説明

インク受容層形成用塗布液およびインク受容層付記録用シート

【課題】透明性、ヘーズ、被記録媒体との密着性、耐擦傷性等が低下することなくインクの吸収性、発色性に優れたインク受容層が形成可能な塗布液を提供する。
【解決手段】リン酸修飾アルミナ水和物粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含んでなり、該リン酸修飾アルミナ水和物粒子中のリン含有量がP25として1〜35重量%の範囲にあることを特徴とするインク受容層形成用塗布液。前記アルミナ水和物粒子が繊維状擬ベーマイトアルミナである。前記リン修飾アルミナ水和物粒子の結晶子径が30〜150オングストロームの範囲にあり、窒素吸着法で測定した細孔容積が0.8〜2.5ml/g、平均細孔径が5〜30nmの範囲にある。前記リン修飾アルミナ水和物粒子が、アルミナ水和物粒子とリン化合物の混合分散液を噴霧乾燥して得られたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン修飾アルミナ水和物粒子とマトリックス形成成分とを含むインク受容層形成用塗布液および該インク受容層形成用塗布液を用いて基材シート上に形成されたインク受容層を有する記録用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式には顔料もしくは染料インクの微小液滴を紙やPETフィルムなどの被記録媒体に噴霧して画像、文字などの記録を行う方法が採用され、産業用だけでなく家庭用としても急速に普及している。さらに多色インクジェット方式により記録される画像は、製版方式による多色印刷や、カラー写真方式による印画と比較して遜色のない記録を得ることも可能であり、作成部数が少ない場合には通常の多色印刷や印画によるよりも安価であることからフルカラー画像記録用等広く応用されつつある。そのため記録の高速化、高精細化、フルカラー化などの記録特性の向上に対応するためにインクの高吸収性、色再現性等に優れた受容層の開発が行われている。
【0003】
かかる問題点を解決するために、アルミナ水和物、ベーマイト構造のアルミナ水和物を用いた塗工層を有する被記録媒体が多く提案されている。
たとえば、塗工層の平均細孔径が10〜30オングストロームで狭い細孔径分布を持っている被記録媒体が開示されているが、平均細孔径が小さいと染料の吸着性はよいがインクの吸収性が不十分で滲みが発生する欠点が知られている。
【0004】
また、インク受容層として、特開平7-232475号公報(特許文献1)にはアルミナ水和物を用い、平均細孔半径が20〜200オングストロームで、細孔径分布の半値幅が20〜150オングストロームであるインク受容層が開示されている。
【0005】
特開平8-310115号公報(特許文献2)にはアルミナ水和物と水溶性ポリマーを含むインク受容層を有する被記録媒体において、該インク受容層がアニオンにより凝集したアルミナ水和物一次粒子の凝集構造体と水溶性ポリマーとからなるインク受容層が開示されている。
【0006】
特開平6−199034号公報(特許文献3)には、基材上に、2次凝集粒子直径が100〜160nmのベーマイトゾルから形成された平均細孔半径が30〜80オングストロームのアルミナ水和物多孔質層を5〜40μmの厚さで有し、その上層に2次凝集粒子直径が300〜500nmのベーマイトゾルから形成された平均細孔半径が50〜100オングストロームのアルミナ水和物多孔質層を1〜20μmの厚さで有する記録用シートが開示されている。
【0007】
一般的にインク受容層に導入する金属酸化物の粒子径を小さくするとインク受容層の透明性や平滑性などが向上する場合があるが、粒子が密に充填したばあいは大きな細孔が形成されず、耐擦傷性は高いがインク吸収性が悪くなるという欠点があった。
【0008】
また、特開平5−32413号公報(特許文献4)には小さな一次粒子が凝集した二次粒子を用いた被記録媒体が開示されているが、本発明者らが検討したところ製膜時に粒子の凝集が迅速に起こるために、即ちインク受容層形成用塗布液の安定性がなく、耐擦傷性が低下し、耐擦傷性とインク吸収性を同時に満足することが困難であった。また、粒子径の大きな金属酸化物を用いると細孔径は大きくなりインク吸収性は高くなるが、インク受容層の透明性、ヘーズ、平滑性、被記録媒体とインク受容層との密着性、インク需要層の強度、耐擦傷性等が悪化する傾向であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−232475号公報
【特許文献2】特開平8−310115号公報
【特許文献3】特開平6−199034号公報
【特許文献4】特開平5−32413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、インク吸収速度を高め、インクの滲みを防止するために、さらにインク受容層を薄膜化してカーリングを抑制したり、密着性、耐擦傷性、透明性等を向上させることが求められている。このためには、インク受容層に平均粒子径の大きな無機微粒子を用いたり、平均粒子径が小さくてもこれを凝集させた二次粒子を用いることが考えられたが、インク受容層の強度が不充分になったり、光沢性が低下したり、ヘーズが上昇したり、透明性が低下する等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、このような問題点を解決すべく鋭意検討した結果、噴霧乾燥して得たリン修飾アルミナ水和物粒子を用いたインク受容層は細孔容積が大きくなり、特に細孔径が5〜30nmの細孔容積が大きくなり、透明性、ヘーズ、被記録媒体との密着性、耐擦傷性等が低下することなくインクの吸収性、発色性が向上することを見出して本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明にかかる発明は以下のように構成される。
[1]リン酸修飾アルミナ水和物粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含んでなり、
該リン酸修飾アルミナ水和物粒子中のリン含有量がP25として1〜35重量%の範囲にあることを特徴とするインク受容層形成用塗布液。
[2]前記アルミナ水和物粒子が繊維状擬ベーマイトアルミナである[1]のインク受容層形成用塗布液。
[3]前記リン修飾アルミナ水和物粒子の結晶子径が30〜150オングストロームの範囲にあり、窒素吸着法で測定した細孔容積が0.8〜2.5ml/g、平均細孔径が5〜30nmの範囲にある[1]または[2]のインク受容層形成用塗布液。
[4]前記リン修飾アルミナ水和物粒子が、アルミナ水和物粒子とリン化合物の混合分散液を噴霧乾燥して得られたものである[1]〜[3]のインク受容層形成用塗布液。
[5]前記マトリックス形成成分がポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ウレタン系樹脂、コアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子から選ばれる1種以上の樹脂である[1]〜[4]のインク受容層形成用塗布液。
