説明

インクジェット用受け紙とその製造方法

【課題】インクジェット印刷によって、高画質のフルカラー画像等を、にじみ等を生じることなく、きれいに表現することができる上、前記画像に、これまでにない新たな装飾を付与することができるインクジェット用受け紙と、その製造方法とを提供する。
【解決手段】インクジェット用受け紙1は、シート状の基材2の少なくとも片面に、少なくとも樹脂層3を介して、インクジェットインクを受容して画像を形成するための、透光性を有する受容層4を形成すると共に、前記樹脂層3に、前記受容層4に形成される画像を装飾する機能を付与した。製造方法は、樹脂層3のもとになる樹脂フィルム8の片面に受容層4を形成した後、前記樹脂フィルム8の反対面に、基材2を貼り合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷に適したインクジェット用受け紙と、前記インクジェット用受け紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータの出力印刷から、例えば商業広告などの、大型印刷物の印刷までの幅広い分野において、いわゆるインクジェット印刷が利用されるに至っている。前記インクジエット印刷では、受け紙の表面に、色の3原色であるシアン、マゼンタ、イエローの3色、あるいは前記3色を基本とする4色以上の多色のインクジェットインクを用いて印刷して、各色の混色によって、フルカラー画像等を表現している。受け紙としては、上質紙等の通常の紙類や、あるいは、紙等のシート状の基材の少なくとも片面に、典型的に高いインク吸収性を有する、インクジェットインクを受容して画像を形成するための受容層を形成した専用のインクジェット用受け紙等が使用される。
【0003】
また、後者のインクジェット用受け紙としては、前記基材の少なくとも片面に、受容層のもとになる塗剤を塗布し、乾燥させて受容層を形成する際に、基材がカールしたりシワになったりするのを防止することや、製造して印刷をしたインクジェット用受け紙を、屋外等の環境変化の大きい条件下で長期間、展示した際等にカールしたりするのを防止すること等を目的として、前記基材の少なくとも片面(好ましくは受容層を形成する面)に、樹脂のフィルムを貼り合せる等して樹脂層を形成したものが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−272231号公報
【特許文献2】特開2002−2095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のインクジェット用受け紙は、インクジェットインクの多くが、混色による色再現性を高めるために透明で、隠蔽性を有しないことから、先に説明したように、シアン、マゼンタ、イエロー等の、3色以上の多色のインクジェットインクを用いて、できるだけ色再現性よく、写真等の画像を表現することを目的として、その表面の白色度をできるだけ高くしたものが殆どであった。そのため、特に印画紙に焼き付けをした写真に匹敵する画像を、インクジェット印刷によって形成することは可能となったが、画像にさらなる装飾を付与するといったことは、殆ど検討されていなかった。
【0005】
数少ない事例としては、和紙の表面を改質してインクジェット適性、つまりインクジェットインクがにじみにくい性質を持たせたインクジェット用和紙が市販されており、かかるインクジェット用和紙を使用すれば、画像に、和紙の風合いを付与することができる。しかし、表面を改質してインクジェット適性を向上する効果には限界があり、前記インクジェット用和紙は、通常の和紙に比べればインクのにじみが少ないため、例えば文字や線画等の画像を、ある程度、きれいに表現することは可能であるものの、先に説明した受容層を有するインクジェット用受け紙のように、高画質のフルカラー画像を、にじみ等を生じることなく、きれいに表現することはできなかった。
【0006】
本発明の目的は、インクジェット印刷によって、高画質のフルカラー画像等を、にじみ等を生じることなく、きれいに表現することができる上、前記画像に、これまでにない新たな装飾を付与することができるインクジェット用受け紙と、その製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シート状の基材の少なくとも片面に、樹脂フィルムを積層して形成された樹脂層を介して、インクジェットインクを受容して画像を形成するための受容層が形成されたインクジェット用受け紙であって、前記樹脂層が、前記受容層に形成される画像を装飾する機能を有することを特徴とする。前記本発明によれば、樹脂層の機能によって、受容層に形成される画像を装飾することができる。そのため、前記受容層によって、高画質のフルカラー画像等を、にじみ等を生じることなく、きれいに表現することができる上、前記画像に、これまでにない新たな装飾を付与することが可能となる。
