説明

インシーリングフォーカスが配置された外科用照明

手術部位の自動照明のための改良された手段を提供する発明が開示される。アクチュエータによる、単一の光源または光源アレイの調整を提供する、距離信号を受信機に送信するよう適合された無線周波送信機を使用することにより、影が最小限に抑えられるというさらなる利益が、照射範囲に提供される。さらに、1つの実施形態では、送信機は小型の外形であり、生体適合性材料で構成される。装置は、再利用のために滅菌可能であるか、あるいは使い捨てで、それにより送信機を滅菌容器に詰め込むことを可能とし、それにより手術部位の中、上、または側への装置の設置をさらに可能としてよい。本発明は、典型的なものと較べ、お互いからより離れて配列されながら、光源の個別の(埋め込み式)筺体により、最大限の視界到達を有する集束された強い照明を提供するライトアレイも開示する。最後に、埋め込み式筺体は、頭上の作業空間の、より有効な利用を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、仮出願、米国特許出願番号60/701,106号(本発明者により2005年7月20日申請)の利益を主張する。米国特許出願番号60/701,106号の内容は、その参照により、ここに援用する。
【0002】
本日付で本発明者により本出願とともに申請される出願の名称は、以下のとおりである。
(1)病院手術室再設計;
(2)病院外科環境における周囲照明;
(3)ヘルスケア環境における紫外線殺菌照射の使用;
(4)病院および実験室環境用壁内廃棄物容器;
(4)多機能床ポッド;
(5)手術室台の再設計;
(5)無菌使い捨てカートリッジを備えるロボット床清掃。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、手術室の外科用ライト、手術室ライトの使用方法に関し、さらに具体的には、中に自動調整可能ランプ要素を備える手術室ライトを、そこから放射される光の光軸が、高周波ロケータにより選択された地点に向けられるように使用することに関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
病院手術室は、通常、普通は手術部位である希望領域を照射するために、焦点の周囲に配置された多数のランプを使用する。ライトは、この地点の周囲に配列されるため、前記手術部位に対する視界を遮る可能性がある影を投じないライティングを提供するために調節されてよい。典型的な外科用ライティングは、ライティングの手動調整を可能にするハンドルを有する、天井または床のいずれかに取り付けられた装置により配置される。装置は、手動で位置合わせされるものもあるが、電気モータによるなど、動力を備える手段により位置合わせされるものもある。
【0005】
米国特許第4,025,777号は、手術室の天井に設置するための手術室ランプを示している。発光面を備える装置の下部は、複数の光放射ランプのためのスペースを提供するために細分されている。発光体は、調整可能であるように位置される。そのため、ランプと連結されたランプ誘導配置は、全ユニット自体を動かさずに、手術室ランプの光軸を変更することができ、それによりそれぞれのランプからの光線は、水平または垂直変更可能な地点を対象とできる。収束点は、あらかじめ決定することができる。個々のランプユニットは、筺体のジンバルサスペンションに保持され、ガイドロッドおよびバネによって相互に連結されている。そのため3つの空間軸の交点は、それぞれのガイドロッドにより形成される制御システムの適正な再調整により、移動させることができる。ガイドレールに沿って移動させることができる可動台部が提供される。変更または移動は、駆動モータによりおこなうことができる。
【0006】
ドイツ特許開示書類DE−OS 32 27 494号には、具体的には、歯科作業および顎手術のために適合された手術室ライトについて記載されている。患者椅子が動かされた場合、ランプの自動追跡により、光線は患者の口部に継続的に向けられたままとなる。必要な追跡配置には、患者の頭部に位置付けられた超音波送信機、処置室に配置される超音波受信機、および、追跡または標的回路が含まれる。サーボモータまたはステッピングモータが提供され、ランプホルダを既定の位置、あるいは、傾斜にそれぞれ至らせることにより、追跡を確実にする。かかる手術室ライトは、超音波送信機が照射される手術範囲の直近、つまり開放創部位に位置付けられなければならないため、一般外科では使用できない。一般外科目的では、開放創に超音波送信機が設置できないため、かかるシステムは使用できない。調整誤差、および扱いと滅菌の難しさが、かかる適用を妨げている。
【0007】
