説明

インク受容層形成用塗布液およびインク受容層付記録用シート

【課題】強固な架橋構造を有する受容層を形成することができ、インクの吸収速度が速く、染料はインク受容層内部に浸透させて定着することができ、顔料はインク受容層表面で定着させることができ、また、インクの浸透性、インク発色性、耐擦傷性等に優れ、同時に透明性、ガスバリア性、密着性等に優れ、記録の高速化、高精細化、フルカラー化が可能で、写像性等にも優れたインク受容層付記録用シートを提供しうる塗布液を得る。
【解決手段】膨潤性樹脂からなるシェル層を有するコアセル構造を有する膨潤性樹脂粒子、ポリマー樹脂、無機微粒子および分散媒とからなり、膨潤性樹脂粒子の濃度が固形分として0.05〜20重量%の範囲にあり、ポリマー樹脂の濃度が固形分として0.01〜10重量%の範囲にあり、該無機微粒子は重合性不飽和樹脂(A)によって表面修飾されており、該表面修飾無機微粒子の濃度が固形分として0.01〜90重量%の範囲にあることを特徴とするインク受容層形成用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規インク受容層形成用塗布液および該塗布液を使用したインク受容層付記録用シートに関する。
詳しくは、コアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子、樹脂ポリマー由来成分、架橋剤および重合性不飽和樹脂で表面処理された無機微粒子とからなり、各樹脂成分が互いの官能基を介して架橋した網目構造を有し、このためインク受容層が膨潤性を有し、特にインク吸収性、ガスバリア性、インク定着性、透明性、インク発色性、耐水性等に優れたインク受容層を形成するためのインク受容層形成用塗布液とインク受容層付記録用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式には顔料もしくは染料インクの微小液滴を紙やPETフィルムなどの被記録媒体に噴霧して画像、文字などの記録を行う方法が採用され、産業用だけで
なく家庭用としても急速に普及している。さらに多色インクジェット方式により記録される画像は、製版方式による多色印刷や、カラー写真方式による印画と比較して遜色のない記録を得ることも可能であり、作成部数が少ない場合には通常の多色印刷や印画によるよりも安価であることからフルカラー画像記録用等広く応用されつつある。そのため記録の高速化、高精細化、フルカラー化が可能で、耐光性、耐水性、耐殺傷性、ガスバリア性、定着等の記録特性の向上に対応するためにインクの吸収性、色再現性、彩度、写像性等に優れた記録媒体の開発が行われている。
【0003】
インク受容層として、特開平7-232475号公報(特許文献1)にはアルミナ水和
物を用い、平均細孔半径が20〜200Åで、細孔径分布の半値幅が20〜150Åであるインク受容層が開示されている。特開平8-310115号公報(特許文献2)にはアルミナ水和物と水溶性ポリマーを含むインク受容層を有する被記録媒体において、該インク受容層がアニオンにより凝集したアルミナ水和物一次粒子の凝集構造体と水溶性ポリマーとからなるインク受容層が開示されている。特開平6−199034号公報(特許文献3)には、基材上に、2次凝集粒子直径が100〜160nmのベーマイトゾルから形成された平均細孔半径が30〜80Åのアルミナ水和物多孔質層を5〜40μmの厚さで有し、その上層に2次凝集粒子直径が300〜500nmのベーマイトゾルから形成された平均細孔半径が50〜100Åのアルミナ水和物多孔質層を1〜20μmの厚さで有する記録用シートが開示されている。
【0004】
また、特開2004-255689号公報(特許文献4)には、支持体上に無機微粒子と親水性バインダーを含有する少なくとも2層のインク受容層を塗設したインクジェット用記録材料において、支持体に近いインク受容層Aが湿式法シリカを水性媒体中で平均二次粒子径500nm以下に粉砕した微粒子を主体に含有し、支持体から離れたインク受容層Bがアルミナ水和物微粉末を水性媒体中で無機酸を含まず有機酸により解膠したアルミナ水和物を主体に含有するインクジェット用記録材料が開示されている。
【0005】
また、特開2002-240243号公報(特許文献5)には、多孔質皮膜をバインダーと無機微粒子とで形成し、バインダーには、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を使用し、無機微粒子にはシリカまたは酸化チタンを使用した記録用メディアが開示されている。
【0006】
また、特開2006-88341号公報(特許文献6)には、特に水性顔料インクの吸収性、乾燥性、発色性に優れた、インクジェット用記録シートとして、カチオン性アクリルシリコンエマルジョン系樹脂とカチオン性ウレタン系樹脂を含むものが提案されている。
【0007】
さらに、特開平11-301098号公報(特許文献7)には、支持体上に吸水性樹脂微粒子と疎水性バインダー樹脂とからなる吸水層と、カチオン変性アクリル共重合体をポリビニルアセタール樹脂とをエポキシ化合物で熱硬化させた樹脂からなるインク受容層がこの順に積層されているインクジェット記録媒体が開示されている。
【0008】
また、特開2004−272771号公報(特許文献8)には、特に水性顔料インクの吸収性、乾燥性、発色性に優れた、インクジェット用記録シートとして、カチオン性アクリルシリコンエマルジョン系樹脂とカチオン性ウレタン系樹脂を含むものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−232475号公報
【特許文献2】特開平8−310115号公報
【特許文献3】特開平6−199034号公報
【特許文献4】特開2004−255689号公報
【特許文献5】特開2002−240243号公報
【特許文献6】特開2006−088341号公報
【特許文献7】特開平11−301098号公報
【特許文献8】特開2004−272771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜5のような従来の無機微粒子をフィラーとして、樹脂をバインダー(以下、マトリックスということがある)として含むインク受容層は、以下の問
題があった。
【0011】
(1)屈折率の異なる無機微粒子フィラーとバインダーとがナノ細孔を形成しているために、光の散乱、回折、干渉により彩度、明度等が不充分となり、ヘーズが高くなる
(2)インクを吸収し、乾燥して染料が定着した後もナノ細孔の空壁が存在し、環境ガス等によって変色等する、すなわち、ガスバリアー性に劣る
(3)バインダー樹脂の架橋が不充分となるためかクラックが生じたり、基材との密着性が不充分となる
(4)染料、顔料の種類によっては定着性が問題となる
(5)無機微粒子フィラーを樹脂バインダーからなる受容層中に均一に分散させることは困難であり、インク吸収速度の低下、光学的散乱により受容層の透明度を低下する要因になる
などの問題点があった。
【0012】
例えば、アルミナ水和物粒子を用いた塗工層では、平均細孔径が10〜30オングストロームで狭い細孔径分布を有しているが、平均細孔径が小さいと染料の吸着性はよいがイ
ンクの溶媒の吸収性が不十分で滲みが発生する欠点がある。また顔料インクでは顔料を吸収、定着できないために顔料インクの印刷には不向きであった。
【0013】
一般的にインク受容層に導入する粒子の粒子径を小さくするとインク受容層の透明性や平滑性などが向上する場合があるが、粒子が密に充填した場合は、大きな細孔が形成されず、耐擦傷性は高いがインク吸収性が悪くなるという欠点があった。一方、粒子径が大きいと細孔径は大きくなりインク吸収性は高くなるが、インク受容層の透明性、ヘーズ、平滑性、被記録媒体とインク受容層との密着性、インク受容層の強度、耐擦傷性等が悪化する欠点がある。
【0014】
また、特許文献6の場合、膨潤性が不充分であるためにインクが浸透するに充分な細孔が形成されず、しかも弾性が低いために膨潤する際にクラックが発生する等の問題があった。
【0015】
さらに、特許文献7は、プラスチックフィルム等の非吸水性の支持体上にインクを設けても、従来のインク受容層ではインク吸収性が不充分なため、支持体とインク受容層の間に吸水性樹脂微粒子と疎水性のバインダーとからなる吸水層を設けたものであり、インクのぬれ性、染色性を有し、特に透明性にも優れた記録媒体を提供するものである。しかしながら、本発明のように、インク受容層に特定の架橋構造を設けるという技術的思想とは明らかに相違している。
【0016】
また、特許文献8の場合、膨潤性が不充分であるためにインクが浸透するに充分な細孔が形成されず、しかも弾性が低いために膨潤する際にクラックが発生する等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記問題点に鑑み、鋭意検討した結果、無機微粒子、コア-シェル構造を有する樹脂微粒子、ポリマー樹脂を配合したインク受容層において、あらかじめ特定の重合性不飽和樹脂によって表面修飾された無機微粒子を用いることにより無機微粒子がエマルジョン化した状態で均一に高分散し、カチオン化剤に代表される定着剤に対しても安定な塗布液を得ることができることを見出した。
【0018】
その塗布液を用いることで、強固な架橋構造を有する受容層を形成することができ、インクの吸収速度が速く、染料はインク受容層内部に浸透させて定着することができ、顔料はインク受容層表面で定着させることができ、また、インクの浸透性、インク発色性、耐擦傷性等に優れ、同時に透明性、ガスバリア性、密着性等に優れ、記録の高速化、高精細化、フルカラー化が可能で、写像性等にも優れたインク受容層付記録用シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]膨潤性樹脂からなるシェル層を有するコアセル構造を有する膨潤性樹脂粒子、ポリマー樹脂、無機微粒子および分散媒とからなり、
膨潤性樹脂粒子の濃度が固形分として0.05〜20重量%の範囲にあり、ポリマー樹脂の濃度が固形分として0.01〜10重量%の範囲にあり、
該無機微粒子は重合性不飽和樹脂(A)によって表面修飾されており、
該表面修飾無機微粒子の濃度が固形分として0.01〜90重量%の範囲にあることを特徴とするインク受容層形成用塗布液。
[2]さらに、架橋剤を含み、該架橋剤の濃度が固形分として10重量%以下である[1]のインク受容層形成用塗布液。
[3]前記重合性不飽和樹脂(A)が(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン樹脂、セルロース誘導体から選ばれる1種以上である[1]または[2]のインク受容層形成用塗布液。
[4]前記重合性不飽和樹脂(A)の平均重合度nが1〜4である[1]〜[3]のインク受容層形成用塗布液。
【0020】
[5]前記重合性不飽和樹脂(A)が、極性基(親水性基)を有するモノマーであり、
N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系マクロマー、アシッドスルホキシ・ポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)クリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等のアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロマーからなる群から選ばれる少なくと1種である[1]〜[4]のインク受容層形成用塗布液。
[6]ポリマー樹脂が アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂の微粒子であること[1]〜[5]のインク受容層形成用塗布液。
【0021】
[7]さらに、インク受容層形成成分として重合性不飽和樹脂(B)を含み、該重合性不飽樹脂(B)の濃度が固形分として10重量%以下である[1]〜[6]のインク受容層形成用塗布液。
[8]前記無機微粒子がMgO、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23、Sb25、ZnOおよびこれらの複合酸化物からなる群から選ばれる1種以上である[1]〜[7]のインク受容層形成用塗布液。
[9]前記無機微粒子が擬ベーマイトアルミナおよび/またはベーマイトアルミナである[1]〜[7]のインク受容層形成用塗布液。
[10]前記無機微粒子が繊維状または鎖状構造を有する[1]〜[9]のインク受容層形成用塗布液。
[11]前記膨潤性樹脂粒子の平均粒子径が20〜500nmの範囲にある[1]〜[10]のインク受容層形成用塗布液。
[12]前記膨潤性樹脂粒子のコア部がアクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、ビニル系樹脂微粒子から選ばれる1種以上の樹脂からなる[1]〜[11]のインク受容層形成用塗布液。
【0022】
[13]前記膨潤性樹脂粒子のシェル層を構成する膨潤性樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂から誘導されるポリマー主鎖を含む[1]〜[12]のインク受容層形成用塗布液。
[14]前記シェル層を構成する膨潤性樹脂が、側鎖あるいは末端に、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、ウレタン基、アルキル基、フェニル基、スルホン基、アルコキシル基、チオール基、およびシアノ基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を含む[1]〜[13]のインク受容層形成用塗布液。
[15]前記架橋剤がカルボジイミド化合物、シアノ化合物、メラミン化合物、オキソザリン化合物、イソシアネート化合物から選ばれる一種以上である[1]〜[14]のインク受容層形成用塗布液。
[16]前記重合性不飽和樹脂(A)および/または前記重合性不飽和樹脂(B)がカルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、ウレタン基、アルキル基、フェニル基、スルホン基、アルコキシル基、ビニル基、チオール基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン樹脂、セルロース誘導体である[1]〜[15]のインク受容層形成用塗布液。
【0023】
[17]基材シートと、該基材シート上に形成されたインク受容層とからなり、
該インク受容層がコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子、樹脂マトリックスおよび重合性不飽和樹脂(A)で表面修飾された無機微粒子とからなり、
