説明

インク組成物、インクジェット記録用インク、インクセットおよびインクジェット記録方法

【課題】良好なマゼンタ色相を有し、定着性に優れ、光および環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対して堅牢性の高い画像を形成するインクジェト記録用インク組成物の提供。
【解決手段】着色剤として、分子内に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有するインク組成物。


は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が0.20以上0.55以下の電子求引性基、Rは芳香族基または複素環基、Rは水素原子または置換基、R及びRは水素原子、脂肪族基または芳香族基、Zは炭素原子と共に5〜7員の芳香環または複素環を形成するのに必要な非金属原子群。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なインク組成物、特に、耐光性および耐オゾン性に優れた画像を形成することができるマゼンタインク組成物、該インク組成物を含む、インクセット、及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、更にカラー記録が容易であることから、急速に普及し、更に発展しつつある。
インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式が有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。また、インクジェット記録用インクとしては、水性インク、油性インクあるいは固体(溶融型)インクが用いられる。
【0003】
このようなインクジェット記録用インクに用いられる着色剤に対しては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOxなど)に対して堅牢であること、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、更には、安価に入手できることが要求されている。
しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たす色素を捜し求めることは極めて難しい。特に、良好なマゼンタ色相を有し、高湿条件下でも受像材料に対して定着性が良く、光および環境中の活性ガス、中でもオゾンなどの酸化性ガスに対して堅牢な着色剤が強く望まれている。
【0004】
インクジェット記録用インクに用いられるマゼンタの色素骨格としては、特開平8−60053号等に見られるキサンテン色素、特開平7−157698号等に見られるH酸アゾ色素、アントラピリドン色素が代表的である。このうち、キサンテン色素は、色相および鮮明性に優れるが耐光性に問題がある。また、H酸アゾ色素は、色相および耐水性に優れるが耐光性および鮮明性に問題がある。
一方、特開昭57−195775号、特開昭59−074173号、特開平10−306221号、特開2000−191660号、特開2001−072884号等に見られるアントラピリドン色素は、鮮明性および耐光性に優れるが耐オゾン性に問題があった。近年になり、アントラピリドン色素の耐オゾン性を改良した特開2002−332418号、特開2003−192930号、国際公開第04/104108号が開示されたが、未だ満足のいくレベルではない。
【0005】
また、近年、複数のカラーインク組成物を用いたインクジェット記録方法によってカラー画像を形成して記録物を得ることが行われている。一般に、カラー画像の形成は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物の三色、さらに所望によりブラックインク組成物を加えた四色によって行われている。また、これらの四色にライトシアンインク組成物及びライトマゼンタインク組成物を加えた六色又はそれらにさらにダークイエローインク組成物を加えた七色によってカラー画像形成を行う場合もある。このような2種以上のインク組成物を組み合わせたものがインクセットである。
【0006】
上述したカラー画像の形成に用いられるインク組成物には、各色ごとのインク組成物自身が良好な発色性を有していることに加え、複数色のインク組成物を組み合わせたときに良好な中間色を発色することができること、及び得られる記録物が保存中に変退色しないこと等が求められる。
【0007】
インクセットにおいて、特定のインク組成物の耐光性や耐オゾン性が、他のインク組成物の耐光性や耐オゾン性よりも著しく低い場合、その特定のインク組成物によって形成された色が、他の色よりも早く退色や変色してしまい、画像全体の色調のバランスが悪くなるが、そうすると観察者は、単独のインク組成物によって形成された画像が退色することを認識できるようになるよりも短時間内に画像の画質劣化を認識できるようになる。したがって、インクセットにおいては、インクセットを構成する各インク組成物各々の耐光性や耐オゾン性を向上させることに併せて、各インク組成物の耐光性や耐オゾン性レベル、すなわち各インク組成物によって形成される画像の光やオゾンによる劣化速度、例えば退色速度もできるだけ同じであることが好ましい。言い換えれば、インクセットを構成する各インク組成物の耐光性や耐オゾン性が優れているとともに、各インク組成物間の耐光性や耐オゾン性の差が小さいことが好ましい。
【特許文献1】特開2002−332418号公報
【特許文献2】特開2003−192930号公報
【特許文献3】国際公開第04/104108号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の第1の目的は、良好なマゼンタ色相を有し、受像材料に対する定着性に優れ、光および環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対して堅牢性の高い画像を形成することができるインクジェト記録用マゼンタインク組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、インクセットを構成する各インク組成物自身の耐光性や耐オゾン性が良好であるとともに、各インク組成物間の耐光性や耐オゾン性のバランスが良く、光やオゾンに対して特定色が他の色に比べて早く退色または変色しないインクセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、良好なマゼンタ色相と耐光性に優れるアントラピリドン化合物誘導体を詳細に検討したところ、従来知られていない特定の置換基を導入した下記一般式(1)の化合物を含むインク組成物が耐オゾン性に優れ、かつ、従来知られていない特定構造の各色染料を組み合わせることにより、各インク組成物間の耐光性や耐オゾン性のバランスが良いインクセットを見出し、本発明を完成するに至った。
1.着色剤として、分子内に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするインク組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(1)中、Rは、水素原子またはハメットの置換基定数σp値が0.20以上0.55以下の電子求引性基を表し、Rは、芳香族基または複素環基を表し、Rは、水素原子または置換基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、Zは、炭素原子と共に5〜7員の芳香環または複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。ただし、一般式(1)は、少なくとも1つのイオン性親水性基を有する。
2.Zが炭素原子と共に形成する芳香環がベンゼン環である下記一般式(2)で表されるアントラピリドン化合物であることを特徴とする上記1に記載のインク組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
一般式(2)中、Rは、水素原子または置換基を表す。ただし、一般式(2)は、少なくとも1つ(好ましくは2つ以上6つ以下)のイオン性親水性基を有する。
3.Rが、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基であることを特徴とする上記1または2に記載のインク組成物。
4.Rが、イオン性親水性基で置換した芳香族基、またはイオン性親水性基で置換した複素環基であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のインク組成物。
5.RおよびRの一方が水素原子、他方がイオン性親水性基で置換した芳香族基であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のインク組成物。
6.着色剤として、上記1〜5のいずれかに記載の化合物を少なくとも1種含有するインク組成物を用いることを特徴とするインクジェット記録用インク。
7.支持体上に白色無機顔料を含有するインク受容層を有する受像材料上に、上記6に記載のインクジェット記録用インクを用いて画像形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
8.少なくとも、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物を備えたインクセットであって、前記マゼンタインク組成物が、着色剤として、上記1〜5のいずれかに記載の化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするインクセット。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインク組成物は、良好なマゼンタ色相を有し、鮮明性、耐水性、耐光性、耐オゾン性に優れた着色画像や着色材料を与えることができる。特に、本発明のインク組成物を用いるインクジェット記録用インク、および該インクを用いるインクジェット記録方法は、良好なマゼンタ色相を有し、光および環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対する堅牢性が高いマゼンタ色画像を形成することができる。また、特定構造の各色染料を組み合わせることにより、各インク組成物間の耐光性や耐オゾン性のバランスが良いインクセットができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施について詳細に説明する。
まず、本明細書において用いられる置換基について若干説明する。本明細書において用いられる置換基としては、以下の基(これらを「置換基W」と称する)が挙げられる。
例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールもしくは複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、またはシリル基が例として挙げられる。
【0016】
本明細書において用いられる脂肪族基とは、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基を意味する。また、本明細書で用いられる芳香族基とは、アリール基および置換アリール基を意味する。
【0017】
更に詳しくは、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0018】
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。詳細には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
【0019】
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を包含する。詳細には、アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられ、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等が挙げられ、ビシクロアルケニル基としては、置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0020】
アリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
複素環基としては、好ましくは、5または6員の置換もしくは無置換の芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5または6員の芳香族の複素環基、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0021】
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から20の置換もしくは無置換のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
複素環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換の複素環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、および複素環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、または炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0023】
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0024】
アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、または炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
複素環チオ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等が挙げられる。
スルファモイル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。
【0025】
アルキルまたはアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、または6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
アルキルまたはアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、または6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、または炭素数2から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0026】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。
アリールまたは複素環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、または炭素数3から30の置換もしくは無置換の複素環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ等が挙げられる。
【0027】
イミド基としては、好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が挙げられる。
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。
シリル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0028】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、該水素原子が上記の置換基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、またはアリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、またはベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0029】
本発明において、インク組成物の着色剤として用いられるマゼンタ色素は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0030】
【化3】

