説明

インクジェット描画方法および記録物

【課題】光沢感、意匠性に優れたパターンを容易に形成することが可能なインクジェット描画方法を提供すること、光沢感、意匠性に優れたパターンを備えた記録物を提供すること。
【解決手段】本発明のインクジェット描画方法は、紫外線硬化型インクジェット用組成物を用いてパターンを形成する方法であって、紫外線硬化型インクジェット用組成物を、記録媒体に付与する組成物付与工程と、紫外線を照射することにより、重合性化合物を重合させる重合工程とを有し、組成物付与工程では、紫外線硬化型インクジェット用組成物を付与した複数の第1の領域と、第1の領域よりも紫外線硬化型インクジェット用組成物の単位面積当たりの吐出量が少ない複数の第2の領域とを形成し、かつ、複数の第1の領域のうちの少なくとも1つと複数の第2の領域のうちの少なくとも1つとが隣接するように第1の領域および第2の領域を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット描画方法および記録物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光沢感のある外観を呈する装飾品の製造方法として、金属めっきや、金属箔
を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写等が用いられてきた。
しかし、これらの方法では、微細なパターンを形成することや、曲面部への適用が困難
であるといった問題があった。また、箔押し印刷では、グラデーションのある金属調の印
刷ができないという問題があった。また、金属めっきや、金属箔を用いた箔押し印刷、金
属箔を用いた熱転写等を用いた場合、光沢感を優れたものとすることができるが、ヘアラ
インや梨地のような意匠性の高いデザインを形成するのが困難であった。
【0003】
他方、顔料または染料を含む組成物による記録媒体への記録方法として、インクジェッ
ト法による記録方法が用いられている。インクジェット法では、微細なパターンの形成や
、曲面部への記録にも好適に適用できるという点、オンデマンドで特定の部位のみに印刷
できる点、また、グラデーションを持つ印刷が可能な点で優れている。また、近年、イン
クジェット法において、耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとするため等に、
紫外線を照射すると硬化する組成物(紫外線硬化型インクジェット組成物)が用いられて
いる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、紫外線硬化型インクジェット用インクでは、顔料や染料の代わりに、金
属粉末を適用しようとした場合、当該金属が本来有している光沢感(高い輝度、明度)等
の特性を十分に発揮させることができないという問題点があり、また、金属粉末を用いた
インクを付与した部分でのコントラスト比を十分に高めることができず、意匠性を十分に
得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−57548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光沢感、意匠性に優れたパターンを容易に形成することが可能なイン
クジェット描画方法を提供すること、光沢感、意匠性に優れたパターンを備えた記録物を
提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のインクジェット描画方法は、金属粒子と、重合性化合物とを含む紫外線硬化型
インクジェット用組成物を用いてパターンを形成するインクジェット描画方法であって、
前記紫外線硬化型インクジェット用組成物を、インクジェット方式により記録媒体に付
与する組成物付与工程と、
紫外線を照射することにより、前記重合性化合物を重合させる重合工程と、を有し、
前記組成物付与工程では、前記紫外線硬化型インクジェット用組成物を付与した複数の
第1の領域と、前記第1の領域よりも前記紫外線硬化型インクジェット用組成物の単位面
積当たりの吐出量が少ない複数の第2の領域とを形成し、かつ、前記複数の第1の領域の
うちの少なくとも1つと前記複数の第2の領域のうちの少なくとも1つとが隣接するよう
に前記第1の領域および前記第2の領域を形成することを特徴とする。
これにより、光沢感、意匠性に優れたパターンを容易に形成することが可能なインクジ
ェット描画方法を提供することができる。
【0008】
本発明のインクジェット描画方法では、前記第1の領域における前記紫外線硬化型イン
クジェット用組成物の下記式(1)で算出されるdutyで表される吐出量をX[%]、
前記第2の領域における前記紫外線硬化型インクジェット用組成物の下記式(1)で算出
されるdutyで表される吐出量をY[%]としたとき、Y/X<0.9の関係を満足す
ることが好ましい。
duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100 … (1)
(式(1)中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像
度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
これにより、金属光沢の濃淡がより際立ち、光沢感、意匠性に特に優れたパターンを形
成することができる。
【0009】
本発明のインクジェット描画方法では、前記組成物付与工程では、前記第1の領域およ
び前記第2の領域は、帯状をなすよう形成されるものであり、
前記第1の領域と前記第2の領域とが、互いに隣接して配列するよう構成されているこ
とが好ましい。
これにより、光沢感、意匠性に特に優れたパターンを形成することができる。
【0010】
本発明のインクジェット描画方法では、前記組成物付与工程では、複数の前記第1の領
域を所定の間隔で形成し、複数の前記第1の領域の間を埋めるように前記第2の領域を形
成することが好ましい。
これにより、光沢感、意匠性に特に優れたパターンを形成することができる。
本発明のインクジェット描画方法では、前記金属粒子は、鱗片状のアルミニウムを含む
ことが好ましい。
これにより、光沢感、意匠性に優れたパターンをより容易に形成することができる。
【0011】
本発明のインクジェット描画方法では、前記紫外線硬化型インクジェット組成物は、前
記重合性化合物として、フェノキシエチルアクリレートを含むものであることが好ましい

これにより、紫外線硬化型インクジェット用組成物の保存安定性を優れたものとしつつ