膨潤性樹脂粒子のシェル層が、膨潤性樹脂からなり、
シェル層の膨潤性樹脂と、樹脂マトリックスとが、架橋した網目構造を有し、
表面修飾無機微粒子のTEM観察法で測定した平均一次粒子径が1〜200nmの範囲にあり、窒素吸着法で測定した細孔容積(PVN2)が0.1〜2.0cc/gの範囲にあり、平均細孔径が5〜60nmの範囲にあり、
水銀圧入法で測定したインク受容層の細孔容積(PVHg)が0.01〜1.4cc/gの範囲にあり、平均細孔径が5〜40nmの範囲であることを特徴とするインク受容層付記録用シート。
[18]前記重合性不飽和樹脂(A)が(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン樹脂、セルロース誘導体から選ばれる1種以上である[17]のインク受容層付記録用シート。
【0024】
[19]インク受容層の水の吸収量(PVH2O)が0.1〜2.0cc/gの範囲にあり、該水の吸収量(PVH2O)と前記細孔容積(PVHg)との比(PVH2O)/(PVHg)が1.4〜100の範囲にある[17]または[18]のインク受容層付記録用シート。
[20]前記無機微粒子がMgO、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23、Sb25、ZnOおよびこれらの複合酸化物からなる群から選ばれる1種以上である[17]〜[19]のインク受容層付記録用シート。
[21]前記無機微粒子が擬ベーマイトアルミナおよび/またはベーマイトアルミナである[17]〜[20]のインク受容層付記録用シート。
[22]前記無機微粒子が繊維状または鎖状構造を有する[17]〜[21]のインク受容層付記録用シート。
[23]前記膨潤性樹脂粒子のコア部がアクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、ビニル系樹脂微粒子から選ばれる1種以上の樹脂からなる[17]〜[22]のインク受容層付記録用シート。
【0025】
[24]前記インク受容層が、前記[1]〜[16]の塗布液を基材シート上に塗布した後、乾燥・加熱して得られたものである[17]〜[23]のインク受容層付記録用シート。
[25]前記膨潤性樹脂粒子のシェル層を構成する膨潤性樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂から誘導されるポリマー主鎖を含み、側鎖あるいは末端に、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、ウレタン基、アルキル基、フェニル基、スルホン基、アルコキシル基、チオール基、およびシアノ基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を含み、樹脂マトリックスが、ポリマー樹脂からなり、シェル層の膨潤性樹脂とともに、架橋されてなる[17]〜[24]のインク受容層付記録用シート。
[26]前記マトリックスが、さらに重合性不飽和樹脂(B)から誘導される重合体成分を含む[17]〜[25]のインク受容層付記録用シート。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、樹脂コア部と該コア部の表面に官能基を有する有機鎖が結合したシェル部からなるコアシェル構造を有する膨潤性樹脂微粒子と、無機微粒子表面に存在する重合性不飽和モノマー類、ポリマー樹脂が互いに架橋して網目構造を形成しているので、インクを塗布するとインク浸透過程で受容層内部に均一に分散した膨潤性樹脂微粒子が効率よくインク分散水を吸着膨潤する。そのため、インク分散水と共に浸透する染料インクの場合には、その間に、無機微粒子表面と染料の間でカチオン定着が強固に行われ、その結果インク受容層内部に浸透して定着することができる。顔料インクの場合は、インク分散水のみをインク受容層内部に浸透させ、顔料のみをインク受容層表面に定着することができる。
【0027】
また、膨潤を利用した、細孔のみに頼らない吸収メカニズムであるため、細孔の必要量は減少し、受容層の透明性も高くなる。また塗料中でエマルジョン化した無機微粒子は、より強固な染料固着性物質、即ち耐水化剤などの添加剤に対しても安定であり、従来問題となっていた、受容層形成時の無機微粒子の凝集も解消される。
【0028】
また、上記したように、ガスバリア性も高いので、アルバム保存、クリアフィルムなどに長期保存した場合、ポリエチレンフィルムからの酸化性ガスにより染料色素が、酸化吸着され、定着が劣化し、画像が黄変あるいは退色をすることがあるが、これが緩和される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明に係るインク受容層形成用塗布液について説明する。
【0030】
[インク受容層形成用塗布液]
本発明に係るインク受容層形成用塗布液は、
(i)膨潤性樹脂からなるシェル層を有するコアセル構造を有する膨潤性樹脂粒子、
(ii)ポリマー樹脂、
(iii)無機微粒子および
(iv)分散媒とからなる。
【0031】
(i)膨潤性樹脂粒子
本発明に用いる膨潤性樹脂粒子は、シェル層が膨潤性有機樹脂からなる。かかる膨潤性樹脂粒子は、無機酸化物粒子表面の重合性不飽和樹脂(A)や、必要に応じて添加される、架橋剤や重合性不飽和樹脂(B)などと架橋して、インク受容層中で網目構造を形成する。
【0032】
膨潤性樹脂粒子の平均粒子径は20〜500nm、好ましくは50〜300nmの範囲にある。
かかる範囲にあれば、網目構造を形成する際に、所望の空孔を有する網目構造を形成できる。
【0033】
なお、膨潤性樹脂粒子が小さいと、シェル層の厚みが薄く充分な膨潤性が得られないことに加えて、網目構造の網目の大きさが小さいために染料の吸収、浸透が抑制される場合がある。
【0034】
膨潤性樹脂粒子が大きすぎると、シェル層の厚さ、膨潤性有機樹脂や架橋するポリマー樹脂、重合性不飽和樹脂などの種類、量比等によっても異なるが、網目構造の網目の大きさが大きくなりすぎ、膨潤と収縮による変化が大きくインク受容層にクラックが生じたり、ヘーズが発生する場合がある。
【0035】
本発明において、膨潤性樹脂粒子の平均粒子径は動的光散乱法により測定した値である。
動的光散乱法では、主に過剰な水分散媒中(アルコールが含まれる場合もあり)で試料を調製する。
このため、膨潤性樹脂粒子は膨潤しており、平均粒子径は膨潤した粒子を測定することになる。
【0036】
コア粒子
本発明で使用される膨潤性樹脂粒子は、コアが樹脂から構成される。
コアとしては、従来公知の樹脂を使用することができる。
【0037】
例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、スルホン系樹脂、セルロース誘導体等が挙げられる。
これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
さらに(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。
【0039】
これらの樹脂には、官能基を有することが好ましく、具体的には、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、ウレタン基、アルキル基、フェニル基、スルホン基、アルコキシル基、ビニル基など及びその誘導体の官能基などである。
【0040】
これらの官能基を有することによって、疎水性、溶解度パラメーターを調整し、所望のコア微粒子を調製できる。
なお、これらの官能基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0041】
本発明では、コアとしてアクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、ビニル系樹脂微粒子が好適に用いられる。
これらのコア粒子は、コアシェル構造を有する所望の膨潤性樹脂粒子を調製することが容易であり、また、後述する無機微粒子として常用されるアルミナ微粒子、シリカ微粒子等と屈折率が近接しており、このため光の散乱が抑制され、透明性、ヘーズ等に優れたインク受容層を得ることができる。
【0042】
コアを構成する樹脂微粒子の動的光散乱法で測定した平均粒子径は10〜150nm、さらには15〜100nmの範囲にあることが好ましい。
この粒子径範囲であれば、膨潤性樹脂粒子の調製が容易であり、得られる膨潤性樹脂粒子はインク受容層形成用塗料中で均一に分散し、インク受容層に所望の染料定着性等に有効な網目構造の形成に有効である。
【0043】
シェル層
シェル層は、上記コア部樹脂微粒子の表面に結合(グラフト)した膨潤性有機樹脂からなる。 シェル層では、膨潤性樹脂が分散媒中には髭のように伸びた状態で存在し、乾燥すると収縮する。
【0044】
かかるシェル層を構成する膨潤性有機樹脂は、主鎖が(メタ)アクリル系樹脂からなることが好ましく、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−ウレタン共重合体等からなるものが挙げられる。
【0045】
前記シェル層を構成する膨潤性有機樹脂は、官能基を有することが好ましく、具体的には、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、ウレタン基、アルキル基、フェニル基、スルホン基、アルコキシル基、チオール基、およびシアノ基からなる群から選ばれる1種以上の官能基及びその誘導体などが挙げられる。
【0046】
このような官能基を有することによって、疎水性、溶解度パラメーターを調整し上記記載のコア部分に好適なシェル層を形成することができる。
また二重結合を有するカルボキシル基、カルボニル基などは、受容層形成後の架橋度を上げることが可能である。
【0047】
これらの官能基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。官能基は、主鎖に側鎖として結合していてもよく、末端に結合していてもよい。
本発明では、膨潤性有機樹脂として、具体的には、上記膨潤性有機樹脂の主鎖を構成する部分と、前記官能基または官能基を有する基が側鎖に結合した化合物の重合体が使用される。
【0048】
たとえば、膨潤性有機樹脂の主鎖となる重合性二重結合および上記官能基を有するモノマーを単独重合したものや、膨潤性有機樹脂の主鎖を構成するモノマーまたはポリマーと前記官能基を有する化合物とを共重合ないし重縮合物であってもよい。
【0049】
膨潤性有機樹脂が単独重合体の場合、官能基は、1分子に、1個以上の二重結合とともに、1個以上の官能基化合物を有すればよい。
また、主鎖と側鎖の化合物からなる共重合体を使用する場合、官能基が、ポリマー1分子(1モル)あたり、1〜10モル、好ましくは1〜40モルの範囲で含まれることが望ましい。
【0050】
前記官能基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどが挙げられる。
このような官能基があれば、後述する樹脂マトリックスの形成成分と架橋を形成しやすくなる。また、膨潤性樹脂の膨潤性も高くなる。
【0051】
このようなシェル層を構成する膨潤性有機樹脂は、重量平均分子量が概ね5000〜20000の範囲にあることが好ましい。
塗布液中で膨潤性樹脂粒子は、シェル層が膨潤して分散しているが、インク受容層中では、シェル層同士や、樹脂マトリックス(架橋剤や、被膜形成成分)と互いに架橋して網目構造を形成している。また、インク塗布時には、インク分散媒によって膨潤し、分散媒の蒸散によって膨潤性がなくなり収縮している。
【0052】
また、シェル層の厚みは2.5〜150nm、さらには5〜100nmが好ましい。
シェル層の厚みが前記範囲にあると、インクの吸収、乾燥に伴うクラックの発生、ヘーズの発生のない強靭でフレキシビリティのあるインク受容層造を形成することができる。シェル層の厚みが薄いと、充分な膨潤性が得られないことに加えて、網目構造の網目の大きさが小さいために染料の吸収、浸透が抑制される場合がある。シェル層の厚みが厚いと、網目構造の網目の大きさが大きくなりすぎ、膨潤と収縮による変化が大きくインク受容層にクラックが生じたり、ヘーズが発生する場合がある。
【0053】
本発明において、コア粒子の平均粒子径は動的光散乱法により測定した値であり、シェル層は、粒子全体からコア粒子分を減じたものから算出される。
膨潤性樹脂粒子は、インク受容層形成用塗布液中では、シェル層を構成する膨潤性樹脂の主鎖の間に分散媒、溶媒を吸蔵して膨潤している。
【0054】
インク受容層中では、乾燥して溶媒が無くなると粒子は収縮する。このため、インクを塗布するとインク受容層が膨潤して染料はインク受容層内部に浸透して定着することができる。
【0055】
顔料はインク受容層表面に定着される(一部はシェル層に到達することもある)が、分散媒の蒸散とともに膨潤状態が解消して収縮し、結果として、インク受容層に吸収された染料インクや表面に定着された顔料は、収縮した網目構造でインク受容層内に強く押し付けられた状態となると考えられる。
【0056】
膨潤性樹脂粒子の製造方法
このようなコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子の製造方法は、TECHNO-COSMOS 2005 Mar.VoL.18に記載された方法に準じて製造することができる。
【0057】
例えば、
(1)高分子乳化剤法:
水溶性高分子樹脂(乳化剤)を用いてアクリルモノマーのプレエマルジョン溶液を作成する。この水溶性高分子樹脂が、シェル層に相当する。それを重合開始剤とともに水媒体中に滴下し、アクリルモノマーを重合させることにより、コアがアクリルポリマーで、シェル層が乳化剤である水溶性高分子樹脂からなる膨潤性樹脂粒子(エマルジョン樹脂)が得られる。
【0058】
(2)二段乳化重合法:
まず、シェル層となる水溶化可能なカルボン酸を含有する親水性エマルジョン樹脂を合成する。カルボン酸を含有する親水性エマルジョン樹脂とは2−ヒドロキシエチルコハク酸、メタクリル酸などを縮合重合させたものである。
【0059】
具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアニオン型反応性乳化剤を用いて作成したアクリルモノマーのプレエマルジョン溶液を重合開始剤とともに、水媒体中に滴下、重合反応させることによりシェル層を構成するカルボン酸を含有する親水性エマルジョン樹脂を得る。この時のエマルジョン樹脂の数平均分子量は概ね5000〜20000である。
【0060】
