説明

インクジェット記録材料

【課題】本発明は、高白紙光沢かつ良好なインク吸収性、インク発色性を有するとともに、特に顔料インク画像部擦過性に優れたインクジェット記録材料を提供する。
【解決手段】吸収性支持体上に、下塗り層、上塗り層、光沢発現層が順次塗布されたインクジェット記録材料において、少なくとも下塗り層が0.2g/m以上のホウ素化合物を含有し、上塗り層がアルミナ水和物を主体とする無機超微粒子及びポリビニルアルコールを含有し、光沢発現層がケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子を主体として含有する層であることを特徴とするインクジェット記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高白紙光沢かつ良好なインク吸収性、インク発色性を有するとともに、特に顔料インク画像部擦過性に優れたインクジェット記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像保存性、特に顔料インク画像部擦過性改良を目的に、最表面の塗層にシリコーン等の球状粒子を突出させるインクジェット記録材料(例えば、特許文献1参照)、又、コロイダルシリカ等の微粒子を最表面の塗層に適用したインクジェット記録材料(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の如き提案では最表層の球状粒子がインクジェットインクを吸収しない構造であるため、粒子突出部分の影響でインク吸収ムラが発生することがある他、充分な白紙光沢が得られないことがある等の品質確保が困難であった。又、特許文献2の如き提案では白紙光沢の向上は認められるものの、インク吸収性と顔料インク画像部擦過性の両方を充分に確保できないことがあった。
【0004】
すなわち従来のインクジェット記録材料では、良好な顔料インク画像部擦過性を維持しつつ、高白紙光沢と良好なインク吸収性、インク発色性という重要な性能を同時に満足するものではなかった。特に近年、インクジェット記録材料が銀塩写真の代替としても普及しており、上記性能は益々重要になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−268901号公報
【特許文献2】特開2007−160596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高白紙光沢かつ良好なインク吸収性、インク発色性を有するとともに、特に顔料インク画像部擦過性に優れたインクジェット記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、吸収性支持体上に、下塗り層、上塗り層、光沢発現層が順次塗布されたインクジェット記録材料において、少なくとも下塗り層が0.2g/m以上のホウ素化合物を含有し、上塗り層がアルミナ水和物を主体とする無機超微粒子及びポリビニルアルコールを含有し、光沢発現層がケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子を主体として含有することで達成された。
【0008】
又、前記ケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子の平均一次粒子径が1〜50nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高白紙光沢かつ良好なインク吸収性、インク発色性を有するとともに、特に顔料インク画像部擦過性に優れたインクジェット記録材料の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において、支持体上に塗布される下塗り層には少なくとも0.2g/m以上のホウ素化合物を含有する。この下塗り層に含有されるホウ素化合物と下塗り層上に塗布される上塗り層に含有されるポリビニルアルコールが架橋することで、亀裂のない上塗り層が形成される。但し、下塗り層に含有されるホウ素化合物が0.2g/m未満であるとポリビニルアルコールとの架橋が充分に行われずに、上塗り層の塗布液を塗布、乾燥する過程で発生する乾燥収縮等の影響により上塗り層に亀裂が発生することとなり好ましくない。又、下塗り層に含有されるホウ素化合物の上限については特に限定されるものではないが、ホウ素化合物の溶解濃度や塗布操業性等を鑑み、5g/m以下が好ましい範囲である。
【0011】
本発明に用いられるホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸塩(例えば、オルトホウ酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO、Co(BO)、二ホウ酸塩(例えば、Mg、Co)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO、NaBO、KBO)、四ホウ酸塩(例えば、Na・10HO)、五ホウ酸塩(例えば、KB・4HO)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、ホウ酸、ホウ砂が好ましい。
【0012】
本発明の下塗り層には、0.2g/m以上のホウ素化合物を含有するが、その他に無機微粒子やバインダー等を適宜添加しても構わない。
【0013】
