インパルス応答加工装置、残響付与装置およびプログラム
【課題】残響音の音質を維持しながらインパルス応答の残響時間を変化させる。
【解決手段】波形区分部32は、記憶装置14に格納されたインパルス応答Hを時間軸上で複数の基礎ブロックに区分する。時間調整部36は、相前後する各基礎ブロックの時間差を、入力装置16から指示された倍率Rに応じて拡大する。補間処理手段は、相前後する各基礎ブロックを加算または平均することで補間ブロックPを生成する。波形合成部44は、時間調整部36による調整後の各ブロックの間に補間ブロックPを配置することで新規インパルス応答HNEWを生成する。
【解決手段】波形区分部32は、記憶装置14に格納されたインパルス応答Hを時間軸上で複数の基礎ブロックに区分する。時間調整部36は、相前後する各基礎ブロックの時間差を、入力装置16から指示された倍率Rに応じて拡大する。補間処理手段は、相前後する各基礎ブロックを加算または平均することで補間ブロックPを生成する。波形合成部44は、時間調整部36による調整後の各ブロックの間に補間ブロックPを配置することで新規インパルス応答HNEWを生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残響の付与に使用されるインパルス応答を加工する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インパルス応答の畳込み演算で音響信号に残響を付加する装置において、残響が継続する時間長(以下「残響時間」という)を変化させる技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、2種類のインパルス応答の各々に指数関数を乗算してから加算(線形結合)することで、所望の残響時間の新規なインパルス応答を生成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−294712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の技術においては、指数関数を乗算してインパルス応答の強度を上昇させることで、インパルス応答に重畳された雑音(暗騒音)の強度も増幅される。したがって、音響信号に付加される残響音の音質が低下するという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、残響音の音質を維持しながら残響時間を変化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、本発明に係るインパルス応答加工装置は、インパルス応答を時間軸上で複数の基礎ブロックに区分する波形区分手段と、相前後する各基礎ブロックの時間差を拡大する時間調整手段と、補間ブロックを生成する補間処理手段と、時間調整手段による調整後の各基礎ブロックの間に補間ブロックを配置することで新規インパルス応答を生成する波形合成手段とを具備する。以上の構成においては、インパルス応答を区分した各基礎ブロックの時間差を拡大することで残響時間が伸長されるから、インパルス応答の振幅を増加させることで残響時間を伸長する構成と比較して、雑音が抑制された高品位な残響音の新規インパルス応答を生成できる。また、各基礎ブロックの間には補間ブロックが配置されるから、単純に各基礎ブロックの間隔を拡大して新規インパルス応答を生成する場合と比較して、聴感上において自然な残響音の新規インパルス応答を生成することが可能である。
【0005】
本発明の好適な態様において、補間処理手段は、相前後する各基礎ブロックを平均または加算することで補間ブロックを算定する平均手段を含み、波形合成手段は、平均手段による算定後の補間ブロックを、平均手段が当該補間ブロックの算定に使用した各基礎ブロックの間に配置することで新規インパルス応答を生成する。以上の態様においては、相前後する各基礎ブロックを平均または加算(加重和を含む)することで補間ブロックが生成されるから、基礎ブロックとは無関係に補間ブロックを生成する場合と比較して、各基礎ブロックと各補間ブロックとで音響的な特性が類似する自然な新規インパルス応答を生成できる。
【0006】
相隣接する補間ブロックと基礎ブロックとで音響的な特性(周波数特性)が過度に近似すると、新規インパルス応答に応じて生成された残響音が聴感上において不自然であると知覚される場合がある。そこで、本発明の好適な態様において、補間処理手段は、補間ブロック(例えば平均手段が生成した補間ブロック)が表す波形を変形させる波形処理手段を含み、波形合成手段は、波形処理手段による処理後の補間ブロックを使用して新規インパルス応答を生成する。以上の態様によれば、補間ブロックと基礎ブロックとで音響的な特性を適度に相違させることが可能であるから、聴感上において自然な残響音の新規インパルス応答を生成することができる。補間ブロックの波形を変形させるための具体的な構成としては、補間ブロックが表す波形における時間軸上の前後を逆転させる構成や補間ブロックが表す波形の周波数領域における位相を回転させる構成が好適に採用される。
【0007】
本発明の好適な態様において、補間処理手段は、時間調整手段による調整後の各基礎ブロックの時間差が大きいほど当該各基礎ブロック間に配置される補間ブロックの振幅が増加するように各補間ブロックの振幅を調整する振幅調整手段を含み、波形合成手段は、振幅調整手段による調整後の補間ブロックを使用して新規インパルス応答を生成する。以上の構成によれば、基礎ブロックおよび補間ブロックの双方において新規インパルス応答の振幅が均一化されるから、聴感上において自然な残響音の新規インパルス応答を生成することが可能となる。
【0008】
本発明の好適な態様に係るインパルス応答加工装置は、両端部に近いほど関数値が減少する窓関数を各基礎ブロックに乗算する第1窓掛手段(例えば図2や図12の窓掛部34)を具備し、波形区分手段は、相前後する各基礎ブロックが部分的に重複するようにインパルス応答を区分し、波形合成手段は、第1窓掛手段による処理後の各基礎ブロックを使用して新規インパルス応答を生成する。以上の態様においては、部分的に重複する各基礎ブロックが窓関数の乗算後に新規インパルス応答の生成に使用されるから、各基礎ブロックと各補間ブロックとが滑らかに連続する自然な残響音の新規インパルス応答を生成できるという利点がある。さらに好適な態様において、補間処理手段は、両端部に接近するほど関数値が減少する窓関数を各補間ブロックに乗算する第2窓掛手段(例えば図4や図10の窓掛部56)を含み、波形合成手段は、第2窓掛手段による処理後の各補間ブロックを使用して新規インパルス応答を生成する。
【0009】
本発明の好適な態様において、波形合成手段は、相前後する各基礎ブロックの間に複数の補間ブロックを配置することで新規インパルス応答を生成する。以上の態様においては、各基礎ブロックの間に複数の補間ブロックが配置されるから、インパルス応答の残響時間を高倍率で伸長した新規インパルス応答を生成することが可能となる。
【0010】
本発明に係る残響付与装置は、以上の各態様に係るインパルス応答加工装置と、インパルス応答加工装置が生成した新規インパルス応答と音響信号との畳込み演算を実行する残響付与手段とを具備する。本発明の残響付与装置によれば、以上の各態様に係るインパルス応答加工装置と同様の作用および効果が実現される。
【0011】
また、以上の各態様に係るインパルス応答加工装置は、インパルス応答の加工に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェア(電子回路)によって実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)などの汎用の演算処理装置とプログラムとの協働によっても実現される。本発明に係るプログラムは、インパルス応答を時間軸上で複数の基礎ブロックに区分する波形区分処理と、相前後する各基礎ブロックの時間差を拡大する時間調整処理と、補間ブロックを生成する補間処理処理と、時間調整処理の実行後の各基礎ブロックの間に補間ブロックを配置することで新規インパルス応答を生成する波形合成処理とをコンピュータに実行させる。本発明のプログラムによれば、以上の各態様に係るインパルス応答加工装置と同様の作用および効果が奏される。本発明のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で利用者に提供されてコンピュータにインストールされるほか、通信網を介した配信の形態でサーバ装置から提供されてコンピュータにインストールされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る残響付与装置のブロック図である。残響付与装置100には、音響(楽音や音声)の波形を表す音響信号Sが供給される。音響信号Sの供給元(図示略)は、例えば、周囲の音響に応じた音響信号Sを生成する収音機器や、記録媒体から順次に音響信号Sを取得して出力する再生装置である。残響付与装置100は、音響信号Sに残響を付加した残響音信号SRを生成および出力する。残響音信号SRは、スピーカ装置やヘッドホンなどの放音装置(図示略)に供給されることで音波として再生される。
【0013】
図1に示すように、残響付与装置100は、演算処理装置12と記憶装置14と入力装置16とで構成されるコンピュータシステムである。記憶装置14は、演算処理装置12が実行するプログラムや演算処理装置12が使用するデータを記憶する。例えばインパルス応答Hの波形を表すサンプル系列(畳込み演算の係数列)が記憶装置14に記憶される。半導体記憶装置や磁気記憶装置などの公知の記録媒体が記憶装置14として任意に採用される。
【0014】
演算処理装置12は、記憶装置14に格納されたプログラムを実行することで複数の要素(インパルス応答加工部22,残響付与部24)として機能する。なお、演算処理装置12の各要素を複数の装置(集積回路)に分散的に搭載した構成や、音響信号Sの処理に専用される電子回路(DSP)が各要素を実現する構成も採用される。
【0015】
