説明

インクジェット記録材

【課題】経師貼りでの糊付け適性に優れた裏面塗工層を有するインクジェット記録材を提供する。
【解決手段】主成分がセルロースパルプである支持体の一方に少なくとも1層のインク受理層を有するインクジェット記録材において、該支持体の裏面にコールターカウンター法による平均粒子径10μm以上の顔料を総固形分の25質量%以上95質量%以下含有し、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisが22μm以上50μm以下である裏面塗工層を設けることを特徴とするインクジェット記録材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経師貼りでの糊付け適性に優れた裏面を有するインクジェット記録材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、種々の動作原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の被記録材に付着させ、画像や文字等の記録を行うものである。インクジェットプリンターやプロッターは、コンピューターにより作成した文字や各種図形等の画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途で普及している。特に、多色インクジェット記録方式により形成されるカラー画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画と比較しても遜色のない記録を得ることが可能であり、更に、作成部数が少なくて済む用途においては、印刷技術や写真技術よりも安価であることから広く応用されている。特にプリンター技術の進歩により、A0やB0サイズまたは、それより大きな広幅用紙への高解像度印刷が高速で行えるようになったことから、屋内外の展示、広告用途に広く用いられるようになってきた。
【0003】
屋内外の展示、広告用途に用いられる場合、経師貼りがされることがある。経師貼りとは、印刷記録された大きな広幅用紙を壁面等に貼り付けることをいう。経師貼り作業では、記録材の裏面に水性糊を糊付けして壁面等に貼り付けていくが、大きな広幅の記録材の場合、糊付け装置を用いて裏面に水性糊を糊付けしながら、持ち運びがしやすいように糊付けした面同士を合わせて折りたたみ、貼り付ける場所まで持ち運んだ後、糊付けされた記録材を広げて壁面等に貼り付けられる。従って、糊付けした面同士を合わせてから、貼り付けるために再度広げるまでのおよそ5〜30分間程度の間に、糊付けした面同士を合わせて置いておいても貼り付いてしまうことがない糊付け適性が要求される。セルロースパルプを主体とした支持体を用いた場合、水性糊によって支持体にボコツキが発生しないように、高サイズ性の支持体を用いたり、壁紙の裏打ち紙を貼り合わせしたり、難吸水性の支持体を多層抄き合わせる記録材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、インクジェット記録でのインク吸収性が悪かったり、皺になりやすかったり、費用がかかるものであったりと、経師貼りを行う用紙としては満足がいくものではなかった。
【0004】
また、搬送性を良くする方法として裏面にサンドブラスト処理で凹凸を設けて表面粗さRmax(山部と谷部との差の最大値)が1〜60μmの範囲とする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、樹脂フィルムの表面を処理する方法であり、セルロースパルプを主体とした支持体に用いられない。また、通紙性と耐ブロッキング性から球状微粒子ポリマーを5〜100mg/m塗工する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この範囲の量では、経師貼りで糊付けした面同士を合わせて置いておくと貼り付いてしまい糊付け適性に満足いくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−63133号公報
【特許文献2】特開平8−282089号公報
【特許文献3】特開平7−179025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、経師貼りでの糊付け適性に優れた裏面塗工層を有するインクジェット記録材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、主成分がセルロースパルプである支持体の一方に少なくとも一層のインク受理層を有するインクジェット記録材において、該支持体の裏面にコールターカウンター法による平均粒子径10μm以上の顔料を総固形分の25質量%以上95質量%以下含有し、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisが22μm以上50μm以下の裏面塗工層を設けることで、経師貼りでの糊付け適性に優れた裏面を有するインクジェット記録材を提供することが可能となった。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、経師貼りでの糊付け適性に優れた裏面塗工層を有するインクジェット記録材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のインクジェット記録材を詳細に説明する。
【0010】
