説明

イントロデューサシールアセンブリ

【課題】広範囲のサイズの器具に適応し、カニューレ内での器具の角度付けおよび/または操作におけるシール完全性を維持する、外科用器具のまわりに取り付け可能なシール装置を含む、外科用システムを提供すること。
【解決手段】体腔にアクセスするために構成されている外科用ポータルであって、長手軸方向の通路を有する、外科用ポータル;外科用器具の器具シャフト上に取り付けるために構成されたシール装置であって、器具シャフトはシール装置の開口部内に受容され、内部シール部分は器具シャフトのまわりに実質的なシールを形成する開口部を規定する、シール装置を備え、シール装置が取り付けられた器具シャフトは外科用ポータルの長手軸方向の通路内に少なくとも部分的に位置づけられ、そして外科用ポータルの長手軸方向の通路内に実質的なシールを形成するように構成されている、外科用システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(技術分野)
本開示は、体腔中への外科用器具の経皮的アクセスを容易にするためのシール装置および方法に関する。より具体的には、本開示は、外科用器具とアクセスアセンブリまたはカニューレアセンブリの内部通路との間に流体密性のシールを形成するためのシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
低侵襲手順および腹腔鏡手順は一般的に、身体中に挿入される任意の器具がシールされることを必要とする。すなわち、例えば、外科的領域がガス注入される外科的手順において、気体および/または流体が内視鏡切開を通って身体に入りも身体から出もしないことを確立するために準備(provision)がなされなければならない。このような手順に関して、解剖学的腔(例えば、腹膜腔)へのアクセスは、通常、トロカールおよびカニューレアセンブリを組み込むシステムを使用することによって達成される。カニューレは腹膜腔の内部と直接連通するので、カニューレは、腹腔と外気との間に流体密性の界面を維持するように適合されるべきである。腔の内部領域の空気完全性(atmospheric integrity)を維持するために必要なことを考えると、広範囲の外科用器具の導入を可能にし、かつ腔の内部領域の空気完全性を維持するカニューレのための、シールアセンブリが所望される。この点に関して、そのようなシールの必要性を達成するために、先行技術において多くの試みがなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のシールアセンブリを用いて遭遇する困難なことは、広範囲のサイズの器具に適応できないことである。さらに、カニューレ内での器具の角度付け(angulation)および/または操作は、多くの場合、シール完全性を維持することに関して困難性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
従って、本開示は、外科用器具のまわりに取り付け可能なシール装置を含む、独特の外科用システムおよび使用方法を提供する。シール装置が取り付けられた外科用器具は、その後、カニューレアセンブリ内に配置される。シール装置は、外科用器具のまわりに流体密性のシールを形成しながら、カニューレアセンブリの内部中にも流体密性のシールを形成する。
【0005】
1つの好ましい実施形態において、上記外科的方法は、体腔に外科用ポータルでアクセスする工程であって、この外科用ポータルが、その中を通って延びる長手軸方向の通路を有する、工程、シール装置を外科用器具の器具シャフト上に取り付ける工程であって、それによって、上記器具シャフトは、シール装置の開口部内に受容され、内部シール部分は、器具シャフトのまわりの実質的なシールを形成する上記開口部を規定する、工程、上記取り付けられたシール装置を有する上記器具シャフトを、上記外科用ポータルの長手軸方向の通路内に少なくとも部分的に位置づける工程;および上記シール装置を用いて、上記外科用ポータルの長手軸方向の通路内に実質的なシールを確立する工程、を包含する。好ましくは、上記確立する工程は、上記シール装置と上記長手軸方向の通路に隣接する上記外科用ポータルの内部表面とを接触させて、上記長手軸方向の通路内に実質的なシールを形成する工程を包含する。
【0006】
