説明

インクジェット記録材料の製造方法

【課題】インク吸収性、発色性、及び耐光性に優れたインクジェット記録材料を高い生産性にて製造する方法を提供する。
【解決手段】非吸水性支持体上に、最低造膜温度が40℃以上である水分散性樹脂、ほう酸のアルカリ金属塩、pKaが4.0以下の酸を含有する下塗り層用塗布液を塗布し、その後、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子を主体に含有し、かつ該無機微粒子のバインダーとしてポリビニルアルコールまたはその誘導体を含有するインク受容層用塗布液を塗布することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録材料の製造方法に関し、インク吸収性、発色性、及び耐光性に優れたインクジェット記録材料を高い生産性にて製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、紙やプラスチック樹脂フィルム等の支持体上にインク受容層を設けてなる記録材料が知られている。支持体上のインク受容層は二つのタイプに大別される。一つのタイプは、水溶性ポリマーを主成分とするインク受容層であり、もう一つのタイプは無機顔料と樹脂バインダーを主成分とする多孔質のインク受容層である。
【0003】
前者のタイプのインク受容層は、水溶性ポリマーが膨潤することによってインクを吸収する。後者のタイプのインク受容層は、無機顔料によって形成された空隙にインクを吸収する。このようなインクを吸収するメカニズムの違いから前者のタイプは膨潤タイプ(あるいはポリマータイプ)、後者のタイプは空隙タイプと呼ばれている。一般に前者の膨潤タイプはインク受容層が連続的かつ均一な被膜となるので光沢に優れるが、インク吸収速度、つまり印字後の乾燥性に劣る。これに対し後者の空隙タイプはインク吸収性に優れ印字濃度が高いという特徴を有する。
【0004】
近年、デジタルカメラの普及により写真印画紙並に高い光沢や画質が求められる。このような用途に用いるインクジェット記録材料の支持体として紙に代表される吸水性支持体を利用すると、画像を印字した際に記録材料に波打ちや皺が生じるコックリングと呼ばれる問題が生じる。これに対しポリオレフィン樹脂被覆紙やプラスチック樹脂フィルム等の非吸水性支持体を利用した記録材料はコックリングが生じないので、上記した写真印画紙並に高い光沢や画質が求められる記録材料の支持体として好適に利用される。紙等の吸水性支持体は支持体にある程度のインク吸収性を担わせることができるために前述の膨潤タイプのインク受容層を用いることもできる。一方、非吸水性支持体は吸水性支持体と異なり支持体自身にインク吸収性がないためインク受容層のみでインクを吸収する必要がある。そのため非吸水性支持体には空隙タイプのインク受容層が好適に利用され、インク受容層が含有する無機顔料として平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子を利用すると、高いインク吸収性や印字濃度に加え、非常に高光沢な記録材料が得られる。
【0005】
空隙タイプのインク受容層に好適に利用される平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子としては、例えば特許第3321700号公報、特許第3371365号公報、特許第3798169号公報(特許文献1)等に気相法シリカの使用例が、特許第3411151号公報、特開平10−181190号公報等に粉砕沈降法シリカの使用例が、特開2001−277712号公報に粉砕ゲル法シリカの使用例が、特開2002−225423号公報(特許文献2)にはアルミナまたはアルミナ水和物の使用例が開示されている。
【0006】
上記特許文献1等の公報の方法によればインク吸収性、光沢性、発色性、耐水性、及び耐湿度にじみ性等に優れたインクジェット記録材料を得ることができる。しかしながらその一方で、該記録材料は耐光性の点で十分満足できるものではなく、また特許文献1等の公報ではインク受容層は同一塗布液中に気相法シリカとそのバインダーであるポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコールの架橋剤であるほう酸を含有せしめた塗布液が塗布される。該塗布液は特に低温では著しく増粘してしまうため、結果として塗液としての取扱いが極めて困難になるだけでなく塗布適性も低下してしまい、塗布欠陥を生じてしまうため生産性が低下する。この欠点を補うため、塗布液は常温よりもやや高めに保温する必要があるが、該塗布液の経時に伴う液物性の変化や凝集物の発生等の問題等を依然として有するものであった。
【0007】
インク受容層用塗布液にほう酸のアルカリ金属塩を含有させずに、ほう酸のアルカリ金属塩を含有する塗布液を予め支持体上に塗布し乾燥させた後に、無機微粒子やポリビニルアルコール等を含有するインク受容層用塗布液を塗布する方法が特開2007−38651号公報、国際公開第2006/132286号パンフレット(特許文献3、4)等に記載されている。この方法によれば、光沢、画質、インク吸収性の優れたインクジェット記録材料が得られるとされている。これらに記載される製造方法では予め支持体上に塗布された架橋剤が瞬時に拡散されないために製造工程上、インク受容層塗布液を塗布した後の乾燥条件を乾燥律速ではなく時間律速で設定する必要がある。つまり、インク受容層中のバインダーの架橋反応が十分に進行する前に乾燥が終了してしまうとインク受容層にひび割れが生じてしまうが、この架橋反応に要する時間と乾燥に要する時間とを比較すると架橋反応に要する時間のほうが長くなり、設備の乾燥能力を十分に活かさずに製品を製造することとなる。その結果として生産性が低くなるという問題があった。
【0008】
