説明

インクジェット記録方法

【課題】例えば両面処理あるいは多数枚処理や高速処理などの処理形態に関わらず、色差(色変わり)の発生が抑えられた画像を得ることができるインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】支持体上に無機微粒子及び水溶性金属化合物を含有するインク受容層を有するインクジェット記録媒体に、インクジェット法によりインクを吐出して画像を記録する画像記録工程と、インクジェット記録媒体に記録された少なくとも前記画像を乾燥させる乾燥工程とを有している。インクジェット記録媒体は、支持体上に該支持体側から順に、無機微粒子及び含窒素有機カチオンポリマーを含む第1のインク受容層と、無機微粒子及び水溶性金属化合物を含む第2のインク受容層とを有し、前記第2のインク受容層よりも前記第1のインク受容層における、含窒素有機カチオンポリマーの含有量が多く、かつ前記水溶性金属化合物の含有量が少ない記録媒体が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法により画像の記録を行なうインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録する画像記録方法としては、近年、様々な方法が提案されているが、いずれにおいても画像の品質、風合い、記録後のカールなど、記録物の品位に対する要求は高い。
【0003】
例えば、インクジェット記録方法は、インクを受容する記録層が多孔質構造に構成されたインクジェット記録媒体を用いた方法が実用化されている。その一例として、無機顔料粒子及び水溶性バインダーを含み、高い空隙率を有する記録層が支持体上に設けられたインクジェット記録媒体があり、多孔質構造を有するためにインクの速乾性に優れ、高い光沢を有する等、写真ライクな画像の記録が可能になってきている。
【0004】
インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では、商業印刷分野での応用がなされつつある。例えば、画像を高速に又は一度に多数枚を印画したり、あるいはフォトブックなどの商業用のプリント等として両面に画像を記録する等の用途に対する要求がある。このような用途では、インクを打滴して画像記録するにあたり、高画質で高光沢な画像をより高速で記録できるだけでなく、記録材料としての品質上、記録画像の濃度や色味が安定していることが求められる。
【0005】
ところが、高品質化ないし高性能化が進む状況では、高速処理や多数枚処理等、あるいは両面記録などを行なう場合において、湿度環境や記録後の乾燥状態が画像品質に与える影響を無視できない傾向にある。
【0006】
上記に関連する技術として、支持体をインク受理層とした普通紙タイプのシートにカチオン性樹脂を付着させ、補助乾燥装置として高周波加熱乾燥装置やマイクロ波加熱装置などの誘電加熱方式の装置を用いた高速輪転インクジェットプリンティングシステムで記録する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、画像を記録した後に、加熱処理を行なうことに関する開示がある(例えば、特許文献2〜4参照)。
【特許文献1】特開平9−202042号公報
【特許文献2】特開2004−188704号公報
【特許文献3】特開2005−297535号公報
【特許文献4】特開2006−111016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば、両面処理、あるいは多数枚処理や高速処理などを行なう場合、記録後短時間のうちに積み重ねられて回収されることがあるが、記録後の乾燥が必ずしも充分でないと、紙等が重なった部分と重なっていない部分とで画像に色差(色変わり)が発生しやすい。
【0009】
無機微粒子を含有して多孔構造に形成されたインク受容層を有するインクジェット記録媒体では、インクの打滴により多孔構造の細孔径が小さくなり、乾燥し難くなる傾向がある。そのため、高速処理等で乾燥が不充分になりやすい記録条件下で記録した場合には、画像中あるいは画像間で色変わりが生じ、色合いの安定した画像が得られない課題がある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、例えば両面処理あるいは多数枚処理や高速処理などの処理形態に関わらず、高濃度で色差(色変わり)の発生が抑えられた画像を得ることができるインクジェット記録方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。即ち、本発明は、
<1> 支持体上に無機微粒子及び水溶性金属化合物(好ましくは水溶性アルミニウム化合物)を含有するインク受容層を有するインクジェット記録媒体に、インクジェット法によりインクを吐出して画像を記録する画像記録工程と、インクジェット記録媒体に記録された少なくとも前記画像を乾燥させる乾燥工程と、を有するインクジェット記録方法である。
<2> 前記<1>に記載のインクジェット記録方法において、前記画像記録工程は、支持体上に該支持体側から順に、無機微粒子及び含窒素有機カチオンポリマーを含む第1のインク受容層と、無機微粒子及び水溶性金属化合物を含む第2のインク受容層とを有し、前記第2のインク受容層よりも前記第1のインク受容層における含窒素有機カチオンポリマーの含有量が多くかつ水溶性金属化合物(好ましくは水溶性アルミニウム化合物)の含有量が少ないインクジェット記録媒体に画像を記録する場合が好ましい。
【0012】
<3> 前記乾燥工程は、102mm×152mm(KGサイズ)当たり2kJ(ジュール)以下の熱量を与えて乾燥を行なうことを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載のインクジェット記録方法である。
<4> 前記乾燥工程は、誘電加熱により乾燥を行なうことを特徴とする前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法である。
<5> 前記乾燥工程は、赤外線加熱により乾燥を行なうことを特徴とする前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法である。
【0013】
<6> 前記乾燥工程での誘電加熱は、マイクロ波加熱であることを特徴とする前記<4>に記載のインクジェット記録方法である。
<7> 前記乾燥工程は、前記画像記録工程でのインクの吐出終了から20秒以内に乾燥を開始することを特徴とする前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法である。
<8> 前記インクの最大総吐出量が、10〜36ml/mであることを特徴とする前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法である。
【0014】
<9> 前記インクは、着色剤として染料を含有する染料インクであることを特徴とする前記<1>〜前記<8>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法である。
<10> 前記第2のインク受容層の前記第1のインク受容層に対する含窒素有機カチオンポリマーの含有量比が0〜0.8であり、前記第1のインク受容層の前記第2のインク受容層に対する水溶性アルミニウム化合物の含有量比が0〜0.8であることを特徴とする前記<2>〜前記<9>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法である。
<11> 前記含窒素有機カチオンポリマーが、カチオン性ポリウレタン樹脂の粒子であることを特徴とする前記<2>〜前記<10>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法である。
【0015】
<12> 少なくとも前記第1のインク受容層が硫黄系化合物を更に含み、前記第2のインク受容層よりも前記第1のインク受容層における硫黄系化合物の含有量が多いことを特徴とする前記<2>〜前記<11>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法である。
<13> 前記硫黄系化合物が、チオエーテル系化合物又はスルホキシド系化合物であることを特徴とする前記<12>に記載のインクジェット記録方法である。
<14> 前記第2のインク受容層の前記第1のインク受容層に対する前記硫黄系化合物の含有量比が0〜0.6であることを特徴とする前記<12>又は前記<13>に記載のインクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば両面処理あるいは多数枚処理や高速処理などの処理形態に関わらず、高濃度で色差(色変わり)の発生が抑えられた画像を得ることができるインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のインクジェット記録方法について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット記録媒体にインクジェット法でインクを吐出して画像を記録する画像記録工程と画像を乾燥させる乾燥工程とを少なくとも設けて構成されており、画像記録工程において、支持体上に無機微粒子及び水溶性金属化合物を含有するインク受容層を有するインクジェット記録媒体にインクを吐出して画像を記録し、乾燥工程において、インクジェット記録媒体に記録された少なくとも画像を乾燥させるようにしたものである。
【0018】
一般に無機微粒子を含んで多孔構造を有するインク受容層は、インクの着滴によりその細孔径が小さくなることが推定され、このような場合には乾燥が進行し難くなることが考えられる。したがって、本発明においては、特定の積層構造と成分組成を有するインク受容層を用いて画像を記録し、この場合の画像に対して乾燥を施す構成とすることで、インクが着滴した後の多孔構造の細孔径の縮小を抑えて溶媒が移動しやすい状態を保ち、乾燥が容易に進むことにより、乾燥負荷が軽減され、記録直後からの画像の色変わりを抑制するものと推定される。また、乾燥後短時間のうちに積み重ねても色変わりが抑制されるため、連続記録が容易であり、生産性が向上する。
【0019】
以下、本発明のインクジェット記録方法を構成する各工程について詳述する。
[画像記録工程]
画像記録工程は、支持体上に無機微粒子及び水溶性金属化合物を含有するインク受容層を有するインクジェット記録媒体(以下、「本発明におけるインクジェット記録媒体」ということがある。)にインクジェット法でインクを吐出して画像を記録する。
本工程においては、本発明におけるインクジェット記録媒体として、支持体上に該支持体側から順に、無機微粒子及び含窒素有機カチオンポリマーを含む第1のインク受容層と、無機微粒子及び水溶性金属化合物(好ましくは水溶性アルミニウム化合物)を含む第2のインク受容層とを有し、前記第2のインク受容層よりも前記第1のインク受容層における、含窒素有機カチオンポリマーの含有量が多く、かつ前記水溶性金属化合物の含有量が少ない記録媒体にインクを吐出して画像を記録する場合が好ましい。
【0020】
インクジェット法には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0021】
インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0022】
また、インクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式のほか、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式を適用することができる。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができる。また、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
【0023】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、乾燥負荷の軽減効果が大きく、画像の色変わりを効果的に抑制する点で、0.2〜10pl(ピコリットル)が好ましく、0.4〜5plがより好ましい。
【0024】
また、画像記録時に吐出されるインクの最大総吐出量としては、乾燥負荷の軽減効果が大きく、画像の色変わりを効果的に抑制する点で、10〜36ml/mの範囲が好ましく、15〜30ml/mの範囲が好ましい。
【0025】
ここで、最大総吐出量[ml/m]は、使用する装置における単位面積当たりの各インク吐出量の合計の最大量であり、下記式から求められる。
最大総吐出量=1ドットの最大吐出量[ml/m]×インク総量[%]
〔インク総量:各色インク〔例:Y(イエロー),M(マセ゛ンタ),C(シアン),K(フ゛ラック)〕の各々の吐出設定量(A%)のうち各々のインクの実吐出量(a%)の合計〕
例えば、前記インク総量は、装置におけるYMCK4色のそれぞれの吐出設定量(A%)が100%である場合(4色での設定値は最大400%)、例えばグレー像を記録する際の実吐出量(a%)が例えばY=M=C=K=30%であるときには120%となり、このときの最大総吐出量は、1ドットの最大吐出量を例えば20ml/mとすると20×1.2=24ml/mとなる。
【0026】
〜インクジェット記録媒体〜
次に、本発明におけるインクジェット記録媒体について説明する。
本発明におけるインクジェット記録媒体は、支持体と、該支持体上に設けられた無機微粒子及び水溶性金属化合物を含有するインク受容層とを備えている。本発明におけるインクジェット記録媒体は、このインク受容層以外に更に、他のインク受容層を有して2層以上の積層構造に構成することができる。
【0027】
本発明におけるインクジェット記録媒体としては、支持体と、該支持体側から順に無機微粒子及び含窒素有機カチオンポリマーを含む第1のインク受容層と無機微粒子及び水溶性アルミニウム化合物を含む第2のインク受容層とを有し、第2のインク受容層よりも第1のインク受容層において、含窒素有機カチオンポリマーの含有量が多く、かつ水溶性アルミニウム化合物の含有量が少ない構成を有することが好ましい。
【0028】
この場合、第1のインク受容層と第2のインク受容層とを含む2以上の層が積層されて形成されており、支持体から遠い側の層である第2のインク受容層(以下、「第2の層」ともいう。)よりも支持体から近い側の層である第1のインク受容層(以下、「第1の層」ともいう。)における含窒素有機カチオンポリマーの含有量が多く、かつ第2の層よりも第1の層における水溶性アルミニウム化合物の含有量が少なくなるように構成されている。
第2の層よりも第1の層における含窒素有機カチオンポリマーの含有量が多いように積層されると、高い画像濃度と耐オゾン性が得られる。また、第2の層よりも第1の層における水溶性アルミニウム化合物の含有量が少ないように積層されると、ひび割れが発生する等が回避されて面状が良好になり、さらに耐オゾン性が向上する。
【0029】
本発明において、インク受容層中の含窒素有機カチオンポリマーの存在分布は、元素分析により確認することができる。具体的には、SEM−EDX法によるマッピング分析を行ない、得られた画像を観察すればよい。この場合、インク受容層の主成分(例えばSi元素)のマッピング分析によりインク受容層全体の存在位置を確認し、続けてN元素のマッピング分析を行い、インク受容層の支持体から遠い側の第2のインク受容層と支持体から近い側の第1のインク受容層におけるN元素の量のいずれが多いかをマッピング画像により判定する。
また、インク受容層中の水溶性アルミニウム化合物の存在分布も、同様にして確認することができる。
【0030】
本発明においては、インク受容層中の含窒素有機カチオンポリマーの含有量比〔第2のインク受容層における含有量/第1のインク受容層における含有量〕が、1.0未満であることが好ましい。前記含有量比は、記録直後からの色変わり、色濃度、及び耐オゾン性の観点からは、0〜0.8が好ましく、0〜0.4がより好ましい。
含窒素有機カチオンポリマーを上記含有量比で含有するインク受容層は、例えば、後述のインクジェット記録媒体の製造方法における含窒素有機カチオンポリマーの含有量比〔第2の塗布液中における含有量/第1の塗布液中における含有量〕を後述のとおりに構成することで形成することができる。
【0031】
また、色濃度及び耐オゾンの観点からは、第1の層における含窒素有機カチオンポリマーの含有率としては、第1の層の全固形分に対して、2〜25質量%が好ましく、4〜20質量%がより好ましく、6〜18質量%が特に好ましい。また、色濃度及び耐オゾンの観点から、第2の層における含窒素有機カチオンポリマーの含有率としては、第2の層の全固形分に対して、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、4〜12質量%が特に好ましい。さらに、色濃度及び耐オゾンの観点からは、前記第1の層と前記第2の層とを含むインク受容層全体における、含窒素有機カチオンポリマーの含有量としては、インク受容層全体の全固形分に対し、1〜15質量%が好ましく、1.5〜12質量%がより好ましく、2〜10質量%が特に好ましい。
【0032】
なお、本発明において、インク受容層の全固形分とは、インク受容層を構成する組成物から水を除いた全成分をさす。
また、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、第2の層における含窒素有機カチオンポリマー/無機微粒子の比率よりも、第1の層における含窒素有機カチオンポリマー/無機微粒子の比率が大きいことが好ましい。
【0033】
本発明においては、インク受容層中の水溶性アルミニウム化合物の含有量比〔第1のインク受容層における含有量/第2のインク受容層における含有量〕が、1.0未満であることが好ましい。本発明の効果をより効果的に得る観点からは、前記含有量比は0〜0.8が好ましく、0〜0.4がより好ましい。
水溶性アルミニウム化合物を上記含有量比で含有するインク受容層は、例えば、後述の本発明のインクジェット記録媒体の製造方法において、水溶性アルミニウム化合物の含有量比〔第1の塗布液中における含有量/第2の塗布液中における含有量〕を後述のとおりに構成することで形成することができる。
【0034】
また、ひび割れの発生が防止されて面状が良好で耐オゾンもより良好になる点で、第2の層中の水溶性アルミニウム化合物の含有率は、第2の層の全固形分に対し、2〜25質量%が好ましく、4〜20質量%がより好ましく、6〜18質量%が特に好ましい。また、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、インク受容層の第1の層における水溶性アルミニウム化合物の含有率としては、第1の層の全固形分に対し、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、4〜12質量%が特に好ましい。
さらに、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、前記第1の層と前記第2の層とを含むインク受容層全体における、水溶性アルミニウム化合物の含有量としては、インク受容層全体の全固形分に対し、1〜15質量%が好ましく、1.5〜12質量%がより好ましく、2〜10質量%が特に好ましい。
【0035】
また、インク受容層の光沢度向上の観点等からは、支持体上に設けられたインク受容層のうち、支持体から最も離れた最上層がコロイダルシリカを含有する形態が好ましい。以下、コロイダルシリカを含有する最上層を「コロイダルシリカ層」ともいう。
【0036】
上記インク受容層の層厚としては、液滴を全て吸収するだけの吸収容量を得る観点から、層中の空隙率との関連で決定することが好ましい。例えば、インク量が8nL/mmで、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。この点を考慮すると、インク受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。
また、本発明における第1の層及び第2の層の層厚は、それぞれ5〜25μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。前記コロイダルシリカ層の層厚は、インク吸収性及び光沢の観点から、0.05〜5μmが好ましく、0.1〜3μmがより好ましい。
【0037】
また、インク受容層の多孔構造の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
空隙率及び細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製の商品名「ポアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
【0038】
インク受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、インク受容層を透明フィルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0039】
以下、本発明におけるインク受容層を構成する各成分について説明する。
(無機微粒子)
本発明におけるインク受容層(第1のインク受容層及び第2のインク受容層を含む。)は、無機微粒子の少なくとも1種を含有する。無機微粒子は、インク受容層を形成する際に多孔構造を形成し、インクの吸収性能を向上させる役割を有する。
【0040】
無機微粒子のインク受容層中における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、より良好な多孔構造を形成することが可能であり、充分なインク吸収性を有するインクジェット記録媒体が得られる。
ここで、微粒子のインク受容層中における固形分含有量とは、インク受容層を構成する成分中の水を除く成分に基づいて算出される量である。
【0041】
無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも、良好な多孔構造を形成する観点から、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子又は擬ベーマイトが好ましい。
無機微粒子は、1次粒子のまま用いても又は2次粒子を形成した状態で用いてもよい。
無機微粒子の平均粒径としては、平均一次粒径で2μm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。更には、平均一次粒径が30nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、又は平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがより好ましく、特にシリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましい。
【0042】
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって合成されたシリカ(無水シリカ微粒子)を意味する。本発明に用いるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0043】
気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmで多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0044】
気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行なえばインク受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。インク受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用媒体に適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0045】
気相法シリカの平均一次粒子径としては、30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。前記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0046】
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0047】
前記無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。このうち、アルミナ水和物は、インクを良く吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al・nHO)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0048】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0ml/gが好ましく、0.5〜1.5ml/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が、その比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0049】
上述の微粒子をインクジェット記録媒体に用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0050】
無機微粒子のインク受容層中における含有量としては、インク受容層の全固形分に対し、50〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
【0051】
(水溶性金属化合物)
本発明におけるインク受容層(支持体側から第1及び第2のインク受容層を有する場合の少なくとも第2のインク受容層)は、水溶性金属化合物の少なくとも1種を含有する。
水溶性金属化合物としては、例えば、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。
【0052】
上記の水溶性多価金属化合物の中でも、3価以上の金属化合物が好ましく、アルミニウム化合物、又は周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましく、アルミニウム化合物はより好ましい。特に好ましくは、水溶性アルミニウム化合物である。
本発明においては、支持体側から順に第1のインク受容層及び第2のインク受容層を少なくとも有する場合の第2のインク受容層に水溶性アルミニウム化合物の少なくとも1種を含有する形態が好ましい。この場合、水溶性アルミニウム化合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、第1のインク受容層に含有されていてもよい。
【0053】
前記水溶性アルミニウム化合物としては、例えば、塩化アルミニウム又はその水和物(例:塩化アルミニウム六水和物)、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性チオグリコール酸アルミニウム等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物(以下、「塩基性ポリ塩化アルミニウム」、「ポリ塩化アルミニウム」ともいう。)が知られており、好ましく用いられる。
【0054】
塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式a、b又はcで表され、例えば、[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等の、塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含む水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al(OH)Cl6−n ・・・一般式a
[Al(OH)AlCl ・・・一般式b
Al(OH)Cl(3n−m) 〔0<m<3n〕 ・・・一般式c
【0055】
これらは、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名称で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名称で、また、(株)理研グリーンよりHAP−25の名称で、大明化学(株)よりアルファイン83の名称で、さらに他のメーカーからも同様の目的で上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
【0056】
また、アルミニウム化合物以外の水溶性金属化合物の具体例としては、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酪酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウム、ナフトレゾルシンカルボン酸バリウム、酪酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、酪酸銅(II)、シュウ酸銅、フタル酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、ナフテン銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、スルファミン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、クエン酸鉄(III)、乳酸鉄(III)三水和物、三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、四塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、フェノールスルホン酸亜鉛、酢酸亜鉛アンモニウム、亜鉛アンモニウムカーボネート、が挙げられる。
これらの水溶性多価金属化合物は2種以上を併用してもよい。本発明において、水溶性多価金属化合物における水溶性とは、20℃の水に1重量%以上溶解することを意味する。
【0057】
前記周期表4A族元素を含む水溶性多価金属化合物としては、チタン又はジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性多価金属化合物としては、塩化チタン、硫酸チタン、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、が挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性多価金属化合物としては、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、乳酸ジルコニル、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、炭酸ジルコニル・アンモニウム、炭酸ジルコニル・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、硫酸ジルコニル、フッ化ジルコニル等が挙げられる。
【0058】
水溶性金属化合物(好ましくは水溶性アルミニウム化合物)のインク受容層(支持体側から第1及び第2のインク受容層を有する場合の少なくとも第2のインク受容層)中における含有量としては、耐オゾン性の点で、無機微粒子に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましい。
【0059】
(含窒素有機カチオンポリマー)
本発明におけるインク受容層は、含窒素有機カチオンポリマーを含有することが好ましく、特にインク受容層を2層以上の積層構造に構成する場合、前記第1のインク受容層は、含窒素有機カチオンポリマーを少なくとも1種含有する。含窒素有機カチオンポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、前記第2のインク受容層に含有されていてもよい。含窒素有機カチオンポリマーを含むことにより、記録画像の滲みを抑制し、シリカを分散させることができる。
【0060】
含窒素有機カチオンポリマーは、特に限定はないが、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好適である。含窒素有機カチオンポリマーとしては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(含窒素有機カチオンモノマー)の単独重合体である含窒素有機カチオンポリマー、前記含窒素有機カチオンモノマーと他の単量体との共重合体又は縮重合体として得られる含窒素有機カチオンポリマー、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体、アクリル酸及びメタクリル酸の重合体又は共重合体等のアクリル系重合体;スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系重合体;エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体;ウレタン結合を有するウレタン系ポリマー等に、カチオン基を含む化合物を用いてカチオン化修飾して得られる含窒素有機カチオンポリマー等を挙げることができる。
【0061】
前記含窒素有機カチオンモノマーとしては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0062】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0063】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイドもしくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩もしくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0064】
具体的な化合物としては、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0065】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの重合単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
【0066】
前記含窒素有機カチオンモノマーと共重合(又は縮重合)させることができる前記他の単量体としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェット用インク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さい単量体が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0067】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。前記他の単量体も、1種単独で又は2種以上を組合せて使用できる
【0068】
また、ウレタン系ポリマーを構成するモノマーとしては、2以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、1,4−シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、1,5−ジイソシアネート−2−メチルペンタン、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等)と、イソシアネート基と反応してウレタン結合を形成し得る化合物(例えば、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、トリエタノールアミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノールA、ハイドロキノン等のポリオール化合物;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタレン酸、ビフェニルカルボン酸、ソルビトール、蔗糖、アコニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸、1,2,3−プロパントリチオール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、イソホロンジアミン等の如きジアミン類;及びヒドラジン等)が挙げられる。
【0069】
さらに、カチオン性基を有さない共重合体又は縮合体に、カチオン性基を導入する化合物としては、アルキルハライド、メチル硫酸等が挙げられる。
【0070】
上述した含窒素有機カチオンポリマーの中でも、滲み抑制の観点からは、カチオン性ポリウレタン、特開2004−167784号公報等に記載のカチオン性ポリアクリレートが好ましく、カチオン性ポリウレタンがより好ましい。
カチオン性ポリウレタンの市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス650」「F−8564D」「F−8570D」、日華化学(株)製、「ネオフィックスIJ−150」などを挙げることができる。
【0071】
また、無機微粒子分散の観点からは、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド誘導体が好ましく、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドがより好ましい。
市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製の「シャロールDC902P」を挙げることができる。
【0072】
また、これらの含窒素有機カチオンポリマーは、水溶性ポリマー、水分散性ラテックス粒子、水性エマルションのいずれの形態でも使用できる。
前記水性エマルションとしては、共役ジエン系共重合体エマルション;アクリル系重合体エマルション;スチレン−アクリル系重合体エマルション;ビニル系重合体エマルション;ウレタン系エマルション等の樹脂粒子にカチオン基を有する化合物を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にてエマルション粒子表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合しエマルション粒子表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの等が挙げられる。
これらのカチオン性エマルションの中でも、主成分がウレタン系エマルション(ウレタン系樹脂粒子)であるカチオン性ポリウレタンエマルション(カチオン性ポリウレタン樹脂微粒子)が好ましい。
【0073】
インク受容層(好ましくは、支持体側から第1のインク受容層及び第2のインク受容層を有する場合の第1のインク受容層)に含まれる含窒素有機カチオンポリマーは、滲み抑制の観点から、カチオン性ポリウレタンが好ましく、カチオン性ポリウレタン粒子(具体的には、カチオン性ポリウレタンエマルション)がより好ましい。
【0074】
含窒素有機カチオンポリマーのインク受容層(好ましくは、支持体側から第1のインク受容層及び第2のインク受容層を有する場合の第1のインク受容層)中における含有量としては、インク受容層の全固形分に対し、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、4〜12質量%が特に好ましい。
【0075】
(水溶性樹脂)
本発明におけるインク受容層は、水溶性樹脂の少なくとも1種を含有することが好ましい。
水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0076】
上記の中でも、水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂が好ましい。
該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号、特開昭58−181687号、特開平10−259213号、特開2001−72711号、特開2002−103805号、特開2000−63427号、特開2002−308928号、特開2001−205919号、特開2002−264489号等に記載されたものなどが挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11-165461号公報の[0011]〜[0012]に記載の化合物、特開2001−205919号公報、特開2002−264489号公報に記載の化合物なども挙げられる。
【0077】
水溶性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。水溶性樹脂の含有量としては、インク受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
【0078】
インク受容層を主として構成する水溶性樹脂と無機微粒子とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。
なお、透明性を保持する観点からは、無機微粒子特にシリカ微粒子に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。前記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0079】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造のインク受容層を形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0080】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0081】
〜 無機微粒子と水溶性樹脂との含有比 〜
無機微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x:y)〕を最適化することで、インク受容層の膜構造及び膜強度を、さらに向上させることが可能である。
インク受容層中におけるPB比(x:y)としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
特に、インク受容層の上側半分のx/y比が、下側半分のx/y比以上(上側半分と下側半分でPB比が等しいか、又は下側半分の方がバインダーリッチ)であることが好ましく、上側半分と下側半分のPB比が等しいことが特に好ましい。
【0082】
インクジェットプリンタの搬送系を通過する場合、記録媒体に応力が加わることがあるので、インク受容層は充分な膜強度を有していることが望ましい。また、シート状に裁断加工する場合、インク受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、インク受容層は充分な膜強度を有していることが望ましい。これらを考慮すると、前記質量比(x:y)としては5:1以下がより好ましく、一方、インクジェットプリンタで高速インク吸収性を確保する観点からは、2:1以上であることがより好ましい。
【0083】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x:y)2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0084】
(硫黄系化合物)
本発明におけるインク受容層は、色濃度を高め、耐オゾン性をより向上させる観点から、硫黄系化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
硫黄系化合物としては、チオエーテル系化合物、チオウレア系化合物、ジスルフィド系化合物、スルフィン酸系化合物、チオシアン酸系化合物、硫黄含有複素環式化合物、及びスルホキシド系化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0085】
〜 チオエーテル系化合物 〜
チオエーテル系化合物は、水溶性の化合物でも油溶性の化合物でもよい。また、低分子でも高分子でもよく、分子中に、チオエーテル基を1個以上含むものであればよい。
チオエーテル系化合物は炭素原子数が2以上のものが好ましく、4以上のものが更に好ましい。
チオエーテル系化合物は、硫黄原子、炭素原子、水素原子の他に、更に孤立電子対を含む原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子)を含むことが好ましい。
チオエーテル系化合物としては、例えば、次の一般式(1)で表されるものが挙げられる。
−(S−R−S−R ・・・一般式(1)
【0086】
前記一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基又はそれらを含む基を表し、RとRは同一でも異なっていてもよく、結合して環を形成してもよい。ただしRとRの少なくとも一方は、ヒドロキシ基、スルホ基、カルボキシ基、(ポリ)エチレンオキシ基等の親水性基あるいはアミノ基、アミド基、アンモニウム基、含窒素ヘテロ環基、アミノカルボニル基、アミノスルホニル基等の塩基性窒素原子を有する基で置換されたアルキル基又はそれを含む基(たとえばこの置換アルキル基はさらにカルバモイル基、カルボニル基、カルボニルオキシ基等の2価の連結基を介してチオエーテルの硫黄原子に結合していてもよい)である。Rは、置換されていてもよいアルキレン基を表し、場合によっては酸素原子を有するアルキレン基を表す。mは0〜10の整数を表し、mが1以上の場合Rに結合する少なくとも1つの硫黄原子はスルホキシド基、スルホニル基であってもよい。また、R及びRはそれぞれポリマーの残基であってもよい。
【0087】
一般式(1)の特に好ましい化合物は、R及びRの少なくとも一方がヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アンモニウム基で置換されたアルキル基を有する化合物である。また、アミノ基置換アルキル基のアミノ基としては、アミノ基、モノアルキル(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)置換アミノ基、ジアルキル(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)置換アミノ基を含み、更に含窒素ヘテロ環基であることができる。
以下、一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げる。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0088】
【化1】