次に、得られたカルボン酸を含有する親水性エマルジョン樹脂を重合場として、アクリルモノマー混合物を、乳化剤を用いずモノマー油滴として滴下し、疎水性コア部を重合させたコアシェル型エマルジョン樹脂を得る。
【0061】
得られたアクリル重合体をコア粒子とし、カルボン酸を含有する親水性エマルジョン樹脂をシェルとするコアシェル粒子を、アミンで中和し、シェル層を水溶化することにより、疎水性コア部を水溶性樹脂(シェル層)が内包する膨潤性樹脂粒子を得る。
【0062】
上記方法では、シェル層に相当するエマルジョンを作製し、次いでコア粒子を構成するモノマー混合物とpH調整剤とを添加し、ここで重合反応を行うことにより、コアを作製する。これにより、コアシェル構造の膨潤性粒子が得られる。
コア粒子は、コアを構成する共重合体を形成するためのモノマー混合物が成長することで形成されるが、pH調整剤の添加によって成長が制御される。
【0063】
(3)別法
まずコアを形成するアクリル系樹脂、例えばペンタエリスリトールテトラアクリレートなどとアルコールを高速攪拌し球状コア粒子を得る。次いで親水性の高い例えば水酸基含有2−ヒドロキシエチルアクリレートとシェル層調製用重合開始剤やアクリル系界面活性剤を添加しpHを中性付近に調製し攪拌することでコアシェル構造の膨潤性微粒子を得ることができる。
【0064】
このようなコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子が膨潤性を示すメカニズムについては、例えば、官能基としてカルボキシル基を有する有機鎖が結合したコアシェル粒子水分散液において、シェルのカルボキシル基がイオン化し、カルボキシルイオン間の静電反発がセルの疎水基とシェルやコア表面に存在する疎水基との疎水結合に打ち勝つことによって膨潤すると考えられている。(参照:豊田中央研究所 R&Dレビュー VoL.30.NO.2(1995.6)
同様に他の親水性基についても同じことが推論可能である。
【0065】
(ii)ポリマー樹脂
本発明では、さらに塗布液は、ポリマー樹脂を含んでいる。
このポリマー樹脂と、後述するが必要に応じて用いる重合性不飽和樹脂(B)と架橋剤とがインク受容層中で樹脂マトリックスを構成する。
【0066】
ポリマー樹脂としては、前記膨潤性樹脂粒子、重合性不飽和樹脂(B)と架橋できれば特に制限はなく従来公知のものを用いることができる。
本発明に用いるポリマー樹脂は粒子状であり、架橋する際に網目構造中の空孔形成に関与し、その平均粒子径は20〜500nm、さらには50〜300nmの範囲にあることが好ましい。このようなポリマー樹脂は、架橋する際に網目構造中の空孔形成に関与し、これにより、染料インク、顔料インクの吸収性、定着性を高めることが可能となる。
【0067】
ポリマー樹脂として、例えば、アクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、ポリビニルアルコール系樹脂微粒子、ビニル系樹脂微粒子、エチレン系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、エステル系樹脂微粒子、エポキシ系樹脂微粒子等のポリマーが挙げられる。
【0068】
なかでも、アクリル系樹脂微粒子は膨潤性樹脂粒子、樹脂モノマーとの架橋性に優れ網目構造の形成性に優れ、また、無機微粒子として常用されるアルミナ微粒子、シリカ微粒子等と屈折率が近接しており、これらの無機微粒子が含まれている場合に、光の散乱が抑制され、透明性、ヘーズ等に優れたインク受容層を得ることができる。
【0069】
ポリマー樹脂は、インク受容層中の網目構造の1構成成分であるとともに、膨潤性樹脂粒子が、膨潤-収縮した際に発生する残留応力の緩和機能および基材と受容層との密着性の向上機能を有している。
【0070】
ポリマー樹脂の平均粒子径が小さすぎると、膨潤性樹脂粒子、無機微粒子等の含有量によっても異なるが、膨潤性樹脂粒子と無機微粒子、ポリマー樹脂の塗布液に於けるエマルジョン状態での距離が近接し、膜化の過程で、受容層中に形成される細孔が小さくなり、インクの吸収性、染料の定着性等が不充分となる場合がある。ポリマー樹脂の平均粒子径が大きすぎると、架橋性(他の成分との結合性)が低下し、所望の網目構造を有するインク受容層が得られない場合がある。
【0071】
(iii)無機微粒子
本発明のインク受容層には重合性不飽和樹脂(A)で表面修飾した無機微粒子(以後、表面修飾無機微粒子という)が含まれている。
【0072】
無機微粒子として具体的には、MgO、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23、Sb25、ZnOおよびこれらの水酸化物(水和物を含む)あるいは複合酸化物、複合水酸化物微粒子等が挙げられる。
【0073】
これらのなかにはカオリナイト、マイカ、モンモリロナイト等の天然鉱物を含むことができる。
無機微粒子の形状は、球状、針状、板状等特に制限はなく用いることができるが、繊維状または無機微粒子が鎖状に連結して鎖状構造を有する粒子は受容層を形成した際に三次元の空間を形成しやすく、インク吸収性に優れた受容層が得られるので好適に用いることができる。
【0074】
重合性不飽和樹脂(A)
表面修飾剤として用いられる重合性不飽和樹脂(A)としては、無機微粒子に吸着するとともに、後述するポリマー樹脂と架橋できれば特に制限はなく従来公知の結合性の二重結合を有するモノマー、およびこれらの重合物を用いることができる。
【0075】
二重結合を有するモノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)などが例示できる。これらの重合性不飽和樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0076】
重合性不飽和樹脂(A)としては、イオン性ないし非イオン性の極性基を有し、且つ一分子内に一個以上のラジカル重合可能な不飽和基を有する不飽和樹脂が好ましい。
たとえば、重合性不飽和樹脂(A)は、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマーや、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離し得る酸性基あるいは、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基、などの非イオン性の極性基(親水性基)を有し、且つ一分子内に一個以上のラジカル重合可能な不飽和基を有していることが好ましい。
【0077】
上記重合性不飽和樹脂(A)であると無機微粒子にクーロン力で作用しながら吸着した状態で塗布液中に高分散することができる。
また、重合性不飽和樹脂は粒子と結合してなく、塗布液を塗布した後、硬化する際に膨潤性樹脂粒子、ポリマー樹脂微粒子、架橋剤等と架橋して網目構造を有する受容層を形成することができる。
【0078】
上記重合性不飽和樹脂(A)として、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等のヒドロキシル基含有単量体類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有単量体類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸アミド等の重合性アミド類;(メタ)アクリルニトリル等の重合性ニトリル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の重合性芳香族類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル化合物類などがあげられる。
【0079】
親水基を有するモノマーとしてはN−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系マクロマー、アシッドスルホキシ・ポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)クリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等のアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロマーがあげられる。
【0080】
親水基を有するモノマーとしてはスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離し得る酸性基あるいは、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基、などの非イオン性の極性基(親水性基)と親水基の極性を負電荷と比極性のもの二種類に分けられる。無機微粒子の表面電位によってモノマーが有する極性と無機微粒子表面電位をあわせて、相補分散するモノマーを変え選択する。
【0081】
このような重合性不飽和樹脂(A)は通常モノマーまたは低次重合物であるオリゴマーで無機微粒子表面を修飾しており、その平均重合度nは1〜4の範囲にあることが好ましい。
【0082】
なお、本願出願人による特願2009-153750号には、無機化合物を表面処理剤などで表面処理したものをインク受容層に使用することが提案されている、その後の本発明者らの検討の結果、単に高分子樹脂で表面処理しただけでは、異なるHydrophile-Lipophile Balance(HLB)を有するエマルジョンの中に、表面修飾された無機微粒子を高濃度で相溶させることが困難であり、さらに、膜乾燥後、受容層で無機微粒子表面の一部を染料定着領域として利用することが困難であった。また、カップリング剤などの表面処理に比べて、塗布液で、疎水性の高い樹脂微粒子等と表面修飾無機微粒子との相溶を高くし、インクの吸収性に優れた親水性を有するインク受容層を形成することができる。なお、特願2009-153750号は、本発明のようなモノマーや低次重合物を使用することを示唆するものではない。
【0083】
平均重合度が高くなると以上になると、ラジカルのモノマーが受容層内に点在し、定着した染料が前記ラジカル因子に吸着分解する場合があり長期信頼性上の問題として経時的に変色、滲み、色落ち等の問題を発生する場合がある。
【0084】
表面修飾無機微粒子中の重合性不飽和樹脂(A)の含有量は固形分として1〜30重量%、さらには5〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
重合性不飽和樹脂(A)が少なすぎると、親水性基を有する無機微粒子の重合性不飽和樹脂(A)修飾による疎水化が不充分で、疎水性のコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子、ポリマー樹脂、必要に応じて用いる重合性不飽和樹脂(B)等との相溶性がなく、重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子の分散性が不十分になる。
【0085】
重合性不飽和樹脂(A)が多すぎると、前記相溶性は向上するが無機微粒子自身の親水性が低下し、結果表面修飾された無機微粒子を多く含む受容層膜は、水系の染料及び顔料インクに対して、大きな接触角を有し、浸透不足、インク滲みなどの印字品質に悪影響を及ぼす。また、染料、顔料の定着性が不充分となる場合がある。
【0086】
本発明に用いる表面修飾無機微粒子は単分散した粒子(以下、一次粒子ということがある。)であっても、一次粒子が集合体を形成した二次粒子であってもよい。また無機微粒子の形状は、球状、粒状、繊維状、一次粒子または二次粒子が鎖状に連結した鎖状等特に制限はなが、後述するように繊維状粒子あるいは鎖状粒子は、受容層を形成した際に三次元の空間を形成しやすいため、インク吸収性の向上しやすいため好適に用いることができる。
【0087】
表面修飾無機微粒子の平均一次粒子径はTEM写真を観察することによって求めることができる。
具体的には表面修飾無機微粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、100個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として求める。
【0088】
平均一次粒子径は1〜200nm、さらには2〜100nmの範囲にあることが好ましい。
平均一次粒子径がこの範囲を越えて小さいものは、得ることが困難でありえられたとしても結晶性の低いアモルファスなものとなる場合があり、染料の定着性が不充分となる場合がある。
【0089】
平均一次粒子径が大きすぎると、溶媒中で分散性が低くなる場合があり、受容層塗布液の安定性も低くなり、受容層を形成した際にも、散乱によるヘーズが高くなり、透明な基材に使用する際に透過率の低下や受容層のヘーズの上昇、インクの発色性の低下を引き起こす場合がある。
【0090】
また、表面修飾無機微粒子が二次粒子である場合、平均二次粒子径は動的光散乱法で測定した値である。
平均二次粒子径は5〜10,000nm、さらには10〜5,000nmの範囲にあることが好ましい。平均二次粒子径が前記範囲の下限よりも小さい二次粒子を得ることが困難であり、得られたとしても結晶性の低いアモルファスなものとなる場合があり、有効な細孔径の細孔が十分形成できないためにインクの吸収性が不充分となる場合がある。平均二次粒子径が大きすぎると、溶媒中で分散性が低くなる場合があり、受容層塗布液の安定性も低くなり、受容層を形成した際にも、細孔容積は大きくなるが、インクの縦への浸入速度と横への進入速度のバランスが崩れインクの滲みが発生したり、インクの発色性の低下、透明な基材に使用する際に透過率の低下や受容層のヘーズの上昇を引き起こす場合がある。
【0091】
つぎに、本発明に用いる表面修飾無機微粒子は窒素吸着法で測定した細孔容積(PVN2)が0.1〜2.0cc/g、さらには0.2〜1.5cc/gの範囲にあることが好ましい。
【0092】
表面修飾無機微粒子の細孔容積(PVN2)が少ないと、受容層を形成した際の細孔容積が小さすぎ、インクの吸収速度が遅く、滲みが生じたり、インクの定着が不充分となる場合がある。
【0093】
表面修飾無機微粒子の細孔容積(PVN2)が多すぎても、二次粒子の粒子間細孔による細孔容積の比率が大きくなり、受容層を形成した場合に、平均細孔径が大きすぎ、インクの滲みが生じたり、インクの定着性が不充分となり、さらに受容層のマトリックス成分と粒子の間の空隙が大きくなりすぎ、強度が低下したり、クラックが発生する場合がある。
【0094】
また、表面修飾無機微粒子の平均細孔径は5〜60nm、さらには5〜40nmの範囲にあることが好ましい。
