説明

インクジェット記録装置およびその制御方法

【課題】生産性を低下させることなく高い解像度にてレンチキュラーシートに視差画像を描画できるようにする。
【解決手段】断面凸形状の所定幅を有する複数のレンチキュラーレンズが配列されてなるレンチキュラーシート15を副走査機構9により副走査する。記録ヘッド2をレンチキュラーシート15におけるレンチキュラーレンズ16の長手方向に主走査しつつ、レンチキュラーシート15における凸形状をなす面とは反対側の面にインクを吐出することにより、レンチキュラーレンズの幅と対応づけて複数の視差画像を描画する。この際、レンチキュラーレンズ16の長手方向に直交する方向の描画解像度を、長手方向の描画解像度よりも高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像を形成するためのレンチキュラーシートに画像を描画するインクジェット記録装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の画像を組み合わせて3次元表示することにより、視差を利用して立体視できることが知られている。このような立体視は、同一の被写体を異なる位置から複数のカメラを用いて撮影することにより、視差を有する複数の画像(視差画像とする)を取得し、複数の視差画像に含まれる被写体の視差を利用して複数の画像を3次元表示することにより行うことができる。
【0003】
ここで、画像を3次元表示するための方式として、レンチキュラープリントが公知である。レンチキュラープリントは、断面凸形状のレンチキュラーレンズを複数並べて配列したレンチキュラーシートを用意し、レンチキュラーレンズのそれぞれに、短冊状に切り取った複数の視差画像を交互に描画することにより形成される。このようなレンチキュラープリントを観察することにより、観察者は両眼の視差によって、描画された画像を立体視することができる。
【0004】
このようなレンチキュラープリントを形成するためには、レンチキュラーレンズのそれぞれの幅の範囲内に複数の視差画像を描画する必要がある。例えば、視差画像が3つあれば、その3つの視差画像を1組として、1組の視差画像を1つのレンチキュラーレンズに描画する必要がある。しかしながら、レンチキュラーレンズの幅と描画する1組の視差画像との位置がずれてしまうと、立体視ができなくなったり、モアレによる画質の低下が発生する。このため、レンチキュラーレンズと視差画像との位置ずれを検出し、レンチキュラーレンズと視差画像との位置合わせを行いつつ、視差画像をレンチキュラーシートに描画する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−137034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、レンチキュラープリントにおいて、立体視が可能な領域を広げるためには、視差画像の数を増加させればよい。しかしながら、視差画像の数を増加させると、1つのレンチキュラーレンズに描画する画像の数が増加するため、高い描画解像度が必要となる。
【0007】
また、レンチキュラープリントは、レンチキュラーレンズの凹凸が表面に存在するため、通常のプリントと比較すると、質感および風合いが劣るものとなっている。ここで、通常プリントの質感および風合いに近づけるためには、レンチキュラーレンズのレンズ高さを小さくすることが考えられる。しかしながら、レンチキュラーレンズの高さを小さくするとレンズ幅も小さくする必要がある。このようにレンズ幅を小さくした上で、視差画像の数を増加させるためには、描画解像度をさらに高くする必要がある。
【0008】
また、高い描画解像度にて視差画像を描画しようとすると、インクの打摘数を非常に多くする必要がある。しかしながら、インクの打摘数を多くすると描画速度が遅くなるため、レンチキュラープリントの生産性が低下してしまう。
【0009】
さらに、インクジェット方式はインクの吐出方向精度がそれほどよくないため、レンチキュラープリントに描画する際に、隣接する視差画像同士が重なって画像の分離性が低下したり、視差画像間に白抜けが発生して画質が劣化するという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、生産性を低下させることなく高い解像度にてレンチキュラーシートに視差画像を描画できるようにすることを第1の目的とする。
【0011】
また、レンチキュラープリントにおける視差画像の分離性を向上させることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるインクジェット記録装置は、インクを静電力により吐出させる少なくとも1つのノズルを有し、断面凸形状の所定幅を有する複数のレンチキュラーレンズが並んで配列されてなるレンチキュラーシートにおける、凸形状をなす面とは反対側の面に前記インクを吐出することにより、前記所定幅と対応づけて複数の視差画像を描画する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと前記レンチキュラーシートとの間に所定のクリアランスを保ちながら、前記記録ヘッドを前記レンチキュラーシートに対して相対的に2次元的に移動させる走査手段と、
前記レンチキュラーシートにおける前記レンチキュラーレンズの長手方向に直交する方向における描画解像度を、該長手方向の描画解像度よりも高くして前記視差画像を前記レンチキュラーシートに描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
ここで、レンチキュラープリントは、1つの被写体を複数の視点から撮影した複数の視差画像を取得し、レンチキュラーレンズのそれぞれに、短冊状に切り取った複数の視差画像を交互に描画することにより形成される。「所定幅と対応づけて複数の視差画像を描画する」とは、所定幅の中に短冊状に切り取ったすべての視点の視差画像を描画することを意味する。例えば、視差画像が3つの場合、1つのレンチキュラーレンズに、画像上の位置が対応する3つの短冊状の視差画像を描画することとなる。
【0014】