【0089】
【化2】



【0090】
【化3】



【0091】
【化4】



【0092】
【化5】

【0093】
〜 チオウレア系化合物 〜
チオウレア系化合物としては、水溶性の化合物でも油溶性の化合物でもよい。また、低分子でも高分子でもよく、「>N−C(=S)−N<」で表される構造を分子中に1個以上有する化合物が挙げられる。
【0094】
このようなチオウレア系化合物としては、チオウレア、N−メチルチオウレア、N−アセチルチオウレア、1,3−ジフェニルチオウレア、テトラメチルチオウレア、グアニルチオウレア、4−メチルチオセミカルバジド、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−2(3H)ベンズイミダゾールチオン、6−ヒドロキシ−1−フェニル−3,4−ジヒドロピリミジン−2(1H)−チオン、1−アリル−2−チオウレア、1,3−ジメチル−2−チオウレア、1,3−ジエチル−2−チオウレア、エチレンチオウレア、トリメチルチオウレア、1−カルボキシメチル−2−チオヒダントイン、チオセミカルバジド等が挙げられる。
【0095】
〜 ジスルフィド系化合物 〜
ジスルフィド系化合物としては、水溶性の化合物でも油溶性の化合物でもよい。また、低分子でも高分子でもよく、例えば次の一般式(2)で表される化合物が好ましく、特にDL−α−リポ酸、4,4’−ジチオジモルフォリン、4,4’−ジチオジブタン酸が好ましい。
−S−S−R ・・・一般式(2)
【0096】
一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、ジスルフィドの硫黄原子に結合している炭素原子又は窒素原子を含む有機基である。この有機基は、ジスルフィドの硫黄原子に結合している炭素原子又は窒素原子と共に置換もしくは未置換の脂肪族基、置換もしくは未置換の芳香族基、あるいは置換もしくは未置換の複素環基を形成したものであっても、ジスルフィドの硫黄原子に結合している炭素原子又は窒素原子に置換もしくは未置換の脂肪族基、芳香族基、複素環基又はアミノ基、ならびにイミノ基、酸素原子、黄原子等が結合した有機基であってもよい。また、RとRとは、同一でも異なっていてもよく、結合して環を形成してもよい。また、RとRとの上記した置換基は、アルキル基、アリール基、複素環基、アミノ基、アミド基、イミノ基、アンモニウム基、ヒドロキシ基、スルホ基、カルボキシ基、アミノカルボニル基又はアミノスルホニル基、ハロゲン原子等の置換基である。
【0097】
〜 スルフィン酸系化合物 〜
スルフィン酸系化合物は、水溶性の化合物でも油溶性の化合物でもよい。また、低分子でも高分子でもよく、分子内にスルフィン酸骨格を1個以上含むものであればよい。
本発明に用いられるスルフィン酸系化合物としては、次の一般式(3)で表される化合物が好ましい。
R−SOM ・・・一般式(3)
【0098】
一般式(3)において、Rは置換又は無置換のアルキル基(好ましくは炭素数6〜30)、置換又は無置換のアリール基(フェニル基、ナフチル基等で、好ましくは炭素数6〜30)、ポリマー残基を表す。Mは、水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウムを表す。
【0099】
上記のRで表される基の置換基としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、アラルキル基(好ましくは単環又は2環で、アルキル部分の炭素数が1〜3)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20)、1もしくは2置換アミノ基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、アシル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基であり、2置換の場合には置換基中の炭素数の総数は20以下であるもの)、1〜3置換又は無置換のウレイド基(好ましくは炭素数1〜20)、置換又は無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜29の単環もしくは2環のもの)、置換又は無置換のアリールチオ基(好ましくは炭素数6〜29)、置換又は無置換のアルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜29)、置換又は無置換のアルキルスルホキシ基(好ましくは炭素数1〜29)、置換又は無置換のアリールスルホキシ基(好ましくは炭素数6〜29で単環もしくは2環のもの)、置換又は無置換のアルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜29)、置換又は無置換のアリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜29で単環もしくは2環のもの)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜29で単環もしくは2環のもの)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜29)、スルファモイル基(好ましくは炭素数1〜29)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、沃素)、スルホン酸基、又はカルボン酸基などが挙げられる。
【0100】
これらの置換基は更に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。これらの基は互いに連結して環を形成していてもよい。またこれらの基はホモポリマー又はコポリマー鎖の一部となっていてもよい。
スルフィン酸系化合物の具体例を次に示す。
【0101】
【化6】



【0102】
〜 チオシアン酸系化合物 〜
チオシアン酸系化合物としては、チオシアン酸メチル、チオシアン酸エチル、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸カルシウム等が挙げられる。
【0103】
〜 硫黄含有複素環式化合物 〜
硫黄含有複素環式化合物としては、複素環を構成する原子の一つとして硫黄原子を含む化合物、複素環置換メルカプト化合物及び複素環置換メルカプト化合物のメルカプト基がアルキル基、アリール基、アシル基、スルホニル基などで置換された化合物が挙げられ、この内、次の一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0104】
一般式(4)
【化7】



【0105】
一般式(4)において、Xは5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。該非金属原子群は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。
Mは、水素原子、アンモニウムイオン、又は金属原子を表す。また、Xを含んで構成される5〜7員環を含む基は他の構成要素と縮合して縮合環を形成していてもよい。
【0106】
前記複素環置換メルカプト化合物の具体例としては、特開2000−94829号公報の段落[0027]〜[0032]に記載の化合物(1−1〜1−32)などが挙げられる。
【0107】
〜 スルホキシド系化合物 〜
スルホキシド系化合物は、水溶性の化合物でも油溶性の化合物でもよい。また、低分子でも高分子でもよく、分子中にスルホキシド基を1個以上含むものであればよい。
スルホキシド系化合物は、炭素原子数が2以上のものが好ましく、4以上のものが更に好ましい。
スルホキシド系化合物は、スルホキシド基、炭素原子、水素原子の他に、更に、孤立電子対を含む原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子)を含むことが好ましい。
具体的な化合物を以下に示す。
【0108】
【化8】