[6]基材シートと、該基材シート上に形成されたインク受容層とからなり、該インク受容層が前記[1]〜[5]のインク受容層形成用塗布液を用いて形成されたことを特徴とするインク受容層付記録用シート。
[7]前記インク受容層中のリン修飾アルミナ水和物粒子の含有量が固形分として5〜95重量%の範囲にある[6]のインク受容層付記録用シート。
[8]前記インク受容層の水銀圧入法で測定した細孔容積が0.2〜1.5ml/gの範囲にあり、平均細孔径が10〜60nmの範囲にある[6]または[7]のインク受容層付記録用シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リン修飾アルミナ水和物粒子を含むために、特定範囲の細孔径を有し、細孔径が大きく、このため、インク吸収性に優れるとともに滲みがなく、透明性、ヘーズ、被記録媒体との密着性、耐擦傷性、発色性等に優れたインク受容層の形成に好適に用いることのできるインク受容層形成用塗布液およびインク受容層付記録用シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
[インク受容層形成用塗布液]
まず、本発明に係るインク受容層形成用塗布液について説明する。
本発明に係るインク受容層形成用塗布液は、リン酸修飾アルミナ水和物粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含んでなり、該リン酸修飾アルミナ水和物粒子中のリン含有量がP25として1〜35重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0015】
リン修飾アルミナ水和物粒子
本発明に用いるリン修飾アルミナ水和物粒子は、アルミナ水和物粒子表面にリン酸が担持されている。
【0016】
アルミナ水和物粒子としては、水酸化アルミニウム、結晶水、水和水を含む酸化アルミニウム等がましく、特に繊維状擬ベーマイトアルミナ(Al23・nH2O、n:0.5〜2.5)が好ましい。
【0017】
繊維状擬ベーマイトアルミナは一次粒子が束なった繊維状の二次粒子である。
繊維状擬ベーマイトアルミナの一次粒子の大きさは、平均長さ(L1)が概ね1〜40nm、好ましくは2〜30nmの範囲にあり、平均幅(W1)が概ね0.5〜5nm、好ましくは1〜4nmの範囲にある。
【0018】
また、アスペクト比は2〜40、好ましくは4〜20の範囲にある。
一次粒子が短いと、無定型になるとともに、インク受容層にした際に細孔径分布が広くなり、特に平均細孔径が5〜30nmの細孔容積が小さくなり、インクの吸収性が不充分となる場合がある。
【0019】
一次粒子が長すぎても、インク受容層にした際に、平均細孔径、平均細孔容積が大きくなりすぎ、インクの滲みが生じたり、インクの発色性の低下を引き起こす場合がある。
また、一次粒子の平均幅(W1)が狭いものは得ることが困難であり、得られたとしてもアモルファスとなり、インクの吸収性が不充分となる場合がある。一次粒子の平均幅(W1)が大きすぎても、二次粒子の粒子径も大きくなりすぎる場合があり、インク受容層にした際に透明性が低下したり、ヘーズが上昇する場合がある。
【0020】
繊維状擬ベーマイトアルミナの二次粒子の平均長さ(L2)が概ね50〜400nm、好ましくは60〜300nmの範囲にあり、平均幅(W2)が概ね1〜10nm、好ましくは2〜8nmの範囲にある。
【0021】
繊維状擬ベーマイトアルミナの二次粒子が長すぎても、インク受容層にした際の細孔容積が小さく、インク吸収性が不充分となる場合がある。また繊維状擬ベーマイトアルミナが短すぎても、インク受容層にした際、細孔容積が大きくなりすぎてインクの滲みが生じたり、透明性が低下する場合がある。
【0022】
上記した一次粒子、二次粒子の平均長さ、平均幅の測定方法は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、50個の二次粒子について各値を測定し、その平均値として求める。
【0023】
繊維状ベーマイトアルミナの結晶子径は30〜150オングストローム、さらには40〜130オングストロームの範囲にあることが好ましい。なお、結晶子径とは、均一結晶相の最小単位で、通常結晶はこれらの集合体となる。
【0024】
繊維状ベーマイトアルミナの結晶子径が30オングストローム未満の場合は、インク受容層にした際に細孔径分布が広くなり(平均細孔径が5〜30nmの細孔容積が小さくなり)、インクの吸収性が不充分となる場合がある。
【0025】
繊維状ベーマイトアルミナの結晶子径が小さいものは、インク受容層にした際、インクの滲みが生じたり、透明性の低下を生じる場合がある。
このような結晶子径の測定方法は、X線回折測定装置で、2θ=14.4度付近のピークの半価幅を測定し、Scherrer の式により計算して求めた。
D=Kλ/βcosθ
D:結晶子径(オングストローム)、K:Scherrer定数、λ:X線波長(1.7889オングストローム Cuランプ)、β:半価幅(rad)、θ:反射角。
【0026】
本発明に用いるリン修飾アルミナ水和物粒子中のリン含有量はP25として1〜35重量%、さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
リンの含有量が1重量%未満の場合は、前記所望の二次粒子径にならず、インク受容層にした際に、インク吸収性が不充分となる場合がある。
【0027】
リンの含有量が35重量%を越えると、二次粒子径が大きくなるとともに細孔容積が大きくなりすぎ、インク受容層にした際に透明性の低下、ヘーズの上昇、インクの滲みが生じる場合がある。
【0028】
また、リン修飾アルミナ水和物粒子の窒素吸着法で測定した細孔容積が0.8〜2.5ml/g、さらには1.0〜2.3ml/gの範囲にあることが好ましい。
リン修飾アルミナ水和物粒子の細孔容積が小さいと、インク受容層にした際に、インク吸収性の低下が発生する場合がある。
【0029】
リン修飾アルミナ水和物粒子の細孔容積が大きすぎても、インク受容層にした際に透明性の低下、ヘーズの上昇、インクの滲みが生じる場合がある。
また、リン修飾アルミナ水和物粒子の平均細孔径が5〜30nm、さらには10〜25nmの範囲にあることが好ましい。
【0030】
リン修飾アルミナ水和物粒子の平均細孔径が小さいものは、インク受容層にした際に細孔径が小さすぎ、インクの吸収性が不充分となる場合がある。平均細孔径が大きすぎても、インク受容層にした際にインクの滲みが生じたり、透明性の低下を引き起こす場合がある。
【0031】
本発明にかかるリン修飾アルミナ水和物粒子は、前記アルミナ水和物粒子分散液とリン化合物またはリン化合物水溶液を混合し、混合分散液を噴霧乾燥することによって得ることができる。なお粒子の細孔容積および細孔径は、窒素吸着細孔分布測定装置により求めることができる。