【0031】
一般式(1)中、Rは、水素原子またはハメットの置換基定数σp値が0.20以上0.55以下の電子求引性基を表し、Rは、芳香族基または複素環基を表し、Rは、水素原子または置換基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、Zは、炭素原子と共に5〜7員の芳香環または複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。ただし、一般式(1)は、少なくとも1つのイオン性親水性基を有する。
【0032】
一般式(1)において、Rは、水素原子またはハメットの置換基定数σp値が0.20以上0.55以下の電子求引性基を表す。Rが、σp値が0.20以上0.55以下の電子求引性基が少なくとも1つのイオン性親水性基で置換したものが好ましい。ここで、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について若干説明する。ハメット則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年 L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり、説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に包まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明においては、σp値をこのような意味で使用する。
【0033】
σp値が0.20以上0.55以下の電子求引性基の具体例としては、アシル基、カルボキシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、複素環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基、σp値が0.20以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基等が挙げられる。
として好ましくは、水素原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、複素環基であり、より好ましくはアシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基であり、特に好ましくはベンゾイル基である。
【0034】
一般式(1)において、Rとして好ましくは、置換基を有してよい芳香族基または複素環基であり、置換基としては前記置換基Wが挙げられる。
で表される複素環基としては、5〜6員環の複素環基が好ましく、単環構造であっても、2つ以上の環が縮合した多環構造であってもよい。また、上記複素環基としては、N、O、S原子のいずれかを少なくとも含む複素環基が好ましい。
で表される複素環基として好ましくは、チエニル基、フリル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソオキサゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基、1,3,4−チアジアゾリル基、1,2,4−オキサジアゾリル基、1,3,4−オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、1,3,5−トリアジル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基などが挙げられる。これらは置換基(前記置換基W)を有していても良い。複素環基上の2つの置換基が結合して縮合環を形成しても良い。また、複素環基中に窒素原子を含む場合、該窒素原子は4級化されていてもよい。
【0035】
としてより好ましくは、イオン性親水性基で置換した芳香族基またはイオン性親水性基で置換した複素環基であり、特に好ましくは、イオン性親水性基で置換したアリール基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、または1,3,5−トリアジル基である。
【0036】
一般式(1)においてRは、水素原子または置換基(前記置換基W)を表し、Rとして好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、またはスルホ基であり、特に好ましくは、水素原子、またはアリールオキシ基である。
【0037】
一般式(1)において、RおよびRとして好ましくは、RおよびRの一方が水素原子、他方が脂肪族基または芳香族基であり、より好ましくは、RおよびRの一方が水素原子、他方がイオン性親水性基で置換した芳香族基であり、特に好ましくは、RおよびRの一方が水素原子、他方がカルボキシル基または/およびスルホ基で置換したアリール基である。
【0038】
一般式(1)中、Zは、炭素原子と共に5〜7員の芳香環または複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、該5〜7員の芳香環または複素環はさらに置換基(前記置換基W)を有していてもよい。Zが炭素原子と共に形成する5〜7員の複素環としては、チオフェン環、フラン環、ピロール環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環などが挙げられる。
【0039】
Zが炭素原子と共に形成する5〜7員の芳香環または複素環として好ましくは、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環である。Zが炭素原子と共に形成する芳香環がベンゼン環である下記一般式(2)で表されるアントラピリドン化合物が特に好ましい。
【0040】
【化4】

