説明

インクジェット用記録媒体及びその製造方法、並びに微粒子の分散体

【課題】優れた退色防止性、画像鮮明性及びインク吸収性を有するインクジェット用記録媒体と、無機顔料の分散性及び保存安定性に優れ、かつインク受容層の形成後にも無機顔料の分布が均一なインク受容層用分散媒体を提供する。
【解決手段】支持体及びインク受容層の少なくとも一方が一般式(1)の化合物を含有するインクジェット用記録媒体。


ただし、R1及びR2は水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基であり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。R3は直鎖分岐状のアルキル基、若しくはアリーレン基であり、Xは酸性可溶化基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用記録媒体及びその製造方法、並びに微粒子の分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インク等の記録用の液体(記録液)の微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて、紙などのインクジェット用記録媒体に付着させ、画像、文字などの記録を行なうものである。このインクジェット用記録媒体は、高速低騒音、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が大きく、現像が不要であるなどの特徴がある。このため、プリンタ単体への展開をはじめとして、複写機、ワープロ、ファクシミリ、プロッター等の情報機器における出力部への展開が行なわれ、急速に普及している。
【0003】
また、近年、高性能のデジタルカメラ、デジタルビデオ、スキャナー等が安価に提供されつつある。このため、パーソナルコンピューターの普及と相まって、これらの機器から得た画像情報の出力にインクジェット記録方式を採用したプリンタが極めて好適に用いられるようになってきている。
【0004】
このような背景において、銀塩系写真や製版方式の多色印刷と比較して遜色のない画像を、手軽にインクジェット記録方式で出力する事が求められるようになってきている。このような要求を満たす為に、記録の高速化、高精細化、フルカラー化などプリンタ自体の構造や記録方式に関する改良が行なわれている。
【0005】
一方、インクジェット記録方式等に用いられるインクジェット用記録媒体については、従来から多様多種の形態のものが提案されてきた。ここで、銀塩系写真に匹敵する記録には、そのインクジェット用記録媒体として優れた染料の発色性、高い表面光沢性、高い解像性を有する画像形成が必要とされる。特許文献1(特開平7−232475号公報)では、このようなインクジェット用記録媒体のインク受容層の構成材料としてアルミナ水和物が用いられている。
【0006】
更に、最近になって、インクジェット用記録媒体には記録画像の保存性も要求されるようになってきた。そこで、耐光性、耐ガス性を向上するために画像退色防止剤を配合して、その記録画像の保存性を改良する方法が提案されている。
【0007】
特許文献2(特公平6−30951号公報)には、画像の光や空気中のガスに対する保存性を改良する方法として、特殊なカチオン化合物を含む記録シートが開示されている。また、特許文献3(特開平3−13376号公報)、特許文献4(特公平4−34512号公報)、特許文献5(特開平11−245504号公報)、特許文献6(特開2001−121812号公報)には、耐光性改良剤として、ヒンダードアミン化合物を含む記録シートが開示されている。
【0008】
一方、特許文献7(特開2000−177241号公報)には、画像退色防止剤として亜リン酸エステル化合物を含む記録媒体が開示されている。特許文献8(特開2006−123316号公報)には、更なる画像退色防止特性を目的として、5価のリン酸エステル化合物を含有させた記録媒体が開示されている。また、特許文献9(特開2004−188667号公報)にも、5価のリン酸誘導体を含有させた記録媒体が、検討されている。これら5価リン酸エステルを含む記録媒体は、画像退色防止剤として、亜リン酸エステル化合物やヒンダードアミン、硫黄化合物を含む記録媒体と比較して画像保存性が優れるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−232475号公報
【特許文献2】特公平6−30951号公報
【特許文献3】特開平3−13376号公報
【特許文献4】特公平4−34512号公報
【特許文献5】特開平11−245504号公報
【特許文献6】特開2001−121812号公報
【特許文献7】特開2000−177241号公報
【特許文献8】特開2006−123316号公報
【特許文献9】特開2004−188667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2〜6に記載のインクジェット用記録媒体は耐ガス性や耐光性に関してある程度の効果を示すが、その層構成や構成材料によっては耐ガス性や耐光性が十分に良好であるとはいえない場合があった。
【0011】
また、上記特許文献7、8、9には、画像退色防止剤として亜リン酸エステルや5価のリン酸エステル化合物などを使用することで、画像退色の防止効果が得られるとしている。しかし、これらの特許文献に記載の記録媒体では、画像退色防止剤の使用によりある程度の耐候性改良は達成できるものの、十分な画像保存性を得るためには画像退色防止剤を大量に添加する必要があった。この結果、画像鮮明性やインク吸収性といった画像特性が悪化することとなっていた。
【0012】
一方、従来から、様々な用途に、溶媒中に無機顔料を分散させた分散体が使用されている。しかしながら、この分散体の使用材料によっては溶媒中の無機顔料の分散性が悪くなり、この分散体を用いて形成した製造物中の無機顔料の分布も悪くなってその製品特性が低下する場合があった。特に、分散体として、インクジェット用記録媒体のインク受容層用の塗工液を用いた場合、塗工液の使用材料によっては、この傾向が顕著に表れることとなっていた。すなわち、塗工液中の無機顔料の分散性が低下し、この塗工液を塗工、乾燥して製造したインク受容層中の無機顔料の分布が不均一となって、インクジェット用記録媒体の画像特性が低下する場合があった。
【0013】
ここで、分散体として、溶媒中に、上記亜リン酸エステルや5価のリン酸エステル化合物の画像退色防止剤と、無機顔料とを含有するインク受容層用の塗工液を用いて、インクジェット用記録媒体を製造する場合が考えられる。しかし、この場合には、上記画像退色防止剤は水に不溶性のものが多く、水系塗工液に添加できなかったり、添加できても無機顔料の分散性が悪くなっていた。このため、製造後のインク受容層中の無機顔料の分布の不均一性により、画像鮮明性といった画像特性が悪化することとなっていた。
【0014】
そこで、本発明者は上記課題を解決するために様々な検討を行った。この結果、支持体及びインク受容層の少なくとも一方の中に、下記一般式(1)で示される化合物を含有させる。これにより、インクジェット印字による画像保存性、画像特性が優れていることを見出し、第1の発明を完成するに至ったものである。
【0015】
【化1】

