説明

インクジェット記録媒体の製造方法、及びインクジェット記録方法

【課題】表面光沢が良好で、かつ、マゼンタ染料インクの滲みを防止することができるインクジェット記録媒体の製造方法及びインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】気相法シリカと水溶性樹脂と架橋剤とを含む第1液を支持体上に塗布する工程と、ヤシ油に由来するアルキル基を有する両性界面活性剤を含む第2液を支持体上に付与する工程と、を有するインクジェット記録媒体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体の製造方法、及び該製造方法で作製されたインクジェット記録媒体を用いたインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、液滴状のインクを記録媒体に向けて吐出し、インクを記録媒体に定着させることによって記録を行う方法であり、多種多様な記録媒体に記録可能なこと、装置が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から、オフィスはもちろん、ホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
近年のインクジェットプリンタの高解像度化に伴い、銀塩写真に匹敵する高画質記録物を得ることも可能になってきているが、プリンタの性能を十分に活かし、銀塩写真並みの高品質な記録や保存特性を得るためには、専用に設計された記録媒体が必要である。このインクジェット記録媒体に要求される特性としては、インク吸収性、発色性、保存性、プリンタ運搬性、光沢性、表面平滑性等が挙げられる。
【0004】
これらの特性の向上を目的として、インク受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録媒体が開発されており、微細な無機微粒子及び親水性バインダーを含有し、高い空隙率を有する空隙層が支持体上に設けられたインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献1又は2参照)。特に、無機微粒子としてシリカを用いた多孔質構造からなるインク受容層を設けたインクジェット記録用紙は、インク吸収性に優れるとされている。
【0005】
しかし、インク受容層にシリカ等の無機微粒子を含有するインクジェット記録媒体は、製造時にインク受容層に亀裂が生じやすいという欠点がある。インク受容層に亀裂があると、表面光沢が低下し、また、色材分布が不均一になって発色効率が悪くなる。
【0006】
これに対しては、層の亀裂が無く、表面光沢が良好なインクジェット記録媒体を効率よく得る方法として、インク受理層の少なくとも一層が、無機超微粒子、ノニオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤を含有し、該無機超微粒子の表面電荷、及び該両イオン性界面活性剤の電荷が同符号となるpH領域に調整した塗液を支持体上に塗布後、インク受理層中での無機超微粒子の表面電荷、及び両イオン性界面活性剤の電荷が異符号となるpH領域に調整してインク受理層を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、インク受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録媒体は、インクジェット記録用インクが水溶性染料を含む場合、画像が高湿条件下において滲みやすいという欠点を有している。
これに対しては、インク受容層にベタイン型両性界面活性剤と無機媒染剤とを含むと、高湿条件下におけるブラック染料インクの滲みを効果的に防止できるとされている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−119423号公報
【特許文献2】特開平10−217601号公報
【特許文献3】特開2005−280011号公報
【特許文献4】特開2004−122520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載の、インク受理層を形成する塗液のpHを調整してインク受理層を形成する方法では、塗液に含まれる無機超微粒子がシリカで、両イオン性界面活性剤がベタイン型両性界面活性剤である場合、塗液のpHが酸性に傾くと塗液中のシリカが凝集を起こしてしまい、塗布前の塗液の保存安定性の点で問題がある。
また、特許文献4に記載のインク受容層にベタイン型両性界面活性剤と無機媒染剤とを含有させる方法では、マゼンタ染料インクの滲みの点において改良の余地がある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、表面光沢が良好で、かつ、マゼンタ染料インクの滲みを防止することができるインクジェット記録媒体の製造方法及びインクジェット記録方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
両性界面活性剤をインク受容層に含有させるとマゼンタ染料インクの滲み防止に効果があることが知られていたが、いまだ改良の余地があった。この点については、両性界面活性剤の中でも、ヤシ油に由来するアルキル基を有する両性界面活性剤(ヤシ油型両性界面活性剤)にその効果が大きいことがわかった。しかし、気相法シリカとヤシ油型両性界面活性剤とを混合すると気相法シリカが凝集を起こしやすくなり、両者の混合液を塗布して形成したインク受容層は表面光沢が低下するとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0012】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 気相法シリカと水溶性樹脂と架橋剤とを含む第1液を支持体上に塗布する工程と、ヤシ油に由来するアルキル基を有する両性界面活性剤を含む第2液を支持体上に付与する工程と、を有するインクジェット記録媒体の製造方法である。
<2> 前記第2液を前記支持体上に付与する工程は、インク受容層を有する前記支持体上の最上層に前記第2液を付与することを特徴とする<1>に記載のインクジェット記録媒体の製造方法である。
<3> 前記第2液を前記支持体上に付与する工程は、(1)前記第1液を塗布して塗布膜を形成すると同時、又は(2)前記塗布膜の乾燥途中であって前記塗布膜が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pHが7.5以上の前記第2液を前記塗布膜に付与することを特徴とする<1>又は<2>に記載のインクジェット記録媒体の製造方法である。
【0013】
<4> <1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録媒体の製造方法により作製されたインクジェット記録媒体に、インクをインクジェット法で付与して画像を記録する画像記録工程を有するインクジェット記録方法である。
<5> 前記画像記録工程は、少なくとも下記一般式(M)で表されるマゼンタ染料を含むマゼンタインクをインクジェット法で付与して画像を記録することを特徴とする<4>に記載のインクジェット記録方法である。
一般式(M)
【化1】


