説明

インパクト回転工具

【課題】本発明は、アンビルとハンマとの衝突による衝撃等によって、ハンマを回転させる駆動軸とアンビルとを連結状態と非連結状態とに切り替える連結部材が切替ピンから抜けることを抜け止め部材によって確実に防止でき、且つ、部品交換の際には、連結部材を簡単に切替ピンから外すことができるインパクト回転工具を提案すること。
【解決手段】本発明のインパクト回転工具1では、切替ピン5の挿入孔50に挿通した抜け止め部材6によって、連結部材4を切替ピン5から抜け止めする。抜け止め部材6は、差込部60と、屈曲弾性を有する係止部61とからなる。そして、差込部60が挿入孔50に挿通される際に、係止部61の先端側が切替ピン5の外周面51に当たって弾性的に押し広げられて、係止部61の先端部63が外周面51を乗り越えることで、切替ピン5に係止されるように設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に取り付けた工具に回転方向への打撃を加えながら該工具を回転させるインパクトモードと、打撃を加えずに該工具を回転させるドリルドライバーモードとを切替可能なインパクト回転工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1等によって、先端に取り付けた工具に回転方向への打撃を加えながら該工具を回転させるインパクトモードと、打撃を加えずに該工具を回転させるドリルドライバーモードとを切替可能なインパクト回転工具が提案されている。
【0003】
このインパクト回転工具では、切替ピンに備えた連結部材が、アンビルの第一切替用隙間とハンマを回転させる駆動軸の第二切替用隙間との間を移動する。これにより、アンビル2とハンマ3とを、一体に回転させる連結状態と、別体として回転させる非連結状態とに切り替える。
【0004】
この非連結状態のとき、アンビルとハンマとが衝突し、先端に取り付けた工具に回転方向への打撃を加えながら該工具を回転させるインパクトモードとなる。また、連結状態のとき、アンビルとハンマとが衝突せず、工具に回転方向への打撃を加えずに該工具を回転させるドリルドライバーモードとなる。
【0005】
このインパクト回転工具では、連結部材が切替ピンから抜けてしまうことを防止するために、切替ピンに挿入孔が設けてあり、ここに抜け止め部材が嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−317854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の切替ピンの挿入孔に抜け止め部材を固定する方法としては、例えば圧入による方法が挙げられる。その場合、アンビルとハンマとが衝突する際に発生する衝撃等によって、抜け止め部材と挿入孔との嵌合状態が緩んで、抜け止め部材が挿入孔から外れてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、挿入孔に抜け止め部材を固定する方法としては他に、接着剤により接着固定する方法が考えられる。この方法で固定した場合、連結部材が磨耗して部品交換の必要があっても、抜け止め部材を挿入孔から外せず、連結部材を切替ピンから外すことができないという問題がある。
【0009】
そこで上記事情に鑑みて、本発明は、アンビルとハンマとの衝突による衝撃等によって、ハンマを回転させる駆動軸とアンビルとを連結状態と非連結状態とに切り替える連結部材が、切替ピンから抜けることを抜け止め部材によって確実に防止でき、且つ、部品交換の際には、抜け止め部材を簡単に切替ピンから外すことができるインパクト回転工具を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成する本発明のインパクト回転工具は、アンビルの第一切替用隙間とハンマを回転させる駆動軸の第二切替用隙間との間を移動して前記アンビルと前記駆動軸とを連結状態と非連結状態とに切り替える連結部材と、前記連結部材の移動方向に前記連結部材を貫通する切替ピンと、前記切替ピンを前記移動方向と交差する方向に貫通する挿入孔と、前記挿入孔に挿通される抜け止め部材とを備え、前記抜け止め部材によって前記連結部材を前記切替ピンから抜け止めするインパクト回転工具であって、前記抜け止め部材は、前記挿入孔に挿通される差込部と、前記差込部の一端側から延設されて前記差込部に並設される係止部とからなり、前記係止部は、屈曲弾性を有し、前記差込部が前記挿入孔に挿通される際に、前記係止部の先端側が前記切替ピンの前記外周面に当たって弾性的に押し広げられて、前記係止部の先端部が前記外周面を乗り越えることで、前記切替ピンに係止されるように設けたことを特徴とする。
