説明

インクジェット画像形成方法

【課題】 本発明の目的は、インク吸収性、長期保存時のひび割れ耐性の低下を伴うことなく、銀塩写真近似の光沢感のあるインクジェット画像形成方法を提供することにある。
【解決手段】 支持体上にインク吸収層を有するインクジェット記録媒体に記録するインクジェット画像形成方法において、該インク吸収層が親水性バインダーとして電離放射線により架橋した高分子化合物を含有し、かつ水分散性ポリマー微粒子を含有するインクを、該インクジェット記録媒体の少なくとも一部に付与することを特徴とするインクジェット画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のインクジェット画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像や文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点により、各種プリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等の様々な分野で急速に普及している。
【0003】
近年、インクジェット記録方式は、インクジェット用インク、インクジェット記録媒体及びインクジェットプリンターの様々な技術革新に伴い、急速に画質向上が図られており、得られる画像品質も銀塩写真画質に迫りつつある。しかしながら、インク吸収性向上の観点から、無機微粒子を主体とする多孔質インク吸収層を有するインクジェット記録媒体のうち、コストメリットの高いシリカ微粒子を用いたインクジェット記録媒体は、表面光沢が低く、得られる画質としては銀塩写真には未だ及ばないのが現状である。
【0004】
上記課題に対し、記録媒体表面上に光沢発現層を設けたインクジェット記録媒体が提案されている。例えば、特開2001−353957号、同2003−94800号公報には、無機顔料微粒子よりなるインクジェット記録媒体上に、コロイダルシリカを付与する技術がある。また、特開平7−117335号公報には、光沢発現層をウエットキャスト法にて塗設するインクジェット記録媒体であって、該光沢発現層がコロイダルシリカと有機粒子を含有する方法が開示されている。しかしながら、上記提案されている方法では、いずれも光沢発現層によるインク吸収速度低下が見られ、高速印字を行う場合には画質劣化を伴うため、許容できる品質には至っていないのが現状である。
【0005】
また、画像表面に樹脂により皮膜を形成する試みもなされている。例えば、インクジェット記録媒体の最表層に、熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設け、画像記録後、この熱可塑性有機高分子粒子を溶融、皮膜化し、結果として、高分子の保護膜を形成することにより、耐水性、耐候性の改良及び画像の光沢付与を達成している(例えば、特許文献1〜4参照。)。これら提案されている方法によれば、画像保存性向上にはある程度の効果は認められるものの、専用のインクジェット記録媒体が必要なこと、専用の加熱定着装置が必要となりまた、加熱定着時にインク溶媒の蒸発によるふくれの発生や、膜はがれの発生等、制御が難しいという課題を抱えている。加えて、最表層の熱可塑性有機高分子粒子からなる層がインク吸収性を阻害する欠点も有している。
【0006】
一方、インクジェット用インクにラテックスあるいは樹脂微粒子を添加することで耐水性や耐光性を向上する方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。更に、オゾンガス耐性の向上を目的として、インクへの樹脂添加が開示されている(例えば、特許文献6、7参照。)。この他、特開2002−80759号、同2002−194253号、同2002−264490号、同2002−285049号、同2003−55586号には、インクにラテックスあるいは樹脂微粒子を添加する技術が開示されている。また、顔料インクによる画像形成後に樹脂成分を含むクリアインクを吐出することにより光沢均一性を向上する技術が開示されている(例えば、特許文献8参照。)。
【0007】
これらの方法によれば、銀塩写真近似の表面光沢が得られるものの、以下のような課題を抱えている。即ち、インクにラテックスあるいは樹脂微粒子を添加することによりプリント後、記録媒体表面には薄い樹脂層が形成される。しかし、記録媒体表面と樹脂層の親和性が低いと、記録媒体表面と樹脂層の間に局所的に隙間が生じ経時保存時にひび割れの発生や、水分が入り込むことによるにじみの発生、プリントの搬送時等で樹脂層の剥落を引き起こすことが判明した。
【特許文献1】特開平4−214446号公報
【特許文献2】特開平10−315448号公報
【特許文献3】特開平11−5362号公報
【特許文献4】特開平11−192775号公報
【特許文献5】特開平11−199808号公報
【特許文献6】特開2001−187852号公報
【特許文献7】特開2002−240413号公報
【特許文献8】国際特許第02/87886号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、インク吸収性、長期保存時のひび割れ耐性の低下を伴うことなく、銀塩写真近似の光沢感のあるインクジェット画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
(請求項1)
支持体上にインク吸収層を有するインクジェット記録媒体に記録するインクジェット画像形成方法において、該インク吸収層が親水性バインダーとして電離放射線により架橋した高分子化合物を含有し、かつ水分散性ポリマー微粒子を含有するインクを、該インクジェット記録媒体の少なくとも一部に付与することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【0011】
(請求項2)
前記水分散性ポリマー微粒子を含有するインクが、色材を含有せずに実質的に無色であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット画像形成方法。
【0012】
(請求項3)
前記電離放射線により架橋した高分子化合物が、下記一般式(1)で示される構成単位を有するポリ酢酸ビニルケン化物であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット画像形成方法。
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、nは1または2、Yは芳香族環または単結合手を表し、Xは−(CH2m−COO−、−OCH2−COO−又は−O−を表し、mは0〜6までの整数である。〕
(請求項4)
前記インク吸収層が、無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インク吸収性、長期保存時のひび割れ耐性の低下を伴うことなく、銀塩写真近似の光沢感のあるインクジェット画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、支持体上にインク吸収層を有するインクジェット記録媒体に記録するインクジェット画像形成方法において、該インク吸収層が親水性バインダーとして電離放射線により架橋した高分子化合物を含有し、かつ水分散性ポリマー微粒子を含有するインクを、該インクジェット記録媒体の少なくとも一部に付与することを特徴とするインクジェット画像形成方法により、長期保存時のひび割れ耐性の低下を伴うことなく、銀塩写真近似の光沢感のあるインクジェット画像形成方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0018】