本発明者は、経師貼りでの糊付け適性に優れた裏面塗工層を有するインクジェット記録材を得るべく鋭意検討した。その結果、主成分がセルロースパルプである支持体の一方に少なくとも1層のインク受理層を有するインクジェット記録材において、該支持体の裏面にコールターカウンター法による平均粒子径10μm以上の顔料を総固形分の25質量%以上95質量%以下含有し、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisが22μm以上50μm以下の裏面塗工層を設けることで、経師貼りでの糊付け適性に優れた裏面を有するインクジェット記録材が得られることを見出した。
【0011】
本発明の支持体は、セルロースパルプを主成分とする紙であり、セルロースパルプとしては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGPなどの機械パルプ、DIPなどの古紙パルプなどの木材パルプが主である。また、内填用白色顔料、バインダー、サイズ剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの各種添加剤を必要に応じて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造された原紙、更に、原紙に澱粉、ポリビニルアルコールなどでサイズプレスやアンカー層を設けた原紙や、それらの上にコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙、バライタ紙などの塗工紙も含まれる。このような原紙及び塗工紙をそのまま用いても良いし、平坦化をコントロールする目的でマシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダーなどのカレンダー装置を用いても良い。
【0012】
本発明の裏面塗工層に用いられる顔料としては、公知の白色顔料を一種類以上用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、ケイソウ土、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、活性白土、酸性白土、加水ハロイサイト、ベントナイトクレー、合成非晶質シリカなどの無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン微粒子、尿素樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子などの有機顔料などの白色顔料を一種類以上用いることができる。粒子の形状は、平板状でない顔料が好ましく、コールターカウンター法による平均粒子径が10μm以上の顔料が総固形分の25質量%以上95質量%以下の範囲であることが必要である。平均粒子径とは、分散状態において凝集体を形成する場合は、平均二次粒子径であり、単分散状態である場合は、平均一次粒子径である。コールターカウンター法による平均粒子径が10μm以上の顔料としては、合成非晶質シリカやポリエチレン微粒子が好ましい。コールターカウンター法による平均粒子径が10μm以上の顔料が総固形分の25質量%未満の場合には、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisが22μm未満となり、経師貼りでの糊付け適性が悪くなり、糊付けした面同士を合わせて置いておくと貼り付いてしまう。また、コールターカウンター法による平均粒子径が10μm以上の顔料が総固形分の95質量%を超える場合には、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisが50μmを超え、製造工程において紙を巻き取る際に裏面塗工層がインク受理層に接するため、裏面の形状がインク受理層に転写し、インク受理層表面の形状が変わってしまうことがある。
【0013】
本発明の裏面塗工層に用いられるバインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールなどの変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉などの澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、無水マレイン酸樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体などの(メタ)アクリル系重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂系などの水性接着剤、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂系接着剤を単独あるいは併用して使用することができる。操業性、経師貼りでの糊付け適性の点から、シラノール変性ポリビニルアルコールやスチレン・ブタジエン共重合体の使用が好ましい。バインダーの使用量は、総固形分に対して、5〜75質量%の範囲である。5質量%未満の場合には、耐水性が悪くなり、糊付けする際に塗層が剥がれてしまうことがある。また、75質量%を超えた場合には、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisが22μm未満となり、経師貼りでの糊付け適性が悪くなり、糊付けした面同士を合わせて置いておくと貼り付いてしまう。
【0014】
本発明の裏面塗工層には、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、色味調整剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を添加することもできる。特に、裏写り防止のため、裏面を色味調整剤で着色して、不透明度を高めることを行うことが好ましい。
【0015】
