インク補給具
【課題】 インクを使い切ったインクカートリッジ内に、内部の減圧による内外の圧力差に基づいて、インク容器からインクを補給するインク補給具として、インク容器内のインクを外部に漏出させる恐れのないものを提供する。
【解決手段】 下端部にノズル管１２を有するインクタンク１１の上端部の空気流通口１４に、可撓チューブ１５を介して、空気筒１７内にピストン２１を先後に移動可能に挿着した減圧器１６の空気筒１７の先端部を接続し、空気筒１７の後端部を密閉するエンドカバー１８に付設の中心ねじ穴１９に、先端にピストン２１を取り付けたハンドル２３付のねじロッド２２をねじ係合して、ピストン２１を前後にねじ送り操作可能にし、かつ空気筒１７のエンドカバー１８近傍の筒壁部に、大気開放口２０を設ける。
【解決手段】 下端部にノズル管１２を有するインクタンク１１の上端部の空気流通口１４に、可撓チューブ１５を介して、空気筒１７内にピストン２１を先後に移動可能に挿着した減圧器１６の空気筒１７の先端部を接続し、空気筒１７の後端部を密閉するエンドカバー１８に付設の中心ねじ穴１９に、先端にピストン２１を取り付けたハンドル２３付のねじロッド２２をねじ係合して、ピストン２１を前後にねじ送り操作可能にし、かつ空気筒１７のエンドカバー１８近傍の筒壁部に、大気開放口２０を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、インクを使い切ったインクカートリッジ内に、インクカートリッジ内の減圧（空気吸引）によるインクーカートリッジ内外の圧力差に基づいてインクを補給（補充）するインク補給具に関する。
【背景技術】
【０００２】
この種のインク補給具としては、先端にノズル管を取り付けるとともに後端を開口したインク収容筒内に、前後にのびる操作ロッド（ピストンロッド）を取り付けたピストンを、前後に移動可能に挿着したピストン・シリンダ型のものが知られている（例えば特許文献１参照）。
【０００３】
この公知のインク補給具は、インク収容筒のノズル管を、インクカートリッジのインク注入口（穴）部に嵌着して、インクカートリッジ上にインク収容筒が上下にのびるようにセットした状態で、ピストンを操作ロッドを介してインク収容筒内を上方に移動して後退させることによって、インクカートリッジ内の空気をインク収容筒内のインクを通してその上方側、すなわち後方（背部）側の空間に吸引し、これにより得られるインクカートリッジ内とインク収容筒のインクの後方側の空間の圧力差に基づいて、インク収容筒内のインクをノズル管を通してインクカートリッジ内に注入、補給するものである。
【０００４】
この公知のインク補給具によれば、インクの補給自体は容易に行うことができるが、インクカートリッジ内の減圧のための操作ロッドを介したピストンの後退操作は、インク収容筒を移動しないように保持しながら、インク収容筒の内面に対する摩擦抵抗と減圧抵抗に抗して行うことから、力を入れ過ぎて、操作ロッド、従ってピストンを急激に後退させる形になり易い。この結果インク収容筒内のインクを揺動させる衝撃力が作用したり、ピストンがインク収容筒の後端から離脱したり、またこの反動でノズル管のインクカートリッジのインク注入口部に対する嵌着が外れたりするため、インクがインク収容筒の後端やノズル管の先端から外部に漏出するという問題がある。
【特許文献１】特開平１１−２０７９８９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
この発明は、公知のインク補給具に認められる上記のような問題に鑑み、インクカートリッジ内の減圧を、インクを外部に漏出させる恐れのない安定したピストンの後退操作で行うことができるインク補給具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
この発明によれば、上記の課題は、特許請求の範囲の請求項１に記載のように、基本的には、先端にノズル管を取り付けるとともに後端に空気流通口を有する密閉型インクタンク（インク容器）と、先端をインクタンクの空気流通口に接続するとともに後端部に中心ねじ穴を有しかつ後端部近傍の筒壁部に大気開放口（穴）を有する密閉型空気筒及び空気筒に大気開放口部を通って前後に移動可能に挿着した、中心ねじ穴にねじ係合するねじロッド付きのピストンを備えたピストン・シリンダ型の減圧器とからなるインク補給具によって解決する。
【０００７】
この発明に係るインク補給具は、インクカートリッジ上において、インクタンクのノズル管を直接又は適宜のインク注入アダプターを介してインクカートリッジのインク注入口部に嵌着して、インクタンクをインクカートリッジ上にセットした状態で、減圧器のねじロッドを空気筒の中心ねじ穴に対して後退方向にねじ送り回転することにより、ピストンを空気筒内を後退させながら、インクカートリッジ内の空気をインクタンクのインク中を通して、空気筒内のピストンの前方側の空間部に吸引して、インクカートリッジ内を減圧した後、ピストンが空気筒の大気開放口を通過した後退の最終段階において、大気開放口を通してピストンの前方側の空間に流入する大気により、インクタンクのインクの背部側の空間部を大気圧の状態にして、インクに大気圧を作用させるという形で、減圧下のインクカートリッジ内にインクの補給を行う。