上記外科的方法はさらに、上記外科用ポータル内で上記器具シャフトを角度付けて、上記外科用ポータル内で上記シール装置の対応する角度付けを引き起こす工程を包含する。好ましくは、上記シール装置は、弓形の外部表面部分を規定し、上記角度付ける工程の間、上記弓形の外部表面部分は、上記内部表面との実質的なシールを維持しながら、上記外科用ポータルの内部表面上を動く。
【0007】
上記外科的方法はまた、上記シール装置と上記外科用ポータルの内部表面とを磁気的にまたは弾性的に連結させて、外科用ポータル内でのシール装置の保持を容易にする工程を包含する。
【0008】
上記外科的方法はさらに、上記器具シャフトが上記外科用ポータルから取り外されるとき、上記外科用ポータルの長手軸方向の通路を実質的に閉鎖する工程を包含する。上記実質的に閉鎖する工程は、上記外科用ポータル内にゼロ閉鎖(zero−closure)バルブを配置する工程を包含し得る。上記ゼロ閉鎖バルブは、上記外科用器具の器具シャフトの非存在下で、実質的に閉鎖するように適合されている。
【0009】
別の実施形態において、外科用ポータルと一緒に使用するための外科用器具およびシールシステムが提供される。上記システムは、外科的仕事を行うように適合され、かつ細長いシャフトを備える、外科用器具、および上記外科用器具に取り付けられたシール装置を備える。上記シール装置は、上記シール装置中に開口部を規定し、上記開口部と実質的にシールされた関係で上記外科用器具の細長いシャフトを受容するように適合されている、内部シール部分を備える。上記外科用器具および取り付けられたシール装置は、上記外科用ポータル内に少なくとも部分的に位置づけ可能であるように寸法をとられかつ構成されており、それによって、位置付けの際に、上記シール装置は、上記外科用ポータルの長手軸方向の通路内に実質的なシールを形成するように適合されている。上記シール装置は、弓形の外部表面を規定し得る。好ましくは、上記シール装置は、弓形の外部表面を有する球状部分を規定する。より好ましくは、上記シール装置は、ほぼ球状形状の球体である。上記シール装置は、磁性材料および強磁性材料の1つを備え得る。
【0010】
別の代替の実施形態において、外科用キットが提供される。上記外科用キットは、カニューレおよび取り外し可能なシール装置を備える。上記カニューレは、カニューレハウジング(housing)およびそのハウジングから延びるカニューレスリーブを備える。上記カニューレは、上記カニューレハウジングと上記カニューレスリーブとの間に延びる長手軸方向の通路を規定する。上記カニューレハウジングは、上記カニューレハウジング内の上記長手軸方向の通路に隣接する内部表面を規定する。上記カニューレスリーブは、ガスが封入された内在する体腔にアクセスするように適合されている。上記器具は、上記カニューレハウジング内に少なくとも部分的に位置づけ可能である。上記シール装置は、外部弓形表面を規定する外部部分、および外科用器具がシールされて受容されるための開口部を規定する内部部分を備える。上記シール装置を上記カニューレハウジング内に少なくとも部分的に位置づけする際に、上記シール装置の外部弓形表面は、上記カニューレハウジングと実質的にシールされた関係で、上記カニューレハウジングの外部表面と係合する。
【0011】
上記外科用キットはまた、外科的仕事を行うように適合されている外科用器具を備え得る。上記外科用器具は、細長いシャフトを備え、上記シール装置はこの細長いシャフト上に取り付けられている。
【0012】
上記カニューレは、上記外科用器具の非存在下でカニューレの長手軸方向の通路を実質的にシールするためのゼロ閉鎖バルブを備え得る。
【0013】
上記カニューレハウジング内での上記シール装置の保持を容易にするための、磁気的連結手段が提供され得る。上記シール装置および上記カニューレハウジングの1つは、磁性要素を備え、上記シール装置および上記カニューレハウジングのもう1つは、強磁性材料を備える。上記磁性要素および上記強磁性材料は、上記カニューレハウジング内での上記シール装置の保持を容易にするように協働する。あるいは、弾性連結手段が、上記カニューレハウジング内でのシール装置の保持を容易にするために提供され得る。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、さらに以下を提供する。
(項目1a) 外科用システムであって、該システムは、