また、本発明における視差画像の描画は、記録ヘッドを、レンチキュラシートに対して相対的に2次元的に移動させることにより行われるが、例として記録ヘッドをレンチキュラーシートに対して相対的に、レンチキュラーレンズの長手方向に移動して少なくとも1ライン分の描画を行い、次いで、記録ヘッドを、上記一方向と直交する方向にレンチキュラーシートに対して相対的に移動して、次のラインの描画を行うことを繰り返すことにより行われる。以降の説明においては、少なくとも1ライン分の描画を行うために記録ヘッドをレンチキュラーシートに対して相対的に移動する方向、すなわちレンチキュラーレンズの長手方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向を副走査方向と称するものとする。
【0015】
また、記録ヘッドのレンチキュラシートに対する相対的な移動は、記録ヘッドを主走査方向に移動し、レンチキュラーシートを副走査方向に移動することにより行ってもよく、レンチキュラーシートを固定して、記録ヘッドのみを主走査方向および副走査方向の双方に移動することにより行ってもよい。また、記録ヘッドを固定して、レンチキュラーシートのみを主走査方向および副走査方向の双方に移動することにより行ってもよい。
【0016】
なお、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記制御手段を、前記レンチキュラーシートへの着弾時に、前記インクが前記レンチキュラーレンズの長手方向に延びるように、前記視差画像を前記レンチキュラーシートに描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段を制御する手段としてもよい。
【0017】
インクをレンチキュラーレンズの長手方向に延びるようにするためには、例えば記録ヘッドとレンチキュラーシートとを、レンチキュラーシートにおけるレンチキュラーレンズの長手方向に相対的に移動させながら、インクをノズルから吐出方向に伸びる柱形状に吐出させ、インクが球状に収縮する前にインクをレンチキュラーシートに着弾させればよい。また、記録ヘッドとレンチキュラーシートとを、レンチキュラーシートにおけるレンチキュラーレンズの長手方向に相対的に移動させながら、サテライトが飛ぶようにインクを吐出させることによっても、レンチキュラーレンズの長手方向に延びるようにインクを着弾させることができる。
【0018】
また、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記制御手段を、前記走査手段により前記記録ヘッドと前記レンチキュラーシートとを、該レンチキュラーシートにおける前記レンチキュラーレンズの長手方向に相対的に移動させながら、前記インクを前記ノズルから吐出方向に伸びる柱形状に吐出させ、前記インクが球状に収縮する前に前記インクを前記レンチキュラーシート上に着弾させるよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段を制御する手段としてもよい。
【0019】
また、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記走査手段を、前記インクの下端部と前記インクの上端部とが前記基板上の異なる位置に着弾するように、前記記録ヘッドと前記レンチキュラーシートとを相対的に移動させる手段としてもよい。
【0020】
また、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記制御手段を、前記インクが前記ノズルから吐出されるときのせん断速度を調整して前記インクにダイラタンシー性を持たせることにより、前記インクが球状に収縮する前に前記レンチキュラーシート上に着弾させるよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段を制御する手段としてもよい。
【0021】
また、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記インクのせん断速度が10[1/s]での粘度を、25cP以上としてもよい。
【0022】
また、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記インクの粘度を、25cP以上としてもよい。
【0023】
また、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記インクの表面張力または動的表面張力を、10mN/m以下としてもよい。
【0024】
また、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記制御手段を、少なくとも1つの前記レンチキュラーレンズに対応する複数の視差画像を同一ノズルにて描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段の駆動を制御する手段としてもよい。
【0025】
また、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記制御手段を、隣接する複数のレンチキュラーレンズのそれぞれに対応する前記複数の視差画像を同一ノズルにて描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段の駆動を制御する手段としてもよい。
【0026】
また、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記制御手段を、前記所定幅および該所定幅に対応する前記複数の視差画像との位置ずれを検出し、該位置ずれを補正するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段の駆動を制御する手段としてもよい。
【0027】
また、本発明によるインクジェット記録装置においては、前記制御手段を、前記視差画像の描画後、該視差画像に白色を重ねて描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段の駆動を制御する手段としてもよい。
