説明

インクジェット記録用ベルト帯電ロール及びインクジェット記録装置

【課題】インクジェット記録用ベルト上での安定した帯電挙動を可能にすることにより、インクジェット記録用ベルトに用紙搬送に十分な吸着力を常に維持させることができ、インクの付着を低減し、更に放電劣化、直流電源電圧の低減を実現したインクジェット記録用ベルト帯電ロール、及び該インクジェット記録用ベルト帯電ロールを備えたインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】金属芯材2の外周に下地層4が形成されているロール上に、フッ素樹脂を含み、23℃55%RHにおけるニップ抵抗が10〜10Ωである表面層6が形成されていることを特徴とするインクジェット記録用ベルト帯電ロール、及び該インクジェット記録用ベルト帯電ロールを備えたインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用ベルト帯電ロール及びインクジェット記録装置に係り、特に、記録媒体を搬送するベルトの帯電及び除電を行うインクジェット記録用ベルト帯電ロール及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置では、インクジェットヘッドを主走査方向へ走査しながらインク液を吐出し、1ライン分のインクジェットヘッドの走査が終了すると、記録媒体を副走査方向へ所定量搬送して、再びインクジェットヘッドを主走査方向へ走査して、記録媒体に画像を形成している。
【0003】
記録媒体の搬送は、所定量だけ精度よく搬送する必要があるため、搬送ベルトを帯電させて静電気により記録媒体を搬送ベルトの表面に吸着させて搬送している。ここで、搬送ベルトに残留電荷があると、所望の電荷量にならないため、安定した吸着力が得られない。
【0004】
搬送ベルトの表面で安定した吸着力を得るために、静電吸着ベルトの除電を行う除電ブラシを設けた用紙搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、静電記録装置等でコロトロン、スコロトロン、除電ブラジ,除電ロール等の除電装置を用いて除電を行う方法が知られている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の除電ブラシを用いた用紙搬送装置では、除電ブラシの毛の変形や抜け落ちによって、その位置に対応した搬送ベルトの部分の除電能力が低下し、安定した帯電を行うことができない。さらに抜け落ちた毛が用紙搬送装置内の他機構へ付着して悪影響を及ぼすという懸念があり、例えば帯電器に付着することによる帯電不良の懸念や、記録媒体やインクジェットヘッドに付着して画質を悪化させる懸念により、装置の信頼性を低下させてしまうという問題がある。
【0006】
また、上記のコロトロン、スコロトロン等の除電装置を用いる方法では、電圧を発生させる機構が新たに必要となり、その結果装置全体のコストが上がり、さらに電源を発生させる機構を設置するスペースも必要となるため、装置の小型化を妨げてしまう、という問題がある。更に、従来のコロトロン、スコロトロンは、オゾン発生,表面親水化,放電劣化の影響を受け易く、装置面積,コスト面で好ましくない。
【0007】
一方、従来の直流に用いる導電ロールでは、ベルト帯電時の電界保持性維持のための直流帯電による安定した用紙吸着性の保持が必要であるが、インク(や処理液)ミストやインク汚れ、によるベルト表面汚染による電気特性が悪化する。更に、形態変化・ヘコミ発生による帯電むらが出やすい。
【0008】
これに対し、徐電レスを狙った高信頼で搬送ベルト上での帯電を可能とする導電ロールが提供されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では交流+直流による帯電に併用され、単層導電ロールで抵抗を制御しているが、環境の変化による抵抗変動で含水紙などへの用紙吸着性が変化しやすく、更に、ベルトの搬送と帯電を制御し、ベルトの上での残留電荷が用紙位置・サイズや用紙で異なり、安定した吸着力が得られない。
【特許文献1】特開2004−99280号公報
【特許文献2】特開2003−103857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、インクジェット記録用ベルト上での安定した帯電挙動を可能にすることにより、インクジェット記録用ベルトに用紙搬送に十分な吸着力を常に維持させることができ、インクの付着を低減し、更に放電劣化、直流電源電圧の低減を実現したインクジェット記録用ベルト帯電ロール、及び該インクジェット記録用ベルト帯電ロールを備えたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、下記本発明が前記課題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
