説明

インクジェット用インク組成物

基板上に均一に、かつ優れた密着性をもって配線パターンを形成するためのインクジェット用インク組成物を提供し、またそのインク組成物を使用して配線パターンを形成する方法を提供することを目的とする。前記インク組成物は、基板上に配線パターンを描画するためのインクジェット用インク組成物において、活性化剤カップリング剤としてアゾール系シランカップリング剤を含むことを特徴とするインク組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にインクジェットにより配線パターンを描画するのに、好適なインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に配線パターンを描画する方法として、インクジェット方式を使用することは、すでに各種のものが提案されている。
【0003】
例えば、硫黄化合物が吸着した金属微粒子が溶媒中に存在するインクをインクジェットヘッドにより基板上に吐出させて微細な配線パターンを形成する方法(特開平10−204350号公報)がある。また、基板上に無電解メッキするための活性化剤のパターンをインクジェットで形成する方法も公知である。例えば、基板上にイニシエーターパターンをインクジェット印刷機により吐出させる水性インクのドットの集合体で形成し、乾燥後無電解銅めっきするプリント配線基板の製法が提案されている(特開平7−245467号公報)。この方法では、水性インクとしてパラジウム塩と水溶性有機溶媒と水からなるインクが使用されている。
【0004】
無電解金属のパターンの基板への密着性を向上するためにシランカップリング剤を利用することもすでに提案されている(特許第3380880号)。パターンをシランカップリング剤溶液を使用してインクジェットプリンターで描画し、次いで活性化処理液に浸漬し、その描画パターンに活性化剤を付着させた後、ニッケル無電解めっきを行うというものである。そして、前記シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤が好ましいとされている。
【発明の開示】
【0005】
しかしながら、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤を使用した場合、活性化剤の捕捉(付着)状態が不均一となり、すなわち、活性化剤の分布あるいは濃度が不均一となる。また、その接着力はまだ不十分で、下地にエッチング処理等の前処理が必要となる。
【0006】
本発明は、基板上に均一に、かつ優れた密着性をもって配線パターンを形成するためのインクジェット用インク組成物を提供し、またそのインク組成物を使用して配線パターンを形成する方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、インク組成物中に無電解メッキの活性化剤とともに、その活性化剤を捕捉し、基板に付着するカップリング剤としてアゾール化合物を含有させることが有効であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)基板上に配線パターンを描画するためのインクジェット用インク組成物において、活性化剤カップリング剤としてアゾール系シランカップリング剤を含むことを特徴とするインク組成物。
(2)アゾール系シランカップリング剤がイミダゾールシランであることを特徴とする前記(1)記載のインク組成物。
(3)基板上にインクジェットにより配線パターンを描画する方法において、前記(1)記載のインク組成物を使用することを特徴とする配線パターンの描画方法。
(4)基板上にインクジェットにより配線パターンを描画し、次いで必要に応じて活性化剤溶液に浸漬した後、無電解めっきにより該配線パターンを金属被覆する方法において、配線パターンの描画に請求項1記載のインク組成物を使用することを特徴とする金属被覆方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のインク組成物は、アゾール系シランカップリング剤を含むことが重要である。
【0010】
このアゾール系シランカップリング剤は、基板に対して、無電解めっきの活性化剤を密着性よく付着させることができ、引き続き行う無電解めっきによる皮膜を強固に付着させる作用を有する。本発明においては、活性化剤については、インク組成物中に含まれてもよく、また、インク組成物とは別途溶液として調製されて、アゾール系シランカップリング剤のインクにより描画された配線パターンをこの活性化剤溶液に浸漬して、付着させてもよい。
【0011】
また、本発明のインク組成物には、インクジェット用インクに使用されている粘度調整剤、表面張力調整剤等一般的な添加剤を必要に応じて使用することができる。
【0012】
本発明に使用するアゾールシランカップリング剤とは、アゾール基とアルコキシシラン基を含む化合物である。
【0013】
アゾール基としては、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、セレナゾール基、ピラゾール基、イソオキサゾール基、イソチアゾール基、トリアゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、テトラゾール基、オキサトリアゾール基、チアトリアゾール基、ベンダゾール基、インダゾール基、ベンズイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基などが挙げられる。中でもイミダゾール基が特に好ましい。
【0014】