一方、空隙タイプのインク受容層が酸を含有することは従来から知られており、例えば、特開平10−217603号公報(特許文献5)にはアルミナ水和物を含有するインク受容層が無機酸とカルボキシル基を有する有機酸を含有することでビーディングの発生やブロンズ化を低減できることが記載され、特開2003−291491号公報(特許文献6)にはアルミナ水和物の分散助剤として特定量の1価の酸試薬(塩酸、硝酸等)を用いることが記載され、特開2007−69593号公報(特許文献7)にはpKaが2.0〜5.0である有機酸と特定の樹脂バインダー及び架橋剤を利用することで、インク吸収性、発色性等に優れ、印字部周辺の変色が改善された記録材料が記載され、特開2009−172830号公報(特許文献8)にはインク受容層がアルミナ被覆コロイダルシリカとpKaが0以下の酸を含有することで光沢性とインク吸収性が改善された記録材料が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3798169号公報
【特許文献2】特開2002−225423号公報
【特許文献3】特開2007−38651号公報
【特許文献4】国際公開第2006/132286号パンフレット
【特許文献5】特開平10−217603号公報
【特許文献6】特開2003−291491号公報
【特許文献7】特開2007−69593号公報
【特許文献8】特開2009−172830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、インクジェット記録材料の製造方法に関し、インク吸収性、発色性、及び耐光性に優れたインクジェット記録材料を高い生産性にて製造する製造方法を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、非吸水性支持体上に、最低造膜温度が40℃以上である水分散性樹脂、ほう酸のアルカリ金属塩、pKaが4.0以下の酸を含有する下塗り層用塗布液を塗布し、その後、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子を主体に含有し、かつ該無機微粒子のバインダーとしてポリビニルアルコールまたはその誘導体を含有するインク受容層用塗布液を塗布することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法により達成された。
【発明の効果】
【0012】
本発明によればインク吸収性、発色性、及び耐光性に優れたインクジェット記録材料を高い生産性にて製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のインクジェット記録材料のインク受容層が主体に含有する平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子について説明する。ここで無機微粒子を主体に含有するとは、インク受容層における全固形分に対して前記無機微粒子を50質量%以上含有することであり、より好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは65質量%以上であり、上限は95質量%程度である。本発明でいう平均二次粒子径は希釈分散液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定して得られる。無機微粒子としては、合成非晶質シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等公知の各種無機微粒子が挙げられるが、合成非晶質シリカ、アルミナ、アルミナ水和物が好ましく用いられ、合成非晶質シリカが特に好ましく用いられる。合成非晶質シリカには、気相法によるものと湿式法及びその他によるものがある。気相法シリカは乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素とともに燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0014】
本発明のインク受容層に用いられる気相法シリカの一次粒子の平均粒径は、5〜30nmが好ましく、更に15nm以下が好ましい。また、より好ましくは一次粒子の平均粒径が5〜15nmでかつBET法による比表面積が200m/g以上のものを用いる。本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子一個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。またここで記載する平均一次粒子径とは、分散された粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として求められる。
【0015】
湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカ二次粒子は穏やかな凝集粒子となり、比較的粉砕しやすい粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させてケイ酸ゾルを生成する。ケイ酸ゾルは次第に重合し、一次粒子を形成し、更に三次元的に凝集体を形成し、ゲル化する。このシリカを気流粉砕等の一般的な方法で粉砕して微粉化する。即ちゲル法では、酸性サイドで反応重合させ、ゲル状になるまで静置し、水洗して乾燥しゲル法シリカを得る。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップジェルとして、水澤化学工業(株)からミズカシルとして市販されている。なお、コロイダルシリカは湿式法シリカに属するが、塗層中で凝集構造を取り難くインク吸収能力が極端に低いため、本発明のインク受容層が主体に含有する無機微粒子には適していない。
【0016】
本発明のインク受容層に用いられる無機微粒子の平均二次粒子径は500nm以下であり、前記気相法シリカ及び湿式法シリカは、カチオン性化合物の存在下で、該シリカの平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは10〜300nm、更に好ましくは20〜200nmに分散あるいは粉砕したものが使用できる。分散、あるいは粉砕する方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカまたは湿式法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散・粉砕を行うことが好ましい。