【0011】
また、前記挿入孔に挿通される前記差込部の端面が前記挿入孔の開口部分に位置する状態で、前記係止部の前記先端部が前記切替ピンの前記外周面を乗り越えず、且つ前記係止部の先端側が弾性変形されない状態となるように設けることが好ましい。
【0012】
あるいは、前記挿入孔に挿通される前記差込部の端面が前記挿入孔の開口部分に位置する状態で、前記係止部の前記先端部が前記切替ピンの前記外周面のうち前記挿入孔から最も離れた箇所に接触し、且つ前記先端部の接触する部分が前記外周面の前記接触箇所と略平行になるように設けることが好ましい。
【0013】
また、前記切替ピンの軸方向の端部の周縁部分が、前記係止部に当たることで前記抜け止め部材の回転を防止する回転防止部となっていることが好ましい。
【0014】
また、前記切替ピンの前記外周面に、前記係止部を保持する保持溝を設け、前記保持溝を、ここに保持される前記係止部が前記連結部材との間に隙間を保つ位置に設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のインパクト回転工具は、アンビルとハンマとの衝突による衝撃等によって、ハンマを回転させる駆動軸とアンビルとを連結状態と非連結状態とに切り替える連結部材が、切替ピンから抜けることを抜け止め部材によって確実に防止でき、且つ、部品交換の際には、抜け止め部材を簡単に切替ピンから外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態のインパクト回転工具の、切替ピンと連結部材と抜け止め部材とを示し、(a)は分解斜視図であり、(b)は組み立てた状態の斜視図であり、(c)は組み立てた状態を、切替ピンの軸方向から見た図である。
【図2】同上のインパクト回転工具を模式的に示した説明図であり、(a)はドリルドライバーモードを示し、(b)はインパクトモードを示す。
【図3】(a)〜(d)は同上のインパクト回転工具において、連結部材を装着した切替ピンに対して抜け止め部材を取り付けていく手順を示した断面図である。
【図4】同上のインパクト回転工具において、切替ピンと連結部材と抜け止め部材とを組み立てた状態を示す断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態のインパクト回転工具において、連結部材を装着した切替ピンの挿入孔の開口部に、抜け止め部材の差込部の端部が位置する状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第三実施形態のインパクト回転工具を示し、(a)は切替ピンの斜視図であり、(b)は切替ピンと連結部材と抜け止め部材とを組み立てた状態を示す正面図である。
【図7】本発明の第四実施形態のインパクト回転工具において、切替ピンと連結部材と抜け止め部材とを組み立てた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0018】
本実施形態のインパクト回転工具1について、図2に基づいて構成の概要を説明する。
【0019】
インパクト回転工具1は、駆動源であるモータ10と、モータ10の回転動力を外部に出力する出力軸11と、モータ10と出力軸11の間に配置されモータ10の回転駆動を出力軸11に伝達する駆動伝達部とを備える。モータ10は、トリガスイッチ12を引き込み操作することで駆動する。
【0020】
駆動伝達部は、モータ10の回転動力を減速して伝達する第一及び第二減速機構部13,14と、出力軸11に回転動力を伝達する駆動軸15とを備える。駆動伝達部は、さらに、第一減速機構部13単独で、あるいは、第一及び第二減速機構部13,14の両方で減速した回転動力を駆動軸15に伝達する接続軸16を備える。第一減速機構部13には、切替手段により図2(a)に示す前位置と図2(b)に示す後位置とに切り替えられる駆動キャリア17が連結されている。この駆動キャリア17が、前位置にある状態で、第一減速機構部13と第二減速機構部14とが駆動キャリア17を介して連結して、第一及び第二減速機構部13,14の両方で減速した回転動力が接続軸16を介して駆動軸15に伝達される。また、駆動キャリア17が、後位置にある状態で、駆動キャリア17は第二減速機構部14には連結せず、第一減速機構部13にだけ連結して、第一減速機構部13単独で減速した回転動力が接続軸16を介して駆動軸15に伝達される。
