説明

インジェクション装置およびインジェクション方法

【課題】インジェクションの効率を向上し、装置構成を簡易にすること。
【解決手段】画像配置部403は、撮影位置取得部402によって取得された撮影位置に従って画像取得部401から出力される複数の画像を配置し、合成画像を生成する。合成画像加工部405は、得られた合成画像をモニタ111に表示させるに際して、種々の加工を行う。合成画像出力部407は、合成画像加工部405によって合成画像が加工されると、加工後の合成画像を制御部110へ出力する。中央画像加工部408は、画像取得部401から出力される観測用の画像をモニタ111に表示させるに際して、種々の加工を行う。中央画像出力部409は、中央画像加工部408によって中央画像が加工されると、加工後の中央画像を制御部110へ出力する。モニタ111は、合成画像と中央画像を並べて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地内の細胞に微小針を用いて物質を注入する際に、細胞を含む画像を表示するインジェクション装置およびインジェクション方法に関し、特に物質の注入の効率を向上し、装置構成を簡易にすることができるインジェクション装置およびインジェクション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞内に遺伝子を直接注入することにより、細胞の遺伝情報を改変する研究が盛んに行われている。この研究が進めば、遺伝子の役割が解明されるとともに、例えば個人の遺伝的特性に適合した遺伝子治療を行うテーラメード医療が可能となる。細胞内に遺伝子を注入する方式としては、電気的な方法(エレクトロポレーション)、化学的な方法(リポフェクション)、生物的な方法(ベクター法)、機械的な方法(マイクロインジェクション)、および光学的な方法(レーザインジェクション)などが提案されている。しかし、電気的な方式は、大電流を流して細胞膜を破るため細胞へのダメジが大きく、化学的な方式は、導入可能な遺伝子に制限があるため効率が悪く、生物的な方法は、すべての材料を導入できずに安全性が確認できないなどの欠点がある。一方で、機械的な方法は、最も安全で効率が高い方法として注目されている。
【0003】
機械的な方法(マイクロインジェクション)においては、例えば特許文献1に開示されているように、顕微鏡による細胞の拡大像がカメラによって撮影され、操作者が撮影された画像をモニタで確認しながらキャピラリと呼ばれる針の位置を決定し、キャピラリを細胞に穿刺することによって遺伝子を注入する。
【0004】
図24は、従来のマイクロインジェクション装置の構成を模式的に示す図である。同図に示すマイクロインジェクション装置においては、付着細胞が投入された培養液で満たされたシャーレ1が水平方向に移動自在な移動ステージ2の上に載置されている。光源3からの光が照射されたシャーレ1内の付着細胞は、対物レンズ部4のレボルバ4cに取り付けられた対物レンズ4aまたは対物レンズ4b(図24においては対物レンズ4b)によって拡大される。対物レンズ4aまたは対物レンズ4bによって拡大された細胞の拡大像は、反射鏡6によってカメラ8が固定されている方向へ投影され、結像レンズ7によってカメラ8のレンズの位置に結像する。
【0005】
結像した細胞の拡大像は、カメラ8によって撮影され、図示しないモニタなどに表示される。操作者は、図示しないモニタに表示された細胞の拡大像を確認しながら、キャピラリ5がシャーレ1内の細胞に穿刺されるように、移動ステージ2を移動させてシャーレ1の位置を調整し、位置が決定するとキャピラリ5を穿刺して遺伝子などの薬剤を細胞に注入する。
【0006】
このようなマイクロインジェクション装置においては、インジェクションの目的に応じて細胞内の核や細胞質を区別してインジェクションする必要がある。そのためには、およそ数十μm(マイクロメートル)程度の大きさの細胞内において、各細胞小器官の位置を正確に確認してキャピラリ5の制御を行わなければならず、高倍率の対物レンズを使用する必要がある。このため、マイクロインジェクション装置においては、一般にレボルバ4cに倍率が異なる複数の対物レンズ4a、4bが取り付けられており、レボルバ4cを図24における矢印方向に回転させて、所望の倍率の対物レンズで細胞を拡大するようになっている。
【0007】
【特許文献1】特許第2553150号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、通常、シャーレは細胞と比較して非常に大きいため、インジェクションを行う際には、インジェクション対象の細胞が存在する観測領域をシャーレ内から適切に定めなくてはならない。このとき、観測領域では、個々の細胞を区別して観測できる程度の細胞密度であることが要求される。すなわち、例えば図25−1に示すように、細胞が密集しており個々の細胞が重なっている領域や、逆に図25−2の枠11のように細胞が存在していない領域を観測領域として定めることなく、図25−2の枠12のように適度な細胞密度の領域を探索する必要がある。適度な細胞密度の領域を探索するためには、高倍率の対物レンズでは視野が狭く効率が悪いため、レボルバを回転させて低倍率かつ広視野の対物レンズに切り替えられることになる。
【0009】
しかしながら、適切な観測領域の探索とインジェクションとを交互に繰り返して複数の細胞に対してインジェクションを行う場合には、その都度高倍率の対物レンズと低倍率の対物レンズとを切り替えなくてはならず、手間がかかるという問題がある。その結果、インジェクションの効率が低下し、時間がかかってしまう。また、倍率が異なる複数の対物レンズが必要であるため、これらが取り付けられるレボルバも必要となり、装置の構成が複雑になる。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、インジェクションの効率を向上し、装置構成を簡易にすることができるインジェクション装置およびインジェクション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、培地内の細胞に微小針を用いて物質を注入する際に、前記細胞を含む画像を表示するインジェクション装置であって、培地内の指定位置を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって前記指定位置および前記指定位置の周辺が撮影されて得られる複数の画像を合成して広視野画像を生成する第1生成手段と、前記撮影手段によって前記指定位置が撮影されて得られる画像を用いて狭視野画像を生成する第2生成手段と、前記第1生成手段によって生成された広視野画像および前記第2生成手段によって生成された狭視野画像を並べて表示する表示手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記表示手段に表示された狭視野画像において物質を注入する位置を入力する入力手段と、前記入力手段によって物質注入位置が入力されると、直後に前記微小針を用いて前記物質注入位置に物質を注入するインジェクション手段とをさらに有し、前記第2生成手段は、前記狭