すなわち、インクジェット記録媒体のインク吸収層の構成として、親水性バインダーとして電離放射線により架橋した高分子化合物を含有することにより、ポリマー微粒子からなるインクとの親和性が高くなることを見出した。その結果、水分散性ポリマー微粒子を含有するインクを付与することに起因する長期間にわたり保存した際の形成画像のひび割れやにじみ等を伴うことなく、銀塩写真近似の光沢感が得られることを見出したものである。
【0019】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0020】
はじめに、本発明に係るインクジェット記録媒体について説明する。
【0021】
本発明に係るインクジェット記録媒体(以下、単に記録媒体ともいう)においては、支持体上にインク吸収層を有し、該インク吸収層が親水性バインダーとして電離放射線により架橋した高分子化合物を含有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る電離放射線により架橋した高分子化合物とは、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により、反応を起こして架橋または重合反応をする樹脂であり、反応前には水溶性であるが、反応後には実質的に非水溶性となる樹脂が好ましい。かかる樹脂は反応後も親水性を有し、十分なインクとの親和性を維持するものである。
【0023】
このような樹脂としては、ポリ酢酸ビニルのケン化物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性樹脂、または前記親水性樹脂の誘導体、ならびにこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種であるか、またはその親水性樹脂を、光二量化型、光分解型、光重合型、光変性型、光解重合型などの変性基により変性したものであるが、本発明においては、その中でも、本発明の目的効果をより発揮する観点から、前記一般式(1)で示される構成単位を有するポリ酢酸ビニルケン化物であることが好ましい。
【0024】
また、光二量化型、光重合型の変性基により変性した樹脂が、感度または樹脂自身の安定性の観点から好ましい。光二量化型の変性基としては、ジアゾ基、シンナモイル基、スチリルピリジニウム基、スチリルキノリウム基を導入したものが好ましく、光二量化後アニオン染料等の水溶性染料により染色される樹脂が好ましい。このような樹脂としては、例えば、一級アミノ基ないし4級アンモニウム基等のカチオン性基を有する樹脂、例えば、特開昭62−283339号、特開平1−198615号、特開昭60−252341号、特開昭56−67309号、特開昭60−129742号等の公報に記載された感光性樹脂(組成物)、硬化処理によりアミノ基になり、カチオン性になるアジド基のような基を有する樹脂、例えば、特開昭56−67309号等の公報に記載された感光性樹脂(組成物)が挙げられる。
【0025】
次いで、本発明において好ましく用いられる前記一般式(1)で示される構成単位を有するポリ酢酸ビニルケン化物について説明する。
【0026】
本発明に係るポリ酢酸ビニルケン化物は、前述のように、紫外線、電子線等の電離線照射により、反応を起こして架橋する樹脂であり、硬化反応前には水溶性であるが、硬化反応後には実質的に非水溶性となる樹脂である。ただし、本発明に係るポリ酢酸ビニルケン化物は、硬化後もある程度の親水性を有し、十分なインクとの親和性を維持するものである。
【0027】
この様な樹脂としては、ポリビニルアルコールなどに対し光二量化型、光分解型、光解重合型、光変性型、光重合型等の変性基を作用させ、変性基を介して光により架橋を起こす架橋基変性ポリマー、または電子線により直接架橋するポリマーが使用可能であり、ノニオン性、カチオン性、アニオン性の物が挙げられる。構造中にカチオン、またはアニオンの部位を持つポリマーにおいては、無機フィラー等の表面とカチオン、またはアニオンの構造部位が吸着、もしくは反発などの相互作用をして、架橋反応を阻害するおそれがあるため望ましくない。ノニオンタイプの電離放射線により架橋する親水性バインダー、中でも特開2000−181062号に開示される樹脂が、無機微粒子との相互作用がカチオン、アニオンタイプの物より小さく、効率的に架橋反応を起こすため本発明では好適である。
【0028】
前記一般式(1)において、R1は水素原子またはメチル基を表し、nは1または2、Yは芳香族環または単結合手を表し、Xは−(CH2m−COO−、−OCH2−COO−又は−O−を表し、mは0〜6までの整数である。
【0029】
前記一般式(1)で表される構成単位の例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
本発明に係るポリ酢酸ビニルケン化物の母核PVA重合度は、400〜5000の範囲が好ましく、400〜3500の範囲がより好ましい。更に好ましくは1700〜3500の範囲である。重合度が400未満の場合は十分な塗膜強度が得られず、5000を超える場合は溶液粘度が高くなり過ぎ、塗布性が低下する。
【0037】
ケン化度は60%以上、好ましくは70〜100%未満のものが好適であり、更に好ましくは88%〜100%未満がよい。ケン化度が60%未満では本発明の目的であるひび割れ抑制効果が小さい。
【0038】
一般式(1)で示されるポリ酢酸ビニルケン化物の合成は、特開2000−181062号公報に準じて行うことができる。
【0039】
また、セグメントに対する電離放射線反応架橋基の変性率は4モル%以下が好ましく、より好ましくは0.01〜1モル%以下である。
【0040】
セグメントの重合度が400未満、或いは変性率が4モル%を超えると、塗膜の架橋密度が高過ぎて、乾燥塗膜の折れ割れ性が著しく悪くなる、同時に架橋密度が高過ぎる場合、基材との吸湿性、寸法安定性のバランスが悪く、カール耐性が悪くなり好ましくない。
【0041】
本発明に係るインク吸収層の架橋された親水性樹脂に対する後述する微粒子の比率は、質量比で2〜50倍であることが好ましい。質量比が2倍以上であれば、インク吸収層の空隙率は良好であり、十分な空隙容量が得やすく、過剰の架橋された親水性樹脂がインクジェット記録時に膨潤して空隙を塞ぐことをさけられる。一方、この比率が50倍以下であれば、インク吸収層を厚膜で塗布した際に、ひび割れが生じにくく好ましい。特に好ましい架橋された親水性樹脂に対する微粒子の比率は、2.5〜20倍である。特に、乾燥塗膜の折れ割れ耐性という観点からは、5〜15倍がより好ましい。
【0042】
本発明に係るインク吸収層においては、無機微粒子を含有することが好ましい。
【0043】
本発明に用いられる無機微粒子は、細孔容量が大きく、平均粒径が小さい微細無機微粒子が用いられる。特に、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、及びアルミナ、炭酸カルシウムなどの微細無機微粒子が用いられる。
【0044】
本発明に用いられるシリカとは、珪酸ソーダを原料として沈降法またはゲル法により合成された湿式シリカまたは気相法シリカである。
【0045】
例えば、湿式シリカでは沈降法による(株)トクヤマのファインシールが、ゲル法によるシリカとしては日本シリカ工業(株)のNIPGELが市販されている。沈降法シリカは概ね10〜60nm、ゲル法シリカは概ね3〜10nmの一次粒子が二次凝集体を形成したシリカ粒子として特徴づけられる。
【0046】
湿式シリカの一次粒子径に関する下限に特に制約はないが、シリカ粒子の製造安定性の観点から3nm以上であり、皮膜の透明性の観点から50nm以下であることが好ましい。一般的にはゲル法により合成される湿式シリカの方が沈降法に対して一次粒径が小さい傾向にあり好ましい。
【0047】
気相法シリカとは、四塩化ケイ素と水素を原料にし燃焼法により合成されるものであり例えば日本アエロジル株式会社製のアエロジルシリーズが市販されている。
【0048】
