説明

インクジェット記録材料の耐光性を改善する方法

画像の耐久性は、常に、サーマルインクジェット写真媒体(10)にとって最も重要な特性の1つである。現在のところ、ポリビニルアルコール、セルロース及びゼラチンが、インクジェット媒体の開発に用いられてきた最も一般的なバインダーである。ポリビニルアルコールとセルロースの双方は、極めて良好な画像耐久性をもたらすものではない。ゼラチンは、実に優れた画像耐久性をもたらすが、低温及び乾燥状態で酷いカールを引き起こすという問題を抱えている。それ故、良好な耐久性と耐湿性を実現するために新しいバインダーを見出す又は開発することは、重要な焦点である。水溶性ポリビニルアセタールの使用は、インクジェット印刷物に良好な耐光性及び耐湿性をもたらすだけでなく、低温及び乾燥状態でのカール並びに硬直の問題を最小限とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、印刷画像をその上に受容する媒体製品に関し、より詳細には、改善された耐光性を有する少なくとも1つのインク受容層を各々有する画像受容シート材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子印刷技術分野においては、かなりの開発がなされてきた。現在、インクを迅速且つ正確な方法で分配し得る種々の高効率印刷システムが存在する。サーマルインクジェットシステムは、この点に関して特に重要であり、商業的成功を収めてきた。
【0003】
ここで議論する種々のインク転写技術及びシステム(重ねて、他を排除するものではないが主としてサーマルインクジェット技術に関して)を利用して印刷画像を効果的に生成するためには、当該目標を効率よく達成し得るところのインク受容印刷媒体材料を採用しなければならない。理想的には、印刷媒体材料は、最大の効率を達成するために、限定はしないが以下をはじめとする多数の利点や利益をもたらす必要がある−(1)高度の耐光性、この場合、用語「耐光性」とは、一般的に、天然又は人工の光の存在下で時間が経過しても、実質的な褪色、曇り、歪み等を生じず安定に画像をその上に保持し得る印刷媒体製品の能力に関するものと定義される;(2)物体等との接触に起因する印刷完了直後のスマッジや画像劣化を防止するための迅速な乾燥時間;(3)カラーブリード(例えば、多色インク成分の互いへの望ましくない移動)やそれに関連する問題によって引き起こされる画像劣化を防止するような、インク材料の高速且つ完全な吸収;(4)高い耐水性特性(用語「耐水性」とは、一般的に、画像が水分と接触して置かれる際に、褪色、流出(run−off)、歪み等をほとんど又は全く起こさない安定な画像を生成し得る印刷媒体製品の能力に関するものと定義される);(5)明瞭且つ明確な特性を有する「はっきりした(crisp)」画像の生成;(6)実質的に「耐スミア性」である印刷製品を作り出す能力、ここで、この用語は、一般に、用いられる印刷装置の構成部品から印刷オペレータの手、指等に及ぶ様々な物体で擦られるか又はその他の様式で物理的に接触した際にスミア、曇り等を呈しない画像の生成に関するものと定義される;(7)「インクコアレッセンス」として知られる望ましくない状態の抑制、ここで、この用語は、インクジェット印刷媒体に適用された湿ったインク滴が滴間の非印刷領域を無くすほど十分に広がらないために、著しい像質低下問題を引き起こす現象に関するものと定義される;(8)所望のレベルの光沢を有する印刷画像を生成する能力、これによって最終的な製品は、画像全体にわたって均一な光沢レベルを有することによって特徴付けられ、プロフェッショナルで、芸術的に好ましい印刷画像シートとなる;(9)低い材料コスト、これによって対象の印刷媒体製品を大量市場のホーム及びビジネス用として採用することができる;(10)広範なインク調合物との化学的適合性、これは、より優れた汎用性をもたらす;(11)高水準の長期にわたる画像安定性及び保持力;(12)製造並びに構成材料の観点から見た最小の複雑性、これは、製造コストの低減やより高い製品信頼性をもたらす;及び(13)製造プロセスにおける比較的少ない調節だけで製造時に迅速且つ効果的な方法で達成し得る、高レベルの光沢制御。用語「光沢制御」とは、一般に、製造時に、写真品質画像の生成に向く高光沢レベルを、望まれるなら半光沢特性を、又は望まれるなら他の光沢特性を有する印刷媒体製品を作り出す能力に関するものとここでは定義される。詳細には、製造プロセスは、処理ステップや材料の調節をそれ程必要とせずに様々な異なる光沢特性を達成できるよう高度に制御できなければならない。