、インクジェット法による吐出後の紫外線硬化型インクジェット用組成物の反応性を特に
優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成さ
れるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。また、金属粒子をより好
適に配置させることができ、記録物の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができ
る。
【0012】
本発明のインクジェット描画方法では、前記紫外線硬化型インクジェット組成物は、前
記重合性化合物として、前記フェノキシエチルアクリレートに加え、アクリル酸2−(2
−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレ
ングリコールジアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群か
ら選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
【0013】
これにより、紫外線硬化型インクジェット用組成物の保存安定性を優れたものとしつつ
、インクジェット法による吐出後の紫外線硬化型インクジェット用組成物の反応性を特に
優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成さ
れるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。また、金属粒子をより好
適に配置させることができ、記録物の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができ
る。
【0014】
本発明のインクジェット描画方法では、前記紫外線硬化型インクジェット組成物は、前
記重合性化合物として、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートおよび/またはア
ミノアクリレートを含むものであることが好ましい。
これにより、紫外線硬化型インクジェット用組成物の保存安定性をより優れたものとし
つつ、形成されるパターンの耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。また、金
属粒子をより好適に配置させることができ、記録物の光沢感、高級感を特に優れたものと
することができる。
本発明の記録物は、本発明の方法を用いて描画されたパターンを備えたこと特徴とする

これにより、光沢感、意匠性に優れたパターンを備えた記録物を提供することができる

【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】記録物の製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図2】記録物に形成するパターン(印刷部)の一例を示す平面図である。
【図3】記録物に形成するパターン(印刷部)の一例を示す平面図である。
【図4】記録物に形成するパターン(印刷部)の一例を示す平面図である。
【図5】記録物に形成するパターン(印刷部)の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《インクジェット描画方法》
まず、本発明のインクジェット描画方法について説明する。
図1は、記録物の製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図、図2〜5は、記録物に形成
するパターン(印刷部)の一例を示す平面図である。
本発明のインクジェット描画方法は、金属粒子と、重合性化合物とを含む紫外線硬化型
インクジェット用組成物を、インクジェット方式により記録媒体に付与する組成物付与工
程(1a)と、紫外線を照射することにより、前記重合性化合物を重合させる重合工程(
1b)とを有する。
【0017】
ところで、従来から、光沢感のある外観を呈する装飾品の製造方法として、金属めっき
や、金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写等が用いられてきた。
しかし、これらの方法では、微細なパターンを形成することや、曲面部への適用が困難
であるといった問題があった。また、箔押し印刷では、グラデーションのある金属調の印
刷ができないという問題があった。また、金属めっきや、金属箔を用いた箔押し印刷、金
属箔を用いた熱転写等を用いた場合、光沢感を優れたものとすることができるが、ヘアラ
インや梨地のような意匠性の高いデザインを形成するのが困難であった。
【0018】
他方、顔料または染料を含む組成物による記録媒体への記録方法として、インクジェッ
ト法による記録方法が用いられている。インクジェット法では、微細なパターンの形成や
、曲面部への記録にも好適に適用できるという点、オンデマンドで特定の部位のみに印刷
できる点、また、グラデーションを持つ印刷が可能な点で優れている。また、近年、イン
クジェット法において、耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとするため等に、
紫外線を照射すると硬化する組成物(紫外線硬化型インクジェット用組成物)が用いられ
ている。
【0019】
しかしながら、紫外線硬化型インクジェット用インクでは、顔料や染料の代わりに、金
属粉末を適用しようとした場合、当該金属が本来有している光沢感(高い輝度、明度)等
の特性を十分に発揮させることができないという問題点があり、また、金属粉末を用いた
インクを付与した部分でのコントラスト比を十分に高めることができず、意匠性を十分に
得ることができなかった。
【0020】
これに対して、本発明では、組成物付与工程において、紫外線硬化型インクジェット用
組成物を付与した複数の第1の領域と、第1の領域よりも前記紫外線硬化型インクジェッ
ト用組成物の単位面積当たりの吐出量が少ない複数の第2の領域とを形成し、さらに、複
数の第1の領域のうちの少なくとも1つと複数の第2の領域のうちの少なくとも1つが隣
接するように前記第1の領域および前記第2の領域を形成する点に特徴を有している。こ
のような特徴により、形成されるパターン(画像)中において、第1の領域と第2の領域
とでの濃淡がはっきりとなり、当該第1の領域(濃部分)と当該第2の領域(淡部分)と
で光の反射が異なることとなるため、光を効果的に乱反射させることができる。その結果
