説明

インクジェット記録材料の製造方法

【課題】フォトライクな高い光沢を有し、インク吸収性、発色性に優れ、保存中の画像滲みが少ないインクジェット記録材料が製造可能であり、且つ生産性の高いインクジェット記録材料の製造方法を提供する。
【解決手段】平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子及びポリビニルアルコールを含有し、55℃以上の温度に保持された塗布液に、水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を塗布直前に添加し、非吸収性支持体上に該塗布液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜の温度を一度20℃より高く40℃以下の範囲に下げた後、乾燥することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録材料の製造方法に関し、特にフォトライクな高い光沢を有し、インク吸収性、発色性に優れ、保存中の画像滲みが少ないインクジェット記録材料が製造可能であり、且つ生産性の高いインクジェット記録材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、支持体上に非晶質シリカ等の顔料とポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク受容層を有する記録材料が知られている。
【0003】
近年、インクジェット記録方式により銀塩写真に匹敵する画質の写真画像が印刷可能となり、フォトライクな光沢や質感を有するインクジェット記録材料が求められている。このような用途に、例えば、平均二次粒子径が500nm以下まで粉砕・分散した気相法シリカや湿式法シリカ等の無機超微粒子をインク受容層の顔料成分として用いることが提案されている。例えば、特公平3−56552号公報、特開平10−119423号公報、特開2000−211235号公報、特開2000−309157号公報に気相法シリカの使用例が、特開平9−286165号公報、特開平10−181190号公報に粉砕沈降法シリカの使用例が、特開2001−277712号公報に粉砕ゲル法シリカの使用例が開示されている。また、特開昭62−174183号公報、特開平2−276670号公報、特開平5−32037号公報、特開平6−199034号公報等にアルミナやアルミナ水和物を用いた記録材料が開示されている。
【0004】
しかし、微細な無機超微粒子を使用すると高い光沢が得られる反面、塗布液の粘度が高くなりやすく、低い固形分濃度で塗布することから乾燥時の風紋、ひび割れ等の表面欠陥が発生しやすくなる。特に、高い光沢や良好な質感を得るためにポリオレフィン樹脂被覆紙(紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートしたもの)やポリエステルフィルム等の非吸収性支持体を使用した場合、支持体がインクを吸収できないため、支持体上に設けられたインク受容層のインク吸収性が重要であり、従って多量の顔料を無機微粒子に対するバインダーの比率を低減して塗布する必要があり、乾燥時に欠陥が発生しやすかった。
【0005】
このような表面欠陥を防止するため、架橋剤を含む塗布液を支持体に塗布した後、乾燥を比較的穏やかな条件で行う方法が知られている。例えば、特開2000−27093号公報、特開2001−96900号公報等では、ポリビニルアルコールの架橋剤としてほう酸、ほう砂等のほう素化合物を用い、塗布液を塗布し一度20℃以下に冷却して塗布液の粘度を上昇させた後、比較的低温で乾燥する方法が開示されている。しかし、これらの方法を用いても、塗布・乾燥時の条件によってはしばしば塗膜に欠陥を生じ、少しの乾燥温度変化で塗布故障が顕著になる場合があった。更に室温以下に冷却するための冷却装置が必要であり、冷却してから乾燥するため乾燥工程に長い時間が掛かり生産性を高くできず、またエネルギー効率の面でも好ましいものではなかった。
【0006】
これらの問題点を改善することを目的としたインクジェット記録材料やその製造方法が開示されている。例えば、特開2002−283704号公報(特許文献1)には、シラノール変性ポリビニルアルコールを含有する塗布液に、塗布直前に塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の酸性物質を添加してゲル化を起こさせるインクジェット記録材料の製造方法が開示されている。また、特開2004−230761号公報(特許文献2)では、ゲル化温度40℃以上である塗布液を高温で塗布する製造方法が提案されている。その他、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールやジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールの架橋反応を利用し高温で乾燥する方法等が提案されている。
【0007】
一方、水溶性染料インクで印字された画像の耐水性や保存中の滲みを改善するために水溶性ジルコニウム化合物や水溶性アルミニウム化合物をインクジェット記録材料のインク受容層に用いることが既に知られている。例えば、特公平3−24907号公報、特開2000−309157号公報(特許文献3)、特開2002−160442号公報(特許文献4)、特開2004−1240号公報等にこれらの化合物を含有するインクジェット記録材料が開示されている。しかし、前記した特許文献1〜4により得られるインクジェット記録材料では、インク吸収性、発色性、画像滲み耐性等のインクジェット記録材料としての諸特性及び生産性に関して全てを満足するレベルには至っておらず、インクジェット記録材料としての諸特性と生産性の更なる向上及びそれらを両立することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−283704号公報
【特許文献2】特開2004−230761号公報
【特許文献3】特開2000−309157号公報
【特許文献4】特開2002−160442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、フォトライクな高い光沢を有し、インク吸収性、発色性に優れ、保存中の画像滲みが少ないインクジェット記録材料が製造可能であり、且つ生産性の高いインクジェット記録材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、以下の構成のインクジェット記録材料の製造方法により達成された。