インパルス応答加工部22は、記憶装置14に格納されたインパルス応答Hを加工することで、インパルス応答Hとは特性(残響時間)が相違する新たなインパルス応答(以下「新規インパルス応答」という)HNEWの波形を表すサンプル系列を生成する。新規インパルス応答HNEWは、残響時間をインパルス応答HのR倍に延長した波形の信号である(1<R≦2)。残響付与部24は、インパルス応答加工部22が生成した新規インパルス応答HNEWを利用したフィルタ処理(畳込み演算)を音響信号Sに対して実行することで残響音信号SRを生成する。残響付与部24による残響音信号SRの生成には公知の技術が任意に採用される。
【0016】
入力装置16は、残響付与装置100に対する指示の入力のために利用者が操作する操作子で構成される。利用者は、入力装置16に対する操作に応じて残響時間の倍率Rを可変に指定することが可能である。
【0017】
図2は、インパルス応答加工部22のブロック図であり、図3は、インパルス応答加工部22による具体的な処理を説明するための概念図である。図2に示すように、インパルス応答加工部22は、波形区分部32と窓掛部34と時間調整部36と補間処理部42と波形合成部44とを含んで構成される。
【0018】
波形区分部32は、記憶装置14に格納されたインパルス応答Hを時間軸上で複数の区間(以下「基礎ブロック」という)Ba(Ba[1],Ba[2],……)に区分する。図3の部分(A)に示すように、各基礎ブロックBaはインパルス応答Hの2N個(例えばN=64)のサンプルで構成される。また、相前後する各基礎ブロックBaの時間差はサンプルのN個分に相当する。したがって、相前後する各基礎ブロックBaは部分的に重複する。さらに詳述すると、各基礎ブロックBa[i](i=1,2,……)における後半のN個のサンプルと、直後の基礎ブロックBa[i+1]における前半のN個のサンプルとは共通する。
【0019】
図2の窓掛部34は、波形区分部32が画定した各基礎ブロックBa[i]に窓関数w1を乗算することで基礎ブロックBb[i](Bb[1],Bb[2],……)を生成する。各ブロックBbは2N個のサンプルで構成される。両端部に接近するほど関数値が減少する関数(理想的には両端部で関数値がゼロとなる関数)が窓関数w1として好適である。図3の部分(B)においては、窓関数w1の乗算後の各基礎ブロックBbが、窓関数w1の形状を表す図形で代替的に図示されている。また、偶数番目の基礎ブロックBb(Bb[2],Bb[4],……)は、実線で図示された奇数番目の基礎ブロックBb(Bb[1],Bb[3],……)との区別のために便宜的に破線で図示されている。本形態においては式(1)で定義されるハニング窓w(n)を窓関数w1として採用する。
w(n)=0.5−0.5cos(nπ/N) ……(1)
【0020】
図2の時間調整部36は、窓掛部34による処理後の各基礎ブロックBbを時間軸上で移動させる。本形態の時間調整部36は、相前後する各基礎ブロックBbの時間差(間隔)が拡大するように各基礎ブロックBbの時間軸上の位置を調整する。さらに詳述すると、図3の部分(D)に示すように、基礎ブロックBb[i]の時間軸上の中点C[i]と直後の基礎ブロックBb[i+1]の時間軸上の中点C[i+1]との間隔が、インパルス応答HのN個のサンプルに相当する時間長(調整前の時間差)に対して倍率Rを乗算した時間長(N・R)となるように、各基礎ブロックBbの位置が調整(遅延)される。
【0021】
図2の補間処理部42は、補間ブロックP(P[1],P[2],……)を生成する。補間ブロックPは、インパルス応答HのN個のサンプルに相当する時間長に対して倍率Rを乗算した時間長のサンプル系列(N・R個のサンプルの集合)である。図3の部分(C)に示すように、補間ブロックP[i]の生成には、相前後する基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]が利用される。なお、補間処理部42による処理の具体例は後述する。
【0022】
図2の波形合成部44は、図3の部分(E)に示すように、時間調整部36による調整後の各基礎ブロックBb(Bb[1],Bb[2],……)の間に、補間処理部42が生成した補間ブロックP(P[1],P[2],……)を配置(補間)することで新規インパルス応答HNEWを生成する。補間ブロックP[i]は、当該補間ブロックP[i]の生成に使用された基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に配置される。補間ブロックP[i]の始点が基礎ブロックBb[i]の中点C[i]に合致するとともに補間ブロックP[i]の終点が基礎ブロックBb[i+1]の中点C[i+1]に合致するように、補間ブロックP[i]の時間軸上の位置が選定される。すなわち、補間ブロックP[i]の中点は、基礎ブロックBb[i]の中点C[i]と基礎ブロックBb[i+1]の中点C[i+1]とから等間隔にある地点に合致する。
【0023】
波形合成部44は、以上のように時間軸上に配置された各基礎ブロックBbと各補間ブロックPとについて、同じ時点に対応する各サンプルの数値を加算する。図3の部分(F)に示す新規インパルス応答HNEWは、各基礎ブロックBbと各補間ブロックPとのサンプルの加算値の時系列である。したがって、新規インパルス応答HNEWの残響時間はインパルス応答Hの残響時間のR倍となる。利用者は、入力装置16を操作して倍率Rを適宜に指示することで、残響音信号SRの再生音の残響時間を任意に調整することができる。
【0024】
次に、図4を参照して、補間処理部42の具体例を説明する。図4に示すように、本形態の補間処理部42は、平均部52と波形処理部54と窓掛部56と振幅調整部58とを含んで構成される。平均部52は、波形区分部32による区分後の各基礎ブロックBaについて、時間軸上で相前後する基礎ブロックBa[i]と基礎ブロックBa[i+1]とを平均することで補間ブロックPa[i]を生成する。さらに具体的には、平均部52は、加算部521と乗算部523とで構成される。加算部521は、基礎ブロックBa[i]の2N個のサンプルと基礎ブロックBa[i+1]の2N個のサンプルとについて相対応する各時点のサンプルの数値を加算する。乗算部523は、加算部521による加算後の2N個のサンプルに「0.5」を乗算する。乗算部523による乗算後の2N個のサンプルで補間ブロックPa[i]が構成される。
【0025】
ところで、平均部52が生成した補間ブロックPa[i]を補間ブロックP[i]として波形合成部44が新規インパルス応答HNEWの生成に使用することも可能である。しかし、補間ブロックPa[i]が表す波形は、当該補間ブロックPa[i]の生成に使用された基礎ブロックBa[i]および基礎ブロックBa[i+1]が表す波形に非常に類似する。したがって、補間ブロックPa[i]を補間ブロックP[i]として基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に配置することで生成される新規インパルス応答HNEWは相類似する波形を反復的に配置した波形となり、残響音信号SRの再生音に聴感上の違和感(うねり感)が知覚される場合がある。一方、基礎ブロックBa[i]や基礎ブロックBa[i+1]とは無関係に補間ブロックP[i]を生成することも可能であるが、各基礎ブロックBbと補間ブロックPとの音響的な特性(周波数特性)の相違に起因して残響音信号SRの再生音に聴感上の違和感が知覚される場合がある。
【0026】
そこで、本形態の波形処理部54は、平均部52が生成した補間ブロックPa[i]が表す波形を変形して補間ブロックPb[i]を生成する。本形態の波形処理部54は、図5に示すように、補間ブロックPa[i]が表す波形における時間軸上の前後を逆転させることで補間ブロックPb[i]を生成する。すなわち、補間ブロックPb[i]は、補間ブロックPa[i]を構成する2N個のサンプルの順番を逆転させた2N個のサンプルの系列である。以上のように波形処理部54による波形の変形を経て生成される補間ブロックP[i]を使用すれば、新規インパルス応答HNEWにおいて適度に類似する波形が反復されるから、残響音信号SRの再生音は聴感上において自然な音響となる。
【0027】
図4の窓掛部56は、波形処理部54による処理後の各補間ブロックPb[i]に窓関数w2を乗算することで補間ブロックPc[i]を生成する。両端部に接近するほど関数値が減少する関数(理想的には両端部で関数値がゼロとなる関数)が窓関数w2として好適である。本形態においては前掲の式(1)で定義されるハニング窓w(n)を窓関数w2として使用する。
【0028】
窓掛部56による処理後の補間ブロックPc[i]の振幅(各サンプルの数値)は、基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との平均値と窓関数w2との乗算値であるから、例えば補間ブロックPc[i]を補間ブロックP[i]として新規インパルス応答HNEWの生成に利用した場合には、新規インパルス応答HNEWのうち補間ブロックPc[i]が配置された区間の振幅が過大となり、残響音信号SRの再生音には聴感上の違和感が知覚される。そこで、図4の振幅調整部58は、補間ブロックPc[i]が表す波形の振幅(各サンプルの数値)を低減することで補間ブロックP[i]を生成する。
【0029】
図6は、振幅調整部58の動作を説明するための概念図である。図6においては、基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]と窓掛部56による生成の直後の補間ブロックPc[i]とが、窓関数w1および窓関数w2の例示であるハニング窓w(n)(w(n)=0.5−0.5cos(nπ/N))の形状を表す図形で代替的に図示されている。図6においては、基礎ブロックBa[i]の中点C[i]と基礎ブロックBa[i+1]の中点C[i+1]とから等間隔の時点に中点が合致するように補間ブロックPc[i]を配置した。
【0030】