【0041】
一般式(2)中、Rは水素原子または置換基(前記置換基W)を表し、Rとして好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、カルボキシル基またはスルホ基であり、特に好ましくは、水素原子である。
一般式(2)中、R〜Rは、前記一般式(1)におけるR〜Rと同義であり、好ましい例も同じである。
【0042】
一般式(1)および一般式(2)で表される色素化合物は、その分子内にイオン性親水性基を少なくとも1つ有する。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基、4級アンモニウム基等が含まれる。イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、またはスルホ基が好ましく、中でもカルボキシル基、またはスルホ基が特に好ましい。さらに少なくとも1つはスルホ基であることが最も好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基、スルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましい。
上記色素化合物は、その分子内にイオン性親水性基を2つ以上6つ以下有することが好ましく、3つ以上5つ以下有することがより好ましい。
【0043】
尚、前記一般式(1)および一般式(2)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0044】
本発明の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物は、下記の例に限定されるものではない。
【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
本発明では、化合物の構造によって互変異性体が存在する場合においても、本発明においては代表的な形の一つで記載しているが、本発明の記述と異なる互変異性体も本発明の化合物に含まれる。
【0052】
また、本発明では、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物中に同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N)を含有していても適用できる。
【0053】
〔着色組成物の用途等〕
本発明の着色組成物の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱転写型画像記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱転写型画像記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、より好ましくはインクジェット方式記録材料である。また、米国特許第4,808,501号明細書、特開平6−35182号公報などに記載されているLCDやCCDなどの固体撮像素子で用いられるカラーフィルター、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
本発明の化合物(色素化合物)は、その用途に適した溶解性、熱移動性などの物性を、置換基により調整して使用できる。また、本発明の色素化合物は、用いられる系に応じて均一な溶解状態、乳化分散のような分散された溶解状態、さらには固体分散状態でも使用することができる。
【0054】
〔インクジェット記録用インク組成物〕
インクジェット記録用インク組成物(インクジェット記録用インクと同義)は、親油性媒体や水性媒体中に本発明の色素化合物を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有させうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2002−371214号広報に記載のものが適用できる)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0055】
水性媒体としては、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。これら水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0056】
本発明のインクジェット記録用インクにおいて、マゼンタインク組成物中におけるマゼンタ色素(染料)の濃度は、用いられる染料のカラーバリューに基づいて適宜定めることができる。一般的には、インクジェット記録用インク100質量部中、前記一般式(1)または一般式(2)で表される色素化合物が0.2〜10質量部含有するのが好ましい。染料濃度を0.2質量%以上とすることにより、インクとして充分な発色性を確保でき、さらに染料濃度を10質量%以下にすることによってインクジェット記録方法に用いるインク組成物として、ノズルからの吐出性を確保することやノズル目詰まりを防止すること等が容易となる。
また、本発明のインクジェット記録用インクに用いられるマゼンタインク組成物の着色剤としては、本発明の一般式(1)または一般式(2)で表されるマゼンタ色素化合物に、その他のマゼンタ染料を併用してもよい。2種類以上の着色剤を併用する場合は、全着色剤の含有量の合計が前記範囲となっていることが好ましい。
【0057】
本発明の一般式(1)または一般式(2)で表されるマゼンタ色素化合物に併用できるマゼンタ染料としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド2、4、9、23、26、31、39、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、221、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247、C.I.ダイレクトバイオレット7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101、C.I.アシッドレッド35、42、52、57、62、80、82、111、114、118、119、127、128、131、143、151、154、158、249、254、257、261、263、266、289、299、301、305、336、337、361、396、397、C.I.アシッドバイオレット5、34、43、47、48、90、103、126、C.I.リアクティブレッド3、13、17、19、21、22、23、24、29、35、37、40、41、43、45、49、55、C.I.リアクティブバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34、C.I.ベーシックレッド12、13、14、15、18、22、23、24、25、27、29、35、36、38、39、45、46、C.I.ベーシックバイオレット1、2、3、7、10、15、16、20、21、25、27、28、35、37、39、40、48等が挙げられる。更に、カップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)として、フェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラジンのようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、カプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料、アントラピリドン染料、などを挙げることができる。
【0058】
一般式(1)または一般式(2)で表される色素化合物に併用するマゼンタ染料として好ましくは、アントラピリドン染料(例えば、特開2001−139836号、特開2003−192930号、特開2005−008868号、特開2005−320480号、国際公開第04/104108号パンフレットの実施例に記載の化合物が挙げられる。)、ヘテリル−ヘテリルアゾ染料(特開2002−309115号、特開2002−309116号、特開2002−371079号、特開2002−371214号、特開2004−075742号の実施例に記載の化合物が挙げられる。)であり、より好ましくは、アミノピラゾールジアゾ成分とピリジンカプラーからなるアゾ色素であり、例えば、特開2002−371214号の例示化合物(f−1)が挙げられる。
【0059】
着色剤として、一般式(1)または一般式(2)で表される色素化合物に、その他のマゼンタ染料を併用してマゼンタインク組成物を調製する場合、一般式(1)または一般式(2)で表される色素化合物と、併用するマゼンタ染料の質量比は、特に限定されないが、好ましくは、90/10〜10/90であり、より好ましくは、30/70〜70/30である。
【0060】
さらに、本発明のインク組成物において、一般式(1)または一般式(2)で表される色素化合物とともに、ベタイン系界面活性剤を併用してもよい。具体的なベタイン型界面活性剤としては、国際公開03/066756号パンフレットに記載のものが適用できる。ベタイン型界面活性剤は、インクジェット記録用インク100質量部中、0.02〜20質量部含有するのが好ましい。また、構造の異なる複数のベタイン型界面活性剤を使用してもよく、その場合は、全ベタイン型界面活性剤の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0061】
本発明のインクジェット記録用インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、イエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
即ち、本発明のインク組成物は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物を備えたインクセットのマゼンタインク組成物として使用できる。本発明のインクセットにおいて、イエローインク組成物およびシアンインク組成物の着色剤として用いられるイエロー染料およびシアン染料の構造は、特に限定されないが、特定構造の各色染料を組み合わせることにより、さらに各インク組成物間の耐光性や耐オゾン性のバランスが良いインクセットが提供できる。
【0062】
次に本発明のインクセットを構成するイエローインク組成物に用いる着色剤について説明する。
【0063】
本発明のインクセットにおいて、イエローインク組成物に用いられる着色剤として適用できるイエロー染料は、任意のものを使用することができる。例えば、C.I.ダイレクトイエロー8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、120、130、132、142、144、161、163、C.I.アシッドイエロー17、19、23、25、39、40、42、44、49、50、61、64、76、79、110、127、135、143、151、159、169、174、190、195、196、197、199、218、219、222、227、C.I.リアクティブイエロー2、3、13、14、15、17、18、23、24、25、26、27、29、35、37、41、42、C.I.ベーシックイエロー1、2、4、11、13、14、15、19、21、23、24、25、28、29、32、36、39、40等が挙げられる。更に、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、例えば、カプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料、例えば、ベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料、例えば、ナフトキノン染料、アントラキノン染料等のキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。前記のイエロー染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエローの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0064】
本発明のインクセットとして好ましいイエロー染料は、下記一般式(4)で表されるアゾ染料である。
【0065】
【化11】