【0017】
上記気相法シリカ、及び湿式法シリカの分散あるいは粉砕に使用するカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号公報、特開昭59−33176号公報、特開昭59−33177号公報、特開昭59−155088号公報、特開昭60−83882号公報、特開昭62−198493号公報、特開平1−40371号公報、特開平6−234268号公報、特開平7−125411号公報、特開平10−193776号公報、特許第1606817号公報、特許第1609157号公報、特許第1840377号公報、特許第1991771号公報、特許第2011849号公報、特許第2667162号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性及び分散液粘度の面でこれらのカチオンポリマーの分子量は、2000〜10万程度が好ましく、特に2000〜3万程度が好ましい。
【0018】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられ、中でもアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。更に、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
【0019】
周期表4A族元素からなる水溶性化合物としては、チタンまたはジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明において、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。
【0020】
本発明に用いられるアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を500nm以下、好ましくは20〜300nm程度まで粉砕したものが使用できる。
【0021】
本発明のアルミナ水和物はAl・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。アルミナ水和物はアルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは20〜300nmである。
【0022】
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用される。
【0023】
本発明において、インク受容層に主体に含有される無機微粒子の塗布量はインク吸収性の観点から8〜40g/mの範囲が好ましく、10〜35g/mの範囲がより好ましい。このように多くの無機微粒子を含有するインクジェット記録材料は高い生産性にて製造することが難しいが、本発明はこの様態において特に有効である。
【0024】
本発明のインク受容層は、被膜としての特性を維持するためにバインダーを有する。このバインダーとしては、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく、その親水性バインダー使用にあたっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。以上のことからポリビニルアルコールまたはその誘導体が親水性バインダーとして用いられる。
【0025】
本発明のインク受容層中のポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0026】
本発明のインク受容層中に使用することのできるポリビニルアルコール誘導体としては、カチオン変性、シラノール変性、アニオン変性、アセトアセチル変性、ジアセトンアクリルアミド変性等の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特許第2039166号公報に記載のような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールが好適に用いられる。
【0027】
また本発明のインク受容層中には他のバインダーも併用することができるが、その場合ポリビニルアルコールに対して40質量%以下であることが好ましい。本発明のインク受容層に含有されるこれらバインダーの総量は、インク受容層に主体に含有される無機微粒子の質量に対して1〜50質量%が好ましい。より好ましくは3〜40質量%であり、更に好ましくは5〜35質量%である。
【0028】
本発明のインク受容層塗布液はほう酸やほう酸のアルカリ金属塩を実質的に含有しないことが望ましいが、微量なら含有することができる。許容される含有量としては、本発明の下塗り層に使用されるほう酸のアルカリ金属塩に対して20質量%以下であることが望ましく、更に10質量%以下が望ましい。
【0029】
本発明において、耐水性、及びインク吸収性を向上させる目的でインク受容層はほう酸やほう酸のアルカリ金属塩以外の適当な硬膜剤で硬膜することができる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、米国特許第2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。ほう酸やほう酸のアルカリ金属塩以外の硬膜剤の添加量は下塗り層、及びインク受容層が含有するほう酸のアルカリ金属塩の総量に対して0.1〜25質量%程度であり、好ましくは0.2〜15質量%である。
【0030】
本発明においてインク受容層用塗布液を塗布するタイミングは、後述する下塗り層用塗布液を塗布した後のいかなる段階でもよいが、塗布時の欠陥をより減少させるという観点から、下塗り層塗布液を塗布、乾燥した後が好ましい。
【0031】