本発明の裏面塗工層を塗工する方法には、特に制限はなく、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、リバースロールコーター、コンマコーター、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等各種の塗工方式を適宜用いることができる。塗工量は特に制限はないが、固形分として3〜15g/mを塗工することが好ましい。塗工量が3g/mよりも少ないと、原紙を塗層がカバーリングしていない部分があり、経師貼りでの糊付け適性が悪くなり、糊付けした面同士を合わせて置いておくと貼り付いてしまう。また、15g/mよりも多い場合には、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisが22μm未満となることがあり、経師貼りでの糊付け適性が悪くなり、糊付けした面同士を合わせて置いておくと貼り付いてしまう。
【0016】
また、裏面塗工層を塗工・乾燥させた後、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー等のカレンダー装置により平滑性を調整することも可能である。
【0017】
本発明の裏面塗工層は、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisは、22μm以上50μm以下の範囲であることが必要である。好ましくは、25μm以上40μmの範囲である。表面粗さRzjisは、22μm以上50μm以下の範囲であれば、経師貼りでの糊付け適性が良く、糊付けした面同士を合わせて置いておいても貼り付いてしまうことがないことがわかった。22μm未満では、経師貼りでの糊付け適性が悪くなり、糊付けした面同士を合わせて置いておくと貼り付いてしまう。また、50μmを超えると、製造工程において紙を巻き取る際に裏面塗工層がインク受理層に接するため、裏面の形状がインク受理層に転写し、インク受理層表面の形状が変わってしまうことがある。表面粗さRzjisを大きくするには、裏面塗工層に用いる顔料の平均粒子径がより大きいものを用いたり、その割合を増やしたり、バインダー比率を低めたり、塗工量を少なくすることで調整ができる。また、表面粗さRzjisを小さくするには、裏面塗工層に用いる顔料の平均粒子径がより小さいものを用いたり、その割合を増やしたり、バインダーの比率を高めたり、塗工量を多くしたり、カレンダーで処理することで調整ができる。
【0018】
本発明のインク受理層とは、インク中の溶媒を浸透させ、保持または吸収するような空隙を構成する主として顔料とバインダーからなる空隙タイプのインク受理層や、インク中の溶媒に溶解または膨潤する主として高分子物質からなる膨潤タイプのインク受理層などを指す。これらの層を支持体の一方に少なくとも一層のインク受理層を設けたインクジェット記録材であるが、二層以上の多層でも、空隙タイプのインク受理層と膨潤タイプのインク受理層の組み合わせであっても構わない。経師貼りで用いられるインクジェット記録材には、非水系(溶剤系)インクが用いられることが多く、展示、広告用途として必要な特性である耐水性に優れた水に不溶な成分で構成できる膨潤タイプのインク受理層が好ましい。
【0019】
顔料とバインダーからなる空隙タイプのインク受理層を有する形態で使用する顔料としては、公知の白色顔料を一種類以上用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、チサンホワイト、ケイソウ土、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、活性白土、酸性白土、加水ハロイサイト、ベントナイトクレー、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物、アルミナなどの無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン微粒子、尿素樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子などの有機顔料などの白色顔料が挙げられる。
【0020】
顔料とバインダーからなる空隙タイプのインク受理層を有する形態で使用するバインダーとしては、目的とするインクジェット記録材の特性に合わせて、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールなどの変性ポリビニルアルコール、無水マレイン酸樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体などの(メタ)アクリル系重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂系などの水性接着剤、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂系接着剤を単独あるいは併用して使用することができる。添加量は、顔料100質量%に対して、5〜80質量%が好ましい。また、染料インクを定着する目的で従来公知のカチオン樹脂を併用することもできる。
【0021】
顔料とバインダーからなる空隙タイプのインク受理層には、その他の添加剤として、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、色調製剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など各種の添加剤を本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜組み合わせて添加しても良い。
【0022】