【0028】
本発明によるインクジェット記録装置の制御方法は、
前記記録ヘッドと前記レンチキュラーシートとの間に所定のクリアランスを保ちながら、前記記録ヘッドを前記レンチキュラーシートに対して相対的に2次元的に移動させ、
前記レンチキュラーシートにおける前記レンチキュラーレンズの長手方向に直交する方向における描画解像度を、該長手方向の描画解像度よりも高くして前記視差画像を前記レンチキュラーシートに描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0029】
レンチキュラープリントにおいては、レンチキュラーレンズの長手方向に同一の視差画像が描画されているため、レンチキュラーレンズの長手方向の解像度を変更しても、立体視には何ら影響はない。その一方で、レンチキュラーレンズの長手方向に直交する方向には複数の視差画像が描画されているため、レンチキュラーレンズの長手方向に直交する方向の解像度を向上させると、同一のレンチキュラーレンズ内における視差画像の分離性を向上させることができ、立体視を良好に行うことができる。
【0030】
本発明によれば、レンチキュラーシートにおけるレンチキュラーレンズの長手方向に直交する方向おける描画解像度を、長手方向の描画解像度よりも高くして視差画像をレンチキュラーシートに描画するようにしたものである。このため、本発明により視差画像が描画されたレンチキュラープリントの立体視を良好に行うことができる。また、レンチキュラーレンズの長手方向の打摘数を少なくすることができるため、レンチキュラーレンズの長手方向における描画速度を大きくすることができ、その結果、レンチキュラープリントの生産性を向上させることができる。
【0031】
また、レンチキュラーレンズの長手方向に直交する方向には、視差画像が高解像度にて描画されるため、幅の狭いレンチキュラーレンズを使用することができる。したがって、レンチキュラーレンズの高さを低くすることができ、その結果、レンチキュラープリントの質感および風合いを向上させることができる。
【0032】
また、ノズルから吐出されたインクが球形状になる前にレンチキュラーシート上に長く伸びるように着弾させることにより、球形状になった後で着弾させる場合より、インクが濡れ広がりきるまでの時間が短くなり、塗布時間が短縮される。これにより、インクが球形状になった後で着弾させたときと比較してより早く気液界面の表面積を大きくすることができるため、インクの乾燥時間を短縮することができ、レンチキュラープリントの描画速度が向上し、その結果、レンチキュラープリントの生産性をより向上させることができる。
【0033】
また、少なくとも1つのレンチキュラーレンズに対応する複数の視差画像を同一ノズルにて描画することにより、同一特性のノズルにより1つのレンチキュラーレンズに対応する複数の視差画像が描画されることとなる。したがって、これら複数の視差画像が重なり合ったり、複数の視差画像の間に白抜けが発生することがなくなるため、視差画像間の画像分離性を向上させることができ、その結果、本発明により生成されたレンチキュラープリントを見た観察者は、立体視を良好に行うことが可能となる。
【0034】
この際、隣接する複数のレンチキュラーレンズのそれぞれに対応する複数の視差画像を同一ノズルにて描画することにより、隣接するレンチキュラーレンズに対応する視差画像同士が重なり合ったり、隣接するレンチキュラーレンズに対応する視差画像の間に白抜けが発生することがなくなるため、レンチキュラープリントの画質を向上させることができる。
【0035】
また、所定幅と所定幅に対応する複数の視差画像との位置ずれを検出し、位置ずれを補正することにより、本発明による生成されたレンチキュラープリントを見た観察者は、立体視を良好に行うことができる。
【0036】
また、視差画像に白色を重ねて描画することにより、視差画像の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態によるインクジェット記録装置の構成を示す概略斜視図
【図2】レンチキュラーシートの構成を示す図
【図3】視差画像の描画を説明するための図
【図4】記録ヘッドのノズルが形成された面を示す平面図
【図5】吐出素子の構成を示す断面図
【図6】インクジェット記録装置の制御系の構成を示す概略ブロック図
【図7】インクの吐出形状を模式的に示す図(その1)
【図8】インクの吐出形状を模式的に示す図(その2)
【図9】3次元汎用熱流体解析ソフトウェアFlow−3Dによるシミュレーション結果を示す図(その1)
【図10】3次元汎用熱流体解析ソフトウェアFlow−3Dによるシミュレーション結果を示す図(その2)
【図11】3次元汎用熱流体解析ソフトウェアFlow−3Dによるシミュレーション結果を示す図(その3)
【図12】3次元汎用熱流体解析ソフトウェアFlow−3Dによるシミュレーション結果を示す図(その4)
【図13】本実施形態における記録ヘッドの主走査を説明するための図
【図14】記録ヘッドのノズルの配列を示す図
【図15】インクの吐出形状を模式的に示す他の図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態によるインクジェット記録装置の構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、本実施形態によるインクジェット記録装置1は、記録ヘッド2および支持プレート3を備える。
【0039】
記録ヘッド2は、モータ5およびモータ5により駆動されるベルト4からなる主走査機構6と接続されており、主走査機構6により主走査方向(図中、矢印x方向)に往復移動される。支持プレート3には、レンチキュラープリントを作成するためのレンチキュラーシート15が支持される。レンチキュラーシート15が支持された支持プレート3は、モータ7およびモータ7により駆動される搬送ベルト8からなる副走査機構9により副走査方向(図中、矢印y方向)へ搬送される。
【0040】
