説明

インクジェット記録装置

【課題】インクの吐出量を制御する間引き処理を行うインクジェット記録装置において、間引きパターンと画像データとの関係によって生じる画像品位の低下を防止する。
【解決手段】所定ビット数の間引きパターンと、1ラインの記録データの同ビット数の記録データ部分とを比較器403で比較し、不一致であれば当該記録データ部分と間引きパターンとをAND回路404で論理積処理することにより記録ビットの間引き処理を行う。比較結果が「一致」の場合、間引きパターンをシフトさせる。その後、当該記録データ部分とシフト後の間引きパターンとをAND回路404で論理積処理することにより記録ビットの間引き処理を行う。間引き処理後の記録データを記録ヘッド307へ送り、この記録データに基づいて記録ヘッドを駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は カラー記録や高速記録に好適なインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、高速、低騒音、カラー化の容易さ、低ランニングコストなどの利点を有しているため、各種用途の印刷手段として急速に普及してきている。特にラインヘッドを用いたインクジェット記録装置は、その高速性によって産業用印刷機としての利用が拡大している。産業用印刷としては、例えば、フォーム印刷や、段ボール等の印刷がある。
【0003】
インクジェット記録装置では、高濃度すなわち高いデューティ(Duty)で記録を行う場合に、記録直後における高濃度部分のインクの定着速度は、使用しているインクとメディア(用紙等の記録媒体、以下、用紙または記録媒体という)の特性等に依存し、定着時間が変化する。特に、高速記録をおこなう場合においては、記録媒体の搬送速度にインクの定着が間に合わず、搬送ローラからの転写等により、画像部への不要インクの付着や、次ページへのインクの写りこみ等が起き、画質の低下を招いてしまう場合がある。
【0004】
特に、ラインヘッドを用いて高速記録を行う場合においてはこのような現象が顕著となるため、インクの特性を変更したり、記録媒体を特殊なものに限定する等の対応を考慮する必要がある。
【0005】
また、その他、定着器を用いて、記録媒体を搬送する間に、ヒータで記録媒体を加熱してインクを乾かす等の処置を行う場合もある。
【0006】
特許文献1には、複数枚の用紙にマルチカラー記録を連続、かつ比較的高速に行おうとする際に、記録直後の排紙ローラの逆転写や用紙の汚れを防ぐために、用紙上に吹き付けられたインクを直接にまたは間接的に強制乾燥させるインクジェットプリンタが提案されている。この方法では、記録が疎の部分であるか密の部分であるかにかかわらず均等に強制乾燥するため、変色や用紙の変形が発生しやすくなり、また、プリンタ自体が大型化して、取り扱いの点で多少難がある。
【0007】
また、特許文献2には、記録パターンを監視し、べたパターン、即ち塗りつぶし領域を検出した場合に、輪郭部以外の内側領域を間引き記録する技術も提案されている。この方法は、プリンタの消費電力とインクの乾燥のいずれの点でも好ましいが、塗りつぶし領域の大小にかかわらず間引きされることから記録結果が元の画像と比較して極端に変化し、間引きされた領域に規則性をもった画像が現れるおそれがある。また、べた領域以外には、間引きが適用されないため、べたではないが記録密度が比較的に高い領域では、場合によってはインクの乾燥が不十分となる場合が考えられる。
【0008】
その他、インクの特性を変更したり、記録媒体を特殊なものに限定する等の対応も考えられるが、インクや記録媒体に対する利用者の要求は多岐にわたるため、インクや記録媒体を限定することは困難である。また、上述したような定着器を用いる場合には、装置が大型になり、大幅なコストアップとなってしまう。
【0009】
一方、高速記録時におけるインクの定着速度を上げる方法として、記録したい画像に対してインクの吐出量(記録Duty)を制御して、紙面上の同じ面積に吐出されるインクの量を減少させることにより、定着性を向上させることが考えられる。この記録Dutyの制御としては、記録データと間引きパターンデータとを組み合わせて行う方法が考えられる。
【0010】
間引きパターンを選定する際に重視すべき点としては、拡散性とランダム性とがある。ここで、拡散性とは、例えば、ラインヘッドを用いた記録において、ライン上のどの位置においても偏り無く間引きが行われることであり、この拡散性が確保されることで、記録画像全体の記録Duty値の均一性が保証される。
【0011】
ランダム性とは、例えば、ラインヘッドを用いた記録において、記録媒体の搬送方向における各ライン間で相関無く間引きが行われることである。このランダム性が損なわれると、各ライン間において搬送方向の同じ位置で間引きが行われることになり、間引きかれた部分が線状の抜け部分(白線等で表される)として現れる。ランダム性が確保されることで、小さいフォントの文字や数ドットの細い直線の画質低下防止が保証される。
【0012】
インクジェット記録装置における間引き処理において、上記のような間引きを行う一手法として、インクジェット記録装置において汎用性を有するソフトウェアを用いることが考えられる。しかしながら、データ転送速度を重視する高速ラインプリンタにおいては、ソフトウェアによる処理間引きを行うプログラムの実行に時間がかかり、高速記録を阻害する場合がある。
【0013】
また、間引き処理はインクジェット記録装置側で行う他に、ホスト(PC)側で行う場合も考えられる。この場合、間引きした画像と間引きしていない画像をそれぞれ圧縮後のデータ量を比較すると、間引き画像を圧縮した場合には、間引きによって画像圧縮の割合が小さくなるため、間引き画像の方が画像データの容量は大きくなる。そのため、ホスト(PC)側からインクジェット記録装置側への転送画像データの容量が増えることになり、データ転送速度に影響を与える可能性があり、ラインヘッドを用いたプリンタの特色である高速記録が実現しにくくなるという問題がある。
【0014】
さらに、間引き処理において間引きパターンが規則的である場合には、規則的な記録画像部分や細い直線部分で間引きパターンが目立ってしまう場合がある。また、2ドットや3ドット等の少数ビットで形成される細い直線は、細線を構成するビット数に近い記録Duty値によるDUTY制御で間引きを行うと、記録画像の一部が消えてしまい、直線性が損なわれる可能性がある。
【0015】
また、ラインヘッドを用いたプリンタでは、記録媒体の搬送方向に対して横向きに(すなわち直交する方向に)設置されたヘッドにより1ラインごとに記録を行っている。そのため、搬送方向と直交する方向(横方向)の間引きパターンを分散させることは容易であるが、搬送方向(すなわち縦方向)に間引きパターンを分散させることは難しく、搬送方向に隣接したライン間で同じ間引きパターンが続いてしまう場合がある。その結果、フォントの小さい文字が欠けてしまうこともある。
【0016】
この問題を解決するための方法として、記録データの1ページ毎に、ランダムデータ生成処理によってランダムな間引きデータを合成し、記録を行う方法も考えられる。しかしながら、1ページ分のランダムな間引きデータを生成するには長時間を要する他、生成した間引きデータを一時保持するために大容量のメモリが必要となる。
【0017】
そこで、特許文献3には、記録データに基づいて、複数の記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、間引きパターンをシフト処理により所定ビットずらすことで、記録媒体の搬送方向に隣接したライン間で同じ間引きパターンが続くといった現象を解消し、搬送方向の間引きパターンの分散を行う。このシフト処理は、例えば、1ライン分の間引きパターンを所定ビット数だけずらすだけの処理であるため、高速処理が可能であり、また、必要とするメモリ容量も極めて少なくて済む。