<1> 金属芯材の外周に下地層が形成されているロール上に、フッ素樹脂を含み、23℃55%RHにおけるニップ抵抗が10〜10Ωである表面層が形成されていることを特徴とするインクジェット記録用ベルト帯電ロールである。
<2> 前記表面層は、10℃10%RHにおけるニップ抵抗が前記下地層の10℃10%RHにおけるニップ抵抗より低く、28℃85%RHにおけるニップ抵抗が前記下地層の28℃85%RHにおけるニップ抵抗より高いことを特徴とする<1>に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロールである。
【0011】
<3> 前記表面層は、静止摩擦係数が0.3以下であり、厚みが30〜500μmであることを特徴とする<1>に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロールである。
<4> 23℃55%RHにおける表面抵抗率が10Ω/□以下であり、23℃55%RHにおける体積抵抗率が10〜10Ωcmであることを特徴とする<1>に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロールである。
【0012】
<5> フッ素樹脂を含む樹脂組成物からなる導電性チューブをその内周面に流体を圧入することで膨らまし、該膨らました導電性チューブの内周面側に、前記金属芯材の外周に下地層が形成されている導電性ロールを挿入し、前記流体の圧入を停止させて導電性チューブを収縮させることで、前記表面層が形成されていることを特徴とする<1>に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロールである。
<6> フッ素樹脂を含む樹脂組成物からなる導電性チューブに、前記金属芯材の外周に下地層が形成されている導電性ロールを挿入し、これらを加熱して加硫しながら該導電性チューブを硬化させた後冷却し、該導電性チューブを下地層に接着させることで、前記表面層が形成されていることを特徴とする<1>に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロールである。
【0013】
<7> 前記フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする<1>に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロールである。
<8> 記録媒体にインク滴を吐出するインクジェットヘッドを有するインクジェットヘッドユニットと、記録媒体をインクジェットヘッドユニットに搬送する搬送ベルトと、搬送ベルト表面を帯電させるための帯電ロールと、を備えたインクジェット記録装置であって、前記帯電ロールが<1>に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロールであることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インクジェット記録用ベルト上での安定した帯電挙動を可能にすることにより、インクジェット記録用ベルトに用紙搬送に十分な吸着力を常に維持させることができ、インクの付着を低減し、更に放電劣化、直流電源電圧の低減を実現したインクジェット記録用ベルト帯電ロール、及び該インクジェット記録用ベルト帯電ロールを備えたインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のインクジェット記録用ベルト帯電ロール(以下、「本発明の帯電ロール」という場合がある。)を図1を用いて説明する。図1に示すように本発明の帯電ロール32は、金属芯材2の外周に下地層4が形成されているロールに、フッ素樹脂を含み、23℃55%RHにおけるニップ抵抗が10〜10Ωである表面層6が形成されていることを特徴とする。尚、表面層6におけるフッ素樹脂の含有量は、5質量%以上であり、50〜80質量%が好ましい。
本発明の帯電ロール32は、下地層4と表面層6との二層構造となっているため、ロールの抵抗調整機能のみならず、ベルト表面の異物付着による汚れ防止,放電生成物による抵抗低下抑制,磨耗粉による用紙汚れ防止,発泡体部分での機械的磨耗抑制,機械的変形の防止,ニップ部変形抑制など表面保護層としての機能層として有効である。