本発明の下塗り層は、下塗り層の均一性の観点からバインダーを必要とする。バインダーを含有しない場合は、ほう酸等の粒状の固形物が支持体上に形成されることになり、光沢感の低下を招くため好ましくない。かかるバインダーは下塗り層用塗布液の経時安定性の観点から、ほう酸のアルカリ金属塩と架橋反応を起こさないことが重要である。また下塗り層のバインダーには、インク受容層に架橋剤を瞬時に供給する必要があることから乾燥時には連続的な被膜を形成しないことが重要である。連続的な被膜を形成するものをバインダーとして選択した場合には、該被膜から架橋剤が溶出・拡散するのに時間がかかってしまい、その結果インク受容層への架橋剤の拡散速度、及び拡散量が不十分になってしまうため好ましくない。このような理由から下塗り層のバインダーには最低造膜温度が40℃以上である水分散性樹脂が選択される。下塗り層のバインダーに最低造膜温度が40℃よりも低い水分散性樹脂を使用した場合、下塗り層用塗布液を塗布し乾燥した時に連続的な被膜が形成され、ついでインク受容層塗布液を塗布した場合に下塗り層に含有されている架橋剤がインク受容層に十分拡散しない。そのため、必要量以上の架橋剤を下塗り層に塗布しておく必要が生ずる。下塗り層のwet塗布量が多くなることは生産性の低下を招くので好ましくない。
【0032】
本発明に使用される、最低造膜温度が40℃以上の水分散性樹脂は種々のものを使用することができる。例えば、ポリウレタンエマルションやビニルモノマーを重合させたエマルション等である。
【0033】
適当なビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、及びそのエステル化合物(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル等)、α−置換アクリル酸及びそのエステル化合物(メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルメタクリレート等)、アクリルアミド及びその置換物(ブチルアクリルアミド、ヘキシルアクリルアミド等)、ビニルエステル(例えば酢酸ビニル)、ハロゲン化ビニル(例えば塩化ビニル)、ハロゲン化ビニリデン(例えば塩化ビニリデン)、ビニルエーテル(ビニルメチルエーテル、ビニルオクチルエーテル等)、スチレン、ジビニルベンゼン、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル等が挙げられる。また必要な機能に応じて、共重合体やコア−シェル型の水分散性樹脂を使用してもよく、少なくとも2つ以上の水分散性樹脂をあわせて使用してもよい。
【0034】
上記水分散性樹脂の最低造膜温度は、ドライヤーの乾燥温度の関係から40℃以上である必要がある。更に低温で乾燥させる場合には、水分散性樹脂の最低造膜温度が更に低いものを使用することができるが、生産効率が低下する。最低造膜温度は50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。上限は300℃とすることが望ましい。また、該水分散性樹脂の粒子径には特に制限はないが、高い光沢感を有する記録材料を提供するため500nm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の下塗り層には、上記水分散性樹脂の他に、架橋剤のインク受容層への拡散を妨げない範囲で更に公知の樹脂バインダーを併用してもよい。例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉や各種変性澱粉、ゼラチンや各種変性ゼラチン、キトサン、カラギーナン、カゼイン、大豆蛋白、ポリビニルアルコールや各種変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等を必要に応じて併用することができる。これら樹脂バインダーの添加量は、上記水分散性樹脂の固形分量に対して20質量%以下が好ましく、更に15質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0036】
本発明の下塗り層はほう酸のアルカリ金属塩を含有する。ほう酸のアルカリ金属塩はpKaが4.0以下の酸との組み合わせで溶解度が高くなる効果が得られるため好ましい。ほう酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ほう砂、メタほう酸ナトリウム、二ほう酸ナトリウム、四ほう酸ナトリウム、六ほう酸ナトリウム、八ほう酸ナトリウムが挙げられる。これらのほう酸のアルカリ金属の中でも、ほう砂がより好ましい。本発明において用いられるほう素化合物の好ましい添加量は、インク受容層中に含有されるポリビニルアルコールまたはその誘導体の固形分量に対して1〜35質量%である。
【0037】
本発明の下塗り層はpKaが4.0以下の酸を含有する。前記したほう酸のアルカリ金属塩の水に対する溶解度は比較的低く、例えばオルトほう酸のそれは20℃で約4質量%であり、必要な添加量を塗布するためには下塗り層用塗布液のwet塗布量は必然的に多くなってしまう。しかしほう酸のアルカリ金属塩をpKaが4.0以下の酸存在下で溶解すると常温で高い濃度の水溶液が得られる。一方、本発明者は下塗り層にpKaが4.0以下の酸を用いることで、詳細な機構は不明であるが、耐光性が良くなることを見出した。かかるpKaが4.0以下の酸としては、硫酸(1.9)、硝酸(−2.0)、トリフルオロ酢酸(−0.25)、りん酸(2.12)、フッ化水素(3.45)、ぎ酸(3.75)等が好ましく用いられる。中でもpKaが1.8以下の酸が好ましく、硝酸がより好ましく用いられる。本発明に使用される下塗り層用塗布液中のpKaが4.0以下の酸の好ましい添加量は、下塗り層中のほう酸のアルカリ金属塩の固形分量に対して8質量%以上であり、より好ましくは10〜400質量%である。
【0038】
本発明の下塗り層用塗布液は実質的に無機微粒子を含有しないことが望ましい。無機微粒子を含有させると塗布液の粘度が上昇し、下塗り層用塗布液の塗布性は向上する。しかしながら本発明の下塗り層用塗布液に、例えば平均二次粒子径が500nmを超える無機微粒子を含有させた場合には、該無機微粒子の粒径に起因する光沢低下が生じるため好ましくない。
【0039】