1.平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子及びポリビニルアルコールを含有し、55℃以上の温度に保持された塗布液に、水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を塗布直前に添加し、非吸収性支持体上に該塗布液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜の温度を一度20℃より高く40℃以下の範囲に下げた後、乾燥することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、フォトライクな高い光沢を有し、インク吸収性、発色性に優れ、保存中の画像滲みが少ないインクジェット記録材料が製造可能であり、且つ生産性の高いインクジェット記録材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる非吸収性支持体としては、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙の少なくとも片面にポリオレフィン樹脂を被覆した樹脂被覆紙等が挙げられる。本発明に用いられる非吸収性支持体の厚みは、約50〜300μm程度が好ましい。
【0013】
本発明において好ましく用いられる樹脂被覆紙を構成する原紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
【0014】
更に、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0015】
また、原紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮する等した表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/mが好ましい。ただし、原紙の密度は剛直性のためには1.10g/cm以下、好ましくは0.6〜1.05g/cmである。密度が小さすぎると樹脂被覆を行っても均一な表面平滑性が得られにくい。
【0016】
樹脂被覆紙の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂や電子線で硬化する樹脂を用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体等のオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0017】
また、樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等の白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076等の酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルー等のブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫等のマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0018】
本発明において好ましく用いられる非吸収性支持体である樹脂被覆紙は、ポリオレフィン樹脂の場合は、走行する原紙上に加熱溶融した樹脂を流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、そのおもて面または両面が樹脂により被覆される。また、電子線により硬化する樹脂の場合は、グラビアコーター、ブレードコーター等一般に用いられるコーターにより樹脂を塗布した後、電子線を照射し、樹脂を硬化させて被覆する。また、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理等の活性化処理を施すことが好ましい。支持体のインク受容層が塗布される面(おもて面)は、その用途に応じて光沢面、マット面等に加工される。裏面に樹脂を被覆する必要はないが、カール防止の点から樹脂被覆したほうが好ましい。裏面は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理等の活性処理を施すことができる。また、樹脂被覆層の厚みとしては特に制限はないが、一般に片面5〜50μmの厚みに表面または表裏両面にコーティングされる。
【0019】
本発明における非吸収性支持体には、インク受容層を設ける面上に天然高分子化合物や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。支持体上に設けられるプライマー層はゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.01〜2μmの範囲である。
【0020】
また、本発明における非吸収性支持体には帯電防止性、搬送性、カール防止性等のために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤等を適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0021】
本発明のインク受容層に用いられる平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子としては、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等公知の各種微粒子が挙げられるが、インク吸収性と生産性の点で非晶質合成シリカ、アルミナまたはアルミナ水和物が好ましい。インク受容層に用いられる無機微粒子の好ましい量は10〜50g/mであり、より好ましくは12〜35g/mであり、特に好ましくは15〜25g/mである。
【0022】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販されている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、珪酸ソーダの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0023】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素とともに燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0024】
