散装置を用いて混合することで顔料または染料の水系分散体からなるインク前駆体を調製し、次いで、前記顔料または染料の水分散体からなるインク前駆体と前記インクジェット印刷インク用バインダーと、必要に応じて水系媒体と添加剤とを、各種の分散装置を用いて混合しインクを調製する方法。
【0110】
上記(2)に記載したインクの製造方法で使用する顔料を含むインク前駆体は、例えば以下の方法によって調製することができる。
(i)顔料及び高分子分散剤等の添加剤を2本ロールやミキサー等を用いて予備混練して得られた混練物と、水系媒体とを各種の分散装置を用いて混合することによって顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
(ii)顔料と高分子分散剤を各種の分散装置を用いて混合した後、前記高分子分散剤の溶解性をコントロールすることによって該高分子分散剤を前記顔料の表面に堆積させ、更に分散装置を用いてそれらを混合することで顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
(iii)顔料と前記添加物とを各種の分散装置を用いて混合し、次いで前記混合物と樹脂エマルジョンとを分散装置を用いて混合することによって顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
【0111】
前記インクジェット印刷用インクの製造に使用可能な分散装置としては、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザーなどを、単独または、2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0112】
前記方法で得られたインクジェット印刷用インク中には、概ね250nm以上の粒子径を有する粗大粒子が存在する場合がある。前記粗大粒子は、プリンターノズルの詰まり等を引き起こし、インク吐出特性を劣化させる場合があるため、前記顔料の水系分散体の調製後、またはインクの調製後に遠心分離又は濾過処理等の方法によって、粗大粒子を除去することが好ましい。
【0113】
前記で得たインクジェット印刷用インクは、200nm以下の体積平均粒子径を有するものを使用することが好ましく、特に写真画質のようにより一層高光沢の画像を形成する場合には、80nm〜120nmの範囲であることがより好ましい。
【0114】
また、前記インクジェット印刷用インクは、インクジェット印刷用インク全体に対して、前記親水性基含有ポリウレタン(A)を0.2質量%〜10質量%、水系媒体(B)を50質量%〜95質量%、顔料や染料を0.5質量%〜15質量%含むことが好ましい。
【0115】
前記方法で得られた本発明のインクジェット印刷用インクは、もっぱらインクジェットプリンターを用いたインクジェット印刷に使用することができ、例えば紙やプラスチックフィルム、金属フィルムまたはシート等の基材に対するインクジェット印刷に使用することができる。インクジェットの方式は特に限定するものではないが、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの公知の方式を適用することができる。
【0116】
本発明のインクジェット印刷用インクを用いて印刷された印刷物は、優れた耐擦過性を有することから顔料等の欠落に起因した印刷画像の劣化等を引き起こしにくく、また優れた耐アルカリ性を有することから、アルカリ性洗浄剤等の印刷画像表面への付着によるにじみ等の発生を防止でき、かつ高発色濃度の画像を有するものであるから、例えばインクジェット印刷による写真印刷や、インクジェット印刷による高速印刷によって得られた印刷物など様々な用途に使用することができる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。
【0118】
[実施例1]
0.5リットルのフラスコに3−メチル−1,5-ペンタンジオール(分子量118)を107.5質量部、イソフタル酸(分子量166)を118.1質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.006質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、撹拌しながら3〜4時間かけて220℃へ昇温し10時間保持した後、100℃に冷却することによって、芳香族ポリエステルポリオール(a1−A)(数平均分子量1000、酸価0.4、水酸基価112.2、芳香環濃度3560mmol/kg)を調製した。
【0119】
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1-A)145.9質量部、イソホロンジイソシアネート71.1質量部、及び2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.3質量部、有機溶剤としてのメチルエチルケトン60.1質量部の存在下で5時間反応させた。
【0120】
反応物の重量平均分子量が25000から60000の範囲に達した時点で、メタノール2.1質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン98.1質量部を追加することでポリウレタン(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。なお、前記酸価は、ポリウレタンの製造に使用した2,2’−ジメチロールプロピオン酸等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。以下の実施例及び比較例においても、前記と同様の方法で酸価を算出した。
【0121】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液を19.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1033.6質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0122】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0123】
[実施例2]
0.5リットルのフラスコに2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(分子量104)を100.4質量部、テレフタル酸(分子量166)を127.1質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.006質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、撹拌しながら3〜4時間かけて220℃へ昇温し10時間保持した後、100℃に冷却することによって、芳香族ポリエステルポリオール(a1−B)(数平均分子量1000、酸価0.5、水酸基価112.2、芳香環濃度3830mmol/kg)を調製した。