インク中の溶媒に溶解または膨潤を主とする高分子物質からなる膨潤タイプのインク受理層を有する形態で使用する高分子物質としては、耐水性に優れた水に不溶な成分で構成できることが好ましく、例えば、ポリエステル系重合体、酢酸ビニル重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、イソプレン系重合体、クロロプレン系重合体、ウレタン系重合体、及びこれらの重合体を構成する単量体の二種類以上をランダム的、グラフト的、ブロック的に組み合わせた共重合体などの合成樹脂化合物の水性分散液や、天然ゴムラテックス等が挙げられる。これらの混合物や多層もインク受理層として使用可能である。
【0023】
また、インク中の溶媒に溶解または膨潤を主とする高分子物質からなる膨潤タイプのインク受理層には、インク吸収性を向上させたり、ブロッキングを防止するために顔料を含有させても良い。顔料としては、公知の白色顔料を一種類以上用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、チサンホワイト、ケイソウ土、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、活性白土、酸性白土、加水ハロイサイト、ベントナイトクレー、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物、アルミナなどの無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン微粒子、尿素樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子などの有機顔料、もしくは、これらを原料とした中空粒子などの白色顔料などが挙げられる。
【0024】
インク中の溶媒に溶解または膨潤を主とする高分子物質からなる膨潤タイプのインク受理層には、耐水性を損なわない程度に、ビニルピロリドン重合体、(メタ)アクリル酸重合体、(メタ)アクリルアミド重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉等の水溶性高分子化合物を添加することができる。また、添加剤として、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、色調製剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など各種の添加剤を添加することができる。
【0025】
本発明のインク受理層を塗工する方法には、特に制限はなく、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、リバースロールコーター、コンマコーター、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等各種の塗工方式を適宜用いることができる。塗工量は、インク吸収性と経済性を両立させるために、通常5〜30g/mを塗工することが好ましい。また、塗工は2回以上に分けて塗工しても構わない。
【0026】
また、インク受理層を塗工・乾燥させた後、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー等のカレンダー装置により平滑性を調整することも可能である。
【0027】
インク受理層と裏面塗工層は、どちらから塗工しても構わない。
【実施例】
【0028】
以下本発明の実施例を示す。なお、本実施例中で、特に明示しない限り部及び%は、質量部及び質量%を示すものとする。
【0029】
<インク受理層塗工液Aの調製>
水500部に合成非晶質シリカ(水澤化学工業社製:ミズカシルP−78A;平均粒子径3.3μm)100部を分散し、10%のポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA117)700部(不揮発分として70部)を添加、混合して、固形分濃度13%のインク受理層塗工液Aを調製した。
【0030】
<インク受理層塗工液Bの調製>
水60部に固形分濃度55%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(住化ケムテックス社製:スミカフレックス401HQ;ガラス転移温度−18℃)181.8部(不揮発分として100部)に固形分濃度27%の有機中空粒子(ロームアンドハースジャパン社製:ローペイクHP−91)185.5部(不揮発分として50部)、8%のポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA235)18.75部(不揮発分として1.5部)を添加、混合して、固形分濃度34%のインク受理層塗工液Bを調製した。
【0031】
(実施例1)
<裏面塗工層塗工液Aの調製>
水400部に合成非晶質シリカ(水澤化学工業社製:ミズカシルP−78F;平均粒子径12.8μm)100部を分散し、固形分濃度10%のシラノール変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:Rポリマー1130)500部(不揮発分として50部)を添加、混合して、固形分濃度15%の裏面塗工層塗工液Aを調製した。
【0032】
<インクジェット記録材1の作製>
坪量104.7g/mの原紙(三菱製紙社製:ダイヤフォーム)上に、インク受理層塗工液Aを乾燥後の塗工量が12g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次に、裏面に裏面塗工層塗工液Aを6g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、得られた塗工紙をカレンダーで処理を行い、実施例1のインクジェット記録材1を作製した。
【0033】
(実施例2)
<インクジェット記録材2の作製>