【0109】
【化9】



【0110】
【化10】



【0111】
【化11】



【0112】
【化12】



【0113】
【化13】



【0114】
【化14】

【0115】
【化15】



【0116】
【化16】



【0117】
【化17】



【0118】
【化18】



【0119】
【化19】



【0120】
【化20】



【0121】
更に、本発明で用いられる硫黄含有化合物としては、スルホン系化合物、スルホンアミド系化合物、チオエステル系化合物、チオアミド系化合物、スルホン酸系化合物、チオスルホン酸系化合物、チオスルフィン酸系化合物、スルファミン系化合物、チオカルバミン酸系化合物、亜硫酸系化合物等が挙げられる。
【0122】
以上で説明した硫黄系化合物の中でも、耐オゾン性及び画像濃度の点で、チオエーテル系化合物又はスルホキシド系化合物が好ましい。
【0123】
このとき、インク受容層中に硫黄系化合物を含有させる形態には特に限定はないが、記録された画像の濃度をより高く保つ観点からは、支持体側から第1のインク受容層及び第2のインク受容層を有する場合において、硫黄系化合物がインク受容層中の第2の層よりも第1の層に多く含まれるように含有させる形態が好ましい。
すなわち、インク受容層中の硫黄系化合物の含有量比〔第2の層における含有量/第1の層における含有量〕が、1.0未満であることが好ましく、0〜0.6がより好ましく、0(すなわち、第2の層が硫黄系化合物を含まない形態)が特に好ましい。さらに好ましくは、画像濃度及び耐オゾン性の点で、硫黄系化合物の含有量比〔第2の層における含有量/第1の層における含有量〕が0〜0.6であって、含窒素有機カチオンポリマーの含有量比〔第2の層における含有量/第1の層における含有量〕が0〜0.8である。
【0124】
さらに本発明においては、画像濃度及び滲みの点で、インク受容層中の硫黄系化合物がチオエーテル系化合物又はスルホキシド系化合物であって、含窒素有機カチオンポリマーがカチオン性ウレタン及び4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
より好ましくは、上記同様の理由から、インク受容層中の硫黄系化合物がチオエーテル系化合物又はスルホキシド系化合物であって、支持体側から第1のインク受容層及び第2のインク受容層を有する場合において硫黄系化合物の含有量比〔第2の層における含有量/第1の層における含有量〕が0〜0.6であって、含窒素有機カチオンポリマーがカチオン性ウレタン及び4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーから選ばれる少なくとも1種であって、含窒素有機カチオンポリマーの含有量比〔第2の層における含有量/第1の層における含有量〕が0〜0.8である。
【0125】
本発明において、インク受容層の硫黄系化合物の存在分布は、元素分析により確認することができる。具体的には、SEM−EDX法によるマッピング分析を行い、得られた画像を観察すればよい。この場合、インク受容層の主成分(例えばSi元素)のマッピング分析によりインク受容層全体の存在位置を確認し、続けてS元素のマッピング分析を行い、インク受容層中の第1の層と第2の層におけるS元素の量のどちらが多いかをマッピング画像により判定する。
【0126】
また、耐オゾン性をより向上させる観点及び画像の濃度をより高く保つ観点からは、支持体側から第1の層及び第2の層を有する場合の第1の層における硫黄系化合物の含有量が、該第1の層の全固形分に対して1〜20質量%であるのが好ましく、3〜15質量%であるのがより好ましく、4〜10質量%であるのが特に好ましい。
一方、記録された画像の濃度をより高く保つ観点からは、支持体側から第1の層及び第2の層を有する場合の第2の層における硫黄系化合物の含有量が、該第2の層の全固形分に対して0〜5質量%であるのが好ましく、0〜3質量%であるのがより好ましく、0質量%(すなわち、第2の層に硫黄系化合物が含まれない形態)であるのが特に好ましい。
さらに、耐オゾン性をより向上させる観点及び画像の濃度をより高く保つ観点からは、支持体側から第1の層及び第2の層を有する場合の第2の層と第1の層とを合わせたインク受容層全体における、硫黄系化合物の含有量としては、インク受容層全体の全固形分に対し、0.5〜5質量%が好ましく、1〜4質量%がより好ましく、1.5〜3質量%が特に好ましい。
【0127】
(マグネシウム塩)
本発明におけるインク受容層は、耐オゾン性をより向上させる観点からは、マグネシウム塩を少なくとも1種含有することが好ましい。
マグネシウム塩としては、酢酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物が挙げられる。
中でも、塩化マグネシウム六水和物が好ましい。
【0128】
前記マグネシウム塩の市販品としては、例えば、ナイカイ塩業株式会社製の「ホワイトにがりNS」、「塩化マグ(特号)NS」が挙げられる。
【0129】
また、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、インク受容層中における、前記マグネシウム塩の含有量としては、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましく、0.2〜2質量%が特に好ましい。
【0130】
(コロイダルシリカ)
本発明におけるインクジェット記録媒体が最上層としてコロイダルシリカ層を有する場合、用いるコロイダルシリカの平均一次粒径は、10nm〜200nmが好ましく、50nm〜150nmがより好ましい。また、コロイダルシリカは、アニオン性、ノニオン性が好ましい。特にアニオン性が好ましい。含有量としては、0.01g/m〜5g/mが好ましい。特に0.05g/m〜2g/mが好ましい。
【0131】
(架橋剤)
インク受容層は、既述の水溶性樹脂を架橋する観点から、架橋剤を少なくとも1種含有することが好ましい。インク受容層は、特に無機微粒子と水溶性樹脂とを併用し、更にこの架橋剤と水溶性樹脂との架橋反応によって硬化された多孔質層である態様が好ましい。
【0132】
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールの架橋には、ホウ素化合物が好ましい。 該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO)、Co(BO)、二硼酸塩(例えば、Mg、Co)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO)、NaBO、KBO)、四硼酸塩(例えば、Na・10HO)、五硼酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0133】
水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N'−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N'−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等を用いることができる。
上記の架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
架橋剤の使用量は、水溶性樹脂に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0134】
(その他の成分)
本発明におけるインク受容層は、上記含窒素有機カチオンポリマー、マグネシウム塩、及び水溶性多価金属塩以外の他の媒染剤や、各種界面活性剤等、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、特開2005−14593号公報中の段落番号0088〜0117に記載されている成分や、特開2006−321176号公報中の段落番号0138〜0155に記載されている成分等を、適宜選択して用いることができる。
【0135】
<支持体>
支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。インク受容層の透明性を生かす上では、透明支持体又は高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
【0136】
透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
【0137】
高光沢性の不透明支持体としては、インク受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0138】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、上記各種紙支持体、上記透明支持体もしくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有もしくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0139】
不透明支持体の厚みについても、特に制限はないが、取扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0140】
また、支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0141】
次に、前記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上70質量%以下が好ましい。
【0142】
パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0143】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0144】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0145】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0146】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0147】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0148】
特に、インク受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上にインク受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0149】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0150】
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0151】
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0152】
<その他>
本発明のインクジェット記録媒体は、インク受容層に加えて、さらにインク溶媒吸収層、中間層、保護層等を有していてもよい。また、支持体上には、前記インク受容層と支持体との間の接着性を高め、電気抵抗値を適切に調整する等の目的で、下塗層を設けてもよい。
【0153】
本発明のインクジェット記録媒体の構成層(例えば、インク受容層あるいはバックコート層など)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、特開平10−228076号の各公報に記載がある。尚、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、前記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止することができる。
【0154】
前記インク受容層は、支持体の片面のみに設けるほか、支持体の両面に設けることができる。
OHP等で用いる場合であって、前記インク受容層を支持体の片面のみに設ける場合は、その反対側の表面、あるいはその両面に、光透過性を高める目的で反射防止膜を設けることもできる。
【0155】
また、前記インク受容層が設けられる側の支持体の表面に、硼酸又は硼素化合物を塗工し、その上に第1のインク受容層及び第2のインク受容層を順次形成することにより、インク受容層の光沢度や表面平滑性を確保し、かつ高温高湿環境下における印画後の画像の経時滲みを抑制することもできる。
【0156】
本発明におけるインクジェット記録媒体は、無機微粒子及び水溶性金属化合物を含有する塗布液を塗布して塗布層を形成する工程を設けることにより作製することができる。
また、インク受容層として、支持体側から順に第1のインク受容層及び第2のインク受容層を有する場合は、下記第1又は第2の形態の方法により作製することができる。
〜第1の形態〜
インクジェット記録媒体の製造方法の第1の形態は、支持体上に該支持体側から順に、少なくとも、無機微粒子と含窒素有機カチオンポリマーとを含有する第1の塗布液と、無機微粒子と水溶性アルミニウム化合物とを含有する第2の塗布液と、を重層塗布して塗布層を形成する工程と、形成された塗布層に、(1)少なくとも前記第1の塗布液及び前記第2の塗布液を塗布すると同時、(2)少なくとも前記第1の塗布液と前記第2の塗布液とを塗布して形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、塩基性化合物を含む液を付与し、前記塗布層の架橋硬化を行なう工程と、を有し、前記塗布層が架橋硬化されてなり、含窒素有機カチオンポリマーを支持体から遠い側の第2のインク受容層よりも支持体に近い側の第1のインク受容層に多く含み、水溶性アルミニウム化合物を支持体に近い側の第1のインク受容層よりも支持体から遠い側の第2のインク受容層に多く含むように構成された2層以上の積層構造のインク受容層を形成する形態である。
【0157】
〜第2の形態〜
インクジェット記録媒体の製造方法の第2の形態は、支持体上に該支持体側から順に、少なくとも、無機微粒子及び含窒素有機カチオンポリマーを含有する第1の塗布液と、無機微粒子及び水溶性アルミニウム化合物を含有する第2の塗布液と、を重層塗布して塗布層を形成する工程と、形成された塗布層を、前記塗布時の第1の塗布液の温度及び前記塗布時の第2の塗布液の温度のいずれか低い方に対し5℃以上低下するように冷却する工程と、冷却された塗布層を乾燥させる工程と、を有し、含窒素有機カチオンポリマーを支持体から遠い側の第2のインク受容層よりも支持体に近い側の第1のインク受容層に多く含み、水溶性アルミニウム化合物を支持体に近い側の第1のインク受容層よりも支持体から遠い側の第2のインク受容層に多く含むように構成された2層以上の積層構造のインク受容層を形成する形態である。
【0158】
本発明のインクジェット記録媒体を前記第1の形態又は前記第2の形態のように作製することにより、含窒素有機カチオンポリマーが支持体から遠い側の第2のインク受容層よりも支持体に近い側の第1のインク受容層に多く含まれるように形成することができる。これより、記録直後から生じる色変わりを防止すると共に、記録画像の経時滲みを抑制しつつ、高い画像濃度を保つことができる。また、耐オゾン性にも優れ、さらに面状が良好になる。
【0159】
第1の形態及び第2の形態では、支持体上に該支持体側から順に、少なくとも、無機微粒子及び含窒素有機カチオンポリマーを含有する第1の塗布液と、無機微粒子及び水溶性アルミニウム化合物を含有する第2の塗布液と、を(好ましくは塗布液温度35℃以上45℃以下で)重層塗布して塗布層を形成する工程(以下、「塗布層形成工程」ということがある)を設けて構成される。
塗布層形成工程においては、更に必要に応じて、第2の塗布液上にその他の塗布液を塗布してもよい。また、各塗布液の間には、バリアー層塗布液(中間層塗布液)を介在させてもよい。
【0160】
第1の塗布液及び第2の塗布液(さらに必要に応じてその他の塗布液)を塗布する形態としては、特に限定はなく、各液を公知の方法により同時重層塗布して塗布層を形成してもよいし、各液を公知の方法により1液ずつ塗布(逐次塗布)して塗布層を形成してもよい。
同時重層塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーター等、公知の塗布装置を用いて行なうことができる。
逐次塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布装置を用いて行うことができる。
【0161】
ここで、各塗布液の好ましい塗布量について説明する。
第1の塗布液の湿分塗布量としては、50〜200ml/mが好ましく、75〜150ml/mがより好ましい。また、第1の塗布液の固形分塗布量としては、5〜25g/mが好ましく、10〜18g/mがより好ましい。
第2の塗布液の湿分塗布量としては、50〜200ml/mが好ましく、75〜150ml/mがより好ましい。また、第2の塗布液の固形分塗布量としては、5〜25g/mが好ましく、10〜18g/mがより好ましい。
その他の塗布液として、例えば、コロイダルシリカを含有する塗布液を用いる場合、該塗布の湿分塗布量としては、10〜150ml/mが好ましく、20〜100 ml/mがより好ましい。また、該塗布液の固形分塗布量としては、0.01〜10g/mが好ましく、0.05〜5g/mがより好ましい。
【0162】
以下、第1の塗布液、第2の塗布液、及び必要に応じて用いられるその他の塗布液について説明する。
(第1の塗布液)
第1の塗布液は、無機微粒子の少なくとも1種と含窒素有機カチオンポリマーの少なくとも1種とを含有する。第1の塗布液の無機微粒子の詳細については、インク受容層中の無機微粒子として既述した通りである。また、第1の塗布液中の無機微粒子の含有率としては、特に制限はなく、第1の塗布液の全固形分に対して50〜90質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。
なお、本発明において、第1の塗布液中の全固形分とは、第1の塗布液から水を除いた全成分をさす。他の液についても同様である。
【0163】
第1の塗布液が含有する含窒素有機カチオンポリマーとしては、滲み発生抑制の観点から、カチオン性ポリウレタン、4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、カチオン性ポリウレタンであることがより好ましい。また、含窒素有機カチオンポリマーは、水性エマルションの形態で第1の塗布液に含まれることが好ましく、カチオン性ポリウレタンの水性エマルションの形態で第1の塗布液に含まれることがより好ましい。
【0164】
また、第1の塗布液は、無機微粒子の分散性の観点から、カチオン性ポリウレタン以外の含窒素有機カチオンポリマーを更に含有することが好ましく、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド誘導体から選ばれる少なくとも1種を更に含有することがより好ましく、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを更に含有することがさらに好ましい。
【0165】
第1の塗布液中における含窒素有機カチオンポリマーの含有量としては、第1の塗布液の全固形分に対し、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、4〜12質量%が特に好ましい。
【0166】
前記第1の塗布液は、耐オゾン性をより向上させる観点から、更に、硫黄系化合物を含むことが好ましい。この場合、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、第1の塗布液中における硫黄系化合物の含有量としては、第1の塗布液の全固形分に対し、1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましく、4〜10質量%が特に好ましい。
【0167】
また、第1の塗布液は、上記必須成分に加えて更に、水溶性樹脂、架橋剤、水溶性多価金属塩、媒染剤、分散剤、界面活性剤等、その他の成分を含有してもよい。第1の塗布液の塗布においては、前述の水溶性多価金属塩(好ましくは、塩基性ポリ塩化アルミニウム)を含む液をインライン混合した後に塗布することも好ましい。
