インクジェット記録装置、インクジェット記録システム、およびインクジェット記録装置の制御方法
【課題】複数種のインクを用いて画像を記録する場合に、それらのインクの記録媒体に対する浸透の深さの差が記録画像に及ぼす悪影響を小さく抑えて、高品位の画像の記録を実現すること。
【解決手段】記録媒体に対する浸透深さが異なる複数のインクを用いて画像を記録する場合に、浸透深さの深いインクを優先的に早めて付与することにより、結果的に、複数のインクの浸透深さの差を小さく抑える。
【解決手段】記録媒体に対する浸透深さが異なる複数のインクを用いて画像を記録する場合に、浸透深さの深いインクを優先的に早めて付与することにより、結果的に、複数のインクの浸透深さの差を小さく抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に複数種のインクを付与して画像を記録するインクジェット記録装置、インクジェット記録システム、およびインクジェット記録装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置の低コスト化および小型化のために、3色インク(シアン、マゼンタ、イエロー)のみを搭載したモデルも多く市販されている。しかし、3色インクを用いてブラック(以下、「コンポジットブラック」ともいう)を記録した場合、その色調が本来の黒の色調とは異なるおそれがある。色調が異なる原因は、記録媒体に対するインク中の色材の浸透深さの差にあると考えられる。
【0003】
特許文献1には、色材として染料を含む染料インクを記録媒体に付与する前に、その染料を不溶化させる化合物を含むクリアインクを付与(先打ち)して、染料の浸透深さを記録媒体に表層に留める方法が提案されている。また特許文献2には、浸透促進インクを使用することによって、色材の浸透深さを揃える方法が提案されている。また特許文献3には、記録媒体毎に複数色のインクの付与順序を変更することによって、様々な記録媒体において、本来の黒に近い色調を実現する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−63185号公報
【特許文献2】特開2008−87417号公報
【特許文献3】特開平10−16672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2に記載の方法は、画像の記録コストの上昇、および記録装置の大型化を招くおそれがある。また、特許文献3に記載の方法は、複数色のインクの付与順序の変更が色調に及ぼす影響が小さい場合、特に、インクジェット記録用の専用紙としての光沢紙のような微細な孔が形成されている記録媒体を用いる場合には、充分な効果が得られない。それは、複数色のインクの付与タイミングの間に充分な時間差を設定することが難しいためである。
【0006】
本発明の目的は、複数種のインクを用いて画像を記録する場合に、それらのインクの記録媒体に対する浸透の深さの差が記録画像に及ぼす悪影響を小さく抑えて、高品位の画像の記録を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット記録装置は、第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより、画像を記録するインクジェット記録装置であって、前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定手段と、前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定手段と、を備え、前記第1および第2の設定手段は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とする。
【0008】
本発明のインクジェット記録システムは、記録データに基づいて画像を記録するインクジェット記録装置と、前記記録データを前記インクジェット記録装置に供給する画像処理装置と、を含むインクジェット記録システムであって、前記インクジェット記録装置は、第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより画像し、前記インクジェット記録システムは、前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定手段と、前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定手段と、を備え、前記第1および第2の設定手段は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とする。
【0009】
本発明のインクジェット記録装置の制御方法は、インクジェット記録装置を制御するための制御方法であって、前記インクジェット記録装置は、第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより画像し、前記制御方法は、前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定工程と、前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定工程と、を含み、前記第1および第2の設定工程は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、記録媒体に対する浸透深さが異なる複数のインクを用いて画像を記録する場合に、浸透深さの深いインクを優先的に早めて付与することにより、結果的に、複数のインクの浸透深さの差を小さく抑えることができる。したがって、複数のインクの記録媒体に対する浸透の深さの差が記録画像に及ぼす悪影響を小さく抑えて、高品位の画像を記録することができる。例えば、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを重ねてコンポジットブラックと称される黒色を記録する場合には、その黒色を本来の黒に近い色(可視光波長領域で反射率がフラット)にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録システムのブロック構成図である。
【図2】図1におけるホスト装置のブロック構成図である。
【図3】図1におけるインクジェット記録装置の内部の斜視図である。
【図4】2パス記録方式の説明図である。
【図5】2パス記録方式におけるマスクパターンの説明図である。
【図6】(a)は、記録媒体に対する入射光の挙動の説明図、(b)は、記録媒体に前後して付与されたインクの浸透深さの説明図である。
【図7】本発明の実施形態における第1のケースに対応する記録ヘッドのノズル群の説明図である。
【図8】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第1のケースに対応する記録比率を説明するための図である。
【図9】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第1のケースに対応するマスクパターンを説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態における第1のケースに対応する記録方法の説明図である。
【図11】本発明の実施形態における第2のケースに対応する記録ヘッドのノズル群の説明図である。
【図12】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第2のケースに対応する記録比率を説明するための図である。
【図13】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第2のケースに対応するマスクパターンを説明するための図である。
【図14】本発明の実施形態における第2のケースに対応する記録方法の説明図である。
【図15】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第3のケースに対応する記録比率を説明するための図である。
【図16】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第3のケースに対応するマスクパターンを説明するための図である。
【図17】本発明の実施形態における第3のケースに対応する記録方法の説明図である。
【図18】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインク用のグラデーションマスクの説明図である。
【図19】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、オーバーラップマスクを用いた場合の記録比率を説明するための図である。
【図20】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインク用のオーバーラップマスクを説明するための図である。
【図21】本発明の実施形態におけるマスクパターンの設定処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
(基本的な構成)
図1は、本発明のインクジェット記録システムを構成するホスト機器100の、主にハードウェアおよびソフトウェアのブロック構成図であり、本例のホスト機器100は、パーソナルコンピュータ(以下、単に「PC」ともいう)形態である。このPC100は、プリンタ(記録装置)104によって記録される画像データを生成する。
【0013】
図1において、ホストコンピュータであるPC100は、オペレーティングシステム(OS)102によって、アプリケーションソフトウェア101、プリンタドライバ103、およびモニタドライバ105のソフトウェアを動作させる。アプリケーションソフトウェア101は、ワープロ、表計算、インターネットブラウザなどに関する処理を行う。モニタドライバ105は、画像データをモニタ106に表示するための処理を実行する。プリンタドライバ103は、アプリケーションソフトウェア101からOS102へ出力される各種描画命令群(イメージ描画命令、テキスト描画命令グラフィクス描画命令など)を描画処理する。そしてプリンタドライバ103は、最終的にプリンタ104にて用いられる多値または2値の画像データを生成する。詳しくは、後述される画像処理を実行することにより、プリンタ104にて用いられる、複数のインク色それぞれのに対応する多値または2値の画像データを生成する。
【0014】
ホストコンピュータ100は、以上のソフトウェアを動作させるための各種ハードウェアとして、CPU108、ハードディスク(HD)107、RAM109、およびROM110などを備える。すなわち、CPU108は、ハードディスク107やROM110に格納されている上記のソフトウェアプログラムにしたがって種々の処理を実行し、RAM109は、それらの処理を実行の際にワークエリアとして用いられる。
【0015】
本例のプリンタ104は、インクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体に対して走査する間に、その記録ヘッドからインクを吐出して、記録媒体上に画像を記録するいわゆるシリアル方式のインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)である。本例の場合、記録ヘッドとしては、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)のインクに対応するように3つ用意されている。これらの記録ヘッドは、主走査方向に移動可能なキャリッジに装着され、記録用紙などの記録媒体に対して走査することができる。記録媒体は、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する副走査方向に間欠的に搬送される。それぞれの記録ヘッドには、インクを吐出可能なノズルが主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に複数配列されており、それらのノズルの先端の吐出口からインクを吐出可能である。本例の場合、それらのノズルの配列密度は1200dpiであり、それぞれの吐出口から4.5ピコリットルのインク滴が吐出される。また、それぞれの記録ヘッドにおけるノズルの数は1280である。
【0016】
本例のプリンタ104は、記録媒体上の所定領域に対して、記録ヘッドを複数回走査させることによって画像を記録する、いわゆるマルチパス記録を実行可能である。そのため、後述するように、記録データを間引くためのマスクを所定のメモリに格納しておき、記録の際には、記録ヘッドの走査方向および走査回数に応じてインク色毎に設定されるマスクを参照して、2値の分割記録データを生成する。また、プリンタ104に入力される画像データが多値画像データの場合には、後述するように、配分比率情報にしたがって多値データを分割し、その後、分割された多値データを分割記録データに変換する。
【0017】
図2は、PC100およびプリンタ104における主なデータ処理過程を説明するためのブロック図である。
【0018】
本例のプリンタ104は、上述したようにシアン、マゼンタ、イエローの3色のインクによって記録を行うものであり、そのために、これら3色のインクを吐出するための記録ヘッド10を備える。ユーザーは、ホストPC100のアプリケーション101を用いて、プリンタ104にて記録するための画像データを作成することができる。記録を行うときには、そのアプリケーション101によって作成された画像データがプリンタドライバ103に渡される。プリンタドライバ103は、前段処理J2、後段処理J3、γ補正J4、2値化処理J5、および記録データ作成処理J6を実行する。前段処理J2では、画面を表示する表示器によって再現される色域を、プリンタ104によって再現される色域に変換する色域変換を行う。具体的には、R、G、B夫々が8ビットで表現された画像データR、G、Bを、3次元LUTを用いることにより、プリンタの色域内の8ビットデータR、G、Bに変換する。
【0019】
後段処理J3では、前段処理J2により変換された色域を再現する色を、インク色に分解する。具体的には、前段処理J2にて得られた8ビットデータR、G、Bが表す色を再現するためのインクの組合せに対応した8ビットデータC、M、Yを求める処理を行う。γ補正J4では、後段処理J3の色分解により得られたCMYのデータ夫々についてγ補正を行う。具体的には、色分解により得られた8ビットデータCMY夫々が、プリンタの階調特性に線形的に対応付けられるような変換を行う。この段階の処理データは、プリンタ104に入力多値画像データとして転送することもある。
【0020】
2値化処理J5では、γ補正がなされた8ビットデータC、M、Yそれぞれを1ビットデータC、M、Yに変換するための量子化処理を行う。最後に、記録データ作成処理J6では、量子化前の多値データあるいは2値化された1ビットデータC、M、Yを内容とする画像データに、記録制御データなどを付して記録データを作成する。ここで、2値の画像データは、ドットの記録を示すドット記録データと、ドットの非記録を示すドット非記録データを含む。記録制御データは、「記録媒体情報」、「記録品位情報」、および給紙方法等のような「その他制御情報」から構成される。以上のようにして生成された記録データは、プリンタ104へ供給される。