、光沢感に優れるとともに、意匠性にも優れたパターンを備えた記録物を効率よく製造す
ることができる。また、第1の領域および第2の領域の大きさや配置を適宜変更すること
で、種々のパターンを容易に形成することができる。
【0021】
<組成物付与工程>
まず、金属粒子と、重合性化合物とを含む紫外線硬化型インクジェット用組成物2を、
インクジェット方式により記録媒体11に付与する(1a)。
本工程では、紫外線硬化型インクジェット用組成物2を付与することにより、紫外線硬
化型インクジェット用組成物を付与した複数の第1の領域31と、第1の領域よりも紫外
線硬化型インクジェット用組成物の単位面積当たりの吐出量が少ない複数の第2の領域3
2とを備え、複数の第1の領域31のうちの少なくとも1つと複数の第2の領域32のう
ちの少なくとも1つとが隣接するよう構成されたパターン(印刷部)3を形成する。これ
により、光沢感に優れるとともに、意匠性にも優れたパターン3を備えた記録物を効率よ
く製造することができる。また、第1の領域31および第2の領域32の大きさや配置を
適宜変更することで、種々のパターン3を容易に形成することができる。
【0022】
第1の領域31における紫外線硬化型インクジェット用組成物の下記式(1)で算出さ
れるdutyで表される吐出量をX[%]、第2の領域32における紫外線硬化型インク
ジェット用組成物の下記式(1)で算出されるdutyで表される吐出量をY[%]とし
たとき、Y/X<0.9の関係を満足するのが好ましく、0.1<Y/X<0.9の関係
を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、金属光沢の濃淡が
より際立ち、光沢感、意匠性に特に優れたパターン3を形成することができる。
【0023】
本工程において、第1の領域31および第2の領域32の形状や配置等を調整すること
で、種々のパターン3を形成することができる。
例えば、図2に示すように、まっすぐな帯状の第1の領域31とまっすぐな帯状の第2
の領域32とが、互いに隣接して配列するよう形成することで、筋状(ヘアライン)の模
様のパターン3を形成することができる。これにより、パターン3の光沢感、意匠性を特
に優れたものとすることができる。
【0024】
また、図5に示すように、帯状でかつ波状の第1の領域および第2の領域が互いに隣接
して配列するよう形成することで、梨地模様のパターン3を形成することができる。
また、例えば、図3に示すように、複数の第1の領域31を所定の間隔で形成し、複数
の第1の領域31の間に第2の領域32を形成することで、ブロック模様のパターン3を
形成することができる。これにより、パターン3の光沢感、意匠性を特に優れたものとす
ることができる。
【0025】
また、例えば、図4に示すように、第1の領域31の中に、一定間隔で所定の大きさの
複数の第2の領域32を形成することで、凹凸が形成されたような模様のパターン3を形
成することができる。これにより、パターン3の光沢感、意匠性を特に優れたものとする
ことができる。
なお、インクジェット法の方式(液滴吐出方式)としては、例えば、ピエゾ方式や、イ
ンクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることがで
きるが、紫外線硬化型インクジェット用組成物2の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方
式が好ましい。
【0026】
以下の説明では、紫外線硬化型インクジェット用組成物の吐出は、図1に示すような液
滴吐出装置を用いて行うものとして説明する。
図1に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、紫外線硬化型インクジェッ
ト用組成物2を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタ
ンク101から紫外線硬化型インクジェット用組成物2が供給される吐出走査部102と
を備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)をキャ
リッジに搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1
位置制御装置104(移動手段)と、記録媒体(基材)11を保持するステージ106と
、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段1
12とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッ
ドとは、チューブ110で連結されており、タンク101から複数の液滴吐出ヘッドのそ
れぞれに紫外線硬化型インクジェット用組成物2が圧縮空気によって供給される。
【0027】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103
をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置
制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有す
る。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向で
ある。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向および
Z軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2
位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有す
る。
【0028】
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステー
ジ106は、紫外線硬化型インクジェット用組成物2を付与すべき記録媒体11をその平
面上に固定、または保持できるように構成されている。
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移
動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移
動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって
、ステージ106に対する液滴吐出ヘッドの相対位置が変わる(ステージ106に保持さ
れた記録媒体11と、液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
