説明

インターフェロン−βを使用する腎不全のための治療法

【課題】哺乳動物の糸球体腎炎を処置するための方法および組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、糸球体腎炎または慢性腎不全の哺乳動物、または糸球体腎炎または慢性腎不全の危険がある哺乳動物の処置のための方法、およびその処置において使用するための医薬品に関す。本発明は、治療的なIFN−βの投与を含む。ここで、1つの実施形態において、糸球体腎炎は、巣状糸球体硬化症、虚脱糸球体症、最小変化疾病、半月体形成性糸球体腎炎、腎炎症候群、ネフローゼ症候群、原発性糸球体腎炎、続発性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、免疫複合体性糸球体腎炎、抗糸球体基底膜(抗GBM)糸球体腎炎、少数−免疫性糸球体腎炎、糖尿病性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎および遺伝性腎炎からなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
慢性腎不全(CRF)は、有意かつ連続的なネフロンの損失に起因する、進行性の、永続的かつ重大な、糸球体濾過率(GFR)の減少として、定義され得る。慢性腎不全は、代表的に、慢性腎不全(すなわち、少なくとも50〜60%の腎機能の永続的な減少)がネフロン単位の有意な損失を引き起こした腎組織のいくらかの傷害から生じた、点から開始する。この最初の傷害は、急性腎不全のエピソードに関連していても関連していなくてもよく、またはこの傷害は、多数の腎障害と関連し得る。この腎障害としては、末期腎臓病、慢性糖尿病性腎症、糖尿病性糸球体症、糖尿病性腎肥大、高血圧性腎硬化症、高血圧性糸球体硬化症、慢性糸球体腎炎、遺伝性腎炎、腎臓形成異常症および腎臓同種移植に続く慢性的拒絶が挙げられるが、これらに限定されない。最初の傷害の性質にかかわらず、慢性腎不全は、ネフロンが次第に損失され、そしてGFRが次第に減衰するにつれて、兆候および症状の「最終共通経路」を明らかにする。腎機能のこの進行性の悪化はゆっくりであり、代表的に、ヒト患者において数年または数十年にわたるが、不可避であるようである。
【0002】
ヒトにおいて、慢性腎不全が進行し、そしてGFRが減衰し続けて正常値の10%未満(例えば、5〜10ml/分)となるにつれて、被験体は、末期腎臓病(ESRD)に入る。この段階の間に、残りのネフロンが老廃物を血液から十分に除去し、一方で有用な産物を保持し、かつ流体と電解質とのバランスを維持することができないないことにより、多くの器官系および特に心臓血管系が急速に衰え始め得る衰弱がもたらされる。この時点において、腎不全は、被験体が腎臓代償療法(すなわち、慢性血液透析、連続的腹膜透析、または腎臓移植)を受けない限り、迅速に進行して死に到る。
【0003】
CRFをもたらし得る一つの腎疾患が、糸球体腎炎である。糸球体腎炎を、炎症および免疫複合体形成に代表的に起因する糸球体の肥大の結果により特徴づける。糸球体における免疫複合体の凝集は、とりわけ毛細血管内腔の縮小による、糸球体の完全閉塞または部分閉塞を生じ得る炎症反応(特に細胞質肥大を含む)を引き起こす。この過程の一つの結果としては、糸球体の正常な濾過機能の阻害である。閉塞は、多数の糸球体において腎機能の直接的な低下を生じ得、かつ糸球体を構成する毛細血管の壁にタンパク質の異常な沈着をしばしば生じ得る。そのような沈着は、次々に、糸球体基底膜に障害を生じ得る。このような糸球体は、透過率が増大することを抑制せず、多量のタンパク質が尿へ入る(タンパク尿といわれる状況)ことを可能とする。
【0004】
重篤な糸球体腎炎の多くの場合、半月体と呼ばれる病的な構造が、ボーマン嚢腔内に形成され、さらに、糸球体濾過機能を妨害する。これらの構造は、生検または検死により得られた組織サンプルの顕微鏡による検査によってのみ見ることが可能であり、そして、そのため、この構造が生じている患者において、常に認められるものではない。半月体は、細胞性肥大の現れであり、かつボーマン嚢の内層を形成する壁上皮細胞の過剰な異常増殖により引き起こされると考えられる。臨床試験は、半月体構造を伴う糸球体のパーセンテージと疾患の臨床重症度、従って患者の病気の予後診断との間の大まかな相関関係が存在することを示す。半月体構造が多数現れた場合、半月体構造は、よくない予後サインである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
百万人あたり約600の患者が、1人の患者1年あたり60,000〜80,000ドルに近付く平均費用において、合衆国において毎年慢性的透析を受けている。毎年の末期腎臓病の新たな症例のうちの、約28〜33%が、糖尿病性腎症(または糖尿病性糸球体症または糖尿病性腎肥大)に起因し、24〜29%が、高血圧性腎硬化症(または高血圧性糸球体硬化症)に起因し、そして15〜22%が、糸球体腎炎に起因する。全ての慢性透析の患者に対する5年の生存率は、約40%であるが、65歳を超える患者については、この率は、約20%に低下する。従って、合衆国のみにおいてほぼ20万の患者を慢性的透析に依存させ、そして毎年何万もの早期の死を生じる腎機能の進行性の損失を予防する処置に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
一つの実施形態において、本発明は、糸球体腎炎の、または糸球体腎炎を発症しているもしくは発症するおそれがある哺乳動物において、糸球体腎炎または慢性腎不全を処置するための方法であって、治療有効量のIFN−β治療剤を該哺乳動物に投与する工程を含む方法を提供する。本発明はまた、糸球体腎炎の処置または予防のための医薬の製造におけるIFN−β治療剤の使用を与える。糸球体腎炎は、巣状糸球体硬化症、虚脱糸球体症、最小変化疾患、半月体形成性糸球体腎炎、腎炎症候群、ネフローゼ症候群、原発性糸球体腎炎、続発性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体症、膜性増殖性糸球体腎炎、免疫複合体糸球体腎炎、抗糸球体基底膜(anti−GBM)糸球体腎炎、少数−免疫性糸球体腎炎(pauci−immune glomerulonephritis)、糖尿病性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎および遺伝性腎炎からなる群より選択され得る。IFN−βは、成熟したものまたは未成熟なものであり得、かつ開始メチオニンを欠いているかもしれない。IFN−βは、ヒトIFN−β(例えば、IFN−β−1aおよびIFN−β−1b)であり得る。IFN−βは、配列番号4を有する全長の成熟したヒトIFN−βに対して少なくともおよそ95%同一であるタンパク質であり得る。IFN−βは、配列番号4を含む、または配列番号4からなる全長の成熟したヒトIFN−βであり得る。IFN−βを、グリコシル化させてもよいし、またはグリコシル化させなくてもよい。IFN−β治療剤は、ヒト免疫グロブリン分子(例えば、IgG1の重鎖)の定常領域に対して融合する配列番号4を含む全長の成熟したヒトIFN−βであり得る。例えば、IFN−β治療剤は、配列番号14を含み得る。IFN−β治療剤はまた、ペグ化したIFN−βを含み得る。
【0007】
IFN−β治療剤は、酸性アミノ酸であり得る、安定化剤を含み得る。安定化剤はまた、アルギニンであり得る。IFN−β治療剤は、およそ4.0および7.2との間のpHを有し得る。好ましい実施形態において、IFN−β治療剤は、AVONEX(登録商標)である。
【0008】
IFN−β治療剤は、非経口的に(例えば、静脈内(i.v.)、皮下および筋肉内(i.m.))投与され得る。この方法は、哺乳動物に対し様々な用量のIFN−β治療剤を投与することを含み得る。IFN−β治療剤を、数日間にわたって投与し得る。例えば、IFN−β治療剤を6MIUの用量で毎週投与し得る。IFN−β治療剤をまた、3MIU、6MIUまたは12MIUの用量で一週間に3回投与され得る。IFN−β治療剤の投与は、例えば、哺乳動物におけるタンパク尿、糸球体細胞の増殖または糸球体の炎症を減少させ得る。
【0009】
好ましい実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。ヒトは、患者であり得る。哺乳動物は、例えば少なくとも一つの糸球体のやがて来る炎症のサインにより示されるようにおそらく糸球体腎炎を生じる哺乳動物であり得る。哺乳動物は、例えば、慢性的な腎機能不全の存在により示されるようにおそらく慢性腎不全を生じそうである哺乳動物または、慢性腎不全である哺乳動物であり得る。哺乳動物は、少なくとも一つの糸球体の炎症;糸球体肥大;尿細管肥大;糸球体硬化症;または尿細管間質性硬化症の存在により糸球体腎炎を有するとして同定した。特定の実施形態において、哺乳動物は、糸球体腎炎を生じるウィルス(例えば、B型肝炎ウィルスまたはC型肝炎ウィルスのような、肝炎ウィルス)を有している哺乳動物ではなく、糸球体腎炎は、ウィルスにより生じる哺乳動物でもない。他の実施形態において、哺乳動物は、末期腎不全も末期腎細胞癌も有さない。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
哺乳動物における糸球体腎炎の処置または予防のための医薬品の製造におけるIFN−β治療剤の使用。
(項目2)
糸球体腎炎は、巣状糸球体硬化症、虚脱糸球体症、最小変化疾病、半月体形成性糸球体腎炎、腎炎症候群、ネフローゼ症候群、原発性糸球体腎炎、続発性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、免疫複合体性糸球体腎炎、抗糸球体基底膜(抗GBM)糸球体腎炎、少数−免疫性糸球体腎炎、糖尿病性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎および遺伝性腎炎からなる群より選択される、項目1に記載の使用。
(項目3)
前記IFN−β治療剤は、成熟IFN−βを含む、項目1または2に記載の使用。
(項目4)
前記IFN−β治療剤は、第1のメチオニンを欠く、項目1〜3のいずれか1項に記載の使用。
(項目5)
前記IFN−βは、ヒトIFN−βである、項目1〜4のいずれか1項に記載の使用。
(項目6)
前記IFN−βは、配列番号4を有する全長の成熟ヒトIFN−βに対して少なくともおよそ95%同一である、項目5に記載の使用。
(項目7)
前記IFN−βは、配列番号4を含む、項目6に記載の使用。
(項目8)
前記IFN−βを、グリコシル化する、項目1〜7のいずれか1項に記載の使用。
(項目9)
前記IFN−βを、グリコシル化しない、項目1〜7のいずれか1項に記載の使用。
(項目10)
前記IFN−βは、IFN−β−1aである、項目5に記載の使用。
(項目11)
前記IFN−βは、IFN−β−1bである、項目5に記載の使用。
(項目12)
前記IFN−β治療剤は、免疫グロブリン分子の定常ドメインに対して融合させるIFN−βを含む、項目1〜11のいずれか1項に記載の使用。
(項目13)
前記免疫グロブリン分子は、ヒト免疫グロブリン分子である、項目12に記載の使用。
(項目14)
前記免疫グロブリン分子は、IgG1の重鎖である、項目13に記載の使用。
(項目15)
前記IFN−βは、配列番号14を含む、項目14に記載の使用。
(項目16)
前記IFN−β治療剤は、ペグ化IFN−βを含む、項目1〜15のいずれか1項に記載の使用。
(項目17)
前記IFN−β治療剤は、安定化剤を含む、項目1〜16のいずれか1項に記載の使用。
(項目18)
前記安定化剤が、酸性アミノ酸である、項目17に記載の使用。
(項目19)
前記安定化剤が、アルギニンである、項目18に記載の使用。
(項目20)
前記IFN−β治療剤は、約4.0および約7.2との間のpHを有する、項目1〜19のいずれか1項に記載の使用。
(項目21)
前記IFN−β治療剤を、静脈内(i.v.)に投与する、項目1〜20のいずれか1項に記載の使用。
(項目22)
前記IFN−β治療剤を、筋肉内(i.m.)に投与する、項目1〜20のいずれか1項に記載の使用。
(項目23)
前記IFN−β治療剤を、皮下に投与する、項目1〜20のいずれか1項に記載の使用。
(項目24)
前記処置は、前記哺乳動物に対して様々な濃度の前記IFN−β治療剤を投与することを含む、項目1〜23のいずれか1項に記載の使用。
(項目25)
前記IFN−β治療剤を、およそ6MIUの濃度で毎週投与する、項目24に記載の使用。
(項目26)
前記IFN−β治療剤を、およそ3MIUの濃度で一週間に3回投与する、項目24に記載の使用。
(項目27)
前記処置は、前記哺乳動物における蛋白尿を減少させる、項目1〜26のいずれか1項に記載の使用。
(項目28)
前記処置は、糸球体細胞の増殖を減少させる、項目1〜27のいずれか1項に記載の使用。
(項目29)
前記処置は、糸球体の炎症を減少させる、項目1〜28のいずれか1項に記載の使用。
(項目30)
前記哺乳動物は、ヒトである、項目1〜29のいずれか1項に記載の使用。
(項目31)
前記哺乳動物は、少なくとも1つの糸球体で発生する炎症の徴候により示されるような糸球体腎炎を発症する可能性のある哺乳動物である、項目30に記載の使用。
(項目32)
前記哺乳動物は、糸球体腎炎を生じるウィルスを有する哺乳動物ではなく、また、該糸球体腎炎はウィルスにより生じる哺乳動物でもない、項目1〜31のいずれか1項に記載の使用。
(項目33)
前記哺乳動物は、肝炎ウィルスを有している哺乳動物ではなく、また、前記糸球体腎炎が肝炎ウィルスにより生じる哺乳動物もない、項目32に記載の使用。
(項目34)
前記哺乳動物は、B型肝炎ウィルスまたはC型肝炎ウィルスを有している哺乳動物ではなく、また、前記糸球体腎炎がB型肝炎ウィルスまたはC型肝炎ウィルスにより生じる哺乳動物でもない、項目33に記載の使用。
(項目35)
前記哺乳動物は、末期腎不全または末期腎細胞癌を有さない、項目1〜34のいずれか1項に記載の使用。
(項目36)
哺乳動物における慢性腎不全の処置または予防のための医薬品の製造におけるIFN−β治療剤の使用。
(項目37)
前記IFN−β治療剤は、成熟IFN−βを含む、項目36に記載の使用。
(項目38)
前記IFN−β治療剤は、第1のメチオニンを欠く、項目36〜37のいずれか1項に記載の使用。
(項目39)
前記IFN−βは、ヒトIFN−βである、項目36〜38のいずれか1項に記載の使用。
(項目40)
前記IFN−βは、配列番号4を有する全長の成熟ヒトIFN−βに対して少なくともおよそ95%同一である、項目39に記載の使用。
(項目41)
前記IFN−βは、配列番号4を含む、項目40に記載の使用。
(項目42)
前記IFN−βを、グリコシル化する、項目36〜41のいずれか1項に記載の使用。
(項目43)
前記IFN−βを、グリコシル化しない、項目36〜41のいずれか1項に記載の使用。
(項目44)
前記IFN−βは、IFN−β−1aである、項目39に記載の使用。
(項目45)
前記IFN−βは、IFN−β−1bである、項目39に記載の使用。
(項目46)
前記IFN−β治療剤は、免疫グロブリン分子の定常ドメインに対して融合したIFN−βを含む、項目36〜45のいずれか1項に記載の使用。
(項目47)
前記免疫グロブリン分子は、ヒト免疫グロブリン分子である、項目46に記載の使用。
(項目48)
前記免疫グロブリン分子は、IgG1の重鎖である、項目47に記載の使用。
(項目49)
前記IFN−βは、配列番号14を含む、項目48に記載の使用。
(項目50)
前記IFN−β治療剤は、ペグ化IFN−βを含む、項目36〜49のいずれか1項に記載の使用。
(項目51)
前記IFN−β治療剤は、安定化剤を含む、項目36〜50のいずれか1項に記載の使用。
(項目52)
前記安定化剤が、酸性アミノ酸である、項目51に記載の使用。
(項目53)
前記安定化剤が、アルギニンである、項目52に記載の使用。
(項目54)
前記IFN−β治療剤は、約4.0および約7.2との間のpHを有する、項目36〜53のいずれか1項に記載の使用。
(項目55)
前記IFN−β治療剤を、静脈内(i.v.)に投与する、項目36〜54のいずれか1項に記載の使用。
(項目56)
前記IFN−β治療剤を、筋肉内(i.m.)に投与する、項目36〜54のいずれか1項に記載の使用。
(項目57)
前記IFN−β治療剤を、皮下に投与する、項目36〜54のいずれか1項に記載の使用。
(項目58)
前記処置は、前記哺乳動物に対して様々な濃度の前記IFN−β治療剤を投与することを含む、項目36〜57のいずれか1項に記載の使用。
(項目59)
前記IFN−β治療剤を、およそ6MIUの濃度で毎週投与する、項目58に記載の使用。
(項目60)
前記IFN−β治療剤を、およそ3MIUの濃度で一週間に3回投与する、項目58に記載の使用。
(項目61)
前記処置は、前記哺乳動物における蛋白尿を減少させる、項目36〜60のいずれか1項に記載の使用。
(項目62)
前記処置は、糸球体細胞の増殖を減少させる、項目36〜61のいずれか1項に記載の使用。
(項目63)
前記処置は、糸球体の炎症を減少させる、項目36〜62のいずれか1項に記載の使用。
(項目64)
前記哺乳動物は、ヒトである、項目36〜63のいずれか1項に記載の使用。
(項目65)
前記哺乳動物は、慢性的な腎機能不全により示されるようにおそらく慢性腎不全を生じる哺乳動物である、項目64に記載の使用。
(項目66)
前記哺乳動物は、慢性腎不全を生じるウィルスを有する哺乳動物でなく、また、該慢性腎不全がウィルスにより生じる哺乳動物でもない、項目36〜65のいずれか1項に記載の使用。
(項目67)
前記哺乳動物は、肝炎ウィルスを有している哺乳動物でないか、また、前記慢性腎不全が肝炎ウィルスにより生じる哺乳動物でもない、項目66に記載の使用。
(項目68)
前記哺乳動物は、B型肝炎ウィルスまたはC型肝炎ウィルスを有している哺乳動物ではなく、または前記慢性腎不全がB型肝炎ウィルスまたはC型肝炎ウィルスにより生じる哺乳動物でもない、項目67に記載の使用。
(項目69)
前記哺乳動物は、末期慢性腎不全または末期腎細胞癌を有さない、項目36〜68のいずれか1項に記載の使用。
(項目70)
哺乳動物における、糸球体腎炎を処置するための方法であって、該方法は、以下の工程:
哺乳動物の有する糸球体腎炎を同定する工程、および
治療有効量のIFN−β治療剤を該哺乳動物に対して投与する工程、
を包含する、方法。
(項目71)
糸球体腎炎は、巣状糸球体硬化症、虚脱糸球体症、最小変化疾病、半月体形成性糸球体腎炎、腎炎症候群、ネフローゼ症候群、原発性糸球体腎炎、続発性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、免疫複合体性糸球体腎炎、抗糸球体基底膜(抗GBM)糸球体腎炎、少数−免疫性糸球体腎炎、糖尿病性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎および遺伝性腎炎からなる群より選択される、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記IFN−β治療剤は、成熟IFN−βを含む、項目70または71に記載の方法。
(項目73)
前記IFN−β治療剤は、第1のメチオニンを欠く、項目70〜72のいずれか1項に記載の方法。
(項目74)
前記IFN−βは、ヒトIFN−βである、項目70〜73のいずれか1項に記載の方法。
(項目75)
前記IFN−βは、配列番号4を有する全長の成熟ヒトIFN−βに対して少なくともおよそ95%同一である、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記IFN−βは、配列番号4を含む、項目75に記載の方法。
(項目77)
前記IFN−βを、グリコシル化する、項目70〜76のいずれか1項に記載の方法。
(項目78)
前記IFN−βを、グリコシル化しない、項目70〜77のいずれか1項に記載の方法。
(項目79)
前記IFN−βは、IFN−β−1aである、項目74に記載の方法。
(項目80)
前記IFN−βは、IFN−β−1bである、項目74に記載の方法。
(項目81)
前記IFN−β治療剤は、免疫グロブリン分子の定常ドメインに対して融合させるIFN−βを含む、項目70〜80のいずれか1項に記載の方法。
(項目82)
前記免疫グロブリン分子は、ヒト免疫グロブリン分子である、項目81に記載の方法。
(項目83)
前記免疫グロブリン分子は、IgG1の重鎖である、項目82に記載の方法。
(項目84)
前記IFN−βは、配列番号14を含む、項目83に記載の方法。
(項目85)
前記IFN−β治療剤は、ペグ化IFN−βを含む、項目70〜84のいずれか1項に記載の方法。
(項目86)
前記IFN−β治療剤は、安定化剤を含む、項目70〜85のいずれか1項に記載の方法。
(項目87)
前記安定化剤が、酸性アミノ酸である、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記安定化剤が、アルギニンである、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記IFN−β治療剤は、およそ4.0および7.2との間のpHを有する、項目70〜88のいずれか1項に記載の方法。
(項目90)
前記IFN−β治療剤を、静脈内(i.v.)に投与する、項目70〜89のいずれか1項に記載の方法。
(項目91)
前記IFN−β治療剤を、筋肉内(i.m.)に投与する、項目70〜89のいずれか1項に記載の方法。
(項目92)
前記IFN−β治療剤を、皮下に投与する、項目70〜89のいずれか1項に記載の方法。
(項目93)
前記処置は、前記哺乳動物に対して様々な濃度の前記IFN−β治療剤を投与することを含む、項目70〜92のいずれか1項に記載の方法。
(項目94)
前記IFN−β治療剤を、およそ6MIUの濃度で毎週投与する、項目93に記載の方法。
(項目95)
前記IFN−β治療剤を、およそ3MIUの濃度で一週間に3回投与する、項目93に記載の方法。
(項目96)
前記処置は、前記哺乳動物における蛋白尿を減少させる、項目70〜95のいずれか1項に記載の方法。
(項目97)
前記処置は、糸球体細胞の増殖を減少させる、項目70〜96のいずれか1項に記載の方法。
(項目98)
前記処置は、糸球体の炎症を減少させる、項目70〜97のいずれか1項に記載の方法。
(項目99)
前記哺乳動物は、ヒトである、項目70〜98のいずれか1項に記載の方法。
(項目100)
前記哺乳動物は、少なくとも1つの糸球体の炎症;糸球体肥大;尿細管肥大;糸球体硬化症;または尿細管間質性硬化症の存在により糸球体腎炎を有するとして同定した哺乳動物である、項目99に記載の方法。
(項目101)
前記哺乳動物は、糸球体腎炎を生じるウィルスを有す哺乳動物ではなく、また、該糸球体腎炎がウィルスにより生じる哺乳動物もない、項目70〜100のいずれか1項に記載の方法。
(項目102)
前記哺乳動物は、肝炎ウィルスを有している哺乳動物ではなく、また、前記糸球体腎炎が肝炎ウィルスにより生じる哺乳動物でもない、項目101に記載の方法。
(項目103)
前記哺乳動物は、B型肝炎ウィルスまたはC型肝炎ウィルスを有している哺乳動物ではなく、または前記糸球体腎炎は、B型肝炎ウィルスまたはC型肝炎ウィルスにより生じる哺乳動物である、項目102に記載の方法。
(項目104)
前記哺乳動物は、末期腎不全または末期腎細胞癌を有さない、項目70〜103のいずれか1項に記載の方法。
(項目105)
哺乳動物における、慢性腎不全を処置するための方法であって、該方法は、以下の工程:
哺乳動物の有する慢性腎不全を同定する工程、および
治療有効量のIFN−β治療剤を該哺乳動物に対して投与する工程、
を包含する、方法。
(項目106)
前記IFN−β治療剤は、成熟IFN−βを含む、項目105に記載の方法。
(項目107)
前記IFN−β治療剤は、第1のメチオニンを欠く、項目105〜106のいずれか1項に記載の方法。
(項目108)
前記IFN−βは、ヒトIFN−βである、項目105〜107のいずれか1項に記載の方法。
(項目109)
前記IFN−βは、配列番号4を有する全長の成熟ヒトIFN−βに対して少なくともおよそ95%同一である、項目108に記載の方法。