一方、本発明の下塗り層用塗布液に平均二次粒子径が500nm以下に分散された無機微粒子を用いる場合には光沢低下の懸念はないが、適切なバインダーを用いる必要がある。このような微細に分散された無機微粒子のバインダーとしては、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が好適であるが、ほう酸のアルカリ金属塩と架橋反応を起こすため本発明の下塗り層用塗布液には好ましくない。ポリビニルアルコールまたはその誘導体以外のバインダーでは、ひび割れを抑制するために非常に多い添加量が必要となる。その結果、架橋剤であるほう酸の金属塩の拡散速度の低下を招いてしまったり、下塗り層用塗布液の塗布量の増加を引き起こし結果として下塗り層の均一性を低下させてしまったりするため好ましくない。以上の理由により本発明の下塗り層用塗布液は無機微粒子を実質的に含有しないことが望ましい。なおここで実質的にとは、下塗り層の乾燥塗布量に対して15質量%以下であることを意味し、10質量%以下が好ましく、更に5質量%以下がより好ましい。
【0040】
本発明ではインクジェット記録材料のインク受容層の膜面pHを調整するために酸を用いることが好ましい。上記酸としては種々の酸を用いることができるが、インクの定着性やバインダーを架橋する作用をあわせて持つ、酸性のジルコニウム化合物が好ましく用いられる。酸性のジルコニウム化合物としては、例えば、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等が挙げられる。また、膜面pHの調整のしやすさという観点から弱酸も好ましく用いられる。弱酸の例としては、乳酸、酢酸、こはく酸、クエン酸、りんご酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0041】
本発明では、発色性改良等の目的でインク受容層及び下塗り層は更にカチオン性化合物を含有することができる。カチオン性化合物の例としては、シリカの分散の説明で挙げたカチオン性ポリマー、及び水溶性金属化合物が挙げられる。また、水溶性金属化合物の例としてカルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、りん酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、p−フェノールスルホン酸亜鉛、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられるが、好ましいカチオン性化合物は分子量5000〜10万程度のカチオン性ポリマー及びアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物であり、特にアルミニウム化合物を含有することが好ましい。これらカチオン性化合物は一種類を使用しても、複数の化合物を併用してもよい。
【0042】
本発明においてインク受容層及び下塗り層には更に、界面活性剤、着色染料、着色顔料、インク色剤の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤等の公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0043】
本発明に用いられる非吸水性支持体はポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートのようなセルロースエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂被覆紙等の非吸水性支持体等が用いられる。非吸水性支持体の中でも特に原紙の少なくとも一方の面をポリオレフィン樹脂で被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙が好ましく用いられる。原紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤を配合してもよい。もしくは、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0044】
また、原紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮する等した表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/mが好ましい。ただし、原紙の密度は剛直性のためには1.10g/cm以下、好ましくは0.6〜1.05g/cmである。密度が小さすぎると樹脂被覆を行っても均一な表面平滑性が得られにくい。
【0045】
ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体等のオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0046】
また、ポリオレフィン樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等の白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、ヒンダードフェノール誘導体等の酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルー等のブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫等のマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0047】
本発明において用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、走行する原紙上に加熱溶融した樹脂を流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、その表面または両面が樹脂により被覆される。また、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理等の活性化処理を施すことが好ましい。ポリオレフィン樹脂被覆紙のインク受容層が塗布される面(おもて面)は、その用途に応じて光沢面、マット面等に加工される。裏面に樹脂を被覆する必要はないが、カール防止の点から樹脂被覆したほうが好ましい。裏面は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理等の活性処理を施すことができる。また、ポリオレフィン樹脂被覆紙の厚みとしては特に制限はないが、一般に片面5〜50μmの厚みに表面または表裏両面にコーティングされる。