【0066】
一般式(4)中、Gはヘテロ環基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1の時は、R、X、Y、Z、Q、Gは一価の基を表し、括弧内で示されるモノアゾ色素を表す。nが2の時は、R、X、Y、Z、Q、Gは一価または二価の置換基を表す。但し、少なくとも1つは二価の置換基を表し、括弧内で示される色素のビス型アゾ色素を表す。nが3の時は、R、X、Y、Z、Q、Gは一価、二価または三価の置換基を表す。但し、少なくとも2つが二価の置換基を表すか、または、少なくとも1つが三価の置換基を表し、括弧内で示される色素のトリス型アゾ色素を表す。
【0067】
以下に、一般式(4)について更に詳しく説明する。
【0068】
一般式(4)中、Gの好ましい置換基の例は、5〜8員ヘテロ環基が好ましく、その中でも5または6員の置換もしくは無置換の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環基が好ましく、それらは更に縮環していてもよい。更に好ましくは、炭素数3〜30の5または6員の芳香族ヘテロ環基である。
【0069】
Gで表されるヘテロ環基の例には、置換位置を限定しないで例示すると、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリン、スルホランなどが挙げられる。
【0070】
一般式(4)中、Q、R、X、Y、Zの好ましい置換基例を詳細に説明する。
【0071】
Q、R、X、Y、Zが一価の基を示す場合、一価の基としては、水素原子または一価の置換基を表す。一価の置換基を更に詳しく説明する。この一価の置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基)、アシルアミノ基(アミド基)、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基)、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、アゾ基、またはイミド基を挙げることができ、各々はさらに置換基を有していてもよい。
【0072】
中でも特に好ましいものは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基であり、特に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはヘテロ環基が好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、またはアルキルスルホニル基が最も好ましい。
【0073】
Q、R、X、Y、Zが二価の基を示す場合、二価の基としては、アルキレン基(例、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン)、アルケニレン基(例、エテニレン、プロぺニレン)、アルキニレン基(例、エチニレン、プロピニレン)、アリーレン基(例、フェニレン、ナフチレン)、二価のヘテロ環基(例、6ークロロー1、3、5ートリアジンー2、4ージイル基、ピリミジンー2、4ージイル基、ピリミジンー4、6ージイル基、キノキサリンー2、3ージイル基、ピリダジンー3,6−ジイル)、−O−、−CO−、−NR’−(R’は水素原子、アルキル基、アリール基)、−S−、−SO−、−SO−又はこれらの組み合わせ(例えば−NHCHCHNH−、−NHCONH−等)であることが好ましい。
【0074】
アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、二価のヘテロ環基、R’のアルキル基またはアリール基は、置換基を有していてもよい。
【0075】
さらに好ましくは、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のアルケニレン基、炭素数10以下のアルキニレン基、炭素数6以上10以下のアリーレン基、二価のヘテロ環基、−S−、−SO−、−SO−又はこれらの組み合わせ(例えば−SCHCHS−、−SCHCHCHS−等)であることがさらに好ましい。
【0076】
二価の連結基の総炭素数は0乃至50であることが好ましく、0乃至30であることがより好ましく、0乃至10であることが最も好ましい。
【0077】
Q、R、X、Y、Zが三価の基を示す場合、三価の基としては、三価の炭化水素基、三価のヘテロ環基、>N−、又はこれと二価の基の組み合わせ(例えば>NCHCHNH−、>NCONH−等)であることが好ましい。
【0078】
三価の連結基の総炭素数は0乃至50であることが好ましく、0乃至30であることがより好ましく、0乃至10であることが最も好ましい。
【0079】
一般式(4)中、Qの好ましい置換基例は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、または置換もしくは無置換のアリールスルホニル基が好ましく、特に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアシル基が好ましく、その中でも特に水素原子が好ましい。
【0080】
一般式(4)中、Rの好ましい置換基例は、置換もしくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜18のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数4〜12ヘテロ環基が好ましく、その中でも、炭素原子数1〜8の直鎖アルキル基または分岐のアルキル基が好ましく、特に、2級または3級アルキル基が好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0081】
一般式(4)中、Xの好ましい置換基例は、電子求引性基である。特に、ハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子求引性基であり、より好ましくは、σp値が0.30以上の電子求引性基であり、上限としては1.0以下の電子求引性基である。
【0082】
Xとして好ましくは、炭素数2〜12のアシル基、炭素数2〜12のアシルオキシ基、炭素数1〜12のカルバモイル基、炭素数2〜12のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜18のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキルスルフイニル基、炭素数6〜18のアリールスルフイニル基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数0〜12のスルファモイル基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキルオキシ基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキルチオ基、炭素数7〜18のハロゲン化アリールオキシ基、σp値0.20以上の電子求引性基が2つ以上置換した炭素数7〜18のアリール基、窒素原子,酸素原子,イオウ原子を有する5〜8員環で炭素数1〜18のヘテロ環基を挙げることができる。
【0083】
更に好ましくは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数0〜12のスルファモイル基である。特に、好ましくは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、または炭素数0〜12のスルファモイル基であり、最も好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基である。
【0084】
一般式(4)中、Yの好ましい置換基例は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜18のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数4〜12ヘテロ環基が好ましく、その中でも、水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、特に水素原子、または炭素数1〜8の直鎖アルキル基もしくは分岐のアルキル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0085】
一般式(4)中、Zの好ましい置換基例は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロ環基を示す。Zが表す特に好ましい置換基は、置換アリール基、または置換基へテロ環基であり、その中でも特に置換基アリール基が好ましい。
【0086】
一般式(4)中、nの好ましい例は、1または2であり、特に2が好ましい。
【0087】
本発明の一般式(4)で表されるアゾ色素の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
上記一般式(4)で表されるアゾ色素のうち、好ましくは一般式(5)で表される色素である。
【0088】
【化12】