【0021】
駆動キャリア17には、出力軸11側の端部に、切替ピン5が一体に装着されている。駆動軸15は、中心軸部が中空であり、その中空部に切替ピン5が遊嵌している。
【0022】
出力軸11のモータ10側にはアンビル2が設けられている。ハンマ3は、駆動軸15の外周に配置されており、駆動軸15と共に回転する。ハンマ3は、駆動軸15に対して一定量スライド自在となっており、付勢ばね18によってアンビル2側に付勢されている。
【0023】
駆動軸15には、六角穴状の第一切替用隙間20が設けられており、アンビル2には、第一切替用隙間20と同じ六角穴状の第二切替用隙間30が設けられている。この第一切替用隙間20と第二切替用隙間30とは、連通しており、同一直線上に位置している。
【0024】
切替ピン5は、出力軸11側の端部に、六角柱状の連結部材4が回転自在に装着されており、その連結部材4よりもさらに出力軸11側に抜け止め部材6が取り付けられている。六角柱状の連結部材4は、六角穴状の第一切替用隙間20及び第二切替用隙間30に嵌まり込むように、形状が設定されている。
【0025】
切替ピン5は駆動キャリア17に装着されているため、切替手段によって、駆動キャリア17とともに位置が切り替えられる。図2(a)に示すように、駆動キャリア17が前位置にあるとき、切替ピン5に備えた連結部材4が、第一切替用隙間20及び第二切替用隙間30の両方に亘る連結位置に位置する。この連結位置に連結部材4が位置する状態が、アンビル2と駆動軸15とが一体に回転して、アンビル2とハンマ3とが衝突せず、工具に回転方向への打撃を加えずに該工具を回転させるドリルドライバーモードである。
【0026】
また、図2(b)に示すように、駆動キャリア17が後位置にあるとき、切替ピン5に備えた連結部材4が、第一切替用隙間20内の非連結位置に位置する。この非連結位置に連結部材4が位置する状態が、アンビル2とハンマ3とが別体として回転して、アンビル2とハンマ3とが衝突し、先端に取り付けた工具に回転方向への打撃を加えながら該工具を回転させるインパクトモードである。このインパクトモードでは、先端に取り付けた工具に所定以上のトルクが外部から加わった場合に、アンビル2とハンマ3とが衝突して、この工具に回転方向への打撃が加えられる。
【0027】
以上、インパクト回転工具1の構成の概要について説明した。続いて、本実施形態の連結部材4と切替ピン5と抜け止め部材6の構成について詳しく説明する。
【0028】
図1(a)に示すように、切替ピン5は、大径円柱部と、それより小径の小径円柱部とからなる段付の円柱形状をなし、先端側の小径円柱部が連結部材4を貫通する。連結部材4は、六角柱状であり、中心には小径円柱部が貫通する貫通孔を有する。切替ピン5の小径円柱部の先端部には、切替ピン5の軸方向に直交する方向(交差する方向)に貫通する挿入孔50が設けられている。
【0029】
抜け止め部材6は、図1(a)に示すように、挿入孔50に挿通される差込部60と、差込部60の一端側からU字状に延設されて差込部60に並設される係止部61とからなる。係止部61は、屈曲弾性を有する。また、図1(a),図1(b)に示すように、差込部60は直線状に延びた円柱形状であり、係止部61は、曲線状に延びた円柱形状である。
【0030】
図3(a)には、抜け止め部材6の弾性変形前の状態が示されている。図に示すように、差込部60と係止部61の先端側における、差込部60と係止部61間の最小距離L1が、挿入孔50から切替ピン5の外周面51までの最大距離L2よりも短くなるように、抜け止め部材6は形成されている。
【0031】
上述した切替ピン5と連結部材4と抜け止め部材6とは、図1(b),図1(c)に示すように、組み立てられる。この抜け止め部材6を切替ピン5の挿入孔50に対して、取り付けていく手順を、図3を参照して説明する。
【0032】
差込部60を挿入孔50に差し込んでいくと、図3(b)に示すように、係止部61の先端部63が切替ピン5の外周面51に接触する。この状態から、さらに差込部60を挿入孔50に差し込んでいくと、係止部61の先端側が切替ピン5の外周面51に当たって弾性的に押し広げられる。本実施形態では、図3(c)に示すように、挿入孔50に挿通した差込部60の端面62が挿入孔50の開口部分に位置する状態で、係止部61の先端部63が、切替ピン5の外周面51のうち挿入孔50から最も離れた箇所52に接触する。ここで、本実施形態では、係止部61の先端部63のうち、箇所52に接触する部分64(差込部60側の面)が、弾性変形した状態でこの箇所52の外周面51と略平行になるように、抜け止め部材6の係止部61が形成されている。このように、係止部61の先端部63と外周面51の箇所52とは、略平行な状態で接触するため、抜け止め部材6には、切替ピン5の挿入孔50から抜ける方向や差し込む方向への分力が働き難い。また、この状態では、係止部61と外周面51とは広い範囲で接触することになり、摩擦抵抗力によって、挿入孔50から抜ける方向や差し込む方向への分力がさらに働き難くなる。