[式中、Rはメチル基、エチル基、イソプロピル基、又はターシャリーブチル基を表し、XはLi、Na、又はKを表す。]
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表面光沢が良好で、かつ、マゼンタ染料インクの滲みを防止することができるインクジェット記録媒体の製造方法及びインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<インクジェット記録媒体の製造方法>
本発明におけるインクジェット記録媒体の製造方法は、気相法シリカと水溶性樹脂と架橋剤とを少なくとも含む第1液を支持体上に塗布する工程と、ヤシ油に由来するアルキル基を有する両性界面活性剤(以下、単に「ヤシ油型両性界面活性剤」ということがある。)を少なくとも含む第2液を支持体上に付与する工程とを有する。
【0016】
本発明においては、気相法シリカとヤシ油型両性界面活性剤とを別の溶液に含ませることで気相法シリカの凝集を回避し、両溶液の塗布及び付与により形成されたインク受容層の表面光沢を良化させると同時に、マゼンタ染料インクの滲みを効果的に防止することができる。
【0017】
前記第1液の塗布及び第2液の付与の回数は、特に限定されないが、少なくとも1回ずつである。第1液の塗布と第2液の付与の順番は、特に限定されない。
マゼンタ染料インクの滲みを効果的に防止する観点からは、第1液の塗布により形成される塗布膜が乾燥してなるインク受容層を有する支持体上の最上層に、第2液を付与することが好ましい。
【0018】
−第1液を支持体上に塗布する工程−
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、前記第1液を支持体上に塗布する工程を有し、インクを受容するインク受容層となる塗布膜を形成する。
【0019】
前記第1液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法によって行うことができる。
【0020】
前記塗布膜が乾燥してなるインク受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、付与された液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mmで、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。この点を考慮すると、インク受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
また、前記インク受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製「ボアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
【0021】
また、前記インク受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、インク受容層を透明フィルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(スガ試験機(株)製「HGM−2DP」)を用いて測定することができる。
【0022】
(支持体)
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法で用いられる支持体としては、プラスチック等の透明材料からなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。インク受容層の透明性を生かす上では、透明支持体又は高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
【0023】
上記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性を有し、OHPやバックライトディスプレイで使用されるときの輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱いやすい点で、50〜200μmが好ましい。
【0024】
高光沢性の不透明支持体としては、インク受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0025】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、上記各種紙支持体、上記透明支持体もしくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0026】
上記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0027】
また、上記支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0028】
次に、前記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
上記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0029】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0030】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0031】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0032】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0033】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0034】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0035】
特に、インク受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行なわれているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度および色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上にインク受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0036】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行なって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0037】
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0038】
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0039】
(第1液)
[気相法シリカ]
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法で用いる第1液は、気相法シリカを含む。第1液の塗布膜が乾燥してなるインク受容層は、気相法シリカを含むことにより多孔質構造となり、インク吸収能が向上する。
【0040】
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。
【0041】
上記気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmで多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)しやすく、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0042】
上記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散すればインク受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。インク受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録媒体に適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0043】
上記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。上記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0044】
上記気相法シリカのインク受容層における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、十分なインク吸収性を備えたインクジェット記録媒体が得られるので好ましい。ここで、気相法シリカのインク受容層における固形分含有量とは、インク受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
【0045】
また、気相法シリカは、他の無機微粒子や有機微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0046】
上記その他の無機微粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも良好な多孔質構造を形成する観点より、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子又は擬ベーマイトが好ましい。微粒子は1次粒子のまま用いても、又は2次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら微粒子の平均一次粒子径は2μm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
【0047】
上記有機微粒子としては例えば、乳化重合、マイクロエマルジョン系重合、ソープフリー重合、シード重合、分散重合、懸濁重合などにより得られるポリマー微粒子が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、シリコン樹脂、フェノール樹脂、天然高分子等の粉末、ラテックス又はエマルジョン状のポリマー微粒子等が挙げられる。
【0048】
[水溶性樹脂]
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法で用いる第1液は、気相法シリカと共に水溶性樹脂を含む。
【0049】
上記水溶性樹脂としては、例えば、親水性基としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基及び/又はその塩を有するポリアクリル酸、マレイン酸樹脂、アルギン酸、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0050】
中でも、特にポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等の各公報に記載されたものなどが挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の段落「0011」〜「0014」に記載の化合物なども挙げられる。
これら水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0051】
本発明に用いられる水溶性樹脂の含有量としては、インク受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
【0052】
本発明におけるインク受容層を主として構成する、前記気相法シリカと水溶性樹脂とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。
尚、透明性を保持して印画濃度を向上させる観点からは、気相法シリカに組み合わせる水溶性樹脂の種類が重要となる。該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が更に好ましく、特に好ましくは鹸化度82〜90%のポリビニルアルコール系樹脂である。