図6に示すように、基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]の間においてインパルス応答Hのサンプルの2N個分に相当する区間は、基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]と補間ブロックPc[i]との関係に応じて5個の区間(A1〜A5)に区分される。区間A1は、基礎ブロックBb[i]の中点C[i]の手前の区間であり、区間A2は、基礎ブロックBb[i]に対応する窓関数w1の振幅が補間ブロックPc[i]に対応する窓関数w2の振幅を上回る区間である。区間A3は、補間ブロックPc[i]に対応する窓関数w2の振幅が基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]に対応する窓関数w1の振幅を上回る区間である。また、区間A4は、基礎ブロックBb[i+1]に対応する窓関数w1の振幅が補間ブロックPc[i]に対応する窓関数w2の振幅を上回る区間であり、区間A5は、基礎ブロックBb[i+1]の中点C[i+1]の経過後の区間である。
【0031】
図6には、振幅調整部58による調整後の補間ブロックP[i]が調整前の補間ブロックPc[i]とともに模式的に図示されている。振幅調整部58は、基礎ブロックBb[i]の窓関数w1と基礎ブロックBb[i+1]の窓関数w1と補間ブロックP[i]に対応する窓関数とを加算したときの振幅が全区間にわたって所定値(典型的には「1」)となるように、補間ブロックPc[i]の振幅を調整して補間ブロックP[i]を生成する。さらに詳述すると、振幅調整部58は、第1に、補間ブロックPc[i]の2N個のサンプルのうち区間A1および区間A5に属する各サンプルの数値をゼロに設定する。第2に、振幅調整部58は、補間ブロックPc[i]の区間A2内の各サンプルに「w(n)/w(n-(2N-NR)/2)」を乗算し、区間A3の各サンプルに「{w(n)-w(n-NR+N)}/w(n-(2N-NR)/2)を乗算し、区間A4の各サンプルに「w(n+2N-NR)/w(n-(2N-NR)/2)」を乗算する。以上の方法で作成されたN・R個のサンプル(区間A2〜A4に属する各サンプル)の系列が補間ブロックP[i]として波形合成部44による新規インパルス応答HNEWの合成に利用される。
【0032】
次に、インパルス応答Hに指数関数を乗算することで残響時間を伸長する構成を本形態との対比例として説明する。対比例における新規インパルス応答HNEWは、例えば式(2)で表現されるように、インパルス応答Hに対して指数関数a(t)を乗算することで生成される。対比例の構成においては、図7に示すように、インパルス応答Hの振幅(強度)に対する新規インパルス応答HNEWの振幅の増幅率はインパルス応答Hの後部に至るほど指数的に増加するから、インパルス応答Hの後部に重畳された雑音(暗騒音)の強度が新規インパルス応答HNEWにおいて顕在化する。したがって、新規インパルス応答HNEWの残響時間をインパルス応答Hと比較して伸長するほど残響音の音質が低下するという問題がある。
【数1】
【0033】
対比例とは対照的に本形態においては、インパルス応答Hの強度を倍率Rに応じて増幅するわけではなく、インパルス応答Hを区分した複数の基礎ブロックBa(Bb)の時間差を拡大する(インパルス応答Hを時間軸の方向に伸長する)ことで新規インパルス応答HNEWが生成されるから、インパルス応答Hの雑音が新規インパルス応答HNEWにて顕在化するという対比例の問題は防止される。したがって、残響音の音質を維持しながら残響時間を伸長することができる。しかも、各基礎ブロックBbの間には補間ブロックPが配置されるから、単純に各基礎ブロックBbの間隔を広げて新規インパルス応答HNEWを生成する場合と比較して自然な残響音を生成することが可能である。
【0034】
また、窓関数(w1,w2)の乗算を経て生成される基礎ブロックBbおよび補間ブロックPの各々においては両端部に接近するほどサンプルの数値が減少するから、各基礎ブロックBbや補間ブロックPが時間軸上で連続的に連結される。したがって、各基礎ブロックBbや補間ブロックPの連結部にて強度が不連続となる場合と比較して、自然な残響音の生成が可能な新規インパルス応答HNEWを生成できるという利点がある。
【0035】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態においては、平均部52が生成した補間ブロックPa[i]の波形を波形処理部54が時間軸の方向に逆転した。本形態の波形処理部54は、平均部52が生成した補間ブロックPa[i]の位相を回転させることで波形処理部54が補間ブロックPb[i]を生成する。なお、以下の各形態において第1実施形態と共通する要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0036】
図8は、本形態における波形処理部54のブロック図である。図8に示すように、波形処理部54は、変換部542と移相部544と逆変換部546とで構成される。変換部542は、例えばフーリエ変換を利用して補間ブロックPa[i]を周波数領域の信号(周波数スペクトル)に変換する。移相部544は、変換部542による変換後の補間ブロックPa[i](周波数スペクトル)の位相を所定の角度θだけ回転する。逆変換部546は、移相部544による処理後の補間ブロックPa[i]を時間領域の信号(補間ブロックPb[i])に変換する。
【0037】
以上の構成においては、基礎ブロックBb[i]や基礎ブロックBb[i+1]に対して適度に類似した周波数特性(類似し過ぎず乖離し過ぎない周波数特性)の補間ブロックPb[i]が生成される。したがって、補間ブロックPa[i]を最終的な補間ブロックP[i]として利用する構成や基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]とは無関係に補間ブロックP[i]を生成する構成と比較すると、第1実施形態と同様に、聴感上において自然な残響音を実現できる新規インパルス応答HNEWを生成することが可能となる。
【0038】
<C:第3実施形態>
本発明の第3実施形態を説明する。第1実施形態においては、残響時間の倍率Rが2倍以下である場合を想定した。本形態は、2倍を上回る倍率Rで残響時間を伸長するための形態である。なお、本形態において倍率Rが2倍を下回る場合には、第1実施形態や第2実施形態と同様の処理で残響時間が伸長される。
【0039】
図9は、本形態の動作を説明するための概念図である。倍率Rが2倍を上回る場合(例えばR=2.5の場合)、時間調整部36による調整後の基礎ブロックBb[i]の中点C[i]と基礎ブロックBb[i+1]の中点C[i+1]との間隔(N・R)はインパルス応答Hのサンプルの2N個分を上回る。したがって、2N個のサンプルで構成される1個の補間ブロックP[i]を基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に配置しただけでは新規インパルス応答HNEWのうち基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に相当する区間の強度が不足する。そこで、波形合成部44は、図9に示すように、時間調整部36による調整後の基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に複数の補間ブロックP[i](P[i]_1,P[i]_2)を配置したうえで新規インパルス応答HNEWを生成する。
【0040】
図9の補間ブロックP[i]_1は、基礎ブロックBa[i]および基礎ブロックBa[i+1]から生成された2N個のサンプルの系列である。波形合成部44は、補間ブロックP[i]_1の始点が基礎ブロックBb[i]の中点C[i]に合致するように補間ブロックP[i]を時間軸上に配置する。一方、補間ブロックP[i]_2は、基礎ブロックBa[i]および基礎ブロックBa[i+1]から生成された{NR-N}個のサンプルの系列である。波形合成部44は、補間ブロックP[i]_1と基礎ブロックBb[i+1]との間に補間ブロックP[i]_2を配置する。さらに詳述すると、補間ブロックP[i]_2の始点が補間ブロックP[i]_1の中点CP[i]に合致するとともに補間ブロックP[i]_2の終点が基礎ブロックB[i+1]の中点C[i+1]に合致するように、補間ブロックP[i]_2の時間軸上の位置が選定される。
【0041】
図10は、本形態に係る補間処理部42のブロック図である。図10に示すように、波形処理部54は、周波数特性が相違する複数の補間ブロックPb[i](Pb[i]_1,Pb[i]_2)を、平均部52が生成した補間ブロックPa[i]から生成する。波形処理部54としては例えば第2実施形態(図8)の構成が好適に採用される。さらに詳述すると、波形処理部54は、補間ブロックPa[i]の位相の回転の角度θを変化させることで2個の補間ブロックPb[i](Pb[i]_1,Pb[i]_2)を生成する。例えば、波形処理部54は、補間ブロックPa[i]の位相を角度θ1だけ回転させることで補間ブロックPb[i]_1を生成し、補間ブロックPa[i]の位相を角度θ2(θ2≠θ1)だけ回転させることで補間ブロックPb[i]_2を生成する。
【0042】
図10の窓掛部56は、波形処理部54による処理後の複数の補間ブロックPb[i]の各々に窓関数w2を乗算することで複数の補間ブロックPc[i](Pc[i]_1,Pc[i]_2)を生成する。振幅調整部58は、第1に、補間ブロックPc[i]_1を図9の補間ブロックP[i]_1として確定する。第2に、振幅調整部58は、図6に例示した処理を利用して補間ブロックPc[i]_2の振幅および時間長(サンプルの個数)を調整することで、{NR-N}個のサンプルで構成される補間ブロックP[i]_2を生成する。以上の手順で振幅調整部58が生成した複数の補間ブロックP[i](P[i]_1,P[i]_2)が、図9に例示したように波形合成部44による新規インパルス応答HNEWの生成に使用される。以上の形態においては、インパルス応答Hの基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]の間に複数の補間ブロックP[i]が配置されるから、残響時間の倍率Rを2倍以上に設定することが可能となる。
