説明

インクジェット記録装置

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、インクジェット記録装置に関し、詳しくは、記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと記録ヘッドから空吐出によって排出された廃インクを収納する廃インクカートリッジとが個別に交換可能にインクジェット記録装置に関する。
〔従来の技術〕
インクカートリッジと廃インクカートリッジとが一体型に構成されて同時に交換するインクジェット記録装置では、従来インクカートリッジの方にインクが無くなったことを検知する手段が設けられており、インクが無くなるとその検知によって使用者に警告を発するなどしてカートリッジの交換を促すようにしている。
また、インクカートリッジと廃インクカートリッジとが別個に設けられているインクジェット記録装置では、上述のようにインクの残量を検知する手段の外に、廃インクカートリッジの装着の有無を検知する手段が必要であった。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、この種の従来のインクジェット記録装置にあって、インクカートリッジと廃インクカートリッジとがそれぞれ交換可能なように個別に設けられている場合は、一体型の使い捨てより経済的には優れているものの、上述したようにインク残量検知手段の外に廃インクカートリッジの装着を検知する手段を必要とする。
本発明の目的は、上述した従来の課題に着目し、その解決を図るべく、インクカートリッジが装着されている限り、廃インクカートリッジの装着を特別に確認する必要がなく、従って、その有無検知手段を別個に設ける必要がないコスト低減に貢献でき経済性の優れたインクジェット記録装置を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
かかる目的を達成するために、本発明は、交換可能なインクカートリッジおよび廃インクカートリッジを有するインクジェット記録装置においてインクカートリッジおよび廃インクカートリッジを個々に装着可能な保持部材と、保持部材に関連して配設され、廃インクカートリッジを装着しない限り、インクカートリッジの装着を許可せず、インクカートリッジを装着した状態では廃インクカートリッジの取外しを禁止する着脱規制手段とを具えたことを特徴とするものである。
〔作用〕
本発明によれば、着脱規制手段によって、必らず廃インクカートリッジが優先的に保持部材に装着され、しかもインクカートリッジが装着された後は、インクカートリッジを取外さない限り廃インクカートリッジの取外しが許可されないので、インクカートリッジが装着されている限りいちいち廃インクカートリッジの装着の有無を監視する必要がなくなった。
〔実施例〕
以下に、図面に基づいて本発明の実施例を詳細かつ具体的に説明する。
第1図は本発明の第1実施例を示す。ここで、1はインクカートリッジ、2は廃インクカートリッジ、3はインクカートリッジ1および廃インクカートリッジ2を着脱自在に保持するカートリッジ保持部材である。また、本例のインクカートリッジ1は図に示すように片側に沿って切欠かれた溝1Aを、更にまた廃インクカートリッジ2は溝1Aと対向する側に切欠き部2Aを有する。
4はカートリッジ保持部材3の上部に立設したピン5の周りに摺動自在な廃インクカートリッジ係止用のレバー部材であり、レバー部材4の両端部4Aおよび4Bは上述した溝1Aおよび切欠き部2Aに対応した形状に形成されている。6はピン5に取付け、レバー部材4の側面をストッパ部7に偏倚させて図示の状態に保つねじりばねである。また、カートリッジ保持部材3のインクカートリッジ収納部3Aの終端部および廃インクカートリッジ収納部3Bの終端部にはインクカートリッジ1を引入れたときにカートリッジ1内の不図示のインク袋に刺入れられるインク供給用針8および廃インクカートリッジ2に廃インクを排出するためのドレンパイプ9がそれぞれ配設されている。
このように構成したカートリッジ保持部にあって、第2図2図に示すようにカートリッジ保持部材3にインクカートリッジ1および廃インクカートリッジ2の双方が共にセットされない状態の時は、ばねばね力によってレバー部材4の端部4Aがインクカートリッジ収納部3Aの側に突出しているので、この状態のまま、インクカートリッジ1を収納部3Aに入れ込むことはできない。
しかし、第2図の状態で、まず、廃インクカートリッジ2を収納部3Bに矢印の方向に沿って入れ込むと、ばね6のばね力に抗してレバー部材4を反時計回りの方向に回動させ、最終的には第3図に示すように廃インクカートリッジ2の切欠き部2Aにレバー部材4の端部4Bが嵌まり込むことによって装着が達成される。しかして、この状態ではレバー部材4の他方の端部4Aが第3図に示す位置に保たれることによってインクカートリッジ1の装着が妨げられることはない。
すなわち、先に廃インクカートリッジ2を装着することによって、初めてインクカートリッジ1を装着することでき、しかも第3図に示すように双方の装着後はレバー部材4の端部4Bが廃インクカートリッジで2の切欠き部2Aに係合しているのでインクカートリッジ1をセットしたままの状態で廃インクカートリッジ2を引抜くことが禁止される。以上のことからインクカートリッジ1の装着されている限り廃インクカートリッジ2が必らず装着されていることになり、廃インクカートリッジ2の装着の有無を特別に検知する必要がなくなる。
第4図は本発明の第2の実施例を示す。ここで、11はインクカートリッジ、12は廃インクカートリッジ、13および14はそれぞれインクカートリッジ11用および廃インクカートリッジ12用の保持部材である。しかして本例の場合、カートリッジ11および12の対向する面に図に示すような上下方向のピン11Aおよび12Aがそれぞれ設けられている。15はインクカートリッジ用保持部材13の収納部13Aを横切るようにして設けられた扉であり、軸ピン16の周りに揺動自在に保たれる。17は保持部材13の一方の側に固定された板ばねであり、テーパ部17Aと溝部17Bとを有し、インクカートリッジ11を収容部13Aに差入れたときにテーパ部17Aを介して板ばね17を矢印P方向に撓ませ、その溝部17Bから扉15の縁を解放する役割をなす。