高空隙率のインク吸収層を得るためにはBET法により測定される比表面積が400m2/g未満であるか、または孤立シラノール基比率が0.5〜2.0である。比表面積は、好ましくは40m2/g〜100m2/gの範囲であり、比表面積の下限は写真に近い光沢が得られる観点から40m2/gである。尚、BET法とは気相吸着等温線からシリカ微粒子1g当たりの表面積を求める方法により比表面積を測定する方法である。
【0049】
この範囲の比表面積を有する気相法シリカにおいて、一次粒径分布における変動係数を0.01〜0.4にすることが空隙率の観点から好ましい。変動係数が0.4を超えると、空隙率が低下する懸念があり好ましくない。尚、湿式シリカにおいては一次粒子自身が細孔径を持つためこの限りではない。
【0050】
気相法シリカにおいては、二次凝集体は湿式シリカに対して比較的弱い相互作用により形成されているため、湿式シリカに対して低いエネルギーで分散できるという特徴を有している。
【0051】
気相法シリカの一次粒径分布における変動係数は、インク吸収層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の一次粒子の粒径を求めてその粒径分布の標準偏差を数平均粒径値で割った値として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0052】
シリカの一次粒子及び二次粒子の平均粒径はインク吸収層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径から求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。また、二次平均粒径は、電離放射線の透過という観点から300nm以下であることが好ましい。
【0053】
前記気相法シリカを湿度20〜60%で3日以上保存して気相法シリカの含水率を調整することも好ましい。
【0054】
気相法シリカにおいて、孤立シラノール基比率は0.5〜1.5であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.1である。
【0055】
本発明に用いられるアルミナとは、酸化アルミニウム及びその水和物のことであり、結晶質でも非晶質でもよく、不定形、球状、板状、針状の形態を有している物が使用される。特にアスペクト比が2以上で、一次粒径の平均粒径が5〜30nmの平板状アルミナ水和物、気相法アルミナが好ましい。
【0056】
上記無機微粒子を含むインク吸収層塗布液における無機微粒子の含有量は、5〜40質量%であり、特に7〜30質量%が好ましい。
【0057】
また、無機微粒子と前記電離放射線により架橋した高分子化合物を含むインク吸収層の固形分濃度は5〜90%の範囲であることが好ましい。
【0058】
本発明のインクジェット記録媒体に用いられる支持体としては、吸水性支持体(例えば、紙など)や非吸水性支持体を用いることができるが、より高品位なプリントが得られる観点から、非吸水性支持体が好ましい。
【0059】
好ましく用いられる非吸水性支持体としては、例えば、ポリエステル系フィルム、ジアセテート系フィルム、トリアテセート系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルム、セロハン、セルロイド等の材料からなる透明または不透明のフィルム、或いは基紙の両面をポリオレフィン樹脂被覆層で被覆した樹脂被覆紙、いわゆるRCペーパー等が用いられる。
【0060】
上記支持体上に、前記の水溶性塗布液を塗布するに当たっては、表面と塗布層との間の接着強度を大きくする等の目的で、支持体にコロナ放電処理や下引き処理等を行うことが好ましい。更に、本発明のインクジェット記録媒体は着色された支持体であってもよい。
【0061】
本発明で好ましく用いられ支持体は、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム及び紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体である。
【0062】
以下、最も好ましいポリオレフィンの代表であるポリエチレンでラミネートした紙支持体について説明する。
【0063】
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、例えば、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPまたはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。
【0064】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0065】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0066】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlであることが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と、42メッシュ残分の質量%との和が30〜70質量%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は、20質量%以下であることが好ましい。
【0067】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理を施して、高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118に規定の方法に準ずる)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、前記原紙中添加できるサイズ剤と同様のものを使用することができる。原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法ににより測定した場合、5〜9であることが好ましい。
【0068】
原紙表面及び裏面はを被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0069】
また、塗布層側のポリエチレンに層は、写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して、1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%である。
【0070】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目等の微粒面を形成したものも本発明で使用することができる。
【0071】
原紙の表裏のポリエチレンの使用量は、水系塗布組成物の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、本発明に係る水系塗布組成物を塗布する側のポリエチレン層としては20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲であることが好ましい。
【0072】
更に、上記ポリエチレン被覆紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
【0073】
1)引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で、縦方向が20〜300N、横方向が10〜200Nであることが好ましい
2)引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で、縦方向が0.1〜2N、横方向が0.2〜2Nが好ましい
3)圧縮弾性率:≧1.03kN/cm2
4)表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、500秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であってもよい