【0016】
(R1及びR2は水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基のいずれかであり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。R3は直鎖状のアルキレン基、分岐状のアルキレン基、若しくはアリーレン基であり、Xは酸性可溶化基である。)。
【0017】
また、溶媒中に無機顔料と、上記一般式(1)の化合物を含有させることにより、一般式(1)の化合物が解膠剤として働き、溶媒中の無機顔料の分散性を向上できることを見出し、第2の発明を完成するに至ったものである。
【0018】
すなわち、第1の発明は、優れた退色防止性、画像鮮明性やインク吸収性といった有効な画像特性を有するインクジェット用記録媒体を得ることを目的とする。
【0019】
また、第2の発明は、無機顔料の分散性に優れ、且つ保存安定性に優れ、インク受容層形成後にも無機顔料の分布が均一なインク受容層用分散体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一実施態様は、
支持体と、前記支持体の少なくとも一方の面上に設けられたインク受容層とを有するインクジェット用記録媒体であって、
前記支持体及びインク受容層の少なくとも一方が下記一般式(1)の化合物を含有することを特徴とするインクジェット用記録媒体に関する。
【0021】
【化2】

【0022】
(R1及びR2は水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基であり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。R3は直鎖状のアルキレン基、分岐状のアルキレン基、若しくはアリーレン基であり、Xは酸性可溶化基である。)
本発明の他の一実施態様は、
下記一般式(1)の化合物と、無機顔料と、溶媒と、を含むインク受容層用の分散体に関する。
【0023】
【化3】

【0024】
(R1及びR2は水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基であり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。R3は直鎖状のアルキレン基、分岐状のアルキレン基、若しくはアリーレン基であり、Xは酸性可溶化基である。)
【発明の効果】
【0025】
優れた退色防止性、画像鮮明性やインク吸収性といった有効な画像特性を有するインクジェット用記録媒体を提供することができる。
【0026】
無機顔料の分散性に優れ、インク受容層用の塗工液として用いた場合に、形成後のインク受容層中の無機顔料の分布を均一なものとすることができるインク受容層用の分散体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、下記一般式(1)の化合物を含むインクジェット用記録媒体、及びその製造方法、並びに微粒子の分散体に関するものである。
【0028】
【化4】

【0029】
(R1及びR2は水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基のいずれかであり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。R3は直鎖状のアルキレン基、分岐状のアルキレン基、若しくはアリーレン基であり、Xは酸性可溶化基である。)
以下に、好ましい実施形態を挙げて、各発明を更に詳細に説明する。
【0030】
1.インクジェット用記録媒体
第1の発明であるインクジェット用記録媒体は、支持体と、支持体の少なくとも一方の面上に設けられたインク受容層とを有する。また、支持体及びインク受容層の少なくとも一方が、5価のリン酸エステルである上記一般式(1)の化合物を含有する。このインク受容層は、支持体の一方の面上に設けられても、支持体の両方の面上に設けられても良い。また、一般式(1)の化合物は、支持体中に含有されても、インク受容層中に含有されても、支持体とインク受容層の両方の中に含有されていても良い。
以下、インクジェット用記録媒体の各構成材料及び構成成分について、説明する。
【0031】
(一般式(1)の化合物)
上記一般式(1)の化合物は、インクジェット用記録媒体中で画像退色防止剤として働く。支持体及びインク受容層の少なくとも一方の中にこの化合物を含有させることによって、従来の3価の亜リン酸エステルを使用した場合よりも、インクジェット用記録媒体の画像保存性を向上させることができる。
【0032】
また、以下に、本発明の一般式(1)の化合物が、従来の5価リン酸エステルを使用した場合よりも、インクジェット用記録媒体の画像保存性を向上させる理由について説明する。
【0033】
本発明の一般式(1)の化合物の画像保存性が優れている、ひとつめの理由は、一般式(1)の化合物が分子内に酸性可溶化基を有しているためである。このため、この化合物を用いて分散性の優れた無機顔料の分散体を製造し、この分散体を支持体に塗工、乾燥してインクジェット用記録媒体を製造することができる。そして、インク受容層内において、この一般式(1)の化合物は従来の5価のリン酸エステル化合物よりもインク受容層構成成分の無機顔料に吸着若しくは近傍に存在し易くなっている。また、一般式(1)の化合物が支持体内に存在する場合、支持体まで浸透したインク溶媒によってインク受容層に一般式(1)の化合物が拡散し、従来の5価のリン酸エステル化合物よりもインク受容層構成成分の無機顔料に吸着若しくは近傍に存在し易くなっている。このため、一般式(1)の化合物は、インク成分である顔料分子や染料分子の表面に吸着したり、その近傍に存在することで、優れた退色防止機能を有することができる。この結果、酸性可溶化基を有さない5価のリン酸エステル化合物と一般式(1)の化合物を、それぞれ同量、含有させた場合、一般式(1)の化合物を含有するインクジェット用記録媒体の方がより高い耐候性を示すことができる。
【0034】
以下に、本発明の一般式(1)の化合物の画像保存性が優れている、ふたつめの理由について説明する。一般式(1)の化合物は、空気中のキセノンなどによりインク成分の染料または顔料分子内に発生した一重項酸素に対して、高いクエンチ能力を有している。この一重項酸素クエンチのメカニズムは明らかではないが、従来の5価のリン酸エステルの酸素、硫黄、エステル結合よりも、本発明の一般式(1)の化合物のような炭素である方が、より一重項酸素のクエンチ効果が高いと考えられる。この結果、インク受容層の顔料としてシリカを使用した場合でも、従来の5価のリン酸エステル化合物と比べて、一般式(1)の化合物を含有するインクジェット用記録媒体の方がより高い耐候性を示すことができる。
【0035】
また、一般式(1)の化合物は、例えば、インク受容層の構成成分である顔料の解膠材料として使用することができる。すなわち、インクジェット用記録媒体用の塗工液中に、顔料と一般式(1)の化合物を含有させることにより、塗工液中の顔料の分散性を向上させることができる。この結果、塗工液の乾燥、固化後のインク受容層中の顔料の分布を均一なものとすることができる。
【0036】
そして、この一般式(1)の化合物による画像退色性の向上と、インク受容層中の顔料分布の均一性とにより、退色防止性、画像鮮明性やインク吸収性といった画像特性に優れたインクジェット用記録媒体とすることができる。
【0037】
更に、上記一般式(1)の化合物は末端に酸性可溶化基を有するため、水溶化し易く取扱いが容易となり、上記一般式(1)の化合物はインク受容層用等の水系塗工液への添加が容易となる。この結果、従来技術のように、インク受容層を製造後、新たに画像退色防止剤をオーバーコートしたり、インク受容層用の塗工液中に新たに画像退色防止剤を添加する工程を省くことができる。
【0038】
以下に、下記一般式(1)の化合物の構造について詳しく説明するが、本発明の一般式(1)の化合物はこれらに限定されるものでは無い。
まず、一般式(1)の化合物は下記のように表される。
【0039】
【化5】