本発明の上塗り層で用いられるポリビニルアルコールは、完全又は部分ケン化のポリビニルアルコールあるいはカチオン変性、シラノール変性等の変性ポリビニルアルコールを用いることができる。各種ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分又は完全ケン化したものであり、平均重合度200〜5000のものが好ましく用いられる。表面亀裂抑制の点から、平均重合度が2700〜5000の高重合度のものが特に好ましく用いられる。
【0014】
本発明において上塗り層で用いられる無機超微粒子とは、平均粒子径が500nm以下の無機微粒子のことであり、この平均粒子径とは、一次粒子が凝集していない場合は平均一次粒子径のことであり、一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合は平均二次粒子径のことをいう。無機超微粒子の例としては、例えば、特開平1−97678号公報、同2−275510号公報、同3−281383号公報、同3−285814号公報、同3−285815号公報、同4−92183号公報、同4−267180号公報、同4−275917号公報等に開示されているアルミナ水和物である擬ベーマイトゾル、特開昭60−219083号公報、同61−19389号公報、同61−188183号公報、同63−178074号公報、特開平5−51470号公報等に記載されているようなコロイダルシリカ、特公平4−19037号公報、特開昭62−286787号公報に記載されているようなシリカ/アルミナハイブリッドゾル、特開平10−119423号公報、同10−217601号公報に記載されているような気相法シリカを高速ホモジナイザーで分散したようなシリカゾル、特開平10−181191号公報、同10−272833号公報、特開2001−199158号公報及び同2002−331747号公報に記載されているような機械的に粉砕した湿式合成シリカ、その他にもヘクトライト、モンモリロナイト等のスメクタイト粘土、ジルコニアゾル、クロミアゾル、イットリアゾル、セリアゾル、酸化鉄ゾル、ジルコンゾル、酸化アンチモンゾル等を代表的なものとして挙げることができる。
【0015】
本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒子径として平均粒子径を求めたものであり、平均二次粒子径とは、希薄分散液をレーザー回折・散乱法を用いた粒度分布計により測定して得られたものである。
【0016】
又、下塗り層上の上塗り層にはアルミナ水和物を主体とする無機超微粒子を用いる。ここでいう主体とは全無機超微粒子の50質量%以上のことであり、アルミナ水和物が選択されるのは、他の無機超微粒子と比較して白紙光沢、インク吸収性、インク発色性、表面亀裂抑制の点に優れるからである。
【0017】
他の無機超微粒子、例えば、気相法シリカを主体とした場合には、アルミナ水和物と比して、表面亀裂が発生しやすくなることがあり、上塗り層上に均一な光沢発現層を塗布することが困難となることがある。
【0018】
上塗り層に表面亀裂が発生すると、光沢発現層塗布液中の微粒子成分が表面亀裂内部に落ち込むために、微粒子成分を上塗り層上に均一に留めておくことが困難となる。それにより少ない固形分塗布量で、白紙光沢発現効果を得ることが困難になる。表面亀裂が発生した上塗り層への光沢発現層の塗布でも、光沢発現層の塗布量を大幅に増加することで白紙光沢発現効果が得られることもあるが、インク吸収性やインク発色性に重大な悪影響を及ぼすことがある。
【0019】
又、上塗り層のアルミナ水和物の平均二次粒子径は50〜500nmであることが好ましい。平均二次粒子径が50nm未満であると、塗布乾燥後の上塗り層の細孔分布が小さくなりすぎ、インク吸収性に悪影響を与えることがあり、500nmを超えた場合には上塗り層表面の凹凸が大きくなりすぎてしまい、光沢発現層を塗布した後の白紙光沢が乏しくなることがある。
【0020】
又、上塗り層のアルミナ水和物の平均一次粒子径は3〜25nmであることが好ましい。平均一次粒子径が3nm未満であると、アルミナ水和物の比表面積が大きくなりすぎるために、塗層に表面亀裂が発生することがあり、25nmを超えた場合にはインク発色性に悪影響を与えることがある。
【0021】
本発明の光沢発現層はケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子を主体として含有する。主体となるケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子の含有比率としては光沢発現層の固形分成分の50質量%以上である。含有比率が50質量%未満である場合は本発明の効果が充分に発現しないことがある。
【0022】
本発明の光沢発現層に用いられるケイ酸ナトリウム・マグネシウムの化学組成は以下の一般式4SiO・xMgO・yNaO・nHO(2.5≦x<3.0,0<y<0.5)により表すことができる。このケイ酸ナトリウム・マグネシウムの微粒子は表面電荷(マイナス電荷)を有し、陽イオン交換容量を有する。このようなケイ酸ナトリウム・マグネシウムは、例えばIONITEという商品名で水澤化学工業株式会社より市販されている。
【0023】
ケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子の水分散液は高いチキソトロピー性と透明性を有する。光沢発現層塗布液は、上塗り層上に塗布される際、水分散媒が上塗り層内に吸収されることで、素早く不動化が起こる。ケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子由来のチキソトロピー性により、この不動化がより促進され、特に均一な光沢発現層の形成が可能となる。特に、本発明のように表面亀裂のない上塗り層上に、光沢発現層が形成されることで、より白紙光沢向上効果が高まる。又、分散液の透明性の高さから、透明性の高い光沢発現層が得られるため、インクジェット印刷時に非常に良好なインク発色性を得ることが可能である。
【0024】
又、表面電荷がプラス電荷であるアルミナ水和物主体とする上塗り層上に、表面電荷がマイナス電荷である光沢発現層のケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子を組み合わせることで、上塗り層と光沢発現層との間に働く結合力が大きくなり、光沢発現層にバインダー成分を適用しなくても良好な塗層が形成可能である。これにより、インク吸収性を損なうことがなく、高い白紙光沢を有する光沢発現層を形成することが可能である。
【0025】
又、本発明の光沢発現層には、インク吸収性や塗布液の粘性を調整する等の目的で、ケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子以外の微粒子やバインダー成分等を適用しても特に構わない。
【0026】
又、本発明のインクジェット記録材料は、光沢発現層にケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子を主体として含有することで非常に優れた顔料インク画像部擦過性を獲得可能である。かかる理由は明白ではないが、ケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子由来のチキソトロピー性や水膨潤性の作用によるものと考えられる。光沢発現層に他の微粒子、例えば球状のコロイダルシリカを適用した場合よりも大幅な改善が見られる。
【0027】
又、本発明の光沢発現層に用いられる前記ケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子の平均一次粒子径は1〜50nmであることが好ましい。この平均一次粒子径が1nm未満であると光沢発現層の微粒子成分が上塗り層の細孔内に落ち込み、光沢発現層が均一に形成できないために白紙光沢が充分に向上しないことがある。又、50nmを超えた場合には表面粗さが大きくなるために白紙光沢に悪影響を与えることがある。
【0028】
又、本発明の光沢発現層の塗布量は0.1〜2.5g/mの範囲であることが好ましい。0.1g/m未満であると、光沢発現層の被覆性が充分に得られないことがあり、2.5g/mを超えた場合にはインク吸収性に悪影響を与える場合がある。より好ましい範囲は0.1〜1.5g/mの範囲である。
【0029】
本発明に用いる支持体は吸収性の支持体であれば特に限定されるものではないが、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプと従来公知の顔料を主成分として、バインダー及びサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を用いて、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種装置で製造された紙の支持体が好ましく用いられる。更に支持体に、澱粉、ポリビニルアルコール等でのサイズプレスやアンカーコート層を設けても構わない。このような支持体にそのまま本発明における塗層を設けても良いし、平坦化をコントロールする目的で、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置を使用しても良い。
【0030】
本発明において、下塗り層、上塗り層、光沢発現層には、添加剤として、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、粘度安定剤、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤等を適宜配合することもできる。
【0031】
本発明において、下塗り層、上塗り層に用いられる無機微粒子としては、例えば、湿式合成シリカ、コロイダルシリカ、気相法シリカ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ケイソウ土、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化スズゾル、酸化ニオブゾル、酸化セリウムゾル、酸化ランタンゾル、酸化ネオジミュームゾル、酸化イットリウムゾル、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の公知の白色無機顔料や無機ゾル等を代表的なものとして挙げることができ、これらの無機微粒子の平均二次粒子径は100μm以下のものが好ましく用いられる。又、前述した平均二次粒子径が500nm以下の無機超微粒子も無機微粒子に含まれる。
【0032】