【0029】
制御手段112は、紫外線硬化型インクジェット用組成物2を吐出すべき相対位置を表
す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
上記のような液滴吐出装置100を用いて、紫外線硬化型インクジェット用組成物2を
記録媒体11に付与する。上記のような装置を用いることにより、記録媒体11の所望の
部位に、効率よくかつ選択的に紫外線硬化型インクジェット用組成物2を付与することが
できる。なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、紫外線硬化型インクジェット用
組成物2を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これ
らの部材を、複数種の紫外線硬化型インクジェット用組成物2の分だけ有するものであっ
てもよい。また、記録物の製造においては、複数種の紫外線硬化型インクジェット用組成
物2に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
【0030】
なお、本発明では、液滴吐出ヘッドは、駆動素子として、ピエゾ素子を用いるものであ
っても、静電アクチュエータを用いるものであってもよい。また、液滴吐出ヘッドは、駆
動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して
紫外線硬化型インクジェット用組成物を吐出する構成であってもよい。
紫外線硬化型インクジェット用組成物については、後に詳述する。
【0031】
<重合工程>
その後、紫外線を照射することにより、記録媒体11に付与された紫外線硬化型インク
ジェット用組成物2を構成する重合性化合物を硬化させ印刷部(パターン)を得る(1b
)。これにより、記録物が得られる。
紫外線源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオー
ド(UV−LED)、紫外線レーザダイオード(UV−LD)等を用いることができる。
中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV−L
ED)および紫外線レーザダイオード(UV−LD)が好ましい。
なお、本工程は、磁力を作用させつつ行ってもよい。これにより、前記配列工程で配列
させた粉末の配列状態を乱すことなく、紫外線硬化型インクジェット用組成物2を硬化さ
せることができ、より確実に記録物の光沢感を特に優れたものとすることができる。
【0032】
《紫外線硬化型インクジェット用組成物》
以下、本発明で用いる紫外線硬化型インクジェット用組成物について詳細に説明する。
<金属粒子>
上述したように、紫外線硬化型インクジェット用組成物は、金属粒子(金属粉末)を含
んでいる。本明細書において、金属粒子とは、少なくとも表面が金属材料で構成されてい
る粒子をいう。
【0033】
金属粒子を構成する金属材料としては、特に限定されないが、アルミニウムを用いるの
が好ましい。これにより、最終的に得られる記録物において、粉末をより好適に配置させ
ることができる。また、アルミニウムは、一般に、それ自体が、特に優れた金属光沢を有
するものである。したがって、金属粒子がアルミニウムで構成されたものであると、記録
物の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができる。
金属粒子は、円形状、楕円形状、針状、鱗片状等、いかなる形状のものであってもよい
が、鱗片状であるのが好ましい。これにより、記録媒体上において、紫外線硬化型インク
ジェット組成物を構成する金属粒子をより好適に配列させることができ、形成されるパタ
ーンの光沢感をより優れたものとすることができる。
【0034】
本発明において、鱗片状とは、平板状、湾曲板状等のように、所定の角度から観察した
際(平面視した際)の面積が、当該観察方向と直交する角度から観察した際の面積よりも
大きい形状のことをいい、特に、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した
際)の面積S[μm]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最
大となる方向から観察した際の面積S[μm]に対する比率(S/S)が、好ま
しくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは8以上である。こ
の値としては、例えば、任意の10個の粒子について観察を行い、これらの粒子について
の算出される値の平均値を採用することができる。
【0035】
なお、鱗片状の金属粒子は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、気相成
膜法により金属で構成された膜を形成し、その後、当該膜を粉砕することにより得られた
ものであるのが好ましい。これにより、紫外線硬化型インクジェット組成物を用いて形成
されるパターンにおいて、金属が本来有している光沢感等をより効果的に表現させること
ができる。また、各金属粒子間での特性のばらつきを抑制することができる。
【0036】
このような方法を用いて金属粒子を製造する場合、例えば、基材上に、金属で構成され
た膜の形成(成膜)を行うことにより、金属粒子を好適に製造することができる。前記基
材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルム等を用いる
ことができる。また、基材は、成膜面に離型剤層を有するものであってもよい。
また、前記粉砕は、液体中において、前記膜に超音波振動を付与することにより行われ
るものであるのが好ましい。これにより、上述したような粒径の第1の粒子を容易かつ確
実に得ることができるとともに、各粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきの発生を抑
制することができる。
【0037】
また、上記のような方法で、粉砕を行う場合、前記液体としては、メタノール、エタノ
ール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカ
ン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペ
ンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼン等の
炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエ
チルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチ
ルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチ
ルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジ
オキサン等のエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、
N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメ
チルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、アセトニトリ
ル等の極性化合物を好適に用いることができる。このような液体を用いることにより、金
属粒子の不本意な酸化等を防止しつつ、金属粒子の生産性を特に優れたものとし、また、
各金属粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきを特に小さいものとすることができる。
【0038】
金属粒子が鱗片状である場合、金属粒子の平均厚さは、140nm以上800nm以下
であるのが好ましく、200nm以上600nm以下であるのがより好ましい。金属粒子
の平均厚さが前記範囲内の値であると、紫外線硬化型インクジェット組成物の保存安定性
、液滴の吐出安定性を特に優れたものとしつつ、パターンにおいて、金属が本来有してい
る光沢感等をより効果的に表現させることができる。
【0039】
また、金属粒子の平均粒径は、500nm以上2.0μm以下であるのが好ましく、8
00nm以上1.8μm以下であるのがより好ましい。これにより、紫外線硬化型インク
ジェット組成物を用いて形成されるパターン(印刷部)において、金属粒子をさらに確実
に好適に配列させることができ、紫外線硬化型インクジェット組成物を用いて形成される
パターン(印刷部)の光沢感をさらに確実に優れたものとすることができる。なお、本発
明において、平均粒径とは、個数基準の平均粒径のことを指し、投影面積が最大となる方
向から観察した際の面積Sと同一の面積を有する真円の直径の平均値のことを指す。
【0040】
<重合性化合物>
紫外線硬化型インクジェット用組成物は、紫外線の照射により重合し、硬化する成分で
ある重合性化合物を含むものである。このような成分を含むことにより、紫外線硬化型イ
ンクジェット用組成物を用いて製造される記録物の耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を優れた
ものとすることができる。また、重合性化合物が硬化することにより上述したように配列
(配向)した金属粒子を固定することができるため、記録物の光沢感を安定的に優れたも
のとすることができる。
【0041】
重合性化合物は、液状をなすものであり、紫外線硬化型インクジェット用組成物におい
て、粉末を分散する分散媒として機能するものであるのが好ましい。これにより、別途、
記録物の製造過程において除去(蒸発)される分散媒を用いる必要がなく、記録物の製造
においても、分散媒を除去する工程を設ける必要がないため、記録物の生産性を特に優れ
たものとすることができる。また、分散媒として一般に有機溶媒として用いられているも
のを使用する必要がないため、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を防止すること
ができる。また、重合性化合物を含むことにより、様々な記録媒体(基材)に対する、紫
外線硬化型インクジェット用組成物を用いて形成される印刷部の密着性を優れたものとす
ることができる。すなわち、重合性化合物を含むことにより、紫外線硬化型インクジェッ
ト用組成物は、メディア対応性に優れたものとなる。
【0042】
重合性化合物としては、紫外線の照射により重合する成分であればよく、例えば、各種
モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)等を用いることができるが、
紫外線硬化型インクジェット用組成物は、重合性化合物として、少なくともモノマー成分
を含むものであるのが好ましい。モノマーは、オリゴマー成分等に比べて、一般に、低粘
度の成分であるため、紫外線硬化型インクジェット用組成物の吐出安定性を特に優れたも
のとする上で有利である。
【0043】
重合性化合物としてのモノマーとしては、例えば、イソボニルアクリレート、4−ヒド
ロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、
フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ステアリルアクリレート、
シクロヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート
、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,5H−オクタ
フルオロペンチルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキ
シプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、テトラヒ
ドロフルフリルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2,2,2−トリフル
オロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2,2,
3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリ
レート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、PO変性ノニルフェノールアク
リレート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、EO変性2エチルヘキシルアクリレ
ート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレー
ト、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、EO変性フェノールアクリレート、