(項目110)
前記IFN−βは、配列番号4を含む、項目109に記載の方法。
(項目111)
前記IFN−βを、グリコシル化する、項目105〜110のいずれか1項に記載の方法。
(項目112)
前記IFN−βを、グリコシル化しない、項目105〜110のいずれか1項に記載の方法。
(項目113)
前記IFN−βは、IFN−β−1aである、項目108に記載の方法。
(項目114)
前記IFN−βは、IFN−β−1bである、項目108に記載の方法。
(項目115)
前記IFN−β治療剤は、免疫グロブリン分子の定常ドメインに対して融合させるIFN−βを含む、項目105〜114のいずれか1項に記載の方法。
(項目116)
前記免疫グロブリン分子は、ヒト免疫グロブリン分子である、項目115に記載の方法。
(項目117)
前記免疫グロブリン分子は、IgG1の重鎖である、項目116に記載の方法。
(項目118)
前記IFN−βは、配列番号14を含む、項目117に記載の方法。
(項目119)
前記IFN−β治療剤は、ペグ化IFN−βを含む、項目105〜118のいずれか1項に記載の方法。
(項目120)
前記IFN−β治療剤は、安定化剤を含む、項目105〜119のいずれか1項に記載の方法。
(項目121)
前記安定化剤が、酸性アミノ酸である、項目120に記載の方法。
(項目122)
前記安定化剤が、アルギニンである、項目121に記載の方法。
(項目123)
前記IFN−β治療剤は、およそ4.0および7.2との間のpHを有する、項目105〜122のいずれか1項に記載の方法。
(項目124)
前記IFN−β治療剤を、静脈内(i.v.)に投与する、項目105〜123のいずれか1項に記載の方法。
(項目125)
前記IFN−β治療剤を、筋肉内(i.m.)に投与する、項目105〜123のいずれか1項に記載の方法。
(項目126)
前記IFN−β治療剤を、皮下に投与する、項目105〜123のいずれか1項に記載の方法。
(項目127)
前記処置は、前記哺乳動物に対して様々な濃度の前記IFN−β治療剤を投与することを含む、項目105〜126のいずれか1項に記載の方法。
(項目128)
前記IFN−β治療剤を、およそ6MIUの濃度で毎週投与する、項目127に記載の方法。
(項目129)
前記IFN−β治療剤を、およそ3MIUの濃度で一週間に3回投与する、項目127に記載の方法。
(項目130)
前記処置は、前記哺乳動物における蛋白尿を減少させる、項目105〜129のいずれか1項に記載の方法。
(項目131)
前記処置は、糸球体細胞の増殖を減少させる、項目105〜130のいずれか1項に記載の方法。
(項目132)
前記処置は、糸球体の炎症を減少させる、項目105〜131のいずれか1項に記載の方法。
(項目133)
前記哺乳動物は、ヒトである、項目105〜132のいずれか1項に記載の方法。
(項目134)
前記哺乳動物は、慢性的な腎機能不全の存在より慢性腎不全を有するとして同定した哺乳動物である、項目133に記載の方法。
(項目135)
前記哺乳動物は、慢性腎不全を生じるウィルスを有す哺乳動物ではなく、また、該慢性腎不全がウィルスにより生じる哺乳動物でもない、項目105〜134のいずれか1項に記載の方法。
(項目136)
前記哺乳動物は、肝炎ウィルスを有している哺乳動物ではなく、また、前記慢性腎不全が肝炎ウィルスにより生じる哺乳動物でもない、項目135に記載の方法。
(項目137)
前記哺乳動物は、B型肝炎ウィルスまたはC型肝炎ウィルスを有している哺乳動物ではなく、また、前記慢性腎不全がB型肝炎ウィルスまたはC型肝炎ウィルスにより生じる哺乳動物でもない、項目136に記載の方法。
(項目138)
前記哺乳動物は、末期慢性腎不全または末期腎細胞癌を有さない、項目105〜137のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1−1】図1は、ヒンジ、ヒトIgGlFc(ZL5107)のCH2領域およびCH3領域に対して融合する、成熟した全長のヒトIFN−β(配列番号12)(配列番号4の第162番アミノ酸のグリシンは、システインにより置換される)に対し融合するVCAMシグナル配列から成る融合タンパク質のヌクレオチド配列(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号12)を示す。
【図1−2】図1−2は、図1−1のつづきである。
【図1−3】図1−3は、図1−2のつづきである。
【図2−1】図2は、成熟した全長のヒトIFN−β(配列番号12)(配列番号4の第162番アミノ酸のグリシンは、システインにより置換される);ヒンジ、ヒトIgGlFc(ZL6206)のCH2領域およびCH3領域に対して融合する、G4Sリンカー、に対し融合するVCAMシグナル配列から成る融合タンパク質のヌクレオチド配列(配列番号13)およびアミノ酸配列(配列番号14)を示す。
【図2−2】図2−2は、図2−1のつづきである。
【図2−3】図2−3は、図2−2のつづきである。
【図3】図3は、一日ごとに3×10ユニットのラットIFN−β、一日ごとに6×10ユニットのラットIFN−βまたはベクターのみ(「コントロール」)を用いて、0日から開始し一週間に6日間処置した、腎毒性腎炎(NTN)を有するラットの、7日、14日、21日、および28日目のタンパク尿のレベルを示す。
【図4】図4は、一日ごとに6×10ユニットのラットIFN−βまたはベクターのみ(「コントロール」)を用いて、0日から開始し一週間に6日間処置した、腎毒性腎炎(NTN)を有するラットの、7日、14日、21日、および28日目のタンパク尿のレベルを示す。
【図5】図5は、一日ごとに6×10ユニットのラットIFN−βまたはベクターのみ(「RAR」)を用いて、0日から7日まで、一週間に6日間処置した、腎毒性腎炎(NTN)を有するラットの、糸球体由来の増殖細胞の個数を示す。
【図6】図6は、一日ごとに6×10ユニットのラットIFN−βまたはベクターのみ(「RAR」)を用いて、0日から10日まで、一週間に6日間処置した、Thy1糸球体腎炎を有するラットの、7日目または10日目のタンパク尿のレベルを示す。
【図7】図7は、一日ごとに6×10ユニットのラットIFN−βまたはベクターのみ(「RAR」)を用いて、0日から10日まで、一週間に6日間処置した、Thy1糸球体腎炎を有するラットの、7日目または10日目のクレアチン除去のレベルを示す。
【図8】図8は、一日ごとに6×10ユニットのラットIFN−βまたはベクターのみ(「RAR」)を用いて、0日から10日まで、一週間に6日間処置した、Thy1糸球体腎炎を有するラットの、10日目の糸球体増殖数値を示す。
【図9】図9は、一日ごとに6×10ユニット、6×10ユニット、6×10ユニット、または6×10ユニットのラットIFN−βまたはベクターのみ(「コントロール」)を用いて処置した、ピューロマイシンアミノヌクレオシド腎障害を有するラットの、7日目および14日目のタンパク尿のレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、哺乳動物の糸球体腎炎の少なくとも特定の症状を、その哺乳動物に対するINF−βの投与により改善し得るという発見に少なくとも一部基づく。特に、タンパク尿、糸球体の細胞増殖および炎症は、IFN−βの投与により有意に減少したことがみられた。従って、本発明は、哺乳動物の糸球体腎炎を処置するための方法および組成物を提供する。
【0012】
(1.定義)
特許請求された本発明の内容をより明らかにかつ簡潔に示すために、以下に記載の詳細な説明および添付の特許請求の範囲において使用される特定の用語について、以下の定義を提供する。
【0013】
明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他のことを示さない限り、複数の対象を含む。
【0014】
「糸球体濾過速度」または「GFR」は、血清タンパク質に結合されておらず、糸球体を横切って自由に濾過され、そして腎細管によって分泌も再吸収もされない血漿保持物質の尿中へのクリアランス速度に比例する。したがって、本明細書中で使用される場合、GFRは好ましくは以下の等式によって定義される:
【0015】
【数1】

【0016】
ここで、Uconcはマーカーの尿中濃度であり、Pconcはそのマーカーの血漿濃度であり、そしてVは尿の流速(ml/分)である。必要であれば、GFRは体表面積について較正される。したがって、本明細書中で使用されるGFR値はml/分/1.73mの単位であるとみなされ得る。GFRの好ましい尺度はインスリンクリアランスであるが、この物質の濃度を測定することは困難であるので、クレアチニンクリアランスが臨床設定では代表的に使用される。例えば、平均サイズの健常ヒト男性(70kg、20〜40才)については、クレアチニンクリアランスにより測定される代表的なGFRは、およそ125ml/分(クレアチニンの血漿濃度0.7〜1.5mg/dL)であると予想される。比較できる平均サイズの女性については、クレアチニンクリアランスにより測定される代表的なGFRは、およそ115ml/分(クレアチニンレベル0.5〜1.3mg/dL)であると予想される。良好な健康状態の間、ヒトGFR値は約40才まで比較的安定であり、代表的には約40才からGFRは年齢とともに低下し始める。85才または90才まで生存している被検体については、GFRは40才の値の50%まで減少し得る。「予想されたGFR」または「GFRexp」の予測は、被験体の年齢、体重、性別、体表面積、および筋肉系の程度、ならびに血液検査により判定されるいくつかのマーカー化合物の血漿濃度(例えば、クレアチニン)の考慮に基づき提供され得る。したがって、例として、予想されるGFRまたはGFRexpは、以下のとおり見積もられ得る:
【0017】
【数2】

【0018】
この見積もりは、表面積、筋肉系の程度または体脂肪率のような因子を考慮していない。しかし、血漿クレアチニンレベルをマーカーとして使用することによって、この公式は、GFRを見積もる安価な手段としてヒト雄性について使用されてきた。クレアチニンは、横紋筋によって生成されることから、ヒト雌性被験体の予想されるGFRまたはGFRexpは、筋肉質量における予想される相違について考慮する0.85を乗じて同じ等式により見積もられる(Lemann,ら.(1990)Am.J.Kidney Dis.16(3):236−243を参照のこと)。
【0019】
「糸球体腎炎(glomerulonephritis)」、「腎炎」、「急性腎炎」および「糸球体腎炎(glomerular nephritis)」は、本明細書中において互換的に使用される。
【0020】
「IFN−β−1a」は、野生型ヒトIFN−βのアミノ酸配列を有しかつグリコシル化されたIFN−β分子を言う。
【0021】
「IFN−β−1b」は、野生型ヒトIFN−βのアミノ酸配列を有するIFN−β分子(第17番目のシステインは、セリンで置換される;第1番目のメチオニン(「開始メチオニン」)を欠いており、かつこの分子は、グリコシル化されない)をいう。
【0022】
「IFN−βの改変体」は、一以上の改変(例えば、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、アミノ酸の置換、翻訳後の改変)を有する野生型ヒトIFN−βタンパク質または、一以上の非天然のアミノ酸残基またはそれらとの間の結合を含む野生型ヒトIFN−βタンパク質をいう。IFN−βの一部分は、用語「IFN−βの改変体」に含まれる。「IFN−βの改変体の生物学的活性」は、腎不全(例えば、糸球体腎炎)の処置において少なくともいくつかの活性を有するIFN−β改変体をいう。IFN−βの改変体は、野生型IFN−βと比較して、例えば一以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換を有する天然に存在するIFN−β(つまり、天然に存在する変異体または多形性改変体)であり得るか、または非天然のIFN−βであり得る。
【0023】
「単離された」(「実質的に純粋な」と互換的に使用される)は、ポリペプチドに適用される場合、その起源または操作により、(i)発現ベクターの部分の発現産物として宿主細胞中に存在するか、または(ii)天然では連結しているタンパク質または他の化学的部分以外のタンパク質または他の化学的部分に連結しているか、または(iii)天然で生じない(例えば、少なくとも1つの疎水性部分を追加または付加することにより化学的に操作され、その結果、天然で見出されない形態で存在するタンパク質)、ポリペプチドを意味する。「単離された」はさらに、(i)化学的に合成されたか、または(ii)宿主細胞において発現され、そして結合タンパク質および混入タンパク質から精製された、タンパク質を意味する。この用語は一般に、天然では共に存在する他のタンパク質および核酸から分離されたポリペプチドを意味する。好ましくは、ポリペプチドはまた、そのポリペプチドを精製するために使用される、抗体またはゲルマトリクス(ポリアクリルアミド)のような物質から分離されている。「単離された」(「実質的に純粋な」と互換的に使用される)は、核酸に適用される場合、その起源または操作により、(i)天然では結合しているポリヌクレオチド(例えば、発現ベクターまたはその部分として宿主細胞中に存在する)と全く結合していないか、または(ii)天然では連結している核酸または他の化学的部分以外の核酸または他の化学部分に連結しているか、または(iii)天然では生じない、RNAまたはDNAポリヌクレオチド、ゲノムポリヌクレオチドの部分、cDNAまたは合成ポリヌクレオチドを意味する。「単離された」はさらに、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、インビトロで増幅されたか、(ii)化学的に合成されたか、(iii)クローニングにより組換え産生されたか、または(iv)(例えば切断およびゲル分離により)精製された、ポリヌクレオチド配列を意味する。
【0024】
核酸が、別の核酸配列と共に機能的な関係に置かれる場合、核酸は、別の核酸に対して「作動可能に連結される」。例えば、DNAがポリペプチドの分泌を担うタンパク質前駆体として発現された場合、プレ配列または分泌リーダーのためのDNA(例えば、シグナル配列またはシグナルペプチド)は、ポリペプチドをコードするDNAに対し作動可能に連結する;プロモーターまたはエンハンサーが、コード配列の転写に影響する場合、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列に対して作動可能に連結する;およびリボソームが、容易に翻訳を行えるように位置する場合、リボソーム結合部位は、コード配列に対して作動可能に連結する。一般的に、「作動可能に連結される」は、結合されたDNA配列は、連続しかつ、例えば、分泌リーダーの場合は、連続しかつ読み取り段階にあることを意味する。結合することは、うってつけの制限部位でライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたは合成オリゴヌクレオチドリンカーが、慣行的な実務に従い使用され得る。
【0025】
「パーセント同一性」または「パーセント類似性」とは、2つのポリペプチド、2つの分子間、または2つの核酸との間の配列類似性をいう。2つの比較された配列の両方における位置が、同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占有されている場合、それぞれの分子は、その位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列によって共有される整合するかまたは同一な位置の数を、比較される位置の数によって除算し、100を掛けたものの関数である。例えば、2つの配列における10の位置のうちの6が整合するか、または同一である場合、2つの配列は、60%相同である。例示として、DNA配列CTGACTおよびCAGGTTは、50%の相同性を共有する(6の総位置のうちの3が整合する)。一般的に、2つの配列が、最大の相同性を生じるようにアラインされた場合に比較がなされる。このようなアラインメントは、例えば、以下により詳述に記載するKarlinおよびAltschulの方法を使用して提供され得る。核酸をいう場合、「パーセント相同性」および「パーセント同一性」は、交換可能に使用され、一方ポリペプチドをいう場合、「パーセント相同性」は、類似性の程度をいい、他のアミノ酸の保存された置換を示すアミノ酸は、これら他のアミノ酸と同一であると考えられる。参照配列中の残基の「保存された置換」は、例えば、類似のサイズ、形状、電荷、化学的特性(共有結合または水素結合などを形成する能力を含む)を有する対応する参照残基に物理的にかまたは機能的に類似のアミノ酸への置換である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffら、5:Atlas of Protein Sequence and Structure,5:Suppl.3,chapter 22:354−352,Nat.Biomed.Res.Foundation,Washington,D.C.(1978)における「受容される点変異」について規定される基準を満たすものである。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の「パーセント相同性」または「パーセント同一性」は、KarlinおよびAltschul(Proc.Nat.Acad.Sci.,USA 90:5873(1993))で改変されたKarlinおよびAltschul(Proc.Nat.Acad.Sci.,USA 87:2264(1990))のアラインメントアルゴリズムを使用して決定される。このようなアルゴリズムは、Altschulら(J.Mol.Biol.215:403(1990))のNBLASTまたはXBLASTプログラムに組み込まれている。本発明の核酸と相同なヌクレオチド配列を入手するためには、BLAST検索は、NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)を用いて実行される。参照ポリペプチドと相同なアミノ酸配列を入手するためには、BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いて実行される。比較のためにギャップを有するアラインメントを得るためには、Altschulら(Nucleic Acids Res.,25:3389(1997))に記載されるギャップド(gapped)BLASTが使用される。BLASTおよびギャップドBLASTを使用する場合、それぞれのプログラム(XBLASTおよびNBLAST)の初期値パラメータが使用される(http://www/ncbi.nlm.nih.govを参照)。
【0026】
ある量のIFN−β治療剤の投与が、糸球体腎炎もしくは慢性腎不全であるかまたはその危険にある被検体(例えば、動物モデルまたはヒト患者)に投与されるとき、腎機能の標準的なマーカーの臨床的に有意な改善を引き起こすに十分である場合、そのIFN−β治療剤は「治療効力」を有すると呼ばれ、その量は「治療的に有効」であると呼ばれる。腎機能のこのようなマーカーは医学文献において周知であり、そしてBUNレベルの増加率、血清クレアチニンの増加率、BUNの静的測定値、血清クレアチニンの静的測定値、糸球体濾過速度(GFR)、BUN/クレアチニン比、ナトリウム(Na+)の血清濃度、クレアチニンの尿/血漿比、尿の尿素/血漿比、尿の重量オスモル濃度、日々の尿量などを含むがこれらに限定されない(例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine,第13版、Isselbacherら編、McGraw Hill Text,New York中のBrennerおよびLazarus(1994);Internal Medicine,第4版、J.H.Stein編、Mosby−Year Book,Inc.St.Louis中のLukeおよびStrom(1994)を参照)。好ましい実施形態において、IFN−β治療剤の治療的に有効な量の投与は、タンパク尿、糸球体の細胞増殖の減少または糸球体内の炎症細胞(例えば、CD8T細胞およびマクロファージ)の存在の減少を招く。
【0027】
(2.IFN−β治療剤)
本発明に従って使用され得るIFN−β治療剤は、野生型IFN−βおよびそれらの生物学的活性改変体(例えば、天然に存在する改変体および非天然の改変体)を含む。野生型天然ヒトIFN−βのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、配列番号1および配列番号2にそれぞれ示し、これらは、GenBank Accessionの第M28622および第AAA36040にそれぞれ、同一である。これらのIFNはまた、例えば、Seghal(1985)J.Interferon Res.5:521に記載される。全長ヒトIFN−βタンパク質は、187アミノ酸の長さであり、配列番号1のコード配列はヌクレオチド76〜639に対応する。このシグナル配列は、アミノ酸の1〜21に対応する。このIFN−βの成熟形態のアミノ酸配列は、アミノ酸の22〜187(配列番号1のヌクレオチドの139〜639)に対応する。このような配列をコードする、成熟ヒトIFN−βタンパク質配列および成熟ヒトIFN−βヌクレオチド配列を、配列番号4および配列番号3として、それぞれ示す。
【0028】
哺乳動物細胞内で産生されるIFN−βは、グリコシル化される。天然に存在する野生型IFN−βは、配列番号4の成熟ポリペプチドの残基80(アスパラギン80)または配列番号2の成熟ポリペプチドの残基101(アスパラギン101)で、グリコシル化される。
【0029】
IFN−β治療剤はまた、非ヒトIFN−β(例えば、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス;または鳥類もしくは両生類)を含む。これらの種に由来するIFN−β配列は、GenBankおよび/または出版物から得ることが可能であり、または別の種由来のIFN−β遺伝子を用いた低ストリンジェンシーなのハイブリダイゼーションにより単離された核酸から決定され得る。
【0030】
野生型INF−βタンパク質の改変体は、野生型IFN−β(例えば、配列番号2または配列番号4を有するヒトIFN−β)に対し、少なくともおよそ70%、80%、90%、95%、98%または99%同一または相同であるアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。改変体は、一以上のアミノ酸の置換、欠失または付加を有し得る。例えば、野生型IFN−βタンパク質の生物学的活性フラグメントが、使用可能である。そのようなフラグメントは、タンパク質のC末端またはN末端において1、2、3、5、10または20までのアミノ酸の欠失、付加または置換を有し得る。改変体はまた、1、2、3、5、10または20までのアミノ酸の置換、欠失または付加を有し得る。いくつかの改変体は、およそ50、40、30、25、20、15、10、7または5未満のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有し得る。置換は、天然に存在するアミノ酸またはそれらの類似体(例えば、D−立体異性体アミノ酸)においてあり得る。
【0031】