本発明において、下塗り層、上塗り層又は光沢発現層に用いられるバインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミン等の天然高分子樹脂又はその誘導体、ポリビニルアルコール又はその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸樹脂やスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系共重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス、あるいはこれらの各種共重合体のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性共重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の親水性バインダー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂ラテックス等が挙げられ、これらを1種以上使用できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
本発明において、光沢発現層に用いられるケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子以外の微粒子としては、コロイダルアルミナ、あるいはコロイダルシリカ等が好ましく挙げられる。又、それ以外のものとしては、チタニアゾル(多木化学株式会社)、セリアチタニアゾル(触媒化成工業株式会社)、酸化アンチモンゾル(日産化学工業株式会社)、酸化セリウムゾル(多木化学株式会社)、酸化スズゾル(多木化学株式会社)、酸化ニオブゾル(多木化学株式会社)、酸化イットリウムゾル(多木化学株式会社)、酸化ランタンゾル(多木化学株式会社)、酸化ジルコニウムゾル(多木化学株式会社)等の無機ゾルが挙げられる。又、スチレン、アクリル、メタクリル等の有機ポリマーを主成分としたエマルジョン粒子やそれらの有機ポリマーを小さなコロイダルシリカ粒子で表面処理を行ったシリカ複合エマルジョン等のコロイド粒子が挙げられる。有機ポリマーを主成分としたエマルジョン粒子を用いる場合には、光沢発現層の塗布・乾燥時に溶融成膜しないようにTgが40℃以上であるものが好ましく用いられる。これらのものとしては、例えば、ニチゴー・モビニール株式会社製モビニール790、モビニール972、モビニール8055A等の各種エマルジョンが挙げられる。これらの無機微粒子の平均一次粒子径範囲としては1〜120nmのものが、白紙光沢発現性やインク吸収性、インク発色性の点から好ましく用いられる。
【0034】
本発明において、下塗り層、上塗り層及び光沢発現層を設ける際に、塗布する方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スライドリップコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、ロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドエルブレードコーター、サイズプレス等の各種装置により塗布することができる。
【0035】
本発明において、塗液塗布後に乾燥する方法は、特に限定されず、公知の乾燥方法を用いることができるが、特に熱風を吹きつける方法、赤外線を照射する方法等、加熱により乾燥する方法は、生産性が良く好ましく用いられる。
【0036】
本発明において、下塗り層、上塗り層及び光沢発現層を塗布、乾燥後に白紙光沢や平滑性を更に向上させる目的で、カレンダー処理を行っても構わない。その際のカレンダー処理装置としては、グロスカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等が挙げられる。又、公知のキャストコート法を用いて光沢面を形成することができる。
【実施例】
【0037】
以下に本発明について、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。又、実施例において示す「質量部」及び「質量%」は特に明示しない限り固形分の部及び%を示す。
【0038】
<支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、濾水度370mlcsf)80部と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、濾水度400mlcsf)20部、タルク13部、硫酸バンド3部、市販ロジンサイズ剤0.2部、カチオン澱粉0.3部を水に混合してなる固形分濃度1%のスラリーから、長網抄紙機にて坪量100g/mの原紙を抄造し、抄造時にサイズプレス装置で酸化澱粉を固形分で2g/m付着させて支持体を製造した。
【0039】
<下塗り層塗布液1の調製>
ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム・十水和物)6部、ホウ酸(オルトホウ酸)6部、コロイダルシリカ(スノーテックス40:日産化学工業株式会社製)を30部及び湿式合成シリカ(ミズカシルP−78A:水澤化学工業株式会社製)100部を固形分濃度21%となるように水に分散して分散液を得た。その分散液にウレタンエマルジョンバインダー(ハイドランWLS207:DIC株式会社製)を50部、増粘剤(アルコガムL289HV:アクゾノーベル株式会社製)1部を添加し、固形分22%になるように塗布液濃度を調節し、下塗り層塗布液1を得た。
【0040】
<下塗り層塗布液2の調製>
ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム・十水和物)2部、ホウ酸(オルトホウ酸)2部、コロイダルシリカ(スノーテックス40:日産化学工業株式会社製)を30部及び湿式合成シリカ(ミズカシルP−78A:水澤化学工業株式会社製)100部を固形分濃度21%となるように水に分散して分散液を得た。その分散液にウレタンエマルジョンバインダー(ハイドランWLS207:DIC株式会社製)を50部、増粘剤(アルコガムL289HV:アクゾノーベル株式会社製)1部を添加し、固形分22%になるように塗布液濃度を調節し、下塗り層塗布液2を得た。