【0048】
本発明において、下塗り層、及びインク受容層用塗布液の塗布方法は特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、エアーナイフ方式、ドクターブレード方式、ワイヤーロッド方式、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、グラビア方式、ロールコーティング方式、スロットコーター方式等が挙げられる。
【0049】
非吸水性支持体上に本発明の下塗り層用塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等を行ってもよい。
【0050】
本発明は、非吸水性支持体のインク受容層、及び下塗り層を設ける面上に、塗布性を向上させるために天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする下引き層を設けるのが好ましい。非吸水性支持体上に設けられる下引き層はゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする。かかる合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記下引き層は、非吸水性支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
【0052】
本発明における非吸水性支持体には帯電防止性、搬送性、カール調整等のために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、樹脂バインダー、ラテックス、顔料、硬化剤、界面活性剤等を適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、部及び%は固形分質量部、固形分質量%を示す。
【0054】
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアンスタンダードフリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して0.2%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100部の樹脂に対して、10部のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆しおもて面とした。もう一方の面には密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂30部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し裏面とした。
【0055】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/m(約0.05μm)となるように塗布乾燥して支持体を作製した。
【0056】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0057】
<気相法シリカ分散液1の作製>
水にジメチルアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9000、3部)と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速20m/秒)を使用して分散し、これを圧力ホモジナイザーに40MPaの条件で2回通過させて、固形分濃度20%の気相法シリカ分散液1を得た。この気相法シリカ分散液の分散粒子径を粒度分布計((株)堀場製作所製、LA−920)で測定した結果、140nmであった。
【0058】
<インク受容層用塗布液1の作製>
上記気相法シリカ分散液1を用いてインク受容層用塗布液1を作製した。この時の塗布液の固形分濃度は16.2%にした。
<インク受容層用塗布液1>
気相法シリカ分散液1 103部
ポリビニルアルコール 21部
(クラレ(株)製、PVA235)
ベタイン性界面活性剤 0.05部
(日本サーファクタント工業(株)製SWANOL AM−2150)
上記塗布液に対して5質量%となるようにエタノールを添加した
【0059】
<インク受容層用添加液1の作製>
以下の添加剤を水に溶解させてインク受容層用添加液1を作製した。この時の添加液の不揮発分濃度は10.8%であった。なお、下記部数は、上記インク受容層用塗布液1中の気相法シリカ100部に対する部数である。
<インク受容層用添加液1>
塩基性ポリ水酸化アルミニウム 2部
(理研グリーン(株)製、ピュラケムWT)
3,8−ジチアオクタンジオール 2部
酢酸ナトリウム 2.3部
【0060】
<下塗り層用塗布液1の作製>
以下の添加剤を水に溶解または分散させて下塗り層用塗布液1を作製した。
<下塗り層用塗布液1>
水 1195.1g
ほう砂 179.3g
硝酸(61%)(pKa=−2) 63.6g
スーパーフレックス130 1562g
(ウレタン水分散体、第一工業製薬(株)製、最低造膜温度55℃、固形分濃度35%)
固形分濃度 24.2%
【0061】
<記録材料1の作製>
上記のようにして得られた支持体上に、下塗り層用塗布液1を固形分塗布量が3.94g/mとなるようにロッドバー方式にて塗布し、50℃にて乾燥した。
【0062】