【0016】
金属芯材2としては、特に限定されず、例えばステンレス鋼(SUS)、銅、アルミニウム等が用いられる。
【0017】
下地層4は、表面に緻密なスキン層を有する発泡層、無発泡層のいずれであってもよいが、均一ニップ性付与のため発泡層であることが好ましい。下地層4としては、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリエーテルウレタン(PU)ゴム等の単独、またはEPDMとシリコーンゴム、NBR等との2種以上のゴム材成分から構成されることが好ましく、EPDM、ECO、PUゴム。下地層4の体積抵抗率は一般に1014Ωcm以上であるが、必要に応じて、下地層4に導電剤を含有させることもできる。
【0018】
下地層4の層厚は、1〜30mmであることが好ましく、2〜6mmであることがより好ましい。下地層4の層厚が1mm未満であると、ゴム硬度がシュフトのたわみを保持して変形しやく,均一ニップの保持が困難となる場合があり、30mmを超えると、ベルトニップ量が増えベルトスピードの変動や、用紙走行に影響し、画質上の伸縮や,用紙シワになり、用紙ジャム発生の原因となる場合がある。
【0019】
表面層6は、フッ素樹脂を含み、23℃55%RHにおけるニップ抵抗が10〜10Ωであることを特徴とし、104.5〜10Ωであることが好ましく、104.5〜10Ωであることがより好ましい。前記表面層6のニップ抵抗が10Ω未満であると、用紙給電時の過大電流となりベルトリークによる用紙吸着不良となりやすく、10Ωを超えると、ベルト帯電となる。ここでニップ抵抗とは、1Kgの荷重を掛け、電圧100V(10秒チャージ)を印加したときの抵抗を三菱油化製ハイレスターIPの円筒電極HRプローブを用いて測定した値であり、表面層6のニップ抵抗はチューブ被覆前に同径の金属(SUS、またはAlパイプ)にチュービングし、そのニップ部で測定し、後述の下地層のニップ抵抗はチューブ被覆前に加重500g(各両端)で印加電圧100vで同様に測定した。
【0020】
また、表面層6は、より安定な帯電挙動をベルト上で実現できる点で、10℃10%RHにおけるニップ抵抗が下地層4の10℃10%RHにおけるニップ抵抗より低く、28℃85%RHにおけるニップ抵抗が下地層4の28℃85%RHにおけるニップ抵抗より高いことが好ましい。10℃10%RH条件下では基材抵抗の上昇を表面層の抵抗値をこれより低く抑えることにより、ニップ部での電流が表面層を介して全面に回り込み、見かけのニップ抵抗を小さくできる。28℃85%RH条件下では吸湿やゴム弾性の低下による基材抵抗の低下を逆にチューブ抵抗をこれより高くすることにより安定した抵抗体を得ることができる。
【0021】
更に、表面層6は、静止静摩擦係数が0.3以下であり、厚みが30〜500μmであることが好ましい。前記静止静摩擦係数は0.25以下であることがより好ましく、0.2以下であることが更に好ましい。前記静止静摩擦係数が0.3を超えると、ベルトの表面磨耗の促進,スリップ性,速度変動を招き,安定した用紙姿勢が取りにくく、異物付着性が向上し、ブレード等のクリーニング性も低下する場合がある。一方、前記厚みは、30〜500μmであり、50〜200μmであることが更に好ましい。前記厚みが30μm未満であると、下地層4の研磨パターン、発泡目の影響で凹凸が出たり,変形によるシワ・へこみ等の発生、さらに収縮率の低減による基材密着性の低下の原因となる場合があり、500μmを超えると、下地層4の影響がでにくく、ベルトとの不均一ニップによるベルト用紙速度の変動や表面傷・磨耗などが起こりやすく、異物付着(インク,紙粉,放電生成物,ゴミ等)となる場合がある。
尚、前記表面層6の静止摩擦係数は、25℃条件下で、Heidonを用い、表面層6を構成する樹脂シート上に、前記金属芯材2の外周に下地層4が形成されているロールを置き、徐々に樹脂シートを傾け、前記ロール軸がスライドする角度のtan(正接)より求めることが可能である。
【0022】
表面層6は、フッ素樹脂を含む。本発明の帯電ロールは、フッ素樹脂を含むことにより、インクの付着を低減し、環境変化に対し、安定な抵抗領域(通常の電子写真方式に用いる帯電ロール(体積抵抗率が10Ωcm)よりも低い抵抗領域(体積抵抗率が10Ωcm))を有する帯電ロールを提供することができ、その結果、放電劣化、直流電源電圧の低減を実現でき、ベルト上での用紙保持性・高画質・高転写と高信頼の両立が可能となる。前記フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
