インターフェロンアルファ5を生産する方法
インターフェロンアルファ5(IFNa5)産生Escherichia coli宿主細胞における発現によってIFNa5タンパク質を生産する方法が開示され、ここで、そのポリペプチド鎖のN末端への余分なメチオニン残基の組み込み、およびその酸化種の生成は最小限に抑えられる。IFNa5タンパク質は、効率的な方法によって精製され、生物学的に活性なIFNa5を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェロンアルファ5(IFNa5)産生Escherichia coli宿主細胞における発現によってIFNa5タンパク質を生産する方法であって、ポリペプチド鎖のN末端への余分なメチオニン残基の組み込み、およびその酸化種の生成が最小限に抑えられた方法に関する。IFNa5タンパク質は、効率的な方法によって精製され、生物学的に活性なIFNa5を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
インターフェロン(IFN)は、サイトカインとして知られる天然に産生される多面発現性の糖タンパク質の一群であり、一連の刺激(ウイルス、細菌、細胞、腫瘍および高分子)からの誘導によって様々な種類の細胞(上皮細胞、線維芽細胞、リンパ球、マクロファージ)から分泌され、抗ウイルス特性、抗増殖特性および免疫調節特性ならびに鎮痛作用を有する。インターフェロンは、その内因性産生の後またはその投与の後、細胞表面上の特異的な受容体と相互作用し、細胞質を通過して核までのシグナル伝達を開始し、抗ウイルス活性および免疫賦活活性を有する特異的なタンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導する。いくつかの異なるタイプのIFNがヒトでの使用を承認されていることから実証されているように(例えば、多発性硬化症の治療用の薬物としての、IFN1a(Rebif,Avonex)、IFN1b(Betaseron)、ならびに悪性疾患(癌)およびウイルス性疾患の治療用の薬物としての、組換えヒトIFNa2a(Roferon A)およびIFNa2b(Intron A))、IFNの医学上の潜在能力は認識されている。
【0003】
IFNがシグナルを伝達する受容体のタイプに基づいて、ヒトIFNは、3つの主要なタイプ、すなわち、(i)IFN I型[すべてのI型IFNは、IFN−アルファ受容体(IFNAR)として公知の特異的な細胞表面受容体複合体に結合し、ヒトのI型IFNは、IFNアルファ(IFN−α)、IFNベータ(IFN−β)およびIFNオメガ(IFN−ω)である。]、(ii)IFN II型[II型IFNは、IFN−ガンマ受容体(IFNGR)に結合し、ヒトのII型IFNは、IFNガンマ(IFN−γ)である。]、およびIFN III型[III型IFNは、IL10R2およびIFNLR1からなる受容体複合体を通じてシグナルを伝達する。]に分類される。I型IFNとして公知のIFNアルファおよびベータは、構造的に相関しており、酸性pHにおいて安定であり、同一細胞受容体(IFNAR)に対して競合する。
【0004】
現在、IFNアルファ、ベータおよびガンマは、組換え型として作製することができ、その組換え型は、天然の起源(白血球、線維芽細胞、リンパ球)からの単離によって得られる量よりもかなり大量の産物を得ることができること、並びにその産物の精製および安全性検査のプロセスの複雑さを低減させることができることの二重の利点を有する。実際に、販売されている医薬品グレードの組換えIFNの大部分が、Escherichia coliから産生され、精製されている。
【0005】
E.coli組換えタンパク質発現系は、IFNの生産にとって最適な系であったし、今なおそうである。確かに、IFN遺伝子はイントロンを有さず、そのタンパク質産物は通常グリコシル化されない。さらに、E.coliは、高い細胞密度まで急速に増殖することができ、組換えタンパク質の生産に使用される株は、そのタンパク質が大規模発酵に対して安全であると一般にみなされるように遺伝的に改変されている。
【0006】
IFN cDNAの発現は、それが初めてクローニングされた直後にE.coliにおいて直接達成された[Goedell et al.Nature.,287,411−416,1980;Pestka,S.Arch.Biochem.Biophys.,221(1),1−37,1983;Mizoguchi et al.DNA.,4,221−32,1985;Pestka et al.Ann.Rev.Biochem.,56,727−777,1987;Baron and Narula.Critical reviews in Biotechnology,10(3),179−190,1990]。実際に、IFNアルファ(IFNa)は、DNA組換え技術によってE.coliを用いて生産された最初のタンパク質の1つである[Derynck et al.,Nature,287,193−197,1980;Nagata et al.,Nature,284,316−320,1980]。
【0007】
しかしながら、E.coliにおけるIFNの発現には、いくつかの問題がある。E.coliにおいて大量に発現されるIFNは、一般にミスフォールドしたタンパク質であり、それゆえ生物学的に不活性である[Villaverde and Carrio,Biotechnol.Lett.,25,1385−1395,2003]、封入体(IB)と呼ばれる不溶性の凝集体として沈殿することが多い[Swaminathan et al.,Prot Express.Purif.,15,236−242,1999;Bedarrain et al.,Biotechnol.Appl.Biochem.,33,173−182,2001;Srivasta et al.Prot.Express.Purif 41,313−322,2005]。そのようなタンパク質を天然型で得るためには、前記IBを変性相、続いて再生相に付す必要があり、天然のタンパク質におけるようにジスルフィド架橋が形成される必要がある状況では酸化に付す必要がある。さらに、標的タンパク質配列(例えば、IFN)のN末端における余分なメチオニン残基の組み込みは、E.coliにおけるタンパク質発現の特有な特徴である。公知であるように、タンパク質の配列内に分布するメチオニン残基は酸化しやすい。そのようなプロセスは、そのタンパク質、または前記タンパク質を含む医薬組成物(それを薬物、例えば、IFNとして使用することができる場合)を製造するプロセス中に生じることがあり、高温での長期間貯蔵中においてより顕著である。
【0008】
IFNを細菌においてIBとして産生および精製するいくつかの方法が開発されているが[例えば、Thatcher and Panayotatos,Methods Enzymol.119,166−177,1986;米国特許第4511502号;米国特許第4765903号;米国特許第4845032号;欧州特許第1310559号;または欧州特許第1990349号]、IFN、すなわち治療等級のIFNaの産生および精製の成功を妨害する可能性があるさらなる要因(例えば、標的IFNのN末端に余分なメチオニン残基が組み込まれること、および(その産物を薬物として使用する場合)除去する必要のあるその酸化種が生成され、それゆえIFN生産の全収率が低下し、精製プロセスの複雑さが高まり、治療等級のアルファIFNを生産および精製する方法を面倒なものにすること)が存在する。
【0009】
したがって、治療等級のIFNa、特にIFNa5をE.coli宿主細胞から高収率かつ対費用効果の高いやり方で生産することを可能にする方法が依然必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、今般、驚いたことに、発酵培地中の微量元素(痕跡元素)の濃度が、IFNa5の翻訳後修飾において重要な役割を果たすことを見出した。したがって、発酵培地中の微量元素の濃度を制御すると、IFNa5産生E.coli宿主細胞において産生されるIFNa5のN末端への余分なメチオニン残基の組み込み、およびその酸化種の生成を最小限に抑えることが可能であり、それによって、生産収率が高まり、精製プロセスを単純化できることから、IFNa5産生E.coli宿主細胞において産生されるIFNa5、すなわち、治療等級のIFNa5を生産および精製する方法を、対費用効果が高く、複雑さの低減された方法とする。
【0011】
有効なことには、実施例4は、1リットル(L)の炭素供給液が、約3.0mL〜約3.7mLの微量元素原液を含み、好ましくは、誘導後の平均比増殖速度(μ)が0.17以上であるとき、酸化型のメチオニル化ヒトIFNアルファ−5(hIFNa5)型の生成が無くなり、アセチル化hIFNa5型の量が2倍減少する(すなわち、半分になる)ことを示している。
【0012】
それゆえ、一つの態様において、本発明は、インターフェロンアルファ5(IFNa5)産生Escherichia coli宿主細胞における発現によってIFNa5タンパク質を生産する方法であって、その方法が:
a)IFNa5産生E.coli宿主細胞を用意する工程と;
b)発酵培地中で前記組換えIFNa5産生E.coli宿主細胞が前記IFNa5タンパク質を発現するのに有効な条件下でIFNa5産生E.coli宿主細胞を、炭素供給液を添加しながら培養する工程であって、ここで、
−前記発酵培地は、動物起源または酵母起源由来の成分を含まず、かつ
−前記炭素供給液は、炭素源、および添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0〜約3.7mLの微量元素溶液を含んでなる工程と;
c)発現したIFNa5タンパク質を単離し、そして必要に応じて精製する工程とを少なくとも含んでなることを特徴とする方法に関する。
【0013】
特定の実施形態において、前記E.coli宿主細胞は、E.coliプロテアーゼ欠損株、例えば、E.coli Ion−/ompT−プロテアーゼ欠損宿主株、好ましくは、E.coli BL21株、最も好ましくは、E.coli BL21(DE3)株である。
【0014】
別の特定の実施形態において、E.coli株が、E.coli BL21(DE3)株であるとき、工程b)の条件は、IPTGによる誘導を含む。
【0015】
別の特定の実施形態において、発現したIFNa5タンパク質を単離、および精製する工程c)は、精製IFNa5を得るために、順次、
E.coli宿主細胞を溶解する工程と、
その後、封入体(IB)を可溶化に付し、そして、得られた混合物を酸化再生に付し、さらに下記を含む一連のクロマトグラフィー:
1)再生IFNa5を含んでなる混合物を、疎水性相互作用クロマトグラフィーに付す工程;
2)工程1)で得られた溶液を、陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;
3)工程2)で得られた溶液を、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;および
4)工程3)で得られた溶液を、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程であって、ここで、前記溶液を、必要に応じて、メチオニンを含む緩衝液で希釈する工程、
に付すことによって、前記IFNa5タンパク質を前記IBの形態で単離する工程と、を含んでなる。
【0016】
特定の実施形態において、前記IFNa5は、好ましくは、ヒトIFNa5(hIFNa5)である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、IFNa5産生株の構築のフローチャートを示す。
【図2】図2は、最初のプラスミドDNA pET28−IFNアルファ−5の制限酵素解析(restriction analysis)の結果を示す。レーン1〜3および5〜7:pET28−IFNアルファ−5の制限酵素解析;レーン1および5:pET28−IFNアルファ−5/BamHI;レーン2および6:pET28−IFNアルファ−5/NdeI;レーン3および7:pET28−IFNアルファ−5/NdeI+BamHI;レーン4および8:未切断のpET28−IFNアルファ−5。マーカーDNA(Gene Ruler DNA Ladder Mix,Fermentas,Lithuania)のバンドのサイズが、キロ塩基対(kbp)の単位で示されている。
【図3】図3は、中間体プラスミドIFNアルファ−5の制限酵素解析の結果を示す。このプラスミドは、単一クローンから得られた。マーカーDNA(Gene Ruler DNA Ladder Mix,Fermentas,Lithuania)のバンドのサイズが、kbpの単位で示されている。予想されるフラグメントサイズ(単位はbp)を括弧内に記載する。レーン1:pUC57−IFNアルファ−5/PstI(28;3197);レーン2:pUC57−IFNアルファ−5/PvuII(455;406;2364);レーン3:pUC57−IFNアルファ−5/NdeI(250;2975)。
【図4】図4は、いくつかのコドンをE.coliにおいて使用頻度が最も低いコドンで置き換えることによってE.coliにおける発現について最適化されたヒトIFNアルファ−5(hIFNa5)をコードするフラグメントの完全ヌクレオチド配列を示している。置換したヌクレオチドに下線を引いている。
【図5】図5は、プラスミドpET21−IFNアルファ−5の制限酵素解析の結果を示す。このプラスミドは、単一クローンから得られた。マーカーDNA(Gene Ruler DNA Ladder Mix,Fermentas,Lithuania)のバンドのサイズが、kbpの単位で示されている。予想されるフラグメントサイズ(単位はbp)を括弧内に記載する。レーン1:pET21−IFNアルファ−5/PagI(673;817;1008;3423);レーン2:pET21−IFNアルファ−5/PstI(1352;4569);レーン3:pET21−IFNアルファ−5/NdeI+BamHI(516;5405)。
【図6】図6は、組換えIFNa5タンパク質の発現を示す。9つのコロニーから拾った細胞培養E.coli BL21(DE3)pET21−IFNアルファ−5(レーン1〜9)を、750mLフラスコ(LB培地、体積250mL)内で、OD600が約1.2になるまで、37℃で増殖させた。標的タンパク質の発現を、1mM IPTGで2.5時間誘導した。全細胞タンパク質サンプルを、BioRad Protein Markers(単位はkDaで、左側に示される)とともに15%SDS−PAGEで泳動した後、クマシーブルーで染色した。
【図7】図7は、組換えhIFNa5の生合成のフローチャートを示す。
【図8A】図8は、hIFNa5タンパク質を還元条件下(図8A)および非還元条件下(図8B)両方においてSDS−PAGE(14%)で測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を表す(この図は、hIFNa5タンパク質の3つの大規模精製バッチの結果を示す)。
【図8B】図8A参照。
【図9】図9は、「逆相高速液体クロマトグラフィー」(RP−HPLC)解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す(この図は、組換えhIFNa5の3つの大規模バッチの結果を示す)。
【図10】図10は、「サイズ排除HPLC」(SE−HPLC)解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す(この図は、組換えhIFNa5の3つの大規模バッチの結果を示す)。
【図11】図11は、等電点電気泳動解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す(この図は、組換えhIFNa5の3つの大規模バッチの結果を示す)。レーン1、11:pIスタンダード(Amersham Pharmacia);レーン2、3、4:組換えhIFNa5,15μg;レーン5、6、7:組換えhIFNa5,5μg;レーン8、9、10:組換えhIFNa 5,1μg。
【図12】図12は、本発明によって精製、そして製剤化された3つの組換えhIFNa5調製物の大規模バッチのペプチドマッピングクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本発明の理解を促すために、本発明との関係において使用されるいくつかの用語および表現の意味をここに提供する。
【0019】
本明細書において、用語「インターフェロンアルファ5」(または「IFNアルファ5」または「IFNa」)とは、ウイルス感染に対する自然免疫反応に主に関わっていることが明らかで、IFNa受容体(IFNAR)として公知の特異的な細胞表面受容体複合体に結合することができる、白血球によって産生されるタンパク質を指す。
【0020】
IFNa5タンパク質は、例えば、WO83/02459号公報に記載されている(hIFNa5)。
【0021】
用語「IFNa5」には、(i)少なくとも天然IFNa5タンパク質のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列、および(ii)天然IFNa5と共通の生物学的活性を有するタンパク質が含まれる。実質的に同一のアミノ酸配列とは、その配列が、同一であるか、あるいは合成タンパク質と天然IFNa5との間に有害な機能的差異を生じさせない1つ以上のアミノ酸改変(すなわち、欠失、付加、置換)の差で異なっていることを意味し、例えば、言及されるIFNa5タンパク質のうちの1つと少なくとも70%の同一性を有するIFNa5タンパク質である。IFNa5タンパク質(P)と参照のIFNa5タンパク質(R)との間のX%の同一性とは、それらの2つの配列をアラインメントしたとき、PのX%のアミノ酸が、配列R内の対応するアミノ酸と同一であるか、あるいは同じ群のアミノ酸、例えば:
−非極性R基を有するアミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン;
−無電荷極性R基を有するアミノ酸:グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン;
−電荷極性R基(pH6.0において負に帯電)を有するアミノ酸:アスパラギン酸、グルタミン酸;
−塩基性アミノ酸(pH6.0において正に帯電):リジン、アルギニン、ヒスチジン(pH6.0において);
−フェニル基を有するアミノ酸:フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン
によって置き換えられていることを意味する。
【0022】
特に好ましい保存的置換は、以下である:
正電荷が維持され得るような、LysのArgへの置換、その逆もまた同様;
負電荷が維持され得るような、GluのAspへの置換、その逆もまた同様;
遊離−OHが維持され得るような、SerのThrへの置換;ならびに
遊離NH2が維持され得るような、GlnのAsnへの置換。
【0023】
これらの配列同一性のパーセンテージは、BLASTプログラム(blast2seq,デフォルトパラメータ)[Tatutsova and Madden,FEMS Microbiol.Lett.,174,247−250(1990)]を用いることによって得ることができる。
【0024】