【0043】
なお、図9においては、基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に2個の補間ブロックP[i]を配置したが、倍率Rが3倍を上回る場合には3個以上の補間ブロックP[i]が配置される。例えば、倍率Rが3.5倍である場合、図11に示すように、各々が2N個のサンプルで構成される2個の補間ブロックP[i](P[i]_1,P[i]_2)と、{NR-2N}個のサンプルで構成される1個の補間ブロックP[i](P[i]_3)とが基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に配置される。すなわち、倍率Rの整数部rを利用して一般化すると、各々が2N個のサンプルで構成される(r-1)個の補間ブロックP[i](P[i]_1,……P[i]_r-1)と、{NR-(r-1)N}個のサンプルで構成される1個の補間ブロックP[i]_rとが基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に配置される。
【0044】
<D:変形例>
以上に例示した各形態には様々な変形が加えられる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の例示から2以上の態様を任意に選択して組合わせてもよい。
【0045】
(1)変形例1
窓関数w1を乗算する位置(時点)は適宜に変更される。例えば、図2の構成において、時間調整部36による調整後の各基礎ブロックBbに窓掛部34が窓関数w1を乗算する構成も採用される。図12に示すように、窓掛部34による窓関数w1の乗算後の基礎ブロックBbを補間処理部42が処理する構成も好適である。図12の構成においては補間処理部42の窓掛部56が省略される。また、以上の各形態においては、窓関数w2の乗算後の補間ブロックPc[i]の振幅を振幅調整部58が調整したが、基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との時間差に応じて振幅が調整された窓関数w2を窓掛部56が補間ブロックPb[i]に乗算することで補間ブロックP[i]を生成する構成も好適である。
【0046】
(2)変形例2
窓関数w1や窓関数w2の内容は任意であり、公知の窓関数(例えばハミング窓や三角窓)が任意に採用される。もっとも、窓関数w1や窓関数w2の利用は本発明において必須の要件ではない。例えば、波形区分部32が区分した各基礎ブロックBaの間隔を時間調整部36が拡大し、各基礎ブロックBaの間隔に補間ブロックPを挿入することで波形合成部44が新規インパルス応答HNEWを生成する構成も採用される。したがって、各基礎ブロックBaの部分的な重複も本発明では必須ではない。もっとも、窓関数を使用しない構成(各基礎ブロックBaが重複しない構成)においては、各基礎ブロックBaと補間ブロックPとの境界で残響音が不連続となって音質が低下する場合がある。したがって、各基礎ブロックBaと補間ブロックPとを自然に連結するという観点からすれば、部分的に重複するように各基礎ブロックBaを設定したうえで窓関数w1や窓関数w2を利用する構成が重要であり、両端部に接近するほど関数値が減少する窓関数は格別に好適である。
【0047】
(3)変形例3
補間ブロックPを生成する方法は本発明において任意である。以上の形態においては基礎ブロックBa[i]と基礎ブロックBa[i+1]とを平均することで初期的な補間ブロックPa[i]を生成したが、基礎ブロックBa[i]と基礎ブロックBa[i+1]との加算(加重和を含む)を平均部52が補間ブロックPa[i]として算定する構成も採用される。また、補間ブロックPa[i]の算定の基礎は基礎ブロックBa[i]および基礎ブロックBa[i+1]に限定されない。例えば、ひとつの基礎ブロックBa[i](または基礎ブロックBa[i+1])を補間ブロックPa[i]として使用する構成や、相連続する3個以上の基礎ブロックBaを加算または平均することで補間ブロックPa[i]を算定する構成も採用される。もっとも、インパルス応答Hから抽出された基礎ブロックBaを補間ブロックPの生成に使用する構成は本発明において必須ではない。例えば、インパルス応答H(基礎ブロックBa)とは無関係に予め作成された補間ブロックPa(例えばインパルス応答Hに特性が類似する別のインパルス応答を区分したブロック)を補間ブロックP[i]の生成に使用した構成も採用される。
【0048】
また、図4および図10における波形処理部54や窓掛部56や振幅調整部58は補間処理部42から適宜に省略される。さらに、補間処理部42の各要素による処理の順番は変更される。例えば、窓掛部56による処理後の補間ブロックPbに対して波形処理部54による波形の変形が実行される。
【0049】
(4)変形例4
第3実施形態において補間処理部42が生成する複数の補間ブロックP[i](P[i]_1,P[i]_2,……)の周波数特性を相違させるための方法は、位相の回転の角度θを補間ブロックP[i]毎に変化させる方法に限定されない。例えば、図5に例示したように時間軸上で補間ブロックPaの波形を反転させることで奇数番目の補間ブロックPbが生成され、平均部52の生成した補間ブロックPaが偶数番目の補間ブロックPbとして使用される構成も採用される。もっとも、第3実施形態においては、補間処理部42が生成する複数の補間ブロックP[i](P[i]_1,P[i]_2,……)の周波数特性が共通する構成も採用される。
【0050】
(5)変形例5
以上の形態においてはインパルス応答加工部22と残響付与部24とを具備する残響付与装置100を例示したが、図1の残響付与装置100から残響付与部24を省略したインパルス応答加工装置(インパルス応答加工部22)としても本発明は成立する。インパルス応答加工装置が生成した新規インパルス応答HNEWは、例えば、可搬型の記録媒体や通信網を介して別個の残響付与装置100(残響付与部24)に提供されて残響音の生成に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る残響付与装置のブロック図である。
【図2】インパルス応答加工部のブロック図である。
【図3】インパルス応答加工部の動作を説明するための概念図である。
【図4】補間処理部のブロック図である。
【図5】波形処理部による処理を説明するための概念図である。
【図6】振幅調整部による処理を説明するための概念図である。
【図7】対比例におけるインパルス応答の加工を説明するための概念図である。
【図8】第2実施形態に係る波形処理部のブロック図である。
【図9】第3実施形態に係るインパルス応答加工部の動作を説明するための概念図である。
【図10】補間処理部のブロック図である。
【図11】第3実施形態に係るインパルス応答加工部の動作を説明するための概念図である。
【図12】変形例に係る補間処理部のブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
100……残響付与装置、12……演算処理装置、14……記憶装置、16……入力装置、22……インパルス応答加工部、24……残響付与部、32……波形区分部、34……窓掛部、36……時間調整部、42……補間処理部、44……波形合成部、52……平均部、54……波形処理部、56……窓掛部、58……振幅調整部、S……音響信号、SR……残響音信号、Ba(Ba[i]),Bb(Bb[i])……基礎ブロック、H……インパルス応答、HNEW……新規インパルス応答、P(P[i]),Pa(Pa[i]),Pb(Pb[i]),Pc(Pc[i])……補間ブロック、R……残響時間の倍率。
【技術分野】
【0001】
本発明は、残響の付与に使用されるインパルス応答を加工する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インパルス応答の畳込み演算で音響信号に残響を付加する装置において、残響が継続する時間長(以下「残響時間」という)を変化させる技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、2種類のインパルス応答の各々に指数関数を乗算してから加算(線形結合)することで、所望の残響時間の新規なインパルス応答を生成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−294712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の技術においては、指数関数を乗算してインパルス応答の強度を上昇させることで、インパルス応答に重畳された雑音(暗騒音)の強度も増幅される。したがって、音響信号に付加される残響音の音質が低下するという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、残響音の音質を維持しながら残響時間を変化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、本発明に係るインパルス応答加工装置は、インパルス応答を時間軸上で複数の基礎ブロックに区分する波形区分手段と、相前後する各基礎ブロックの時間差を拡大する時間調整手段と、補間ブロックを生成する補間処理手段と、時間調整手段による調整後の各基礎ブロックの間に補間ブロックを配置することで新規インパルス応答を生成する波形合成手段とを具備する。以上の構成においては、インパルス応答を区分した各基礎ブロックの時間差を拡大することで残響時間が伸長されるから、インパルス応答の振幅を増加させることで残響時間を伸長する構成と比較して、雑音が抑制された高品位な残響音の新規インパルス応答を生成できる。また、各基礎ブロックの間には補間ブロックが配置されるから、単純に各基礎ブロックの間隔を拡大して新規インパルス応答を生成する場合と比較して、聴感上において自然な残響音の新規インパルス応答を生成することが可能である。
