説明

インクジェット記録装置

【課題】製造時におけるコストアップや装置を大型化することなく、所望の記録を行うことが可能なインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置に設けられた内部観察窓の内部に、外光を遮る遮蔽部材を設けることで、記録メディアの検出領域に照射する外光を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録状態等を確認するために内部観察窓を筐体に設けたインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、記録状態等を確認するため、筐体カバーに透明材質を用いることで、内部が透視可能な状態にしていた(特許文献1参照)。これは、記録中に記録状態が目視で確認できれば、インクの吐出不良や記録メディアの搬送不良等が発生した場合、即座に記録を中止することができるためである。特に大判記録装置の場合は記録開始直後に不良が発生すると、大量のインクや記録メディアの無駄が発生するので、これを防止するため、内部が透視可能な透明筐体カバーにしている装置が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−225993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般のインクジェット記録装置には、記録媒体の位置を検出するメディア検知センサが設けられている。そして筐体カバーが透明だと、装置内部に様々な角度から太陽光や室内照明等の外光が入射する。入射した外光がメディア検知センサの検出領域を照射すると、その部分だけメディア検知センサの電気的出力が変化し、記録媒体の端部や種類を誤認識してしまい、所望の記録ができなくなるという問題があった。
【0005】
この問題への対策として、メディア検知センサが赤外線に対し感度が高い場合は、筐体カバーの内側に赤外線吸収フィルム等を貼り付けることが行なわれている。赤外線吸収フィルム等を貼り付けることで、透明性は維持しつつ、外光によるメディア検知センサの誤認識をある程度防止することができる。しかし、筐体が大きな場合、広い領域に赤外線吸収フィルムを貼り付ける必要がありコストアップとなっていた。また、筐体カバーの材質そのものに赤外線吸収剤を添加することで同様な効果を狙ったものもあるが、材料費が高くなり同じくコストアップとなっていた。さらにまた、メディア検知センサの検出領域に外光が入射しないように、記録装置内部に設けられたキャリッジを横に大きくすることもできるが、キャリッジの大型化は装置を大型化することになってしまう。
【0006】
よって本発明は、製造時におけるコストアップや装置を大型化することなく、所望の記録を行うことが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため本発明のインクジェット記録装置は、搬送される記録メディアにインクを吐出して記録を行う記録手段と、該記録手段を主走査方向へ移動させる移動手段と、前記記録メディアの位置を検知する検知手段と、前記記録手段が記録中に、前記記録メディアへの記録を確認可能な透明領域を備えた内部観察窓が設けられ、外装の一部をなす開閉手段と、を備えたインクジェット記録装置において、前記メディア検知センサが検知する前記記録メディアの上の領域の一点と、前記内部観察窓の前記透明領域の一点と、を結ぶ直線を遮る遮蔽部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によればインクジェット記録装置は、メディア検知センサが検知する記録メディアの上の領域の一点と、内部観察窓の透明領域の一点と、を結ぶ直線を遮る遮蔽部材を備えている。これによって、製造時におけるコストアップや装置を大型化することなく、所望の記録を行うことが可能なインクジェット記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。
【図2】図1のB−B断面図である。
【図3】図2のメディア検知センサの周辺部を拡大した図である。
【図4】内部観察窓を大きくした場合の記録装置本体の断面図である。
【図5】従来の記録装置を示した断面図である。
【図6】図5のメディア検知センサ部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
先ず本実施形態を説明する前に、従来の記録装置において、外光がメディア検知センサに到達する原理について説明する。
図5は、従来の記録装置を示した断面図である。開閉カバー106は透明材質のため破線で示してある。インクヘッド110は、記録するために記録メディア107aに対してインクを吐出する。メディア検知センサ111は、記録メディア107aの端部や種類を自動的に検出する。キャリッジ112はインクヘッド110とメディア検知センサ111を保持しており、記録メディア107aに記録をするために左右方向(主走査方向)に移動可能である。外光Lは記録装置内部に入射する外光である。
【0011】
図6は、図5のメディア検知センサ部を拡大した図である。領域限界S1、S2は、メディア検知センサ11が検出可能な検出限界であり、斜線で示した領域が検出範囲、記録メディア107a上のSが検出領域となる。記録装置内部に入射する外光は、キャリッジ112の角部112aで遮られるものもあるが、図中の外光Lのように、キャリッジ112の角部112aで遮ることが出来ず、メディア検知センサ111の検出領域Sの一部を照射してしまうものも有る。このように、入射した外光がメディア検知センサの検出領域を照射すると、メディア検知センサ111の電気的出力が変化し、記録メディアの端部や種類を誤認識してしまい所望の記録ができなくなる。
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。インクジェット記録装置本体(以下、単に記録装置本体ともいう)1の外装カバーは、左カバー2、右カバー3、前カバー4、排紙カバー5、開閉カバー(開閉手段)6を備えている。開閉カバー6は、記録媒体(以下、記録メディアともいう)の詰まりを取り除いたり、各種メンテナンスを行う時に、不図示のヒンジを中心に開閉可能である。なお、外装カバー2〜6は、プラスチックの成形品で、不透明な材料で形成されている。長尺状の記録メディア7は、記録装置本体1に対してロール状で供給が行なわれる。記録メディア7は、記録装置本体1の後方から給紙され、記録後に不図示のカッタで切断され、記録後の記録メディア7aとして前方に排紙される。内部観察窓8の透明領域は、記録中の記録メディアを確認可能なように透明材質で形成されており、その内部には、外光を遮る遮蔽部材9が設けられている。