体腔にアクセスするために構成されている、外科用ポータルであって、該外科用ポータルは、該外科用ポータルを通って延びる長手軸方向の通路を有する、外科用ポータル;
外科用器具の器具シャフト上に取り付けるために構成された、シール装置であって、それによって、該器具シャフトは、該シール装置の開口部内に受容され、内部シール部分は、該器具シャフトのまわりに実質的なシールを形成する該開口部を規定する、シール装置;
を備え、
それによって、該シール装置が取り付けられた該器具シャフトは、該外科用ポータルの長手軸方向の通路内に少なくとも部分的に位置づけられ、そして該外科用ポータルの長手軸方向の通路内に実質的なシールを形成するように構成されている、
外科用システム。
(項目2a) 項目1aに記載の外科用システムであって、前記シール装置は、前記長手軸方向の通路に隣接する前記外科用ポータルの内部表面と接触して、該長手軸方向の通路内に前記実質的なシールを形成するように構成されている、外科用システム。
(項目3a) 項目2aに記載の外科用システムであって、前記器具シャフトは、前記外科用ポータル内で角度付けられて、該外科用ポータル内で前記シール装置の対応する角度付けを引き起こすように構成されている、外科用システム。
(項目4a) 項目3aに記載の外科用システムであって、前記シール装置は、弓形の外部表面部分を規定し、角度付けの間、該弓形の外部表面部分は、前記内部表面との前記実質的なシールを維持しながら、前記外科用ポータルの該内部表面上を動く、外科用システム。
(項目5a) 前記シール装置は、前記外科用ポータルの内部表面と磁気的に連結するように構成されている、項目2aに記載の外科用システム。
(項目6a) 前記器具シャフトが前記外科用ポータルから取り外されるとき、該外科用ポータルの前記長手軸方向の通路は、実質的に閉鎖するように構成されている、項目3aに記載の外科用システム。
(項目7a) 項目6aに記載の外科用システムであって、前記外科用ポータル内は、前記外科用器具の前記器具シャフトの非存在下で、実質的に閉鎖するように適合されているゼロ閉鎖バルブを備える、外科用システム。
(項目8a) 前記シール装置は、前記外科用ポータルの前記内部表面とを弾性的に連結するように構成されている、項目2aに記載の外科用システム。
(項目9a) 外科用ポータルと一緒に使用するための外科用器具およびシールシステムであって、
外科的仕事を行うように適合された外科用器具であって、該外科用器具は、細長いシャフトを備える、外科用器具;および
該外科用器具に取り付けられたシール装置であって、該シール装置は、内部に開口部を規定し、該開口部と実質的にシールされた関係で該外科用器具の該細長いシャフトを受容するように適合されている、内部シール部分を備える、シール装置;
を備え、
該外科用器具および該取り付けられたシール装置は、該外科用ポータル内に少なくとも部分的に位置づけ可能であるように寸法をとられかつ構成されており、該シール装置は、位置づけを行う際に、該外科用ポータルの長手軸方向の通路内に実質的なシールを形成するように適合されている、
外科用器具およびシールシステム。
(項目10a) 前記シール装置が、弓形の外部表面を規定する外部部材を備える、項目9aに記載の外科用システム。
(項目11a) 前記シール装置外部部材が、ほぼ球状であり、かつ弓形の外部表面を有する、項目10aに記載の外科用システム。
(項目12a) 前記シール部材が、前記外部部材に対して内側に配置され、かつ前記内部シール部分を有する、シール部材を備える、項目11aに記載の外科用システム。
(項目13a) 前記シール装置外部部材が、磁性材料および強磁性材料のうちの1つを備える、項目9aに記載の外科用システム。
(項目14a) 前記内部シール部分が、前記シャフトとスライド可能に係合する、項目9aに記載の外科用システム。
(項目15a) 外科用キットであって、該外科用キットは、
カニューレハウジングおよび該ハウジングから延びるカニューレスリーブを備えるカニューレであって、該カニューレは、該カニューレハウジングと該カニューレスリーブとの間に延びる長手軸方向の通路を規定し、該カニューレハウジングは、該カニューレハウジング内の該長手軸方向の通路に隣接する内部表面を規定し、該カニューレスリーブは、ガスが封入された内在する体腔にアクセスするように適合されている、カニューレ;ならびに