【0124】
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1-B)145.9質量部、イソホロンジイソシアネート71.1質量部、及び2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.3質量部、有機溶剤としてのメチルエチルケトン60.1質量部の存在下で5時間反応させた。
【0125】
反応物の重量平均分子量が25000から60000の範囲に達した時点で、メタノール2.1質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン98.1質量部を追加することでポリウレタン(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。
【0126】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液を19.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1033.6質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0127】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0128】
[実施例3]
0.5リットルのフラスコに2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(分子量104)を51.3質量部、1,4−ブタンジオール(分子量90)を44.4質量部、テレフタル酸(分子量166)を72.1質量部、アジピン酸(分子量146)を63.4質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.006質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、撹拌しながら3〜4時間かけて220℃へ昇温し10時間保持した後、100℃に冷却することによって、芳香族ポリエステルポリオール(a1−C)(数平均分子量1700、酸価0.6、水酸基価66.0、芳香環濃度2170mmol/kg)を調製した。
【0129】
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1-C)157.7質量部、イソホロンジイソシアネート59.3質量部、及び2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.3質量部、有機溶剤としてのメチルエチルケトン60.1質量部の存在下で5時間反応させた。
【0130】
反応物の重量平均分子量が25000から60000の範囲に達した時点で、メタノール1.7質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン98.5量部を追加することでポリウレタン(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。
【0131】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液を19.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1033.6質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0132】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0133】
[実施例4]
0.5リットルのフラスコに1,4−ブタンジオール(分子量90)を92.5質量部、テレフタル酸(分子量166)を137.3質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.006質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、撹拌しながら3〜4時間かけて220℃へ昇温し10時間保持した後、100℃に冷却することによって、芳香族ポリエステルポリオール(a1−D)(数平均分子量1000、酸価0.4、水酸基価112.2、芳香環濃度4140mmol/kg)を調製した。
【0134】
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1-D)145.9質量部、イソホロンジイソシアネート71.1質量部、及び2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.3質量部、有機溶剤としてのメチルエチルケトン60.1質量部の存在下で5時間反応させた。
【0135】
反応物の重量平均分子量が25000から60000の範囲に達した時点で、メタノール2.1質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン98.1質量部を追加することでポリウレタン(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。
【0136】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液を19.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1033.6質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0137】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0138】
[実施例5]
0.5リットルのフラスコに2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(分子量104)を32.5質量部、エチレングリコール(分子量62)を45.2質量部、イソフタル酸(分子量166)を156.2質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.006質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、撹拌しながら3〜4時間かけて220℃へ昇温し10時間保持した後、100℃に冷却することによって、芳香族ポリエステルポリオール(a1−E)(数平均分子量2000、酸価0.5、水酸基価56.1、芳香環濃度4710mmol/kg)を調製した。