また、天然に存在するIFN−β(例えば、配列番号1もしくは配列番号3、またはそれらの相補体により表される)をコードする核酸に対して、ストリンジェンシーな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるIFN−β改変体が本発明の範囲内である。DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシーな条件、例えば、およそ45℃で6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)(その後続く、50℃で2.0×SSCの洗浄)は、当業者に公知であり、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y. (1989),6.3.1−6.3.6に見出され得る。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃でおよそ2.0×SSCの低ストリンジェンシーから50℃で0.2×SSCの高ストリンジェンシーより選択され得る。さらに、洗浄工程における温度を、室温(およそ22℃)での低ストリンジェンシーな条件からおよそ65℃での高ストリンジェンシーな条件まで高め得る。温度および塩の両方は、変化し得、または塩濃度の温度は、他の不定要素を変更している間、一定に保持され得る。好ましい実施形態において、IFN−β改変体をコードする核酸は、中程度にストリンジェンシーな条件(例えば、およそ2.0×SSCおよびおよそ40℃での洗浄で、およびおよそ2.0×SSCおよびおよそ40℃での洗浄を含む)下で、配列番号1もしくは配列番号3またはこれらの相補体のうちの一つに対してハイブリダイズする。特に好ましい実施形態において、IFN−β改変体をコードする核酸は、高ストリンジェンシーな条件(例えば、およそ0.2SSCおよびおよそ65℃での洗浄で、およびおよそ0.2SSCおよびおよそ65℃での洗浄を含む)下で、配列番号1もしくは配列番号3またはこれらの相補体のうちの一つに対して結合する。
【0032】
模範的な改変は、保存的な改変(タンパク質の二次構造および三次構造への最小の影響を有する)である。模範的な保存的な置換は、Dayhoff、the Atlas of Protein Sequence and Structure 5(1978)により、およびArgos、EMBO J.,8,779−785(1989)により記載される保存的な置換を含む。例えば、アミノ酸は、保存的な変化を表す以下の群:ala、pro、gly、gln、asn、ser、thr;cys、ser、tyr、thr;val、ile、leu、met、ala、phe;lys、arg、his;およびphe、tyr、trp、hisのうちの一つに属する。
【0033】
他の改変は、必ずしも保存的な置換を表すわけではなくあり得る別のアミノ酸への一つのアミノ酸の置換を含む。例えばIFN−βの三次元構造に本質的に影響を与えない置換が、なされ得る。非グリコシル化のヒトIFN−βの三次元構造は、例えば、Radhakrishnanら、(1996)Structure 4:1453に記載され、ならびにグリコシル化されたヒトIFN−βの三次元構造は、例えば、Karpusasら、(1997)PNAS 94:11813に記載される。本質的に、IFN−βは、五つのらせん体:配列番号4のおよそアミノ酸2〜アミノ酸22から成るへリックスA;配列番号4のおよそアミノ酸51〜アミノ酸71から成るへリックスB;配列番号4のおよそアミノ酸80〜アミノ酸107から成るへリックスC;配列番号4のおよそアミノ酸118〜アミノ酸136から成るへリックスD;配列番号4のおよそアミノ酸139〜アミノ酸162から成るへリックスE(Karpusasら,前出)を含む。へリックスA、へリックスB、へリックスCおよびへリックスEは、左巻き、2型4−へリックス束を形成する。ここには、長いオーバーハンドループ、へリックスAならびにへリックスBに結合するABループおよびへリックスの残りと結合する三つのより短いループ(BC、CDおよびDEと呼ばれる)(Karpusaら,前出)が存在する。これまでの研究は、IFN−β分子のN末端、C末端およびグリコシル化されたCへリックス領域は、レセプター結合部位に位置しないことを示す(WO00/23472およびUSSN09/832,659参照)。従って、これらの領域内の変異は、IFN分子の生物学的活性に、有意な悪影響を与え得ることはなかった。また、へリックスC内の変異(成熟ヒトIFN−βのアミノ酸81、アミノ酸82、アミノ酸85、アミノ酸86およびアミノ酸89)は、野生型IFN−βと比較してより高い抗ウィルス活性を有する分子を生じることがこれまでに示された(WO00/23472およびUSSN09/832,659参照)。同様に、へリックスA内の変異(成熟ヒトIFN−βのアミノ酸2、アミノ酸4、アミノ酸5、アミノ酸8およびアミノ酸11)およびCDループ内の変異(アミノ酸110、アミノ酸11、アミノ酸113、アミノ酸116およびアミノ酸119)は、天然に存在する野生型IFN−βと比較して、レセプターに対しより高い結合活性およびより高い抗ウィルス活性および坑増殖活性を有することが示された(WO00/23472およびUSSN09/832,659参照)。
【0034】
他の好ましい修飾または置換は、分子間の架橋結合形成または不正確なジスルフィド結合形成の部位を除去する。例えば、IFN−βは、三つのcys残基(配列番号4の野生型部位17、部位31および部位141)を有するとして公知である。一つのIFN改変体は、部位17のcys(C)が、ser(S)により置換されたIFNである(例えば、米国特許第4,588,585号に記載される)。他のIFN−β改変体は、例えば、部位17でcys(C)を置換した一以上のser(S)およびphe(F),trp(W),tyr(Y)またはhis(H)、好ましくはphe(F)で置換された部位101のval(V)を有するIFN−β改変体を含む(例えば配列番号4有する野生型IFN−βに基づいて番号付けした場合)(例えば、米国特許第6,127,332号に記載される)。他の好ましい改変体は、野生型IFN−βの配列(例えば、野生型IFN−βに基づいて番号付けした場合、部位101のval(V)が、phe(F)、tyr(Y)、trp(W)、his(H)またはphe(F)により置換された配列番号4)を有するポリペプチドを含む(例えば、また米国特許第6,127,332号に記載される)。
【0035】
他のIFN−β改変体は、開始メチオニン(例えば、配列番号4のメチオニン1)を欠いている成熟IFN−β分子である。模範的なIFN−β改変体は、開始メチオニンを欠き、かつ少なくとも一つのアミノ酸置換(例えば、成熟形態の17番の位置において)を有する(米国特許第4,588,585号に開示されるように)。
【0036】
IFN−β分子はまた、一以上の誘導体化したアミノ酸(天然に存在する側鎖または、天然に存在する末端基は、化学反応により改変される天然のアミノ酸または非天然のアミノ酸)での一以上のアミノ酸の置換により改変され得る。このような改変は、例えば、γ−カルボキシル化、β−カルボキシル化、ペグ化、硫酸化、スルホン化、リン酸化、アミド化、エステル化、N−アセチル化、カルボベンジル化、トシル化、および当該分野で公知である他の改変を含む。
【0037】
他の改変は、アミノ酸類似体または誘導体化したアミノ酸(適切な官能基を伴う改変体側鎖を有するアミノ酸類似体同様に、環化のためカルボキシル基、アミノ基または他の反応性前駆体官能基をさらに提供しながら側鎖を伸長し、または短縮している)の使用を含む。例えば、本発明の化合物は、アミノ酸類似体(例えば、シアノアラニン、カナバニン、ジエンコル酸、ノルロイシン、3−ホスホセリン、ホモセリン、ジヒドロキシフェニルアラニン、5−ヒドロキシトリプトファン、1−メチルヒシチジン、3−メチルヒシチジン、ジアミノピメリン酸、オルニチン、またはジアミノ酪酸を含み得る。他の天然に存在するアミノ酸代謝産物または天然に存在するアミノ酸前駆体(本明細書中において適切な側鎖を有する)は、当業者により認識されかつ、本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
他のIFN−β改変体は、逆の(reversed)ペプチド配列、または逆の(retro)ペプチド配列を含む。「逆の(reversed)」ペプチド配列または「逆の(retro)」ペプチド配列は、アミノ酸骨格内の正常なカルボキシル−アミノ方向のペプチド結合形成が、一般的な左側から右側方向へ読む場合に、ペプチド結合のアミノ部分が、カルボニル部分に(後続するのではなく)先行するような、これらとは逆のものである、共有結合したアミノ酸残基(またはそれらの類似体もしくはそれらの擬似物)の全長配列の一部をいう。一般的に、Goodman,M.およびChorev,M. Accounts of Chem.Res.1979,12,423を参照。本明細書中に記載する逆向きのペプチドは、(a)一以上のアミノ末端残基が、逆([rev])向きに変換(それにより、分子の最も左側の位置に第二の「カルボキシ末端」を生じる)したもの、および(b)一以上のカルボキシ末端残基は、逆([rev])向きに変換(それにより、分子の最も右側の位置に第二の「アミノ末端」を生じる)したもの、を含む。ペプチド(アミド)結合は、正常な向きの残基および逆向きの残基との間の境界面において形成され得ない。それゆえに、本発明の特定の逆のポリペプチドは、逆向きペプチド(逆向きアミド)結合を利用して配列の二つの連続する部分に結合する適切なアミノ酸擬似物部分を使用することにより形成され得る。上記事例(a)においては、ジケト化合物の中央残基は、ペプチド擬似構造を達成するための二つのアミド結合を伴う構造に結合するために都合よく利用され得る。上記事例(b)においては、ジアミノ化合物の中央残基は同様に、ペプチド擬似構造を形成するための二つのアミド結合を伴う構造に結合するために有益である。このようなポリペプチドにおける逆向きの結合は一般的に、さらに、非逆向きペプチドの空間的な方向と類似する側鎖の空間的方向を維持するために、逆向きアミノ酸残基の鏡像異性構造の逆転が必要とされる。ペプチドの逆位におけるアミノ酸の構造は好ましくは(D)であり、および非逆位の構造は、好ましくは(L)である。結合活性を最適化するために適切である場合、反対の構造または混合した構造は、好ましい。ポリペプチドの改変はさらに、例えば、米国特許第6,399,075号に記載される。
【0039】
IFN−β治療剤はまた、異種ポリペプチドに対して融合するIFN−βタンパク質およびそれらの改変体(例えば、成熟タンパク質)を含む。異性ポリペプチドは、例えば、IFN−βタンパク質の半減期を延長する目的または、IFN−βタンパク質の産生を改善する目的で、加えられ得る。典型的な異性ポリペプチドは、免疫グロブリン(Ig)分子またはそれらの一部分(例えば、Ig分子の軽鎖または重鎖の定常ドメイン)を含む。一つの実施形態において、IFN−βタンパク質およびそれらの改変体は、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、もしくはその両方のヒンジおよび定常領域の全部または一部に融合されるか、またはそうでなければ、結合される。したがって、本発明は、以下を含む分子を特徴とする:(1)IFN−βタンパク質部分(例えば、IFN−βまたはそれらの改変体)、(2)第二のペプチド(例えば、IFN−β部分の可溶性またはインビボでの寿命を増大するもの、例えば、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーまたはそのフラグメントもしくは部分、例えば、IgGの部分またはフラグメント、例えば、ヒトIgG1重鎖定常領域、例えば、CH2、CH3、およびヒンジ領域)。具体的には、「IFN−β/Ig融合物」は、免疫グロブリン鎖のN−末端に結合した生物学的に活性なIFN−β部分を含むタンパク質である。IFN−β/Ig融合物の種は、免疫グロブリンの定常ドメインの少なくとも一部に連結したIFN−β部分を含むタンパク質である「IFN−β/Fc融合物」である。好ましいFc融合物は、重鎖免疫グロブリン鎖のC末端ドメインを含有する抗体のフラグメントに結合したIFN−β部分を含む。
【0040】
従って、一つの実施形態において、融合タンパク質は、一般式X−Y−Z(Xは、IFN−β、またはそれらの部分または改変体のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり;Yは、任意のリンカー部分であり;およびZは、部分Xのインターフェロンβの部分以外の、少なくともポリペプチドの部分を含むポリペプチドである)を有する。他の実施形態において、融合タンパク質は、式Z−Y−X(非IFN−βポリペプチドは、IFN−βポリペプチドまたはIFN−βの部分またはそれらの改変体のN末端部分に融合するリンカーのN末端部分に融合する)を有する。部分Zは、免疫グロブリン様ドメインを含むポリペプチドの部分であり得る。このような他のポリペプチドの例として、CD1、CD2、CD4およびクラスIおよびクラスIIの主要組織適合性抗原のメンバーが挙げられる。そのようなポリペプチドの例として、米国特許第5,565,335号(Caponら)を参照。
【0041】
部分Zは例えば、多数のヒスチジン残基の、または好ましくは免疫グロブリンのFc領域、(本明細書中において「Fc」は、免疫グロブリン重鎖のC末端ドメインを含む抗体のフラグメントとして定義される)を含み得る。
【0042】
部分Yは、IFN−β部分が、その生物学的活性を保持することを可能とする任意のリンカーであり得る。部分Yは、一つのアミノ酸の長さまたは少なくとも二つのアミノ酸の長さであり得る。Yはまた、およそ2個からおよそ5個のアミノ酸;およそ3個からおよそ10個のアミノ酸の長さまたは10個またはそれ以上のアミノ酸であり得る。好ましい実施形態において、Yは、例えば、ヌクレオチド配列GGCGGTGGTGGCAGC(配列番号5)によりコードされる、GlyGlyGlyGlySer(配列番号6)からなるかまたは含む。Yはまた、例えば、GACGATGATGACAAG(配列番号7)によりコードされるエンテロキナーゼ認識部位、例えば、AspAspAspAspLys(配列番号8)からなるかまたは含む。別の実施形態においては、Yは、例えば、AGCTCCGGAGACGATGATGACAAG(配列番号9)によりコードされる、SerSerGlyAspAspAspAspLys(配列番号10)からなるかまたは含む。
【0043】
さらに、IFN−β部分(X)と第二の、非IFN−β部分Z(例えば、免疫グロブリンのFc領域)との間の結合はまた、X部分およびZ部分がそれらのそれぞれの活性を本質的に保持する限り、二つの分子を共に結合させる化学反応により影響を受け得る。この化学的結合は、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、および錯体化のような複数の化学的メカニズムを含み得る。IFN−β部分およびZ部分との間の共有結合を生じるための代表的な結合因子(すなわち、一般式におけるリンカー「Y」)は、チオエステル、カルボジイミド、スクシイミドエステル、ジイソシアネート(例えば、トリレン−2,6−ジイソシアネート)、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミン(例えば、ビス−(p−ジアゾニウム−ベンゾイル)−エチレンジアミン)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデート)、およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)のような有機体化合物を含み得る。この列挙は、当該分野で公知である様々なクラスの化学的結合因子を余すところなく挙げたものを意図するものではない。これらの多くは、市販されている(例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP),1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC);4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)−トルエン(SMPT:Pierce Chem.Co.,カタログ番号第21558G号))。
【0044】
好ましいIFN−β/Ig融合タンパク質は、ヒトIgG1Fc(ZL5107)に対して融合する、配列番号12(全長の成熟型ヒトIFN−β(すなわち、配列番号4)を含む)より構成されるかまたは、配列番号12を含む(WO00/23472およびUSSN09/832,659参照)(図1参照)。対応するヌクレオチド配列は、配列番号11に記載される。ヒトIFN−βをコードするDNAは、ヌクレオチドの三つ揃い568〜570(アルギニンをコードするAAC)で終了し、そしてヒトIgG1の定常領域をコードするDNAは、配列番号11のヌクレオチド番号574を発端に三つ揃い(アスパラギン酸をコードするGAC)で開始する。
【0045】
別の好ましいIFN−β/Ig融合タンパク質は、配列番号14に記載され、かつ配列番号13によりコードされる(WO00/23472およびUSSN09/832,659参照)(図2参照)。この後者の融合タンパク質は、G4Sリンカー(G4Sリンカー自体ヒトIgG1Fc(ZL6206)に結合する)に対して結合するヒトIFN−βからなる。G4Sリンカー(配列番号7のヌクレオチド571からヌクレオチド585までびよりコードされる)は、アミノ酸配列GGGGS(配列番号9)より成る。これらタンパク質を産生するための方法は、WO00/23472およびUSSN09/832,659に記載される。
【0046】
好ましい実施形態において、IFN−βポリペプチドは、そのC末端を介して少なくとも免疫グロブリンのFc領域の部分と融合する。IFN−βは、アミノ末端部分を形成し、そしてFc領域は、カルボキシ末端部分を形成する。これら融合タンパク質において、Fc領域は好ましくは、定常ドメインのヒンジ領域ならびにCH2ドメインおよびCH3ドメインに限定される。これら融合体におけるFc領域はまた、ヒンジ領域の部分(この部分は分子間のジスルフィド架橋を形成することが可能である)、およびCH2ドメインおよびCH3ドメイン、またはこれらと機能的に等価であるものに限定され得る。これら定常領域は、任意の哺乳動物の供給源(好ましくはヒト)に由来し得、そしてIgA、IgD、IgM、IgEおよびIgGl、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意の適切なクラスおよび/またはアイソタイプ由来であり得る。
【0047】
Ig融合体をコードする組換え核酸分子は、当該分野で公知である任意の方法(Maniatisら.,1982,Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N. Y.)により得られ得るか、または公共に利用可能なクローンから得られ得る。遺伝子(免疫グロブリンの重鎖の定常領域または軽鎖の定常領域をコードする)の調製のための方法は、例えば、Robinson,R.ら,PCT出願公開第WO87/02671により、教示される。インターフェロン分子またはインターフェロンフラグメントをコードするcDNAは、重鎖Igの定常領域をコードするcDNA配列に対し直接的に結合し得るか、または、リンカー配列を介して結合し得る。本発明のさらなる実施形態において、組換えベクター系が、合成ヒンジ領域を伴う正しい読み枠にインターフェロンβをコードする配列を適合させるために創造され得る。さらに、組換えベクター系の一部として、RNA切断/ポリアデニル化部位および下流配列を含む免疫グロブリン遺伝子の3’隣接領域に対応する核酸を含むことが望ましくあり得る。さらに、組換えベクターを用いて形質転換させた細胞からの融合分子の分泌を容易にするために、免疫グロブリン融合タンパク質をコードする配列の上流のシグナル配列を操作することが望ましくあり得る。
【0048】
本発明は、融合タンパク質を含む、二量体融合分子および単量体分子または多量体分子を提供する。このような多量体は、IgM五量体またはIgA二量体のように、普通は多価の、Ig分子のFc領域または、Fc領域の部分を使用することにより、創造され得る。J鎖ポリペプチドは、IgM五量体およびIgA二量体の形成および安定化に必要とされ得ると理解される。代替的に、IFN−β融合タンパク質の多量体は、タンパク質AのようにIg分子のFc領域に対する親和性を有するタンパク質を使用することにより形成され得る。例えば、複数のIFN−β/免疫グロブリン融合タンパク質は、タンパク質A−アガロースビーズに対して結合し得る。
【0049】
これらの多価形態は、多数のインターフェロンβレセプター結合部位を有するので、有益である。例えば、二価可溶性IFN−βは、リンカー領域(部分Y)により分けられる、配列番号4のアミノ酸1からアミノ酸166までの二つの直列的な繰り返し配列(または配列番号3の核酸番号1から核酸番号498によりコードされる直列的な繰り返し配列)(一般式における部分X)より構成され得、繰り返し配列は、少なくとも、免疫グロブリンの定常ドメインの部分(部分Z)と結合する。代替的な多価形態はまた、例えば、従来の結合技術を使用して、任意の臨床的に受容可能なキャリア分子(Ficoll、ポリエチレングレコールまたはデキストランから成る群より選択されるポリマー)にIFN−β/Ig融合体を化学的に結合することにより、構成され得る。代替的に、IFN−βは、ビオチンに対して化学的に結合し得、そしてビオチン−インターフェロンβFc結合体は次いで、アビジンに対して結合し得、結果として四価のアビジン/ビオチン/インターフェロンβ分子を得る。IFN−β/Ig融合体はまた、ジニトロフェノール(DNP)またはトリニトロフェノール(TNP)に対し共有結合し得、そして結果として生じた結合体を抗DNPまたは抗TNP−IgMを用いて、沈降させる(インターフェロンβレセプター結合部位に対する10個の原子価を伴う十量体の結合体を形成するため)。
【0050】
本発明のタンパク質の誘導体はまた、生物学的活性を保持する主要タンパク質の様々な構造式を含む。イオン化可能アミノ基およびイオン化可能カルボキシル基の存在に起因して、例えば、IFN−βタンパク質およびその改変体は、酸性塩または塩基性塩の形状にあり得るか、あるいは、中性の形状で存在し得る。個々のアミノ酸残基はまた、酸化または還元により改変され得る。さらに、主要アミノ酸構造(N末端および/またはC末端を含む)またはIFN−βのグリカンは、他の化学的部分(例えば、グリコシル基、ポリアルキレングリコールポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)、脂質、リン酸塩、アセチル基等)を有する共有結合的な結合体または集合性の結合体の形成によりまたは、アミノ酸配列の改変体を創造することにより、改変(「誘導体化」)され得る。
【0051】
他のIFN−β/Igの誘導体は、他のタンパク質またはポリペプチド(例えば、付加的なN末端またはC末端として組み換え培養内での合成による)との、インターフェロンβまたはそのフラグメントの共有結合的な結合体または集合性の結合体を含む。例えば、結合体化したペプチドは、タンパク質(タンパク質合成の部位から細胞膜または細胞壁の内側または外側機能部位への翻訳と同時のまたは翻訳後の直接的なタンパク質の移行)のN末端領域におけるシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列であり得る(例えば、酵母α因子リーダー)。例えば、シグナルペプチドは、IFN−βのシグナルペプチド、すなわち、配列番号2のアミノ酸1〜アミノ酸21であり得、配列番号1のヌクレオチド1〜ヌクレオチド138に対応する。シグナルペプチドはまた、VCAMのシグナルペプチド、すなわち、配列番号12のアミノ酸1〜アミノ酸24(配列番号11のヌクレオチド1〜ヌクレオチド72によりコードされる)であり得る。
【0052】
異性ポリペプチド(例えば、ペプチド)または他の分子をまた、IFN−β治療剤の精製において標識として、または補助するものとして使用し得る。このようなペプチドは、当該分野で周知である。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドのマーキングおよび/または精製を可能とするマーカー配列(また、本明細書中においては、「タグペプチド」をコードする「タグ配列」という)に対してインフレームで融合し得る。好ましい実施形態において、マーカー配列は、ヘキサヒスチジンタグ(例えば、PQE−9ベクターにより供給される)である。多数の他のタグペプチドが、市販されている。他の頻繁に使用されるタグは、myc−エピトープ(例えば、Ellisonら.(1991)JBiol Chem 266:21150−21157を参照)(c−mycから10残基の配列を含む)、pFLAG系(International Biotechnologies,Inc.)、pEZZ−タンパク質A系(Pharmacia, NJ)、およびインフルエンザ菌血球凝集素タンパク質の16アミノ酸部分を含む。さらに、任意のポリペプチドが、試薬(例えば、タグポリペプチドと特異的に相互作用する抗体)が、市販されており、または調製もしくは同定され得る限りタグとして使用され得る。