該カニューレハウジング内に少なくとも部分的に位置づけ可能な、取り外し可能なシール装置であって、該シール装置は、外部表面、および外科用器具がシールされて受容されるための開口部を規定する内部表面を備え、それによって、該シール装置を該カニューレハウジング内に少なくとも部分的に位置づけする際に、該シール装置の外部表面は、該カニューレハウジングと実質的にシールされた関係で、該カニューレハウジングの外部表面と係合する、シール装置、
を備える、外科用キット。
(項目16a) 項目15aに記載の外科用キットであって、該外科用キットは、外科的仕事を行うように適合されている外科用器具を備え、該外科用器具は、細長いシャフトを備え、かつ該細長いシャフト上に取り付けられた前記シール装置を有する、外科用キット。
(項目17a) 前記カニューレが、前記外科用器具の非存在下で該カニューレの前記長手軸方向の通路を実質的にシールするためのゼロ閉鎖バルブを備える、項目15aに記載の外科用キット。
(項目18a) 前記カニューレハウジング内での前記シール装置の取り外し可能な保持を容易にするための磁性連結手段を備える、項目15aに記載の外科用キット。
(項目19a) 前記カニューレハウジング内での前記シール装置の取り外し可能な保持を容易にするための弾性連結手段を備える、項目15aに記載の外科用キット。
(項目20a) 項目15aに記載の外科用キットであって、前記シール装置および前記カニューレハウジングの1つは、磁性要素を備え、該シール装置および該カニューレハウジングのもう1つは、強磁性材料を備え、該磁性要素および該強磁性材料は、該カニューレハウジング内での該シール装置の取り外し可能な保持を容易にするように協働している、外科用キット。
(項目1b) 外科的方法であって、該方法は、
体腔に、外科用ポータルでアクセスする工程であって、該外科用ポータルは、該外科用ポータルを通って延びる長手軸方向の通路を有する、工程;
シール装置を外科用器具の器具シャフト上に取り付ける工程であって、それによって、該器具シャフトは、該シール装置の開口部内に受容され、内部シール部分は、該器具シャフトのまわりに実質的なシールを形成する該開口部を規定する、工程;
該シール装置が取り付けられた該器具シャフトを、該外科用ポータルの長手軸方向の通路内に少なくとも部分的に位置づける工程;および
該シール装置を用いて、該外科用ポータルの長手軸方向の通路内に実質的なシールを確立する工程
を包含する、外科的方法。
(項目2b) 項目1bに記載の外科的方法であって、前記確立する工程は、前記シール装置と前記長手軸方向の通路に隣接する前記外科用ポータルの内部表面とを接触させて、該長手軸方向の通路内に前記実質的なシールを形成する工程を包含する、外科的方法。
(項目3b) 項目2bに記載の外科的方法であって、該外科的方法は、前記外科用ポータル内で前記器具シャフトを角度付けて、該外科用ポータル内で前記シール装置の対応する角度付けを引き起こす工程を包含する、外科的方法。
(項目4b) 項目3bに記載の外科的方法であって、前記シール装置は、弓形の外部表面部分を規定し、前記角度付ける工程の間、該弓形の外部表面部分は、前記内部表面との前記実質的なシールを維持しながら、前記外科用ポータルの該内部表面上を動く、外科的方法。
(項目5b) 前記シール装置と前記外科用ポータルの内部表面とを磁気的に連結させる工程を包含する、項目2bに記載の外科的方法。
(項目6b) 前記器具シャフトが前記外科用ポータルから取り外されるとき、該外科用ポータルの前記長手軸方向の通路を実質的に閉鎖する工程を包含する、項目3bに記載の外科的方法。
(項目7b) 項目6bに記載の外科的方法であって、前記実質的に閉鎖する工程は、前記外科用ポータル内にゼロ閉鎖バルブを配置する工程を包含し、該ゼロ閉鎖バルブは、前記外科用器具の前記器具シャフトの非存在下で、実質的に閉鎖するように適合されている、外科的方法。
(項目8b) 前記シール装置と、前記外科用ポータルの前記内部表面とを弾性的に連結する工程を包含する、項目2bに記載の外科的方法。
【0015】
本開示の上記の特徴は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明を参照することによって、より容易に明らかとなり、よりよく理解される。好ましい実施形態の詳細な説明は、図面を参照して本明細書中以下に記載される。
【発明の効果】
【0016】