【0004】
過去においては、広範な構成成分、製造技術、積層配置等を用いて、多数の特定目的に向く多くの各種媒体シートが製造されてきた。例えば、広範な目標を達成すべく印刷媒体製品の製造において以下の事項が研究され且つ採用されてきた−即ち、用いる材料の種類、当該材料の量、それらの相対的粒径、選択した特定の積層配置、に関する変更、並びに細孔径、細孔容積、層厚、粒子配向、表面粗さ、表面硬さ、空気透過性、及びその他の類似パラメータをはじめとする種々の因子の調節。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐光性及び耐湿性は、インクジェットプリンタに使用される写真媒体にとって、最も問題となる特性のうちの2つである。「写真媒体」とは、写真品質又は写真に近い品質を有する印刷媒体を意味する。当該写真媒体は、通常、少なくとも1つのインク受容層と表面コーティングとを有する。
【0006】
インクジェットプリンタにおいて写真媒体の良好な耐光性と耐湿性を維持するために、ゼラチン及びその他の高分子バインダーが用いられてきた。しかしながら、写真媒体を製造するためには、インク受容層及び表面層をはじめとする多層コーティング技術が利用される。高分子バインダーは、表面コートに使用される主要なバインダーであるため、現行の設計で耐湿性及び耐光性に関して最良の解決をもたらすことは、染料とPVOHバインダーとの間の本質的な結合が不十分なために、現在まで不可能であった。
【0007】
各種媒体製品が従来技術において既知であるにもかかわらず、前述の利点の改善をはじめとする、印刷媒体材料(即ち、インク受容シート)に対する要求が依然として存在する。より詳細には、耐光性の向上が特に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する実施形態によれば、水溶性ポリビニルアセタールをインク受容層におけるバインダーの一部又は全てとして採用することで、耐光性及び耐湿性の両方において顕著な改善をもたらす。
【0009】
詳細には、基材と、その上の少なくとも1つのインク受容層と、そして、任意に、最上部インク受容層上の表面保護コートとを含んで成るインクジェット写真媒体の少なくとも耐光性を改善する方法が提供され、前記少なくとも1つのインク受容層は、少なくとも1つの顔料及び少なくとも1つのバインダーを含み、前記方法は、水溶性ポリビニルアセタールを含有するように前記少なくとも1つのバインダーを調合すること、又は前記少なくとも1つのインク受容層の下に前記水溶性ポリビニルアセタールの層を形成することの何れかを包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するために最良の形態であると発明者が現在考えている特定の実施形態に関して、詳細に言及する。適切な代替実施形態についてもまた簡単に説明する。
【0011】
従来、印刷媒体は、2つ以上の層がある場合は、積層順に、基材、その上の1つ又は複数のインク受容層、及び、任意に、上部保護コート若しくは層を含んで成る。唯一の図は、基材12、その上に形成された下層14とを含む印刷媒体10を示す。下層14上に支持層16が形成される。支持層16上に画像層18が形成される。任意の表面保護層20は、前記画像層18上に形成される。
【0012】
本書における実施形態による好ましい印刷媒体製品10を製造するために、基体構造体、「基体」、又は「基材」12(上述の全ての語句は、構造的、機能的観点から等価と考えられる)が最初に設けられ、その上に、印刷媒体製品に関連した他の層若しくは層群が存在する。基材に関しては、限定はしないが、紙、プラスチック、金属、又はそのような材料の複合体から成るものをはじめとする多くの各種構成材料を用いることができるが、紙(市販されている任意の種類)が好ましい。選択した基材12は、その片方若しくは両方の面が被覆されていても被覆されていなくてもよい。最適な結果をもたらすべく設計された好ましい実施形態においては、当該基材は、上側表面12a(ここでは、「第1面」とも見なされる)及び下側表面12b(ここでは、「第2面」とも見なされる)を含み、当該表面/面の少なくとも1つ(好ましくは上側表面又は両表面)は、下側コーティング層14の形態の、実質的に非多孔性、非吸収性、且つインク不浸透性の組成物で覆われている。この実施形態に関する代表的且つ模範的コーティング組成物としては、紙基材12が用いられる場合にはポリエチレンが挙げられる。しかしながら、支持層16をはじめとする他のコーティング/基材の組合せを制限なしに用いることができ、又は日常的な予備試行試験によって判断する際に望まれるならば、基材コーティングの適用を完全に省くこともできる。