【０００８】
この発明のインク補給具においては、特許請求の範囲の請求項２に記載のごとく、減圧器の空気筒の先端を、インクタンクの空気流通口に、可撓チューブを介して接続することが望ましい。
【０００９】
またこの発明のインク補給具では、特許請求の範囲の請求項３に記載のように、ピストンをねじロッドに軸受を介して相対的に回転可能に取り付けることが望ましい。
【発明の効果】
【００１０】
特許請求の範囲の請求項１に記載の基本構成によれば、インクカートリッジ内の減圧を、減圧器の空気筒を保持した状態において、減圧器のねじロッドの空気筒の中心ねじ穴に対するねじ送り操作を介して行うので、ねじロッド、従ってピストンを安定した速さで後退させることができ、インクが外部に漏出する恐れはない。
【００１１】
また特許請求の範囲の請求項２に記載の可撓チューブを介したインクタンクと減圧器の空気筒の接続構成によれば、減圧器を操作に適した任意の状態（水平、垂直又は傾斜状態）に保持することができる。
【００１２】
さらに特許請求の範囲の請求項３に記載のピストン、ねじロッド間における軸受介設構成によれば、減圧操作のためにねじロッドを軸周りに回転させた際に、ピストンは軸周りに連動回転せずに、前後方向に移動するので、ピストンの前後方向の移動をよりスムースに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下図面に基づいて、この発明に係るインク補給具の好適な実施形態について説明する。
【００１４】
図示の形態では、インクタンク１１は、円筒状の密閉型容器で、先端部と後端部のそれぞれに相当する下端部と上端部のそれぞれに、ノズル管１２と空気流通口（穴）１４付きのエンドカバー１３を備えている。これらのノズル管１２と空気流通口１４は、インクタンク１０の不使用時にはキャップ図示せず）によって閉鎖可能である。
【００１５】
減圧器１６を構成する空気筒１７も、円筒状の密閉型容器で、先端部が、インクタンク１１の空気流通口１４に脱着自在に接続した可撓チューブ１５を介して接続してあるとともに、後端部が、先端部にピストン２１を取り付けたねじロッド２２のねじ係合する中心ねじ穴１９付きのエンドカバー１８で密閉してあり、かつエンドカバー１８近傍の筒壁部には大気開放口２０が設けてある。またピストン２１とねじロッド２２の先端部の間には、軸受２３が介在させてあるとともに、ねじロッド２２の空気筒１７の後方に突出する後端部には、十字形のハンドル２４が取り付けてある。
【００１６】
図示の形態によるインクカートリッジに対するインクの補給は、カートリッジホルダ（図示せず）に保持したインクカートリッジ２５上において、インクタンク１１のノズル管１２を、インク注入アダプター２７を介して、インクカートリッジ２５のインク注入口２６に嵌着して、インクカートリッジ２５上に移動不能にセットした後、減圧器１６のピストン２１に連なるねじロッド２２を、ハンドル２４による空気筒１７のエンドカバー１８の中心ねじ穴１９に対するねじ送り回転によって後退させることにより、ピストン２１をその終点まで後退させるという形で行う。
【００１７】
これによりインクカートリッジ２５内の減圧が行われた後、大気開放口２０を通して空気筒１７のピストン２１の前側の空間に流入する大気により、インクタンク１１内のインクの背部側に大気圧が作用して、インクがインクカートリッジ２５内に補給される。
【００１８】
この発明に係るインク補給具は、このほか種々の形態で実施することができるもので、上記の形態に限定されるものでない。
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】この発明に係るインク補給具の好適な実施形態の構成概要図である。
【符号の説明】
【００２０】
１１ インクタンク
１２ ノズル管
１３ エンドカバー
１４ 空気流通口
１５ 可撓チューブ
１６ 減圧器
１７ 空気筒
１８ エンドカバー
１９ 中心ねじ穴
２０ 大気開放口
２１ ピストン
２２ ねじロッド
２３ 軸受
２４ ハンドル
２５ インクカートリッジ
２６ インク注入口
２７ インク注入アダプター
【技術分野】
【０００１】
この発明は、インクを使い切ったインクカートリッジ内に、インクカートリッジ内の減圧（空気吸引）によるインクーカートリッジ内外の圧力差に基づいてインクを補給（補充）するインク補給具に関する。
【背景技術】
【０００２】
この種のインク補給具としては、先端にノズル管を取り付けるとともに後端を開口したインク収容筒内に、前後にのびる操作ロッド（ピストンロッド）を取り付けたピストンを、前後に移動可能に挿着したピストン・シリンダ型のものが知られている（例えば特許文献１参照）。