平均細孔径が小さすぎれば、インク受容層の細孔径が小さく、インクの吸着性、染料の定着性が不充分となり、インクのハジキの発生したり、顔料インクの場合、顔料の定着性が不充分となる場合がある。平均細孔径が大きすぎると、受容層にした際に、平均細孔径が大きくなりすぎ、インクの滲み、染料の定着性、インクの発色性の低下を引き起こす場合がある。
【0095】
なお、後述する表面処理によって、平均粒子径、細孔容積および平均細孔径は実質的に変化しない。
本発明では、前記無機微粒子のなかでも擬ベーマイトアルミナ微粒子、ベーマイトアルミナ微粒子は好適に用いることができる。
【0096】
擬ベーマイトアルミナ微粒子、ベーマイトアルミナ微粒子は形状が繊維状をしており、その平均幅は概ね1〜20nmの範囲にあり、平均長さは5〜100nmの範囲にある。
また、繊維状擬ベーマイトアルミナ微粒子、繊維状ベーマイトアルミナ微粒子は粒子表面にOH基が多く、細孔容積も高く、正の電荷を有しているが、前記重合性不飽和樹脂(A)で表面修飾した繊維状擬ベーマイトアルミナ微粒子、繊維状ベーマイトアルミナ微粒子は、染料、顔料の定着性に寄与する正電荷有するとともに、樹脂ポリマー、コアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子等との相溶性及び、重合可能な末端基を有する重合性不飽和樹脂(A)で表面修飾されている。
【0097】
このために所望の細孔径と細孔容積を有するインク受容層が得られ、その結果インクの吸収性が高く、発色性が高く、負に帯電した染料・顔料インクの定着性が高いインク受容層を得ることができる。
【0098】
このような重合性不飽和樹脂(A)で表面処理した繊維状擬ベーマイト微粒子、繊維状ベーマイト微粒子は、平均長さ(L1)が5〜200nm、さらには20〜500nmの範囲にあることが好ましい。
【0099】
平均長さ(L1)が短いと、三次元的な空間ができにくく、インク受容層にした際に所望の平均細孔径、細孔容積範囲のインク受容層が得られず、インクの吸収性が低く、インクのハジキが発生したり、顔料インクの定着性が不充分となる場合がある。平均長さ(L1)が長すぎると、受容層にした際に、平均細孔径、平均細孔容積が大きくなりすぎ、インクの滲み、インクの発色性の低下を引き起こす場合がある。
【0100】
重合性不飽和樹脂(A)で表面処理した繊維状擬ベーマイト微粒子、繊維状ベーマイト微粒子の平均幅(W1)は概ね1〜50nm、さらには20〜40nmの範囲にあることが好ましい。
平均幅(W1)が前記範囲よりも小さくすることは困難であり、平均幅(W1)が大きすぎると受容層にした際に、繊維状粒子を用いた効果が発現しにくくなる。
【0101】
重合性不飽和樹脂(A)修飾無機微粒子の製造方法
重合性不飽和樹脂(A)修飾無機微粒子の製造方法としては、前記した所定の無機酸化物が重合性不飽和樹脂(A)によって修飾できれば特に制限はないが、以下の方法が推奨される。
【0102】
まず、無機酸化物微粒子の水分散液を調製する。分散液の濃度は概ね固形分として10〜30重量%、さらには15〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
無機酸化物微粒子水分散液の濃度が10重量%未満の場合は、表面修飾される不飽和重合樹脂(A)の量も限られ、それに合わせて、混合される樹脂ポリマー等の量も限られてくるため塗布液の固形分濃度が低下し、塗工、乾燥後に得られる受容層膜厚が薄くなり、十分な印字特性が得られない。
【0103】
無機酸化物微粒子水分散液の濃度が30重量%を越えると、表面修飾された無機微粒子の分散濃度が高くなり、樹脂ポリマー、コアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子等をエマルジョン化し塗布液とした場合に、塗布粘度が高くなりすぎ、塗工適性が得られなくなる。
なお、塗布液の粘度は500CP以下であることが好ましい。
【0104】
無機酸化物微粒子水分散液は、無機酸化物微粒子の種類、粒子径等によっても異なるが、必要に応じて分散処理することが好ましい。
分散処理する方法としては、無機酸化物微粒子を分散できれば特に制限はないが、化学的な方法、機械的な方法等従来公知の方法を採用することができる。
【0105】
化学的な方法としては、分散剤あるいは解膠剤として、硝酸、塩酸、燐酸等の無機酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。機械的な方法としては、各種ミキサー、超音波照射が挙げられる。また、これらを併用することもできる。
【0106】
このような分散処理をすると、個々の無機酸化物微粒子の表面により均一に重合性不飽和樹脂(A)が被覆した修飾をすることができる。
別途、無機酸化物微粒子水分散液とは別に重合性不飽和樹脂(A)溶液を調製する。
【0107】
溶媒としては、イオン交換水、1価あるいは多価アルコール、これらの混合物を用いることができる。この溶液には必要に応じて消泡剤を混合して用いることもできる。
重合性不飽和樹脂(A)溶液の濃度は特に制限は無いが、概ね樹脂を固形分として10〜30重量%である。
【0108】
ついで、無機酸化物微粒子水分散液と重合性不飽和樹脂(A)溶液とを混合する。混合する割合は、前記したように得られる表面修飾無機微粒子中の重合性不飽和樹脂(A)の含有量が固形分として1〜30重量%、さらには5〜10重量%の範囲となるように混合する。
【0109】
混合した後、必要に応じて超音波を照射して高分散させることもできる。この段階で無機微粒子は表面に重合性不飽和樹脂(A)が吸着した状態で表面修飾されているが、必要に応じて加温することによって無機微粒子の表面に重合性不飽和樹脂(A)が結合した状態の表面修飾無機微粒子とすることもできる。
【0110】
このように重合性不飽和樹脂(A)で表面修飾処理すると、無機微粒子表面に重合性不飽和樹脂(A)が均一に吸着あるいは結合し、塗布液としての安定性が向上する。無機微粒子表面に吸着あるいは結合した重合性不飽和樹脂(A)と、膨潤性樹脂粒子、ポリマー樹脂と、必要に応じて用いる重合性不飽和樹脂(B)とが架橋して、均一な網目構造のマトリックスを構成する。
【0111】
均一な網目構造になることにより、インク受容層として、透明性、インク浸透性、インク発色性、耐水性、耐擦傷性、ヘーズ等が向上する。
特にインク受容層形成用塗布液を塗布した後、乾燥する際に、膨潤性樹脂微粒子は、シェルの架橋点に存在するカルボキシル基などの吸水性官能基が収縮、遊離しながら不飽和重合樹脂(A)に含有するラジカル重合基、もしくは架橋剤に含まれるカルボジイミド基、イソシアネート基とともに結合・重合しながら収縮して膜化する。このとき、塗料から膜になる過程では膨潤性樹脂微粒子が吸水して体積膨張していた溶媒部分の一部が、乾燥して膜化する際に細孔となる。この過程で、無機微粒子表面で、重合性不飽和樹脂(A)で修飾されてない表面が存在するようになり、染料が無機微粒子表面に定着しやすくなり、耐水性、信頼性が向上する効果が得られる。
【0112】
重合性不飽和樹脂(B)
塗布液中には、重合性不飽和樹脂(B)が含まれることが好ましい。かかる重合性不飽和樹脂(B)はインク受容層形成成分として用いられる。
【0113】
重合性不飽和樹脂(B)としては、前記膨潤性樹脂粒子、前記ポリマー樹脂と架橋できれば特に制限はなく従来公知の結合性の二重結合を有する樹脂を用いることができる。
中でも、重合性不飽和樹脂モノマー類(重合度が概ね1〜8、好ましくは1〜4程度の)は反応性、架橋性に優れるので好適に用いることができる。
【0114】
具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)などが例示できる。これらの重合性不飽和樹脂モノマー類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0115】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが使用できる。(メタ)アクリル系単量体には、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリルN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン、などが例示できる。
【0116】
共重合性単量体には、前記スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0117】
有機酸ビニルエステル系樹脂としては、ビニルエステル系単量体の単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニルなど)、ビニルエステル系単量体と共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)又はそれらの誘導体が挙げられる。ビニルエステル系樹脂の誘導体には、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール樹脂などが含まれる。
【0118】
ビニルエーテル系樹脂としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルt−ブチルエーテルなどのビニルアルキルエーテルの単独又は共重合体、ビニルアルキルエーテルと共重合性単量体との共重合体(ビニルアルキルエーテル−無水マレイン酸共重合体など)が挙げられる。
【0119】
ハロゲン含有樹脂としては、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
これらの樹脂には、不飽和二重結合以外に、官能基を有することが可能であり、具体的には、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、ウレタン基、アルキル基、フェニル基、スルホン基、アルコキシル基、ビニル基、チオール基などである。特にカルボキシル基、カルボニル基などは、受容層形成後の架橋度を上げることが可能であり好適である。
【0120】
これらの官能基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
かかる重合性不飽和樹脂(B)は、インク受容層形成時に、膨潤性樹脂粒子、およびポリマー樹脂とともに、網目構造を構成する。重合性不飽和樹脂(B)は、反応性が高く、網目構造の形成にも関与するとともに架橋密度を上げることができる。そのため受容層中の無機微粒子や膨潤性微粒子の保持力を高める機能を示す。
【0121】
架橋剤
本発明では、塗布液中に架橋剤が含まれていることが好ましい。架橋剤は、インク受容層中では、膨潤性樹脂粒子と、ポリマー樹脂と、必要に応じて用いる重合性不飽和樹脂(B)の重合物とともに、重合性不飽和樹脂(A)で表面修飾した無機微粒子を架橋して、網目構造を構成する。重合性不飽和樹脂(A)で表面修飾した無機微粒子が架橋されているために、本発明ではインク受容層の強度が向上している。
【0122】
架橋剤としては、特に制限はなく従来公知の架橋剤を用いることができる。
具体的にはカルボジイミド化合物(カルボジイミド基を有する化合物)、ポリカルボジイミド化合物:分子量数千)、シアン化合物、メラミン化合物、オキサゾリン化合物(オキサゾリン基を有する化合物)、イソシアネート化合物(−N=C=Oを部分構造として有する化合物)から選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0123】
カルボジイミド化合物としては、カルボジライトV-01、V-02(日清紡(株)製)等があり、オキサゾリン化合物としては、エポクロス(日本触媒(株)製)等がある。
インク受容層形成用塗布液の全固形分濃度は1〜50重量%、さらには2〜38重量%の範囲にあることが好ましい。全固形分濃度が低すぎると、一回の塗布では所定の膜厚が得られないことがあり、このため塗布、乾燥を繰り返す必要があり、経済性において不利である場合がある。また全固形分濃度が高すぎても、粘度上昇に伴い塗工機適正が悪くなり、得られる受容層の厚さが不均一になる傾向がある。
【0124】
インク受容層形成用塗布液中の膨潤性樹脂粒子の濃度は、得られるインク受容層中の膨潤性樹脂粒子の含有量が前記した範囲となるように用いるが、概ね、固形分として0.05〜40重量%、さらには0.1〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
【0125】
インク受容層形成用塗布液中の膨潤性樹脂粒子が少ないと、インク吸収性が不充分となる場合がある。膨潤性樹脂粒子が多すぎても、得られるインク受容層中の膨潤性樹脂粒子が多すぎるためにインクの吸収、乾燥に伴いクラックが発生する場合があり、また他の成分の量にもよるが塗布液を形成できない場合もある。
【0126】
インク受容層形成用塗布液中のポリマー樹脂の濃度は、得られるインク受容層中のポリマー樹脂の含有量が前記した範囲となるように用いるが、概ね、固形分として0.01〜10重量%、さらには0.02〜7.5重量%の範囲にあることが好ましい。
【0127】
ポリマー樹脂が少ないと、架橋性が不充分となり所望の網目構造を有するインク受容層が得られない場合があり、得られたとしてもクラックが発生する場合がある。ポリマー樹脂が多すぎても、膨潤性樹脂粒子、無機微粒子の含有量が少なくなるとともにインク受容層が緻密化するためにインクの吸収特性が低下する場合がある。
【0128】
インク受容層形成用塗布液中の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子の濃度は、固形分として0.01〜45重量%、さらには0.02〜34重量%の範囲にあることが好ましい。重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子が少なすぎると、得られるインク受容層の疎水性が強くなり、水性インクの吸収特性が不充分となる場合がある。また、重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子が多すぎると、得られるインク受容層のヘーズが悪化する場合がある。
【0129】
インク受容層形成用塗布液中の重合性不飽和樹脂(B)の濃度は、得られるインク受容層中の重合性不飽和樹脂(B)の含有量が前記した範囲となるように用いるが、概ね、固形分として0.01〜20重量%、さらには0.02〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
【0130】