【特許文献1】特開平10−138525号公報
【特許文献2】特開平6−143689号公報
【特許文献3】特開2007−021950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献3に記載の技術においても、間引きパターンと一致する記録データの場合、間引きパターン長単位で記録データが間引きかれてしまう。このため、良好な画像を得ることが出来ないといった問題があった。例えば、Dutyが50%の間引きパターンと一致する画像データがあった場合は、間引きパターン長にわたってすべてのONドットが間引きかれて、間引きパターンの長さで画像が抜け落ちてしまう。
【0019】
間引きパターンと一致する記録画像は、白黒ドットが交互に現れるような画像データであり、例えば写真などの中間色を表す際によく出現する。そのため、このような写真画像などを描画する際に、画像の所々に間引きパターン長単位で画像抜けが発生してしまう。その結果、記録画質が劣化するという問題があった。
【0020】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、インクの吐出量を制御する間引き処理を行うインクジェット記録装置において、間引きパターンと画像データとの関係によって生じる画像品位の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によるインクジェット記録装置は、記録データに基づいて、記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、記録データの各ビットについて記録するか否かを定める複数ビットの間引きパターンを生成する間引きパターン生成手段と、前記間引きパターンを所定ビットずらすシフト処理手段と、前記記録データの複数ビット分のデータ部分毎に前記間引きパターンと比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果が一致していない場合には、前記間引きパターンより記録データの記録ビットを間引いた記録データを生成する間引き処理を行い、前記比較手段の比較結果が一致している場合には、前記シフト処理により所定ビットずらした間引きパターンにより前記記録データの記録ビットを間引いた記録データを生成する間引き処理を行う間引き手段とを備え、前記記録データに基づいて記録ヘッドを駆動する。
【0022】
この構成では、間引きパターンと比較される記録データとが「一致」して、当該記録データの記録ビットがすべて間引きかされてしまうような事態を検出して、そのような場合、「一致」が生じないように間引きデータのシフト処理が行われる。これにより、当該記録データの記録ビットがすべて欠落して記録画質が劣化することが防止される。
【0023】
前記間引きパターンのシフトは、前記間引きパターンと前記記録データの比較結果が不一致となるまで繰り返すことがこのましい。
【0024】
本発明による他のインクジェット記録装置は、記録データに基づいて、記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、記録データの各ビットについて記録するか否かを定める複数ビットの間引きパターンを生成する間引きパターン生成手段と、前記間引きパターンを所定ビットずらすシフト処理手段と、前記記録データの複数ビット分のデータ部分毎に前記間引きパターンと比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果が一致していない場合には、前記間引きパターンより記録データの記録ビットを間引いた記録データを生成する間引き処理を行い、前記比較手段の比較結果が一致している場合には、当該データ部分について前記記録データの間引き処理を抑止する間引き手段とを備え、前記記録データに基づいて記録ヘッドを駆動することを特徴とする。
【0025】
この構成では、間引きパターンと比較される記録データとが「一致」した場合には間引きパターンのシフト処理を行うのではなく、当該記録データに対する間引き処理自体を行わないようにするものである。
【0026】
前記比較手段の比較結果の「一致」は、前記間引きパターンのビット数と同じビット数の記録データの全記録ビットが前記間引きパターンの間引きビットと一致すること、または、前記間引きパターンのビット数と同じビット数の記録データの全記録ビットのうち所定の割合のビットが間引きビットと一致することである。
【0027】
画像データに基づいて記録される各ライン毎に画像データ内の連続記録ビット数を計数する計数手段を備えてもよく、この場合、前記間引き手段は、連続記録ビット数が予め定められた閾値以上である場合に、当該ラインについて前記間引きパターンに基づく間引き処理を行う。これにより、1ライン単位に間引き処理の要否が決定される。
【0028】
前記間引きパターンは記録データの1ラインの全ビット数より少ない複数ビット数のデータからなり、前記間引きパターンは1ラインの記録データの各部に対して繰り返して適用することができる。
【0029】
前記間引きパターンは、画像データに基づいて記録されるあるラインに適用された間引きパターンと次のラインに適用される間引きパターンとが一致しないように、1ライン毎に間引きパターンのシフトを行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、インクの吐出量を制御する間引き処理を行うインクジェット記録装置において、間引き処理により間引きパターン全体に亘って画像が抜け落ちるような自体を回避することができ、結果として、画像品位の低下を防止することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、本発明のインクジェット記録装置の主要部の概略構成を示している。このインクジェット記録装置は、互いに並行に配置された複数のライン型の記録ヘッド(ラインヘッド)100(101〜104)を備えている。各ラインヘッド100は、記録幅全域にわたって配列された複数の記録要素を備える。ラインヘッド100に対して、その長手方向に直交する方向に用紙106(記録媒体)を搬送しながら、熱エネルギーを利用したインク吐出方式を用いて、各ラインヘッドの各記録要素を駆動することにより、対応するノズルからインクを吐出して記録を行う。
【0033】
複数のヘッド101〜104によってカラー記録を行う場合には、これらをブラックヘッド(K)、シアンヘッド(C)、マゼンタヘッド(M)、イエローヘッド(Y)とし、これら複数のラインヘッドを順番に搬送方向に並べて構成する。
【0034】
ラインヘッド100の各ヘッドの位置は固定であり、搬送ローラ105が用紙106を搬送することで、各ヘッド101〜104と用紙106との相互の位置関係を変更する。各ヘッド101〜104は、各位置においてそれぞれインクを吐出して記録を行う。ヘッドを固定して用紙を一定方向に搬送するラインヘッドを用いたインクジェット記録装置は、ヘッドを用紙搬送方向と直角の方向に往復させるシリアルプリンタと比べて高速記録が可能である。
【0035】
なお、複数のヘッド101〜104のすべてを例えばブラックヘッド(K)のように同一色のヘッドとしてもよい。このように同一色のヘッドを搬送方向に並べることで、同一色(例えばモノクロ)について複数のラインを同時に記録して高速記録を行うことができる。
【0036】
図2は、図1のインクジェット記録装置を用いた記録方法を説明するための図である。