表面層6は、フッ素樹脂以外にも抵抗調整のため、導電性材料を含有していてもよい。該導電性材料としては、導電性フィラーとして電子伝導性導電材であるカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、Al、Ni、銅等のフィラー;酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸K、酸化錫−酸化In、酸化Sb等の複合酸化物;が挙げられ、イオン導電性材料としてアンモニウム塩、スルホン酸塩、カチオン、ノニオン、アニオン系の界面活性剤;が挙げられ、これらを用いて23℃55%RHにおける体積抵抗率を10〜10Ωcmに制御することが好ましい。
【0024】
以上の構成の本発明の帯電ロールは、10℃10%RH条件下での抵抗安定化と帯電ムラ軽減の点で、23℃55%RHにおける表面抵抗率が10Ω/□以下(より好ましくは105.5Ω/□以下)であり、23℃55%RHにおける体積抵抗率が10〜10Ωcm(より好ましくは104.5〜106.5Ωcm)であることが好ましい。
尚、23℃55%RHにおける表面抵抗率は、図2に示すように電圧2kVの印加から所定時間経過した上記帯電ロール32の表面に、その円周方向に10mm離して直径12mm,長さ330mmの2本のSUS製の金属ロール8を0.2mmの食い込み量で接触させた。そして、金属ロール8間に1kVの直流電圧(V)を印加して、電圧の印加から10秒後の電流値(I)を読み取り、下記の式により表面抵抗率Rsを求めた。
・ Rs = LV/GI
ここで、Lは帯電ロールの長さ(cm)を示し、Gは2本の金属ロール8間の距離(cm)を示す。
また、体積抵抗率は、高さ1cmのロール断片を切り出して、上下に金属板をはさみ、DC=100vを印加して10秒値の抵抗計測を行い、割り出した。
【0025】
また、本発明の帯電ロールは硬度が90〜20°であることが好ましく、60〜30°であることがより好ましい。前記硬度が90°を超えると、ベルトニップが小さくなり、ベルト面方向で安定した帯電が得られない原因となる場合があり、前記硬度が20°未満であると、ニップ面積が大きくなり、ベルト速度変動を生ずる原因となる場合がある。尚、前記硬度は、アスカーC硬度を意味し、荷重500gのときの反発硬度である。
【0026】
本発明の帯電ロールの製造方法は特に限定されないが、チューブ状のフッ素樹脂組成物を金属芯材の外周に下地層が形成されているロールに被覆することにより、表面層が形成されていることが好ましい。本発明の帯電ロールとしては、以下の方法により製造されたものが好ましい。
【0027】
本発明の帯電ロールは、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリヘキサテトラフロロエチレン樹脂を含む樹脂組成物からなる導電性チューブをその内周面に流体を圧入することで膨らまし、該膨らました導電性チューブの内周面側に、前記金属芯材の外周に下地層が形成されている導電性ロールを挿入し、前記流体の圧入を停止させて導電性チューブを収縮させることで、表面層6が形成されていることが好ましい(第一の方法)。
また、本発明の帯電ロールは、フッ素樹脂を含む樹脂組成物からなる導電性チューブに、前記金属芯材の外周に下地層が形成されている導電性ロールを挿入し、これらを加熱して加硫しながら該導電性チューブを硬化させた後冷却し、該導電性チューブを下地層に接着させることで、表面層6が形成されていることが好ましい(第二の方法)。
【0028】
本発明の帯電ロールは、下地層4が発泡層である場合、例えば、次のようにして製造することができる。未発泡状態のゴム素材に発泡剤、加硫剤等を添加し、発泡弾性体素材を作製する。硬度30〜60°の発泡弾性体を得るためには、発泡剤の量や発泡条件を調節することが重要である。次いで、発泡弾性体素材をニーダー、バンバリーミキサ等で混練した後、エクストルーダで押し出し、クロスヘッドに送られる金属芯材の外周面に巻き付ける。上記発泡弾性体素材が巻き付けられた金属芯材を金型内にセットし、弾性体素材を加熱して加硫する。加熱により発泡したゴム素材は金属芯材に固着され、下地層となる発泡弾性体が形成される。あるいは、発泡弾性体素材をエクストルーダで押し出す際に、該弾性体素材をチューブ形状に成形して、これを金属芯材に巻き付けることなく、加熱して発泡弾性体を形成する方法でもよい。また、この発泡弾性体の中心に金属芯材を圧入して、金属芯材の外周面に下地層を固定させることもできる。下地層の表面はその後研磨される。