【0032】
リン酸修飾アルミナ水和物の細孔容積を上記範囲に選択することによって、インク受容層の細孔容積を調整することができ、これにより、インクの吸収性を調整することができる。
【0033】
リン化合物としては、リン酸、トリポリリン酸、リン酸アルカリ塩、リン酸アルカリ土類塩が挙げられる。特に、リン酸は前記所望の平均細孔径子、細孔容積を有するリン修飾アルミナ水和物粒子が得やすいので好適に用いることができる。
【0034】
このときのアルミナ水和物粒子とリン化合物との混合比率は、前記したように、得られリン修飾アルミナ水和物粒子中のリン含有量がP25として1〜35重量%、さらには5〜30重量%の範囲となるように混合することが好ましい。
【0035】
また、混合分散液の濃度は(P25+Al23)で表して3〜30重量%、さらには5〜25重量%の範囲にあることが好ましい。
混合分散液の濃度が低いと、得られるリン修飾アルミナ水和物粒子の粒子径が小さくなり、リン修飾アルミナ水和物粒子の回収率の低下により経済性が低下する。
【0036】
混合分散液の濃度が(P25+Al23)で表して30重量%を越えると、混合分散液の粘度が10,000mPa・sec以上となり、取り扱いが難しくなるとともに噴霧乾燥が困難となる場合がある。
【0037】
噴霧乾燥する方法としては、従来公知の方法を採用することができるが、100〜500℃の熱風中に、混合分散液をノズル法あるいはディスク法等により噴霧する。
熱風の温度が低いと、充分に乾燥できないために粉末の回収ができない場合がある。熱風の温度が高すぎても、インク受容層形成用塗布液を調製する際にリン修飾アルミナ水和物粒子の分散性が低下し、所望の細孔径、細孔容積を有するインク受容層が得られない場合がある。
【0038】
このようにして得られたリン修飾アルミナ水和物粒子は、平均粒子径が概ね40〜100μmの球状粒子であり、乾燥機等で乾燥させたものよりも粒子の融着が少なく、塊状となることもなく、後述する本発明のインク受容層形成用塗布液を調製する際に分散媒に分散させると容易に前記二次粒子に分散し、所望の細孔径、細孔容積を有し、インク吸収性、透明性に優れ、ヘーズが小さく、インクの滲みがなく吸収性に優れたインク受容層を形成することができる。
【0039】
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、有機樹脂系マトリックス形成成分が好適に用いられる。
【0040】
有機樹脂系マトリックス成分として、従来公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のいずれも採用することができる。たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。なお硬化性樹脂の場合、マトリックス形成成分は反応前のモノマーやオリゴマーとなる。
【0041】
これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、あるいは紫外線硬化樹脂や電子線硬化性樹脂を使用してもよい。なお、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。
【0042】
有機樹脂系マトリックス形成成分として、具体的にはシリル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂を使用することも可能である。具体的にはヘキサエリスリトールトリペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールジメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート等のポリアクリル樹脂、ポリビニルアルコールまたはその変性体(カチオン変性、アニオン変性、シラノール変性)、澱粉またはその変性体(酸化、エーテル化)、ゼラチンまたはその変性体、カカゼインまたはその変性体、カルボキシメチルセルロース、アラビヤゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、などのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体およびこれらの混合物あるいはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。また、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基等の官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂およびエマルジョン系微粒子も好適に採用可能である。
【0043】
具体的にはペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル系架橋共重合体微粒子、ウレタン系架橋共重合体微粒子、アクリル−ウレタン系架橋共重合体微粒子等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0044】
本発明では、ポリアクリル酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂であることが好ましい。これらの樹脂を用いると、リン修飾アルミナ水和物粒子との親和性が強く、透明性、ヘイズ、染料の定着性等に優れるとともに耐擦傷性に優れたインク受容層を得ることができる。
【0045】
さらに、本発明ではコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子も同様に好適にマトリックス形成成分として用いることができる。
コアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子は、樹脂コア部と、該コア部の表面のシェル部からなり、シェル部は官能基を有する有機鎖からなっている。かかるシェル部同士およびシェル部とリン修飾アルミナ水和物粒子とが結びついて、マトリックスを形成する。
【0046】
樹脂コア部としては、従来公知の樹脂微粒子を用いることができる。例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の微粒子が挙げられる。
【0047】
本発明では、樹脂コア部として、アクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、ビニル系樹脂微粒子が好適に用いられる。これらの樹脂微粒子は、コアシェル構造を有する所望の膨潤性樹脂粒子を調製することが容易であり、また、後述する無機微粒子として常用されるアルミナ微粒子、シリカ微粒子等と屈折率が近接しており、このため光の散乱が抑制され、透明性、ヘーズ等に優れたインク受容層を得ることができる。
【0048】