【0033】
そして、図3(c)に示す状態から、さらに差込部60を挿入孔50に差し込んでいくと、図3(d)に示すように、係止部61の先端部63が外周面51の上述の箇所52を乗り越える。この乗り越えた状態で、切替ピン5の外周面51と挿入孔50との間の部分Aを、差込部60と係止部61とで挟み込むことになる。このような構成とすることで、係止部61の先端部63が、切替ピン5の外周面51に引掛けて係止されて、抜け止めがなされる。
【0034】
ここで、抜け止め部材6は、切替ピン5が最大出力で回転されるときにかかる遠心力によって、係止部61と差込部60間の最小距離L1が、上述の挿入孔50と外周面51間の最大距離L2以下を保つような屈曲弾性を有する。
【0035】
また、本実施形態では、図4に示すように、切替ピン5の軸方向の端部53(先端部)の周縁部分54が、係止部61に当たることで抜け止め部材6の回転を防止する回転防止部7となっている。これにより、切替ピン5に軸方向に外力が発生した際に、係止部61が切替ピン5の先端側に回り込むことを防止できる。
【0036】
続いて、本発明の第二実施形態の抜け止め部材6の構成について説明する。なお、その他の構成は、第一実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0037】
本実施形態では、図5に示すように、差込部60の端面62が挿入孔50の開口部分に位置する状態で、係止部61の先端部63が切替ピン5の外周面51を乗り越えず、且つ係止部61の先端側が弾性変形されない状態となるように、抜け止め部材6を設けている。すなわち、この状態では、係止部61の先端部63が、切替ピン5の外周面51のうち挿入孔50から最も離れた箇所52よりも手前(差し込み方向の反対側)に位置しており、係止部61の先端部63が切替ピン5の外周面51によって押し拡げられていない。そのため、この状態では、抜け止め部材6には、抜ける方向や差し込む方向への反力が働かない。
【0038】
続いて、本発明の第三実施形態の切替ピン5の構成について説明する。その他の構成は、第一実施形態や第二実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0039】
本実施形態では、図6(a)に示すように、切替ピン5の外周面51に、係止部61を保持する保持溝55を設けている。保持溝55は、係止部61の外面に沿った丸溝であり、ここに保持される係止部61が、図6(b)に示すように、連結部材4との間に隙間Sを保つような位置に設けている。
【0040】
このような構成とすることで、保持溝55によって係止部61が保持されるため、係止部61が切替ピン5の先端側に回り込むことを抑制できる。また、係止部61と連結部材4との間に隙間Sを保つことができるので、連結部材4が回転する際に、連結部材4と係止部61との間での摩擦発生を抑制でき、これにより連結部材4や係止部61が磨耗することを抑制できる。
【0041】
続いて、本発明の第四実施形態の抜け止め部材6の構成について説明する。その他の構成は、第一実施形態や第二実施形態や第三実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0042】
本実施形態では、図7に示すように、2つの係止部(第一係止部610と第二係止部620)を備える。本実施形態においても、差込部60と係止部610,620間の最小距離L1が、挿入孔50と切替ピン5の外周面51間の最大距離L2よりも短くなるように形成されている。そして、係止部610,620は屈曲弾性を有する。第一係止部610と第二係止部620とは、その先端部630,640が、切替ピン5の外周面51を乗り越えた状態で、切替ピン5の外周面51と挿入孔50との間の部分Aを、差込部60と、第一係止部610と第二係止部620それぞれとで挟み込む。このような構成とすることで、第一係止部610と第二係止部620の先端部630,640が、切替ピン5の外周面51に引っかかって係止されて、抜け止めがなされる。