【0029】
一方、フッ素樹脂にカーボンブラック、加硫剤等を添加した導電性ゴム材料を作製する。次いで、例えばドライプロセスで生産性の良いクロスヘッドを有するエクストルーダから前記導電性ゴム材料をチューブ状に押し出して表面層となるチューブを作製する。
【0030】
更に、第一の方法では、得られた導電性チューブの内周面に流体を圧入するまたは内径が大きめの金属シャフトに挿入することで膨らまし、該膨らました導電性チューブの内周面側に、前記金属芯材の外周に下地層が形成されている導電性ロールを挿入し、前記流体の圧入を停止させて導電性チューブを収縮させることで、表面層6が形成される。
【0031】
また、第二の方法では、得られた導電性チューブの内周に下地層が形成された金属芯材を挿入し、下地層が形成された金属芯材を定速で移動させて、下地層の外周に導電性チューブを被覆する。その後、導電性チューブを下地層が形成された金属芯材と一体的に加硫缶内で加圧蒸気の雰囲気下に加熱して加硫または加硫発泡しながら、導電性チューブを下地層が形成された金属芯材と一体的に加硫缶内で加圧蒸気の雰囲気下に加熱して加硫しながら、導電性チューブを硬化させた後冷却して表面層6を形成すると同時に前記下地層4表面に接着または収縮圧入させる。このようにして製造されたロールを加硫缶から取り出す。
以上のようにして作製された基材ロールの表面は研磨して仕上げを行う
【0032】
本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体にインク滴を吐出するインクジェットヘッドを有するインクジェットヘッドユニットと、記録媒体をインクジェットヘッドユニットに搬送する搬送ベルトと、搬送ベルト表面を帯電させるための帯電ロールと、を備えたインクジェット記録装置であって、前記帯電ロールが既述の本発明のインクジェット記録用ベルト帯電ロールであることを特徴とする。
以下、本発明のインクジェット記録装置の好ましい形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図3に示すように、インクジェット記録装置10は、記録用紙(記録媒体)Pにインク滴を吐出するインクジェットヘッドユニット12を備えており、インクジェットヘッドユニット12は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色のインク滴各々をノズルから吐出するインクジェットヘッド(図示省略)を備えている。インクジェットヘッドは記録用紙Pの幅以上の有効印字領域を有する長尺のヘッドで、記録用紙Pの幅方向の印字領域に一斉にインク滴を吐出する。また、インクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出させる方式は、圧電素子でインク室を加圧する方式やサーマル方式等の公知の方式を適用可能である。
【0034】
また、インクは、インクジェットヘッドユニット12の上方に配置されたインクタンク(図示省略)から配管を通じてインクジェットヘッドへ供給され、インクの種類は、水性インク、油性インク、溶剤系インク等の公知のインクが適用可能である。
【0035】
インクジェット記録装置10の最下部には、給紙トレイ16が挿抜可能に設けられており、給紙トレイ16には、記録用紙Pが積載されており、最上位の記録用紙Pにはピックアップロール18が当接している。記録用紙Pは、ピックアップロール18によって1枚ずつ給紙トレイ16から搬送方向下流側へ給紙され、搬送経路に沿って順に配設された搬送ロール20、22によって無端状の搬送ベルト24へ給紙され、搬送ベルト24によりインクジェットヘッドユニット12のへ搬送される。
【0036】
また、搬送ベルト24は、駆動ロール26及び従動ロール28、30に張架されている。また、従動ロール30は接地されている。
【0037】
なお、搬送ベルト24は、一例として、ウレタンなどのゴムやPET、ETFE、ポリイミドなどの樹脂により成形されており、体積抵抗値は1010Ω・cm以上となっている。
【0038】