視野画像の前記入力手段に入力された位置に所定のマークを合成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、物質注入前後に前記第2生成手段によって生成される狭視野画像の差分画像を生成する第3生成手段と、前記第3生成手段によって生成された差分画像の大きさが所定のしきい値以上であるか否かを判定する判定手段とをさらに有し、前記第2生成手段は、前記判定手段による判定の結果、差分画像の大きさが所定のしきい値以上である狭視野画像中の細胞を物質注入の効果が現れた細胞として強調表示する加工を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、1つの格子が前記狭視野画像1つに対応し、前記広視野画像に含まれる領域以上の領域に対応する格子状のマップであって、インジェクションされた細胞が存在する狭視野画像対応の格子を他の格子と区別したマップを生成する第4生成手段をさらに有し、前記表示手段は、前記第4生成手段によって生成されたマップを前記広視野画像および前記狭視野画像とともに表示することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、培地内の細胞に微小針を用いて物質を注入する際に、前記細胞を含む画像を表示するインジェクション方法であって、培地内の指定位置および前記指定位置の周辺を撮影する第1撮影工程と、前記第1撮影工程にて前記指定位置および前記指定位置の周辺が撮影されて得られる複数の画像を合成して広視野画像を生成する第1生成工程と、培地内の前記指定位置を撮影する第2撮影工程と、前記第2撮影工程にて前記指定位置が撮影されて得られる画像を用いて狭視野画像を生成する第2生成工程と、前記第1生成工程にて生成された広視野画像および前記第2生成工程にて生成された狭視野画像を並べて表示する表示工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、培地内の指定位置を撮影し、指定位置および指定位置の周辺が撮影されて得られる複数の画像を合成して広視野画像を生成し、指定位置が撮影されて得られる画像を用いて狭視野画像を生成し、生成された広視野画像および狭視野画像を並べて表示する。このため、操作者は、広視野画像を確認しながらインジェクションに適した細胞密度の観測領域を探索することができるとともに、狭視野画像を確認しながら詳細なインジェクション位置を決定することができ、インジェクションの効率を向上することができる。また、同じ倍率の画像を用いて広視野画像および狭視野画像を生成することができ、異なる倍率の対物レンズを不要にして、装置構成を簡易にすることができる。
【0017】
また、本発明によれば、表示された狭視野画像において物質を注入する位置を入力し、物質注入位置が入力されると、直後に微小針を用いて物質注入位置に物質を注入し、狭視野画像の物質注入位置に所定のマークを合成するため、入力された物質注入位置の座標を記憶しておく必要がないとともに、狭視野画像において物質注入位置を確認することができる。
【0018】
また、本発明によれば、物質注入前後に生成される狭視野画像の差分画像を生成し、差分画像の大きさが所定のしきい値以上であるか否かを判定し、判定の結果、差分画像の大きさが所定のしきい値以上である狭視野画像中の細胞を物質注入の効果が現れた細胞として強調表示する。このため、インジェクションによって大きく変形した細胞を他の細胞と区別して確認することができるため、容易にインジェクションの効果の有無を把握することができる。
【0019】
また、本発明によれば、1つの格子が狭視野画像1つに対応し、広視野画像に含まれる領域以上の領域に対応する格子状のマップであって、インジェクションされた細胞が存在する狭視野画像対応の格子を他の格子と区別したマップを生成し、生成されたマップを広視野画像および狭視野画像とともに表示するため、広視野画像および狭視野画像に対応する観測領域の大まかな位置関係を把握するとともに、インジェクションが完了していない領域の位置を容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るインジェクション装置の概略構成を示す図である。同図に示すインジェクション装置は、シャーレ101が載置される移動ステージ102、光源103、対物レンズ104、キャピラリ105、反射鏡106、結像レンズ107、CCD(Charge Coupled Devices)カメラ108、画像処理部109、制御部110、モニタ111、および位置入力部112を有している。
【0022】
移動ステージ102は、水平方向に移動自在に設けられており、制御部110の制御に従って、上面に載置されたシャーレ101の位置を調整する。光源103は、制御部110の制御に従ってシャーレ101へ光を照射し、シャーレ101内の細胞の観測に必要な光量を与える。
【0023】
対物レンズ104は、シャーレ101内の細胞を拡大する高倍率かつ狭視野のレンズである。対物レンズ104の倍率は、例えば視野内に細胞が4〜5個程度含まれる程度であり、個々の細胞および細胞小器官が明確に観測可能な程度である。また、対物レンズ104は、制御部110の制御に従って、シャーレ101内の細胞を拡大する際の焦点を調節する。
【0024】
キャピラリ105は、シャーレ101側の先端が針状になっており、制御部110の制御に従って、シャーレ101内の位置入力部112に入力された位置にある細胞へ遺伝子などの物質を注入する。反射鏡106は、対物レンズ104によって拡大されて得られた拡大像をCCDカメラ108の方向へ投影する。結像レンズ107は、対物レンズ104によって拡大されて得られた拡大像をCCDカメラ108のレンズの位置で結像する。CCDカメラ108は、結像レンズ107によって結像した拡大像を撮影し、撮影した画像を画像処理部109へ出力する。
【0025】
画像処理部109は、CCDカメラ108によって撮影された画像に対して画像処理を施し、得られた画像を制御部110へ出力する。具体的には、画像処理部109は、複数の画像をつなぎ合わせて得られた合成画像と合成画像の中央の画像とを出力したり、画像内の細胞において検出された周縁を強調する画像を生成したり、焦点が異なる複数の画像を合成したりする。画像処理部109によるさらに具体的な画像処理については、後に詳述する。
【0026】
制御部110は、画像処理部109から出力された画像をモニタ111に表示させる。また、制御部110は、画像処理部109および位置入力部112からの指示により、移動ステージ102を移動させたり、キャピラリ105によるインジェクションを行わせたり、対物レンズ104の焦点を調節させたり、光源103による光の照射・非照射を切り替えたりする。
【0027】
モニタ111は、画像処理部109から制御部110へ出力された画像を表示する。このとき、モニタ111は、複数の画像がつなぎ合わされた合成画像と合成画像の中央に位置する中央画像とを並べて表示する。位置入力部112は、モニタ111を目視する操作者の操作を受け付け、操作者が指定する位置の撮影およびインジェクションなどが行われるような制御の実行を制御部110へ指示する。