【0040】
(R1及びR2は水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基のいずれかであり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。R3は直鎖状のアルキレン基、分岐状のアルキレン基、若しくはアリーレン基であり、Xは酸性可溶化基である。)。
【0041】
一般式(1)の化合物中の酸性可溶化基とは水中で解離して酸性を示す基をいう。酸性可溶化基としては一般式(1)の化合物を可溶化させるものであれば良く、例えば、カルボキシル基、スルホン基、スルフィノ基などを使用することができるが、これらの中でもカルボキシル基を使用することが好ましい。
【0042】
一般式(1)の化合物中のR1及びR2は、水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基の何れかであり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。また、R3は直鎖状のアルキレン基、分岐状のアルキレン基、若しくはアリーレン基である。このR1、R2及びR3について以下に好ましい例を上げるが、一般式(1)の化合物が水溶性となるものであればその構造は特に限定されない。
【0043】
1及びR2の直鎖又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基が挙げられる。R1及びR2の置換又は無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−エチルフェニル基、p−プロピルフェニル基、p−ブチルフェニル基、p−オクチルフェニル基、p−ドデシルフェニル基、p−オクタデシルフェニル基が挙げられる。R3としては、例えば、アルキレン基としてメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、アリーレン基としてフェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0044】
一般式(1)で示される化合物としては、下記一般式(2)で示される化合物が好ましい。
【0045】
【化6】