また、記録用紙Pが搬送ベルト24に接触する位置の上流側に、電源装置34が接続された、本発明の帯電ロールである帯電ロール32が配置されている。帯電ロール32は、従動ロール30との間で搬送ベルト24を挟みつつ従動し、搬送ベルト24に押圧する押圧位置と、搬送ベルト24から離間した離間位置との間を移動可能とされている。押圧位置では、接地された従動ロール30との間に所定の電位差が生じるため、搬送ベルト24に対して放電し、電荷を与えることができる。また、帯電ロール32を配置する位置は、記録用紙Pが搬送ベルト24に接触する位置の上流側である場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、紙粉やインクミスト等の装置内の汚れによる影響が少なくなる位置に設置することができる。
【0039】
電源装置34は、既知である任意の電圧波形を発生する任意波形発生器及び増幅器で構成されている。
【0040】
また、インクジェットヘッドユニット12の下流側には、記録用紙Pの排出経路を構成する複数の排出ロール対40が設けられ、排出ロール対40で構成された排出経路の先には、排紙トレイ42が設けられている。
【0041】
インクジェット記録装置10の各部は、図4に示すように、CPU、ROM、及びRAMから構成される制御部56によって制御され、インクジェットヘッドユニット12、帯電ロール32、各種ロールを駆動する複数のモータ46を含むインクジェット記録装置10の全体を制御している。
【0042】
次に、インクジェット記録装置10のプリント動作について説明する。まず、制御部56は、プリントジョブの指令を受け取ると、ピックアップロール18、全ての搬送ロール、搬送ベルト24を駆動させて給紙トレイ16から記録用紙Pを送り出す。さらにダミージェットを行い、インクジェットヘッドユニット12のノズルの性能を初期化し、インクジェットヘッドユニット12によるインク滴の吐出を制御するヘッド制御部(図示省略)は、画像信号に対応するノズルの圧電素子に、画像信号に応じたタイミングで駆動電圧を印加する。
【0043】
これによって、搬送ベルト24で搬送されている記録用紙Pが印字されるが、この印字工程については詳細に後述する。そして、印字された記録用紙Pは、搬送ベルト24、排出ロール対40によって排紙トレイ42まで搬送される。
【0044】
ここで、印字工程について説明する。まず、制御部56は、プリントジョブを受信すると、帯電ロール32をオンにし、電源装置34から上述した重畳波形で変化する電圧を帯電ロール32に印加させる。そして、帯電ロール32が搬送ベルト24に放電すると、搬送ベルト24の表面上の帯電領域において、重畳波形の高周波電圧波形で変化する電圧によって、残留電荷を平均化しつつ低周波電圧波形の周波数に対応する帯電パターンのみがベルト表面に現れ、搬送ベルト24の表面には、図5のように、正の電荷と負の電荷とが交互に帯電される。この正の電荷と負の電荷とによる不均一電界による応力(マックスウェル応力)によって、記録用紙Pが搬送ベルト24の表面に安定的に静電吸着される。正の電荷と負の電荷とが交互に帯電されているため、搬送ベルト24の表面からインクジェットヘッドユニット12のインク滴の吐出へ与える電界の影響が少なく、また、記録用紙Pを直接帯電しないため、記録用紙Pの特性(電気抵抗値、厚さなど)に起因する吸着力の影響が少ない。
【0045】
これによって、搬送ベルト24へ給紙された記録用紙Pが、搬送ベルト24に静電吸着されてインクジェットヘッドユニット12の印字領域を通過する。その際、制御部56は、インクジェットヘッドユニット12を作動して記録用紙Pに印字を行う。そして、記録用紙Pは排出ロール対40によって、排紙トレイ42に排紙される。また、搬送ベルト24の記録用紙Pが吸着されていた部分は、駆動ロール26及び従動ロール28、30によって、帯電ロール32の押圧部分へ再び回転移動し、帯電ロール32に印加された重畳波形で変化する電圧によって搬送ベルト24上に残留した電荷が平均化されると共に、再び低周波電圧波形の周波数に対応し、搬送ベルト24上に正の電荷と負の電荷とが交互に帯電され、安定した吸着力を維持する。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
未発泡状態のEPDM(JSR製EP33)100質量部に、加硫剤として硫黄(鶴見化学工業社製、200メッシュ)1質量部と、硫黄加硫促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラ−M)1.5質量部と、発泡剤としてベンゼンスルホニルヒドラジド6質量部と、ケチェンブラックEC(ライオンアクゾ製)6質量部と、旭サーマルブラックFT(旭カーボン)24質量部とを添加し、これをニーダー、バンバリミキサーで混練し、押し出し機を用いてチューブ状にゴム組成物を押し出した。更に、160℃、30分間発泡加硫を行い、チューブ状の発泡生成物を得た。