【0139】
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1-E)160.5質量部、イソホロンジイソシアネート56.5質量部、及び2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.3質量部、有機溶剤としてのメチルエチルケトン60.1質量部の存在下で5時間反応させた。
【0140】
反応物の重量平均分子量が25000から60000の範囲に達した時点で、メタノール1.6質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン98.5量部を追加することでポリウレタン(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。
【0141】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液を19.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1033.6質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0142】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0143】
[実施例6]
0.5リットルのフラスコに2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(分子量104)を105.5質量部、イソフタル酸(分子量166)を40.6質量部、アジピン酸(分子量146)を83.2質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.006質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、撹拌しながら3〜4時間かけて220℃へ昇温し10時間保持した後、100℃に冷却することによって、芳香族ポリエステルポリオール(a1−F)(数平均分子量1000、酸価0.4、水酸基価112.2、芳香環濃度1220mmol/kg)を調製した。
【0144】
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1-F)145.9質量部、イソホロンジイソシアネート71.1質量部、及び2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.3質量部、有機溶剤としてのメチルエチルケトン60.1質量部の存在下で5時間反応させた。
【0145】
反応物の重量平均分子量が25000から60000の範囲に達した時点で、メタノール2.1質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン98.1質量部を追加することでポリウレタン(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。
【0146】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液を19.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1033.6質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0147】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0148】
[比較例1]
0.5リットルのフラスコに2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(分子量104)を5.6質量部、エチレングリコール(分子量62)を63.8質量部、イソフタル酸(分子量166)を166.7質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.006質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、撹拌しながら3〜4時間かけて220℃へ昇温し10時間保持した後、100℃に冷却することによって、芳香族ポリエステルポリオール(a1−G)(数平均分子量2500、酸価0.7、水酸基価44.9、芳香環濃度5020mmol/kg)を調製した。
【0149】
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1-G)163.8質量部、イソホロンジイソシアネート53.3質量部、及び2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.3質量部、有機溶剤としてのメチルエチルケトン60.1質量部の存在下で5時間反応させた。
【0150】
反応物の重量平均分子量が25000から60000の範囲に達した時点で、メタノール1.5質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン98.6質量部を追加することでポリウレタン(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。
【0151】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液を19.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1033.6質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0152】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0153】
[比較例2]
0.5リットルのフラスコに2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(分子量104)を106.3質量部、イソフタル酸(分子量166)を27.3質量部、アジピン酸(分子量146)を96.0質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.006質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、撹拌しながら3〜4時間かけて220℃へ昇温し10時間保持した後、100℃に冷却することによって、芳香族ポリエステルポリオール(a1−H)(数平均分子量1000、酸価0.6、水酸基価112.2、芳香環濃度820mmol/kg)を調製した。