【0021】
一方、プリンタ104は、入力された記録データに含まれる2値の画像データに対して、マスクデータ変換処理J8を行う。マスクデータ変換処理J8では、予めプリンタの所定のメモリに格納されている後述のマスクパターンを用い、入力されてきた2値の画像データに対してAND処理を施して、それを2値の分割記録データとする。また、多値の入力画像データに対しては、後述する配分比率情報に基づいて、分割された多値データに変換した後に、2値化して2値の分割記録データとする。これにより、マルチパス記録におけるそれぞれの走査で用いられる2値の分割画像データが生成されると共に、実際にインクを吐出するタイミングが決定される。2値の分割記録データには、ドット記録データとドット非記録データが含まれる。
【0022】
図3は、プリンタ104の機械的な構成を示す斜視図である。M4は、矢印Xの主走査方向に移動可能なキャリッジであり、記録ヘッド10(図3では不図示)と、記録ヘッドに供給するためのインクを収容するインクタンクH19が着脱可能に搭載されている。本例の場合は、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)のインクに対応する3つの記録ヘッドと、それらに供給するシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを収容するインクタンクH19Y,H19M,H19Cが搭載されている。記録ヘッドは、キャリッジM4およびインクタンクと共に主走査方向に移動しつつ、2値の分割記録データに基づいて、それぞれのノズルから所定のタイミングでインクを吐出する。記録ヘッドの1回の記録走査が終了すると、記録媒体は、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する矢印Yの副走査方向に所定量だけ搬送される。このような記録ヘッドの記録走査と、記録媒体の搬送と、を交互に繰り返すことにより、記録媒体上に順次画像を記録する。
【0023】
本例の場合は双方向記録方式を採用しており、記録ヘッドが矢印X1の往方向および矢印X2の復方向に移動する際に、インクを吐出して画像を記録する。したがって、記録ヘッドによる往方向の記録走査、記録媒体の搬送、記録ヘッドによる復方向の記録走査、および記録媒体の搬送を順次繰り返すことにより、記録媒体上に画像が記録される。
【0024】
図4は、分割マスク(マスクパターン)を用いて2値の記録データを2値の分割記録データに分割してから、その分割記録データに基づいて、画像をマルチパス記録方式により画像を記録するまでの手順についての説明図である。本例においては、所定の記録領域に対して、2回の記録走査によって画像を完成させる2パス記録方式を採用した録を説明するために、記録ヘッド、マスクパターンおよび記録媒体を模式的に示した。10Y,10M,10Cは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、およびシアン(C)のインクを吐出する記録ヘッドである。それぞれの記録ヘッドには、矢印Yの搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に沿って延在するノズル列を形成するように、複数のノズルNが形成されている。本例においては、1280のノズルNによってノズル列が形成しており、矢印Yの搬送方向における上流側の第1グループ(第1のノズル群)G1と、その搬送方向下流側の第2グループ(第2のノズル群)G2と、に分割されている。第1および第2グループには、ノズルNが640ずつ含まれている。
【0025】
グループG1,G2のそれぞれには、マスクパターン群P1,P2が対応付けられている。マスクパターン群P1は、記録ヘッド10Y,10M,10Cの第1グループG1に対応するマスクパターンY1,M1,C1を含む。マスクパターンP2は、記録ヘッド10Y,10M,10Cの第2グループG2に対応するマスクパターンY2,M2,C2を含む。それらのマスクパターンの主走査方向の大きさは、それぞれのグループG1,G2のノズル数に対応する640画素分の大きさであり、同様に、副走査方向の大きさも640画素分の大きさである。イエローインクに対応する2つのマスクパターンY1とY2は補完の関係にあり、それらのマスクパターンによって分割された分割記録データに基づいて記録される画素を重ね合わせることにより、640×640画素に対応した領域の記録が完成される。同様に、マゼンタインクに対応する2つのマスクパターンM1とM2、およびシアンインクに対応する2つのマスクパターンC1とC2も補完の関係にある。
【0026】
記録ヘッドは、往方向および復方向に走査しながらC,M,Yのインクを吐出し、このような走査が1回終了する毎に、ノズル群G1,G2の幅に対応する256画素分だけ、記録媒体Wが矢印Y方向に搬送される。このような記録走査と、記録媒体Wの搬送動作と、を繰り返すことにより、記録媒体W上におけるグループG1,G2の幅に対応する256画素分の記録領域に対し、2回の走査によって画像が完成する。
【0027】
より具体的は、記録ヘッドが往方向(矢印X1方向)に移動する第1走査では、記録媒体W上の領域Aに対して、記録ヘッドの第1グループからC,M,Yの順にインクが吐出される。この第1走査では、マスクパターンC1,M1,Y1を用いて分割された分割画像データに基づいて、インクが吐出される。その後、記録媒体Wを復走査方向に256画素分だけ搬送する。その後の第2走査では、記録ヘッドが復方向(矢印X2方向)に移動しつつ、Y,M,Cの順にインクが吐出する。すなわち、記録媒体W上の領域Aに対しては、記録ヘッドの第1グループからY,M,Cの順にインクが吐出され、記録媒体W上の領域Bに対しては、記録ヘッドの第2グループからY,M,Cの順にインクが吐出される。その際、領域Aに対しては、マスクパターンC2,M2,Y2を用いて分割された分割画像データに基づいてインクが吐出され、領域Bに対しては、マスクパターンC1,M1,Y1を用いて分割された分割画像データに基づいてインクが吐出される。このような第2走査により、領域Aに対する画像が完成する。
【0028】
図5は、以上のような2パス記録によって完成する画像と、その画像を構成するドットと、の関係の説明図である。ドットは、記録ヘッドから吐出されるインクによって形成される。説明を容易とするために、図5の画像は、総ての画素にドットが形成されるいわゆるベタ画像である。1つの記録ヘッ10に対応する分割画像データの生成に用いるマスクパターンP1,P2において、黒い四角部分はドットの形成を許容する画素に対応し、白い四角部分はドットの形成を許容しない画素に対応する。ベタ画像を記録する場合には、図5のように、マスクパターンの黒い四角部分の配置が、そのまま記録媒体W上に形成されるドットの配置に対応する。
【0029】
まず第1走査では、記録ヘッド10の第1グループG1のノズルNからインクを吐出することにより、記録媒体W上の領域Aにドットを形成する。その際、マスクパターンP1を用いて生成される分割画像データに基づいて、インクが吐出される。その後、記録媒体Wは、第1,第2グループG1,2の幅分(本例の場合は、4画素分)だけ矢印Yの副走査方向に搬送される。次の第2走査では、領域Aに対しては第2グループのノズルNからインクが吐出され、領域Bに対しては第1グループのノズルNからインクが吐出される。その際、第2グループのノズルNは、マスクパターンP2を用いて生成される分割画像データに基づいてインクを吐出し、第1グループのノズルNは、マスクパターンP1を用いて生成される分割画像データに基づいてインクを吐出する。この第1,第2の2回の走査により、領域Aの画像が完成する。このような記録走査と、記録媒体の搬送動作と、を繰り返すことにより、記録媒体上に画像が順次記録される。
【0030】
(記録媒体に対するインクの浸透深さについて)
記録媒体に対するインクの浸透深さは、色調に影響を及ぼす。例えば、Y,M,Cの3色のインクを用いて、ブラック(コンポジットブラック)を記録した場合、それらのインクの浸透深さの差に応じて黒の色調が異なることがある。そのメカニズムは、記録媒体のインク受容層を構成している粒子などの光散乱が影響している。図6(a)は、そのメカニズムを説明するための図である。
【0031】
図6において、601は記録媒体の受容層であり、602はインクによって着色された受容層部である。603は入射光であり、604は受容層部602を通過してから外部に反射された光である。記録媒体の受容層601は、数十nm〜100nmの粒子で構成されており、入射光603は、その受容層601の粒子によって散乱され、その一部は受容層601の外に反射される。その散乱は、受容層601の内部において深くなればなるほど大きくなるため、それが深いほど入射光603は進入しにくくなる。そのため、受容層601の上層部にある色材が色調に最も影響を及ぼし、下層部にある色材の影響は小さくなる。これが、浸透深さ差によって黒などの色調が異なる理由である。
【0032】
次に、インクによって浸透深さ差が生じるメカニズムについて説明する。光沢紙などの記録媒体におけるインクの受容層は、その毛管径が数十nm〜100nmであるため、その受容層に浸透するインクの速度は遅い。インクの浸透速度よりも、色材が記録媒体の受容層の粒子に吸着する速度の方が速いため、インク中の水などの溶剤と色材とが分離し、色材だけが記録媒体の受容層の粒子に吸着される。その吸着速度は色材毎に異なるため、その速度差によって、インク毎に浸透深さ差が生じてしまうと考えられる。また浸透深さ差を大きくする他の要因としては、インクが記録媒体に着弾するタイミングの時間差の影響がある。すなわち、最初に記録媒体上に付与されるインクよりも、既にインクが記録されている記録媒体上の領域に付与されるインクの方が、浸透深さが深くなる。
【0033】
図7は、このような浸透深さの差が生じる現象を説明するための図である。この現象は、インクに含有されている水を含む溶剤の影響である。すなわち、記録媒体上の領域に水を含む溶剤が残存している場合、その溶剤は、その領域に後から付与されるインクとともに浸透することになり、その分だけ、後から付与されるインクの浸透深さが深くなる。その浸透深さは、先に付与されているインクの水分の残存量と関係しており、水分が蒸発などによって無くなれば、その後に付与されるインクの浸透深さは、最初に記録媒体に付与されるインクの浸透深さとほぼ同じになる。また、最初にインクが付与された領域に対して後に付与されるインクの浸透深さの差は、最初に記録媒体に付与されているインクの浸透深さが深いほど、深くなる傾向にある。
【0034】
このようなメカニズムにより、Y,M,Cの3色のインクを用いてコンポジットブラックを記録した場合、浸透深さが深くなったインクは、コンポジットブラックの発色への影響が小さくなる。そのため、浸透深さが深くなったインクの色が薄くなり、そのインクが異なった場合には、コンポジットブラックの黒の色調が変化することなる。
【0035】
特に、インクジェット記録装置用の専用紙として、光沢紙のような微細な孔が形成されている記録媒体では、インクの色材の種類だけでなく、インクを付与するタイミングの時間差の影響によって、インクの浸透深さに差が生じる。つまり、上述したように、最初に記録媒体に付与したインクの浸透深さよりも、既にインクが付与されている領域に付与したインクの浸透深さの方が深くなり、後者のインクは発色に関して不利になる。特に、最初に記録媒体に記録したインクの浸透深さが深いインクほど、記録媒体の受容層を構成している粒子に対して、後に付与されるインクの色材が吸着される速度が遅くなるため、その浸透深さの差は顕著になる。
【0036】
本発明は、このようなインクの浸透深さと色調との関係を考慮し、浸透深さが深いインクを優先して付与する。
(記録ヘッドの構成例)
図7に、本実施形態において使用する記録ヘッドの具体的な構成例を示す。イエロー、マゼンタ、シアンインク用の記録ヘッド10Y、10M,10Cのそれぞれには、2つのノズル列に沿って複数のノズルが形成されている。各記録ヘッドにおいて、2つのノズル列のそれぞれには、640のノズルNが600dpiの解像度に対応する配列密度で形成されており、一方のノズル列のノズルNと他方のノズル列のノズルNは1200dpiの解像度に対応する距離だけずらされている。したがって、それぞれの記録ヘッドは、実質的に、1280のノズルNが1200dpiの解像度に対応する配列密度で形成されている。また、それぞれのノズルNは、その先端の吐出口から4.5ピコリットルのインク滴を吐出する。本例のノズルNは、電気熱変換素子(ヒータ)を吐出エネルギー発生素子として用いてインクを吐出するように構成されている。すなわち、電気熱変換素子の発熱によりインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出する構成となっている。
【0037】
また、本例においては、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクとして、キヤノン社製のBCI−321C、BCI−321M、およびBCI−321Yを用い、記録媒体として、キヤノン社製のインクジェット用光沢紙(PT101)を用いた。また、記録比率100%の場合には、1200dpiの解像度に対応する領域に対してインク滴が1発付与される。
【0038】
(インクの浸透深さの測定)
記録媒体におけるインクの浸透深さの測定方法について説明する。
【0039】
まずは、1パス記録方式により、それぞれの記録ヘッドからシアン、マゼンタ、およびイエローのインクを記録比率100%で吐出する。それらのインクが付与された記録媒体の部分を切断装置により切断し、その断面を光学顕微鏡で撮影する。記録媒体の受容層の最上部から、その受容層に浸透したインクの先端部までの距離を測定し、それをインクの浸透深さとする。その浸透深さをシアン、マゼンタ、イエローのインク毎に測定する。本例では、切断装置として、ライカ社製のミクロトームを使用した。このように本例では、切断法を用いてインクの浸透深さを測定した。しかし、共焦点レーザー顕微鏡を用いることにより、記録媒体を切断せずにインクの浸透深さを測定してもよい。
【0040】
(記録比率設定)
次に、記録比率の設定について説明する。
【0041】
本実施形態を分かりやすく説明するために、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを用いて、6パス記録方式によって画像を記録する場合について説明する。その場合、それらのインクの浸透深さの組合せは、以下の第1,第2,および第3の3つのケースに分類される。
第1のケース:3つのインクの全ての浸透深さが等しくない。
第2のケース:2つのインクの浸透深さが浅くて等しく、他の1つのインクの浸透深さが深い。
第3のケース:2つのインクの浸透深さが深くて等しく、他の1つのインク色の浸透深さが浅い。
【0042】
ここで、浸透深さが等しいとは、上述した浸透深さの測定方法によって測定した浸透深さの差が±1um以内であることを意味する。