【0028】
図2−1は、シャーレ101および移動ステージ102を拡大して示す斜視図である。同図に示すように、シャーレ101は、シャーレホルダ201の中央に設けられた穴に嵌合された上で移動ステージ201の上面に載置される。このとき、シャーレホルダ201が移動ステージ102の上面に突設された位置合わせピン102aに当接して載置されることで、シャーレ101の位置を常に固定することができる。さらに、シャーレホルダ201には、図2−2に示すように、図示しないバネによって中央の穴の中心方向へ加圧されたシャーレ押さえ201aが形成されており、穴に嵌合されたシャーレ101の位置をさらに確実に固定することができる。
【0029】
また、同一のシャーレ101を異なる装置の移動ステージ102に載置する場合には、例えば図2−3に示す位置合わせ部材202をシャーレホルダ201の中央の穴に設置し、位置合わせ部材202に穿設された透過孔202aの座標が異なる装置間で再現されるよう調整することにより、常にシャーレ101の位置を固定することができる。なお、シャーレホルダ201の代わりに、図2−4に示すシャーレホルダ203を使用することにより、シャーレホルダ203に設けられた透過孔203aの座標を調整すれば良く、位置合わせ部材が不要となる。さらに、移動ステージ102に押さえバネ102bを設けることにより、シャーレホルダ203が確実に位置合わせピン102aに当接される。また、シャーレホルダ203にも押さえバネ203bを設けることにより、シャーレホルダ203におけるシャーレ101の位置も固定される。なお、位置合わせ部材202およびシャーレホルダ203の透過孔202aおよび透過孔203aの代わりに、例えば十字マークなどの所定のマークを用いても良い。
【0030】
このように、シャーレ101の位置を常に同位置に固定することができるため、細胞のインジェクション後に一度シャーレ101を他所へ移動した場合でも、容易に移動ステージ102上での位置を再現して正確に効果の観測を行うことができる。
【0031】
次に、上記のように構成されたインジェクション装置による一般的なインジェクションについて説明しておく。
【0032】
図3に示すように、シャーレ101には培養液301が満たされており、培養液301に付着細胞が投入されると、一定時間後には細胞302がシャーレ101の上面に付着する。細胞302は、核302aと様々な細胞小器官を含む細胞質302bとから構成されている。この細胞302の核302aに、例えば遺伝子などの物質をインジェクションする際には、図4に示すようにキャピラリ105の先端が核302aに穿刺され、物質が核302aに注入される。なお、図4においては、培養液301の図示を省略している。
【0033】
このとき、対物レンズ104によって拡大された拡大像は、例えば図5−1に示すようになっている。すなわち、キャピラリ105の先端の位置とインジェクション対象の細胞302の核302aの位置とが合っていない。そこで、操作者は、位置入力部112を操作して、核302aの位置をインジェクション位置として指定することにより、制御部110の制御によって移動ステージ102が移動し、図5−2に示すように、キャピラリ105の先端の位置と核302aの位置とが同一直線上に並ぶ。その後、キャピラリ105が図5−2中の矢印方向へ動き、核302aにキャピラリ105の先端が穿刺される。なお、ここでは、移動ステージ102が移動することにより、キャピラリ105の先端の位置と核302aの位置とが同一直線上に並ぶものとしたが、キャピラリ105が移動するようにしても良い。このように、本実施の形態においては、インジェクションの位置指定後即座にインジェクションが実行されるため、指定されたインジェクション位置の座標を記憶しておく必要がない。
【0034】
次いで、本実施の形態に係るインジェクション装置による画像処理について説明する。図6は、本実施の形態に係るインジェクション装置の画像処理部109の内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、画像処理部109は、画像取得部401、撮影位置取得部402、画像配置部403、周縁検出部404、合成画像加工部405、再撮影位置指示部406、合成画像出力部407、中央画像加工部408、中央画像出力部409、インジェクション位置取得部410、マーキング部411、差分画像生成部412、および判定部413を有している。
【0035】
画像取得部401は、CCDカメラ108によって撮影された画像を取得し、画像配置部403または中央画像加工部408へ出力する。具体的には、画像取得部401は、移動ステージ102が一定時間内に移動しつつCCDカメラ108によって撮影された観測領域探索用の画像を画像配置部403へ出力する一方、移動ステージ102が一定時間以上停止してCCDカメラ108によって撮影された観測用の画像を中央画像加工部408へ出力する。
【0036】
撮影位置取得部402は、制御部110からCCDカメラ108が画像を撮影した撮影位置の情報を取得する。画像配置部403は、撮影位置取得部402によって取得された撮影位置に従って画像取得部401から出力される複数の画像を配置し、観測領域探索用の合成画像を生成する。本実施の形態においては、画像配置部403は、縦横に3枚ずつ並ぶ合計9枚の画像を配置して合成画像を生成する。ただし、画像配置部403によって配置される画像の数は、例えば縦横に5枚ずつ並ぶ25枚でも良いし、縦横の画像数が一致していなくても良い。このように、複数の画像を並べて配置することにより、周辺の細胞密度などの状況の把握が可能となる。
【0037】
周縁検出部404は、画像配置部403において得られた合成画像において、微分処理などを含むエッジ検出を行い、合成画像内の細胞の周縁を検出する。合成画像加工部405は、画像配置部403において得られた合成画像をモニタ111に表示させるに際して、種々の加工を行う。具体的には、合成画像加工部405は、合成画像において、周縁検出部404によって検出された細胞の周縁を例えば太線でトレースするなどして強調表示する。また、合成画像加工部405は、合成画像における個々の画像間の境界に位置する細胞について、細胞単位で再撮影された画像を上書き合成する。さらに、合成画像加工部405は、インジェクション後の細胞をインジェクション前の細胞と区別するために、マーキング部411の指示に従って、合成画像においてインジェクション後の細胞にマーキングする。
【0038】
再撮影指示部406は、周縁検出部404による周縁検出の結果、周縁が合成画像の個々の画像間の境界に交差する細胞を抽出し、抽出した細胞を再撮影するように制御部110へ指示する。すなわち、再撮影指示部406は、合成画像において複数の画像間にまたがっている細胞を抽出し、この細胞の再撮影を指示する。この指示を受けた制御部110は、移動ステージ102を移動させ、指示された位置をCCDカメラ108に撮影させる。合成画像出力部407は、合成画像加工部405によって合成画像が加工されると、加工後の合成画像を制御部110へ出力する。出力された合成画像は、制御部110の制御によってモニタ111に表示される。