【0053】
一つの実施形態において、IFN−βタンパク質またはその改変体は、N末端またはC末端において、以下のペプチド:HisHisHisHisHisHis(配列番号16)(ヌクレオチド配列CATCATCATCATCATCAT(配列番号15)によりコードされ得る);SerGlyGlyHisHisHisHisHisHis(配列番号18)(ヌクレオチド配列TCCGGGGGCCATCATCATCATCATCAT(配列番号15)によりコードされ得る)およびSerGlyGlyHisHisHisHisHisHisSerSerGlyAspAspAspAspLys(配列番号:20)(ヌクレオチド配列TCCGGGGGCCATCATCATCATCATCATAGCTCCGGAGACGATGATGACAAG(配列番号19)によりコードされ得る)の一つと融合する。
【0054】
インターフェロンβのアミノ酸配列はまた、ペプチドAspTyrLysAspAspAspAspLys(DYKDDDDK)(配列番号21)(Hoppら.,Bio/Technology 6:1204,1988)に対して結合し得る。後者の配列は、高い抗原性であり、かつ特異的なモノクローナル抗体により可逆的に結合されるエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能とする。この配列はまた、Asp−Lys対合のすぐ直後の残基においてウシ粘膜エンテロキナーゼにより特異的に切断される。
【0055】
別の実施形態において、IFN−β治療剤は、アルブミンタンパク質、それらの改変体またはそれらの部分に対して融合するIFN−βタンパク質またはそれらの改変体を含む。このような融合タンパク質は、例えば、WO01/77137に記載されるように、創造され得る。
【0056】
IFN−β治療剤はまた、ポリペプチドではない分子を含み得る。例えば、IFN−βタンパク質またはそれらの改変体は、ポリマー(例えば、生体分解性のポリマー)に対して、共有結合的にまたは非共有結合的に結合し得る。例えば、IFN−βタンパク質またはそれらの改変体は、ペグ化(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)に対して結合する)され得る(WO 00/23114に記載)。
【0057】
本発明の広範な範囲内において、単一ポリマー分子は、IFN−βと結合するために使用され得るが、しかしまた、一より多くのポリマー分子が、同様に結合し得ることも予期される。結合体化するポリマーは、任意の基、部分、または他の結合される種(最終用途の適用に対して適切なように)を使用し得ることを認識し得る。例示により、いくつかの用途において、ポリマーにUV−分解耐性もしくは抗酸化または他の性質もしくは特徴を与える機能的部分に対してポリマーを共有結合することが有利であり得る。さらなる例示として、いくつかの用途において、ポリマーの性質を反応性または架橋可能とし、結合体化した物質全体の様々な性質もしくは特徴を高めるためにポリマーを官能基化することが有利であり得る。従って、ポリマーは、任意の官能基、繰り返し化学基、結合、または他の構成構造(意図される目的のための結合体化したIFN−β組成物の効力を除去しない)を含み得る。
【0058】
IFN−βは、最も好ましくは、ポリマー上の末端反応基を介して結合されるが、結合はまた、非末端反応基からの分枝であり得る。反応基を伴うポリマーは、本明細書中において「活性化ポリマー」と称される。反応基は、タンパク質上の遊離アミノ基または他の反応基と選択的に反応する。活性化ポリマーは、結合が、任意の利用可能なIFN−βアミノ基(例えば、リジンのαアミノ基またはεアミノ基)において生じ得るように反応する。遊離したカルボキシル基(適切に、活性化されたカルボニル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、酸化炭水化物部分およびIFN−β(利用可能な場合)のメルカプト基)はまた、結合部位として使用され得る。
【0059】
ポリマーは、IFN−β分子もしくはそれらの改変体または他のアミノ酸(IFN−β分子に対して直接的にもしくは間接的に結合する)上のどこにでも結合し得るが、ポリマー結合のための最も好ましい部位は、IFN−β分子のN末端である。第2の部位は、C末端またはC末端付近であり、糖部分を介する。そのため、本発明は、最も好ましい実施形態として:(i)IFN−βまたはそれらの改変体のN末端結合のポリマー結合体;(ii)IFN−βまたはそれらの改変体のC末端結合のポリマー結合体;(iii)ポリマー結合体の糖結合結合体;(iv)ならびに、IFN−βタンパク質またはそれらの改変体のN−、C−および糖結合ポリマー結合体を予期する。
【0060】
一般に、1モルのタンパク質ごとにおよそ1.0モルの活性化ポリマーからおよそ10モルの活性化ポリマーまで(タンパク質濃度に依存する)を、使用する。最終容量は、産物の非特異的な改変を最小限にする間に、反応の程度を最大限にする量および、同時に、タンパク質の半減期(可能である場合)を最も効果的にする間の化学的性質(最適な活性を維持する)を特徴付ける量との間の平均である。好ましくは、タンパク質の生物学的活性の少なくともおよそ50%が保持され、そして最も好ましくは、100%が、保持される。
【0061】
反応は、不活性ポリマーと生物学的活性物質とを反応させるために使用される任意の適切な方法により生じ得る(N末端におけるαアミノ基上に反応基がある場合に、好ましくはおよそpH5〜7で)。一般にこの工程は、活性ポリマー(少なくとも一つの末端ヒドロキシル基を有し得る)を調製する工程、およびその後の、処方に適した可溶性タンパク質を産生するために活性化ポリマーとタンパク質を反応させる工程を含む。上記の改変反応は、複数の方法(一以上の工程を包含し得る)により、実施され得る。
【0062】
上記したように、本発明の最も好ましい実施形態においては、ポリマーへの結合の際にIFN−βのN末端を利用する。適切な方法は、N末端が改変されたIFN−βを選択的に得るために利用可能である。一つの方法は、IFN−β上の誘導体化のため利用可能である還元的アルキル化法(異なるタイプの主要アミノ基(リシン上のεアミノ基対N末端メチオニン上のアミノ基)の異なる反応性を利用する)により例示される。適切な選択条件下において、カルボニル基含有ポリマーによるN末端でのIFN−βの実質的に選択的な誘導体化を達成し得る。反応は、IFN−βのリシン残基のεアミノ基およびIFN−βのN末端残基のαアミノ基との間のpKa差を利用し得るpHで実施される。化学反応のこのタイプは、当業者に周知である。
【0063】
例えば、この選択性が、PEGアルデヒドポリマーが、シアノホウ化水素ナトリウム存在下でIFN−βと反応する条件下において、低いpH(一般的に5〜6)で反応が実施されることにより維持される反応スキームが使用され得る。PEG−IFN−βの精製およびSDS−PAGE、MALDI質量分析およびペプチド配列/マッピングを用いた分析の後、N末端がPEG部分により特異的に標的化されたIFN−βが生成された。
【0064】
IFN−βの結晶体構造は、N末端およびC末端が互いに近接していることを示す(Karpusasら,1997,Proc.Natl.Acad.Sci.94:11813−11818)。そのため、IFN−βのC末端の改変はまた、活性に最小限の影響を有するべきである。ポリアルキレングリコールポリマー(例えば、PEG)をそのC末端に標的化する単純な化学的方法はないが、ポリマー部分を標的化するのに使用され得る部位を遺伝子操作することが直接的であり得る。例えば、C末端のまたはC末端付近の部位にけるCysの組込みは、マレイミド、ビニルスルフォンまたはハロアセテート−活性化ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)を使用する特異的な改変を可能とする。これらの誘導体は特に、システインに対するこれら薬剤の高い選択性に基づき、操作されたCysの改変に使用され得る。他の方法(例えば、標的化され得るヒスチジンタグ(Fancyら,(1996)Chem.&Biol.3:551)または、付加的なグリコシル化部位の組み込み)は、IFN−βのC末端を改変するための他の代替法を表す。
【0065】
特定のIFN−β上のグリカンはまた、活性を変化させることなく、さらなる改変を可能とする位置にある。化学的改変のための部位としての糖を標的化する方法はまた、周知であり、そしてそのため、おそらくポリアルキレングリコールポリマーは、酸化を通じて活性化されたIFN−β上の糖に対して直接的かつ特異的に加えられ得る。例えば、ポリエチレングリコール−ヒドラジドは、アルデヒドおよびケトンによる結合により比較的安定なヒドラゾン結合を形成し、産生され得る。この性質は、酸化オリゴ糖結合によるタンパク質の改変のために使用される。Andresz,H.ら,(1978),Makromol.Chem.179:301参照。特に、亜硝酸塩を用いたPEG−カルボキシメチルヒドラジドの処理は、PEG−カルボキシメチルアジド(アミノ基に対して反応する親電子的な活性基)を産生する。この反応は、同様に、ポリアルキレングリコール−改変タンパク質を調製するために使用され得る。米国特許第4,101,380号および米国特許第4,179,337号参照。
【0066】
チオールリンカー媒介性の化学反応はさらに、タンパク質の架橋結合を促進し得る。これは、例えば、過ヨウ素酸塩ナトリウムを用いて炭水化物部分上に反応性のアルデヒドを生成し、アルデヒドを介してシスタミン結合体を形成し、そしてシスタミン上のチオール基を介して架橋結合を誘導することにより実施され得る(Pepinsky,B.ら,(1991),J.Biol.Chem.,266:18244−18249およびChen,L.L.ら,(1991)J.Biol.Chem.,266:18237−18243参照)。従って、化学反応のこのタイプは、ポリアルキレングリコールポリマーを用いた改変(リンカーを糖へ組み込ませ、およびポリアルキレングリコールポリマーは、リンカーに対して結合させる)のために適切であると考えられる。アミノチオールまたはヒドラジンを含むリンカーは、単一ポリマー基の付加を可能とするが、リンカーの構造は、多数のポリマーを付加するためにおよび/またはIFN−βに関するポリマーの空間的配向性を変化させるために変化し得る。
【0067】
例示のポリマーとして、水可溶性ポリマー(例えば、ポリアルキレングリコールポリマー)が挙げられる。このようなポリマーの非限定的な列挙は、他のポリアルキレンオキシドホモポリマー(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマーおよびそれらのブロックコポリマー)を含む。適切な水可溶性ポリマー骨格および非ペプチドポリマー骨格は、ポリ(オキシエチレン化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタアクリルアミド)、ポリ(αヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリフォスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)ならびにそれらのコポリマー、テラポリマー、および混合物を含む。一つの実施形態において、ポリマー骨格は、平均分子量およそ200Da〜およそ400,000Daを有するポリ(エチレングリコール)またはモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)である。他の関連するポリマーもまた、本発明の実施における使用に適切であり、および用語PEGまたはポリ(エチレングリコール)の使用は、これに関して包括的であり排他的でないことを意図すると理解すべきである。用語PEGは、任意の形態のポリ(エチレングリコール)(アルコキシPEG、二官能性のPEG、多岐のPEG、分岐のPEG(forked PEG)、分枝のPEG(branched PEG)、ペンダントのPEG、または分解性の結合を含むPEGを含む)を含む。
【0068】
一つの実施形態において、Cl−C4アルキルポリアルキレングリコール(好ましくはポリエチレングリコール(PEG))のポリアルキレングリコール残基または、これらグリコールのポリ(オキシ)アルキレングリコールの残基は、目的のポリマー系に組み込まれる。そのために、タンパク質に結合されるポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)のホモポリマーであり得、またはポリオキシエチル化ポリオールであり、所定の全ての場合において、ポリマーは、室温で水に可溶である。このようなポリマーの非限定的な例示は、ブロックコポリマーの水溶性を維持するポリアルキレンオキシドホモポリマー(例えば、PEG、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化グリコール、それらのコポリマー、およびそれらのブロックコポリマー)を含む。ポリオキシエチル化ポリオールの例としては、例えば、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース等を含む。ポリオキシエチル化グリセロールのグリセロール骨格は、天然に存在する骨格(例えば、動物およびヒトにおけるモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド内)と同一である。そのため、この分枝は、体内において外来因子として必ずしも認識されるわけではない。
【0069】
ポリアルキレンオキシドの代替的なものとして、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、炭水化物ベースのポリマーなどが、使用され得る。当業者は、前述した列挙が単なる例示にすぎず、かつ本明細書中に記載した性質を有する全てのポリマー物質が想定されるということを認識するだろう。
【0070】
ポリマーは、任意の特定の分子量を有することが必要ではないが、好ましくは、分子量はおよそ300と100,000との間、より好ましくは10,000と40,000との間である。特に、20,000以上の大きさが、腎臓における濾過に起因するタンパク質の損失を抑える点で最も良い。
【0071】
ポリアルキレングリコール誘導体は、本発明の実施におけるポリマー−IFN−β結合体の製剤において、多くの有利な特性(ポリアルキレングリコール誘導体の以下の特性に関連する:同時に抗原性反応および免疫性反応を誘発しない水溶性の改善;高度の生体親和性;ポリアルキレングリコール誘導体のインビボ生体分解の欠如;および生体組織による容易な排出)を有する。
【0072】
さらに、本発明の別の局面において、ポリマー成分(結合の性質が、切断可能な共有的科学的結合を含む)に対して共有結合するIFN−βを利用し得る。これは、ポリマーが、IFN−βから切断され得るのにかかる時間経過点で制御を可能とする。IFN−β薬剤とポリマーとの間のこの共有結合は、化学的な反応または酵素反応により切断され得る。ポリマー−IFN−β産物は、受容可能な量の活性を保持する。同時に、ポリエチレングリコールの一部分は、結合するポリマー内に存在し、ポリマー−IFN−β結合体に高い水溶性および長期血液循環能を与える。これらの改善された特性の結果として、本発明は、インビボ適用において、活性ポリマー−IFN−β種および加水分解後の、生体利用可能なIFN−βそれ自体の両者の非経口送達、経鼻送達、経口送達が予期される。
【0073】
結合体(例えば、N末端結合体化産物)を得るためのIFN−βとポリマーの反応は、幅広い様々な反応方法を使用することにより容易に実行され得る。IFN−β結合体の活性および安定性は、異なる分子サイズのポリマーを使用することにより、いくつかの様式に変化し得る。結合体の溶解度は、ポリマー組成体内に組み込まれたポリエチレングリコールフラグメントの比率およびサイズを変化させることにより変化させ得る。
【0074】
一つの実施形態において、本発明による結合体は、活性化ポリアルキレングリコール化合物(PCG)とタンパク質の反応により調製する。例えば、IFNは、アミン結合を介して結合したPEG−タンパク質結合体を産生するために、還元的アルキル化を介して、還元剤(例えば、シアノホウ化水素ナトリウム)の存在下で、PEG−アルデヒドと反応させ得る(例えば、欧州特許0154316 B1および国際特許出願第PCT/US03/01559参照)。
【0075】
本発明の特定の実施形態において、ヒトIFN−βを、20kDa mPEG−O−2−メチルプロピオンアルデヒド−改変IFN−β、20kDa mPEG−O−p−メチルフェニル−O−2−メチルプロピオンアルデヒド−改変IFN−β、20kDa mPEG−O−m−メチルフェニル−O−2−メチルプロピオンアルデヒド−改変IFN−β、20kDa mPEG−O−p−フェニルアセトアルデヒド−改変IFN−β、20kDa mPEG−O−p−フェニルプロピオンアルデヒド−改変IFN−β、および20kDa mPEG−O−m−フェニルアセトアルデヒド−改変IFN−βを得るために、それぞれ以下の活性化ポリアルキレングリコール:20kDa mPEG−O−2−メチルプロピオンアルデヒド、20kDa mPEG−O−p−メチルフェニル−O−2−メチルプロピオンアルデヒド、20kDa mPEG−O−m−メチルフェニル−O−2−メチルプロピオンアルデヒド、20kDa mPEG−O p−フェニルアセトアルデヒド、20kDa mPEG−O p−フェニルプロピオンアルデヒド、および20kDa mPEG−O−m−フェニルアセトアルデヒドを用いてPEG化する。20kDa mPEG−O−2−メチルプロピオンアルデヒドおよび20kDa mPEG−O−p−フェニルアセトアルデヒドを用いたヒトIFN−β改変の調製および特性決定の詳細は、以下に記載し、かつまた、国際特許出願第PCT/US03/01559において提供される。
【0076】
一つの実施形態において、PEG化IFN−βを、以下の通り調製する。100mMリン酸ナトリウムpH7.2、200mM NaCl内250μg/mLのIFN−β(例えば、IFN−β−1a)バルク中間体(ヒトに使用するための全てのテストに合格したバルク薬剤の臨床バッチ)を、等量の100mM MES pH5.0を用いて希釈し、そしてpHをHClを用いてpH5.0に調整する。サンプルをSP−Sepharose(登録商標)FFカラム(Pharmacia,Piscataway,NJ)に6mg IFN−β/mL樹脂にロードする。カラムを、5mMリン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて洗浄し、産物を、30mMリン酸ナトリウムpH6.0、600mM NaClを用いて溶出する。溶出分画は、280nmの吸光度値を分析し得、ならびに1mg/mL溶液の1.51の吸光係数を使用する吸光度から測定されたサンプル内のインターフェロンの濃度を分析し得る。
【0077】
SP溶出液由来のIFN−βの1mg/mL溶液へ、0.5Mリン酸ナトリウムpH6.0を50mMとなるように加え、シアノホウ化水素ナトリウム(Aldrich,Milwaukee,WI)を、5mMとなるように加え、および20K PEGアルデヒド(Shearwater Polymers,Huntsville,AL)を、5mg/mLとなるように加える。サンプルは、室温で20時間インキュベートする。PEG化したインターフェロンを、移動相として5mMリン酸ナトリウムpH5.5、150mM NaClを用いるSuperose(登録商標)6FPLCサイジングカラム(Pharmacia)およびSP−Sepharose(登録商標)FFの連続的なクロマトグラフィー工程により反応液から精製する。サイジングカラムにより、改変IFN−βと非改変IFN−βの基礎分離を行う。ゲル濾過由来のPEG−インターフェロンβを含む溶出プールを、水を用いて1:1に希釈し、そしてSP−Sepharose(登録商標)カラムに2mgインターフェロンβ/mL樹脂でロードする。カラムを、5mMリン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて洗浄し、次いでPEG化インターフェロンβを、5mMリン酸ナトリウムpH5.5、800mM NaClを用いてカラムから溶出する。溶出分画を、280nmの吸光度によりタンパク質含有量について分析する。PEG化インターフェロン濃度は、280nmの吸光度に関与しないPEG部分として、インターフェロン当量で報告する。これらの方法および得られたPEG化IFN−βの性質はさらに、WO00/23114に記載される。IFN−βのPEG結合体は、その抗ウイルス活性を変化させないようだ。さらに、PEG化IFN−βの比活性は、非PEG化IFN−βの比活性よりも、大きい(およそ10倍)ものとして見出された(WO00/23114)。
【0078】
IFN−βはまた、20K PEGアルデヒドについて上記したのと同じプロトコーに従い、5K PEG−アルデヒド部分(例えば、Fluka,Inc.(Cat.No.75936,Ronkonkoman,NY)から購入し得る)を用いてPEG化し得る。
【0079】
20kDa mPEG−O−2−メチルプロピオンアルデヒド−改変IFN−βを、以下の通り調製し得る。100mMリン酸ナトリウムpH7.2、200mM NaCl内250μg/mLのIFN−β−1aバルク中間体(ヒトに使用するための全てのテストに合格したバルク薬剤の臨床バッチ)10mLを、12mLの165mM MES pH5.0および50μLの5N HClを用いて希釈する。サンプルを、300μL SP−Sepharose FFカラム(Pharmacia)にロードする。カラムを、300μLの5mMリン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて3回洗浄し、タンパク質を、5mMリン酸ナトリウムpH5.5、600mM NaClを用いて溶出する。溶出分画を、それらの280nmの吸光度について分析し、サンプル内のIFN−βの濃度を1mg/mL溶液について1.51の吸光係数を使用して算出した。ピークの分画は、3.66mg/mLのIFN−β濃度を得るためにプールされ、これを続いて、水を用いて1.2mg/mLまで希釈する。
【0080】
SP−Sepharose溶出液プール由来のIFN−βの0.8mLへ、0.5Mリン酸ナトリウムpH6.0を50mMとなるように加え、シアノホウ化水素ナトリウム(Aldrich)を、5mMとなるように加え、および20kDa mPEG−0−2−メチルプロピオンアルデヒドを、5mg/mLとなるように加える。サンプルは、遮光し、室温で16時間インキュベートする。PEG化IFN−βを、0.5mL SP−Sepharose FFカラム上の反応混合液(0.6mLの反応混合液は、2.4mL20mM MES pH5.0を用いて希釈し、そしてSP−Sepharoseカラム上にロードする)から精製する。カラムを、リン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて洗浄し、次いでPEG化IFN−βを、25mM MES pH6.4、400mM NaClを用いてカラムから溶出する。PEG化IFN−βをさらに、移動相として5mMリン酸ナトリウムpH5.5、150mM NaClを用いるSuperose6HR10/30FPLCサイジングカラム上で精製する。サイジングカラム(25mL)は、20mL/hで行われ、そして0.5mL分画を、収集する。溶出分画を、280nmの吸光度によりタンパク質含有量を分析し、プールし、そしてプールのタンパク質濃度を決定する。PEG化IFN−β濃度は、280nmの吸光度に関与しないPEG部分として、IFN当量で報告する。プールのサンプルは、分析のために取除き、そして残りを、HSAを含む製剤緩衝液を用いて30μg/mLまで希釈し得、0.25mL/バイアルで等分し、そして−70℃で保存する。