広範囲のサイズの器具に適応し、カニューレ内での器具の角度付けおよび/または操作におけるシール完全性を維持する、外科用器具のまわりに取り付け可能なシール装置を含む、独特の外科用システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本開示の原理に従う外科用システムの分離された部品の斜視図であり、シールアセンブリ、カニューレアセンブリおよび外科用器具を例示する。
【図2】図2は、本開示に従う外科用システムの拡大側面断面図であり、外科用器具のまわりに位置づけられ、カニューレアセンブリ内に取り付けられたシールアセンブリを例示する。
【図3】図3は、図2の図に類似の、拡大側面断面図であり、シールアセンブリの代替の実施形態を例示する。
【図4】図4は、本開示に従う外科用システムの拡大側面断面図であり、外科用器具の角度付けおよび対応するシールアセンブリの動きを例示する。
【図5】図5は、本開示に従う外科用システムの代替の実施形態の拡大側面断面図であり、カニューレアセンブリ内に取り付ける前のシールアセンブリを例示する。
【図6】図6は、図5の代替の実施形態に従う拡大側面断面図であり、カニューレアセンブリの弾性連結部内に取り付けられたシールアセンブリを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本開示の外科用システムは、内視鏡外科的手順または腹腔鏡外科的手順の間、患者の体腔と外気との間に実質的なシールを提供する。上記外科用システムは、内視鏡または腹腔鏡の器械の導入および操作を企図し、上記器械のまわりに流体密性の界面を維持し、気体および/または流体の漏出から外科的手順の空気完全性を保つ。器具の例としては、クリップアプライヤ(applier)、捕捉器具、解剖器具、開創器、ステープラー、レーザープローブ、写真用デバイス、内視鏡および腹腔鏡、チューブなどが挙げられる。これらの器具のいくつかは、同一出願人による米国特許第6,716,232号、同第6,450,391号、同第6,231,565号、同第6,152,872号、同第5,938,668号、同第5,913,870号および同第5,860,987号に開示され、これらの開示の内容は、本明細書中でその全体が参考として援用される。そのような器具は、まとめて本明細書中で、「器具(instrument)または器械(instrumentation)」と呼ばれる。本開示の外科用システムは、外科用器具の角度付け(angular)操作に適応するように良好に適合されている。この特徴は、望ましくは、体腔へ気体および/または流体が入ること、ならびに体腔から気体および/または流体が出ることを最小限にする。
【0019】
以下の記載において、慣習の通り、用語「近位」とは、操作者に一番近い器具の部分をいい、一方、用語「遠位」とは、操作者から離れた器具の部分をいう。
【0020】
ここで図面(図面中、同様の参照番号が、いくつかの図面全体を通して、同じ部分または実質的に類似の部分を特定する)を参照すると、図1〜2は、本開示の外科用システム10を例示する。外科用システム10は、シールアセンブリ100、カニューレアセンブリ200および外科用器具300を備える。シールアセンブリ100は、内部部分104および外部部分106を有するシール要素102を有する。内部部分104は、シールを形成し、開口部108を規定し、この開口部108は、外科用器具300を受容するように適合されている。1つの好ましい実施形態において、内部部分104は、弾性材料から製造され、それによって、開口部108に隣接する内部部分104の部分は、流体密性の関係で外科用器具300と係合する。内部部分104に適切な材料としては、例えば、ポリイソプレン、シリコーン、ゴム、ウレタン、ソフトウレタンゲル、シリコンゲルなどのようなエラストマー材料が挙げられる。好ましくは、選択された材料は、手術部位のまわりで操作する間に、内部部分104が器具300の外部表面と適合してその表面のまわりに実質的なシールを形成することを可能にする、圧縮可能な特徴を有する。内部部分104および/または外部部分106は、圧縮可能な発泡体を備え得る。内部部分104、外部部分106またはその両方は、水、生理食塩水、ゲルなどのような流体で満たされた袋または風船であり得ることがさらに企図される。
【0021】