【0039】
中央画像加工部408は、画像取得部401から出力される観測用の画像をモニタ111に表示させるに際して、種々の加工を行う。なお、画像取得部401から出力される観測用の画像は、画像配置部403によって生成される合成画像の中央の画像に対応する位置の画像であるため、以後、観測用の画像を「中央画像」という。具体的は、中央画像加工部408は、焦点が異なる2枚の中央画像を合成し、細胞の細胞膜および細胞小器官の双方が明確になるように加工する。このとき、中央画像加工部408は、中央画像においてエッジ検出などを行い、細胞の周縁を強調表示しても良い。また、中央画像加工部408は、インジェクション後の細胞をインジェクション前の細胞と区別するために、マーキング部411の指示に従って、中央画像においてインジェクション後の細胞にマーキングする。さらに、中央画像加工部408は、判定部413からの指示に従い、インジェクションの効果が現れた細胞の色を変えるなどして区別可能にする。
【0040】
中央画像出力部409は、中央画像加工部408によって中央画像が加工されると、加工後の中央画像を制御部110へ出力する。出力された中央画像は、制御部110の制御によって、合成画像とともにモニタ111に表示される。
【0041】
インジェクション位置取得部410は、位置入力部112に入力されたインジェクション指定位置の情報、換言すれば、制御部110の制御によってキャピラリ105が穿刺されてインジェクションが実行された細胞の位置の情報を制御部110から取得する。マーキング部411は、合成画像加工部405および中央画像加工部408に指示をして、それぞれ合成画像および中央画像中のインジェクションが実行された細胞にマーキングをさせる。具体的には、マーキング部411は、合成画像中のインジェクションが実行された細胞を含む画像枠に着色させるとともに、中央画像中のインジェクションが実行された細胞の周縁に着色させたり細胞内の特定の位置に所定のマークを付加させたりする。
【0042】
差分画像生成部412は、インジェクション前に中央画像中の細胞の画像を取得しておき、インジェクション後に同位置の中央画像が取得されると、同位置の細胞の画像を再び取得し、インジェクション前後の細胞の画像の差分の画像を生成する。すなわち、差分画像生成部412は、細胞中においてインジェクション前後で変化があった部分を示す差分画像を生成する。このとき、差分画像生成部412は、インジェクション前後の画像の濃淡の差分を求めて差分画像を生成しても良く、また、細胞の輪郭線の変化から形状の差分を求めて差分画像を生成しても良い。判定部413は、差分画像の大きさを所定のしきい値と比較し、差分画像の大きさが所定のしきい値以上であれば、インジェクションが適切に行われたと判定する一方、差分画像の大きさが所定のしきい値未満であれば、インジェクションが適切に行われなかったと判定する。そして、判定部413は、インジェクションが適切に行われ、インジェクションの効果が現れた細胞を他の細胞と区別するように中央画像加工部408へ指示する。
【0043】
次に、上記のように構成された画像処理部109による画像処理動作について、図7に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0044】
まず、操作者は、位置入力部112を操作して、移動ステージ102を所望の位置に移動させ、CCDカメラ108によって撮影するシャーレ101内の位置を指定する(ステップS101)。撮影位置が指定されると、CCDカメラ108によってシャーレ101の拡大像が撮影され、観測領域探索用の合成画像生成処理が行われる(ステップS102)。
【0045】
合成画像生成処理は、図8に示すフロー図の手順に従って実行される。すなわち、CCDカメラ108によって、例えば図9に示すように、指定された撮影位置を中心とした周辺の9画像が順次撮影される(ステップS201)。このとき、制御部110によって移動ステージ102の移動が制御され、例えば図9における右上の画像から左下の画像の領域が順次撮影され、撮影された画像は、画像取得部401によって取得され、画像配置部403へ出力される。また、撮影位置取得部402によって、制御部110から9画像それぞれの撮影位置が取得され、画像配置部403へ出力される。なお、上述したように、ここで撮影されるのは、必ずしも9画像でなくても良い。
【0046】
そして、画像配置部403によって、9画像が撮影位置に応じて配置され(ステップS202)、得られた合成画像は、合成画像加工部405に保持されるとともに合成画像出力部407から出力され、制御部110を介してモニタ111に表示される。このとき、合成画像の画像サイズは、モニタ111に表示可能なように適宜縮小される。したがって、対物レンズ104の倍率は高倍率であっても、モニタ111に表示される合成画像の実質的な倍率は、対物レンズ104の倍率よりも低いものとなる。
【0047】
このとき、モニタ111には、例えば図10に示すように、合成画像の周囲に8方向の矢印が表示されるようにしておき、操作者がモニタ111を確認しながら合成画像の範囲を変更できるようにしても良い。すなわち、例えば図10の左図において、位置入力部112の操作により操作者が下の矢印を指定すると、移動ステージ102が再度移動しながらCCDカメラ108によって再び9画像が取得され、図10の右図のように、1画像分だけ合成画像の範囲が下方へ変更される。
【0048】
その後、周縁検出部404によって合成画像からエッジ検出が行われ、合成画像中の細胞の輪郭線が検出される。検出された輪郭線は、合成画像加工部405によって、例えば図11に示すように太線にされるなど強調され(ステップS203)、改めてモニタ111に表示される。さらに、周縁検出部404によって細胞の輪郭線が検出されると、再撮影位置指示部406によって、例えば図12−1において黒枠で囲まれた細胞のように、複数の画像の境界をまたがって表示される細胞があるか否かが判断される(ステップS204)。この判断は、例えば図12−2の上部画面の図に例示されるように、白丸の注目点を細胞の輪郭線に沿って移動させ、この注目点が画像の境界と交差する場合は、細胞が複数の画像の境界にあると判断することによって行われる。この結果、複数の画像の境界に細胞がある場合は、再撮影位置指示部406によって、この細胞の位置を再撮影するように制御部110へ指示される。なお、細胞が画像の境界にあるか否かの判断は、操作者がモニタ111に表示された合成画像を目視で確認し、画像の境界にある細胞の位置を位置入力部112に入力するなどとしても良い。
【0049】
制御部110が再撮影位置指示部406からの指示を受け、移動ステージ102の位置を調節すると、CCDカメラ108によって、画像の境界にあった細胞が再撮影され、得られた画像が画像取得部401によって再取得される(ステップS205)。つまり、図12−2において、上部画面と下部画面との境界にあった細胞の画像が再取得され(図12−2の中図参照)、画像配置部403によって、再取得された画像が撮影位置に配置される。さらに、合成画像加工部405によって、再取得された画像が細胞を含む最小のサイズに切り取られた上で(図12−2の右図参照)、合成画像加工部405に保持されている合成画像に上書き合成される(ステップS206)。こうして得られた合成画像は、改めてモニタ111に表示される。これにより、9画像の取得時における移動ステージ102の移動の誤差などによって画像の境界でずれて表示された細胞を正確な形状で表示することができる。