【0081】
20kDa mPEG−O−p−フェニルアセトアルデヒド−改変IFN−βを、以下の通り調製し得る。100mMリン酸ナトリウムpH7.2、200mM NaCl内、250μg/mLの(登録商標)IFN−βバルク中間体(ヒトに使用するための全てのテストに合格したバルク薬剤の臨床バッチ)20mLを、24mLの165mM MES pH5.0、100μLの5N HClおよび24mLの水を用いて希釈する。サンプルを、600μL SP−Sepharose FFカラム(Pharmacia)上にロードする。カラムを、900μLの5mMリン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて2回洗浄し、タンパク質を、5mMリン酸ナトリウムpH5.5、600mM NaClを用いて溶出する。溶出分画は、それらの280nmの吸光度を分析し、ならびにサンプル内のIFN−βの濃度を1mg/mL溶液について1.51の吸光係数を使用することにより算出したピークの分画は、2.3mg/mLのIFN−β濃度を与えるためにプールする。SP−Sepharose溶出液プール由来のIFN−β−1aの1.2mLへ、0.5Mリン酸ナトリウムpH6.0を50mMとなるように加え、シアノホウ化水素ナトリウム(Aldrich)を、5mMとなるように加え、および20kDa mPEG−O−p−フェニルアセトアルデヒドを、10mg/mLとなるように加える。サンプルは、遮光し、室温で18時間インキュベートする。PEG化IFN−βを、0.75mL SP−Sepharose FFカラム上の反応混合液(1.5mLの反応混合液は、7.5mL20mM MES pH5.0、7.5mLの水、および5μL 5N HClを用いて希釈し、そしてSP−Sepharoseカラム上にロードする)から精製し得る。カラムを、リン酸ナトリウムpH5.5、75mM NaClを用いて洗浄し、次いでPEG化IFN−βを、20mM MES pH6.0、600mM NaClを用いてカラムから溶出する。PEG化IFN−βをさらに、移動相として5mMリン酸ナトリウムpH5.5、150mM NaClを用いるSuperose6HR10/30FPLCサイジングカラム上に精製する。サイジングカラム(25mL)は、20mL/hで行われ、そして0.5mL分画を、収集する。溶出分画を、280nmの吸光度によりタンパク質含有量を分析し、プールし、そしてプールのタンパク質濃度を決定する。PEG化IFN−β濃度は、280nmの吸光度へのPEGの寄与(20kDa mPEG−O−p−フェニルアセトアルデヒドは、1mg/mL溶液の0.5の280nmにおける吸光係数を有する)を調節後、PEG化IFN−βの1mg/mL溶液について2の吸光係数を使用して、IFN当量で報告する。プールのサンプルは、分析のために取除き、そして残りを、HSAを含む製剤緩衝液を用いて30μg/mLまで希釈し得、0.25mL/バイアルで等分し、そして−70℃で保存する。
【0082】
非天然のポリマーに対し結合したグリコシル化IFN−βを、本発明の方法において、使用し得る。このポリマーは、ポリアルキレングリコール部分を含み得る。ポリアルキレン部分は、インターフェロン−βに対して、アルデヒド基、マレイミド基、ビニルスルフォン基、ハロアセテート基、複数個のヒスチジン残基、ヒドラジン基、およびアミノチオール基より選択された基により、結合し得る。IFN−βは、ポリエチレングリコール部分に結合し得る(IFN−βは、不安定な結合によりポリエチレングリコール部分に結合し、不安定な結合は、生化学的な加水分解および/または生化学的なタンパク質分解により切断可能である)。ポリマーは、およそ5キロダルトン〜およそ40キロダルトンまでの分子量を有し得る。使用され得る別のIFN−βは、ポリアルキレングリコール部分を含むポリマーに対し結合する、生理学的に活性のグリコシル化したインターフェロン−βのN末端を含む生理学的な活性インターフェロン−β組成物である(生理学的に活性インターフェロン−βおよびポリアルキレングリコール部分は、生理学的に活性インターフェロン−β組成物内の生理学的に活性インターフェロン−βが、抗ウイルスアッセイにより計測された場合に、前記部分を欠いている生理学的に活性インターフェロン−βに関して、実質的に同様の活性を有するように配置する)。
【0083】
異種ポリペプチドまたは他の分子は、IFN−βタンパク質またはそれらの改変体に対して共有結合または非共有結合し得る。「共有結合」とは、本発明の異なる部分が、直接互いに共有結合するか、または間接的に介在する部分(単数または複数)(例えば、架橋、スペーサー、または連結部分(単数または複数))を介して互いに共有結合により結び付けられているかのいずれかであることを意味する。介在する部分(単数または複数)は、「結合基」と呼ばれる。用語「結合体化」は、「共有結合した」と互換的に使用される。
【0084】
本発明において使用するためのIFN−βは、グリコシル化または非グリコシル化であり得る。非グリコシル化IFN−βは、例えば、原核生物の宿主細胞内で、産生され得る。IFN−βタンパク質またはそれらの改変体はまた、多糖類(本来はIFN−β上に存在しない)が付くことにより改変されえ得る。
【0085】
(3.IFN−β治療剤の産生方法)
本発明のIFN−β治療剤は、任意の適切な方法(例えば、IFN−β治療剤をコードする核酸を構築することおよび適切な形質転換された宿主内にこの核酸を発現することを含む方法)により産生され得るこの方法は、組換えIFN−β治療剤を産生する。IFN−β治療剤はまた、化学的合成または化学的合成および組換えDNA技術との組合せにより産生され得る。
【0086】
一つの実施形態において、IFN−β治療剤をコードする核酸は、IFN−βまたはその改変体をコードするDNA配列の単離もしくは合成により構築される。例えば、IFN−β融合タンパク質は、例えば、本明細書中に記載されるように産生され得る。天然に存在するIFN−β核酸は、当業者に周知の方法に従って得られ得る。例えば、核酸は、IFN−βを発現することが知られる細胞(例えば、白血球)から得られたRNAおよびIFN−β遺伝子の配列(例えば、配列番号1)に基づくプライマーを使用する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により単離され得る。IFN−βタンパク質をコードする核酸はまた、IFN−β配列の一部を含むプローブ(例えば、オリゴヌクレオチド)を用いて、IFN−βを発現する細胞から作製されたライブラリー(例えば、cDNAライブラリー)をスクリーニングすることにより単離され得る。
【0087】
あるいは、完全なアミノ酸配列は、逆翻訳(back−translated)された遺伝子を構築するために使用され得る。IFN−β治療剤をコードしているヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーが、合成され得る。例えば、望ましいポリペプチドの一部をコードしている複数の小さなオリゴヌクレオチドが、合成され得、そして次いで共に連結され得る。個々のオリゴヌクレオチドは代表的に、相補的な組立てのための、5’突出または3’突出を含む。
【0088】
変化を、当該分野で周知の方法により、IFN−βタンパク質をコードしている核酸に誘導され得る。例えば、変化を、部位特異的突然変異(例えば、Markら.,「Site−specific Mutagenesis Of The Human Fibroblast Interferon Gene」,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,pp.5662−66(1984)および米国特許第4,588,585号に記載)により、引き起こされ得る。
【0089】
IFN−β治療剤をコードしている核酸を構築する別の方法は、化学的合成を介すものである。例えば、望ましいIFN−β治療剤をコードする遺伝子は、オリゴヌクレオチド合成機を使用する化学的な手法により、合成され得る。このようなオリゴヌクレオチドを、望ましいIFN−β治療剤のアミノ酸配列に基づいて設計される。
【0090】
発現系において発現のための核酸を選択する場合、宿主細胞内または発現系(組み換えIFN−β治療剤を産生する)で、有利に働くこれらのコドンを選択することが望ましくあり得る。例えば、特定のコドンは、原核生物の細胞内で、他よりも優先して発現される(「コドン優先(codon preference))。
【0091】
IFN−β治療剤をコードしているDNA配列はまた、シグナル配列をコードするDNAを含んでも含まなくてもよい。このようなシグナル配列(ある場合)は、IFN−β治療剤の発現のために選択した細胞により、認識されるものであるべきである。シグナル配列は、原核生物のもの、真核生物のものまたはこの二つの組合せであり得る。シグナル配列は、当該分野で周知であり、ならびに複数の異なるシグナル配列が、当該分野で記述されている。シグナル配列は、ネイティブな(すなわち、天然に存在する)IFN−βのシグナル配列であり得る。シグナル配列の封入は、IFN−β治療剤を産生する組換え細胞からIFN−β治療剤が分泌されることが望ましいか否かに依存する。選択した細胞が原核生物である場合、DNA配列がシグナル配列をコードしないことが、一般的に好ましい。選択した細胞が真核生物である場合、一般的に、シグナル配列がコードされていることが好ましく、ならびに最も好ましくは野生型IFN−βのシグナル配列が使用される。
【0092】
一旦構築すると(合成、部位指示突然変異、または別の方法によって)、IFN−β治療剤をコードする核酸は、発現ベクターに挿入される(作動可能に、望ましい形質転換した宿主内でのIFN−β治療剤の発現に適切な発現制御配列に連結される)。適正な構築物は、ヌクレオチド配列決定、制限酵素マッピング、および適切な宿主または宿主細胞における生物学的活性ポリペプチドの発現により確認され得る。当該分野で周知であるように、宿主または宿主細胞においてトランスフェクトした遺伝子の高い発現レベルを得るために、遺伝子を、作動可能に転写または翻訳の発現制御配列(選択した発現宿主内で機能的である)に連結させなければならない。
【0093】
発現制御配列および発現ベクターの選択は、宿主細胞の選択に依存する。広範な種々の発現宿主/べクターの組合せが、使用され得る。真核生物の宿主(例えば、真核生物の宿主細胞)に有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスおよびサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクター(例えば、以下のベクター:pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHygから生成されたベクター)が挙げられる。あるいは、ウイルスの誘導体(例えば、ウシパピローマウイルス(BPV−1)、またはエプスタイン・バーウイルス(pHEBo、pREP−誘導体およびp205))が、真核生物の細胞内におけるタンパク質の一過性の発現のために使用され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換に使用される種々の方法は、当該分野で周知である。他の適切な発現系については、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版.Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989)Chapters 16および17を参照。
【0094】
細菌性の宿主に有用な発現ベクターとしては、細菌性プラスミドとして知られるもの(例えば、col E1、pCR1、pBR322、pMB9およびそれらの誘導体を含むE.coli由来のプラスミド)、より広い宿主範囲のプラスミドとして知られるもの(例えば、RP4、ファージDNA(例えば、ファージλの多数の誘導体(例えば、NM989)))、および他のDNAファージとして知られるもの(例えば、M13および糸状の一本鎖DNAファージ)が挙げられる。酵母細胞に有用な発現ベクターとしては、2.mu.プラスミドおよびそれらの誘導体が挙げられる。昆虫細胞に有用なベクターとしては、pVL941が挙げられる。Cateら.,「Isolation Of The Bovine And Human Genes For Mullerian Inhibiting Substance And Expression Of The Human Gene In Animal Cells」,Cell,45,pp.685−98(1986)を、また参照。
【0095】
さらに、任意の広範で種々の発現制御配列のが、これらのベクターにおいて使用され得る。このような有用な発現制御配列としては、先述した発現ベクターの構造遺伝子に関連する発現制御配列が挙げられる。有用な発現制御配列の例としては、例えば、SV40またはアデノウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系またはTRC系、ファージλの主要オペレーター領域および主要プロモーター領域(例えば、PL)、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の糖分解性のタンパク質のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α−交配系のプロモーターならびに原核生物細胞もしくは真核生物細胞またはそれらのウイルスの遺伝子発現を制御することが知られている他の配列およびこれらの様々な組み合わせが挙げられる。
【0096】
任意の適切な宿主は、IFN−β治療剤を産生するために使用され得、これらとしては、細菌、菌類(酵母を含む)、植物、昆虫、哺乳動物、または、他の適切な動物細胞または細胞株、ならびにトランスジェニック動物またはトランスジェニックが挙げられる。例示的な宿主としては、E.coli、Pseudomonas、Bacillus、Streptomyces、菌類、酵母、昆虫細胞(例えば、Spodoptera fruaiperda(SF9)、動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)およびマウス細胞(例えば、NS/0)、アフリカミドリザル細胞(例えば、COS1、COS7、BSC1、BSC40およびBMT10)およびヒト細胞)、ならびに同様に組織培養物内の植物細胞が挙げられる。このような細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)より得られ得る。動物細胞での発現に好ましい宿主細胞としては、培養CHO細胞およびCOS7細胞および特にCHO−DDUKY−β1細胞株が挙げられる。
【0097】
全てのベクターおよび発現制御配列が、本明細書中に記載されるDNA配列を発現するために等しく良く機能するわけではないことが、当然理解されるべきである。また、すべての宿主が同一の発現系において等しく良く機能するのではない。しかし、当業者は、過度の実験をすることなく、これらのベクター、発現制御配列および宿主の内で選択し得る。ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力、およびベクターによりコードされる任意の他のタンパク質(例えば、抗生物質マーカー)の発現もまた、考慮すべきである。例えば、本発明において使用するための好ましいベクターとしては、IFN−β治療剤をコードするDNAが、コピー数において増幅されるものが挙げられる。このような増幅可能なベクターは、当該分多で周知である。例えば、それらとしては、DHFR増幅(例えば、Kaufman,米国特許4,470,461号、KaufmanおよびSharp,「Construction Of A Modular Dihydrafolate Reductase cDNA Gene:Analysis Of Signals Utilized For Efficient Expression」,Mol.Cell.Biol.,2,pp.1304−19(1982)参照)またはグルタミン合成酵素(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号および欧州特許出願公開第338,841号参照)により増幅可能なベクターが挙げられる。
【0098】
発現制御配列の選択において、種々の要因をまた、考慮すべきである。例えば、これらとしては、配列の相対的強度、配列の制御性、およびIFN−β治療剤をコードする実際のDNA配列との互換性(特に潜在的な二次構造に関するもの)が挙げられる。宿主は、選択したベクターと宿主の適合性、本発明のDNA配列によりコードされる産物の毒性、宿主の分泌特性、ポリペプチドを正しく折り曲げる宿主の能力、宿主の発酵または培養に必要なもの、およびDNA配列によりコードされた産物の精製の容易性についての考慮により選択すべきである。
【0099】
これらの要因の中で、当業者は、ベクター/発現制御配列/宿主の組み合わせ(発酵または例えば、CHO細胞もしくはCOS7細胞を使用する大量動物培養で望ましいDNA配列を発現する)を選択し得る。IFN−β改変体を発現するためのCHO−KUKX−B1 DHFRを加えたCHO細胞株の使用はさらに、米国特許第6,127,332号に記載される。
【0100】
IFN−β治療剤はまた、インビトロ系(例えば、インビトロ翻訳系、例えば、細胞溶解物、例えば、網状赤血球溶解物)において産生され得る。用語「インビトロ翻訳系」(本明細書中において用語「無細胞翻訳系」と交換可能に使用される)は、少なくともRNA分子をタンパク質へ翻訳するために必要な最小限度の要素を含む無細胞抽出物である翻訳系をいう。インビトロ翻訳系は代表的に、マクロ分子(例えば、酵素)、翻訳因子、開始因子、および伸長因子、化学反応試薬、およびリボソームを含む。例えば、インビトロ翻訳系は、少なくともリボソーム、RNA、開始メチオニル−RNAMet、翻訳関与するタンパク質または複合体(例えば、eIF、eIF、キャップ−結合タンパク質(CBP)および真核生物開始因子4F(eIF4F)を含む、キャップ−結合(CB)複合体)を含み得る。種々のインビトロ翻訳系は、当該分野で周知であり、ならびに市販されるキットを含む。インビトロ翻訳系の例としては、真核生物溶解物(例えば、ウサギ網状赤血球溶解物、ウサギ卵母細胞溶解物、ヒト細胞溶解物、昆虫細胞溶解物および小麦胚芽抽出物)が挙げられる。溶解物は、製造業者(例えば、Promega Corp.,Madison,Wis.;Stratagene,La Jolla,Calif.;Amersham,Arlington Heights,Ill.;およびGIBCO/BRL,Grand Island,N.Y.)より市販されている。インビトロ翻訳系に使用するRNAは、例えば、SP6プロモーターまたはT7プロモーターを使用し、当該分野で公知の方法に従って、インビトロで産生され得る。
【0101】
別の方法においては、IFN−β治療剤は、宿主細胞内の内在性の遺伝子から発現される。この方法は、IFN−β遺伝子のコード領域の上流の異種性プロモーター(例えば、誘導性プロモーター)を挿入する工程、内在性IFN−β遺伝子を発現する工程および産生されたIFN−βを回収する工程、を含み得る。異種性プロモーターは、当該分野で公知である方法に従う「ノック−イン」により、あるいは、IFN−β遺伝子内のプロモーターの挿入により、細胞内へ誘導され得る。
【0102】
本発明に従って得られたIFN−β治療剤を、治療剤を産生するために使用される宿主生物に依存してグリコシル化または非グリコシル化であり得る。細菌が、宿主として選択される場合、IFN−β治療剤産生は、非グリコシル化であり得る。一方、真核生物は、IFN−β治療剤をグリコシル化し得る。
【0103】
形質転換した宿主により産生されたIFN−β治療剤は、任意の適切な方法に従って精製され得る。種々の方法が、IFN−βを精製するために公知である。例えば、米国特許第4,289,689号、同第4,359,389号、同第4,172,071号、同第4,551,271号、同第5,244,655号、同第4,485,017号、同第4,257,938号、同第4,541,952号、および同第6,127,332号参照。好ましい実施形態において、IFN−β治療剤を、免疫親和性により精製され(例えば、Okamuraら、「Human Fibroblastoid Interferon:Immunosorbent Column Chromatography And N−Terminal Amino Acid Sequence.」Biochem.,19,pp.3831−35(1980)に記載されるように)。
【0104】
例えば、IFN−βタンパク質およびそれらの改変体は、例えば、抽出、沈降、クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、電気泳動などの慣用的な条件に従い単離および精製され得る。例えば、インターフェロンタンパク質およびインターフェロンフラグメントは、固定化したインターフェロンレセプターを有するカラムに、それらの溶液を通過させることにより精製され得る(米国特許第4,725,669号参照)。結合したインターフェロン分子は次いで、カオトロピック塩を用いて処置するかまたは酢酸水溶液を用いて溶出することにより、溶出され得る。免疫グロブリン融合タンパク質は、融合タンパク質を含む溶液を、融合タンパク質のFc部分に選択的に結合する固定化したプロテインAまたはプロテインGを含むカラムを通過させることにより精製され得る。例えば、Reis,K.J.ら、J.Immunol.132:3098−3102(1984);PCT出願公開第WO87/00329号、参照。次いでキメラ抗体が、カオトロピック塩を用いて処置するかまたは酢酸水溶液を用いて溶出することにより、溶出され得る。
【0105】
あるいは、インターフェロンタンパク質および免疫グロブリン−融合分子は、実質的に純粋なタンパク質を与えるために抗インターフェロン抗体カラム上、または抗免疫グロブリン抗体カラム上で、精製され得る。用語「実質的に純粋」により、タンパク質が、生来関係する不純物を含まないことを意図する。実質的な純粋性は、電気泳動による単一のバンドのより証明され得る。
【0106】
産生および精製されたIFN−βは、例えば、ペプチドマッピングにより、特徴づけられ得る。例えば、IFN−β治療剤サンプルは、エンドプロテイナーゼLys−Cを用いて消化され得、そして逆相HPLC上で分析され得る(米国特許第6,127,332号に記載されるように)。
【0107】
好ましい実施形態において、IFN−β治療剤は、実質的に他の細胞性物質(例えば、タンパク質)を含まない。用語「IFN−β治療剤の精製調製物」は、およそ20%(乾燥重量による)未満の細胞性物質(例えば、核酸、タンパク質、および脂質)の混入を有する、および好ましくはおよそ5%未満の細胞性物質の混入を有するIFN−β治療剤の調製物をいう。好ましいIFN−β治療剤の調製物は、およそ2%未満の細胞性物質の混入;さらにより好ましくは、およそ1%未満の細胞性物質の混入および最も好ましくは、およそ0.5%;0.2%;0.1%;0.01%;0.001%未満の細胞性物質の混入を有する。
【0108】
好ましいIFN−β治療剤組成物はまた、他の細胞性タンパク質(また、「混入タンパク質」として本明細書中で称される)を実質的に含まず、すなわち、組成物は、約20%(乾燥重量により)未満の混入タンパク質を有し、および好ましくは、約5%未満の混入タンパク質を有する。本発明のポリペプチドの好ましい調製は、約2%未満の混入タンパク質を有し;さらに好ましくは、約1%未満の混入タンパク質であり、ならびに最も好ましくは、0.5%;0.2%;0.1%;0.01%;0.001%未満の混入タンパク質、を有する。
【0109】
IFN−β調製物の純度および濃度は、例えば、サンプルをゲル電気泳動にかけることによって、当該分野で公知の方法(例えば、Robert K.Scopes,Protein Purification,Principles and Practice,第3版,Springer Verlag New York,1993ならびに同書に引用される参考文献に記載されるように)に従って決定され得る。