【０００３】
この公知のインク補給具は、インク収容筒のノズル管を、インクカートリッジのインク注入口（穴）部に嵌着して、インクカートリッジ上にインク収容筒が上下にのびるようにセットした状態で、ピストンを操作ロッドを介してインク収容筒内を上方に移動して後退させることによって、インクカートリッジ内の空気をインク収容筒内のインクを通してその上方側、すなわち後方（背部）側の空間に吸引し、これにより得られるインクカートリッジ内とインク収容筒のインクの後方側の空間の圧力差に基づいて、インク収容筒内のインクをノズル管を通してインクカートリッジ内に注入、補給するものである。
【０００４】
この公知のインク補給具によれば、インクの補給自体は容易に行うことができるが、インクカートリッジ内の減圧のための操作ロッドを介したピストンの後退操作は、インク収容筒を移動しないように保持しながら、インク収容筒の内面に対する摩擦抵抗と減圧抵抗に抗して行うことから、力を入れ過ぎて、操作ロッド、従ってピストンを急激に後退させる形になり易い。この結果インク収容筒内のインクを揺動させる衝撃力が作用したり、ピストンがインク収容筒の後端から離脱したり、またこの反動でノズル管のインクカートリッジのインク注入口部に対する嵌着が外れたりするため、インクがインク収容筒の後端やノズル管の先端から外部に漏出するという問題がある。
【特許文献１】特開平１１−２０７９８９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
この発明は、公知のインク補給具に認められる上記のような問題に鑑み、インクカートリッジ内の減圧を、インクを外部に漏出させる恐れのない安定したピストンの後退操作で行うことができるインク補給具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
この発明によれば、上記の課題は、特許請求の範囲の請求項１に記載のように、基本的には、先端にノズル管を取り付けるとともに後端に空気流通口を有する密閉型インクタンク（インク容器）と、先端をインクタンクの空気流通口に接続するとともに後端部に中心ねじ穴を有しかつ後端部近傍の筒壁部に大気開放口（穴）を有する密閉型空気筒及び空気筒に大気開放口部を通って前後に移動可能に挿着した、中心ねじ穴にねじ係合するねじロッド付きのピストンを備えたピストン・シリンダ型の減圧器とからなるインク補給具によって解決する。
【０００７】
この発明に係るインク補給具は、インクカートリッジ上において、インクタンクのノズル管を直接又は適宜のインク注入アダプターを介してインクカートリッジのインク注入口部に嵌着して、インクタンクをインクカートリッジ上にセットした状態で、減圧器のねじロッドを空気筒の中心ねじ穴に対して後退方向にねじ送り回転することにより、ピストンを空気筒内を後退させながら、インクカートリッジ内の空気をインクタンクのインク中を通して、空気筒内のピストンの前方側の空間部に吸引して、インクカートリッジ内を減圧した後、ピストンが空気筒の大気開放口を通過した後退の最終段階において、大気開放口を通してピストンの前方側の空間に流入する大気により、インクタンクのインクの背部側の空間部を大気圧の状態にして、インクに大気圧を作用させるという形で、減圧下のインクカートリッジ内にインクの補給を行う。
【０００８】
この発明のインク補給具においては、特許請求の範囲の請求項２に記載のごとく、減圧器の空気筒の先端を、インクタンクの空気流通口に、可撓チューブを介して接続することが望ましい。
【０００９】
またこの発明のインク補給具では、特許請求の範囲の請求項３に記載のように、ピストンをねじロッドに軸受を介して相対的に回転可能に取り付けることが望ましい。
【発明の効果】
【００１０】
特許請求の範囲の請求項１に記載の基本構成によれば、インクカートリッジ内の減圧を、減圧器の空気筒を保持した状態において、減圧器のねじロッドの空気筒の中心ねじ穴に対するねじ送り操作を介して行うので、ねじロッド、従ってピストンを安定した速さで後退させることができ、インクが外部に漏出する恐れはない。
【００１１】
また特許請求の範囲の請求項２に記載の可撓チューブを介したインクタンクと減圧器の空気筒の接続構成によれば、減圧器を操作に適した任意の状態（水平、垂直又は傾斜状態）に保持することができる。
【００１２】
さらに特許請求の範囲の請求項３に記載のピストン、ねじロッド間における軸受介設構成によれば、減圧操作のためにねじロッドを軸周りに回転させた際に、ピストンは軸周りに連動回転せずに、前後方向に移動するので、ピストンの前後方向の移動をよりスムースに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下図面に基づいて、この発明に係るインク補給具の好適な実施形態について説明する。
【００１４】