米国特許第4,884,008号は、手術室ライトと手術範囲との間の動作と距離の変更を補正するために、光線を自動的に調整することができ、それにより最初に設定されたあらゆる照明パターンまたは区域がその基本位置に保持される、手術室ライトを示している。超音波距離センサは、筺体に位置付けられ、手術面と向かい合っており、筺体と面との間の実距離を表わす電気的実距離信号を生成する。距離信号は、ランプ調整要素配置を制御するサーボ制御回路と連結されている。光線は、円形ユニット外周の周囲に輪状に位置付けられたビームの群として、手術室ランプから放射される。
【0008】
以下の参考文献は、その参照により、ここに援用する。
【特許文献1】米国特許第4,025,777号(ドイツ特許25 19 426号が相当する)
【特許文献2】米国特許第4,639,838号
【特許文献3】米国特許第4,884,008号
【特許文献4】米国特許第4,887,196号
【特許文献5】米国特許第5,347,431号
【特許文献6】米国特許第5,584,568号
【特許文献7】ドイツ特許開示書類第DE−OS 32 27 494号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術のライトでは、上記のドイツ開示文書における超音波ロケータなど、オンザフライ追跡を提供できる発明は、手術部位付近あるいは手術部位上の設置にも適応するならば、利益となる。さらに、最適なライティング条件を利用する記載の発明、すなわち非常に集束された強い光を放射する光源は、さらに利益となり得る。最後に、凹型空洞からの光源も提供する記載の発明は、外科画像処理用のCアームなど他の頭上機器の配置を可能とし、利益となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、本発明に従って、照射される手術部位、または、その他の部位の迅速なオンザフライ追跡を提供することにある。
【0011】
このため、本発明は、距離信号を受信機に送信するようになっている、ブルートゥース送信機などの無線周波送信機の使用を開示する。受信機は、次に、単一の光源または光源アレイのアクチュエータによる調整を提供し、それにより、照射範囲に、後者のアレイ設計が影を最小限に抑えるというさらなる利益を提供する。さらに、1つの実施形態では、送信機は小型の外形であり、生体適合性材料で構成される。この装置は、再利用のために滅菌可能であるか、あるいは使い捨てであり、それにより、送信機を滅菌容器に詰め込むことを可能とし、さらに、手術部位の中への装置の設置、手術部位の上への装置の設置、または、手術部位の側への装置の設置を可能としている。
【0012】
本発明の別の目的は、最大限の影の消去を提供する照明範囲を提供しながら、強い集束された照明範囲も提供することにある。
【0013】
円などのように、単一地点の周囲に集合した光源は、個々の光源が特定の地点で標的とされることを可能とする。個々の光源と円の中心との間の半径が減少するに従い、影を消去する光源の能力は減少する。半径がゼロに近づくと、得られるライトアレイは単一のビームと同等となる。このため、本発明は、個々のライトが個別の筺体に設置されるという改善により、通常よりも大きい半径(半径は、光源と照明地点との間の距離に関する)を有するライトアレイを提供する。残念ながら、光源と標的源との間の距離が増加するに従い、標的源におけるビームの焦点と強度は減少する。本発明は、光源の個別の筺体により、最大限の視界を有する強い、集束されたビームを提供する手段を開示する。光源がお互いから離れて収容されるため、局部熱の発生は、非常に強い、集束された光の使用に対し、もうそれほど大きな障害とはならないので、より強力なランプと他のより強力な発光装置が使用されてよい。言い換えると、個別の筺体は、複数のランプが共に収容されている場合に見られる熱の蓄積を最小限に抑える。通常は熱の自然放射によるランプの冷却で十分であるが、ランプ筺体と支持体は、アルミニウムなど、高い熱放散定数を有する材料から成ると考えられる。
【0014】
本発明のさらなる目的は、任意の光源と、そのそれぞれの筺体が壁に埋め込まれ、それにより、空間効率の向上と、外科手術部位付近に天井取り付け機器を配置する可能性とを提供するように、手術室と融合する照明器具を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、添付の図面と関連して、最もよく理解できる。本発明は、以下の図面に示される正確な実施形態に限定されないことに留意されたい。
【0016】
図面に関連して、図1は、本発明に従って位置合わせされたライト100の1つの可能な配置を備えた、典型的な外科手術室を示している。点線で示される円と、それらを通って手術台104上の地点102と交差する線は、集束されたライト100の減少していく照射範囲を表わしている。ライト100は、お互いから間隔をあけられているため、地点102などの標的部分へのさらなる視界を提供するよう適合される。