【0037】
画像202は、外部装置である情報処理装置(例えばPC)200のモニタ201上において、R(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の各色の画素で表される。この画像202をインクジェット記録装置で記録する場合には、画像202をソフトウェア(ドライバ)によって色処理し、K(ブラック),C(シアン), M(マゼンタ)およびY(イエロー)の4色の画像データ202K,C,M,Yに変換し、記録装置300(図3)に送ることで記録を行う。
【0038】
例えば、モニタ201上で緑色の部分は、C(シアン)ヘッドとY(イエロー)ヘッドを用いて、モニタ上で表示される色を再現するDuty値によって個々のヘッドからインクを吐出することで、用紙上で緑色を再現する。
【0039】
図3は、記録データの転送経路を説明するための図である。情報処理装置は、記録データをドライバ311によって圧縮データとし、USB等のインタフェース312を介して記録装置300に送る。
【0040】
記録装置300において、その圧縮データはUSBコントローラ303を経由し、CPU304により、SDRAM等の受信メモリ305に格納される。その後、その圧縮データは、ASIC等で構成された制御回路302内部で解凍される。この解凍して得られた画像データは記録データとしてSDRAM等の記録メモリ306に書き込まれる。その後、制御回路302は、記録メモリ306から記録データを読み出し、記録ヘッド307に転送する。
【0041】
記録ヘッド307は記録データを格納するレジスタを備える。記録ヘッド307は、1ライン分の記録データを受信してインク吐出の準備が完了する。その後、用紙の搬送状態によって好適なタイミングで吐出される。なお、記録装置300のCPUや各回路素子は制御基板301に搭載される。ラインヘッドを用いたプリンタは、1ライン分の記録データを単位として記録ヘッドへのデータ転送を行う。
【0042】
次に、本発明のインクジェット記録装置の間引き処理について、図4,図5を用いて説明する。
【0043】
本発明のインクジェット記録装置は、記録データを記録処理する際に、DUTY制御処理S10によって、必要に応じて間引き処理を行い、さらに、間引き処理を行う際には、間引きによる画像劣化を措置を講ずる。
【0044】
図4は、本実施の形態におけるインクジェット記録装置の間引き処理を説明するための図である。
【0045】
記録装置が受信した記録データに対しては、まず、DUTY制御処理S10が行われる。このDUTY制御処理S10では、記録データのDuty値が高く記録が密であるか、あるいは、記録データのDuty値が低く記録が疎であるかを判定する間引き閾値処理S11を行う。この間引き閾値処理S11において、記録データのDuty値が高く記録が密である場合には、記録データの間引きが必要と判断し、ステップS12〜S14を経由して、間引き処理S15へ移行する。記録データのDuty値が低く記録が疎である場合には、記録データの間引きは不要と判断し、元の記録データのまま記録処理S16へ移行する。
【0046】
DUTY制御処理S10は、この間引き処理S15の前処理として、間引きパターン生成処理S12と、シフト処理S13と、比較処理S14を行う。
【0047】
間引きパターン生成処理S12では、間引き処理S15に用いる間引きパターンが生成される。この間引きパターンは、記録する画像の特性や、記録が行われる用紙の種類等の記録媒体の特性などの各条件に基づいて定めることができる。
【0048】
シフト処理S13は、間引きパターン生成処理S12で生成した間引きパターンについて、ヘッドにおいて記録要素(ノズル)が配列される方向に間引きパターンをずらす処理であり、この処理によって、間引きパターンのパターン特性に基づく記録画質の劣化を防ぐ。また、用紙の搬送方向で同一の間引きパターンがライン毎に繰り返されることを防ぐために、1ラインの記録処理S16を行った後にシフト処理S13を繰り返す。
【0049】
比較処理S14では、間引きパターンと記録データを比較する。両者の内容が一致していたならば再度シフト処理S13に戻り、間引きパターンをシフトする。間引きパターンと記録データとが一致していた場合、該当箇所の画像すべてが抜け落ちてしまうので、画質低下を起こしてしまう。これを防ぐ為に間引きパターンを所定ビット(例えば1ビットまたは数ビット)シフトする。
【0050】
図5は、図4に示したDUTY制御処理S10をより詳細に説明するための図である。DUTY制御処理S10は、図4で示したように、間引き閾値処理S11と、間引きパターン生成処理S12と、シフト処理S13と、比較処理S14を含んでいる。
【0051】
はじめに、間引き閾値処理S11について説明する。DUTY制御処理S10において、間引き閾値処理S11は、記録データに基づいてその記録データの1ライン毎に間引き処理を行うか否かを判定する処理であり、ライン上に配列した記録データにおいて、記録ビットの連続性に基づいて判定を行う。間引き閾値処理S11による判定は、入力された記録データについて、1ライン毎の記録データにおいて記録を行う連続記録ビット数をカウント(計数)し、この連続記録ビット数を予め設定しておいた間引き閾値と比較することで行う。連続記録ビット数が間引き閾値以上である場合には記録ビットが密であるとして、間引き処理を行うと判定する。間引き閾値処理S11はこの判定に基づいて、間引き処理S15に記録データを送り、間引きパターンを適用させて間引き記録を行う。
【0052】
これに対して、連続記録ビット数が間引き閾値より小さい場合には記録ビットが疎であるとして、間引き処理を行わないと判定する。間引き閾値処理S11はこの判定に基づいて、記録データを直接記録処理S16に送って記録を行う。
【0053】
間引き閾値処理S11に用いる間引き閾値は間引き閾値設定レジスタ11aに格納しておくことができる。間引き閾値処理S11は間引き閾値設定レジスタ11aから必要な間引き閾値を読み出して比較処理を行う。比較に用いる間引き閾値は、任意に設定することができる。例えば、記録内容が文字データであるか、あるいは画像データであるか、記録を行う用紙の吸湿性等の特性等に応じて、間引き閾値設定レジスタ11aから好適な間引き閾値を選択して設定する。
【0054】
次に、間引きパターン生成処理S12について説明する。DUTY制御処理S10において、間引きパターン生成処理S12は、記録データの各ビットについて記録するか否かを定める複数ビットのパターンを生成する。ラインプリンタでは、1ライン分について生成する。このとき、間引きパターン生成処理S12は、単位間引きパターンをライン方向に複数配列することにより1ライン分の間引きパターンを生成する。単位間引きパターンは、複数のビットから成る繰り返しの最小単位であり、そのビット数は1ライン分よりも少なく設定される。例えば、20ビット程度とすることができる。
【0055】
単位間引きパターンの各ビットは、このパターンが適用される記録データの各ビットを記録するか否かを定めるものであり、記録すると定めたビットに対応する記録データは記録を許容し、記録しないと定めたビットに対応する記録データは記録を抑止する。
【0056】
間引きパターン生成処理S12は、この単位間引きパターンをライン方向に複数配列する。この配列によって、単位間引きパターンがライン方向に複数回繰り返された1ライン間引きパターンが生成される。
【0057】
間引きパターン生成処理S12に用いる単位間引きパターンは単位間引きパターン設定レジスタ12aに格納しておくことができる。
【0058】