5)裏面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、100〜800秒が好ましい
6)不透明度:直線光入射/拡散光透過条件の測定条件で、可視域の光線での透過率が20%以下、特に15%以下が好ましい
7)白さ:JIS−P−8123に規定されるハンター白色度で、90%以上が好ましい。また、JIS−Z−8722(非蛍光)、JIS−Z−8717(蛍光剤含有)により測定し、JIS−Z−8730に規定された色の表示方法で表示した時の、L*=90〜98、a*=−5〜+5、b*=−10〜+5が好ましい。
【0074】
上記支持体のインク吸収層側には、インク吸収層との接着性を改良する目的で、下引き層を設けることが好ましい。下引き層のバインダーとしては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーやTgが−30〜60℃のラテックスポリマーなどが好ましい。これらバインダーは、記録媒体1m2当たり0.001〜2gの範囲で用いられる。下引き層中には、帯電防止の目的で、従来公知のカチオン性ポリマーなどの帯電防止剤を少量含有させることができる。
【0075】
上記支持体のインク吸収層側と反対側の面には、滑り性や帯電特性を改善する目的でバック層を設けることもできる。バック層のバインダーとしては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーやTgが−30〜60℃のラテックスポリマーなどが好ましく、またカチオン性ポリマーなどの帯電防止剤や各種の界面活性剤、更には平均粒径が0.5〜20μm程度のマット剤を添加することもできる。バック層の厚みは、概ね0.1〜1μmであるが、バック層がカール防止のために設けられる場合には、概ね1〜20μmの範囲である。また、バック層は2層以上から構成されていてもよい。
【0076】
下引き層やバック層の塗設に当たっては、支持体表面のコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を併用することが好ましい。
【0077】
上記インク吸収層を形成する水溶性塗布液中には、各種の添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、カチオン性媒染剤、架橋剤、界面活性剤(カチオン、ノニオン、アニオン、両性)、白地色調調整剤、蛍光増白剤、防黴剤、粘度調整剤、低沸点有機溶媒、高沸点有機溶媒、ラテックスエマルジョン、退色防止剤、紫外線吸収剤、多価金属化合物(水溶性もしくは非水溶性)、マット剤、シリコンオイル等が挙げられるが、中でもカチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。
【0078】
カチオン媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が十分高いことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。
【0079】
好ましいポリマー媒染剤は、上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られる。
【0080】
多価金属化合物としては、例えば、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Zr2+、Ni2+、Al3+などの硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等で用いられる。尚、塩基性ポリ水酸化アルミニウムや酢酸ジルコニルなどの無機ポリマー化合物も、好ましい水溶性多価金属化合物の例に含まれる。これらの水溶性の化合物は、一般に、耐光性を向上したり、にじみや耐水性を向上させる機能を有するものが多い。これらの水溶性多価金属イオンは、記録媒体1m2当たり、概ね0.05〜20ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲で用いられる。
【0081】
上記塗布液の塗布方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、カーテン塗布方法或いは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0082】
本発明に係る記録媒体のインク吸収層は、単層であっても多層であってもよく、多層構成の場合には、全ての層を同時に塗布することが、製造コスト低減の観点から好ましい。
【0083】
本発明に係るインクジェット記録媒体の製造方法は、支持体上に少なくとも電離放射線により架橋される高分子化合物を含有するインク吸収層を少なくとも1層以上塗布し、かつ電離放射線を照射し、その後乾燥して製造される。
【0084】
本発明でいう電離放射線とは、例えば電子線、紫外線、α線、β線、γ線、エックス線等が挙げられるが、人体への危険性や、取り扱いが容易で、工業的にもその利用が普及している紫外線が好ましい。
【0085】
光源として例えば数100Paから10気圧までの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられるが、光源の波長分布という観点で高圧水銀灯、メタルハライドランプが好ましく、メタルハライドランプがより好ましい。また、300nm以下の波長光をカットするフィルターを設けることが好ましい。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては10mW/cm2〜1kW/cm2、照射エネルギーとしては0.1mJ/cm2〜150mJ/cm2が好ましく、1mJ/cm2〜50mJ/cm2がより好ましい。
【0086】
光源波長に300nm以下の紫外線が含まれる場合や、照射エネルギーとして150mJ/cm2を超える場合は、電離放射線架橋性樹脂の母核、または共存させる各種添加剤を紫外線により分解する可能性があり、本発明の効果を得られないだけでなく、分解物に由来する臭気などの問題を起こす可能性があるので好ましくない。照射エネルギーが0.1mJ/cm2に満たない場合は架橋効率が不足し、本発明の効果が十分に得られない。
【0087】
紫外線照射の際の照度は0.1mW/cm2以上、1W/cm2以下が好ましい。照度が1W/cm2を超える場合、塗膜の表面硬化性は向上するが、深部硬化性が低下し表面のみ堅い膜が得られる。その場合は、膜の深度方向の堅さのバランスが崩れ、カールなどが起こり、好ましくない。
【0088】
照度が0.1mW/cm2より低い場合は、膜中の散乱等により架橋が十分進まず、本発明の効果が得られないため好ましくない。
【0089】
同一積算光量(mJ/cm2)を与える場合、照度に好ましい範囲があることは、その光の透過率が変化することに起因する。紫外線の透過性により、発生した架橋反応種の濃度分布が異なり、紫外線照度が高い場合、表層に高濃度の架橋反応種が発生し、塗膜表層に堅い緻密な膜が形成されてしまう。
【0090】
照度が好ましい範囲にある場合には、表層の架橋度合いも低く、深部方向への光透過性が高いため緩やかな架橋が深部方向へ均一に形成される。
【0091】
照度が低過ぎる場合には、必要積算照度を与える場合に照射時間がかかってしまい、設備導入等の面で不利であるばかりでなく、塗膜による紫外線の散乱による絶対光線量が不足するため好ましくない。
【0092】
本発明においては、光開始剤や増感剤を添加するのも好ましい。これらの化合物は溶媒に溶解、または分散した状態か、もしくは感光性樹脂に対して化学的に結合されていてもよい。
【0093】
適用される光開始剤、光増感剤について特に制限はなく、従来公知の物を用いることができる。
【0094】