【0089】
一般式(5)中、R、R、Y、Yは一価の基を示し、X、Xはそれぞれ独立にハメットのσp値0.20以上の電子求引性基を示す。Z、Zはそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロ環基を示す。Mは水素原子またはカチオンを示す。
【0090】
以下に、R、R、X、X、Y、Y、Z、ZおよびMについて詳細に説明する。
【0091】
一般式(5)中、R、Rの置換基の例は、上記一般式(4)で説明したRの置換基の例と同じであり好ましい例も同じである。
一般式(5)中、X、Xの置換基の例は、上記一般式(4)で説明したXの置換基の例と同じであり好ましい例も同じである。
一般式(5)中、Y、Yの置換基の例は、上記一般式(4)で説明したYの置換基の例と同じであり好ましい例も同じである。
一般式(5)中、Z、Zの置換基の例は、上記一般式(4)で説明したZの置換基の例と同じであり好ましい例も同じである。
【0092】
上記一般式(5)中、Mの例は、上記一般式(4)で説明したMの例と同じであり好ましい例も同じである。
【0093】
本発明の一般式(5)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0094】
本発明において、一般式(4)および(5)で表される化合物が親水性を必要とする場合は、分子内に2個以上のイオン性親水性基を有することが好ましく、2〜10個のイオン性親水性基を有することがさらに好ましく、3〜6個のイオン性親水性基を有することが特に好ましい。
【0095】
好ましくはスルホ基、カルボキシル基または水酸基(それらの塩を含む)である。イオン性親水性基が塩の場合、好ましいカウンターカチオンはアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、及び有機のカチオン(例えばピリジニウム、テトラメチルアンモニウム、グアニジニウム)を挙げることができ、その中でもアルカリ金属が好ましく、特にスルホ基の場合はリチウム塩、カルボキシ基の場合はナトリウム塩及びまたはカリウム塩が好ましい。
【0096】
本発明の一般式(4)および一般式(5)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物は、下記の例に限定されるものではない。
【0097】
【化13】