コア部樹脂微粒子の平均粒子径は10〜150nm、さらには15〜100nmの範囲にあることが好ましい。コア部樹脂微粒子が小さいと、充分な膨潤効果が得られないためにインクを吸収するに充分な容積の空孔ができず、且つ、空孔の径が小さいために染料の吸収および定着が不充分となる場合がある。コア部樹脂微粒子が大きすぎると、インクを吸収した際に受容層にクラックが生じる場合がある。
【0049】
シェル部は、官能基を有する有機鎖からなる。
かかる有機鎖としては、樹脂コアと結合しうるものであれば特に制限はないが、メタクリル酸(MMA)、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸メチルから選ばれる1種以上の樹脂からなる鎖状のポリマーであることが好ましい。
【0050】
また、これらポリマーは、はカルボニル基、水酸基、フェニル基、シアノ基、エーテル基、カルボキシル基、チオール基、メトキシ基、エチレン基から選ばれる1種以上の官能基を有することが好ましい。
【0051】
インク受容層中のコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子は、後述する塗布液中にあって膨潤した粒子が、後述する樹脂モノマー、樹脂ポリマーと互いに架橋して網目構造を形成するとともに分散媒の蒸散によって膨潤性がなくなり収縮している。
【0052】
インク受容層中のコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子の平均粒子径は測定、あるいは観察することはできないが、塗布液中の粒子から推定して、概ね12〜300nm、好ましくは15〜250nmと考えられる。
【0053】
また、シェル層の厚みは2〜100nm、さらには5〜80nmの範囲と推定される。
インク受容層中のコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子の含有量は固形分として10〜80重量%、さらには20〜60重量%の範囲にあることが好ましい。
【0054】
インク受容層中の膨潤性樹脂粒子が少ないとインクを吸収するに充分な容積の空孔ができず、滲みの原因となったり、インクを吸収して膨潤した後、乾燥により収縮するが、収縮が不充分なためにガスバリア性が不充分となる場合がある。コアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子が多すぎても、インク受容層全体が膨潤し、各成分間の架橋が切断され、乾燥した際にクラックが生じる場合がある。
【0055】
インク受容層形成用塗布液中では、シェル層を構成する鎖状ポリマーの間に分散媒、溶媒を吸蔵して、膨潤性樹脂粒子は膨潤しているが、インク受容層中では乾燥して溶媒が無くなるとともに収縮している。このようなインク受容層は、インクを塗布すると受容層が膨潤して染料はインク受容層内部に浸透して定着することができ、顔料はインク受容層表面に定着することができ、分散媒の蒸散とともに膨潤状態が解消して収縮する。
【0056】
このようなコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子の製造方法は、TECHNO-COSMOS 2005 Mar.VoL.18に記載された方法に準じて製造することができる。
例えば、
(1)高分子乳化剤法:水溶性高分子樹脂(乳化剤)を用いてアクリルモノマーのプレエマルジョン溶液を作成し、それを重合開始剤とともに水媒体中に滴下し、重合反応させることにより膨潤性樹脂粒子(エマルジョン樹脂)を得る。この時、粒子表層(シェル部)には乳化剤として用いた水溶性高分子樹脂が存在している。
(2)二段乳化重合法:まず、シェル部となる水溶化可能なカルボン酸担持親水性エマルジョン樹脂を合成する。アニオン型反応性乳化剤を用いて作成したアクリルモノマーのプレエマルジョン溶液を重合開始剤とともに、水媒体中に滴下、重合反応させることによりカルボン酸担持親水性エマルジョン樹脂を得る。(この時のエマルジョン樹脂の数平均分子量は概ね5000〜20000である。
【0057】
次に、得られたカルボン酸担持親水性エマルジョン樹脂粒子を重合場として、アクリルモノマー混合物を、乳化剤を用いずモノマー油滴として滴下し、疎水性コア部を重合させたコアシェル型エマルジョン樹脂を得る。
得られたコアシェル型エマルジョン樹脂をアミンで中和し、シェル部を水溶化することにより、疎水性コア部を水溶性樹脂(シェル部)が内包する膨潤性樹脂粒子を得る。
【0058】
分散媒
本発明のインク受容層形成用塗布液に用いる分散媒は、前記マトリックス形成成分、必要に応じて用いる重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに前記したリン酸修飾アルミナ水和物粒子を均一に分散することができれば特に制限はなく、従来公知の分散媒を用いることができる。
【0059】
具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用することもできる。また、必要に応じて消泡剤やレベリング剤を添加してもよい。
【0060】
重合開始剤(架橋剤、硬化剤)
本発明では、必要に応じて重合開始剤(架橋剤、硬化剤)を用いることができる。
重合開始剤としては、一般的な金属塩でよく、好ましくはアルミニウム塩が挙げられる。具体的には、塩化アルミ、硝酸アルミ、塩酸アルミ、酢酸アルミ等である。またポリビニルアルコール等をマトリクス成分として用いる場合は、ホウ酸も好適に用いることができる。
【0061】
架橋剤(硬化剤)としては、前記膨潤性樹脂粒子、樹脂モノマー、樹脂ポリマー、無機微粒子を架橋して網目構造を形成することができれば特に制限はなく従来公知の架橋剤を用いることができる。
【0062】
本発明で用いる架橋剤としては、カルボジイミド化合物(カルボジイミド基を有する化合物)、ポリカルボジイミド化合物:分子量数千)、シアン化合物、メラミン化合物、オキサゾリン化合物(オキサゾリン基を有する化合物)、イソシアネート化合物(−N=C=Oを部分構造として有する化合物)から選ばれる一種以上であることが好ましい。
カルボジイミド化合物としては、カルボジライトV-01、V-02(日清紡(株)製)等があり、オキサゾリン化合物としては、エポクロス(日本触媒(株)製)等がある。
【0063】
塗布液組成
インク受容層形成用塗布液の全固形分濃度は1〜60重量%、さらには2〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
インク受容層形成用塗布液の全固形分濃度が1重量%未満の場合は、一回の塗布では所定の膜厚が得られないことがあり、このため塗布、乾燥を繰り返す必要があり、経済性において不利である場合がある。全固形分濃度が高すぎると得られる受容層の厚さが不均一になる傾向がある。
【0064】
インク受容層形成用塗布液中のリン酸修飾アルミナ水和物粒子の濃度は、固形分として0.05〜57重量%、さらには0.1〜47.5重量%の範囲となる濃度であることが好ましい。
【0065】