【0053】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記気相法シリカの表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成しやすくなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造のインク受容層を形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0054】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂とポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0055】
〜気相法シリカと水溶性樹脂との含有比〜
気相法シリカ(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x:y)〕は、インク受容層の膜構造及び膜強度にも大きな影響を与える。即ち、質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
【0056】
本発明のインク受容層は、上記質量含有比〔PB比(x:y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれやすくなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
【0057】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録媒体に応力が加わることがあるので、インク受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。また、記録媒体をシート状に裁断加工する場合、インク受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、インク受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、前記質量比(x:y)としては5:1以下がより好ましく、一方、インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2:1以上であることがより好ましい。
【0058】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカと水溶性樹脂とを、質量比(x:y)2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した溶液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0059】
[架橋剤]
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法で用いる第1液は、気相法シリカ及び水溶性樹脂に加えて、更に架橋剤を含む。
【0060】
前記水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールの架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩(例えば、オルトホウ酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO、Co(BO、二ホウ酸塩(例えば、Mg、Co)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO、NaBO、KBO)、四ホウ酸塩(例えば、Na・10HO)、五ホウ酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩が好ましく、特にホウ酸が好ましい。
【0061】
前記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
上記の架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
架橋剤の使用量は、水溶性樹脂に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0063】
[その他の成分]
前記第1液は、必要に応じて、更に各種の公知の添加剤、例えば酸、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有していてもよい。
【0064】
本発明において、前記第1液は酸を含有していてもよい。酸を添加することで、第1液の塗布膜が乾燥してなるインク受容層の表面pHを3〜8、好ましくは5〜7.5に調整する。これにより白地部の耐黄変性が向上するので好ましい。表面pHの測定は、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI)の定めた表面pHの測定のうちA法(塗布法)により測定を行う。例えば、前記A法に相当する(株)共立理化学研究所製の紙面用pH測定セット「形式MPC」を使用して該測定を行うことができる。
【0065】
具体的な酸の例としては、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、サリチル酸、サリチル酸金属塩(Zn、Al、Ca、Mg等の塩)、メタンスルホン酸、イタコン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、トルエンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、スルファニル酸、スルファミン酸、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、γ−レゾルシン酸、没食子酸、フロログリシン、スルホサリチル酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ビスフェノール酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ほう酸、ボロン酸等が挙げられる。これらの酸の添加量は、インク受容層の表面pHが3〜8になるように決めればよい。
上記の酸は金属塩(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、セシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、イットリウム、マグネシウム、ストロンチウム、セリウムなどの塩)、又はアミン塩(例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、ポリアリルアミンなど)の形態で使用してもよい。
【0066】
本発明においては、前記インク受容層に紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤などの保存性向上剤を含有させるために、前記第1液にこれらを添加することが好ましい。
これら紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤としては、アルキル化フェノール化合物(ヒンダードフェノール化合物を含む)、アルキルチオメチルフェノール化合物、ヒドロキノン化合物、アルキル化ヒドロキノン化合物、トコフェロール化合物、チオジフェニルエーテル化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール化合物、O−,N−及びS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、ホスホネート化合物、アシルアミノフェノール化合物、エステル化合物、アミド化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物、2−ヒドロキシベンゾフェノン化合物、アクリレート、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物(TEMPO化合物を含む)、2−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5,−トリアジン化合物、金属不活性化剤、ホスフィット化合物、ホスホナイト化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロン化合物、過酸化物スカベンジャー、ポリアミド安定剤、ポリエーテル化合物、塩基性補助安定剤、核剤、ベンゾフラノン化合物、インドリノン化合物、ホスフィン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジト化合物、アミジン化合物、糖化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が挙げられる。
【0067】
これらの中でも、アルキル化フェノール化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキシアミン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、ヒドラジド化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が好ましい。
【0068】
前記その他の成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。このその他の成分は、水溶性化、分散化、ポリマー分散、エマルション化、油滴化して添加してもよく、マイクロカプセル中に内包することもできる。本発明のインクジェット記録媒体では、上記その他の成分の添加量としては、0.01〜10g/mが好ましい。
【0069】
また、前記第1液中の気相法シリカの分散性を改善する目的で、シリカ表面をシランカップリング剤で処理してもよい。該シランカップリング剤としては、カップリング処理をする部位のほかに、有機官能性基(例えば、ビニル基、アミノ基(1級〜3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基)、エポキシ基、メルカプト基、クロロ基、アルキル基、フェニル基、エステル基等)を有するものが好ましい。
【0070】
本発明において、前記インク受容層のカール防止用に、第1液に高沸点有機溶剤を含有するのが好ましい。上記高沸点有機溶剤は常圧で沸点が150℃以上の有機化合物で、水溶性又は疎水性の化合物である。これらは、室温で液体でも固体でもよく、低分子でも高分子でもよい。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類(例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニルなど)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えばアジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸メチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)、リン酸エステル類(例えばリン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなど)、エポキシ類(例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルなど)、アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2−ヘキサンジオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば大豆油、ヒマワリ油など)高級脂肪族カルボン酸(例えばリノール酸、オレイン酸など)等が挙げられる。
中でも、インク吸収速度の向上や印画濃度低下防止の観点からは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオールが特に好ましい。
【0071】
本発明におけるインクジェット記録媒体の構成層(例えば、インク受容層あるいはバック層など)はポリマー微粒子分散物を含有してもよく、第1液にポリマー微粒子分散物を添加することができる。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。なお、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物をインク受容層に含有させると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に含有させても、カールを防止することができる。
【0072】
また、第1液の塗布においては、水溶性多価金属塩を添加してもよい。
