説明

インドメタシンα晶の製造方法

【課題】結晶化度のより高いインドメタシンα晶も製造可能なインドメタシンα晶の新規な製造方法を提供すること。
【解決手段】インドメタシン非晶を溶媒に懸濁させてなるインドメタシン非晶の懸濁液を加圧処理することを特徴とするインドメタシンα晶の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インドメタシンα晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性粉体における結晶構造の歪みは、吸湿性や化学的安定性の低下、流動性の減少等の物理化学的性質、操作性に変化をもたらす。そのため、結晶性粉体が医薬活性成分である場合には、その保存安定性や取扱い性等を考慮すると、結晶構造の歪みがより小さい、言い換えると、その結晶化度はより高い方が望ましいと考えられている。
【0003】
インドメタシンは、非ステロイド性の消炎剤、鎮痛剤もしくは解熱剤の有効成分であり、γ晶のインドメタシンが用いられている。インドメタシンには、γ晶以外に、α晶が存在しており、水への溶解度は、α晶の方がγ晶よりも高いことが知られている。そのため、バイオアベイラベリティの観点からは、α晶を有効成分として製剤化することが望ましいと考えられる。
【0004】
かかるインドメタシンα晶は、インドメタシンのエタノール溶液を調製し、該溶液を約80℃に加熱した後、室温の水を加え、析出した結晶を速やかに濾取することにより調製されることが知られている(例えば非特許文献1参照。)が、得られるインドメタシンα晶の結晶化度が40〜45%程度であった。
【0005】
【非特許文献1】Chem,Pharm.Bull.,33,3447(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況のもと、本発明者は、結晶化度のより高いインドメタシンα晶も製造可能なインドメタシンα晶の新規な製造方法を開発すべく検討したところ、インドメタシン非晶を溶媒に懸濁させてなるインドメタシン非晶の懸濁液を加圧処理することにより、インドメタシンα晶が得られること、また、加圧条件を選ぶことにより、結晶化度が50%以上という結晶化度のより高いインドメタシンα晶を製造することができることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、インドメタシン非晶を溶媒に懸濁させてなるインドメタシン非晶の懸濁液を加圧処理することを特徴とするインドメタシンα晶の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インドメタシンα晶を製造することができ、また、加圧条件を選ぶことにより、結晶化度が50%以上というより結晶化度の高いインドメタシンα晶を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
インドメタシン非晶としては、粉末X線回折測定により、インドメタシンα晶やγ晶に特有の固有ピークが検出されないものであればよく、例えばインドメタシンの溶融物を急速冷却する方法、インドメタシンを溶媒に完溶させた溶液を凍結乾燥させる方法、インドメタシンを溶媒に完溶させた溶液を噴霧乾燥させる方法等が挙げられ、インドメタシンの溶融物を急速冷却する方法が好ましい。インドメタシンの溶融物を急速冷却する方法としては、例えばインドメタシンの溶融物を液体窒素中へ流し込む方法等が挙げられる。かかるインドメタシン非晶は、例えば粒状であってもよいし、粉状であってもよいが、粉状であることが好ましい。粉状のインドメタシン非晶は、例えば塊状や粒状のインドメタシン非晶をスパチュラで押しつぶす方法、メノウ乳鉢ですりつぶす方法、気流式粉砕機で粉砕処理する方法等により製造することができる。
【0010】
インドメタシン非晶の懸濁液を調製する際の溶媒としては、特に制限されず、例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、例えばアセトン等のケトン系溶媒、例えばトルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えば水等の単独もしくは混合溶媒が挙げられ、アルコール系溶媒が好ましく、なかでもエタノールが特に好ましい。
【0011】
かかる溶媒の使用量は、加圧処理時の処理温度において、インドメタシン非晶が完全に溶解しない量であればよく、溶媒の種類に応じて適宜決めればよい。