【0043】
本実施形態においては、それぞれのケースに応じて記録比率を設定する。以下、具体的な記録比率の設定方法について説明する。
(第1のケースにおける記録比率の設定方法)
6パス記録方式によって画像を記録する場合は、図7のように、記録ヘッド10Y,10M,10Cを第1,第2,第3の3つのノズル群G1,G2,G3に3等分して用いる。Y,M,Cのインク毎に、いずれかの2つのノズル群を用いて画像を記録し、記録媒体上の同一の記録領域に対しては、Y,M,Cのインク毎に2回の走査を行うことにより画像を完成させる。すなわち、各インク色毎については2パスの記録方式であり、全インク色については6パスの記録方式を採用する。また、本例においては、マゼンタ、イエロー、シアンのインクの順に浸透深さが深いものとして説明する。
【0044】
記録ヘッド10Mは、第1のノズル群G11のノズルからマゼンタインクを吐出し、記録ヘッド10Yは、第2のノズル群G12のノズルからイエローインクを吐出し、記録ヘッド10Cは、第3のノズル群G13のノズルからシアンインクを吐出する。ノズル群G1,G2,G3の縦方向の幅(ノズル列方向における長さ)は、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅に、インク色毎のパス数を掛けた積となる。記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数は、ノズル群の数とインク色毎のパス数との積に相当し、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅は、パス毎に記録媒体が復走査方向に搬送される搬送量に相当する。本例の場合は、記録ヘッドの全ノズル数が1278、ノズル群の数が3、インク色毎のパス数が2、全インク色のパス数が6であるため、パス毎に記録媒体が搬送される搬送量は213ノズル分の幅に相当する。したがって、ノズル群G1,G2,G3のそれぞれの縦方向の幅は、213ノズルの2倍の426ノズル分の幅となる。
【0045】
全パス数(6パス)におけるY,M,Cのインク色の記録比率を100%とした場合、パス毎におけるY,M,Cのインク色の記録比率は、図8(a),(b),(c)のように設定される。マゼンタインクは、1パス目と2パス目において記録ヘッド10Mから記録比率50%ずつ吐出され、3パス目から6パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。イエローインクは、3パス目と4パス目において記録ヘッド10Yから記録比率50%ずつ吐出され、1パス目,2パス目,5パス目,6パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。シアンインクは、5パス目と6パス目において記録ヘッド10Cから記録比率50%ずつ吐出され、1パス目から4パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。このような記録比率は、前述したように記録データを分割記録データに分割するマスクパターンによって決定される。
【0046】
図9(a),(b),(c)は、マゼンタ,イエロー,シアンのインク色の記録比率を設定するためのマスクパターンの説明図である。マゼンタインク用のマスクパターンは、1パス目と2パス目において記録データを50%ずつ間引くパターンP1(M),P2(M)を含み、それらのパターンは補完関係にある。イエローインク用のマスクパターンは、3パス目と4パス目において記録データを50%ずつ間引くパターンP1(Y),P2(Y)を含む。シアンインク用のマスクパターンは、5パス目と6パス目において記録データを50%ずつ間引くパターンP1(C),P2(C)を含む。
【0047】
本実施形態においては、図10のように、マゼンタインクは記録ヘッド10Mの第1のノズル群G11のみから吐出される。同様に、イエローインクは記録ヘッド10Yの第2のノズル群G12のみから吐出され、シアンインクは記録ヘッド10Cの第3のノズル群13のみから吐出される。つまり、同色のインクに関しては、同じノズル群に属するノズルから吐出され、異なるノズル群に属するノズルからは吐出されない。したがって、第1のノズル群G11に属するノズルからのマゼンタインクの吐出による記録を開始した後、そのマゼンタインクによる記録を完了してから、第2のノズル群G12に属するノズルからのイエローインクの吐出による記録を開始する。さらに、そのイエローインクによる記録を完了してから、第3のノズル群G13に属するノズルからのシアンインクの吐出による記録を開始する。そして、最終的に、シアンインクによる記録を完了することにより、マゼンタ,イエロー,シアンのインクによる記録が完了する。
【0048】
本例においては、マゼンタ、イエロー、シアンのインクの順、つまり浸透深さが深い順に、記録媒体W上に付与されることになる。そのため、最初に記録媒体Wに付与されるマゼンタインクは、記録媒体の受容層を構成する粒子に吸着される。次に、付与されるイエローインクは、インクが付与されていない領域に付与される場合よりも、マゼンタインクが付与される領域に付与される場合の方が、記録媒体に深く浸透する。しかし、イエローインクはマゼンタインクよりも浸透深さが浅いため、前者の場合と後者の場合との間におけるイエローインクの浸透深さの差は小さくなる。最後に、マゼンタインクとイエローインクの溶剤(水分を含む)が残存している記録媒体上の領域に、シアンインクが付与される。シアンインクは、インクが付与されていない領域に付与される場合よりも、マゼンタインクまたは/およびイエローインクが付与された領域に付与される場合の方が、記録媒体に深く浸透する。しかし、シアンインクは、イエローインクおよびマゼンタインクよりも浸透深さが浅いため、前者の場合と後者の場合との間におけるイエローインクの浸透深さの差は小さくなる。ちなみに、先に付与された浸透性の高いインクは、後に付与される浸透性の低いインクによって僅かに押し流されるが、浸透性の低いインク付与した後に付与される場合よりも、浸透性の変化は小さい。
【0049】
(第2のケースにおける記録比率の設定方法)
第2のケース、つまり2つのインクの浸透深さが浅くて等しく、他の1つのインクの浸透深さが深いケースにおいて、6パス記録方式で記録する場合には、図11のように記録ヘッドを第1および第2のノズル群G21,G22に2等分して使用する。
【0050】
上述したように、インクの浸透深さはインク中の水分の蒸発と関係しているため、1パス当たりの記録比率が小さい方が浸透深さは浅くなる。また浸透深さが等しいインクの付与順序が前後した場合には、後から付与されるインクは深く浸透する。そのため1パス当たりの記録比率を小さくして、浸透深さが等しいインクは、ほぼ同時に付与することが望ましい。そこで本実施形態においては、各インク色毎については3パスの記録方式であり、全インク色については6パスの記録方式を採用する。ここでは、一例として、マゼンタインクの浸透深さが最も深く、イエローインクとシアンインクの浸透深さが等しい場合について説明する。
【0051】
マゼンタインクは、記録ヘッド10Mの第1のノズル群G21を用いて付与し、イエローインクおよびシアンインクは、記録ヘッド10Y,10Cの第2のノズル群G22を用いて付与する。前述したように、ノズル群G21,G22の縦方向の幅(ノズル列方向における長さ)は、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅に、インク色毎のパス数を掛けた積となる。記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数は、ノズル群の数とインク色毎のパス数との積に相当し、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅は、パス毎に記録媒体が復走査方向に搬送される搬送量に相当する。本例の場合は、記録ヘッドの全ノズル数が1278、ノズル群の数が2、インク色毎のパス数が3、全インク色のパス数が6であるため、パス毎に記録媒体が搬送される搬送量は213ノズル分の幅に相当する。したがって、ノズル群G21,G22のそれぞれの縦方向の幅は、213ノズルの3倍の639ノズル分の幅となる。
【0052】
全パス数(6パス)におけるY,M,Cのインク色の記録比率を100%とした場合、パス毎におけるY,M,Cのインク色の記録比率は、図12(a),(b),(c)のように設定される。マゼンタインクは、1パス目から3パス目において記録ヘッド10Mから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、4パス目から6パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。イエローインクは、4パス目から6パス目において記録ヘッド10Yから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、1パス目から3パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。シアンインクは、4パス目から6パス目において記録ヘッド10Yから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、1パス目から3パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。このような記録比率は、前述したように記録データを分割記録データに分割するマスクパターンによって決定される。本例においては、インク色毎における計3回のパスにおける記録比率を(100/3)%ずつとする。しかし、計3回のパスにおける記録比率は、必ずしも(100/3)%ずつである必要はなく、それら合計が100%となればよい。
【0053】
図13(a),(b),(c)は、マゼンタ,イエロー,シアンのインク色の記録比率を設定するためのマスクパターンの説明図である。マゼンタインク用のマスクパターンは、1パス目から3パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(M),P2(M),P3(M)を含み、それらのパターンは補完関係にある。イエローインク用のマスクパターンは、4パス目から6パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(Y),P2(Y),P3(Y)を含む。シアンインク用のマスクパターンは、4パス目から6パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(C),P2(C),P3(C)を含む。
【0054】
本実施形態においては、図14のように、マゼンタインクは記録ヘッド10Mの第1のノズル群G21のみから吐出される。同様に、イエローインクは記録ヘッド10Yの第2のノズル群G22のみから吐出され、シアンインクは記録ヘッド10Cの第2のノズル群22のみから吐出される。つまり、同色のインクに関しては、同じノズル群に属するノズルから吐出され、異なるノズル群に属するノズルからは吐出されない。したがって、第1のノズル群G21に属するノズルからのマゼンタインクの吐出による記録を開始した後、そのマゼンタインクによる記録を完了してから、第2のノズル群G22に属するノズルからのイエローインクとシアンインクの吐出による記録を開始する。そして、最終的に、イエローインクとシアンインクによる記録を完了することにより、マゼンタ,イエロー,シアンのインクによる記録が完了する。
【0055】
(第3のケースにおける記録比率の設定方法)
第2のケース、つまり2つのインクの浸透深さが深くて等しく、他の1つのインクの浸透深さが深いケースにおいて、6パス記録方式で記録する場合には、図11のように記録ヘッドを第1および第2のノズル群G21,G22に2等分して使用する。
【0056】
上述したように、インクの浸透深さはインク中の水分の蒸発と関係しているため、1パス当たりの記録比率が小さい方が浸透深さは浅くなる。また浸透深さが等しいインクの付与順序が前後した場合には、後から付与されるインクは深く浸透する。そのため1パス当たりの記録比率を小さくして、浸透深さが等しいインクは、ほぼ同時に付与することが望ましい。そこで本実施形態においては、各インク色毎については3パスの記録方式とし、全インク色については6パスの記録方式を採用する。ここでは、一例として、マゼンタインクとイエローインクの浸透深さ等しく、かつシアンインクの浸透深さよりも深い場合について説明する。
【0057】
マゼンタインクおよびイエローインクは、記録ヘッド10M,10Yの第1のノズル群G21を用いて付与し、シアンインクは、記録ヘッド10Cの第2のノズル群G22を用いて付与する。前述したように、ノズル群G21,G22の縦方向の幅(ノズル列方向における長さ)は、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅に、インク色毎のパス数を掛けた積となる。記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数は、ノズル群の数とインク色毎のパス数との積に相当し、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅は、パス毎に記録媒体が復走査方向に搬送される搬送量に相当する。本例の場合は、記録ヘッドの全ノズル数が1278、ノズル群の数が2、インク色毎のパス数が3、全インク色のパス数が6であるため、パス毎に記録媒体が搬送される搬送量は213ノズル分の幅に相当する。したがって、ノズル群G21,G22のそれぞれの縦方向の幅は、213ノズルの3倍の639ノズル分の幅となる。
【0058】
全パス数(6パス)におけるY,M,Cのインク色の記録比率を100%とした場合、パス毎におけるY,M,Cのインク色の記録比率は、図15(a),(b),(c)のように設定される。マゼンタインクは、1パス目から3パス目において記録ヘッド10Mから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、4パス目から6パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。イエローインクは、1パス目から3パス目において記録ヘッド10Mから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、4パス目から6パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。シアンインクは、4パス目から6パス目において記録ヘッド10Yから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、1パス目から3パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。このような記録比率は、前述したように記録データを分割記録データに分割するマスクパターンによって決定される。本例においては、インク色毎における計3回のパスにおける記録比率を(100/3)%ずつとする。しかし、計3回のパスにおける記録比率は、必ずしも(100/3)%ずつである必要はなく、それら合計が100%となればよい。