適用される光開始剤、光増感剤については特に制限は無いが、水溶性の物が混合性、反応効率の観点から好ましい。例えば4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(HMPK)、チオキサントンアンモニウム塩(QTX)、ベンゾフェノンアンモニウム塩(ABQ)が水系溶媒への混合性という観点で好ましく、特に4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(HMPK)が安定性、反応効率の観点からより好ましい。更に、一例としベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類。チオキサトン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類。エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類。アセトフェノン類。ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類。2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等ベンゾイン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビスアシルフォスフィンオキサイド、及びこれらの混合物等が好ましく用いられ、上記は単独で使用しても混合して使用してもかまわない。
【0095】
これらの開始剤に加え、促進剤等を添加することもできる。これらの例として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0096】
次いで、本発明に係るインクについて説明する。
【0097】
本発明のインクジェット画像形成方法においては、上記説明した本発明に係るインクジェット記録媒体上に、少なくとも水分散性ポリマー微粒子を含有するインクを付与して画像形成することを特徴とする。
【0098】
以下、本発明に係る水分散性ポリマー微粒子を含有するインクについて説明する。
【0099】
本発明に係る水分散性ポリマー微粒子は、媒質中、例えば、水中に分散状態にあるポリマー粒子を指し、ポリマー微粒子あるいはラテックスとも呼ばれている。
【0100】
上記水分散性ポリマー微粒子は、各種ポリマーの水分散体の形態で用いることができる。具体的には、アクリル系、スチレン−アクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、酢酸ビニル−塩化ビニル系、ポリウレタン系、シリコン−アクリル系、アクリルシリコン系、ポリエステル系、エポキシ系の各ポリマーを挙げることができる。
【0101】
通常、これらの水分散性ポリマー微粒子は、乳化重合法によって得られる。そこで用いられる界面活性剤、重合開始剤等については、常法で用いられるものを用いれば良い。水分散性ポリマー微粒子の合成法に関しては、米国特許第2,852,368号、同2,853,457号、同3,411,911号、同3,411,912号、同4,197,127号、ベルギー特許第688,882号、同691,360号、同712,823号、特公昭45−5331号、特開昭60−18540号、同51−130217号、同58−137831号、同55−50240号等に詳しく記載されている。
【0102】
本発明に係るインクで用いる水分散性ポリマー微粒子は、平均粒径が10〜200nmであることが好ましく、より好ましくは10〜150nm、更に好ましくは10〜100nmである。この場合、水分散性ポリマー微粒子の平均粒径を10nm〜200nmの範囲に規定することで、ポリマー微粒子の記録媒体への被覆率が高まり、インク液滴の出射安定性との両立が可能となる。すわなち、水分散性ポリマー微粒子粒径が10nm以上の場合は、印字後画像表面のポリマー微粒子による被覆が十分に行われ画像保存性の改良効果が得られる。一方、200nm以下の粒径の場合は、インク液滴の出射安定性が向上する。
【0103】
水分散性ポリマー微粒子の平均粒径は、光散乱方式やレーザードップラー方式を用いた市販の粒径測定装置、例えば、ゼータサイザー1000(マルバーン社製)等を用いて、簡便に求めることができる。
【0104】
本発明に係るインクにおいては、水分散性ポリマー微粒子のインク中での含有量が、0.2〜10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。水分散性ポリマー微粒子の添加量が0.2質量%以上であれば、褪色性に対しより十分な効果を発揮することができ、10質量%以下であれば、インク吐出性がより安定となり、更に保存中でのインク粘度の上昇を抑制することができより好ましい。
【0105】
また、本発明においては、インク中における水分散性ポリマー微粒子のガラス転移点(Tg)が−30〜30℃であることが好ましく、更に好ましくは−20〜0℃である。水分散性ポリマー微粒子のガラス転移点(Tg)が−30以上であれば、記録ヘッドのノズル部での目詰まり耐性を得ることができ、また30℃以下であれば、好ましい成膜能を得ることができる。
【0106】
ポリマー微粒子のガラス転移点(Tg)については、温度を変化させる過程において熱膨張係数及び比熱などが不連続的に変化することを利用して公知の方法で測定することができる。また、J.Brandup,E.H.Immergu共編「Polymer Handbook」第3版(John Wily & Sons)1989年、VI209〜277頁にも記載されている。
【0107】
本発明に係る水分散性ポリマー微粒子においては、最低造膜温度(MFT)が、0〜60℃であることが好ましい。本発明においては、水分散性ポリマー微粒子の最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は、可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶媒)であり、例えば「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0108】
また、本発明のインクジェット画像形成方法においては、水分散性ポリマー微粒子を含有し、実質的に色材を含まない無色インクであることが好ましい。
【0109】
本発明でいう実質的に色材を含まない無色インクとは、全インク質量に対し、色材の含有量が0.1%以下の状態を意味し、好ましくは全く色材を含まないことである。
【0110】
本発明に係る無色インクは、水分散性ポリマー微粒子と液体媒体とからなるが、好ましくは、水分散性ポリマー微粒子、水溶性溶剤及び水を主成分としてなる。
【0111】
本発明において、無色インクと色材含有インクとが混合する場合が想定される。そのため、色材含有インクと無色インクを混合しても、実質的に色材の凝集が起こらず、具体的には色材含有インクの吸光度変化が5%未満であることが望ましい。
【0112】
一つは記録媒体上で両者のインクを混合する場合がある。また、無色インクと色材含有インクをインクジェットノズルから供給する場合、双方のインクにより汚染される場合がある。さらに、同一のヘッドを印字モードごとに記録インクに利用したり、無色インクに利用したりする場合である。このようなケースにおいても、画質低下や光沢低下があってはならず、この様な状況を想定すると、色材含有インクと無色インクを混合したとき、直後の吸光度に対して、吸光度変化が5%未満である場合は、画質低下や光沢低下が起こらず好ましい。
【0113】
本発明に係る水分散性ポリマー微粒子を含有するインクの他に、色材を含むインクを用いることができる。
本発明のインクで用いる色材としては、1つとしては、水溶性染料、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、あるいは分散染料を用いることが好ましく、また顔料を用いることも好ましい。
【0114】
水溶性染料としては、例えば、酸性染料、塩基性染料、反応性染料が挙げられる。特に好ましいものは、