リン酸修飾アルミナ水和物粒子の含有量が低すぎると、リン酸修飾アルミナ水和物粒子が少なく、マトリックス形成成分が多くなるために充分な細孔容積が得られず、インク受容層のインク吸収性、染料の定着性が不充分となる場合がある。リン酸修飾アルミナ水和物粒子の含有量が多すぎても、基材との密着性、強度、透明性、ヘイズ、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。
【0066】
インク受容層形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は、固形分として0.05〜57重量%、さらには0.1〜47.5重量%の範囲となる濃度であることが好ましい。
【0067】
マトリックス成分の含有量が固形分として少ないと、リン酸修飾アルミナ水和物粒子の比率が多く成り、基材との密着性が低くなったり、強度が不充分となる場合がある。マトリックス成分の含有量が多すぎてもインク受容層の厚さが不均一になる傾向がある。
【0068】
リン酸修飾アルミナ水和物粒子とマトリックス形成成分との重量比は5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10の比率であると、本発明の作用効果が充分に発揮できる。
塗布液の調製方法は、上記比率で各成分を混合できれば特に制限されるものではなく、公知の混合方法が採用される。
【0069】
上記したインク受容層形成用塗布液をバーコート法、ブレードコート方式、エアーナイフ方式、ロールコート方式、ブラッシュコート方式、グラビアコート方式、キスコート方式、エクストルージョン方式、スライドホッパー(スライドビード)方式、カーテンコート方式、スプレー方式等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによってインク受容層を形成することができる。
つぎに、本発明に係るインク受容層付記録用シートについて説明する。
【0070】
[インク受容層付記録用シート]
本発明に係るインク受容層付記録用シートは、基材シートと、該基材シート上に形成されたインク受容層とからなり、該インク受容層が前記インク受容層形成用塗布液を用いて形成されたことを特徴としている。
【0071】
基材シート
本発明に用いる基材シートとしては、従来公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、適度のサイジングを施した紙、無サイズ紙、レジンコート紙、ガラス、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロポリオレフィン、ノルボルネン等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等があげられる。中でも紙、樹脂系基材を好適に用いることができる。また、このような基材上に、他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。他の被膜としては従来公知のプライマー膜、ハードコート膜、マット層膜が挙げられる。
【0072】
リン修飾アルミナ水和物粒子
リン修飾アルミナ水和物粒子としては前記したと同様のものが用いられる。
インク受容層中のリン修飾アルミナ水和物粒子の含有量は固形分として5〜95重量%、さらには10〜90重量%の範囲にあることが好ましい。リン修飾アルミナ水和物粒子の含有量が少なければ、粒子の量が少ないためにインク吸収性が不充分となる場合があり、多すぎるとマトリックス成分が少なく、基材との密着性、透明性、ヘイズ、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。
【0073】
マトリックス成分
マトリックス成分としては、前記した有機樹脂系マトリックス形成成分に由来する有機樹脂系マトリックス成分が用いられる。なお、熱硬化性樹脂マトリックス成分では、硬化物、重合物、加水分解・重縮合物などの反応物となっている。また、熱可塑性樹脂マトリックスのように、反応や変化しないものは、マトリックス形成成分がマトリックス成分となっている。
【0074】
インク受容層中のマトリックス成分量は固形分として5〜95重量%、さらには10〜90重量%の範囲にあることが好ましい。
マトリックス成分の含有量が少ないと、基材との密着性、透明性、ヘイズ、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。マトリックス成分の含有量が多すぎると、粒子の量が少ないためにインク吸収性が不充分となる場合がある。
【0075】
インク受容層の水銀圧入法で測定した細孔容積は0.2〜1.5ml/g、さらには0.4〜1.2ml/gの範囲にあることが好ましい。
インク受容層の細孔容積が0.2ml/g未満の場合は、充分なインク吸収速度が得られないため、インクの滲み、ハジキを生じる場合がある。
【0076】
インク受容層の細孔容積が1.5ml/gを超えると、細孔容積が大きすぎてインクの滲みを生じたり、インク受容層の強度が低下したり、クラックが発生することがある。
また、このとき、インク受容層の平均細孔径が10〜60nm、さらには12〜40nmの範囲にあることが好ましい。
【0077】
インク受容層の平均細孔径が10nm未満の場合は、細孔容積が小さい場合と同様、充分なインク吸収速度が得られないため、インクの滲み、ハジキを生じる場合がある。
インク受容層の平均細孔径が60nmを超えても、インクの滲みを生じたり、染料の定着性が不充分となり、さらにインク受容層の強度が低下したり、クラックが発生することがある。
【0078】
インク受容層の細孔径、細孔容積は使用するリン修飾アルミナ水和物粒子の粒子径および含有量によって調整することが可能である。細孔径、細孔容積を大きくするには、粒子径の大きなリン酸修飾アルミナ水和物粒子を使用し、マトリックス成分の含有量を少なくすればよい。さらに補助的には、リン酸修飾アルミナ水和物粒子の細孔容積も寄与することから、細孔容積の大きなリン修飾アルミナ水和物粒子を使用することによって、インク受容層の細孔容積を大きくすることができる。
【0079】
本発明に係るインク受容層の厚さは、5μm〜100μm、さらには、10μm〜50μmの範囲にあることが好ましい。
インク受容層の厚さが薄いとインク吸収性が不充分となることがある。また、インク受容層の厚さが100μmを越えると、一回の塗工で得ることが困難で、複数回の塗工を行うことは経済性の点で問題となるほか、インク受容層にクラックを生じたり、カーリング(湾曲あるいは反り)を生じる場合がある。
【0080】
本発明に係るインク受容層付記録用シートは、前記したインク受容層形成用塗布液を基材シート上に塗布し、乾燥し、硬化させることによって製造することができる。具体的には、インク受容層形成用塗料をバーコート法、ブレードコート方式、エアーナイフ方式、ロールコート方式、ブラッシュコート方式、グラビアコート方式、キスコート方式、エクストルージョン方式、スライドホッパー(スライドビード)方式、カーテンコート方式、スプレー方式等の周知の方法で基材シート上に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって受容層を形成することができる。
