説明

インクジェット記録装置およびその調整方法

【課題】より精度の高い記録位置調整が可能なインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】記録ヘッドの複数のノズル列のノズルからインクを吐出させ、各ノズル列の異なるノズル群に対応した複数のマッチングパターンを含むテストパターンを記録媒体に対して記録する記録手段と、レンズと読み取りセンサとを備えた、テストパターンを画像として読み取る手段と、読み取った画像の複数のマッチングパターンに対してパターンマッチングを行い、複数のマッチングパターン間の距離を求める第1算出手段と、距離に基づいて画像における複数のマッチングパターン間の距離を補正する補正係数を算出する第2算出手段と、読み取った画像および前記補正係数に基づいてインクの着弾位置のずれ量を算出する第3算出手段と、ずれ量に基づきインクの着弾位置を調整する調整手段と、を備えるインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置およびその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体の幅に相当する記録幅を持つ、いわゆる、フルライン型の記録ヘッドが設けられたインクジェット記録装置が知られている。このような記録ヘッドを持つインクジェット記録装置においては、記録ヘッドを記録媒体に対して1回相対移動させることにより記録媒体のほぼ全面に画像を記録できる。
【0003】
フルライン型の記録ヘッドが設けられた記録装置においては、記録ヘッドの取り付け位置や複数の記録ヘッド間における相対的な取り付け位置に誤差が生じてしまうと、この誤差に起因して記録媒体上でのインクの着弾位置(付着位置)にずれが生じる場合がある。このずれは、記録品位の低下要因となる。本願明細書では、このようなインク着弾位置のずれを補正する処理を、記録位置調整と呼称することとする。
【0004】
以上のような、記録位置調整の手段として、特許文献1には、パターンマッチングの技術を用いることによりパターン間の相対的な位置を算出し、この相対位置に基づいて記録位置調整を行うことが開示されている。基本的には、特許文献1では、スキャナなどの読取り装置を用いてテストパターンを読み取り、読み取った画像から求められたパターン同士の相対位置から、記録時に起きるずれ量を算出し、記録位置を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−105203
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、記録ヘッドを用いてパターンマッチングを実施するためのテストパターンを記録媒体上に形成した後、読取り装置を用いてテストパターンを読み取る際に、読み取った画像は読取り装置で用いるレンズの収差の影響を受けることがある。すなわち、このレンズの収差の影響によって、読取り画像においてマッチングにより求められたパターン同士の相対位置が、実際の記録媒体上の相対位置と異なってしまうこととなる。その結果、記録時に起きる記録媒体に対するインク着弾位置の理想位置からのずれ量が正確に測れないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、記録位置調整パターンの読取り時にレンズ収差の影響にかかわらず、その測定誤差を正確に測定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出するためのノズルが配列された複数のノズル列を備える記録ヘッドに対してノズル配列方向と交差する方向に相対移動する記録媒体に対して、前記記録ヘッドからインクを吐出することによって記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドの複数のノズル列のノズルからインクを吐出させて、それぞれのノズル列における異なるノズル群に対応した複数のマッチングパターンを含むテストパターンを記録媒体に対して記録する記録手段と、レンズと、該レンズを介して光学的に画像を読み取る読み取りセンサとを備えた、前記テストパターンを画像として読み取る読取り手段と、前記読取り手段により読み取った画像における複数のマッチングパターンに対してパターンマッチングを行うことにより、当該複数のマッチングパターン間の距離を求める第1算出手段と、前記距離に基づいて、前記読取り手段が読み取る画像における前記複数のマッチングパターン間の距離を補正するための補正係数を算出する第2算出手段と、前記読み取った画像および前記補正係数に基づいて、前記記録ヘッドから吐出されるインクの着弾位置のずれ量を算出する第3算出手段と、前記ずれ量に基づき、前記記録ヘッドから吐出されるインクの着弾位置を調整する調整手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パターンの読取り時に読取り機器に起因する画像の歪みが生じた場合であっても、その測定誤差を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る、記録制御装置の一例となる画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る、図1で示した画像形成装置における制御に関わる構成を説明するためのブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る、記録ヘッドユニット、スキャナユニット、およびテストパターンの位置を説明するための図である。
【図4】第1の実施形態に係る、ずれ量検出のテストパターンとその記録方法とを説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に係る、パターンマッチング用パターンを示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る、記録チップ間およびノズル列間のずれ量算出用のパターンレイアウトを説明するための図である。
【図7】第1の実施形態に係る、記録ヘッド間のずれ量算出用のパターンレイアウトを説明するための図である。
【図8】第1の実施形態に係る、図6および図7のパターンレイアウトに従って実際に記録媒体上に記録されたテストパターンを説明するための図である。
【図9】図8のテストパターンをCCDスキャナで読も取る様子を示す図である。
【図10】第1の実施形態に係る、ずれ量算出のフローを示す図である。
【図11】第1の実施形態に係る、各記録チップに対応したパターンを検出する処理を説明するための図である。
【図12】図6のパターンレイアウトに従って記録されたパターンのスキャン画像を用いた、レンズ収差の影響を算出する方法を説明するための図である。
【図13】図6のパターンレイアウトに従って記録されたパターンのスキャン画像を用いた、ノズル列間のずれ量を算出する方法を説明するための図である。
【図14】図6のパターンレイアウトに従って記録されたパターンのスキャン画像を用いた、記録チップ間のずれ量を算出する方法を説明するための図である。
【図15】図7のパターンレイアウトに従って記録されたパターンのスキャン画像を用いた、記録ヘッド間のずれ量を算出する方法を説明するための図である。
【図16】第2の実施形態に係る、ずれ量算出のフローを示す図である。
【図17】第2の実施形態に係る、図6および図7のパターンレイアウトに従って実際に記録媒体上に記録されたテストパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の実施の形態はあくまでも例示であり、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
(第1の実施形態)
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。なお、この実施の形態で用いる装置の各構成要素の相対配置、装置形状等は、あくまで例示であり、それらのみに限定するものではない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る、記録制御装置の一例となる画像形成装置の概略構成を示す図である。図1の画像形成装置は、記録機能と、記録物上の画像を読取る読取装置を備えたものを示すが、他の機能を加えた複合装置としてもよい。また、記録処理を行う記録材(被記録媒体または記録シート)としてロールシートを用いたものを例に説明するが、同一面への複数ページ分の記録を途中で切断せずに続けて行える長尺の連続シートであれば、ロール状となったものには限らない。また、連続シートの切断は、画像形成装置が自動的に切断するものであってもよいし、ユーザーがマニュアル指示を行って切断するものであってもよい。記録材の材質も紙には限らず、記録処理可能なものであれば種々のものを用いることができる。また、画像形成装置は、連続シートへの記録のみではなく、所定のサイズに予めカットされたカットシートへの記録をも可能な画像形成装置としてもよい。また、記録方式は後述する画像記録用液体インクを用いたインクジェット方式による画像の記録には限らない。記録剤として固形インクを用いてもよい。また、複数色の記録剤を用いたカラー記録を行うものには限らず、黒色(グレーを含む)のみによるモノクロ記録を行うものとしてもよい。また、記録は、可視画像の記録には限らず、不可視もしくは視認が困難な画像の記録としてもよいし、一般的な画像以外の、例えば配線パターン、部品の製造における物理的パターン、DNAの塩基配列等のプリントなど種々のものの記録としてもよい。つまり、記録剤を記録材に付与可能なものであれば種々のタイプの記録装置に適用可能である。また、図1の画像形成装置と接続された外部装置からの指示で当該画像形成装置における記録処理の動作を制御させる場合、この外部装置が記録制御装置となる。
【0013】
図1の画像形成装置は、以下の構成要素101〜115を含み、これらが1つの筐体内に配置される。ただし、これらの構成要素を複数の筐体に分けて構成してもよい。
【0014】
制御ユニット108は、コントローラ(CPUまたはMPUを含む)やユーザーインターフェース情報の出力器(表示情報や音響情報などの発生器)、各種I/Oインターフェースを備えた制御部を内蔵し、画像形成装置全体の各種制御を司る。
【0015】
図1の画像形成装置は、ロールシートユニットとして上段シートカセット101aおよび下段シートカセット101bの2基を備える。使用者はロールシート(以下、シートと記載する)をマガジンに装着してから画像形成装置本体に装填する。上段シートカセット101aから引き出されたシートは図中矢印a方向に、下段シートカセット101bから引き出されたシートは図中矢印b方向にそれぞれ搬送される。いずれのカセットからのシートも図中矢印c方向に進行して搬送ユニット102に到達する。搬送ユニット102は、複数の回転ローラ104を通して記録処理中にシートを図中矢印d方向に搬送する。給紙元のシートカセットを一方から他方に切り替える際は、既に引き出されているシートをカセット内に巻き戻し、新たに給紙させるシートがセットされているカセットから新たに給紙する。
【0016】