【0050】
以上のステップS201からステップS206の処理により、細胞の輪郭線が強調され、複数の画像の境界にある細胞も正確な形状で表示される合成画像が生成される。この合成画像は、細胞内の微小な細胞小器官などを確認するには適さないものの、観測領域に適した細胞密度の領域を探索するのに適している。
【0051】
再び図7に戻って、合成画像生成処理が完了すると、観測用の中央画像生成処理が行われる(ステップS103)。
【0052】
中央画像生成処理は、図13に示すフロー図の手順に従って実行される。すなわち、CCDカメラ108によって、合成画像の中央に位置する中央画像が取得される(ステップS301)。ここで取得される中央画像は、図14−1のAに示すように、対物レンズ104の焦点をシャーレ101の上面と細胞302の下面との境界に合わせた拡大像の画像である。
【0053】
そして、制御部110の制御に従って、図14−1のBに示すように、細胞302の細胞膜周辺に対物レンズ104の焦点が合うように調整される(ステップS302)。焦点の調整後、CCDカメラ108によって、再び中央画像が取得される(ステップS303)。
【0054】
細胞302は、シャーレ101に密着しているが、外周がシャーレ101の上面から少し立ち上がった形状をしており、その厚さはおよそ5μm程度である。このとき、図14−1のAに示す位置に焦点が合っていると、例えば図14−2のA画像のように、シャーレ101の上面に付着する細胞内の微小な細胞小器官が明確な画像が得られる。一方、対物レンズ104の焦点を2〜5μm程度上方に調整し、図14−1のBに示す位置に焦点が合っていると、例えば図14−2のB画像のように、細胞302の細胞膜が明確な画像が得られる。そこで、焦点が異なる2つの画像が中央画像加工部408によって合成されることにより(ステップS304)、図14−2のように、細胞の輪郭線と内部の細胞小器官との双方が明確な中央画像が得られる。
【0055】
以上のステップS301からステップS304の処理により、細胞の輪郭線および内部の細胞小器官の双方が明確な中央画像が生成される。この中央画像は、細胞内の微小な細胞小器官などを確認するのに適している。
【0056】
再び図7に戻って、合成画像生成処理および中央画像生成処理によって生成された合成画像および中央画像は、図15に示すように、モニタ111に並べて表示される(ステップS104)。合成画像および中央画像がモニタ111に表示された後も、上述したように操作者によって合成画像の範囲が変更されれば、随時ステップS102の合成画像生成処理が行われ、これに伴って、ステップS103の中央画像生成処理が行われる。また、中央画像については、常に更新が繰り返されており、シャーレ101内の細胞の最新の状態がモニタ111に表示されることになる。
【0057】
このように、モニタ111に合成画像および中央画像が並んで表示されるため、操作者は、合成画像を確認しながら細胞密度が適切な観測領域を探索しつつ、適切な観測領域を中央画像で確認してインジェクションを実行することができる。インジェクション実行の際には、操作者は、モニタ111の中央画像を確認しながら位置入力部112を操作し、例えば図16に示すように、十字マークなどによって中央画像中のインジェクションを希望する位置を指定する(ステップS105)。この指定は、制御部110へ通知され、制御部110によって、移動ステージ102およびキャピラリ105が制御され、操作者の指定位置にインジェクションが実行される(ステップS106)。
【0058】
インジェクション後、モニタ111に表示される合成画像および中央画像には、インジェクションが実行されたことを示すマーキングが施される(ステップS107)。すなわち、画像処理部109のインジェクション位置取得部410によって、制御部110からインジェクションされた位置の情報が取得され、マーキング部411によって、合成画像加工部405に保持された合成画像および中央画像加工部408に保持された中央画像にマーキングが施される。マーキングが施された合成画像および中央画像は、それぞれ合成画像出力部407および中央画像出力部409から制御部110へ出力され、モニタ111に表示される。マーキング部411によるマーキングは、例えば図17に示すように、合成画像に関しては、インジェクションされた細胞を含む画像枠が強調表示され、中央画像に関しては、インジェクションされた細胞の輪郭線とインジェクション位置とが強調表示されるようにして行われる。このマーキングにより、操作者は、各画像枠および各細胞について既にインジェクションが行われたか否かを識別することができる。
【0059】
以後、合成画像による観測領域の探索、中央画像によるインジェクション位置の指定、インジェクション、およびインジェクション位置のマーキングが繰り返され、所望数の細胞に対してインジェクションが実行される。所望数の細胞に対してインジェクションが実行されると、画像処理部109は、インジェクションの効果の判定を行う(ステップS108)。すなわち、差分画像生成部412によって、中央画像加工部408に保持されたインジェクション前後の中央画像から差分画像が生成され、判定部413によって、差分画像の大きさが所定のしきい値以上であるか否かが判定される。
【0060】
差分画像生成部412による差分画像の生成は、例えば図18に示すように、インジェクション前の中央画像における細胞の形状とインジェクション後の中央画像における細胞の形状との差分が求められることにより行われる。図18においては、下図の斜線部分が差分画像として求められることになる。そして、判定部413によって、斜線部分の面積が所定のしきい値以上であるか否かが判定され、所定のしきい値以上であれば、インジェクションが適切に行われ効果が現れたと判定される。判定結果は、中央画像加工部408へ通知され、インジェクションの効果が現れた細胞については、他の細胞と区別可能なように着色されるなどの加工が施される。そして、この中央画像は、中央画像出力部409から制御部110へ出力され、モニタ111に表示される。これにより、操作者は、インジェクションの効果が現れた細胞を容易に確認することができる。なお、判定部413による判定結果を合成画像加工部405にも通知し、マーキング部411によるマーキングと同様に、インジェクションの効果が現れた細胞を含む画像枠を他の画像枠と区別可能に着色しても良い。
【0061】
以上のように、本実施の形態によれば、指定された撮影位置の周辺の画像を取得し、取得された画像を合成して得られた合成画像と指定された撮影位置に対応する合成画像の中央に配置された中央画像とを並べてモニタに表示する。このため、周辺の状況を把握可能な合成画像を確認しながらインジェクションに適した観測領域を探索すると同時に、細胞の微小な構造を把握可能な中央画像を確認してインジェクションを実行することができ、対物レンズの切り替えなどの手間がかからず、インジェクションの効率を向上することができる。また、合成画像と中央画像とは、同一の対物レンズで拡大された拡大像から生成されるため、倍率が異なる複数の対物レンズを必要とせず、装置構成を簡易にすることができる。