【0154】
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1-H)145.9質量部、イソホロンジイソシアネート71.1質量部、及び2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.3質量部、有機溶剤としてのメチルエチルケトン60.1質量部の存在下で5時間反応させた。
【0155】
反応物の重量平均分子量が25000から60000の範囲に達した時点で、メタノール2.1質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン98.1質量部を追加することでポリウレタン(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。
【0156】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液を19.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1033.6質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0157】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0158】
[比較例3]
0.5リットルのフラスコに2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(分子量104)を55.8質量部、1,4−ブタンジオール(分子量90)を48.3質量部、アジピン酸(分子量146)を127.4質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.006質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、撹拌しながら3〜4時間かけて220℃へ昇温し10時間保持した後、100℃に冷却することによって、芳香族ポリエステルポリオール(a1−I)(数平均分子量1000、酸価0.6、水酸基価112.3、芳香環濃度0mmol/kg)を調製した。
【0159】
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1-I)145.9質量部、イソホロンジイソシアネート71.1質量部、及び2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.3質量部、有機溶剤としてのメチルエチルケトン60.1質量部の存在下で5時間反応させた。
【0160】
反応物の重量平均分子量が25000から60000の範囲に達した時点で、メタノール2.1質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン98.1質量部を追加することでポリウレタン(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。
【0161】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液を19.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1033.6質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0162】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0163】
[比較例4]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1-I)138.8質量部、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート78.3質量部、及び2,2’−ジメチロールプロピオン酸23.3質量部、有機溶剤としてのメチルエチルケトン60.1質量部の存在下で5時間反応させた。
【0164】
反応物の重量平均分子量が25000から60000の範囲に達した時点で、メタノール2.0質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン98.2質量部を追加することでポリウレタン(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。
【0165】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液を19.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1033.6質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0166】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0167】
[重量平均分子量の測定]
実施例及び比較例で得たポリウレタンの重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC法)により測定した。具体的には、実施例及び比較例で得たインクジェット印刷インク用バインダーを、ガラス板上に3milアプリケーターで塗工し、常温で1時間乾燥して半乾きの塗膜を作成した。得られた塗膜をガラス板から剥し、塗膜の0.4gをテトラヒドロフラン100gに溶解して測定試料とした。
【0168】
測定装置としては、東ソー(株)製高速液体クロマトグラフHLC−8220型を用いた。カラムは、東ソー(株)製カラムTSK−GEL(HXL−H、G5000HXL、G4000HXL、G3000HXL、G2000HXL)を組み合わせて使用した。
【0169】
標準試料として昭和電工(株)製及び東洋曹達(株)製の標準ポリスチレン(分子量:448万、425万、288万、275万、185万、86万、45万、41.1万、35.5万、19万、16万、9.64万、5万、3.79万、1.98万、1.96万、5570、4000、2980、2030、500)を用いて検量線を作成した。
【0170】
溶離液、及び試料溶解液としてテトラヒドロフランを用い、流量1mL/min、試料注入量500μL、試料濃度0.4%としてRI検出器を用いて重量平均分子量を測定した。
【0171】
調製例1(キナクリドン系顔料の水系分散体)