【0059】
図16(a),(b),(c)は、マゼンタ,イエロー,シアンのインク色の記録比率を設定するためのマスクパターンの説明図である。マゼンタインク用のマスクパターンは、1パス目から3パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(M),P2(M),P3(M)を含み、それらのパターンは補完関係にある。イエローインク用のマスクパターンは、1パス目から3パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(Y),P2(Y),P3(Y)を含む。シアンインク用のマスクパターンは、4パス目から6パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(C),P2(C),P3(C)を含む。
【0060】
本実施形態においては、図17のように、マゼンタインクは記録ヘッド10Mの第1のノズル群G21のみから吐出される。イエローインクは記録ヘッド10Yの第1のノズル群G21のみから吐出され、シアンインクは記録ヘッド10Cの第2のノズル群22のみから吐出される。つまり、同色のインクに関しては、同じノズル群に属するノズルから吐出され、異なるノズル群に属するノズルからは吐出されない。したがって、第1のノズル群G21に属するノズルからのマゼンタインクとイエローインクの吐出による記録を開始した後、それらのインクによる記録を完了してから、第2のノズル群G22に属するノズルからのシアンインクの吐出による記録を開始する。そして、最終的に、シアンインクによる記録を完了することにより、マゼンタ,イエロー,シアンのインクによる記録が完了する。
【0061】
(グラデーションマスク)
以上においては、分かりやすく説明するために、1走査内における記録比率を一定して、その変化曲線を変化のないフラット形状とした。しかし、1走査内における記録比率を変化させて、その変化曲線を山型などのグラデーション形状などにしても、同様な効果を得ることができる。例えば、前述したケース1の場合の図9(a),(b),(c)のマスクパターンに代えて、図15(a),(b),(c)のマスクパターン(グラデーションマスク)を用いて、1走査内における記録比率を変化させてもよい。このようなマスクパターンを用いた場合には、前の走査の記録領域と、次の走査の記録領域と、の間における記録濃度のむら(つなぎスジ)の発生を抑えることができる。
【0062】
(オーバーラップマスク)
上述したケース1,2,3において、3色のインクのそれぞれが特定の1つのノズル群から吐出されるように、それらの記録比率が設定されている。しかし、複数のノズル群あるいは全てのノズル群からインクを吐出するように、記録比率を設定してもよい。以下、ケース1、つまり全てのインク色の浸透深さが等しくないケースの場合を例にして、そのような記録比率の設定方法について説明する。
【0063】
本例においては、各インク色毎について6パスの記録方式であり、かつ、全インク色についても6パスの記録方式を採用する。ここでは、マゼンタ、イエロー、シアンのインクの順に浸透深さが深い場合について説明する。全インク色については6パスであるため、それぞれのインクを吐出するノズルの縦方向の幅は、記録ヘッドの全ノズル(1278ノズル)分の幅に相当する。記録ヘッド10M,10Y,10Cは、213ノズルずつの6つのノズル群に分けて使用される。それらの6つのノズル群は、記録媒体の搬送方向の上流側から下流側に向かって第1,第2,・・・第6のノズル群とする。
【0064】
全パス数(6パス)におけるY,M,Cのインク色の記録比率を100%とした場合、パス毎におけるY,M,Cのインク色の記録比率は、図19(a),(b),(c)のように設定される。浸透深さが最も深いマゼンタインクに関しては、後述する中心値は469.1である。中心値の求め方については後述する。イエローインクの中心値は639.5であり、シアンインクの中心値は809.9である。このような記録比率は、前述したように記録データを分割記録データに分割するマスクパターンによって決定される。
【0065】
図20(a),(b),(c)は、マゼンタ,イエロー,シアンのインク色の記録比率を設定するためのマスクパターン(オーバーラップマスク)の説明図である。マゼンタインク用のマスクパターンは、1,2パス目において記録データを30%ずつ間引くパターンP1(M),P2(M)と、3パス目から6パス目において記録データを10%ずつ間引くパターンP3(M)からP6(M)と、を含む。それらのパターンは補完関係にある。イエローインク用のマスクパターンは、1,2,5,6パス目において記録データを10%ずつ間引くパターンP1(Y),P2(Y),P5(Y),P6(Y)と、3,4パス目において記録データを30%ずつ間引くパターンP3(Y),P4(Y)と、を含む。シアンインク用のマスクパターンは、1パス目から4パス目において記録データを10%ずつ間引くパターンP1(C)からP4(C)と、5,6パス目において記録データを30%ずつ間引くパターンP5(Y),P6(Y)と、を含む。
【0066】
本例においては、分かりやすく説明するために、1走査内における記録比率を一定して、その変化曲線を変化のないフラット形状とした。しかし、1走査内における記録比率を変化させて、その変化曲線を山型などのグラデーション形状などにしても、同様な効果を得ることができる。
【0067】
(中心値の算出方法)
前述した中心値は、ノズルに連続的に付したノズル番号と、ノズル毎の記録比率と、に基づいて求める。ノズル番号は、1278ノズルに対して、記録媒体の搬送方向の上流側から下流側に向かって1,2,3・・・1278と連続的に付される。ノズルの個々について、そのノズルのノズル番号と記録比率とを積算(ノズル番号×記録比率)し、その(ノズル番号×記録比率)を1278ノズル分合算した値を記録比率の総和で除算することにより、中心値を求める。この中心値が小さい場合には、相対的に前半側(記録媒体の搬送方向上流側)のノズル(前半ノズル)からインクが付与される割合が多い。前半ノズルは、マルチパスにおける前半側のパス(6パスの場合には1パス側のパス)で使用されるため、中心値が小さいインクは、前半側のパス(前半パス)において多く付与されることを意味する。逆に、中心値が大きい場合には、相対的に後半側(記録媒体の搬送方向下流側)のノズル(後半ノズル)からインクが付与される割合が多い。後半ノズルは、マルチパスにおける後半側のパス(6パスの場合には6パス側のパス)で使用されるため、中心値が小さいインクは、後半側のパス(後半パス)において多く付与されることを意味する。
【0068】
具体的に、図8(a)のマゼンタインクの場合、(ノズル番号×記録比率)を1278ノズル分合算した値は、(1×0.5)+(2×0.5)+・・・(426×0.5)+(427×0.0)+・・・(1278×0.0)=45475.5となる。記録比率の総和は、0.5×426=213となる。よって、マゼンタインクの中心値は、213.5(=45475.5/213)となる。図8(b)のイエローインクの場合、(ノズル番号×記録比率)を1278ノズル分合算した値は、136213.5となる。すなわち、(1×0.0)+・・・(426×0.0)+(427×0.5)+・・・(852×0.5)+(853×0.0)+・・・(1278×0.0)=136213.5となる。記録比率の総和は、0.5×426=213となる。よって、イエローインクの中心値は、639.5(=136213.5/213)となる。図8(c)のシアンインクの場合、(ノズル番号×記録比率)を1278ノズル分合算した値は、(1×0.0)+・・・(852×0.0)+(853×0.5)+・・・(1278×0.5)=226951.5となる。記録比率の総和は、0.5×426=213となる。よって、シアンインクの中心値は、1065.5(=226951.5/213)となる。
【0069】
(画像の記録動作)
図21は、図2のマスクデータ変換処理J8において使用するマスクパターンを選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【0070】
まずは、記録に用いる記録媒体の種類と記録モードを設定する(ステップS1)。インクの浸透深さは、記録媒体の種類によっても異なる。そのため、予め、上述した測定方法によって記録媒体毎に各インクの浸透深さを測定し、その浸透深さを図1のROM110に格納しておく。記録動作の際には、複数種の記録媒体の中から1つの記録媒体を設定する。また、記録モード(例えば、高精彩記録モード、高速記録モードなど)も設定する。記録媒体の選択は、ユーザーの入力に基づいて行ってもよく、記録媒体に関する情報に基づいてホスト装置が自動的に行ってもよい。このように選択された記録媒体と記録モードは、ホスト装置に設定される。その後、ホスト装置は、選択された記録媒体と記録モードに応じて、マスクパターンを選択する(ステップS2)。記録媒体に応じたマスクパターンは、記録モードの数分、もしくは少なくとも1種類は保持されている。
【0071】
(他の実施形態)
本発明は、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを重ねてコンポジットブラックと称される黒色を記録する場合に適用可能である。しかし、本発明はこれには限定されることなく、複数種のインクを用いて画像をマルチパス記録方式により記録する種々の記録装置および記録システムに対して、広く適用可能である。つまり本発明は、少なくとも第1のインクと第2のインクを用いて、画像を記録する種々の記録装置に対して適用可能である。その記録装置においては、第1のインクを付与する複数回の走査として、インクを付与する率が高い高記録比率の走査と、インクを付与する率が低い低記録比率の走査と、が設定(第1の設定工程)できればよい。また、第2インクを付与する複数回の走査として、インクを付与する率が高い高記録比率の走査と、インクを付与する率が低い低記録比率の走査と、が設定(第2の設定工程)できればよい。また、インクジェット記録装置は、記録ヘッドの往方向および復方向の移動中に記録走査する双方向記録方式のみに限定されず、記録ヘッドの往方向または復方向の移動中に記録走査する片方向記録方式であってもよい。また、記録ヘッドは、ピエゾ素子などの種々の吐出エネルギー発生素子を用いてインクを吐出する構成であってもよい。
【0072】
本発明においては、記録装置とホスト装置を含む記録システムにおいて上述した記録比率の設定機能を果たすことができればよい。したがって、そのような設定機能の一部または全てを記録装置がもつように構成してもよく、あるいは、その機能の一部または全てをホスト装置がもつように構成してもよい。また、本発明の形態としては、上述した機能をコンピュータによって実施するためのプログラム、および、そのプログラムを格納した記憶媒体を含むことができる。
【符号の説明】
【0073】
100 ホスト装置(画像処理装置)
104 プリンタ(インクジェット記録装置)
10(10C,10M,10Y) 記録ヘッド
N ノズル
G1,G2,G11,G12,G13 ノズル群
P1(M),P2(M),P3(M) マゼンタインク用のマスクパターン
P1(Y),P2(Y),P3(Y) イエローインク用のマスクパターン
P1(C),P2(C),P3(C) シアンインク用のマスクパターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に複数種のインクを付与して画像を記録するインクジェット記録装置、インクジェット記録システム、およびインクジェット記録装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置の低コスト化および小型化のために、3色インク(シアン、マゼンタ、イエロー)のみを搭載したモデルも多く市販されている。しかし、3色インクを用いてブラック(以下、「コンポジットブラック」ともいう)を記録した場合、その色調が本来の黒の色調とは異なるおそれがある。色調が異なる原因は、記録媒体に対するインク中の色材の浸透深さの差にあると考えられる。
【0003】
特許文献1には、色材として染料を含む染料インクを記録媒体に付与する前に、その染料を不溶化させる化合物を含むクリアインクを付与(先打ち)して、染料の浸透深さを記録媒体に表層に留める方法が提案されている。また特許文献2には、浸透促進インクを使用することによって、色材の浸透深さを揃える方法が提案されている。また特許文献3には、記録媒体毎に複数色のインクの付与順序を変更することによって、様々な記録媒体において、本来の黒に近い色調を実現する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−63185号公報
【特許文献2】特開2008−87417号公報
【特許文献3】特開平10−16672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2に記載の方法は、画像の記録コストの上昇、および記録装置の大型化を招くおそれがある。また、特許文献3に記載の方法は、複数色のインクの付与順序の変更が色調に及ぼす影響が小さい場合、特に、インクジェット記録用の専用紙としての光沢紙のような微細な孔が形成されている記録媒体を用いる場合には、充分な効果が得られない。それは、複数色のインクの付与タイミングの間に充分な時間差を設定することが難しいためである。
【0006】
本発明の目的は、複数種のインクを用いて画像を記録する場合に、それらのインクの記録媒体に対する浸透の深さの差が記録画像に及ぼす悪影響を小さく抑えて、高品位の画像の記録を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット記録装置は、第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより、画像を記録するインクジェット記録装置であって、前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定手段と、前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定手段と、を備え、前記第1および第2の設定手段は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とする。
【0008】
本発明のインクジェット記録システムは、記録データに基づいて画像を記録するインクジェット記録装置と、前記記録データを前記インクジェット記録装置に供給する画像処理装置と、を含むインクジェット記録システムであって、前記インクジェット記録装置は、第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより画像し、前記インクジェット記録システムは、前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定手段と、前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定手段と、を備え、前記第1および第2の設定手段は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とする。