【0046】
(R1、R2は水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基のいずれかであり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。R4はメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニレン基である。)
インク受容層中に無機顔料および一般式(1)の化合物を含有する場合、インク受容層中における一般式(1)の化合物の好ましい含有量は、無機顔料の全固形分100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下である。一般式(1)の化合物の含有量がこの範囲のとき、インクジェット用記録媒体を、十分な耐候性を付与しつつ、画像退色防止剤の添加による画像記録特性への影響を殆ど生じないものとすることができる。
【0047】
一般式(1)の化合物を支持体中に含有させる方法としては、支持体を準備した後、インク受容層を形成する前に、支持体上に一般式(1)の化合物を含有する塗工液を塗工する方法を挙げることができる。
【0048】
また、一般式(1)の化合物をインク受容層中に含有させる方法としては、下記の方法を挙げることができる。
(a)顔料等の微粒子の分散体中に一般式(1)の化合物を添加した後、この分散体を、支持体上に塗工、乾燥させてインク受容層とする方法。
(b)顔料等の微粒子の分散体とバインダーを混合した塗工液中に一般式(1)の化合物を添加した後、この塗工液を塗工、乾燥させてインク受容層とする方法。この製造方法をより具体的に記載すると、以下の通りとなる。
支持体を準備する工程と、
微粒子の分散体と、水溶性樹脂と、を混合して塗工液を得る工程と、
支持体の少なくとも一方の面上に塗工液を塗工、乾燥する工程と、
を有することを特徴とするインクジェット用記録媒体の製造方法。
(c)予めインク受容層を形成し、このインク受容層上に、一般式(1)の化合物を含有する塗工液を塗工する方法。
【0049】
一般式(1)の化合物を支持体、インク受容層に含有させる方法は上記(a)〜(c)の方法に限定されるわけではないが、生産性等の問題から、上記(b)の方法が好ましい。
【0050】
(インク受容層)
インクジェット用記録媒体のインク受容層は、上記一般式(1)の化合物以外に、顔料とバインダーを含有することが好ましい。この顔料としては、無機顔料と有機顔料を使用することができる。
【0051】
この無機顔料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0052】
また、有機顔料として、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0053】
顔料としては、これらの中から1種を選択して、又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの顔料の中から、染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、及び光沢性の点で無機顔料を用いることが好ましく、アルミナ水和物を使用することがより好ましい。
【0054】
また、顔料としては、平均粒子径が1mm以下の微粒子顔料を用いることが好ましく、より好ましいものはシリカ微粒子、または、アルミナ、アルミナ水和物等のアルミナ系微粒子である。このシリカ微粒子として好ましいものは、市場より入手可能なコロイダルシリカに代表されるシリカ微粒子である。また、シリカ微粒子として特に好ましいものとしては例えば、特許第2803134号明細書や特許第2881847号明細書に開示されたものを挙げることができる。アルミナ系顔料として好ましいものとしては、アルミナ水和物である。なお、アルミナ水和物は、例えば、下記一般式(3)により表されるものである。
【0055】
Al23-n(OH)2n・mH2O (3)
(上記式中、nは0、1、2又は3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mH2Oは多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数又は整数でない値をとることができる。また、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る)。
【0056】
アルミナ水和物は、一般的には、公知の方法で製造することができる。この具体的な方法としては、アルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解を行なう方法(米国特許第4242271明細書、米国特許第4202870号明細書)を挙げることができる。また、アルミン酸ナトリウムの水溶液に硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和を行なう方法(特公昭57−447605号公報)を挙げることができる。
【0057】
好適なアルミナ水和物としては、X線回折法による分析でベーマイト構造若しくは非晶質を示すものである。このアルミナ水和物としては特に、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されているアルミナ水和物が好ましい。
【0058】
また、バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの変性体、澱粉またはその変性体、ゼラチンまたはその変性体、カゼインまたはその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体等の従来公知のバインダーを使用することができる。これらのバインダーは単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。なお、バインダーとしては水溶性樹脂を用いることが好ましく、ポリビニルアルコールを使用することがより好ましい。また、この場合、ポリビニルアルコールに併用して、従来公知のバインダーを用いても良い。インク受容層中に顔料を含有する場合、インク受容層中のバインダーの含量は、顔料100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下となるようにするのが好ましい。
【0059】
また、インク受容層中には、架橋剤としてホウ酸化合物を1種以上、含有させることが好ましい。この際、使用できるホウ酸化合物としては、オルトホウ酸(H3BO3)だけでなく、メタホウ酸やジホウ酸等を挙げることができる。また、ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩であることが好ましい。具体的には、例えば、ホウ酸のナトリウム塩(Na247・10H2O、NaBO2・4H2O等)、カリウム塩(K247・5H2O、KBO2等)等のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩(NH449・3H2O、NH4BO2等)、ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。これらの中でも、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点からオルトホウ酸を用いることが好ましい。
【0060】
このホウ酸化合物の使用量としては、インク受容層中のバインダー100質量部に対して、ホウ酸化合物を1.0質量部以上15.0質量部以下の範囲とすることが好ましい。ホウ酸化合物の使用量が上記範囲内であることによって、塗工液の経時安定性を向上させることができる。すなわち、生産時に塗工液を長時間にわたって使用した場合であっても、塗工液の粘度上昇や、ゲル化物の発生が起こらない。この結果、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等が不要となり、生産性を向上させることができる。なお、この範囲内であっても製造条件等を更に適切に選択することによって、クラック発生より効果的に防止することができる。
【0061】
インク受容層は、高インク吸収性、高定着性等の目的及び効果を達成する上から、その細孔物性が、下記の条件を満足するものであることが好ましい。
【0062】
(1)インク受容層の細孔容積は、0.1cm3/g以上1.0cm3/g以下の範囲内にあることが好ましい。インク受容層の細孔容積が0.1cm3/g以上の場合には十分なインク吸収性能が得られ、インク吸収性に優れたインク受容層とすることができる。また、インク受容層の細孔容積が1.0cm3/g以下であることによって、インク溢れ・画像滲みを防止すると共に、クラックや粉落ちを生じにくくすることができる。
【0063】
(2)インク受容層のBET比表面積は、20m2/g以上450m2/g以下であることが好ましい。インク受容層のBET比表面積が20m2/g以上の場合、十分な光沢性が得られ、ヘイズが低下する(透明性が向上する)。更に、この場合には、インク中の染料の吸着性が向上する。また、インク受容層のBET比表面積が450m2/g以下の場合、インク受容層にクラックが生じにくくなる。なお、細孔容積、BET比表面積の値は、窒素吸着脱離法により求めることができる。
【0064】
また、インク受容層中には、一般式(1)の化合物の他に、必要に応じてその他の添加剤を添加することもできる。その他の添加剤として、分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを挙げることができる。
【0065】
インク受容層の乾燥塗工量は、高いインク吸収性を考慮して、30g/m2以上60g/m2以下とすることが好ましい。インク受容層の乾燥塗工量が30g/m2以上の場合、十分なインク吸収性が得られ、インク溢れが生じてブリーディングが発生するといったようなことがない。また、高温高湿環境下においても十分なインク吸収性を示すインク受容層を得ることができる。特に、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクに、ブラックインクの他、複数の淡色インクを使用するプリンタに用いた場合にこの傾向が顕著となる。また、インク受容層の乾燥塗工量が60g/m2以下の場合、クラックの発生を抑えることができる。また、インク受容層の塗工ムラが生じにくくなり、安定した厚みのインク受容層を製造することができる。
【0066】
(支持体)
本発明で用いる支持体としては、例えば、フィルム、キャストコート紙、バライタ紙、レジンコート紙(両面がポリオレフィンなどの樹脂で被覆された樹脂皮膜紙)などの紙類からなるものなどを好ましく使用することができる。このフィルムとしては例えば、下記の透明な熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート。
【0067】
また、これら以外にも、支持体としては適度なサイジングが施された紙である無サイズ紙やコート紙、無機物の充填若しくは微細な発泡により不透明化されたフィルムからなるシート状物質(合成紙など)を使用できる。また、ガラス又は金属などからなるシートなどを使用しても良い。更に、これらの支持体とインク受容層との接着強度を向上させるため、支持体の表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施すことも可能である。
【0068】
2.インク受容層用分散体
第2の発明であるインク受容層用分散体は、下記一般式(1)の化合物と、無機顔料と、溶媒と、を含む。
【0069】
【化7】