【0013】
図2は、図1のB−B断面図である。内部観察窓8は透明材質のため破線で示す。インクヘッド(記録手段)10は、加熱することでインク滴を吐出させる機構を有している。ノズル10a及び10bは、インクヘッド10の記録メディア7aと対向した位置に設けられ、インクを吐出する。メディア検知センサ(検知手段)11は、記録メディア7aの端部や種類を自動的に検出する。キャリッジ(移動手段)12はインクヘッド10とメディア検知センサ11とを保持している。キャリッジ12は、通常は右カバー3内で待機しているが、記録装置から記録ジョブが送られると、記録メディア7a上に記録をするために左右方向(矢印M方向である主走査方向)に不図示のシャフトで案内され往復移動可能である。外光La、Lbは、記録装置内部に入射する外光を直線で示している。外光Laは、開閉カバー6と遮蔽部材9の境界部6aの一点とキャリッジ12の端部12aとを結んだ直線であり、外光Lbは、開閉カバー6と窓8の境界部6bの一点とキャリッジ12の端部12aとを結んだ直線である。外光Lbは、遮蔽部材9の主走査方向と交差する面によって遮蔽されてキャリッジ12までは届かない。なお、遮蔽部材9は、外光を吸収する材質で形成されてもよい。図中では、遮蔽部材9がなかった場合の外光Lbの軌跡を点線で示している。この時、外光Laと記録メディア7aとの成す角度をθa、外光Lbと記録メディア7aとの成す角度をθbとする。図2では角度θa、θbは二次元で表されているが、記録メディア7aの搬送方向(紙面と垂直方向)にも長さを持つので、実際は三次元で表される。なお記録状態確認の際に、内部観察窓8の正面から目視することで、遮蔽部材9が目視の妨げになることはない。
【0014】
図3は、図2のメディア検知センサ11の周辺部を拡大した図である。凹部12bには、メディア検知センサ11が収容されている。領域限界S1、S2は、メディア検知センサ11が検出可能な検出限界で、斜線部が検出範囲、記録メディア7a上のSが検出領域となる。ここで外光La、Lbは、図2で説明した通り、記録メディア7aに対して角度θa、θbで入射し、キャリッジ12の角部12aを通り、記録メディア7aの表面を照射する。この時、三次元で算出した角度θaを有する外光Laのように、外光により照射される部分が常にメディア検知センサ11の検出領域Sの外側であれば問題ない。しかし角度θbを有する外光Lbのように、遮蔽部材9に遮蔽されなかった場合は、外光がメディア検知センサ11の検出領域Sの内側を照射すると、その部分だけメディア検知センサ11の電気的出力が変化し、記録メディア7aの端部や種類を誤認識してしまう。この角度θbを有する外光Lbを遮蔽部材9で遮ることで、いかなる外光が記録装置内部に入射してもメディア検知センサ11の電気的出力が変化することはなく、記録メディア7aの端部や種類を誤認識して所望の記録ができなくなるという問題は発生しない。
【0015】
このように、記録装置に設けられた内部観察窓の内部に、外光を遮る遮蔽部材を設けることで、記録メディアの検出領域に照射する外光を遮断する。このようにして、メディア検知センサの誤認識を防止することで、製造時におけるコストアップや装置を大型化することなく、所望の記録を行うことが可能なインクジェット記録装置を実現することができた。
【0016】
(他の実施形態)
内部観察窓8を大きくした場合の実施形態について、図4を用いて説明する。図4は、内部観察窓8を大きくした場合の記録装置本体の断面図である。外光Lc、Ld、Leは記録装置本体に入射する外光であり、それぞれは記録メディア7aと、角度θc、θd、θeを成して入射している。また記録装置本体の内部には、遮蔽部材9c、9d、9eが設けられている。
【0017】
外光Lc、Ld、Leはそれぞれの遮蔽部材9c、9d、9eにて遮蔽されキャリッジ12までは届かないが、遮蔽部材9c、9d、9eがなかった場合の軌跡を点線で示している。このように内部観察窓8を大きくした場合には、それぞれの角度を持つ外光を遮断できる遮蔽部材をそれぞれ設ければよい。この時、遮蔽部材を長くすれば遮蔽部材の間隔を広くすることができ遮蔽部材の枚数が少なくなる。遮蔽部材を短くすれば遮蔽部材の間隔が狭くなり遮蔽部材の枚数が多くなる。
【0018】
このように、記録装置に設けられた内部観察窓のサイズに合わせてその内部に、外光を遮る遮蔽部材を設けることで、記録メディアの検出領域に照射する外光を遮断する。このようにして、メディア検知センサの誤認識を防止することで、製造時におけるコストアップや装置を大型化することなく、所望の記録を行うことが可能なインクジェット記録装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0019】
1 インクジェット記録装置本体
6 開閉カバー
8 内部観察窓
9 遮蔽部材
10 インクヘッド
11 メディア検知センサ
12 キャリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される記録メディアにインクを吐出して記録を行う記録手段と、該記録手段を主走査方向へ移動させる移動手段と、前記記録メディアの位置を検知する検知手段と、前記記録手段が記録中に、前記記録メディアへの記録を確認可能な透明領域を備えた内部観察窓が設けられ、外装の一部をなす開閉手段と、を備えたインクジェット記録装置において、
前記メディア検知センサが検知する前記記録メディアの上の領域の一点と、前記内部観察窓の前記透明領域の一点と、を結ぶ直線を遮る遮蔽部材を設けたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記主走査方向と交差する面によって、前記メディア検知センサが検知する前記記録メディアの上の領域の一点と、前記内部観察窓の前記透明領域の一点と、を結ぶ直線を遮ることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、外光を遮断または吸収する材質であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−218419(P2012−218419A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90008(P2011−90008)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】