C.I.ダイレクトレッド2、26、31、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、221、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247、
C.I.ダイレクトバイオレット7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101、
C.I.ダイレクトイエロー8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、130、132、142、144、161、163、
C.I.ダイレクトブルー1、10、15、22、25、55、67、68、71、76、77、78、80、84、86、87、90、98、106、108、109、151、156、158、159、160、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、291、
C.I.ダイレクトブラック9、17、19、22、32、51、56、62、69、77、80、91、94、97、108、112、113、114、117、118、121、122、125、132、146、154、166、168、173、199、
C.I.アシッドレッド35、42、52、57、62、80、82、111、114、118、119、127、128、131、143、151、154、158、249、254、257、261、263、266、289、299、301、305、336、337、361、396、397、
C.I.アシッドバイオレット5、34、43、47、48、90、103、126、
C.I.アシッドイエロー17、19、23、25、39、40、42、44、49、50、61、64、76、79、110、127、135、143、151、159、169、174、190、195、196、197、199、218、219、222、227、
C.I.アシッドブルー9、25、40、41、62、72、76、78、80、82、92、106、112、113、120、127:1、129、138、143、175、181、205、207、220、221、230、232、247、258、260、264、271、277、278、279、280、288、290、326、
C.I.アシッドブラック7、24、29、48、52:1、172、
C.I.リアクティブレッド3、13、17、19、21、22、23、24、29、35、37、40、41、43、45、49、55、
C.I.リアクティブバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34、
C.I.リアクティブイエロー2、3、13、14、15、17、18、23、24、25、26、27、29、35、37、41、42、
C.I.リアクティブブルー2、3、5、8、10、13、14、15、17、18、19、21、25、26、27、28、29、38、
C.I.リアクティブブラック4、5、8、14、21、23、26、31、32、34、
C.I.ベーシックレッド12、13、14、15、18、22、23、24、25、27、29、35、36、38、39、45、46、
C.I.ベーシックバイオレット1、2、3、7、10、15、16、20、21、25、27、28、35、37、39、40、48、
C.I.ベーシックイエロー1、2、4、11、13、14、15、19、21、23、24、25、28、29、32、36、39、40、
C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、22、26、41、45、46、47、54、57、60、62、65、66、69、71、
C.I.ベーシックブラック8
等が挙げられる。
【0115】
分散染料としては、
ディスパーズイエロー3、4、42、71、79、114、180、199、227、
ディスパーズオレンジ29、32、73、ディスパーズレッド11、58、73、180、184、283、
ディスパーズバイオレット1、26、48、ディスパーズブルー73、102、167、184
等を好ましく挙げることができる。
【0116】
一方、顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用でき、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0117】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
【0118】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0119】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー180等が挙げられる。
【0120】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる
本発明のインクにおける色材含有量としては、1〜20質量%で用いられる。
【0121】
本発明のインクで適用する顔料は、通常、分散剤を用いて公知の分散手段により分散されるが、適用可能な分散剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、または水溶性高分子分散剤を挙げることができる。
本発明のインクにおいて好ましく用いることができる水溶性高分子分散剤としては、下記の水溶性樹脂を用いることが吐出安定性の観点から好ましい。
【0122】
水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等のような水溶性樹脂である。
【0123】
水溶性樹脂のインク全量に対する含有量としては、0.1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.3〜5質量%である。これらの水溶性樹脂は二種以上併用することも可能である。
【0124】
また、本発明で用いることのできる分散手段としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、高圧ホモジナイザー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい。
【0125】
本発明のインクにおいて、顔料分散体の平均粒径は500nm以下が好ましく200nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。
【0126】
本発明に係る水分散性ポリマー微粒子の含有するインク、あるいは色材を含有するインクには、上記説明した構成要素の他に、水、有機溶剤等を含有せしめることができる。
【0127】
本発明で用いることのできる有機溶媒は、特に制限はないが、水溶性の有機溶媒が好ましく、具体的にはアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、スルホン酸塩類(例えば1−ブタンスルホン酸ナトリウム塩等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0128】
本発明に係るインクにおいて、各種の界面活性剤を用いることができる。本発明で用いることのできる各界面活性剤として、特に制限はないが、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0129】
また、本発明におけるインクには、高分子界面活性剤も用いることができ、例えば、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
【0130】