【0012】
インドメタシン非晶の懸濁液を加圧処理する方法としては、例えばインドメタシン非晶の懸濁液を、例えばオートクレーブ等の耐圧容器に入れ、加圧装置等で加圧せしめる方法が挙げられる。前記懸濁液はそのまま耐圧容器に入れてもよいし、例えばポリエチレン製袋等の樹脂製袋内に封入した後、耐圧容器に入れてもよい。
【0013】
加圧処理の圧力としては、通常1〜500MPa(ゲージ圧)であり、結晶化度が50%以上のインドメタシンα晶を製造するという観点からは、5〜200MPaで実施することが好ましい。
【0014】
加圧処理の温度は、通常0℃〜前記懸濁液の還流温度である。
【0015】
加圧処理の処理時間は、通常10秒〜5日程度である。
【0016】
加圧処理終了後、大気圧に戻し、耐圧容器中の懸濁液を濾過処理することにより、インドメタシンα晶を取り出すことができる。取り出したインドメタシンα晶は、必要に応じて乾燥処理してもよい。
【実施例】
【0017】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0018】
実施例1
インドメタシン結晶を約180℃で融解させた後、液体窒素中へ流し込んだ。液体窒素をデカンテーションにより除去した後、塩化カルシウムを傍らにおいて減圧条件下乾燥させた。得られた非晶を、セイシン企業製A−Oジェットミル(ベンチュリー圧:0.5MPa、グランディング圧1:0.5MPaおよびグランディング圧2:0.5MPa)を用いて粉砕処理し(ジェットミルへの非晶の供給速度は、1時間あたり30〜40gとした。)、粒子径約10μm以下の粉末を得た。得られた非晶粉末を粉末X線回折測定し、α晶やγ晶が検出されず、非晶であることを確認した。図1に、得られた粉末X線回折プロファイルを示した。
【0019】
インドメタシン非晶粉末約90mgを、ポリエチレン袋(縦約3cm×横約3cm)に入れ、エタノール約0.9mLを加え、インドメタシン非晶の懸濁液を調製した。前記懸濁液が入ったポリエチレン袋の開口部をヒートシールして密閉した。
【0020】
インドメタシン非晶の懸濁液が入ったポリエチレン袋を、耐圧容器(テラメックス製高圧容器PV400−50V型)に入れ、加圧装置(テラミックス製高圧ハンドポンプTP−500型)により、25℃、100MPa(ゲージ圧)に加圧し、1日間保持した。その後、大気圧に戻し、耐圧容器からポリエチレン袋を取り出し、内容物を濾過処理した。得られた結晶を粉末X線回折測定したところ、前記結晶はα晶であり、その結晶化度は59.1%であることが分かった(結晶化度は、ルーランド法により算出した。)。
<測定条件>
装置:リガク製Rint2500V型(出力:50kV×300mA,X線Cu−Kα)
走査速度 2°/分,サンプリング幅 0.02°,走査モード:連続モード,試料採取量:約50mg
【0021】
実施例2
前記実施例1において、加圧装置により加圧する際の加圧条件を400MPaとした以外は実施例1と同様に実施し、結晶化度が27.7%であるインドメタシンα晶を得た(結晶化度は、ルーランド法により算出した。)。測定条件は前記実施例1と同じとした。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1で用いたインドメタシン非晶の粉末X線回折プロファイルである。
【図2】実施例1で得られたインドメタシンα晶の粉末X線回折プロファイルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インドメタシン非晶を溶媒に懸濁させてなるインドメタシン非晶の懸濁液を加圧処理することを特徴とするインドメタシンα晶の製造方法。
【請求項2】
溶媒が、エタノールである請求項1に記載のインドメタシンα晶の製造方法。
【請求項3】
加圧処理の圧力が、5〜200MPa(ゲージ圧)である請求項1に記載のインドメタシンα晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−273724(P2006−273724A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91273(P2005−91273)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(598028464)
【Fターム(参考)】