【0017】
一方、図2および図3に示される、先行技術の典型的な例では、単一の筺体(ハウジング)114に配列された自動調整可能な手術用ライト112は、台124上の照射標的120に向かう照射光118を提供する。照射標的120は、超音波検出器であってよい、装置116によって位置付けられる。図3に示すように、先行技術は、天井122に取り付けられたライト筺体114を含み、そのために、頭上の作業空間を消費する。
【0018】
図4、図5、および、図6は、先行技術における不備を表している。図4は、お互いに近接し、台124上の標的範囲120を照射する2つの手術用ライト112を示している。点線矢印は、照射ビーム118の幅を示している。図4が示すように、照射源すなわち手術用ライト112は、標的120付近に近接している場合、集束された十分な照明を提供する。しかし、図6に見られるように、標的範囲はライト112からより離れて設置されるため、ビーム幅は増加し、それにより、あまり集束されなくなる。光は、光源からの距離の増加に伴い、その強度と焦点を喪失する。対照的に、図5は、互いに、より離れて設置されたライト112を示している。ここでも、光源からの距離が増加しているので、標的はあまりよく照射されていない。
【0019】
本発明は、図7に示されるように、先行技術からの数々の改善点を備えている。図7では、ライトは、互いに独立して収容され、それにより、非常に強い、集束された光の使用を可能としている。非常に強い、集束された光の使用は、図5に表わされている影響(光強度と焦点の減衰)を補正している。ランプなどの各光源は、およそ5600Kの色温度を備える、少なくとも約100,000Luxを提供しなければならない。ランプは、メタルハライド型であるべきである。このように、ライトは、図2および図3に示される先行技術のように、必要な強度と焦点を提供するために、共に収容されるという制限から開放される。さらに、独立したライトの筺体は、それぞれのライトが、天井内の凹型空洞内に収容されることを可能とし、それにより、貴重な頭上の作業空間を解放する。
【0020】
1つの実施形態では、埋め込み式筺体154は、図7の右下に詳細が示される。ここに示されているのは、制御ボックス150により作動される、動力式スイベル回転手段と支持体178に取り付けられてよい、ランプ筺体176内に含まれるランプ156である。スイベル回転手段は、ランプ筺体176、および、そのランプ156の、双方向の点線矢印に示される経路に沿った指向性進行を可能とできる。支持体178自体は、取り付け具と、ランプ筺体176、および、そのランプ156の、対向する2方向に方向付けられた実線矢印に示される経路に沿った指向性進行を可能とできるスイベル手段168とに取り付けられてよい。電源は、ケーブル線172により提供されるが、これは外部のAC電源またはDC電源152から供給される。さらに、制御信号は、ケーブル線166を通して制御ボックス150から提供される。制御信号は、必要であれば、台158上のロケータ160により提供される距離信号162(RF帯で、無線で送られる)に基づいて、ランプ156の適正な位置合わせを計算することにより、ランプ筺体170及び176を作動させる。
【0021】
前述の記載、特定の用語、および、視覚的記載は、好ましい実施形態を説明するために使用されるものである。ただし、用語および図面は例示のためのみであって、本発明の範囲を限定することを意図していないため、使用される用語または描写される図面による、先行技術に示されるものを超えて不必要な限定に解釈されるものではない。添付の請求項に示される発明の範囲から逸脱することなく、本発明にその他の変更を加えてよいことは、さらに理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の1つの実施形態の斜視図であり、多数の埋め込み式ライトが中心点の周囲に配列され、中心点に集束されている。
【図2】先行技術の概略図であり、一点で集束される多数のライトの筺体を示している。
【図3】先行技術の側面概略図である。
【図4】略一点で集束され、それにより1つの照明範囲を提供する2つのライトの略図である。
【図5】図4と同じ地点で集束される図4のライトの略図であるが、この地点は、ここでは照明源からより離れている。
【図6】図4と図5において照射されている標的部位の略図であり、ここではライトは、お互いにより離れている。
【図7】本発明の例の等大略図である。
【符号の説明】
【0023】
100 手術用ライト
102 照射標的
104 手術台
110 先行技術の手術室照明装置
112 手術用ライト
114 先行技術の手術用ライト筺体
116 先行技術の超音波ロケータ
118 光線
120 照明範囲・標的
122 天井
124 台