【0070】
(R1及びR2は水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基のいずれかであり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。R3は直鎖状のアルキル基、分岐状のアルキル基、若しくはアリーレン基であり、Xは酸性可溶化基である。)。
【0071】
この一般式(1)の化合物としては、上記「1.インクジェット用記録媒体」欄の(一般式(1)の化合物)欄に記載の化合物を使用することができる。
【0072】
また、無機顔料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、無機顔料としてアルミナ水和物を使用することが好ましい。
【0073】
また、溶媒としては無機顔料を安定して分散可能なものであれば特に限定されないが、例えば、水、又は、水に混合可能な有機溶剤と水の混合溶液を使用することができる。水に混合可能な有機溶剤としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類:アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類:テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。
【0074】
上記一般式(1)の化合物は酸性可溶化基を有しており、水溶化して解離するため、無機顔料の解膠酸として使用することができる。この為、溶媒中の無機顔料の分散性を向上させて、無機顔料と溶媒とを含む本発明の分散体を乾燥成膜した後の層中の無機顔料の分布を均一なものとすることができる。
【0075】
従って、本発明のインク受容層用分散体を、インクジェット記録媒体のインク受容層用の塗工液として用いた場合、製造後のインク受容層中に無機顔料を均一に分布させることができる。更に、上記一般式(1)の化合物は、画像退色防止剤として優れた効果を発揮する。従って、一般式(1)の化合物による画像退色性の向上と、無機顔料の分布が均一となったことによる画像鮮明性の向上とにより、画像特性に優れたインクジェット用記録媒体とすることができる。また、本発明の一般式(1)の化合物を添加した本発明の分散体は均一に分散しており、分散液自体の保存性が優れているといえる。
【0076】
無機顔料としては、アルミナ水和物を用いることが好ましい。アルミナ水和物は溶媒中で凝集、沈殿しやすい性質を有するが、上記一般式(1)の化合物によって効果的にこの凝集、沈殿を抑制することができる。この結果、溶媒中に一般式(1)の化合物を添加することによって、アルミナ水和物の分散性を向上させることができる。
【0077】
なお、本発明のインク受容層用分散体は、一般式(1)の化合物以外にも無機顔料の分散性に悪影響を及ぼさない範囲で、酢酸、蟻酸、シュウ酸などの有機酸や、硝酸、塩酸、硫酸といった無機酸を併用することもできる。分散体がこれら有機酸及び無機酸の少なくとも一方を含むことによって、より優れた無機顔料の分散性を有することができる。
【0078】
分散体中の一般式(1)の化合物の含量は、無機顔料の粒子径及び比表面積にもよるが、分散体中に、無機顔料100質量部に対して一般式(1)の化合物を0.1質量部以上10.0質量部以下、含有することが好ましい。また、無機顔料100質量部に対して一般式(1)の化合物を0.5質量部以上10.0質量部以下、含有することがより好ましい。一般式(1)の化合物の含量が上記の範囲内にあることによって、溶媒中に効果的に無機顔料を分散させることができる。また、経時的に分散体の粘度が上昇したり、分散体中の無機微粒子の粒径が増大したりするといったことがない。更に、本発明の分散体をインクジェット用記録媒体のインク受容層用の塗工液として使用した場合には、インク吸収性や画像鮮明性、画像保存性といった画像特性を向上させることができる。
【0079】
なお、上記微粒子(無機顔料)の分散体を用いて、インクジェット用記録媒体を製造する場合の製造方法は例えば、以下の通りとなる。
支持体を準備する工程と、
微粒子の分散体と、水溶性樹脂と、を混合して塗工液を得る工程と、
支持体の少なくとも一方の面上に塗工液を塗工、乾燥する工程と、
を有することを特徴とするインクジェット用記録媒体の製造方法。
【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0081】
1.インクジェット用記録媒体の作成
(リン化合物)
本発明の一般式(1)の例として、下記に示されるリン化合物を使用した。
【0082】
【化8】