本発明には、気相法シリカが好ましく使用できる。本発明に用いられる気相法シリカの平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、より高い光沢を得るためには、15nm以下が好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3〜15nm(特に3〜10nm)でかつBET法による比表面積が200m/g以上(好ましくは250〜500m/g)のものを用いることである。なお、本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒子径として平均粒子径を求めたものであり、本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0025】
本発明のインク受容層が含有する気相法シリカの平均二次粒子径は500nm以下であり、10〜300nmであることが好ましく、更に20〜200nmであることがより好ましい。また、このような平均二次粒子径とするためには、カチオン性化合物の存在下で分散したものが特に好ましく使用できる。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。シリカ分散物の固形分濃度は高いほうが好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては15〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%である。なお、平均二次粒子径は、希薄分散液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定して求めることができる。
【0026】
上記気相法シリカの分散に使用するカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーが好ましく使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号公報、特開昭59−33176号公報、特開昭59−33177号公報、特開昭59−155088号公報、特開昭60−11389号公報、特開昭60−49990号公報、特開昭60−83882号公報、特開昭60−109894号公報、特開昭62−198493号公報、特開昭63−49478号公報、特開昭63−115780号公報、特開昭63−280681号公報、特開平1−40371号公報、特開平6−234268号公報、特開平7−125411号公報、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性及び分散液粘度の面で、これらのカチオンポリマーの分子量は2000〜10万程度が好ましく、特に2000〜3万程度が好ましい。
【0027】
本発明に使用するアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能である。アルミナの好ましい平均二次粒子径は20〜300nmである。通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を500nm以下、好ましくは20〜300nm程度まで粉砕したものが使用できる。
【0028】
本発明に使用するアルミナ水和物はAl・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。アルミナ水和物は、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは20〜300nmである。
【0029】
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、蟻酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用される。
【0030】
本発明で使用するポリビニルアルコールは、未変性ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールであり、特に完全または部分ケン化の未変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール等が好ましく用いられる。
【0031】
未変性ポリビニルアルコールの中でも好ましいのは、鹸化度が80%以上の部分または完全鹸化したものであり、特に鹸化度が80〜90%の部分鹸化ポリビニルアルコールが好ましい。平均重合度は200〜5000のものが好ましい。
【0032】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号公報に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0033】
アセトアセチル変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールとジケテンの反応等の公知の方法によって製造することができる。アセトアセチル化度は0.1〜20モル%が好ましく、更に1〜15モル%が好ましい。鹸化度は80モル%以上が好ましく、更に85モル%以上が好ましい。重合度としては500〜5000のものが好ましく、1000〜4500のものがより好ましく、2000〜4500のものが特に好ましい。
【0034】
ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールは、ジアセトンアクリルアミド−酢酸ビニル共重合体を鹸化する等公知の方法によって製造することができる。ジアセトンアクリルアミド単位の含有量としては0.1〜15モル%の範囲が好ましく、更に0.5〜10モル%の範囲が好ましい。鹸化度としては85モル%以上、重合度としては500〜5000のものが好ましい。
【0035】
本発明では、ポリビニルアルコールに加えて、更に他の公知の樹脂バインダーを併用してもよい。例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉や各種変性澱粉、ゼラチンや各種変性ゼラチン、キトサン、カラギーナン、カゼイン、大豆蛋白、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等を必要に応じて併用することができる。更に、バインダー樹脂として各種ラテックスを併用しても良い。