本明細書において、用語「IFNa5産生E.coli宿主細胞」とは、IFNa5に関連する生物学的活性を有するタンパク質を産生するように遺伝的に操作したE.coli宿主細胞を指す。特定の実施形態において、E.coli宿主細胞は、E.coliプロテアーゼ欠損株(例えば、E.coli Ion−/ompT−プロテアーゼ欠損宿主株、好ましくは、E.coli BL21株、最も好ましくは、E.coli BL21(DE3)株)である。
【0025】
本明細書において、用語「IFNa5の生物学的活性」とは、前記IFNa5の治療活性を含む前記IFNa5の任意の生物学的活性のことを指す。WO83/02459号公報には、IFNa5が、DNAウイルスおよびRNAウイルスに対する抗ウイルス活性、細胞成長活性、ならびに細胞内の酵素および細胞が産生する他の物質の産生を制御する能力を示すことが開示されており;したがって、IFNa5を使用することにより、ウイルス感染(例えば、慢性B型肝炎感染)、腫瘍および癌が治療され得ることが期待される。
【0026】
本明細書において、発酵培地が「動物起源または酵母起源由来の成分を含まない」という表現は、医薬製品を介して海綿状脳症を引き起こす物質を伝染させるリスクがないこと、医薬品に関連するBSE汚染またはvCJDの症例に関するいかなる証拠もないことを意味する。製品は、酵母細胞由来の微量の汚染タンパク質を含まない。
【0027】
IFNa5を生産する方法
一つの態様において、本発明は、IFNa5産生Escherichia coli宿主細胞における発現によってインターフェロンアルファ5(IFNa5)タンパク質を生産する方法(以下「本発明の方法」という。)であって、そのプロセスが:
a)IFNa5産生E.coli宿主細胞を用意する工程と;
b)発酵培地中で前記組換えIFNa5産生E.coli宿主細胞が前記IFNa5タンパク質を発現するのに有効な条件下でIFNa5産生E.coli宿主細胞を、炭素供給液を添加しながら培養する工程であって、ここで、
−前記発酵培地は、動物起源または酵母起源由来の成分を含まず、かつ
−前記炭素供給液は、炭素源、および添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0〜約3.7mLの微量元素溶液を含んでなる、工程と;
c)発現したIFNa5タンパク質を単離し、そして必要に応じて精製する工程とを少なくとも含んでなることを特徴とする方法に関する。
【0028】
本発明の方法によって生産され得る組換えIFNa5は、先に定義した。特定の実施形態において、本発明の方法によって生産され得る前記組換えIFNa5は、天然IFNa5と実質的に同一のIFNa5タンパク質、すなわち、IFNa5をコードする遺伝子、または(1)少なくとも天然IFNa5のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列および(2)天然IFNa5と共通の生物学的活性を有するタンパク質をコードする、その組換え体で形質転換されたIFNa5産生E.coli宿主細胞によって産生されるタンパク質である。好ましい実施形態において、前記IFNa5は、hIFNa5である。
【0029】
より特定の実施形態において、本発明の方法によって生産される組換えIFNa5は、そのポリペプチド鎖のN末端に余分なメチオニン残基を有する成熟hIFNa5に対応する配列番号1(図4)に示されるアミノ酸配列を有するIFNa5である。
【0030】
本発明の方法によれば、IFNa5産生E.coli宿主細胞は、用意される[工程a)]。原則、任意のE.coli株を本発明の方法において使用することができるが、好ましい実施形態において、E.coli宿主細胞は、E.coliプロテアーゼ欠損株(例えば、E.coli Ion−/ompT−プロテアーゼ欠損宿主株、好ましくは、E.coli BL21株、最も好ましくは、E.coli BL21(DE3)株)である。
【0031】
IFNa5産生E.coli宿主細胞は、IFNa5をクローニングおよび発現させる従来の方法およびプロトコルによって得ることができる[例えば、Sambrook et al.Molecular cloning:A Laboratory Manual.Second ed.,CSH Laboratory,Cold Spring Harbor,1989;Current Protocols in Molecular Biology,vol.1−3(Ausubel F.M.et al.,ed.)John Wiley & Sons,Inc.,Brooklyn,New York,1994−1998]。特定の実施形態において、IFNa5をコードする遺伝子のクローニングおよび発現、ならびに組換えIFNa5タンパク質を産生する細菌株(すなわち、IFNa5産生E.coli宿主細胞)の構築は、IFNa5をコードするcDNA遺伝子のクローニング、E.coliにおけるその発現が最適となるような前記遺伝子のDNA配列の改変、発現プラスミドの構築、選択されたプラスミドを好適なE.coli株へ導入する形質転換、そして発現/誘導条件の選択を含んでなる方法によって行うことができる。実施例1は、hIFNa5産生E.coli宿主細胞の構築を開示する。
【0032】
特定の実施形態において、E.coli宿主細胞がE.coliプロテアーゼ欠損株(例えば、E.coli BL21(DE3)株)であるとき、前記宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下で、IFNa5タンパク質をコードする配列を含んでなるベクターで形質転換され;この場合、そのタンパク質の発現は、インデューサー(例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG))の添加を必要とする。したがって、特定の実施形態によれば、E.coli宿主細胞がE.coli BL21株(例えば、E.coli BL21(DE3)株)であるとき、工程b)の条件は、IPTGによる誘導を含む。
【0033】
本発明の方法の工程b)において、IFNa5産生E.coli宿主細胞は、発酵培地中で前記組換えIFNa5産生E.coli宿主細胞が前記IFNa5タンパク質を発現するのに有効な条件下で、炭素供給液を添加しながら培養され、ここで
−前記発酵培地は、動物起源または酵母起源由来の成分を含まず、かつ
−前記炭素供給液は、炭素源、および添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0〜約3.7mLの微量元素溶液を含んでなる。
【0034】
前記IFNa5タンパク質を発現させるためにIFNa5産生E.coli宿主細胞が培養されなければならない有効な条件は、通常、当業者に公知である。前記条件としては、培養されるE.coli宿主細胞に適した窒素源、炭素源および金属源を含んでなる発酵培地が挙げられる。ただし、本発明によれば、その発酵培地は、動物起源または酵母起源由来の成分を含まない(例えば、合成化学発酵培地)。
【0035】
特定の実施形態において、第二リン酸アンモニウムおよびアンモニアを、単独で、またはこれらの併用で、窒素源として使用することができる。別の特定の実施形態において、炭素源は、クエン酸、グルコースまたはそれらの組み合わせであり得る。
【0036】
実施例2は、IFNa5産生E.coli BL21(DE3)株を培養するための発酵培地を開示し、前記培地は、第二リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸二水素カリウム、クエン酸、D(+)−グルコースおよび微量元素原液を含んでなり、ここで、前記微量元素原液は、鉄、カルシウム、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、モリブデン、ホウ素およびそれらの組み合わせからなる微量元素の群から選択される微量元素を含んでなる。特定の実施形態において、前記発酵培地は、塩化鉄(III)、塩化カルシウム、硫酸亜鉛(II)、硫酸マンガン(II)、硫酸銅(II)、塩化コバルト(II)、モリブデン酸ナトリウム、ホウ酸およびそれらの組み合わせからなる微量元素源の群から選択される微量元素源を含んでなる。特定の実施形態において、微量元素(痕跡元素)原液は、(単位g/Lで):塩化鉄(III)六水和物(30.0)、塩化カルシウム二水和物(4.05)、硫酸亜鉛(II)七水和物(6.75)、硫酸マンガン(II)一水和物(1.5)、硫酸銅(II)五水和物(3.0)、塩化コバルト(II)六水和物(1.14)、モリブデン酸ナトリウム二水和物(0.3)およびホウ酸(0.69)を含んでなる[実施例4]。
【0037】
本発明の方法の別の特徴は、炭素供給液が、炭素源、および添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0〜約3.7mLの微量元素溶液を含んでなるという事実を指す。前記微量元素溶液の詳細は、先に定義した。特定の実施形態において、炭素供給液は、炭素源(例えば、クエン酸および/またはグルコース)、硫酸マグネシウム、および本発明によれば、添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0mL〜約3.7mLの微量元素溶液という濃度での濃縮微量元素溶液を含んでなる。上で述べたように、実施例2および4は、鉄、カルシウム、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、モリブデン、ホウ素およびそれらの組み合わせからなる微量元素の群から選択される微量元素を含んでなる微量元素原液を開示し;特定の実施形態において、前記微量元素原液は、塩化鉄(III)、塩化カルシウム、硫酸亜鉛(II)、硫酸マンガン(II)、硫酸銅(II)、塩化コバルト(II)、モリブデン酸ナトリウム、ホウ酸およびそれらの組み合わせを含んでなる。特定の実施形態において、炭素供給液1リットルあたり約3.0mL〜約3.7mLの微量元素溶液という濃度で含められてなる微量元素原液が、実施例2および4が開示する微量元素原液である。実施例2は、産生株によるhIFNa5の生合成プロセスを開示する。
【0038】
本発明者らによって行われた種々の研究から、組換えIFNa5(例えば、hIFNa5)の翻訳後修飾に対する微量元素の影響、すなわち、E.coliにおいて産生される組換えIFNa5(例えば、組換えhIFNa5)の精製API(医薬品原薬)に見出される酸化型Metの相対量が、そのポリペプチド鎖のN末端における「プロセシングされないメチオニン」の量と密接に関連することが示された。N末端における10%未満の前記プロセシングされないメチオニンを得るために、リフォールディング後の酸化型Met IFNa5の量(RP−HPLCによって測定される)は、多くとも1%を構成すべきである。
【0039】
組換えhIFNa5生合成プロセスの最適化において、本発明者らは、発酵培地中の微量元素の濃度が、hIFNa5の翻訳後修飾に対して重要な影響を及ぼすことを観察した。実際に、1Lの炭素供給液が、3.0mL〜3.7mLの前記微量元素原液を含むとき、またはそれが0.0048mL/L/o.u.〜0.0070mL/L/o.u.[o.u.:光学単位]の限度内であるとき、酸化型のメチオニル化hIFNa5型(酸化型Met hIFNa5)の生成が無くなり、アセチル化hIFNa5型の量が2倍減少する(半分になる)ことが明らかになった。
【0040】
特定の実施形態において、本発明の方法は、誘導後の平均「比増殖速度」(μ)が0.17以上である条件下で行われる[μ:((ln OD2−ln OD1)/T2−T1)。ここで、ODは、「光学濃度」(光学単位,o.u.)であり、Tは、「時間」である。]。本発明者らによって行われた研究から、培養物の増殖と微量元素の濃度とは密接に相互依存的であり、特に、微量元素の濃度が非常に低い/ほぼ限界濃度であるとき、密接に相互依存的であることが示された。培養培地中の微量元素の濃度が、0.95mL/L最終懸濁液体積(実施例4,表3)より低いか、または3.0mL/L炭素供給液未満であるとき、誘導後の平均μは、僅か0.121〜0.158、すなわち、0.17未満となる(M−83、M−84、M−85、M−86)。しかしながら、誘導後の平均μが0.17未満であるとき、酸化型のメチオニル化IFNa5型の存在が事実上保証される。1.23mL/L最終懸濁液体積より高い培養培地中の微量元素の濃度は、より速い増殖(M−89、M−90)、より大きなWCW(菌体の湿重量)、そしてより多量のアセチル化IFNa5型+未知タンパク質をもたらす。しかしながら、誘導後の平均μが0.17以上であるとき、本発明の方法は、微量元素の濃度が0.123mL/L最終懸濁液体積より高くなるまで、または3.7mL/L炭素供給液より高くなるまで、上手く機能する。
【0041】
本発明の方法の工程c)は、発現したIFNa5タンパク質を単離し、そして必要に応じて精製することを含んでなる。特定の実施形態において、IFNa5産生E.coli宿主細胞を溶解した後、封入体(IB)を可溶化に付して、変性IFNa5を含んでなる混合物を得て、次いでそれを酸化再生処理に付して、再生IFNa5を含んでなる混合物を得て、その後その混合物を精製プロセスに付して、対応する精製IFNa5を得ることによって、IFNa5タンパク質を、前記IBの形態で単離する。特定の実施形態において、前記IFNa5は、好ましくはhIFNa5である。
【0042】
本発明の方法によって発現したIFNa5を単離および精製するためには、まず、前記組換えIFNa5を封入体(IB)の形態で単離するために、IFNa5産生E.coli宿主細胞を溶解する。つまり、特定の実施形態において、従来の手法(例えば、均質化、超音波処理または圧力循環)を用いることによって、IFNa5産生E.coli宿主細胞の細胞膜を溶解する。好ましい方法としては、超音波処理、またはポッター型ホモジナイザー(テフロン(登録商標)/ガラス)を用いた均質化が挙げられる。細胞を溶解した後、IFNa5を含むIBを、例えば遠心分離によって、溶解物の液相から分離し、適切な緩衝液に再懸濁する。その中の任意の水溶性E.coliタンパク質を除去するために、そのIBを必要に応じて洗浄してもよい。
【0043】
続いて、変性IFNa5を含む混合物を得るために、通常、水性緩衝液中、可溶化剤(例えば、カオトロピック剤、例えば、水素結合を解離し、タンパク質の三次構造および二次構造に影響してそのアンフォールディングを引き起こすタンパク質変性剤)の存在下で、前記IBを可溶化する。カオトロピック剤の説明に役立つ非限定的な例としては、尿素およびグアニジニウム塩酸塩(GdmHCl)、好ましくは、ポリペプチド鎖のカルバモイル化(濃尿素溶液が使用される場合に生じることがある)を妨げる強力なカオトロピック剤であるグアニジニウム塩酸塩が挙げられる。カオトロピック剤の濃度は、使用される特定のカオトロピック剤および存在する細胞材料の量に左右されるであろう。好ましくは、6〜7M、最も好ましくは、6Mの濃度を有するグアニジニウム塩酸塩溶液が使用される。pHは、カオトロピック剤を含む好適な緩衝液を加えることによって調整されてよく、好ましくは、pHは、7超、典型的には約8以上、好ましくは8.6以上、より好ましくは9.55〜9.65であり得る。通常、好ましい実施形態において、IBの可溶化は、リフォールディング工程と同じpHで行われるので、リフォールディング工程のために可溶化溶質のpHをさらに調整することは回避される。
【0044】
IFNa5を含んでなるIBを可溶化した後、不溶性の粒子状物質を分離し、廃棄する。変性IFNa5を含んでなる混合物中に存在する変性IFNa5を、前記混合物を再生緩衝液などの再生溶液で希釈することによって、再生する。特定の実施形態において、前記再生緩衝液は、7.0を超えるpH、典型的には約8以上のpH、好ましくは8.6以上のpH、より好ましくは9.55〜9.65のpHを有する緩衝液系に、不安定化剤(例えば、L−アルギニンなど)、酸化還元対(例えば、GSH/GSSGなど)、および必要に応じてキレート化合物を含んでなる。再生後、任意の残留粒子状物質を除去するために、得られた正しく折り畳まれたIFNa5を含むタンパク質溶液を、従来の手法、例えば、遠心分離または濾過によって清澄化する。その後、必要であれば、清澄化されたタンパク質溶液のpHを好適な酸(例えば、HCl)で8.0〜8.20に調整し、次いで、再生IFNa5(タンパク質溶液)を含む混合物をIFNa5の精製に適した任意のプロセスに付す。
【0045】
実際には、任意のIFNa5精製プロセスを使用することができるが、本発明はさらに、IFNa5を精製するための効率的なプロセスを提供し、そのプロセスは、再生IFNa5を下記4工程のクロマトグラフィー処理に付す工程を含んでなる:
1)再生IFNa5を含んでなる前記混合物を、疎水性相互作用クロマトグラフィーに付す工程;
2)工程1)で得られた溶液を、陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;
3)工程2)で得られた溶液を、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;および
4)工程3)で得られた溶液を、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程であって、ここで、前記溶液を、必要に応じてメチオニンを含む緩衝液で希釈する、工程。
【0046】
つまり、再生IFNa5を他の成分、例えば、残留カオトロピック剤などから分離するために、工程1)において、酸化再生処理後に得られたタンパク質プールを含んでなり、pHが調整された清澄化タンパク質溶液を、Phenyl−Sepharoseカラムに適用する。さらに、再生IFNa5と吸着剤の疎水性表面との接触が、IFNa5の成熟を促進する。
【0047】
次いで、工程2)では、工程1)で得られたタンパク質プールを、伝導率について調整し(例えば、13.00〜14.00mS/cm)、そしてpHを8.75〜8.85に調整し、IFNa5モノマーをその凝集型から分離するために、Q−Sepharoseカラム(陰イオン交換クロマトグラフィー)に適用する。特定の純度(例えば、55%以上)を有する画分を、さらなる精製のためにプールすることができる。
【0048】
続いて、工程3)では、工程2)で得られたタンパク質プールを、伝導性について調整し(例えば、6.00〜7.00mS/cm)、そしてpHを5.15〜5.20に調整し、N−メチオニル−IFNa5およびアセチル化IFNa5(翻訳後修飾の産物の形態)のような荷電アイソフォームから主要なIFNa5型を分離するために、SP−Sepharoseカラム(第1の陽イオン交換クロマトグラフィー)に適用する。特定の純度(例えば、70%以上)を有する画分を、さらなる精製のためにプールすることができる。
【0049】
最後に、工程4)では、工程3)で得られたタンパク質プールを、伝導性について調整し(例えば、6.00〜7.00mS/cm)、そしてpHを5.00〜5.20に調整し、荷電アイソフォームから主要なIFNa5型を分離するために、第2のSP−Sepharoseカラム(第2の陽イオン交換クロマトグラフィー)に適用する。特定の実施形態では、室温で行われるクロマトグラフィー中のIFNa5の酸化を防止するために、L−メチオニンをローディング溶液に加える。95%以上(≧)のIFNa5の純度(RP−HPLCによって測定される)を達成することができるような方法で、画分をプールすることができる。