【0098】
次に本発明のインクセットを構成するシアンインク組成物に用いる着色剤について説明する。
【0099】
本発明のインクセットにおいて、シアンインク組成物に用いられる着色剤として適用できるシアン染料は、任意のものを使用することができる。例えば、C.I.ダイレクトブルー1、10、15、22、25、55、67、68、71、76、77、78、80、884、86、87、90、98、106、108、109、151、156、158、159、160、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、291、C.I.アシッドブルー9、25、40、41、62、72、76、78、80、82、92、106、112、113、120、127、128、129、138、143、175、181、205、207、220、221、230、232、247、258、260、264、271、277、278、279、280、288、290、326、C.I.リアクティブブルー2、3、5、8、10、13、14、15、17、18、19、21、25、26、27、28、29、38、C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、22、26、41、45、46、47、54、57、60、62、65、66、69、71等が挙げられる。更に、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、例えば、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのようなヘテロ環類などを有するアゾメチン染料、シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料、フタロシアニン染料、アントラキノン染料、インジゴ・チオインジゴ染料などを挙げることができる。
前記のシアン染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてシアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0100】
本発明のインクセットとして好ましいシアン染料は、フタロシアニン染料であり、例えば、特開2004−002670号、特開2004−075986号の実施例に記載の化合物である。特に好ましくは、特開2004−002670号(例示化合物103、105)である。
【0101】
本発明のインクセットは所望によりブラックインク組成物を含んで構成することができる。本発明のインクセットにブラックインク組成物を含めることにより、良好なコントラストを有する画像を記録媒体上に形成することができる。
【0102】
本発明のインクセットにおいて、ブラックインク組成物に用いられる着色剤は、特定構造の着色剤に限定されるものではないが、他色のインク組成物の耐光性や耐オゾン性とブラックインク組成物の耐光性や耐オゾン性との間の差が小さいことが好ましい。適用できるブラック染料としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0103】
本発明においてブラックインク組成物の着色剤として用いられるブラック染料は、公知のいずれのブラック染料でもよいが、好ましくは、特開2003−306623号、特開2005−97359号、特開2005−120346号、特開2005−139427号の実施例に記載の染料である。特に好ましいブラック染料は、特開2005−120346号(例示化合物D−1、D−9)、特開2005−139427号(例示化合物b−3、c−4)である。
また、イエロー、マゼンタ、シアンインク組成物以外のレッド、グリーン、ブルー、白色インク組成物等を用いることもできる。
【0104】
〔インクジェット記録方法〕
本発明のインクジェット記録方法は、前記インクジェット記録用インクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。
【0105】
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマーラテックス化合物を併用してもよい。ラテックス化合物を受像材料に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても、後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も受像紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用してもよい。具体的には、特開2002−166638号、同2002−121440号、同2002−154201号、同2002−144696号、同2002−80759号、同2002−187342号、同2002−172774号の各公報に記載された方法を好ましく用いることができる。
【0106】
本発明のインク組成物を用いてインクジェットプリントをするのに用いられる記録紙及び記録フィルムについては、特開2002−371214号公報に記載されている。
【0107】
本発明のインクセットを構成するインク組成物は、上述した成分から適宜選ばれた成分を含んで調製されるが、得られるインク組成物の粘度が20℃において10mPa・s未満であることが好ましい。さらに、本発明においてはインク組成物の表面張力を20℃において45mN/m以下にすることが好ましく、25〜45mN/mの範囲にすることが特に好ましい。粘度及び表面張力をこのように調整することによって、インクジェット記録方法に用いるために好ましい特性を有するインク組成物を得ることができる。この粘度及び表面張力の調整は、インク組成物に含有させる溶剤及び各種添加剤の添加量、並びにそれらの種類等を適宜調節及び選択することによって行うことができる。
【0108】
なお、本発明のインクセットを構成するインク組成物は、そのpHが20℃において7.0〜10.5であることが好ましく、7.5〜10.0であることがさらに好ましい。20℃におけるインク組成物のpHを7.0以上にすることによってインクジェットヘッドの共析メッキが剥離することを防止することができ、かつインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出特性を安定化することができる。また、インク組成物のpHを20℃において10.5以下にすることによって、インク組成物が接触する各種の部材、例えばインクカートリッジやインクジェットヘッドを構成する部材が劣化されることを防ぐことができる。
【0109】
本発明におけるインク組成物の調製方法としては、例えば、インク組成物に含有される各種成分を充分に混合してできるだけ均一に溶解した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターで加圧濾過し、さらに得られた溶液を真空ポンプを用いて脱気処理して調製する方法が例示できるが、これに限定されない。
【0110】
次に、上述したインク組成物を用いた本発明のインクセットは、これらを一体的に若しくは独立に収容したインクカートリッジとして用いることができ、取り扱いが便利である点等からも好ましい。インクセットを含んで構成されるインクカートリッジは当技術分野において公知であり、公知の方法を適宜用いてインクカートリッジにすることができる。
【0111】
本発明のインクセット又はインクカートリッジは一般の筆記具用、記録計用、ペンプロッター用等に使用することができるが、インクジェット記録方法に用いることが特に好ましい。本発明のインクセット又はインクカートリッジを用いることができるインクジェット記録方法は、インク組成物を細いノズルから液滴として吐出させ、その液滴を記録媒体に付着させるいかなる記録方法も含む。本発明のインク組成物を用いることができるインクジェット記録方法の具体例を以下に説明する。
【0112】
第一の方法は静電吸引方式とよばれる方法である。静電吸引方式は、ノズルとノズルの前方に配置された加速電極との間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に噴射させ、そのインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えることによって、インク滴を記録媒体上に向けて飛ばしてインクを記録媒体上に定着させて画像を記録する方法、又は、インク滴を偏向させずに、印刷情報信号に従ってインク滴をノズルから記録媒体上にむけて噴射させることにより画像を記録媒体上に定着させて記録する方法である。
【0113】
第二の方法は、小型ポンプによってインク液に圧力を加えるとともに、インクジェットノズルを水晶振動子等によって機械的に振動させることによって、強制的にノズルからインク滴を噴射させる方法である。ノズルから噴射されたインク滴は、噴射されると同時に帯電され、このインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えてインク滴を記録媒体に向かって飛ばすことにより、記録媒体上に画像を記録する方法である。
【0114】
第三の方法は、インク液に圧電素子によって圧力と印刷情報信号を同時に加え、ノズルからインク滴を記録媒体に向けて噴射させ、記録媒体上に画像を記録する方法である。
【0115】
第四の方法は、印刷信号情報に従って微小電極を用いてインク液を加熱して発泡させ、この泡を膨張させることによってインク液をノズルから記録媒体に向けて噴射させて記録媒体上に画像を記録する方法である。
【0116】
本発明のインクセット又はインクカートリッジは、上述した4つの方法を含むインクジェット記録方式による画像記録方法を用いて記録媒体上に画像を記録する場合に用いるインク組成物として特に好ましい。本発明のインクセットを用いて記録された記録物は優れた画質を有し、さらに耐光性や耐オゾン性に優れている。
【0117】
[実施例]
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0118】
<例示化合物(D−2)の合成法>
(1)中間体(a−1)の合成法
中間体(a−1)は、J.Org.Chem.USSR(Engl.Transl);16;2039−2044(1980)に記載の方法により合成した。
(2)中間体(a−2)の合成法
中間体(a−1)18.9g(50ミリモル)、ベンゾイル酢酸エチル19.2g(100ミリモル)、炭酸ナトリウム0.79g(7.5ミリモル)にオルトジクロロベンゼン60mLを加えて、内温175℃で12時間攪拌した。この反応液を空冷して、析出した結晶をろ取、メタノールで洗浄、乾燥した後、カラムクロマトグラフィー精製を行い、中間体(a−2)15.7g(31.0ミリモル、収率62%)を得た。
(3)中間体(a−3)の合成法
中間体(a−2)15.7g(31.0ミリモル)、5−アミノイソフタル酸ジメチル9.7g(46.5ミリモル)、銅粉末3.9g、炭酸ナトリウム4.9g(46.5ミリモル)に1,3−ジメチル2−イミダゾリジノン(DMI)45mLを加えて、内温200℃で4時間攪拌した。この反応液を冷却した後、酢酸エチルを150mL添加して、ろ過により不溶物(未反応の銅や無機塩)を除去した。ろ液をエバポレーターにより濃縮した後、カラムクロマトグラフィー精製を行い、中間体(a−3)10.0g(15.8ミリモル、収率51%)を得た。
(4)例示化合物(D−2)の合成法
中間体(a−3)10.0g(15.8ミリモル)にスルホラン40mLを加えた懸濁液に安定化無水硫酸(サルファン)6.3g(79.0ミリモル)をゆっくり滴下した。この反応液を50℃で4時間攪拌した後、水5.0mLをゆっくり滴下して、さらに70℃で1時間攪拌した。この反応液を冷却して、4M水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、エタノールを113mL加えて析出する結晶をろ取、メタノールで洗浄、乾燥して例示化合物(D−2)6.8g(7.6ミリモル、収率48%)を得た。合成ルートを下記に示す。
【0119】
【化14】