重合性不飽和樹脂(B)が少ないと、架橋開始が遅くなるとともに架橋開始点が少なく、網目構造の形成が不充分となり、網目構造に起因する本願効果が得られない場合がある。重合性不飽和樹脂モノマー類(B)が多すぎると、モノマー類相互の架橋が主となり、膨潤性樹脂粒子、後述する樹脂ポリマーとの架橋が不充分となり、このため網目構造の形成が不充分となり、網目構造に起因する本願効果が得られない場合がある。
【0131】
架橋剤の濃度は、膨潤性樹脂粒子の種類、粒子径、濃度および樹脂マトリックス成分(ポリマー樹脂および重合性不飽和樹脂(B))の使用量等によっても異なるが、固形分として0.001〜10重量%、さらには0.002〜7.5重量%の範囲にあることが好ましい。
【0132】
架橋剤が少ないと、膨潤性樹脂粒子、樹脂マトリックス成分(ポリマー樹脂および重合性不飽和樹脂(B))の相互架橋が不十分になるために網目構造の形成が不充分になり、インク吸収性が不充分になったり、インクの吸収時あるいは乾燥時にインク受容層にクラックが発生する場合がある。架橋剤をさらに多くしても相互架橋が増進することもなく、インクの吸収性が低下する場合がある。
【0133】
膨潤性樹脂粒子100重量部に対し、重合性不飽和樹脂(B)の量は10〜200重量部、好ましくは20〜100重量部の範囲にあることが望ましい。
膨潤性樹脂粒子100重量部に対し、ポリマー樹脂含有量は5〜150重量部、好ましくは10〜100重量部の範囲にあることが望ましい。
【0134】
重合性不飽和樹脂 (B)100重量部に対し、ポリマー樹脂含有量は5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部の範囲にあることが望ましい。
また、架橋剤は、重合性不飽和樹脂 (B)100重量部に対し、1〜100重量部、好ましくは2〜80重量部の範囲にあることが望ましい。
【0135】
膨潤性樹脂粒子100重量部に対し、重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子の量は10〜500重量部、好ましくは20〜400重量部の範囲にあることが望ましい。
このような各成分比率であると、表面修飾無機微粒子は塗布液中で膨潤性樹脂微粒子、重合性不飽和樹脂(B)、樹脂微粒子等との親和性を有し高濃度でも均一分散した安定性に優れた塗布液が得られる。
【0136】
細孔径を調節するには、表面修飾無機微粒子の大きさ、樹脂成分に対する重量比、膨潤性樹脂の含有量により細孔径を調節することができる。例えば、表面修飾無機微粒子の粒子径を大きくすれば細孔径を大きくすることができる。
【0137】
細孔容積を調節するには、表面修飾無機微粒子の大きさ、また樹脂成分に対する重量比、膨潤製樹脂の含有量により細孔容積を調節することができる。
このようなインク受容層形成用塗布液は、上記各成分を公知の方法で混合することによって、調製することが可能である。また、必要に応じて消泡剤やレベリング剤を添加してもよい。
【0138】
上記したインク受容層形成用塗布液をバーコート法、ブレードコート方式、エアーナイフ方式、ロールコート方式、ブラッシュコート方式、グラビアコート方式、スリットコート方式、キスコート方式、エクストルージョン方式、スライドホッパー(スライドビード)方式、カーテンコート方式、ダムコート方式、スプレー方式等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、必要に応じて加熱処理することによってインク受容層を形成することができる。
【0139】
本発明では、バーコート法、スリットコート方式、グラビアコート方式、カーテンコート方式、ダムコート方式、エアーナイフ方式が推奨される。
乾燥方法としても従来公知の方法を採用することができ、概ね、30〜120℃で0.1〜2時間乾燥する。
【0140】
なお、本発明では、乾燥時に、乾燥とともに塗布液に用いた架橋剤により樹脂が架橋、硬化する。硬化が不充分な場合は、ついで、加熱処理してもよい。インク受容層形成時には、全てが架橋するわけではなく、一部が架橋し、印字後にもさらに架橋は進む場合がある。
【0141】
加熱処理は、乾燥温度より高温、概ね50〜150℃で0.1〜2時間加熱処理する。
これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用することもできる。
このようにして得られるインク受容層は、網目構造を有し、且つ、膨潤性を有し、インクの吸収性、染料、顔料の定着性等に優れ、耐光性、耐水性、耐殺傷性、ガスバリア性等に優れたインク受容層を得ることができる。
【0142】
特に、特定の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子が含まれているので、インクの吸収速度が早く、顔料や染料の定着性が高い。このため滲みが生じたりすることもなく、また、強度も高く、インク受容層に、クラックが発生することもない。
【0143】
そして、インクの吸収性、染料・顔料の定着性、耐擦傷性等に優れ、同時に透明性、ガスバリア性等に優れ、記録の高速化、高精細化、フルカラー化が可能で写像性等にも優れたインク受容層付記録用シートを提供することができる。
つぎに、本発明に係るインク受容層付記録用シートについて説明する。
【0144】
[インク受容層付記録用シート]
本発明に係るインク受容層付記録用シートは、
基材シートと、該基材シート上に形成されたインク受容層とからなり、
該インク受容層がコアセル構造を有する膨潤性樹脂粒子、樹脂マトリックスおよび重合性不飽和樹脂(A)で表面修飾された無機微粒子からなり、
膨潤性樹脂粒子のシェル層が、膨潤性樹脂からなり、
シェル層の膨潤性樹脂と、樹脂マトリックスとが、架橋した網目構造を有し、
重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子のTEM観察法で測定した平均一次粒子径が1〜200nmの範囲にあり、窒素吸着法で測定した細孔容積(PVN)が0.1〜2.0cc/gの範囲にあり、平均細孔径が5〜60nmの範囲にあり、
水銀圧入法で測定したインク受容層の細孔容積(PVHg)が0.01〜1.4cc/gの範囲にあり、平均細孔径が5〜40nmの範囲であることを特徴としている。
【0145】
基材シート
本発明に用いる基材シートとしては、従来公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、適度のサイジングを施した紙、無サイズ紙、レジンコート紙、ガラス、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロポリオレフィン、ノルボルネン等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等、ポリエステル繊維、シリコン基板、金属等があげられる。中でも紙、樹脂系基材を好適に用いることができる。また、このような基材上に、他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。他の被膜としては従来公知のプライマー膜、ハードコート膜、マット層膜が挙げられる。
【0146】
インク受容層
インク受容層は、前記したようなコアセル構造を有する膨潤性樹脂粒子、樹脂マトリックス、重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子とからなる。
【0147】
樹脂マトリックスは、ポリマー樹脂と必要に応じて重合成不飽和樹脂(B)とを含み、さらに、膨潤性微粒子及び無機微粒子を表面修飾した重合性不飽和樹脂(A)とから構成される。受容層の細孔は、主に無機微粒子と膨潤性微粒子の存在によるものであり、マトリックス成分と膨潤性樹脂のシェル層が架橋剤によって架橋されている。
【0148】
また膨潤性粒子は、コア表面とセルが架橋され、セル内部も架橋されている。その構成の中で、従来の受容層は、マトリックス成分と微粒子の間隙の細孔を利用し、インクの吸収、定着をさせてきたが、本発明は、膨潤性微粒子を導入することによって、インク打ち込み時に水の影響で膨潤性樹脂が膨潤し、マトリックス成分と重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子の間隙の細孔に膨潤で得られた細孔が加わり、従来の受容層で細孔容積が大きな場合(表面処理無機微粒子が多い場合)に発現するようなインクの吸収性(スピード)が得られる。また、染料は膨潤性微粒子内に浸透し定着し、顔料の一部は膨潤性微粒子のシェル層に定着している。そのため従来受容層ようにマトリックス成分と微粒子の間隙に定着したものに比べ、定着性が高いものとなっている。
【0149】
なお、無機微粒子自体は、樹脂とは通常、架橋(結合)しないが、本発明では、重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子が使用されており、このため (ii)ポリマー樹脂、必要に応じて用いる(i)重合性不飽和樹脂(B)の重合物等と架橋している。このためインク受容層は、強固に架橋(結合)している。またこの重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子によって、透明性、ガスバリア性、密着性などが向上するという作用効果も奏せられる。
【0150】
形成される網目構造の網目の大きさは1〜100nm2、好ましくは2〜80nm2の範囲にあると推定される。網目構造の測定は、重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子、コアセル粒子などの大きさからの推定値である。
【0151】
樹脂マトリックスは、インク受容層中で、前記膨潤性樹脂粒子、無機微粒子を表面修飾した重合性不飽和樹脂(A)と網目構造を形成している。
樹脂マトリックスは、ポリマー樹脂、必要に応じて用いる重合性不飽和樹脂(B)および架橋剤に由来する成分からなる。重合性不飽和樹脂(B)は、インク受容層中で重合体となっており、無機微粒子を表面修飾した重合性不飽和樹脂(A)とともに、インク受容層層中で網目構造の重合体となっており、重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子は、重合性不飽和樹脂(A)表面処理剤と樹脂マトリックス成分とが結合する形で網目構造中に均一に分散して存在している。
【0152】
網目構造は必ずしも碁盤目状である必要はなく、所望の染料がインク受容層内部に進入できる大きさ、形状であればよい。
親水性の溶媒、界面活性剤などのインクの染料・顔料以外の成分(インク水)も、インク受容層に受容される。通常染料・顔料のほかに、インク水も受容しなければ印字品質を維持できないと考えられる。染料インクの場合は、染料とともに、インク水も受容層内部に浸透する。顔料インクの場合、インク水は、受容層内部に浸透し、顔料は膨潤性樹脂粒子の表面に残留する。
【0153】
本発明によれば、樹脂コア部と該コア部の表面に官能基を有する有機鎖が結合したシェル部からなるコアシェル構造を有する膨潤性樹脂微粒子と、無機微粒子表面に存在する重合性不飽和モノマー類、ポリマー樹脂が互いに架橋して網目構造を形成し、インクを塗布するとインク浸透過程で受容層内部に均一に分散した膨潤性樹脂微粒子が効率よくインク分散水を吸着膨潤する。、そのため、インク分散水と共に浸透する染料インクの場合には、その間に、無機微粒子表面と染料の間でカチオン定着が強固に行われ、その結果インク受容層内部に浸透して定着することができる。顔料インクの場合は、インク分散水のみをインク受容層内部に浸透させ、顔料のみをインク受容層表面に定着することができる。
【0154】
また、膨潤を利用した、細孔のみに頼らない吸収メカニズムであるため、細孔の必要量は減少し、受容層の透明性も高くなる。また塗料中でエマルジョン化した無機微粒子は、より強固な染料固着性物質、即ち耐水化剤などの添加剤に対しても安定であり、従来問題となっていた、受容層形成時の無機微粒子の凝集も解消される。
インク受容層はインク水も吸収性も高く、このため、定着される顔料が凝集したり、フラットネスが低下したりすることなく印字品質に優れている。
【0155】
インク受容層の構成
インク受容層中の膨潤性樹脂粒子の含有量は固形分として5〜80重量%、さらには10〜60重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、インクの吸収性が高い。インク受容層中の膨潤性樹脂粒子の含有量が少ないと、インクを吸収するに充分な容積の空孔ができず、滲みの原因となったり、インクを吸収して膨潤した後、乾燥により収縮するが、収縮が不充分なためにガスバリア性が不充分となる場合がある。インク受容層中の膨潤性樹脂粒子の含有量が高すぎると、インク受容層全体が膨潤し、各成分間の架橋が切断され、乾燥した際にクラックが生じる場合がある。
【0156】
インク受容層中の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子の含有量は、固形分として20〜90重量%、さらには30〜85重量%の範囲にあることが好ましい。
インク受容層中の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子が少ないと、インク受容層の疎水性が強くなり、水性インクの吸収特性が不充分となる場合がある。インク受容層中の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子が多すぎてもインク受容層のヘーズが低下することがある。
【0157】
また、インク受容層の水銀圧入法で測定した細孔容積(PVHg)が0.01〜1.4cc/g、さらには0.05〜1.35cc/gの範囲にあることが好ましく、平均細孔径が5〜40nm、さらには10〜35nmの範囲にあることが好ましい。
【0158】
インク受容層の細孔容積(PVHg)が小すぎると、インクの吸収を膨潤性樹脂粒子に依存した形態となっており、充分なインクの吸収速度が得られないためインクの滲み、ハジキを生じる場合がある。インク受容層の細孔容積(PVHg)が大きすぎると、細孔容積が大きすぎてインクの滲みが生じたり、インク受容層のマトリックス成分と重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子の間の空隙が大きくなりすぎ、強度が低下したり、クラックが発生する場合がある。
【0159】
インク受容層の平均細孔径が小さすぎると、充分なインクの吸収速度が得られないため、インクの滲み、ハジキを発生しやすくなる場合がある。インク受容層の平均細孔径が大きすぎてもインクの滲みが発生したり、染料の定着性が不充分となり、さらにインク受容層のマトリックス成分と粒子の間の空隙が大きくなる場合がある、強度が低下したり、クラックが発生する場合がある。