【0050】
所望であれば、そのように得られたIFNa5を、薬学的に許容可能なビヒクルおよび賦形剤、例えば、塩化ナトリウムを含むリン酸ナトリウム,pH6.80〜7.20を用いて製剤化してもよい。そのタンパク質溶液は、所望であれば、所望の濃度まで濃縮することができ、例えば、特定の実施形態では、そのタンパク質溶液は、10mg/mLまで、例えば、1.0〜1.5mg/mLまでのタンパク質濃度に濃縮され、限外濾過によって緩衝液交換され、そして0.22μmの最大ポアサイズを有する滅菌フィルターでの濾過滅菌によって滅菌される。
【0051】
実施例3は、hIFNa5産生株からhIFNa5を単離および精製するための方法が開示される。
【0052】
以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに説明するために役立つ。
【実施例】
【0053】
実施例1
IFNa5を発現するE.coli株の構築
この実施例は、組換えヒトインターフェロンアルファ−5(hIFNa5)を産生するE.coli株の開発および構築を開示する。つまり、hIFNa5遺伝子のクローニングおよび発現、ならびに組換えIFNa5タンパク質を産生する細菌株の構築は、以下の工程:hIFNa5をコードするcDNA遺伝子のクローニング、E.coliにおけるその発現が最適となるような前記遺伝子のDNA配列の改変、発現プラスミドの構築、選択されたプラスミドを好適なE.coli株へ導入する形質転換、そして発現/誘導条件の選択、を用いることによって、以下に記載するように行った。
【0054】
方法
hIFNa5のクローニングおよび発現では、従来の方法およびプロトコルを用いた[Sambrook et al.Molecular cloning:A Laboratory Manual.Second ed.,CSH Laboratory,Cold Spring Harbor,1989;Current Protocols in Molecular Biology,vol.1−3(Ausubel F.M.et al.,ed.)John Wiley & Sons,Inc.,Brooklyn,New York,1994−1998]。
【0055】
酵素、DNAおよびタンパク質マーカーを用いたすべての操作は、製造業者の説明書[主にFermentas(Lithuania)]に従って行った。
【0056】
遺伝的構築物
hIFNa5産生E.coliの構築は、図1に示す遺伝的構築物の開発のフローチャートに示す工程に従って行った。
【0057】
最初のプラスミド
hIFNa5コード配列(シグナルペプチドを含まない)を、インフォームドコンセント後、非肝臓病変のための開腹手術を受けた匿名のドナー患者から得た正常肝臓組織から以下のとおりクローニングした:正常肝臓組織を1mLのUltraspec溶液(Biotex)中でホモジナイズし、全RNAをDnase(Gibco−BRL,Paisley,U.K.)で処理した後、RnaseOUT(Gibco−BRL)の存在下でM−MLV逆転写酵素(Gibco−BRL)を用いて逆転写を行った。予め得ていた相補的DNA(cDNA)から、下記上流プライマーおよび下流プライマー(5’−3’)を用いて、hIFNa5コード配列(シグナルペプチドを含まない)をPCR増幅した:
【化1】
【0058】
両方のプライマーが、hIFNa5配列(太字)および制限酵素:NdeIおよびBamHIに特異的な配列(下線)を含む。PCR産物を、アガロースゲル電気泳動によって解析し、バンドをゲルから切り出し、Gene Clean kit(MP Biomedicals)によって精製した。精製したPCR産物を、TOPO TA Cloning Kit(Invitogen)を用いてpCR2.1TOPOプラスミドにクローニングした。インサートに由来するクローンを、色素Rhodamineターミネーターサイクルシーケンシングキット(Perkin Elmer)を使用して、ABIPRISM 310 Genetic Analyzer(Perkin Elmer)において配列決定し、そのインサートがhIFNa5配列と厳密に一致することを確かめた。その後、pCR2.1 TOPO−IFNアルファ5を、NdeIおよびBamHI制限酵素で消化し、534pbのバンド(IFNa5コード配列に対応する)を、予め同じ酵素で消化しておいたpET28bベクター(Novagen)にクローニングした。同じ手順を用いて、その配列を再度確かめた。
【0059】
種々のコロニーから得た最初のプラスミドDNApET28−IFNアルファ−5を、制限酵素解析によって解析した(図2)。
【0060】
プラスミドpET28−IFNアルファ−5を、ABI Prism 377配列分析装置を用いて両方のDNA鎖を配列決定することによって解析した。この解析から、hIFNa5コード配列が確認された。プラスミドpET28−IFNアルファ−5を、コドン最適化された成熟構造を構築するために、PCR増幅用の鋳型として使用した。
【0061】
コドン最適化された成熟構造
コドン最適化を含む、hIFNa5コード遺伝子のPCR増幅
鋳型としてプラスミドpET28−IFNアルファ−5を使用することによって、PCR増幅を行った。以下のオリゴヌクレオチドを合成した:
センスプライマー(SP):5’−CATATGTGTGATCTGCCGCAGACCCACTCCCTGTCTAACCGTCGTACTCTGATGATCATGGCACAGATGGGTCGTATCTCTCCTTTC[配列番号4]
アンチセンスプライマー(ASP):5’−CTGCAGTTATTCCTTACGACGTAAACGTTCTTGCAAG[配列番号5]
E.coliにおいて使用頻度が最も低いコドンを置換するために、SP[配列番号4]およびASP[配列番号5]プライマーを適用した。コドン最適化は、主に、アルギニンコドンAGAおよびAGGに関する。
【0062】
PCRフラグメントの中間体プラスミドへのクローニング
約500bpの精製された増幅産物を、Rapid DNA ligation Kit(#K1421,Fermentas,Lithuania)を用いて、pUC57/Tプラスミド(#SD0171 Fermentas,Lithuania)にクローニングし、E.coli JM109(ATCC53323,ATCC Bacteria and Bacteriophages,19th edition,1996)に形質転換した。組換えクローンを制限酵素解析によって選択した(図3)。2つのクローンを選択し、抽出されたプラスミドを配列決定した。
【0063】
中間体プラスミドIFNアルファ−5の配列解析およびヒトIFNアルファ−5コード配列のプラスミドpET21b(+)への再クローニング
ヌクレオチド配列解析によって、hIFNa5コード部分の配列を確認し、その配列を図4に示す。
【0064】
hIFNa5をコードするフラグメントを、NdeI+BamHIで切り出し、精製されたDNAフラグメントを、NdeI+BamHIで切断したベクターpET21b(+)(Novagen)にライゲートすることにより、プラスミドpET21−IFNアルファ−5を得た。E.coli JM109株に形質転換した後、100μg/mLのアンピシリンを加えることによって、細菌を選択した。形質転換された細胞に由来するコロニーの組換え挿入解析を、コロニーPCR試験法を用いて行った。PCR陽性クローンから精製されたプラスミドpET21−IFNアルファ−5の詳細な制限酵素解析から、予想した制限酵素パターンが得られた(図5)。
【0065】
組換えhIFNa5の発現
非発現宿主においてプラスミドpET21−IFNアルファ−5を確立した(安定化した)後、それを、標的タンパク質の発現に対して関連する遺伝因子を有する宿主E.coli BL21(DE3)に形質転換することにより、E.coli BL21(DE3)pET21−IFNa−5株を得た。hIFNa5の発現を、1mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)で誘導し、その結果を図6に示す。
【0066】
SDS−PAGEによれば、hIFNa5の分子量は約20kDaであり、これは計算値の19.7kDaと相関する。
【0067】
組換えhIFNa5は、全細胞溶解物の不溶性画分において検出された;標的タンパク質の収率は、全細胞タンパク質の約20%であった。hIFNa5は、細胞溶解物の不溶性画分のおよそ40%を構成した。得られた発現株の1つのコロニーを、リサーチマスターセルバンク(RMCB)を確立するために使用した。
【0068】
実施例2
産生株によるhIFNa5の生合成プロセス
E.coli BL21(DE3)pET21−IFNa−5株(実施例1)を、以下の組成(g/L)を有する培地中で培養した:
a)フラスコ内における接種材料の調製(培養)用(g/L):リン酸水素二ナトリウム(17.0)、リン酸二水素カリウム(1.82)、硫酸アンモニウム(3.0)、硫酸マグネシウム七水和物(0.5)、D(+)−グルコース一水和物(15.0)および微量元素原液e)(0.16mL);
b)発酵用(g/L):第二リン酸アンモニウム(4.0)、硫酸マグネシウム七水和物(0.5)、リン酸二水素カリウム(13.3)、クエン酸一水和物(1.6)、D(+)−グルコース一水和物(30.0)および微量元素原液e)(0.25mL);
c)供給液A(g/L):D(+)−グルコース一水和物(700.0)、硫酸マグネシウム七水和物(20.7)および微量元素原液e)(3.4mL/L);
d)供給液B(g/L):第二リン酸アンモニウム(360.0)およびリン酸二水素カリウム(306.7);ならびに
e)微量元素(痕跡元素)原液(g/L):塩化鉄(III)六水和物(30.0)、塩化カルシウム二水和物(4.05)、硫酸亜鉛(II)七水和物(6.75)、硫酸マンガン(II)一水和物(1.5)、硫酸銅(II)五水和物(3.0)、塩化コバルト(II)六水和物(1.14)、モリブデン酸ナトリウム二水和物(0.3)およびホウ酸(0.69)。
【0069】
図7は、ヒトIFNアルファ−5生合成プロセスの完全なスキームを示す。
【0070】
接種材料の調製:そのフラスコに培養用の500mLの滅菌培地[a)]を含むエルレンマイヤーフラスコに、0.25mLの保存培養WCB(ワーキングセルバンク)E.coli BL21(DE3)pET21−IFNa−5を接種した。その後、そのフラスコを撹拌速度300rpmの回転振盪機において30℃の温度で21〜22時間インキュベートした。インキュベーション後の光学濃度は、4.50 o.u.(光学単位)[λ=595nm]以上でなければならない。
【0071】
発酵:7.0Lの発酵培地[b)]を含む発酵槽(総体積13.7L)に、接種フラスコにおいて得られた培養物の1.5〜1.6%を接種した。自動的に制御される温度(37℃)、pH(6.8)およびpO2(20%)で発酵を行った。25%アンモニウム溶液をpH補正のために使用した。8〜9時間培養した後、追加の供給を開始した。培養培地中のグルコース濃度を約3g/L〜22g/Lに維持するために、供給液A[c)]を特定用量注入した。最終IPTG濃度が0.5mMとなるように、90〜110 o.u.(λ=595nm)においてIPTGを用いて誘導を行った。誘導後に十分な比増殖速度を得るために、誘導時の比増殖速度は0.45以上であるべきである。誘導後の平均比増殖速度は、0.17より高くあるべきである。供給液B[d)]を別々の用量で注入した:60〜70 o.u.において150mL、120〜140 o.u.において150mL、誘導の1.5時間(90分)後に75mL、および2時間後に75mL。誘導後3時間にわたって同一条件で発酵を続けた。次いで、細胞懸濁液を発酵槽内で12〜15℃に冷却し、蠕動ポンプによって遠心機に移した(35L/h)。その細胞懸濁液を、4℃で、5,000rpmの速度で遠心分離した。
【0072】
回収されたバイオマスを、ポリエチレンバッグに集め、凍結のため、およびその後の貯蔵のために、(−33±5)℃の冷却装置に置いた。凍結されたバイオマスの一部を、総タンパク質の評価およびhIFNa5の発現の評価のために採取した。
【0073】
実施例3
産生株からhIFNa5を単離および精製するプロセス
1.バイオマスの均質化、破砕、および封入体(IB)の単離
実施例2で得られた680.0〜700.0gのバイオマスを、再懸濁緩衝液(2mM EDTA、0.1%TritonX−100および1mM PMSFを含む0.1M Tris−HCl,pH7.80〜8.00)中で、1/10(w/v)の比、すなわち、1gの湿バイオマス/10mLの再懸濁緩衝液中で、ホモジナイズした。
【0074】
ポッター型ホモジナイザー(テフロン(登録商標)/ガラス)において再懸濁を行い、次いで、高圧ホモジナイザーを4〜10℃の温度、600〜800barにおいて用いて、細胞を破砕した。細胞の崩壊の後、8,000rpmで30〜35分間の遠心分離によって封入体(IB)を分離した。
【0075】
2.封入体(IB)の洗浄
単離されたIBの予備洗浄を、洗浄緩衝液I〜IIIを用いて連続した4工程のプロセスによって行った:
洗浄緩衝液I:1M NaCl、0.1%Polysorbate−80を含む、10mM Tris−HCl緩衝液,pH7.45〜7.55;
洗浄緩衝液II:6M尿素を含む、10mM Tris−HCl緩衝液,pH8.00〜8.20;
洗浄緩衝液III:10mM Tris−HCl緩衝液,pH8.00〜8.20。
【0076】
つまり、IBの洗浄は、以下のとおり行った:
a)最初の2回の洗浄(工程1および2)、IBを洗浄緩衝液Iで洗浄した;
b)3番目の洗浄(工程3)、IBを洗浄緩衝液IIで洗浄した;そして
c)4番目の洗浄(工程4)、IBを洗浄緩衝液IIIで洗浄した。
【0077】
IB洗浄手順の全体にわたって、10mLの緩衝液/1gの湿バイオマスという洗浄緩衝液/湿バイオマス比を維持した。
【0078】
3.IBの可溶化
IBを可溶化するために、可溶化緩衝液(6M GdmHClを含む、50mMグリシン/NaOH緩衝液,pH9.55〜9.65)を使用した。可溶化の比率:2〜8℃で、2時間、6mLの可溶化緩衝液中において1gのバイオマスからIBを単離し、そしてその後8,000rpmで25〜30分間遠心分離。
【0079】
4.再生
再生緩衝液:1.2M NaCl、0.22M L−アルギニン、2.85mM GSH(還元型グルタチオン)、0.285mM GSSG(酸化型グルタチオン)を含む、50mMグリシン/NaOH緩衝液,pH9.55〜9.65、4〜10℃における伝導率110〜110mS/cm。
【0080】
0.2M L−アルギニン、2.5/0.25mM GSH/GSSGという再生混合物中の最終濃度を達成するようにIB可溶化物(solubilisate)を再生緩衝液に(体積比1:7)滴下することによって、GdmHCl−変性ヒトIFNアルファ5を再生した。再生混合物を、2〜8℃で44〜66時間、連続撹拌した。再生後、タンパク質溶液を8,000rpmで30〜35分間の遠心分離によって清澄化した。
【0081】
5.クロマトグラフィー
hIFNa5を、以下で述べるように4工程のクロマトグラフィープロセスによって精製した。
【0082】
5.1 Phenyl−Sepharoseカラム(疎水性相互作用クロマトグラフィー)によるクロマトグラフィー
Phenyl−Sepharoseカラムは、再生したhIFNa5を残留カオトロピック剤GdmHClから分離することを目的としている。さらに、再生したhIFNa5と吸着剤の疎水性表面との接触が、IFNa5の成熟を促進させる。
【0083】
つまり、清澄化したタンパク質溶液のpHを6M HClで8.00〜8.20に調整し、次いでそのタンパク質溶液を、以下のプロセスパラメータを用いてPhenyl−Sepharoseクロマトグラフィーカラムに適用した:
クロマトグラフィー媒体:Phenyl−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech AB);
使用カラム:BPG100×500mm,直径10cm;
線流速:60cm/時;
クロマトグラフィー媒体ベッド体積:2.7±0.3L
平衡緩衝液:1.5M塩化ナトリウムを含む20mM Tris−HCl緩衝液,pH8.00〜8.20、15〜25℃における伝導率115〜125mS/cm(4〜10℃では110〜120mS/cm);
溶出緩衝液:10mM Tris−HCl緩衝液,pH9.20〜9.25、15〜25℃における伝導率0.1〜0.2mS/cm;
溶出を、6カラム体積(CV)[すなわち、6CV]にわたる溶離緩衝液で行う。回収されたタンパク質溶液2〜6CV。
【0084】
5.2 Q−Sepharoseカラム(陰イオン交換クロマトグラフィー)によるクロマトグラフィー
Q−Sepharoseカラムは、hIFNa5モノマーをその凝集型から分離するために使用される。
【0085】
つまり、前述の工程(5.1)で得られたタンパク質プールを、5M NaClを含む20mM Tris−HCl緩衝液,pH8.75〜8.85を加えることによって、13.00〜14.00mS/cmという伝導率に調整し、pHを6M HClで8.75〜8.85に調整した。次いで、そのタンパク質溶液を、以下のプロセスパラメータを用いてQ−Sepharoseクロマトグラフィーカラムに適用した:
クロマトグラフィー媒体:Q−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech AB);
使用カラム:BPG140×500MM,直径14cm;
線流速:60cm/時;
クロマトグラフィー媒体ベッド体積:3.3±0.3L
平衡緩衝液:0.12M塩化ナトリウムを含む20mM Tris−HCl緩衝液,pH8.75〜8.85、15〜25℃における伝導率13.00〜14.00mS/cm;
溶出緩衝液:0.23mM塩化ナトリウムを含む20mM Tris−HCl緩衝液,pH8.75〜8.85、15〜25℃における伝導率23.00〜25.00mS/cm;
溶出:5カラム体積(5CV)にわたる100%までの直線勾配の溶出緩衝液、および5CVの100%溶出緩衝液。
【0086】
画分体積は、400〜1000mLであった。
【0087】
55%以上(≧)の純度のhIFNa5(RP−HPLCによって測定される)の画分のみをさらなる精製のためにプールした。
【0088】
5.3 SP−Sepharoseカラム(陽イオン交換クロマトグラフィーI)による第1のクロマトグラフィー
N−メチオニル−hIFNa5およびアセチル化hIFNa5(翻訳後修飾の産物である形態)のような荷電アイソフォームから主要なhIFNa5型を分離するために、SP−Sepharoseカラムを3番目および4番目のクロマトグラフィー工程のために使用する。
【0089】
つまり、前述の工程(5.2)で得られたタンパク質プールを、10mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH4.95〜5.05を加えることによって、6.00〜7.00mS/cmという伝導率に調整し、pHを4M酢酸で5.15〜5.20に調整した。次いで、そのタンパク質溶液を、以下のプロセスパラメータを用いてSP−Sepharoseクロマトグラフィーカラムに適用した:
クロマトグラフィー媒体:SP−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech AB);
使用カラム:BPG100×500mm,直径10cm;
線流速:60cm/時;
クロマトグラフィー媒体ベッド体積:3.3±0.3L
平衡緩衝液:50mM塩化ナトリウムを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.15〜5.20、15〜25℃における伝導率6.00〜7.00mS/cm;
溶出緩衝液:2mM L−メチオニンおよび0.1M NaClを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.15〜5.20、15〜25℃における伝導率11.00〜13.00mS/cm;
溶出を、10カラム体積(10CV)にわたる溶出緩衝液で行った。
【0090】
画分体積は、400〜2000mLであった。
【0091】
70%以上(≧)の純度のhIFNa5(RP−HPLCによって測定される)の画分のみをさらなる精製のためにプールした。
【0092】
5.4 SP−Sepharoseカラム(陽イオン交換クロマトグラフィーII)による第2のクロマトグラフィー
つまり、ローディング溶液[第1のSP−Sepharoseカラム(工程5.3)から回収したタンパク質画分のプール]を、2mM L−メチオニンを含む5mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.00〜5.20で希釈し、15〜25℃において0.200〜0.800mS/cmという伝導率から15〜25℃において6.00〜7.00mS/cmという伝導率に調整した。室温で行われるクロマトグラフィー中のhIFNa5の酸化を防止するために、ローディング溶液に2mM L−メチオニンを加えた。ローディング溶液を、以下のプロセスパラメータを用いてSP−Sepharoseクロマトグラフィーカラムに適用した:
クロマトグラフィー媒体:SP−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech AB);
使用カラム:BPG100×500mm,直径10cm;
線流速:60cm/時;
クロマトグラフィー媒体ベッド体積:3.0±0.3L
平衡緩衝液:50mM塩化ナトリウムを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.15〜5.20、15〜25℃における伝導率6.00〜7.00mS/cm;
溶出緩衝液:0.1M NaClを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.15〜5.20、15〜25℃における伝導率11.00〜13.00mS/cm;
溶出線流速:45cm/時;
溶出:20カラム体積(20CV)にわたる100%までの溶出緩衝液の直線勾配。
【0093】
画分体積は、400〜2000mLであった。
【0094】
hIFNa5のRP−HPLC純度が95%以上(≧)となるように画分をプールした。
【0095】
製剤化、濃縮、濾過滅菌
製剤化緩衝液:0.1M塩化ナトリウムを含む25mMリン酸ナトリウム,pH6.80〜7.20、15〜25℃における伝導率10.00〜14.00mS/cm。
【0096】
タンパク質溶液の緩衝液交換/濃縮を、Biomax 10kDa膜で透析濾過/濃縮により行って1.00mg/mL以上(≧)とし、滅菌0.22μmフィルター(Millipak20)で濾過滅菌し、ガラスバイアルに充填した。
【0097】
図8は、組換えhIFNa5タンパク質の3つの大規模精製バッチを還元条件下および非還元条件下両方においてSDS−PAGE(14%)で測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す。
【0098】
図9は、「逆相高速液体クロマトグラフィー」(RP−HPLC)解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す(この図は、組換えhIFNa5の3つの大規模バッチの結果を示す)。
【0099】
図10は、3つの組換えhIFNa5大規模バッチについて「サイズ排除HPLC」(SE−HPLC)解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す。
【0100】
図11は、3つの組換えhIFNa5大規模バッチについて等電点電気泳動解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す。レーン1、11:pIスタンダード(Amersham Pharmacia);レーン2、3、4:組換えhIFNa5,15μg;レーン5、6、7:組換えhIFNa5,5μg;レーン8、9、10:組換えhIFNa5,1μg。
【0101】
図12は、本発明によって精製、そして製剤化された3つの組換えhIFNa5調製物の大規模バッチのペプチドマッピングクロマトグラムを表す。
【0102】
実施例4
組換えヒトIFNアルファ−5の生合成に対する微量元素濃度およびグルコース濃度の影響の評価
この実施例の目的は、組換えヒトIFNアルファ−5(hIFNa5)の翻訳後修飾に対する微量元素の影響を確認すること、炭素供給液中の臨界微量元素濃度の限界を確定すること、および組換えhIFNa5の生合成に対するグルコース濃度の影響を評価することであった。したがって、この実施例は、本試験中に行われた解析および得られた結果を説明し、そして組換えhIFNa5の生合成プロセスにおける炭素供給液中の微量元素濃度の根拠およびグルコース濃度の根拠としての役割を果たす。
【0103】
hIFNa5生合成プロセスを最適化する中で、発酵培地中の金属または微量元素(痕跡元素)の濃度がhIFNa5タンパク質の翻訳後修飾に対して影響を及ぼすことが認められた。したがって、本試験の目的は、hIFNa5タンパク質の翻訳後修飾に対する前記痕跡元素の影響を確かめること、および炭素供給液中の臨界微量元素濃度の限界を確定することであった。それに加えて、各炭素供給用量が供給された後の発酵培地中のグルコース濃度(17g/Lおよび22g/L)が、培養物の増殖に対して影響を及ぼすか(すなわち、発酵培地中のグルコース濃度は、培養物の増殖の限界に関わり、それゆえバイオマス収率に影響するか、または培養物の増殖に影響しないか)、および標的タンパク質(組換えhIFNa5)の質に対して影響を及ぼすかを調べるために、発酵培地中のグルコース濃度を評価すると決定した。
【0104】
材料および方法
実験の計画をデザインし、「実験計画法」(DOE)の助けを借りてモニターし、それを表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
高細胞密度の流加発酵を既知組成の無機塩/グルコース培地中で行った。
−フラスコ内での培養用の無機塩/グルコース培地の組成(g/L):リン酸水素二ナトリウム−17.0、リン酸二水素カリウム−1.82、硫酸アンモニウム−3.0、硫酸マグネシウム七水和物−0.5、D(+)−グルコース一水和物−15.0、微量元素原液−0.16mL。
−微量元素(痕跡元素または金属)原液(g/L):塩化鉄(III)六水和物−30.0、塩化カルシウム二水和物−4.05、硫酸亜鉛(II)七水和物−6.75、硫酸マンガン(II)一水和物−1.5、硫酸銅(II)五水和物−3.0、塩化コバルト(II)六水和物−1.14、モリブデン酸ナトリウム二水和物−0.3、ホウ酸−0.69。
−発酵用の無機塩/グルコース培地の組成(g/L):第二リン酸アンモニウム−4.0、硫酸マグネシウム七水和物−0.5、リン酸二水素カリウム−13.3、クエン酸一水和物−1.6、D(+)−グルコース一水和物−30.0、微量元素原液−0.25mL。
−炭素供給液:70.0%グルコース、2.1%MgSO4×7H2Oおよび実験計画に応じた微量元素原液。
【0107】
培養8時間目から開始して、グルコース濃度を(15〜30)分ごとに測定し、その後、(実験計画に応じて、17g/Lまたは22g/Lの上限グルコース濃度に達するように)算出された用量の炭素供給を加えた。
【0108】
さらに、別々の用量での70mLの両方のリン酸塩溶液(第二リン酸アンモニウム−25.0g、リン酸二水素カリウム−21.0gを3用量に分けた:2:2:1または28:28:14mLの比)を、60〜75、120〜135、および170〜180o.u.において加えた。
【0109】
必要であれば、溶存酸素濃度を20%に維持するために、流入空気を純粋な酸素で自動的に富ませた(発酵槽総体積1リットルあたり最大60%)。
【0110】
WCB(−70℃にて貯蔵)[実施例2]から得た0.25mLの保存培養E.coli BL21(DE3)pET21−IFNa−5を、500mLの無機塩/グルコース培地(pH約7.7)中で、30℃で22時間オービタルシェーカー(300rpm)でインキュベートし、増殖させた。
【0111】
接種材料は、使用発酵槽の体積の約1.0%(20mL)であり、それは、実際の体積の1.54%であった。
【0112】
pH6.8、pO2−20%、温度−37℃で、総体積3L/使用体積2Lの発酵槽「Biostat B」において発酵を行った。発酵プロセスのオンライン変数(温度、撹拌、pH、pO2、酸/塩基消費)は、自動的に制御され、オフライン変数−光学濃度は、MFCS/winプロットにおいて追跡される。
【0113】
35%オルト−リン酸および25%アンモニア溶液をpH補正のために使用した。
【0114】
20%Pluronic(登録商標)31R1を用いて泡沫を消泡した。
【0115】
91.6〜103.6o.u.(λ=600nm)のODにおいて、最終的な使用体積に対して最終IPTG濃度が0.5mMとなるIPTGで誘導を行った。発酵をさらに3時間続けた。
【0116】
比増殖速度(μ)、流入体積(incoming volume)(追加供給分)および採取体積(out coming volume)(ODおよびグルコースの測定のためのサンプリング分)をすべての発酵について厳密に計算した。
【0117】
結果およびデータ解析
本試験中に行った解析および得られた結果から、E.coliにおいて産生された組換えhIFNa5タンパク質の翻訳後修飾が、培養培地中の微量元素の濃度に依存することが裏付けられた。
【0118】
微量元素(原液)の濃度が、3.0mL/L炭素供給液以上であるか、または0.95mL/L実際の最終懸濁液体積以上であり、かつ誘導後の平均比増殖速度(μ)が、0.17以上(≧)であるとき、酸化型のメチオニル化hIFNa5関連タンパク質が排除された(表2〜3)。
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
本明細書に記載されるように、表2は、炭素供給液中の種々の微量元素濃度における生合成パラメータを示しているのに対し、表3は、種々の微量元素濃度における生合成およびリフォールディングパラメータを示している。
【0122】
以下のようないくつかの試験を行った:(i)炭素供給液中または細胞懸濁液中の微量元素の濃度に対する、比増殖速度(μ)の依存性;(ii)誘導後の平均比増殖速度(μ)に対する、リフォールディング後の酸化型のメチオニル化hIFNa5(OxidMet hIFNa5)、およびリフォールディング後の全アセチル化hIFNa5の依存性;(iii)炭素供給液中の微量元素の濃度に対する、hIFNa5タンパク質の翻訳後修飾(リフォールディング後のOxidMet hIFNa5、リフォールディング後のアセチル化hIFNa5、およびリフォールディング後の正しく折り畳まれたhIFNa5)の依存性;並びに(iv)炭素供給液中または細胞懸濁液中の微量元素の濃度に対する、hIFNa5関連型(リフォールディング後のアセチル化hIFNa5、およびリフォールディング後のOxidMet hIFNa5)の依存性。さらに、全てのバッチをリフォールディング後にRP−HPLCに付した。それらの結果から、比増殖速度(μ)およびバイオマス収率が、培養培地中の微量元素の濃度に依存することは明らかである(表2〜3)。
【0123】
要約すると、得られた結果は、下記を示す:
−最大量の酸化型のメチオニル化hIFNa5において、最小含有量のアセチル化hIFNa5が観察され、その逆もまた同じである(ショートバッチNo.M−83、M−84、M−85およびM−86);
−微量元素(原液)の濃度が、3.0〜3.7mL/L炭素供給液の限度内(ショートバッチNo.M−80、M−81、M−92、M−82およびM−87)または0.95〜1.23mL/L実際の最終懸濁液体積の限度内であるとき、アセチル化hIFNa5の量は、約8〜11%である(表3);並びに
−炭素供給液中の微量元素の濃度が、4mL/Lを超えるかまたは1.23mL/L実際の最終細胞懸濁液体積を超えるとき、さらなる未知(未同定)の型が検出された[それは、主要ピークおよびアセチル化型の2つのピークの後に観察される(データ示さず)]。
【0124】
得られた結果は、またグルコース濃度の上限(17g/Lまたは22g/L)が、実際に標的タンパク質(hIFNa5)の質およびバイオマス収率に影響しないことを示し、実際に得られた値は、誤差範囲内であった(表2)。
【0125】
結論
−本試験において得られた結果は、組換えhIFNa5の生合成プロセスにおける炭素供給液中の微量元素濃度の根拠およびグルコース濃度の根拠としての役割を果たす。
−微量元素の濃度が、3.0mL/L炭素供給液以上であるか、または0.95mL/L実際の最終懸濁液体積より高く、かつ誘導後の平均比増殖速度(μ)が、0.17以上であるとき、酸化型のメチオニル化hIFNa5タンパク質は、排除される。
−微量元素の濃度が、約3.0〜約3.7mL/L炭素供給液の限度内であるか、または約0.95〜約1.23mL/L実際の最終懸濁液体積の限度内であるとき、アセチル化hIFNa5タンパク質は、約8〜11%である。
−炭素供給液中の微量元素の濃度が、3.7mL/Lより高いか、または1.23mL/L実際の最終懸濁液体積より高いとき、未知(未同定)タンパク質型が合成される。
−最大収率を決定する微量元素の至適濃度および標的hIFNa5タンパク質の最高の質は、約3.0〜約3.7mL/L炭素供給液の限度内である。
−17g/L〜22g/Lの範囲内のグルコース濃度は、実際には、標的タンパク質(組換えhIFNa5)の質およびバイオマス収率に影響しない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェロンアルファ5(IFNa5)産生Escherichia coli宿主細胞における発現によってIFNa5タンパク質を生産する方法であって、ポリペプチド鎖のN末端への余分なメチオニン残基の組み込み、およびその酸化種の生成が最小限に抑えられた方法に関する。IFNa5タンパク質は、効率的な方法によって精製され、生物学的に活性なIFNa5を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
インターフェロン(IFN)は、サイトカインとして知られる天然に産生される多面発現性の糖タンパク質の一群であり、一連の刺激(ウイルス、細菌、細胞、腫瘍および高分子)からの誘導によって様々な種類の細胞(上皮細胞、線維芽細胞、リンパ球、マクロファージ)から分泌され、抗ウイルス特性、抗増殖特性および免疫調節特性ならびに鎮痛作用を有する。インターフェロンは、その内因性産生の後またはその投与の後、細胞表面上の特異的な受容体と相互作用し、細胞質を通過して核までのシグナル伝達を開始し、抗ウイルス活性および免疫賦活活性を有する特異的なタンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導する。いくつかの異なるタイプのIFNがヒトでの使用を承認されていることから実証されているように(例えば、多発性硬化症の治療用の薬物としての、IFN1a(Rebif,Avonex)、IFN1b(Betaseron)、ならびに悪性疾患(癌)およびウイルス性疾患の治療用の薬物としての、組換えヒトIFNa2a(Roferon A)およびIFNa2b(Intron A))、IFNの医学上の潜在能力は認識されている。
【0003】
IFNがシグナルを伝達する受容体のタイプに基づいて、ヒトIFNは、3つの主要なタイプ、すなわち、(i)IFN I型[すべてのI型IFNは、IFN−アルファ受容体(IFNAR)として公知の特異的な細胞表面受容体複合体に結合し、ヒトのI型IFNは、IFNアルファ(IFN−α)、IFNベータ(IFN−β)およびIFNオメガ(IFN−ω)である。]、(ii)IFN II型[II型IFNは、IFN−ガンマ受容体(IFNGR)に結合し、ヒトのII型IFNは、IFNガンマ(IFN−γ)である。]、およびIFN III型[III型IFNは、IL10R2およびIFNLR1からなる受容体複合体を通じてシグナルを伝達する。]に分類される。I型IFNとして公知のIFNアルファおよびベータは、構造的に相関しており、酸性pHにおいて安定であり、同一細胞受容体(IFNAR)に対して競合する。
【0004】
現在、IFNアルファ、ベータおよびガンマは、組換え型として作製することができ、その組換え型は、天然の起源(白血球、線維芽細胞、リンパ球)からの単離によって得られる量よりもかなり大量の産物を得ることができること、並びにその産物の精製および安全性検査のプロセスの複雑さを低減させることができることの二重の利点を有する。実際に、販売されている医薬品グレードの組換えIFNの大部分が、Escherichia coliから産生され、精製されている。
【0005】
E.coli組換えタンパク質発現系は、IFNの生産にとって最適な系であったし、今なおそうである。確かに、IFN遺伝子はイントロンを有さず、そのタンパク質産物は通常グリコシル化されない。さらに、E.coliは、高い細胞密度まで急速に増殖することができ、組換えタンパク質の生産に使用される株は、そのタンパク質が大規模発酵に対して安全であると一般にみなされるように遺伝的に改変されている。
【0006】
IFN cDNAの発現は、それが初めてクローニングされた直後にE.coliにおいて直接達成された[Goedell et al.Nature.,287,411−416,1980;Pestka,S.Arch.Biochem.Biophys.,221(1),1−37,1983;Mizoguchi et al.DNA.,4,221−32,1985;Pestka et al.Ann.Rev.Biochem.,56,727−777,1987;Baron and Narula.Critical reviews in Biotechnology,10(3),179−190,1990]。実際に、IFNアルファ(IFNa)は、DNA組換え技術によってE.coliを用いて生産された最初のタンパク質の1つである[Derynck et al.,Nature,287,193−197,1980;Nagata et al.,Nature,284,316−320,1980]。
【0007】