間引きパターン処理S12は単位間引きパターン設定レジスタ12aから単位間引きパターンを読み出し、この単位間引きパターンをライン方向に並べることで1ライン分の間引きパターンを生成する。単位間引きパターン設定レジスタ12aは、記録データのDuty値に基づいて、複数の単位間引きパターンの中から所定の単位間引きパターンを読み出す。記録データのDuty値は、用紙やインク等による乾燥性、色の再現性等に応じて定めることができ、用紙やインクに応じて予め定めることができるほか、利用者が任意に設定してもよい。
【0059】
初期シフト処理S13Aは、複数ある記録ヘッドにおいて、各記録ヘッド毎に複数ビット分の間引きパターンをライン方向に所定ビットシフトさせる演算部を備える。このシフトは、単位間引きパターンの先頭ビットのライン上における開始位置をずらすための処理である。これによって、複数の記録ヘッド間において、各単位間引きパターンの先頭位置がずれることになり搬送方向で同じパターンが並ぶといったことによる記録画質の劣化を避けることができる。
【0060】
なお、単位間引きパターンの、複数のヘッド間での相対的なシフト量は、単位間引きパターンの長さの整数倍とならないように設定する。これは、単位間引きパターンの繰り返しで生成する性質から明らかなように、単位間引きパターンの長さの整数倍だけずらした場合には、相変わらず搬送方向で同パターンの繰り返しが生じるためである。シフトする方向は、ライン方向の右方向または左方向とすることができる。
【0061】
ここで、初期シフト量は、初期シフトレジスタ13aに格納しておくことができる。初期シフト量は、複数の記録ヘッドに対して一つの共通の値を初期シフトレジスタ13aに格納する他に、各記録ヘッド毎に異なる値を格納してもよい。初期シフト量として一つの共通の値を初期シフトレジスタ13aに格納しておく場合には、各記録ヘッドのシフト量は、この読み出した初期シフト量に所定の係数を乗じて用いる。例えば、第1番目の記録ヘッドについては読み出した初期シフト量を用いてシフトし、第2番目の記録ヘッドについては読み出した初期シフト量を2倍した値を用いてシフトし、第3番目の記録ヘッドについては読み出した初期シフト量を3倍した値を用いてシフトする。
【0062】
なお、初期シフト処理は、間引きパターン生成処理S12(図4)で行うこともでき、複数ある記録ヘッドにおいて、各記録ヘッド毎に単位間引きパターンのライン上における配置位置をライン方向に所定ビットシフトさせ、その位置からライン方向に複数配列することで同様に初期シフト処理を行うことができる。
【0063】
ラインシフト処理S13Bは、同一ヘッドの次ラインの記録において、1ライン分の間引きパターンをライン方向に所定ビットシフトさせる演算部を備える、このシフトは、同一ヘッドにおける1ライン分の間引きパターンをライン毎に異ならせるための処理である。これによって、同一のヘッドにおいて搬送方向で同じパターンが並ぶといったことによる記録画質の劣化を避けることができる。
【0064】
ここで、ラインシフトのシフト量は、シフト量設定レジスタ13bに格納しておくことができる。このシフト量は、複数の記録ヘッドに対して一つの共通の値をシフト量設定レジスタ13bに格納する他に、各記録ヘッド毎に異なる値を格納してもよい。
【0065】
間引きパターン生成処理S12で生成された後、シフト処理S13で初期シフトおよび/またはラインシフトが行われた間引きパターンは記録データと比較される(S14)。間引きパターンと記録データとが一致している場合は、間引きパターン単位で当該パターン長の画像抜けが出来てしまう為、再度、ラインシフト処理13Bを行い、適切な間引きパターンの生成を行う。その後、間引き処理S15に送られ、記録データと組み合わせることで間引き記録データを生成する。生成された記録データは、記録処理S16で用紙上に記録される。
【0066】
間引き閾値処理S11を繰り返すことで全記録データについて間引きの必要性を判断し、また、ラインシフト処理S13B、間引き処理S15、および記録処理S16を繰り返すことで、全記録データについてヘッドの搬送方向の規則的な抜けを防ぎ、さらに間引きデータと記録データを比較することで、間引きパターン単位での画像抜けがないようにDuty処理が可能となる。
【0067】
上記したDUTY制御は、記録装置300中の制御回路302で行う構成とすることができる。制御回路302は、例えば、メモリ制御回路、データ転送処理回路、ヒートタイミング制御回路等の各記録ヘッドに対するプリント動作の制御をつかさどる様々な回路(不図示)で構成することができ、その回路の一部はASIC(Application Specific Integrated Circuit:特殊用途用IC)やFPGA(Field Programmable Gate Array:大規模PLD)等の半導体素子によって構成することができる。
【0068】
図6は本発明における制御回路302に含まれるASIC等の内部回路の一部の一例を示している。この回路例では、ラインシフト機能、初期シフト機能、間引きパターン/画像データ比較機能、間引き閾値機能の各機能をつかさどるDUTY制御回路20の一例を示している。
【0069】
ラインヘッドを用いたインクジェット記録装置は、ヘッド1ライン単位でヘッドに記録データを転送する。本発明は、その特徴を利用して間引きパターンの生成を行う。
【0070】
DUTY制御回路20は、DUTY制御レジスタ部20aとDUTY制御演算部20Aを備える。
【0071】
DUTY制御レジスタ部20aは、図5中の間引き閾値設定レジスタ11a,単位間引きパターン設定レジスタ12a,初期シフトレジスタ13a,シフト量設定レジスタ13b等の各レジスタ部に対応し、それぞれのレジスタには、間引き閾値、単位間引きパターン、各ヘッド毎に初期シフト値、ラインシフト値が設定されている。
【0072】
このDUTY制御レジスタ部20aには、外部のブロックとの接続信号としてCPUからクロック信号(CLK)、リセット信号(N_RESET)、チップセレクト信号(N_CS)、ライトイネーブル信号(N_WE3〜N_WE0)、その他にメモリからのアドレスバス、データバス等の論理回路の動作上必要な基本的信号(A_IN,D_IN)が入力される。これらのレジスタの設定は、初期設定値または利用者が必要時に設定する値を指定することによって、CPUがファームウェアを実行することで行う。また、DUTY制御演算部20Aとの通信信号として、DUTY制御処理に使われる信号(DUTY_CLK_REG〜D_DUTY_C[])がある。
【0073】
DUTY制御演算部20Aは、図5中の間引き閾値処理S11,間引きパターン生成処理S12,初期シフト処理S13A,ラインシフト処理S13Bおよび間引きパターン・画像データ比較処理S14に対応する演算を行う。
【0074】
このDUTY制御演算部20Aには、他の制御回路より記録に必要なタイミング信号(*_HSYNC,PHSYNC,*_ENB_REG,*_DLT_N_I)、記録データを転送するデータクロック信号(*D_CLK_I)、記録データ入力信号(*_IDATA1_I, *_IDATA2_I) と、DUTY制御レジスタ部からの信号(DUTY_CLK_REG〜D_DUTY_C[])が接続される。
【0075】
DUTY制御演算部20Aは間引き処理された記録データ出力信号(*_IDATA10_O, *_IDATA2_O)を出力し、DUTY制御レジスタ部20aはDuty値データ(D_DUTY_C[])を記録データ転送回路(不図示)に送る。
【0076】
以下、間引きパターンの生成について、図7〜図10を用いて説明する。
【0077】
