説明

インクジェット記録装置

【課題】ヘッドが多い場合でも効果的に均質な洗浄を行う。
【解決手段】複数のヘッド3を平面状に並べて保持するキャリッジ4と、キャリッジを搬送する主走査装置5と、各ヘッドの洗浄を行うヘッド洗浄機構7とを備え、ヘッド洗浄機構は、ワイピングローラ71と、ワイピングローラの下部を洗浄液に浸すための容器73と、ローラ搬送モータ752によりワイピングローラ及び容器を副走査方向に沿って往復搬送するローラ搬送機構75とを備え、主走査装置とローラ搬送機構とに対して、ワイピングローラの往復搬送における片道の移動動作毎にキャリッジを間欠的に搬送し、平面状に並んだ複数のヘッドを複数回に分けて洗浄する洗浄制御を行う制御部9を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドのワイピングを行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
普通紙やプラスチック薄板等の種々の記録媒体に画像を形成することができる記録装置としてインクジェットプリンタがある。インクジェットプリンタは、ノズル孔からインクを吐出するヘッドを備えている。ヘッドのノズル孔から記録媒体に向けて微細な液滴としてインクを吐出することにより、記録媒体に画像が形成される。
【0003】
このようなインクジェット記録装置では、ノズルが複数配列されている記録ヘッドのノズル面にインク等の液滴や異物等の付着物が付着していると、ノズルの射出口からインクが射出されなかったり正常な方向にインクが射出されなかったりする射出不良(ノズル欠ともいう。)が生じてしまう。そのため、通常、ノズル面に付着した付着物の除去等のメンテナンス処理を行うメンテナンス機構が備えられている。
【0004】
メンテナンス機構は、複数のヘッドを搭載したキャリッジの搬送経路の一端部に定められたメンテナンス領域に設けられ、ヘッドのノズル面にその上部を摺接させるワイピングローラと、ワイピングローラの下部を洗浄液に浸した状態とする容器と、ワイピングローラの回転を行うモータと、ワイピングローラの昇降機構とから主に構成されている。
上記ワイピングローラは、キャリッジの搬送方向である主走査方向に直交する副走査方向に沿った回転軸により支持されており、ワイピングローラを回転させながらキャリッジを主走査方向に移動させることで、主走査方向に装備された複数のヘッドのノズル面に対して順番に拭き取りが行われるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−058428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のインクジェット記録装置では、キャリッジ上に色彩の異なるインクを吐出する各色ごとのヘッドが主走査方向に並んでおり、当該キャリッジはヘッドの並び方向に沿って移動しながらワイピングローラの拭き取りを行う構造であることから、上流側のヘッドのインクが下流側のヘッドに付着して色移りが生じ、画質が低下する恐れがあった。
【0007】
また、近年は、より大判の記録媒体に画像を形成するというニーズが高まっている。そのような大判の記録媒体に効率的に画像を形成するためには、キャリッジを大型化して、各色彩のヘッドを副走査方向に沿って複数並べて配置し、キャリッジの一走査での画像形成幅を拡張することが考えられる。
このような副走査方向に同一色の複数のヘッドを並べて配置するインクジェット記録装置に上述した特許文献1のメンテナンス機構を適用するには、副走査方向に幅の広いワイピングローラが必要となる。
ところが、このワイピングローラの幅を広くすると、自重やヘッドの当接圧により、中央部が下方に撓みを生じて、均一な拭き取りが行えなくなる恐れがあるという問題があった。
ワイピングローラの撓みについては、その回転軸の外径を大きくして剛性を高める等の対策を取ることができるが、その場合には、ワイピングローラが重量化するのでワイピングユニット全体も補強する必要が生じ、ユニットの大型化及び重量増加、ひいては、インクジェット記録装置の重量の増加及び大型化を生じるという問題があった。
【0008】
本発明は、高画質を維持し、装置の大型化を抑えつつ大判の記録媒体への画像形成を実現するインクジェット記録装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決のために、本発明は、記録媒体にインクを吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッドを平面状に並べて保持するキャリッジと、前記キャリッジを主走査方向に沿って搬送する主走査装置と、前記複数のヘッドのノズル面の洗浄を行うヘッド洗浄機構とを備え、前記キャリッジは、同一の色彩のインクを吐出する複数のヘッドを前記主走査方向に直交する副走査方向に並べてなるヘッド群を複数種類の色彩のそれぞれについて前記主走査方向に隣接するように保持し、前記ヘッド洗浄機構は、前記複数のヘッドのノズル面にその上部が摺接しながら前記主走査方向に沿った回転軸回りに回転するワイピングローラと、前記ワイピングローラの下部を洗浄液に浸すための容器と、ローラ搬送モータにより前記ワイピングローラ及び前記容器を前記副走査方向に沿って往復搬送するローラ搬送機構とを備え、前記主走査装置と前記ローラ搬送機構とに対して、前記ワイピングローラの往復搬送における片道の移動動作毎に前記キャリッジを間欠的に搬送し、平面状に並んだ複数の前記ヘッドを複数回に分けて洗浄する洗浄制御を行う制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記ヘッド洗浄機構は、前記ワイピングローラを回転させる回転モータを備え、前記制御部は、前記回転モータと前記ローラ搬送モータとを制御して、前記複数のヘッドに対する前記ワイピングローラの外周部の摺動速度が一定となるように前記往復移動の往路と復路とで前記回転モータの回転速度を調整する構成としても良い。
【0011】
また、本発明は、前記ヘッド洗浄機構は、前記ワイピングローラの外周に当接して洗浄液の吸収量を調節する調湿部材と、前記調湿部材を前記ワイピングローラに対する当接状態と離間状態とに位置切替可能に支持する支持機構とを備え、前記支持機構は、前記ローラ搬送モータによる前記ワイピングローラの搬送移動から動力を受けて前記調湿部材の位置切替を行うという構成としても良い。
【0012】
また、本発明は、前記ヘッド洗浄機構は、前記容器に設けられた洗浄液排出口の開閉の切替動作を行う洗浄液排出機構を備え、前記洗浄液排出機構は、前記ローラ搬送モータによる前記ワイピングローラの搬送移動から動力を受けて前記洗浄液排出口の開閉の切替動作を行うという構成としても良い。
【0013】
また、前記ヘッド洗浄機構は、予め定められた停止位置に位置する前記容器に対して上方から洗浄液を注水する注水ノズルを備え、前記注水ノズルの先端部が、前記停止位置に位置する容器の洗浄液排出口の鉛直上方に位置するという構成としても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、同じ色彩の複数のヘッドが副走査方向に沿って並んでヘッド群を構成し、各色彩のヘッド群は、主走査方向に隣接すように配設されている。
ワイピングローラは、主走査方向に沿った回転軸により回転しながら副走査方向に沿った移動によりヘッドのノズル面に摺接して洗浄するので、同一色彩のヘッド群に沿って移動を行うことから、各ヘッドに対する色移りの発生を回避し、画質の低下を防止することが可能となる。