本発明に係るインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号および特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0131】
本発明のインクジェット画像形成方法で使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
【実施例】
【0132】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0133】
実施例1
《記録媒体の作製》
(シリカ分散液S1の調製)
予め均一に分散されている一次粒子の平均粒径が約0.007μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製;アエロジル300)を30%含むシリカ分散液B1(pHが2.6で、エタノールを1%含有)の400Lを、カチオン性ポリマー(P−1)を12%、n−プロパノールを10%およびエタノールを2%含有する水溶液C1(pH=2.5、サンノブコ社製の消泡剤SN381を2g含有)の110Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。次いで、ホウ酸とホウ砂の1:1質量比の混合水溶液A1(各々3%の濃度)の54Lを攪拌しながら徐々に添加した。
【0134】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで、3kN/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げてシリカ含有量19%のほぼ透明なシリカ分散液S1を得た。
【0135】
【化8】

【0136】
(シリカ分散液S2の調製)
上記シリカ分散液S1の調製において、ホウ酸とホウ砂の混合水溶液を加える代わりに同量の純水を加えた以外は同様にして、シリカ含有量が19%のほぼ透明なシリカ分散液S2を調製した。
【0137】
(記録媒体Aの作製)
上記調製したシリカ分散液S1の100gに、ポリビニルアルコール(平均重合度:3500 ケン化度88%)の6.5%水溶液49gを攪拌しながら徐々に添加し、純水で200gに仕上げ、塗布液T−1を得た。
【0138】
得られた塗布液T−1をアドバンテックス東洋社製のTCP−10タイプのフィルターを用いてろ過を行った。
【0139】
次いで、上記調製した塗布液T−1を、厚さ170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したポリエチレンコート紙(インク吸収層塗設面側のポリエチレンに8質量%のアナターゼ型酸化チタン含有し、またインク吸収層塗設面側に0.05g/m2のゼラチンを含む下引き層を設け、反対側にはTgが約80℃のラテックス性ポリマーを0.2g/m2含有するバック層を有している)に、バーコーターを用いて、シリカの付量として16g/m2となるように塗布し、その後80℃の熱風型オーブンで乾燥させてインクジェット記録媒体Aを得た。
【0140】
(記録媒体Bの作製)
上記調製したシリカ分散液S2の100gに、スチルバゾリウム基を導入し、濃度を10%に調整した光架橋性ポリビニルアルコール誘導体水溶液(東洋合成工業社製:SPP−SHR、主鎖PVA重合度2300、ケン化度88%)の32gを攪拌しながら徐々に添加し、純水で200gに仕上げ、塗布液T−2を得た。
【0141】
得られた塗布液T−2をアドバンテックス東洋社製のTCP−10タイプのフィルターを用いてろ過を行った。
【0142】
次いで、上記調製した塗布液T−2を、厚さ170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したポリエチレンコート紙(インク吸収層塗設面側のポリエチレンに8質量%のアナターゼ型酸化チタン含有し、またインク吸収層塗設面側に0.05g/m2のゼラチンを含む下引き層を有し、反対側にはTgが約80℃のラテックス性ポリマーを0.2g/m2含有するバック層を有している)に、バーコーターを用いて、シリカの付量として16g/m2となるように塗布し、その後、365nmに主波長を持つメタルハライドランプで、波長365nmにおける照度が60mW/cm2の紫外線を用い、エネルギー量で30mJ/cm2の紫外線を照射した後、80℃の熱風型オーブンで乾燥させてインクジェット記録媒体Bを得た。
【0143】
(記録媒体Cの作製)
記録媒体Bの作製において、光架橋性ポリビニルアルコール誘導体を例示化合物B−2の構造単位を有するポリ酢酸ビニル鹸化物水溶液(主鎖PVA重合度3000、ケン化度88%、架橋基変性率1mol%)に変更し、更に光開始剤として、チバスペシャリティケミカルズ社製のイルガキュア2959を0.05g添加した以外は同様にして、記録媒体Cを得た。
【0144】
(記録媒体Dの作製)
上記作製した記録媒体A上に、下記の組成からなる保護層を固形分で3g/m2となるようにバーコーターで塗布し、15℃で30秒間、40℃で2分間乾燥させてインクジェット記録媒体Dを得た。
【0145】
〈保護層塗布液の調製〉
コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスOL−40、平均一次粒径45nm) 60部
コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスOZL、平均一次粒径80nm)
40部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 5.0部
ホウ酸 2.0部
界面活性剤 0.3部
(記録媒体Eの作製)
上記記録媒体Dの作製において、記録媒体Aに代えて記録媒体Cを用い、更に、保護層塗布液として、ポリビニルアルコールとホウ酸を例示化合物B−2の構造単位を有するポリ酢酸ビニル鹸化物(主鎖PVA重合度3000、ケン化度88%、架橋基変性率1mol%)5部とチバスペシャリティケミカルズ社製のイルガキュア2959の0.04部に変更し、バーコーターで塗布後に365nmに主波長を持つメタルハライドランプで、波長365nmにおける照度が60mW/cm2の紫外線を用い、エネルギー量で30mJ/cm2の紫外線を照射したその後、40℃で2分間乾燥させた以外は同様にして、記録媒体Eを得た。
【0146】
(記録媒体Fの作製)
上記記録媒体Dの作製において、保護層塗布液から2種のコロイダルシリカを除き、固形分の付量を0.2g/m2に変更した以外は同様にして、記録媒体Fを得た。
【0147】
(記録媒体Gの作製)
上記記録媒体Eの作製において、保護層塗布液から2種のコロイダルシリカを除き、固形分の付量を0.2g/m2に変更した以外は同様にして、記録媒体Gを得た。
【0148】
表1に略称で記載の各インク吸収層で用いたバインダーの詳細を以下に示す。
【0149】
バインダー1:ポリビニルアルコール(平均重合度:3500 ケン化度88%)
バインダー2:光架橋性ポリビニルアルコール誘導体を例示化合物B−2の構造単位を有するポリ酢酸ビニル鹸化物(主鎖PVA重合度3000、ケン化度88%、架橋基変性率1mol%)
バインダー3:スチルバゾリウム基を導入た光架橋性ポリビニルアルコール誘導体(東洋合成工業社製:SPP−SHR、主鎖PVA重合度2300、ケン化度88%)
《記録インクの調製》
〔インクセット1の調製〕
下記の手順に従ってインクセット1を調製した。インクセット1は、イエロー、マゼンタ、シアン及び黒の濃色インクと、マゼンタ及びシアンの淡色インクの6色のインクから構成される。
【0150】
〈濃色インク(イエロー、マゼンタ、シアン及び黒)の調製〉
ジエチレングリコール 10%
グリセリン 10%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10%
染料(*1) 3.0%
サーフィノール465(Air Products社製) 0.5%
純水 残部