搬送ユニット102の上方には記録ヘッドユニット105が搬送ユニット102と対向して搭載される。記録ヘッドユニット105では複数色分の独立した記録ヘッド106がシートの搬送方向に沿って保持されている。本実施形態ではK(ブラック)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、G(グレー)、LM(ライトマゼンタ)、LC(ライトシアン)、の7色に対応した7つの記録ヘッドを有す。もちろん、これら以外の色を用いたものでもよいし、これらの全てを用いる必要もない。記録ヘッド106は、記録時の搬送方向d方向に沿って各色(本実施形態では7色)のラインヘッドが並んでいる。記録ヘッド106は、継ぎ目無く単一の記録チップで形成されたものであってもよいし、分割された記録チップが一列又は千鳥配列のように規則的に並べられたものであってもよい。本実施形態では、本装置が使用可能な最大サイズのシートの記録領域の幅分をカバーする範囲にノズルが並んでいる、いわゆるフルマルチヘッドを採用する。ノズルからインクを吐出するインクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。記録データに基づいて各記録ヘッドのノズルからインクが吐出されるが、吐出のタイミングは搬送用エンコーダ103の出力信号によって決定される。なお、本実施形態では記録剤としてインクを用いたインクジェット方式のプリンタに限定されない。サーマルプリンタ(昇華型、熱転写型など)、ドットインパクトプリンタ、など、様々な記録方式に適用可能である。
【0017】
本画像形成装置は、搬送ユニット102によるシートの搬送に同期させて、記録ヘッド106からインクを吐出させてシート上に画像を形成する。なお、記録ヘッド106はインクの吐出先が回転ローラ104と重ならない位置に配置される。インクはシートに直接吐出させるのに代え、中間転写体にインクを付与した後、そのインクをシートに付与することによって画像を形成させるものとしてもよい。これら搬送ユニット102、記録ヘッドユニット105および記録ヘッド106を含んで記録ユニットが構成されている。インクタンク109は各色のインクを独立して貯蔵する。インクタンク109からはチューブによって各色に対応して設けられたサブタンクまでインクが供給され、サブタンクから各記録ヘッド106までチューブを介してインクが供給される。
【0018】
シートに画像が形成された後、当該シートは搬送ユニット102から、スキャナユニット107まで搬送される。スキャナユニット107では、シート上の記録画像や特殊パターンを光学的に読み取って記録画像に問題がないかどうかの確認や、インクの吐出状態を含む本装置の状態確認等を行う。本実施形態では、画像の確認方法において、記録ヘッドの状態の確認するためのパターンを読み込むことによるインクの吐出状態を確認するものとするが、元画像との比較を行うことによる記録の成否を確認するものでもよい。確認の方法は種々のものの中から適宜選択することが可能である。
【0019】
シートはスキャナユニット107近傍から矢印e方向に搬送され、カッタユニット110に導入される。カッタユニット110ではシートを所定の記録単位の長さ毎に切断する。記録する画像サイズに応じてこの所定の記録単位の長さは異なる。例えばL版サイズの写真では搬送方向の長さは135mm、A4サイズでは搬送方向の長さは297mmとなる。カッタユニット110は、片面記録の場合はページ単位でシートを切断するが、記録ジョブの内容によってはページ単位で切断しない場合もある。また、カッタユニット110は両面記録の場合、シートの第1面(たとえばおもて面)はページ単位で切断せずに所定の長さ分まで画像を連続して記録し、第2面(たとえば裏面)を記録した場合にページ単位で切断する。なお、カッタユニット110は、片面記録や両面記録の裏面記録に際し、1枚の画像毎に切断するものに限らない。所定の長さ分搬送されるまで切断せず、所定の長さまで搬送された後で切断し、1枚(1ページ)の画像毎に切り離すのは別のカッタ装置で手動操作等によって切断するものとしてもよい。またシートの幅方向に関しては、切断が必要な場合、別のカッタ装置を用いて切断することになる。
【0020】
カッタユニット110から搬送されたシートは、ユニット内を図中矢印f方向に搬送され、裏面記録ユニット111に搬送される。裏面記録ユニット111は、シートの片面のみに画像を記録する場合に、シートの裏面に所定の情報を記録させるためのユニットである。シートの裏面に記録する情報としては、記録画像毎に対応した文字、記号、コード等の情報(例えば、オーダー管理用番号等)が含まれる。裏面記録ユニット111は、記録ヘッド106が両面記録の記録ジョブのための画像を記録する場合、記録ヘッド106が画像を記録する領域以外に上記のような情報を記録する。裏面記録ユニット111は、記録剤の押印、熱転写、インクジェットなどの方式を採用可能である。
【0021】
裏面記録ユニット111を通ったシートは、次に乾燥ユニット112に搬送される。乾燥ユニット112は、インクが付与されたシートを短時間で乾燥させるために、ユニット内を図中矢印g方向に通過するシートを温風(加温された気体(空気))で加熱するユニットである。なお、乾燥の方法は温風を用いるのに代え、冷風、ヒーターによる加温、待機させることのみによる自然乾燥、紫外光等の電磁波の照射など種々のものも採用可能である。記録単位長さに切断されたシートは1枚ずつ乾燥ユニット112内を通過して、図中矢印h方向に搬送されて仕分けユニット114に搬送される。仕分けユニット114は、複数のトレー(本実施形態では18個)を保持しており、記録単位の長さ等に応じでシートの排紙先のトレーを区別する。各トレーにはトレー番号が割り当てられている。仕分けユニット114では、ユニット内を図中矢印i方向に通過するシートを、各トレー上に設けられたセンサでトレーの空きやシートが満載か否かなどを確認しながら記録画像毎に設定されたトレー番号に対応するトレーに排紙していく。切断されたシートの排出先となるトレーは、記録ジョブの発行元(ホスト装置)で特定のものが指定される場合や、画像形成装置側で空いているトレーが任意に指定される場合がある。1つのトレーには予め決められた枚数まで排紙可能である。この予め決められた枚数を超える記録ジョブの場合、複数のトレーに跨って排紙される。トレーに対して排紙可能なシートの枚数やサイズ、種類などは、そのトレーの大きさ(タイプ)等によって異なっている。図1において縦(上下)に並んでいるトレー(以下、大トレー)は大サイズ(A4サイズ等、L版サイズより大きいもの)のシート、小サイズ(L版サイズ)のシートの排紙が可能である。また、横(左右)に並んでいるトレー(以下、小トレー)は小サイズ(L版サイズ)のシートの排紙が可能であるが大サイズのシートの排紙はできない。そして、大トレーの方が小トレーより排紙可能なシートの出力枚数が多い。また、シート排紙中や排紙完了等の状態は、表示器を用いてユーザーが識別可能にする(例えば、LED等を用いる)。例えば、トレーのそれぞれに互いに異なる色で発光する複数のLEDを設け、点灯しているLEDの色や点灯状態か点滅状態かなどによって各トレーの種々の状態をユーザーに通知可能である。また、複数のトレーのそれぞれには優先順位を付すことができ、画像形成装置200は、記録ジョブを実行するにあたり、空いている(シートが存在しない)トレーを、優先順位に従って順にシートの排出先として割り当てていく。デフォルトでは、大トレーは上のトレーほど優先順位が高く、小トレーは左側ほど優先順位が高い。また大トレーより、小トレーの優先順位が高い。この優先順位はユーザーがシートを取り出しやすい位置の優先順位を高くしてやればよいが、ユーザーによる操作等で適宜変更可能なものとする。
【0022】
シート巻取りユニット113は、ページ単位等の所定の記録単位長さ毎に切断されずにおもて面が記録されたシートの巻取りを行う。両面記録の際には、まずおもて面に画像形成が行われたシートを、カッタユニット110でページ単位では切断せず、連続したおもて面の記録が終了した後に切断する。おもて面が記録されたシートは、ユニット内を図中の矢印j方向に通過し、シート巻取りユニット113がこれを巻取る。そして、一連のおもて面の画像形成が終了して、巻き取られたシートは、先のおもて面とは反対面を記録可能な面にして、つまり記録ヘッド106に対向させる面を反転させて、再度図中の矢印k方向に搬送される。このように搬送させることで、先のおもて面とは反対の裏面の画像の記録を行わせる。
【0023】
通常の片面記録の場合は、画像が記録されたシートは、シート巻取りユニット113による巻取りを行わせずに仕分けユニット114に搬送される。
【0024】
操作ユニット115は、ユーザーが種々の操作を行ったり、ユーザーに種々の情報を通知したりするためのユニットである。例えば、ユーザーに指定された画像が記録されたシートはどこのトレーに積載されているか、あるいは当該画像が記録中か記録終了かなど、オーダー毎の記録状況の確認が可能である。また、インク残量や、シートの残量等、装置の各種状態の確認、ヘッドクリーニング等の装置メンテナンスの実施の指示を行うためにユーザーが操作/確認可能である。
【0025】
図2は、本実施形態に係る、図1で示した画像形成装置における制御に関わる構成を説明するためのブロック図である。画像形成装置200は図1に示した画像形成装置である。
【0026】
CPU201、ROM202、RAM203、画像処理部207、エンジン制御部208、スキャナ制御部209が主に図1の制御ユニット108に含まれる。そして、制御ユニット108にHDD204、操作部206、外部I/F205などがシステムバス210を介して接続される。
【0027】
CPU201は、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)形態の中央演算処理部であり、プログラムの実行やハードウェアの起動により画像形成装置200全体の動作を制御する。ROM202は、CPU201が実行するためのプログラムや画像形成装置200の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203は、CPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204は、CPU201が実行するためのプログラム、記録データ、画像形成装置200の各種動作に必要な設定情報を、内蔵するハードディスクに記憶させたり、読み出したりすることが可能である。なお、HDD204に代えて、他の大容量記憶装置としてもよい。
【0028】
操作部206は、ユーザーが種々の操作を行うためのハードキーやタッチパネル、またユーザーに種々の情報を提示(通知)するための表示部を含み、図1の操作ユニット115に対応するものである。またユーザーへの情報の提示は、音声発生器からの音響情報に基づく音響(ブザー、音声等)を出力することによっても行うこともできる。
【0029】
画像処理部207は、画像形成装置200で扱う記録データ(例えば、ページ記述言語で表されたデータ)の画像データ(ビットマップ画像)への展開(変換)や画像処理を行う。画像処理部207は、入力された記録データに含まれる画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。画像処理部207では、画像データに対し、有効な(画像形成装置200が記録処理可能な)画素数への解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られた画像データは、RAM203または、HDD204に格納される。
【0030】
エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに応じて、記録データに基づく画像をシート上に記録する処理の制御を行う。エンジン制御部208は、各色の記録ヘッド106へのインク吐出指示や、記録媒体上でのドット位置(インクの着弾位置)を調整するための吐出タイミング設定、ヘッド駆動状態取得に基づく調整等を行う。エンジン制御部208は、記録データに応じて記録ヘッドの駆動制御を行い、記録ヘッドからインクを吐出させシート上に画像を形成させる。また、給紙ローラの駆動指示、搬送ローラの駆動指示、搬送ローラの回転状況取得等を行う等、搬送ローラの制御を行い、シートを適切な速度および経路で搬送および停止させる。