【0013】
少なくとも1つの「インク受容層」18が、基材12の上方及び上に配置される(例えば、設けられる)(そして、必ずしも必要とはされないが、「直接的な付着」によってそこに固定されることが好ましい)。機能的な見地からは、インク受容層18は、媒体製品10に関して高度の「容量」(例えば、インク保持能力)を与え、印刷画像を含む媒体製品の急速乾燥を助長し、平滑/平坦な表面の媒体製品を作り出し、所望の光沢特性が最終製品に維持されることを保証し、そして望ましいインクコアレッセンス抑制度合を有する安定な印刷画像を生成する等するように設計される。これらの目標を達成するべく、インク受容層18は、典型的に、限定はしないが、結合能力、インク吸収能力、印刷画像を極めて安定に固定し保持する能力等をはじめとする多数の機能を有する少なくとも1つのバインダー材料を含む。
【0014】
インク受容層18は、典型的に、約9〜99wt%、好ましくは80〜99wt%にて、少なくとも1つのバインダー組成物をその中に含む。前出のパーセント値(並びに、別途指示のない限りここに表す他の全ての数量)は、単一のバインダーを用いようと、複数のバインダーを組み合わせて用いようと、問題となっているバインダー組成物(群)の全量に関する。これらの材料の例示的で好ましい例としては、限定はしないが、以下が挙げられる:ポリビニルアルコール及びその誘導体、デンプン、SBRラテックス、ゼラチン、アルギン酸塩、カルボキシセルロース材料、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、カゼイン、ポリエチレングリコール、ポリウレタン(例えば、変性ポリウレタン樹脂分散物)、ポリアミド樹脂(例えば、エピクロロヒドリン含有ポリアミド)、それらの混合物、及び制限なしに他のもの。実際には、インク受容層18に補足的なバインダー組成物を任意に使用することも考えられるべきであることを理解されたい。同様に、多数の(例えば、少なくとも2つ以上の)バインダーを用いる場合、本実施形態のさらに別の形態では、使用されている補足的なバインダーの全てが互いに異なっている場合が包含される。例えば、(1)エピクロロヒドリン含有ポリアミドと、(2)ポリ(ビニルアルコール−エチレンオキシド)コポリマーと組み合わせられた変性ポリウレタン樹脂分散物との混合物は、好ましい結果をもたらすことができる。
【0015】
周知のように、上で議論したインク受容層18は、さらに、バインダー(群)と組み合わせて、1つ又は複数の追加の成分をその中に含むことができる。例えば、微粒子又は非微粒子特性をもつ(有機又は無機の)少なくとも1つの顔料を当該インク受容層内に用いることができる。そのような顔料を用いる場合、インク受容層18は、任意に、約1〜10wt%の顔料をその中に含む。再度、前出のパーセント値(並びに、別途指示のない限り、ここに表す他の全ての数量)は、単一の顔料を用いようと、複数の顔料を組み合わせて用いようと、問題となっている顔料の全量に関する。本発明のインク受容層若しくは層群において用いるのに適する例示的で好ましい(非限定的な)顔料としては、限定はしないが、下記の組成物:シリカ(沈降、コロイド、ゲル、ゾル、若しくはヒュームド状の)、カチオン変性シリカ(例えば、例示的且つ非限定的な実施形態においてはアルミナ処理シリカ)、カチオン高分子バインダーで処理されたシリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、擬ベーマイト、硫酸バリウム、粘土、二酸化チタン、セッコウ、及びそれらの混合物が挙げられる。また、インク受容層18中に顔料組成物若しくは組成物群を用いることも任意であるということも理解されたい。
【0016】
本書における教示によれば、水溶性ポリビニルアセタールを、多層構造におけるインクジェットインク受容層18中に組み入れて、その中のバインダー、例えばポリビニルアルコール、を部分的又は全体的に置換する。あるいはまた、水溶性ポリビニルアセタールバインダーを、インク受容層18の下の支持層16として与える。いずれの場合においても、水溶性ポリビニルアセタールの存在は、良好な画像耐久性(耐光性)並びに耐湿性を実現するのに役立つ。
【0017】