【0005】
本発明の好適な態様において、補間処理手段は、相前後する各基礎ブロックを平均または加算することで補間ブロックを算定する平均手段を含み、波形合成手段は、平均手段による算定後の補間ブロックを、平均手段が当該補間ブロックの算定に使用した各基礎ブロックの間に配置することで新規インパルス応答を生成する。以上の態様においては、相前後する各基礎ブロックを平均または加算(加重和を含む)することで補間ブロックが生成されるから、基礎ブロックとは無関係に補間ブロックを生成する場合と比較して、各基礎ブロックと各補間ブロックとで音響的な特性が類似する自然な新規インパルス応答を生成できる。
【0006】
相隣接する補間ブロックと基礎ブロックとで音響的な特性(周波数特性)が過度に近似すると、新規インパルス応答に応じて生成された残響音が聴感上において不自然であると知覚される場合がある。そこで、本発明の好適な態様において、補間処理手段は、補間ブロック(例えば平均手段が生成した補間ブロック)が表す波形を変形させる波形処理手段を含み、波形合成手段は、波形処理手段による処理後の補間ブロックを使用して新規インパルス応答を生成する。以上の態様によれば、補間ブロックと基礎ブロックとで音響的な特性を適度に相違させることが可能であるから、聴感上において自然な残響音の新規インパルス応答を生成することができる。補間ブロックの波形を変形させるための具体的な構成としては、補間ブロックが表す波形における時間軸上の前後を逆転させる構成や補間ブロックが表す波形の周波数領域における位相を回転させる構成が好適に採用される。
【0007】
本発明の好適な態様において、補間処理手段は、時間調整手段による調整後の各基礎ブロックの時間差が大きいほど当該各基礎ブロック間に配置される補間ブロックの振幅が増加するように各補間ブロックの振幅を調整する振幅調整手段を含み、波形合成手段は、振幅調整手段による調整後の補間ブロックを使用して新規インパルス応答を生成する。以上の構成によれば、基礎ブロックおよび補間ブロックの双方において新規インパルス応答の振幅が均一化されるから、聴感上において自然な残響音の新規インパルス応答を生成することが可能となる。
【0008】
本発明の好適な態様に係るインパルス応答加工装置は、両端部に近いほど関数値が減少する窓関数を各基礎ブロックに乗算する第1窓掛手段(例えば図2や図12の窓掛部34)を具備し、波形区分手段は、相前後する各基礎ブロックが部分的に重複するようにインパルス応答を区分し、波形合成手段は、第1窓掛手段による処理後の各基礎ブロックを使用して新規インパルス応答を生成する。以上の態様においては、部分的に重複する各基礎ブロックが窓関数の乗算後に新規インパルス応答の生成に使用されるから、各基礎ブロックと各補間ブロックとが滑らかに連続する自然な残響音の新規インパルス応答を生成できるという利点がある。さらに好適な態様において、補間処理手段は、両端部に接近するほど関数値が減少する窓関数を各補間ブロックに乗算する第2窓掛手段(例えば図4や図10の窓掛部56)を含み、波形合成手段は、第2窓掛手段による処理後の各補間ブロックを使用して新規インパルス応答を生成する。
【0009】
本発明の好適な態様において、波形合成手段は、相前後する各基礎ブロックの間に複数の補間ブロックを配置することで新規インパルス応答を生成する。以上の態様においては、各基礎ブロックの間に複数の補間ブロックが配置されるから、インパルス応答の残響時間を高倍率で伸長した新規インパルス応答を生成することが可能となる。
【0010】
本発明に係る残響付与装置は、以上の各態様に係るインパルス応答加工装置と、インパルス応答加工装置が生成した新規インパルス応答と音響信号との畳込み演算を実行する残響付与手段とを具備する。本発明の残響付与装置によれば、以上の各態様に係るインパルス応答加工装置と同様の作用および効果が実現される。
【0011】
また、以上の各態様に係るインパルス応答加工装置は、インパルス応答の加工に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェア(電子回路)によって実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)などの汎用の演算処理装置とプログラムとの協働によっても実現される。本発明に係るプログラムは、インパルス応答を時間軸上で複数の基礎ブロックに区分する波形区分処理と、相前後する各基礎ブロックの時間差を拡大する時間調整処理と、補間ブロックを生成する補間処理処理と、時間調整処理の実行後の各基礎ブロックの間に補間ブロックを配置することで新規インパルス応答を生成する波形合成処理とをコンピュータに実行させる。本発明のプログラムによれば、以上の各態様に係るインパルス応答加工装置と同様の作用および効果が奏される。本発明のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で利用者に提供されてコンピュータにインストールされるほか、通信網を介した配信の形態でサーバ装置から提供されてコンピュータにインストールされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る残響付与装置のブロック図である。残響付与装置100には、音響(楽音や音声)の波形を表す音響信号Sが供給される。音響信号Sの供給元(図示略)は、例えば、周囲の音響に応じた音響信号Sを生成する収音機器や、記録媒体から順次に音響信号Sを取得して出力する再生装置である。残響付与装置100は、音響信号Sに残響を付加した残響音信号SRを生成および出力する。残響音信号SRは、スピーカ装置やヘッドホンなどの放音装置(図示略)に供給されることで音波として再生される。
【0013】
図1に示すように、残響付与装置100は、演算処理装置12と記憶装置14と入力装置16とで構成されるコンピュータシステムである。記憶装置14は、演算処理装置12が実行するプログラムや演算処理装置12が使用するデータを記憶する。例えばインパルス応答Hの波形を表すサンプル系列(畳込み演算の係数列)が記憶装置14に記憶される。半導体記憶装置や磁気記憶装置などの公知の記録媒体が記憶装置14として任意に採用される。
【0014】
演算処理装置12は、記憶装置14に格納されたプログラムを実行することで複数の要素(インパルス応答加工部22,残響付与部24)として機能する。なお、演算処理装置12の各要素を複数の装置(集積回路)に分散的に搭載した構成や、音響信号Sの処理に専用される電子回路(DSP)が各要素を実現する構成も採用される。
【0015】
インパルス応答加工部22は、記憶装置14に格納されたインパルス応答Hを加工することで、インパルス応答Hとは特性(残響時間)が相違する新たなインパルス応答(以下「新規インパルス応答」という)HNEWの波形を表すサンプル系列を生成する。新規インパルス応答HNEWは、残響時間をインパルス応答HのR倍に延長した波形の信号である(1<R≦2)。残響付与部24は、インパルス応答加工部22が生成した新規インパルス応答HNEWを利用したフィルタ処理(畳込み演算)を音響信号Sに対して実行することで残響音信号SRを生成する。残響付与部24による残響音信号SRの生成には公知の技術が任意に採用される。
【0016】
入力装置16は、残響付与装置100に対する指示の入力のために利用者が操作する操作子で構成される。利用者は、入力装置16に対する操作に応じて残響時間の倍率Rを可変に指定することが可能である。
【0017】
図2は、インパルス応答加工部22のブロック図であり、図3は、インパルス応答加工部22による具体的な処理を説明するための概念図である。図2に示すように、インパルス応答加工部22は、波形区分部32と窓掛部34と時間調整部36と補間処理部42と波形合成部44とを含んで構成される。
【0018】
波形区分部32は、記憶装置14に格納されたインパルス応答Hを時間軸上で複数の区間(以下「基礎ブロック」という)Ba(Ba[1],Ba[2],……)に区分する。図3の部分(A)に示すように、各基礎ブロックBaはインパルス応答Hの2N個(例えばN=64)のサンプルで構成される。また、相前後する各基礎ブロックBaの時間差はサンプルのN個分に相当する。したがって、相前後する各基礎ブロックBaは部分的に重複する。さらに詳述すると、各基礎ブロックBa[i](i=1,2,……)における後半のN個のサンプルと、直後の基礎ブロックBa[i+1]における前半のN個のサンプルとは共通する。
【0019】
図2の窓掛部34は、波形区分部32が画定した各基礎ブロックBa[i]に窓関数w1を乗算することで基礎ブロックBb[i](Bb[1],Bb[2],……)を生成する。各ブロックBbは2N個のサンプルで構成される。両端部に接近するほど関数値が減少する関数(理想的には両端部で関数値がゼロとなる関数)が窓関数w1として好適である。図3の部分(B)においては、窓関数w1の乗算後の各基礎ブロックBbが、窓関数w1の形状を表す図形で代替的に図示されている。また、偶数番目の基礎ブロックBb(Bb[2],Bb[4],……)は、実線で図示された奇数番目の基礎ブロックBb(Bb[1],Bb[3],……)との区別のために便宜的に破線で図示されている。本形態においては式(1)で定義されるハニング窓w(n)を窓関数w1として採用する。
w(n)=0.5−0.5cos(nπ/N) ……(1)
【0020】
図2の時間調整部36は、窓掛部34による処理後の各基礎ブロックBbを時間軸上で移動させる。本形態の時間調整部36は、相前後する各基礎ブロックBbの時間差(間隔)が拡大するように各基礎ブロックBbの時間軸上の位置を調整する。さらに詳述すると、図3の部分(D)に示すように、基礎ブロックBb[i]の時間軸上の中点C[i]と直後の基礎ブロックBb[i+1]の時間軸上の中点C[i+1]との間隔が、インパルス応答HのN個のサンプルに相当する時間長(調整前の時間差)に対して倍率Rを乗算した時間長(N・R)となるように、各基礎ブロックBbの位置が調整(遅延)される。
【0021】