さらに、ワイピングローラの往復搬送における片道の移動動作毎にキャリッジを間欠的に搬送して平面状に並んだ複数のヘッドを複数回に分割して洗浄するので、ワイピングローラの幅を、平面状に並んだ全ヘッドの配設領域における主走査方向の幅を分割回数で除した幅とすることが可能となり、多数のヘッドを搭載する場合であっても、ワイピングローラの撓みが抑制される。従って、ワイピングローラの撓みを防止するために各部の剛性を高める必要がなく、ヘッド洗浄機構及びインクジェット記録装置の大型化、重量増加を回避しつつヘッド全体を均一且つ効果的に洗浄することが可能となる。
【0015】
また、制御部が往復移動の往路と復路とで回転モータの回転速度を調整することで、複数のヘッドに対するワイピングローラの外周部の摺動速度を一定とする構成の場合には、ワイピングローラの往路と復路とで均質な洗浄を行うことができ、全ヘッドについて効果的な洗浄を行うことが可能となる。
【0016】
また、調湿部材におけるワイピングローラに対する当接状態と離間状態との位置切替の動力をワイピングローラの搬送移動から受ける構成とした場合には、調湿部材の位置切替の専用の駆動源を不要とし、部品点数低減を図ることが可能となる。
また、駆動源の点数を低減することにより、その配線も不要となるので、ヘッド洗浄機構のように洗浄液を使用する環境下での漏電などを原因とする故障の発生を防止し、装置の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0017】
また、排出機構の洗浄液排出口の開閉の切替動作の動力をワイピングローラの搬送移動から受ける構成とした場合には、開閉の切替動作の専用の駆動源を不要とし、部品点数低減を図ることが可能となる。
また、駆動源の点数を低減することにより、その配線も不要とするので、ヘッド洗浄機構のように洗浄液を使用する環境下での漏電などを原因とする故障の発生を防止し、装置の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0018】
また、注水ノズルの先端部を停止位置に位置する容器の洗浄液排出口の鉛直上方に配置する構成とした場合には、洗浄液の注水により、汚れのたまりやすい洗浄液排出口の周囲に洗浄液を当てるので、汚れのたまりを防止し、容器内を常に清浄に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インクジェット記録装置の斜視図である。
【図2】キャリッジ上のヘッドの配置を示す平面図である。
【図3】ヘッドの内部構造を示す断面図である。
【図4】メンテナンス部の全体を示す斜視図である。
【図5】メンテナンスユニットの斜視図である。
【図6】図5と方向を変えてみたメンテナンスユニットの斜視図である。
【図7】容器の左前角部における平面図である。
【図8】洗浄液排出機構の斜視図である。
【図9】洗浄液排出機構77及び調湿機構74の斜視図である。
【図10】図10(A)は調湿機構の調湿部材をワイピングローラから離間させた状態を示す動作説明図、図10(B)は洗浄液排出機構の蓋部材を開放させた状態を示す動作説明図である。
【図11】ローラ搬送機構のユニットフレームを取り外した状態のメインフレームの斜視図である。
【図12】液量検出装置の斜視図である。
【図13】インクジェット記録装置の制御系を示すブロック図である。
【図14】ワイピング制御を示すフローチャートである。
【図15】ワイピング制御の動作説明図であり、図15(A)〜図15(E)の順番で動作が進行する。
【図16】ワイピング制御におけるローラ回転速度の調整制御を示す説明図であって、図16(A)は往路の速度を示し、図16(B)は復路の速度を示す。
【図17】ワイピング制御におけるローラ回転速度の調整制御の他の例を示す説明図であって、図17(A)は往路の速度を示し、図17(B)は復路の速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態たるインク供給装置を搭載したインクジェット記録装置10について図1から図16に基づいて説明を行う。図1はインクジェット記録装置10の全体を示した斜視図である。
【0021】
インクジェット記録装置10は、記録媒体を水平方向に沿って搬送する搬送装置2と、搬送される記録媒体に上方からインクを吐出する複数のヘッド3(図2参照)を搭載するキャリッジ4と、キャリッジ4を記録媒体の搬送方向に直交する水平方向に沿って搬送する主走査装置5と、キャリッジ4に搭載された各ヘッド3の洗浄を行うヘッド洗浄機構としてのメンテナンス部7、キャリッジ4に搭載された各ヘッド3のノズル311の保湿を行うノズル保湿部6と、キャリッジ4に搭載された各ヘッド3へのインク供給を行うインク供給装置(図示略)と、これら各構成を制御する制御部としての制御装置9(図13参照)と、全体を支持するフレーム100を主として備えている。
なお、以下の説明では、水平方向であって記録媒体の搬送方向に沿った方向を副走査方向Y、水平方向であってキャリッジ4の搬送方向に沿った方向を主走査方向X、鉛直上下方向をZ軸方向というものとする。
【0022】
[搬送装置]
搬送装置2は、駆動ローラ21及び従動ローラ(図示略)と、駆動モータ22と、搬送ベルト23と、を備えている。
駆動ローラ21及び従動ローラは、回転自在に軸支されており、駆動ローラ21は、主走査方向Xに延在するように配置されている。駆動モータ22は、駆動ローラ21を回転駆動するための駆動源であり、駆動ローラ21の一端側に取り付けられている。
搬送ベルト23は、無端状に形成され、駆動ローラ21と従動ローラとの間に架け渡されている。搬送ベルト23は、駆動ローラ21が回転すると駆動ローラ21と従動ローラとの間を周回してその上面に載置された記録媒体を副走査方向Yに沿った搬送方向Fに向かって搬送し、駆動ローラ21の回転が停止すると、両ローラ間での周回を停止し、記録媒体の搬送を停止する。
駆動モータ22は、制御装置90の制御に従って、ヘッド3が主走査方向Xに沿った片道1回分の走査が終了すると、駆動ローラ21を所定量だけ回転させて記録媒体を搬送方向に所定距離だけ搬送させて停止させ、ヘッド3が主走査方向Xの反対方向への走査を開始して終了すると、駆動ローラ21を再度所定量だけ回転させて記録媒体を搬送方向Fに所定距離だけ搬送させて停止させることを繰り返し、記録媒体をいわゆる間欠搬送する。
なお、記録媒体としては、紙や布帛のほか、樹脂フィルムや金属類等を用いることが可能である。
【0023】
[フレーム]
図1に示すように、フレーム100は、主走査方向Xに沿って延在する矩形の本体部101と、本体部101における主走査方向Xの一端部を支持する第一の土台部102と、本体部101における主走査方向Xの他端部を支持する第二の土台部103とから主に構成されている。
第一の土台部102は、その内部にノズル保湿部6を格納保持しつつ本体部101の一端部を下方から支持している。また、第二の土台部103は、その内部にメンテナンス部7を格納保持しつつ本体部101の他端部を下方から支持している。
本体部101は、後述する主走査装置5の一対のキャリッジレール51,51を主走査方向Xに向けた状態で内側に格納保持しており、キャリッジ4は本体部101の内部で主走査方向Xに沿って搬送される。
また、第一の土台部102と第二の土台部103は、前述した搬送装置2を挟んで主走査方向Xの両側に配置され、本体部101は搬送装置2の上方に架設されている。これにより、搬送装置2による記録媒体の搬送方向に直交する方向でキャリッジ4を搬送しつつ当該キャリッジ4に搭載された各ヘッド3からインクを吐出して画像形成を行うことを可能としている。
【0024】