【0062】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の特徴は、インジェクション可能領域、インジェクション済み領域、および細胞の移動可能領域などが示された広域な格子状のマップを合成画像および中央画像とともに表示する点である。
【0063】
本実施の形態に係るインジェクション装置の概略構成は、実施の形態1(図1)と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態においては、画像処理部109の内部構成が実施の形態1と異なっている。図19は、本実施の形態に係るインジェクション装置の画像処理部109の内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施の形態に係る画像処理部109は、実施の形態1の画像処理部109にマップ生成部501を追加した構成を有している。
【0064】
マップ生成部501は、合成画像加工部405に保持される合成画像から1つの格子が1つの画像枠に対応する広域の格子状のマップを生成する。1つの画像枠は1辺が例えば100μm程度に対応するのに対し、マップは1辺が例えば2mm程度に対応する。マップ生成部501は、合成画像を構成する各画像枠内の細胞数から求められるインジェクションに適した細胞密度の画像枠、インジェクションが完了した画像枠、および細胞が移動可能な範囲の画像枠などをマップ上に示してモニタ111に表示させる。
【0065】
本実施の形態においては、例えばインジェクション装置の起動時などに、マップに表示される範囲全体をCCDカメラ108によって順次撮影し、各画像を並べた広域画像を生成しておく。
【0066】
そして、インジェクションの適不適をマップ上に示すには、広域画像における各画像が例えば図20−1に示すようなものである場合、マップ生成部501は、まず各画像枠内の細胞数をカウント・記録する。図20−1において、各画像枠内の数字は、細胞の数を示している。なお、画像枠の境界上の細胞については、画像処理の簡略化のため、カウントしないものとしている。そして、マップ生成部501は、細胞数が例えば3〜10個の画像枠に対応する格子をインジェクションに適した領域とし、細胞数が例えば0〜2または11個以上の画像枠に対応する格子をインジェクションに適さない領域として、色を変えるなどしてマップ上に示す。このマップの一例を図20−2に示す。図20−2においては、例えば横線で示す範囲601がインジェクションに適した領域であり、縦線で示す範囲602がインジェクションに適さない領域である。
【0067】
操作者は、このようなマップをモニタ111上で確認することにより、インジェクションを実行する際の対象範囲を大まかに決定し、位置入力部112を操作して実施の形態1における合成画像生成処理および中央画像生成処理を行う位置を指定することができる。
【0068】
また、インジェクションが完了した画像枠をマップ上に示すには、マップ生成部501は、マーキング部411によって合成画像上でマーキングされた画像枠に対応する格子を着色して、例えば図21に示すようなマップを生成する。図21においては、斜線で示した格子がインジェクション済みの細胞を含む画像枠に対応している。これにより、操作者は、インジェクションが完了した範囲を大まかに把握することができる。
【0069】
なお、画像枠内においてインジェクションされた細胞数をカウントし、その数に応じて格子の色を変えることにより、より詳細にインジェクションの状況を把握し、重点的に効果の有無を観測すべき領域を決定することができる。同時に、例えば図22に示すように、上述したインジェクションの適不適もマップ上に示しておくことにより、操作者は、インジェクションを進めるべき領域の指針を得ることができる。このようなマップにおいては、すべての画像枠について細胞数をカウントして示す必要はなく、一定間隔の画像枠について細胞数をカウントした上で、統計処理により細胞数に応じた格子の着色を行っても良い。
【0070】
また、細胞が移動可能な範囲の画像枠をマップ上に示すには、細胞の活動度・移動速度に応じた範囲の格子を着色すれば良い。ここで、細胞は、移動する可能性があるため、インジェクション後に同位置を観測しても細胞が存在しないことがある。しかし、細胞の移動速度には限度があるため、例えば図23−1のように、黒色で示す格子にある細胞は、最大でも図中矢印で示す距離程度しか移動することはない。そこで、図23−1に斜線で示す範囲の格子を細胞の移動可能範囲として着色すれば、インジェクション後に効果を観測する際にも、インジェクション前後で観測対象の細胞数が異なってしまうことなどがなく、効率的な観測を行うことができる。このようにマップ上に細胞の移動可能範囲を示した例を図23−2に示す。図23−2においては、黒色の格子がインジェクション時に細胞が存在した領域に対応しており、斜線で示す格子が細胞の移動可能領域に対応している。
【0071】
以上のように、本実施の形態によれば、より広域な格子状のマップにインジェクションの適不適、インジェクションの完了状況、および細胞の移動可能範囲などを示すため、さらにインジェクションの効率を向上することができる。
【0072】
(付記1)培地内の細胞に微小針を用いて物質を注入する際に、前記細胞を含む画像を表示するインジェクション装置であって、
培地内の指定位置を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって前記指定位置および前記指定位置の周辺が撮影されて得られる複数の画像を合成して広視野画像を生成する第1生成手段と、
前記撮影手段によって前記指定位置が撮影されて得られる画像を用いて狭視野画像を生成する第2生成手段と、
前記第1生成手段によって生成された広視野画像および前記第2生成手段によって生成された狭視野画像を並べて表示する表示手段と
を有することを特徴とするインジェクション装置。
【0073】
(付記2)前記表示手段に表示された狭視野画像において物質を注入する位置を入力する入力手段をさらに有し、
前記第2生成手段は、
前記狭視野画像の前記入力手段に入力された位置に所定のマークを合成することを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0074】
(付記3)前記表示手段に表示された狭視野画像において物質を注入する位置を入力する入力手段をさらに有し、
前記入力手段によって物質注入位置が入力されると、直後に前記微小針を用いて前記物質注入位置に物質を注入することを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0075】
(付記4)前記第1生成手段は、