*1:染料は、イエローはダイレクトイエロー86、マゼンタはダイレクトレッド227、シアンはダイレクトブルー199、黒はフードブラック2を使用した。
【0151】
〈淡インク(マゼンタ及びシアン)の調製〉
ジエチレングリコール 10%
グリセリン 10%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10%
染料(*2) 0.8%
サーフィノール465 0.5%
純水 残部
*2:染料は、マゼンタはダイレクトレッド227、シアンはダイレクトブルー199を使用した。
【0152】
〔インクセット2の調製〕
上記インクセット1(6色のインク)の調製において、各インクにスーパーフレックス300(第一工業製薬製、ウレタンラテックス)を、インク中における固形分として1.0%になるように添加した以外は同様にして、インクセット2を調製した。
【0153】
〔無色インク1の調製〕
ジエチレングリコール 10%
グリセリン 10%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10%
SX1105(日本ゼオン社製、スチレン−ブタジエンラテックス)
固形分として1.0%
サーフィノール465(Air Products社製) 0.5%
純水 残部
〔無色インク2の調製〕
ジエチレングリコール 10%
グリセリン 10%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10%
スーパーフレックス300(第一工業製薬製、ウレタンラテックス)
固形分として1.0%
サーフィノール465(Air Products社製) 0.5%
純水 残部
《画像印字》
キャリッジ上に7個の記録ヘッド(ピエゾタイプ:512ノズル)を装備したプリンターを用いてインクジェット画像記録を行った。詳しくは、表1に記載の組み合わせで、6個の記録ヘッドからは、上記調製した6色からなるインクセットを記録媒体上に各々吐出させ、残りの1つの記録ヘッドからは、無色インクを吐出した。なお、無色インクを吐出する場合には、各無色インクのインク量と色材含有インク量とが図1に記載の関係となるように各インク量を調整して画像の形成を行った。印字画像は、反射濃度が約1.0のニュートラルグレー画像、黒色の全面ベ画像及びイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各細線画像を印字し、得られた各画像について下記の各評価を行った。
【0154】
《形成画像の評価》
〔光沢の評価〕
上記作成した黒ベタ画像の光沢を目視観察し、下記の基準に従い光沢の評価を行った。
【0155】
◎:銀塩写真同等以上の光沢である
○:銀塩写真に近似の光沢である
△:銀塩写真に比較し、光沢がやや低い
×:銀塩写真には及ばない光沢であり、光沢感に乏しい
上記評価ランクにおいて、◎または○であれば、実用上優れた特性であると判断した。
【0156】
〔プリント割れ耐性の評価〕
黒ベタ画像を印字した各記録媒体を、23℃、20%RHの環境下で2週間保存した後に黒ベタ画像の状態を目視観察し、下記の基準に従ってプリント割れ耐性の評価を行った。
【0157】
◎:プリント表面に亀裂の発生が認められない
○:10cm2の画像面に発生しているひび割れ個数が、1〜3個である
△:10cm2の画像面に発生しているひび割れ個数が、4〜7個である
×:10cm2の画像面に発生しているひび割れ個数が、8個以上である
上記評価ランクにおいて、◎または○であれば、実用上優れた特性であると判断した。
【0158】
〔インク吸収性の評価〕
上記作成したニュートラルグレー画像を目視観察し、下記の基準に従ってインク吸収性の評価を行った。
【0159】
◎:画像部に、まだら状ムラの発生が全く認められない
○:画像部に、まだら状ムラの発生が若干認められるが、目視観察下でのプリント品質には問題なし
△:画質低下につながるまだら状ムラの発生が目視で確認できる
×:画像部に著しいまだら状ムラの発生が認められる
上記評価ランクにおいて、◎または○であれば、実用上優れた特性であると判断した。
【0160】
〔長期保存時のにじみ耐性の評価〕
上記作成したイエロー、マゼンタ、シアン及び黒の細線画像を、40℃、80%RHの環境下で1週間保存した後に目視評価を行い、下記の基準に従って長期保存時のにじみ耐性の評価を行った。
【0161】
◎:全色の細線画像において、全くにじみの発生が認められない
○:一部の画像でわずかな細線の太りが見られるが、実用上許容の範囲にある
△:一部の画像で細線の太りが見られ、実用上問題となる品質である
×:全色の細線画像で明らかな細線の太りが見られる
上記評価ランクにおいて、◎または○であれば、実用上優れた特性であると判断した。
【0162】
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0163】
【表1】

【0164】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる記録媒体を用いても、水分散性ポリマー微粒子を含有しない染料インクにより作成した画像1、6は、光沢が特に劣る結果となった。また、水分散性ポリマー微粒子を含有するインクを用いても、記録媒体のバインダーが、電離放射線による架橋能を持たないポリビニルアルコールであると、画像2〜4にみられるようにプリント割れと長期間にわたり保存した際のにじみ耐性が悪化するため、本発明が目的とする効果が得られないことが分かる。また、光沢発現層としてコロイダルシリカ層やバインダー単独層を設けると、画像4、5にみられるようにインク吸収能の低下を招くこととなる。
【0165】
これに対して、バインダーとして光架橋性ポリビニルアルコールを用いた記録媒体により形成した画像8〜10は、特別な光沢発現層を設けることなく、優れた光沢が得られるとともに、インク吸収性、長期保存時のにじみ耐性について高い効果が得られていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】画像印字の際の無色インクのインク量と色材含有インク量の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にインク吸収層を有するインクジェット記録媒体に記録するインクジェット画像形成方法において、該インク吸収層が親水性バインダーとして電離放射線により架橋した高分子化合物を含有し、かつ水分散性ポリマー微粒子を含有するインクを、該インクジェット記録媒体の少なくとも一部に付与することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【請求項2】
前記水分散性ポリマー微粒子を含有するインクが、色材を含有せずに実質的に無色であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項3】
前記電離放射線により架橋した高分子化合物が、下記一般式(1)で示される構成単位を有するポリ酢酸ビニルケン化物であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット画像形成方法。
【化1】

〔式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、nは1または2、Yは芳香族環または単結合手を表し、Xは−(CH2m−COO−、−OCH2−COO−又は−O−を表し、mは0〜6までの整数である。〕
【請求項4】
前記インク吸収層が、無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−224494(P2006−224494A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41868(P2005−41868)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】