【0008】
樹脂層による、受容層に形成される画像を装飾する機能としては、
(1) 受容層と樹脂層が共に透明ないし半透明であり、前記受容層と樹脂層とを通して基材の表面状態を可視化して、前記表面状態によって、受容層に形成される画像を装飾する機能、
(2) 樹脂層が、受容層と接する面に凹凸形状を備えており、前記凹凸形状によって、受容層に形成される画像を装飾する機能、および
(3) 受容層が透明ないし半透明であると共に樹脂層が着色されており、前記色によって、受容層に形成される画像を装飾する機能、
等が挙げられる。前記樹脂層と受容層は、基材の両面に形成してもよい。
【0009】
本発明は、前記本発明のインクジェット用受け紙を製造するための製造方法であって、樹脂層のもとになる樹脂フィルムの片面に、直接に、またはプライマ層を介して受容層を形成する工程と、前記受容層を形成した後の樹脂フィルムの反対面に、基材を貼り合せる工程とを含むことを特徴とする。前記本発明によれば、例えば、前記特許文献1に記載されているように、基材の少なくとも片面に樹脂層を形成した後に塗剤を塗布し、乾燥させて受容層を形成する場合と異なり、基材が、塗剤の乾燥工程を経ることがないため、前記基材がカールしたりシワになったりするのを、より確実に、防止することができる。かかる効果は、特に樹脂層が薄い樹脂フィルム等からなり、基材がカールしたりシワになったりするのを防止する効果があまり期待できない場合に、特に有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクジェット印刷によって、高画質のフルカラー画像等を、にじみ等を生じることなく、きれいに表現することができる上、前記画像に、これまでにない新たな装飾を付与することができるインクジェット用受け紙と、その製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のインクジェット用受け紙は、シート状の基材の少なくとも片面に、樹脂フィルムを積層して形成された樹脂層を介して、インクジェットインクを受容して画像を形成するための受容層が形成されたものである。前記インクジェット用受け紙1の具体例としては、例えば図1に示すように、基材2の片面のみに、樹脂層3と受容層4とを形成したものと、図2に示すように、前記基材2の両面に、それぞれ樹脂層3と受容層4とを形成したものが挙げられる。
【0012】
基材2としては、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、再生紙、キャストコート紙、段ボール紙、コンデンサー紙、グラシン紙、和紙、模様紙、エンボス紙等の紙の他、例えばポリスルフォン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセテート等の各種合成樹脂からなるフィルムや合成紙、シート、さらにはセロファン等が挙げられる。
【0013】
樹脂層3による、受容層4に形成される画像を装飾する機能が、前記(1)の、共に透明ないし半透明である受容層4と樹脂層3とを通して、基材2の表面状態を可視化して、前記表面状態によって、受容層4に形成される画像を装飾する機能である場合には、前記基材2として、任意の色に着色されたものや、任意の印刷がされたもの、あるいは和紙、模様紙、エンボス紙等を用いることで、画像の装飾性を高めることができる。
【0014】
樹脂層3のもとになる樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、アクリル樹脂系フィルム、スチレン系フィルム、塩化ビニル系フィルム、酢酸ビニルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等の酢酸ビニル系フィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ジアセテートフィルム、トリアセテートフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