[主走査装置及びキャリッジ]
主走査装置5は、フレーム100の本体部101の内部において、主走査方向Xに沿って延在するように支持された棒状の一対のキャリッジレール51,51を備えている。これら一対のキャリッジレール51,51は、搬送装置2の搬送ベルト23の上方を跨ぐように設けられている。そして、キャリッジレール51,51には、箱状のキャリッジ4が主走査方向Xに沿って往復移動可能に支持されている。
【0025】
キャリッジ4は上部が開放可能な略矩形の筐体であり、その底板に複数のヘッド3が搭載される。キャリッジ4は、図1に示すように、副走査方向Yにおける両側面の上部において副走査方向Yの両側に向かって腕部42,42が延出されており、当該各腕部42,42がそれぞれリニアガイドを介してキャリッジレール51,51の上部に載置されており、これによってキャリッジレール51,51上を主走査方向Xに沿って滑動可能となっている。
また、キャリッジレール51,51とキャリッジ4の腕部42,42の間にはリニアモータであるキャリッジ搬送モータ52が装備されている。即ち、各キャリッジレール51,51にはキャリッジ搬送モータ52(図13参照)の固定子が装備され、キャリッジ4の各腕部42,42には可動子が装備されており、固定子側のコイルの電流制御によりキャリッジ4は主走査方向Xに沿った搬送動作が付与される。
【0026】
図2は、キャリッジ4の底板41を上方から見た概略説明図である。このインクジェット記録装置10では、Y(イエロー),Lm(ライトマゼンタ),Or(オレンジ),M(マゼンタ),Bk(ブラック),Bl(ブルー),Lk(ライトブラック),C(シアン),Lc(ライトシアン)の九色のカラーについてそれぞれ九つのヘッド3からなるヘッド群を備え、合計81基のヘッド3がキャリッジ4の底板に取り付けられている。
各色彩のヘッド群は、図示のように、主走査方向Xに沿ってY,Lm,Or,M,Bk,Bl,Lk,C,Lcの順番で並んでおり、各ヘッド群の九つのヘッド3は、副走査方向Yに沿って千鳥状に並んで配置されている。
また、底板41は各ヘッド3の取り付け位置毎に副走査方向Yに沿ったスリット状の開口を備えており、底板41に対して上方から取り付けられた各ヘッド3は、開口を通じてキャリッジ4の真下にインクの液滴を吐出することを可能としている。
そして、前述のように、各色彩について、九つのヘッド3を千鳥状に配置することで、キャリッジ4の底板41における副走査方向Yのほぼ全幅に渡る範囲内で任意の位置に各色彩のインクの吐出を行うことを可能としている。
【0027】
[ヘッド]
図3はヘッド3の概略構造を示す断面図である。ヘッド3は、インクを吐出する複数のノズル311が形成されたノズルプレート31と、インクを各ノズル311に導く複数のチャネル321とチャネル321に対して容積変化を与えてインクを吐出させる複数の圧電素子322とを有するヘッドチップ32と、ヘッドチップ32の各圧電素子322に駆動電圧を印加するための配線基板33と、ヘッドチップ32の各チャネル321にフィルタ343を介してインクを導入するマニホールド34とを主に備えている。
【0028】
ノズルプレート31は矩形の平板であり、ヘッド3がキャリッジ4に搭載された状態において、その平板面がX−Y平面に平行となり、その長手方向が副走査方向Yに平行となる。
また、ノズルプレート31には、ノズル311となる貫通穴が副走査方向Yに沿って一列に並んで複数形成されている。
【0029】
ヘッドチップ32は直方体形状に形成されており、その底面にはノズルプレート31が取り付けられている。また、ヘッドチップ32は、ノズルプレート31の各ノズル311の配置に合わせて複数のチャネル321が副走査方向Yに沿って一列に並んで複数形成されている。各チャネル321は、ヘッドチップ32を上下に貫通したインク流路であり、マニホールド34内のインクを個別にノズル311に導くことができる。さらに、各々のチャネル321にはそれぞれ圧電素子322が隣接して設けられており、任意の圧電素子322に対して選択的に電圧を印加することにより、当該圧電素子322が膨張又は伸縮し、対応するノズル311からインクの吐出を行うことが可能となっている。
【0030】
ヘッドチップ32の上面には配線基板33が取り付けられている。配線基板33は、図示しないヘッド駆動回路とフレキシブル基板を介して接続されており、ヘッド駆動回路からの駆動電圧をヘッドチップ32の各圧電素子322に対して印加するための配線が施されている。
また、配線基板33は、マニホールド34の開放された下部を閉塞するように当該マニホールド34に取り付けられており、マニホールド34内のインクがヘッドチップ32の各チャネル321側に流通するように、矩形の開口が形成されている。
【0031】
マニホールド34は、長手方向が副走査方向Yに沿った状態で配置された内部中空の直方体であり、前述したように、その底部は開放されているが、当該開放部に配線基板33が嵌め込まれて閉塞されている。
また、マニホールド34の副走査方向Yの一端部側と他端部側の上部には、それぞれ内部に通じる円筒状の第一のポート341と第二のポート342とが形成されている。
また、マニホールド34の内部はインクの混入物を濾しとるフィルタ343によって上下に二分されており、上側の領域は第一のポート341及び第二のポート342につながっており、下側の領域はヘッドチップ32につながっている。つまり、第一のポート341又は第二のポート342により外部からマニホールド34内に供給されたインクは、フィルタ343により濾過されてヘッドチップ32側に移動し、各ノズル311から吐出される。
【0032】
[メンテナンス部:全体構成]
図4〜図12に基づいてメンテナンス部7について説明する。図4はメンテナンス部7の全体を示す斜視図、図5はメンテナンスユニットの斜視図、図6は図5と方向を変えてみたメンテナンスユニットの斜視図である。なお、以下の説明では、便宜上、主走査方向Xにおける一方の方向を「前」、その逆方向を「後」、副走査方向Yにおける一方の方向を「左」、その逆方向を「右」と定義する。
メンテナンス部7は、各ヘッド3のノズルプレート31の下面のワイピングを行う。メンテナンス部7は、搬送装置2から外れて、キャリッジレール51、51の前端部側に設けられている。即ち、キャリッジ4がキャリッジレール51、51の前端部のメンテナンス部7との対向位置まで移動した状態でメンテナンスが実施される。
【0033】
メンテナンス部7は、外周の上部がノズルプレート31の下面に摺接して拭き取り(ワイピング)を行うワイピングローラ71と、ワイピングローラ71を回転させるローラ回転機構72と、ワイピングローラ71の外周の下部を洗浄液に浸すために洗浄液を貯留する容器73と、ワイピングローラ71の外周に当接して洗浄液の吸収量を調節する調湿機構74と、ワイピングローラ71,ローラ回転機構72,容器73及び調湿機構74からなるワイピングユニットを搭載したユニットフレーム751を副走査方向Yに沿って搬送するローラ搬送機構75と、容器73に洗浄液を注水する注水機構76と、容器73に設けられた洗浄液排出口731の開閉動作を行う洗浄液排出機構77と、図示しないインク供給装置を作動させて任意のヘッド3又は全ヘッド3からインク吐出を行うためのインクトレー78(図15参照)とを備えている。
【0034】
[メンテナンス部:ワイピングローラ]
ワイピングローラ71は、外周が吸水性を備えるスポンジ等の素材からなり、主走査方向Xに沿った回転軸回りに回転可能となるようにユニットフレーム751の上部に支持されている。