フェノキシエチルアクリレート、EO変性フェノールアクリレート、EO変性クレゾール
アクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコール
アクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアク
リレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ト
リプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1
.9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ビスフ
ェノールA EO変性ジアクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリ
エチレングリコール200ジアクリレート、ポリエチレングリコール300ジアクリレー
ト、ネオペンチルグリコールヒドロキシピパレートジアクリレート、2−エチル−2−ブ
チル−プロパンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート
、ポリエチレングリコール600ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレ
ート、1.9−ノナンジオールジアクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレー
ト、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリ
レート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアク
リレート、EO変性水添ビスフェノールAジアクリレート、ジプロピレングリコールジア
クリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリア
クリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性
トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエ
チルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、PO変性トリメチロー
ルプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリ
ス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、
トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ア
クリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。中でも、4−ヒドロキ
シブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート
、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ト
リプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジ
プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリ
メチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレー
ト、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ
)エチルが好ましい。
【0044】
特に、紫外線硬化型インクジェット用組成物は、重合性化合物として、フェノキシエチ
ルアクリレートを含むものであるのが好ましい。これにより、紫外線硬化型インクジェッ
ト用組成物の保存安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の紫外線
硬化型インクジェット用組成物の反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優
れたものとすることができるとともに、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたもの
とすることができる。また、金属粒子をより好適に配置させることができ、記録物の光沢
感、高級感を特に優れたものとすることができる。
【0045】
また、紫外線硬化型インクジェット用組成物は、重合性化合物として、フェノキシエチ
ルアクリレートに加え、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレ
ングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および、4−
ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであ
るのが好ましい。これにより、紫外線硬化型インクジェット用組成物の保存安定性を優れ
たものとしつつ、インクジェット法による吐出後の紫外線硬化型インクジェット用組成物
の反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができると
ともに、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。また、金
属粒子をより好適に配置させることができ、記録物の光沢感、高級感を特に優れたものと
することができる。
【0046】
また、紫外線硬化型インクジェット用組成物は、重合性化合物として、ジメチロールト
リシクロデカンジアクリレートおよび/またはアミノアクリレートを含むのが好ましい。
これにより、紫外線硬化型インクジェット用組成物の保存安定性をより優れたものとしつ
つ、形成されるパターンの耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。また、金属
粒子をより好適に配置させることができ、記録物の光沢感、高級感を特に優れたものとす
ることができる。
【0047】
また、紫外線硬化型インクジェット用組成物は、重合性化合物として、モノマー以外に
、オリゴマーを含むものとしてもよい。特に多官能のオリゴマーを含むものであるのが好
ましい。これにより、紫外線硬化型インクジェット用組成物の保存安定性を優れたものと