間引きパターンの生成では、初めに複数ビット(例えば、20ビット)から成る単位間引きパターンの設定を行う。図7にDuty値の異なる単位間引きパターンの例を示す。図の「間引きパターン」においては白丸が間引きドットを示し、黒丸が非間引きドットを示している。この単位間引きパターンは、各色ヘッド等の複数のヘッドごとに設定するか、または、各ヘッドに共通する一パターンを設定する。各ヘッドに共通する一パターンを設定する構成では、ASIC等の内部回路の使用量を小さくすることができ、メモリの使用量が少ない仕様で効率的なDUTY制御処理が可能となる。
【0078】
図7に示す例では、Duty値(%表示の設定値)に対するレジスタ設定値とパターン例を示している。なお、レジスタ設定値は、2進符号と16進符号の両方で示している。
【0079】
例えば、記録Duty値を50%から100%の範囲において5%刻みで制御する場合、ASIC等の回路内部の各色ヘッドに複数ビットの単位間引きパターンを設定する。ここでは50%から100%まで5%刻みで制御するため、20ビットの単位間引きパターンを設定する。この20ビットの数値例は、50%から100%までを5%刻みで表現するために最低限必要な数値であり、20ビットのレジスタがあれば上記条件を満たすことができる。
【0080】
例えば、Duty値100%を、間引きを行わない場合に対応させたとき、Duty値50%は20ビット中の10ビット分について間引きを行い、残りの10ビット分については間引きを行わないように設定する。図7に示すDuty値50%の場合では、間引きするビットと間引きを行わないビットを交互に設定するパターンとしている。なお、ここで、Duty値は20ビットの内で幾つのビットについて間引きを行うかを設定する指標であり、20ビットの何れの位置のビットを間引きビットとするかは、単位間引きパターン内での間引きの分散を考慮して任意に設定することができる。
【0081】
50%から100%の範囲において5%刻みで制御する場合、ASIC等の内部回路に20bitの間引きパターンを設定するレジスタを持つ。このレジスタには図7に示すようなそれぞれの記録Duty値にあった間引きパターンが設定される。この20bitの間引きパターンは、所望のDuty値が設定された際、ファームウェアによって、間引き閾値パターン設定レジスタに設定される。50%から100%までを10%刻みでDuty値を制御する場合は、10bitの単位間引きパターンおよびレジスタで足りる。間引きパターンを格納するレジスタの領域が大きいほどASIC等の内部回路の回路規模は大きくなる。間引きパターンは、1ライン分の間引きパターンをレジスタに格納するのではなく、1ライン分の間引きパターンを構成するための単位間引きパターンをレジスタに格納する構成であるため、必要とするレジスタ領域は小さくて済み、回路規模を軽減し、コストを削減することができる。
【0082】
なお、間引きを行うビットが偏在すると、1ライン上で隣接した複数の画素で間引きが行われることになる。このような間引き処理は、記録画質を低下させる要因となる。そこで、単位間引きパターンは、間引き処理による記録画質の低下を最小限に抑えるため、隣接した画素で間引きが行われないように、間引きビットが分散されるパターンを設定することが望ましい。
【0083】
また、単位間引きパターンを繰り返すことでヘッド1ライン分の間引きパターンが形成されるため、単位間引きパターンの先端側のビットと後端側のビットを間引きビットとして設定すると、1ライン上で繰り返した際に隣接する単位間引きパターンの境界部で間引きビットが連続することになる。そこで、単位間引きパターンの最初の1または複数ビットに間引きビット(あるいは非間引きビット)を設定し、最後の1または複数ビットに非間引きビット(あるいは間引きビット)を設定することによって、単位間引きパターンを繰り返して間引きパターンを形成したときに、1ライン上で間引きビットが隣接することを防止することができる。
【0084】
なお、1ライン上で間引きビットを隣接させないためであれば、単位間引きパターンの最初の1または複数ビットおよび最後の1または複数ビットに非間引きビットを設定する構成によってもできるが、この場合には、所定のDuty値を実現するために、単位間引きパターンの中間部分に非間引きビットが集まることになり、記録画質が低下する要因となる。
【0085】
また、図8は、同一のDuty値を実現する異なる単位間引きパターンの例を示している。同一のDuty値を実現する異なる単位間引きパターンを複数用意しておき、これらの単位間引きパターンを適宜選択することにより、同一の間引きパターンを用いることによる規則性によって、画質が低下することを防ぐことができる。なお、この異なる単位間引きパターンの選択は、1ラインを構成する場合に適用する他、1ライン内では同じ単位間引きパターンを用いてライン間において適用してもよい。
【0086】
図9は、20ビットの単位間引きパターンを繰り返すことによって、1ライン分の間引きパターンを形成する例を模式的に示している。ヘッドは、入力した記録データに対して、間引きパターンをマスクとして適用することで、ヘッドを駆動する記録データを形成する。例えば、記録データの記録ビット位置が間引きパターンの間引きビット位置と一致した場合に、そのビット位置の記録データ(記録ビット)を無効とし、間引きパターンの間引きを行わないビット位置と一致する記録データのみを有効として、間引き処理後の記録データを形成する。
【0087】
図10はDUTY制御回路20が行う間引き処理を説明するための、1ラインの記録データ転送処理のフローチャートである。なお、このフローチャートおよび後続のフローチャートの処理は、いずれも、CPU304がROM等の記憶媒体(図示せず)内に格納された各種プログラムを読み出して実行することにより実現することができる。
【0088】
図10のフローチャートにおいて、記録データの転送が行われた後、間引き閾値処理S11(図5)として、間引き閾値設定レジスタ11aから間引き閾値を読み出す(S1)。また、間引き閾値処理S11では、入力した記録データにおいて、1ライン分の記録データの内の連続記録ビット数を計数する(S2)。
【0089】
ついで、ステップS2で計数した連続記録ビット数と、ステップS1で取得した間引き閾値とを比較する。この比較によって、間引き処理を行うか否かの判定を行う(S3)。
【0090】
間引き処理を行う場合には、間引きパターンを定め(S4)、間引きパターンと記録データを比較し(S4−1)、一致していた場合には間引きパターンを所定ビット(例えば1ないし数ビット)だけシフトし(S4−2)、再度、間引きパターンと記録データと比較する。ここで、間引きパターンと記録データの「一致」とは、間引きパターンのすべての間引きビットが記録データのすべての記録ビットに一致することをいう。不一致となったら、間引きパターンと記録データとを合成して間引き処理を行い(S5)、合成した記録データをヘッドに転送する(S6)。ステップS3において、間引き処理を行わないと判定した場合には、間引き処理を行うことなく記録データをヘッドに転送する(S6)。
【0091】
以下、間引き閾値機能について説明する。
【0092】
図11は、間引き閾値処理の一例を説明するための図である。図11において、間引き閾値処理部11Aは、記録データ内の連続した記録ビットをカウントする計数部11Aaと、間引きを行うか行わないかの閾値を設定するレジスタ11aと、設定されたレジスタ値とカウント値を比較、演算する比較部11AbをDUTY制御回路20に備える。
【0093】