【0015】
樹脂フィルムは、樹脂層3に付与する、画像を装飾する機能の種類に応じて、その機能に見合う特性を有すると共に、例えば先に説明した、樹脂フィルムの片面に受容層4を形成した後、基材2と貼り合せる本発明の製造方法によってインクジェット用受け紙を製造するのに適した特性を有するものを、前記例示の各種フィルムの中から、適宜、選択して用いることができる。
【0016】
例えば樹脂層3が、前記(1)の、基材の表面状態を可視化して画像を装飾する機能を有するものである場合には、前記各種の樹脂フィルムのうち、それ自体が透明ないし半透明(例えば乳白色半透明)である樹脂フィルムが使用される。中でも、前記本発明の製造方法に用いた際に、途中で切れたりカールしたりしない十分な強度や適度なコシを有すると共に、塗剤を塗布して乾燥させる際の温度変化、湿度変化に対する寸法変化が少ない上、薄物としても厚みのムラが小さい、厚み0.8μm以上、12μm以下、中でも1μm以上、4.5μm以下、特に1μm以上、2μm以下程度の延伸ポリエステルフィルム、特に2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが好ましい。
【0017】
延伸ポリエステルフィルムの厚みが前記範囲未満では、そのコシが弱くなったり、強度が不足したりするため、前記本発明の製造方法によって、カール等を生じることなく、安定して連続的に、インクジェット用受け紙1を製造できないおそれがある。また、延伸ポリエステルフィルムの厚みが前記範囲を超える場合には、特に、前記延伸ポリエステルフィルムが半透明のフィルムである場合に、光の透過性が低くなって、基材2の表面状態を可視化して画像を装飾する機能が十分に得られなくなるおそれがある。
【0018】
なお、樹脂フィルムが半透明でもよいのは、前記半透明の、すなわち白濁等した樹脂層3を通してみた基材2の表面状態によって画像を装飾することで、新たな表現が可能となるためである。ただし、樹脂フィルムとしては、無延伸ポリエステルフィルム等、他の樹脂フィルムを用いても構わない。その厚みは、前記範囲には限定されない。
また、樹脂層3が、前記(2)の、表面の凹凸形状によって、受容層4に形成される画像を装飾する機能を有するものである場合には、前記各種の樹脂フィルムからなり、その片面がエンボス加工されて、任意の凹凸形状が付与されたエンボスフィルムが使用される。前記エンボスフィルムの厚みは、前記本発明の製造方法によって、安定して連続的に、インクジェット用受け紙1を製造することを考慮すると10μm以上、100μm以下、特に20μm以上、70μm以下であるのが好ましい。
【0019】
また、前記エンボスフィルムを透明ないし半透明として、凹凸形状と、基材2の表面状態を可視化することとの相乗効果によって画像を装飾することも可能である。また、前記エンボスフィルムを着色して、凹凸形状と着色との相乗効果によって画像を装飾したり、エンボスフィルムを透明ないし半透明とすると共に着色して、凹凸形状と着色と、そして基材2の表面状態を可視化することとの相乗効果によって画像を装飾したりすることも可能である。
【0020】
さらに、樹脂層3が、前記(3)の、それ自体の色によって、受容層4に形成される画像を装飾する機能を有するものである場合には、前記各種の樹脂フィルムからなり、顔料、染料等を含有させることで任意の色に着色された着色フィルムが使用される。また、前記着色フィルムを透明ないし半透明として、着色と、基材2の表面状態を可視化することとの相乗効果によって画像を装飾することも可能である。また、着色フィルムとして、アルミニウム等の金属を蒸着した蒸着フィルムを用いて、画像をメタリック化することもできる。着色フィルムや蒸着フィルムのもとになる樹脂フィルムとしては、特に2軸延伸PETフィルムが好ましい。2軸延伸PETフィルムの厚みは、前記と同様にコシや強度等を考慮すると0.8μm以上、50μm以下、特に1μm以上、30μm以下であるのが好ましい。
【0021】