そして、支持プレート3に支持されたレンチキュラーシート15を副走査機構9により矢印y方向に搬送しつつ、記録ヘッド2を主走査機構6により駆動して、レンチキュラーシート15を矢印x方向に主走査し、さらに記録ヘッド2からインクを吐出することにより、レンチキュラーシート15に描画が行われる。
【0041】
図2はレンチキュラーシートの構成を示す図である。図2に示すようにレンチキュラーシート15は、所定幅を有する概略半円筒状のレンチキュラーレンズ16を複数並べて配列させて構成されるものであり、レンチキュラーレンズ16の凸部が並ぶ表面と、このような凸部を有さない平坦な裏面17とを有する。レンチキュラーシート15は、その裏面17が記録ヘッド2側に向くようにして、支持プレート3に載置される。
【0042】
なお、記録ヘッド2、主走査機構6および副走査機構9の駆動は制御系10が行う。制御系10の構成および制御系10が行う処理については後述する。
【0043】
レンチキュラーシート15の裏面17には、立体視を行うための視差画像が描画される。図3は視差画像の描画を説明するための図である。図3に示すように本実施形態においては、例えば3つの視差画像S1〜S3を垂直方向に短冊状に切り取り、レンチキュラーレンズ16のそれぞれに、位置が対応する短冊状に切り取った3つの視差画像S1〜S3が交互に描画される。なお、視差画像はその数が多いほどレンチキュラープリントを見たときの立体視可能な範囲が広くなる。
【0044】
図4は記録ヘッド2のノズルが形成された面を示す平面図である。図4に示すように、記録ヘッド2は、副走査方向(y方向)の全幅に亘って複数のノズル22が等間隔に並べられてなる。なお、記録ヘッド2は、ノズル22と、後述する圧力室とを含む吐出素子が主走査方向(x方向)に略直交する副走査方向(y方向)に沿って略等間隔に並べられた構造を有する。
【0045】
なお、記録ヘッド2が隣接するノズル22から吐出されたインクによるドットが互いに重なるように高密度に構成される場合には、隣接するノズルから同時にインクを吐出せずに1ノズルおきに同時に吐出する間引き制御を行い、1回の走査で描画可能な領域について2回の走査に分けることが好ましい。
【0046】
図5は吐出素子の構成を示す断面図である。図5に示すように、吐出素子20において、ノズル22に対応して設けられている圧力室24は、その平面形状が略正方形となっている。圧力室24の対角線上の両隅部の一方にノズル22への流出口が設けられ、他方に圧力室24へのインクの供給口26が設けられている。なお、圧力室24の平面形状は、上記の正方形のほか、例えば、四角形(菱形、長方形)、五角形、六角形その他の多角形、円形、および楕円形等、多様な形態を取り得る。
【0047】
図5に示すように、吐出素子20の圧力室24は、供給口26を介して共通流路28と連通している。共通流路28はインクの供給源たるタンク(不図示)と連通しており、タンクから供給されるインクは共通流路28を介して各圧力室24に分配供給される。
【0048】
圧力室24の一部の面(図5における天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)30には個別電極32を備えた圧電素子34が接合されている。なお、圧電素子34の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)またはチタン酸バリウムのような圧電体を用いることができる。
【0049】
個別電極32と共通電極間に駆動信号が印加されると、圧電素子34が変形して圧力室24の容積が変化する。すると、圧力室24内の圧力が変化することにより、ノズル22からインクが吐出される。そして、インクが吐出された後、圧電素子34の変位が元に戻ると、共通流路28から供給口26を通って新しいインクが圧力室24に再充填される。
【0050】
ここで、本実施形態では、圧電素子34の変形によってインクを加圧する方式が採用されているが、上記以外の方式のアクチュエータ(例えば、サーマル方式、静電式)を採用してもよい。
【0051】
なお、図示は省略するが、インクジェット記録装置1は、記録ヘッド2にインクを供給するための供給系や、記録ヘッド2のメンテナンスを行うメンテナンス部を有している。
【0052】
図6はインクジェット記録装置1の制御系の構成を示す概略ブロック図である。図6に示すように制御系10は、通信インターフェース40、システムコントローラ42、メモリ46、モータドライバ48、ヒータドライバ52、打滴制御部56、バッファメモリ58、およびヘッドドライバ60を備えている。
【0053】
通信インターフェース40は、ホストコンピュータ80から送られてくる打滴データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース40としては、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワーク等のシリアルインターフェース、またはセントロニクス等のパラレルインターフェースを適用することができる。なお、この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。
【0054】
システムコントローラ42は、CPUおよびその周辺回路を含んでおり、インクジェット記録装置1の各部を制御する。システムコントローラ42は、ホストコンピュータ80との間の通信制御、メモリ46の読み書き制御等をするとともに、搬送駆動系のモータ5,7およびヒータ54を制御する制御信号を生成する。
【0055】
プログラム格納部44には、インクジェット記録装置1の制御プログラムが格納される。システムコントローラ42はプログラム格納部44に格納されている種々の制御プログラムを適宜読み出し、制御プログラムを実行する。
【0056】
メモリ46は、データの一時記憶領域、およびシステムコントローラ42が各種の演算を行うときの作業領域として使用される記憶手段である。メモリ46としては、半導体素子からなるメモリのほか、ハードディスク等の磁気記録媒体を用いることができる。
【0057】
モータドライバ48は、システムコントローラ42からの制御信号にしたがってモータ5,7を駆動する。
【0058】