【0041】
<下塗り層塗布液3の調製>
コロイダルシリカ(スノーテックス40:日産化学工業株式会社製)を30部及び湿式合成シリカ(ミズカシルP−78A:水澤化学工業株式会社製)100部を固形分濃度21%となるように水に分散して分散液を得た。その分散液にウレタンエマルジョンバインダー(ハイドランWLS207:DIC株式会社製)を50部、増粘剤(アルコガムL289HV:アクゾノーベル株式会社製)1部を添加し、固形分22%になるように塗布液濃度を調節し、下塗り層塗布液3を得た。
【0042】
<上塗り層塗布液1の調製>
アミド硫酸1.5部を分散剤とし、アルミナ水和物(DISPERAL HP14:サソールジャパン株式会社製)100部を固形分濃度28%となるように水に分散して分散液を得た。その分散液に固形分濃度8%のポリビニルアルコール(PVA235:株式会社クラレ製)を8部、ホウ酸(オルトホウ酸)を0.2部添加し、固形分20%になるように塗布液濃度を調節し、上塗り層塗布液1を得た。
【0043】
<上塗り層塗布液2の調製>
カチオンポリマー(シャロールDC902P:第一工業製薬株式会社製)1.5部を分散剤とし、気相法シリカ(アエロジル130:日本アエロジル株式会社製)100部を固形分濃度20%となるように水に分散して分散液を得た。その分散液に固形分濃度8%のポリビニルアルコール(PVA245:株式会社クラレ製)を15部、ホウ酸(オルトホウ酸)を0.2部添加し、固形分濃度15%になるように塗布液濃度を調節し、上塗り層塗布液2を得た。
【0044】
<光沢発現層塗布液1の調製>
平均一次粒子径約4nmのケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子(イオナイト:水澤化学工業株式会社製)を水に分散し、液温75℃で攪拌機にて2時間攪拌、固形分濃度1%に調節し、光沢発現層塗布液1を得た。
【0045】
<光沢発現層塗布液2の調製>
固形分を2.5%とする以外は、光沢発現層塗布液1と同様にし、光沢発現層塗布液2を得た。
【0046】
<光沢発現層塗布液3の調製>
平均一次粒子径約4nmのケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子(イオナイト:水澤化学工業株式会社製)を水に分散し、液温75℃で攪拌機にて2時間攪拌、固形分濃度1%のケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子の分散液を得た。固形分量で60部のケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子分散液に、コロイダルシリカ(スノーテックス40:日産化学工業株式会社製)を40部添加し、固形分濃度1%となるように塗布液濃度を調節し、光沢発現層塗布液3を得た。
【0047】
<光沢発現層塗布液4の調製>
コロイダルシリカ(スノーテックス40:日産化学工業株式会社製)に水を添加し、固形分2.5%となるように塗布液濃度を調節し、光沢発現層塗布液4を得た。
【0048】
<光沢発現層塗布液5の調製>
コロイダルシリカ(スノーテックスZL:日産化学工業株式会社製)に水を添加し、固形分2.5%となるように塗布液濃度を調節し、光沢発現層塗布液5を得た。
【0049】
(実施例1)
支持体上に下塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、ホウ素化合物量が0.6g/mの下塗り層を設けた。次に下塗り層上に上塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量15g/mとなるよう塗布、乾燥し、上塗り層を設けた。次に光沢発現層塗布液1をエアーナイフコーターで0.2g/mとなるよう塗布、乾燥し、光沢発現層を設けた。次に線圧10kN/m、速度5m/minの条件で光沢発現層面が金属ロール面に1回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、実施例1のインクジェット記録材料を得た。
【0050】
(実施例2)
支持体上に下塗り層塗布液2をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、ホウ素化合物量が0.2g/mの下塗り層を設けた。次に下塗り層上に上塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量15g/mとなるよう塗布、乾燥し、上塗り層を設けた。次に光沢発現層塗布液2をエアーナイフコーターで0.6g/mとなるよう塗布、乾燥し、光沢発現層を設けた。次に線圧10kN/m、速度5m/minの条件で光沢発現層面が金属ロール面に1回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、実施例2のインクジェット記録材料を得た。
【0051】
(実施例3)