水溶性多価金属塩としては、2価以上の金属の化合物が好ましい。2価以上の金属の化合物としては、例えば、更に、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的な例としては、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酪酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウム、ナフトレゾルシンカルボン酸バリウム、酪酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、酪酸銅(II)、シュウ酸銅、フタル酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、ナフテン銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、スルファミン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性チオグリコール酸アルミニウム、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、クエン酸鉄(III)、乳酸鉄(III)三水和物、三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、フェノールスルホン酸亜鉛、酢酸亜鉛アンモニウム、亜鉛アンモニウムカーボネート、が挙げられる。
【0073】
水溶性多価金属塩は、2種以上を併用してもよい。本発明において、水溶性多価金属塩における水溶性とは、20℃の水に1質量%以上溶解することを意味する。
【0074】
水溶性多価金属塩の中でも、アルミニウム化合物もしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましく、アルミニウム化合物であることがより好ましい。特に好ましくは、水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば、無機塩としては塩化アルミニウム又はその水和物、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン等が挙げられる。更に、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物(塩基性ポリ塩化アルミニウム又はポリ塩化アルミニウムともいう。)が好適である。
【0075】
塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の式1、式2又は式3で表され、例えば、[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al(OH)Cl6−n ・・・(式1)
[Al(OH)AlCl ・・・(式2)
Al(OH)Cl(3n−m) 〔0<m<3n〕・・・(式3)
【0076】
これらの化合物としては、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名称で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名称で、また、(株)理研グリーンよりHAP−25の名称で、大明化学(株)よりアルファイン83の名称で、さらに他のメーカーからも同様の目的で上市されたものがあり、各種グレードのものを入手して用いることができる。
【0077】
前記周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタン又はジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタン、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、が挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0078】
水溶性多価金属塩のインク受容層中における含有量は、気相法シリカに対して、0.1〜10質量%の範囲が好ましく、0.5〜8質量%の範囲がより好ましい。
【0079】
[第1液の調製方法]
本発明において、前記第1液は、例えば、以下のようにして調製することができる。
気相法シリカと分散剤を水中に添加して(例えば、水中の気相法シリカは10〜20質量%)、対向衝突型高圧ホモジナイザー(例えば、(株)スギノマシン製「アルティマイザー」)を用いて、例えば120MPa(好ましくは100〜200MPa)の高圧条件で分散させた後、ホウ素化合物、PVA水溶液(例えば、上記気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加え撹拌することにより調製することができる。得られた第1液は均一なゾル状態であり、これを支持体上に塗布することにより、三次元網目構造を有する多孔質性のインク受容層を形成することができる。
【0080】
上記気相法シリカと分散剤とからなる水分散物の調製は、気相法シリカ水分散液をあらかじめ調製し、該水分散液を分散剤水溶液に添加してもよいし、分散剤水溶液を気相法シリカ水分散液に添加してもよいし、同時に混合してもよい。また、気相法シリカ水分散液ではなく、粉体の気相法シリカを用いて上記のように分散剤水溶液に添加してもよい。
上記の気相法シリカと分散剤とを混合した後、該混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50〜300nmの水分散液を得ることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等、従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行なうという点から、撹拌型分散機、コロイドミル分散機または高圧分散機が好ましく、特に対向衝突型高圧分散機、オリフィス通過型高圧分散機が好ましい。
【0081】
上記の調製における溶媒として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0082】
上記分散剤としてはカオチン性のポリマーを用いることができる。カオチン性のポリマーとしては、有機媒染剤、染色用ポリマー、ポリイミン等の例などが挙げられる。また、分散剤としてシランカップリング剤を用いることも好ましい。
上記分散剤の微粒子に対する添加量は、0.1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。
【0083】
前記の水溶性多価金属塩は、第1液の塗布の際に、インライン混合することができる。
【0084】
−第2液を支持体上に付与する工程−
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、前記第2液を支持体上に付与する工程を有する。この工程により、第2液に含まれるヤシ油型両性界面活性剤を、第1液の塗布膜が乾燥してなるインク受容層に含ませる。
【0085】
前記第1液の塗布と第2液の付与の順番は特に限定されないが、マゼンタ染料インクの滲みを効果的に防止する観点からは、第1液を塗布して形成された塗布膜、又はこれが乾燥してなるインク受容層を有する前記支持体上に第2液を付与することが好ましい。
【0086】
前記第2液を支持体上に付与する工程は、(1)前記第1液を塗布して塗布膜を形成すると同時、又は(2)前記塗布膜の乾燥途中であって塗布膜が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pH7.5以上の第2液を塗布膜に付与する工程であることが好ましい。このような方法(Wet−on−Wet法)により架橋硬化させたインク受容層は、インク吸収性やインク受容層のひび割れ防止などの点で良好である。
【0087】
ここで、前記「塗布膜が減率乾燥を示す前」とは、通常、前記第1液の塗布直後から数分間の過程を指す。この過程においては、前記塗布膜中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0088】
上記の通り、前記第1液の塗布後、前記塗布膜が減率乾燥を示す前まで乾燥され得るが、この乾燥は一般に50〜150℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0089】
前記塗布膜が減率乾燥を示す前に前記第2液を付与する方法としては、(1)前記塗布膜上に更に第2液を塗布する方法、(2)前記塗布膜上に第2液をスプレー等により噴霧する方法、(3)第2液中に前記塗布膜が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0090】
前記方法(1)において、前記第2液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている前記塗布膜にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0091】
前記第2液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥および硬化が行なわれる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
【0092】
また、前記第2液を、前記第1液を塗布すると同時に支持体上に付与する場合、第1液及び第2液を、第1液が支持体と接触するようにして支持体上に同時重層塗布し、その後乾燥硬化させることによりインク受容層を形成することができる。
【0093】
上記同時重層塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行なうことができる。同時塗布の後、形成された塗布膜は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布膜を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行なわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行なわれる。
【0094】
上記同時重層塗布を、例えば、エクストルージョンダイコーターにより行なった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じやすいことから、エクストルージョンダイコーターの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘しやすくなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、第1液及び第2液の塗布と共に、バリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
【0095】
上記バリアー層液は、特に制限なく選択できる。例えば、水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。上記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、セルロース系樹脂(たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス等)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。
【0096】
(第2液)
[ヤシ油型両性界面活性剤]
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法に用いる第2液は、ヤシ油型両性界面活性剤を少なくとも含む。本発明の製造方法で作製されたインクジェット記録媒体は、インク受容層がヤシ油型両性界面活性剤を含むことにより、マゼンタ染料インクの滲みを効果的に防止することができる。また、分子量の大きなベタインは異臭抑制効果があると推測され、比較的臭気の強い添加剤を使用した場合にその臭気の抑制も期待できると考えられる。
【0097】
ヤシ油はココヤシの種子を圧搾して得た脂肪油であり、主成分はラウリン酸グリセリドで、その組成はラウリン酸(44〜52%)、ミリスチン酸(13〜19%)、パルミチン酸(8〜11%)、カプリン酸(6〜10%)、カプリル酸(5〜9%)、オレイン酸(5〜8%)などである。
【0098】
本発明に用いるヤシ油型両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルベタイン、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下に、これらの構造を示す。なお、Rはヤシ油に由来するアルキル基を表す。
【0099】
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン
【化2】