【0009】
本発明のインクジェット記録装置の制御方法は、インクジェット記録装置を制御するための制御方法であって、前記インクジェット記録装置は、第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより画像し、前記制御方法は、前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定工程と、前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定工程と、を含み、前記第1および第2の設定工程は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、記録媒体に対する浸透深さが異なる複数のインクを用いて画像を記録する場合に、浸透深さの深いインクを優先的に早めて付与することにより、結果的に、複数のインクの浸透深さの差を小さく抑えることができる。したがって、複数のインクの記録媒体に対する浸透の深さの差が記録画像に及ぼす悪影響を小さく抑えて、高品位の画像を記録することができる。例えば、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを重ねてコンポジットブラックと称される黒色を記録する場合には、その黒色を本来の黒に近い色(可視光波長領域で反射率がフラット)にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録システムのブロック構成図である。
【図2】図1におけるホスト装置のブロック構成図である。
【図3】図1におけるインクジェット記録装置の内部の斜視図である。
【図4】2パス記録方式の説明図である。
【図5】2パス記録方式におけるマスクパターンの説明図である。
【図6】(a)は、記録媒体に対する入射光の挙動の説明図、(b)は、記録媒体に前後して付与されたインクの浸透深さの説明図である。
【図7】本発明の実施形態における第1のケースに対応する記録ヘッドのノズル群の説明図である。
【図8】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第1のケースに対応する記録比率を説明するための図である。
【図9】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第1のケースに対応するマスクパターンを説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態における第1のケースに対応する記録方法の説明図である。
【図11】本発明の実施形態における第2のケースに対応する記録ヘッドのノズル群の説明図である。
【図12】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第2のケースに対応する記録比率を説明するための図である。
【図13】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第2のケースに対応するマスクパターンを説明するための図である。
【図14】本発明の実施形態における第2のケースに対応する記録方法の説明図である。
【図15】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第3のケースに対応する記録比率を説明するための図である。
【図16】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、本発明の実施形態における第3のケースに対応するマスクパターンを説明するための図である。
【図17】本発明の実施形態における第3のケースに対応する記録方法の説明図である。
【図18】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインク用のグラデーションマスクの説明図である。
【図19】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインクに関して、オーバーラップマスクを用いた場合の記録比率を説明するための図である。
【図20】(a),(b),(c)は、それぞれマゼンタ、イエロー、およびシアンインク用のオーバーラップマスクを説明するための図である。
【図21】本発明の実施形態におけるマスクパターンの設定処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
(基本的な構成)
図1は、本発明のインクジェット記録システムを構成するホスト機器100の、主にハードウェアおよびソフトウェアのブロック構成図であり、本例のホスト機器100は、パーソナルコンピュータ(以下、単に「PC」ともいう)形態である。このPC100は、プリンタ(記録装置)104によって記録される画像データを生成する。
【0013】
図1において、ホストコンピュータであるPC100は、オペレーティングシステム(OS)102によって、アプリケーションソフトウェア101、プリンタドライバ103、およびモニタドライバ105のソフトウェアを動作させる。アプリケーションソフトウェア101は、ワープロ、表計算、インターネットブラウザなどに関する処理を行う。モニタドライバ105は、画像データをモニタ106に表示するための処理を実行する。プリンタドライバ103は、アプリケーションソフトウェア101からOS102へ出力される各種描画命令群(イメージ描画命令、テキスト描画命令グラフィクス描画命令など)を描画処理する。そしてプリンタドライバ103は、最終的にプリンタ104にて用いられる多値または2値の画像データを生成する。詳しくは、後述される画像処理を実行することにより、プリンタ104にて用いられる、複数のインク色それぞれのに対応する多値または2値の画像データを生成する。
【0014】
ホストコンピュータ100は、以上のソフトウェアを動作させるための各種ハードウェアとして、CPU108、ハードディスク(HD)107、RAM109、およびROM110などを備える。すなわち、CPU108は、ハードディスク107やROM110に格納されている上記のソフトウェアプログラムにしたがって種々の処理を実行し、RAM109は、それらの処理を実行の際にワークエリアとして用いられる。
【0015】
本例のプリンタ104は、インクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体に対して走査する間に、その記録ヘッドからインクを吐出して、記録媒体上に画像を記録するいわゆるシリアル方式のインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)である。本例の場合、記録ヘッドとしては、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)のインクに対応するように3つ用意されている。これらの記録ヘッドは、主走査方向に移動可能なキャリッジに装着され、記録用紙などの記録媒体に対して走査することができる。記録媒体は、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する副走査方向に間欠的に搬送される。それぞれの記録ヘッドには、インクを吐出可能なノズルが主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に複数配列されており、それらのノズルの先端の吐出口からインクを吐出可能である。本例の場合、それらのノズルの配列密度は1200dpiであり、それぞれの吐出口から4.5ピコリットルのインク滴が吐出される。また、それぞれの記録ヘッドにおけるノズルの数は1280である。
【0016】
本例のプリンタ104は、記録媒体上の所定領域に対して、記録ヘッドを複数回走査させることによって画像を記録する、いわゆるマルチパス記録を実行可能である。そのため、後述するように、記録データを間引くためのマスクを所定のメモリに格納しておき、記録の際には、記録ヘッドの走査方向および走査回数に応じてインク色毎に設定されるマスクを参照して、2値の分割記録データを生成する。また、プリンタ104に入力される画像データが多値画像データの場合には、後述するように、配分比率情報にしたがって多値データを分割し、その後、分割された多値データを分割記録データに変換する。
【0017】
図2は、PC100およびプリンタ104における主なデータ処理過程を説明するためのブロック図である。
【0018】
本例のプリンタ104は、上述したようにシアン、マゼンタ、イエローの3色のインクによって記録を行うものであり、そのために、これら3色のインクを吐出するための記録ヘッド10を備える。ユーザーは、ホストPC100のアプリケーション101を用いて、プリンタ104にて記録するための画像データを作成することができる。記録を行うときには、そのアプリケーション101によって作成された画像データがプリンタドライバ103に渡される。プリンタドライバ103は、前段処理J2、後段処理J3、γ補正J4、2値化処理J5、および記録データ作成処理J6を実行する。前段処理J2では、画面を表示する表示器によって再現される色域を、プリンタ104によって再現される色域に変換する色域変換を行う。具体的には、R、G、B夫々が8ビットで表現された画像データR、G、Bを、3次元LUTを用いることにより、プリンタの色域内の8ビットデータR、G、Bに変換する。
【0019】
後段処理J3では、前段処理J2により変換された色域を再現する色を、インク色に分解する。具体的には、前段処理J2にて得られた8ビットデータR、G、Bが表す色を再現するためのインクの組合せに対応した8ビットデータC、M、Yを求める処理を行う。γ補正J4では、後段処理J3の色分解により得られたCMYのデータ夫々についてγ補正を行う。具体的には、色分解により得られた8ビットデータCMY夫々が、プリンタの階調特性に線形的に対応付けられるような変換を行う。この段階の処理データは、プリンタ104に入力多値画像データとして転送することもある。
【0020】
2値化処理J5では、γ補正がなされた8ビットデータC、M、Yそれぞれを1ビットデータC、M、Yに変換するための量子化処理を行う。最後に、記録データ作成処理J6では、量子化前の多値データあるいは2値化された1ビットデータC、M、Yを内容とする画像データに、記録制御データなどを付して記録データを作成する。ここで、2値の画像データは、ドットの記録を示すドット記録データと、ドットの非記録を示すドット非記録データを含む。記録制御データは、「記録媒体情報」、「記録品位情報」、および給紙方法等のような「その他制御情報」から構成される。以上のようにして生成された記録データは、プリンタ104へ供給される。
【0021】
一方、プリンタ104は、入力された記録データに含まれる2値の画像データに対して、マスクデータ変換処理J8を行う。マスクデータ変換処理J8では、予めプリンタの所定のメモリに格納されている後述のマスクパターンを用い、入力されてきた2値の画像データに対してAND処理を施して、それを2値の分割記録データとする。また、多値の入力画像データに対しては、後述する配分比率情報に基づいて、分割された多値データに変換した後に、2値化して2値の分割記録データとする。これにより、マルチパス記録におけるそれぞれの走査で用いられる2値の分割画像データが生成されると共に、実際にインクを吐出するタイミングが決定される。2値の分割記録データには、ドット記録データとドット非記録データが含まれる。
【0022】
図3は、プリンタ104の機械的な構成を示す斜視図である。M4は、矢印Xの主走査方向に移動可能なキャリッジであり、記録ヘッド10(図3では不図示)と、記録ヘッドに供給するためのインクを収容するインクタンクH19が着脱可能に搭載されている。本例の場合は、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)のインクに対応する3つの記録ヘッドと、それらに供給するシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを収容するインクタンクH19Y,H19M,H19Cが搭載されている。記録ヘッドは、キャリッジM4およびインクタンクと共に主走査方向に移動しつつ、2値の分割記録データに基づいて、それぞれのノズルから所定のタイミングでインクを吐出する。記録ヘッドの1回の記録走査が終了すると、記録媒体は、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する矢印Yの副走査方向に所定量だけ搬送される。このような記録ヘッドの記録走査と、記録媒体の搬送と、を交互に繰り返すことにより、記録媒体上に順次画像を記録する。
【0023】
本例の場合は双方向記録方式を採用しており、記録ヘッドが矢印X1の往方向および矢印X2の復方向に移動する際に、インクを吐出して画像を記録する。したがって、記録ヘッドによる往方向の記録走査、記録媒体の搬送、記録ヘッドによる復方向の記録走査、および記録媒体の搬送を順次繰り返すことにより、記録媒体上に画像が記録される。
【0024】
図4は、分割マスク(マスクパターン)を用いて2値の記録データを2値の分割記録データに分割してから、その分割記録データに基づいて、画像をマルチパス記録方式により画像を記録するまでの手順についての説明図である。本例においては、所定の記録領域に対して、2回の記録走査によって画像を完成させる2パス記録方式を採用した録を説明するために、記録ヘッド、マスクパターンおよび記録媒体を模式的に示した。10Y,10M,10Cは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、およびシアン(C)のインクを吐出する記録ヘッドである。それぞれの記録ヘッドには、矢印Yの搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に沿って延在するノズル列を形成するように、複数のノズルNが形成されている。本例においては、1280のノズルNによってノズル列が形成しており、矢印Yの搬送方向における上流側の第1グループ(第1のノズル群)G1と、その搬送方向下流側の第2グループ(第2のノズル群)G2と、に分割されている。第1および第2グループには、ノズルNが640ずつ含まれている。
【0025】
グループG1,G2のそれぞれには、マスクパターン群P1,P2が対応付けられている。マスクパターン群P1は、記録ヘッド10Y,10M,10Cの第1グループG1に対応するマスクパターンY1,M1,C1を含む。マスクパターンP2は、記録ヘッド10Y,10M,10Cの第2グループG2に対応するマスクパターンY2,M2,C2を含む。それらのマスクパターンの主走査方向の大きさは、それぞれのグループG1,G2のノズル数に対応する640画素分の大きさであり、同様に、副走査方向の大きさも640画素分の大きさである。イエローインクに対応する2つのマスクパターンY1とY2は補完の関係にあり、それらのマスクパターンによって分割された分割記録データに基づいて記録される画素を重ね合わせることにより、640×640画素に対応した領域の記録が完成される。同様に、マゼンタインクに対応する2つのマスクパターンM1とM2、およびシアンインクに対応する2つのマスクパターンC1とC2も補完の関係にある。