しかしながら、E.coliにおけるIFNの発現には、いくつかの問題がある。E.coliにおいて大量に発現されるIFNは、一般にミスフォールドしたタンパク質であり、それゆえ生物学的に不活性である[Villaverde and Carrio,Biotechnol.Lett.,25,1385−1395,2003]、封入体(IB)と呼ばれる不溶性の凝集体として沈殿することが多い[Swaminathan et al.,Prot Express.Purif.,15,236−242,1999;Bedarrain et al.,Biotechnol.Appl.Biochem.,33,173−182,2001;Srivasta et al.Prot.Express.Purif 41,313−322,2005]。そのようなタンパク質を天然型で得るためには、前記IBを変性相、続いて再生相に付す必要があり、天然のタンパク質におけるようにジスルフィド架橋が形成される必要がある状況では酸化に付す必要がある。さらに、標的タンパク質配列(例えば、IFN)のN末端における余分なメチオニン残基の組み込みは、E.coliにおけるタンパク質発現の特有な特徴である。公知であるように、タンパク質の配列内に分布するメチオニン残基は酸化しやすい。そのようなプロセスは、そのタンパク質、または前記タンパク質を含む医薬組成物(それを薬物、例えば、IFNとして使用することができる場合)を製造するプロセス中に生じることがあり、高温での長期間貯蔵中においてより顕著である。
【0008】
IFNを細菌においてIBとして産生および精製するいくつかの方法が開発されているが[例えば、Thatcher and Panayotatos,Methods Enzymol.119,166−177,1986;米国特許第4511502号;米国特許第4765903号;米国特許第4845032号;欧州特許第1310559号;または欧州特許第1990349号]、IFN、すなわち治療等級のIFNaの産生および精製の成功を妨害する可能性があるさらなる要因(例えば、標的IFNのN末端に余分なメチオニン残基が組み込まれること、および(その産物を薬物として使用する場合)除去する必要のあるその酸化種が生成され、それゆえIFN生産の全収率が低下し、精製プロセスの複雑さが高まり、治療等級のアルファIFNを生産および精製する方法を面倒なものにすること)が存在する。
【0009】
したがって、治療等級のIFNa、特にIFNa5をE.coli宿主細胞から高収率かつ対費用効果の高いやり方で生産することを可能にする方法が依然必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、今般、驚いたことに、発酵培地中の微量元素(痕跡元素)の濃度が、IFNa5の翻訳後修飾において重要な役割を果たすことを見出した。したがって、発酵培地中の微量元素の濃度を制御すると、IFNa5産生E.coli宿主細胞において産生されるIFNa5のN末端への余分なメチオニン残基の組み込み、およびその酸化種の生成を最小限に抑えることが可能であり、それによって、生産収率が高まり、精製プロセスを単純化できることから、IFNa5産生E.coli宿主細胞において産生されるIFNa5、すなわち、治療等級のIFNa5を生産および精製する方法を、対費用効果が高く、複雑さの低減された方法とする。
【0011】
有効なことには、実施例4は、1リットル(L)の炭素供給液が、約3.0mL〜約3.7mLの微量元素原液を含み、好ましくは、誘導後の平均比増殖速度(μ)が0.17以上であるとき、酸化型のメチオニル化ヒトIFNアルファ−5(hIFNa5)型の生成が無くなり、アセチル化hIFNa5型の量が2倍減少する(すなわち、半分になる)ことを示している。
【0012】
それゆえ、一つの態様において、本発明は、インターフェロンアルファ5(IFNa5)産生Escherichia coli宿主細胞における発現によってIFNa5タンパク質を生産する方法であって、その方法が:
a)IFNa5産生E.coli宿主細胞を用意する工程と;
b)発酵培地中で前記組換えIFNa5産生E.coli宿主細胞が前記IFNa5タンパク質を発現するのに有効な条件下でIFNa5産生E.coli宿主細胞を、炭素供給液を添加しながら培養する工程であって、ここで、
−前記発酵培地は、動物起源または酵母起源由来の成分を含まず、かつ
−前記炭素供給液は、炭素源、および添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0〜約3.7mLの微量元素溶液を含んでなる工程と;
c)発現したIFNa5タンパク質を単離し、そして必要に応じて精製する工程とを少なくとも含んでなることを特徴とする方法に関する。
【0013】
特定の実施形態において、前記E.coli宿主細胞は、E.coliプロテアーゼ欠損株、例えば、E.coli Ion−/ompT−プロテアーゼ欠損宿主株、好ましくは、E.coli BL21株、最も好ましくは、E.coli BL21(DE3)株である。
【0014】
別の特定の実施形態において、E.coli株が、E.coli BL21(DE3)株であるとき、工程b)の条件は、IPTGによる誘導を含む。
【0015】
別の特定の実施形態において、発現したIFNa5タンパク質を単離、および精製する工程c)は、精製IFNa5を得るために、順次、
E.coli宿主細胞を溶解する工程と、
その後、封入体(IB)を可溶化に付し、そして、得られた混合物を酸化再生に付し、さらに下記を含む一連のクロマトグラフィー:
1)再生IFNa5を含んでなる混合物を、疎水性相互作用クロマトグラフィーに付す工程;
2)工程1)で得られた溶液を、陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;
3)工程2)で得られた溶液を、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;および
4)工程3)で得られた溶液を、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程であって、ここで、前記溶液を、必要に応じて、メチオニンを含む緩衝液で希釈する工程、
に付すことによって、前記IFNa5タンパク質を前記IBの形態で単離する工程と、を含んでなる。
【0016】
特定の実施形態において、前記IFNa5は、好ましくは、ヒトIFNa5(hIFNa5)である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、IFNa5産生株の構築のフローチャートを示す。
【図2】図2は、最初のプラスミドDNA pET28−IFNアルファ−5の制限酵素解析(restriction analysis)の結果を示す。レーン1〜3および5〜7:pET28−IFNアルファ−5の制限酵素解析;レーン1および5:pET28−IFNアルファ−5/BamHI;レーン2および6:pET28−IFNアルファ−5/NdeI;レーン3および7:pET28−IFNアルファ−5/NdeI+BamHI;レーン4および8:未切断のpET28−IFNアルファ−5。マーカーDNA(Gene Ruler DNA Ladder Mix,Fermentas,Lithuania)のバンドのサイズが、キロ塩基対(kbp)の単位で示されている。
【図3】図3は、中間体プラスミドIFNアルファ−5の制限酵素解析の結果を示す。このプラスミドは、単一クローンから得られた。マーカーDNA(Gene Ruler DNA Ladder Mix,Fermentas,Lithuania)のバンドのサイズが、kbpの単位で示されている。予想されるフラグメントサイズ(単位はbp)を括弧内に記載する。レーン1:pUC57−IFNアルファ−5/PstI(28;3197);レーン2:pUC57−IFNアルファ−5/PvuII(455;406;2364);レーン3:pUC57−IFNアルファ−5/NdeI(250;2975)。
【図4】図4は、いくつかのコドンをE.coliにおいて使用頻度が最も低いコドンで置き換えることによってE.coliにおける発現について最適化されたヒトIFNアルファ−5(hIFNa5)をコードするフラグメントの完全ヌクレオチド配列を示している。置換したヌクレオチドに下線を引いている。
【図5】図5は、プラスミドpET21−IFNアルファ−5の制限酵素解析の結果を示す。このプラスミドは、単一クローンから得られた。マーカーDNA(Gene Ruler DNA Ladder Mix,Fermentas,Lithuania)のバンドのサイズが、kbpの単位で示されている。予想されるフラグメントサイズ(単位はbp)を括弧内に記載する。レーン1:pET21−IFNアルファ−5/PagI(673;817;1008;3423);レーン2:pET21−IFNアルファ−5/PstI(1352;4569);レーン3:pET21−IFNアルファ−5/NdeI+BamHI(516;5405)。
【図6】図6は、組換えIFNa5タンパク質の発現を示す。9つのコロニーから拾った細胞培養E.coli BL21(DE3)pET21−IFNアルファ−5(レーン1〜9)を、750mLフラスコ(LB培地、体積250mL)内で、OD600が約1.2になるまで、37℃で増殖させた。標的タンパク質の発現を、1mM IPTGで2.5時間誘導した。全細胞タンパク質サンプルを、BioRad Protein Markers(単位はkDaで、左側に示される)とともに15%SDS−PAGEで泳動した後、クマシーブルーで染色した。
【図7】図7は、組換えhIFNa5の生合成のフローチャートを示す。
【図8A】図8は、hIFNa5タンパク質を還元条件下(図8A)および非還元条件下(図8B)両方においてSDS−PAGE(14%)で測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を表す(この図は、hIFNa5タンパク質の3つの大規模精製バッチの結果を示す)。
【図8B】図8A参照。
【図9】図9は、「逆相高速液体クロマトグラフィー」(RP−HPLC)解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す(この図は、組換えhIFNa5の3つの大規模バッチの結果を示す)。
【図10】図10は、「サイズ排除HPLC」(SE−HPLC)解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す(この図は、組換えhIFNa5の3つの大規模バッチの結果を示す)。
【図11】図11は、等電点電気泳動解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す(この図は、組換えhIFNa5の3つの大規模バッチの結果を示す)。レーン1、11:pIスタンダード(Amersham Pharmacia);レーン2、3、4:組換えhIFNa5,15μg;レーン5、6、7:組換えhIFNa5,5μg;レーン8、9、10:組換えhIFNa 5,1μg。
【図12】図12は、本発明によって精製、そして製剤化された3つの組換えhIFNa5調製物の大規模バッチのペプチドマッピングクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本発明の理解を促すために、本発明との関係において使用されるいくつかの用語および表現の意味をここに提供する。
【0019】
本明細書において、用語「インターフェロンアルファ5」(または「IFNアルファ5」または「IFNa」)とは、ウイルス感染に対する自然免疫反応に主に関わっていることが明らかで、IFNa受容体(IFNAR)として公知の特異的な細胞表面受容体複合体に結合することができる、白血球によって産生されるタンパク質を指す。
【0020】
IFNa5タンパク質は、例えば、WO83/02459号公報に記載されている(hIFNa5)。
【0021】
用語「IFNa5」には、(i)少なくとも天然IFNa5タンパク質のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列、および(ii)天然IFNa5と共通の生物学的活性を有するタンパク質が含まれる。実質的に同一のアミノ酸配列とは、その配列が、同一であるか、あるいは合成タンパク質と天然IFNa5との間に有害な機能的差異を生じさせない1つ以上のアミノ酸改変(すなわち、欠失、付加、置換)の差で異なっていることを意味し、例えば、言及されるIFNa5タンパク質のうちの1つと少なくとも70%の同一性を有するIFNa5タンパク質である。IFNa5タンパク質(P)と参照のIFNa5タンパク質(R)との間のX%の同一性とは、それらの2つの配列をアラインメントしたとき、PのX%のアミノ酸が、配列R内の対応するアミノ酸と同一であるか、あるいは同じ群のアミノ酸、例えば:
−非極性R基を有するアミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン;
−無電荷極性R基を有するアミノ酸:グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン;
−電荷極性R基(pH6.0において負に帯電)を有するアミノ酸:アスパラギン酸、グルタミン酸;
−塩基性アミノ酸(pH6.0において正に帯電):リジン、アルギニン、ヒスチジン(pH6.0において);
−フェニル基を有するアミノ酸:フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン
によって置き換えられていることを意味する。
【0022】
特に好ましい保存的置換は、以下である:
正電荷が維持され得るような、LysのArgへの置換、その逆もまた同様;
負電荷が維持され得るような、GluのAspへの置換、その逆もまた同様;
遊離−OHが維持され得るような、SerのThrへの置換;ならびに
遊離NH2が維持され得るような、GlnのAsnへの置換。
【0023】
これらの配列同一性のパーセンテージは、BLASTプログラム(blast2seq,デフォルトパラメータ)[Tatutsova and Madden,FEMS Microbiol.Lett.,174,247−250(1990)]を用いることによって得ることができる。
【0024】
本明細書において、用語「IFNa5産生E.coli宿主細胞」とは、IFNa5に関連する生物学的活性を有するタンパク質を産生するように遺伝的に操作したE.coli宿主細胞を指す。特定の実施形態において、E.coli宿主細胞は、E.coliプロテアーゼ欠損株(例えば、E.coli Ion−/ompT−プロテアーゼ欠損宿主株、好ましくは、E.coli BL21株、最も好ましくは、E.coli BL21(DE3)株)である。
【0025】
本明細書において、用語「IFNa5の生物学的活性」とは、前記IFNa5の治療活性を含む前記IFNa5の任意の生物学的活性のことを指す。WO83/02459号公報には、IFNa5が、DNAウイルスおよびRNAウイルスに対する抗ウイルス活性、細胞成長活性、ならびに細胞内の酵素および細胞が産生する他の物質の産生を制御する能力を示すことが開示されており;したがって、IFNa5を使用することにより、ウイルス感染(例えば、慢性B型肝炎感染)、腫瘍および癌が治療され得ることが期待される。
【0026】
本明細書において、発酵培地が「動物起源または酵母起源由来の成分を含まない」という表現は、医薬製品を介して海綿状脳症を引き起こす物質を伝染させるリスクがないこと、医薬品に関連するBSE汚染またはvCJDの症例に関するいかなる証拠もないことを意味する。製品は、酵母細胞由来の微量の汚染タンパク質を含まない。
【0027】
IFNa5を生産する方法
一つの態様において、本発明は、IFNa5産生Escherichia coli宿主細胞における発現によってインターフェロンアルファ5(IFNa5)タンパク質を生産する方法(以下「本発明の方法」という。)であって、そのプロセスが:
a)IFNa5産生E.coli宿主細胞を用意する工程と;
b)発酵培地中で前記組換えIFNa5産生E.coli宿主細胞が前記IFNa5タンパク質を発現するのに有効な条件下でIFNa5産生E.coli宿主細胞を、炭素供給液を添加しながら培養する工程であって、ここで、
−前記発酵培地は、動物起源または酵母起源由来の成分を含まず、かつ
−前記炭素供給液は、炭素源、および添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0〜約3.7mLの微量元素溶液を含んでなる、工程と;
c)発現したIFNa5タンパク質を単離し、そして必要に応じて精製する工程とを少なくとも含んでなることを特徴とする方法に関する。
【0028】
本発明の方法によって生産され得る組換えIFNa5は、先に定義した。特定の実施形態において、本発明の方法によって生産され得る前記組換えIFNa5は、天然IFNa5と実質的に同一のIFNa5タンパク質、すなわち、IFNa5をコードする遺伝子、または(1)少なくとも天然IFNa5のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列および(2)天然IFNa5と共通の生物学的活性を有するタンパク質をコードする、その組換え体で形質転換されたIFNa5産生E.coli宿主細胞によって産生されるタンパク質である。好ましい実施形態において、前記IFNa5は、hIFNa5である。
【0029】
より特定の実施形態において、本発明の方法によって生産される組換えIFNa5は、そのポリペプチド鎖のN末端に余分なメチオニン残基を有する成熟hIFNa5に対応する配列番号1(図4)に示されるアミノ酸配列を有するIFNa5である。
【0030】
本発明の方法によれば、IFNa5産生E.coli宿主細胞は、用意される[工程a)]。原則、任意のE.coli株を本発明の方法において使用することができるが、好ましい実施形態において、E.coli宿主細胞は、E.coliプロテアーゼ欠損株(例えば、E.coli Ion−/ompT−プロテアーゼ欠損宿主株、好ましくは、E.coli BL21株、最も好ましくは、E.coli BL21(DE3)株)である。
【0031】
IFNa5産生E.coli宿主細胞は、IFNa5をクローニングおよび発現させる従来の方法およびプロトコルによって得ることができる[例えば、Sambrook et al.Molecular cloning:A Laboratory Manual.Second ed.,CSH Laboratory,Cold Spring Harbor,1989;Current Protocols in Molecular Biology,vol.1−3(Ausubel F.M.et al.,ed.)John Wiley & Sons,Inc.,Brooklyn,New York,1994−1998]。特定の実施形態において、IFNa5をコードする遺伝子のクローニングおよび発現、ならびに組換えIFNa5タンパク質を産生する細菌株(すなわち、IFNa5産生E.coli宿主細胞)の構築は、IFNa5をコードするcDNA遺伝子のクローニング、E.coliにおけるその発現が最適となるような前記遺伝子のDNA配列の改変、発現プラスミドの構築、選択されたプラスミドを好適なE.coli株へ導入する形質転換、そして発現/誘導条件の選択を含んでなる方法によって行うことができる。実施例1は、hIFNa5産生E.coli宿主細胞の構築を開示する。
【0032】