図2の補間処理部42は、補間ブロックP(P[1],P[2],……)を生成する。補間ブロックPは、インパルス応答HのN個のサンプルに相当する時間長に対して倍率Rを乗算した時間長のサンプル系列(N・R個のサンプルの集合)である。図3の部分(C)に示すように、補間ブロックP[i]の生成には、相前後する基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]が利用される。なお、補間処理部42による処理の具体例は後述する。
【0022】
図2の波形合成部44は、図3の部分(E)に示すように、時間調整部36による調整後の各基礎ブロックBb(Bb[1],Bb[2],……)の間に、補間処理部42が生成した補間ブロックP(P[1],P[2],……)を配置(補間)することで新規インパルス応答HNEWを生成する。補間ブロックP[i]は、当該補間ブロックP[i]の生成に使用された基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に配置される。補間ブロックP[i]の始点が基礎ブロックBb[i]の中点C[i]に合致するとともに補間ブロックP[i]の終点が基礎ブロックBb[i+1]の中点C[i+1]に合致するように、補間ブロックP[i]の時間軸上の位置が選定される。すなわち、補間ブロックP[i]の中点は、基礎ブロックBb[i]の中点C[i]と基礎ブロックBb[i+1]の中点C[i+1]とから等間隔にある地点に合致する。
【0023】
波形合成部44は、以上のように時間軸上に配置された各基礎ブロックBbと各補間ブロックPとについて、同じ時点に対応する各サンプルの数値を加算する。図3の部分(F)に示す新規インパルス応答HNEWは、各基礎ブロックBbと各補間ブロックPとのサンプルの加算値の時系列である。したがって、新規インパルス応答HNEWの残響時間はインパルス応答Hの残響時間のR倍となる。利用者は、入力装置16を操作して倍率Rを適宜に指示することで、残響音信号SRの再生音の残響時間を任意に調整することができる。
【0024】
次に、図4を参照して、補間処理部42の具体例を説明する。図4に示すように、本形態の補間処理部42は、平均部52と波形処理部54と窓掛部56と振幅調整部58とを含んで構成される。平均部52は、波形区分部32による区分後の各基礎ブロックBaについて、時間軸上で相前後する基礎ブロックBa[i]と基礎ブロックBa[i+1]とを平均することで補間ブロックPa[i]を生成する。さらに具体的には、平均部52は、加算部521と乗算部523とで構成される。加算部521は、基礎ブロックBa[i]の2N個のサンプルと基礎ブロックBa[i+1]の2N個のサンプルとについて相対応する各時点のサンプルの数値を加算する。乗算部523は、加算部521による加算後の2N個のサンプルに「0.5」を乗算する。乗算部523による乗算後の2N個のサンプルで補間ブロックPa[i]が構成される。
【0025】
ところで、平均部52が生成した補間ブロックPa[i]を補間ブロックP[i]として波形合成部44が新規インパルス応答HNEWの生成に使用することも可能である。しかし、補間ブロックPa[i]が表す波形は、当該補間ブロックPa[i]の生成に使用された基礎ブロックBa[i]および基礎ブロックBa[i+1]が表す波形に非常に類似する。したがって、補間ブロックPa[i]を補間ブロックP[i]として基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に配置することで生成される新規インパルス応答HNEWは相類似する波形を反復的に配置した波形となり、残響音信号SRの再生音に聴感上の違和感(うねり感)が知覚される場合がある。一方、基礎ブロックBa[i]や基礎ブロックBa[i+1]とは無関係に補間ブロックP[i]を生成することも可能であるが、各基礎ブロックBbと補間ブロックPとの音響的な特性(周波数特性)の相違に起因して残響音信号SRの再生音に聴感上の違和感が知覚される場合がある。
【0026】
そこで、本形態の波形処理部54は、平均部52が生成した補間ブロックPa[i]が表す波形を変形して補間ブロックPb[i]を生成する。本形態の波形処理部54は、図5に示すように、補間ブロックPa[i]が表す波形における時間軸上の前後を逆転させることで補間ブロックPb[i]を生成する。すなわち、補間ブロックPb[i]は、補間ブロックPa[i]を構成する2N個のサンプルの順番を逆転させた2N個のサンプルの系列である。以上のように波形処理部54による波形の変形を経て生成される補間ブロックP[i]を使用すれば、新規インパルス応答HNEWにおいて適度に類似する波形が反復されるから、残響音信号SRの再生音は聴感上において自然な音響となる。
【0027】
図4の窓掛部56は、波形処理部54による処理後の各補間ブロックPb[i]に窓関数w2を乗算することで補間ブロックPc[i]を生成する。両端部に接近するほど関数値が減少する関数(理想的には両端部で関数値がゼロとなる関数)が窓関数w2として好適である。本形態においては前掲の式(1)で定義されるハニング窓w(n)を窓関数w2として使用する。
【0028】
窓掛部56による処理後の補間ブロックPc[i]の振幅(各サンプルの数値)は、基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との平均値と窓関数w2との乗算値であるから、例えば補間ブロックPc[i]を補間ブロックP[i]として新規インパルス応答HNEWの生成に利用した場合には、新規インパルス応答HNEWのうち補間ブロックPc[i]が配置された区間の振幅が過大となり、残響音信号SRの再生音には聴感上の違和感が知覚される。そこで、図4の振幅調整部58は、補間ブロックPc[i]が表す波形の振幅(各サンプルの数値)を低減することで補間ブロックP[i]を生成する。
【0029】
図6は、振幅調整部58の動作を説明するための概念図である。図6においては、基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]と窓掛部56による生成の直後の補間ブロックPc[i]とが、窓関数w1および窓関数w2の例示であるハニング窓w(n)(w(n)=0.5−0.5cos(nπ/N))の形状を表す図形で代替的に図示されている。図6においては、基礎ブロックBa[i]の中点C[i]と基礎ブロックBa[i+1]の中点C[i+1]とから等間隔の時点に中点が合致するように補間ブロックPc[i]を配置した。
【0030】
図6に示すように、基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]の間においてインパルス応答Hのサンプルの2N個分に相当する区間は、基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]と補間ブロックPc[i]との関係に応じて5個の区間(A1〜A5)に区分される。区間A1は、基礎ブロックBb[i]の中点C[i]の手前の区間であり、区間A2は、基礎ブロックBb[i]に対応する窓関数w1の振幅が補間ブロックPc[i]に対応する窓関数w2の振幅を上回る区間である。区間A3は、補間ブロックPc[i]に対応する窓関数w2の振幅が基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]に対応する窓関数w1の振幅を上回る区間である。また、区間A4は、基礎ブロックBb[i+1]に対応する窓関数w1の振幅が補間ブロックPc[i]に対応する窓関数w2の振幅を上回る区間であり、区間A5は、基礎ブロックBb[i+1]の中点C[i+1]の経過後の区間である。
【0031】
図6には、振幅調整部58による調整後の補間ブロックP[i]が調整前の補間ブロックPc[i]とともに模式的に図示されている。振幅調整部58は、基礎ブロックBb[i]の窓関数w1と基礎ブロックBb[i+1]の窓関数w1と補間ブロックP[i]に対応する窓関数とを加算したときの振幅が全区間にわたって所定値(典型的には「1」)となるように、補間ブロックPc[i]の振幅を調整して補間ブロックP[i]を生成する。さらに詳述すると、振幅調整部58は、第1に、補間ブロックPc[i]の2N個のサンプルのうち区間A1および区間A5に属する各サンプルの数値をゼロに設定する。第2に、振幅調整部58は、補間ブロックPc[i]の区間A2内の各サンプルに「w(n)/w(n-(2N-NR)/2)」を乗算し、区間A3の各サンプルに「{w(n)-w(n-NR+N)}/w(n-(2N-NR)/2)を乗算し、区間A4の各サンプルに「w(n+2N-NR)/w(n-(2N-NR)/2)」を乗算する。以上の方法で作成されたN・R個のサンプル(区間A2〜A4に属する各サンプル)の系列が補間ブロックP[i]として波形合成部44による新規インパルス応答HNEWの合成に利用される。
【0032】
次に、インパルス応答Hに指数関数を乗算することで残響時間を伸長する構成を本形態との対比例として説明する。対比例における新規インパルス応答HNEWは、例えば式(2)で表現されるように、インパルス応答Hに対して指数関数a(t)を乗算することで生成される。対比例の構成においては、図7に示すように、インパルス応答Hの振幅(強度)に対する新規インパルス応答HNEWの振幅の増幅率はインパルス応答Hの後部に至るほど指数的に増加するから、インパルス応答Hの後部に重畳された雑音(暗騒音)の強度が新規インパルス応答HNEWにおいて顕在化する。したがって、新規インパルス応答HNEWの残響時間をインパルス応答Hと比較して伸長するほど残響音の音質が低下するという問題がある。
【数1】
【0033】
対比例とは対照的に本形態においては、インパルス応答Hの強度を倍率Rに応じて増幅するわけではなく、インパルス応答Hを区分した複数の基礎ブロックBa(Bb)の時間差を拡大する(インパルス応答Hを時間軸の方向に伸長する)ことで新規インパルス応答HNEWが生成されるから、インパルス応答Hの雑音が新規インパルス応答HNEWにて顕在化するという対比例の問題は防止される。したがって、残響音の音質を維持しながら残響時間を伸長することができる。しかも、各基礎ブロックBbの間には補間ブロックPが配置されるから、単純に各基礎ブロックBbの間隔を広げて新規インパルス応答HNEWを生成する場合と比較して自然な残響音を生成することが可能である。