このワイピングローラ71の主走査方向Xの幅が全ヘッド3の搭載エリアであるキャリッジ4の底板41における主走査方向Xにおける幅の三分の一の大きさに設定されており、片道一回の搬送により、キャリッジ4に搭載された九色のヘッド群の内の三色分のヘッド群の拭き取りが可能となっている。即ち、全ヘッド3のノズル面のワイピングを行うためには、一往復半の搬送動作が実施される。そして、これにより、インクの固化によるノズル311の目詰まりを防止する。
【0035】
[メンテナンス部:ローラ回転機構]
ローラ回転機構72は、ユニットフレーム751の後端部に設けられ、ワイピングローラ71の回転駆動源となるローラ回転モータ721と、ローラ回転モータ721の出力軸に設けられた主動歯車722と、ワイピングローラ71の回転軸の一端部に固定装備された従動歯車723と、主動歯車722から従動歯車723にトルク伝達を行う減速歯車列724とを備えている。
ローラ回転モータ721は、その回転速度を制御装置9により任意に制御することができ、ローラ回転モータ721の出力は各歯車722,723及び減速歯車列724を介してワイピングローラ71の回転軸に付与される。
【0036】
[メンテナンス部:容器]
容器73は、上部が開放された矩形のトレーであり、ワイピングローラ71を格納して内部に貯められた洗浄液でワイピングローラ71の外周下部を浸した状態とする。容器73内に格納された状態において、ワイピングローラ71は、その外周上部が容器73の上端部より幾分上方に突出した状態となり、外周における突出部分が各ヘッド3のノズルプレート31の下面(ノズル面とする)に摺接してワイピングを行うようになっている。
また、洗浄液は、各ヘッド3のノズル311に付着する残留インクを溶解する性質或いは付着物を膨潤して拭き取りを容易にする性質のものであれば良い。
このような容器73内において、ワイピングローラ71はその外周下部が洗浄液に浸された状態となり、ローラ回転機構72により回転されることで、洗浄液を吸収した状態で各ヘッド3のノズル面に摺接し、付着物や汚れを効果的に除去すると共に、ワイピングで汚れた部位が再び洗浄液に浸されて洗浄され、再び、清浄な状態でワイピングを行うことが可能となっている。
【0037】
図7は容器73の左前角部における平面図である。
容器73内の洗浄液は、繰り返されるワイピングにより汚れてきた場合には入れ替えの必要がある。このため、図7に示すように、容器73の底部には内外に貫通した洗浄液排出口731が形成されており、当該洗浄液排出口731の外側には、洗浄液排出口731の開閉の切替動作を行う洗浄液排出機構77が設けられている。
【0038】
[メンテナンス部:洗浄液排出機構]
図8は洗浄液排出機構77の斜視図、図9は洗浄液排出機構77及び調湿機構74の斜視図、図10(A)は後述する調湿機構74の調湿部材741をワイピングローラ71から離間させた状態を示す動作説明図、図10(B)は洗浄液排出機構77の蓋部材774を開放させた状態を示す動作説明図である。
図5〜10に示すように、洗浄液排出機構77は、ユニットフレーム751の左端面であって前端近傍に設けられており、ユニットフレーム751の左端面に固定装備されたブラケット材771と、ブラケット材771の下部において主走査方向Xに沿った支軸772により回動可能に支持されたアーム部材773と、支軸772を挟んで二方向に延びるアーム部材773の腕部773a,773bの一方の腕部773bに装備された洗浄液排出口731を閉塞可能な蓋部材774と、支軸772に設けられ,蓋部材774が洗浄液排出口731を閉塞する方向にアーム部材773を付勢する弾性体としてのねじりコイルバネ775とを備えている。
【0039】
上記蓋部材774は腕部773bの上面に装備され、容器73の底部に設けられた洗浄液排出口731に対して下方から上方に向かって押し当てられることにより閉塞することを可能とするパッキング材である。
アーム部材773は、前述したねじりコイルバネ775により、一方の腕部773aがユニットフレーム751の左端面から起立し突出した状態を維持されており、この状態において、他方の腕部773bは蓋部材774が洗浄液排出口731を閉塞する方向に押圧している。
そして、ねじりコイルバネ775に抗して、腕部773aを右側に倒すことで、腕部773bの蓋部材774が洗浄液排出口731から下方に離れて開放する構造となっている。
【0040】
上記蓋部材774による洗浄液排出口731の開閉動作の動力は、ローラ搬送機構75のローラ搬送モータ752から得ている。即ち、ユニットフレーム751を左方に移動し、アーム部材773の腕部773aをメインフレーム753の左側壁板753aに当接させて倒すことにより、蓋部材774による洗浄液排出口731の開放動作が行われるようになっている。また、ユニットフレーム751を右方に移動することにより、腕部773aが左側壁板753aから離れ、ねじりコイルバネ775により再び蓋部材774が洗浄液排出口731を閉塞する。
【0041】
[メンテナンス部:調湿機構]
図5,6,9,10に示すように、調湿機構74は、ワイピングローラ71の外周に当接して洗浄液の吸収量を調節する調湿部材741と、調湿部材741の両端部を保持する保持枠体742と、ユニットフレーム751の側壁部751aに設けられ,保持枠体742を所定方向に沿って摺動可能に支持する凸状ピン743,743と、保持枠体742を介して調湿部材741をワイピングローラ71の外周面に圧接させる弾性体としての引っ張りバネ744と、ローラ搬送機構75のメインフレーム753に設けられたカムブロック745(図4参照)と、保持枠体742に固定保持されると共にカムブロック745に当接することで調湿部材741をワイピングローラ71から離間する方向に移動させる従節ブロック746とを備えている。
なお、上記保持枠体742,凸状ピン743,743,引っ張りバネ744,カムブロック745及び従節ブロック746は、調湿部材741をワイピングローラ71に対する当接状態と離間状態とに位置切替可能に支持する支持機構として機能するものである。なお、図5及び図6ではワイピングローラ71に対する調湿部材741の当接状態を図示しており、図9及び図10ではワイピングローラ71に対する調湿部材741の離間状態を図示している。
【0042】
調湿部材741は、ワイピングローラ71に平行に隣接し、当該ワイピングローラ71とほぼ同じ長さでより小径な丸棒であり、ワイピングローラ71の外周部よりも剛性の高い素材で形成されている。かかる調湿部材741は、引っ張りバネ744の張力を受けてワイピングローラ71の外周面に圧接し、ワイピングローラ71がローラ回転機構72により回転駆動されることで、ワイピングローラ71の外周面に過剰に含浸された洗浄液を絞り落として適量の含浸量に調節する。
かかる調湿部材741は、ワイピングローラ71の頂点からその回転方向上流側の90°までの範囲で圧接するように配設されている。
【0043】
保持枠体742は、X−Y平面に平行な上壁部742aと、その主走査方向Xにおける両端部から垂下されたY−Z平面に平行な側壁部742b,742bとからなり、これら二つの側壁部742b,742bがその内側において調湿部材741のそれぞれの端部を保持している。
保持枠体742の側壁部742b,742bには、いずれも、三つの長穴742cが形成されており、ユニットフレーム751の側壁部751a,751aの外側の面に設けられた凸状ピン743,743と引っ張りバネ744の一端部を支持する支持突起747とがそれぞれ嵌合している。それぞれの長穴742cは、いずれもワイピングローラ71に対して調湿部材741を接離移動させる方向に沿って形成されている。つまり、保持枠体742は、ユニットフレーム751に対してその長穴742cに沿って摺動可能であり、当該摺動動作により、調湿部材741をワイピングローラ71に対して接離移動させることを可能としている。