【0026】
記録ヘッドは、往方向および復方向に走査しながらC,M,Yのインクを吐出し、このような走査が1回終了する毎に、ノズル群G1,G2の幅に対応する256画素分だけ、記録媒体Wが矢印Y方向に搬送される。このような記録走査と、記録媒体Wの搬送動作と、を繰り返すことにより、記録媒体W上におけるグループG1,G2の幅に対応する256画素分の記録領域に対し、2回の走査によって画像が完成する。
【0027】
より具体的は、記録ヘッドが往方向(矢印X1方向)に移動する第1走査では、記録媒体W上の領域Aに対して、記録ヘッドの第1グループからC,M,Yの順にインクが吐出される。この第1走査では、マスクパターンC1,M1,Y1を用いて分割された分割画像データに基づいて、インクが吐出される。その後、記録媒体Wを復走査方向に256画素分だけ搬送する。その後の第2走査では、記録ヘッドが復方向(矢印X2方向)に移動しつつ、Y,M,Cの順にインクが吐出する。すなわち、記録媒体W上の領域Aに対しては、記録ヘッドの第1グループからY,M,Cの順にインクが吐出され、記録媒体W上の領域Bに対しては、記録ヘッドの第2グループからY,M,Cの順にインクが吐出される。その際、領域Aに対しては、マスクパターンC2,M2,Y2を用いて分割された分割画像データに基づいてインクが吐出され、領域Bに対しては、マスクパターンC1,M1,Y1を用いて分割された分割画像データに基づいてインクが吐出される。このような第2走査により、領域Aに対する画像が完成する。
【0028】
図5は、以上のような2パス記録によって完成する画像と、その画像を構成するドットと、の関係の説明図である。ドットは、記録ヘッドから吐出されるインクによって形成される。説明を容易とするために、図5の画像は、総ての画素にドットが形成されるいわゆるベタ画像である。1つの記録ヘッ10に対応する分割画像データの生成に用いるマスクパターンP1,P2において、黒い四角部分はドットの形成を許容する画素に対応し、白い四角部分はドットの形成を許容しない画素に対応する。ベタ画像を記録する場合には、図5のように、マスクパターンの黒い四角部分の配置が、そのまま記録媒体W上に形成されるドットの配置に対応する。
【0029】
まず第1走査では、記録ヘッド10の第1グループG1のノズルNからインクを吐出することにより、記録媒体W上の領域Aにドットを形成する。その際、マスクパターンP1を用いて生成される分割画像データに基づいて、インクが吐出される。その後、記録媒体Wは、第1,第2グループG1,2の幅分(本例の場合は、4画素分)だけ矢印Yの副走査方向に搬送される。次の第2走査では、領域Aに対しては第2グループのノズルNからインクが吐出され、領域Bに対しては第1グループのノズルNからインクが吐出される。その際、第2グループのノズルNは、マスクパターンP2を用いて生成される分割画像データに基づいてインクを吐出し、第1グループのノズルNは、マスクパターンP1を用いて生成される分割画像データに基づいてインクを吐出する。この第1,第2の2回の走査により、領域Aの画像が完成する。このような記録走査と、記録媒体の搬送動作と、を繰り返すことにより、記録媒体上に画像が順次記録される。
【0030】
(記録媒体に対するインクの浸透深さについて)
記録媒体に対するインクの浸透深さは、色調に影響を及ぼす。例えば、Y,M,Cの3色のインクを用いて、ブラック(コンポジットブラック)を記録した場合、それらのインクの浸透深さの差に応じて黒の色調が異なることがある。そのメカニズムは、記録媒体のインク受容層を構成している粒子などの光散乱が影響している。図6(a)は、そのメカニズムを説明するための図である。
【0031】
図6において、601は記録媒体の受容層であり、602はインクによって着色された受容層部である。603は入射光であり、604は受容層部602を通過してから外部に反射された光である。記録媒体の受容層601は、数十nm〜100nmの粒子で構成されており、入射光603は、その受容層601の粒子によって散乱され、その一部は受容層601の外に反射される。その散乱は、受容層601の内部において深くなればなるほど大きくなるため、それが深いほど入射光603は進入しにくくなる。そのため、受容層601の上層部にある色材が色調に最も影響を及ぼし、下層部にある色材の影響は小さくなる。これが、浸透深さ差によって黒などの色調が異なる理由である。
【0032】
次に、インクによって浸透深さ差が生じるメカニズムについて説明する。光沢紙などの記録媒体におけるインクの受容層は、その毛管径が数十nm〜100nmであるため、その受容層に浸透するインクの速度は遅い。インクの浸透速度よりも、色材が記録媒体の受容層の粒子に吸着する速度の方が速いため、インク中の水などの溶剤と色材とが分離し、色材だけが記録媒体の受容層の粒子に吸着される。その吸着速度は色材毎に異なるため、その速度差によって、インク毎に浸透深さ差が生じてしまうと考えられる。また浸透深さ差を大きくする他の要因としては、インクが記録媒体に着弾するタイミングの時間差の影響がある。すなわち、最初に記録媒体上に付与されるインクよりも、既にインクが記録されている記録媒体上の領域に付与されるインクの方が、浸透深さが深くなる。
【0033】
図7は、このような浸透深さの差が生じる現象を説明するための図である。この現象は、インクに含有されている水を含む溶剤の影響である。すなわち、記録媒体上の領域に水を含む溶剤が残存している場合、その溶剤は、その領域に後から付与されるインクとともに浸透することになり、その分だけ、後から付与されるインクの浸透深さが深くなる。その浸透深さは、先に付与されているインクの水分の残存量と関係しており、水分が蒸発などによって無くなれば、その後に付与されるインクの浸透深さは、最初に記録媒体に付与されるインクの浸透深さとほぼ同じになる。また、最初にインクが付与された領域に対して後に付与されるインクの浸透深さの差は、最初に記録媒体に付与されているインクの浸透深さが深いほど、深くなる傾向にある。
【0034】
このようなメカニズムにより、Y,M,Cの3色のインクを用いてコンポジットブラックを記録した場合、浸透深さが深くなったインクは、コンポジットブラックの発色への影響が小さくなる。そのため、浸透深さが深くなったインクの色が薄くなり、そのインクが異なった場合には、コンポジットブラックの黒の色調が変化することなる。
【0035】
特に、インクジェット記録装置用の専用紙として、光沢紙のような微細な孔が形成されている記録媒体では、インクの色材の種類だけでなく、インクを付与するタイミングの時間差の影響によって、インクの浸透深さに差が生じる。つまり、上述したように、最初に記録媒体に付与したインクの浸透深さよりも、既にインクが付与されている領域に付与したインクの浸透深さの方が深くなり、後者のインクは発色に関して不利になる。特に、最初に記録媒体に記録したインクの浸透深さが深いインクほど、記録媒体の受容層を構成している粒子に対して、後に付与されるインクの色材が吸着される速度が遅くなるため、その浸透深さの差は顕著になる。
【0036】
本発明は、このようなインクの浸透深さと色調との関係を考慮し、浸透深さが深いインクを優先して付与する。
(記録ヘッドの構成例)
図7に、本実施形態において使用する記録ヘッドの具体的な構成例を示す。イエロー、マゼンタ、シアンインク用の記録ヘッド10Y、10M,10Cのそれぞれには、2つのノズル列に沿って複数のノズルが形成されている。各記録ヘッドにおいて、2つのノズル列のそれぞれには、640のノズルNが600dpiの解像度に対応する配列密度で形成されており、一方のノズル列のノズルNと他方のノズル列のノズルNは1200dpiの解像度に対応する距離だけずらされている。したがって、それぞれの記録ヘッドは、実質的に、1280のノズルNが1200dpiの解像度に対応する配列密度で形成されている。また、それぞれのノズルNは、その先端の吐出口から4.5ピコリットルのインク滴を吐出する。本例のノズルNは、電気熱変換素子(ヒータ)を吐出エネルギー発生素子として用いてインクを吐出するように構成されている。すなわち、電気熱変換素子の発熱によりインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出する構成となっている。
【0037】
また、本例においては、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクとして、キヤノン社製のBCI−321C、BCI−321M、およびBCI−321Yを用い、記録媒体として、キヤノン社製のインクジェット用光沢紙(PT101)を用いた。また、記録比率100%の場合には、1200dpiの解像度に対応する領域に対してインク滴が1発付与される。
【0038】
(インクの浸透深さの測定)
記録媒体におけるインクの浸透深さの測定方法について説明する。
【0039】
まずは、1パス記録方式により、それぞれの記録ヘッドからシアン、マゼンタ、およびイエローのインクを記録比率100%で吐出する。それらのインクが付与された記録媒体の部分を切断装置により切断し、その断面を光学顕微鏡で撮影する。記録媒体の受容層の最上部から、その受容層に浸透したインクの先端部までの距離を測定し、それをインクの浸透深さとする。その浸透深さをシアン、マゼンタ、イエローのインク毎に測定する。本例では、切断装置として、ライカ社製のミクロトームを使用した。このように本例では、切断法を用いてインクの浸透深さを測定した。しかし、共焦点レーザー顕微鏡を用いることにより、記録媒体を切断せずにインクの浸透深さを測定してもよい。
【0040】
(記録比率設定)
次に、記録比率の設定について説明する。
【0041】
本実施形態を分かりやすく説明するために、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを用いて、6パス記録方式によって画像を記録する場合について説明する。その場合、それらのインクの浸透深さの組合せは、以下の第1,第2,および第3の3つのケースに分類される。
第1のケース:3つのインクの全ての浸透深さが等しくない。
第2のケース:2つのインクの浸透深さが浅くて等しく、他の1つのインクの浸透深さが深い。
第3のケース:2つのインクの浸透深さが深くて等しく、他の1つのインク色の浸透深さが浅い。
【0042】
ここで、浸透深さが等しいとは、上述した浸透深さの測定方法によって測定した浸透深さの差が±1um以内であることを意味する。
【0043】
本実施形態においては、それぞれのケースに応じて記録比率を設定する。以下、具体的な記録比率の設定方法について説明する。
(第1のケースにおける記録比率の設定方法)
6パス記録方式によって画像を記録する場合は、図7のように、記録ヘッド10Y,10M,10Cを第1,第2,第3の3つのノズル群G1,G2,G3に3等分して用いる。Y,M,Cのインク毎に、いずれかの2つのノズル群を用いて画像を記録し、記録媒体上の同一の記録領域に対しては、Y,M,Cのインク毎に2回の走査を行うことにより画像を完成させる。すなわち、各インク色毎については2パスの記録方式であり、全インク色については6パスの記録方式を採用する。また、本例においては、マゼンタ、イエロー、シアンのインクの順に浸透深さが深いものとして説明する。
【0044】
記録ヘッド10Mは、第1のノズル群G11のノズルからマゼンタインクを吐出し、記録ヘッド10Yは、第2のノズル群G12のノズルからイエローインクを吐出し、記録ヘッド10Cは、第3のノズル群G13のノズルからシアンインクを吐出する。ノズル群G1,G2,G3の縦方向の幅(ノズル列方向における長さ)は、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅に、インク色毎のパス数を掛けた積となる。記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数は、ノズル群の数とインク色毎のパス数との積に相当し、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅は、パス毎に記録媒体が復走査方向に搬送される搬送量に相当する。本例の場合は、記録ヘッドの全ノズル数が1278、ノズル群の数が3、インク色毎のパス数が2、全インク色のパス数が6であるため、パス毎に記録媒体が搬送される搬送量は213ノズル分の幅に相当する。したがって、ノズル群G1,G2,G3のそれぞれの縦方向の幅は、213ノズルの2倍の426ノズル分の幅となる。
【0045】
全パス数(6パス)におけるY,M,Cのインク色の記録比率を100%とした場合、パス毎におけるY,M,Cのインク色の記録比率は、図8(a),(b),(c)のように設定される。マゼンタインクは、1パス目と2パス目において記録ヘッド10Mから記録比率50%ずつ吐出され、3パス目から6パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。イエローインクは、3パス目と4パス目において記録ヘッド10Yから記録比率50%ずつ吐出され、1パス目,2パス目,5パス目,6パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。シアンインクは、5パス目と6パス目において記録ヘッド10Cから記録比率50%ずつ吐出され、1パス目から4パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。このような記録比率は、前述したように記録データを分割記録データに分割するマスクパターンによって決定される。
【0046】
図9(a),(b),(c)は、マゼンタ,イエロー,シアンのインク色の記録比率を設定するためのマスクパターンの説明図である。マゼンタインク用のマスクパターンは、1パス目と2パス目において記録データを50%ずつ間引くパターンP1(M),P2(M)を含み、それらのパターンは補完関係にある。イエローインク用のマスクパターンは、3パス目と4パス目において記録データを50%ずつ間引くパターンP1(Y),P2(Y)を含む。シアンインク用のマスクパターンは、5パス目と6パス目において記録データを50%ずつ間引くパターンP1(C),P2(C)を含む。
【0047】
本実施形態においては、図10のように、マゼンタインクは記録ヘッド10Mの第1のノズル群G11のみから吐出される。同様に、イエローインクは記録ヘッド10Yの第2のノズル群G12のみから吐出され、シアンインクは記録ヘッド10Cの第3のノズル群13のみから吐出される。つまり、同色のインクに関しては、同じノズル群に属するノズルから吐出され、異なるノズル群に属するノズルからは吐出されない。したがって、第1のノズル群G11に属するノズルからのマゼンタインクの吐出による記録を開始した後、そのマゼンタインクによる記録を完了してから、第2のノズル群G12に属するノズルからのイエローインクの吐出による記録を開始する。さらに、そのイエローインクによる記録を完了してから、第3のノズル群G13に属するノズルからのシアンインクの吐出による記録を開始する。そして、最終的に、シアンインクによる記録を完了することにより、マゼンタ,イエロー,シアンのインクによる記録が完了する。