【0034】
また、窓関数(w1,w2)の乗算を経て生成される基礎ブロックBbおよび補間ブロックPの各々においては両端部に接近するほどサンプルの数値が減少するから、各基礎ブロックBbや補間ブロックPが時間軸上で連続的に連結される。したがって、各基礎ブロックBbや補間ブロックPの連結部にて強度が不連続となる場合と比較して、自然な残響音の生成が可能な新規インパルス応答HNEWを生成できるという利点がある。
【0035】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態においては、平均部52が生成した補間ブロックPa[i]の波形を波形処理部54が時間軸の方向に逆転した。本形態の波形処理部54は、平均部52が生成した補間ブロックPa[i]の位相を回転させることで波形処理部54が補間ブロックPb[i]を生成する。なお、以下の各形態において第1実施形態と共通する要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0036】
図8は、本形態における波形処理部54のブロック図である。図8に示すように、波形処理部54は、変換部542と移相部544と逆変換部546とで構成される。変換部542は、例えばフーリエ変換を利用して補間ブロックPa[i]を周波数領域の信号(周波数スペクトル)に変換する。移相部544は、変換部542による変換後の補間ブロックPa[i](周波数スペクトル)の位相を所定の角度θだけ回転する。逆変換部546は、移相部544による処理後の補間ブロックPa[i]を時間領域の信号(補間ブロックPb[i])に変換する。
【0037】
以上の構成においては、基礎ブロックBb[i]や基礎ブロックBb[i+1]に対して適度に類似した周波数特性(類似し過ぎず乖離し過ぎない周波数特性)の補間ブロックPb[i]が生成される。したがって、補間ブロックPa[i]を最終的な補間ブロックP[i]として利用する構成や基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]とは無関係に補間ブロックP[i]を生成する構成と比較すると、第1実施形態と同様に、聴感上において自然な残響音を実現できる新規インパルス応答HNEWを生成することが可能となる。
【0038】
<C:第3実施形態>
本発明の第3実施形態を説明する。第1実施形態においては、残響時間の倍率Rが2倍以下である場合を想定した。本形態は、2倍を上回る倍率Rで残響時間を伸長するための形態である。なお、本形態において倍率Rが2倍を下回る場合には、第1実施形態や第2実施形態と同様の処理で残響時間が伸長される。
【0039】
図9は、本形態の動作を説明するための概念図である。倍率Rが2倍を上回る場合(例えばR=2.5の場合)、時間調整部36による調整後の基礎ブロックBb[i]の中点C[i]と基礎ブロックBb[i+1]の中点C[i+1]との間隔(N・R)はインパルス応答Hのサンプルの2N個分を上回る。したがって、2N個のサンプルで構成される1個の補間ブロックP[i]を基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に配置しただけでは新規インパルス応答HNEWのうち基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に相当する区間の強度が不足する。そこで、波形合成部44は、図9に示すように、時間調整部36による調整後の基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に複数の補間ブロックP[i](P[i]_1,P[i]_2)を配置したうえで新規インパルス応答HNEWを生成する。
【0040】
図9の補間ブロックP[i]_1は、基礎ブロックBa[i]および基礎ブロックBa[i+1]から生成された2N個のサンプルの系列である。波形合成部44は、補間ブロックP[i]_1の始点が基礎ブロックBb[i]の中点C[i]に合致するように補間ブロックP[i]を時間軸上に配置する。一方、補間ブロックP[i]_2は、基礎ブロックBa[i]および基礎ブロックBa[i+1]から生成された{NR-N}個のサンプルの系列である。波形合成部44は、補間ブロックP[i]_1と基礎ブロックBb[i+1]との間に補間ブロックP[i]_2を配置する。さらに詳述すると、補間ブロックP[i]_2の始点が補間ブロックP[i]_1の中点CP[i]に合致するとともに補間ブロックP[i]_2の終点が基礎ブロックB[i+1]の中点C[i+1]に合致するように、補間ブロックP[i]_2の時間軸上の位置が選定される。
【0041】
図10は、本形態に係る補間処理部42のブロック図である。図10に示すように、波形処理部54は、周波数特性が相違する複数の補間ブロックPb[i](Pb[i]_1,Pb[i]_2)を、平均部52が生成した補間ブロックPa[i]から生成する。波形処理部54としては例えば第2実施形態(図8)の構成が好適に採用される。さらに詳述すると、波形処理部54は、補間ブロックPa[i]の位相の回転の角度θを変化させることで2個の補間ブロックPb[i](Pb[i]_1,Pb[i]_2)を生成する。例えば、波形処理部54は、補間ブロックPa[i]の位相を角度θ1だけ回転させることで補間ブロックPb[i]_1を生成し、補間ブロックPa[i]の位相を角度θ2(θ2≠θ1)だけ回転させることで補間ブロックPb[i]_2を生成する。
【0042】
図10の窓掛部56は、波形処理部54による処理後の複数の補間ブロックPb[i]の各々に窓関数w2を乗算することで複数の補間ブロックPc[i](Pc[i]_1,Pc[i]_2)を生成する。振幅調整部58は、第1に、補間ブロックPc[i]_1を図9の補間ブロックP[i]_1として確定する。第2に、振幅調整部58は、図6に例示した処理を利用して補間ブロックPc[i]_2の振幅および時間長(サンプルの個数)を調整することで、{NR-N}個のサンプルで構成される補間ブロックP[i]_2を生成する。以上の手順で振幅調整部58が生成した複数の補間ブロックP[i](P[i]_1,P[i]_2)が、図9に例示したように波形合成部44による新規インパルス応答HNEWの生成に使用される。以上の形態においては、インパルス応答Hの基礎ブロックBb[i]および基礎ブロックBb[i+1]の間に複数の補間ブロックP[i]が配置されるから、残響時間の倍率Rを2倍以上に設定することが可能となる。
【0043】
なお、図9においては、基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に2個の補間ブロックP[i]を配置したが、倍率Rが3倍を上回る場合には3個以上の補間ブロックP[i]が配置される。例えば、倍率Rが3.5倍である場合、図11に示すように、各々が2N個のサンプルで構成される2個の補間ブロックP[i](P[i]_1,P[i]_2)と、{NR-2N}個のサンプルで構成される1個の補間ブロックP[i](P[i]_3)とが基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に配置される。すなわち、倍率Rの整数部rを利用して一般化すると、各々が2N個のサンプルで構成される(r-1)個の補間ブロックP[i](P[i]_1,……P[i]_r-1)と、{NR-(r-1)N}個のサンプルで構成される1個の補間ブロックP[i]_rとが基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との間に配置される。
【0044】
<D:変形例>
以上に例示した各形態には様々な変形が加えられる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の例示から2以上の態様を任意に選択して組合わせてもよい。
【0045】
(1)変形例1
窓関数w1を乗算する位置(時点)は適宜に変更される。例えば、図2の構成において、時間調整部36による調整後の各基礎ブロックBbに窓掛部34が窓関数w1を乗算する構成も採用される。図12に示すように、窓掛部34による窓関数w1の乗算後の基礎ブロックBbを補間処理部42が処理する構成も好適である。図12の構成においては補間処理部42の窓掛部56が省略される。また、以上の各形態においては、窓関数w2の乗算後の補間ブロックPc[i]の振幅を振幅調整部58が調整したが、基礎ブロックBb[i]と基礎ブロックBb[i+1]との時間差に応じて振幅が調整された窓関数w2を窓掛部56が補間ブロックPb[i]に乗算することで補間ブロックP[i]を生成する構成も好適である。
【0046】
(2)変形例2
窓関数w1や窓関数w2の内容は任意であり、公知の窓関数(例えばハミング窓や三角窓)が任意に採用される。もっとも、窓関数w1や窓関数w2の利用は本発明において必須の要件ではない。例えば、波形区分部32が区分した各基礎ブロックBaの間隔を時間調整部36が拡大し、各基礎ブロックBaの間隔に補間ブロックPを挿入することで波形合成部44が新規インパルス応答HNEWを生成する構成も採用される。したがって、各基礎ブロックBaの部分的な重複も本発明では必須ではない。もっとも、窓関数を使用しない構成(各基礎ブロックBaが重複しない構成)においては、各基礎ブロックBaと補間ブロックPとの境界で残響音が不連続となって音質が低下する場合がある。したがって、各基礎ブロックBaと補間ブロックPとを自然に連結するという観点からすれば、部分的に重複するように各基礎ブロックBaを設定したうえで窓関数w1や窓関数w2を利用する構成が重要であり、両端部に接近するほど関数値が減少する窓関数は格別に好適である。
【0047】
(3)変形例3