【0036】
他の樹脂バインダーを併用するときの使用量は、本発明の効果を得るためには、ポリビニルアルコールに対して他の樹脂バインダーを200質量%以下にすることが好ましく、100質量%以下とすることがより好ましく、更に50質量%以下が好ましい。
【0037】
ポリビニルアルコールを含む樹脂バインダーの総含有量は、少ないほどインク受容層中の空隙容積が大きくなりインク吸収性が高くなる面で好ましいが、少なすぎるとインク受容層が脆弱となりひび割れ等の表面欠陥が多くなったり、光沢が低下したりするため、無機微粒子総量に対して5〜40質量%の範囲が好ましく、特に10〜30質量%が好ましい。
【0038】
本発明では、ポリビニルアルコール及び他の樹脂バインダーの架橋剤(硬膜剤)を用いることが好ましい。架橋剤の具体例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル)尿素、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号明細書記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号明細書記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号明細書記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号明細書記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号明細書、米国特許第2,983,611号明細書記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号明細書記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号明細書記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の如きポリアミン化合物、カルボヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジドの如きポリヒドラジド化合物、4,4′−エチレンジセミカルバジド、4,4′−ヘキサメチレンジセミカルバジド等のポリイソシアネートとヒドラジンの反応物、ポリアクリル酸ヒドラジド等のポリマー型ヒドラジド、チタニウムラクテート化合物やチタニウムグリコレート化合物のような有機チタニウム化合物、ほう酸、ほう酸塩の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
これらの中でも、特にほう酸、ほう砂またはほう酸塩が好ましく使用できる。本発明で使用されるほう酸は、オルトほう酸、メタほう酸、次ほう酸等が、ほう酸塩としてはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0040】
アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールを使用する場合には、ポリアミン化合物、ポリカルボン酸ヒドラジド、セミカルバジド誘導体を架橋剤として使用することが好ましい。
【0041】
バインダーに対する架橋剤の最適含有量は、使用するバインダーと架橋剤の組み合わせによって変化するが、未変性または変性ポリビニルアルコールに対するほう酸またはほう酸塩の含有率は、0.02〜50質量%、特に0.5〜35質量%の範囲が好ましい。また、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールに対するポリアミン化合物、ポリカルボン酸ヒドラジド、セミカルバジド誘導体の含有率は、0.1〜50質量%、特に1〜20質量%の範囲が好ましい。
【0042】
本発明で使用する水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物について説明する。なお、本発明において水溶性とは、常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。水溶性ジルコニウム化合物としては、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム八水和物、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム等が挙げられる。
【0043】
これらの水溶性ジルコニウム化合物の中でも、インク受容層のpHに対する影響が比較的小さく、インク受容層を形成する塗布液に安定に添加できるものが好ましく、酢酸ジルコニウム(酢酸ジルコニル)、オキシ塩化ジルコニウムが特に好ましい。
【0044】
これらのものは、第一稀元素化学工業(株)からジルコゾールの商品名で各種市販されており、また日本軽金属(株)からも同様のものが市販されている。
【0045】
本発明の水溶性ジルコニウム化合物の添加量は、塗布液に含有される平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子の固形分量に対してZrO換算で0.1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜5質量%である。
【0046】
水溶性アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アルミニウムミョウバン等が挙げられ、中でも塩基性ポリ水酸化アルミニウム(塩基性ポリ塩化アルミニウム)が好ましい。
【0047】
塩基性ポリ水酸化アルミニウムは、組成式がAl(OH)Cl6−n(1<n<6)で表され、モノマー、ダイマー及び3つ以上のアルミニウムを含有する多核縮合イオンを含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。ここで、n/6×100(%)を塩基度と称する。本発明に使用する塩基性ポリ水酸化アルミニウムの塩基度は、インク受容層のpHに対する影響が比較的小さいことや染料の発色性の点で78%以上が好ましい。また、塩基度が90%を超える塩基性ポリ水酸化アルミニウムは不安定で、合成が困難なことが多いため、塩基度は78〜90%の範囲が好ましく、特に80〜84%の範囲が好ましい。