次いで、チューブ状の発泡生成物にφ8mmの金属(SUS、ステンレス鋼)シャフトを挿入し、18.7mmφになるように研摩加工し、下地層(発泡生成物)が形成された発泡ロールを得た。
【0047】
導電性PFAチューブ(グンゼ製導電チューブ、厚み100μm)をその内周面にエアーを圧入することで膨らまし、該膨らましたチューブの内周面側に、発泡ロールを挿入し、エアーの圧入を停止させて導電性PFAチューブを120℃、10分で収縮させることで、表面層(導電性PFAチューブ)が形成されたインクジェット記録用ベルト帯電ロールを作製した。
【0048】
得られた帯電ロールについて、既述の方法で、23℃55%RHにおける表面抵抗率、体積抵抗率、及び硬度を測定した。
また、表面層について23℃55%RH、10℃10%RH、28℃85%RHにおけるニップ抵抗、静止摩擦係数、厚みを測定した。
更に、下地層について23℃55%RH、10℃10%RH、28℃85%RHにおけるニップ抵抗、厚みを測定した。これらの結果を表1に示す。
【0049】
得られた帯電ロールを図3と同様の構成のインクジェット記録装置における帯電ロール32として使用した。また、該インクジェット記録装置は、搬送ベルト24としてポリイミドベルト(23℃55%RHにおける体積抵抗:1011.8Ωcm、表面抵抗:1012.6Ω/□)を使用した。23℃55%RH、10℃10%RH、28℃85%RHそれぞれの条件下において、帯電ロール32に直流電圧2Kvを印加し、インクとしてEPSON製インク(IC8CL33)を用い、該インクジェット記録装置により画像を記録した。その際の帯電ロール32上のインク汚れ、用紙吸着性、帯電特性を評価した。その結果それぞれの条件において、インク汚れが発生せず(3M製Scotchクリアーテープ上でベルト面に転写し、濃度が0.15未満であった。)、用紙吸着性は良好であり(インク印字後もベルト上の用紙が剥離せず。)、帯電特性(帯電ロールにDC1.5kv印加)は良好(ベルト表面電位はDC+950vであった。)であった。
【0050】
<実施例2>
実施例1において、チューブ状の発泡生成物を作製する際に用いたケチェンブラックEC(ライオンアクゾ製)の添加量を7質量部に、旭サーマルブラックFT(旭カーボン)の添加量を28質量部に変更したこと以外実施例1と同様にして、インクジェット記録用ベルト帯電ロールを作製し、実施例1と同様にインクジェット記録装置を用いて、帯電ロール32上のインク汚れ、帯電性、用紙吸着性を評価した。その結果それぞれの条件において、インク汚れが発生せず(3M製Scotchクリアーテープ上でベルト面に転写し、濃度が0.13であった。)、用紙吸着性は良好であり(インク印字後もベルト上の用紙が剥離せず。)、帯電特性は良好(ベルト表面電位はDC+930vであった。)であった。
【0051】
<実施例3>
実施例1において、チューブ状の発泡生成物を作製する際に用いたEPDM100質量部を、エピクロロヒドリンゴム(ダイソー製エピクロマーc)100質量部に変更し、ケチェンブラックEC(ライオンアクゾ製)6質量部、及び旭サーマルブラックFT(旭カーボン)24質量部を、トリエチルベンジルアンモニウム塩1質量部に変更したこと以外実施例1と同様にして、インクジェット記録用ベルト帯電ロールを作製し、実施例1と同様にインクジェット記録装置を用いて、帯電ロール32上のインク汚れ、帯電性、用紙吸着性を評価した。その結果それぞれの条件において、インク汚れが発生せず(3M製Scotchクリアーテープ上でベルト面に転写し、濃度が0.14であった。)、用紙吸着性は良好であり(インク印字後もベルト上の用紙が剥離せず。)、帯電特性は良好(ベルト表面電位はDC+980vであった。)であった。
【0052】
<比較例1>
実施例1において、用いた導電性PFAチューブを、グンゼ製導電チューブ、厚み100μmから、25μmに変更したこと以外実施例1と同様にして、インクジェット記録用ベルト帯電ロールを作製し、実施例1と同様にインクジェット記録装置を用いて、帯電ロール32上のインク汚れ、帯電性、用紙吸着性を評価した。その結果、インク汚れが発生し(3M製Scotchクリアーテープ上でベルト面に転写し、濃度が0.25であった。)、用紙吸着性は不良であり(インク印字後のベルト上の用紙の剥離が発生した。)、帯電特性は不良(ベルト表面電位はDC+340vであった。)であった。
【0053】
<比較例2>