記録メモリからDUTY制御回路20を介してヘッドへ記録データが転送される際に、ヘッド1ライン分の記録データ毎に、連続記録ビット数を計数部11Aaで計数する。記録データの連続記録ビット数を計数する計数部11Aaは、例えば“111110000110”という記録データを数えるとき、“1”を5回数えた後、次に現れる“0”で計数部11Aaをリセットする。その後、“0”が続くと計数部11Aaは計数を停止したままとする。その後、“1”を2回数えて“0”でリセットする。ここで、“1”は記録を行う記録データ(記録ビット)、“0”は記録を行わない記録データ(非記録ビット)である。
【0094】
計数部11Aaは、上記のようにして連続した記録ビットのビット数を計数する。比較部11Abは、計数部11Aaで計数した計数値と、間引き閾値設定レジスタ11aから読み出した間引き閾値とを比較し、計数値が間引き閾値以上であれば、間引き処理を指令する。これによって、ヘッド1ライン分を単位として、間引き処理を行うか否かの判定を行うことができる。
【0095】
図12は、間引き閾値処理を説明するための別の図である。図12(a)において、濃い地模様の部分は記録を行う部分を表し、薄い地模様の部分は記録を行わない部分を表している。搬送方向の最下方に示すラインは、間引きを行う閾値を“7以上”に設定した場合を示しており、実質的に間引きを行わない例となっている。このラインに対して、搬送方向の上方に向かって順に間引きを行う閾値を“6”,“5”,“4”,“3”に設定して間引き処理を行った例を示している。記録を行う部分に対して間引き処理を適用すると、間引きパターンに応じて記録データが間引きかれる。記録部分中で白抜きとなった箇所は、間引きによって記録が成されなかったビット部分を示している。
【0096】
つまり、図12(a)において、白抜き部分を記録ビット無しの部分とし、間引き閾値を例えば“4”と設定すると、横方向の連続記録ビット数が3ドット以下の記録データについては間引き処理を行なわず、4ドット以上の記録データについて間引き処理を行う。
【0097】
図12(b)は、間引き閾値を“1”に設定した場合であり、各ビット(データクロックにおいて、“1”と“0”とをそれぞれ1つ組み合わせてなる単位)を単位とし、切ろうデータが“1”で、かつ、間引きパターンが“0”のとき、その記録データの“1”を間引いて出力画像データを“0”とする。この状態は、図12(b)中で「間引き箇所」として表している。
【0098】
また、記録データが“1”で、かつ、間引きパターンが“1”のときは、その記録データの“1”を間引くことなく出力画像データを“1”とする。なお、記録データが“0”であるときは、間引きパターンに係わらず出力画像データを“0”とする。
【0099】
図12(c)は、間引き閾値を“3”に設定した場合であり、図12(b)と同様に、各ビットを単位とし、記録データが連続して3ビット以上“1”である領域において、間引きパターンが“0”のとき、間引きパターンが“0”に対応する記録データの“1”を間引いて出力画像データを“0”とする。この状態は、図12(c)中で「間引き箇所」として表している。
【0100】
また、前記の領域において、間引きパターンが“1”のときは、その記録データの“1”を間引くことなく出力画像データを“1”とする。なお、記録データが“0”であるときは、間引きパターンに係わらず出力画像データを“0”とする。
【0101】
図12(c)中のAで示す部分は、記録データの連続記録ビット数が“2”であるため、この領域での間引きは行わない。
【0102】
この間引き閾値によって、搬送方向のバーコードのような細い直線に対して間引き処理を行うことによる画質の低下を軽減することができる。
【0103】
次にシフト機能の内で、ラインシフト機能について説明を行う。
【0104】
各ヘッドに対して、ライン毎に常に同じビット位置で間引きを行う間引きパターンを用いて記録データが生成されると、搬送方向に白スジができてしまい、DUTY制御された画像に画質の低下が生じてしまう。そこで、ヘッドが次のラインを記録する際に、ラインシフト処理回路によって間引きされた記録データを所定ビットだけシフトさせることにより、同じビット位置で間引きされないようにする。
【0105】
図13は設定した記録Duty値が60%のとき、ラインシフト量をそれぞれ1ビット、2ビット、3ビットと設定してシフトさせたときの間引きパターンを配列した様子を示している。ここで、間引きパターンは、図7に示したDuty設定値60%のパターンを用いている。例えば、図13(a)において、同じ記録Duty値であってもラインシフト設定値を1ビットとしてラインシフトさせた場合には、搬送方向において同一の間引きパターンが隣接することを回避することが可能となる。
【0106】
図13(b)はラインシフト設定値を2ビットとしてラインシフトさせた場合である。この場合には、搬送方向の白スジの発生を防ぐことができるが、斜め方向の規則性が発生し、記録データによっては斜め方向に白スジが発生するおそれがある。
【0107】
図13(c)はラインシフト設定値を3ビットとしてラインシフトさせた場合である。この場合には、図13(b)で発生した斜め方向の規則性を緩和させることができる。ラインシフト処理回路は、画像の特性に応じてラインシフト設定値を設定することにより、画質の低下を防止することができる。
【0108】
なお、間引きパターンの規則性を排除する目的のラインシフトと、上述した記録データと間引きパターンの一致による画像抜けを防止するための間引きパターンの一時的なシフトとは別の目的および作用に係るものであることに留意されたい。
【0109】
次に初期シフト機能について説明を行う。
【0110】
前記したラインシフトは同じヘッドが次のラインを記録するときに間引きパターンをずらす処理であるのに対し、初期シフトは複数のヘッドについて、各ヘッドの間引きパターンの開始位置を右方向あるいは左方向にずらす処理である。なお、複数のヘッドは異なる色ヘッドとすることも、あるいは同一色のヘッドとすることもできる。
【0111】
この初期シフトの設定値は記録開始の時点で一度設定すると、記録終了まで保たれる。
【0112】
各ヘッドに対して初期シフトレジスタ値をDUTY制御回路に設定しておく。初期シフトは、各ヘッドにおいて、単位間引きパターンにより生成されたヘッド1ライン分の間引きパターンを記録開始時に設定値分だけ右方向あるいは左方向にシフトして間引きパターンの生成を行う。
【0113】
各ヘッドに初めから異なるパターンを設定することも有効であるが、この場合には単位間引きパターンがヘッドの本数分だけ必要となる。そこで、複数の記録ヘッドに対する間引きパターンを同一の間引きパターンで共通化し、その同一の間引きパターンを所定ビット分シフトさせることで間引きパターンを生成すれば、レジスタ設定に要する容量や回路規模を減少するのに有効である。
【0114】
次のラインの間引きパターンの生成において、1ラインの間引きパターンの開始位置をずらすラインシフト量を設定するレジスタをASIC等の回路内部に持つ構成としてもよい。間引きパターンが、次のラインに移るとき、単位間引きパターンが繰り返されて生成されたヘッド1ライン分の間引きされた記録データに対して、ラインシフトの設定値分だけパターンの開始位置を右方向あるいは左方向にずらす。この処理は記録が終了するまで実行される。
【0115】
以下、単位間引きパターンからシフト処理を経た間引きパターンの生成について説明する。
【0116】
図14に示すように、単位間引きパターン12aから選択した単位間引きパターンをライン方向に配列することによって、1ライン分間引きパターン処理12Aを行う。初期シフト量設定レジスタ12bに設定されている初期シフト量に基づいて、生成された1ライン分の間引きパターンをシフトさせる。ここでは、ラインの右方向にシフトさせる例を示している、これらシフト量は、シフト後の間引きパターンが単位間引きパターンの整数倍とならないように設定する。