【0100】
ヤシ油アルキルベタイン
【化3】

【0101】
ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド
【化4】

【0102】
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタインの市販品としては、アモーゲンCB−H(第一工業製薬(株)製)、アモーゲンCB−C(第一工業製薬(株)製)、レボン2000(三洋化成工業(株)製)、タイポールソフトAMP100(泰光油脂化学工業(株)製)、オバゾリンCAB−30(東邦化学工業(株)製)、ニッサンアノンBDF−SF(日油(株)製)、アンホレックスCB−1(ミヨシ油脂(株)製)、エナジコールC−30B(ライオン(株)製)等が挙げられる。
ヤシ油アルキルベタインの市販品としては、タイポールソフトCB−30N(泰光油脂化学工業(株)製)等が挙げられる。ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシドの市販品としては、タイポールソフトAOC−30(泰光油脂化学工業(株)製)挙げられる。
【0103】
その中でも、マゼンタ染料インクの滲み防止の観点から、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタインが好ましく、脱塩処理しているヤシ油型両性界面活性剤がより好ましく、具体的にはアモーゲンCB−Hが好ましい。
【0104】
本発明に用いられるヤシ油型両性界面活性剤は、インク受容層に0.005〜0.5g/m含有されることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.3g/mであり、特に好ましくは0.02〜0.2g/mである。
また、ヤシ油型両性界面活性剤(X)の気相法シリカ(Y)に対する比率(X/Y)としては、3/10000〜3/100が好ましく、より好ましくは7/10000〜2/100の範囲である。
【0105】
本発明に用いられる第2液には、水溶性有機溶媒、例えばアルコール化合物(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど)、エーテル化合物(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、アミド化合物(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ケトン化合物(アセトンなど)等を含有して、ヤシ油型両性界面活性剤の水系への親和性を高めた状態にしてもよい。
【0106】
本発明に用いられるヤシ油型両性界面活性剤が十分な水溶性を示さない場合は、疎水性の有機溶媒、例えばエステル化合物(酸酸エチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ブチル、ステアリン酸メチル、トリクレジルフォスフェートなど)、エーテル化合物(アニソール、ヒドロキシエトキシベンゼン、ハイドロキノンジブチルエーテルなど)、炭化水素化合物(トルエン、キシレン、ジイソプロピルナフタレンなど)、アミド化合物(N−ブチルベンゼンスルホンアミド、ステアリンン酸アミドなど)、アルコール化合物(2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなど)、ケトン化合物(ヒドロキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサンなど)等を第2液に混合してもよい。
【0107】
[その他の成分]
本発明における第2液は、必要に応じて、更に各種の公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することができる。
これら添加剤の具体例は、第1液について既述したものと同様である。
【0108】
前記第2液を支持体上にWet−on−Wet法により付与する場合、第2液のpHを7.5以上に調整する目的で、必要に応じて、pH調整剤を含有することができる。
pH調整剤としては、例として、アンモニウム塩、アンモニア、ナトリウム塩、カルシウム塩、アミノ基含有化合物(エチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ポリアリルアミン等)が挙げられる。これらの中でも、炭酸アンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムが好ましい。
【0109】
[第2液の調製方法]
本発明において、前記第2液は、例えば、以下のようにして調製することができる。
すなわち、イオン交換水にヤシ油型両性界面活性剤、pH調整剤(例えば炭酸アンモニウム)を加え、スリーワンモーター等で静かに20分程度撹拌することにより第2液を得ることができる。
【0110】
−その他の工程−
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、前記第1液を支持体上に塗布する工程と、前記第2液を支持体上に付与する工程とを有するが、必要に応じて、その他の工程を設けることができる。
例えば、第1液及び第2液を支持体上に塗布及び付与し乾燥させインク受容層を形成した後、インク受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定して行なう必要がある。
【0111】
カレンダー処理をする場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cm(49〜392kN/m)が好ましく、100〜200kg/cm(98〜196kN/m)がより好ましい。
【0112】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、本発明の製造方法により作製されたインクジェット記録媒体にインクをインクジェット法で付与して画像を記録する画像記録工程を有する。
【0113】
−インクジェット法−
インクをインクジェット法で記録媒体に付与して画像を記録する工程は、エネルギーを供与することにより、所望の記録媒体にインクを吐出し着色画像を形成するものである。なお、本発明に好ましいインクジェット法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0114】
インクジェット法には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
なお、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0115】
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
なお、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0116】
−その他の工程−
本発明のインクジェット記録方法は、インクをインクジェット法で記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するが、必要に応じて、その他の工程を設けて構成することができる。
【0117】
その他の工程としては、特に制限はなく、例えば、インクの着滴により形成されたインク画像に加熱面を接触させて定着する加熱定着工程や、記録媒体に付与されたインク中の有機溶剤を乾燥除去するインク乾燥工程など、目的に応じて適宜選択することができる。
【0118】
−インク−
本発明のインクジェット記録方法において用いられるインクは、色材の少なくとも1種を含有する。色材としては、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。
【0119】
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0120】
染料としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接染料、反応染料、建染染料、硫化染料、食品用色素に分類される染料、油溶染料、塩基性染料を用いることができる。
代表的な染料としては、例えば、アゾ染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料などを挙げることができる。また、マゼンタ染料、シアン染料、イエロー染料、及びブラック染料としては下記染料が好適である。
【0121】
[マゼンタ染料]
マゼンタ染料としては、例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類などを有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、シアニン染料、オキソノール染料などのようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン染料;例えばジオキサジン染料のような縮合多環染料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
マゼンタ染料としては、複素環アゾ染料が好ましく、国際特許公開2002/83795号明細書(35〜55頁)、同2002/83662号明細書(27〜42頁)、特開2004−149560号公報(段落番号「0046」〜「0059」)、同2004−149561号公報(段落番号「0047」〜「0060」)、同2007−70573号公報(段落番号「0073」〜「0082」)に記載されたものが挙げられる。中でも、耐オゾン性及び耐光性の観点から、下記一般式(M)で表されるものが好ましい。
【0123】
一般式(M)
【化5】