樹脂フィルムは、図1、2に示すように、接着層5を介して、基材2の片面または両面に貼り合わされる。基材2と樹脂フィルムとを、前記接着層5を介して貼り合せる方法としては、樹脂フィルムの片面に、接着層5のもとになる液状の接着剤を塗布し、乾燥させて接着層5を形成した後、基材2を貼り合せる、いわゆるドライラミネート法、もしくは樹脂フィルムの片面に、接着層のもとになる、溶融したホットメルト接着剤を塗布した後、基材2を貼り合せる、いわゆるホットメルト法が好ましい。前記両方法によれば、基材2をできるだけ乾燥状態に維持して、特に前記基材2が、紙や吸湿性のプラスチックフィルム等からなる場合に、カールしたりシワになったりするのを防止することができる。
【0022】
受容層4としては、インクジェットインクを受容して画像を形成することができるインク受容性を有する種々の受容層の構成を採用することができる。例えば、インクジェットインクが、パーソナルコンピュータの出力用として最も一般的なプリンタ用の、水性のインクジェットインクである場合、前記受容層4は、親水性ないしは吸水性を有する結着樹脂と、必要に応じてフィラーとを含む、例えば水性の塗剤を塗布した後、乾燥させて形成することができる。
【0023】
なお、樹脂層3が、前記(1)または(3)の機能によって画像を装飾するものである場合には、先に説明したように、受容層4は、透明ないし半透明である必要がある。一方、樹脂層3が、前記(2)の機能によって画像を装飾するものである場合、受容層4は、透明ないし半透明でも、不透明でも構わない。ただし、(2)の凹凸形状による装飾の機能を有する樹脂層3が、先に説明したように、前記凹凸形状と、基材2の表面状態を可視化することとの相乗効果、凹凸形状と着色との相乗効果、もしくは凹凸形状および着色と、基材2の表面状態を可視化することとの相乗効果によって画像を装飾するものである場合、受容層4は、透明ないし半透明である必要がある。
【0024】
前記受容層4を形成する結着樹脂としては、例えばポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体等のビニルピロリドン系樹脂;ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の、ビニルアルコールのアセタール化物;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロール系樹脂;ポリビニルアセタール、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ポリエステル、ポリアクリル酸またはそのエステル、ポリアクリルアミド、メラミン樹脂、あるいはこれらの変性物等の合成樹脂や、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、デンプン、カチオン化デンプン、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然樹脂の1種または2種以上が挙げられる。
【0025】
またフィラーとしては、吸水性を有する種々の、多孔質のフィラーが挙げられる。前記フィラーとしては、例えばアルミナ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、タルク、クレイ、ハイドロサルファイド、炭酸カルシウム、チタニア、酸化亜鉛、シリカ等の粒子(ゾル等)の1種または2種以上が挙げられる。受容層4を透明ないし半透明にすることを考慮すると、フィラーとしては、擬ベーマイト構造を有するアルミナ〔例えば、触媒化成工業(株)製の登録商標カタロイド−Aシリーズ〕、もしくは一次粒子径が100nm以下の球状シリカが好ましく、特に一次粒子径が20nm以下の球状シリカ〔例えば、日産化学工業(株)製の登録商標スノーテックスXS、スノーテックス40等〕が好ましい。フィラーの含有割合は、前記受容層4を形成する固形分の総量の90質量%以下、特に40質量%以上、85質量%以下であるのが好ましい。
【0026】
また受容層4には、水性のインクジェットインクの着色剤として多用されているアニオン性染料とイオン結合して、画像の耐水性を高める働きをするカチオン性樹脂を含有させてもよい。前記カチオン性樹脂としては、例えばポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)や、カチオン性アクリル系樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。受容層4の厚みは、前記受容層4を透明ないし半透明にすることと、受容層4に、インクジェットインクの良好な受容性を付与することとを考慮すると10μm以上、35μm以下、特に15μm以上、30μm以下であるのが好ましい。