【0031】
スキャナ制御部209は、CPU201等から受信した制御コマンドに応じて、スキャナのイメージセンサの制御を行い、シート上の画像を読取り、赤(R)、緑(G)および青(B)色のアナログ輝度データを取得し、デジタルデータ(多値データ)に変換する。イメージセンサとしては、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等を採用可能である。また、イメージセンサは、リニアイメージセンサ(ラインセンサ)としてもエリアイメージセンサとしてもよい。また、スキャナ制御部209は、イメージセンサの駆動指示、該駆動に基づくイメージセンサの状況取得を行い、イメージセンサから取得した輝度データを解析し、記録ヘッド106からのインクの不吐やシートの切断位置の検出等を行う。スキャナ制御部209で画像が正しく記録されていると判定されたシートは、シート上のインクの乾燥処理が施された後に、指定された仕分けユニットのトレーに排紙される。
【0032】
ホスト装置211は、上述した外部装置に対応し、本画像形成装置200の外部に接続され、画像形成装置200に記録を行わせるための画像データの供給源となる装置であり、種々の記録ジョブのオーダーを発行する。ホスト装置211は、汎用のパーソナルコンピュータ(PC)として実現してもよいし、他のタイプのデータ供給装置としてもよい。他のタイプのデータ供給装置としては、画像をキャプチャーして画像データを生成する画像キャプチャー装置がある。画像キャプチャー装置は、原稿(記録物等)の画像を読み取って画像データを生成するリーダ(スキャナ)、ネガフィルムやポジフィルムを読み取って画像データを生成するフィルムスキャナなどである。また、画像キャプチャー装置の他の例として静止画を撮影してデジタル画像データを生成するデジタルカメラ、動画を撮影して動画像データを生成するデジタルビデオもある。画像データの供給源として、ネットワーク上にフォトストレージを設置したり、着脱可能な可搬性メモリを挿入するソケットを設けたり、フォトストレージや可搬性メモリに格納された画像ファイルを読み出し画像データに生成して記録する構成をとってもよい。また、汎用的なPCに代え、本画像形成装置専用の端末とするなど、種々のデータ供給装置を用いてもよい。これらのデータ供給装置は画像形成装置の構成要素としてもよいし、画像形成装置の外部に接続した別の装置としてもよい。また、ホスト装置211をPCとした場合、PCの記憶装置に、OS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、画像形成装置200用のプリンタドライバがインストールされる。プリンタドライバは、本画像形成装置200を制御したり、アプリケーションソフトウェアから供給された画像データを画像形成装置200が扱える形式に変換して記録データを生成したりする。また、記録データから画像データへの変換をホスト装置211側で行ってから画像形成装置200に供給するようにしてもよい。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。ホスト装置211から供給される画像データやその他のコマンド、更にステータス信号等は、外部I/F205を介して画像形成装置200と送受信可能である。外部I/F205はローカルI/FであってもネットワークI/Fであってもよい。また、外部I/F205は、有線による接続であっても無線による接続であっても構わない。
【0033】
画像形成装置200内の上記した各構成はシステムバス210を介して接続され、互いに通信可能である。
【0034】
なお、以上の例では、1つのCPU201が図2に示した画像形成装置200内の全ての構成要素を制御するものとしたが、この構成以外としてもよい。すなわち、各機能ブロックのいくつかが別途CPUを備え、それぞれのCPUによって個別に制御するものとしてもよい。また、各機能ブロックは図2に示した構成以外の分担のさせ方により個別の処理部または制御部として適宜分割したり、いくつかを統合したりするなど、種々の形態を採用可能である。また、メモリからのデータの読み出しにはDMAC(Direct Memory Access Controller)も用いることもできる。
【0035】
以上解説した画像形成装置を用いて記録物を作成する際の、本実施形態における記録位置調整制御について、およびそのためのインク着弾位置のずれ量検出について説明する。画像形成装置の記録ヘッド間、1つの記録ヘッドにおける記録チップ間、1つの記録チップにおけるノズル列間には、それらの製造や取り付けに起因する相対的な位置の誤差(ずれ)が生じてしまうことがある。すると、そのような誤差に起因して、画像形成装置から記録媒体に対してインクを吐出した際に、記録媒体におけるインクの着弾位置(付着位置)にずれが生じる。その結果、インクが重なって着弾する、あるいはインクが連続した位置に着弾できずに、記録画像にムラができてしまうこととなる。ここでもし、各間で、インク着弾位置が理想位置からどれくらい離れているかのずれ量を正確に算出することができれば、ずれ量にあわせてインクの着弾位置の調整をおこない、ムラを防ぐことが可能となる。インクの着弾位置の調整には、インクの吐出タイミングをずらす、記録ヘッドの位置を変更する、記録位置データをずらす、記録に使用するノズルを変更する、などがある。以下に、本発明において、いかにして正確な着弾位置のずれ量を算出するかを解説する。以降、「ずれ量」の記載は特に断りのない限り、各間での、インク着弾位置の理想位置からの距離を指すものとする。なお、「ずれ量」は、距離に加えて方向の概念も含み得る。
【0036】
図3は、本実施形態に係る、記録ヘッドユニット、スキャナユニット、およびテストパターンの位置を説明するための図である。図3は、ロール紙の形態の記録媒体304にずれ量検出のためのテストパターン305を記録する例を示している。
【0037】
矢印306は、記録媒体304が搬送される方向を示している。矢印306の方向を記録媒体の搬送方向と呼称する。
【0038】
記録ヘッドユニット105は、複数の記録ヘッド106を備える。本実施形態では、記録ヘッドユニット105は、フルライン型の7つの記録ヘッド106で構成される。各記録ヘッド106は、記録媒体の搬送方向下流から、BK(ブラック)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、GR(グレー)、LM(ライトマゼンタ)、LC(ライトシアン)の7色に対応している。矢印307は、記録ヘッド106のノズルの配列方向を示している。矢印307の方向をノズル配列方向と呼称する。記録媒体の搬送方向306およびノズル配列方向307は交差し、理想的には直交する。記録ヘッドに対して記録媒体搬送方向306に相対移動する記録媒体に向かって記録ヘッドからインクを吐出することにより、記録媒体上にインクを着弾させて、記録を行う。
【0039】
ヘッド移動301、302は、記録ヘッドユニット105のノズル配列方向の移動を示す。ヘッド移動301、302は、記録ヘッドの使用ノズル領域を移動する制御である。ヘッド移動301、302は、使用ノズル領域を移動させて記録ヘッドの広範囲のノズルを使用して記録動作をすることで、記録ヘッドの耐久性の向上させている。また、ヘッド移動301、302は、ノズル使用割合のばらつきによるインク吐出量のばらつきの影響を軽減させることで、記録画像の濃度段差の発生を低減させている。
【0040】
スキャナユニット107は、記録ヘッドユニット105に対して、記録媒体の搬送方向の下流側に配置される。スキャナユニット107は、記録ヘッドユニット105のずれ量検出をするために、記録媒体304に記録されたテストパターン305を読み取る。
【0041】
図4は、本実施形態に係るずれ量検出のテストパターンとその記録方法とを説明するための図である。図4は、図3と同様に、ロール紙の形態の記録媒体304にずれ量検出のためのテストパターン305を記録する例を示しており、図中の矢印306は記録媒体304の搬送方向を示す。
【0042】
テストパターン305は、記録ヘッドユニット105におけるずれ量検出をするためのテストパターンである。テストパターン305は、各記録ヘッド106に対応するずれ量を検出するためのテストパターン403から409を含んで構成される。テストパターン403から409は、それぞれBK(ブラック)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、GR(グレー)、LM(ライトマゼンタ)、LC(ライトシアン)の記録ヘッド106で記録されたテストパターンである。テストパターン403から409は、各記録ヘッド106で同一のパターンである。
【0043】
413は、記録ヘッドユニット105を構成する1つの記録ヘッド106の一部を拡大した図である。本実施形態の記録ヘッド106は、複数の記録チップが千鳥配列のように規則的に並べられた構成を有する。テストパターンを記録する際には、記録ヘッドを構成するそれぞれの記録チップの吐出タイミングをずらし、記録チップ毎に、記録チップに対応したパターンを記録する。410は、1つの記録ヘッドについてのテストパターン403の一部を拡大したものである。並列するパターン411および412は、それぞれ、千鳥状に配列された記録チップ414および415によって記録された、記録チップに対応したパターンである。図に示されるように、本実施形態では、1つの記録ヘッドについてのテストパターンにおける複数の記録チップに対応したパターンの記録開始位置は、記録媒体の搬送方向306において、記録チップの位置関係によらずに、同位置となるように設定される。
【0044】
416は、テストパターン410の一部、詳細にはパターン411の一部を拡大したものである。これを参照して、記録チップに対応したパターンの構成とその記録方法について説明する。記録チップに対応したパターンは、検知マーク417と、アライメントマーク418と、パターンマッチング用パターン419とで構成されている。検知マーク417およびアライメントマーク418は、以下に説明するように、パターンマッチング用パターン419の位置を特定するための位置検出用パターンとしての機能を有する。
【0045】
検知マーク417は、画像解析処理において、読取り画像における記録チップに対応したパターンを検出するためのパターンである。検知マーク417は、図に示すような矩形状のベタ記録がされたパターンである。本実施形態では、記録チップは、422に示すように複数のノズルが直線状に配列された8列のノズル列を含んで構成されている。検知マーク417は、8列のノズル列のノズルから吐出されるインクの記録媒体への着弾によって記録される。複数のノズル列を使用して記録することで、不吐ノズルがある場合でも、別のノズル列のノズルから吐出されるインクの着弾により不吐ノズルによる検知マークのパターンの欠損が軽減され、画像解析処理で安定して検知マークを検出することができる。
【0046】
アライメントマーク418は、画像解析処理において、ずれ量検出のためのパターンマッチング用パターン419の解析領域の基準となるパターンである。アライメントマーク418は、図に示すような矩形状のベタ記録がされているパターンであり、検知マーク417毎に3つのアライメントマーク418が記録される。アライメントマーク418は、パターンマッチング用パターン419を記録するノズル列のノズルから吐出されるインクの着弾によって記録される。
【0047】