【0160】
さらに、本発明のインク受容層は、水の吸収量(PVH2O)が0.1〜2.0cc/g、さらには0.2〜1.9cc/gの範囲にあることが好ましい。水の吸収量(PVH2O)が少なすぎると、膨潤性が不充分であるか細孔容積が小さい場合であり、充分なインクの吸収速度が得られないため、インクの滲み、ハジキを生じる場合がある。
【0161】
水の吸収量(PVH2O)が多すぎても、細孔容積が多く過ぎるか、過度に膨潤性することを示し、インクの滲みが生じたり、インク受容層の強度が低下したり、クラックが発生する場合がある。
【0162】
水の吸収量(PVH2O)は、室温22〜25℃ 湿度40〜60%の条件で受容層付基材を10mm角にカットし、受容層に水を滴下した際に表面及びカット面より水があふれ出る直前の量を測定し単位グラムあたりに計算し水吸収量とする。
【0163】
また、水の吸収量(PVH2O)と前記細孔容積(PVHg)との比(PVH2O)/(PVHg)が1.4〜100、さらには1.5〜80の範囲にあることが好ましい。
前記比(PVH2O)/(PVHg)が小さすぎても受容層の膨潤性が低く、本願発明の膨潤性樹脂粒子を用いる効果が不充分で、充分なインクの吸収性が得られず、インクの滲み、ハジキを発生する場合がある。
【0164】
前記比(PVH2O)/(PVHg)が大きすぎるとインク受容層全体が膨潤し、各成分間の架橋が切断され、乾燥した際にクラックが生じる場合がある。また、インクの吸収性がさらに向上することもない。
【0165】
樹脂微粒子のみでは(PVHg)が小さすぎ、細孔も殆どあいていないため、インクを打ち込むと、打ち込み速度のほうが、膨潤性樹脂微粒子の防潤より速く、インクが滲んだり溢れる場合がある。
【0166】
重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子が存在すると、インク吸収スピードに耐える細孔径及び細孔容積を予め付与できており、そのためインク打ち込み速度が速くなっても滲まず、受容層に速やかに浸透・定着する。
【0167】
そのため高速プリンターにも対応でき、また受容層には重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子により形成された細孔と膨潤性樹脂微粒子の防潤によって得られる細孔があるため、同等性能を求めるなら従来公知の受容層である、ポリビニルアルコールと無機微粒子の組み合わせの受容層に比べ薄膜化が可能であり、無機微粒子の添加量の低減も可能となる。
【0168】
インク受容層中のマトリックス成分の含有量が固形分として20〜80重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
インク受容層中の樹脂マトリックス成分の含有量が前記範囲にあると、所望の架橋構造が形成される。また、樹脂マトリックス成分の含有量が少ないと、その分、架橋を構成する成分も少ないので、網目構造の形成が不充分となり、網目構造に起因する本願効果が得られない場合がある。
【0169】
樹脂マトリックス成分の含有量が多すぎると、重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子が少なくなり、所望の細孔径の細孔容積が得られず、水性インクの吸収特性が不充分となり、また染料の定着性が不充分となる場合がある。
【0170】
インク受容層中の架橋成分含有量は、重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子、膨潤性樹脂粒子、重合性不飽和樹脂モノマー類(B)に由来する成分、およびポリマー樹脂の含有量およびそれらの架橋性官能基の量によっても異なるが、固形分として0.1〜20重量%、さらには0.2〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
【0171】
架橋成分の含有量が前記範囲にあれば、網目構造を有し、インク吸収特性、強度、ヘーズ等に優れたインク受容層が得られる。
本発明に係るインク受容層の厚さは、5μm〜100μm、さらには、10μm〜50μmの範囲にあることが好ましい。
【0172】
インク受容層の厚さが薄いとインク吸収性が不充分となることがある。また、インク受容層の厚さが100μmを越えると、一回の塗工で得ることが困難で、複数回の塗工を行うことは経済性の点で問題となるほか、インク受容層にクラックを生じたり、カーリング(湾曲あるいは反り)を生じる場合がある。
【0173】
前記インク受容層付記録用シートにインクを塗布して記録を行う方法としては、ノズルより効果的に離脱させて、被記録媒体にインクを塗布し得る方法若しくは、インクを熱等により転写する方法であればいかなる方法でもよい。記録方法としては、ピエゾ素子、バブルジェット(登録商標)などのインク突出方法によるインクジェットによる塗布方法や、熱転写に代表される昇華型インクなどの転写方式等が上げられる。
【0174】
本願のインク受容層では、インクジェット記録方法が好適に採用することができる。
印字乾燥時の温度よりも、架橋温度の方が低いので、印字後の乾燥などの加熱処理によって、より架橋がすすみ、インクが強固に定着される。
【0175】
特に、本発明のインク受容層では、特定の膨潤性成分から構成されており、膨潤することによってインク水の吸収が早い。しかも膨潤性樹脂粒子が、マトリックス成分によって無機微粒子が均一に分散しているので、インク受容層全体が均一に膨潤し、インク受容層全体、特に深層部に、均一に水を導入することが可能となる。その結果、印字に滲みや割れが生じることもない。
【0176】
このような本発明に係るインク受容層付記録用シートは、前記インク受容層形成用塗布液を基材シート上に塗布し、乾燥し、硬化させることによって製造することができる。具体的には、インク受容層形成用塗料をバーコート法、ブレードコート方式、エアーナイフ方式、ロールコート方式、ブラッシュコート方式、グラビアコート方式、キスコート方式、エクストルージョン方式、スライドホッパー(スライドビード)方式、カーテンコート方式、スプレー方式等の周知の方法で基材シート上に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって受容層を形成することができる。
本発明のインク受容層付記録用シートは、インク受容層上にさらに光沢膜が形成されていてもよい。
【0177】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0178】
[実施例1]
膨潤性樹脂粒子(1)分散液の調製
コア粒子として、末端にカルボキシル基を有する水溶性アクリル系ポリマー(A)(日本ポリウレタン工業社製(株)製:ニッポラン、WL-530、固形分濃度40重量%、分散媒:水)6.4gを水40gに分散させ、ついで、十分に攪拌した後、エタノール1gを添加して固形分濃度17重量%の水溶性アクリル系ポリマー(A)溶液を調製した。この際の、レーザー光散乱法(Beckman Coulter 社製:Coulter Model N4)で測定されるコア粒子の分散粒子径は50nmであった。
【0179】
ついで、固形分濃度17重量%の水溶性アクリル系ポリマー(A)溶液に、カルボニル基を含んだイオン性導電モノマー(B)としてN−ジメチルアミノエチルアクリレート(三菱ガス化学(株)製:)100gを添加し、40℃で20分間撹拌した後、(内部のアルコキシシリル基が粒子外部に現れ、残存する水の影響を受けて加水分解し、反応性となり、脱水縮合を開始させながら、)架橋剤(C)としてポリエチレングリコール (PEG) 誘導体であるアクリル系界面活性剤(日油社製:SUNBRIGHT、PA シリーズ、固形分濃度40重量%、分散媒:水、pH8.0)4gを添加し、40℃で20分間撹拌した。このとき、混合溶液のpHは7.0であった。
【0180】
ついで、孔径1μmのフィルターにより粗大粒子及び異物を濾過して除去した後、濃度調整により、最終的に固形分濃度15.0重量%の膨潤性樹脂粒子(1)分散液を調製した。
得られた膨潤性樹脂粒子(1)のレーザー光散乱法(Coulter Model N4)で測定される重量平均粒子径を表に示した。
【0181】
重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)分散液の調製
アルミナ水和物粒子(日揮触媒化成(株)製:カタロイドAP−5、Al23含有量75重量%)18.7gを、純水51.5gに分散させ、濃度3重量%の酢酸水溶液を滴下してpH3.5に調整後、ホモキサーにより、1400rpmで20分間分散処理し、Al23としての濃度20重量%のアルミナ水和物粒子分散液70.5gを調製した。
【0182】
別途、親水性モノマー化合物である2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(東亞合成(株) 製:ATBS、白色粉末)を1.5g、イオン交換水14.5g、イソプロピルアルコール3gとエチレングリコール1.5gとを混合し、これに消泡剤(日信(株)製:サーフィノール 104BC)1.5gを加え、ついで、超音波分散機を用いて20分間高速分散させて不飽和重合樹脂(A)分散液(溶液)20.5gを調製した。
【0183】
ついで、濃度20重量%のアルミナ水和物粒子分散液と不飽和重合樹脂(A)分散液(溶液)とをバタフライミキサーを使用して30分間混合して固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)分散液91.5gを調製した。
【0184】
得られた重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)のX線回折による結晶構造および下記条件で測定した平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を表に示した。
【0185】
平均一次粒子径
重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)の固形分濃度0.001重量%の分散液を調製し、透過電子顕微鏡のグリッド上に滴下し、室温で乾燥した後、透過電子顕微鏡(TEM)写真を撮影し、無作為に50個の粒子の粒子径を測定し、この平均値を一次粒子径とした。繊維状粒子については、短径と長径を測定した。
【0186】
窒素吸着法による平均細孔径・細孔容積測定
重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)を550℃で1時間焼成した後、窒素吸着細孔分布測定装置(日本ベル(株)製:BELSORB-mini)を用い相対圧(P/Po)が0.38〜0.990の積算値を細孔容積とし、吸着側のピークの細孔径を平均細孔径とした。
【0187】
平均二次粒子径
動的光散乱法(大塚電子z株製:PER-III)を用い測定したキュムラント粒子径を平均二次粒子径とした。重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)の平均二次粒子径は250nmであった。
【0188】
インク受容層形成用塗布液(1)の調製
固形分濃度15.0重量%の膨潤性樹脂粒子(1)分散液7.8gと、固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)分散液45.7g、重合性不飽和樹脂(B)としてカルボン酸を含有する重合性不飽和モノマーアクリル酸2-ヒドロキシエチル(新日本理化(株)製:リカジット BT-W、固形分濃度10重量%)5.46g、ポリマー樹脂としてアクリル系樹脂微粒子(東亞合成化学(株)製:UC-3510、固形分濃度10重量%)を9.36g、架橋剤として固形分濃度20重量%カルボジイミド化合物(日清紡(株)製:カルボジライトV-02)1.17gを充分に混合してインク受容層形成用塗布液(1)を調製した。
得られたインク受容層形成用塗布液(1)の組成等を表1に示す。
【0189】
インク受容層付記録用シート(1)の調製
インク受容層形成用塗布液(1)をPETフィルム(東レ(株)製:ルミラー T-100、厚さ100μm、屈折率1.65、基材透過率88.0%、Haze 1.0%、反射率5.1%)にバーコーター(#90)で塗布し、60℃で20分間乾燥してインク受容層付記録用シート(1)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は15μmであった。
【0190】
得られたインク受容層付記録用シート(1)の全光線透過率、ヘーズを測定し、結果を表1に示す。
全光線透過率およびヘーズは積分分光計(日本分光(株)製:V560)により測定した。
また、密着性、耐擦傷性、耐水性、水吸収量、水銀圧入法による細孔特性、インク吸収性およびガスバリア性を以下の方法および評価基準で評価し、結果を表1に示した。
【0191】
細孔特性PV(Hg)(細孔容積、平均細孔径)
インク受容層付記録用シート(1)の受容層を基材より剥離し、0.2gを水銀圧入法細孔分布測定装置(Quantachrome社製:Poremaster)を用い最大圧力33,000psiまで測定して、細孔容積及び平均細孔径を得た。結果を表1に示す。
【0192】
水吸収量PV(H2O)
インク受容層付記録用シート(1)の受容層を10mm角にカットし、受容層に水を滴下した際に表面及びカット面より水があふれ出る直前の量を測定し単位グラムあたりに計算し水吸収量とした。
【0193】
密着性
インク受容層付記録用シート(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテ−プを接着し、ついで、セロハンテ−プを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することにより密着性を評価した。結果を表1に示す。
残存升目の数100個 :◎
残存升目の数90〜99個 :○
残存升目の数85〜89個 :△
残存升目の数84個以下 :×
【0194】
耐擦傷性
インク受容層上にスチールウール#0000番を50g/cm2荷重で10往復し、表面の傷の本数を数え以下の4段階に分類することにより耐擦傷性を評価した。結果を表1に示す。
傷の数0本 :◎
傷の数1〜10本 :○
傷の数10〜100本 :△
傷の数100本以上 :×
【0195】
インク吸収性
インク吸収性については、インク浸透性およびインク発色性について、以下の方法および