【0027】
受容層4は、樹脂層3の表面に直接に形成してもよいが、前記両層間の密着性を高めるため、図1、2に示すように、プライマ層6を介して形成するのが好ましい。前記プライマ層6は、例えば不飽和ポリエステル樹脂と、その架橋剤としてのポリイソシアネート化合物とを含む塗剤を、樹脂層3のもとになる樹脂フィルムの、基材2が貼り合わされる側と反対面に塗布して乾燥させると共に、不飽和ポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物と架橋反応させて硬化させることで形成される。
【0028】
受容層4が透明ないし半透明である場合、前記プライマ層6も、透明ないし半透明である必要がある。すなわち、受容層4とプライマ層6とを、共に透明ないし半透明とすることで、樹脂層3による、受容層4に形成される画像を装飾する機能を、外部から視認することができる。プライマ層6の厚みは、前記プライマ層6を透明ないし半透明にすることと、受容層4の密着性を高めることとを考慮すると0.1μm以上、3μm以下、特に0.5μm以上、1.5μm以下であるのが好ましい。なお、受容層4、およびプライマ層6が半透明でもよいのは、樹脂層3による画像を修飾する機能を、前記半透明の、すなわち白濁した受容層4やプライマ層6を通して見ることで、新たな表現が可能となるためである。
【0029】
本発明のインクジェット用受け紙1は、従来同様に、基材2の片面または両面に、前記各層を順に積層して製造しても良いが、特に基材2が、紙や吸水性のプラスチックフィルム等からなる場合に、カールしたりシワになったりするのを防止することを考慮すると、樹脂層3のもとになる樹脂フィルムの片面に、直接に、またはプライマ層6を介して受容層4を形成した後、前記樹脂フィルムの反対面に、基材2を貼り合わせる本発明の製造方法によって製造するのが好ましい。
【0030】
すなわち紙は、特定の水分量(一般の紙で約6%)を保とうとする性質を有しているが、受容層のもとになる塗剤を塗布した後の乾燥時間が長いと、前記水分量が必要以上に減少するため、カールが発生しやすくなる。そして、たとえ乾燥後に調湿したとしても、本発明の製造方法によって製造する場合と比べて、大きなカールが残留する。なお、特許文献2には、前記本発明の製造方法と類似したインクジェット用受け紙の製造方法が記載されているが、基材が、厚み0.4mm以上という厚紙に限定されていることから、全く別のものと考えることができる。
【0031】
図3は、前記本発明の製造方法を実施するための、製造装置7の一例の概略を説明する図である。図3の製造装置7を用いて、前記本発明の製造方法によって、インクジェット用受け紙1を製造するためには、まず、樹脂層3のもとになる長尺の樹脂フィルム8を、その原反ロール9から一定の速度で、図中に実線の矢印で示すように連続的に送り出しながら、その片面(図では下側の面)に、グラビアコータ10において、プライマ層6用の塗剤11を塗布した後、乾燥機12を通して乾燥させると共に硬化させて、プライマ層6を形成する。
【0032】
前記グラビアコータ10は、前記塗剤11を収容する容器13と、前記容器13内の塗剤11に下部が浸漬された状態で回転するグラビアロール14と、前記グラビアロール14に、上方から当接された状態で回転するバックアップロール15とを備えている。前記グラビアコータ10によれば、図に示すように、前記グラビアロール14とバックアップロール15との間に樹脂フィルム8を挟んだ状態で、両ロール14、15を回転させることによって、前記樹脂フィルム8の、グラビアロール14と接する、図において下側の面に、連続的に、塗剤11を塗布することができる。
【0033】
次に、前記プライマ層6の上に、コンマコータ16において、受容層4用の塗剤17を塗布した後、乾燥機18を通して乾燥させて、受容層4を形成する。前記コンマコータ16は、バックアップロール19と、前記バックアップロール19の表面に当接された、バックアップロール19との間に塗剤17を貯留するためのコータダム20と、前記コータダム20より樹脂フィルム8の搬送方向下流側に、前記バックアップロール19との間に所定の間隔をあけて配設されたコンマロール21とを備えている。
【0034】