パターンマッチング用パターン419は、画像解析処理において、記録ヘッドと記録ヘッドとの間(記録ヘッド間)、記録チップと記録チップとの間(記録チップ間)、ノズル列とノズル列との間(ノズル列間)のずれ量を算出するためのパターンである。パターンマッチング用パターン419は、図5に示すようなランダムにドットを配置した形状である。1つのパターンマッチング用パターン419は、1つのノズル列の複数のノズルからなるノズル群から吐出されるインクの着弾によって記録される。1つのノズル列の複数のノズルのうち隣り合うノズルからのインクの吐出は、記録媒体304へ着弾する記録のタイミングがずれるように行われる。本実施形態における1つのパターンマッチング用パターン419は、1200dpiに換算して80×80ピクセルの大きさに形成される。以降、パターンマッチング用パターンを、省略してマッチングパターンと呼称する。
【0048】
図6は、検知マーク417と、アライメントマーク418と、マッチグパターン419とを用いて記録チップ間およびノズル列間のずれ量を算出するために記録媒体に記録するパターンのレイアウトを示した図である。以降に、図6を用いて、本実施形態における記録チップ間およびノズル列間におけるずれ量を算出するためのパターンレイアウトについて、詳細を解説する。
【0049】
図6の414は、本実施形態における記録チップの模式図である。422に示すように、1つの記録チップ414の中に、8列のノズル列が平行に配置されており、それぞれA〜Hまでの名前を持つとする。A〜Hのノズル列のそれぞれは、1024個のノズルが1200dpi間隔で一直線上に配置されて形成される。それぞれのノズルからインクが吐出され、記録媒体に着弾して記録物が形成される。
【0050】
603は、1つの記録チップ上に配置されたノズル列間のずれ量と、1つの記録ヘッド上に配置された記録チップ間のずれ量とを算出するために記録媒体に記録するパターンのレイアウトを示す。図中、segを付して示された0から1023の数字は、各ノズル列の1024個のノズルに対応するノズル番号を示す。本実施形態では、例えば、図中最左端のマッチングパターン419は、0〜79seg(1〜80番目)のノズルにより記録されている。また、図中左から2番目のマッチングパターン419は、それからノズル16個(16seg)分の間隔を空けて、96〜175seg(97〜176番目)のノズルにより記録されている。このようにして、パターンレイアウト603に示される、記録チップに対応したパターンは、各ノズル列の1024個のノズルのうち0〜847seg(1〜848番目)のノズルを使用して形成されている。604は、パターンレイアウト603について、それぞれのマッチングパターン419が、記録チップ414のノズル列A〜Hのうち、どのノズル列を使用して記録されるかを、ノズル列のアルファベットで示している。例えば、604においてアルファベットBが付されたマッチングパターン419は、ノズル列Bの192segから271segまでの80個のノズルを用いて形成される。以降、図6のパターンレイアウトに言及する際は、符号604を用いることとする。
【0051】
パターンレイアウト604におけるマッチングパターン419の理想位置は、図中符号S1およびS2によって示すように、記録媒体の搬送方向306において記録開始位置が直線上に並ぶ位置であることとする。また、パターンレイアウトにおける各マッチングパターン419の理想位置は、ノズル配列方向307において各マッチングパターンの対応する画素が、記録に使用されたノズルの間隔と等しい間隔を有する位置にあることとする。
【0052】
図7は、各記録ヘッドの位置、および記録ヘッド間のずれ量を算出するために記録媒体に記録されるパターンのレイアウトを示した図である。本実施形態では、各色の記録ヘッド106は、記録チップ間でのずれがもとで起きる記録濃度差ムラを小さくする目的で、記録ヘッドのノズル配列方向307に物理的にずらして配置されている。図中、701は記録ヘッドの位置を、702は記録媒体に記録されるパターンのレイアウトを示す。
【0053】
本実施形態では、黒(BK)の記録ヘッドの記録チップ4を基準に、各記録ヘッド106の記録チップ4同士のずれ量を求めるものとする。記録チップ4を基準とする理由は、後述する。各記録チップ4は、図6に示されるように平行に配置された8列のノズル列A〜Hを有する。基準となるBKの記録ヘッドのノズル列Hを用いて2つのマッチングパターン703および704を記録する。このときの使用ノズルは、703については記録チップ4のノズル列Hの0〜79seg、704については記録チップ4のノズル列Hの768〜847segである。この2つのマッチングパターンを基準に、他の記録ヘッド106のずれ量を求める。そのために、各記録ヘッド106の記録チップ4のノズル列Hの0〜79segのノズルを用いて、705(M)、706(C)、707(Y)、708(GR)、709(LM)のマッチングパターンを記録する。ここで、ライトシアン(LC)のマッチングパターンは、記録チップ4のノズル列Hの0〜79segのノズルを用いて記録すると、黒(BK)のマッチングパターン703と記録媒体上における記録位置が重複してしまう。したがって、重複を避けるため、ライトシアン(LC)のマッチングパターン710については、0〜79segの代わりに192〜271segのノズルを用いて記録する。
【0054】
マッチングパターン703〜710の理想位置を説明する。図中符号S10によって示すように、全てのマッチングパターンの記録媒体搬送方向306における記録開始位置は、BKの記録ヘッドの2つのマッチングパターン703、704の記録開始位置を結んだ直線上にあることとする。また、各マッチングパターンのノズル配列方向307における位置は、記録に用いた記録ヘッド間の物理的な取り付け位置の差をもって並んでいることとする。
【0055】
図8は、図6のパターンレイアウト604および図7のパターンレイアウト702に従ったテストパターンを記録媒体上に実際に形成する際の構成を示す。本実施形態では、図6のパターンレイアウト604に従ったパターンを、各記録チップで、記録媒体の搬送方向306における記録開始位置が直線上にあるように記録している。また、記録チップ同士で重なり合うノズル(各記録チップの一方の端から128個のノズル(896〜1023segのノズル))は使用しない。
【0056】
図中801は、図6に示すノズル列間および記録チップ間のずれ量を算出するためのパターンレイアウト604に従って図7に示すBKの記録ヘッド106で記録したパターンである。以下、同様に、802〜807は、それぞれ、図6に示すノズル列間およびチップ間のずれ量を算出するためのパターンレイアウト604に従って図7に示すM、C、Y、GR、LM、LCの各記録ヘッド106で記録したパターンである。このように、それぞれの記録チップでパターンレイアウトに従ったパターンを記録することで、後述のように、各記録ヘッドにおける記録チップ間のずれ量を求めることができる。
【0057】
ここで、各パターンレイアウトに従ったパターンの理想位置は、記録媒体の搬送方向306における記録開始位置が一直線上にあり、ノズル配列方向307における位置が、記録に用いた記録チップ間の物理的な取り付け位置の差をもって並んでいることとする。
【0058】
図7に示す全ての記録ヘッド106について図6のパターンレイアウト604に従ったパターン801〜807を記録した後に、図7のパターンレイアウト702に従ったパターンを記録する。
【0059】
図9は、記録されたパターンをCCDスキャナで読み込む様子を模式的に示した図である。CCDスキャナ900は、図1におけるスキャナユニット107の一部分であり、CCDラインセンサ902およびレンズ903を含む。スキャナユニット107のランプ(不図示)による光が記録物の記録面901にあたって反射し、この反射光がレンズ903を通してCCDラインセンサ902に収束する。この反射光を受けたCCDラインセンサ902は光量に応じた信号を形成し、信号はスキャナ制御部209によってデジタル化される。このように、記録物は、まず、CCDラインセンサによって、CCDラインセンサのセンサ列方向(図中、矢印Xの方向)にわたるライン状に読み取られる。読み取られた信号はデジタル化される。このライン状の読取りを、センサ列方向Xと交差(理想的には直交)する記録媒体の搬送方向306において繰り返し、デジタル化された信号を集積して、記録されたパターンのスキャン画像を得る。本実施形態では、得られたスキャン画像において、インク着弾位置の理想位置からのずれ量を算出する。
【0060】
以下に、本実施形態におけるスキャン画像から、ノズル列間、記録チップ間、および記録ヘッド間のずれ量を算出する方法について解説する。
【0061】
図10に、本実施形態におけるずれ量算出のフローを示す。図10の各ステップについて解説する。
【0062】
ステップS101では、スキャナユニット107は、記録媒体に記録されたテストパターンを読み取る。スキャナユニットがテストパターンの読取りを開始するタイミングは、テストパターン記録開始のタイミングから所定量の時間が経過したタイミングであってもよいし、テストパターン記録終了のタイミングから所定量の記録媒体を搬送したタイミングであってもよい。読取りを終了するタイミングは、読取り開始から所定のライン数だけ読取りを行ったタイミングとする。
【0063】
ステップS102では、スキャナ制御部は、ステップS101で読み取ったテストパターンの読取り画像から、各記録チップに対応したパターンを検出する。各記録チップに対応したパターンを検出する処理については、図11の説明で詳細に述べる。
【0064】
ステップS103では、スキャナ制御部は、解析を行っていない記録チップに対応したパターンを選択し、ステップS104に進む。以降、このステップで選択された記録チップに対応したパターンを記録した記録チップを、解析対象の記録チップと記述する。スキャン画像内の全ての記録チップに対応したパターンのレイアウトを解析した後であれば、ステップS103から直接ステップS108に進む。
【0065】
ステップS104では、解析対象の記録チップに対応したパターンのスキャン画像における、スキャナユニット107のレンズによる収差の影響を算出する。図9に示すように縮小光学系を用いて像形成を行うセンサを用いて得たスキャン画像は、レンズによる収差の影響を受ける。そのため、本実施形態では、まず解析対象に対するレンズ収差の影響を算出する。レンズ収差の影響を算出する方法については、図12の説明で詳細に述べる。
【0066】
ステップS105では、解析対象の記録チップに対応したパターンのスキャン画像を用いて、対象記録チップ内のノズル列間のずれ量を算出する。本実施形態でのノズル列間のずれ量を算出する方法については、図13の説明で詳細に述べる。
【0067】
ステップS106では、解析対象の記録チップに対応したパターンのスキャン画像を用いて、対象記録チップのスキャナユニット107のCCDラインセンサ902のセンサ列方向Xに対する傾きを算出する。本実施形態での記録チップの傾きを算出する方法については、図14の説明で詳細に述べる。
【0068】
ステップS107では、解析対象の記録チップに対応したパターンのスキャン画像を用いて、対象記録チップとその隣接記録チップとの間の、記録チップ間のずれ量を算出する。本実施形態での記録チップ間のずれ量を算出する方法については、図15の説明で詳細に述べる。
【0069】
ステップS107の次は、ステップS103に戻り、解析を行っていない記録チップに対応したパターンを探す。ステップS104〜S107が実施されていない未解析の記録チップに対応したパターンが見つかれば、再びステップS104〜S107を行う。未解析の記録チップに対応したパターンが見つからなければ、解析対象の記録チップが無くなったものとして、ステップS108へ進む。
【0070】
ステップS108では、記録ヘッド間におけるずれ量を計測するためのパターンレイアウトに従って記録したパターンのスキャン画像を用いて、記録ヘッド間におけるずれ量を算出する。本実施形態での記録ヘッド間におけるずれ量を算出する方法については、図16の説明で詳細に述べる。