また、アルコキシシラン基は、一般のシランカップリング剤に含まれるカップリング機能を示す基であればよく、例えばメトキシ基、エトキシ基等低級アルコキシ基を1〜3個有するシランである。
【0015】
このアゾール系シランカップリング剤自体は、公知であり、例えばイミダゾールなどのアゾール化合物とγ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン等のエポキシシランとを反応させて得ることができる。この反応については例えば特開平5−186479号公報などに記載されている。
【0016】
アゾール化合物濃度は0.01〜100g/L、好ましくは0.05〜5g/Lがよい。0.01g/Lより少ないと基板表面への付着量が少なすぎて均一にならない。また、100g/Lより多いと付着量が多すぎて乾燥しにくかったり、不経済である。
【0017】
また、本発明に使用する無電解メッキの活性化剤は、貴金属化合物、たとえば、白金、パラジウム、金、銀等のハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、脂肪酸塩などの化合物を使用することことができる。特にパラジウム化合物が好ましい。そして、この活性化剤をインク組成物に含む場合において、その濃度は0.01〜100g/Lが好ましい。インク組成物とは別の溶液として調製する場合も同様である。
【実施例】
【0018】
実施例1
イミダゾールとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの等モル反応生成物の水溶液へ塩化パラジウム水溶液を添加して溶液を調製し、さらに水、粘度調整剤、表面張力調整剤を添加して前記等モル反応生成物が300mg/L、塩化パラジウム水溶液が100mg/Lとなるようにインク組成物を調製した。このインク組成物をインクジェットノズルより吐出し、基板に配線回路を描画した。その後、無電解ニッケルめっき(日鉱メタルプレーティング社製:ニコム7N−0)を膜厚0.2μm施した。さらに無電解銅めっき(日鉱メタルプレーティング社製:KC500)を1μm厚つけた。SEMでの断面観察の結果、パターン外析出は無く、めっき界面の明瞭な配線が形成された。そのめっき皮膜のピール強度は1.5kgf/cmと高い密着度を示した。
【0019】
実施例2
イミダゾールとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの等モル反応生成物水溶液に水、粘度調整剤、表面張力調整剤を加えて前記等モル反応生成物が300mg/Lになるようにインク組成物を調製した。このインク組成物をインクジェットノズルより吐出し、基板に配線を描画した。次いで塩化パラジウム水溶液(100mg/L)に浸漬し、パラジウムをイミダゾール環で固定化した。その後無電解ニッケルメッキ(日鉱メタルプレーティング社製:ニコム7N−0)を膜厚0.2μm施した。さらに無電解銅めっき(日鉱メタルプレーティング社製:KC500)を1μm厚つけた。SEMでの断面観察の結果、パターン外析出が無く、めっき界面の明瞭な配線が形成された。そのめっき皮膜のピール強度は、1.5kgf/cmであった。
【0020】
比較例
イミダゾールとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの等モル反応生成物に代えて、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン水溶液を使用する以外は実施例1と同様にしてインク組成物を調製し、また、このインク組成物を使用する以外は実施例1と同様にして配線パターンを形成し、無電解めっきを行った。
【0021】
その結果、めっき物皮膜のピール強度は、0.3kgf/cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、インク組成物中にアゾール化合物を含有させることにより、これを使用するインクジェット方式を利用して、基板に対して優れた密着性をもってしかも均一に無電解めっき活性化剤を付与することができ、したがって、基板表面を粗面処理などの前処理を要することなく、これに無電解めっきして優れた密着性を有する配線パターンを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配線パターンを描画するためのインクジェット用インク組成物において、活性化剤カップリング剤としてアゾール系シランカップリング剤を含むことを特徴とするインク組成物。
【請求項2】
アゾール系シランカップリング剤がイミダゾールシランであることを特徴とする請求項1記載のインク組成物。
【請求項3】
基板上にインクジェットにより配線パターンを描画する方法において、請求項1記載のインク組成物を使用することを特徴とする配線パターンの描画方法。
【請求項4】
基板上にインクジェットにより配線パターンを描画し、次いで必要に応じて、活性化剤溶液に浸漬した後、無電解めっきにより該配線パターンを金属被覆する方法において、配線パターンの描画に請求項1記載のインク組成物を使用することを特徴とする金属被覆方法。

【国際公開番号】WO2005/044931
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515254(P2005−515254)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015707
【国際出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】