【0110】
IFN−β治療剤の生物学的活性は、当該分野で公知である任意の適切な方法(例えば、抗ウイルス活性の抗体中和、タンパク質キナーゼの誘導、オリゴアデニル酸2,5−A合成酵素活性またはホスホジエステラーゼ活性)によりアッセイされ得る(例えば、EP−B1−41313およびWO00/23472に記載されるように)。このようなアッセイはまた、免疫調節性アッセイ(例えば、米国特許第4,753,795号参照)、増殖阻害アッセイ、およびインターフェロンレセプターを発現する細胞に対する結合の測定を含む。例示的な抗ウイルスアッセイはさらに、米国特許第6,127,332号およびWO00/23472に記載される。
【0111】
糸球体腎炎を処置するIFN−β治療剤の能力はまた、動物モデルにおいて評価され得る(これらは、実施例および本明細書中でさらに記載される)。この試験は、例えば、実施例に記載されるように実施され得る。
【0112】
IFN−β治療剤はまた、以下の商品名:AVONEX(登録商標)(IFN−β−1a)(Biogen,Inc.,Cambridge,MA);REBIF(登録商標)(IFN−β−1a)(Serono,S.A.,Geneva,Switzerland);BETAFERON(登録商標)またはBferon(IFN−β−1b)(Schering Aktiengesellschaft,Berlin,Germany);およびBETASERON(登録商標)またはBseron(Berlex,Montville,NJ;IFN−β−1b)の下で市販され得る。AVONEX(登録商標)およびREBIF(登録商標)は、チャイニーズハムスター卵巣細胞において産生される組換えヒトグリコシル化IFN−βである。BETAFERON(登録商標)およびBETASERON(登録商標)は、細菌において産生される。
【0113】
(4.IFN−β治療剤を用いた処置方法)
本発明は、治療的に効果的な量のIFN−β治療剤を被験体に投与する工程を含む、糸球体腎炎の被験体、または糸球体腎炎生じる可能性がある被験体の糸球体腎炎または慢性的腎不全を処置するための方法を提供する。この被験体は、糸球体腎炎または慢性的腎不全を有するとして同定された被験体であり得る。
【0114】
糸球体腎炎(また「急性腎炎」または「急性糸球体腎炎」ともいわれる)は、急性なものであるが、糸球体に影響する一過性の炎症性プロセスであり、結果として体液の不均衡および電解質異常を引き起こすGFRの迅速な減少を生じる。糸球体腎炎の症状としては、タンパク質尿;糸球体濾過速度(GFR)の減少;窒素過剰血(尿毒素、過剰血中尿素窒素−−BUN)および塩類貯留を含む血清電解質の変化(高血圧および水腫をもたらす水貯留を引き起こす);血尿および赤血球円柱を含む異常尿沈渣;低アルブミン血症;高脂質血症;および脂肪尿。
【0115】
多数の疾患(例えば、下記)は、糸球体腎炎を含む。十分に重篤な場合、急性糸球体腎炎は、急性腎不全または急性進行性腎不全を引き起こし得る。急性進行性腎不全に関連する急性腎不全は、その臨床的な挙動により急性進行性腎不全と名づけられ得る一般的なシナリオである。糸球体壁への損傷が、急性糸球体腎炎において一貫して見出されるため、赤血球およびアルブミンは、ボーマン嚢腔へ入り、そして尿へと通過する。尿中の赤血球、腎不全および液性の恒常性異常の組み合わせは、腎炎症候群と呼ばれる。血漿タンパク質の過剰な損失は、ネフローゼ症候群と呼ばれる状況を引き起こし、尿中のタンパク質の損失は、血漿タンパク質のバランスを奪い、低血漿アルブミン、脂質異常および水腫を引き起こす。一般的に赤血球円柱を伴うタンパク質尿(アルブミン尿)および血尿の検査の所見は、そのため、急性糸球体腎炎の診断のために必要であり、またこれらの所見を欠いている場合は、他の診断を示す。例えば、尿細管間質性腎炎は、細尿管および糸球体係蹄を含まない間質の一過性の迅速な炎症を含む。急性糸球体腎炎において、血尿、赤血球円柱およびGFRの減少が生じるが、タンパク質尿は、あまり注目されず、アルブミンの換わりに主に低分子量タンパク質を含んでいる。
【0116】
多数の疾患の存在は、急性糸球体腎炎の症候群を引き起こし得る。腎生検は一般的に、ある程度の腎不全が存在していようと、いまいと、急性糸球体腎炎を有する患者を評価するために必要とされる。診断、予後診断および治療は全て、腎生検の正確な病理組織パターンの同定および正確な微細構造のパターンの同定により決定される。さらに、生検組織は、免疫複合体、免疫グロブリンおよび特定の糸球体内に含まれる他の物質の型を決定するために、一般的に実施される免疫蛍光分析を用いて、分析され得る。腎臓に影響する疾患は、それらが糸球体濾過率に影響を与えるほど十分なネフロンの損傷を引き起こし、そしてそのため、腎不全のいくつかの型を引き起こそうと、いまいと、その病原に従って分類され得る。
【0117】
従来の命名法は、糸球体疾患の様々な特徴を説明することにより生じる。糸球体の疾患、糸球体症、糸球体腎炎は、文献の中で互換的に使用され得るが、上記のように用語糸球体腎炎はしばしば、炎症過程を含む。糸球体の疾患は、腎臓内に病理が生じ、そして、病理から全身症状を引き起こす場合、原発性として、分類され;糸球体の疾患は、それがいくつかの他の、多重の系の障害に起因する場合は、続発性と称される。光学顕微鏡で見られる病理の特徴はさらに、糸球体の疾患の型を特徴付けることを可能とする。一部の糸球体の小房(tuft)に影響を与える病変は、分節性と称され、一方、ほとんど全ての糸球体の小房に影響を与える病変は、全体性と称される。糸球体の細胞数の増加により特徴付けられる異常は、細胞数の増加が、白血球の浸潤に起因するにしろ、常在する糸球体細胞の増殖に起因するにしろ、増殖性と称される。ボーマン嚢細胞を含む細胞増殖は、毛細血管外と称される;内皮細胞またはメサンギウム細胞を含む増殖は、毛細血管内(intracapillary)または毛細血管内(endocapillary)と称される。ボーマン嚢腔内の細胞集合の塊および半月状を形づくる細胞集合の塊は、半月体と称され、一般的に増殖する壁上皮細胞および浸潤する単核細胞より構成される。半月体形成性糸球体腎炎は、糸球体における半月体形成により特徴付けられる急性糸球体腎炎の型である。この状況は、しばしば急性進行性腎不全に関連するので、用語半月体形成性糸球体腎炎は、急性進行性腎不全と交換できるように使用され得る。糸球体疾患が、免疫沈降による糸球体基底膜の膨張により特徴付けられる場合は、膜性と称される。上述の用語の組み合わせは、それらの優性の病理的な特徴に基づいて糸球体疾患の実体を説明するために使用される。増殖性糸球体腎炎(また炎症性糸球体腎炎と称される)としては、例えば、限局性増殖性糸球体腎炎、びまん性増殖性糸球体腎炎、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、および半月体形成性糸球体腎炎のような状況が挙げられ、各用語は、増殖している細胞の位置および/または型を示唆する。これらの状況は尿の沈殿物中の、血液細胞およびタンパク質により特徴付けられるが、ネフローゼ症候群を引き起こすタンパク質損失量はなく、いわゆる「腎炎の」状況である。膜性糸球体症は、糸球体基底膜および内臓上皮細胞を含む、タンパク質に対する糸球体濾過境界の変化を含む。膜性糸球体症、微小変化疾患、および限局性糸球体腎炎および分節性糸球体腎炎を含む、これらの疾患は、ネフローゼ症候群を引き起こし得る重タンパク質の損失を引き起こす。名前が示唆すように、膜性増殖性糸球体腎炎は、細胞性増殖および変異された糸球体濾過境界の両者を示唆する臨床的な特徴を伴うハイブリッド障害である。タンパク質性物質または原繊維性物質の血管外への顕著な沈着により特徴付けられるこれら障害は、糸球体沈着疾患と称される。これらは、腎炎の構成要素およびネフローゼの構成要素の両者を含み得、そのため増殖性障害または膜性障害における所見と重複する。腎臓に影響を与える疾患の最終のカテゴリーは、血栓性微小血管症であり、腎性微小血管内に凝固を生じる障害である。これらの各カテゴリーは、特定の型の病因を有する。
【0118】
増殖性糸球体腎炎の範囲が存在する。このことは、異なる炎症過程から生じる異なる組織病理学的な特徴を示唆する。例えば、びまん性増殖性糸球体腎炎は、急激な重抗原負荷に対して急性免疫応答を示し得る。半月体形成性糸球体腎炎は、提示された個体における、より小さな抗原チャレンジに対する少数の劇的な免疫応答を含み得る。限局性増殖性糸球体腎炎またはメサンギウム増殖性糸球体腎炎は、患者が、ゆっくりと進行する腎不全だけを経験し得る少なくとも刺激的な範囲の端を示す。
【0119】
腎生検の免疫蛍光の研究は、増殖性糸球体腎炎の主な原因を識別することを補助する。3つの広範な診断のカテゴリーがあり、活発な細胞性増殖と組合せ免疫蛍光上可視的な免疫グロブリン沈着の特定のパターンとそれぞれ関連する。免疫グロブリンの粒状沈着は第一のカテゴリー:免疫複合体糸球体腎炎、を特徴付ける。糸球体基底膜に沿う免疫グロブリンの線状沈着は第二のカテゴリー:抗GBM疾患、を特徴付ける。免疫グロブリンの最小の沈着は第三のカテゴリー:小(pauci)免疫糸球体腎炎、を特徴付ける。免疫複合体糸球体腎炎は、公知の抗原性の刺激(例えば、後連鎖球菌性糸球体腎炎)に対する反応を示し得るか、または、複数の系の免疫複合体障害(例えば、狼瘡、クリオグロブリン血症、または細菌性心内膜炎)の一部を形成し得;特定の場合には、決定され得る原因はなく、かつ疾患は特発性のものであると考えられる。抗GBM疾患は、IV型コラーゲンを攻撃する自己抗体を形成する稀な障害である。抗GBM疾患の患者の多数はまた、肺出血を有し、状態は、グッドパスチャー症候群と称される。小免疫糸球体腎炎は、いくつかの体液性免疫の調整不全を意味する、循環抗好中球細胞質抗体の異常なレベルにより特徴付けられる。
【0120】
免疫媒介性糸球体腎炎は、大部分の後天的な腎疾患の原因となる。一般に、糸球体の小房内に抗体(多くの場合、自己抗体)の沈着が存在する。抗体媒介性糸球体腎炎内に含まれる細胞性免疫メカニズムはさらに、抗体産生を調節し、かつ抗体−依存性細胞傷害を引き起こす。患者におけるほとんどの抗体媒介性糸球体腎炎は、自己抗原と循環している抗体の反応により開始される。
【0121】
抗体を、いくつかの異なる過程の結果として、糸球体内に見出し得る。第一に、循環自己抗体は、正常な糸球体の構成要素である内在性の自己抗原に反応し得る。第二に、糸球体内に沈着した循環自己抗体および外因性の抗原は、糸球体性免疫複合体のインサイチュ形成を引き起こし得る。第三に、体循環内で形成された免疫複合体は、糸球体内で捕捉され得る。抗体沈着の位置は、糸球体疾患の大部分の臨床的特性を決定する。内皮下腔またはメサンギウムにおける抗体の迅速な沈着は、糸球体毛細血管からの白血球および血小板の迅速な補充により特徴付けられる、活発な腎炎性の反応を誘発し得る。内皮下腔における抗体沈着は典型的に、活発な炎症性細胞の浸潤がほとんどないタンパク質尿により特徴付けられるネフローゼ型の反応を引き起こす。
【0122】
任意のこれら免疫性の過程は、糸球体内において炎症性反応のカスケードを引き起こし得、糸球体の損傷およびその後の修復を引き起こし得る。内在性の糸球体性抗原または導入した糸球体性抗原に対する自己抗体の応答性は、補体、化学誘引物質、ケモカインおよびサイトカインの産生を引き起こす。補体依存的なメカニズムおよび補体独立的なメカニズムは、それに従って開始され、糸球体細胞へ損傷を引き起こす。白血球および血小板はまた、糸球体へ補充され、さらなる損傷を引き起こす。数ヶ月から数年にわたる持続性の免疫複合体の沈着はまた、基底膜産生の著しい増加を引き起こし得る。任意の免疫媒介性糸球体腎炎のための解決過程は、さらなる抗体の産生および免疫複合体形成を伴わず、沈着物および循環免疫複合体の除去を伴い、さらなる炎症性細胞の補充の阻止を伴い、腎組織内の炎症性媒介物の消散を伴い、そして血管緊張および内皮細胞の接着性の正常化を伴い、局所的な免疫活性が中断されるまで、生じ得ない。
【0123】
糸球体の損傷の後、瘢痕化を伴う治癒が存在し得る。回復は、後遺症の障害を伴うことなく、完全であり得る。さらに、一般的には、糸球体の瘢痕は、広範囲であり、腎機能に影響を与える。糸球体の治癒過程に伴い、細胞外マトリックスの産生を刺激し、そしてマトリックスタンパク質を分解する組織プロテアーゼの合成を阻害し、それによって、糸球体の損傷の後の瘢痕形成を高めるサイトカインである、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)が、認識される。糸球体損傷後の瘢痕化は、さらに残余する生存可能なネフロンに損傷を与え、進行的なネフロンの損失を導く。さらに機能するネフロンが損失するにつれて、残余するネフロンは、上記のように、同様にこれらを損傷する過程を補う。最終的な結果は、腎機能の連続的な低下であり得、末期腎疾患の最終段階を伴う慢性的な腎不全に達する。
【0124】
IFN−β治療剤はまた、HIV感染による特発的形態および二次的形態を含む、限局性糸球体腎炎および虚脱性糸球体腎炎(collapsing glomerulonephritis)の処置に使用され得る。虚脱性糸球体腎炎は、効果的な治療法を有しない腎不全を導く急性進行性疾患である。この疾患は、主にHIV患者において生じる。タンパク質尿は、これらの疾患において主な役割を担っているので、有意にタンパク質尿を減少させるIFN−β治療剤は、これらの疾患の改善に有意な効果を有し得ることが期待される。タンパク質尿が主な役割を果たし、かつIFN−β治療剤が、有用であると期待される別の疾患は、微小変化疾患(また、微小変化腎障害(MCN)および微小変化ネフローゼ症候群(MCNS)と称される)である。
【0125】
従って、IFN−β治療剤は、糸球体の炎症に関連する腎状態(例えば、任意の以下の腎状態:限局性糸球体硬化症および虚脱性糸球体症、微小変化疾患、急性糸球体腎炎、半月体形成糸球体腎炎、腎炎症候群、ネフローゼ症候群、原発性糸球体腎炎、続発性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体症、膜性増殖性糸球体腎炎、免疫複合体糸球体腎炎、抗糸球体基底膜(抗GBM)糸球体腎炎、少免疫糸球体腎炎、糖尿性糸球体症、慢性糸球体腎炎および、遺伝性腎炎)の処置のために使用され得る。任意のこれら腎疾患より生じる疾患または状態(例えば、慢性腎疾患および末期腎疾患)はまた、本発明の方法に従って処置され得る。
【0126】
(5.処置のための被験体)
一般的な事項において、本発明の方法は、糸球体腎炎、慢性腎不全を有するか、または糸球体腎炎、慢性腎不全を発症する危険性を有するか、あるいは腎臓代償療法(すなわち、慢性的な透析もしくは腎移植)の危険性がある任意の哺乳動物被験体のために利用され得る。「糸球体腎炎または慢性腎不全を有する被験体、あるいは糸球体腎炎または慢性腎不全を発症する危険性がある被験体」は、機能するネフロン単位の進行性損失に関連して腎機能の進行性損失を受ける当然予測される被験体である。被験体が、糸球体腎炎または慢性腎不全を有するか、あるいは糸球体腎炎または慢性腎不全を発症する危険性があるか否かは、医学または獣医学に関連する当業者により慣用的に行われ得る決定である。糸球体腎炎または慢性腎不全を有するか、あるいは糸球体腎炎または慢性腎不全を発症する危険性(または腎臓代償療法の危険)がある被験体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:慢性腎不全、末期腎疾患、慢性糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症、慢性糸球体腎炎、遺伝性腎炎、および/または腎形成異常をわずらうとみなされ得る被験体;タンパク質尿、血清電解質変化、例えば、高窒素血症(尿毒症、すなわち、過剰な血中尿素窒素または「BUN」);塩類貯留、高血圧症および水腫を生じる、血尿および赤血球円柱を含む異常な尿沈殿物;低アルブミン血症、高脂血症および脂肪尿;糸球体肥大、尿細管肥大、慢性糸球体硬化症を有する被験体、および/または慢性尿細管間質性硬化症であると示す生検を有する被験体;腎繊維症または正常な腎臓よりも小さいことを示す超音波スキャン、MRIスキャン、CATスキャン、もしくは他の非侵襲性検査を有する被験体。さらに、糸球体腎炎もしくはCRFを有する被験体か、または糸球体腎炎もしくはCRFの危険がある被験体の徴候は、当業者に周知である。例えば、以下の全ては被験体が糸球体腎炎もしくはCRFを有するか、または糸球体腎炎もしくはCRFの危険性があるか否かを決定するための判定基準であり得る:尿沈渣内に異常な数の大きな円柱を有する被験体;被験体の期待されるGFRが慢性的におよそ50%未満、そしてさらに特におよそ40%未満、30%未満または20%未満であるGFRを有する被験体;体重が少なくともおよそ50kgかつ慢性的におよそ50ml/分未満、そしてさらに特におよそ40ml/分未満、30ml/分未満、または20ml/分未満のGFRを有するヒト男性被験体;体重が少なくともおよそ40kgかつ慢性的におよそ40ml/分未満、そしてさらに特におよそ30ml/分未満、20ml/分または10ml/分未満のGFRを有するヒト女性被験体;健常な被験体そうでなければ同様の被験体によって有される機能的ネフロン単位数のおよそ50%未満、そしてさらに特におよそ40%未満、30%未満または20%未満の機能的ネフロン単位数を有する被験体;単一の腎臓を有する被験体および腎移植のレシピエントである被験体。
【0127】
処置され得る哺乳動物被験体は、ヒト被験体またはヒト患者を含むが、それだけに限定はされない。加えて、本発明は、ヒトコンパニオンとして維持される家庭の哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ)の処置に使用され得、これらの動物は、重要な商業的価値を有するか(例えば、乳牛、肉牛、競技用動物)、重要な科学的価値を有するか(例えば、捕らわれたかまたは自由な絶滅危機種の検体)、または他の価値を有する。処置するための患者は、糸球体腎炎、慢性腎不全または末期腎疾患(例えば、腎臓代償療法の必要性がある)の危険性と関連する徴候以外は、IFN−β治療剤を用いて処置するための徴候を提示する必要はない。すなわち、処置のための被験体は、IFN−β治療剤を用いた処置についての徴候を含まない他のものが予期される。しかし、いくつかの場合において、被験体は、IFN−β治療剤を用いた処置が示される他の兆候(例えば、ウイルス性疾患、例えば肝炎感染)で示され得る。そのような場合、処置は、過剰投与を回避するように調節されなければならない。
【0128】
医学分野または獣医分野の当業者は、訓練されて、実質的に糸球体腎炎、慢性腎不全の危険性があり得るか、または実質的に腎臓代償療法についての危険性があり得る被験体を認識する。特に、本明細書中に開示される処置方法および他の処置方法に関連する臨床試験および非臨床試験、ならびに累積した経験は、所定の被験体が糸球体腎炎、慢性腎不全を有するかもしくは糸球体腎炎、慢性腎不全を発症する危険性があるか、または腎臓代償療法を必要とする危険性があるか否か、および任意の特定の処置(本発明に従う処置を含む)が、患者が必要とするものに最も適したものであるか否かを決定する際に熟練した実施者に情報を提供することが予想される。
【0129】
一般的な事項として、哺乳動物被験体は、この被験体が既に機能的ネフロン単位の進行性損失と関連する腎機能の進行性損失を代表的に導く状態に冒されていると診断されるか、またはこの状態に冒されているとみなされる場合、糸球体腎炎、慢性腎不全を有するかもしくは糸球体腎炎、慢性腎不全を発症する危険性があるか、または腎臓代償療法を必要とする危険性があるとしてみなされ得る。このような状態としては、末期腎疾患、慢性糖尿病性腎症、糖尿病性糸球体症、糖尿病性腎肥大、高血圧性腎硬化症、高血圧性糸球体硬化症、慢性糸球体腎炎、遺伝性腎炎、腎形成異常症および腎同種移植片移植後の慢性拒絶などが挙げられるが、これらに限定されない。これらならびに当該分野で公知の他の疾患および状態は、代表的に、機能的ネフロンの進行性損失および慢性腎不全の発症を導く。
【0130】
しばしば、医学分野および獣医学分野の当業者は、腎生検サンプルの試験に対して予後決定、診断決定または処置決定の基礎を置き得る。このような生検は、腎障害を診断する際に有用な豊富な情報を提供する。糸球体腎炎、慢性腎不全を有するかもしくは糸球体腎炎、慢性腎不全を発症する危険性があるか、または腎臓代償療法を必要とする危険性がある被験体は、糸球体内の、炎症性細胞(例えば、T細胞およびマクロファージ)の存在、糸球体肥大、尿細管肥大、糸球体硬化症、尿細管間質性硬化症などが挙げられるが、これらに限定されない腎生検からの組織学的指標によって認識され得る。
【0131】
腎形態を評価するためのほとんど侵襲性ではない技術としては、MRI、CATおよび超音波スキャンが挙げられる。走査技術がまた利用可能であり、これは、造影剤または画像化剤(例えば、放射性色素)を用いるが、これらのいくつかは腎組織および腎構造に対して特に毒性であり、ゆえに、これらの使用は、糸球体腎炎、もしくは慢性腎不全を有するかまたは糸球体腎炎、もしくは慢性腎不全を発症する危険性がある患者において賢明でないかもしれないことに注意すべきである。このような非侵襲性走査技術は、糸球体腎炎、慢性腎不全を有するかもしくは糸球体腎炎、慢性腎不全を発症する危険性があるか、または腎臓代償療法を必要とする危険性があるカテゴリー内の被験体に位置する、腎線維症または腎硬化症、限局性腎壊死、腎嚢胞、および腎肉眼的肥大などの状態を検出するために使用され得る。
【0132】
しばしば、予後決定、診断決定および/または処置決定は、腎機能の臨床指標に依存する。1つのそのような指標は、尿沈渣中の異常な数の「広範」または「腎不全」の円柱の存在であり、これは、尿細管肥大を示し、そして慢性腎不全を典型的に表す代償性の腎肥大を示唆する。腎機能の別の指標は、糸球体流速(GFR)であり、これは、特定マーカーのクリアランスの速度を定量することによって直接測定され得るか、または間接的な測定から推測され得る。
【0133】
本発明の処置方法は、GFRの任意の特定の測定または腎機能の任意の他の特定マーカーを示す被験体に限定される必要はない。実際、被験体のGFRまたは腎機能の任意の他の特定マーカーが本発明の処置を実施する前に必ずしも決定される必要はない。それにもかかわらず、GFRの測定は、腎機能を評価する好ましい手段であるとみなされる。
【0134】
当該分野で周知のように、GFRは、血漿から尿への参照化合物またはマーカー化合物のクリアランス速度を反映する。考慮されるマーカー化合物は、代表的に、糸球体によって大量に濾過されるが、尿細管によって活発に分泌または再吸収されず、そして循環しているタンパク質にによってほとんど結合されないものである。このクリアランス速度は、代表的に、上記に示される式によって規定され、これは、24時間以内に産生された尿の容積、ならびに尿および血漿中の相対的なマーカー濃度に関連する。より正確に言うと、GFRはまた、体の表面積に対して補正されるべきである。その濾過特性、および血清結合の欠失に起因して、「第1(gold)の標準」参照化合物は、インシュリンである。しかし、この化合物の濃度は、血液または尿中で定量することが困難である。従って、クレアチニンを含む他の化合物のクリアランス速度が、しばしば、インシュリンの代わりに使用される。さらに、実際のマーカーの尿濃度、実際の生成される毎日の尿容積、または実際の体の表面積を考慮することを除外することによって、実際のGFRの概算を単純化することを模索する種々の式がしばしば使用される。これらの値は、他の因子に基づく概算、同じ被験体に関して確立されたベースラインの値、または類似した被験体に関する標準値によって置換され得る。しかし、これらの概算は注意して使用されるべきである。なぜなら、これらは、正常または健康な患者の腎機能に基づく不適切な仮定を伴い得るからである。さらに、p−アミノ馬尿酸塩(PAH)のクリアランスが、腎クリアランス速度を概算するために使用される。
【0135】