【0071】
図11を用いて、本実施形態に係る、ずれ量算出のテストパターンの読取り画像から、記録チップに対応したパターンの検知マークを検出する処理と、アライメントマークを検出する処理とを説明する。
【0072】
1100は、記録チップに対応したパターンの一部を示す。本実施形態では、1100が記録ヘッドのノズル配列方向に3つ連続して配置されたものが、1つの記録チップに対応したパターンである。検知マーク417およびアライメントマーク418は、読取り画像における記録チップに対応したパターンを検出するためのパターンである。
【0073】
図10のステップS102で述べた記録チップに対応したパターンを検出する処理と、アライメントマークを検出する処理とを説明する。各検出処理は、読取り画像のRGB3チャンネルのうち、検出対象のパターンの記録ヘッドの記録色で最も濃度が高くなるチャンネルの画像を使用する。例えば、C(シアン)の場合はRチャンネル、M(マゼンタ)の場合はGチャンネル、C(イエロー)の場合はBチャンネルの画像を使用する。なお、BK(ブラック)のように、全てのチャンネルで高い濃度となる記録色の場合は、本実施形態ではGチャンネルを使用する。
【0074】
1103は、検知マーク417の一部を拡大した図である。記録チップに対応したパターンの検出処理は、読取り画像から検知マーク417を検出することで行う。検知マーク417を検出する処理について説明する。検知マーク417は、読取り画像の所定領域の平均濃度に基づき検出する。検知マーク検出領域1104は、平均濃度を取得する領域である。平均濃度が所定濃度以上の場合、該領域1104を検知マーク417の領域として判断し、検知マーク検出領域1104の中心位置を検知マーク検出位置1105とする。
【0075】
次に、検知マーク左上端位置1106と検知マーク右上端位置1107とを検出する。なおここでいう上下左右は、図11に示す読取り画像における相対位置を用いて位置関係を示したものである。検知マーク検出位置1105から所定濃度以上の領域を走査し、その所定濃度以上の領域の左上端部を検知マーク左上端位置1106とする。同様に、その所定濃度以上の領域の右上端部を検知マーク右上端位置1107とする。
【0076】
次に、アライメントマーク418を検出する処理について説明する。アライメントマーク418は、検出した検知マーク417の位置に基づいて、所定領域の濃度重心を算出することで検出する。検知マーク417毎に、マッチングパターン419のノズル配列方向の位置に対応して、左端、中央、右端の3個のアライメントマーク418が記録されている。まず、左端のアライメントマーク418Lの検出を行う。左端のアライメントマーク418Lは、前に検出した検知マーク左上端位置1106に基づき決定した所定位置1108を基準に、所定領域1109の濃度重心を計算することで検出する。所定領域1109の濃度重心は、左端のアライメントマーク418Lの中心位置に対応している。計算により求めた濃度重心の位置を図中に示し、以降、左端アライメントマーク位置1110と呼称する。
【0077】
次に、右端のアライメントマーク418Rの検出を行う。右端のアライメントマーク418Rの検出は、前に検出した検知マークの右上端位置1107に基づき決定した所定位置1111を基準に、所定領域1112の濃度重心を計算することで検出する。計算により求めた濃度重心の位置を図中に示し、以降、右端アライメントマーク位置1113と呼称する。次に、中央のアライメントマーク418Mの検出を行う。中央のアライメントマーク418Mの検出は、左端のアライメントマーク位置1110および右端アライメントマーク位置1113の中間位置に基づき決定した所定位置1114を基準に、所定領域1115の濃度重心を計算することで検出する。計算により求めた濃度重心の位置を図中に示し、以降、中央アライメントマーク位置1116と呼称する。
【0078】
以上のようにして、検知マーク417の下部にアライメントマークの3つの濃度重心が求められた場合、この検知マークは解析対象の記録チップの一部に対応したパターンであると判断する。誤動作を防ぐため、検知マーク417の下にアライメントマークの3つの濃度重心が求められない場合は、その検知マークは解析対象の記録チップの一部に対応したパターンではないと判断する。
【0079】
図6に示す通り、本実施形態では、検知マーク417が3つ横に整列して、1つの記録チップに対応したパターンを形成する。検知マークを全て検出した後、記録ヘッドのノズル配列方向に3つ並んでいる検知マークを探し、これを検出した場合に、その3つの検知マークを合わせて、1つの解析対象の記録チップに対応した検知マークのパターンとする。その後、検出された検知マークの色、およびパターン同士の位置関係から、各パターンがどの記録ヘッドの何番目の記録チップに対応するパターンなのかを判定する。
【0080】
各パターンに対応する記録チップの判定終了後、各パターンに対する所定の算出を開始する。
【0081】
図12を参照しながら、図6のパターンレイアウト604に従って記録されたパターンのスキャン画像を用いたレンズ収差の影響の算出方法を解説する。図12は、BKの記録ヘッドの記録チップ1におけるレンズ収差の影響を算出する方法を解説するための図である。図12中、1201は、1つの記録チップの1つのノズル列における記録物を記録するために使用されるノズルの位置を模式的に示すための図であり、1202は、記録媒体上に実際に記録されたパターンすなわち記録物の模式図である。本実施形態における記録精度は、スキャン精度よりもはるかに良いものとする。ノズルの位置の精度は記録結果に大きく影響を与えるため、インクジェット方式のプリンタにおいては、さまざまな技術を用いてほぼ正確な位置にノズルが配置されるようになっていて、個体差も小さいことから、このように断定している。
【0082】
記録物1202中、パターン1204は、BKの記録ヘッドの記録チップ1のノズル列Hに配置されたノズルのうち、0〜79segのノズルを用いて記録されたマッチングパターンである。パターン1205は、同じくBKの記録ヘッドの記録チップ1のノズル列Hに配置されたノズルのうち、768〜847segのノズルを用いて記録されたマッチングパターンである。
【0083】
スキャン画像1203は、記録物1202を読み取って得たスキャン画像のうち、レンズ収差の算出に必要な部分を拡大し、模式図にしたものである。ここで、記録物1202のうちパターン1204のスキャン画像1203内の位置を、同一符号1204を用いて表示している。同様に、パターン1205のスキャン画像1203内の位置を、同一符号1205を用いて示す。スキャン画像1203に示すように、パターン1204およびパターン1205は、スキャナユニット107のCCDラインセンサ902のセンサ列方向Xに対して、ある程度傾きをもつことが多い。パターンの記録時および/または読取時の記録媒体の斜行や、スキャンユニット107におけるCCDラインセンサ902が記録媒体の搬送方向306に対して完全に垂直に取り付けられなかったことが、その主な原因である。
【0084】
スキャン画像1203を用いて、レンズ収差を算出する方法をより具体的に解説する。図12中、1208は、パターン1204とパターン1205との間の距離である。このパターン間の距離1208は、スキャン画像1203中のセンサ列方向Xの画素数1207と、センサ列方向Xと直交する方向Yの画素数1206とから、幾何学的に算出することができる。以降、スキャン画像中の画素数を、距離と表記する。本実施形態では、距離1206および1207の値を、パターンマッチングなどにより、可能な限り正確に求めることとする。
【0085】
図12中、距離1210は、0segのノズルから768segのノズルまでの物理的な距離である。パターン1204から距離1210をおいた位置を、破線1209で示す。
【0086】
パターンの記録および読取りが正確にされていれば、距離1208と距離1210とは等しいはずである。しかし、実際には、画像がスキャナユニット107のレンズ収差によって変倍されてしまい、距離1208と距離1210とが異なることが多い。
【0087】
スキャン画像1203上のパターン1205に示すように、レンズ収差によって画像が拡大されてしまうと、パターン1204とパターン1205との間の距離1208(検出距離)は、実際のノズル間距離1210(理想距離)よりも、長くなってしまう。また、レンズ収差によって画像が縮小されてしまった場合は、距離1208(検出距離)は実際のノズル間距離1210(理想距離)よりも小さくなり、パターン1205は破線1209で示される位置よりもパターン1204に近接した画像となる。
【0088】
この、CCDスキャナのレンズ収差による変倍の補正を、本実施形態では以下のように行う。本実施形態では、CCDラインセンサ902により、スキャン画像を取得している。CCDラインセンサで取得した画像の場合、レンズ収差の影響で変倍されるのは、距離1208のうち、CCDラインセンサ902のセンサ列方向Xの成分1207のみである。つまり、マッチングパターン間の検出距離1208と理想距離1210とに差が生じるのは、CCDラインセンサのセンサ列方向Xの成分が本来は距離1211であるものがレンズ収差の影響で距離1207に変倍された結果である。
【0089】
そこで、理想距離1210のセンサ列方向Xの成分1211と、距離1207とから、レンズ収差による変倍率を求める。本実施形態では、単純に、距離1207を距離1211で割ったものを、レンズ収差による変倍率とする。CCDラインセンサの特徴から、この変倍率は、センサ列方向Xにおける位置に依存する。従って、これ以降の計測において、パターン1204およびパターン1205の位置関係を用いてずれ量を計測する場合は、以上のようにして求められた変倍率が補正係数として有効になると考えられる。
【0090】
本実施形態では、このようにして求められた変倍率をこれ以降のずれ量の計算において用いて、レンズ収差による変倍の影響をキャンセルする。
【0091】
図13を参照しながら、本実施形態における図6のパターンレイアウト604に従って記録されたパターンのスキャン画像を用いた、ノズル列間のずれ量の算出方法を解説する。
【0092】
図13は、BKの記録ヘッドの記録チップ1における、ノズル列Hに対するノズル列A、B、C、D、E、F、Gのずれ量を算出する方法を解説するための図である。図13中、1301は、図6のパターンレイアウト604に従って記録されたパターンのうち、ノズル列とノズル列との間のずれ量を求めるために使用する領域を示すものである。また、図13中、1302は、領域1301をスキャンして作成したデジタル画像のうち、ノズル列間のずれ量の算出方法を説明するために、一部を拡大して模式的に示したものである。スキャン画像1302内において、スキャン画像を取得した際のCCDラインセンサ902のセンサ列方向をX、センサ列方向Xと直交する方向をYとする。
【0093】
本実施形態では、ノズル列Hと、他のノズル列との間のずれ量を算出する際に、各ノズル列に対して同じ方法を用いて算出する。ここでは、その例として、ノズル列Hとノズル列Aとの間のずれ量を算出する方法について述べる。
【0094】
領域1301のうち、パターン1303は、BKの記録ヘッドの記録チップ1のノズル列Hの0〜79segのノズルを使用して記録されたパターンである。同様に、パターン1304は、ノズル列Hの768〜847segのノズルを使用して記録されたパターンである。さらに、パターン1307は、BKの記録ヘッドの記録チップ1のノズル列Aの196〜282segノズルを使用して記録されたパターンである。
【0095】