評価基準で評価した。結果を表1に示す。
【0196】
インク浸透性
染料プリンター(EPSON社製:PM-G860)を用い、インクとしてCMY三次色からなる黒を単色で、印字濃度100%でベタ印字し、キーエンス社製超深度顕微鏡(VK-9500)で印字部の表面粗さ(Ra)を測定した。同様に印字をしなかった部分の表面粗さ(Ra0)を測定し、表面粗さの差δRa(μm)=(Ra)−(Ra0)を求め、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
評価基準
δRa ≦ 0.15 :◎
0.15 < δRa < 0.3 :○
0.3 ≦ δRa < 1.0 :△
δRa ≧ 1.0 :×
【0197】
インク発色性
EPSON製染料プリンターPM-G860を用い、インクとしてCMY三次色からなる黒を単色
で、印字濃度を0%〜100%まで10%刻みでベタ印字し、積分分光計(日本分光(株)
製:V560)にてLab空間で測定される発色の度合い(明るさ)を測定し、印字濃度(
0−100%)とL(明るさ%)の相関係数(K)を求め、以下の基準で評価した。
評価基準:
K ≧ 0.8 :◎
0.5 < K < 0.8 :○
0.2 < K < 0.5 :△
K ≦ 0.2 :×
【0198】
ガスバリア性
ガスバリア性としてアルバム保存性を評価した。
先ず、EPSON製染料プリンターPM-G860を用い、インク受容層付記録用シート(1)に三次色の印刷をし、乾燥後、これをアルバムのビニル系包袋に挿入し、常温で3ヶ月経過後の変色・退色の度合いを前記ビニル系の包袋から露出した部分について観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示した。
評価基準:
全く変色が認められなかった :◎
僅かに変色が認められた :○
明らかに変色が認められた :△
著しい変色が認められた :×
【0199】
耐水性
インク受容層付記録用シート(1)の受容層3cm角を充分な水に30分間浸漬し、その後、室温で24時間乾燥させた際、水の跡の有無を観察し、以下の評価基準で評価し結果を表1に示した。
評価基準:
全く水の跡が認められなかった :◎
僅かに水の跡が認められた :○
明らかに水の跡が認められた :△
膜が剥離した :×
【0200】
[実施例2]
インク受容層形成用塗布液(2)の調製
実施例1において、固形分濃度15.0重量%の膨潤性樹脂粒子(1)分散液7.8gと、固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)分散液45.7g、ポリマー樹脂としてアクリル系樹脂微粒子(東亞合成化学(株)製:UC-3510、固形分濃度10重量%)11.2gを充分に混合した以外は同様にしてインク受容層形成用塗布液(2)を調製した。
得られたインク受容層形成用塗布液(2)の組成等を表1に示す。
【0201】
インク受容層付記録用シート(2)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(1)の代わりにインク受容層形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(2)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は15μmであった。
得られたインク受容層付記録用シート(2)の全光線透過率、ヘーズ、密着性、耐擦傷性、耐水性、インク吸収性およびガスバリア性を評価し、結果を表1に示した。
【0202】
[実施例3]
インク受容層形成用塗布液(3)の調製
実施例1において、固形分濃度15.0重量%の膨潤性樹脂粒子(1) 分散液7.8gと、固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)分散液45.7g、ポリマー樹脂としてアクリル系樹脂微粒子(東亞合成化学(株)製:UC-3510、固形分濃度10重量%)を9.36g、架橋剤として固形分濃度20重量%カルボジイミド化合物(日清紡(株)製:カルボジライトV-02)1.17gを充分に混合した以外は同様にしてインク受容層形成用塗布液(3)を調製した。
得られたインク受容層形成用塗布液(3)の組成等を表1に示す。
【0203】
インク受容層付記録用シート(3)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(1)の代わりにインク受容層形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(3)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は15μmであった。
得られたインク受容層付記録用シート(3)の全光線透過率、ヘーズ、密着性、耐擦傷性、耐水性、インク吸収性およびガスバリア性を評価し、結果を表1に示した。
【0204】
[実施例4]
重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(2)分散液の調製
実施例1において、修飾用樹脂として2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を固形分として8重量部、アルミナ水和物粒子をAl23として92重量部となるように混合した以外は同様にして固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(2)分散液91.5gを調製した。
得られた重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(2)のX線回折による結晶構造、平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を表に示した。
【0205】
インク受容層形成用塗布液(4)の調製
実施例1において、固形分濃度15.0重量%の膨潤性樹脂粒子(1) 分散液7.8gと、上記で調製した固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(2)分散液45.7g、重合性不飽和樹脂(B)としてカルボン酸を含有する重合性不飽和モノマーアクリル酸2-ヒドロキシエチル(新日本理化(株)製:リカジット BT-W、固形分濃度10重量%)4.37g、ポリマー樹脂としてアクリル系樹脂微粒子(東亞合成化学(株)製:UC-3510、固形分濃度10重量%)を9.36g、架橋剤として固形分濃度20重量%カルボジイミド化合物(日清紡(株)製:カルボジライトV-02)1.17gを充分に混合してインク受容層形成用塗布液(4)を調製した。
得られたインク受容層形成用塗布液(4)の組成等を表1に示す。
【0206】
インク受容層付記録用シート(4)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(1)の代わりにインク受容層形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(4)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は15μmであった。
得られたインク受容層付記録用シート(4)の全光線透過率、ヘーズ、密着性、耐擦傷性、耐水性、インク吸収性およびガスバリア性を評価し、結果を表1に示した。
【0207】
[実施例5]
重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(3)分散液の調製
実施例1において、修飾用樹脂として2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を固形分として15重量部、アルミナ水和物粒子をAl23として85重量部となるように混合した以外は同様にして固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(3)分散液91.5gを調製した。
得られた重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(3)のX線回折による結晶構造、平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を表に示した。
【0208】
インク受容層形成用塗布液(5)の調製
実施例1において、固形分濃度15.0重量%の膨潤性樹脂粒子(1) 分散液7.8gと、上記で調製した固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(2)分散液45.7g、重合性不飽和樹脂(B)としてカルボン酸を含有する重合性不飽和モノマーアクリル酸2-ヒドロキシエチル(新日本理化(株)製:リカジット BT-W、固形分濃度10重量%)7.1g、ポリマー樹脂としてアクリル系樹脂微粒子(東亞合成化学(株)製:UC-3510、固形分濃度10重量%)を9.36g、架橋剤として固形分濃度20重量%カルボジイミド化合物(日清紡(株)製:カルボジライトV-02)1.17gを充分に混合してインク受容層形成用塗布液(4)を調製した。 得られたインク受容層形成用塗布液(5)の組成等を表1に示す。
【0209】
インク受容層付記録用シート(5)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(1)の代わりにインク受容層形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(5)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は15μmであった。
得られたインク受容層付記録用シート(5)の全光線透過率、ヘーズ、密着性、耐擦傷性、耐水性、インク吸収性およびガスバリア性を評価し、結果を表1に示した。
【0210】
[実施例6]
インク受容層形成用塗布液(6)の調製
実施例1において、固形分濃度15.0重量%の膨潤性樹脂粒子(1)分散液5.46gと、固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)分散液59.4g、重合性不飽和樹脂(B)としてカルボン酸を含有する重合性不飽和モノマーアクリル酸2-ヒドロキシエチル(新日本理化(株)製:リカジット BT-W、固形分濃度10重量%)7.09g、ポリマー樹脂としてアクリル系樹脂微粒子(東亞合成化学(株)製:UC-3510、固形分濃度10重量%)を12.1g、架橋剤として固形分濃度20重量%カルボジイミド化合物(日清紡(株)製:カルボジライトV-02)1.52gを充分に混合してインク受容層形成用塗布液(6)を調製した。
得られたインク受容層形成用塗布液(6)の組成等を表1に示す。
【0211】
インク受容層付記録用シート(6)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(1)の代わりにインク受容層形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(6)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は15μmであった。
得られたインク受容層付記録用シート(6)の全光線透過率、ヘーズ、密着性、耐擦傷性、耐水性、インク吸収性およびガスバリア性を評価し、結果を表1に示した。
【0212】
[実施例7]
インク受容層形成用塗布液(7)の調製
実施例1において、固形分濃度15.0重量%の膨潤性樹脂粒子(1)分散液9.36gと、固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)分散液37.6g、重合性不飽和樹脂(B)としてカルボン酸を含有する重合性不飽和モノマーアクリル酸2-ヒドロキシエチル(新日本理化(株)製:リカジット BT-W、固形分濃度10重量%)3.93g、ポリマー樹脂としてアクリル系樹脂微粒子(東亞合成化学(株)製:UC-3510、固形分濃度10重量%)を8.4g、架橋剤として固形分濃度20重量%カルボジイミド化合物(日清紡(株)製:カルボジライトV-02)0.94gを充分に混合してインク受容層形成用塗布液(7)を調製した。
得られたインク受容層形成用塗布液(7)の組成等を表1に示す。
【0213】
インク受容層付記録用シート(7)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(1)の代わりにインク受容層形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(7)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は15μmであった。
得られたインク受容層付記録用シート(7)の全光線透過率、ヘーズ、密着性、耐擦傷性、耐水性、インク吸収性およびガスバリア性を評価し、結果を表1に示した。
【0214】
[実施例8]
重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(4)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSS−120、SiO2濃度16重量%、平均粒子径200nm87.5gに、修飾用樹脂としてアシッドホスホキシ・ポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレートを固形分として5重量部、シリカゾルをSiO2として95重量部となるように混合し、ホモミキサーにより、1400rpmで20分間処理した後、目開き10μmのポリプロピレン製フィルターで吸引濾過を行い、60℃の温水2000gを掛けて洗浄し、ついで、純水を加えて固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(4)分散液82.3gを調製した。
得られた重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(4)の平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を表に示した。
【0215】
インク受容層形成用塗布液(8)の調製