【0048】
本発明の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、塗布液に含有される平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子の固形分量に対してAl換算で0.1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは1〜5質量%である。
【0049】
水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を塗布液に添加する際、これら化合物は水溶液として添加することが好ましいが、この水溶液のpHを調整するために、酸性化合物または塩基性化合物を混合してもよい。酸性化合物としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸の如き無機酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸の如き有機酸を用いることができる。塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の如きアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の如きアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、プロピオン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム等の如きアルカリ金属カルボン酸塩、アンモニア、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンの如き有機塩基を挙げることができる。ただし無機酸のような強酸性化合物やアルカリ金属水酸化物のような強塩基性化合物を使用すると、添加時に固体が析出しやすいため、カルボン酸等の弱酸性化合物やアルカリ金属のカルボン酸塩や重炭酸塩等の弱塩基性化合物を使用することが好ましい。
【0050】
本発明の製造方法では、水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物は添加せず、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子、ポリビニルアルコール及びその他の薬品を混合して塗布液を調製する。そして塗布液の温度を55℃以上に保持しておき、塗布直前に水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加して非吸収性支持体上に塗布する。塗布後、形成された塗膜温度を一度20℃より高く40℃以下の範囲に下げた後、乾燥する。なお、本発明において塗布直前に添加するとは、水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を塗布液に添加してから塗布するまでに要する時間が2分以内であることを意味する。
【0051】
水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物はポリビニルアルコールと高温ほど反応しやすい。特に水溶性ジルコニウム化合物は、温度による反応速度の変化が大きい。水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物を55℃以上、好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上の温度に保持された塗布液に添加することによって、水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物とポリビニルアルコールが速やかに反応し、乾燥後インク吸収性の良好なインク受容層を形成することができる。水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物を塗布直前ではなく、予め塗布液中に添加して塗布液温度を高く保持すると、ポリビニルアルコールとの反応によって塗布液の粘度が上昇し塗布が困難となる。
【0052】
水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物を塗布直前に添加する方法としては、塗布直前に塗布液の貯留釜に添加しても良いが、貯留釜から塗布装置へ塗布液が送液される経路で、塗布液に混合することが好ましい。この方法はインライン添加と称されており、そのための混合装置もインラインミキサーやスタティックミキサーとして市販されている。例えば、Kenics社(アメリカ)製スタティックミキサー、Sulger社(スイス)製スタティックミキシングエレメントSMV型、晃立工業(株)製シマザキパイプミキサー、東レ(株)製Hi−Mixer等がある。また、インライン動的ミキサーとしては、特開2000−271463号公報に記載のものを用いることができる。
【0053】
本発明では塗布液を55℃以上の温度に保持することにより塗布液粘度が低下するので、55℃未満の塗布液を塗布する場合に比べて高濃度の塗布液が使用可能で、乾燥負荷を低減することができる。また、比較的低温で塗布する場合、例えば従来から知られる40℃に保持した塗布液を塗布し10℃以下に冷却してから乾燥する製造方法と比較して、塗布液粘度を下げるために添加する低沸点有機溶剤(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン等)を低減することが可能で、製造時の環境中への化学物質放出を抑制することができる。
【0054】
水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物を添加する前の塗布液の粘度としては、40℃において220mPa・s以上、好ましくは1000mPa・s以上である。特に上限はないが、塗布しやすさの点で40℃における粘度が10000mPa・s以下であることが好ましい。
【0055】