特定の特徴を有する健康な被験体に関する予想GFR値を記載する、種々の方法および式が当該分野で開発されている。特に、血漿クレアチニンレベル、年齢、体重および性別に基づく予想GFR値を提供する式が利用可能である(例えば、本明細書中の「定義」の節を参照のこと)。当然、他の式が使用され得、そして標準値の表が、所定の年齢、体重、性別、および/または血漿クレアチニン濃度の被験体に対して生成され得る。GFRを測定または概算するより新規な方法(例えば、NMR技術またはMRI技術を使用する)がまた当該分野で現在可能であり、そして本発明に従って使用され得る(例えば、米国特許第5,100,646号、および同第5,335,660号を参照のこと)。
【0136】
一般的な事項として、GFRが測定または概算される様式に関係なく、被験体がその被験体の予想GFRの約50%よりも時間が短いGFRを有する場合、この被験体は、糸球体腎炎、慢性腎不全であるかもしくは糸球体腎炎、慢性腎不全の危険性があるか、または腎臓代償療法を必要とする危険性があるとみなされ得る。この危険性は、GFRがより下へ低下するにつれ大きくなるとみなされる。従って、被験体がその予想GFRの約40%、30%または20%よりも時間が短いGFRを有する場合、この患者はますます危険性があるとみなされる。少なくとも約50kgの体重であるヒト男性被験体は、この被験体が約50ml/分よりも時間が短いGFRを有する場合、糸球体腎炎、慢性腎不全であるかもしくは糸球体腎炎、慢性腎不全の危険性があるか、または腎臓代償療法を必要とする危険性があるとみなされ得る。この危険性は、GFRがより下へ低下するにつれ大きくなるとみなされる。従って、被験体が約40ml/分、約30ml/分または約20ml/分よりも時間が短いGFRを有する場合、この患者はますます危険性があるとみなされる。少なくとも約40kgの体重であるヒト女性被験体は、この被験体が約40ml/分よりも時間が短いGFRを有する場合、糸球体腎炎、慢性腎不全であるかもしくは糸球体腎炎、慢性腎不全の危険性があるか、または腎臓代償療法を必要とする危険性があるとみなされ得る。この危険性は、GFRがより下へ低下するにつれ大きくなるとみなされる。従って、被験体が約30ml/分、約20ml/分または約10ml/分よりも時間が短いGFRを有する場合、この被験体はますます危険性があるとみなされる。一般的な事項として、被験体が健康な(しかし他の類似の)被験体の機能的ネフロン単位の数の約50%よりも小さい機能的ネフロン単位の数を保有する場合、この患者は、糸球体腎炎、慢性腎不全であるかもしくは糸球体腎炎、慢性腎不全の危険性があるか、または腎臓代償療法を必要とする危険性があるとみなされ得る。上記のように、この危険性は、機能的ネフロン数がさらに減少するにつれ、より大きくなるとみなされる。従って、被験体が類似するが健康な被験体に関する数の約40%、30%または20%よりも少ない機能的ネフロン数を有する場合、この被験体は、ますます危険であるとみなされる。
【0137】
最後に、単一の腎臓を保有する被験体が、他方の腎臓の損失様式(例えば、物理的外傷、外科的除去、出生時欠損)に関わらず、一応、糸球体腎炎、慢性腎不全の危険性があるか、または腎臓代償療法を必要とする危険性があるとみなされ得ることに注意すべきである。これは、1つの腎臓が残りの腎臓を冒し得る疾患または状態に起因して損失された被験体に関して、特にあてはまる。同様に、既に腎臓移植のレシピエントである被験体、または既に慢性透析(例えば、慢性血液透析または連続した外来の腹膜透析)を受けている被験体は、糸球体腎炎、慢性腎不全の危険性があるか、またはさらなる腎臓代償療法を必要とする危険性があるとみなされ得る。
【0138】
本発明の方法に従って処置され得る被験体はまた、IFN−βを用いて処置可能であるとして公知である状況または疾患(例えば、多発性硬化またはウイルス感染)を有する被験体を含む。典型的なウイルス感染は、例えば、B型肝炎感染といった肝炎を含む。このような状況において、IFN−β治療剤投与の養生法は、両状況を処置するために調節されることを生じ得る。被験体はまた、IFN−βを用いて処理し得るウイルス感染または糸球体腎炎を生じるウイルス感染を有さない被験体であり得る。従って、典型的な被験体は、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス)を有さず、その患者内における糸球体腎炎は、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス)により生じるのではない患者を含む。その被験体はまた、ウィルス感染により引き起こされる糸球体腎炎を有するか、またはその発症の可能性が高い被験体であり得る。他の実施形態において、被験体は、末期腎不全も腎細胞癌も有しない。
【0139】
(6.処方および処置方法)
IFN−β治療剤は、使用される特定の腎臓治療剤に適合し得る任意の経路によって投与され得る。従って、適切なものとして、投与は、経口投与または非経口(静脈および腹腔内を含む)投与、および腎臓の嚢内(renal intracapsular)の経路の投与であり得る。さらに、投与は、本明細書中に記載の薬剤(すなわち、IFN−β治療剤)のボーラス(bolus)の周期的な注射により得るか、または外側(例えば、静脈バック)または内側(例えば、生腐食可能な(bioerodable)移植物または移植されたポンプ)であるリザバからの静脈または腹腔内投与によって、より連続的になされ得る。本発明に従う方法において、IFN−β治療剤は、好ましくは、非経口で投与される。本明細書中で使用される場合、用語「非経口」とは、エアロゾル、皮下、静脈内、筋肉内、関節腔内、滑液包内、胸骨下、髄腔内、肝臓内、病巣内、および頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0140】
本発明の薬剤は、任意の適切な手段によって、好ましくは、直接的に(例えば、注射または組織位置への局部的投与として、局所的に)、あるいは全身的(例えば、非経口または経口で)、個体に提供され得る。薬剤が、例えば、静脈、皮下、または筋肉内投与のような非経口で提供されるべき場合、薬剤は、好ましくは、水溶液の部分を含む。この溶液は、生理学的に受容可能であり、その結果、被験体への所望の薬剤の送達に加えて、溶液は、他の点では被験体の電解質および/または容量バランスに悪影響を及ぼさない。従って、薬剤のための水溶液媒体は、通常生理的食塩水(例えば、0.9%NaCl、0.15M、pH7−7.4)を含み得る。
【0141】
IFN−β治療剤は、好ましくは、薬学的に受容可能なキャリアを含む無菌の薬学的組成物として投与され、このキャリアは、多くの周知のキャリアのいずれか(例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど)、またはそれらの組み合わせであり得る。IFN−β治療剤は、一以上の他のタンパク質(例えば、IFN−β治療剤を安定化するため)を含む組成物中に調製され得る。例えば、IFN−β治療剤は、アルブミンと共に混合され得る。
【0142】
薬学的組成物は、任意の薬学的に受容可能なキャリアと共に、IFN−β治療剤を含み得る。本明細書中で使用される場合、用語「キャリア」は、受容可能なアジュバントおよびビヒクルを含む。本発明の薬学的組成物において使用され得る、薬学的に受容可能なキャリアとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、プロラミンスルフェート)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂。
【0143】
IFN−βまたはその改変体はまた、リポソーム送達系(例えば、小さな単膜リポソーム、大きな単膜リポソームおよび多重膜リポソーム)の形態において投与され得る。リポソームは、様々なリン脂質(コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンを含む)から形成され得る。いくつかの実施形態において、脂質成分のフィルムは、薬剤をカプセル化した脂質層を形成するために薬剤の水溶液を用いて水和される(米国特許第5,262,564号に記載)。
【0144】
IFN−βまたはその改変体はまた、標的化可能な薬剤キャリアとしての可溶性ポリマーに結合し得る。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロオキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロオキシエチルアスパンアミドフェノール(polyhydroxyethylaspanamidephenol)またはパルミトイル残基で置換したポリエチレンオキシドポリリジンが挙げられ得る。IFN−βまたはその変異体はまた、例えば、レセプタータンパク質およびアルブミンのような、タンパク質に対して結合し得る。さらに、IFN−βまたはその変異体はた、薬剤の制御放出を達成するのに有益である生分解性ポリマーのクラス(例えば、ポリ乳酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋型ブロックコポリマーまたは両親媒性ブロックコポリマー)に対して結合し得る。
【0145】
本発明に従うと、薬学的組成物は、無菌の注射用の調製物の形態(例えば、無菌の注射用の水性または油性の懸濁液)であり得る。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当該分野において公知の技術に従って処方され得る。無菌の注射用調製物はまた、無毒の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の無菌の注射用溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)であり得る。利用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、および塩化ナトリウム等張液がある。さらに、無菌の不揮発性油が、慣習的に、溶媒または懸濁媒体として利用される。この目的のために、低刺激性の任意の不揮発性油が、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含め使用され得る。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注射液の調製において有用であり、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油)も、特にポリオキシエチル化バージョンでは、同様に有用である。これらの油溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または長鎖アルコール分散剤を含み得る。
【0146】
IFN−β治療剤を含む薬学的組成物はまた、経口で与えられ得る。例えば、これらは、任意の経口的に受容可能な投与形態(カプセル、錠剤、水性懸濁液または水溶液が挙げられるが、これらに限定されない)で投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、通常使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤がまた、典型的に添加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥したコーンスターチが挙げられる。経口使用のために水性懸濁液が必要とされる場合は、活性成分が乳化剤および懸濁剤と合わせられる。所望ならば、特定の甘味料、矯味矯臭剤、または着色剤がまた添加され得る。局所経皮パッチもまた使用され得る。
【0147】
好ましい実施形態において、IFN−βまたはその改変体は、安定化剤を含む液体組成物として提供される。安定化剤は、IFN−βまたはその改変体の0.3重量%と5重量%との間の量で存在し得る。安定化剤は、酸性アミノ酸(例えば、グルタミン酸およびアスパラギン酸)またはアルギニンまたはグリシンのようなアミノ酸であり得る。安定化剤が、アルギニン−HClである場合、その濃度は好ましくは、0.5%(w/v)から5%(w/v)までの間の範囲であり、および最も好ましくは、3.13%(150mMアルギニン−HClに等しい)である。安定化剤が、グリシンである場合、その濃度は好ましくは、0.5%(w/v)から2.0%(w/v)までの間の範囲であり、および最も好ましくは、0.52%(66.7mMから266.4mMに等しく、および最も好ましくは70mMに等しい)である。安定化剤が、グルタミン酸である場合、その濃度は好ましくは、100mMから200mMまでの間の範囲であり、ならびに最も好ましくは170mMであり得る(1.47%から2.94%までの範囲のw/vパーセントおよび最も好ましくは2.5%のw/vパーセントと等しい)。液体処方物内のIFN−βまたはその改変体の濃度の好ましい範囲は、およそ30μg/mlからおよそ250μg/mlまでである。好ましい濃度範囲は、48μg/mlから78μg/mlでありならびに最も好ましい濃度は、およそ60μg/mlである。国際標準値に関しては、Biogen内部標準は、インターフェロンに対するWHO国際標準(Natural#Gb−23−902−531)に対して標準化されており、故に(0.5ml注射容量に対する)IUにおける濃度の範囲は、およそ6IMUから50IMUまでであり、そして最も好ましい濃度は、12IMUである。
【0148】
好ましくは、アミノ酸安定化剤は、およそpH5.0の溶液内で酸性の形態(アルギニン−HCl)として組み込まれる、アルギニンである。従って、ポリイオン化賦形剤が、好ましい。好ましくは、液体組成物は、IFN−βに対して不活性な物質(例えば、シリコーンまたはポリエトラフルオロエチレン)でコートした、液体と接する表面を有する、容器(例えばシリンジ)内に収納する。なおより好ましい組成物は、4.0および7.2との間のpHを有する。安定化剤を含む溶液は好ましくは、凍結乾燥されておらず、ならびに調製および保存の間に酸素を含むガスに供されていない。
【0149】
およそ4.0からおよそ7.2、ならびに好ましくはおよそ4.5からおよそ5.5、ならびに最も好ましくは5.0の範囲のpHを維持するために、本発明において使用される有機酸およびリン酸緩衝液は、有機酸およびそれらの塩の慣習的な緩衝液(例えば、さらにWO98/28007に記載されるようなクエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、および緩衝酢酸溶液)であり得る。
【0150】
WO98/38007に記載されるように調製し得る、典型的な処方物は、
(i)pH5.0の20mM酢酸緩衝液(この緩衝液は、好ましくは事前に凍結乾燥されておらず、この緩衝液は、IFN−βおよび(a)150mMアルギニン−HCl;(b)100mM塩化ナトリウムおよび70mMグリシン;(c)150mMアルギニン−HClおよび15mg/ml ヒト血清アルブミン;(d)150mMアルギニン−HClおよび0.1%Pluronic F−68;(e)140mM塩化ナトリウム;(f)140mM塩化ナトリウムおよび15mg/mlヒト血清アルブミン;および(g)140mM塩化ナトリウムlおよび0.1%Pluronic F−68より選択される少なくとも一種の成分を含む);
(ii)IFN−βまたはその改変体、170mM L−グルタミン酸、および150mM水酸化ナトリウムを含むpH5.0の液体(この液体は、好ましくは事前に凍結乾燥されていない);および
(iii)pH7.2の20mMリン酸緩衝液(この緩衝液は、好ましくは事前に凍結乾燥されておらず、この緩衝液は、IFN−βおよび(a)140mMアルギニン−HClならびに(b)100mM塩化ナトリウムおよび70mMグリシンより選択される少なくとも一種の成分を含む);
を含む。
【0151】
好ましい組成物はまた、ポリソルベート(例えば、0.005%w/vのポリソルベート20)を含む。
【0152】
IFN−βは、被験体に投与する前に溶解または懸濁されてもされなくてもよく、乾燥粉末の状態で処方され得る。特に、ポリマー(例えば、PEG)に対して結合したIFN−βは、乾性形態において特に安定であることが示されている(例えば、WO00/23114およびPCT/US/95/06008を参照のこと)。
【0153】
本発明の薬学的組成物はまた、ネブライザー、乾燥粉末吸入器または定量吸入器の使用によって、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、薬学的処方物の分野において周知の技術に従って調製され、そして、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、生物学的利用能を増強するための吸収プロモーター、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤または分散剤を利用して、生理食塩水中の溶液として調製され得る。別の実施形態に従うと、本発明の化合物を含む組成物はまた、コルチコステロイド、抗炎症剤、免疫抑制剤、代謝拮抗剤、および免疫調節因子からなる群から選択される添加剤を含み得る。これらのクラスの各々に含まれる化合物は、「Comprehensive Medicinal Chemistry」、Pergamon Press、Oxford、England、pp.970−986(1990)(この開示は、本明細書中で参考として援用される)における、適切な群の見出しのもとに列挙される任意の化合物から選択され得る。特定の化合物は、テオフィリン、スルファサラジン、およびアミノサリチレート(抗炎症剤);シクロスポリン、FK−506、およびラパマイシン(免疫抑制剤);シクロホスファミドおよびメトトレキサート(代謝拮抗剤);ステロイド(吸入される、経口的、または局所的)および他のインターフェロン(免疫調節因子)である。
【0154】
非経口投与のための有用な溶液は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro,A.編)、Mack Pub.、1990に記載される、薬学的分野で周知の任意の方法によって調製され得る。
【0155】
非経口の注射可能な投薬は一般に、皮下注射および皮下注入、筋肉内注射および筋肉内注入または静脈内注射または静脈内注入に使用する。例えば、皮下注射は、0.01μg/kgから100μg/kg、またはより好ましくは0.01μg/kgから10μg/kgのIFN−β(例えば、PEG化IFN−β)を送達するために使用される場合、1週間をかけて、0.005μg/kgから50μg/kgまたはより好ましくは0.005μg/kgから5μg/kg、の2回の注射をそれぞれ0時間および72時間に投与し得る。さらに、非経口的投与の一つのアプローチは、参考として本明細書中に援用される米国特許第3,710,795号に従い、一定レベルの投与量を維持することを保証する、持続放出(slow−release)系または持続放出(sustained−released)系の移植を使用する。
【0156】
当業者によって評価されるように、処方された化合物は、治療的有効量のIFN−β治療剤を含む。つまり、この化合物は、適切な濃度のIFN−β治療剤を、腎機能の持続的または進行性の喪失を防止するか、阻害するか、遅れさせるか、または緩和するか、他のようにして治療的効力を提供するのに十分な時間、腎組織または他の適切な組織に提供する量を含む。当業者によって考えられるように、本発明の治療的組成物に記載される化合物の濃度は、選択された薬剤の生物学的効力、利用される化合物の化学的性質(例えば、疎水性)、化合物賦形剤の処方、投与経路、および、考えられる処置(活性成分が腎臓または腎皮膜に直接投与されるか否か、またはそれが全身投与されるか否か、が挙げられる)を含む、多数の因子に依存して変化する。投与されるべき好ましい投薬量はまた、腎組織の状態、腎機能喪失の程度、および特定の被験体の全体的な健康状態のような変数に依存する可能性がある。投薬は、連続的に、または毎日行われ得るが、(例えば、適切な医学マーカーおよび/または生活の質の指標による、腎機能の安定化および/または改善によって測定される場合に、)満足できる応答が続く限り、週に1度、2度、または3度、投薬を行うことが現在は、好ましい。より頻度の低い投薬(例えば、月に一度の投薬)もまた利用され得る。連続的な、週2回、または週3回の血液透析期間をさもなくば必要とする被験体にとって、連続的な、週2回または週3回の静脈内注入または腹腔内注入は、過度に都合が悪いとは考えられない。さらに、頻繁な注入を簡易にするために、半永久的なステントの(例えば、静脈内、腹腔内、または嚢内の)移植が賢明であり得る。
【0157】
IFN−βを利用する投与レジメンは、患者の型、種、年齢、体重、性別および病状;治療する状態の重篤度;投与経路;患者の腎臓および肝臓の機能;および使用する特定の組成物またはその塩、を含む様々な要因に従って選択する。本発明の化合物の活性および副作用に対する患者の感受性もまた、考慮する。一般的な技術を有する医師または獣医師は容易に、状態の進行を防ぐか、対抗すか、または阻止するために要する薬剤の有効量を決定および処方し得る。
【0158】
本発明の経口の投与量(好ましくは、PEG化IFN−β治療剤)は、経口的に0.01μg/kg/日から100μg/kg/日、またはより好ましくは経口的に0.01μg/kg/日から10μg/kg/日の間の範囲であり得る。組成物を好ましくは、0.5μgから5000μg、またはより好ましくは0.5μgから500μgの活性成分を含む分割錠の形状で提供される。
【0159】
任意の投与経路について、分割投与または単回投与が使用され得る。例えば、本発明の化合物は、毎日または毎週投与され得、単一用量または全投与が、2回、3回、または4回の分割用量で投与され得る。
【0160】
任意の上記薬学的組成物は、0.1%から99%、1%から70%、または好ましくは、1%から50%の本発明の活性組成物を活性化合物として含み得る。
【0161】
疾患の経過および薬剤処置に対するその疾患の応答は、臨床検査および検査所見により追跡され得る。本発明の治療の有効性は、前述した状態(例えば、慢性肝炎)の徴候および症状が緩和された程度およびインターフェロンの通常の副作用(つまり、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、疲労などのようなインフルエンザに似た症状ならびにうつ状態、感覚異常、意識障害などのような中枢神経系に関連する症状)が除去または実質的に減少される程度により、決定される。
【0162】
IFN−β治療剤は、単独で投与され得るか、または本明細書中に記載した状態の処置に有効であるとして公知である他の分子(例えば、抗炎症剤)と組み合わせて投与され得る。他の薬剤との組み合わせで使用される場合、IFN−β治療剤の投与量を適宜変更することが必要であり得る。
【0163】
単回投与形態を産生するためキャリア物質と組み合わせられ得る活性成分の量は、処置される宿主および特定の投与形式に依存して変化する。しかし、任意の特定の患者に対する特有の投与量および処置計画は、使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、身体全体の健康、性別、食事療法、投与回数、排泄速度、薬剤の組み合わせ、および主治医の判断および処置する特定の疾患の重篤度を含む、様々な要因に依存すると理解すべきである。活性成分の量はまた、その成分を同時投与する治療剤または予防剤(もしあれば)にも依存し得る。
【0164】
IFN−β治療剤の有効投与量および投与速度は、阻害物質の性質、患者の大きさ、処置目的、処置する病理の性質、使用する特定の薬学的組成物、および主治医の判断のような、様々な要因に依存する。1日ごとにおよそ0.001mg/kg体重とおよそ100mg/kgとの間の投与量レベル、好ましくは、1日ごとにおよそ0.1mg/kg体重とおよそ50mg/kgとの間の投与量レベルの活性成分化合物は、有益である。最も好ましくは、IFN−β治療剤は、およそ0.1mg/kg体重とおよそ20mg/kg体重との間の範囲の投与量で、好ましくはおよそ1mg/kg体重とおよそ3mg/kg体重との間の範囲で、そして1日ごとから14日ごとのインターバルで、投与される。好ましい投与量は、1週間ごとにまたは1週間に3回の、およそ6MIUの注射から成る。投与量の最適化は、例えば、IFN−β治療剤の投与、および続くIFN−β治療剤の循環または局所濃度の評価により決定され得る。