前記コンマコータ16によれば、図に示すように、バックアップロール19の表面に樹脂フィルム8を巻きつけて回転させると、前記回転による樹脂フィルム8の搬送に伴って、前記樹脂フィルム8の表面に、コータダム20から、貯留した塗剤17が供給されると共に、その厚みが、バックアップロール19とコンマロール21との間隔によって規制されることで、前記樹脂フィルム8の、バックアップロール19と接する側と反対側の面に形成されたプライマ層6の上に、連続的に、塗剤17を塗布することができる。
【0035】
そして、前記樹脂フィルム8の、プライマ層6を介して受容層4が形成された面と反対面に、グラビアコータ22において、溶融させたホットメルト接着剤23を塗布した後、原反ロール24から連続的に送り出した長尺の基材2との間に、前記ホットメルト接着剤23からなる接着層5を挟んで互いに重ね合わせた状態で、一対のプレスロール25、25間を通して貼り合わせると、図1に示すように、基材2の片面に、接着層5、樹脂層3、およびプライマ層6を介して受容層4が積層されたインクジェット用受け紙1を製造することができる。
【0036】
前記グラビアコータ22は、グラビアコータ10と同様に、ホットメルト接着剤23を収容する容器26と、前記容器26内のホットメルト接着剤23に下部が浸漬された状態で回転するグラビアロール27と、前記グラビアロール27に、上方から当接された状態で回転するバックアップロール28とを備えている。そして、図に示すように、前記グラビアロール27とバックアップロール28との間に樹脂フィルム8を挟んで、両ロール27、28を回転させることで、前記樹脂フィルム8の、グラビアロール27と接する、図において、プライマ層6を介して受容層4が形成された面と反対面である下側の面に、連続的に、ホットメルト接着剤23を塗布して接着層5を形成することができる。
【0037】
なお、接着層5を、先に説明したようにドライラミネート法によって形成する場合は、グラビアコータ等により、樹脂フィルム8の、プライマ層6を介して受容層4が形成された面と反対面に、連続的に、前記接着層5のもとになる液状の接着剤を塗布したのち、図示しない乾燥機を通して乾燥させればよい。製造したインクジェット用受け紙1は、図に示すように製品ロール29に巻き取って、次工程である所定の受け紙の寸法に裁断する工程に供給するまでの間、保管したり、あるいは巻き取らずに直接に、次工程に送って、所定の受け紙の寸法に裁断したりすることができる。また、樹脂フィルム8の片面に、プライマ層6を介して受容層4を形成した積層体を、ロールに巻き取って保管しておき、それを順次、次工程である、基材2の貼り合せ工程に供給することもできる。
【0038】
前記製造装置7を用いた、本発明の製造方法によれば、基材2の少なくとも片面に樹脂層3を形成した後に塗剤11、17を塗布し、乾燥させてプライマ層6、受容層4を形成する場合と異なり、基材2が、塗剤の乾燥工程を経ることがないため、特に前記基材2が紙や吸湿性のプラスチックフィルム等からなる場合に、カールしたりシワになったりするのを、より確実に、防止することができる。かかる効果は、特に樹脂層3が薄い樹脂フィルム等からなり、前記紙や吸湿性のプラスチックフィルム等からなる基材2がカールしたりシワになったりするのを防止する効果があまり期待できない場合に、特に有効である。
【0039】
前記製造装置7を用いて、基材2の両面に、プライマ層6を介して受容層4を形成するためには、例えば、前記と同様にして、基材2から受容層4までの第1の積層体を形成すると共に、前記と同様の工程を経て、樹脂フィルム8の片面に、プライマ層6を介して受容層4が積層された第2の積層体を形成し、前記第2の積層体の、樹脂フィルム8の反対面に、溶融させたホットメルト接着剤23を塗布した後、前記第1の積層体の、基材2の反対面との間に、ホットメルト接着剤等からなる接着層5を挟んで互いに重ね合わせた状態で、一対のロール間を通して貼り合わせる。そうすると、図2に示すように、基材2の両面に、それぞれ、接着層5、樹脂層3、およびプライマ層6を介して受容層4が積層されたインクジェット用受け紙1を製造することができる。
【0040】
本発明の構成は、以上で説明した図の例には限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で、種々の設計変更を施すことができる。
【実施例】
【0041】
《実施例1》