特定の実施形態において、E.coli宿主細胞がE.coliプロテアーゼ欠損株(例えば、E.coli BL21(DE3)株)であるとき、前記宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下で、IFNa5タンパク質をコードする配列を含んでなるベクターで形質転換され;この場合、そのタンパク質の発現は、インデューサー(例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG))の添加を必要とする。したがって、特定の実施形態によれば、E.coli宿主細胞がE.coli BL21株(例えば、E.coli BL21(DE3)株)であるとき、工程b)の条件は、IPTGによる誘導を含む。
【0033】
本発明の方法の工程b)において、IFNa5産生E.coli宿主細胞は、発酵培地中で前記組換えIFNa5産生E.coli宿主細胞が前記IFNa5タンパク質を発現するのに有効な条件下で、炭素供給液を添加しながら培養され、ここで
−前記発酵培地は、動物起源または酵母起源由来の成分を含まず、かつ
−前記炭素供給液は、炭素源、および添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0〜約3.7mLの微量元素溶液を含んでなる。
【0034】
前記IFNa5タンパク質を発現させるためにIFNa5産生E.coli宿主細胞が培養されなければならない有効な条件は、通常、当業者に公知である。前記条件としては、培養されるE.coli宿主細胞に適した窒素源、炭素源および金属源を含んでなる発酵培地が挙げられる。ただし、本発明によれば、その発酵培地は、動物起源または酵母起源由来の成分を含まない(例えば、合成化学発酵培地)。
【0035】
特定の実施形態において、第二リン酸アンモニウムおよびアンモニアを、単独で、またはこれらの併用で、窒素源として使用することができる。別の特定の実施形態において、炭素源は、クエン酸、グルコースまたはそれらの組み合わせであり得る。
【0036】
実施例2は、IFNa5産生E.coli BL21(DE3)株を培養するための発酵培地を開示し、前記培地は、第二リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸二水素カリウム、クエン酸、D(+)−グルコースおよび微量元素原液を含んでなり、ここで、前記微量元素原液は、鉄、カルシウム、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、モリブデン、ホウ素およびそれらの組み合わせからなる微量元素の群から選択される微量元素を含んでなる。特定の実施形態において、前記発酵培地は、塩化鉄(III)、塩化カルシウム、硫酸亜鉛(II)、硫酸マンガン(II)、硫酸銅(II)、塩化コバルト(II)、モリブデン酸ナトリウム、ホウ酸およびそれらの組み合わせからなる微量元素源の群から選択される微量元素源を含んでなる。特定の実施形態において、微量元素(痕跡元素)原液は、(単位g/Lで):塩化鉄(III)六水和物(30.0)、塩化カルシウム二水和物(4.05)、硫酸亜鉛(II)七水和物(6.75)、硫酸マンガン(II)一水和物(1.5)、硫酸銅(II)五水和物(3.0)、塩化コバルト(II)六水和物(1.14)、モリブデン酸ナトリウム二水和物(0.3)およびホウ酸(0.69)を含んでなる[実施例4]。
【0037】
本発明の方法の別の特徴は、炭素供給液が、炭素源、および添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0〜約3.7mLの微量元素溶液を含んでなるという事実を指す。前記微量元素溶液の詳細は、先に定義した。特定の実施形態において、炭素供給液は、炭素源(例えば、クエン酸および/またはグルコース)、硫酸マグネシウム、および本発明によれば、添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0mL〜約3.7mLの微量元素溶液という濃度での濃縮微量元素溶液を含んでなる。上で述べたように、実施例2および4は、鉄、カルシウム、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、モリブデン、ホウ素およびそれらの組み合わせからなる微量元素の群から選択される微量元素を含んでなる微量元素原液を開示し;特定の実施形態において、前記微量元素原液は、塩化鉄(III)、塩化カルシウム、硫酸亜鉛(II)、硫酸マンガン(II)、硫酸銅(II)、塩化コバルト(II)、モリブデン酸ナトリウム、ホウ酸およびそれらの組み合わせを含んでなる。特定の実施形態において、炭素供給液1リットルあたり約3.0mL〜約3.7mLの微量元素溶液という濃度で含められてなる微量元素原液が、実施例2および4が開示する微量元素原液である。実施例2は、産生株によるhIFNa5の生合成プロセスを開示する。
【0038】
本発明者らによって行われた種々の研究から、組換えIFNa5(例えば、hIFNa5)の翻訳後修飾に対する微量元素の影響、すなわち、E.coliにおいて産生される組換えIFNa5(例えば、組換えhIFNa5)の精製API(医薬品原薬)に見出される酸化型Metの相対量が、そのポリペプチド鎖のN末端における「プロセシングされないメチオニン」の量と密接に関連することが示された。N末端における10%未満の前記プロセシングされないメチオニンを得るために、リフォールディング後の酸化型Met IFNa5の量(RP−HPLCによって測定される)は、多くとも1%を構成すべきである。
【0039】
組換えhIFNa5生合成プロセスの最適化において、本発明者らは、発酵培地中の微量元素の濃度が、hIFNa5の翻訳後修飾に対して重要な影響を及ぼすことを観察した。実際に、1Lの炭素供給液が、3.0mL〜3.7mLの前記微量元素原液を含むとき、またはそれが0.0048mL/L/o.u.〜0.0070mL/L/o.u.[o.u.:光学単位]の限度内であるとき、酸化型のメチオニル化hIFNa5型(酸化型Met hIFNa5)の生成が無くなり、アセチル化hIFNa5型の量が2倍減少する(半分になる)ことが明らかになった。
【0040】
特定の実施形態において、本発明の方法は、誘導後の平均「比増殖速度」(μ)が0.17以上である条件下で行われる[μ:((ln OD2−ln OD1)/T2−T1)。ここで、ODは、「光学濃度」(光学単位,o.u.)であり、Tは、「時間」である。]。本発明者らによって行われた研究から、培養物の増殖と微量元素の濃度とは密接に相互依存的であり、特に、微量元素の濃度が非常に低い/ほぼ限界濃度であるとき、密接に相互依存的であることが示された。培養培地中の微量元素の濃度が、0.95mL/L最終懸濁液体積(実施例4,表3)より低いか、または3.0mL/L炭素供給液未満であるとき、誘導後の平均μは、僅か0.121〜0.158、すなわち、0.17未満となる(M−83、M−84、M−85、M−86)。しかしながら、誘導後の平均μが0.17未満であるとき、酸化型のメチオニル化IFNa5型の存在が事実上保証される。1.23mL/L最終懸濁液体積より高い培養培地中の微量元素の濃度は、より速い増殖(M−89、M−90)、より大きなWCW(菌体の湿重量)、そしてより多量のアセチル化IFNa5型+未知タンパク質をもたらす。しかしながら、誘導後の平均μが0.17以上であるとき、本発明の方法は、微量元素の濃度が0.123mL/L最終懸濁液体積より高くなるまで、または3.7mL/L炭素供給液より高くなるまで、上手く機能する。
【0041】
本発明の方法の工程c)は、発現したIFNa5タンパク質を単離し、そして必要に応じて精製することを含んでなる。特定の実施形態において、IFNa5産生E.coli宿主細胞を溶解した後、封入体(IB)を可溶化に付して、変性IFNa5を含んでなる混合物を得て、次いでそれを酸化再生処理に付して、再生IFNa5を含んでなる混合物を得て、その後その混合物を精製プロセスに付して、対応する精製IFNa5を得ることによって、IFNa5タンパク質を、前記IBの形態で単離する。特定の実施形態において、前記IFNa5は、好ましくはhIFNa5である。
【0042】
本発明の方法によって発現したIFNa5を単離および精製するためには、まず、前記組換えIFNa5を封入体(IB)の形態で単離するために、IFNa5産生E.coli宿主細胞を溶解する。つまり、特定の実施形態において、従来の手法(例えば、均質化、超音波処理または圧力循環)を用いることによって、IFNa5産生E.coli宿主細胞の細胞膜を溶解する。好ましい方法としては、超音波処理、またはポッター型ホモジナイザー(テフロン(登録商標)/ガラス)を用いた均質化が挙げられる。細胞を溶解した後、IFNa5を含むIBを、例えば遠心分離によって、溶解物の液相から分離し、適切な緩衝液に再懸濁する。その中の任意の水溶性E.coliタンパク質を除去するために、そのIBを必要に応じて洗浄してもよい。
【0043】
続いて、変性IFNa5を含む混合物を得るために、通常、水性緩衝液中、可溶化剤(例えば、カオトロピック剤、例えば、水素結合を解離し、タンパク質の三次構造および二次構造に影響してそのアンフォールディングを引き起こすタンパク質変性剤)の存在下で、前記IBを可溶化する。カオトロピック剤の説明に役立つ非限定的な例としては、尿素およびグアニジニウム塩酸塩(GdmHCl)、好ましくは、ポリペプチド鎖のカルバモイル化(濃尿素溶液が使用される場合に生じることがある)を妨げる強力なカオトロピック剤であるグアニジニウム塩酸塩が挙げられる。カオトロピック剤の濃度は、使用される特定のカオトロピック剤および存在する細胞材料の量に左右されるであろう。好ましくは、6〜7M、最も好ましくは、6Mの濃度を有するグアニジニウム塩酸塩溶液が使用される。pHは、カオトロピック剤を含む好適な緩衝液を加えることによって調整されてよく、好ましくは、pHは、7超、典型的には約8以上、好ましくは8.6以上、より好ましくは9.55〜9.65であり得る。通常、好ましい実施形態において、IBの可溶化は、リフォールディング工程と同じpHで行われるので、リフォールディング工程のために可溶化溶質のpHをさらに調整することは回避される。
【0044】
IFNa5を含んでなるIBを可溶化した後、不溶性の粒子状物質を分離し、廃棄する。変性IFNa5を含んでなる混合物中に存在する変性IFNa5を、前記混合物を再生緩衝液などの再生溶液で希釈することによって、再生する。特定の実施形態において、前記再生緩衝液は、7.0を超えるpH、典型的には約8以上のpH、好ましくは8.6以上のpH、より好ましくは9.55〜9.65のpHを有する緩衝液系に、不安定化剤(例えば、L−アルギニンなど)、酸化還元対(例えば、GSH/GSSGなど)、および必要に応じてキレート化合物を含んでなる。再生後、任意の残留粒子状物質を除去するために、得られた正しく折り畳まれたIFNa5を含むタンパク質溶液を、従来の手法、例えば、遠心分離または濾過によって清澄化する。その後、必要であれば、清澄化されたタンパク質溶液のpHを好適な酸(例えば、HCl)で8.0〜8.20に調整し、次いで、再生IFNa5(タンパク質溶液)を含む混合物をIFNa5の精製に適した任意のプロセスに付す。
【0045】
実際には、任意のIFNa5精製プロセスを使用することができるが、本発明はさらに、IFNa5を精製するための効率的なプロセスを提供し、そのプロセスは、再生IFNa5を下記4工程のクロマトグラフィー処理に付す工程を含んでなる:
1)再生IFNa5を含んでなる前記混合物を、疎水性相互作用クロマトグラフィーに付す工程;
2)工程1)で得られた溶液を、陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;
3)工程2)で得られた溶液を、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;および
4)工程3)で得られた溶液を、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程であって、ここで、前記溶液を、必要に応じてメチオニンを含む緩衝液で希釈する、工程。
【0046】
つまり、再生IFNa5を他の成分、例えば、残留カオトロピック剤などから分離するために、工程1)において、酸化再生処理後に得られたタンパク質プールを含んでなり、pHが調整された清澄化タンパク質溶液を、Phenyl−Sepharoseカラムに適用する。さらに、再生IFNa5と吸着剤の疎水性表面との接触が、IFNa5の成熟を促進する。
【0047】
次いで、工程2)では、工程1)で得られたタンパク質プールを、伝導率について調整し(例えば、13.00〜14.00mS/cm)、そしてpHを8.75〜8.85に調整し、IFNa5モノマーをその凝集型から分離するために、Q−Sepharoseカラム(陰イオン交換クロマトグラフィー)に適用する。特定の純度(例えば、55%以上)を有する画分を、さらなる精製のためにプールすることができる。
【0048】
続いて、工程3)では、工程2)で得られたタンパク質プールを、伝導性について調整し(例えば、6.00〜7.00mS/cm)、そしてpHを5.15〜5.20に調整し、N−メチオニル−IFNa5およびアセチル化IFNa5(翻訳後修飾の産物の形態)のような荷電アイソフォームから主要なIFNa5型を分離するために、SP−Sepharoseカラム(第1の陽イオン交換クロマトグラフィー)に適用する。特定の純度(例えば、70%以上)を有する画分を、さらなる精製のためにプールすることができる。
【0049】
最後に、工程4)では、工程3)で得られたタンパク質プールを、伝導性について調整し(例えば、6.00〜7.00mS/cm)、そしてpHを5.00〜5.20に調整し、荷電アイソフォームから主要なIFNa5型を分離するために、第2のSP−Sepharoseカラム(第2の陽イオン交換クロマトグラフィー)に適用する。特定の実施形態では、室温で行われるクロマトグラフィー中のIFNa5の酸化を防止するために、L−メチオニンをローディング溶液に加える。95%以上(≧)のIFNa5の純度(RP−HPLCによって測定される)を達成することができるような方法で、画分をプールすることができる。
【0050】
所望であれば、そのように得られたIFNa5を、薬学的に許容可能なビヒクルおよび賦形剤、例えば、塩化ナトリウムを含むリン酸ナトリウム,pH6.80〜7.20を用いて製剤化してもよい。そのタンパク質溶液は、所望であれば、所望の濃度まで濃縮することができ、例えば、特定の実施形態では、そのタンパク質溶液は、10mg/mLまで、例えば、1.0〜1.5mg/mLまでのタンパク質濃度に濃縮され、限外濾過によって緩衝液交換され、そして0.22μmの最大ポアサイズを有する滅菌フィルターでの濾過滅菌によって滅菌される。
【0051】
実施例3は、hIFNa5産生株からhIFNa5を単離および精製するための方法が開示される。
【0052】
以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに説明するために役立つ。
【実施例】
【0053】
実施例1
IFNa5を発現するE.coli株の構築
この実施例は、組換えヒトインターフェロンアルファ−5(hIFNa5)を産生するE.coli株の開発および構築を開示する。つまり、hIFNa5遺伝子のクローニングおよび発現、ならびに組換えIFNa5タンパク質を産生する細菌株の構築は、以下の工程:hIFNa5をコードするcDNA遺伝子のクローニング、E.coliにおけるその発現が最適となるような前記遺伝子のDNA配列の改変、発現プラスミドの構築、選択されたプラスミドを好適なE.coli株へ導入する形質転換、そして発現/誘導条件の選択、を用いることによって、以下に記載するように行った。
【0054】
方法
hIFNa5のクローニングおよび発現では、従来の方法およびプロトコルを用いた[Sambrook et al.Molecular cloning:A Laboratory Manual.Second ed.,CSH Laboratory,Cold Spring Harbor,1989;Current Protocols in Molecular Biology,vol.1−3(Ausubel F.M.et al.,ed.)John Wiley & Sons,Inc.,Brooklyn,New York,1994−1998]。
【0055】
酵素、DNAおよびタンパク質マーカーを用いたすべての操作は、製造業者の説明書[主にFermentas(Lithuania)]に従って行った。
【0056】
遺伝的構築物
hIFNa5産生E.coliの構築は、図1に示す遺伝的構築物の開発のフローチャートに示す工程に従って行った。
【0057】
最初のプラスミド
hIFNa5コード配列(シグナルペプチドを含まない)を、インフォームドコンセント後、非肝臓病変のための開腹手術を受けた匿名のドナー患者から得た正常肝臓組織から以下のとおりクローニングした:正常肝臓組織を1mLのUltraspec溶液(Biotex)中でホモジナイズし、全RNAをDnase(Gibco−BRL,Paisley,U.K.)で処理した後、RnaseOUT(Gibco−BRL)の存在下でM−MLV逆転写酵素(Gibco−BRL)を用いて逆転写を行った。予め得ていた相補的DNA(cDNA)から、下記上流プライマーおよび下流プライマー(5’−3’)を用いて、hIFNa5コード配列(シグナルペプチドを含まない)をPCR増幅した:
【化1】
【0058】
両方のプライマーが、hIFNa5配列(太字)および制限酵素:NdeIおよびBamHIに特異的な配列(下線)を含む。PCR産物を、アガロースゲル電気泳動によって解析し、バンドをゲルから切り出し、Gene Clean kit(MP Biomedicals)によって精製した。精製したPCR産物を、TOPO TA Cloning Kit(Invitogen)を用いてpCR2.1TOPOプラスミドにクローニングした。インサートに由来するクローンを、色素Rhodamineターミネーターサイクルシーケンシングキット(Perkin Elmer)を使用して、ABIPRISM 310 Genetic Analyzer(Perkin Elmer)において配列決定し、そのインサートがhIFNa5配列と厳密に一致することを確かめた。その後、pCR2.1 TOPO−IFNアルファ5を、NdeIおよびBamHI制限酵素で消化し、534pbのバンド(IFNa5コード配列に対応する)を、予め同じ酵素で消化しておいたpET28bベクター(Novagen)にクローニングした。同じ手順を用いて、その配列を再度確かめた。
【0059】
種々のコロニーから得た最初のプラスミドDNApET28−IFNアルファ−5を、制限酵素解析によって解析した(図2)。
【0060】
プラスミドpET28−IFNアルファ−5を、ABI Prism 377配列分析装置を用いて両方のDNA鎖を配列決定することによって解析した。この解析から、hIFNa5コード配列が確認された。プラスミドpET28−IFNアルファ−5を、コドン最適化された成熟構造を構築するために、PCR増幅用の鋳型として使用した。
【0061】
コドン最適化された成熟構造
コドン最適化を含む、hIFNa5コード遺伝子のPCR増幅
鋳型としてプラスミドpET28−IFNアルファ−5を使用することによって、PCR増幅を行った。以下のオリゴヌクレオチドを合成した:
センスプライマー(SP):5’−CATATGTGTGATCTGCCGCAGACCCACTCCCTGTCTAACCGTCGTACTCTGATGATCATGGCACAGATGGGTCGTATCTCTCCTTTC[配列番号4]