ヒータドライバ52は、システムコントローラ42からの制御信号にしたがってヒータ54を駆動する。なお、ヒータ54には、インクジェット記録装置1の各部に設けられた温度調節用のヒータが含まれる。
【0059】
ホストコンピュータ80から送出された打滴データは、通信インターフェース40を介してインクジェット記録装置1に取り込まれ、メモリ46に一時記憶される。
【0060】
打滴制御部56は、システムコントローラ42の制御にしたがい、メモリ46内の打滴データから吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正等の処理を行う信号処理機能を有し、生成した吐出制御信号(吐出データ)をヘッドドライバ60に供給する制御系である。打滴制御部56において所要の信号処理が施され、この打滴データに基づいてヘッドドライバ60を介して記録ヘッド2からのインクの吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。
【0061】
ヘッドドライバ60は、打滴制御部56から与えられる吐出データに基づいて記録ヘッド2の圧電素子34を駆動する。なお、ヘッドドライバ60は、ヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0062】
打滴制御部56には、バッファメモリ58が備えられており、打滴制御部56における打滴データ処理時に、打滴データおよびパラメータ等のデータがバッファメモリ58に一時的に格納される。
【0063】
なお、バッファメモリ58は、メモリ46と兼用することも可能である。また、打滴制御部56とシステムコントローラ42とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0064】
図7および図8はインクの吐出形状を模式的に示す図である。図7に示すように、ノズル22から吐出されたインクLは、吐出方向の長さ(以下、液柱長という)L10がインクの断面の寸法と比較して長い柱形状の状態で吐出され、レンチキュラーシート15に球形状に収縮する前に、柱形状のままで着弾する。記録ヘッド2を主走査させる場合には、インクLの長手方向とレンチキュラーシート15とがなす角θは90°未満となり、図8に示すように、インクLは、レンチキュラーシート15上に長手方向に伸びるように塗布される。そして、インクLは、図8の符号L′に示すように濡れ広がる。すなわち、インクLは、球形状に収縮した後で着弾した場合と比較して短時間で濡れ広がる。なお、インクLの下端部がレンチキュラーシート15に接触するときには、インクLの上端部(尾の部分)は、ノズル22につながっていてもよいし、また離れていてもよい。
【0065】
インクLを柱形状のままレンチキュラーシート15に着弾させるための方法としては、インクLの粘度を高くする、インクLにダイラタンシー性を持たせる、インクLの表面張力を小さくする、インクLの動的表面張力を小さくする、またはインクLがノズル22から吐出されるときの吐出速度を著しく速くする(吐出させるためのアクチュエータに非常に大きなエネルギー(電圧)を与える)という方法がある。ここで、動的表面張力とは、インクLの界面が不安定な流動・攪拌状況での表面張力のことである。
【0066】
ノズル22からレンチキュラーシート15までの距離(インクLのスルーディスタンス)z10は、できるだけ短い方が好ましい。インクLの吐出を観察した結果、インクLの体積を30pl(液柱長L10約1.5mm)とした場合には、スルーディスタンスz10を約1.5mm以下とすることが好ましい。
【0067】
具体的には、表1に示すように、インクLの表面張力が30mN/mの場合には、粘度を25cP以上にすれば、インクLがレンチキュラーシート15に着弾するまで柱形状が保たれる(丸まりにくくなる)。
【表1】

【0068】
また、表2に示すように、ノズル22におけるインクLのせん断速度を上げてノズル22からインクLが離れる切断部分(尾の部分)の粘度を25cP以上にすれば、インクLがレンチキュラーシート15に着弾するまで柱形状が保たれる(丸まりにくくなる)。このときのノズル部のせん断速度は、約10[1/s]である。なお、表2では、インクLの切断部分以外の粘度は3cPとして計算した。
【表2】

【0069】
また、表3に示すように、インクLの粘度が3cPの場合、表面張力が10mN/m以下にすれば、インクLがレンチキュラーシート15に着弾するまで柱形状が保たれる(丸まりにくくなる)。
【表3】

【0070】
なお、上記表1から表3における丸まりにくさの基準は、3次元汎用熱流体解析ソフトウェアFlow−3Dを用いたシミュレーションにおいて、FUJIFILM Dimatix社製インクジェットヘッドSE−128をモデルとして、ノズル22とインクLとが分断した際の液柱長L10が650μm以上の場合に丸まりにくいとした。
【表4】

【0071】
なお、表4の結果は、上記シミュレーションの時間を進めた場合、ノズル22から約1.5mm離れた場所でインクが丸まっているかどうかのシミュレーション結果と概ね整合は取れている。
【0072】
図9から図12は、3次元汎用熱流体解析ソフトウェアFlow−3Dによるシミュレーション結果を示す図である。図9から図12は、インクLの尾の部分L_nzlがノズル22から離れた瞬間のインクLの形状およびインクLのz方向の速度分布を示しており、図10および図12は、それぞれ図9および図11の瞬間から一定の時間が経過した瞬間のインクLの形状およびインクLのz方向の速度分布を示している。なお、図9から図12における長さの単位はcmである。
【0073】
図9および図10のシミュレーションでは、ノズル22の径(図中のテーパ部の穴の直径)を35μmφ、インクLの粘度を25cP、ノズル22の尾の部分L_nzlにおける粘度を3cP、吐出速度8.3m/sとした。また、図11および図12のシミュレーションでは、ノズル22の径(図中のテーパー部の穴の直径)を35μmφ、インクLの粘度を25cP、ノズル22の尾の部分L_nzlにおける粘度を25cP、吐出速度8.3m/sとした。
【0074】