本発明では、非吸収性支持体上に水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を塗布直前に添加した塗布液を塗布することで得られた塗膜の温度を一度20℃より高く40℃以下の範囲に下げることにより、塗布後そのまま高温で乾燥するよりも塗布欠陥が減少し、光沢が高く、またインク吸収性に優れるインクジェット記録材料を得ることができる。塗膜の温度を20℃より高く40℃以下に下げる方法としては、室温付近の空気中に放置したり、20℃より高く40℃以下に保持されたボックス内を通過させたりすればよく、特に冷却装置を設置する必要はない。20℃以下の温度に冷却する場合に比べて乾燥効率も良く、生産性を高くすることができると共に、エネルギー面でも有利である。
【0056】
塗布液温度が20℃より高く40℃以下の範囲に下がった後には、高温の空気を吹き付けて乾燥することが好ましい。より高温で乾燥させたほうが生産性の面で好ましいが、あまり高温にすると乾燥空気による風紋が発生する等の塗布故障が発生しやすくなるため、乾燥空気の最高温度は30〜80℃が好ましく、更に40〜70℃が好ましい。また、乾燥効率を上げるために除湿した低湿度の空気を用いることが好ましい。
【0057】
インク受容層の乾燥塗布量は、全固形分量として10〜50g/mの範囲が好ましく、15〜40g/mの範囲がより好ましく、特に15〜35g/mの範囲がより好ましい。
【0058】
インク受容層を構成する各層の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スロットダイ方式等がある。
【0059】
インク受容層中にはインク中の色材の定着性を上げ、発色性を更に向上させるために、他のカチオン性物質を含有させることができる。カチオン性物質としては、例えばカチオン性ポリマーや他の水溶性金属化合物が挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号公報、特開昭59−33176号公報、特開昭59−33177号公報、特開昭59−155088号公報、特開昭60−11389号公報、特開昭60−49990号公報、特開昭60−83882号公報、特開昭60−109894号公報、特開昭62−198493号公報、特開昭63−49478号公報、特開昭63−115780号公報、特開昭63−280681号公報、特開平1−40371号公報、特開平6−234268号公報、特開平7−125411号公報、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらカチオン性ポリマーの分子量は5000以上が好ましく、更に5000〜10万程度が好ましい。
【0060】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、蟻酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、蟻酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、フェノールスルフォン酸ニッケル、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、フェノールスルフォン酸亜鉛、酢酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、リンタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリン酸n水和物等が挙げられる。
【0061】
インク受容層には、表面張力の調整のために界面活性剤を添加することができる。用いられる界面活性剤はカチオン系、ノニオン系、ベタイン系、アニオン系のいずれのタイプでも良く、また低分子のものでも高分子のものでも良い。1種もしくは2種以上界面活性剤を塗布液中に添加するが、界面活性剤の添加量は塗布液に対して0.001〜10質量%が好ましい。
【0062】
また、インク受容層には記録シート表面の割れ防止のために、ポリビニルアルコールの水溶性可塑剤を添加することが好ましい。水溶性可塑剤としては、例えば特開2001−10211号公報に記載のものが挙げられ、中でも尿素、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等が好ましい。
【0063】
インク受容層には、更に着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤等の公知の各種添加剤を添加することもできる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、記載中、部は明記しない限り質量部を示す。
【0065】
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100部の樹脂に対して、10部のアナターゼ型酸化チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し表面とした。もう一方の面には密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂30部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し裏面とした。
【0066】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成のプライマー層をゼラチンが50mg/m(約0.05μm)となるように塗布乾燥して支持体を作成した。
【0067】
<プライマー層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0068】
<シリカ分散液1の調製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9000、4部)と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機を使用して予備分散液を作成した。次に得られた予備分散物を圧力ホモジナイザーで処理して、固形分濃度20質量%、平均二次粒子径170nmのシリカ分散液1を得た。
【0069】
<記録シート1の作製>
シリカ分散液1と他の薬品を混合し、固形分濃度14%になるように下記組成の塗布液1を調製した。塗布液1の粘度は、40℃で6900mPa・sであった。塗布液1を75℃に保持しておき、酢酸ジルコニウム水溶液(ZrO換算濃度5%、シリカ固形分量100部に対してZrO換算1部となる量)を塗布直前に添加し、上記支持体の表面にバーコーターで塗布した。酢酸ジルコニウム水溶液を添加してから塗布するまでに要した時間は60秒であった。塗布後、室温に60秒間放置して塗膜温度が35℃に低下した後、60℃の空気を吹き付けて乾燥し記録シート1を得た。塗布量は、シリカ固形分換算で19g/mであった。