硫黄系化合物、水溶性樹脂、架橋剤、媒染剤、水溶性多価金属塩等の各成分の詳細については、前述の<インク受容層>の項で既述した通りであり、好ましい形態も同様である。分散剤については後述する。
【0168】
第1の塗布液は、酸性であることが好ましく、pHとしては5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。第1の塗布液のpHは、前記カチオン性ポリマーの種類や添加量を適宜選定することで調整することができる。また、有機又は無機の酸を添加して調整してもよい。第1の塗布液のpHが5.0以下であると、例えば、第1の塗布液中における架橋剤(特にホウ素化合物)による水溶性樹脂の架橋反応をより充分に抑制することができる。
【0169】
〜〜第1の塗布液の調製方法〜〜
少なくとも無機微粒子と含窒素有機カチオンポリマーとを含有する第1の塗布液は、例えば、以下のようにして調製できる。すなわち、無機微粒子(好ましくは気相法シリカ微粒子)と分散剤とを水中に添加して(例えば水中の無機微粒子は10〜20質量%)、高速回転湿式コロイドミル(例えば、エム・テクニック(株)製の「クレアミックス」)を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で例えば20分間(好ましくは10〜30分間)かけて分散させた後、架橋剤(例えば硼酸)、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(例えば無機微粒子の1/3程度の質量のPVAとなるように)、及び含窒素有機カチオンポリマーを加え、更に水溶性多価金属塩(例えば、塩基性ポリ水酸化アルミニウム)を加えて、上記と同じ回転条件で分散を行なうことにより調製することができる。なお、水溶性多価金属塩は、塗布直前にインライン混合により加えてもよい。
また、上記の分散には、液液衝突型分散機(例えば、スギノマシン社製アルティマイザー)を用いることもできる。
得られた塗布液は均一なゾル状態であり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔質性のインク受容層を形成することができる。
【0170】
また、無機微粒子(好ましくは気相法シリカ)と分散剤とからなる水分散物の調製は、無機微粒子水分散液を予め調製し、この無機微粒子水分散液を分散剤水溶液に添加してもよいし、分散剤水溶液を無機微粒子水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、無機微粒子水分散液ではなく、粉体の無機微粒子を用いて上記のように分散剤水溶液に添加してもよい。
上記の無機微粒子と分散剤とを混合した後、該混合液を、分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50〜300nmの水分散液を得ることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行なうという点から、撹拌型分散機、コロイドミル分散機又は高圧分散機が好ましい。
【0171】
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0172】
また、上記分散剤としてはカオチン性のポリマーを用いることができる。カオチン性のポリマーとしては、特開2006−321176号公報の段落[0138]〜[0148]に記載されている媒染剤の例などが挙げられる。また、分散剤としてシランカップリング剤を用いることも好ましい。
上記分散剤の微粒子に対する添加量は、0.1%〜30%が好ましく、1%〜10%が更に好ましい。
【0173】
(第2の塗布液)
第2の塗布液は、無機微粒子の少なくとも1種と水溶性アルミニウム化合物の少なくとも1種とを含む。第2の塗布液の無機微粒子の詳細については、インク受容層中の無機微粒子として既述した通りである。また、第2の塗布液中の無機微粒子の含有率としては、特に制限はなく、第2の塗布液の全固形分に対して50〜85質量%であることが好ましく、55〜70質量%であることがより好ましい。
【0174】
第2の塗布液に含有される水溶性アルミニウム化合物については、インク受容層中の水溶性アルミニウム化合物として既述した通りである。また、第2の塗布液中の水溶性アルミニウム化合物の含有率としては、特に制限はなく、耐オゾン性の観点から、無機微粒子に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜8質量%であることがより好ましい。
【0175】
第2の塗布液は、本発明の効果を損なわない範囲で、含窒素有機カチオンポリマーを含むことができる。含窒素有機カチオンポリマーは、支持体から遠いインク受容層よりも支持体に近いインク受容層に多く含まれるようにする観点から、第2の塗布液中の含窒素有機カチオンポリマーの含有量を第1の塗布液中の含窒素有機カチオンポリマーの含有量より少なくすることが好ましい。すなわち、含窒素有機カチオンポリマーの含有量比〔第2の塗布液中における含有量/第1の塗布液中における含有量〕が、1.0未満であることが必要である。
さらに本発明における第2の塗布液が含窒素有機カチオンポリマーとして、カチオン性ポリウレタン、4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーから選ばれる少なくとも1種(以下、「特定含窒素有機カチオンポリマー」ということがある)を含む場合、本発明による効果をより効果的に得る観点からは、前記含有量比は0〜0.7が好ましく、0〜0.4がより好ましく、0(すなわち、第2の塗布液が特定含窒素有機カチオンポリマーを含まない形態)が特に好ましい。
【0176】
また、本発明の効果をより効果的に得る観点から、第2の塗布液中の特定含窒素有機カチオンポリマーの含有量としては、該第2の塗布液の全固形分に対し、0〜8質量%が好ましく、0〜4質量%がより好ましく、0質量%(すなわち、塗布液Bが特定含窒素有機カチオンポリマーを含まない形態)が特に好ましい。
【0177】
また、第2の塗布液は硫黄系化合物を含んでもよく、記録画像の濃度をより高く保つ観点からは、第2の塗布液中の硫黄系化合物の含有量を第1の塗布液中の硫黄系化合物の含有量より少なくすることが好ましい。すなわち、硫黄系化合物の含有量比〔第2の塗布液中における含有量/第1の塗布液中における含有量〕が、1.0未満であることが望ましい。この場合、硫黄系化合物の含有量比〔第2の塗布液中における含有量/第1の塗布液中における含有量〕は、0〜0.6が好ましく、0〜0.3がより好ましく、0(すなわち、第2の塗布液が硫黄系化合物を含まない形態)が特に好ましい。
【0178】
第2の塗布液中の硫黄系化合物の含有量としては、第2の塗布液の全固形分に対し、0〜5質量%が好ましく、0〜3質量%がより好ましく、0質量%(すなわち、第2の塗布液が硫黄系化合物を含まない形態)が特に好ましい。
【0179】
また、第2の塗布液は、水溶性樹脂、分散剤、架橋剤、水溶性多価金属塩、媒染剤、界面活性剤等、その他の成分を含有してもよい。第2の塗布液の塗布においては、前述の水溶性多価金属塩(好ましくは、塩基性ポリ塩化アルミニウム)を含む液をインライン混合した後に塗布することも好ましい。
硫黄系化合物、水溶性樹脂、媒染剤、界面活性剤、水溶性多価金属塩等の各成分の詳細については、前述の<インク受容層>の項で既述した通りであり、好ましい形態も同様である。また、分散剤については、前述の第1の塗布液の説明で述べた通りであり、好ましい範囲も同様である。さらに、第2の塗布液は、前述の第1の塗布液と同様の方法により調製できる。
【0180】
第2の塗布液は、第1の塗布液と同様に酸性であることが好ましく、pHとしては5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。このpHは、前記カチオン性樹脂の種類や添加量を適宜選定することで調整することができる。また、有機又は無機の酸を添加して調整してもよい。第1液BのpHが5.0以下であると、例えば、第1液B中における架橋剤(特に硼素化合物)による水溶性樹脂の架橋反応をより充分に抑制することができる。
【0181】
(その他の塗布液)
以下、必要に応じて用いられることがあるその他の塗布液について説明する。
その他の塗布液は、コロイダルシリカを含有することが好ましい。コロイダルシリカを含有するその他の塗布液を、前記第2の塗布液の上に更に塗布することで、前述のインク受容層中の最上層としてコロイダルシリカ層を形成することができる。これにより、形成されたインク受容層の光沢度をより向上させることができる。コロイダルシリカについては、前述の<インク受容層>の項で既述した通りであり、好ましい範囲も同様である。
その他の塗布液は、例えば、コロイダルシリカをイオン交換水に添加し、混合、撹拌することにより調製できる。
【0182】
<硬化工程>
前記第1の形態は、前記塗布層形成工程で形成された塗布層に、
(1)少なくとも前記第1の塗布液及び前記第2の塗布液を塗布すると同時、
(2)少なくとも前記第1の塗布液及び前記第2の塗布液を塗布して形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、
のいずれかのときに、塩基性化合物を含む液を付与し、前記塗布層の架橋硬化を行なう工程(以下、「硬化工程」ということがある。)を有する。
【0183】
前記「(1)少なくとも前記第1の塗布液及び前記第2の塗布液を塗布すると同時」に「塩基性化合物を含む液」を付与する方法としては、前記第1の塗布液、前記第2の塗布液、及び必要に応じ前記その他の塗布液と、「塩基性化合物を含む液」とを支持体側からこの順となるように、同時塗布(重層塗布)する形態が好適である。
又は、第1の塗布液を塗布した後、塗布された第1の塗布液上に、第2の塗布液と「塩基性化合物を含む液」とを同時塗布(以下、「同時重層塗布」ともいう)してもよい。同時塗布(同時重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーター等の公知の塗布装置を用いて行うことができる。
【0184】
前記「(2)少なくとも前記第1の塗布液及び前記第2の塗布液を塗布して形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前」に「塩基性化合物を含む液」を付与する方法については、「Wet−On−Wet法」や「WOW法」と称され、詳細は、例えば、特開2005−14593号公報段落番号[0016]〜[0037]に記載されている。
前記第1の塗布液及び前記第2の塗布液(並びに必要に応じてその他の塗布液)を、支持体側からこの順となるように、同時塗布(同時重層塗布)又は1層ずつ塗布して塗布層を形成した後、形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前に、(i)該塗布層上に更に「塩基性化合物を含む液」を塗布する方法、(ii)スプレー等により「塩基性化合物を含む液」を噴霧する方法、(iii)前記塗布層が形成された支持体を「塩基性化合物を含む液」中に浸漬する方法、が挙げられる。
【0185】
前記(i)において、「塩基性化合物を含む液」を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。このうち、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等の、既に形成されている塗布層にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0186】
前記「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、インク受容層用塗布液(本発明においては、前記第1の塗布液及び前記第2の塗布液並びに必要に応じその他の塗布液)の塗布直後から数分間の過程をさし、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0187】
「塗布層が減率乾燥を示すようになるまで乾燥」されるための条件としては、一般に40〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行なわれる。この乾燥時間は、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0188】
(塩基性化合物を含む液)
次に、硬化工程における「塩基性化合物を含む液」について説明する。
〜塩基性化合物〜
「塩基性化合物を含む液」は、塩基性化合物の少なくとも1種を含有する。
塩基性化合物としては、弱酸のアンモニウム塩、弱酸のアルカリ金属塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、弱酸のアルカリ土類金属塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸バリウムなど)、ヒドロキシアンモニウム、1〜3級アミン(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリへキシルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミンなど)、1〜3級アニリン(例えば、ジエチルアニリン、ジブチルアニリン、エチルアニリン、アニリンなど)、置換基を有してもよいピリジン(例えば、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)−アミノピリジンなど)、等が挙げられる。
上記の塩基性化合物以外に、該塩基性化合物と共に他の塩基性物質及び/又はその塩を併用することもできる。他の塩基性物質としては、例えば、アンモニアや、エチルアミン、ポリアリルアミン等の第一アミン類、ジメチルアミン等の第二アミン類、N−エチル−N−メチルブチルアミン等の第三アミン類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、等が挙げられる。
【0189】
前記塩基性化合物(特に弱酸のアンモニウム塩)の「塩基性化合物を含む液」中の含有量としては、「塩基性化合物を含む液」の全質量(溶媒を含む)に対し、0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。塩基性化合物(特に弱酸のアンモニウム塩)の含有量を特に上記範囲とすると、充分な硬化度が得られ、またアンモニア濃度が高くなりすぎて作業環境を損なうこともない。
【0190】
〜金属化合物〜
「塩基性化合物を含む液」は、金属化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。金属化合物としては、塩基性下で安定なものを制限なく使用でき、前述の水溶性多価金属塩や、金属錯体化合物、無機オリゴマー、又は無機ポリマーのいずれであってもよい。例えば、ジルコニウム化合物や、特開2005−14593号公報中の段落番号[0100]〜[0101]に無機媒染剤として列挙した化合物が好適である。上記の金属錯体化合物としては、日本化学会編「化学総説 No.32(1981年)」に記載の金属錯体、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordinantion Chemistry Review)」、第84巻、85〜277頁(1988年)及び特開平2−182701号公報に記載の、ルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体が使用可能である。
【0191】
金属化合物(特にジルコニウム化合物)の「塩基性化合物を含む液」中の含有量としては、「塩基性化合物を含む液」の全質量(溶媒を含む)に対し、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜2質量%である。金属化合物(特にジルコニウム化合物)の含有量を特に上記範囲とすることにより、塗布層の硬膜を充分に行なえると共に、媒染能が低下して充分な印画濃度が得られなかったり、ビーディングが発生したりすることがなく、アンモニア等の塩基性化合物の濃度が高くなりすぎることによる作業環境の悪化を招くこともない。なお、金属化合物は2種以上併用することができ、後述する他の媒染剤成分のうち金属化合物以外のものを併用する場合には、総量が上記範囲内であって、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0192】
また、画像濃度、耐オゾン性の観点からは、「塩基性化合物を含む液」には、金属化合物として前述のマグネシウム塩を含有することも好ましい。マグネシウム塩としては、塩化マグネシウムが特に好ましい。この場合のマグネシウム塩の添加量としては、「塩基性化合物を含む液」の全質量に対し、0.1〜1質量%が好ましく、0.15〜0.5質量%がより好ましい。
さらに、「塩基性化合物を含む液」は、必要に応じて架橋剤、他の媒染剤成分を含有することができる。
「塩基性化合物を含む液」は、アルカリ溶液として用いることで硬膜を促進する。pHは、7.1以上が好ましく、より好ましくはpH8.0以上であり、特に好ましくはpH9.0以上である。前記pHが7.1以上であると、第1の塗布液及び/又は第2の塗布液に含まれることがある水溶性樹脂の架橋反応をより進めることができ、ブロンジングやインク受容層のひび割れをより効果的に抑制できる。
【0193】
前記「塩基性化合物を含む液」は、例えば、イオン交換水に、金属化合物(例:ジルコニア化合物;例えば1〜5%)及び塩基性化合物(例:炭酸アンモニウム;例えば1〜5%)と、必要に応じてパラトルエンスルホン酸(例えば0.5〜3%)とを添加し、十分に攪拌することで調製することができる。なお、各組成物の「%」はいずれも固形分質量%を意味する。
【0194】
また、「塩基性化合物を含む液」の調製に用いる溶媒には、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0195】
<冷却工程及び乾燥工程>
前記第2の形態は、前記塗布層形成工程で形成された塗布層を、前記塗布時の第1の塗布液の温度及び前記塗布時の第2の塗布液の温度のいずれか低い方に対し5℃以上低下するように冷却する工程(以下、「冷却工程」ともいう)と、冷却された塗布層を乾燥してインク受容層を形成する工程(以下、「乾燥工程」ともいう)と、を有する。
【0196】
冷却工程において塗布層を冷却する方法としては、塗布層が形成された支持体を、0〜10℃に保たれた冷却ゾーンで、5〜30秒冷却させる方法が好適である。
冷却工程においては、0〜10℃低下するように冷却することが好ましく、0〜5℃以上低下するように冷却することがより好ましい。
ここで、塗布層の温度は、膜面の温度を測定することにより測定する。
【0197】
<その他の工程等>
前記第1の形態及び前記第2の形態において、支持体上にインク受容層を形成した後、該インク受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性及び塗膜強度を向上させることが可能である。
【0198】
〜インク〜
インクとしては、顔料を着色剤として含む顔料インク、あるいは染料を着色剤として含む染料インクのいずれも使用可能であるが、前記本発明におけるインクジェット記録媒体との関係、具体的には支持体に近いインク受容層に含窒素有機カチオンポリマーを多く含有することから、染料インクが好ましい。染料がインク受容層の支持体に近い層まで浸透することで、より効果的に滲みの発生を抑制することができる。
【0199】
インクは、ブラックインクのほか、赤、緑、青等のカラーインクであってもよい。また、インクは、グリコールエーテルを含んでもよく、この添加によりインクの記録媒体への浸透性が高くなり、画像滲みを抑えた画像が期待できる。
【0200】
前記染料としては、特に制限はなく、例えば、カラーインデックス(COLOR INDEX)に記載の水溶性酸性染料、直接染料、塩基性染料、反応性染料を好ましく用いることができる。また、インク受容層の支持体に近い層に浸透し、滲み抑制効果を奏する点では、下記一般式(M)又は一般式(Bk)で表される水溶性染料が好ましい。なお、水溶性染料とは、20℃において水に1質量%以上溶解する染料をいう。
【0201】
【化21】