水溶性ポリビニルアセタールをインク受容層18の一部として取り入れるとき、在来のバインダー、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)は水溶性ポリビニルアセタールと部分的に置き換えられる。好ましくは約5〜80wt%、より好ましくは5〜50wt%、最も好ましくは5〜30wt%のPVA(又はその他のバインダー)を、水溶性ポリビニルアセタールで置き換える。
【0018】
PVA(PVOH)は、他の高分子バインダーと比較して、良好な光沢性、耐湿性、耐光性、並びにより小さいカールをもたらすが、それでもカール以外の性質においては、ゼラチンより悪い。しかしながら、ゼラチンは、極めて強いカール欠陥を呈し、これは、PVOHをはじめとする他のほとんどの高分子バインダーよりも悪い。部分的な置換は、性能によって決定される。100%の置換を行うこともできるが、PVOHは良好な画像光沢及び色域等をもたらすため、他の望ましくないかね合いが存在することになろう。
【0019】
水溶性ポリビニルアセタールは、比較的最近まで市場で容易に入手できなかった。
【0020】
本書における実施形態は、任意の特定の追加成分やそれらの量に限定されるものではなく、望まれるならば、以下の代表的且つ非限定的な追加成分を用いることができる:(1)少なくとも1つの顔料(追加のバインダー組成物を何ら含まない);(2)少なくとも1つの追加バインダー組成物(顔料を何ら含まない);又は(3)少なくとも1つの顔料と少なくとも1つの追加バインダー組成物との組合せ。また、前出の変更形態の何れか又は全ては、日常的な予備試行試験によって判断する際に必要とされ望まれるならば、界面活性剤から潤滑剤組成物や防腐剤に及ぶ1つ又は複数の補助添加剤(以下においてさらに議論する)を混合し得ることに留意されたい。同様に、本実施形態では、所望のポリビニルアセタールを含むインク受容層18は特定の数に限定されるべきではなく、それは、1層から、互いに直に隣り合っているか又は1つ以上の他の材料層によって分離されている複数の層にまで及ぶことがある。前述のように、本発明の媒体製品の表面/最上部/最外側層は、少なくとも1つのポリビニルアセタールを含む範囲請求したインク受容層18を含むことが好ましい。しかしながら、範囲請求したポリマーから構成されるインク受容層若しくは層群18は、当該層(群)が、何らかの形で、プリンタユニットによってもたらされるインク材料の全て若しくは一部を受容できる限り、必要とされ望まれるならば、印刷媒体製品の上又は内部のどこに配置されてもよいということも意図されている。これらの変更形態の全てはまた、ここで議論する他の各実施形態に適用されると共に、以下に説明する、特許請求の範囲によって網羅されるものにも適用することができる。
【0021】
顔料及びバインダー以外の機能を果たすように主として設計されている上述の補助添加剤に関しては、重ねて、日常的な予備試行試験によって判断される際には、多数の当該組成物を用いることができる。例えば、これらの添加剤には、限定はしないが、以下の材料が挙げられる:充填剤、界面活性剤、潤滑剤、光安定化剤、防腐剤(例えば、酸化防止剤)、一般的な安定剤、及び制限なしにその類(それらの混合物など)。これらの添加剤は、様々な量でインク受容層18内に含有させることができるが、それらは、重ねて、任意成分と考えられるべきであり、「必要に応じて」用いられるべきである。さらに、それらは、その層が顔料及び/又は追加のバインダー組成物を含んでいようがいまいが、特許請求したポリビニルアセタールポリマーを有するインク受容層18中に用いることができる。
【0022】
上に挙げた重要な利点をもたらすべく設計されている、問題となっているインク受容層18には、(1)少なくとも1つのインク受容層が用いられ、この層が、全体的又は部分的に1つ以上のポリビニルアセタールポリマーから構成されており、且つ(2)当該インク受容層が選択されたプリンタユニットによって媒体製品に分配されるインク材料の少なくとも幾らかをその上又は内部に受容するように、当該インク受容層が特許請求した媒体製品10の上若しくは内部に配置されることを条件として、限定なしに多数の各種変更形態が包含され得る。従って、最低限、基材12と、その層又はその下の層(支持層16として)が全体的に又は部分的に少なくとも1つのポリビニルアセタールポリマーから生成されているところの少なくとも1つのインク受容層18とを含んで成る印刷媒体製品10を形成することは、当該教示の新規且つ機能的に重要な特徴であり、両形態が本特許請求の範囲内に包含される。
【0023】
ここで用いられる水溶性ポリビニルアセタールポリマーは、ポリビニルアルコールとアルデヒドとの反応に基づく。
【0024】
【化1】