アンチセンスプライマー(ASP):5’−CTGCAGTTATTCCTTACGACGTAAACGTTCTTGCAAG[配列番号5]
E.coliにおいて使用頻度が最も低いコドンを置換するために、SP[配列番号4]およびASP[配列番号5]プライマーを適用した。コドン最適化は、主に、アルギニンコドンAGAおよびAGGに関する。
【0062】
PCRフラグメントの中間体プラスミドへのクローニング
約500bpの精製された増幅産物を、Rapid DNA ligation Kit(#K1421,Fermentas,Lithuania)を用いて、pUC57/Tプラスミド(#SD0171 Fermentas,Lithuania)にクローニングし、E.coli JM109(ATCC53323,ATCC Bacteria and Bacteriophages,19th edition,1996)に形質転換した。組換えクローンを制限酵素解析によって選択した(図3)。2つのクローンを選択し、抽出されたプラスミドを配列決定した。
【0063】
中間体プラスミドIFNアルファ−5の配列解析およびヒトIFNアルファ−5コード配列のプラスミドpET21b(+)への再クローニング
ヌクレオチド配列解析によって、hIFNa5コード部分の配列を確認し、その配列を図4に示す。
【0064】
hIFNa5をコードするフラグメントを、NdeI+BamHIで切り出し、精製されたDNAフラグメントを、NdeI+BamHIで切断したベクターpET21b(+)(Novagen)にライゲートすることにより、プラスミドpET21−IFNアルファ−5を得た。E.coli JM109株に形質転換した後、100μg/mLのアンピシリンを加えることによって、細菌を選択した。形質転換された細胞に由来するコロニーの組換え挿入解析を、コロニーPCR試験法を用いて行った。PCR陽性クローンから精製されたプラスミドpET21−IFNアルファ−5の詳細な制限酵素解析から、予想した制限酵素パターンが得られた(図5)。
【0065】
組換えhIFNa5の発現
非発現宿主においてプラスミドpET21−IFNアルファ−5を確立した(安定化した)後、それを、標的タンパク質の発現に対して関連する遺伝因子を有する宿主E.coli BL21(DE3)に形質転換することにより、E.coli BL21(DE3)pET21−IFNa−5株を得た。hIFNa5の発現を、1mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)で誘導し、その結果を図6に示す。
【0066】
SDS−PAGEによれば、hIFNa5の分子量は約20kDaであり、これは計算値の19.7kDaと相関する。
【0067】
組換えhIFNa5は、全細胞溶解物の不溶性画分において検出された;標的タンパク質の収率は、全細胞タンパク質の約20%であった。hIFNa5は、細胞溶解物の不溶性画分のおよそ40%を構成した。得られた発現株の1つのコロニーを、リサーチマスターセルバンク(RMCB)を確立するために使用した。
【0068】
実施例2
産生株によるhIFNa5の生合成プロセス
E.coli BL21(DE3)pET21−IFNa−5株(実施例1)を、以下の組成(g/L)を有する培地中で培養した:
a)フラスコ内における接種材料の調製(培養)用(g/L):リン酸水素二ナトリウム(17.0)、リン酸二水素カリウム(1.82)、硫酸アンモニウム(3.0)、硫酸マグネシウム七水和物(0.5)、D(+)−グルコース一水和物(15.0)および微量元素原液e)(0.16mL);
b)発酵用(g/L):第二リン酸アンモニウム(4.0)、硫酸マグネシウム七水和物(0.5)、リン酸二水素カリウム(13.3)、クエン酸一水和物(1.6)、D(+)−グルコース一水和物(30.0)および微量元素原液e)(0.25mL);
c)供給液A(g/L):D(+)−グルコース一水和物(700.0)、硫酸マグネシウム七水和物(20.7)および微量元素原液e)(3.4mL/L);
d)供給液B(g/L):第二リン酸アンモニウム(360.0)およびリン酸二水素カリウム(306.7);ならびに
e)微量元素(痕跡元素)原液(g/L):塩化鉄(III)六水和物(30.0)、塩化カルシウム二水和物(4.05)、硫酸亜鉛(II)七水和物(6.75)、硫酸マンガン(II)一水和物(1.5)、硫酸銅(II)五水和物(3.0)、塩化コバルト(II)六水和物(1.14)、モリブデン酸ナトリウム二水和物(0.3)およびホウ酸(0.69)。
【0069】
図7は、ヒトIFNアルファ−5生合成プロセスの完全なスキームを示す。
【0070】
接種材料の調製:そのフラスコに培養用の500mLの滅菌培地[a)]を含むエルレンマイヤーフラスコに、0.25mLの保存培養WCB(ワーキングセルバンク)E.coli BL21(DE3)pET21−IFNa−5を接種した。その後、そのフラスコを撹拌速度300rpmの回転振盪機において30℃の温度で21〜22時間インキュベートした。インキュベーション後の光学濃度は、4.50 o.u.(光学単位)[λ=595nm]以上でなければならない。
【0071】
発酵:7.0Lの発酵培地[b)]を含む発酵槽(総体積13.7L)に、接種フラスコにおいて得られた培養物の1.5〜1.6%を接種した。自動的に制御される温度(37℃)、pH(6.8)およびpO2(20%)で発酵を行った。25%アンモニウム溶液をpH補正のために使用した。8〜9時間培養した後、追加の供給を開始した。培養培地中のグルコース濃度を約3g/L〜22g/Lに維持するために、供給液A[c)]を特定用量注入した。最終IPTG濃度が0.5mMとなるように、90〜110 o.u.(λ=595nm)においてIPTGを用いて誘導を行った。誘導後に十分な比増殖速度を得るために、誘導時の比増殖速度は0.45以上であるべきである。誘導後の平均比増殖速度は、0.17より高くあるべきである。供給液B[d)]を別々の用量で注入した:60〜70 o.u.において150mL、120〜140 o.u.において150mL、誘導の1.5時間(90分)後に75mL、および2時間後に75mL。誘導後3時間にわたって同一条件で発酵を続けた。次いで、細胞懸濁液を発酵槽内で12〜15℃に冷却し、蠕動ポンプによって遠心機に移した(35L/h)。その細胞懸濁液を、4℃で、5,000rpmの速度で遠心分離した。
【0072】
回収されたバイオマスを、ポリエチレンバッグに集め、凍結のため、およびその後の貯蔵のために、(−33±5)℃の冷却装置に置いた。凍結されたバイオマスの一部を、総タンパク質の評価およびhIFNa5の発現の評価のために採取した。
【0073】
実施例3
産生株からhIFNa5を単離および精製するプロセス
1.バイオマスの均質化、破砕、および封入体(IB)の単離
実施例2で得られた680.0〜700.0gのバイオマスを、再懸濁緩衝液(2mM EDTA、0.1%TritonX−100および1mM PMSFを含む0.1M Tris−HCl,pH7.80〜8.00)中で、1/10(w/v)の比、すなわち、1gの湿バイオマス/10mLの再懸濁緩衝液中で、ホモジナイズした。
【0074】
ポッター型ホモジナイザー(テフロン(登録商標)/ガラス)において再懸濁を行い、次いで、高圧ホモジナイザーを4〜10℃の温度、600〜800barにおいて用いて、細胞を破砕した。細胞の崩壊の後、8,000rpmで30〜35分間の遠心分離によって封入体(IB)を分離した。
【0075】
2.封入体(IB)の洗浄
単離されたIBの予備洗浄を、洗浄緩衝液I〜IIIを用いて連続した4工程のプロセスによって行った:
洗浄緩衝液I:1M NaCl、0.1%Polysorbate−80を含む、10mM Tris−HCl緩衝液,pH7.45〜7.55;
洗浄緩衝液II:6M尿素を含む、10mM Tris−HCl緩衝液,pH8.00〜8.20;
洗浄緩衝液III:10mM Tris−HCl緩衝液,pH8.00〜8.20。
【0076】
つまり、IBの洗浄は、以下のとおり行った:
a)最初の2回の洗浄(工程1および2)、IBを洗浄緩衝液Iで洗浄した;
b)3番目の洗浄(工程3)、IBを洗浄緩衝液IIで洗浄した;そして
c)4番目の洗浄(工程4)、IBを洗浄緩衝液IIIで洗浄した。
【0077】
IB洗浄手順の全体にわたって、10mLの緩衝液/1gの湿バイオマスという洗浄緩衝液/湿バイオマス比を維持した。
【0078】
3.IBの可溶化
IBを可溶化するために、可溶化緩衝液(6M GdmHClを含む、50mMグリシン/NaOH緩衝液,pH9.55〜9.65)を使用した。可溶化の比率:2〜8℃で、2時間、6mLの可溶化緩衝液中において1gのバイオマスからIBを単離し、そしてその後8,000rpmで25〜30分間遠心分離。
【0079】
4.再生
再生緩衝液:1.2M NaCl、0.22M L−アルギニン、2.85mM GSH(還元型グルタチオン)、0.285mM GSSG(酸化型グルタチオン)を含む、50mMグリシン/NaOH緩衝液,pH9.55〜9.65、4〜10℃における伝導率110〜110mS/cm。
【0080】
0.2M L−アルギニン、2.5/0.25mM GSH/GSSGという再生混合物中の最終濃度を達成するようにIB可溶化物(solubilisate)を再生緩衝液に(体積比1:7)滴下することによって、GdmHCl−変性ヒトIFNアルファ5を再生した。再生混合物を、2〜8℃で44〜66時間、連続撹拌した。再生後、タンパク質溶液を8,000rpmで30〜35分間の遠心分離によって清澄化した。
【0081】
5.クロマトグラフィー
hIFNa5を、以下で述べるように4工程のクロマトグラフィープロセスによって精製した。
【0082】
5.1 Phenyl−Sepharoseカラム(疎水性相互作用クロマトグラフィー)によるクロマトグラフィー
Phenyl−Sepharoseカラムは、再生したhIFNa5を残留カオトロピック剤GdmHClから分離することを目的としている。さらに、再生したhIFNa5と吸着剤の疎水性表面との接触が、IFNa5の成熟を促進させる。
【0083】
つまり、清澄化したタンパク質溶液のpHを6M HClで8.00〜8.20に調整し、次いでそのタンパク質溶液を、以下のプロセスパラメータを用いてPhenyl−Sepharoseクロマトグラフィーカラムに適用した:
クロマトグラフィー媒体:Phenyl−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech AB);
使用カラム:BPG100×500mm,直径10cm;
線流速:60cm/時;
クロマトグラフィー媒体ベッド体積:2.7±0.3L
平衡緩衝液:1.5M塩化ナトリウムを含む20mM Tris−HCl緩衝液,pH8.00〜8.20、15〜25℃における伝導率115〜125mS/cm(4〜10℃では110〜120mS/cm);
溶出緩衝液:10mM Tris−HCl緩衝液,pH9.20〜9.25、15〜25℃における伝導率0.1〜0.2mS/cm;
溶出を、6カラム体積(CV)[すなわち、6CV]にわたる溶離緩衝液で行う。回収されたタンパク質溶液2〜6CV。
【0084】
5.2 Q−Sepharoseカラム(陰イオン交換クロマトグラフィー)によるクロマトグラフィー
Q−Sepharoseカラムは、hIFNa5モノマーをその凝集型から分離するために使用される。
【0085】
つまり、前述の工程(5.1)で得られたタンパク質プールを、5M NaClを含む20mM Tris−HCl緩衝液,pH8.75〜8.85を加えることによって、13.00〜14.00mS/cmという伝導率に調整し、pHを6M HClで8.75〜8.85に調整した。次いで、そのタンパク質溶液を、以下のプロセスパラメータを用いてQ−Sepharoseクロマトグラフィーカラムに適用した:
クロマトグラフィー媒体:Q−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech AB);
使用カラム:BPG140×500MM,直径14cm;
線流速:60cm/時;
クロマトグラフィー媒体ベッド体積:3.3±0.3L
平衡緩衝液:0.12M塩化ナトリウムを含む20mM Tris−HCl緩衝液,pH8.75〜8.85、15〜25℃における伝導率13.00〜14.00mS/cm;
溶出緩衝液:0.23mM塩化ナトリウムを含む20mM Tris−HCl緩衝液,pH8.75〜8.85、15〜25℃における伝導率23.00〜25.00mS/cm;
溶出:5カラム体積(5CV)にわたる100%までの直線勾配の溶出緩衝液、および5CVの100%溶出緩衝液。
【0086】
画分体積は、400〜1000mLであった。
【0087】
55%以上(≧)の純度のhIFNa5(RP−HPLCによって測定される)の画分のみをさらなる精製のためにプールした。
【0088】
5.3 SP−Sepharoseカラム(陽イオン交換クロマトグラフィーI)による第1のクロマトグラフィー
N−メチオニル−hIFNa5およびアセチル化hIFNa5(翻訳後修飾の産物である形態)のような荷電アイソフォームから主要なhIFNa5型を分離するために、SP−Sepharoseカラムを3番目および4番目のクロマトグラフィー工程のために使用する。
【0089】
つまり、前述の工程(5.2)で得られたタンパク質プールを、10mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH4.95〜5.05を加えることによって、6.00〜7.00mS/cmという伝導率に調整し、pHを4M酢酸で5.15〜5.20に調整した。次いで、そのタンパク質溶液を、以下のプロセスパラメータを用いてSP−Sepharoseクロマトグラフィーカラムに適用した:
クロマトグラフィー媒体:SP−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech AB);
使用カラム:BPG100×500mm,直径10cm;
線流速:60cm/時;
クロマトグラフィー媒体ベッド体積:3.3±0.3L
平衡緩衝液:50mM塩化ナトリウムを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.15〜5.20、15〜25℃における伝導率6.00〜7.00mS/cm;
溶出緩衝液:2mM L−メチオニンおよび0.1M NaClを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.15〜5.20、15〜25℃における伝導率11.00〜13.00mS/cm;
溶出を、10カラム体積(10CV)にわたる溶出緩衝液で行った。
【0090】
画分体積は、400〜2000mLであった。
【0091】
70%以上(≧)の純度のhIFNa5(RP−HPLCによって測定される)の画分のみをさらなる精製のためにプールした。
【0092】
5.4 SP−Sepharoseカラム(陽イオン交換クロマトグラフィーII)による第2のクロマトグラフィー
つまり、ローディング溶液[第1のSP−Sepharoseカラム(工程5.3)から回収したタンパク質画分のプール]を、2mM L−メチオニンを含む5mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.00〜5.20で希釈し、15〜25℃において0.200〜0.800mS/cmという伝導率から15〜25℃において6.00〜7.00mS/cmという伝導率に調整した。室温で行われるクロマトグラフィー中のhIFNa5の酸化を防止するために、ローディング溶液に2mM L−メチオニンを加えた。ローディング溶液を、以下のプロセスパラメータを用いてSP−Sepharoseクロマトグラフィーカラムに適用した:
クロマトグラフィー媒体:SP−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech AB);
使用カラム:BPG100×500mm,直径10cm;
線流速:60cm/時;
クロマトグラフィー媒体ベッド体積:3.0±0.3L
平衡緩衝液:50mM塩化ナトリウムを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.15〜5.20、15〜25℃における伝導率6.00〜7.00mS/cm;
溶出緩衝液:0.1M NaClを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.15〜5.20、15〜25℃における伝導率11.00〜13.00mS/cm;
溶出線流速:45cm/時;
溶出:20カラム体積(20CV)にわたる100%までの溶出緩衝液の直線勾配。
【0093】
画分体積は、400〜2000mLであった。
【0094】
hIFNa5のRP−HPLC純度が95%以上(≧)となるように画分をプールした。
【0095】
製剤化、濃縮、濾過滅菌
製剤化緩衝液:0.1M塩化ナトリウムを含む25mMリン酸ナトリウム,pH6.80〜7.20、15〜25℃における伝導率10.00〜14.00mS/cm。
【0096】
タンパク質溶液の緩衝液交換/濃縮を、Biomax 10kDa膜で透析濾過/濃縮により行って1.00mg/mL以上(≧)とし、滅菌0.22μmフィルター(Millipak20)で濾過滅菌し、ガラスバイアルに充填した。
【0097】
図8は、組換えhIFNa5タンパク質の3つの大規模精製バッチを還元条件下および非還元条件下両方においてSDS−PAGE(14%)で測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す。
【0098】
図9は、「逆相高速液体クロマトグラフィー」(RP−HPLC)解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す(この図は、組換えhIFNa5の3つの大規模バッチの結果を示す)。
【0099】
図10は、3つの組換えhIFNa5大規模バッチについて「サイズ排除HPLC」(SE−HPLC)解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す。
【0100】
図11は、3つの組換えhIFNa5大規模バッチについて等電点電気泳動解析によって測定した、本発明によって処理、そして製剤化された組換えhIFNa5の純度を示す。レーン1、11:pIスタンダード(Amersham Pharmacia);レーン2、3、4:組換えhIFNa5,15μg;レーン5、6、7:組換えhIFNa5,5μg;レーン8、9、10:組換えhIFNa5,1μg。
【0101】
図12は、本発明によって精製、そして製剤化された3つの組換えhIFNa5調製物の大規模バッチのペプチドマッピングクロマトグラムを表す。
【0102】
実施例4
組換えヒトIFNアルファ−5の生合成に対する微量元素濃度およびグルコース濃度の影響の評価
この実施例の目的は、組換えヒトIFNアルファ−5(hIFNa5)の翻訳後修飾に対する微量元素の影響を確認すること、炭素供給液中の臨界微量元素濃度の限界を確定すること、および組換えhIFNa5の生合成に対するグルコース濃度の影響を評価することであった。したがって、この実施例は、本試験中に行われた解析および得られた結果を説明し、そして組換えhIFNa5の生合成プロセスにおける炭素供給液中の微量元素濃度の根拠およびグルコース濃度の根拠としての役割を果たす。