【0083】
【化9】

【0084】
【化10】

【0085】
(支持体の作製)
下記のようにして支持体を作製した。先ず、下記組成の紙料を調整した。
パルプスラリー 100質量部
濾水度450ML CSF(CANADIAN STANDARAD FREENESS)の、広葉樹晒しクラフトパルプ(lBKP) 80質量部
濾水度480ML CSFの、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)
20質量部
カチオン化澱粉 0.60質量部
重質炭酸カルシウム 10質量部
軽質炭酸カルシウム 15質量部
アルキルケテンダイマー 0.10質量部
カチオン性ポリアクリルアミド 0.030質量部。
【0086】
次に、この紙料を長網抄紙機で抄造し、3段のウエットプレスを行った後、多筒式ドライヤーで乾燥した。この後、サイズプレス装置で、固形分が1.0g/m2となるように酸化澱粉水溶液を含浸、乾燥させた。この後、マシンカレンダー仕上げをして、坪量170g/m2、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基紙Aを得た。
【0087】
次に、この基紙Aのインク受容層を設ける面に、低密度ポリエチレン(70質量部)、高密度ポリエチレン(20質量部)、酸化チタン(10質量部)からなる樹脂組成物を25g/m2、塗布した。更に、基紙Aの他方の面に、高密度ポリエチレン(50質量部)、低密度ポリエチレン(50質量部)からなる樹脂組成物を、25g/m2、塗布することにより、両面を樹脂被覆した支持体Aを得た。
【0088】
(実施例1)
(微粒子の分散体1の作製)
まず、純水中に、無機顔料粒子としてアルミナ水和物(DISPERAL HP14(サソール社製))を23質量%となるように添加して、アルミナ水和物水溶液を得た。次に、このアルミナ水和物水溶液に対して、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)×100が0.5質量部となるようにリン化合物1を加え、攪拌して、微粒子(アルミナ水和物)の分散体1を得た。
【0089】
(インクジェット用記録媒体1の作製)
ポリビニルアルコールPVA235(クラレ(株)製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、固形分8.0質量%のPVA水溶液を得た。そして、上記で調製した微粒子の分散体1と、前記作成したPVA溶液を、固形分換算質量で(ポリビニルアルコール)/(アルミナ水和物)×100が10質量部となるように混合して混合液を得た。次に、3.0質量%ホウ酸水溶液を、上記混合液に対して、固形分換算質量で(ホウ酸)/(アルミナ水和物)×100が1.7質量部となるように混合して、インク受容層用の塗工液を得た。次に、得られた塗工液を、ダイコーターにより、上記の両面を樹脂被覆した支持体Aの表面の上に、乾燥塗工量が35g/m2となるように塗工して、インクジェット用記録媒体1を作製した。
【0090】
(実施例2)
まず、純水中に、無機顔料粒子としてアルミナ水和物(DISPERAL HP14(サソール社製))を23質量%となるように添加して、アルミナ水和物水溶液を得た。次に、このアルミナ水和物水溶液に対して、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)×100が1.0質量部となるようにリン化合物1を加え、攪拌し、微粒子(アルミナ水和物)の分散体2を得た。次に、実施例1において、微粒子の分散体1を上記微粒子の分散体2に変更した以外は実施例1と同じ方法で、インクジェット用記録媒体2を作製した。
【0091】
(実施例3)
実施例1において、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)×100を2.0質量部とした以外は、微粒子の分散体1と同様の方法で、微粒子(アルミナ水和物)の分散体3を作製した。次に、実施例1において、微粒子の分散体1を微粒子の分散体3に変更した以外は実施例1と同じ方法で、インクジェット用記録媒体3を作製した。
【0092】
(実施例4)
実施例1において、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)×100を4.0質量部とした以外は、微粒子の分散体1と同様の方法で、微粒子(アルミナ水和物)の分散体4を作製した。次に、実施例1において、微粒子の分散体1を微粒子の分散体4に変更した以外は実施例1と同じ方法で、インクジェット用記録媒体4を作製した。
【0093】
(実施例5)
実施例1において、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)×100を6.0質量部とした以外は、微粒子の分散体1と同様の方法で、微粒子(アルミナ水和物)の分散体5を作製した。次に、実施例1において、微粒子の分散体1を微粒子の分散体5に変更した以外は実施例1と同じ方法で、インクジェット用記録媒体5を作製した。
【0094】
(実施例6)
実施例1において、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)×100を10.0質量部とした以外は、微粒子の分散体1と同様の方法で、微粒子(アルミナ水和物)の分散体6を作製した。次に、実施例1において、微粒子の分散体1を微粒子の分散体6に変更した以外は実施例1と同じ方法で、インクジェット用記録媒体6を作製した。
【0095】
(実施例7)
実施例4において、リン化合物1をリン化合物2に変更した以外は、微粒子の分散体4と同様の方法で、微粒子(アルミナ水和物)の分散体7を作製した。次に、微粒子の分散体1を微粒子の分散体7に変更した以外は実施例1と同じ方法で、インクジェット用記録媒体7を作製した。
【0096】
(実施例8)
実施例4において、リン化合物1をリン化合物3に変更した以外は、微粒子の分散体4と同様の方法で、微粒子(アルミナ水和物)の分散体8を作製した。次に、微粒子の分散体1を微粒子の分散体8に変更した以外は実施例1と同じ方法で、インクジェット用記録媒体8を作製した。
【0097】
(実施例9)
まず、純水中に、無機顔料粒子として、アルミナ水和物(DISPERAL HP14(サソール社製))を23質量%となるように添加して、アルミナ水和物水溶液を得た。次に、このアルミナ水和物水溶液に対して、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)×100が0.1質量部となるようにリン化合物1を加えた。続いて、固形分換算質量で(酢酸)/(アルミナ水和物)×100が1.9質量部となるように酢酸を加えて攪拌し、微粒子(アルミナ水和物)の分散体9を得た。次に、実施例1において、微粒子の分散体1を微粒子の分散体9に変更した以外は実施例1と同じ方法で、インクジェット用記録媒体9を作製した。
【0098】
(実施例10)
まず、純水中に、無機顔料粒子として、アルミナ水和物(DISPERAL HP14(サソール社製))を23質量%となるように添加して、アルミナ水和物水溶液を得た。次に、このアルミナ水和物水溶液に対して、固形分換算質量で(酢酸)/(アルミナ水和物)×100が2.0質量部となるように酢酸を加え攪拌して、微粒子(アルミナ水和物)の分散体10を得た。次に、微粒子の分散体10に対してリン化合物1を、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)×100が4.0質量部となるように加えた。次に、実施例1と同じ方法で、インクジェット用記録媒体10を作製した。
【0099】
(実施例11)
実施例10においてリン化合物1をリン化合物2とし、実施例10と同じ方法でインクジェット用記録媒体11を作製した。
【0100】
(実施例12)
実施例10においてリン化合物1をリン化合物3とし、実施例10と同じ方法でインクジェット用記録媒体12を作製した。
【0101】
(実施例13)
実施例10と同じ方法で微粒子(アルミナ水和物)の分散体10を作製した。次に、実施例1において、微粒子の分散体1を微粒子の分散体10に変更した以外は実施例1と同じ方法でインク受容層を形成した。次に、このインク受容層上に、リン化合物1の5質量%MIBK(メチルイソブチルケトン)溶液を、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)×100が4.0質量部となるようにメイヤーバーで塗工した。そして、インクジェット用記録媒体13を作製した。
【0102】
(実施例14)
実施例13において、リン化合物1をリン化合物2に変更した以外は実施例13と同じ方法でインクジェット用記録媒体14を作製した。
【0103】
(実施例15)
実施例13において、リン化合物1をリン化合物3に変更した以外は実施例13と同じ方法でインクジェット用記録媒体15を作製した。
【0104】
(実施例16)
まず、純水中に、無機顔料粒子として、シリカ微粒子である気相法シリカ(アエロジル380、日本アエロジル株式会社製)を10質量%となるように添加した。次に、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(シャロールDC902P、第一工業製薬株式会社製)を、固形分換算質量で(シャロールDC902P)/(シリカ)×100が4.0質量部となるように加えた。この後、高圧ホモジナイザーで分散し、シリカ微粒子の分散体11を作製した。次に、リン化合物1を、固形分換算質量で(リン化合物1)/(シリカ)×100が4.0質量部となるように微粒子の分散体11に加えた。この後、実施例1に記載のPVA水溶液を、微粒子の分散体11に対して、固形分換算質量で(ポリビニルアルコール)/(シリカ)×100が20質量部となるように加えて混合液を得た。また、3.0質量%ホウ酸水溶液を、上記混合液に対して、固形分換算質量で(ホウ酸)/(アルミナ水和物)×100が6.0質量部となるように混合して、インク受容層用の塗工液を得た。次に、得られた塗工液を、実施例1と同じ支持体上に、実施例1と同様の方法により、乾燥塗工量25g/m2となるように塗工して、インクジェット用記録媒体16を得た。