以上のようにして、記録ヘッド2とレンチキュラーシート15とを相対的に移動させながら、描画する視差画像を表す打摘データに応じたインク吐出によってレンチキュラーシート15にドットを形成することにより、レンチキュラーシート15に視差画像を描画することができる。
【0075】
以下、本実施形態において行われる記録ヘッド2、主走査機構6および副走査機構9の制御について説明する。まず、ホストコンピュータ80に対して操作者が入力したレンチキュラーレンズ16の幅、1つのレンチキュラーレンズ16に描画する視差画像数、および面積階調マトリクスを構成するドット数に基づいて、レンチキュラーレンズ16の長手方向およびこれに垂直な方向の双方におけるインク滴のドットピッチを算出し、吐出パルス幅を設定する。
【0076】
具体的には、レンチキュラーレンズ16の幅が254μm、視差画像数が6、面積階調マトリクス構成ドット数が2(すなわち2×2のマトリクス)であるとすると、視差画像1つ当たりの幅は254/6=42.4μmとなる。面積階調マトリクス構成ドット数が2であるため、レンチキュラーレンズ16の長手方向に垂直な方向、すなわち副走査方向のドットピッチは、42.4/2=21.2μmとなる。一方、インクは、レンチキュラーシート15に球形状に収縮する前に、柱形状のままで着弾するため、レンチキュラーレンズ16の長手方向すなわち主走査方向のドットピッチは、副走査方向よりも大きくする。例えば、本実施形態においては、副走査方向のドットピッチの4倍の84.7μm(=254μm/6/2×2)とする。
【0077】
制御系10は、副走査方向のドットピッチが21.2μm、主走査方向のドットピッチが84.7μmとなるように、インクジェット記録装置1の各部を制御する。
【0078】
図13は本実施形態における記録ヘッドの2の主走査を説明するための図である。なお、図13においては、説明のためにレンチキュラーレンズ16の長手方向を縮小している。また、図13には6つのレンチキュラーレンズ16A〜16Fが示されており、そのそれぞれに6つの視差画像A1〜A6が描画されるものとする。また、図13には、説明を簡単にするために、記録ヘッド2におけるインクを吐出するノズルは2つのノズル22A,22Bのみであるものとする。
【0079】
ここで、視差画像1つ当たりの幅が254/6=42.4μm、ドットピッチが42.4/2=21.2μmであるため、1つの視差画像は、その副走査方向に2つのドットにより画像が描画されることとなる。
【0080】
本実施形態においては、1つのレンチキュラーレンズ16に描画する6つの視差画像を同一のノズルにより描画し、さらに、隣接する2つのレンチキュラーレンズ16に描画する6つの視差画像からなる視差画像群を、同一のノズルにより描画するようにしたものである。具体的には、図13に示すレンチキュラーレンズ16A,16Bおよびレンチキュラーレンズ16C,16Dのそれぞれに描画される6つの視差画像A1〜A6を同一のノズルにより描画する。すなわち、レンチキュラーレンズ16Aおよびレンチキュラーレンズ16Bの視差画像を同一のノズル22Aにより、レンチキュラーレンズ16Cおよびレンチキュラーレンズ16Dの視差画像を同一のノズル22Bにより描画する。
【0081】
なお、記録ヘッド2においては、インクが吐出されるノズルの間隔が、2つのレンチキュラーレンズ16の幅に相当する508μmとなるように、インクが吐出されるノズルを制御する。例えば、図4に示すようにノズル22が配設されている場合、副走査方向に並ぶノズルの間隔が2つのレンチキュラーレンズ16の幅に相当するものとなるように、インクを吐出するノズルを設定する。この際、必要であれば、インクが吐出されるノズルの副走査方向における間隔が2つのレンチキュラーレンズ16の幅と同一となるように、記録ヘッド2を回転させる。例えば、図4おける隣接するノズルの間隔が800μmであるとすると、2つのノズルの実質的な間隔が508μmとなるように図14に示すように記録ヘッド2を回転する。
【0082】
以下、本実施形態において行われる記録ヘッド2、主走査機構6および副走査機構9の制御について説明する。まず1回目の主走査の際には、制御系10は、図13に示すようにノズル22Aによりレンチキュラーレンズ16Aの視差画像A1の上半分を描画するとともに、ノズル22Bによりレンチキュラーレンズ16Cの視差画像A1の上半分を描画するよう、記録ヘッド2、主走査機構6および副走査機構9を制御する。1回目の主走査が終了すると、制御系10は、算出した1つのドットピッチ分副走査方向にレンチキュラーシート15を搬送し、2回目の主走査を行う。なお、主走査方向のドットピッチは84.7μmであるため、制御系10は、1回のインクの吐出の後、記録ヘッド2を84.7μm副走査方向に移動し、次のドットのためのインクの吐出を行う。
【0083】
2回目の主走査の際には、制御系10は、ノズル22Aによりレンチキュラーレンズ16Aの視差画像A1の下半分を描画するとともに、ノズル22Bによりレンチキュラーレンズ16Cの視差画像A1の下半分を描画するよう、記録ヘッド2、主走査機構6および副走査機構9を制御する。2回目の主走査が終了すると、制御系10は、算出した1つのドットピッチ分副走査方向にレンチキュラーシート15を搬送し、3回目の主走査を行う。
【0084】
3回目の主走査の際には、制御系10は、ノズル22Aによりレンチキュラーレンズ16Aの視差画像A2の上半分を描画するとともに、ノズル22Bによりレンチキュラーレンズ16Cの視差画像A2の上半分を描画するよう、記録ヘッド2、主走査機構6および副走査機構9を制御する。3回目の主走査が終了すると、制御系10は、算出した1つのドットピッチ分副走査方向にレンチキュラーシート15を搬送し、4回目の主走査を行う。
【0085】
以下、主走査および副走査を繰り返し、24回目の主走査の際には、制御系10は、ノズル22Aによりレンチキュラーレンズ16Bの視差画像A6の下半分を描画するとともに、ノズル22Bによりレンチキュラーレンズ16Dの視差画像A6の下半分を描画するよう、記録ヘッド2、主走査機構6および副走査機構9を制御する。24回目の主走査が終了すると、制御系10は、レンチキュラーレンズ16の2つの幅分副走査方向にレンチキュラーシート15を搬送し、25回目の主走査を行う。