【0202】
前記一般式(M)において、A31は5員複素環基を表す。B31及びB32は各々=CR31−、−CR32=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR31−又は−CR32=を表す。R35、R36は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、又はスルファモイル基を表わし、各基は更に置換基を有していてもよい。
、R31、R32は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アリールアミノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキル及びアリールチオ基、アルキル及びアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、スルホン酸基、又は複素環チオ基を表し、各基は更に置換されていてもよい。
31とR35、あるいはR35とR36が結合して5乃至6員環を形成してもよい。
なお、A31、R31、R32、R35、R36及びGの少なくとも1つは、スルホン酸基を有し、対イオンとしてLi又は4級アンモニウムイオンを有する。
【0203】
一般式(M)で表される水溶性染料の具体例としては、国際公開特許2002/83795号(35〜55頁)、同2002−83662号(27〜42頁)、特開2004−149560号(段落番号[0046]〜[0059])、同2004−149561号(段落番号[0047]〜[0060])に記載されたものの中で、水溶性基がスルホン酸基のみであり、対イオンがLiイオン又は4級アンモニウムイオンのものが挙げられる。
一般式(M)で表される水溶性染料のうち、特に好ましい具体例を遊離の酸の構造で以下に示す。但し、塩として用いることが好ましい。
【0204】
【化22】