【0044】
また、引っ張りバネ744は、一端部が上記支持突起747に連結され、長穴742cと同じ方向に向かって張設されるように他端部が保持枠体742に連結されている。これにより、引っ張りバネ744は、保持枠体742を介して、調湿部材741をワイピングローラ71の外周面に押圧している。
【0045】
保持枠体742のそれぞれの側壁部742bには、副走査方向Yに沿った状態で従節ブロック746が固定装備されている。各従節ブロック746が矩形の棒状であり、その左端部が保持枠体742及びユニットフレーム751の左端部から突出している。
そして、従節ブロック746の左端部における下角部にはテーパ面746aが形成されている。このテーパ面746aは、下向きであって右斜め下方向にそって傾斜している。
一方、カムブロック745は、メインフレーム753の左側壁板753aに固定装備されており、矩形に形成されている。そして、カムブロック745の右上角部の高さが、テーパ面746aの上端部から下端部の高さの間となるように取り付けられている。
これにより、ローラ搬送機構75のローラ搬送モータ752の駆動により、ユニットフレーム751が左側壁板753aまで搬送されると、従節ブロック746のテーパ面746aがカムブロック745の右上角部に当接し、テーパ面746aに従って摺動することで、従節ブロック746が右上方に反力を受けながらカムブロック745の上部に乗り上げる。これにより、ユニットフレーム751に対して従節ブロック746と共に保持枠体742がその長穴742cに沿って右上方に移動し、調湿部材741をワイピングローラ71に対する離間状態とすることが可能となっている。
また、ユニットフレーム751を右に移動することにより、従節ブロック746がカムブロック745から降りて、引っ張りバネ744の張力により保持枠体742が長穴742cにそって左斜め下に移動し、調湿部材741をワイピングローラ71に対する当接状態に戻すことも可能である。
つまり、調湿機構74では、ローラ搬送機構75のローラ搬送モータ752を駆動源として、調湿部材741の当接状態と離間状態とを切り替え可能としている。
【0046】
[メンテナンス部:ローラ搬送機構]
図11はローラ搬送機構75のユニットフレーム751を取り外した状態のメインフレーム753の斜視図である。
図4〜6,11に示すように、ローラ搬送機構75は、上述したワイピングユニットの各構成を搭載するユニットフレーム751と、副走査方向Yに沿った一対のガイド軸754によりユニットフレーム751を滑動可能に支持するメインフレーム753と、メインフレーム753の右側壁板753bの下部に装備されたローラ搬送モータ752と、ローラ搬送モータ752から動力を得て副走査方向Yに沿った往復動作をユニットフレーム751に付与する図示しないベルト機構とを備えている。
【0047】
メインフレーム753は、インクジェット記録装置10のフレーム100におけるキャリッジレール51,51の前端部の下側となる位置に、その長手方向が副走査方向Yに向けられた状態で取り付けられている。
メインフレーム753は、副走査方向Yにおける両端部にX−Z平面に平行な左右の側壁板753a,753bを備え、これらの側壁板753a,753bが一対のガイド軸754の端部を保持している。
【0048】
ユニットフレーム751は、矩形の底板751cと、底板751cの主走査方向Xにおける両端部から立設された前後の側壁部751a、751bと、底板751cの下部に設けられ、前述した一対のガイド軸754,754のそれぞれに対して滑動可能とするスライドガイド751d,751eとを備えている。
このユニットフレーム751は、前述したベルト機構の搬送ベルトが連結されており、ローラ搬送モータ752の回転駆動により副走査方向Yに沿った往復動作が付与される。
また、ユニットフレーム751の前後の側壁部751a、751bは、いずれもY−Z平面に平行な平板であり、ワイピングローラ71、調湿部材741と、保持枠体742の両端部を支持している。また、これら側壁部751a,751bは、容器73と一体的に形成されている。即ち、これら側壁部751a,751bは、容器73における主走査方向Xの両端部の側壁としても機能している。
【0049】
スライドガイド751d,751eは、それぞれ底板751cの主走査方向Xにおける両端部の底面側に取り付けられている。
また、一方のスライドガイド751eには、副走査方向Yにおけるユニットフレーム751の位置検出を行うための被検出板755が併設されている。
【0050】
メインフレーム753には、図11に示すように、副走査方向に沿って第一〜三の位置センサ756,757,758が取り付けられている。これらのセンサ756,757,758は、ユニットフレーム751に取り付けられた被検出板755が通過する副走査方向に沿ったスリットを備え、当該スリットを挟んで配置された光源と受光素子とを備えている。即ち、このスリットに被検出板755が侵入すると遮光され、受光素子がユニットフレーム751の存在を検知する構造となっている。
そして、第一の位置センサ756は、ガイド軸754の右端部近傍に、第三の位置センサ758はガイド軸754の左端部近傍に、第二の位置センサ757はガイド軸754の中間位置よりも左端部寄りの位置の近傍に設けられている。
これらの内、第一の位置センサ756から第二の位置センサ757までの間はワイピングローラ71によるワイピング動作をおこなう往復動作範囲を規定している。即ち、第一の位置センサ756で被検出板755が検出されてから第二の位置センサ757で被検出板755が検出されるまで(或いはその逆)ユニットフレーム751を搬送してワイピングローラ71による各ヘッド3のワイピングが行われる。
即ち、主走査装置5により搬送されるキャリッジ4はこれら第一の位置センサ756と第二の位置センサ757の間を通過するように、各センサ756,757が配置されている。
【0051】
また、第二の位置センサ757と第三の位置センサ758の間は、ワイピングユニットの退避領域であり、ワイピングを行わない時には、被検出板755が第三の位置センサ758により検出される位置でユニットフレームは停止される。この位置をワイピングユニットのホームポジションとする。
ここで、第三の位置センサ758と前述した調湿機構74及び洗浄液排出機構77との関係について図10により説明する。
【0052】
ユニットフレーム751をホームポジションで停止させるために、左方に向かって搬送した場合、被検出板755が第三の位置センサ758により検出される手前の位置で従節ブロック746がカムブロック745に当接し、乗り上げ動作を開始する。そして、従節ブロック746がカムブロック745の上に乗り上げて調湿部材741がワイピングローラ71から離間した状態で第三の位置センサ758が被検出板755を検出し、ローラ搬送モータ752の駆動が停止される(図10(A)の状態)。
この時、洗浄液排出機構77のアーム部材773の腕部773aはまだメインフレーム753の左側壁板753aには接しておらず、蓋部材774による洗浄液排出口731の閉塞状態は維持されている。つまり、ワイピングユニットがホームポジションに位置するときには、容器73内の洗浄液は排水されない。
【0053】