【0124】
上記一般式(M)中、Rはメチル基、エチル基、イソプロピル基、又はターシャリーブチル基を表し、XはLi、Na、又はKを表す。Rはすべて同一でもよく異なっていてもよい。Xはすべて同一でもよく異なっていてもよい。
例として以下のような化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0125】
【化6】

【0126】
【化7】

【0127】
【化8】

【0128】
[シアン染料]
シアン染料としては、例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのようなヘテロ環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;インジゴ・チオインジゴ染料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
シアン染料としては、会合性のフタロシアニン染料が好ましく、国際特許公開2002/60994号明細書、同2003/811号明細書、同2003/62324号明細書、特開2003−213167号公報、同2004−75986号公報、同2004−323605号公報、同2004−315758号公報、同2004−315807号公報、同2005−179469号公報、同2007−70573号公報(段落番号「0083」〜「0090」)に記載されたものが挙げられる。具体的には、耐オゾン性及び耐光性の観点から、下記構造式のものが好ましい。
【0130】
【化9】


X=SO2(CH2)3SO3Li(3/4)
SO2(CH2)3SO2NHCH2CH(CH3)OH(1/4)

【0131】
【化10】


X=SO2(CH2)3SO3Li(2/4)
SO2(CH2)3SO2NHCH2CH(CH3)OH(2/4)

【0132】
[イエロー染料]
イエロー染料としては、国際特許公開第2005/075573号明細書、特開2004−83903号公報(段落番号「0024」〜「0062」)、同2003−277661号公報(段落番号「0021」〜「0050」)、同2003−277262号公報(段落番号「0042」〜「0047」)、同2003−128953号公報(段落番号「0025」〜「0076」)、同2003−41160号公報(段落番号「0028」〜「0064」)、米国特許出願公開第2003/0213405号明細書(段落番号「0108」)に記載されたもの、及びC.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,59,68,86,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,132,142,144,161,163、C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227、C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42、C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40、等が挙げられる。また、特開2007−191650号公報の段落番号「0013」〜「0112」、「0114」〜「0121」に記載のイエロー染料が好適である。中でも、耐オゾン性及び耐光性の観点から、下記一般式(Y)で表されるものが好ましい。
【0133】
一般式(Y)
【化11】

【0134】
上記一般式(Y)中、Rはメチル基、エチル基、イソプロピル基、又はターシャリーブチル基を表し、XはK、Na、又はLiを表す。Rはすべて同一でもよく異なっていてもよい。Xはすべて同一でもよく異なっていてもよい。
例として以下のような化合物が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0135】
【化12】

【0136】
[ブラック染料]
ブラック染料としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料が挙げられる。これらのブラック染料は、カーボンブラックの分散体等の顔料と併用してもよい。
ブラック染料の好ましい例は、特開2005-307177号公報、同2006−282795号公報(段落番号「0068」〜「0087」)に詳しく記載されている。具体的には、耐オゾン性及び耐光性の観点から、下記構造式のものが好ましい。
【0137】
【化13】