【0081】
前記インク受容層付記録用シートにインクを付与して記録を行う方法としては、インクジェット記録方法が好ましく、この記録方法はインクをノズルより効果的に離脱させて、被記録媒体にインクを付与し得る方法であればいかなる方法でもよい。
本発明のインク受容層付記録用シートは、インク受容層上にさらに光沢膜が形成されていてもよい。
【0082】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0083】
[実施例1]
リン修飾アルミナ水和物粒子(1)の調製
アルミナとして濃度3重量%の塩化アルミニウム水溶液10,000gに濃度5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHを7に調整した。その後、25℃で1時間攪拌し、アルミナ水和物ゲルを得た。これを限外膜を用いて、純水で、固形分濃度5重量%で200μS/cmの電導度になるまで洗浄した。
【0084】
洗浄したアルミナ水和物ゲル(濃度5重量%)5,000gに濃度50重量%のリン酸100gを添加し、90℃で1時間の条件で熟成した。ついで1.5mmφのノズルを装着させたスプレーを用い、液の供給スピード0.5L/min、スプレー入り口温度400℃、出口温度150℃の条件で噴霧乾燥してリン修飾アルミナ水和物粒子(1)を調製した。
【0085】
得られたリン修飾アルミナ水和物粒子(1)の組成分析をICP分析及びイオンクロマト分析で行い、X線回折による結晶構造および下記条件で測定した平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を表1に示す。
【0086】
平均一次粒子径
リン修飾アルミナ水和物粒子(1)の固形分濃度0.001重量%の分散液を調製し、透過電子顕微鏡のグリッド上に滴下し、室温で乾燥した後、透過電子顕微鏡(TEM)写真を撮影し、無作為に50個の粒子の粒子径を測定し、この平均値を一次粒子径とした。繊維状粒子については、短径と長径を測定した。
【0087】
窒素吸着法による平均細孔径・細孔容積測定
アルミナ水和物粒子(1)を550℃で1時間焼成した後、窒素吸着細孔分布測定装置(日本ベル(株)製:BELSORB-mini)を用い相対圧(P/Po)が0.38〜0.990の積算値を細孔容積とし、吸着側のピークの細孔径を平均細孔径とした。
【0088】
平均二次粒子径
リン修飾アルミナ水和物粒子(1)の固形分濃度0.001重量%の分散液を調製し、透過電子顕微鏡のグリッド上に滴下し、室温で乾燥した後、透過電子顕微鏡(TEM)写真を撮影し、無作為に50個の粒子の粒子径を測定し、粒子同士の束なり方をW1、長さ方向の配列をL1としこの平均値を二次粒子径とした。
【0089】
インク受容層形成用塗布液(1)の調製
リン修飾アルミナ水和物粒子(1)22.86、マトリックス形成成分として濃度10重量%に純水で希釈したポリビニルアルコール(日本合成化学(株)製:ゴーセノールGH−17R)40と酢酸アルミニウム1gと2-プロパノール9gと固形分濃度で20重量%%となるように純水を添加し、充分に混合してインク受容層形成用塗布液(1)を調製した。
【0090】
インク受容層付記録用シート(1)の調製
インク受容層形成用塗布液(1)をPETフィルム(東レ(株)製:ルミラー T-100、厚さ100μm、屈折率1.65、基材透過率88.0%、Haze 1.0%、反射率5.1%)にバーコーターで塗布し、60℃で20分間乾燥してインク受容層付記録用シート(1)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は30μmであった。
【0091】
得られたインク受容層付記録用シート(1)の全光線透過率、ヘーズを測定し、結果を表1に示す。
全光線透過率およびヘーズは積分分光計(日本分光(株)製:V560)により測定した。
また、密着性、耐擦傷性、耐水性、水銀圧入法による細孔特性、インク吸収性およびガスバリア性を以下の方法および評価基準で評価し、結果を表1に示した。
【0092】
細孔特性PV(Hg)(細孔容積、平均細孔径)
インク受容層付記録用シート(1)の受容層を基材より剥離し、0.2gを水銀圧入法細孔分布測定装置(Quantachrome社製:Poremaster)を用い最大圧力33000psiまで測定して、細孔容積及び平均細孔径を得た。結果を表1に示す。
【0093】
密着性
インク受容層付記録用シート(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテ−プを接着し、ついで、セロハンテ−プを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することにより密着性を評価した。結果を表1に示す。
残存升目の数100個 :◎
残存升目の数90〜99個 :○
残存升目の数85〜89個 :△
残存升目の数84個以下 :×
【0094】
耐擦傷性
インク受容層上にスチールウール#0000番を50g/cm2荷重で10往復し、表面の傷の本数を数え以下の4段階に分類することにより耐擦傷性を評価した。結果を表1に示す。
傷の数0本 :◎
傷の数1〜10本 :○
傷の数10〜100本 :△
傷の数100本以上 :×
【0095】
インク吸収性
インク吸収性については、インク浸透性(1)およびインク発色性(2)について、以下の方法および評価基準で評価した。結果を表1に示す。
【0096】
インク浸透性(1)
キャノン製染料プリンターP9000を用い、インクとしてCMY三次色からなる黒を単色で、印字濃度100%でベタ印字し、キーエンス社製超深度顕微鏡(VK-9500)で印字部の表面粗さ(Ra)を測定した。同様に印字をしなかった部分の表面粗さ(Ra0)を測定し、表面粗さの差δRa(μm)=(Ra)−(Ra0)を求め、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0097】
評価基準
δRa ≦ 0.15 :◎
0.15 < δRa < 0.3 :○
0.3 ≦ δRa < 1.0 :△
δRa ≧ 1.0 :×
【0098】
インク発色性(2)
キャノン製染料プリンターP9000を用い、インクとしてCMY三次色からなる黒を単色で、印字濃度を0%〜100%まで10%刻みでベタ印字し、積分分光計(日本分光(株)製:V560)にてLab空間で測定される発色の度合い(明るさ)を測定し、印字濃度(0−100%)とL(明るさ%)の相関係数(K)を求め、以下の基準で評価した。
【0099】
評価基準
K ≧ 0.8 :◎
0.5 < K < 0.8 :○
0.2 < K < 0.5 :△
K ≦ 0.2 :×
【0100】
ガスバリア性
ガスバリア性としてアルバム保存性を評価した。