外部部分106は、エラストマー材料を備え得るか、または1つの実施形態において、磁性材料もしくは強磁性材料を備え得る。別の実施形態において、外部部分106は、磁性コーティングまたは強磁性材料のコーティングでコーティングされ得る。磁性材料および/または強磁性材料の使用は、磁気結合の確立を容易にし、シールアセンブリ100をカニューレアセンブリ200内に取り外し可能に保持することを補助する。上記磁気結合は、本明細書中で以下により詳細に考察される。外部部分106は、エラストマー材料から製造され得、内部部分104と一体となって形成され得ることもまた企図される。内部部分104および外部部分106は、同じ材料または異なる材料から製造され得る。特定の実施形態において、内部部分104は、エラストマー材料から形成され、一方、外部部分106は、比較的剛性のポリマー材料から形成される。
【0022】
図2に示される実施形態において、外部部分106は、ほぼ球状であり、円筒型開口部103を有し、この円筒型開口部103に、内部部分104が配置される。内部部分104は、外科用器具300を受容するための開口部108を形成する、ほぼ円筒型の形状を有する。外部部分106および内部部分104は、楕円形(elliptical)、多角形、部分的に切断された球または楕円状(elliptoid)などの、他の形状を有し得る。球状形状は、シールアセンブリ100とカニューレアセンブリ200との取り外し可能な連結を容易にする。シール要素102は、図3に示されるように部分的な球体または切断された球体であり得ることもまた企図される。
【0023】
続いて図1〜2を参照して、外部部分106は、弓形の外部表面110を有する。理解されるとおり、シール要素102の外部表面110の弓形構成は、シール要素102がカニューレアセンブリ200内で角度を付けられることを可能にする。
【0024】
シールアセンブリ100は好ましくは、外科用器具300のまわりに取り付け可能であり、好ましくは、上記器具の細長いシャフト302のまわりに取り付け可能であり、この細長いシャフト302は、シール要素202の開口部108内に受容される。このような取り付けは、好ましくは、シールアセンブリ100をカニューレアセンブリ200内に配置する前に行われる。一旦シールアセンブリ100および器具300がカニューレアセンブリ200内に配置されると、シール要素102は、カニューレアセンブリ200の内部構造内に実質的な流体密性のシールを形成し、そのカニューレアセンブリを通る流体の通過を防ぐか、または実質的に最小にする。
【0025】
さらに図1〜2を参照すると、外科用システム10のカニューレアセンブリ200が記載される。カニューレアセンブリ200は、体腔に近接することが意図され、離れた組織部位において所望の外科的手順を行うのに必要とされる器具の導入を可能にする。カニューレアセンブリ200は特に、腹膜腔に安定な気体(例えば、CO)が注入して腔壁をそこにおける内部器官から引き上げる腹腔鏡手術での使用に適合される。カニューレアセンブリ200は代表的に、トロカール閉塞物(示さず)と一緒に使用され、このトロカール閉塞物は、カニューレアセンブリ200の通路内に配置可能な、先がとがった器具である。トロカール閉塞物は、腹壁に貫入するために利用され、続いて、カニューレアセンブリ200から取り外され、上記手順を実施するために利用される外科用器械の導入を可能にする。代替において、例えば、Hasson技術において鈍性(blunt)閉塞物が使用され得る。半鈍性閉塞物または拡張型閉塞物もまた、腹腔へのアクセスを得るために使用され得る。
【0026】
カニューレアセンブリ200は、カニューレスリーブ202およびそのスリーブ202の近位端に取り付けられるカニューレハウジング204を備える。カニューレスリーブ202は、スリーブ202の長さに沿って延びる長手軸「a」を規定する。スリーブ202はさらに、外科用器械の通過を可能にする寸法の、内部長手軸方向の通路206を規定する。スリーブ202は、医学的等級の材料である、ステンレス鋼または他の剛性材料(ポリマー材料を含む)(例えば、外科用スチール、チタン、ポリカーボネートなど)から形成され得る。スリーブ202は、透明でも不透明でもよい。スリーブ202の直径は変化し得るが、代表的には、本開示のシールアセンブリ100と一緒に使用するために、10〜15mmの範囲である。
【0027】