【0048】
本例においては、マゼンタ、イエロー、シアンのインクの順、つまり浸透深さが深い順に、記録媒体W上に付与されることになる。そのため、最初に記録媒体Wに付与されるマゼンタインクは、記録媒体の受容層を構成する粒子に吸着される。次に、付与されるイエローインクは、インクが付与されていない領域に付与される場合よりも、マゼンタインクが付与される領域に付与される場合の方が、記録媒体に深く浸透する。しかし、イエローインクはマゼンタインクよりも浸透深さが浅いため、前者の場合と後者の場合との間におけるイエローインクの浸透深さの差は小さくなる。最後に、マゼンタインクとイエローインクの溶剤(水分を含む)が残存している記録媒体上の領域に、シアンインクが付与される。シアンインクは、インクが付与されていない領域に付与される場合よりも、マゼンタインクまたは/およびイエローインクが付与された領域に付与される場合の方が、記録媒体に深く浸透する。しかし、シアンインクは、イエローインクおよびマゼンタインクよりも浸透深さが浅いため、前者の場合と後者の場合との間におけるイエローインクの浸透深さの差は小さくなる。ちなみに、先に付与された浸透性の高いインクは、後に付与される浸透性の低いインクによって僅かに押し流されるが、浸透性の低いインク付与した後に付与される場合よりも、浸透性の変化は小さい。
【0049】
(第2のケースにおける記録比率の設定方法)
第2のケース、つまり2つのインクの浸透深さが浅くて等しく、他の1つのインクの浸透深さが深いケースにおいて、6パス記録方式で記録する場合には、図11のように記録ヘッドを第1および第2のノズル群G21,G22に2等分して使用する。
【0050】
上述したように、インクの浸透深さはインク中の水分の蒸発と関係しているため、1パス当たりの記録比率が小さい方が浸透深さは浅くなる。また浸透深さが等しいインクの付与順序が前後した場合には、後から付与されるインクは深く浸透する。そのため1パス当たりの記録比率を小さくして、浸透深さが等しいインクは、ほぼ同時に付与することが望ましい。そこで本実施形態においては、各インク色毎については3パスの記録方式であり、全インク色については6パスの記録方式を採用する。ここでは、一例として、マゼンタインクの浸透深さが最も深く、イエローインクとシアンインクの浸透深さが等しい場合について説明する。
【0051】
マゼンタインクは、記録ヘッド10Mの第1のノズル群G21を用いて付与し、イエローインクおよびシアンインクは、記録ヘッド10Y,10Cの第2のノズル群G22を用いて付与する。前述したように、ノズル群G21,G22の縦方向の幅(ノズル列方向における長さ)は、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅に、インク色毎のパス数を掛けた積となる。記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数は、ノズル群の数とインク色毎のパス数との積に相当し、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅は、パス毎に記録媒体が復走査方向に搬送される搬送量に相当する。本例の場合は、記録ヘッドの全ノズル数が1278、ノズル群の数が2、インク色毎のパス数が3、全インク色のパス数が6であるため、パス毎に記録媒体が搬送される搬送量は213ノズル分の幅に相当する。したがって、ノズル群G21,G22のそれぞれの縦方向の幅は、213ノズルの3倍の639ノズル分の幅となる。
【0052】
全パス数(6パス)におけるY,M,Cのインク色の記録比率を100%とした場合、パス毎におけるY,M,Cのインク色の記録比率は、図12(a),(b),(c)のように設定される。マゼンタインクは、1パス目から3パス目において記録ヘッド10Mから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、4パス目から6パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。イエローインクは、4パス目から6パス目において記録ヘッド10Yから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、1パス目から3パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。シアンインクは、4パス目から6パス目において記録ヘッド10Yから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、1パス目から3パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。このような記録比率は、前述したように記録データを分割記録データに分割するマスクパターンによって決定される。本例においては、インク色毎における計3回のパスにおける記録比率を(100/3)%ずつとする。しかし、計3回のパスにおける記録比率は、必ずしも(100/3)%ずつである必要はなく、それら合計が100%となればよい。
【0053】
図13(a),(b),(c)は、マゼンタ,イエロー,シアンのインク色の記録比率を設定するためのマスクパターンの説明図である。マゼンタインク用のマスクパターンは、1パス目から3パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(M),P2(M),P3(M)を含み、それらのパターンは補完関係にある。イエローインク用のマスクパターンは、4パス目から6パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(Y),P2(Y),P3(Y)を含む。シアンインク用のマスクパターンは、4パス目から6パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(C),P2(C),P3(C)を含む。
【0054】
本実施形態においては、図14のように、マゼンタインクは記録ヘッド10Mの第1のノズル群G21のみから吐出される。同様に、イエローインクは記録ヘッド10Yの第2のノズル群G22のみから吐出され、シアンインクは記録ヘッド10Cの第2のノズル群22のみから吐出される。つまり、同色のインクに関しては、同じノズル群に属するノズルから吐出され、異なるノズル群に属するノズルからは吐出されない。したがって、第1のノズル群G21に属するノズルからのマゼンタインクの吐出による記録を開始した後、そのマゼンタインクによる記録を完了してから、第2のノズル群G22に属するノズルからのイエローインクとシアンインクの吐出による記録を開始する。そして、最終的に、イエローインクとシアンインクによる記録を完了することにより、マゼンタ,イエロー,シアンのインクによる記録が完了する。
【0055】
(第3のケースにおける記録比率の設定方法)
第2のケース、つまり2つのインクの浸透深さが深くて等しく、他の1つのインクの浸透深さが深いケースにおいて、6パス記録方式で記録する場合には、図11のように記録ヘッドを第1および第2のノズル群G21,G22に2等分して使用する。
【0056】
上述したように、インクの浸透深さはインク中の水分の蒸発と関係しているため、1パス当たりの記録比率が小さい方が浸透深さは浅くなる。また浸透深さが等しいインクの付与順序が前後した場合には、後から付与されるインクは深く浸透する。そのため1パス当たりの記録比率を小さくして、浸透深さが等しいインクは、ほぼ同時に付与することが望ましい。そこで本実施形態においては、各インク色毎については3パスの記録方式とし、全インク色については6パスの記録方式を採用する。ここでは、一例として、マゼンタインクとイエローインクの浸透深さ等しく、かつシアンインクの浸透深さよりも深い場合について説明する。
【0057】
マゼンタインクおよびイエローインクは、記録ヘッド10M,10Yの第1のノズル群G21を用いて付与し、シアンインクは、記録ヘッド10Cの第2のノズル群G22を用いて付与する。前述したように、ノズル群G21,G22の縦方向の幅(ノズル列方向における長さ)は、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅に、インク色毎のパス数を掛けた積となる。記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数は、ノズル群の数とインク色毎のパス数との積に相当し、記録ヘッドの全ノズルを全インク色のパス数で割った商のノズル数分の幅は、パス毎に記録媒体が復走査方向に搬送される搬送量に相当する。本例の場合は、記録ヘッドの全ノズル数が1278、ノズル群の数が2、インク色毎のパス数が3、全インク色のパス数が6であるため、パス毎に記録媒体が搬送される搬送量は213ノズル分の幅に相当する。したがって、ノズル群G21,G22のそれぞれの縦方向の幅は、213ノズルの3倍の639ノズル分の幅となる。
【0058】
全パス数(6パス)におけるY,M,Cのインク色の記録比率を100%とした場合、パス毎におけるY,M,Cのインク色の記録比率は、図15(a),(b),(c)のように設定される。マゼンタインクは、1パス目から3パス目において記録ヘッド10Mから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、4パス目から6パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。イエローインクは、1パス目から3パス目において記録ヘッド10Mから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、4パス目から6パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。シアンインクは、4パス目から6パス目において記録ヘッド10Yから記録比率(100/3)%ずつ吐出され、1パス目から3パス目においては記録比率が0%であるため吐出されない。このような記録比率は、前述したように記録データを分割記録データに分割するマスクパターンによって決定される。本例においては、インク色毎における計3回のパスにおける記録比率を(100/3)%ずつとする。しかし、計3回のパスにおける記録比率は、必ずしも(100/3)%ずつである必要はなく、それら合計が100%となればよい。
【0059】
図16(a),(b),(c)は、マゼンタ,イエロー,シアンのインク色の記録比率を設定するためのマスクパターンの説明図である。マゼンタインク用のマスクパターンは、1パス目から3パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(M),P2(M),P3(M)を含み、それらのパターンは補完関係にある。イエローインク用のマスクパターンは、1パス目から3パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(Y),P2(Y),P3(Y)を含む。シアンインク用のマスクパターンは、4パス目から6パス目において記録データを(100/3)%ずつ間引くパターンP1(C),P2(C),P3(C)を含む。
【0060】
本実施形態においては、図17のように、マゼンタインクは記録ヘッド10Mの第1のノズル群G21のみから吐出される。イエローインクは記録ヘッド10Yの第1のノズル群G21のみから吐出され、シアンインクは記録ヘッド10Cの第2のノズル群22のみから吐出される。つまり、同色のインクに関しては、同じノズル群に属するノズルから吐出され、異なるノズル群に属するノズルからは吐出されない。したがって、第1のノズル群G21に属するノズルからのマゼンタインクとイエローインクの吐出による記録を開始した後、それらのインクによる記録を完了してから、第2のノズル群G22に属するノズルからのシアンインクの吐出による記録を開始する。そして、最終的に、シアンインクによる記録を完了することにより、マゼンタ,イエロー,シアンのインクによる記録が完了する。
【0061】
(グラデーションマスク)
以上においては、分かりやすく説明するために、1走査内における記録比率を一定して、その変化曲線を変化のないフラット形状とした。しかし、1走査内における記録比率を変化させて、その変化曲線を山型などのグラデーション形状などにしても、同様な効果を得ることができる。例えば、前述したケース1の場合の図9(a),(b),(c)のマスクパターンに代えて、図15(a),(b),(c)のマスクパターン(グラデーションマスク)を用いて、1走査内における記録比率を変化させてもよい。このようなマスクパターンを用いた場合には、前の走査の記録領域と、次の走査の記録領域と、の間における記録濃度のむら(つなぎスジ)の発生を抑えることができる。
【0062】
(オーバーラップマスク)
上述したケース1,2,3において、3色のインクのそれぞれが特定の1つのノズル群から吐出されるように、それらの記録比率が設定されている。しかし、複数のノズル群あるいは全てのノズル群からインクを吐出するように、記録比率を設定してもよい。以下、ケース1、つまり全てのインク色の浸透深さが等しくないケースの場合を例にして、そのような記録比率の設定方法について説明する。
【0063】
本例においては、各インク色毎について6パスの記録方式であり、かつ、全インク色についても6パスの記録方式を採用する。ここでは、マゼンタ、イエロー、シアンのインクの順に浸透深さが深い場合について説明する。全インク色については6パスであるため、それぞれのインクを吐出するノズルの縦方向の幅は、記録ヘッドの全ノズル(1278ノズル)分の幅に相当する。記録ヘッド10M,10Y,10Cは、213ノズルずつの6つのノズル群に分けて使用される。それらの6つのノズル群は、記録媒体の搬送方向の上流側から下流側に向かって第1,第2,・・・第6のノズル群とする。
【0064】
全パス数(6パス)におけるY,M,Cのインク色の記録比率を100%とした場合、パス毎におけるY,M,Cのインク色の記録比率は、図19(a),(b),(c)のように設定される。浸透深さが最も深いマゼンタインクに関しては、後述する中心値は469.1である。中心値の求め方については後述する。イエローインクの中心値は639.5であり、シアンインクの中心値は809.9である。このような記録比率は、前述したように記録データを分割記録データに分割するマスクパターンによって決定される。
【0065】