【0043】
加えて、本実施形態では、差込部60を挟んで両側に係止部610,620を設けることで、第一係止部610、第二係止部620の両方で所定の保持力(切替ピン5から抜けない力)を有すればよいので、それぞれ単独で有する屈曲弾性を小さくすることができる。また、第一係止部610が切替ピン5の先端側に回り込むことを第二係止部620によって防止でき、第二係止部620が切替ピン5の先端側に回り込むことを第一係止部610によって防止できる。そのため、切替ピン5の軸方向の端部53の周縁部分54を、抜け止め部材6の回転を防止する回転防止部7としなくてもよいので、この切替ピン5の端部53の軸方向の長さを短くできて、切替ピン5をコンパクトに形成できる。
【0044】
以上まとめると、上述した第一乃至第四実施形態のインパクト回転工具1は、アンビル2の第一切替用隙間20とハンマ3を回転させる駆動軸15の第二切替用隙間30との間を移動してアンビル2と駆動軸15とを連結状態と非連結状態とに切り替える連結部材4を備える。そして、連結部材4の移動方向に連結部材4を貫通する切替ピン5と、切替ピン5を前記移動方向と交差する方向に貫通する挿入孔50と、挿入孔50に挿通される抜け止め部材6とを備える。この抜け止め部材6によって連結部材4を切替ピン5から抜け止めする。抜け止め部材6は、挿入孔50に挿通される差込部60と、差込部60の一端側から延設されて差込部60に並設される係止部61とからなる。係止部61は、屈曲弾性を有する。そして、差込部60が挿入孔50に挿通される際に、係止部61の先端側が切替ピン5の外周面51に当たって弾性的に押し広げられて、係止部61の先端部63が外周面51を乗り越えることで、切替ピン5に係止されるように設けている。
【0045】
このような構成とすることで、第一乃至第四実施形態のインパクト回転工具1では、抜け止め部材6を切替ピン5に取り付ける際、屈曲弾性を有する係止部61の先端部63が切替ピン5の外周面51を乗り越えることで、抜け止め部材6が切替ピン5に係止される。そのため、アンビル2とハンマ3との衝突による衝撃によって、抜け止め部材6に外力が働いたとしても、抜け止め部材6が切替ピン5から外れてしまうことを抑制できる。また、係止部61の弾性により、アンビル2とハンマ3との衝突による衝撃を吸収することもできる。また、係止部61を強く押し広げれば、切替ピン5から抜け止め部材6を取り外すことができ、これにより、磨耗した連結部材4を部品交換する際には、連結部材4を切替ピン5から簡単に外すことができる。
【0046】
また、上述した第二実施形態のインパクト回転工具1では、挿入孔50に挿通される差込部60の端面62が挿入孔50の開口部分に位置する状態で、係止部61の先端部が切替ピン5の外周面51を乗り越えず、且つ係止部61の先端側が弾性変形されない状態となるように設けている。
【0047】
このような構成とすることで、切替ピン5から抜け止め部材6を取り外す際に、差込部60の端面62を挿入孔50の開口部分まで押し込んだ状態では、切替ピン5の外周面51から係止部61に弾性力の反力が働かない状態となる。そのため、この反力によって切替ピン5から抜け止め部材6が勝手に外れてしまうことを防止できる。
【0048】
また、上述した第一実施形態のインパクト回転工具1では、挿入孔50に挿通される差込部60の端面62が挿入孔50の開口部分に位置する状態で、係止部61の先端部63が切替ピン5の外周面51のうち挿入孔50から最も離れた箇所52に接触し、且つ先端部63の接触する部分64が外周面51の接触箇所52と略平行になるように設けている。
【0049】
このような構成とすることで、切替ピン5から抜け止め部材6を取り出す際に、差込部60の端面62が挿入孔50の開口部分に位置する状態で、係止部61の先端部63が、切替ピン5の外周面51のうち挿入孔50から最も離れた箇所52に略平行に接触する。そのため、抜け止め部材6には、切替ピン5の挿入孔50から抜ける方向や差し込む方向への分力が働き難い。また、この状態では、係止部61と外周面51とは広い範囲で接触することになり、摩擦抵抗力によって、挿入孔50から抜ける方向や差し込む方向への分力がさらに働き難くなる。そのため、切替ピン5から抜け止め部材6が勝手に外れたり、勝手に元の差し込んだ状態に戻ってしまうことを防止できる。
【0050】
また、上述した第一乃至第三実施形態のインパクト回転工具1では、切替ピン5の軸方向の端部53の周縁部分54が、係止部61に当たることで抜け止め部材6の回転を防止する回転防止部7となっている。