【0105】
(実施例17)
実施例16と同じ方法で微粒子の分散体11(リン化合物1を添加前のもの)を作製した。次に、実施例1において、微粒子の分散体1を微粒子の分散体11に変更した以外は実施例1と同じ方法でインク受容層を形成した。次に、このインク受容層上に、リン化合物1の5質量%MIBK(メチルイソブチルケトン)溶液を、固形分換算質量で(リン化合物1)/(アルミナ水和物)が4.0質量部となるようにメイヤーバーで塗工した。そして、インクジェット用記録媒体17を作製した。
【0106】
(実施例18)
上記の支持体A上に、以下のようにして下塗り層を形成した。まず、カオリン(ウルトラホワイト90、Engelhard社製)/酸化亜鉛/水酸化アルミナの重合比が、65/10/25となる填量を準備した。次に、この填量100重量部と、市販のポリアクリル酸系分散剤0.1重量部とからなる固形分濃度70重量%のスラリーを準備した。次に、このスラリーに市販のスチレン−ブタジエン系ラテックス7重量部を添加して、固形分60重量%となるように調整して組成物を得た。この後、この組成物を、乾燥塗工量が15g/m2となるように、ブレードコーターで、支持体の両面に塗工し、乾燥して下塗り層を形成した。その後、マシンカレンダー仕上げをし(線圧150kgf/cm)、坪量185g/m2、ステキヒトサイズ度300秒、透気度3,000秒、ベック平滑度200秒、ガーレー剛度11.5mNの下塗り層付き支持体を得た。下塗り層付き支持体の白色度は、断裁されたA4サイズ5枚のサンプルに対して各々測定し、その平均値として求めた。その結果、L*:95、a*:0、b*:−2であった(JIS Z 8729の色相として求めた)。
【0107】
次に、上記で得た下塗り層に対して、下記の工程からなる表面処理を行なった。先ず、30℃に加温した下記組成のプレコート液(合計100g)を、バーコーターを用いて、ウエット塗工量が16g/m2になるように塗工した。
(プレコート液)
四硼酸ナトリウム:5g
イソプロパノール:0.15g
リン化合物1: 7.81g
イオン交換水:残部。
【0108】
次に、ポリビニルアルコールPVA235(クラレ(株)製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、固形分8.0質量%のPVA水溶液を得た。そして、実施例1で調製した微粒子の分散体1と、前記作成したPVA溶液を、固形分換算質量で(ポリビニルアルコール)/(アルミナ水和物)×100が10質量部となるように混合して混合液を得た。次に、3.0質量%ホウ酸水溶液を、上記混合液に対して、固形分換算質量で(ホウ酸)/(アルミナ水和物)×100が1.7質量部となるように混合して、インク受容層用の塗工液を得た。次に、得られた塗工液を、ダイコーターにより、上記のプレコート液を塗工した支持体の表面の上に、乾燥塗工量が35g/m2となるように塗工して、インクジェット用記録媒体18を作製した。
【0109】
(比較例1)
実施例10と同じ方法で微粒子の分散体10(リン化合物1を添加前のもの)を作製した。そして、微粒子の分散体1を、微粒子の分散体10(リン化合物1を添加前のもの)に変更した以外は実施例1と同じ方法で、インクジェット用記録媒体19を作製した。
【0110】
(比較例2)
比較例1で得た記録媒体19のインク受容層上に、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトの5質量%MIBK(メチルイソブチルケトン)溶液を、メイヤーバーで塗工した。この際、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトがアルミナ固形分100質量部に対して4.0質量部となるようにした。そして、インクジェット用記録媒体20を作製した。
【0111】
(比較例3)
比較例1で得た記録媒体19のインク受容層上に、ジブチルホスファイトの5質量%MIBK(メチルイソブチルケトン)溶液を、メイヤーバーで塗工した。この際、ジブチルホスファイトがアルミナ固形分100質量部に対して4.0質量部となるようにした。そして、インクジェット用記録媒体21を作製した。
【0112】
(比較例4)
実施例17においてリン化合物1をジブチルホスファイトに変更した以外は実施例17と同じ方法でインクジェット用記録媒体22を作製した。
【0113】
(比較例5)
実施例18のプレコート液及び微粒子の分散体1からリン化合物1を除いた以外は、実施例18と同じ方法でインクジェット用記録媒体23を作製した。
【0114】
2.インクジェット用記録媒体の評価
上記実施例1〜18、並びに比較例1〜5で作製したインクジェット用記録媒体1〜23を用い、a)記録物の画像保存性(耐キセノン性、耐オゾン性)、b)インク吸収性、c)画像記録特性の3項目で評価した。また、得られた評価結果を表1にまとめた。
【0115】
a)記録物の画像保存性
(記録物の作製)
インクジェット方式を用いたフォト用プリンタ(商品名:PIXUS IP8600、インク:BCI−7、キヤノン製)を使用した。すなわち、上記実施例、比較例で作成したインクジェット用記録媒体1〜23の記録面にブラック、シアン、マゼンタ、イエロー各色の単色パッチを、印字濃度(OD)がそれぞれほぼ1.0となるように印字して記録物を作製した。
【0116】
<耐キセノン性>
上記記録物に対して、キセノンフェザーメーター(型式:XL−750、スガ試験機(株)製)を用いて、キセノン暴露試験を行なった。
・試験条件
積算照射:40000klx
試験槽内温湿度条件:23℃、50%RH
・耐キセノン性の評価方法;
上記記録物の試験前後の画像濃度を分光光度計(商品名:スペクトリノ、グレタグマクベス社製)を用いて測定し、次式より濃度残存率を求め、以下に記述する判定基準に基づき判定した。
濃度残存率(%)=(試験後の画像濃度/試験前の画像濃度)×100。
【0117】
[判定基準]
A イエロー濃度残存率85%以上。
B イエロー濃度残存率80%以上85%未満。
C イエロー濃度残存率70%以上80%未満。
D イエロー濃度残存率70%未満。
【0118】
<耐オゾン性>
オゾンウェザーメーター(型式:OMS−HS、スガ試験機社製)を用いて、オゾン暴露試験を行った。
・試験条件
暴露ガス組成:オゾン10ppm
試験時間:8時間
試験槽内温湿度条件:23℃、50%RH
・耐オゾン性の評価方法;
上記の記録物の試験前後のL*値、a*値およびb*値を、分光光度計(商品名:スペクトリノ、グレタグマクベス社製)を用いて測定し、次式よりΔEを求め、以下に記述する判定基準に基づき判定した。
ΔE={(試験前の記録物のL*値−試験後の記録物のL*値)2+(試験前の記録物のa*値−試験後の記録物のa*値)2+(試験前の記録物のb*値−試験後の記録物のb*値)21/2
[判定基準]
A ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー各色の単色パッチのうち、初期画像との色差ΔEが最も大きかったものの値が5未満であるもの。
B ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー各色の単色パッチのうち、初期画像との色差ΔEが最も大きかったものの値が5以上10未満であるもの。
C ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー各色の単色パッチのうち、初期画像との色差ΔEが最も大きかったものの値が10以上であるもの。
【0119】
b)インク吸収性
上記実施例、比較例で作製したインクジェット用記録媒体1〜23の記録面に、フォト用プリンタ(商品名:PIXUS IP8600、インク:BCI−7、キヤノン製)を使用して印字した。すなわち、シアン単色からマゼンタ単色までの中間色8階調をパッチ状に印字して、記録物を作製した。得られた記録物の各パッチに対して、画像品位を目視により、下記判定基準により、総合的に判定した。
【0120】
[判定基準]
A パッチ内の濃淡の均一性が特に優れている。
B パッチ内で殆ど濃淡が見当たらず、均一性に優れている。
C パッチ内で少し濃淡がある。
D パッチ内で濃淡が認められる。
E パッチ内でかなりの濃淡が認められる。
【0121】
c)画像記録特性(実画像での鮮明性等からの総合評価)
上記実施例、比較例で作成したインクジェット用記録媒体1〜23の記録面に、フォト用プリンタ(商品名:PIXUS IP8600、インク:BCI−7、キヤノン製)を使用して印字した。すなわち、ポートレート(ISO/JIS−SCIDのn1)画像を印字して、記録物を作製した。得られた記録物に対して、1)粒状感、2)画像の濃淡、3)色の鮮やかさ、4)細線の滲みの4項目を評価し、これら評価を総合し、下記判定基準により、判定した。
【0122】
[判定基準]
A 何れの評価項目も全く問題なく、極めて優れている。
B いずれかの評価項目に僅かの問題は見られるが、優れている。
C いずれかの評価項目にやや問題がある。
D いずれかの評価項目に問題がある。
E 評価項目のすべてに問題がある。
【0123】
上記実施例、比較例で作製した各インクジェット用記録媒体の使用材料及び評価結果を表1及び2に示す。
【0124】
【表1】