【0103】
hIFNa5生合成プロセスを最適化する中で、発酵培地中の金属または微量元素(痕跡元素)の濃度がhIFNa5タンパク質の翻訳後修飾に対して影響を及ぼすことが認められた。したがって、本試験の目的は、hIFNa5タンパク質の翻訳後修飾に対する前記痕跡元素の影響を確かめること、および炭素供給液中の臨界微量元素濃度の限界を確定することであった。それに加えて、各炭素供給用量が供給された後の発酵培地中のグルコース濃度(17g/Lおよび22g/L)が、培養物の増殖に対して影響を及ぼすか(すなわち、発酵培地中のグルコース濃度は、培養物の増殖の限界に関わり、それゆえバイオマス収率に影響するか、または培養物の増殖に影響しないか)、および標的タンパク質(組換えhIFNa5)の質に対して影響を及ぼすかを調べるために、発酵培地中のグルコース濃度を評価すると決定した。
【0104】
材料および方法
実験の計画をデザインし、「実験計画法」(DOE)の助けを借りてモニターし、それを表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
高細胞密度の流加発酵を既知組成の無機塩/グルコース培地中で行った。
−フラスコ内での培養用の無機塩/グルコース培地の組成(g/L):リン酸水素二ナトリウム−17.0、リン酸二水素カリウム−1.82、硫酸アンモニウム−3.0、硫酸マグネシウム七水和物−0.5、D(+)−グルコース一水和物−15.0、微量元素原液−0.16mL。
−微量元素(痕跡元素または金属)原液(g/L):塩化鉄(III)六水和物−30.0、塩化カルシウム二水和物−4.05、硫酸亜鉛(II)七水和物−6.75、硫酸マンガン(II)一水和物−1.5、硫酸銅(II)五水和物−3.0、塩化コバルト(II)六水和物−1.14、モリブデン酸ナトリウム二水和物−0.3、ホウ酸−0.69。
−発酵用の無機塩/グルコース培地の組成(g/L):第二リン酸アンモニウム−4.0、硫酸マグネシウム七水和物−0.5、リン酸二水素カリウム−13.3、クエン酸一水和物−1.6、D(+)−グルコース一水和物−30.0、微量元素原液−0.25mL。
−炭素供給液:70.0%グルコース、2.1%MgSO4×7H2Oおよび実験計画に応じた微量元素原液。
【0107】
培養8時間目から開始して、グルコース濃度を(15〜30)分ごとに測定し、その後、(実験計画に応じて、17g/Lまたは22g/Lの上限グルコース濃度に達するように)算出された用量の炭素供給を加えた。
【0108】
さらに、別々の用量での70mLの両方のリン酸塩溶液(第二リン酸アンモニウム−25.0g、リン酸二水素カリウム−21.0gを3用量に分けた:2:2:1または28:28:14mLの比)を、60〜75、120〜135、および170〜180o.u.において加えた。
【0109】
必要であれば、溶存酸素濃度を20%に維持するために、流入空気を純粋な酸素で自動的に富ませた(発酵槽総体積1リットルあたり最大60%)。
【0110】
WCB(−70℃にて貯蔵)[実施例2]から得た0.25mLの保存培養E.coli BL21(DE3)pET21−IFNa−5を、500mLの無機塩/グルコース培地(pH約7.7)中で、30℃で22時間オービタルシェーカー(300rpm)でインキュベートし、増殖させた。
【0111】
接種材料は、使用発酵槽の体積の約1.0%(20mL)であり、それは、実際の体積の1.54%であった。
【0112】
pH6.8、pO2−20%、温度−37℃で、総体積3L/使用体積2Lの発酵槽「Biostat B」において発酵を行った。発酵プロセスのオンライン変数(温度、撹拌、pH、pO2、酸/塩基消費)は、自動的に制御され、オフライン変数−光学濃度は、MFCS/winプロットにおいて追跡される。
【0113】
35%オルト−リン酸および25%アンモニア溶液をpH補正のために使用した。
【0114】
20%Pluronic(登録商標)31R1を用いて泡沫を消泡した。
【0115】
91.6〜103.6o.u.(λ=600nm)のODにおいて、最終的な使用体積に対して最終IPTG濃度が0.5mMとなるIPTGで誘導を行った。発酵をさらに3時間続けた。
【0116】
比増殖速度(μ)、流入体積(incoming volume)(追加供給分)および採取体積(out coming volume)(ODおよびグルコースの測定のためのサンプリング分)をすべての発酵について厳密に計算した。
【0117】
結果およびデータ解析
本試験中に行った解析および得られた結果から、E.coliにおいて産生された組換えhIFNa5タンパク質の翻訳後修飾が、培養培地中の微量元素の濃度に依存することが裏付けられた。
【0118】
微量元素(原液)の濃度が、3.0mL/L炭素供給液以上であるか、または0.95mL/L実際の最終懸濁液体積以上であり、かつ誘導後の平均比増殖速度(μ)が、0.17以上(≧)であるとき、酸化型のメチオニル化hIFNa5関連タンパク質が排除された(表2〜3)。
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
本明細書に記載されるように、表2は、炭素供給液中の種々の微量元素濃度における生合成パラメータを示しているのに対し、表3は、種々の微量元素濃度における生合成およびリフォールディングパラメータを示している。
【0122】
以下のようないくつかの試験を行った:(i)炭素供給液中または細胞懸濁液中の微量元素の濃度に対する、比増殖速度(μ)の依存性;(ii)誘導後の平均比増殖速度(μ)に対する、リフォールディング後の酸化型のメチオニル化hIFNa5(OxidMet hIFNa5)、およびリフォールディング後の全アセチル化hIFNa5の依存性;(iii)炭素供給液中の微量元素の濃度に対する、hIFNa5タンパク質の翻訳後修飾(リフォールディング後のOxidMet hIFNa5、リフォールディング後のアセチル化hIFNa5、およびリフォールディング後の正しく折り畳まれたhIFNa5)の依存性;並びに(iv)炭素供給液中または細胞懸濁液中の微量元素の濃度に対する、hIFNa5関連型(リフォールディング後のアセチル化hIFNa5、およびリフォールディング後のOxidMet hIFNa5)の依存性。さらに、全てのバッチをリフォールディング後にRP−HPLCに付した。それらの結果から、比増殖速度(μ)およびバイオマス収率が、培養培地中の微量元素の濃度に依存することは明らかである(表2〜3)。
【0123】
要約すると、得られた結果は、下記を示す:
−最大量の酸化型のメチオニル化hIFNa5において、最小含有量のアセチル化hIFNa5が観察され、その逆もまた同じである(ショートバッチNo.M−83、M−84、M−85およびM−86);
−微量元素(原液)の濃度が、3.0〜3.7mL/L炭素供給液の限度内(ショートバッチNo.M−80、M−81、M−92、M−82およびM−87)または0.95〜1.23mL/L実際の最終懸濁液体積の限度内であるとき、アセチル化hIFNa5の量は、約8〜11%である(表3);並びに
−炭素供給液中の微量元素の濃度が、4mL/Lを超えるかまたは1.23mL/L実際の最終細胞懸濁液体積を超えるとき、さらなる未知(未同定)の型が検出された[それは、主要ピークおよびアセチル化型の2つのピークの後に観察される(データ示さず)]。
【0124】
得られた結果は、またグルコース濃度の上限(17g/Lまたは22g/L)が、実際に標的タンパク質(hIFNa5)の質およびバイオマス収率に影響しないことを示し、実際に得られた値は、誤差範囲内であった(表2)。
【0125】
結論
−本試験において得られた結果は、組換えhIFNa5の生合成プロセスにおける炭素供給液中の微量元素濃度の根拠およびグルコース濃度の根拠としての役割を果たす。
−微量元素の濃度が、3.0mL/L炭素供給液以上であるか、または0.95mL/L実際の最終懸濁液体積より高く、かつ誘導後の平均比増殖速度(μ)が、0.17以上であるとき、酸化型のメチオニル化hIFNa5タンパク質は、排除される。
−微量元素の濃度が、約3.0〜約3.7mL/L炭素供給液の限度内であるか、または約0.95〜約1.23mL/L実際の最終懸濁液体積の限度内であるとき、アセチル化hIFNa5タンパク質は、約8〜11%である。
−炭素供給液中の微量元素の濃度が、3.7mL/Lより高いか、または1.23mL/L実際の最終懸濁液体積より高いとき、未知(未同定)タンパク質型が合成される。
−最大収率を決定する微量元素の至適濃度および標的hIFNa5タンパク質の最高の質は、約3.0〜約3.7mL/L炭素供給液の限度内である。
−17g/L〜22g/Lの範囲内のグルコース濃度は、実際には、標的タンパク質(組換えhIFNa5)の質およびバイオマス収率に影響しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Escherichia coli宿主細胞における発現によってインターフェロンアルファ5(IFNa5)タンパク質を生産する方法であって、該方法が:
a)IFNa5産生E.coli宿主細胞を用意する工程と;
b)発酵培地中で前記組換えIFNa5産生E.coli宿主細胞が前記IFNa5タンパク質を発現するのに有効な条件下で、前記IFNa5産生E.coli宿主を、炭素供給液を添加しながら培養する工程であって、ここで
−前記発酵培地は、動物起源または酵母起源由来の成分を含まず、かつ
−前記炭素供給液は、炭素源、および添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0〜約3.7mLの微量元素溶液を含んでなる工程と;
c)発現したIFNa5タンパク質を単離し、そして必要に応じて精製する工程とを少なくとも含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
E.coli宿主細胞が、誘導性プロモーターの制御下で、IFNa5タンパク質をコードする配列を含んでなるベクターで形質転換されてなるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
E.coli宿主細胞が、E.coliプロテアーゼ欠損株、好ましくは、E.coli Ion−/ompT−プロテアーゼ欠損宿主株、より好ましくは、E.coli BL21株、最も好ましくは、E.coli BL21(DE3)株である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
E.coli宿主細胞がE.coli BL21(DE3)株であり、工程b)の条件がIPTGによる誘導を含んでなるものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
誘導後の平均比増殖速度(μ)が、0.17以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記微量元素が、鉄、カルシウム、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、モリブデン、ホウ素およびそれらの組み合わせからなる微量元素の群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素供給液中に含まれる微量元素溶液が、塩化鉄(III)、塩化カルシウム、硫酸亜鉛(II)、硫酸マンガン(II)、硫酸銅(II)、塩化コバルト(II)、モリブデン酸ナトリウム、ホウ酸またはそれらの組み合わせを含んでなるものである、請求項1または6に記載の方法。
【請求項8】
前記IFNa5タンパク質が、hIFNa5である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
IFNa5タンパク質をコードする配列が、配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
封入体(IB)を可溶化に付して、変性IFNa5を含んでなる混合物を得て、
次いで、それを酸化再生処理に付して、再生IFNa5を含んでなる混合物を得て、
そして、再生IFNa5を含んでなる前記混合物を精製工程に付して、精製IFNa5を得ることによって、IFNa5タンパク質を、前記IFNa5タンパク質を前記IBの形態で含んでなる混合物から単離し、そして必要に応じて精製することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
再生IFNa5を含んでなる混合物を、下記4工程を含むクロマトグラフィー処理に付すことによって、前記混合物を精製することを特徴とする、請求項10に記載の方法:
1)再生IFNa5を含んでなる前記混合物を、疎水性相互作用クロマトグラフィーに付す工程;
2)工程1)で得られた溶液を、陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;
3)工程2)で得られた溶液を、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;および
4)工程3)で得られた溶液を、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程であって、ここで、前記溶液を、必要に応じて、メチオニンを含む緩衝液で希釈する、工程。
【請求項1】
Escherichia coli宿主細胞における発現によってインターフェロンアルファ5(IFNa5)タンパク質を生産する方法であって、該方法が:
a)IFNa5産生E.coli宿主細胞を用意する工程と;
b)発酵培地中で前記組換えIFNa5産生E.coli宿主細胞が前記IFNa5タンパク質を発現するのに有効な条件下で、前記IFNa5産生E.coli宿主を、炭素供給液を添加しながら培養する工程であって、ここで
−前記発酵培地は、動物起源または酵母起源由来の成分を含まず、かつ
−前記炭素供給液は、炭素源、および添加される炭素供給液1リットルあたり約3.0〜約3.7mLの微量元素溶液を含んでなる工程と;
c)発現したIFNa5タンパク質を単離し、そして必要に応じて精製する工程とを少なくとも含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
E.coli宿主細胞が、誘導性プロモーターの制御下で、IFNa5タンパク質をコードする配列を含んでなるベクターで形質転換されてなるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
E.coli宿主細胞が、E.coliプロテアーゼ欠損株、好ましくは、E.coli Ion−/ompT−プロテアーゼ欠損宿主株、より好ましくは、E.coli BL21株、最も好ましくは、E.coli BL21(DE3)株である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
E.coli宿主細胞がE.coli BL21(DE3)株であり、工程b)の条件がIPTGによる誘導を含んでなるものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
誘導後の平均比増殖速度(μ)が、0.17以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記微量元素が、鉄、カルシウム、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、モリブデン、ホウ素およびそれらの組み合わせからなる微量元素の群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素供給液中に含まれる微量元素溶液が、塩化鉄(III)、塩化カルシウム、硫酸亜鉛(II)、硫酸マンガン(II)、硫酸銅(II)、塩化コバルト(II)、モリブデン酸ナトリウム、ホウ酸またはそれらの組み合わせを含んでなるものである、請求項1または6に記載の方法。
【請求項8】
前記IFNa5タンパク質が、hIFNa5である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
IFNa5タンパク質をコードする配列が、配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
封入体(IB)を可溶化に付して、変性IFNa5を含んでなる混合物を得て、
次いで、それを酸化再生処理に付して、再生IFNa5を含んでなる混合物を得て、
そして、再生IFNa5を含んでなる前記混合物を精製工程に付して、精製IFNa5を得ることによって、IFNa5タンパク質を、前記IFNa5タンパク質を前記IBの形態で含んでなる混合物から単離し、そして必要に応じて精製することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
再生IFNa5を含んでなる混合物を、下記4工程を含むクロマトグラフィー処理に付すことによって、前記混合物を精製することを特徴とする、請求項10に記載の方法:
1)再生IFNa5を含んでなる前記混合物を、疎水性相互作用クロマトグラフィーに付す工程;
2)工程1)で得られた溶液を、陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;
3)工程2)で得られた溶液を、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程;および
4)工程3)で得られた溶液を、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーに付す工程であって、ここで、前記溶液を、必要に応じて、メチオニンを含む緩衝液で希釈する、工程。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図8A】
【図8B】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図8A】
【図8B】
【図11】
【公表番号】特表2013−517788(P2013−517788A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550482(P2012−550482)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国際出願番号】PCT/ES2011/070057
【国際公開番号】WO2011/092367
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(511172391)
【氏名又は名称原語表記】DIGNA BIOTECH,S.L.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国際出願番号】PCT/ES2011/070057
【国際公開番号】WO2011/092367
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(511172391)
【氏名又は名称原語表記】DIGNA BIOTECH,S.L.
【Fターム(参考)】
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