【0165】
最も好ましい実施形態において、AVONEX(登録商標)を、それを必要とする被験体に対して投与する。AVONEX(登録商標)は、以下:
1ml用量あたりの処方:
30mcgインターフェロン−β−1a(6百万国際単位(MIU))
50mMリン酸ナトリウム
100mM塩化ナトリウム
15mgヒト血清アルブミン
pH7.2
からなる、凍結乾燥粉末として、市販される。AVONEX(登録商標)インターフェロンの比活性は、2×10単位/mg(すなわち、IFN−β−1aタンパク質1ミリグラムあたり200MUの抗ウイルス活性)である。患者は、1週間ごとに一度、1mlの筋肉内注射の前に、滅菌水を用いてこの粉末を再構成する。AVONEX(登録商標)はまた、以下:
0.5ml用量あたりの処方:
30mcg(μg)インターフェロン−β−1a(6百万国際単位(MIU))
20mM酢酸塩(酢酸ナトリウムおよび酢酸)
150mMアルギニンHCl
0.005%w.vポリソルベート20
注射用水
pH4.8
からなる、液体処方物として調製され得る。この処方物を、あらかじめ充填したシリンジ内にパッケージし得る。患者は、提供された通りに、手でシリンジを使用しても、または自動注入装置と組み合わせて使用してもよい。投与計画は、1週間ごとに1度、筋肉内に6MUI(すなわち、30mcg)である。
【0166】
別の実施形態において、IFN−βは、この凍結乾燥粉末として、および液体処方物として提供される、Rebifである。凍結乾燥粉末は、以下:
2.0ml用量あたり処方:
3MIUのIFN−β−1a
マンニトール
HSA
酢酸ナトリウム
pH5.5
からなる。
Rebifインターフェロンの比活性は、2.7×10単位/mg(すなわち、IFN−β−1aタンパク質1ミリグラムごとに270MUの抗ウイルス活性)である。患者は、1週間に3回、皮下注射の前に、塩化ナトリウム溶液(0.9%NaCl)を用いてこの粉末を再構成する。液体Rebifの処方は、以下の通りである:
0.5ml用量あたりの処方:
6MIUまたは12MIUのIFN−β−1a
4mgまたは2mgのHSA
27.3mgマンニトール
0.4mg酢酸ナトリウム
注射用水。
この液体処方物を、あらかじめ充填したシリンジ内にパッケージし、そして1週間ごとに3回(6MIUまたは12MIU(それぞれ66μg/週または132μg/週に相当する))、自動注入装置(Rebiject)を使用してか、または使用せずに、皮下に投与する。
【0167】
さらに別の実施形態において、IFN−βは、BETASERON(登録商標)(Berlexより)であり、これは、E.coli内で産生されるcys−17→ser変異を含むIFN−βである。この非グリコシル化IFN−βは、CHO細胞内で共に産生されるAVONEX(登録商標)またはREBIF(登録商標)よりも効力が小さい。用量は、1日おきに皮下注射するために、凍結乾燥処方物および液体処方物の両方が、250mcg(8MIU)用量として、市販される。BETASERON(登録商標)は、市販される別のIFN−βであり、これは、製造者の指示に従って、皮下に投与し得る。
【0168】
IFN−βまたはその改変体はまた、可溶性IFN I型レセプターまたはその一部(例えば、このレセプターのIFN結合鎖(例えば、米国特許第6,372,207号に記載))と共に投与し得る。この特許に記載されるように、このレセプターのIFN結合鎖との複合体の形態でのIFN I型の投与は、IFNの安定性を改善し、IFNの効力を高める。この複合体は、非共有結合の複合体であっても、または共有結合の複合体ではあってもよい。
【0169】
IFN−β治療剤は、糸球体腎炎の動物モデルにおいて試験され得る。例えば、マウス、ラット、モルモット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、および非ヒト霊長類における糸球体腎炎哺乳動物モデルが、動物の腎組織に対して、適切な直接的または間接的な損傷、もしくは傷害を引き起こすことによって作られ得る。例えば、糸球体腎炎動物モデルは、糸球体の基底膜に抗体を注射することにより作られ得る(例えば、ラット動物モデルにおける実施例に記載する腎毒性腎炎(NTN))。他の動物モデルは、動物に対し、抗Thy1抗体を注射することによって作られ得る(実施例にさらに記載)。さらに他の動物モデルは、自己糸球体の基底膜を用いた免疫または片側性尿管閉塞(UUO)により確立される。
【0170】
IFN−β治療剤は、糸球体腎炎もしくは慢性腎不全を有するか、またはそれを発症する危険性がある哺乳動物の被験体(例えば、ヒト患者)に投与される場合、腎機能の標準的マーカーにおいて臨床的に有意な改善を引き起こすことにおける、その薬剤の治療効力について評価され得る。このような腎機能のマーカーは、医学文献で周知であり、そしてタンパク質尿における増加率、BUNレベル、血清クレアチニンにおける増加率、BUNの静的測定、血清クレアチニンの静的測定、糸球体濾過率(GFR)、BUN/クレアチニン比、ナトリウム(Na)の血清濃度、クレアチニンについての尿/血漿の割合、尿素についての尿/血漿比、尿の重量オスモル濃度、毎日の尿量などが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第13版のBrennerおよびLazarus(1994)を参照のこと。)
本発明はさらに、以下の実施例(限定するとは決して解釈すべきではない)により例示される。全ての引用文献(この出願全体を通して引用したような参考文献、発行された特許、公開された特許出願が挙げられる)の内容は、本明細書中に参考として明白に援用される。
【0171】
本発明の実施は、他に示さない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組み換え生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来技術(当該分野の技術内である)を使用する。このような技術は、文献に十分に説明される。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版,Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989);DNA Cloning,第I巻および第II巻(D.N.Glover編,1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編,1984);Mullisら,米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins編,1984);Transcription And Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins編,1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);論文Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos編,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,第154巻および第155巻(Wuら,編集),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (MayerおよびWalker編, Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,第I−IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell,編,1986);Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)を参照のこと。
【実施例】
【0172】
(実施例1:IFN−βは、腎不全におけるタンパク尿の有意な減少を誘導する)
この実施例は、ヒト半月体形成性糸球体腎炎に組織学的に非常に類似し、慢性腎不全を引き起こす、炎症モデルであるラット動物モデルのNTN(腎毒性腎炎)において、IFN−βが、タンパク尿を有意に減少させることについて説明する。
【0173】
この疾患を、凍結乾燥させたラット糸球体基底膜(GBM)の調製を伴うウサギの免疫により産生される腎毒性(NTS)血清を静脈注射により、ラットに誘導する。NTSはGBMに対して速やかに結合し、炎症促進性(proinflammatory)サイトカインおよび接着分子のアップレギュレーションを伴う活発な糸球体内の炎症性応答を引き起こす。糸球体への白血球の流入がある。糸球体は、フィブリンの沈着および毛細血管ループの崩壊を伴う壊死領域を次いで発症する。これは、半月体の発生−炎症細胞の蓄積およびボーマン腔における糸球体上皮細胞の増殖を引き起こす。この炎症性の腔は、尿中タンパク質の大量の損失により特徴付けられる。糸球体は、小房内のコラーゲンの蓄積および半月体の繊維性変換(fibrous transformation)を伴う進行性の瘢痕を発症する。ラットは次いで、末期腎不全を発症する。そのため、このモデルにおいては、ラットは、急性であるが一過性の腎疾患を伴い抗GBM抗体に対し反応し、そして次いで100%のこの動物が、充分に規定された経過を通してCRFへと進行する。異なるラットの系統は、この形式の腎損傷に対し様々な感受性を有し、Wistra−Kyoto(WKY)ラットは極めて感受性が高い。この動物モデルはさらに、例えば、Tamら(1999)Nephrol.Dial.Transplant.14:1658およびAllenら(1999)J.Immunol.162:5519に、説明される。
【0174】
本研究で使用するIFN−βは、GenBank登録番号第P70499号の22位アミノ酸〜184位アミノ酸に相当するラットIFN−βであった。ラットIFN−βを、懸濁増殖に適応させたチャイニーズハムスター卵母細胞(CHO)S−32細胞内で発現させ、そして培養培地内へと分泌させた。この細胞を、発酵培養において血清含有培地の中で増殖させた。IFN−βを、馴化培養培地から、Pharmacia SP−Sepharose、Blue Sepharose、およびSuperose12樹脂、ならびにBiorad Bio−Scale Ceramic HydroxyapatiteおよびBio−Scale S樹脂における順次のクロマトグラフィーを使用して精製した。IFN−βを次いで、25mM クエン酸塩/150mM塩化ナトリウム(pH4.5)に対して徹底的に透析させ、そして濾過滅菌(0.2μm)させた。IFN−β調製は、Coomassie染色非還元性SDS−PAGEゲルの濃度測定により決定した場合、99%より高度に純粋であった。比活性は、ラットRATEC細胞について測定した場合、約3×10単位/mgであると決定された。
【0175】
この実施例において、NTNを、Charles River Laboratoriesより得たWKYラット28匹に誘導した。4匹のラットを、ベースラインの組織学のために14日目で屠殺し、他のものを、腹腔内(i.p.)にIFN−β 3×10単位/日、IFN−β 6×10単位/日i.pまたはビヒクルだけのいづれかを受けさせることにより無作為化した。注射を、1週間あたり6日与え、そして処置を30日目まで続けた。タンパク尿を、7日目および次いでは毎週測定した。ラットを14日目、28日目および屠殺時に採血した。屠殺の時点で、腎臓、肺、肝臓および脾臓をホルマリンで固定し、そして腎臓は、すばやく凍結させた。
【0176】
この実施例および/または以下の実施例において分析する機能的なパラメーターを、以下のように評価した:
アルブミン尿/蛋白尿:これは、糸球体漏出、およびより軽度ではあるが、濾過されたタンパク質の尿細管代謝の機能不全を反映する。このようなデータの解釈は困難であり得る。なぜなら、これは、2つの独立する変数の積であるからである;増加したGBM透過性は、より高度の蛋白尿を導くが、低減した糸球体濾過速度は、糸球体蛋白尿を減少させる。
【0177】
尿を、採取24時間前に代謝ケージ内で回収した。尿アルブミン濃度を、ロケット免疫電気泳動によって決定した。尿タンパク質濃度を、スルホサリチル酸沈殿によって決定した。
【0178】
血清クレアチニンおよびクレアチニンクリアランス(CrCI):Olympus試薬およびOlympus AU600分析機(Olympus,Eastleigh,U.K.)を使用する血清クレアチニン濃度の決定のために、採取時に末梢血を採取した。尿クレアチニン濃度をまた、クレアチニンクリアランスの計算を可能にするために測定した(Bayer RA−XT,Newbury、U.K.)。
【0179】
生存:これらの研究の終了点は、突然死かまたは苦痛から救済するための屠殺かのいずれかである。盲検の独立した観察者によって動物を毎日観察し、そして第三者によって必要と思われる場合は瀕死の動物を屠殺する。実際には、生存研究における動物の約半分は、「屠殺」終了点に到達した。
【0180】
ヘマトキシリン染色およびエオシン染色切片を、任意の計測スケール(scoring scale)を使用して糸球体の瘢痕、尿細管の脱落、間質性炎症性浸潤物および間質性線維症の粗い評価のために得た。
【0181】
糸球体線維症:Masson−Trichrome組織化学(腎臓内のコラーゲン「負荷量」を評価する方法を提供する)によって緑色に染色された腎皮質面積の%をコンピューターによって評価した。個々の糸球体をまた、目的の領域として選択して特定の糸球体線維症を計算し得る。糸球体内の間質性線維症を定量するために、標準のトリクローム法(Martius Yellow,Brilliant Crystal ScarletおよびAniline Blue)を使用して、パラフィン包埋した腎臓切片を染色した。糸球体フィブリンの沈着(例えば、線維素様壊死)を定量するために、パラフィン包埋した腎臓切片を、フィブリンを赤/オレンジ色に染色するMartius Yellowを使用して染色した。切片を、Photonicデジタルカメラ(Photonic Science,East Sussex,U.K.)を取り付けたOlympus BX40顕微鏡(Olympus Optical,London,U.K.)を使用して、200倍の倍率下で試験した。画像を捕捉し、そしてImage−Pro PlusTMソフトウェア(Media Cybernetics,Silver Spring,MD)を使用して分析した。
【0182】
フィブロネクチンのED(A)ドメインについて腎臓切片を免疫ペルオキシダーゼ染色した後に褐色に染色された腎皮質面積の%の定量は、CRFの異なる機能的な重症度の間を区別するようである。同様に、コラーゲンIII型の免疫組織化学によって、染色された腎皮質面積の%を計算し得る。
【0183】
糸球体α平滑筋アクチン(SMA)発現を、免疫蛍光によって測定した。このタンパク質は、糸球体内の「筋線維芽細胞性」の細胞の集団を規定する。これは、糸球体線維症における重要な因子であると考えられる。αSMAについての免疫蛍光染色の定量は、糸球体Masson−トリクロム線維症スコアと良く相関する。
【0184】
図3に示す結果は、両方の用量のIFN−βを用いて処置した動物における21日目および28日目のタンパク尿の著しい減少を示す。血清クレアチン、クレアチンクリアランス、盲検的なH&E切片でランク付けされた糸球体の瘢痕もしくは尿細管間質性の瘢痕(つまり、組織的瘢痕);糸球体内のマクロファージ数もしくはCD8数;または糸球体ED(A)フィブロネクチンもしくはIV型コラーゲンの沈着、において差異はなかった。
【0185】
(実施例2:IFN−βはまた、腎損傷の急性期の間のタンパク尿を有意に減少させる)
この実施例は、腎不全の後期においてタンパク尿を減少させるうえに、IFN−βはまた、腎損傷の急性期におけるタンパク尿を減少させることを示す。
【0186】
この実施例においては、NTNを、上記のように0.1ml NTSの静脈注射により、32匹のラットに誘導した。8匹のラットは、0日目〜14日目まで1週間あたり6日間、ラットIFN−β 6×10単位/日i.p.を用いて処置した。8匹のラットを、0日目〜14日目まで1週間あたり6日間、RSA i.p.を用いて処置した。8匹のラットを、0日目〜28日目まで1週間あたり6日間、ラットIFN−β 6×10単位/日i.p.を用いて処置した。8匹のラットを、0日目〜28日目まで1週間あたり6日間、RSA i.p.を用いて処置した。尿を、タンパク尿およびクレアチニンの測定のために、7日目、14日目、21日目および28日目に代謝ケージ内で回収した。全てのラットを、14日目および屠殺時に、血清クレアチニンのために採血した。各群の半分のラットを、14日目に屠殺し半分を28日目に屠殺した。28日目にラットを屠殺する1時間前に、BrdUを、細胞増殖の評価のために注射した。以下の組織を、組織学のために、ホルマリンで固定した腎臓、肺、肝臓および脾臓。腎臓切片を、BrdU染色のためCarnoy固定液で固定した。腎臓をまた、急速に凍結させた。糸球体の瘢痕化、尿細管の萎縮、繊維化を、H&E染色切片で半定量的に評価した。
【0187】
図4に示す結果は、IFN−βが14日目、21日目および28日目のタンパク尿の著しい減少を引き起こしたこと示す。14日目および28日目の血清クレアチンおよびクレアチンクリアランスに差異はなかった。組織学的に、14日目の糸球体内のマクロファージ(ED1+細胞)およびCD8+細胞において有意な減少があったが、28日目においてはより多数であった。28日目の糸球体のα−平滑筋アクチンにおいて、また、有意な減少があった。このため、IFN−βの処置は、タンパク尿、炎症の減少には効果を有するが、瘢痕化には明白な効果を有さない。
【0188】
別の実施例において、NTNを、16匹のWKYラットに誘導し、そのうちの8匹を、0日目〜7日目まで1週間あたり6日間、ラットIFN−β 6×10単位/日i.p.を用いて処置し、そして他の8匹を、0日目〜7日目まで1週間あたり6日間、ビヒクル(ラット血漿アルブミン−RSA)のみをi.p.で用いて処置した。ラットを、6日目および7日目に代謝ケージ内で飼育した。全てのラットを7日目に屠殺した。ラットを屠殺する1時間前に、BrdUを、細胞増殖の評価のためにこれらのラットに注射した。屠殺の時点で、腎臓、肺、肝臓および脾臓を、ホルマリンで固定した。腎臓を、BrdU染色のためCarnoy固定液で固定し、急速に凍結させた。この結果は、タンパク尿、糸球体の組織学にも糸球体内のマクロファージにもCD8細胞の数においても有意な差異は表れなかったことを示す。しかし、7日目の繊維素様スコアは、コントロールの動物と比較して、IFN−βを用いて処置した動物においては低かった。さらに、糸球体内の増殖細胞の数は、コントロールの動物と比較して、IFN−βを用いて処置した動物においては有意に少なかった(図5を参照のこと)。
【0189】
(実施例3:IFN−βは、腎不全動物モデルのThy糸球体腎炎におけるタンパク尿の有意な減少を誘導する)
この実施例は、メサンギウム増殖性糸球体腎炎においてIFN−βによりタンパク尿もまた有意に減少することを示す。
【0190】
この実施例については、Thy1糸球体腎炎の動物モデルを使用した。これは、タンパク尿の増加、メサンギウム細胞の増殖およびメサンギウムマトリックスの蓄積により特徴付けられる、メサンギウム増殖性糸球体腎炎の動物モデルである。このモデルは、メサンギウム細胞がThy1抗原を発現するという事実に依存する。Lewisラットに、モノクローナル抗Thy1抗体の1回の静脈注射を与える。これは、急速でかつ再現性のある補体媒介性の糸球体メサンギウム細胞の壊死(メサンギウム溶解)を引き起こす。タンパク尿は、24時間までに現われ、そして少なくとも10日間持続する。メサンギウム溶解の後に、メサンギウム細胞が増殖して過剰なメサンギウムマトリックスの産生がある修復期が続く。これは、タンパク尿およびメサンギウム細胞の増殖の再現性のあるモデルである。
【0191】
Thy1糸球体腎炎を、0.2ml(2.5mg/kg)抗Thy1抗体ER4の注射により、16匹のLewisラットおよび4匹のWKYラットに誘導した。8匹のLewisラットは、0日目〜10日目まで1週間あたり6日間、ラットIFN−β 6×10単位/日i.p.を受けた。8匹のLewisラットは、0日目〜10日目まで1週間あたり6日間、i.p.へ、ビヒクル(ラット血清アルブミン−RSA)のみを受けた。4匹のWKYラットは、何の処置も受けず、そして疾患の進行を、0日目〜10日目まで観察した。ラットを、6日目および7日目および9日目および10日目に代謝ケージ内で飼育した。ラットを10日目に屠殺した。ラットを屠殺する1時間前に、BrdUを、細胞増殖の評価のためにこれらラットに注射した。屠殺の時点で、腎臓、肺、肝臓および脾臓を、ホルマリンで固定した。腎臓を、BrdU染色のためにCarnoy固定液で固定し、急速に凍結させた。
【0192】
図6に示す、この結果は、タンパク尿が、7日目および10日目に有意に減少したことを示す。血漿クレアチニンにおいては、何ら差異はみられないが、しかし、クレアチニンクリアランスは、処置群においてより低い傾向を示した(図7)。糸球体の微細動脈瘤の存在により評価した場合、迅速な糸球体の損傷においては何ら差異はなかった。しかし、糸球体高細胞性は、IFN−βを用いて処置したラットにおいて有意に減少した(図8)。
【0193】
(実施例4:IFN−βは、ピューロマイシンアミノヌクレオシド腎症(PAN)の動物モデルにおけるタンパク尿の有意な減少を誘導する)
PANを、各200gの4匹のオスWistarラットに誘導した。2匹のラットは、0日目に腹腔内(i.p.)に20mgのピューロマイシンアミノヌクレオシド(PA;)を受け、そして2匹のラットは、0日目に静脈内(i.v.)に20mgのPAを受けた。ラットを、3日目〜4日目および7日目〜8日目、代謝ケージ内で飼育した。全てのラットを8日目に屠殺した。この結果は、タンパク尿が、i.p.注射したラットにおいて、4日目および8日目にそれぞれ、46(mg/24時間)および287の平均値を有し、ならびにi.v.注射したラットにおいて、4日目および8日目にそれぞれ、122および194の平均値を有したことを示した。
【0194】
この動物モデルにおけるIFN−βの効果を、以下のように示した。PANを、上記のようにラットに誘導した。ラットは、6×10単位、6×10単位、6×10単位、6×10単位のラットIFN−βまたは緩衝液のみを受けた。図9に示す結果は、IFN−βの投与が、7日目および14日目のタンパク尿を有意に減少させることを示す(最も少ない投与量のIFN−βであっても)。
【0195】
このため、この実施例の結果および前述の実施例の結果は、IFN−βが、タンパク尿および糸球体の増殖の減少、ならびに炎症性細胞(例えば、糸球体マクロファージおよびCD8+細胞)の減少により証明されるように、腎疾患における炎症を減少させることを示す。このためIFN−βは、処置(例えば、糸球体腎炎、急性腎不全および慢性腎不全の防止)に使用し得る。
【0196】
(等価物)
当業者は、本明細書中に記載した本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識し、または慣用実験に過ぎないものを使用して、これらを確認することができる。このような等価物は、特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【0197】
【数3】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−144204(P2011−144204A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−96450(P2011−96450)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【分割の表示】特願2004−521961(P2004−521961)の分割
【原出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】