実施例1において、固形分濃度15.0重量%の膨潤性樹脂粒子(1)分散液7.8g、上記で調製した固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(4)分散液43.75g、重合性不飽和樹脂(B)としてカルボン酸を含有する重合性不飽和モノマーアクリル酸2-ヒドロキシエチル(新日本理化(株)製:リカジット BT-W、固形分濃度10重量%)5.46g、ポリマー樹脂としてアクリル系樹脂微粒子(東亞合成化学(株)製:UC-3510、固形分濃度10重量%)を9.36g、架橋剤として固形分濃度20重量%カルボジイミド化合物(日清紡(株)製:カルボジライトV-02)1.17gを充分に混合してインク受容層形成用塗布液(8)を調製した。
得られたインク受容層形成用塗布液(8)の組成等を表1に示す。
【0216】
インク受容層付記録用シート(8)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(1)の代わりにインク受容層形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(8)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は15μmであった。
得られたインク受容層付記録用シート(8)の全光線透過率、ヘーズ、密着性、耐擦傷性、耐水性、インク吸収性およびガスバリア性を評価し、結果を表1に示した。
【0217】
[比較例1]
表面修飾無機微粒子(R1)の調製
濃度3重量%の塩化アルミニウム水溶液2000gに濃度5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHを7に調整した。その後、25℃で1時間攪拌し、アルミナ水和物ゲルを得た。得られたゲルをポリプロピレン製10μmフィルターで吸引濾過を行い、固液分離し、60℃の温水2000gを掛けて洗浄した。
得られた洗浄ゲルは濃度30重量%で固形分重量としては113gであった。
【0218】
ついで、洗浄ゲルに純水330gを加えて固形分濃度16重量%のアルミナ水和物粒子分散液とし、この分散液にシランカップリング剤としてγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:KBM503)を4g加え、95℃で2時間加熱攪拌を行い、ついで、濾過し、分離した後120℃で2時間乾燥して表面修飾無機微粒子(R1)を調製した。
得られた表面修飾無機微粒子(R1)のX線回折による結晶構造、平均一次粒子径、平均二次粒子径、平均細孔径および細孔容積を表に示した。
【0219】
インク受容層形成用塗布液(R1)の調製
表面修飾無機微粒子(R1)14gをイソプロピルアルコール(IPA)30g及び純水63gに均一に分散させて固形分濃度15重量%の表面修飾無機微粒子(R1)分散液93gを調製した。
【0220】
ついで、実施例1において、固形分濃度17重量%の重合性不飽和樹脂(A)表面修飾無機微粒子(1)分散液45.7gの代わりに固形分濃度16重量%の表面修飾無機微粒子(R1)分散液48.5gを用いた以外は同様にしてインク受容層形成用塗布液(R1)を調製した。得られたインク受容層形成用塗布液(R1)の組成等を表1に示す。
【0221】
インク受容層付記録用シート(R1)の調製
実施例1において、インク受容層形成用塗布液(1)の代わりにインク受容層形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にしてインク受容層付記録用シート(R1)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は15μmであった。
得られたインク受容層付記録用シート(R1)の全光線透過率、ヘーズ、密着性、耐擦傷性、耐水性、インク吸収性およびガスバリア性を評価し、結果を表1に示した。
【0222】
[比較例2]
インク受容層形成用塗布液(R2)の調製
アルミナ水和物粒子(日揮触媒化成(株)製:カタロイドAP−5、Al23含有量75重量%)9.35gを、純水25.7gに分散させ、濃度3重量%の酢酸水溶液を滴下してpH3.5に調整後、ホモキサーにより、1400rpmで20分間分散処理し、Al23としての濃度20重量%のアルミナ水和物粒子分散液35.2gを調製した。
【0223】
濃度10重量%に純水で希釈したポリビニルアルコール(クラレ(株)製:PVA117)14.2g、および硬化剤として濃度3重量%のホウ酸水溶液0.74gを充分に混合してインク受容層形成用塗布液(R2)を調製した。
【0224】
インク受容層付記録用シート(R2)の調製
インク受容層形成用塗布液(R2)をPETフィルム(東レ(株)製:ルミラー T-100、厚さ100μm、屈折率1.65、基材透過率88.0%、Haze 1.0%、反射率5.1%)にバーコーター(#70)で塗布し、60℃で20分間加熱処理してインク受容層付記録用シート(R2)を調製した。このときのインク受容層の膜厚は11μmであった。
得られたインク受容層付記録用シート(R2)の全光線透過率、ヘーズ、密着性、耐擦傷性、耐水性、耐光性およびガスバリア性を評価し、結果を表1に示した。
【0225】
【表1−1】

【0226】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤性樹脂からなるシェル層を有するコアセル構造を有する膨潤性樹脂粒子、ポリマー樹脂、無機微粒子および分散媒とからなり、
膨潤性樹脂粒子の濃度が固形分として0.05〜20重量%の範囲にあり、ポリマー樹脂の濃度が固形分として0.01〜10重量%の範囲にあり、
該無機微粒子は重合性不飽和樹脂(A)によって表面修飾されており、
該表面修飾無機微粒子の濃度が固形分として0.01〜90重量%の範囲にあることを特徴とするインク受容層形成用塗布液。
【請求項2】
さらに、架橋剤を含み、該架橋剤の濃度が固形分として10重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項3】
前記重合性不飽和樹脂(A)が(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン樹脂、セルロース誘導体から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項4】
前記重合性不飽和樹脂(A)の平均重合度nが1〜4であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項5】
前記重合性不飽和樹脂(A)が、極性基(親水性基)を有するモノマーであり、
N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系マクロマー、アシッドスルホキシ・ポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)クリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等のアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロマーからなる群から選ばれる少なくと1種であることを
特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項6】
ポリマー樹脂が アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂の微粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項7】
さらに、インク受容層形成成分として重合性不飽和樹脂(B)を含み、該重合性不飽樹脂(B)の濃度が固形分として10重量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項8】
前記無機微粒子がMgO、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23、Sb25、ZnOおよびこれらの複合酸化物からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項9】
前記無機微粒子が擬ベーマイトアルミナおよび/またはベーマイトアルミナであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項10】
前記無機微粒子が繊維状または鎖状構造を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項11】
前記膨潤性樹脂粒子の平均粒子径が20〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項12】
前記膨潤性樹脂粒子のコア部がアクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、ビニル系樹脂微粒子から選ばれる1種以上の樹脂からなることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項13】
前記膨潤性樹脂粒子のシェル層を構成する膨潤性樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂から誘導されるポリマー主鎖を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項14】
前記シェル層を構成する膨潤性樹脂が、側鎖あるいは末端に、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、ウレタン基、アルキル基、フェニル基、スルホン基、アルコキシル基、チオール基、およびシアノ基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項15】
前記架橋剤がカルボジイミド化合物、シアノ化合物、メラミン化合物、オキソザリン化合物、イソシアネート化合物から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項16】
前記重合性不飽和樹脂(A)および/または前記重合性不飽和樹脂(B)がカルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、ウレタン基、アルキル基、フェニル基、スルホン基、アルコキシル基、ビニル基、チオール基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン樹脂、セルロース誘導体であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のインク受容層形成用塗布液。
【請求項17】
基材シートと、該基材シート上に形成されたインク受容層とからなり、
該インク受容層がコアシェル構造を有する膨潤性樹脂粒子、樹脂マトリックスおよび重合性不飽和樹脂(A)で表面修飾された無機微粒子とからなり、
膨潤性樹脂粒子のシェル層が、膨潤性樹脂からなり、
シェル層の膨潤性樹脂と、樹脂マトリックスとが、架橋した網目構造を有し、
表面修飾無機微粒子のTEM観察法で測定した平均一次粒子径が1〜200nmの範囲にあり、窒素吸着法で測定した細孔容積(PVN2)が0.1〜2.0cc/gの範囲にあり、平均細孔径が5〜60nmの範囲にあり、
水銀圧入法で測定したインク受容層の細孔容積(PVHg)が0.01〜1.4cc/gの範囲にあり、平均細孔径が5〜40nmの範囲であることを特徴とするインク受容層付記録用シート。
【請求項18】
前記重合性不飽和樹脂(A)が(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン樹脂、セルロース誘導体から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項17に記載のインク受容層付記録用シート。
【請求項19】
インク受容層の水の吸収量(PVH2O)が0.1〜2.0cc/gの範囲にあり、該水の吸収量(PVH2O)と前記細孔容積(PVHg)との比(PVH2O)/(PVHg)が1.4〜100の範囲にあることを特徴とする請求項17または18に記載のインク受容層付記録用シート。
【請求項20】
前記無機微粒子がMgO、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23、Sb25、ZnOおよびこれらの複合酸化物からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載のインク受容層付記録用シート。
【請求項21】
前記無機微粒子が擬ベーマイトアルミナおよび/またはベーマイトアルミナであることを特徴とする請求項17〜20のいずれかに記載のインク受容層付記録用シート。
【請求項22】
前記無機微粒子が繊維状または鎖状構造を有することを特徴とする請求項17〜21のいずれかに記載のインク受容層付記録用シート。
【請求項23】
前記膨潤性樹脂粒子のコア部がアクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、ビニル系樹脂微粒子から選ばれる1種以上の樹脂からなることを特徴とする請求項17〜22のいずれかに記載のインク受容層付記録用シート。
【請求項24】
前記インク受容層が、請求項1〜16のいずれかに記載の塗布液を基材シート上に塗布した後、乾燥・加熱して得られたものであることを特徴とする請求項17〜23のいずれかに記載のインク受容層付記録用シート。
【請求項25】
前記膨潤性樹脂粒子のシェル層を構成する膨潤性樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂から誘導されるポリマー主鎖を含み、側鎖あるいは末端に、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、ウレタン基、アルキル基、フェニル基、スルホン基、アルコキシル基、チオール基、およびシアノ基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を含み、樹脂マトリックスが、ポリマー樹脂からなり、シェル層の膨潤性樹脂とともに、架橋されてなることを特徴とする請求項17〜24のいずれかに記載のインク受容層付記録用シート。
【請求項26】
前記マトリックスが、さらに重合性不飽和樹脂(B)から誘導される重合体成分を含むことを特徴とする請求項17〜25のいずれかに記載のインク受容層付記録用シート。

【公開番号】特開2012−76314(P2012−76314A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222264(P2010−222264)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】