裏面塗工層の塗工量を14g/mに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録材2を作製した。
【0034】
(実施例3)
<裏面塗工層塗工液Bの調製>
固形分濃度40%のエチレン・酢酸ビニル共重合体微粒子(三井化学社製:ケミパールV100;平均粒子径12μm)250部(不揮発分として100部)に固形分濃度10%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:PVA117)1000部(不揮発分として100部)を添加、混合して、固形分濃度16%の裏面塗工層塗工液Bを調製した。
【0035】
<インクジェット記録材3の作製>
坪量104.7g/mの原紙(三菱製紙社製:ダイヤフォーム)上に、インク受理層塗工液Aを乾燥後の塗工量が12g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次に、裏面に裏面塗工層塗工液Aを6g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、得られた塗工紙をカレンダーで処理を行い、実施例3のインクジェット記録材3を作製した。
【0036】
(実施例4)
<裏面塗工層塗工液Cの調製>
水552部に合成非晶質シリカ(水澤化学工業社製:ミズカシルP−78F;平均粒子径12.8μm)50部と合成非晶質シリカ(水澤化学工業社製:ミズカシルP−78D;平均粒子径8μm)50部を分散し、固形分濃度10%のシラノール変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:Rポリマー1130)400部(不揮発分として40部)と固形分濃度55%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(住化ケムテックス社製:スミカフレックス401HQ;ガラス転移温度−18℃)72.7部(不揮発分として40部)を添加、混合して、固形分濃度16%の裏面塗工層塗工液Cを調製した。
【0037】
<インクジェット記録材4の作製>
坪量104.7g/mの原紙(三菱製紙社製:ダイヤフォーム)上に、インク受理層塗工液Bを乾燥後の塗工量が25g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次に、裏面に裏面塗工層塗工液Cを6g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、実施例4のインクジェット記録材4を作製した。
【0038】
(実施例5)
<裏面塗工層塗工液Dの調製>
水412部に合成非晶質シリカ(水澤化学工業社製:ミズカシルP−78F;平均粒子径12.8μm)100部を分散し、固形分濃度10%のシラノール変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:Rポリマー1130)80部(不揮発分として8部)を添加、混合して、固形分濃度18%の裏面塗工層塗工液Dを調製した。
【0039】
<インクジェット記録材5の作製>
坪量104.7g/mの原紙(三菱製紙社製:ダイヤフォーム)上に、裏面塗工層塗工液Dを3g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次に、裏面塗工層とは反対側の面にインク受理層塗工液Bを乾燥後の塗工量が25g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、得られた塗工紙をカレンダーで処理を行い、実施例5のインクジェット記録材5を作製した。
【0040】
(比較例1)
<裏面塗工層塗工液Eの調製>
水400部に合成非晶質シリカ(トクヤマ社製:ファインシールX−37B;平均粒子径3.7μm)100部を分散し、固形分濃度10%のシラノール変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:Rポリマー1130)500部(不揮発分として50部)を添加、混合して、固形分濃度15%の裏面塗工層塗工液Eを調製した。
【0041】
<インクジェット記録材6の作製>
坪量104.7g/mの原紙(三菱製紙社製:ダイヤフォーム)上に、インク受理層塗工液Bを乾燥後の塗工量が25g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次に、裏面に裏面塗工層塗工液Eを6g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、得られた塗工紙をカレンダーで処理を行い、比較例1のインクジェット記録材6を作製した。
【0042】
(比較例2)
<裏面塗工層塗工液Fの調製>
水442部に合成非晶質シリカ(水澤化学工業社製:ミズカシルP−78F;平均粒子径12.8μm)100部を分散し、固形分濃度10%のシラノール変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:Rポリマー1130)30部(不揮発分として3部)を添加、混合して、固形分濃度18%の裏面塗工層塗工液Fを調製した。
【0043】
<インクジェット記録材7の作製>
坪量104.7g/mの原紙(三菱製紙社製:ダイヤフォーム)上に、裏面塗工層塗工液Fを6g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次に、裏面塗工層とは反対側の面にインク受理層塗工液Bを乾燥後の塗工量が25g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、得られた塗工紙をカレンダーで処理を行い、比較例2のインクジェット記録材7を作製した。
【0044】
(比較例3)
<インクジェット記録材8の作製>