1つの好ましい実施形態において、カニューレハウジング204は、2つの構成要素、具体的には、カニューレスリーブ202の近位端に取り付けられている主ハウジング208、およびシールハウジング210を備える。シールハウジング210は、バヨネット(bayonet)連結、スナップばめ連結、超音波溶接または当業者によって企図される任意の他の手段(例えば、接着手段を含む)を介して、主ハウジング208に連結可能であり得る。あるいは、シールハウジング210および主ハウジング208は、互いと一体となって形成され得る。主ハウジング208はさらに、使用者の指でつかんで係合するための寸法にされて配置された、正反対に対向するハウジンググリップ212を備える(図1)。2つの構成要素が示されて記載されているが、カニューレハウジング204は、単一構成要素であり得、上記の手段のいずれかによってカニューレスリーブ202に取り付けられるか、または複数の構成要素を備え得る。
【0028】
図1〜2と合わせて図3を参照すると、主ハウジング208はさらに、ダックビル(duck bill)またはゼロ封鎖バルブ214を備え、これは、示されたように、シールされた構成に対して遠位かつ内向きにテーパー状になる。バルブ214は、外科用器具300の通過を可能にするために開き、そして器具の非存在下で、および/またはガス注入された体腔から連通する加圧ガスに応答して、閉じる。単一または複数のスリットバルブ配列、トランペットバルブ、フラッパバルブなどを含む、他のゼロ封鎖バルブもまた、企図される。バルブ214は、任意の従来の手段によって主ハウジング208内に固定され得る。1つの実施形態において、主ハウジング208は、内部周辺凹部216を備え、この内部周辺凹部216は、バルブ214の外部周囲フランジ218を受容する。バルブ取付部220は、バルブ214のフランジ領域を主ハウジング208内に固定するために配置され得る。
【0029】
シールハウジング210は、示される通り、実質的に円筒型の構成を有する。シールハウジング210は、シールハウジング210の内部内に配置されたシール取付部222を備え、シール取付部222は、長手軸「a」のまわりに同心円状に配置されている。シール取付部222は、シールアセンブリ100を構成要素が組み立てられた状態で支持するように適合されている。シール取付部222は、示されたように凹面を規定する弓形支持表面224を有する。支持表面224は、シール要素102の外部表面110と係合する。好ましい実施形態において、弓形支持表面224の構成は、シール要素102の外部表面110の構成に対応する。例えば、1つの好ましい実施形態において、弓形支持表面224およびシール要素102の外部表面110の各々の曲率半径は、実質的に等しい。この点に関して、シール要素102は、シール取付部220に対して自由に旋回(swivel)または角度付けできる。用語「角度付け(angulate)」は、少なくも2種類の動き、すなわち、長手軸「b」のまわりでのシール要素102の回転、および旋回軸「p」のまわりでのシール要素102の旋回移動(pivotal movement)を含むことが意図される。図4は、外科用器具300の操作の間の、シール要素102の角度付けを例示する。
【0030】
シール取付部222は、好ましくは、金属またはポリマー材料のような剛性材料から形成される。シール取付部222は、シール要素102の角度付けを容易にするための潤滑性コーティングを有し得る。同様に、シール要素102の外部表面110は、潤滑性コーティングを有し得る。あるいは、シール取付部222は、弓形支持表面224を規定するエラストマー層を有し得る。利用される材料に関係なく、シール取付部222内のシール要素102の位置付けは、シール要素102と支持表面224との間に流体密性の関係を確立し、これは、腹腔鏡手順で使用する間、カニューレアセンブリ200を通ってガスが通過することを実質的に最小にする。1つの好ましい実施形態において、シール取付部222は、磁性材料または強磁性材料を含み、シール要素102の外部表面110において、対応する磁性材料または強磁性材料と協働する。この様式において、シール取付部222内のシール要素102の位置付けは、シール要素102をシール取付部222内に保持するように機能する磁気結合を確立する。好ましくは、磁気結合の強度は、カニューレアセンブリ200に対してシールアセンブリ100が取り付けられた状態を維持しながら、シールアセンブリ100がシール取付部222内で角度付けが可能なように、選択的に制御される。磁気結合の強度は、操作の間にシールアセンブリ100を保持しながら、シール取付部222からのシールアセンブリ100の簡単な取り外しを可能にするように選択されるべきである。上記のいずれにおいても、潤滑性コーティングが、カニューレシールハウジング210をさらにシールし、器具の操作を容易にするために使用され得る。