150 制御ボックス
152 電源
154 筺体
156 ランプ
158 台
160 照射標的およびロケータ
162 無線位置信号
164 集束光線
166制御ボックスへのケーブル
168 アクチュエータ、スイベル、および取り付け具
172 電源へのケーブル
176 ランプ筺体
178 ランプ取り付け具およびスイベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病院手術室照明器具であって、
手術室の天井に埋め込まれた少なくとも1つの筺体と、
少なくとも1つの動力式アクチュエータを制御する制御ボックスと、
実質的には無線周波の電磁スペクトルで、前記筺体と前記ロケータの間の実距離を表わす距離信号を送信するようになっているロケータと、
前記ロケータから無線で前記距離信号を受信する、前記制御ボックス上の通信装置と、
任意の前記筺体における少なくとも1つのライトとを備え、前記ライトは、前記筺体において他のライトを有しておらず、約5600Kの色温度を有し、メタルハライド型の前記ライトを有する、実質的に少なくとも100,000Luxの集束光線を提供するようになっており、また、少なくとも1つの他のライトを併用する場合、少なくとも2つの空間的に離れた領域から、1地点に向けられた光源を提供するよう適合されるようになっており、
さらに、前記制御ボックスにおける位置決めシステムを備え、前記位置決めシステムは、前記ロケータ装置からの距離信号を受信するようになっており、また、前記距離信号を解釈して、任意の前記筺体と連結された任意の前記アクチュエータを作動させ、それにより、前記距離信号を参照して、少なくとも1つの動力式スイベル、ジョイント、キャスター、またはブッシングを調整し、前記ロケータ装置を照射するようになっているサーボ制御回路を含む、
ことを特徴とする、病院手術室照明器具。
【請求項2】
ライトの数は、少なくとも2つであり、前記ライトは中心点の周囲に配列されたことを特徴とする、請求項1に記載の病院手術室照明器具。
【請求項3】
前記ロケータはブルートゥース装置であることを特徴とする、請求項1に記載の病院手術室照明器具。
【請求項4】
前記ロケータは生体適合性材料から成ることを特徴とする、請求項1に記載の病院手術室照明器具。
【請求項5】
前記ロケータは滅菌可能であることを特徴とする、請求項1に記載の病院手術室照明器具。
【請求項6】
前記ロケータは使い捨てであり、類似のロケータと交換可能であることを特徴とする、請求項1に記載の病院手術室照明器具。
【請求項7】
手術室の1地点を照射するための手段を使用するための方法であって、
請求項1に記載の手術室ライトを提供する段階と、
前記ロケータを照射される地点に設置する段階と、
前記ロケータが前記制御ボックスと通信することを可能にする段階と、
前記アクチュエータを作動させることによる通信に応じて、前記制御ボックスが前記サーボ制御回路を作動させることを可能にする段階と、
前記アクチュエータが、前記スイベル、ジョイント、キャスター、またはブッシングなどの前記位置決め手段を使用して、前記ライトが前記照射される地点を照射するように、前記ライトを位置合わせすることを可能にする段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
ライトの数は少なくとも2つであり、また前記ライトは中心点の周囲に配列されたことを特徴とする、請求項7に記載の病院手術室照明方法。
【請求項9】
前記ロケータはブルートゥース装置であることを特徴とする、請求項7に記載の病院手術室照明方法。
【請求項10】
前記ロケータは生体適合性材料から成ることを特徴とする、請求項7に記載の病院手術室照明方法。
【請求項11】
前記ロケータは滅菌可能であることを特徴とする、請求項7に記載の病院手術室照明方法。
【請求項12】
前記ロケータは使い捨てであり、また、類似のロケータと交換可能であることを特徴とする、請求項7に記載の病院手術室照明方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−503767(P2009−503767A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522962(P2008−522962)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/028225
【国際公開番号】WO2007/012039
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(508018288)オプティマス サーヴィシーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (7)
【Fターム(参考)】