【0205】
一般式(M)で表される水溶性染料(複素環アゾ染料)を用いる場合、マゼンタインク中での含有量は、0.2〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0206】
【化23】



【0207】
前記一般式(Bk)において、A、A及びAは、各々独立に、置換されていてもよい芳香族基又は置換されていてもよい複素環基を表す。A及びAは一価の基であり、Aは2価の基である。A、A及びAの少なくとも1つは複素環基であることが好ましい。
【0208】
一般式(Bk)で表される水溶性染料としては、特開2007−70573号公報の段落番号[0041]〜[0059]に記載された水溶性染料を挙げることができ、好適な範囲も同様である。
【0209】
一般式(Bk)で表される化合物を用いる場合、インク中における含有量は、0.2〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0210】
なお、一般式(Bk)で表される水溶性染料を含有するインクは、水溶性短波染料を更に含有することが好ましい。水溶性短波染料の具体例としては、特開2007−70573号公報の段落番号[0061]〜[0072]に記載の水性染料を挙げることができ、好ましい態様についても同様である。
【0211】
着色剤のうち、前記顔料としては、特に制限はなく、無機顔料、有機顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
これらの顔料は、分散剤又は界面活性剤を用いて水性媒体中に分散させて得られた顔料分散液としてインクに添加することができる。分散剤は、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。
【0212】
本発明で用いるインクとしては、前記一般式(M)及び一般式(Bk)で表される水溶性染料の少なくとも1種と水性媒体とを含むインクが好ましい。このインクと既述の本発明におけるインクジェット記録媒体とを組み合わせて記録を行なうことにより、画像の経時滲みの抑制、高い画像濃度、耐オゾン性をより良好なものとすることができる。
【0213】
インクには、上記の着色剤に加えて、必要に応じて、その他の添加剤を本発明の効果を害しない範囲で添加することができる。
その他の添加剤としては、例えば、ホウ素化合物、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0214】
前記水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。なお、前記水混和性有機溶剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0215】
前記乾燥防止剤はインクジェット記録方式に用いるノズルのインク噴射口においてインクが乾燥することによる目詰まりを防止することができる。乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。
乾燥防止剤の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。
これらのうち、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また、乾燥防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。乾燥防止剤は、インク中に10〜50質量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0216】
前記浸透促進剤は、インクを紙により良く浸透させることができる。浸透促進剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。
これらは、インク中に5〜30質量%の範囲で含有すると通常は充分な効果が得られ、画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0217】
前記紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載のベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載のベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載の桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載のトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載の化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される、紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0218】
前記褪色防止剤は、画像の保存性を向上させることができる。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、チオエーテル類、チオウレア類(チオエーテル類とチオウレア類の例は特開2002−36717号公報に、チオエーテル類の例は特開2002−86904号公報に記載)、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0219】
前記防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらは、インク中に0.02〜1.00質量%の範囲で含有するのが好ましい。
【0220】
前記pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で、インクがpH(25℃)6〜10となるように添加するのが好ましく、pH(25℃)7〜10となるように添加するのがより好ましい。
【0221】
前記表面張力調整剤としては、例えば、ノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。
【0222】
なお、インクの表面張力(25℃)としては、25〜70mN/mが好ましく、更には25〜60mN/mが好ましい。また、インクの粘度(25℃)としては、30mPa・s以下が好ましく、更には20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
【0223】
前記界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型やN,N−ジメチル−N−ラウリル−カルボメチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩含有ベタイン型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157、636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
【0224】
前記消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
【0225】
インクを調製する方法には、特に制限はなく、例えば、特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開2004−331871号の各公報の記載を適用することができる。
【0226】
本発明におけるインクは、少なくとも、イエロー染料を含有するイエローインクと、シアン染料を含有するシアンインクとを含むインクセットとして用いることができる。
前記イエロー染料としては、特に制限はないが、例えば、特開2007−70573号公報の段落[0025]〜[0040]等に記載のイエロー染料を用いることができる。また、シアン染料としては、特に制限はないが、例えば、特開2007−70753号公報の段落[0083]〜[0090]等に記載のシアン染料を用いることができる。
【0227】
[乾燥工程]
乾燥工程は、前記画像記録工程でインクジェット記録媒体に記録された少なくとも画像を乾燥させる。インク中に含まれて付与されたインク溶媒はインク受容層中を抜けやすいため、記録後に乾燥処理を施すことで色変わりを抑えた高品位の画像を得ることができる。
【0228】
乾燥は、前記本発明におけるインクジェット記録媒体のインク受容層に記録された画像に対して、乾燥処理を与えて行なわれる。乾燥処理としては、例えば、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法、電磁波を照射する方法などを挙げることができる。
【0229】
本発明においては、例えばインクジェットヘッド近傍にまで熱がまわって記録品質に悪影響を及ぼすのを防止し、乾燥に要する熱量を抑える観点から、温風や熱風を供給するあるいは発熱体で加熱する等、画像面や媒体表面から熱を与える方法に比べ、画像部中ないし記録媒体中の液成分を直接的に加熱できる方法が好ましく、例えば、マイクロ波加熱等の誘電加熱、マイクロ波加熱はより好ましい。
【0230】
前記誘電加熱は、数MHz〜数100MHzの高周波交流電界中に被加熱物(ここでは、例えばインク画像、インク受容層又はインクジェット記録媒体)をおき、高周波(電磁波)の作用による被加熱物の発熱により昇温させて液成分を蒸発させる加熱方式をいい、高周波誘電加熱装置などを使用して行なえる。誘電加熱には、例えば、マイクロ波加熱、高周波誘電加熱などが含まれる。
マイクロ波加熱は、マイクロ波と被加熱物の相互作用により被加熱物の内部から熱を生じさせて液成分を蒸発させることをいい、例えばマイクロ波発生器を使用して行なえる。具体な例として、特許第2979393号に記載のマイクロ波乾燥手段や、特許第3302177号に記載の、マグネトロンで発生させたマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段、等を挙げることができる。
【0231】
前記赤外線加熱は、被加熱物に共振吸収されたエネルギーが分子の運動(振動)を誘発し、その摩擦により熱を生じさせて液成分を蒸発させることをいい、例えば、ハロゲンランプ、セラミック遠赤外ヒーター、超遠赤外線ヒーター、赤外線ランプなどを使用して行なえる。
【0232】
本発明のインクジェット記録方法においては、102mm×152mm(KGサイズ)当たり2kJ(ジュール)以下の熱量で乾燥を行なうことが好ましい。上記の誘電加熱又は赤外線加熱などの利用により、従来と比較して乾燥工程での乾燥熱量を維持ないし軽減したエネルギーで乾燥が行なえる。乾燥は、省熱エネルギーの点から、102mm×152mm(KGサイズ)当たり1kJ以下の熱量で行なわれるのが好ましく、マイクロ波加熱又は赤外線加熱で102mm×152mm(KGサイズ)当たり0.5kJ以下の熱量で乾燥させるのが好ましい。
【0233】
本発明における乾燥工程では、前記画像記録工程でのインクの吐出終了から20秒以内に乾燥を開始、すなわちヒータオン、あるいは電磁波やマイクロ波の照射、温風や熱風の供給を開始することが好ましい。乾燥の開始は、装置サイズや生産性の点では、インクの吐出終了から10秒以内がより好ましい。
ここで、インクの吐出終了とは、インクジェットヘッドのノズルから噴出したインク滴が最後にインク受容層に着滴したときをいう。
【0234】
本発明のインクジェット記録方法による画像の記録は、例えば、図1に示すように構成されたインクジェット記録装置を用いて行なうことができる。図1は、インクジェット記録紙の走行方向Aと同一平面上で直交する方向からみた概略の構成図である。
【0235】
図1に示すインクジェット記録装置は、記録用ヘッド(インクジェットヘッド)を備えており、インクジェットヘッドには、図示しない貯留タンクが使用する色相数に合わせて接続されている。記録用ヘッドのインク吐出方向に、吸引機構を備えたステージが設けられており、記録用ヘッドとステージとの間をインクジェット記録媒体が移動できるようになっている。吸引機構は、例えばステージ内部を真空引きする等によりステージ表面を吸引し、ステージに供給されたインクジェット記録媒体はステージ上に一時的に固定化される。ステージは、搬送されたインクジェット記録媒体を一旦吸引吸着して固定し、水平方向に所望の速度で移動可能であり、移動により記録用ヘッドから吐出されるインク滴の着滴位置を選択することができる。
【0236】
図1に示すように、インクジェット記録紙が走行する走行方向Aにおけるステージの上流側には、ロール状に巻き取られたインクジェット記録媒体のロール体が装着されている。走行方向Aにおけるステージの下流側には、駆動可能なローラ対が複数配列されており、そのローラ対の間には乾燥装置が配設されている。乾燥装置により、電磁波やマイクロ波を画像に照射し、必要に応じて更に温風や熱風を画像に供給できるようになっている。また、ステージと乾燥装置との間には、記録後のインクジェット記録紙を所望サイズのシート状にカット(裁断)するためのカッターが配置されており、記録されたインクジェット記録媒体はカット後に乾燥が行なわれる。走行方向Aにおける乾燥装置のさらに下流側には、搬送用ロールを介してシート状のインクジェット記録媒体を回収する回収部が設けられており、搬送された記録済みのインクジェット記録媒体は、複数枚が積み重ねられながら回収される。
【実施例】
【0237】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0238】
(実施例1)
≪インクジェット記録媒体の作製≫
<支持体の作製>
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/mの原紙を抄造した。
【0239】
前記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製の「Whitex BB」)を0.04%添加し、これを絶乾重量換算で0.5g/mとなるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05に調整した基紙を得た。
【0240】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、この樹脂層面を「ウラ面」と称する。)。このウラ側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製の「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製の「スノーテックスO」)を質量比1:2で水に分散した分散液を、乾燥重量が0.2g/mとなるように塗布した。
【0241】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有する、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように溶融押し出しし、高光沢の熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、本実施例に用いる支持体とした。
【0242】
<塗布液の調製>
下記組成に示した、(1)気相法シリカ微粒子と、(2)イオン交換水と、(3)「シャロールDC−902P」と、(4)「ZA−30」とを混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて分散させた後、得られた分散液を45℃に加熱し、20時間保持した。その後、この分散液に(5)ポリビニルアルコール溶解液、(6)スーパーフレックス650を30℃で加え、塗布液を調製した。
【0243】
〜塗布液の組成〜
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)・・・8.9部
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水・・・53.3部
(3)シャロールDC−902P(51.5質量%水溶液、第一工業製薬(株)製;分散剤)・・・0.78部
(4)ZA−30(第一稀元素化学工業(株)製;酢酸ジルコニウム)・・・0.48部
(5)ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液・・・31.2部
〜ポリビニルアルコール溶解液の組成〜
・PVA−235(鹸化度88%、重合度3500、(株)クラレ製)・・・2.2部
・イオン交換水・・・28.2部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチセノール20P、協和発酵ケミカル(株)製)・・・ 0.7部
・エマルゲン109P(界面活性剤、花王(株)製)・・・0.1部
(6)スーパーフレックス650(第一工業製薬(株)製;含窒素有機カチオンポリマーエマルション)・・・1.1部
【0244】
<インク受容層の形成>
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、該オモテ面に、以下のようにして、前記塗布液をエクストルージョンダイコーターにて、塗布液温度を38℃として塗布し、塗布層を形成した。具体的には、塗布は、前記塗布液を212g/mとし、下記インライン液を6.6g/mの速度でインライン混合した後、塗布した。
【0245】
〜インライン液の組成〜
(1)アルファイン83(大明化学工業(株)製;ポリ塩化アルミニウム)・・・2.0部
(2)イオン交換水・・・7.8部
(3)ハイマックスSC−507(ジメチルアミン・エピクロロヒドリン重縮合物、ハイモ(株)製)・・・0.2部
【0246】
塗布により形成された塗布層を、熱風乾燥機にて80℃で(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が24%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この間は恒率乾燥を示した。その直後、下記組成の塩基性化合物を含む液に3秒間浸漬して上記塗布層上にその13g/mを付着させ、更に72℃下で10分間乾燥させ(乾燥工程)、支持体上にインク受容層を形成した。
【0247】
〜塩基性化合物を含む液の組成〜
(1)ホウ酸・・・1.3部
(2)炭酸アンモニウム(1級:関東化学(株)製)・・・5.0部
(3)ジルコゾールAC−7(第一稀元素化学工業(株)製;炭酸ジルコニル・アンモニウム)・・・2.5部
(4)イオン交換水・・・85.2部
(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製のエマルゲン109P(10%水溶液)、HLB値13.6;界面活性剤)・・・6.0部
【0248】
以上のようにして、支持体上に乾燥膜厚35μmのインク受容層が設けられたロール状のインクジェット記録紙を得た。このロール状のインクジェット記録紙を152mm幅×100m巻にスリット加工して、評価用ロールサンプルとして用いた。
【0249】
≪インクの調製≫
下記の成分に脱イオン水を加えて1リットルとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、水酸化カリウム水溶液10mol/LにてpH=9に調整し、平均孔径0.25μmのミクロフィルターを用いて減圧濾過して、ライトマゼンタ用インク液を調製した。
【0250】
<組成>
・下記構造式で示されるマゼンタ染料(化合物M−1)・・・7.5g/L
・ジエチレングリコール・・・50g/L
・尿素・・・10g/L
・グリセリン・・・200g/L
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル・・・120g/L
・トリエタノールアミン・・・6.9g/L
・ベンゾトリアゾール・・・0.08g/L
・2−ピロリドン・・・20g/L
・サーフィノール465(界面活性剤 エアープロダクスジャパン製)・・・10.5g/L
・Proxel XL−2(殺菌剤:ICIジャパン製)・・・3.5g/L
【0251】
さらに、染料種、添加剤を変えることにより、マゼンタインク、ライトシアンインク、シアンインク、イエローインク、及びブラックインクを調製し、下記表1に示す濃度のインクセット101を作製した。
【0252】
【表1】