支持体上に下塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、ホウ素化合物量が0.6g/mの下塗り層を設けた。次に下塗り層上に上塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量15g/mとなるよう塗布、乾燥し、上塗り層を設けた。次に光沢発現層塗布液2をエアーナイフコーターで0.6g/mとなるよう塗布、乾燥し、光沢発現層を設けた。次に線圧10kN/m、速度5m/minの条件で光沢発現層面が金属ロール面に1回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、実施例3のインクジェット記録材料を得た。
【0052】
(実施例4)
支持体上に下塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、ホウ素化合物量が0.6g/mの下塗り層を設けた。次に下塗り層上に上塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量15g/mとなるよう塗布、乾燥し、上塗り層を設けた。次に光沢発現層塗布液3をエアーナイフコーターで0.2g/mとなるよう塗布、乾燥し、光沢発現層を設けた。次に線圧10kN/m、速度5m/minの条件で光沢発現層面が金属ロール面に1回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、実施例4のインクジェット記録材料を得た。
【0053】
(比較例1)
支持体上に下塗り層塗布液3をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、ホウ素化合物量が0g/mの下塗り層を設けた。次に下塗り層上に上塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量15g/mとなるよう塗布、乾燥し、上塗り層を設けた。次に光沢発現層塗布液2をエアーナイフコーターで0.6g/mとなるよう塗布、乾燥し、光沢発現層を設けた。次に線圧10kN/m、速度5m/minの条件で光沢発現層面が金属ロール面に1回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、比較例1のインクジェット記録材料を得た。
【0054】
(比較例2)
支持体上に下塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、ホウ素化合物量が0.6g/mの下塗り層を設けた。次に下塗り層上に上塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量15g/mとなるよう塗布、乾燥し、上塗り層を設けた。次に光沢発現層塗布液4をエアーナイフコーターで0.6g/mとなるよう塗布、乾燥し、光沢発現層を設けた。次に線圧10kN/m、速度5m/minの条件で光沢発現層面が金属ロール面に1回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、比較例2のインクジェット記録材料を得た。
【0055】
(比較例3)
支持体上に下塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、ホウ素化合物量が0.6g/mの下塗り層を設けた。次に下塗り層上に上塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量15g/mとなるよう塗布、乾燥し、上塗り層を設けた。次に光沢発現層塗布液5をエアーナイフコーターで0.6g/mとなるよう塗布、乾燥し、光沢発現層を設けた。次に線圧10kN/m、速度5m/minの条件で光沢発現層面が金属ロール面に1回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、比較例3のインクジェット記録材料を得た。
【0056】
(比較例4)
支持体上に下塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、ホウ素化合物量が0.6g/mの下塗り層を設けた。次に下塗り層上に上塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量15g/mとなるよう塗布、乾燥し、上塗り層を設けた。次に線圧10kN/m、速度5m/minの条件で上塗り層面が金属ロール面に1回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、比較例4のインクジェット記録材料を得た。
【0057】
(比較例5)
支持体上に下塗り層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、ホウ素化合物量が0.6g/mの下塗り層を設けた。次に下塗り層上に上塗り層塗布液2をエアーナイフコーターにて固形分塗布量15g/mとなるよう塗布、乾燥し、上塗り層を設けた。次に光沢発現層塗布液2をエアーナイフコーターで0.6g/mとなるよう塗布、乾燥し、光沢発現層を設けた。次に線圧10kN/m、速度5m/minの条件で光沢発現層面が金属ロール面に1回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、比較例5のインクジェット記録材料を得た。
【0058】
以上のようにして、作製した実施例及び比較例のインクジェット記録材料について、下記の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
<白紙光沢>
白紙光沢は、JIS−Z8741に準じて75度鏡面光沢度(%)の測定を行った。