図示の形態では、インクタンク１１は、円筒状の密閉型容器で、先端部と後端部のそれぞれに相当する下端部と上端部のそれぞれに、ノズル管１２と空気流通口（穴）１４付きのエンドカバー１３を備えている。これらのノズル管１２と空気流通口１４は、インクタンク１０の不使用時にはキャップ図示せず）によって閉鎖可能である。
【００１５】
減圧器１６を構成する空気筒１７も、円筒状の密閉型容器で、先端部が、インクタンク１１の空気流通口１４に脱着自在に接続した可撓チューブ１５を介して接続してあるとともに、後端部が、先端部にピストン２１を取り付けたねじロッド２２のねじ係合する中心ねじ穴１９付きのエンドカバー１８で密閉してあり、かつエンドカバー１８近傍の筒壁部には大気開放口２０が設けてある。またピストン２１とねじロッド２２の先端部の間には、軸受２３が介在させてあるとともに、ねじロッド２２の空気筒１７の後方に突出する後端部には、十字形のハンドル２４が取り付けてある。
【００１６】
図示の形態によるインクカートリッジに対するインクの補給は、カートリッジホルダ（図示せず）に保持したインクカートリッジ２５上において、インクタンク１１のノズル管１２を、インク注入アダプター２７を介して、インクカートリッジ２５のインク注入口２６に嵌着して、インクカートリッジ２５上に移動不能にセットした後、減圧器１６のピストン２１に連なるねじロッド２２を、ハンドル２４による空気筒１７のエンドカバー１８の中心ねじ穴１９に対するねじ送り回転によって後退させることにより、ピストン２１をその終点まで後退させるという形で行う。
【００１７】
これによりインクカートリッジ２５内の減圧が行われた後、大気開放口２０を通して空気筒１７のピストン２１の前側の空間に流入する大気により、インクタンク１１内のインクの背部側に大気圧が作用して、インクがインクカートリッジ２５内に補給される。
【００１８】
この発明に係るインク補給具は、このほか種々の形態で実施することができるもので、上記の形態に限定されるものでない。
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】この発明に係るインク補給具の好適な実施形態の構成概要図である。
【符号の説明】
【００２０】
１１ インクタンク
１２ ノズル管
１３ エンドカバー
１４ 空気流通口
１５ 可撓チューブ
１６ 減圧器
１７ 空気筒
１８ エンドカバー
１９ 中心ねじ穴
２０ 大気開放口
２１ ピストン
２２ ねじロッド
２３ 軸受
２４ ハンドル
２５ インクカートリッジ
２６ インク注入口
２７ インク注入アダプター
【特許請求の範囲】
【請求項１】
先端にノズル管を取り付けるとともに後端に空気流通口を有する密閉型インクタンクと、先端をインクタンクの空気流通口に接続するとともに後端部に中心ねじ穴を有しかつ後端部近傍の筒壁部に大気開放口を有する密閉型空気筒及び空気筒に大気開放口部を通って前後に移動可能に挿着した、中心ねじ穴にねじ係合するねじロッド付きのピストンを備えたピストン・シリンダ型の減圧器とからなるインク補給具。
【請求項２】
減圧器の空気筒の先端を、インクタンクの空気流通口に、可撓チューブを介して接続してなる、請求項１記載のインク補給具。
【請求項３】
ピストンをねじロッドに軸受を介して相対的に回転可能に取り付けてなる、請求項１または２記載のインク補給具。
【請求項１】
先端にノズル管を取り付けるとともに後端に空気流通口を有する密閉型インクタンクと、先端をインクタンクの空気流通口に接続するとともに後端部に中心ねじ穴を有しかつ後端部近傍の筒壁部に大気開放口を有する密閉型空気筒及び空気筒に大気開放口部を通って前後に移動可能に挿着した、中心ねじ穴にねじ係合するねじロッド付きのピストンを備えたピストン・シリンダ型の減圧器とからなるインク補給具。
【請求項２】
減圧器の空気筒の先端を、インクタンクの空気流通口に、可撓チューブを介して接続してなる、請求項１記載のインク補給具。
【請求項３】
ピストンをねじロッドに軸受を介して相対的に回転可能に取り付けてなる、請求項１または２記載のインク補給具。
【図１】
【公開番号】特開２００６−１１０９１９（Ｐ２００６−１１０９１９Ａ）
【公開日】平成１８年４月２７日（２００６．４．２７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−３０２３５５（Ｐ２００４−３０２３５５）
【出願日】平成１６年１０月１８日（２００４．１０．１８）
【出願人】（５９２２０５０４５）株式会社北村製作所 (10)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年４月２７日（２００６．４．２７）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年１０月１８日（２００４．１０．１８）
【出願人】（５９２２０５０４５）株式会社北村製作所 (10)
【Ｆターム（参考）】
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