広視野画像におけるエッジ検出により細胞の周縁を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された細胞の周縁を前記広視野画像において強調表示する加工を行う加工手段と
を有することを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0076】
(付記5)前記第2生成手段は、
狭視野画像におけるエッジ検出により細胞の周縁を検出して強調表示する加工を行うことを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0077】
(付記6)前記第2生成手段は、
前記撮影手段によって前記指定位置が撮影されて得られる複数の焦点が異なる画像を合成して狭視野画像を生成することを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0078】
(付記7)前記第2生成手段は、
前記撮影手段によって得られる焦点が細胞の表面に合った画像と前記撮影手段によって得られる焦点が細胞の表面より細胞内側へ2〜5μmずれた位置に合った画像とを合成して狭視野画像を生成することを特徴とする付記6に記載のインジェクション装置。
【0079】
(付記8)前記第1生成手段は、
広視野画像におけるエッジ検出により細胞の周縁を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された細胞の周縁が広視野画像を構成する画像の境界と交差する場合に、この細胞の位置を前記撮影手段に再撮影位置として指示する指示手段と、
前記撮影手段によって再撮影されて得られる画像を前記広視野画像の前記再撮影位置に上書き合成する加工手段と
を有することを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0080】
(付記9)前記加工手段は、
前記再撮影手段によって再撮影されて得られる画像から細胞を含む最小領域を切り取った上で前記広視野画像の前記再撮影位置に上書き合成することを特徴とする付記8に記載のインジェクション装置。
【0081】
(付記10)前記表示手段に表示された狭視野画像において物質を注入する位置を入力する入力手段をさらに有し、
前記第2生成手段は、
前記狭視野画像の前記入力手段に入力された位置に存在する細胞の周縁を強調表示する加工を行うことを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0082】
(付記11)前記表示手段に表示された狭視野画像において物質を注入する位置を入力する入力手段をさらに有し、
前記第1生成手段は、
前記入力手段によって物質注入位置が入力された時に前記表示手段に表示されている狭視野画像に対応する画像枠を前記広視野画像において強調表示する加工を行うことを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0083】
(付記12)物質注入前後に前記第2生成手段によって生成される狭視野画像の差分画像を生成する第3生成手段と、
前記第3生成手段によって生成された差分画像の大きさが所定のしきい値以上であるか否かを判定する判定手段とをさらに有し、
前記第2生成手段は、
前記判定手段による判定の結果、差分画像の大きさが所定のしきい値以上である狭視野画像中の細胞を物質注入の効果が現れた細胞として強調表示する加工を行うことを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0084】
(付記13)前記表示手段は、
前記広視野画像の周囲に指定位置の変更を誘導する所定の記号を表示し、
前記撮影手段は、
前記表示手段に表示された記号に応じて指定された指定位置を撮影することを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0085】
(付記14)1つの格子が前記狭視野画像1つに対応し、前記広視野画像に含まれる領域以上の領域に対応する格子状のマップを生成する第4生成手段をさらに有し、
前記表示手段は、
前記第4生成手段によって生成されたマップを前記広視野画像および前記狭視野画像とともに表示することを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0086】
(付記15)前記第4生成手段は、
前記狭視野画像中に存在する細胞数に応じて各狭視野画像に対応する格子を区別してマップを生成することを特徴とする付記14に記載のインジェクション装置。
【0087】
(付記16)前記第4生成手段は、
インジェクションされた細胞が存在する狭視野画像対応の格子を他の格子と区別したマップを生成することを特徴とする付記14に記載のインジェクション装置。
【0088】
(付記17)前記第4生成手段は、
前記狭視野画像中に存在する細胞が移動可能な領域に対応する格子を他の格子と区別してマップを生成することを特徴とする付記14に記載のインジェクション装置。
【0089】
(付記18)前記培地の容器の位置を調整する調整手段をさらに有することを特徴とする付記1に記載のインジェクション装置。
【0090】
(付記19)前記調整手段は、
前記容器を固定して保持する保持部材と、
前記保持部材に当接し、前記保持部材の位置を決定する突起と
を有することを特徴とする付記18に記載のインジェクション装置。
【0091】
(付記20)前記調整手段は、
位置の基準となる所定のマークが形成された位置基準部材をさらに有し、前記所定のマークの位置を固定することを特徴とする付記19に記載のインジェクション装置。
【0092】
(付記21)前記保持部材は、
位置の基準となる所定のマークを有し、前記所定のマークの位置を固定することを特徴とする付記19に記載のインジェクション装置。
【0093】
(付記22)培地内の細胞に微小針を用いて物質を注入する際に、前記細胞を含む画像を表示するインジェクション方法であって、
培地内の指定位置および前記指定位置の周辺を撮影する第1撮影工程と、
前記第1撮影工程にて前記指定位置および前記指定位置の周辺が撮影されて得られる複数の画像を合成して広視野画像を生成する第1生成工程と、
培地内の前記指定位置を撮影する第2撮影工程と、
前記第2撮影工程にて前記指定位置が撮影されて得られる画像を用いて狭視野画像を生成する第2生成工程と、
前記第1生成工程にて生成された広視野画像および前記第2生成工程にて生成された狭視野画像を並べて表示する表示工程と
を有することを特徴とするインジェクション方法。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、インジェクションの効率を向上し、装置構成を簡易にする場合に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施の形態1に係るインジェクション装置の概略構成を示す図である。
【図2−1】実施の形態1に係る移動ステージ周辺を拡大して示す斜視図である。
【図2−2】実施の形態1に係るシャーレホルダの構成を示す図である。
【図2−3】実施の形態1に係るシャーレの位置合わせを説明する図である。