【0051】
このような構成とすることで、係止部61が回転して、切替ピン5の先端側に回り込むことを、回転防止部7(切替ピン5の軸方向の端部53の周縁部分54)によって防止できる。これにより、この回り込んだ係止部61が邪魔で、アンビル2の第一切替用隙間20と駆動軸15の第二切替用隙間30との間での連結部材4の移動が十分にできなくなり、アンビル2とハンマ3との連結が不十分な状態となることを防止できる。
【0052】
また、上述した第三実施形態のインパクト回転工具1では、切替ピン5の外周面51に、係止部61を保持する保持溝55を設け、保持溝55を、ここに保持される係止部61が連結部材4との間に隙間Sを保つ位置に設けている。
【0053】
このような構成とすることで、保持溝55によって係止部61が保持されるため、係止部61が切替ピン5の先端側に回り込むことを抑制できる。また、係止部61と連結部材4との間に隙間Sを保つことができるので、係止部61と連結部材4とが互いに磨耗することを抑制でき、係止部61や連結部材4を痛みにくくすることができる。
【0054】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 インパクト回転工具
15 駆動軸
2 アンビル
20 第一切替用隙間
3 ハンマ
30 第二切替用隙間
4 連結部材
5 切替ピン
50 挿入孔
51 外周面
52 接触箇所
53 端部
54 周縁部分
55 保持溝
6 抜け止め部材
60 差込部
61 係止部
62 端面
63 先端部
64 接触する部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンビルの第一切替用隙間とハンマを回転させる駆動軸の第二切替用隙間との間を移動して前記アンビルと前記駆動軸とを連結状態と非連結状態とに切り替える連結部材と、前記連結部材の移動方向に前記連結部材を貫通する切替ピンと、前記切替ピンを前記移動方向と交差する方向に貫通する挿入孔と、前記挿入孔に挿通される抜け止め部材とを備え、前記抜け止め部材によって前記連結部材を前記切替ピンから抜け止めする電動工具であって、
前記抜け止め部材は、前記挿入孔に挿通される差込部と、前記差込部の一端側から延設されて前記差込部に並設される係止部とからなり、
前記係止部は、屈曲弾性を有し、
前記差込部が前記挿入孔に挿通される際に、前記係止部の先端側が前記切替ピンの前記外周面に当たって弾性的に押し広げられて、前記係止部の先端部が前記外周面を乗り越えることで、前記切替ピンに係止されるように設けたことを特徴とするインパクト回転工具。
【請求項2】
前記挿入孔に挿通される前記差込部の端面が前記挿入孔の開口部分に位置する状態で、前記係止部の前記先端部が前記切替ピンの前記外周面を乗り越えず、且つ前記係止部の先端側が弾性変形されない状態となるように設けたことを特徴とする請求項1に記載のインパクト回転工具。
【請求項3】
前記挿入孔に挿通される前記差込部の端面が前記挿入孔の開口部分に位置する状態で、前記係止部の前記先端部が前記切替ピンの前記外周面のうち前記挿入孔から最も離れた箇所に接触し、且つ前記先端部の接触する部分が前記外周面の前記接触箇所と略平行になるように設けたことを特徴とする請求項1に記載のインパクト回転工具。
【請求項4】
前記切替ピンの軸方向の端部の周縁部分が、前記係止部に当たることで前記抜け止め部材の回転を防止する回転防止部となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインパクト回転工具。
【請求項5】
前記切替ピンの前記外周面に、前記係止部を保持する保持溝を設け、
前記保持溝を、ここに保持される前記係止部が前記連結部材との間に隙間を保つ位置に設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のインパクト回転工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−66945(P2013−66945A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204998(P2011−204998)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(509119153)パナソニックESパワーツール株式会社 (107)
【Fターム(参考)】