ついで、上記のようにして得られた下塗り層上に、上記インク受容層用塗布液1の固形分塗布量が24g/mになるようにエクストルージョン方式のバーを用いて塗布した。インク受容層用塗布液1を塗布する直前に上記インク受容層用添加液1をインク受容層用塗布液1に混合して撹拌した後に塗布し、記録材料1を得た。乾燥の際には、塗布面の支持体をはさんだ反対側に0℃に冷却した金属ロールを20〜30秒間押し当て、ついで42℃に設定したドライヤーにて乾燥した。乾燥の際には、塗布物がドライヤーに入ってから乾燥が終了するまでに要する時間を測定した。この記録材料1の乾燥には90秒を要した。
【0063】
<記録材料2の作製>
上記記録材料1の作製において、インク受容層用添加液1を下記インク受容層用添加液2に変更した以外は記録材料1と同様にして記録材料2を得た。この記録材料2の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0064】
<インク受容層用添加液2>
塩基性ポリ水酸化アルミニウム 2部
(理研グリーン(株)製、ピュラケムWT)
3,8−ジチアオクタンジオール 2部
【0065】
<記録材料3の作製>
上記記録材料1の作製において、インク受容層用添加液1を下記インク受容層用添加液3に変更した以外は記録材料1と同様にして記録材料3を得た。この記録材料3の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0066】
<インク受容層用添加液3>
塩基性ポリ水酸化アルミニウム 2部
(理研グリーン(株)製、ピュラケムWT)
3,8−ジチアオクタンジオール 2部
乳酸 2.3部
【0067】
<記録材料4の作製>
上記記録材料1の作製において、下塗り層用塗布液1を下記下塗り層用塗布液2に変更した以外は記録材料1と同様にして記録材料4を得た。この記録材料4の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0068】
<下塗り層用塗布液2>
水 1195.1g
ほう砂 179.3g
トリフルオロ酢酸(pKa=−0.25) 63.6g
スーパーフレックス130 1562g
(ウレタン水分散体、第一工業製薬(株)製、最低造膜温度55℃、固形分濃度35%)
固形分濃度 24.2%
【0069】
<記録材料5の作製>
上記記録材料1の作製において、下塗り層用塗布液1を下記下塗り層用塗布液3に変更した以外は記録材料1と同様にして記録材料5を得た。この記録材料5の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0070】
<下塗り層用塗布液3>
水 1195.1g
ほう砂 179.3g
りん酸(pKa=2.12) 63.6g
スーパーフレックス130 1562g
(ウレタン水分散体、第一工業製薬(株)製、最低造膜温度55℃、固形分濃度35%)
固形分濃度 24.2%
【0071】
<記録材料6の作製>
上記記録材料1の作製において、下塗り層用塗布液1を下記下塗り層用塗布液4に変更した以外は記録材料1と同様にして記録材料6を得た。この記録材料6の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0072】
<下塗り層用塗布液4>
水 1195.1g
ほう砂 179.3g
ぎ酸(pKa=3.75) 63.6g
スーパーフレックス130 1562g
(ウレタン水分散体、第一工業製薬(株)製、最低造膜温度55℃、固形分濃度35%)
固形分濃度 24.2%
【0073】
<記録材料7の作製>
上記記録材料1の作製において、下塗り層用塗布液1を下記下塗り層用塗布液5に変更した以外は記録材料1と同様にして記録材料7を得た。この記録材料7の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0074】
<下塗り層用塗布5>
水 934.8g
ほう砂 179.3g
硝酸(61%) 63.6g
ハイドランHW−350 1822.3g
(ポリエステル系ウレタン水分散体、DIC(株)製、最低造膜温度60℃、固形分濃度30%)
固形分濃度 24.2%
【0075】
<記録材料8の作製>
上記記録材料1の作製において、下塗り層用塗布液1を下記下塗り層用塗布液6に変更した以外は記録材料1と同様にして記録材料8を得た。この記録材料8の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0076】
<下塗り層用塗布液6>
水 1028.7g
ほう砂 179.3g
硝酸(61%) 63.6g
固形分濃度 14.1%
【0077】
<記録材料9の作製>
上記記録材料1の作製において、下塗り層用塗布液1を下記下塗り層用塗布液7に変更した以外は記録材料1と同様にして記録材料9を得た。この記録材料9の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0078】
<下塗り層用塗布7>
水 1195.1g
ほう砂 179.3g
硝酸(61%) 63.6g
スーパーフレックス700 1562g
(ウレタン水分散体、第一工業化学(株)製、最低造膜温度5℃以下、固形分濃度35%)
固形分濃度 24.2%
【0079】
<記録材料10の作製>
上記記録材料1の作製において、下塗り層用塗布液1を下記下塗り層用塗布液8に変更した以外は記録材料1と同様にして記録材料10を得た。この記録材料10の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0080】
<下塗り層用塗布液8>
水 1292.8g
ほう砂 179.3g
硝酸(61%) 63.6g
スーパーフレックス860 1464.3g
(ウレタン水分散体、第一工業化学(株)製、最低造膜温度28℃、固形分濃度40%)
固形分濃度 25.5%
【0081】
<記録材料11の作製>
上記記録材料1の作製において得られた支持体上に、下記下塗り層用塗布液9を固形分塗布量が7.01g/mとなるようにロッドバー方式にて塗布し、50℃にて乾燥した以外は記録材料1と同様にして記録材料11を得た。この記録材料11の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0082】
<下塗り層用塗布液9>
水 2325g