図3に示す製造装置7を用いて、樹脂層3のもとになる、厚み1.8μmの透明の2軸延伸PETフィルム8を、その原反ロール9から連続的に送り出しながら、前記2軸延伸PETフィルム8の片面に、まずグラビアコータ10において、下記表1に示す各成分からなるプライマ層用の塗剤11を塗布し、乾燥機12を通して乾燥させると共に硬化させて、厚み1μmの透明のプライマ層6を形成した後、コンマコータ16において、前記プライマ層6の上に、下記表2に示す各成分からなる受容層用の塗剤17を塗布し、乾燥機18を通して、温度100℃、風量(送風機の回転数)1000rpmの条件で1分間、乾燥させて、厚み25μmの透明の受容層4を形成した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
*1:日産化学工業(株)製の登録商標スノーテックスXS〔一次粒子形状:球形、一次粒子径:4ないし6nm〕
*2:ケン化度88%、平均重合度3500
*3:カチオン性樹脂、ダイソー(株)製の登録商標ダドマック
次に、前記2軸延伸PETフィルム8の反対面に、グラビアコータ22において、溶融させたEVA系の透明のホットメルト粘着剤23を塗布(塗布厚み1.5μm)した後、原反ロール24から連続的に送り出した、基材2としての赤色の上質紙〔日本製紙(株)製、色上質紙赤色、厚み100μm〕との間に、前記ホットメルト粘着剤23からなる粘着層5を挟んで互いに重ね合わせた状態で、一対のプレスロール25、25間を通して貼り合わせることで、図1に示すように、基材2の片面に、粘着層5、樹脂層3、およびプライマ層6を介して受容層4が積層されたインクジェット用受け紙1を製造した。
《実施例2》
図3に示す製造装置7を用いて、実施例1と同様にして、基材2から受容層4までの第1の積層体を形成すると共に、前記実施例1と同様の工程を経て、2軸延伸PETフィルム8の片面に、プライマ層6を介して受容層4が積層された第2の積層体を形成し、前記第2の積層体の、2軸延伸PETフィルム8の反対面に、溶融させたEVA系のホットメルト粘着剤を塗布(塗布厚み1.5μm)した後、前記第1の積層体の、基材2の反対面との間に、前記ホットメルト粘着剤からなる粘着層5を挟んで互いに重ね合わせた状態で、一対のロール間を通して貼り合わせることで、図2に示すように、基材2の両面に、それぞれ、粘着層5、樹脂層3、およびプライマ層6を介して受容層4が積層されたインクジェット用受け紙1を製造した。
《実施例3》
樹脂層3のもとになる、厚み1.8μmの透明の2軸延伸PETフィルム8の反対面に、先に、溶融させたEVA系のホットメルト粘着剤を塗布(塗布厚み1.5μm)し、基材2としての赤色の上質紙〔日本製紙(株)製、色上質紙赤色、厚み100μm〕との間に、前記ホットメルト粘着剤からなる粘着層5を挟んで互いに重ね合わせた状態で、一対のロール間を通して貼り合わせた後、前記2軸延伸PETフィルムの片面に、実施例1と同様にしてプライマ層6と受容層4とを積層して、同じ層構成を有するインクジェット用受け紙1を製造した。
《実施例4》
樹脂層3のもとになるフィルムとして、その片面がエンボス処理された、厚み50μmの無延伸ポリエステルフィルムを用い、前記無延伸ポリエステルフィルムのエンボス処理された表面に、直接に、コンマコータによって、受容層用の塗剤17を塗布した後、乾燥させて受容層4を積層すると共に、基材2として、白色の上質紙〔日本製紙(株)製、色上質紙白色、厚み100μm〕を用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材2の片面に、粘着層5、および樹脂層3を介して受容層4が積層されたインクジェット用受け紙1を製造した。
《実施例5》
樹脂層3のもとになるフィルムとして、厚み25μmの黒色不透明の2軸延伸PETフィルムを用いると共に、基材2として、白色の上質紙〔日本製紙(株)製、色上質紙白色、厚み100μm〕を用いたこと以外は実施例1と同様にして、前記実施例1と同じ層構成を有するインクジェット用受け紙1を製造した。
《実施例6》
樹脂層3のもとになるフィルムとして、厚み12μmの2軸延伸PETフィルムの片面にアルミニウムを蒸着した蒸着フィルム〔東レフィルム加工(株)製の登録商標メタルミーS〕を用いると共に、基材2として、白色の上質紙〔日本製紙(株)製、色上質紙白色、厚み100μm〕を用いたこと以外は実施例1と同様にして、前記実施例1と同じ層構成を有するインクジェット用受け紙1を製造した。
《カール量の測定》
実施例1ないし6のインクジェット用受け紙を、それぞれA4サイズに裁断し、温度25℃、相対湿度40%の環境下で平らな台の上に載置して30分間、経過後の、四隅の高さの平均を、カール量として求めた。