しつつ、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。なお、本
発明では、重合性化合物の中でも、分子の骨格中に繰り返し構造を有し、分子量が600
以上のものをオリゴマーと呼ぶ。オリゴマーとしては、繰り返し構造がウレタンであるウ
レタンオリゴマー、繰り返し構造がエポキシであるエポキシオリゴマー等が好ましく用い
られる。
【0048】
<その他の成分>
本実施の形態に係る紫外線硬化型インクジェット用組成物は、上述した以外の成分(そ
の他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、光重合開始
剤、スリップ剤(レベリング剤)、分散剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤
剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、増
感剤(増感色素)等が挙げられる。
【0049】
光重合開始剤は、紫外線照射によってラジカルやカチオン等の活性種を発生し、上記重
合性化合物の重合反応を開始させるものであれば特に制限されない。光重合開始剤として
は、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができるが、光ラジカ
ル重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤
は、紫外線領域に吸収ピークを有していることが好ましい。
【0050】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイ
ド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物
、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシム
エステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル
化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、重合性化合物への溶解性および硬化性の観点から、アシルホスフィン
オキサイド化合物およびチオキサントン化合物から選択される少なくとも1種が好ましく
、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物を併用することがより
好ましい。
【0051】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケ
タール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェ
ニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アン
トラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロ
ロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフ
ェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベ
ンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メ
チルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オ
ン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−
クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホ
リノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォ
スフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオ
キサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、およびビス−(2,6−ジメトキシベンゾ
イル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられ、これらの
うちから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
紫外線硬化型インクジェット用組成物中における光重合開始剤の含有量は、0.5質量
%以上10質量%以下であるのが好ましい。光重合開始剤の含有量が前記範囲であると、
紫外線硬化速度が十分大きく、且つ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する
着色がほとんどない。
紫外線硬化型インクジェット用組成物がスリップ剤を含むものであると、レベリング作
用により記録物の表面が平滑になり、耐擦性が向上する。
【0053】
スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポ
リエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤を用いることができ、ポリエーテ
ル変性ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いる
ことが好ましい。
紫外線硬化型インクジェット用組成物が分散剤を含むものであると、金属粒子の分散性
を優れたものとすることができ、紫外線硬化型インクジェット用組成物の保存安定性、吐
出安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤としては、特に限定されないが、
例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポ
リマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド
、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマ
ー、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0054】
また、紫外線硬化型インクジェット用組成物は、記録物の製造工程において除去される
(蒸発する)有機溶剤を含まないものであるのが好ましい。これにより、揮発性有機化合