先ず、キャノン製染料プリンターP9000を用い、インク受容層付記録用シート(1)に三次色の印刷をし、乾燥後、これをアルバムのビニル系包袋に挿入し、常温で3ヶ月経過後の変色・退色の度合いを前記ビニル系の包袋から露出した部分について観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示す。
【0101】
評価基準
全く変色が認められなかった :◎
僅かに変色が認められた :○
明らかに変色が認められた :△
著しい変色が認められた :×
【0102】
耐水性
インク受容層付記録用シート(1)の受容層3cm角を充分な水に30分間浸漬し、その後、室温で24時間乾燥させた際、水の跡の有無を観察し、以下の評価基準で評価し結果を表1に示した。
【0103】
評価基準
全く水の跡が認められなかった :◎
僅かに水の跡が認められた :○
明らかに水の跡が認められた :△
膜が剥離した :×
【0104】
[実施例2]
リン修飾アルミナ水和物粒子(2)の調製
実施例1と同様にして調製した洗浄アルミナ水和物ゲル(濃度5重量%)5,000gに濃度50重量%のリン酸30gを添加した以外は同様にして、リン修飾アルミナ水和物粒子(2)を調製した。
得られたリン修飾アルミナ水和物粒子(2)の組成、X線回折による結晶構造、平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を測定し結果を表1に示す。
【0105】
インク受容層形成用塗布液(2)の調製
実施例1において、リン修飾アルミナ水和物粒子(2)を用いた以外は同様にしてインク受容層形成用塗布液(2)を調製した。
【0106】
インク受容層付記録用シート(2)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(2)を調製した。インク受容層付記録用シート(2)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
【0107】
[実施例3]
リン修飾アルミナ水和物粒子(3)の調製
実施例1と同様にして調製した洗浄アルミナ水和物ゲル(濃度5重量%)5,000gに濃度50重量%のリン酸200gを添加した以外は同様にして、リン修飾アルミナ水和物粒子(3)を調製した。
得られたリン修飾アルミナ水和物粒子(3)の組成、X線回折による結晶構造、平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を測定し結果を表1に示す。
【0108】
インク受容層形成用塗布液(3)の調製
実施例1において、リン修飾アルミナ水和物粒子(3)を用いた以外は同様にしてインク受容層形成用塗布液(3)を調製した。
【0109】
インク受容層付記録用シート(3)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(3)を調製した。インク受容層付記録用シート(3)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
【0110】
[実施例4]
リン修飾アルミナ水和物粒子(4)の調製
実施例1において、リン酸100gを添加した、アルミナ水和物ゲルを90℃で10時間の条件で熟成した以外は同様にしてリン修飾アルミナ水和物粒子(4)を調製した。
得られたリン修飾アルミナ水和物粒子(4)の組成、X線回折による結晶構造、平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を測定し結果を表1に示す。
【0111】
インク受容層形成用塗布液(4)の調製
実施例1において、リン修飾アルミナ水和物粒子(4)を用いた以外は同様にしてインク受容層形成用塗布液(4)を調製した。
【0112】
インク受容層付記録用シート(4)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(4)を調製した。インク受容層付記録用シート(4)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
【0113】
[実施例5]
膨潤性樹脂粒子(1)分散液の調製
コア粒子として、末端にカルボキシル基を有する水溶性アクリル系ポリマー(A)(日本ポリウレタン工業社製(株)製:ニッポラン、WL-530、固形分濃度40重量%、分散媒:水)6.4gを水40gに分散させ、ついで、十分に攪拌した後、エタノール1gを添加して固形分濃度17重量%の水溶性アクリル系ポリマー(A)溶液を調製した。この際の、レーザー光散乱法(Beckman Coulter 社製:Coulter Model N4)で測定されるコア粒子の平均粒子径は50nmであった。
【0114】
ついで、固形分濃度17重量%の水溶性アクリル系ポリマー(A)溶液に、カルボニル基を含んだイオン性導電モノマー(B)としてN−ジメチルアミノエチルアクリレート(三菱ガス化学(株)製:)100gを添加し、40℃で20分間撹拌した後、(内部のアルコキシシリル基が粒子外部に現れ、残存する水の影響を受けて加水分解し、反応性となり、脱水縮合を開始させながら、)架橋剤(C)としてポリエチレングリコール (PEG) 誘導体であるアクリル系界面活性剤(日油社製:SUNBRIGHT、PA シリーズ、固形分濃度40重量%、分散媒:水、pH8.0)4gを添加し、40℃で20分間撹拌した。このとき、混合溶液のpHは7.0であった。
【0115】
ついで、孔径1μmのフィルターにより粗大粒子及び異物を濾過して除去した後、濃度調整により、最終的に固形分濃度10重量%のコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子(1)分散液を調製した。
得られた膨潤性樹脂粒子(1)のレーザー光散乱法(Coulter Model N4)で測定される重量平均粒子径は60nmであった。
【0116】
インク受容層形成用塗布液(5)の調製
上記で得られた上記で得られた膨潤性樹脂粒子(1)分散液30gと、実施例1で調製したアルミナ水和物粒子(1)分散液22.8g、重合性不飽和モノマー類としてカルボン酸を含有する重合性不飽和モノマーアクリル酸2-ヒドロキシエチル(新日本理化(株)製:リカジット BT-W)0.5g、ポリマー樹脂としてアクリル系樹脂(東亞合成化学(株)製:UC-3510)0.5g、架橋剤としてカルボジイミド化合物(日清紡(株)製:カルボジライトV-02)0.2gおよび20%濃度になるように純水を添加して充分に混合してインク受容層形成用塗布液(5)を調製した。
【0117】
インク受容層付記録用シート(5)の調製
インク受容層形成用塗布液(5)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインク受容層付記録用シート(5)を調製した。このときの膜厚は10μmであった。インク受容層付記録用シート(5)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