【0138】
【化14】

【実施例】
【0139】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を表し、「平均分子量」及び「重合度」は、「質量平均分子量」及び「質量平均重合度」を表す。
【0140】
<支持体の作製>
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/mの原紙を抄造した。
【0141】
上記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製「Whitex BB」)を0.04%添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/mとなるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にカレンダー処理を施して密度1.05g/mlに調整された基紙を得た。
【0142】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製「スノーテックスO」)とを1:2の質量比で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/mとなるように塗布した。
【0143】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有し、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように押し出し、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。
【0144】
(実施例1)
<第1液の調製>
下記組成中の(1)気相法シリカ、(2)イオン交換水、(3)水溶性ポリマー、(4)酢酸ジルコニルを混合し、吸引分散機((株)ダルトン製「Conti−TDS」)にて粗分散を行なった。得られた粗分散液を高圧ホモジナイザー((株)スギノマシン製「アルティマイザー」)を用いて圧力120MPaでさらに微細に分散させた。得られた微分散液を45℃の液温下で20時間保管した。次いで、下記(5)ポリビニルアルコール、(6)ホウ酸、(7)イオン交換水、(8)界面活性剤を含む溶液を加え撹拌し、第1液を調製した。
気相法シリカとポリビニルアルコールとの質量比〔PB比=(1):(4)〕は、5:1であった。
【0145】
〜第1液の組成〜
(1)気相法シリカ 8.92部
(日本アエロジル(株)製「アエロジル300SF75」、平均一次粒子径7nm)
(2)イオン交換水 33.80部
(3)水溶性ポリマー51.5%水溶液(分散剤) 0.78部
(第一工業製薬(株)製「シャロールDC902P」)
(4)酢酸ジルコニル50%水溶液(分散助剤) 0.46部
(第一稀元素化学工業(株)製「ジルコゾールZA−30」)
(5)ポリビニルアルコール7%水溶液(水溶性樹脂) 25.98部
((株)クラレ製「PVA235」、鹸化度88%、重合度3500)
(6)ホウ酸7.5%水溶液(架橋剤) 5.28部
(7)イオン交換水 13.34部
(8)界面活性剤10%水溶液 0.60部
(花王(株)製「エマルゲン109P」)
【0146】
<インクジェット記録媒体の作製>
上記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、該オモテ面に、以下のようにして、上記の第1液をエクストルージョンダイコーターにて塗布した。具体的には、第1液を150g/m、下記インライン液を10g/mの速度(塗布量)でインライン混合した後、支持体に塗布し、塗布層を形成した。続いて、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この期間は恒率乾燥を示した。
その直後、下記組成の第2液に30秒間浸漬して該塗布層上に第2液10g/mを付着させ、更に80℃下で10分間乾燥させた。これにより、第1液からなる膜上に第2液が付与された乾燥膜厚32μmのインク受容層が設けられた本発明のインクジェット記録媒体を作製した。
【0147】
〜インライン液の組成〜
(1)アルファイン83 2.0部
(大明化学工業(株)製 ポリ塩化アルミニウム水溶液)
(2)イオン交換水 7.8部
(3)ハイマックスSC−507 0.2部
(ハイモ(株)製 ジメチルアミン・エピクロロヒドリン重縮合物)
【0148】
〜第2液の組成〜
(1)ヤシ油型両性界面活性剤30%水溶液 0.67部
(第一工業製薬(株)製「アモーゲンCB−H」、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン)
(2)イオン交換水 37.30部
(3)炭酸アンモニウム(pH調整剤) 2.00部
【0149】
第2液のpHは7.9であった。なお、pHは、東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGを用い、原液のまま30℃にて測定した。
【0150】
<インクジェット法による画像記録>
上記のインクジェット記録媒体に、インクジェットプリンタ「フロンティアドライミニラボDL410」(富士フイルム(株)製)及びそのインクセットを用いて、インクジェット法により画像を記録した。該インクセットは、下記一般式(M)で表されるマゼンタ染料を含むマゼンタインクを有する。
【0151】
一般式(M)
【化15】