【実施例2】
【0120】
(水性インクの調製)
下記の成分を30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した後、必要に応じてKOH10mol/LにてpH9に調整し、平均孔径0.45μm、直径47mmのミクロフィルターを用いて加圧濾過して、インク液Aを調製した。
−インク液Aの組成−
・染料(D−2) 5質量部
・ジエチレングリコール 9質量部
・テトラエチレングルコールモノブチルエーテル 9質量部
・グリセリン 7質量部
・ジエタノールアミン 1質量部
・水 70質量部
【0121】
色素を、下記表1に示すように変更した以外は、インク液Aの調製と同様にして、インク液B〜Hを調製した。色素を2種以上併用する場合は、等質量ずつ使用した。
【0122】
(画像記録及び評価)
インク液A〜Hを用いて、インクジェットプリンター(PM−700C、セイコーエプソン(株)製)で、フォト光沢紙(富士写真フイルム(株)製インクジェットペーパー、スーパーフォトグレード)に画像を記録した。得られた画像について、光堅牢性、オゾン堅牢性および高湿条件下での色相変化を評価した。
【0123】
光堅牢性については、記録した直後の画像濃度Ciを測定した後、ウェザーメーター(アトラスC.165)を用いて、画像にキセノン光(8万5千ルクス)を7日間照射した後、再び画像濃度Cfを測定し、キセノン光照射前後の画像濃度の差から色素残存率({(Ci−Cf)/Ci}×100%)を算出し評価した。画像濃度は反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定した。
色素残存率は、反射濃度が1、1.5及び2.0の3点で測定した。評価結果を下記表1に示す。
下記表1中、いずれの濃度においても色素残存率が80%以上の場合を○、2点が80%未満の場合を△、すべての濃度で80%未満の場合を×として三段階で評価した。
【0124】
オゾン堅牢性については、記録した直後の画像を、オゾンガス濃度が5ppmに設定されたボックス内に24時間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。尚、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。下記表1中、何れの濃度でも色素残存率が70%以上の場合を○、1又は2点が70%未満を△、全ての濃度で70%未満の場合を×として三段階で評価した。
【0125】
高湿条件下での色相変化については、40℃85%RHの条件下で3日間放置し、色相変化はGray部のΔa*値を測定した。下記表1中、いずれの条件でもΔa*の値が2.0未満の場合を○、いずれかの条件でΔa*の値が2.0以上4.0未満の場合を△、いずれかの条件でΔa*の値が4.0以上の場合を×として、三段階で評価した。
【0126】
【表1】