【0253】
【化24】



【0254】
【化25】



【0255】
【化26】



【0256】
【化27】



【0257】
【化28】



【0258】
≪画像記録及び評価≫
上記より得たインクジェット記録紙について、前記インクセット101を用いて以下のようにして画像を記録すると共に評価を行なった。評価結果は下記表2に示す。
【0259】
−1.画像記録−
インクジェット記録装置として、図1に示すインクジェットプリンタを準備した。このインクジェットプリンタは、記録用ヘッド(インクジェットヘッド)として、1200dpiヘッド(FUJIFILM Dimatix,Inc.製)を備えており、図1の記録紙の走行方向A(矢印方向A)と直交する同一平面上の方向(図1の前後方向)に反復移動してインクを吐出するシャトルスキャン方式により画像を記録できるようになっている。インクジェットヘッドには、不図示のインク貯留タンクが接続されており、このインク貯留タンクに上記で得たインクセット101の各色インクに詰め替え、4色画像の記録を実施した。
【0260】
記録用ヘッドのインク吐出口の吐出方向には、真空吸引機能を有するステージが設けられており、記録用ヘッドとステージとの間をインクジェット記録紙が移動できるようになっている。ステージは、走行するインクジェット記録紙を所定の位置で一時的に吸引吸着して固定し、水平方向(副走査方向)に10mm/秒で直線的に移動可能に構成されており、ステージの移動により記録用ヘッドから吐出されるインク滴の着滴位置を選択することができる。記録紙が走行する走行方向Aにおけるステージの上流側には、図1に示すようにインクジェット記録紙のロール体が装着されており、このロール体より長尺状のインクジェット記録紙が所定速度でステージに供給される。記録紙の走行方向Aにおけるステージの下流側には、その走行路に駆動可能なローラ対が複数配列されており、そのローラ対間には、インクジェット記録紙をカットするカッターと、ESG−2450S−2A(島田理化工業社製のマイクロ波発生装置)及び乾燥ファン(風量:3m/分、風温:25℃)を備えた乾燥装置と、が順次配設されている。インクジェット記録紙に画像を記録した後、直ぐに所望サイズにカットされて乾燥部に搬送されると、乾燥装置により画像面にマイクロ波をあてると共に送風する構成になっている。乾燥後、画像が記録されたシート状のインクジェット記録紙は、さらに下流側に配設された回収部まで搬送され、回収部で積み重ねられて回収される。
なお、インクジェット記録紙の走行路を挟んで乾燥装置と対向する位置には、図1に示すように、インクジェット記録紙の記録面とは反対側の裏面に印字(裏印字)するための記録手段(例えばインクジェットヘッドなど)を設け、同時に裏面記録を行なってもよい。
【0261】
このインクジェットプリンタを用い、ロール状に作製したインクジェット記録紙のロール体を装着して起動すると、インクジェット記録紙はステージ上に供給され、固定される。固定された状態でインクジェット記録紙を副走査方向に定速移動させながら、記録用ヘッドからインク液滴量2pL、最大総吐出量20ml/m、吐出周波数30kHz、解像度1200dpi×1200dpiの吐出条件にて、各色のインクを順次、シャトルスキャン方式で吐出し、グレーのベタ画像を記録した。このときのヘッド移動速度は、635mm/秒である。また、グレタグ スペクトロリノ SPM−50(グレタグマクベス社製;視野角2°、光源D50、フィルターなし)で測定されたグレー濃度が1.7になるように、画像データの階調を調整した。
吐出終了後、直ぐにシート状にカットすると共に乾燥装置に搬送され、吐出終了から5秒後にマイクロ波(発振周波数:2450MHz、出力:100W)を3.6秒間照射(紙の搬送速度28mm/秒)し、乾燥させた。このとき、温度25℃の乾燥風も供給した。乾燥時における熱量は360J/KGサイズであった。乾燥終了後、さらに搬送してベタ画像が記録されたインクジェット記録紙を回収部に回収した。
このようにして、インクジェット記録紙上にグレー調の画像を得た。
【0262】
−2.色調変化(色変わり)の評価−
回収直後(乾燥終了後3分以内)と回収後24時間経過後とにそれぞれ、グレーのベタ画像について、分光光度計スペクトロリノ(グレタグマクベス社製)を用いて視野角2°、光源F8、フィルターなしの条件でLを計測し、それぞれの計測値から色差(ΔE)を求め、色調変化を評価する指標とした。評価は、色差の値から、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表2に示す。
<評価基準>
◎:ΔE<2 ;色調変化はほとんど認識できなかった。
○:2≦ΔE<4;色調変化がわかるがあまり目立たない程度であった。
△:4≦ΔE<7;色調の変化がかなり目立った。
×:ΔE≧7 ;色調変化が顕著であった。
【0263】
−3.画像濃度(黒濃度)の評価−
前記インクセット101を装填した前記装置で黒ベタの印画を行ない、ベタ画像部の濃度を反射濃度計(Xrite938、Xrite社製)にて測定した。評価結果は下記表2に示す。
【0264】
−4.耐オゾン性の評価−
前記インクセット101を装填した前記装置でイエロー色、シアン色、マゼンタ色のベタ画像をそれぞれ印画し、画像サンプルとした。得られた各色の画像サンプルを23℃、60%RH、オゾン濃度10ppmの雰囲気で80時間保管し、保管前と保管後のイエロー濃度、シアン濃度、マゼンタ濃度の残存率を算出した。この残存率が最も小さかった色の残存率について、下記の評価基準にしたがって耐オゾン性を評価した。評価結果は下記表2に示す。
<評価基準>
A:75%以上
B:70%以上75%未満
C:60%以上70%未満
D:60%未満
【0265】
−5.連続記録性の評価−
前記「1.画像記録」と同様のKGサイズ印画を連続して行ない、連続処理のベタ画像を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表2に示す。
<評価基準>
◎:20万枚連続印画してもドット抜けの発生はなく、良好な画像が得られた。
○:10万枚連続印画してもドット抜けの発生はなく、良好な画像が得られた。
△:1万枚連続印画して、ドット抜けが発生しはじめた。
×:5000枚連続印画してドット抜けが発生しはじめ、実用上は許容できない程度であった。
【0266】
−6.生産性の評価−
KGサイズ印画を連続して行ない、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表2に示す。
<評価基準>
A:500枚/時間以上
B:500枚/時間未満
【0267】
(実施例2)
実施例1において、ESG−2450S−2A(島田理化工業社製;マイクロ波発生装置)を、ニクロム線温風ヒータ(400W、加熱時間2秒)に代え、乾燥ファン(風量:3m/分)で60℃の温風を送風するようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録紙を得ると共に、画像記録及び評価を行なった。
【0268】
(実施例3)
実施例2において、ニクロム線温風ヒータを200Wのものに変更し、かつシートの搬送速度を1/2に下げた(吐出終了から乾燥開始までの時間を5秒から10秒に変更)こと以外、実施例2と同様にして、インクジェット記録紙を得ると共に、画像記録及び評価を行なった。
【0269】
(比較例1)
実施例1において、ベタ画像の記録の際の吐出終了後にマイクロ波の照射及び乾燥風の供給による乾燥を行なわなかったこと以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録紙を得ると共に、画像記録及び評価を行なった。
【0270】
(比較例2)
実施例1のインク受容層の形成において、「インライン液の組成」中のアルファイン83(ポリ塩化アルミニウム)を用いず、「塗布液の組成」中のZA−30を用いず、かつ「塩基性化合物を含む液の組成」中のジルコゾールAC−7を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録紙を得ると共に、画像記録及び評価を行なった。
【0271】
【表2】

【0272】
前記表2に示すように、実施例では、記録後の色変わりを抑制することができ、連続記録及び生産性を高く維持できた。これに対し、比較例では、色変わりを抑制できなかった。また、比較例2では、黒濃度、耐オゾン性にも劣っていた。
【0273】
(実施例4)
≪インクジェット記録媒体の作製≫
<支持体の作製>
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/mの原紙を抄造した。
【0274】
前記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製の「Whitex BB」)を0.04%添加し、これを絶乾重量換算で0.5g/mとなるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05に調整した基紙を得た。
【0275】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、この樹脂層面を「ウラ面」と称する。)。このウラ側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製の「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製の「スノーテックスO」)を質量比1:2で水に分散した分散液を、乾燥重量が0.2g/mとなるように塗布した。
【0276】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有する、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように溶融押し出しし、高光沢の熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、本実施例に用いる支持体とした。
【0277】
<第2の塗布液(上層用)の調製>
下記組成に示した、(1)気相法シリカ微粒子と、(2)イオン交換水と、(3)「シャロールDC−902P」と、(4)「ZA−30」とを混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて分散させた後、得られた分散液を45℃に加熱し20時間保持した。その後、分散液に(5)ポリビニルアルコール溶解液を30℃で加え、第2の塗布液(上層用)を調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=(1):(5))は、4.0:1であり、第2の塗布液(上層用)のpHは、3.4で酸性を示した。
【0278】
〜第2の塗布液(上層用)の組成〜
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)・・・8.9部
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水・・・54.4部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液)・・・0.78部
(分散剤、含窒素有機カチオンポリマー、第一工業製薬(株)製)
(4)ZA−30(第一稀元素化学工業(株)製、酢酸ジルコニル)・・・0.48部
(5)ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液・・・31.2部
〜ポリビニルアルコール溶解液の組成〜
・PVA−235(鹸化度88%、重合度3500、(株)クラレ製)・・・2.2部
・イオン交換水・・・28.2部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチセノール20P、協和発酵ケミカル(株)製)・・・0.7部
・エマルゲン109P(界面活性剤、花王(株)製)・・・0.1部
【0279】
<第1の塗布液(下層用)の調製>
下記組成に記載の、(1)気相法シリカ微粒子と、(2)イオン交換水と、(3)「シャロールDC−902P」と、(4)「ZA−30」と、(5)「30%メチオニンスルホキシド」と、を混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて、分散させた後、分散液を45℃に加熱し20時間保持した。その後、分散液に(6)ホウ酸と、(7)ポリビニルアルコール溶解液と、(8)「スーパーフレックス650」と、を30℃で加え、第1の塗布液(下層用)を調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=(1):(7))は、4.0:1であり、第1の塗布液(下層用)のpHは、3.8で酸性を示した。
【0280】
〜第1の塗布液(下層用)の組成〜
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)・・・8.9部
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水・・・48.5部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液)・・・0.78部
(分散剤、含窒素有機カチオンポリマー、第一工業製薬(株)製)
(4)ZA−30(第一稀元素化学工業(株)製、酢酸ジルコニル)・・・0.48部
(5)メチオニンスルホキシド(下記硫黄系化合物(1))の30%水溶液・・・1.76部
(6)ホウ酸(架橋剤)・・・0.4部
(7)ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液・・・31.2部
〜ポリビニルアルコール溶解液の組成〜
・PVA235(鹸化度88%、重合度3500、(株)クラレ製)・・・2.2部
・イオン交換水・・・28.2部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチセノール20P、協和発酵ケミカル(株)製)・・・0.7部
・エマルゲン109P(界面活性剤、花王(株)製)・・・0.1部
(8)スーパーフレックス650(第一工業製薬(株)製;含窒素有機カチオンポリマーエマルション(カチオン性ポリウレタン樹脂微粒子))・・・3.1部
【0281】
【化29】