【0070】
<塗布液1>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として) 100部
ポリビニルアルコール 25部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ほう酸 5部
尿素 2部
【0071】
<記録シート2の作製>
シリカ分散液1と他の薬品を混合し、固形分濃度14%になるように下記組成の塗布液2を調製した。塗布液2の粘度は、40℃で1600mPa・sであった。65℃に塗布液2を保持しておき、塩基性ポリ水酸化アルミニウム水溶液(塩基度83%、Al換算濃度5%、シリカ固形分量100部に対してAl換算2部となる量)を塗布直前に添加し、上記支持体の表面にバーコーターで塗布した。塩基性ポリ水酸化アルミニウム水溶液を添加してから塗布するまでに要した時間は60秒であった。塗布後、室温に60秒間放置して塗膜温度が30℃に低下した後、60℃の空気を吹き付けて乾燥し記録シート2を得た。塗布量は、シリカ固形分換算で19g/mであった。
【0072】
<塗布液2>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として) 100部
ポリビニルアルコール 25部
(ケン化度80%、平均重合度3500)
ほう酸 5部
【0073】
<記録シート3の作製>
塗布液1の固形分濃度を13%に変えて塗布液3を調製した。塗布液3の粘度は、40℃で350mPa・sであった。塗布液3を65℃に保持しておき、酢酸ジルコニウム水溶液(ZrO換算濃度5%、シリカ固形分量100部に対してZrO換算1部となる量)を塗布直前に添加し、上記支持体の表面にバーコーターで塗布した。酢酸ジルコニウム水溶液を添加してから塗布するまでに要した時間は60秒であった。塗布後、室温に60秒間放置して塗膜温度が30℃に低下した後、60℃の空気を吹き付けて乾燥し記録シート3を得た。塗布量は、シリカ固形分換算で19g/mであった。
【0074】
<記録シート4の作製>
記録シート3の作製において、塗布後室温に60秒間放置することなく速やかに60℃の空気を吹き付けて乾燥する以外は、記録シート3と同様にして記録シート4を作製した。60℃の空気を吹き付ける前の塗膜温度は45℃であった。
【0075】
<記録シート5の作製>
酢酸ジルコニウム水溶液を添加しないこと以外は記録シート3と同様にして、記録シート5を作製した。
【0076】
<記録シート6の作製>
塗布液を45℃に保持しておき酢酸ジルコニウム水溶液を塗布直前に添加したこと以外は、記録シート3と同様にして記録シート6を作製した。
【0077】
<記録シート7の作製>
塗布液1の固形分濃度を11%に変えて塗布液4を調製した。塗布液4の粘度は、40℃で90mPa・sであった。塗布液4を45℃に保持しておき、酢酸ジルコニウム水溶液(ZrO換算濃度5%、シリカ固形分量100部に対してZrO換算1部となる量)を塗布直前に添加し、上記支持体の表面にバーコーターで塗布した。酢酸ジルコニウム水溶液を添加してから塗布するまでに要した時間は60秒であった。塗布後、5℃の空気中に60秒間放置して塗膜温度が10℃に低下した後、40℃の空気を吹き付けて乾燥し記録シート7を得た。塗布量は、シリカ固形分換算で19g/mであった。
【0078】
上記のように作製した記録シートについて、下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0079】
<表面状態>
記録シート表面を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:むらのない均一な表面である。
×:塗膜厚さの異なる部分があり、それに起因するむらが観察される。
【0080】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製PM−870C)を用いて、レッド、ブルー、グリーン、ブラックのベタ印字を行い、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:転写しない。
○:印字部の一部に転写が観察される。
×:印字部全体に転写が観察される。
【0081】
<発色性>
インクジェットプリンター(キヤノン(株)製PIXUS850i)を使用してシアン、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、グリーン、ブラックのベタ印字を行い、各色を測色機にて測定し再現色空間を比較した。再現色空間の広かったものを○とし、少し劣るものを△、明らかに劣るものを×とする3段階で評価した。
【0082】
<高湿滲み>
インクジェットプリンター(キヤノン(株)製PIXUS850i)を用いて印字後、40℃、85%RHの環境下に2時間保管後、目視にて観察し下記の基準で評価した。
◎:滲みがない。
○;僅かに滲みが認められる。
×:滲みが認められる。
【0083】
【表1】

【0084】
表1より、本発明のインクジェット記録材料の製造方法は冷却設備を必要とせず、比較的高温で乾燥でき、塗布欠陥が発生しにくいことから生産性が高く、且つインク吸収性、発色性に優れ、保存中の画像滲みの少ないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子及びポリビニルアルコールを含有し、55℃以上の温度に保持された塗布液に、水溶性ジルコニウム化合物及び水溶性アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を塗布直前に添加し、非吸収性支持体上に該塗布液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜の温度を一度20℃より高く40℃以下の範囲に下げた後、乾燥することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。

【公開番号】特開2012−162049(P2012−162049A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25901(P2011−25901)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】