そして、洗浄液を排水するために予め設定された条件が満たされた場合には、洗浄液の排水制御が実施される。この場合の洗浄液の排水条件は任意に定めることが可能である。例えば、オペレーターが後述する入力操作部94(図13参照)から洗浄液の排水の実行を指示した場合に排水を行うように設定することや、ワイピングの実施回数を常にカウントし、所定回数を超えた場合に自動的に実施するよう設定することも可能である。
排水制御の際には、ユニットフレーム751を左方に向かって搬送し、第三の位置センサ758により被検出板755が検出されると、さらに、搬送を継続する。そして、第三の位置センサ758を被検出板755が完全に通過して、遮光状態から脱した時点で搬送を停止する。
即ち、ワイピングユニットがホームポジションよりさらに左方に移動すると、洗浄液排出機構77のアーム部材773の腕部773aがメインフレーム753の左側壁板753aに当接を開始し、第三の位置センサ758を被検出板755が完全に通過すると、腕部773aは完全に左側壁板753aに押し倒されるように、これらの配置が設定されている。従って、第三の位置センサ758が遮光状態から脱したことを検出すると、蓋部材774は洗浄液排出口731を開放し、容器73内の洗浄液の排水が実行される。
このように、メンテナンス部7では、第三の位置センサ758のみの検出により、調湿部材741の位置切替と蓋部材774の開閉の切替の二つの制御を可能としている。
【0054】
[メンテナンス部:全体構成]
メインフレーム753の左端部には、容器73に対して洗浄液の注水を行う注水機構76が設けられている。この注水機構76は、メインフレーム753の左側壁板753aの前端部に設けられた注水ノズル761と、図示しない洗浄液タンクから注水ノズル761に洗浄液を圧送する注水ポンプ762と、容器73内の洗浄液の満水を検出する液量検出装置763とから主に構成されている。
【0055】
注水ノズル761は、左側壁板753aの上端から上方に延び、さらに、右側に屈曲している。そして、その先端部から洗浄液を真下に向かって放出する。
注水機構76による洗浄液の注水は、ワイピングユニットがホームポジションに位置する時に行われる。前述した図7は、ワイピングユニットがホームポジションに位置する場合における容器73に対する注水ノズル761の配置を二点鎖線で図示している。図示のように、注水ノズル761の先端部は容器73の-洗浄液排出口731の鉛直上方に位置している。容器73の-洗浄液排出口731は、排水時に汚れた洗浄液が必ず通過する部位であるため、残留インク等の汚れが付着しやすいが、注水ノズル761の先端部を上記配置とすることにより、注水された洗浄液が-洗浄液排出口731にたまる付着残留物を水流で除去することが可能となっている。
【0056】
図12は液量検出装置763の斜視図である。図示のように、液量検出装置763は、容器73に設けられた液量検出部材764と、メインフレーム753の左側壁板753aに設けれた液量検出センサ765とからなる。
液量検出部材764は、容器73の近傍の外部において部材の揺動を可能とする支点部764aと、支点部764aから容器73の内部に延出された一方の腕部に装備された浮き子764bと、支点部764aから左側壁板753a側に延出された他方の腕部に設けられた板状の遮蔽部764cとから構成されている。支点部764aは主走査方向に沿った軸回りの揺動を可能とし、これにより、液面の高さに応じて浮き子764bが上下動を行うと、左下方に延出された遮蔽部764cは概ね副走査方向Yに沿って揺動を行う。
一方、液量検出センサ765は、副走査方向Yに沿ったスリットを備え、当該スリットを境に光源と受光素子とが対向配置される構造となっている。そして、液量検出センサ765のスリットは、副走査方向Yに沿って揺動を行う遮蔽部764cの移動範囲に位置しており、容器73内に規定量の洗浄液が注水された時の液面高さに浮き子764bが浮上した状態において、遮蔽部764cが液量検出センサ765のスリット内に侵入し、遮光するよう設計されている。
これにより、液量検出装置763は、容器73に対する洗浄液の給水の際に、液量検出センサ765の遮光状態が検出されることで洗浄液の給水の停止を判定することが可能となっている。
【0057】
[ノズル保湿部]
ノズル保湿部6は、搬送装置2から外れて、キャリッジレール51、51の他端部側に設けられている。即ち、非記録動作時に、キャリッジ4がキャリッジレール51、51の他端部のノズル保湿部6との対向位置まで移動し、かかる状態で各ヘッド3のノズル311の保湿を行う。
即ち、このノズル保湿部6は、ノズルプレート31の各ノズル311に密着して、各ノズル内部を保湿液の貯蔵部に接続した状態とするためのものであり、主に、保湿液の貯蔵部とその昇降機構とにより構成されている。
【0058】
[インク供給装置]
インク供給装置は、インクを貯留したインクタンク、インク供給経路、インクから気泡弥溶存気体を抜き取る脱泡装置、インク供給ポンプ、インクの吐出時にヘッド3内を所定の負圧状態とする負圧形成部等の周知の構成からなる。
かかるインク供給装置は、画像形成時における各ヘッド3へのインクの供給と、目詰まり解消のためのメンテナンス時のインクの供給とを実行することが可能となっている。
【0059】
[制御装置]
図13はインクジェット記録装置10の制御系を示すブロック図である。図13に記載の制御装置9はインクジェット記録装置10全体の制御を行うが、ここでは主に、メンテナンス部7において行われる制御に関して例示するものとする。
制御装置9は、外部装置から入力された記録媒体に記録すべき画像の画像データをヘッド3の各ノズル311に対応するデータに変換する等、メンテナンス部7の制御だけでなく、インクジェット記録装置10の各部の駆動も制御する。
図13に示すように、制御装置9は、CPU91、ROM92、RAM93、図示しない入出力インターフェース等がバスに接続された汎用のコンピュータで構成されている。
この制御装置9には、注水ポンプ762,駆動モータ22,キャリッジ搬送モータ52,ローラ回転モータ721,ローラ搬送モータ752が接続されており、制御装置9ではこれらを制御対象としている。
また、制御装置9には、第一〜第三の位置センサ756,757,758,液量検出センサ765が接続されており、これらから各種の検出信号が入力される。
さらに、制御装置9には、オペレーターからの各種動作の実行等の支持入力を行う入力操作部94,エラー情報など各種の情報表示を行う表示部95等も接続されている。
そして、制御装置9は、これらの検出情報に従って、上記各制御対象に対して、各ヘッドの洗浄制御してのワイピング制御を実施する。
【0060】
[ヘッドのワイピング制御]
図14はワイピング制御のフローチャート、図15はワイピング制御の動作説明図、図16はワイピング制御における搬送速度とローラ回転速度の関係を示す説明図である。これらに基づいてワイピング制御を説明する。
ワイピング制御では、ワイピングユニットによりキャリッジ4上の全ヘッド3に対してそれぞれのノズルプレート31の底面の拭き取りが実施される。
このインクジェット記録装置10におけるキャリッジ4はヘッドを81基搭載する大型のものであり、ワイピングの対象範囲は広大となる。即ち、キャリッジ4の底板41には、千鳥状に九つのヘッドが副走査方向Yに沿って並んだヘッド群が九色の各色彩毎に主走査方向Xにそって隣接している。
これら81基のヘッド3を同時にワイピングするには非常に大型且つ剛性の高いワイピングローラが必要となるため、このインクジェット記録装置10では小型のワイピングローラ71を使用して複数回に分けてワイピングを行っている。