《画像評価》
実施例1ないし3、実施例5のインクジェット用受け紙については、着色剤として銀コロイドを用いた銀色のインクジェットインクを用いて、また実施例4、6のインクジェット用受け紙については、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクジェットインクを用いて、それぞれの受容層に、インクジェット印刷によって画像を印刷したのち、その外観を観察して評価した。なお、実施例2のインクジェット用受け紙については、両面の受容層に画像を印刷して評価した。
以上の結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
表より、各実施例のインクジェット用受け紙によれば、いずれもにじみのない画像を形成できる上、樹脂層の機能によって、前記画像に、これまでにない新たな装飾を付与できることが判った。また、実施例1、3を比較すると、樹脂層のもとになる樹脂フィルムの片面に受容層を形成した後、前記樹脂フィルムの反対面に基材を貼り合わせることで、カール量を小さくできることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のインクジェット用受け紙の、実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のインクジェット用受け紙の、実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の製造方法を実施するための、製造装置の一例の概略を説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェット用受け紙
2 基材
3 樹脂層
4 受容層
5 粘着層
6 プライマ層
7 製造装置
8 樹脂フィルム
9 原反ロール
10、22 グラビアコータ
11 塗剤
12 乾燥機
13、26 容器
14、27 グラビアロール
15、19、28 バックアップロール
16 コンマコータ
17 塗剤
18 乾燥機
20 コータダム
21 コンマロール
23 ホットメルト粘着剤
24 原反ロール
25 プレスロール
29 製品ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材の少なくとも片面に、樹脂フィルムを積層して形成された樹脂層を介して、インクジェットインクを受容して画像を形成するための受容層が形成されたインクジェット用受け紙であって、前記樹脂層が、前記受容層に形成される画像を装飾する機能を有することを特徴とするインクジェット用受け紙。
【請求項2】
受容層と樹脂層が共に透明ないし半透明であり、前記受容層と樹脂層とを通して基材の表面状態を可視化して、前記表面状態によって、受容層に形成される画像を装飾する請求項1に記載のインクジェット用受け紙。
【請求項3】
樹脂層が、受容層と接する面に凹凸形状を備えており、前記凹凸形状によって、受容層に形成される画像を装飾する請求項1に記載のインクジェット用受け紙。
【請求項4】
受容層が透明ないし半透明であると共に樹脂層が着色されており、前記色によって、受容層に形成される画像を装飾する請求項1に記載のインクジェット用受け紙。
【請求項5】
基材の両面に、それぞれ樹脂フィルムを積層して形成された樹脂層を介して、受容層が形成されている請求項1に記載のインクジェット用受け紙。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェット用受け紙を製造するための製造方法であって、樹脂層のもとになる樹脂フィルムの片面に、直接に、またはプライマ層を介して受容層を形成する工程と、前記受容層を形成した後の樹脂フィルムの反対面に、基材を貼り合せる工程とを含むことを特徴とするインクジェット用受け紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−90510(P2009−90510A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261989(P2007−261989)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(505091905)ゼネラルテクノロジー株式会社 (117)
【Fターム(参考)】