【0117】
次に、初期シフトした各ヘッドの1ライン分の間引きパターンをラインシフト量設定レジスタ12cに設定されたラインシフト量だけシフトさせる。図14では、各色ヘッドの内のKのヘッドについて、ライン間でシフトさせた間引きパターンを示している。
【0118】
また、別の例を図15に示す。単位間引きパターン12aから選択した単位間引きパターンを、初期シフト量設定レジスタ12bに設定されている初期シフト量に基づいてシフトさせて開始位置をずらし、この開始位置から、単位間引きパターンをライン方向に配列することによって、1ライン分の間引きパターンを生成する。 図15では、この間引きパターン生成処理と初期シフト処理を合わせて間引きパターン処理12ABとしている。
【0119】
次に、各ヘッドの1ライン分の間引きパターンをラインシフト量設定レジスタ12cに設定されたラインシフト量だけシフトさせる。図15では、各色ヘッドの内のKのヘッドについて、ライン間でシフトさせた間引きパターンを示している。
【0120】
図16は、本実施の形態におけるDUTY制御回路20内のDUTY制御演算部20A(図6)のラインシフト機能および比較機能の説明図である。この構成では、1ラインの画像データを所定ビット数(ここでは20ビット)毎に、同ビット数の間引きパターンデータと比較し、両データの一致を判定する。そのために、画像データレジスタ401の画像データと間引きパターンレジスタ402のデータとを比較器403によりビット単位に比較し、記録データの全記録ビットが間引きパターンの間引きビットと一致したとき、比較器403がシフト要求信号を発生する。これに応じて、間引きパターンレジスタ402のデータが所定ビット(例えば1ビット)シフトする。このシフト時、レジスタの一旦からはみ出すビットはレジスタの他端に移動する。したがって、このシフト動作はローテイト動作とも言える。このシフト後の間引きパターンレジスタ402のデータと画像データレジスタ401のデータとは再度比較器403で比較され、不一致となるまで間引きパターンのシフト処理が行われる。不一致となったとき、画像データレジスタ401と間引きパターンレジスタ402の間引きパターンとの間で、クロック信号iclkに同期してAND回路404によりビット毎に論理積がとられ、その結果得られる記録データidataが記録ヘッド307に入力される。
【0121】
間引きパターンと記録データの一致に基づく間引きパターンのシフトは一時的なものとし、シフトを行った間引きパターンの同一ライン上の後続の間引きパターンについては、直前の間引きパターンのシフトの有無に関係なく上記のとおりの間引きパターンに戻す。この代わりに、同一ライン上で以後の間引きパターンについて同じシフトシフト状態を維持するようにしてもよい。その場合、シフト後の間引きパターンが記録データと一致したときには、その都度、シフト処理が行われる。シフト処理が行われた次のラインについては、シフト処理の影響を受けることなく、上記のとおりの間引きパターンの生成を行う。
【0122】
なお、この例では画像データレジスタ401の画像データと間引きパターンレジスタ402のデータの全ビットが一致したときにシフトを行うようにしたが、一定割合以上のビット(例えば、20ビットのうち19ビットまたは18ビット等)が一致することを、シフトの条件としてもよい。
【0123】
画像データと間引きパターンの一致時のシフト量は1ビットに限るものではない。また、そのシフト量は場合によって変動してもよい。例えば、上述したように、間引きパターンの境界部で間引きビットが連続しないようにする目的では、シフトにより間引きパターンの端部のビットが所定のビットとなった場合にはそれ以外のビットとなるまでシフトを行うようにすることも可能である。
【0124】
図17は、記録データと間引きパターンとの合成を説明するための図である。記録データ内の連続記録ビット数が間引き閾値以上であり、間引き処理を要すると判定した場合には、図17に示すように、記録データ1001と間引きパターン1002を合成(間引き処理の実行)し、ヘッドへ記録するデータ1003を転送する。
【0125】
図18は、図10の記録データ転送処理の変形例を示すフローチャートである。図10の処理では、間引きパターンと記録データとが一致したとき間引きパターンをシフトする動作を行った。図18では図10に示したステップと同様のステップには同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。図18の処理では、図10の処理と異なり、ステップS4−1において間引きパターンと記録データの比較結果が「不一致」となったとき、間引きパターンのシフトを行うことなく、また、間引き処理(S5)を行うことなく、記録データをそのままヘッドへ転送する。
【0126】
図19は、本実施の形態におけるDUTY制御回路20内のDUTY制御演算部20A(図6)のラインシフト機能および比較機能の他の構成例の説明図である。これは、図18に示した変形例を実現するための構成例である。図16に示した要素と同様の要素には同じ参照符号を付して重複した説明を省略する。図19の構成においては、間引きパターンデータレジスタ402とAND回路404との間にバッファ405を介在させている。バッファ405は、比較器403での比較結果が「不一致」の場合は間引きパターンレジスタ402の出力をそのままAND回路404に通過させる。これに対して、比較器403の比較結果が「一致」の場合には、間引きパターンデータレジスタ402のデータのシフト処理を行うのではなく、バッファ405の通過を遮断し、その出力を“1”に固定する。これにより、画像データレジスタ401の出力がAND回路404からそのまま出力される。このような間引き処理自体の抑止は、間引き対象となった1ラインの画像データの当該記録データ部分のみの一時的な措置であり、同ラインの後続の画像データに対しては間引き処理が再開される。
【0127】
本発明のようなDUTY制御を用いて記録データの間引き処理を行うことにより、記録Dutyの高いオブジェクトを高速記録で記録する場合であっても、好適な記録データの間引き制御が可能となり、画像の的確な場所において余分なインクの吐出を控え、紙写りや転写のない高画質な画像を記録することが可能となる。
【0128】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。例えば、上記の例では、ASIC等の内部回路でDUTY制御を行う場合について説明したが、DUTY制御回路の一部をCPU内部処理に置き換える構成や外部回路で対応する構成としてもよい。複数の記録ヘッドを用いる記録装置について説明したが、記録ヘッドは単一であってもよい。記録ヘッドとしてラインヘッドを用いる記録装置について説明したが、本発明は、用紙の幅方向にヘッドを移動させる型の記録装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の主要部の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるインクジェット記録装置を用いた記録方法を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるインクジェット記録装置における記録データの転送経路を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるインクジェット記録装置の間引き処理を説明するための図である。
【図5】図4に示したDUTY制御処理をより詳細に説明するための図である。