実施例1において、用いた導電性PFAチューブを、グンゼ製導電チューブ、厚み100μmから、550μmに変更したこと以外実施例1と同様にして、インクジェット記録用ベルト帯電ロールを作製し、実施例1と同様にインクジェット記録装置を用いて、帯電ロール32上のインク汚れ、帯電性、用紙吸着性を評価した。その結果、インク汚れが発生し(3M製Scotchクリアーテープ上でベルト面に転写し、濃度が0.16であった。)、用紙吸着性は不良であり(インク印字前にベルト上の用紙の剥離が発生した。)、帯電特性は不良(ベルト表面電位はDC+550vであった。)であった。
【0054】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のインクジェット記録用ベルト帯電ロールの構成を示す概略図である。
【図2】表面抵抗率の測定方法を説明するための図である。
【図3】本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る搬送ベルト上に帯電された電荷を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0056】
2 金属芯材
4 下地層
6 表面層
8 金属ロール
10 インクジェット記録装置
12 インクジェットヘッドユニット
16 給紙トレイ
18 ピックアップロール
20,22 搬送ロール
24 搬送ベルト
26 駆動ロール
28,30 従動ロール
32 帯電ロール
34 電源装置
40 排出ロール対
42 排紙トレイ
46 モータ
56 制御部
P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属芯材の外周に下地層が形成されているロール上に、フッ素樹脂を含み、23℃55%RHにおけるニップ抵抗が10〜10Ωである表面層が形成されていることを特徴とするインクジェット記録用ベルト帯電ロール。
【請求項2】
前記表面層は、10℃10%RHにおけるニップ抵抗が前記下地層の10℃10%RHにおけるニップ抵抗より低く、28℃85%RHにおけるニップ抵抗が前記下地層の28℃85%RHにおけるニップ抵抗より高いことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロール。
【請求項3】
前記表面層は、静止摩擦係数が0.3以下であり、厚みが30〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロール。
【請求項4】
23℃55%RHにおける表面抵抗率が10Ω/□以下であり、23℃55%RHにおける体積抵抗率が10〜10Ωcmであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロール。
【請求項5】
フッ素樹脂を含む樹脂組成物からなる導電性チューブをその内周面に流体を圧入することで膨らまし、該膨らました導電性チューブの内周面側に、前記金属芯材の外周に下地層が形成されている導電性ロールを挿入し、前記流体の圧入を停止させて導電性チューブを収縮させることで、前記表面層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロール。
【請求項6】
フッ素樹脂を含む樹脂組成物からなる導電性チューブに、前記金属芯材の外周に下地層が形成されている導電性ロールを挿入し、これらを加熱して加硫しながら該導電性チューブを硬化させた後冷却し、該導電性チューブを下地層に接着させることで、前記表面層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロール。
【請求項7】
前記フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロール。
【請求項8】
記録媒体にインク滴を吐出するインクジェットヘッドを有するインクジェットヘッドユニットと、記録媒体をインクジェットヘッドユニットに搬送する搬送ベルトと、搬送ベルト表面を帯電させるための帯電ロールと、を備えたインクジェット記録装置であって、
前記帯電ロールが請求項1に記載のインクジェット記録用ベルト帯電ロールであることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−308262(P2007−308262A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139016(P2006−139016)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】