【0125】
【表2】

【0126】
表1及び2の結果から分かるように、実施例1〜18のインクジェット用記録媒体は、画像保存性(耐オゾン性、耐キセノン性)、インク吸収性及び画像記録特性がいずれも良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体の少なくとも一方の面上に設けられたインク受容層とを有するインクジェット用記録媒体であって、
前記支持体及びインク受容層の少なくとも一方が下記一般式(1)の化合物を含有することを特徴とするインクジェット用記録媒体。
【化1】

(R1及びR2は水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基であり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。R3は直鎖状のアルキレン基、分岐状のアルキレン基、若しくはアリーレン基であり、Xは酸性可溶化基である。)
【請求項2】
前記インク受容層が水溶性樹脂を含有する請求項1に記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項3】
前記インク受容層が無機顔料を含有する請求項1又は2に記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項4】
前記無機顔料が、シリカ及びアルミナ水和物の少なくとも一方である請求項3に記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項5】
前記無機顔料100質量部に対して、前記一般式(1)の化合物を0.1質量部以上10.0質量部以下、含有する請求項3又は4に記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項6】
下記一般式(1)の化合物と、無機顔料と、溶媒と、を含むインク受容層用の分散体。
【化2】

(R1及びR2は水素原子、ヒドロキシル基、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基であり、R1とR2は同じであっても異なっていても良い。R3は直鎖状のアルキレン基、分岐状のアルキレン基、若しくはアリーレン基であり、Xは酸性可溶化基である。)
【請求項7】
前記無機顔料がアルミナ水和物である請求項6に記載のインク受容層用の分散体。
【請求項8】
前記無機顔料100質量部に対して、前記一般式(1)の化合物を0.1質量部以上10.0質量部以下、含有することを特徴とする請求項6又は7に記載のインク受容層用の分散体。
【請求項9】
更に、有機酸及び無機酸の少なくとも一方を含む請求項6から8の何れか1項に記載のインク受容層用の分散体。
【請求項10】
支持体を準備する工程と、
請求項6から9の何れか1項に記載のインク受容層用の分散体と、水溶性樹脂と、を混合して塗工液を得る工程と、
前記支持体の少なくとも一方の面上に前記塗工液を塗工、乾燥する工程と、
を有することを特徴とするインクジェット用記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2009−241598(P2009−241598A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62574(P2009−62574)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】