【図6】本発明における制御回路に含まれるASIC等の内部回路の一部の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるDuty値の異なる単位間引きパターンの例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における同一のDuty値を実現する異なる単位間引きパターンの例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態において、20ビットの単位間引きパターンを繰り返すことによって、1ライン分の間引きパターンを形成する例を模式的に示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における間引き処理を説明するための、1ラインの記録データ転送処理のフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態における間引き閾値処理の一例を説明するための図である。
【図12】間引き閾値処理を説明するための別の図である。
【図13】本発明の実施の形態において、設定した記録Duty値が60%のとき、ラインシフト量をそれぞれ1ビット、2ビット、3ビットと設定してシフトさせた時の間引きパターンを配列した様子を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態において、単位間引きパターンからシフト処理を経た間引きパターンの生成の一例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態において、単位間引きパターンからシフト処理を経た間引きパターンの生成の別の例を示す図である。
【図16】図6内のDUTY制御演算部のラインシフト機能および比較機能の説明図である。
【図17】本発明の実施の形態における記録データと間引きパターンとの合成を説明するための図である。
【図18】図10の記録データ転送処理の変形例を示すフローチャートである。
【図19】図6内のDUTY制御演算部のラインシフト機能および比較機能の他の構成例の説明図である。
【符号の説明】
【0130】
11A…閾値処理部
11Aa…計数部
11Ab…比較部
11a…閾値設定レジスタ
12A…間引きパターン処理
12AB…間引きパターン処理
12a…間引きパターン設定レジスタ
12b…初期シフト量設定レジスタ
12c…ラインシフト量設定レジスタ
13B…ラインシフト処理
13a…初期シフトレジスタ
13b…シフト量設定レジスタ
20…DUTY制御回路
100…ラインヘッド
105…搬送ローラ
106…用紙
201…モニタ
202…画像
300…記録装置
301…制御基板
302…制御回路
303…コントローラ
305…受信メモリ
306…記録メモリ
307…記録ヘッド
311…ドライバ
401…画像データレジスタ
402…間引きパターンデータレジスタ
403…比較器
404…AND回路
405…バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録データに基づいて、記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、
記録データの各ビットについて記録するか否かを定める複数ビットの間引きパターンを生成する間引きパターン生成手段と、
前記間引きパターンを所定ビットずらすシフト処理手段と、
前記記録データの複数ビット分のデータ部分毎に前記間引きパターンと比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果が一致していない場合には、前記間引きパターンより記録データの記録ビットを間引いた記録データを生成する間引き処理を行い、前記比較手段の比較結果が一致している場合には、前記シフト処理により所定ビットずらした間引きパターンにより前記記録データの記録ビットを間引いた記録データを生成する間引き処理を行う間引き手段とを備え、
前記記録データに基づいて記録ヘッドを駆動する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記間引きパターンのシフトは、前記間引きパターンと前記記録データの比較結果が不一致となるまで繰り返す請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
記録データに基づいて、記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、
記録データの各ビットについて記録するか否かを定める複数ビットの間引きパターンを生成する間引きパターン生成手段と、
前記間引きパターンを所定ビットずらすシフト処理手段と、
前記記録データの複数ビット分のデータ部分毎に前記間引きパターンと比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果が一致していない場合には、前記間引きパターンより記録データの記録ビットを間引いた記録データを生成する間引き処理を行い、前記比較手段の比較結果が一致している場合には、当該データ部分について前記記録データの間引き処理を抑止する間引き手段とを備え、
前記記録データに基づいて記録ヘッドを駆動する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記比較手段の比較結果の「一致」は、前記間引きパターンのビット数と同じビット数の記録データ部分の全記録ビットが前記間引きパターンの間引きビットと一致することである請求項1、2または3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記比較手段の比較結果の「一致」は、前記間引きパターンのビット数と同じビット数の記録データ部分の全記録ビットのうち所定の割合のビットが間引きビットと一致することである請求項1、2または3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
画像データに基づいて記録される各ライン毎に画像データ内の連続記録ビット数を計数する計数手段を備え、前記間引き手段は、連続記録ビット数が予め定められた閾値以上である場合に、当該ラインについて前記間引きパターンに基づく間引き処理を行う請求項1または3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記間引きパターンは記録データの1ラインの全ビット数より少ない複数ビット数のデータからなり、前記間引きパターンは1ラインの記録データの各部に対して繰り返して適用する請求項1または3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記間引きパターンは、画像データに基づいて記録されるあるラインに適用された間引きパターンと次のラインに適用される間引きパターンとが一致しないように、1ライン毎に間引きパターンのシフトを行う請求項1または3に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図12】
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【図13】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−284786(P2008−284786A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132161(P2007−132161)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】