【0086】
以上の処理を繰り返すことにより、レンチキュラーシート15の裏面17の全面に視差画像が描画される。
【0087】
なお、描画時には、上記特許文献1に記載された手法と同様に、レンチキュラーレンズ16の幅、レンチキュラーシート15の支持プレート3上における位置、およびレンチキュラーシート15の副走査方向に対する傾きに基づいて、レンチキュラーレンズと視差画像との位置ずれを検出し、レンチキュラーレンズと視差画像との位置合わせを行いつつ、視差画像をレンチキュラーシートに描画するようにしてもよい。これにより、視差画像を個々のレンチキュラーレンズ16に正確に描画できるため、生成されたレンチキュラープリントを見た観察者は、立体視を良好に行うことができる。
【0088】
また、視差画像の描画後、さらに白顔料または白染料により白打ちを行うことが好ましい。これにより、視差画像ひいてはレンチキュラープリントの視認性を向上させることができる。
【0089】
ここで、レンチキュラープリントにおいては、レンチキュラーレンズ16の長手方向に同一の視差画像が描画されるため、レンチキュラーレンズ16の長手方向の解像度を変更しても、立体視には何ら影響はない。その一方で、レンチキュラーレンズ16の長手方向に直交する方向には複数の視差画像が描画されているため、レンチキュラーレンズ16の長手方向に直交する方向の解像度を向上させると、同一のレンチキュラーレンズ内における視差画像の分離性を向上させることができ、その結果、立体視を良好に行うことができる。
【0090】
本実施形態によれば、レンチキュラーシート15におけるレンチキュラーレンズ16の長手方向に直交する方向おける描画解像度を、長手方向の描画解像度よりも高くして視差画像をレンチキュラーシートに描画するようにしたものである。このため、本実施形態により視差画像が描画されたレンチキュラープリントの立体視を良好に行うことができる。また、レンチキュラーレンズの長手方向の打摘数を少なくすることができるため、レンチキュラープリントの長手方向における描画速度を大きくすることができ、その結果、レンチキュラープリントの生産性を向上させることができる。
【0091】
また、レンチキュラーレンズ16の長手方向に直交する方向には、視差画像が高解像度にて描画されるため、幅の狭いレンチキュラーレンズ16を使用することができる。したがって、レンチキュラーレンズ16の高さを低くすることができ、その結果、レンチキュラープリントの質感および風合いを向上させることができる。
【0092】
また、ノズルから吐出されたインクが球形状になる前にレンチキュラーシート上に長く伸びるように着弾させることにより、球形状になった後で着弾させる場合より、インクが濡れ広がりきるまでの時間が短くなり、塗布時間が短縮される。これにより、インクが球形状になった後で着弾させたときと比較してより早く気液界面の表面積を大きくすることができるため、インクの乾燥時間を短縮することができ、レンチキュラープリントの描画速度が向上し、その結果、レンチキュラープリントの生産性をより向上させることができる。
【0093】
また、記録ヘッド2をレンチキュラーレンズ16の長手方向に主走査し、1つのレンチキュラーレンズに対応する複数の視差画像A1〜A6を同一ノズルにて描画するようにしたため、同一特性のノズルにより1つのレンチキュラーレンズ16に対応する複数の視差画像A1〜A6が描画されることとなる。したがって、これら複数の視差画像A1〜A6が重なり合ったり、複数の視差画像A1〜A6の間に白抜けが発生することがなくなるため、視差画像間の画像分離性を向上させることができ、その結果、本実施形態により生成されたレンチキュラープリントを見た観察者は、立体視を良好に行うことが可能となる。
【0094】
また、隣接する2つのレンチキュラーレンズ16のそれぞれに対応する複数の視差画像を同一ノズルにて描画することにより、隣接するレンチキュラーレンズ16に対応する視差画像同士が重なり合ったり、隣接するレンチキュラーレンズ16に対応する視差画像の間に白抜けが発生することがなくなるため、レンチキュラープリントの画質を向上させることができる。
【0095】
なお、上記実施形態においては、隣接する2つのレンチキュラーレンズ16のそれぞれに対応する視差画像を同一のノズルにより描画しているが、隣接する3以上のレンチキュラーレンズ16のそれぞれに対応する視差画像を同一のノズルにより描画するようにしてもよい。
【0096】
また、上記実施形態においては、支持プレート3にレンチキュラーシート15を載置して搬送ベルト8により搬送するベルト搬送式の副走査機構9を用いているが、ドラム搬送式の副走査機構を用いてもよい。この際、レンチキュラーシート15はドラムに巻き付けられて回転されつつ副走査がなされることとなる。なお、レンチキュラーシート15は紙と比較して腰が強いため、スルーディスタンス精度を向上させるためには、ベルト搬送式の副走査機構9を用いることが好ましい。
【0097】
また、上記実施形態においては、インクを柱形状の状態で吐出し、レンチキュラーシート15に球形状に収縮する前に、柱形状のままで着弾させているが、図15に示すように、サテライトTが飛ぶようにインクLを吐出させることによっても、インクをレンチキュラーレンズ16の長手方向に延びるように着弾させることができる。
【0098】
また、上記実施形態においては、レンチキュラーシート15を副走査機構9により搬送しつつ、記録ヘッド2を主走査機構6により駆動して、レンチキュラーシート15に視差画像を描画しているが、レンチキュラーシート15を固定して、記録ヘッド2のみを主走査方向および副走査方向の双方に移動することにより視差画像を描画してもよい。また、記録ヘッド2を固定して、レンチキュラーシート15のみを主走査方向および副走査方向の双方に移動することにより視差画像を描画してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 インクジェット記録装置
2 記録ヘッド
3 支持プレート