【0152】
上記一般式(M)中、Rはメチル基、エチル基、イソプロピル基、又はターシャリーブチル基を表し、XはLi、Na、又はKを表す。Rはすべて同一でもよく異なっていてもよい。Xはすべて同一でもよく異なっていてもよい。
【0153】
<性能評価>
上記に対して、下記の性能評価を行なった。評価結果を下記表1に示す。
【0154】
−第1液に含まれる微粒子の粒子径−
第1液をイオン交換水で50倍に薄め、レーザー回折型の粒子径測定器「LA920」((株)堀場製作所製)を用い、微粒子の平均粒子径(μm)を計測した。
【0155】
−光沢度−
デジタル変角光沢計「UGV−6P」(スガ試験機(株)製)を用い、印画していないインクジェット記録媒体のインク受容層における60度光沢度を計測し、光沢性を評価した。光沢度の許容範囲を35以上とした。
【0156】
−黒濃度(K−Dm)−
インクジェット記録媒体に黒ベタ画像を印画し、光学濃度を反射濃度測定計「X−Rite538」(X−Rite社製)を用いて評価した。黒濃度の許容範囲を2.5以上とした。
【0157】
−マゼンタ滲み(1)−
インクジェット記録媒体に、グレー画像(R:255、G:255、B:255)の0.05mm*0.05mmの点を0.02mm間隔で数十点印画し、23℃/90RH%の環境下で120時間保管した。保管前後のグレー部の色相を分光光度計「スペクトロリノ」(グレタグマクベス社製)で測定し、その色差ΔEを用いて、マゼンタ滲みを評価した。
<評価基準>
○:ΔE≦7。マゼンタ滲みがほとんど認識できなかった。
×:ΔE>7。マゼンタ滲みが認識できた。
−:印画濃度が著しく低く、マゼンタ滲みが評価できなかった。
【0158】
−マゼンタ滲み(2)−
インクジェット記録媒体に、マゼンタ画像(R:255、G:0、B:0)の0.05mm*0.05mmの点を0.02mm間隔で数十点印画し、23℃/90RH%の環境下で120時間保管した。保管前後のマゼンタ部の色相をスペクトロリノで測定し、その色差ΔEを用いて、マゼンタ滲みを評価した。
<評価基準>
○:ΔE≦15。マゼンタ滲みがほとんど認識できなかった。
×:ΔE>15。マゼンタ滲みが認識できた。
−:印画濃度が著しく低く、マゼンタ滲みが評価できなかった。
【0159】
−耐オゾン性(マゼンタ)−
インクジェット記録媒体にマゼンタのベタ画像を印画し、オゾンガス濃度が10ppmに設定されたボックス内に5日間放置した。オゾンガス下放置前後の反射濃度を、反射濃度測定計「X−Rite310TR」(X−Rite社製)を用いて測定し、マゼンタ残存率を求め、マゼンタ画像の耐オゾン性を評価した。なお、上記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
<評価基準>
○:3点とも、色素残存率が70%以上であった。
△:1点又は2点において、色素残存率が70%未満であった。
×:3点とも、色素残存率が70%未満であった。
−:印画濃度が著しく低く、耐オゾン性が評価できなかった。
下記表1中、耐オゾン性の欄に示した数値は、上記3点のマゼンタ残存率の中の最低値である。
【0160】
(実施例2、3)
実施例1において、「第2液の組成」中のアモーゲンCB−Hを、下記表1に示す他のヤシ油型両性界面活性剤(いずれも30%水溶液)に代えたこと以外、実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体を作製し、画像を記録し、性能評価を行なった。第2液のpHは、いずれも7.9であった。評価結果を下記表1に示す。
なお、表1中のタイポールソフトCB−30N(ヤシ油アルキルベタイン)及びタイポールソフトAOC−30(ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド)は、泰光油脂化学工業(株)製である。
【0161】
(実施例4)
実施例1において、インクセットのマゼンタインクを、下記構造式で表されるマゼンタ染料を含むマゼンタインクに代えた以外、実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体を作製し、画像を記録し、性能評価を行なった。評価結果を下記表1に示す。
【0162】
【化16】

【0163】
(比較例1〜3)
実施例1において、「第2液の組成」中のアモーゲンCB−Hを、下記表1に示すヤシ油型両性界面活性剤以外の他の両性界面活性剤(いずれも30%水溶液)に代え、又は加えないこと以外、実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体を作製し、画像を記録し、性能評価を行なった。第2液のpHは7.9であった。評価結果を下記表1に示す。
なお、表1中のソフダゾリンLPB−R(ラウリン酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン)は川研ファインケミカル(株)製、リカビオンA200(C14ミリスチルベタイン)は新日本理化(株)製である。
【0164】
(比較例4〜8)
実施例1において、「第1液の組成」中に更に下記表1に示す両性界面活性剤(いずれも30%水溶液)を0.67部加え、「第1液の調製」において、該界面活性剤をポリビニルアルコールとホウ酸とイオン交換水と共に加えるとともに、「第2液の組成」中からアモーゲンCB−Hを除いたこと以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体を作製し、画像を記録し、性能評価を行なった。第2液のpHは7.9であった。評価結果を下記表1に示す。
【0165】
【表1】

【0166】
前記表1に示すように、本発明のインクジェット記録媒体はいずれも、表面光沢及び黒濃度が良好で、かつ、マゼンタ染料インクの滲みの発生が防止されていた。これに対して、比較例1〜3は、表面光沢及び黒濃度には特に問題はないが、マゼンタ染料インクの滲みの発生を防止することはできなかった。比較例4〜8は、第1液の粒子径が大きく、表面光沢において劣り、印画濃度においてはインクジェット記録媒体としての実用に適さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相法シリカと水溶性樹脂と架橋剤とを含む第1液を支持体上に塗布する工程と、
ヤシ油に由来するアルキル基を有する両性界面活性剤を含む第2液を支持体上に付与する工程と、
を有するインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記第2液を前記支持体上に付与する工程は、
インク受容層を有する前記支持体上の最上層に前記第2液を付与することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記第2液を前記支持体上に付与する工程は、
(1)前記第1液を塗布して塗布膜を形成すると同時、又は(2)前記塗布膜の乾燥途中であって前記塗布膜が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pHが7.5以上の前記第2液を前記塗布膜に付与することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法により作製されたインクジェット記録媒体に、インクをインクジェット法で付与して画像を記録する画像記録工程を有するインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記画像記録工程は、少なくとも下記一般式(M)で表されるマゼンタ染料を含むマゼンタインクをインクジェット法で付与して画像を記録することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
一般式(M)
【化1】

[式中、Rはメチル基、エチル基、イソプロピル基、又はターシャリーブチル基を表し、XはLi、Na、又はKを表す。]

【公開番号】特開2010−234781(P2010−234781A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88371(P2009−88371)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】