即ち、このワイピング制御では、三列分のヘッド群の主走査方向Xの幅に対応するワイピングローラ71を用いて一往復半(三回)の副走査方向Yに沿った搬送を行い、副走査方向Yに沿った片道分の搬送を行う毎にキャリッジ4を三列分のヘッド群の幅と同じ距離だけ主走査方向Xに搬送することで全てのヘッド3についてワイピングを実施する(図15参照)。
【0061】
また、ワイピングにおいて、ワイピングローラ71の回転方向は一定だが、往路の搬送と復路の搬送とでは搬送方向が逆となるので、往路と復路とでヘッド3のノズルプレート31に対するワイピングローラ71の相対的な摺動速度の均一化を図るために、往路と復路とでワイピングローラ71の回転速度を変えて調整を図っている。
即ち、往路におけるワイピングローラ71の副走査方向の搬送速度がα、ワイピングローラ71の回転による外周の速度がβ1である場合、ノズルプレート31に対するワイピングローラ71の摺動速度はα+β1となる。
一方、復路におけるワイピングローラ71の副走査方向の搬送速度が逆方向にα、ワイピングローラ71の回転による外周の速度がβ2である場合、ノズルプレート31に対するワイピングローラ71の摺動速度は−α+β2となる。
往路と復路とで摺動速度の均一化を図る場合、α+β1=−α+β2となる。
従って、ローラ搬送速度を往路と復路でαとする場合、往路の回転速度β1に対して、復路の回転速度β2=β1+2αとすれば良い。
例えば、図16のように、往路においてワイピングローラ71の回転速度を187[mm/sec]、搬送速度を50[mm/sec]とし、ワイピングローラ71の外周における摺動方向と逆方向に搬送が行われる場合、復路のワイピングローラ71の回転速度は、
187+2×(-50)=87[mm/sec]
となる。これにより、ワイピングローラ71とノズルプレート31との間の相対的な摺動速度が往路と復路とで一定となる。
なお、ここでの回転速度と搬送速度の数値は一例に過ぎず、上述の相対的な摺動速度が往路と復路とで一定となる条件を満たせば、数値は任意に変更可能である。
【0062】
以下、その動作制御を説明する。
まず、制御装置9は、キャリッジ搬送モータ52の駆動によりキャリッジ4をメンテナンス部7に搬送する。当初、キャリッジ4は、図15(A)に示すように、ワイピングユニットに隣接するインクトレー78の直上で待機する。また、ワイピングローラ71は、第二の位置センサ757による検出ポジションで待機する。
【0063】
そして、図15(B)に示すように、キャリッジ搬送モータ52の駆動によりキャリッジ4を三つのヘッド群の幅と同じ距離だけ搬送する。次いで、ローラ回転モータ721の駆動によりワイピングローラ71を回転させると共にローラ搬送モータ752の駆動によりワイピングユニットの往路の搬送を開始する(ステップS431)。この時の回転速度と搬送速度は図16(A)の例に示す通りである。
制御装置9は、第一の位置センサ756によるワイピングユニットの検出が行われるまで、ワイピングローラ71の回転と搬送を継続して行う。これにより、一番目から三番目のヘッド群のノズルプレート31がワイピングローラ71に摺接してワイピングが行われる。
【0064】
次に、図15(C)に示すように、キャリッジ搬送モータ52の駆動によりキャリッジ4をさらに三つのヘッド群の幅と同じ距離だけ搬送する(ステップS433)。
そして、ローラ回転モータ721の駆動によりワイピングローラ71を回転させると共にローラ搬送モータ752の駆動によりワイピングユニットの復路の搬送を開始する(ステップS435)。この時の回転速度と搬送速度は図16(B)の例に示す通りである。
制御装置9は、第二の位置センサ757によるワイピングユニットの検出が行われるまで、ワイピングローラ71の回転と搬送を継続して行う。これにより、四番目から六番目までのヘッド群のノズルプレート31がワイピングローラ71に摺接してワイピングが行われる。
【0065】
次に、図15(D)に示すように、キャリッジ搬送モータ52の駆動によりキャリッジ4をさらに三つのヘッド群の幅と同じ距離だけ搬送する(ステップS437)。
そして、ローラ回転モータ721の駆動によりワイピングローラ71を回転させると共にローラ搬送モータ752の駆動によりワイピングユニットの二回目の往路の搬送を開始する(ステップS439)。この時の回転速度と搬送速度は図16(A)の例に示す通りである。
制御装置9は、第一の位置センサ756によるワイピングユニットの検出が行われるまで、ワイピングローラ71の回転と搬送を継続して行う。これにより、七番目から九番目までのヘッド群のノズルプレート31がワイピングローラ71に摺接してワイピングが行われる。
【0066】
次に、図15(E)に示すように、キャリッジ搬送モータ52の駆動によりキャリッジ4をインクトレー78の直上位置へ待避させる(ステップS441)。
また、ワイピングユニットは、ホームポジションへ戻される(ステップS443)。即ち、制御装置9は、第三の位置センサ758によるワイピングユニットの検出が行われるまで、ワイピングユニットの搬送を継続して行う。
これにより、ワイピングユニットでは、ユニットフレーム751に搭載された従節ブロック746がカムブロック745に摺接し、調湿部材741がワイピングローラ71から離間される。
【0067】
ここで、制御装置9は、ワイピングユニットの容器73内の洗浄機液について交換条件が満たされているかを判定する(ステップS445)。交換条件は、例えば、入力操作部94から洗浄液の交換の指示入力が行われているか、或いは、ワイピングの実行回数を積算して記録しておき、前回の洗浄液の交換からのワイピングの実行回数が交換すべき規定回数に達しているか、或いは、容器73内に洗浄液の透明度を検出する光学式のセンサを搭載し、透明度が規定値より低くなったか等である。
そして、交換条件が満たされていない場合には、ワイピング制御は終了となる。
【0068】
また、交換条件が満たされていると判定した場合には、制御装置9は、ワイピングユニットの搬送を第三の位置センサ758によるワイピングユニットの検出が行われてからも継続して実行する。そして、第三の位置センサ758がワイピングユニットの検出状態から被検出状態(被検出板755による遮光状態から被遮光状態に移行)に移行したら、ローラ搬送モータ752を停止させる(ステップS447)。
ワイピングユニットを洗浄液の排出ポジションまで移動したことにより、洗浄液排出機構77のアーム部材773の腕部773aがメインフレーム753の左側壁板753aに当接し、回動せしめられ、蓋部材774が洗浄液排出口731を開放する。これにより、容器73内の洗浄液が外部に排出される。
【0069】
ワイピングユニットは上記排出ポジションで所定時間待機し、これにより、容器73内の洗浄液を全て排出する。そして、所定時間が経過すると、ワイピングユニットは、ホームポジションに戻される(ステップS449)。即ち、第三の位置センサ758によりワイピングユニットが検出されるまでワイピングユニットを右方向に搬送する。これにより、洗浄液排出機構77のアーム部材773がねじりコイルバネ775によって復帰回動を行い、蓋部材774が洗浄液排出口731を再び閉塞する。
【0070】
次に、制御装置9は、注水ポンプ762を作動させて、容器73内に洗浄液を注水する。この注水時には、液量検出センサ765のセンサ出力を監視し、洗浄液の液面が所定の高さとなり、液量検出部材764による遮光状態が検出されると、注水ポンプ762を停止してワイピング制御を終了する。
【0071】
[発明の実施形態における技術的効果]
インクジェット記録装置10は、同じ色彩の九つのヘッド3が副走査方向Yに沿って並んでヘッド群を構成し、これに対して、ワイピングローラ71は、主走査方向Xに沿った回転軸により回転しながら副走査方向Yに沿った搬送により各ヘッド3のノズルプレート31に摺接して洗浄する。このため、ワイピングローラ71が同一色彩のヘッド群に沿って移動を行うことから、各ヘッド3に対する色移りの発生を回避し、画質の低下を防止することが可能となる。