6 主走査機構
9 副走査機構
10 制御系
11 入力部
15 レンチキュラーシート
16 レンチキュラーレンズ
22 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを静電力により吐出させる少なくとも1つのノズルを有し、断面凸形状の所定幅を有する複数のレンチキュラーレンズが並んで配列されてなるレンチキュラーシートにおける、凸形状をなす面とは反対側の面に前記インクを吐出することにより、前記所定幅と対応づけて複数の視差画像を描画する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと前記レンチキュラーシートとの間に所定のクリアランスを保ちながら、前記記録ヘッドを前記レンチキュラーシートに対して相対的に2次元的に移動させる走査手段と、
前記レンチキュラーシートにおける前記レンチキュラーレンズの長手方向に直交する方向における描画解像度を、該長手方向の描画解像度よりも高くして前記視差画像を前記レンチキュラーシートに描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記レンチキュラーシートへの着弾時に、前記インクが前記レンチキュラーレンズの長手方向に延びるように、前記視差画像を前記レンチキュラーシートに描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段を制御する手段であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記走査手段により前記記録ヘッドと前記レンチキュラーシートとを、該レンチキュラーシートにおける前記レンチキュラーレンズの長手方向に相対的に移動させながら、前記インクを前記ノズルから吐出方向に伸びる柱形状に吐出させ、前記インクが球状に収縮する前に前記インクを前記レンチキュラーシート上に着弾させるよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段を制御する手段であることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記走査手段は、前記インクの下端部と前記インクの上端部とが前記基板上の異なる位置に着弾するように、前記記録ヘッドと前記レンチキュラーシートとを相対的に移動させる手段であることを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記インクが前記ノズルから吐出されるときのせん断速度を調整して前記インクにダイラタンシー性を持たせることにより、前記インクが球状に収縮する前に前記レンチキュラーシート上に着弾させるよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段を制御する手段であることを特徴とする請求項3または4記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インクのせん断速度が10[1/s]での粘度が25cP以上であることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記インクの粘度が25cP以上であることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクの表面張力または動的表面張力が10mN/m以下であることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記制御手段は、少なくとも1つの前記レンチキュラーレンズに対応する複数の視差画像を同一ノズルにて描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段の駆動を制御する手段であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記制御手段は、隣接する複数のレンチキュラーレンズのそれぞれに対応する前記複数の視差画像を同一ノズルにて描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段の駆動を制御する手段であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記所定幅と該所定幅に対応する前記複数の視差画像との位置ずれを検出し、該位置ずれを補正するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段の駆動を制御する手段であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記視差画像の描画後、該視差画像に白色を重ねて描画するよう、前記記録ヘッドおよび前記走査手段の駆動を制御する手段であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項記載のインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記記録ヘッドと前記レンチキュラーシートとの間に所定のクリアランスを保ちながら、前記記録ヘッドを前記レンチキュラーシートに対して相対的に2次元的に移動させ、
前記レンチキュラーシートにおける前記レンチキュラーレンズの長手方向に直交する方向における描画解像度を、該長手方向の描画解像度よりも高くして前記視差画像を前記レンチキュラーシートに描画することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−167681(P2010−167681A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12468(P2009−12468)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100104189
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 勲将
【Fターム(参考)】