領域1301のスキャン画像1302を用いて、ノズル列間のずれ量を算出する方法をより具体的に解説する。
【0096】
領域1301のうちパターン1303のスキャン画像1302内の位置を、同一符号1303を用いて表示している。同様に、パターン1304のスキャン画像1302内の位置を、同一符号1304を用いて示し、さらに、パターン1307のスキャン画像1302内の位置を、同一符号1307を用いて表示している。
【0097】
スキャン画像1302において、破線1306で示される領域は、実際の画像の一部ではなく、ノズル列HとAとの間に全くずれが生じていなかった場合の、パターン1307の理想位置を示す。パターンレイアウト604は、それぞれのノズル列で記録するパターンが一直線上に並ぶように設計されていることから、理想位置1306は、パターン1303とパターン1304とを結ぶ直線1305上に配置される。
【0098】
本実施形態では、スキャン画像1302におけるパターン1307の位置と理想位置1306との間のずれは、ノズル列Hのノズル列Aに対する相対的な位置にずれが生じているから起きるとし、そのずれ量を1308とする。
【0099】
ずれ量1308は、パターン1307から直線1305に対して引いた垂線の長さである。ここで、幾何学的な条件から、ずれ量1308は、以下の4つの距離から求めることができる。
【0100】
1つ目の距離は、パターン1303とパターン1307との間のCCDラインセンサのセンサ列方向Xの距離1309である。
【0101】
2つ目の距離は、パターン1303とパターン1307との間のCCDラインセンサのセンサ列方向と直交する方向Yの距離1310である。
【0102】
3つ目の距離は、パターン1304とパターン1307との間のCCDラインセンサのセンサ列方向Xの距離1311である。
【0103】
4つ目の距離は、パターン1304とパターン1307との間のCCDラインセンサのセンサ列方向と直交する方向Yの距離1312である。
【0104】
このとき、レンズ収差の影響を受けるのは、CCDラインセンサのセンサ列方向Xの距離である距離1309および距離1311である。そこで、ステップS104で求めたレンズ収差による倍率で、距離1309および1311を変倍してから、ずれ量1308の算出を行う。
【0105】
このようにしてずれ量1308の算出を行うことで、レンズ収差の影響を受けない値を得ることができる。
【0106】
以上示した方法で、同様に、他のノズル列B−H間、C−H間、D−H間、E−H間、F−H間、G−H間のずれ量を求めることができる。
【0107】
さらに、ステップS105における、CCDラインセンサのセンサ列方向Xに対する記録チップの傾きを求める方法を、図13を用いて解説する。
【0108】
パターン1303およびパターン1304は、同じノズル列のほぼ両端で形成している。そのため、本実施形態では、CCDラインセンサのセンサ列方向Xに対する記録チップの傾きを、スキャン画像1302内での、CCDラインセンサのセンサ列方向Xに対するパターン1303とパターン1304とを結ぶ直線1305の傾き1313とする。傾き1313も、距離1309、1310、1311、1312から幾何学的に求めることができる。
【0109】
以上のように、レンズ収差による変倍率を記録チップ毎に求め、記録チップ毎のずれ量計測に適応させることで、レンズの個体差に影響されることもなく、レンズ収差計測用の特別なチャートを必要とすることもない、画像の歪みの補正方法を実現することができる。
【0110】
図14を参照しながら、本実施形態における、図6のパターンレイアウト604に従って記録されたパターンについてのスキャン画像を用いた、記録チップと記録チップとの間のずれ量の算出方法を解説する。
【0111】
図14中、1401は、2つの記録チップにおける記録物の記録に使用されるノズルの位置を模式的に示すための図であり、1402は、記録媒体上に実際に記録されたパターンすなわち記録物の模式図である。図14は、BKの記録ヘッドの記録チップ1と記録チップ2との間のずれ量を算出する方法を解説するための図である。
【0112】
記録物1402中、パターン1404はBKの記録ヘッドの記録チップ1のノズル列Hに配置されたノズルのうち、576〜655segのノズルを用いて記録したマッチングパターンである。パターン1405は、BKの記録ヘッドの記録チップ1のノズル列Hに配置されたノズルのうち、768〜847segのノズルを用いて記録したマッチングパターンである。パターン1406は、BKの記録ヘッドの記録チップ2のノズル列Hに配置されたノズルのうち、0〜79segのノズルを用いて記録したマッチングパターンである。
【0113】
スキャン画像1403は、記録物1402のスキャン画像のうち、記録チップ間のずれ量の算出に必要な部分を拡大し、模式図にしたものである。ここで、記録物1402のうちパターン1404のスキャン画像1403内の位置を、同一符号1404を用いて表示している。同様に、パターン1405および1406のスキャン画像1203内の位置を、それぞれ、同一符号1405および1406を用いて示す。
【0114】
BKの記録ヘッドの記録チップ1と記録チップ2との間のずれ量は、スキャン画像1403における、3つのマッチングパターン1404、1405、1406の位置関係から求める。
【0115】
スキャン画像1403を用いて、記録チップ間のずれ量を算出する方法をより具体的に解説する。スキャン画像1403において、破線1407で示される領域は、実際の画像の一部ではなく、記録チップ1および記録チップ2の間の相対的な位置関係に全くずれが生じていなかった場合の、パターン1406の理想位置を示す。パターンレイアウト604は、それぞれ隣り合う記録チップのパターンが、記録媒体の搬送方向306において一直線上に並ぶように設計されていることから、理想位置1407は、パターン1404とパターン1405とを結ぶ直線1410上に配置される。さらに、直線1410上の理想位置1407とパターン1405との間の距離は、理想距離であり、記録チップ1の768segのノズルから、記録チップ2の0segのノズルまでの物理的な距離に相当する。
【0116】
本実施形態では、スキャン画像1403上のパターン1406と理想位置1407との間のずれは、記録チップ2の記録チップ1に対する相対的な位置にずれが生じているから起きるとする。記録チップ1と記録チップ2との間のずれ量のうち、直線1410に対して垂直な成分をずれ量1408、直線1410に対して平行な成分をずれ量1409とする。
【0117】
まず、直線1410に対して垂直方向のずれ量1408の求め方について解説する。図13で示した時と同様、スキャン画像におけるずれ量1408は、以下に示す4つの距離から幾何学的に求めることができる。
【0118】
1つ目の距離は、パターン1404とパターン1406との間のCCDラインセンサのセンサ列方向Xの距離である。
【0119】
2つ目の距離は、パターン1404とパターン1406との間のCCDラインセンサのセンサ列方向と直交する方向Yの距離である。
【0120】
3つ目の距離は、パターン1405とパターン1406との間のCCDラインセンサのセンサ列方向Xの距離である。
【0121】
4つ目の距離は、パターン1405とパターン1406との間のCCDラインセンサのセンサ列方向と直行する方向Yの距離である。
【0122】
それぞれの距離の詳細と、求め方については、図13での解説と同様のため、図示はしない。
【0123】
次に、直線1410に対して平行方向のずれ量1409の求め方について解説する。距離1412は、直線1410と平行な線分の距離であり、直線1410上の理想位置1407とパターン1405との間の距離、すなわち理想距離に相当する。また、距離1413は、パターン1406とパターン1405との間の、直線1410に平行な線分の距離である。ずれ量1409は、理想距離1412と距離1413との差分から求められる。
【0124】
距離1413は、距離1408と同様、4つの距離から幾何学的に求めることができる。
【0125】
距離1412は、理想的には記録チップ1の768segのノズルから記録チップ2の0segのノズルまでの物理的な距離だが、このスキャン画像中では、レンズ収差の影響を受け変倍されている。
【0126】
そこで、記録チップ1の768segのノズルから記録チップ2の0segのノズルまでの物理的な距離と、ステップS104で求めた変倍率とを用いて、レンズ収差の影響を受けて変倍された場合の距離1412を求める。具体的には、記録チップ1の768segのノズルから記録チップ2の0segのノズルまでの物理的な距離から、CCDラインセンサのセンサ列方向Xの成分の距離と、センサ列方向と直交する方向Yの成分の距離とを算出する。このうちセンサ列方向Xの成分に対してステップS104で求めた変倍率をかけ、変倍したセンサ列方向の成分の距離および元々のままのセンサ列方向と直交する方向Yの成分の距離から、変倍の影響を受けた理想距離1412を算出する。
【0127】
以上に解説したずれ量1409の算出方法のように、理想距離との差分を求める際には、まず理想距離に対してステップS104で求めた変倍率を適応させ、変倍を受けた場合の理想距離からの差分を求めることで、さらに正確なずれ量を求めることができる。
【0128】
図15を参照しながら、本実施形態における図7のパターンレイアウト702に従って記録されたパターンについてのスキャン画像を用いた記録ヘッド間のずれ量の算出方法を解説する。図15は、各記録ヘッドの記録チップ4で記録したパターン同士を用いてずれ量を算出する方法を解説するための図である。
【0129】
図15中、1501は、複数の記録ヘッドにおける複数の記録チップの位置を模式的に示すための図であり、1502は、各記録ヘッドの記録チップ4のノズル列Hのノズルによって記録媒体上に実際に記録されたパターンすなわち記録物の模式図である。
【0130】
記録物1502中、パターン1503は、BKの記録ヘッドの記録チップ4のノズル列Hに配置されたノズルのうち、0〜79segのノズルを用いて記録したマッチングパターンである。パターン1504はBKの記録ヘッドの記録チップ4のノズル列Hに配置されたノズルのうち、768〜847segのノズルを用いて記録したマッチングパターンである。パターン1505はMの記録ヘッドの記録チップ4のノズル列Hに配置されたノズルのうち、0〜79segを用いて記録したマッチングパターンである。パターン1506は、Cの記録ヘッドの記録チップ4のノズル列Hに配置されたノズルのうち、0〜79segのノズルを用いて記録したマッチングパターンである。パターン1507は、Yの記録ヘッドの記録チップ4のノズル列Hに配置されたノズルのうち、0〜79segのノズルを用いて記録したマッチングパターンである。パターン1508は、GRの記録ヘッドの記録チップ4のノズル列Hに配置されたノズルのうち、0〜79segのノズルを用いて記録したマッチングパターンである。パターン1509は、LMの記録ヘッドの記録チップ4のノズル列Hに配置されたノズルのうち、0〜79segのノズルを用いて記録したマッチングパターンである。パターン1510は、LCの記録ヘッドの記録チップ4のノズル列Hに配置されたノズルのうち、192〜271segのノズルを用いて記録したマッチングパターンである。
【0131】
本実施形態では、記録ヘッド間のずれ量は、全てBKの記録ヘッドを基準にして算出する。BKの記録ヘッドとLCの記録ヘッドとの間のずれ量算出と同じ方法で、BKおよびMの記録ヘッド、BKおよびCの記録ヘッド、BKおよびYの記録ヘッド、BKおよびGRの記録ヘッド、BKおよびLMの記録ヘッド、の各記録ヘッド間のずれ量を算出する。
【0132】