ビニル重合体(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13(質量比)であり、重量平均分子量が11000、酸価156mgKOH/g)を1500g、キナクリドン系顔料(クロモフタールジェットマジェンタDMQ、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を4630g、フタルイミドメチル化3,10−ジクロロキナクリドン(1分子あたりの平均フタルイミドメチル基数が1.4)を380g、ジエチレングリコールを2600g、及び34質量%水酸化カリウム水溶液688gを、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、4時間、混練を継続した。
【0172】
前記混練物に、2時間で総量8000gの60℃に加温したイオン交換水を加え、不揮発分が37.9質量%の着色樹脂組成物を得た。
【0173】
前記方法で得た着色樹脂組成物の12kgに、ジエチレングリコール744gと、イオン交換水7380gとを少量ずつ添加しながら分散撹拌機で撹拌し、水系顔料分散液の前駆体(分散処理前の水系顔料分散液)を得た。
【0174】
次いで、この水系顔料分散液前駆体の18kgを、ビーズミル(浅田鉄工(株)製ナノミルNM−G2L、ビーズφ;0.3mmのジルコニアビーズ、ビーズ充填量;85%、冷却水温度;10℃、回転数;2660回転/分)を用いて処理し、前記ビーズミルの通過液を13000G×10分の遠心処理した後、有効孔径0.5μmのフィルターにより濾過処理を行うことによってキナクリドン系顔料の水系顔料分散液を得た.この水系顔料分散体中のキナクリドン系顔料濃度は14.9質量%であった。
【0175】
[インクジェット印刷用インクの調製]
キナクリドン系顔料の濃度が4質量%で、かつポリウレタンの濃度が1質量%となるよう、前記実施例1〜6及び比較例1〜4で得たインクジェット印刷インク用のバインダーと、調製例1で得たキナクリドン系顔料と、2−ピロリジノンと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、グリセリンと、界面活性剤(サーフィノール440、エアープロダクツ社製)とイオン交換水とを、下記配合割合にしたがって混合、攪拌することによって、インクジェット印刷用インクを調製した。
【0176】
(インクジェット印刷用インクの配合割合)
・調製例1で得たキナクリドン系顔料水系分散体(顔料濃度14.9質量%);26.8g
・2−ピロリジノン;8.0g
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル;8.0g
・グリセリン;3.0g
・界面活性剤(サーフィノール440、エアープロダクツ社製);0.5g
・イオン交換水;48.7g
・前記実施例1〜6及び比較例1〜4で得たインクジェット印刷インク用のバインダー(不揮発分25質量%);4.0g
【0177】
〔インクジェット印刷用インクの保存安定性の評価〕
前記で得たインクジェット印刷用インクの粘度と、該インク中の分散粒子の粒子径に基づいて評価した。前記で得たインクジェット印刷用インクの粘度は、東機産業(株)製のVISCOMETER TV−22を使用して測定した。また、前記インクジェット印刷インク用インク中の分散粒子の粒子径は、日機装(株)社製のマイクロトラック UPA EX150を使用して測定した。
【0178】
次に、前記インクをスクリュー管等のガラス容器に密栓し、70℃の恒温器で4週間の加熱試験を行い、前記加熱試験後の前記インクの粘度と粒子径を前記と同様の方法で測定した。
【0179】
前記加熱試験前のインクの粘度及び粒子径に対する、加熱試験後の粘度及び粒子径の変化を、それぞれ下記式に基づいて算出し、前記インクの保存安定性を評価した。
【0180】
(式I)
[{(加熱試験後のインクの粘度)−(加熱試験前のインクの粘度)}/(加熱試験前のインクの粘度)]×100
【0181】
[判定基準]
○: 粘度の変化の割合が、2%未満
△: 粘度の変化の割合が、2%以上5%未満
×: 粘度の変化の割合が、5%以上
【0182】
(式II)
[{(加熱試験後のインク中の分散粒子の粒子径)−(加熱試験前のインク中の分散粒子の粒子径)}/(加熱試験前のインク中の分散粒子の粒子径)]×100
【0183】
[判定基準]
○: 粒子径の変化の割合が、5%未満
△: 粒子径の変化の割合が、5%以上10%未満
×: 粒子径の変化の割合が、10%以上
【0184】
〔インク吐出安定性の評価〕
前記のインクジェット印刷用インクをインクカートリッジに充填したPhotosmart D5360(ヒューレットパッカード社製)を用いて診断ページを印刷し、ノズルの状態を確認した。
【0185】
次いで、1ページあたり18cm×25cmの領域の印字濃度設定100%のベタ印刷を連続で20ページ実施した後、再度診断ページを印刷しノズルの状態を確認した。連続ベタ印刷の前後でのノズルの状態変化をインク吐出性として評価した。評価基準を以下に記す。
【0186】
[判定基準]
◎:ノズルの状態に変化がなく、吐出異常が発生していないもの
○:ノズルへの若干のインクの付着が確認されたものの、インクの吐出方向の異常は発生していないもの
△:前記ベタ印刷を連続で20ページ実施した後に、インクの吐出方向の異常やインクの不吐出が生じたもの
×:印刷途中でインクの吐出方向の異常やインクの不吐出が生じ、連続して20ページのベタ印刷を完了できなかったもの
【0187】
〔インクジェット印刷用インクの印刷性能評価〕
[発色濃度の評価方法]
写真印刷用紙(光沢)[HPアドバンスフォト用紙 ヒューレットパッカード社製]の印刷面に、市販のサーマルジェット方式インクジュットプリンター(Photosmart D5360;ヒューレットパッカード社製)を用いて、前記のインクジェット印刷用インクの100%ベタ画像を印刷し、100%ベタ画像を得た。
【0188】
前記で得た100%ベタ画像の発色濃度をグレタグマクベス社(GretagMcbeth社)製のDensiEye700E/P/Lを用いて測定した。
【0189】
[判定基準]
A;前記発色濃度の値が1.30以上であった。
B;前記発色濃度の値が1.20以上1.30未満であった。
C;前記発色濃度の値が1.10以上1.20未満であった。
D;前記発色濃度の値が1.10未満であった。
【0190】
(耐擦過性)
写真印刷用紙(光沢)[HPアドバンスフォト用紙 ヒューレットパッカード社製]の印刷面に、市販のサーマルジェット方式インクジュットプリンター(Photosmart D5360;ヒューレットパッカード社製)を用い、前記のインクジェット印刷用インクをインクカートリッジに充填し、印字濃度設定100%のベタ印刷を行うことで評価用印刷物を得た。