【0118】
[比較例1]
アルミナ水和物粒子(R1)の調製
実施例1において、リン酸を添加しなかった以外は同様にしてアルミナ水和物粒子(R1)を調製した。
得られたアルミナ水和物粒子(R1)の組成、X線回折による結晶構造、平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を測定し結果を表1に示す。
【0119】
インク受容層形成用塗布液(R1)の調製
実施例1において、リン修飾アルミナ水和物粒子(R1)を用いた以外は同様にしてインク受容層形成用塗布液(R1)を調製した。
【0120】
インク受容層付記録用シート(R1)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(R1)を調製した。インク受容層付記録用シート(R1)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
【0121】
[参考比較例2]
リン修飾アルミナ水和物粒子(R2)の調製
実施例1と同様にして、90℃で1時間熟成したリン酸を添加したアルミナ水和物ゲル(濃度5重量%)を調製した。ついで、乾燥機にて、120℃で24時間乾燥して、得られた粉末をボールミルにて塊砕してリン修飾アルミナ水和物粒子(R2)を調製した。
【0122】
インク受容層形成用塗布液(R2)の調製
実施例1において、リン修飾アルミナ水和物粒子(R2)を用いた以外は同様にしてインク受容層形成用塗布液(R2)を調製した。
【0123】
インク受容層付記録用シート(R2)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(R2)を調製した。インク受容層付記録用シート(R2)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
【0124】
[比較例3]
リン修飾アルミナ水和物粒子(R3)の調製
実施例1と同様にして調製した洗浄アルミナ水和物ゲル(濃度5重量%)5,000gに濃度50重量%のリン酸440gを添加した以外は同様にして、リン修飾アルミナ水和物粒子(R3)を調製した。
得られたリン修飾アルミナ水和物粒子(R3)の組成、X線回折による結晶構造、平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を測定し結果を表1に示す。
【0125】
インク受容層形成用塗布液(R3)の調製
実施例1において、リン修飾アルミナ水和物粒子(R3)を用いた以外は同様にしてインク受容層形成用塗布液(R3)を調製した。
【0126】
インク受容層付記録用シート(R3)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(R3)を調製した。インク受容層付記録用シート(R3)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
【0127】
[比較例4]
酢酸修飾アルミナ水和物粒子(R4)の調製
実施例1と同様にして調製した洗浄アルミナ水和物ゲル(濃度5重量%)5,000gに濃度50重量%の酢酸100gを添加した以外は同様にして、酢酸修飾アルミナ水和物粒子(R4)を調製した。
得られた酢酸修飾アルミナ水和物粒子(R4)の組成、X線回折による結晶構造、平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を測定し結果を表1に示す。
【0128】
インク受容層形成用塗布液(R4)の調製
実施例1において、酢酸修飾アルミナ水和物粒子(R4)を用いた以外は同様にしてインク受容層形成用塗布液(R4)を調製した。
【0129】
インク受容層付記録用シート(R4)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(R4)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(R4)を調製した。インク受容層付記録用シート(R4)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
【0130】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸修飾アルミナ水和物粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含んでなり、
該リン酸修飾アルミナ水和物粒子中のリン含有量がP25として1〜35重量%の範囲にあることを特徴とするインク受容層形成用塗布液。
【請求項2】
前記アルミナ水和物粒子が繊維状擬ベーマイトアルミナであることを特徴とする請求項1に記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項3】
前記リン修飾アルミナ水和物粒子の結晶子径が30〜150オングストロームの範囲にあり、窒素吸着法で測定した細孔容積が0.8〜2.5ml/g、平均細孔径が5〜30nmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項4】
前記リン修飾アルミナ水和物粒子が、アルミナ水和物粒子とリン化合物の混合分散液を噴霧乾燥して得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項5】
前記マトリックス形成成分がポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ウレタン系樹脂、コアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子から選ばれる1種以上の樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項6】
基材シートと、該基材シート上に形成されたインク受容層とからなり、該インク受容層が請求項1〜5のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液を用いて形成されたことを特徴とするインク受容層付記録用シート。
【請求項7】
前記インク受容層中のリン修飾アルミナ水和物粒子の含有量が固形分として5〜95重量%の範囲にあることを特徴とする請求項6に記載のインク受容層付記録用シート。
【請求項8】
前記インク受容層の水銀圧入法で測定した細孔容積が0.2〜1.5ml/gの範囲にあり、平均細孔径が10〜60nmの範囲にあることを特徴とする請求項6または7に記載のインク受容層付記録用シート。

【公開番号】特開2011−73332(P2011−73332A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228069(P2009−228069)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】