スキャン画像1511は、記録物1502のスキャン画像のうち、BKの記録ヘッドとLCの記録ヘッドとの間のずれ量の算出に必要な部分を拡大し、模式図にしたものである。本実施形態では、BKの記録ヘッドとLCの記録ヘッドとの間のずれ量の算出のみを詳細に記述する。
【0133】
スキャン画像1511を用いて、記録ヘッド間のずれ量を算出する方法を具体的に解説する。スキャン画像1511において、パターン1503のスキャン画像1511内の位置を、同一符号1503を用いて表示している。同様に、パターン1504および1510のスキャン画像1511内の位置を、それぞれ、同一符号1504および1510を用いて示す。
【0134】
BKのヘッドの記録チップ4とLCの記録ヘッドの記録チップ4との間のずれ量は、スキャン画像1511における、3つのマッチングパターン1503、1504、1510の位置関係から求める。
【0135】
スキャン画像1511において、破線1513で示される領域は、実際の画像の一部ではなく、BKの記録ヘッドの記録チップ4とLCの記録ヘッドの記録チップ4との間の相対的な位置関係に全くずれが生じていなかった場合のパターン1510の理想位置を示す。パターンレイアウト702は、隣り合う記録ヘッドの対応する記録チップの同一のノズル列のノズルで打ったパターンが一直線上に並ぶように設計されていることから、理想位置1513は、パターン1503とパターン1504とを結ぶ直線1512上に配置される。さらに、直線1512上の理想位置1513とパターン1503との距離は、BKの記録ヘッドの記録チップ4の0segのノズルから、LCの記録ヘッドの記録チップ4の192segのノズルまでの物理的な距離である。
【0136】
このときのずれ量1514およびずれ量1515は、図14で説明した、記録チップ間のずれ量の求め方と同じ方法で求めることができる。ただし、図14での解説と異なるのは、変倍率の適用方法である。
【0137】
記録ヘッド間のずれ量算出用パターンレイアウト702は、ノズル列間および記録チップ間のずれ量算出用パターンレイアウト604と違い、パターン内に変倍率を求めるレイアウトを持っていない。
【0138】
本実施形態では、このような場合に、以下のように対応する。
【0139】
第1に、レンズ収差による変倍率の影響が小さいところにパターンレイアウトを配置する。CCDスキャナの場合、画像の中央付近でレンズ収差の影響が小さくなることが分かっているので、この位置にパターンを配置する。本実施形態で、記録ヘッド間のずれ量を算出するための記録チップを4としているのは、中央により近い位置にある記録チップで算出を行うためである。
【0140】
第2に、ステップS104で求めた記録チップ4に対する変倍率を、ステップS109でも使用するという方法がある。CCDスキャナの特性から、スキャン画像内でのセンサ列方向における位置が近ければ、レンズ収差の影響も近いものになる。
【0141】
以上、第1および第2の手段によって、変倍率を、求めるパターンがない場合でも求めることができ、その結果、より高精度にずれ量を求めることができる。
【0142】
以上に解説したように、まず、ノズル間の理想距離と、スキャン画像内の実際の距離とから、CCDスキャナのCCDラインセンサのライン列方向Xに対するレンズ収差の影響を変倍率として求める。次に、パターンレイアウトに従って記録されたパターンを用いてずれ量を算出する。このとき、スキャン画像内でのずれ量のライン列方向Xの成分に対して、前述のようにして求められた変倍率を用いて変倍を実施することで、CCDスキャナのレンズ収差の影響を受けないずれ量を算出することができる。
【0143】
なお、本実施形態では、パターン間の距離の算出を行う第1算出手段、変倍率の算出を行う第2算出手段およびずれ量の算出を行う第3算出手段は、インクジェット記録装置のCPU201に設けられているものとした。しかし、本発明においては、これらの算出手段は、ホスト装置211等、インクジェット記録装置の外部に設けられていてもよい。
【0144】
以上の実施形態の説明により、パターンレイアウトをスキャンユニット等の読取り手段で読み取ったスキャン画像に画像歪みが生じている場合であっても、パターンレイアウトのずれ量を精度よく検出する技術を提供することが出来る。よって、パターンレイアウトを読取り手段で読み取ったスキャン画像に画像歪みが生じている場合であっても、記録媒体上におけるインクの実際の着弾位置の理想位置からのずれ量を精度よく算出することが可能となる。その結果、精度良い記録位置調整制御が可能となる。
【0145】
(第2の実施形態)
以下、本発明を実施するための第2の実施形態について図面を用いて説明する。第2の実施形態において、記録制御装置、画像形成装置における制御に関わる構成、記録ヘッドユニットの位置とスキャナユニットの位置とテストパターンの記録位置との間における相対位置、およびテストパターン等の構成は、第1の実施形態と同じ構成とする。
【0146】
第1の実施形態では、パターンレイアウト全体に対して十分に広い幅を有する記録媒体にテストパターンの記録が行われる形態について解説した。第2の実施形態では、パターンレイアウト全体を記録するには足りない幅を有する記録媒体にテストパターンの記録が行われる場合の形態について解説する。
【0147】
本実施形態におけるずれ量算出のフローを、図16に示す。
【0148】
図16の各ステップについて解説する。ステップS201では、スキャナユニットは、記録媒体に記録されたずれ量算出のためのテストパターンを読み取る。スキャナユニットがテストパターンの読み取りを開始するタイミングは、テストパターン記録開始のタイミングから所定量の時間が経過したタイミングであっても、テストパターン記録終了のタイミングから所定量の記録媒体を搬送したタイミングであってもよい。読取りを終了するタイミングは、読取り開始から所定のライン数の読取りを行ったタイミングとする。
【0149】
ステップS202では、スキャナ制御部は、ステップS201で読み取ったテストパターンの読取り画像から、各記録チップに対応したパターンを検出する。各記録チップに対応したパターンを検出する処理については、詳細を後述する。
【0150】
ステップS203では、スキャナ制御部は、解析を行っていない記録チップに対応したパターンを選択し、ステップS204に進む。以降、このステップで選択された記録チップに対応したパターンを記録した記録チップを、解析対象の記録チップと記述する。もし、スキャン画像内の全ての記録チップに対応したパターンのレイアウトを解析した後であれば、ステップS203から直接ステップS211に進む。
【0151】
ステップS204では、図6のパターンレイアウト604に従うパターンが、スキャン画像内に全て揃っているか否かを確認する。この判定についての詳細は、図17の説明で詳細に述べる。全て揃っている場合は、ステップS205に進む。全て揃っていない場合は、ステップS207に進む。
【0152】
ステップS205では、レンズ収差の影響を算出するための、解析領域を変更する処理を実施する。解析領域を変更する方法についての詳細は、図17の説明で詳細に述べる。
【0153】
ステップS206では、ノズル列間のずれ量を算出するための、解析領域を変更する処理を実施する。解析領域を変更する方法についての詳細は、図17の説明で詳細に述べる。
【0154】
ステップS207では、レンズ収差の影響を算出する。図9に示すように縮小光学系を用いて像形成を行うセンサを用いて得たスキャン画像は、レンズによる収差の影響を受ける。そのため、本実施形態では、まず解析対象に対するレンズ収差の影響を算出する。レンズ収差の影響を算出する方法については、第1の実施形態で詳細に述べた方法で実施可能であるので、詳細は省略する。
【0155】
ステップS208では、解析対象の記録チップに対応した、図6のパターンレイアウト604に従って記録されたパターンのスキャン画像を用いて、対象記録チップ内のノズル列間のずれ量を算出する。本実施形態でのノズル列間のずれ量を算出する方法については、第1の実施形態で詳細に述べた方法で実施可能であるので、詳細は省略する。
【0156】
ステップS209では、解析対象の記録チップに対応した、図6のパターンレイアウト604に従って記録されたパターンのスキャン画像を用いて、対象記録チップのスキャナユニット107のCCDラインセンサ902のセンサ列方向Xに対する傾きを算出する。本実施形態での記録チップの傾きを算出する方法については、第1の実施形態で詳細に述べた方法で実施可能であるので、詳細は省略する。
【0157】
ステップS210では、解析対象の記録チップに対応した、図6のパターンレイアウト604に従って記録されたパターンのスキャン画像を用いて、対象記録チップと、それに隣接する記録チップとの間のずれ量を算出する。本実施形態での詳細については、第1の実施形態で詳細に述べた方法で実施可能であるので、詳細は省略する。
【0158】
ステップS210の次は、ステップS203に戻り、解析を行っていない記録チップに対応したパターンを探す。ステップS204〜S210が実施されていない未解析の記録チップに対応したパターンが見つかれば、再びステップS204〜S210を行う。未解析の記録チップに対応したパターンが見つからなければ、解析対象の記録チップが無くなったものとして、ステップS211へ進む。
【0159】
ステップS211では、解析対象の記録チップに対応した、図7のパターンレイアウト702に従って記録されたパターンのスキャン画像を用いて、記録ヘッド間のずれ量を算出する。本実施形態での記録ヘッド間のずれ量を算出する方法については、第1の実施形態で詳細に述べた方法で実施可能であるので、詳細は省略する。
【0160】
図17は、パターンレイアウト604および702に従ったパターンを記録媒体に記録した記録物の模式図である。図17中、1701は本実施形態で採用するパターンレイアウトに従ったパターンを記録するには幅が少しだけ足りない記録媒体に該パターンを記録した様子を模式的に示している。また、スキャン画像1702は、1701を読み取って得られたスキャン画像の一部の模式図である。1703は、本実施形態で採用するパターンレイアウトに従ったパターンが記録媒体上に全て形成されず途中で切れてしまった状態を示すパターンレイアウトである。主に記録媒体の両端に記録されるパターンのレイアウトが、このような形になる。パターンレイアウト1704は、パターンレイアウト1703の比較対象として挙げた完全なパターンレイアウトである。さらに、パターンレイアウト1704において、1705は、1つの記録チップのノズル列Hの0〜79segのノズルで記録されたパターンであり、1706は、同一の記録チップのノズル列Hの768〜847segのノズルで記録されたパターンである。
【0161】
本実施形態では、ノズルH列に対するノズル列A〜Gのずれ量を求め、記録媒体上におけるインクの着弾位置の補正を行う。第1の実施形態で示した方法では、パターンレイアウト1704内のパターン1705およびパターン1706が作る直線から、スキャナユニット107のレンズ収差による変倍率と、ノズルH列とノズル列A〜Gとの間の各ずれ量を算出した。1703のような、全てのパターンが揃っていないパターンレイアウトの場合は、1704内の1705にあたる、左端のノズル列Hによるパターンが記録されていないため、この手法により変倍率およびずれ量を求めることができない。
【0162】
そこで、第2の実施形態では、以下のような方法で、1703のようなパターンが全て揃っていないパターンレイアウトからノズル列間のずれ量を算出する。
【0163】
まず、ずれ量算出に用いるスキャン画像上のパターンのレイアウトが、1703に示すような記録に採用するパターンレイアウトに従うパターンの一部が欠けた状態で記録されたパターンレイアウトであるかどうかを判定する方法を、解説する。
【0164】