図20(a),(b),(c)は、マゼンタ,イエロー,シアンのインク色の記録比率を設定するためのマスクパターン(オーバーラップマスク)の説明図である。マゼンタインク用のマスクパターンは、1,2パス目において記録データを30%ずつ間引くパターンP1(M),P2(M)と、3パス目から6パス目において記録データを10%ずつ間引くパターンP3(M)からP6(M)と、を含む。それらのパターンは補完関係にある。イエローインク用のマスクパターンは、1,2,5,6パス目において記録データを10%ずつ間引くパターンP1(Y),P2(Y),P5(Y),P6(Y)と、3,4パス目において記録データを30%ずつ間引くパターンP3(Y),P4(Y)と、を含む。シアンインク用のマスクパターンは、1パス目から4パス目において記録データを10%ずつ間引くパターンP1(C)からP4(C)と、5,6パス目において記録データを30%ずつ間引くパターンP5(Y),P6(Y)と、を含む。
【0066】
本例においては、分かりやすく説明するために、1走査内における記録比率を一定して、その変化曲線を変化のないフラット形状とした。しかし、1走査内における記録比率を変化させて、その変化曲線を山型などのグラデーション形状などにしても、同様な効果を得ることができる。
【0067】
(中心値の算出方法)
前述した中心値は、ノズルに連続的に付したノズル番号と、ノズル毎の記録比率と、に基づいて求める。ノズル番号は、1278ノズルに対して、記録媒体の搬送方向の上流側から下流側に向かって1,2,3・・・1278と連続的に付される。ノズルの個々について、そのノズルのノズル番号と記録比率とを積算(ノズル番号×記録比率)し、その(ノズル番号×記録比率)を1278ノズル分合算した値を記録比率の総和で除算することにより、中心値を求める。この中心値が小さい場合には、相対的に前半側(記録媒体の搬送方向上流側)のノズル(前半ノズル)からインクが付与される割合が多い。前半ノズルは、マルチパスにおける前半側のパス(6パスの場合には1パス側のパス)で使用されるため、中心値が小さいインクは、前半側のパス(前半パス)において多く付与されることを意味する。逆に、中心値が大きい場合には、相対的に後半側(記録媒体の搬送方向下流側)のノズル(後半ノズル)からインクが付与される割合が多い。後半ノズルは、マルチパスにおける後半側のパス(6パスの場合には6パス側のパス)で使用されるため、中心値が小さいインクは、後半側のパス(後半パス)において多く付与されることを意味する。
【0068】
具体的に、図8(a)のマゼンタインクの場合、(ノズル番号×記録比率)を1278ノズル分合算した値は、(1×0.5)+(2×0.5)+・・・(426×0.5)+(427×0.0)+・・・(1278×0.0)=45475.5となる。記録比率の総和は、0.5×426=213となる。よって、マゼンタインクの中心値は、213.5(=45475.5/213)となる。図8(b)のイエローインクの場合、(ノズル番号×記録比率)を1278ノズル分合算した値は、136213.5となる。すなわち、(1×0.0)+・・・(426×0.0)+(427×0.5)+・・・(852×0.5)+(853×0.0)+・・・(1278×0.0)=136213.5となる。記録比率の総和は、0.5×426=213となる。よって、イエローインクの中心値は、639.5(=136213.5/213)となる。図8(c)のシアンインクの場合、(ノズル番号×記録比率)を1278ノズル分合算した値は、(1×0.0)+・・・(852×0.0)+(853×0.5)+・・・(1278×0.5)=226951.5となる。記録比率の総和は、0.5×426=213となる。よって、シアンインクの中心値は、1065.5(=226951.5/213)となる。
【0069】
(画像の記録動作)
図21は、図2のマスクデータ変換処理J8において使用するマスクパターンを選択する処理を説明するためのフローチャートである。
【0070】
まずは、記録に用いる記録媒体の種類と記録モードを設定する(ステップS1)。インクの浸透深さは、記録媒体の種類によっても異なる。そのため、予め、上述した測定方法によって記録媒体毎に各インクの浸透深さを測定し、その浸透深さを図1のROM110に格納しておく。記録動作の際には、複数種の記録媒体の中から1つの記録媒体を設定する。また、記録モード(例えば、高精彩記録モード、高速記録モードなど)も設定する。記録媒体の選択は、ユーザーの入力に基づいて行ってもよく、記録媒体に関する情報に基づいてホスト装置が自動的に行ってもよい。このように選択された記録媒体と記録モードは、ホスト装置に設定される。その後、ホスト装置は、選択された記録媒体と記録モードに応じて、マスクパターンを選択する(ステップS2)。記録媒体に応じたマスクパターンは、記録モードの数分、もしくは少なくとも1種類は保持されている。
【0071】
(他の実施形態)
本発明は、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを重ねてコンポジットブラックと称される黒色を記録する場合に適用可能である。しかし、本発明はこれには限定されることなく、複数種のインクを用いて画像をマルチパス記録方式により記録する種々の記録装置および記録システムに対して、広く適用可能である。つまり本発明は、少なくとも第1のインクと第2のインクを用いて、画像を記録する種々の記録装置に対して適用可能である。その記録装置においては、第1のインクを付与する複数回の走査として、インクを付与する率が高い高記録比率の走査と、インクを付与する率が低い低記録比率の走査と、が設定(第1の設定工程)できればよい。また、第2インクを付与する複数回の走査として、インクを付与する率が高い高記録比率の走査と、インクを付与する率が低い低記録比率の走査と、が設定(第2の設定工程)できればよい。また、インクジェット記録装置は、記録ヘッドの往方向および復方向の移動中に記録走査する双方向記録方式のみに限定されず、記録ヘッドの往方向または復方向の移動中に記録走査する片方向記録方式であってもよい。また、記録ヘッドは、ピエゾ素子などの種々の吐出エネルギー発生素子を用いてインクを吐出する構成であってもよい。
【0072】
本発明においては、記録装置とホスト装置を含む記録システムにおいて上述した記録比率の設定機能を果たすことができればよい。したがって、そのような設定機能の一部または全てを記録装置がもつように構成してもよく、あるいは、その機能の一部または全てをホスト装置がもつように構成してもよい。また、本発明の形態としては、上述した機能をコンピュータによって実施するためのプログラム、および、そのプログラムを格納した記憶媒体を含むことができる。
【符号の説明】
【0073】
100 ホスト装置(画像処理装置)
104 プリンタ(インクジェット記録装置)
10(10C,10M,10Y) 記録ヘッド
N ノズル
G1,G2,G11,G12,G13 ノズル群
P1(M),P2(M),P3(M) マゼンタインク用のマスクパターン
P1(Y),P2(Y),P3(Y) イエローインク用のマスクパターン
P1(C),P2(C),P3(C) シアンインク用のマスクパターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより、画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定手段と、
前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定手段と、
を備え、
前記第1および第2の設定手段は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1のインクの低記録比率の走査は、前記第1のインクを付与する率が零の走査を含み、
前記第2のインクの低記録比率の走査は、前記第2のインクを付与する率が零の走査を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1のインクの高記録比率の走査は、前記第1のインクを同じ率で付与する複数の走査を含み、
前記第2のインクの高記録比率の走査は、前記第2のインクを同じ率で付与する複数の走査を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドは、前記走査の方向と交差する方向に配列されて前記第1のインクを吐出可能な複数の第1のノズルと、前記走査の方向と交差する方向に配列されて前記第2のインクを吐出可能な複数の第2のノズルと、を備え、
前記第1の設定手段は、前記複数の第1のノズルを複数のノズル群に分け、同じノズル群に属する前記第1のノズルに関しては、当該ノズルから前記第1のインクを付与する率を同一に設定し、
前記第1の設定手段は、前記複数の第1のノズルを複数のノズル群に分け、同じノズル群に属する前記第1のノズルに関しては、当該ノズルから前記第1のインクを付与する率を同一に設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1および第2の設定手段は、マスクパターンを用いて、前記第1および第2のインクを付与する率を設定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
記録データに基づいて画像を記録するインクジェット記録装置と、前記記録データを前記インクジェット記録装置に供給する画像処理装置と、を含むインクジェット記録システムであって、
前記インクジェット記録装置は、第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより画像し、
前記インクジェット記録システムは、
前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定手段と、
前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定手段と、
を備え、
前記第1および第2の設定手段は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とするインクジェット記録システム。
【請求項7】
インクジェット記録装置を制御するための制御方法であって、
前記インクジェット記録装置は、第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより画像し、
前記制御方法は、
前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定工程と、
前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定工程と、
を含み、
前記第1および第2の設定工程は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項1】
第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより、画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定手段と、
前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定手段と、
を備え、
前記第1および第2の設定手段は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1のインクの低記録比率の走査は、前記第1のインクを付与する率が零の走査を含み、
前記第2のインクの低記録比率の走査は、前記第2のインクを付与する率が零の走査を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1のインクの高記録比率の走査は、前記第1のインクを同じ率で付与する複数の走査を含み、
前記第2のインクの高記録比率の走査は、前記第2のインクを同じ率で付与する複数の走査を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドは、前記走査の方向と交差する方向に配列されて前記第1のインクを吐出可能な複数の第1のノズルと、前記走査の方向と交差する方向に配列されて前記第2のインクを吐出可能な複数の第2のノズルと、を備え、
前記第1の設定手段は、前記複数の第1のノズルを複数のノズル群に分け、同じノズル群に属する前記第1のノズルに関しては、当該ノズルから前記第1のインクを付与する率を同一に設定し、
前記第1の設定手段は、前記複数の第1のノズルを複数のノズル群に分け、同じノズル群に属する前記第1のノズルに関しては、当該ノズルから前記第1のインクを付与する率を同一に設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1および第2の設定手段は、マスクパターンを用いて、前記第1および第2のインクを付与する率を設定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
記録データに基づいて画像を記録するインクジェット記録装置と、前記記録データを前記インクジェット記録装置に供給する画像処理装置と、を含むインクジェット記録システムであって、
前記インクジェット記録装置は、第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより画像し、
前記インクジェット記録システムは、
前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定手段と、
前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定手段と、
を備え、
前記第1および第2の設定手段は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とするインクジェット記録システム。
【請求項7】
インクジェット記録装置を制御するための制御方法であって、
前記インクジェット記録装置は、第1および第2のインクを吐出可能な記録ヘッドを記録媒体上の所定の記録領域に対して複数回走査させ、前記所定の記録領域に前記第1および第2のインクのそれぞれを複数回に分けて付与することにより画像し、
前記制御方法は、
前記所定の記録領域に対して前記第1のインクを付与する複数回の走査として、前記第1のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第1のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第1の設定工程と、
前記所定の記録領域に対して前記第2のインクを付与する複数回の走査として、前記第2のインクを付与する率が高い高記録比率の走査と、前記第2のインクを付与する率が低い低記録比率の走査と、を設定する第2の設定工程と、
を含み、
前記第1および第2の設定工程は、前記記録媒体に対する前記第1のインクの浸透深さが第2のインクの浸透深さよりも深いときに、前記第1のインクの高記録比率の走査を、前記第2のインクの高記録比率の走査よりも前の走査に設定することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−143904(P2012−143904A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2315(P2011−2315)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]