裏面塗工層の塗工量を18g/mに変更した以外は実施例4と同様にして、比較例3のインクジェット記録材8を作製した。
【0045】
(比較例4)
<裏面塗工層塗工液Gの調製>
水552部に合成非晶質シリカ(水澤化学工業社製:ミズカシルP−78F;平均粒子径12.8μm)35部と合成非晶質シリカ(水澤化学工業社製:ミズカシルP−78D;平均粒子径8μm)65部を分散し、固形分濃度10%のシラノール変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:Rポリマー1130)400部(不揮発分として40部)と固形分濃度55%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(住化ケムテックス社製:スミカフレックス401HQ;ガラス転移温度−18℃)72.7部(不揮発分として40部)を添加、混合して、固形分濃度16%の裏面塗工層塗工液Gを調製した。
【0046】
<インクジェット記録材9の作製>
坪量104.7g/mの原紙(三菱製紙社製:ダイヤフォーム)上に、インク受理層塗工液Bを乾燥後の塗工量が25g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次に、裏面に裏面塗工層塗工液Gを6g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、比較例4のインクジェット記録材9を作製した。
【0047】
(比較例5)
<インクジェット記録材10の作製>
坪量104.7g/mの原紙(三菱製紙社製:ダイヤフォーム)上に、インク受理層塗工液Bを乾燥後の塗工量が25g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、得られた塗工紙をカレンダーで処理を行い、比較例5のインクジェット記録材10を作製した。
【0048】
(1)表面粗さの測定
各インクジェット記録材の裏面について表面粗さ形状測定器(Surfcom570A;東京精密社製)を用いて、カットオフ値0.8mm、長さ20mm、速度0.3mm/分の条件で、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjis(10回測定の平均値)を測定した。
【0049】
(2)糊付け適性の評価
A4サイズに断裁した各インクジェット記録材の裏面に澱粉・酢酸ビニル樹脂系壁紙用水性糊(ヤヨイ化学社製:ルーアマイルド)を水で2倍に希釈した液を、ワイヤーバーを用いて100g/m塗工し、塗工後、裏面同士を貼り合わせる。10分後に貼り合わせた裏面同士を剥離し、剥がれ具合を目視で観察し、下記基準にて評価を行った。
○;全く問題なく剥離することができる
△;剥離に抵抗はあるが、塗層の剥離は確認されない
×;裏面の塗層が一部剥離するか、裏面同士が接着し剥離することができない
実使用上問題のない範囲は、○及び△の評価である。
【0050】
(3)裏面塗工層の耐水性の評価
10cm×10cmに裁断した各記録材にインク受理層に、防水のためセロハンテープで全面貼付し、水を満たしたバットの中に10分間浸漬後、裏面を指で擦り、各記録材の耐水性を目視観察した。
○;水の浸透及び剥離等は全くない
△;水が部分的に浸透し、部分的に塗層の剥離を生じる
×;浸透した水が支持体に達し、擦過により支持体から剥離を生じる
実使用上問題のない範囲は、○及び△の評価である。
【0051】
(4)裏面塗工層によるインク受理層への型付きの評価
10cm×10cmに裁断した各記録材のインク受理層に裏面が重なるようにして、カレンダーで線圧100Kg/cm、速度4m/分で処理を行い、インク受理層表面を目視観察した。
○;全く表面形状は変わっていない
△;若干表面形状が変わっているが、表面の風合いは変わらない
×;表面形状が著しく変化し、表面の風合いに凹凸感がわかる
実使用上問題のない範囲は、○及び△の評価である。
【0052】
各実施例、各比較例で得られたインクジェット記録材の表面粗さ、糊付け適性、耐水性、型付きに関しての評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1より裏面塗工層にコールカウンター法による平均粒子径10μm以上の顔料が総固形分の25質量%以上95質量%以下含有し、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisが22μm以上50μm以下である実施例1〜5は、糊付け適性に良好であり、耐水性、型付きに問題ないことがわかる。一方、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisが22μm未満の比較例1、3、4、5は、糊付け適性が悪く、50μmを超える比較例2は、型付きが著しくなり、表面の形状が変わってしまう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分がセルロースパルプである支持体の一方に少なくとも1層のインク受理層を有するインクジェット記録材において、該支持体の裏面にコールターカウンター法による平均粒子径10μm以上の顔料を総固形分の25質量%以上95質量%以下含有し、JIS B0601−2001に規定される表面粗さRzjisが22μm以上50μm以下である裏面塗工層を設けることを特徴とするインクジェット記録材。

【公開番号】特開2011−183774(P2011−183774A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54287(P2010−54287)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】