また18は、保持部材13の他方の側に端部が固定された第2の板ばねであり、第4図に示すようにインクカートリッジ11および廃インクカートリッジ12の未装着状態では板ばね18の折曲げられた係止部18Aが扉15の裏面に当接することにより扉15が時計回りの方向に揺動するのを阻止している。更にまた第2板ばね18には八の字型に開いた口部を有するピン案内部材19が取付けられていて、その口部19Aを介してピン11Aおよび12Aを導入し、それによって第2板ばね18の向きを拘束することができる。
このように構成したカートリッジ保持部にあっては、第4図に示すように廃インクカートリッジ12が収納部14Aに収納されていない限り、板ばね17の溝部17Bと第2板ばね18の係止部18Aとによって扉15が立設の状態に保たれるので、インクカートリッジ11の収納部13Aの装着が拒まれる。それに対し、廃インクカートリッジ12の方はその装着にあたり、そのピン12Aがピン案内部材19の口部19Aから部材19に沿って導かれることにより第5図に示すようにして第2板ばね18を保持部材14の側に偏倚させ、その係止部18Aを扉15の当接位置から移動させることができ、また、カートリッジ12自体をなんの抵抗もなく収納部14Aに装着することができる。
よって、この状態でインクカートリッジ11を収納部13Aに装着することが可能となり、この場合、その装着動作に伴って板ばね17による扉15の係止動作も解除される。第5図はこのようにして双方のカートリッジ11および12が収納部に収納装着された状態を示し、この場合、ピン12Aの方はピン案内部材19の係止溝19Bに係止された状態に保たれるので、インクカートリッジ11を装着のまま廃インクカートリッジ12を引抜くことはできない。
第6図は本発明の第3の実施例を示す。本例でのカートリッジ保持部側の構成は第1図に示した例と変わるところはないが、本例の場合、インクカートリッジ21と廃インクカートリッジ22とは全く同形に構成される。従って、双方のカートリッジには共にその両側に溝1Aと切欠き部2Aがそれぞれ形成されており、いずれのカートリッジも3A,3Bのいずれの収納部にも装着することができる。そこで、インクカートリッジ21が空になった場合は、そのカートリッジ21をそのまま廃インクカートリッジ22として流用可能とするもので、部品の種類を減らし、コストの低減に貢献することができる。
〔発明の効果〕
以上説明してきたように、本発明によれば、インクカートリッジおよび廃インクカートリッジが個々に装着可能なカートリッジ保持部材に廃インクカートリッジを装着しない限りインクカートリッジの装着を許可せず、インクカートリッジを装着した状態では廃インクカートリッジの取外しを禁止する着脱規制手段を設けたので、インク残量検知手段によってインクカートリッジ内のインクの有無を検知するだけで、インクカートリッジの交換時には必らず廃インクカートリッジが装着されることによって、廃インクカートリッジの装着の有無を特別に検知する必要がなくなり、装置の簡素化とコスト低減に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1実施例によるカートリッジ保持部の構成を示す斜視図、
第2図および第3図は第1図に示すカートリッジ保持部でのインクカートリッジ、廃インクカートリッジの装着前および装着後の状態を示す平面図、
第4図は本発明の第2実施例によるカートリッジ保持部の構成を示す斜視図、
第5図は第4図に示すカートリッジ保持部にインクカートリッジおよび廃インクカートリッジを装着した状態を示す平面図、
第6図は本発明の第3実施例によるカートリッジ保持部とインクカートリッジおよび廃インクカートリッジとの関係を示す斜視図である。
1,11,21……インクカートリッジ、
1A……溝、
2,12,22……廃インクカートリッジ、
2A……切欠き部、
3,13,14……カートリッジ保持部材、
3A,3B,13A,14A……収納部、
4……レバー部材、
4A,4B……端部、
5……ピン、
6……ねじりばね、
7……ストッパ部、
8……インク供給用針、
9……ドレンパイプ、
11A,12A……ピン、
15……扉、
17,18……板ばね、
17A……テーパ部、
17B……溝部、
18A……係止部、
19……ピン案内部材、
19B……係止溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】交換可能なインクカートリッジおよび廃インクカートリッジを有するインクジェット記録装置において、前記インクカートリッジおよび廃インクカートリッジを個々に装着可能な保持部材と、当該保持部材に関連して配設され、前記廃インクカートリッジを装着しない限り、前記インクカートリッジの装着を許可せず、当該インクカートリッジを装着した状態では前記廃インクカートリッジの取外しを禁止する着脱規制手段とを具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】前記インクカートリッジと前記廃インクカートリッジとは同一形状をなし、使用済の前記インクカートリッジを廃インクカートリッジとして使用可能としたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【特許番号】第2617999号
【登録日】平成9年(1997)3月11日
【発行日】平成9年(1997)6月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−169105
【出願日】昭和63年(1988)7月8日
【公開番号】特開平2−20350
【公開日】平成2年(1990)1月23日
【出願人】(999999999)キヤノン株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭58−211460(JP,A)
【文献】特開 昭58−194562(JP,A)