物(VOC)の問題の発生を効果的に防止することができる。
本発明で用いる紫外線硬化型インクジェット用組成物の室温(20℃)での粘度は、2
0mPa・s以下であるのが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下であるのが
より好ましい。これにより、インクジェット法による液滴吐出を好適に行うことができる

【0055】
《記録物》
次に、本発明の記録物について説明する。
本発明の記録物は、上述したような方法を用いて形成されたパターンを備えたものであ
る。このような記録物は、光沢感、意匠性に優れたパターン(パターン)を有するもので
ある。
【0056】
また、上述したように、本発明に係る紫外線硬化型インクジェット用組成物は、重合性
化合物を含むものであり、記録媒体に対する密着性に優れるものである。このように、本
発明に係る紫外線硬化型インクジェット用組成物は記録媒体に対する密着性に優れるもの
であるため、記録媒体は、いかなるものであってもよく、吸収性または非吸収性のいずれ
を用いてもよく、例えば、紙(普通紙、インクジェット用専用紙等)、プラスチック材料
、金属、セラミックス、木材、貝殻等を用いることができる。
【0057】
本発明の記録物は、いかなる用途のものであってもよく、例えば、装飾品やそれ以外に
適用されるものであってもよい。本発明の記録物の具体例としては、コンソールリッド、
スイッチベース、センタークラスタ、インテリアパネル、エンブレム、センターコンソー
ル、メーター銘板等の車両用内装品、各種電子機器の操作部(キースイッチ類)、装飾性
を発揮する装飾部、指標、ロゴ等の表示物等が挙げられる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定
されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
11…記録媒体(基材) 2…紫外線硬化型インクジェット用組成物 3…パターン
31…第1の領域 32…第2の領域 100…液滴吐出装置 101…タンク 102
…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置(移動手段) 106
…ステージ 108…第2位置制御装置(移動手段) 110…チューブ 112…制御
手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と、重合性化合物とを含む紫外線硬化型インクジェット用組成物を用いてパタ
ーンを形成するインクジェット描画方法であって、
前記紫外線硬化型インクジェット用組成物を、インクジェット方式により記録媒体に付
与する組成物付与工程と、
紫外線を照射することにより、前記重合性化合物を重合させる重合工程と、を有し、
前記組成物付与工程では、前記紫外線硬化型インクジェット用組成物を付与した複数の
第1の領域と、前記第1の領域よりも前記紫外線硬化型インクジェット用組成物の単位面
積当たりの吐出量が少ない複数の第2の領域とを形成し、かつ、前記複数の第1の領域の
うちの少なくとも1つと前記複数の第2の領域のうちの少なくとも1つとが隣接するよう
に前記第1の領域および前記第2の領域を形成することを特徴とするインクジェット描画
方法。
【請求項2】
前記第1の領域における前記紫外線硬化型インクジェット用組成物の下記式(1)で算
出されるdutyで表される吐出量をX[%]、前記第2の領域における前記紫外線硬化
型インクジェット用組成物の下記式(1)で算出されるdutyで表される吐出量をY[
%]としたとき、Y/X<0.9の関係を満足する請求項1に記載のインクジェット描画
方法。
duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100 … (1)
(式(1)中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像
度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
【請求項3】
前記組成物付与工程では、前記第1の領域および前記第2の領域は、帯状をなすよう形
成されるものであり、
前記第1の領域と前記第2の領域とが、互いに隣接して配列するよう構成されている請
求項1または2に記載のインクジェット描画方法。
【請求項4】
前記組成物付与工程では、複数の前記第1の領域を所定の間隔で形成し、複数の前記第
1の領域の間を埋めるように前記第2の領域を形成する請求項1または2に記載のインク
ジェット描画方法。
【請求項5】
前記金属粒子は、鱗片状のアルミニウムを含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載
のインクジェット描画方法。
【請求項6】
前記紫外線硬化型インクジェット組成物は、前記重合性化合物として、フェノキシエチ
ルアクリレートを含むものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェッ
ト描画方法。
【請求項7】
前記紫外線硬化型インクジェット組成物は、前記重合性化合物として、前記フェノキシ
エチルアクリレートに加え、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロ
ピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および、
4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むもの
である請求項6に記載のインクジェット描画方法。
【請求項8】
前記紫外線硬化型インクジェット組成物は、前記重合性化合物として、ジメチロールト
リシクロデカンジアクリレートおよび/またはアミノアクリレートを含むものである請求
項1ないし7のいずれか1項に記載のインクジェット描画方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法を用いて描画されたパターンを備えたこ
と特徴とする記録物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206364(P2012−206364A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73569(P2011−73569)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】