ほう砂 218.1g
スーパーフレックス130 456.9g
固形分濃度 12.6%
【0083】
<記録材料12の作製>
上記記録材料1の作製において、下塗り層用塗布液1を下記下塗り層用塗布液10に変更した以外は記録材料1と同様にして記録材料12を得た。この記録材料12の乾燥に要した時間は90秒であった。
【0084】
<下塗り層用塗布液10>
水 1195.1g
ほう砂 179.3g
酢酸(30%)(pKa=4.76) 63.6g
スーパーフレックス130 1562g
固形分濃度 24.2%
【0085】
<記録材料13の作製>
上記記録材料1の作製において得られた支持体上に、下記インク受容層用塗布液2の固形分塗布量が24g/mになるように、エクストルージョン方式のバーを用いて塗布した。インク受容層用塗布液2を塗布する直前に、上記インク受容層用添加液2をインク受容層用塗布液2に混合して撹拌した後に塗布し、記録材料13を得た。塗布後の条件は記録材料1の作製時と同様にした。この記録材料13の乾燥に要した時間は160秒であった。
<インク受容層用塗布液2>
気相法シリカ分散液1 103部
オルトほう酸 4部
ポリビニルアルコール 23部
(クラレ(株)製、PVA235)
ベタイン性界面活性剤 0.05部
(日本サーファクタント工業(株)製SWANOL AM−2150)
上記塗布液に対して5質量%となるようにエタノールを添加した
固形分濃度 12.2%
【0086】
以上のようにして得られた各々の記録材料について下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
<インク吸収性>
セイコーエプソン(株)製のインクジェットプリンターPM−880CにてM+Y(赤)のベタパッチの中にCの細線を組み込んだパターンを出力し、印字直後に細線部とベタ部との境界のにじみ具合を以下の基準にて目視判定した。
◎:境界が非常にはっきりとしており、速やかにインクを吸収している。
○:境界がわずかににじんでいる。実用上問題はない。
△:境界が乱れている。実用上問題がある。
×:境界が非常に乱れている。
【0087】
<発色性>
セイコーエプソン(株)製のインクジェットプリンターPM−G860にてC、M、Y単色100%及び黒100%をそれぞれ印字し、常温にて24時間乾燥後、印字部の濃度を測定した。上記4色の濃度をあわせた数値で各サンプルの発色性を比較した。
○:CMYKの濃度をあわせた数値が7以上
×:CMYKの濃度をあわせた数値が7未満
【0088】
<耐光性>
セイコーエプソン(株)製のインクジェットプリンターPM−G860にてC、M、Y単色100%及び黒100%をそれぞれ印字し、常温にて24時間乾燥後、印字部の濃度を測定した。濃度測定した試料を蛍光灯下(照度30000lx)に9ヶ月間放置し、光学濃度を再測定し、残存率を百分率にて表した。この残存率が大きいほど、光による退色つまり耐光性が良いことを示しており、例えば100%であれば、全く退色していないことになる。
○:残存率が70%以上
×:残存率が70%未満
【0089】
<生産性>
以下の二つの項目で評価を行った。
<塗布液の乾燥時間>
各記録材料の作製方法を記載する際にあわせて記載した、インク受容層塗布液を塗布後に乾燥に要する時間を比較した。乾燥に要する時間が短いほど、ライン速度を速くすることができ、生産性が高くなっていることを意味する。
<塗層の塗布欠陥>
A4サイズの記録材料20枚を観察し塗布欠陥の発生状況を観察し、次の基準を元に目視にて判定した。
◎:塗布欠陥がなく、非常に優れている。
○:塗布欠陥はあるが2個以下で、かつ、これらの塗布欠陥が塗布時のホコリ等の影響であり塗布液としては問題がない。
△:ホコリ以外の要因の塗布欠陥が3個以上あり、塗布液として実用上問題となるレベル。
×:塗布欠陥がすべての記録材料で発生しており、実用にはならないレベル。
【0090】
【表1】

【0091】
記録材料8は、下塗り層用塗布乾燥後ほう砂の結晶が形成されており、その上にインク受容層を塗布したが、表面がざらついておりまた局所的にひび割れが発生していた。下塗り層にMFTが低いラテックスを使用した比較例である記録材料9及び10では、インク受容層塗布時にひび割れが発生した。インク受容層中に放出されるほう砂量が少なかったためと考えられる。また硝酸についても同様のことがいえ、放出される硝酸量が少なかったため耐光性が十分でなかったと考えられる。下塗り層用塗布液にpKaが4.0以下の酸を添加していない記録材料11は下塗り層用塗布液塗布時に塗布面が著しく乱れた。下塗り層用塗布液のwet塗布量が多すぎたためと考えられる。更に耐光性が十分でなかった。記録材料12では、pKaが4.0以上の酸を用いたため、耐光性が十分でなかった。下塗り層を塗設せず、インク受容層内に架橋剤であるオルトほう酸を添加した記録材料13は、耐光性が十分でなく、またインク受容層塗布時の乾燥時間が長くかかるため、生産性が低いと判断できる。
【0092】
以上の結果から、本発明によればインク吸収性、発色性、及び耐光性に優れたインクジェット記録材料を高い生産性で提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非吸水性支持体上に、最低造膜温度が40℃以上である水分散性樹脂、ほう酸のアルカリ金属塩、pKaが4.0以下の酸を含有する下塗り層用塗布液を塗布し、その後、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子を主体に含有し、かつ該無機微粒子のバインダーとしてポリビニルアルコールまたはその誘導体を含有するインク受容層用塗布液を塗布することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。

【公開番号】特開2011−140178(P2011−140178A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2578(P2010−2578)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】