図16のフローのステップS202においてスキャン画像から各記録チップに対応したパターンを検出する方法について詳細を述べる。第1の実施形態において、図11を参照して、検知マーク417とアライメントマーク418を用いてパターンを検出する方法を述べた。第1の実施形態では、検知マーク417が横に3つ揃ったものを、1つの記録チップに対応したパターンとみなすと説明した。これに対し、第2の実施形態では、検知マーク417が1つしかないものも、1つの記録チップに対応したパターンとみなす。ただし、これは、スキャン画像内の検知マーク417の位置が、スキャン画像中の右端または左端に寄っていたときのみとする。
【0165】
さらに、隣り合った検知マーク417が2つ検出された場合について解説する。隣り合った検知マーク417が2つ検出された位置がスキャン画像の右端であれば、検出された検知マークのうち左側の1つのみを、記録チップに対応したパターンであると判断する。同様に、隣り合った検知マークが2つ検出された位置がスキャン画像の左端であれば、検出された検知マークのうち右側の1つのみを、記録チップに対応したパターンであると判断する。
【0166】
すなわち、検知マーク417が3つ揃って検出されずに、1つまたは隣り合って2つ検出された場合は、検出された検知マークは1つであると判断される。
【0167】
ステップS202において、各記録チップに対応したパターンを検出した際、検知マークは3つであったか、1つであると判断されたかを記録しておく。例えば、BKの記録ヘッドの記録チップ1に対する検知マークは1つであると判断され、BKの記録ヘッドの記録チップ2に対する検知マークは3つであった場合は、その旨を記録しておく。
【0168】
次に、ステップS204において、ステップS202における検知マークの検出状態、すなわち検知マークの数の判断に従い、検知マークが1つであれば、パターンが全て揃っていないパターンレイアウトであると判定し、ステップS205に進む。
【0169】
ステップS205では、レンズ収差による変倍率を求めるために使用する領域を、パターンが全て揃っていないパターンレイアウト用に変更する。
【0170】
第1の実施形態で解説したレンズ収差による変倍率を求めるために使用する領域を、パターンレイアウト1704内の領域1707に示す。パターンレイアウト1703には、領域1707におけるノズル列Hのノズルによる両端のパターン1705および1706が揃っていないので、使用する領域を領域1708に変更する。領域1708内の、ノズル列Hのノズルで形成された両端のパターンから、レンズ収差による変倍率を求めることとする。また、このとき、必要であれば、パターンレイアウト1703の隣のパターンレイアウト1704内の領域1709内の、ノズル列Hのノズルで形成された両端のパターンからも変倍率を求める。領域1709から求めた変倍率と、領域1708から求めた変倍率との平均値を、パターンレイアウト1703からずれ量を求める際の変倍率として用いてもよい。
【0171】
ステップS206では、ノズル列間のずれ量を求める領域を変更する。本実施形態では、パターンレイアウトの一部しか読取りができなかった場合、読取り可能な部分から読取り可能なずれ量のみを求めることとする。本実施形態におけるパターンレイアウトは、検知マークの一部からノズル列Hとノズル列Aとの間のみ、ずれ量が算出可能なレイアウトになっている。具体的には、パターンレイアウト1703中、1708の領域を用いれば、ノズル列HとAとの間のずれ量を算出できる。従って、ステップS206では、このパターンレイアウトにおけるノズル列間の解析対象領域を1708として設定する。
【0172】
ステップS207において、前述のように設定された領域のパターンを用いて、レンズ収差による変倍率を求める。この詳細な方法は第1の実施形態で述べているので、ここでは省略する。
【0173】
最後に、ステップS208において、ノズル列間のずれ量を、解析対象領域1708の部分から算出する。具体的な算出方法については、第1の実施形態に記述したので、ここでは省略する。
【0174】
さらに、ステップS208において、ノズル列HとAとの間のずれ量の傾向と似通ったずれ量の傾向を有するノズル列間があることが分かっていれば、算出されたノズル列HとAとの間のずれ量を、他のノズル列間にも適用させるとする。例えば、測定の結果、ノズル列HとAとの間のずれ量と、ノズル列HとCとの間のずれ量との値が似通ったものになる傾向にあることが特定できた場合、上述のようにして算出したノズル列HとAとの間のずれ量を、ノズル列HとCとの間にも適用する。傾向を特定する方法には、複数の記録ヘッドについて繰り返しデータを取得し、ずれ量をノズル列毎に比較するなどの方法がある。また、本実施形態で解説している記録ヘッドは、記録チップ上にノズルを形成する時にノズル列A、C、E、Gが同じ向きになり、同様に、ノズル列B、D、Fが同じ向きになる。この結果、ノズル列A、C、E、Gのずれ量が似た傾向になり、同様に、ノズル列B、D、Fのずれ量が似た傾向になる。このように、ノズル形成時の形成方法から、傾向を特定することもできる。傾向が特定できなかったノズル列間のずれ量については、固定値を用いることとする。
【0175】
以上に解説した方法を用いて、図17の1703に示したような、途中で切れてしまったパターンレイアウトから、ずれ量を取得することができる。ただし、この方法を実施するためには、図17における1708の部分が、記録媒体上に必ず記録されている必要がある。本実施形態では、1708の部分を記録媒体上に記録するために、記録ヘッドを、例えば図3に示すヘッド移動301、302によって、記録媒体の搬送方向306に対して交差する方向(理想的には垂直方向)に移動させてから、パターンレイアウトを記録している。
【0176】
本実施形態では、1701のような、パターンが全て揃っていないパターンレイアウトから、レンズ収差による変倍率およびノズル列間のずれ量を算出する方法を例に挙げた。しかし、解析可能なパターンのみを用いて、解析可能な各ずれ量を算出する方法としては、この限りではない。
【0177】
上記のように、本発明のインクジェット記録装置によれば、パターンの読取り時に読取り機器を要因とする画像の歪みが生じた場合であっても、ずれ量をより正確に算出することができ、これにより、高精度の記録位置調整が可能となる。 本発明は、パターンマッチングを用いて、ノズル列間、記録チップ間、および記録ヘッド間のずれ量を算出するものである。上記実施形態では、フルライン型のインクジェット記録装置について説明したが、本発明の記録ヘッドは、フルライン型に限定されず、シリアル形であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するためのノズルが配列された複数のノズル列を備える記録ヘッドに対してノズル配列方向と交差する方向に相対移動する記録媒体に対して、前記記録ヘッドからインクを吐出することによって記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドの複数のノズル列のノズルからインクを吐出させて、それぞれのノズル列における異なるノズル群に対応した複数のマッチングパターンを含むテストパターンを記録媒体に対して記録する記録手段と、
レンズと、該レンズを介して光学的に画像を読み取る読み取りセンサとを備えた、前記テストパターンを画像として読み取る読取り手段と、
前記読取り手段により読み取った画像における複数のマッチングパターンに対してパターンマッチングを行うことにより、当該複数のマッチングパターン間の距離を求める第1算出手段と、
前記距離に基づいて、前記読取り手段が読み取る画像における前記複数のマッチングパターン間の距離を補正するための補正係数を算出する第2算出手段と、
前記読み取った画像および前記補正係数に基づいて、前記記録ヘッドから吐出されるインクの着弾位置のずれ量を算出する第3算出手段と、
前記ずれ量に基づき、前記記録ヘッドから吐出されるインクの着弾位置を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、前記複数のノズル列が配列された1つまたは複数の記録チップを備え、
前記インクジェット記録装置は、1つまたは複数の前記記録ヘッドを備え、
前記第3算出手段は、
各記録チップにおけるノズル列間の相対的な位置のずれ、
各記録ヘッドにおける記録チップ間の相対的な位置のずれ、および
記録ヘッド間の相対的な位置のずれ、
の少なくともいずれかを前記ずれ量として算出する
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記テストパターンが、前記複数のマッチングパターンのそれぞれの位置の特定に用いる位置検出用パターンと、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第2算出手段は、前記補正係数を、前記複数のマッチングパターン間の、理想距離と前記画像に基づき検出した検出距離との差分から決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記理想距離は、前記複数のノズルのうち前記複数のマッチングパターンの記録に用いられたノズルの位置に基づいて決定されることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記理想距離は、前記画像における前記位置検出用パターンの検出状態と、前記複数のノズルのうち前記複数のマッチングパターンの記録に用いられたノズルの位置と、に基づいて決定されることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記第3算出手段は、前記複数のマッチングパターン間の前記検出距離と、前記補正係数とに基づき、前記ずれ量を算出することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
記録媒体上にずれ量算出を行うための所定のレイアウトの前記テストパターンを記録するために、前記記録ヘッドを記録媒体が相対移動する方向と垂直な方向に移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
インクを吐出するためのノズルが配列された複数のノズル列を備える記録ヘッドに対してノズル配列方向と交差する方向に相対移動する記録媒体に対して、前記記録ヘッドからインクを吐出することによって記録を行うインクジェット記録装置の調整方法であって、
前記記録ヘッドの複数のノズル列のノズルからインクを吐出させて、それぞれのノズル列における異なるノズル群に対応した複数のマッチングパターンを含むテストパターンを記録媒体に対して記録する記録工程と、
前記テストパターンを画像として読み取る読取り工程と、
前記読取り手段により読み取った画像における複数のマッチングパターンに対してパターンマッチングを行うことにより、当該複数のマッチングパターン間の距離を求める第1算出工程と、
前記距離に基づいて、前記読取り手段が読み取る画像における前記複数のマッチングパターン間の距離を補正するための補正係数を算出する第2算出工程と、
前記読み取った画像および前記補正係数に基づいて、前記記録ヘッドから吐出されるインクの着弾位置のずれ量を算出する第3算出工程と、
前記ずれ量に基づき、前記記録ヘッドから吐出されるインクの着弾位置を調整する調整工程と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−166385(P2012−166385A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27524(P2011−27524)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】