さらに、ワイピングローラ71の往復搬送における片道の移動動作毎にキャリッジ4を間欠的にワイピングローラ71の幅に対応する距離だけ搬送して平面状に並んだ複数のヘッド3を三回に分けて洗浄するので、ワイピングローラ71の幅を平面状に並んだ全ヘッド3の配設領域における主走査方向の幅(九列分の幅)の三分の一とすることができ、多数のヘッド3を搭載する場合であっても、ワイピングローラ71の撓みが抑制される。従って、ワイピングローラ71の撓みを防止するために各部の剛性を高める必要がなく、メンテナンス部7及びインクジェット記録装置10の大型化、重量増加を回避しつつヘッド全体を均一且つ効果的に洗浄することが可能となる。
なお、ワイピングローラ71はより幅を小さくして搬送回数を増やすことも可能である。また、ワイピングローラ71を全ヘッド3の配設領域の主走査方向Xの幅の約二分の一とし、二回の搬送(一往復の搬送)によってワイピングを行うことも可能である。
【0072】
また、制御装置9は、ワイピングユニットの搬送時に往復移動の往路と復路とでローラ回転モータ721の回転速度が、ノズルユニット31とワイピングローラ71との間の相対的な摺動速度が等しくなるように調整するので、ワイピングローラ71の往路と復路とで均質な洗浄を行うことができ、全ヘッド3について効果的な洗浄を行うことが可能となる。
【0073】
また、調湿部材741におけるワイピングローラ71に対する当接状態と離間状態との位置切替の動力をローラ搬送モータ752から得る構成としているので、調湿部材の位置切替の専用の駆動源を不要とし、部品点数低減を図ることが可能となる。
また、同様に、洗浄液排出機構77の蓋部材774の開閉の切替動作の動力もローラ搬送モータ752から得る構成としているので、開閉の切替動作の専用の駆動源を不要とし、部品点数低減を図ることが可能となる。
さらに、これらにより、低減された駆動源の配線も不要となるので、メンテナンス部7のように洗浄液を使用する環境下での漏電などを原因とする故障の発生を防止し、装置の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0074】
また、インクジェット記録装置10では、注水ノズル761の先端部をワイピングユニットがホームポジションに位置する場合の容器73の洗浄液排出口731の鉛直上方に配置する構成としたので、洗浄液の注水により、汚れのたまりやすい洗浄液排出口731の周囲に洗浄液を当てるので、汚れのたまりを防止し、容器内を常に清浄に維持することが可能となる。
【0075】
[その他]
ワイピング制御における往路と復路のワイピングローラ71の回転速度の調整について他の例を図17に基づいて説明する。
ワイピングローラ71がワイピングを行う頂点よりも、調湿部材741は回転方向における上流側で接する必要があるため、ワイピングローラ71の回転方向は一定する制限がある。これに対して、ワイピングローラ71の頂点位置を挟んで両側に調湿部材741を配置し、これらを選択的にワイピングローラ71に当接可能とする構成としても良い。
具体的には、二つの調湿部材741を揺動可能な支持部材741Aで支持し、揺動によりいずれか一方の調湿部材741のみがワイピングローラ71に当接可能とし、この切替を行うアクチュエータを制御装置9により制御可能とする。そして、往路の搬送時と復路
の搬送時とでワイピングローラ71の回転方向を正逆に切り替えると共に、回転方向上流側となる調湿部材741が当接するようにアクチュエータを制御する(図17(A)と(B)
)。このような構成について上記制御を行うことで、往路と復路とで同じ速度で搬送する場合に、往路と復路とローラの回転方向を互いに逆且つ回転速度は同じとすることが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
3 ヘッド
31 ノズルプレート
4 キャリッジ
5 主走査装置
7 メンテナンス部(ヘッド洗浄機構)
9 制御装置(制御部)
10 インクジェット記録装置
71 ワイピングローラ
73 容器
75 ローラ搬送機構
77 洗浄液排出機構
721 ローラ回転モータ
731 洗浄液排出口
741 調湿部材
742 保持枠体(支持機構)
743 凸状ピン(支持機構)
744 引っ張りバネ(支持機構)
745 カムブロック(支持機構)
746 従節ブロック(支持機構)
752 ローラ搬送モータ
761 注水ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドを平面状に並べて保持するキャリッジと、
前記キャリッジを主走査方向に沿って搬送する主走査装置と、
前記複数のヘッドのノズル面の洗浄を行うヘッド洗浄機構とを備え、
前記キャリッジは、同一の色彩のインクを吐出する複数のヘッドを前記主走査方向に直交する副走査方向に並べてなるヘッド群を複数種類の色彩のそれぞれについて前記主走査方向に隣接するように保持し、
前記ヘッド洗浄機構は、前記複数のヘッドのノズル面にその上部が摺接しながら前記主走査方向に沿った回転軸回りに回転するワイピングローラと、前記ワイピングローラの下部を洗浄液に浸すための容器と、ローラ搬送モータにより前記ワイピングローラ及び前記容器を前記副走査方向に沿って往復搬送するローラ搬送機構とを備え、
前記主走査装置と前記ローラ搬送機構とに対して、前記ワイピングローラの往復搬送における片道の移動動作毎に前記キャリッジを間欠的に搬送し、平面状に並んだ複数の前記ヘッドを複数回に分けて洗浄する洗浄制御を行う制御部を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記ヘッド洗浄機構は、前記ワイピングローラを回転させる回転モータを備え、
前記制御部は、前記回転モータと前記ローラ搬送モータとを制御して、前記複数のヘッドに対する前記ワイピングローラの外周部の摺動速度が一定となるように前記往復移動の往路と復路とで前記回転モータの回転速度を調整することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記ヘッド洗浄機構は、
前記ワイピングローラの外周に当接して洗浄液の吸収量を調節する調湿部材と、
前記調湿部材を前記ワイピングローラに対する当接状態と離間状態とに位置切替可能に支持する支持機構とを備え、
前記支持機構は、前記ローラ搬送モータによる前記ワイピングローラの搬送移動から動力を受けて前記調湿部材の位置切替を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ヘッド洗浄機構は、
前記容器に設けられた洗浄液排出口の開閉の切替動作を行う洗浄液排出機構を備え、
前記洗浄液排出機構は、前記ローラ搬送モータによる前記ワイピングローラの搬送移動から動力を受けて前記洗浄液排出口の開閉の切替動作を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ヘッド洗浄機構は、予め定められた停止位置に位置する前記容器に対して上方から洗浄液を注水する注水ノズルを備え、
前記注水ノズルの先端部が、前記停止位置に位置する容器の洗浄液排出口の鉛直上方に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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