【0060】
<インク吸収性>
顔料インク大判プリンター、セイコーエプソン(株)製「PX−9000(プリンター設定:用紙種類=MC写真用紙<光沢>、印刷品質=スーパーファイン、双方向印刷=オン、カラー設定=色補正なし)」を用いて画像を印刷し、インク吸収性について下記の基準で、総合的に評価を行った。尚、評価に用いた画像は黒、シアン、マゼンタ、イエロー、ブルー、レッド、グリーン各色のベタ印刷部及びその中に白抜き文字を設けたパターンからなる。
◎:倍率25倍の顕微鏡観察で各色のベタ印刷部境界や白抜き文字部に滲みが観察され
ず問題なし。
○:倍率25倍の顕微鏡観察で各色のベタ印刷部境界や白抜き文字部に僅かに滲みが観
察されるが実使用上問題なし。
△:目視観察で各色のベタ印刷部境界や白抜き文字部に僅かに滲みがあり実使用困難。
×:目視観察で各色のベタ印刷部境界や白抜き文字部に明確な滲みがあり実使用不可。
【0061】
<インク発色性>
顔料インク大判プリンター、セイコーエプソン(株)製「PX−9000(プリンター設定:用紙種類=MC写真用紙<光沢>、印刷品質=スーパーファイン、双方向印刷=オン、カラー設定=色補正なし)」を用いて、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック各色のベタ印刷を行い、光学濃度をマクベス反射濃度計で測定し、各色の光学濃度の合計値を示した。数値が大きい方が、インク発色性が良いことを意味する。
【0062】
<表面亀裂観察>
インク受理層表面のひび割れの有無は、作製したインクジェット記録材料の表面を倍率100倍の顕微鏡観察により下記の基準で評価を行った。
◎:表面亀裂が観察されず問題なし。
○:大きさが小さく区画化されていない表面亀裂が僅かに観察されるが、実用上問題な いレベル。
△:区画化された表面亀裂が散見されており、実使用困難レベル。
×:区画化された表面亀裂で全面が覆われており、実使用不可レベル。
【0063】
<顔料インク画像部擦過性>
顔料インク大判プリンター、セイコーエプソン(株)製「PX−9000(プリンター設定:用紙種類=MC写真用紙<光沢>、印刷品質=スーパーファイン、双方向印刷=オン、カラー設定=色補正なし)」を用いて、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック各色のベタ印刷を行い、印字後30分後に印字部上にPPC用紙を重ねて置き、更にプラスチック板(2cm×2cm、厚さ2mm)上に200gの重りを乗せ、静かに水平に引き、プラスチック板がPPC用紙を挟んで接触した印字部から非印字部でのインク尾引き、印字部のインク剥離について、以下の基準で評価した。
◎:インク尾引きが全く認められず問題なし。
○:インク尾引きが僅かに見られるが、インクの剥離はなく実用上問題はないレベル。
△:インク尾引き、インクの剥離がともに見られ、実使用困難レベル。
×:インク尾引き、インクの剥離が酷く、実使用不可レベル。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の結果から明らかなように本発明の実施例1〜4のインクジェット記録材料は高白紙光沢かつ良好なインク吸収性、インク発色性を有するとともに、特に顔料インク画像部擦過性に優れたインクジェット記録材料であることがわかる。
【0066】
比較例1は下塗り層にホウ素化合物が含有されていないため、上塗り層塗布後に著しい表面亀裂が発生した。その上に光沢発現層を塗布したが、上塗り層表面亀裂内に光沢発現層成分が落ち込んだために光沢発現効果が殆ど得られなかった。又、表面亀裂により、印刷時に顔料インク成分が上塗り層表面亀裂内に同様に落ち込んだために、インク発色性も不充分であった。
【0067】
比較例2、3は光沢発現層にコロイダルシリカが用いられており、光沢発現性はある程度認められるものの充分ではなく、又、顔料インク画像部擦過性も問題のあるレベルであった。
【0068】
比較例4は光沢発現層が塗布されておらず、白紙光沢が充分でなく、インク発色性もやや乏しいものであった。
【0069】
比較例5は上塗り層塗布後に著しい表面亀裂が発生した。その上に光沢発現層を塗布したが、上塗り層表面亀裂内に光沢発現層成分が落ち込んだために光沢発現効果が殆ど得られなかった。又、表面亀裂により、印刷時に顔料インク成分が上塗り層表面亀裂内に同様に落ち込んだために、インク発色性も不充分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性支持体上に、下塗り層、上塗り層、光沢発現層が順次塗布されたインクジェット記録材料において、少なくとも下塗り層が0.2g/m以上のホウ素化合物を含有し、上塗り層がアルミナ水和物を主体とする無機超微粒子及びポリビニルアルコールを含有し、光沢発現層がケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子を主体として含有する層であることを特徴とするインクジェット記録材料。
【請求項2】
前記ケイ酸ナトリウム・マグネシウム微粒子の平均一次粒子径が1〜50nmである請求項1記載のインクジェット記録材料。

【公開番号】特開2011−194709(P2011−194709A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63897(P2010−63897)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】