【0031】
外科用システム10は、少なくとも1つのシールアセンブリ100、対応するカニューレアセンブリ200および/または外科用器具300を組み入れる外科用キットの一部であり得る。例えば、上記キットは、シールアセンブリ100および対応するカニューレアセンブリ200を組み込んでパッケージングされ得る。種々の器具用の、異なるサイズの複数のシールアセンブリ100(例えば、異なる直径を有するシール開口部)は、上記キット中に組み込まれ得る。あるいは、上記キットは、外科用器具300およびシールアセンブリ100を備え得、シールアセンブリ200は、永久的な連結または取り外し可能な連結のいずれかを介して、外科用器具300のまわりに取り付けられている。
【0032】
ここで図5〜6を参照すると、本開示の別の実施形態が例示されている。この外科用システムの実施形態は、本明細書中上記のように、シールアセンブリ100を組み込む。カニューレハウジング204は、第1および第2の弾性脚228を組み込む弾性連結部226を備え、その第1および第2の弾性脚228は、シールアセンブリ100をカニューレ200内に受容して取り付ける。弾性脚228は、方向矢印「P」の方向で外側に曲げたり旋回されたりするように適合され、シールアセンブリ100を受容し、次いでそれらの天然の弾性の影響下で元に戻り、シールアセンブリ100を弾性連結部226内に保持する。弾性脚228は各々、シール要素102の外側表面110のほぼ弓形の形状に近い弓形構成を規定する中央弓形部分230を備える。シールアセンブリ100が取り付けられた状態において、そのシールアセンブリ100は、図1〜4の実施形態と合わせて記載される様式で、カニューレアセンブリ200内で角度付けができる。弾性脚228とシール要素102との接触表面は、シールアセンブリ100の回転運動および旋回運動を容易にするために、潤滑性コーティングを含み得る。弾性脚228は、ポリマー材料またはバネ鋼のような弾性金属を含み得る。その他の点では、シールアセンブリ100は、上記の様式で利用される。
【0033】
外科用器具のまわりに最初に取り付け可能なシールアセンブリを備える、独特の外科用システムおよび使用方法が、提供される。取り付けられたシールアセンブリを有する外科用器具は、その後、カニューレアセンブリ内に配置される。シールアセンブリは、外科用器具の周りに流体密性のシールを形成しながら、カニューレアセンブリの内側内にも流体密性のシールを形成する。シールアセンブリおよびカニューレアセンブリは、外科用器具の角度付けを可能にするように協働する。磁気結合は、シールアセンブリをカニューレアセンブリ内に保持することを補助する。
【0034】
本発明は、具体的に示され、好ましい実施形態を参照して記載されているが、形態および詳細に関して種々の改変および変更が、本発明の範囲および精神を逸脱することなくなされ得ることが当業者に理解される。従って、上で示唆されたような(しかしそれらに限定されない)改変は、本発明の範囲内であると考えられる。
【符号の説明】
【0035】
100 シールアセンブリ
102 シール要素
108 開口部
200 カニューレアセンブリ
202 カニューレスリーブ
204 カニューレハウジング
206 通路
212 ハウジンググリップ
300 外科用器具
302 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−235144(P2011−235144A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160349(P2011−160349)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【分割の表示】特願2006−64946(P2006−64946)の分割
【原出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】