【0025】
式中、Rはアルキルである。
【0026】
上記の反応は、ポリビニルアセタールへの100%変換を想定しているが、実際は、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセチル、及びポリビニルアルコールのコポリマーが形成される。
【0027】
【化2】

【0028】
式中、x+y+z=100である。水溶性生成物を得るためには、アセタール化度(x値)はヒドロキシ含量よりも低い。詳細には、xは、好ましくは約0.1〜30モル%の範囲にあり、そしてy<zである。さらに、Rは低次、好ましくは炭素原子数1〜2であるべきである。当該樹脂の粘度は、約1,000〜6,000mPa.sのオーダーである。上述の水溶性ポリビニルアセタールは、積水化学社(日本、大阪)からS−LEC K KWポリビニルアセタール樹脂として市販されている。
【0029】
一般に、PVOHに関して十分な水溶性を得るには、y/zの比は、x=0.1と仮定した場合、約10:90〜1:99の範囲である。それ故、xが30%に等しいなら、x(アセタール領域)はz(PVOH領域)の犠牲の下に増大するため、yは10%〜1%となり、zは60%〜69%となるであろう。x、y及びzの概略的な範囲を以下に記す。
x=0.1〜30%
y=1〜10%
z=9〜99%
【実施例】
【0030】
実施例1.インク受容層の下のポリビニルアセタール層
(a)フォトベース用紙から成る基材と、下表Iに挙げた組成物から成る下層14と、水溶性のポリビニルアセタールコポリマー(100%)を含む支持層16と、下表IIに挙げた組成物から成る画像層(インク受容層)18とを含んで成る写真媒体を作製した。アンダーコート層及び画像層は、記載のコーティング重量(g/m)にてコーティングした。
【0031】
【表1】

【0032】
下層14に関しては、ゼラチンは、写真等級ゼラチンであり、DGF(ドイツ)から入手した。Triton X−100(界面活性剤)とグリセロールは、両方とも、Aldrich Chemicals(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手した。Mowiol 2688はポリビニルアルコールであり、Clariant Corporation(ノースカロライナ州シャーロット)から入手した。ピリジンタイプの硬化剤である硬化剤OB1207は、H.W.Sands Corporation(フロリダ州ジュピター)から入手した。当該組成物は、Mayerバーを用いて、フォトベース用紙上にコーティングした。
【0033】
100%水溶性ポリビニルアセタールコポリマーから成る支持層16を、上記の下層14の上に形成した。この場合、当該コポリマーは、積水化学会社のS−LEC K KW−3ポリビニルアセタール樹脂であった。
【0034】
次いで、インク受容層18を、支持層16の上にコーティングした。
【0035】
【表2】

【0036】
インク受容層18に関しては、この実施例に用いたゼラチンは写真等級ゼラチンであり、DGF(ドイツ)から入手した。カチオンポリマーはスチレン−アクリルコポリマーであった。Triton X−100(界面活性剤)とグリセロールは、両方とも、米国ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich Chemicalsから入手した。WO−320Rは変性ポリビニルアルコールであり、日本合成化学(日本、大阪)から入手した。セルロースポリマーであるCuiminal MHPC 100は、Hercules Incorporated(デラウェア州ウィルミントン)から入手した。フッ素系界面活性剤であるLodyne S107Bは、Ciba Specialty(ニューヨーク州テリータウン)から入手した。界面活性剤10Gは、Arch Chemicals,Inc.(コネチカット州ノーウォーク)から入手した。シリカGasil HP39は、INEOS Silicas Americas LLC(イリノイ州ジョリエット)から入手した。当該組成物は、Mayerバーを用いて、支持層16の上にコーティングした。
【0037】
Hewlett−Packardのインクジェット78インクを用いて、写真媒体を印刷した。
【0038】
米国イリノイ州シカゴのATLAS Material Testing Technology LLC製のATLAS HPUV(商標)屋内化学線露光システムを用いて耐光性を測定した。「劣化に至る年数」は、劣化ポイントまでの光学濃度変化を推定することによって評価し、光学濃度変化の測定は、5年シミュレーション時間に基づいた。当該シミュレーションは、光露光の線量が400ルックス/時間であり、露光時間が12時間/日であるという仮定に基づいている。それ故、5年間の全光露光線量は8760キロルックスである。
【0039】
下表IIIに挙げたように、以下の結果を得た。(1)比較対照(同一の下層14とインク受容層18、但し、支持層16無し)(2)上記の層組成物、(3)3層(下層14、支持層16、及びインク受容層18)に代えて、水溶性ポリビニルアセタールから成る単層、及び(4)再度、3層(下層14、支持層16、及びインク受容層18)に代えて、ポリビニルアルコールから成る単層、について比較を行った。後者の2つの場合には、そのコーティング重量は、それぞれ20g/mであった。
【0040】
【表3】