【0191】
前記評価用印刷物を常温下で10分間乾燥した後、該印刷面を、約5kgの荷重をかけて爪で擦過し、該印刷面の色等のこすれ具合を下記評価基準にしたがって目視で評価した。なお、インクの吐出安定性が不十分であるため、前記評価用印刷物が得られず、本評価を行うことができなかったものについては表中に「−」と記した。
【0192】
[判定基準]
A;印刷面に傷は全くなく、印材の剥離等もみられなかった。
B;印刷面に若干の傷が発生したものの実用上問題ない程度であり、色材の剥離等もみられなかった。
C;印刷面に若干の傷が発生し、かつ、色材の剥離等もみられた。
D;印刷面の約50%以上の範囲で著しい傷が発生し、かつ、色材の剥離等もみられた。
【0193】
[耐薬品性]
(耐アルカリ性)
前記評価用印刷物を常温下で10分間乾燥した後、印刷面に、0.5質量%KOH水溶液をスポイトで3滴滴下し、10秒後に印刷面を指で擦過し、該印刷面の表面状態を目視で評価した。評価基準を以下に記す。なお、インクの吐出安定性が不十分であるため、前記評価用印刷物が得られず、本評価を行うことができなかったものについては表中に「−」と記した。
【0194】
[判定基準]
A; 印刷面に色材等の剥がれは全くみられず、印刷面の変色もみられなかった。
B; 印刷面に色材等の剥がれはみられなかったが、印刷面の変色が僅かに発生した。
C; 印刷面に色材等の若干の剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
D; 印刷表面の約50%以上の範囲にわたって色材等の著しい剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
【0195】
(耐アルコール性)
前記評価用印刷物を常温下で10分間乾燥した後、印刷面に、5質量%エタノール水溶液をスポイトで3滴滴下し、10秒後に印刷面を指で擦過し、該印刷面の表面状態を目視で評価した。評価基準を以下に記す。なお、インクの吐出安定性が不十分であるため、前記評価用印刷物が得られず、本評価を行うことができなかったものについては表中に「−」と記した。
【0196】
[判定基準]
A; 印刷面に色材等の剥がれは全くみられず、印刷面の変色もみられなかった。
B; 印刷面に色材等の剥がれはみられなかったが、印刷面の変色が僅かに発生した。
C; 印刷面に色材等の若干の剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
D; 印刷表面の約50%以上の範囲にわたって色材等の著しい剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
【0197】
【表1】

【0198】
【表2】

【0199】
表1及び表2中の「DMPA」は2,2’−ジメチロールプロピオン酸を表す。「IPDI」はイソホロンジイソシアネートを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリエステルポリオール(a1)と、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)以外の親水性基含有ポリオール(a2)とを含むポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を反応させることによって得られるポリウレタン(C)、ならびに、水性媒体(D)を含むインクジェット印刷インク用バインダーであって、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)が、前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)全量に対して芳香族構造を1000mmol/kg〜5000mmol/kg有するものであることを特徴とするインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項2】
前記ポリウレタン(C)の有する親水性基がアニオン性基またはカチオン性基である、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項3】
前記ポリウレタン(C)が、前記ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を反応させることで得られるものであって、前記ポリイソシアネート(B)が脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートである、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項4】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)が、炭素原子数1〜6のアルキル基を側鎖に有するグリコールと、芳香族ポリカルボン酸、そのエステル化物またはその酸無水物とを反応させることによって得られるものである、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項5】
前記炭素原子数1〜6のアルキル基を側鎖に有するグリコールが、炭素原子数1〜6のアルキル基を側鎖に有する1,3-プロパンジオールまたは炭素原子数1〜6のアルキル基を側鎖に有する1,5-ペンタンジオールである、請求項4に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項6】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1)が800〜6000の数平均分子量を有するものである、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェット印刷インク用バインダーと、顔料または染料とを含有するインクジェット印刷用インク。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェット印刷インク用バインダーと、顔料または染料とを含有するカラーフィルター用インクジェット印刷インク。
【請求項9】
請求項7に記載のインクジェット印刷用インクによって印刷の施された印刷物。

【公開番号】特開2013−10816(P2013−10816A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142796(P2011−142796)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】