【0127】
【化15】

【0128】
【化16】

【0129】
【化17】

【0130】
【化18】

【0131】
表1に示すように、本発明のインク液AおよびEから得られた画像は、比較インク液FおよびHから得られた画像よりも、光堅牢性およびオゾン堅牢性に優れ、高湿条件下における色相変化が小さいことがわかる。比較インク液Hは、色相変化が小さいがオゾンおよび光堅牢性が本発明のインク液より劣ることがわかる。
【0132】
更に、インク液A〜Hを用いて、インクジェットプリンター(PM−700C、セイコーエプソン(株)製)により、写真用紙<光沢>(KA450PSK、セイコーエプソン(株)製)に画像を記録した。得られた画像の光堅牢性、耐オゾンガス性および高湿条件下における色相変化を評価したところ、いずれも表1と同様の結果が得られた。
【実施例3】
【0133】
実施例2で作製した同じインクを、インクジェットプリンターBJ−F850(CANON社製)のカートリッジに詰め、同機にて同社のプロフェッショナルフォトペーパーPR−101に画像をプリントし、実施例2と同様な評価を行ったところ、実施例2と同様な結果が得られた。
【実施例4】
【0134】
〔各インク組成物の調製〕
以下の表2に示した組成に基づき、各成分を常温において30分間攪拌した後、得られた溶液を目開き1.0μmのメンブランフィルターを用いて濾過することにより各インク組成物を得た。なお表2中において、各成分の数値はインク組成物の質量を100%とした場合の各成分の質量%を示し、さらに水の量を示す「残り」は、水以外の成分とあわせて合計100%になる量を示す。
【0135】
また、表2中、Yはイエローインク組成物、Mはマゼンタインク組成物、Cはシアンインク組成物、Bはブラックインク組成物を表す。
【0136】
表2中、イエロー染料としては下記式(YELLOW−1)、シアン染料としては下記式(CYAN−1)、ブラック染料としては下記式(BLACK−1)と色相調整の観点で補色用染料として下記一般式(BLACK−2)で表される化合物を用いた。
【0137】
【化19】

【0138】
【化20】

【0139】
【化21】

【0140】
【化22】

【0141】
【表2】

【0142】
表中、TEGmBEはトリエチレングリコールモノブチルエーテルであり、DEGmBEはジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0143】
次に調製した各インク組成物を用いて表3に示す組み合わせで、I〜Nのインクセットを作成した。なお、表3に示した組み合わせのインクセットはライトインク組成物、すなわち淡マゼンタ(Light Magenta)インク組成物及び淡シアン(Light Cyan)インク組成物を含まない。
【0144】
【表3】

【0145】
インクジェットプリンタ Stylus Color 880(商標)(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を使用し、さらに表3に示したインクセットを用いて、インクジェット専用記録媒体{写真用紙<光沢>(商品名、セイコーエプソン株式会社製)}にイエロー、マゼンタ、シアン、及びブラック(ただし、インクセットがブラックインク組成物を含む場合のみブラックを含む。)からなり、それぞれの色のOD値が0.7〜1.8になるように階段状に濃度が変化した各色単色画像パターンならびにグリーン、レッド、グレーの画像パターンを印字させ、画像堅牢性(耐光性・耐オゾンガス性)の評価を行った。
【0146】
【表4】

【0147】
表4に示すように、本発明のインクセットI〜Lから得られた画像は、比較インクセットMおよびNから得られた画像よりも、光堅牢性およびオゾン堅牢性に優れ、かつ、各インク組成物間の光堅牢性やオゾン堅牢性の差が小さいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤として、分子内に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするインク組成物。
【化1】

一般式(1)中、Rは、水素原子またはハメットの置換基定数σp値が0.20以上0.55以下の電子求引性基を表し、Rは、芳香族基または複素環基を表し、Rは、水素原子または置換基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、Zは、炭素原子と共に5〜7員の芳香環または複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。ただし、一般式(1)は、少なくとも1つのイオン性親水性基を有する。
【請求項2】
Zが炭素原子と共に形成する芳香環がベンゼン環である下記一般式(2)で表されるアントラピリドン化合物であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【化2】

一般式(2)中、Rは、水素原子または置換基を表す。R、R、R、RおよびRは一般式(1)におけるR、R、R、RおよびRと同義である。ただし、一般式(2)は、少なくとも1つのイオン性親水性基を有する。
【請求項3】
が、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のインク組成物。
【請求項4】
が、イオン性親水性基で置換した芳香族基、またはイオン性親水性基で置換した複素環基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項5】
およびRの一方が水素原子、他方がイオン性親水性基で置換した芳香族基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項6】
着色剤として、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物を少なくとも1種含有するインク組成物を用いることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項7】
支持体上に白色無機顔料を含有するインク受容層を有する受像材料上に、請求項6に記載のインクジェット記録用インクを用いて画像形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項8】
少なくとも、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物を備えたインクセットであって、前記マゼンタインク組成物が、着色剤として、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするインクセット。

【公開番号】特開2007−224119(P2007−224119A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45596(P2006−45596)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】