【0041】
上の表から分かるように、上記の調合物と、水溶性ポリビニルアセタールから成る単層は、比較対照に勝り、且つPVAの単層にも勝る、相当な耐光性の改善を示した。
【0042】
実施例2a.インク受容層中のポリビニルアルコールの、ポリビニルアセタールとの部分的な置換
本実施例では、25wt%のポリビニル(WO−320R)を、水溶性ポリビニルアセタール(KW−3)と置き換えた。インク受容層18は、下表IVに挙げた組成物を含むものであった。基材12及びアンダーコート層14は、実施例1と同一であり、支持層16はなかった。
【0043】
【表4】

【0044】
この組合せについての耐光性の比較から、PVOHを含み且つ水溶性ポリビニルアセタールにより置換されていないインク受容層のそれに優る改善された耐光性が立証された。
【0045】
実施例2b.インク受容層中のポリビニルアルコールの、ポリビニルアセタールとの部分的置換
本実施例では、75wt%のポリビニル(WO−320R)を、水溶性ポリビニルアセタール(KW−3)と置き換えた。インク受容層18は、下表Vに挙げた組成物を含むものであった。基材12及びアンダーコート層14は、実施例1と同一であり、支持層16はなかった。
【0046】
【表5】

【0047】
この組合せについての耐光性の比較から、PVOHを含み且つ水溶性ポリビニルアセタールにより置換されていないインク受容層のそれに勝る改善された耐光性が立証された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
耐光性を改善するためにポリビニルアセタールを利用することは、光沢性のインクジェット印刷媒体の製造において有用性を見出すものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本書で採用した印刷媒体の一実施形態の構造


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(12)と、その上の少なくとも1つのインク受容層(18)と、任意に、最上部のインク受容層上の表面保護コート(20)とを含んで成るインクジェット写真媒体(10)の少なくとも耐光性を改善する方法であって、前記少なくとも1つのインク受容層(18)が、少なくとも1つの顔料及び少なくとも1つのバインダーを含み、前記方法が、水溶性ポリビニルアセタールを含有するように前記少なくとも1つのバインダーを調合すること又は前記少なくとも1つのインク受容層(18)の下に前記水溶性ポリビニルアセタールの層(16)を形成することの何れかを包含する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバインダーの、前記少なくとも1つのインク受容層(18)中における濃度が9〜99wt%の範囲内であり、且つ全バインダー濃度のうち、前記全バインダー濃度の少なくとも5wt%が前記水溶性ポリビニルアセタールからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのバインダーの前記濃度が、80〜99wt%の範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのバインダーが、前記ポリビニルアセタールを100%未満にて含み、且つポリビニルアルコール及びその誘導体、デンプン、SBRラテックス、ゼラチン、アルギン酸塩、カルボキシセルロース材料、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、カゼイン、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのバインダーをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶性ポリビニルアセタールが、5〜80wt%の範囲内の濃度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの顔料が、前記少なくとも1つのインク受容層中において、1〜10wt%の濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの顔料が、シリカ、カチオン変性シリカ、カチオン高分子バインダーで処理されたシリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、擬ベーマイト、硫酸バリウム、粘土、二酸化チタン、セッコウ、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのインク受容層(18)が、バインダーとして約5〜50wt%のポリビニルアセタールと、少なくとも0.5〜10wt%のシリカ顔料とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶性ポリビニルアセタールが、5〜30wt%の範囲内の濃度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載のインクジェット写真媒体(10)の少なくとも耐光性を改善する方法であって、前記少なくとも1つのインク受容層(18)が、少なくとも1つの顔料と、ポリビニルアルコールを含有する少なくとも1つのバインダーとを含み、前記方法が、前記少なくとも1つのバインダー中の前記ポリビニルアルコールを少なくとも部分的に水溶性ポリビニルアセタールと置換することを包含する、方法。

【公表番号】特表2007−511387(P2007−511387A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533646(P2006−533646)
【出願日】平成16年6月8日(2004.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/018307
【国際公開番号】WO2004/110776
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】