【0282】
<インク受容層の形成>
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、該オモテ面に、以下のようにして、第1の塗布液(下層用)と第2の塗布液(上層用)とをエクストルージョンダイコーターにて、塗布液温度をそれぞれ38℃として、同時重層塗布して塗布層を形成した。
具体的には、上記同時重層塗布においては、第1の塗布液(下層用)を105.1g/mで、下記インライン液を3.3g/mの速度でインライン混合した後下層として塗布し、第2の塗布液(上層用)を106g/mで、下記組成のインライン液を13.2g/mの速度でインライン混合した後、上層として塗布した(層構成は、第2の塗布液(上層用)/第1の塗布液(下層用)/支持体である。)。
【0283】
〜インライン液の組成〜
(1)アルファイン83(大明化学工業(株)製;ポリ塩化アルミニウム)・・・2.0部
(2)イオン交換水・・・7.8部
(3)ハイマックスSC−507(ジメチルアミン・エピクロロヒドリン重縮合物、ハイモ(株)製)・・・0.2部
【0284】
前記同時重層塗布により形成された塗布層を、熱風乾燥機にて80℃で(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が24%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この間は恒率乾燥を示した。その直後、下記組成の塩基性化合物を含む液に3秒間浸漬して上記塗布層上にその13g/mを付着させ、更に72℃下で10分間乾燥させ(乾燥工程)、支持体上にインク受容層を形成した。
【0285】
〜塩基性化合物を含む液の組成〜
(1)ホウ酸・・・1.3部
(2)炭酸アンモニウム(1級:関東化学(株)製)・・・5.0部
(3)ジルコゾールAC−7(第一稀元素化学工業(株)製;炭酸ジルコニル・アンモニウム)・・・2.5部
(4)イオン交換水・・・85.2部
(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製のエマルゲン109P(10%水溶液)、HLB値13.6;界面活性剤)・・・6.0部
【0286】
以上のようにして、支持体上に乾燥膜厚35μmのインク受容層が設けられたロール状のインクジェット記録紙を得た。このロール状のインクジェット記録紙を152mm幅×100m巻にスリット加工して、評価用ロールサンプルとして用いた。
【0287】
≪インクの調製≫
実施例1と同様にして、ライトマゼンタ用インク、マゼンタインク、ライトシアンインク、シアンインク、イエローインク、及びブラックインクを調製し、前記表1に示す濃度のインクセット101を作製した。
【0288】
≪画像記録及び評価≫
上記より得たインクジェット記録紙について、前記インクセット101を用いて以下のようにして画像を記録すると共に評価を行なった。評価結果は下記表3に示す。
【0289】
−1.画像記録−
インクジェット記録装置として、図1に示すインクジェットプリンタを準備した。このインクジェットプリンタは、記録用ヘッド(インクジェットヘッド)として、1200dpiヘッド(FUJIFILM Dimatix,Inc.製)を備えており、図1の記録紙の走行方向A(矢印方向A)と直交する同一平面上の方向(図1の前後方向)に反復移動してインクを吐出するシャトルスキャン方式により画像を記録できるようになっている。ヘッドに繋がる不図示のインク貯留タンクは、上記で得たインクセット101の各色インクに詰め替え、4色画像の記録を実施した。
【0290】
記録用ヘッドのインク吐出口の吐出方向には、真空吸引機能を有するステージが設けられており、記録用ヘッドとステージとの間をインクジェット記録紙が移動できるようになっている。ステージは、走行するインクジェット記録紙を所定の位置で一時的に吸引吸着して固定し、水平方向(副走査方向)に10mm/秒で直線的に移動可能に構成されており、ステージの移動により記録用ヘッドから吐出されるインク滴の着滴位置を選択することができる。記録紙が走行する走行方向Aにおけるステージの上流側には、図1に示すようにインクジェット記録紙のロール体が装着されており、このロール体より長尺状のインクジェット記録紙が所定速度でステージに供給される。記録紙の走行方向Aにおけるステージの下流側には、その走行路に駆動可能なローラ対が複数配列されており、そのローラ対間には、インクジェット記録紙をカットするカッターと、ESG−2450S−2A(島田理化工業社製のマイクロ波発生装置)及び乾燥ファン(風量:3m/分、風温:25℃)を備えた乾燥装置と、が順次配設されている。インクジェット記録紙に画像を記録した後、直ぐに所望サイズにカットされて乾燥部に搬送されると、乾燥装置により画像面にマイクロ波をあてると共に送風する構成になっている。乾燥後、画像が記録されたシート状のインクジェット記録紙は、さらに下流側に配設された回収部まで搬送され、回収部で積み重ねられて回収される。
なお、インクジェット記録紙の走行路を挟んで乾燥装置と対向する位置には、図1に示すように、インクジェット記録紙の記録面とは反対側の裏面に印字(裏印字)するための記録手段(例えばインクジェットヘッドなど)を設け、同時に裏面記録を行なってもよい。
【0291】
このインクジェットプリンタを用い、ロール状に作製したインクジェット記録紙のロール体を装着して起動すると、インクジェット記録紙はステージ上に供給され、固定される。固定された状態でインクジェット記録紙を副走査方向に定速移動させながら、記録用ヘッドからインク液滴量2pL、最大総吐出量20ml/m、吐出周波数30kHz、解像度1200dpi×1200dpiの吐出条件にて、各色のインクを順次、シャトルスキャン方式で吐出し、グレーのベタ画像を記録した。このときのヘッド移動速度は、635mm/秒である。また、グレタグ スペクトロリノ SPM−50(グレタグマクベス社製;視野角2°、光源D50、フィルターなし)で測定されたグレー濃度が1.7になるように、画像データの階調を調整した。
吐出終了後、直ぐにシート状にカットすると共に乾燥装置に搬送され、吐出終了から5秒後にマイクロ波(発振周波数:2450MHz、出力:100W)を3.6秒間照射(紙の搬送速度28mm/秒)し、乾燥させた。このとき、温度25℃の乾燥風も供給した。乾燥時における熱量は360J/KGサイズであった。乾燥終了後、さらに搬送してベタ画像が記録されたインクジェット記録紙を回収部に回収した。
このようにして、インクジェット記録紙上にグレー調の画像を得た。
【0292】
−2.色調変化(色変わり)の評価−
回収直後(乾燥終了後3分以内)と回収後24時間経過後とにそれぞれ、グレーのベタ画像について、分光光度計スペクトロリノ(グレタグマクベス社製)を用いて視野角2°、光源F8、フィルターなしの条件でLを計測し、それぞれの計測値から色差(ΔE)を求め、色調変化を評価する指標とした。評価は、色差の値から、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表3に示す。
<評価基準>
◎:ΔE<2 ;色調変化はほとんど認識できなかった。
○:2≦ΔE<4;色調変化がわかるがあまり目立たない程度であった。
△:4≦ΔE<7;色調の変化がかなり目立った。
×:ΔE≧7 ;色調変化が顕著であった。
【0293】
−3.画像濃度(黒濃度)の評価−
前記インクセット101を装填した前記装置で黒ベタの印画を行ない、ベタ画像部の濃度を反射濃度計(Xrite938、Xrite社製)にて測定した。評価結果は下記表3に示す。
【0294】
−4.耐オゾン性の評価−
前記インクセット101を装填した前記装置でイエロー色、シアン色、マゼンタ色のベタ画像をそれぞれ印画し、画像サンプルとした。得られた各色の画像サンプルを23℃、60%RH、オゾン濃度10ppmの雰囲気で80時間保管し、保管前と保管後のイエロー濃度、シアン濃度、マゼンタ濃度の残存率を算出した。この残存率が最も小さかった色の残存率について、下記の評価基準にしたがって耐オゾン性を評価した。評価結果は下記表3に示す。
<評価基準>
A:75%以上
B:70%以上75%未満
C:60%以上70%未満
D:60%未満
【0295】
−5.連続記録性の評価−
前記「1.画像記録」と同様のKGサイズ印画を連続して行ない、連続処理のベタ画像を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表3に示す。
<評価基準>
◎:20万枚連続印画してもドット抜けの発生はなく、良好な画像が得られた。
○:10万枚連続印画してもドット抜けの発生はなく、良好な画像が得られた。
△:1万枚連続印画して、ドット抜けが発生しはじめた。
×:5000枚連続印画してドット抜けが発生しはじめ、実用上は許容できない程度であった。
【0296】
−6.生産性の評価−
KGサイズ印画を連続して行ない、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表3に示す。
<評価基準>
A:500枚/時間以上
B:500枚/時間未満
【0297】
−7.含窒素有機カチオンポリマーの存在分布の確認−
得られたインクジェット記録紙の断面をミクロトームにより切り出し、SEM−EDX(日立製作所製のS−2150にEDX装置を組み合わせたもの)を用いてSi元素およびN元素のマッピング分析を行った。Si元素のマッピング画像よりインク受容層の存在位置を確認し、N元素マッピング画像と並べて観察した。結果を下記表3に示す。
<評価基準>
○:インク受容層中の下層のN元素>上層のN元素
×:インク受容層中の下層のN元素≦上層のN元素
【0298】
−8.水溶性アルミニウム化合物の存在分布の確認−
得られたインクジェット記録紙の断面をミクロトームにより切り出し、SEM−EDX(日立製作所製S−2150にEDX装置を組み合わせたもの)を用いてSi元素およびAl元素のマッピング分析を行った。Si元素のマッピング画像よりインク受容層の存在位置を確認し、Al元素マッピング画像と並べて観察した。結果を下記表3に示す。
<評価基準>
○:インク受容層中の下層のAl元素<上層のAl元素
×:インク受容層中の下層のAl元素≧上層のAl元素
【0299】
(実施例5)
実施例4において、ESG−2450S−2A(島田理化工業社製;マイクロ波発生装置)を、H7G−21200(日本ガイシ社製の赤外線照射装置、200W、照射時間2.4秒)に代えたこと以外は、実施例4と同様にして、インクジェット記録紙を得ると共に、画像記録及び評価を行なった。
【0300】
(実施例6)
実施例4におけるインク受容層の形成において、第2の塗布液(上層用)にインライン混合するインライン液を13.2g/mから6.6g/mに変更したこと以外は、実施例4と同様にして、インクジェット記録紙を得ると共に、画像記録及び評価を行なった。
【0301】
(実施例7)
実施例4において、第1の塗布液及び第2の塗布液の塗布液温度を38℃から42℃に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、インクジェット記録紙を得ると共に、画像記録及び評価を行なった。
【0302】
(実施例8)
実施例4において、ESG−2450S−2A(島田理化工業社製;マイクロ波発生装置)を、ニクロム線温風ヒーター(400W、加熱時間2秒)に代え、乾燥ファン(風量:3m/分)で60℃の温風を送風するようにしたこと以外は、実施例4と同様にして、インクジェット記録紙を得ると共に、画像記録及び評価を行なった。
【0303】
(実施例9)
実施例4において、「第1の塗布液の組成」中のメチオニンスルホキシド(硫黄系化合物(1))の30%水溶液を、下記硫黄系化合物(2)の30%水溶液に代えたこと以外は、実施例4と同様にして、インクジェット記録紙を得ると共に、画像記録及び評価を行なった。
【0304】
【化30】



【0305】
【表3】



【0306】
前記表3に示すように、各実施例では、記録後の色変わりを抑制することができ、連続記録も良好に行なえ、生産性を高く維持できた。
【0307】
上記の実施例では、硫黄系化合物としてチオエーテル系化合物又はスルホキシド系化合物を用いた場合を説明したが、これら以外の既述の硫黄系化合物を用いた場合も同様の結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0308】
【図1】本発明のインクジェット記録方法で画像記録を行なうインクジェットプリンタの構成例を示す概略構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に無機微粒子及び水溶性金属化合物を含有するインク受容層を有するインクジェット記録媒体に、インクジェット法によりインクを吐出して画像を記録する画像記録工程と、
インクジェット記録媒体に記録された少なくとも前記画像を乾燥させる乾燥工程と、
を有するインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記画像記録工程は、支持体上に該支持体側から順に、無機微粒子及び含窒素有機カチオンポリマーを含む第1のインク受容層と、無機微粒子及び水溶性金属化合物を含む第2のインク受容層とを有し、前記第2のインク受容層よりも前記第1のインク受容層における含窒素有機カチオンポリマーの含有量が多くかつ水溶性金属化合物の含有量が少ないインクジェット記録媒体に画像を記録することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記乾燥工程は、102mm×152mm当たり2kJ以下の熱量を与えて乾燥を行なうことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記乾燥工程は、誘電加熱により乾燥を行なうことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記乾燥工程は、赤外線加熱により乾燥を行なうことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記乾燥工程での誘電加熱は、マイクロ波加熱であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記乾燥工程は、前記画像記録工程でのインクの吐出終了から20秒以内に乾燥を開始することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記インクの最大総吐出量が、10〜36ml/mであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記インクは、着色剤として染料を含有する染料インクであることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記第2のインク受容層の前記第1のインク受容層に対する含窒素有機カチオンポリマーの含有量比が0〜0.8であり、前記第1のインク受容層の前記第2のインク受容層に対する水溶性アルミニウム化合物の含有量比が0〜0.8であることを特徴とする請求項2〜請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記含窒素有機カチオンポリマーが、カチオン性ポリウレタン樹脂の粒子であることを特徴とする請求項2〜請求項10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
少なくとも前記第1のインク受容層が硫黄系化合物を更に含み、前記第2のインク受容層よりも前記第1のインク受容層における硫黄系化合物の含有量が多いことを特徴とする請求項2〜請求項11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記硫黄系化合物が、チオエーテル系化合物又はスルホキシド系化合物であることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記第2のインク受容層の前記第1のインク受容層に対する前記硫黄系化合物の含有量比が0〜0.6であることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−36455(P2010−36455A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202001(P2008−202001)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】