【図2−4】実施の形態1に係るシャーレホルダの他の構成を示す図である。
【図3】シャーレ内の細胞の様子を示す図である。
【図4】インジェクションの概念を説明する図である。
【図5−1】インジェクションの基本動作を説明する図である。
【図5−2】図5−1に続く図である。
【図6】実施の形態1に係る画像処理部の内部構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態1に係る画像処理部の動作を示すフロー図である。
【図8】実施の形態1に係る合成画像生成処理を示すフロー図である。
【図9】実施の形態1に係る合成画像の生成過程を示す図である。
【図10】実施の形態1に係る合成画像の範囲変更を説明する図である。
【図11】実施の形態1に係る合成画像の周縁強調の例を示す図である。
【図12−1】実施の形態1に係る画像の境界上にある細胞の例を示す図である。
【図12−2】実施の形態1に係る画像の境界上にある細胞に対する処理を示す図である。
【図13】実施の形態1に係る中央画像生成処理を示すフロー図である。
【図14−1】実施の形態1に係る中央画像の生成動作を示す図である。
【図14−2】実施の形態1に係る中央画像の生成過程を示す図である。
【図15】実施の形態1に係るモニタの表示例を示す図である。
【図16】実施の形態1に係るインジェクション位置の指定方法の例を示す図である。
【図17】実施の形態1に係るマーキングの例を示す図である。
【図18】実施の形態1に係る差分画像の生成過程を示す図である。
【図19】実施の形態2に係る画像処理部の内部構成を示すブロック図である。
【図20−1】実施の形態2に係るマップの生成過程の一例を示す図である。
【図20−2】実施の形態2に係るマップの一例を示す図である。
【図21】実施の形態2に係るマップの他の一例を示す図である。
【図22】実施の形態2に係るマップのさらに他の一例を示す図である。
【図23−1】細胞の移動可能範囲を説明する図である。
【図23−2】実施の形態2に係るマップのさらに他の一例を示す図である。
【図24】マイクロインジェクション装置の一例を示す模式図である。
【図25−1】細胞密度が高い状態の一例を示す図である。
【図25−2】インジェクションに適した細胞密度を説明する図である。
【符号の説明】
【0096】
102 移動ステージ
104 対物レンズ
105 キャピラリ
108 CCDカメラ
109 画像処理部
110 制御部
111 モニタ
401 画像取得部
402 撮影位置取得部
403 画像配置部
404 周縁検出部
405 合成画像加工部
406 再撮影位置指示部
407 合成画像出力部
408 中央画像加工部
409 中央画像出力部
410 インジェクション位置取得部
411 マーキング部
412 差分画像生成部
413 判定部
501 マップ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地内の細胞に微小針を用いて物質を注入する際に、前記細胞を含む画像を表示するインジェクション装置であって、
培地内の指定位置を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって前記指定位置および前記指定位置の周辺が撮影されて得られる複数の画像を合成して広視野画像を生成する第1生成手段と、
前記撮影手段によって前記指定位置が撮影されて得られる画像を用いて狭視野画像を生成する第2生成手段と、
1つの格子が前記第2生成手段によって生成される狭視野画像1つに対応し、前記第1生成手段によって生成される広視野画像に含まれる領域以上の領域に対応する格子状のマップを生成する第3生成手段と、
前記第1生成手段によって生成された広視野画像、前記第2生成手段によって生成された狭視野画像、および前記第3生成手段によって生成されたマップを並べて表示する表示手段と
を有することを特徴とするインジェクション装置。
【請求項2】
前記第3生成手段は、
前記狭視野画像中に存在する細胞数に応じて各狭視野画像に対応する格子を区別してマップを生成することを特徴とする請求項1記載のインジェクション装置。
【請求項3】
前記第3生成手段は、
物質注入された細胞が存在する狭視野画像対応の格子を他の格子と区別したマップを生成することを特徴とする請求項1記載のインジェクション装置。
【請求項4】
前記第3生成手段は、
前記狭視野画像中に存在する細胞が移動可能な領域に対応する格子を他の格子と区別してマップを生成することを特徴とする請求項1記載のインジェクション装置。
【請求項5】
培地内の細胞に微小針を用いて物質を注入する際に、前記細胞を含む画像を表示するインジェクション方法であって、
培地内の指定位置および前記指定位置の周辺を撮影する第1撮影工程と、
前記第1撮影工程にて前記指定位置および前記指定位置の周辺が撮影されて得られる複数の画像を合成して広視野画像を生成する第1生成工程と、
培地内の前記指定位置を撮影する第2撮影工程と、
前記第2撮影工程にて前記指定位置が撮影されて得られる画像を用いて狭視野画像を生成する第2生成工程と、
1つの格子が前記第2生成工程にて生成される狭視野画像1つに対応し、前記第1生成工程にて生成される広視野画像に含まれる領域以上の領域に対応する格子状のマップを生成する第3生成工程と、
前記第1生成工程にて生成された広視野画像、前記第2生成工程にて生成された狭視野画像、および前記第3生成工程にて生成されたマップを並べて表示する表示工程と
を有することを特徴とするインジェクション方法。

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図2−4】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12−1】
image rotate

【図12−2】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14−1】
image rotate

【図14−2】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20−1】
image rotate

【図20−2】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23−1】
image rotate

【図23−2】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25−1】
image rotate

【図25−2】
image rotate


【公開番号】特開2007−175046(P2007−175046A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66606(P2006−66606)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【分割の表示】特願2005−380039(P2005−380039)の分割
【原出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】