補間ブロックPを生成する方法は本発明において任意である。以上の形態においては基礎ブロックBa[i]と基礎ブロックBa[i+1]とを平均することで初期的な補間ブロックPa[i]を生成したが、基礎ブロックBa[i]と基礎ブロックBa[i+1]との加算(加重和を含む)を平均部52が補間ブロックPa[i]として算定する構成も採用される。また、補間ブロックPa[i]の算定の基礎は基礎ブロックBa[i]および基礎ブロックBa[i+1]に限定されない。例えば、ひとつの基礎ブロックBa[i](または基礎ブロックBa[i+1])を補間ブロックPa[i]として使用する構成や、相連続する3個以上の基礎ブロックBaを加算または平均することで補間ブロックPa[i]を算定する構成も採用される。もっとも、インパルス応答Hから抽出された基礎ブロックBaを補間ブロックPの生成に使用する構成は本発明において必須ではない。例えば、インパルス応答H(基礎ブロックBa)とは無関係に予め作成された補間ブロックPa(例えばインパルス応答Hに特性が類似する別のインパルス応答を区分したブロック)を補間ブロックP[i]の生成に使用した構成も採用される。
【0048】
また、図4および図10における波形処理部54や窓掛部56や振幅調整部58は補間処理部42から適宜に省略される。さらに、補間処理部42の各要素による処理の順番は変更される。例えば、窓掛部56による処理後の補間ブロックPbに対して波形処理部54による波形の変形が実行される。
【0049】
(4)変形例4
第3実施形態において補間処理部42が生成する複数の補間ブロックP[i](P[i]_1,P[i]_2,……)の周波数特性を相違させるための方法は、位相の回転の角度θを補間ブロックP[i]毎に変化させる方法に限定されない。例えば、図5に例示したように時間軸上で補間ブロックPaの波形を反転させることで奇数番目の補間ブロックPbが生成され、平均部52の生成した補間ブロックPaが偶数番目の補間ブロックPbとして使用される構成も採用される。もっとも、第3実施形態においては、補間処理部42が生成する複数の補間ブロックP[i](P[i]_1,P[i]_2,……)の周波数特性が共通する構成も採用される。
【0050】
(5)変形例5
以上の形態においてはインパルス応答加工部22と残響付与部24とを具備する残響付与装置100を例示したが、図1の残響付与装置100から残響付与部24を省略したインパルス応答加工装置(インパルス応答加工部22)としても本発明は成立する。インパルス応答加工装置が生成した新規インパルス応答HNEWは、例えば、可搬型の記録媒体や通信網を介して別個の残響付与装置100(残響付与部24)に提供されて残響音の生成に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る残響付与装置のブロック図である。
【図2】インパルス応答加工部のブロック図である。
【図3】インパルス応答加工部の動作を説明するための概念図である。
【図4】補間処理部のブロック図である。
【図5】波形処理部による処理を説明するための概念図である。
【図6】振幅調整部による処理を説明するための概念図である。
【図7】対比例におけるインパルス応答の加工を説明するための概念図である。
【図8】第2実施形態に係る波形処理部のブロック図である。
【図9】第3実施形態に係るインパルス応答加工部の動作を説明するための概念図である。
【図10】補間処理部のブロック図である。
【図11】第3実施形態に係るインパルス応答加工部の動作を説明するための概念図である。
【図12】変形例に係る補間処理部のブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
100……残響付与装置、12……演算処理装置、14……記憶装置、16……入力装置、22……インパルス応答加工部、24……残響付与部、32……波形区分部、34……窓掛部、36……時間調整部、42……補間処理部、44……波形合成部、52……平均部、54……波形処理部、56……窓掛部、58……振幅調整部、S……音響信号、SR……残響音信号、Ba(Ba[i]),Bb(Bb[i])……基礎ブロック、H……インパルス応答、HNEW……新規インパルス応答、P(P[i]),Pa(Pa[i]),Pb(Pb[i]),Pc(Pc[i])……補間ブロック、R……残響時間の倍率。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インパルス応答を時間軸上で複数の基礎ブロックに区分する波形区分手段と、
相前後する各基礎ブロックの時間差を拡大する時間調整手段と、
補間ブロックを生成する補間処理手段と、
前記時間調整手段による調整後の各基礎ブロックの間に前記補間ブロックを配置することで新規インパルス応答を生成する波形合成手段と
を具備するインパルス応答加工装置。
【請求項2】
前記補間処理手段は、相前後する各基礎ブロックを平均または加算することで補間ブロックを算定する平均手段を含み、
前記波形合成手段は、前記平均手段による算定後の補間ブロックを、前記平均手段が当該補間ブロックの算定に使用した各基礎ブロックの間に配置することで前記新規インパルス応答を生成する
請求項1のインパルス応答加工装置。
【請求項3】
前記補間処理手段は、補間ブロックが表す波形を変形させる波形処理手段を含み、
前記波形合成手段は、前記波形処理手段による処理後の補間ブロックを使用して前記新規インパルス応答を生成する
請求項1または請求項2のインパルス応答加工装置。
【請求項4】
前記波形処理手段は、補間ブロックが表す波形における時間軸上の前後を逆転させる
請求項3のインパルス応答加工装置。
【請求項5】
前記波形処理手段は、補間ブロックが表す波形の周波数領域における位相を回転させる
請求項3のインパルス応答加工装置。
【請求項6】
前記補間処理手段は、前記時間調整手段による調整後の各基礎ブロックの時間差が大きいほど当該各基礎ブロック間に配置される補間ブロックの振幅が増加するように各補間ブロックの振幅を調整する振幅調整手段を含み、
前記波形合成手段は、前記振幅調整手段による調整後の補間ブロックを使用して前記新規インパルス応答を生成する
請求項1から請求項5の何れかのインパルス応答加工装置。
【請求項7】
両端部に近いほど関数値が減少する窓関数を各基礎ブロックに乗算する第1窓掛手段を具備し、
前記波形区分手段は、相前後する各基礎ブロックが部分的に重複するように前記インパルス応答を区分し、
前記波形合成手段は、前記第1窓掛手段による処理後の各基礎ブロックを使用して前記新規インパルス応答を生成する
請求項1から請求項6の何れかのインパルス応答加工装置。
【請求項8】
前記補間処理手段は、両端部に接近するほど関数値が減少する窓関数を各補間ブロックに乗算する第2窓掛手段を含み、
前記波形合成手段は、前記第2窓掛手段による処理後の各補間ブロックを使用して前記新規インパルス応答を生成する
請求項7のインパルス応答加工装置。
【請求項9】
前記波形合成手段は、相前後する前記各基礎ブロックの間に複数の補間ブロックを配置することで前記新規インパルス応答を生成する
請求項1から請求項8の何れかのインパルス応答加工装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れかのインパルス応答加工装置と、
前記インパルス応答加工装置が生成した新規インパルス応答と音響信号との畳込み演算を実行する残響付与手段と
を具備する残響付与装置。
【請求項11】
インパルス応答を時間軸上で複数の基礎ブロックに区分する波形区分処理と、
相前後する各基礎ブロックの時間差を拡大する時間調整処理と、
補間ブロックを生成する補間処理処理と、
前記時間調整処理の実行後の各基礎ブロックの間に前記補間ブロックを配置することで新規インパルス応答を生成する波形合成処理と
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項1】
インパルス応答を時間軸上で複数の基礎ブロックに区分する波形区分手段と、
相前後する各基礎ブロックの時間差を拡大する時間調整手段と、
補間ブロックを生成する補間処理手段と、
前記時間調整手段による調整後の各基礎ブロックの間に前記補間ブロックを配置することで新規インパルス応答を生成する波形合成手段と
を具備するインパルス応答加工装置。
【請求項2】
前記補間処理手段は、相前後する各基礎ブロックを平均または加算することで補間ブロックを算定する平均手段を含み、
前記波形合成手段は、前記平均手段による算定後の補間ブロックを、前記平均手段が当該補間ブロックの算定に使用した各基礎ブロックの間に配置することで前記新規インパルス応答を生成する
請求項1のインパルス応答加工装置。
【請求項3】
前記補間処理手段は、補間ブロックが表す波形を変形させる波形処理手段を含み、
前記波形合成手段は、前記波形処理手段による処理後の補間ブロックを使用して前記新規インパルス応答を生成する
請求項1または請求項2のインパルス応答加工装置。
【請求項4】
前記波形処理手段は、補間ブロックが表す波形における時間軸上の前後を逆転させる
請求項3のインパルス応答加工装置。
【請求項5】
前記波形処理手段は、補間ブロックが表す波形の周波数領域における位相を回転させる
請求項3のインパルス応答加工装置。
【請求項6】
前記補間処理手段は、前記時間調整手段による調整後の各基礎ブロックの時間差が大きいほど当該各基礎ブロック間に配置される補間ブロックの振幅が増加するように各補間ブロックの振幅を調整する振幅調整手段を含み、
前記波形合成手段は、前記振幅調整手段による調整後の補間ブロックを使用して前記新規インパルス応答を生成する
請求項1から請求項5の何れかのインパルス応答加工装置。
【請求項7】
両端部に近いほど関数値が減少する窓関数を各基礎ブロックに乗算する第1窓掛手段を具備し、
前記波形区分手段は、相前後する各基礎ブロックが部分的に重複するように前記インパルス応答を区分し、
前記波形合成手段は、前記第1窓掛手段による処理後の各基礎ブロックを使用して前記新規インパルス応答を生成する
請求項1から請求項6の何れかのインパルス応答加工装置。
【請求項8】
前記補間処理手段は、両端部に接近するほど関数値が減少する窓関数を各補間ブロックに乗算する第2窓掛手段を含み、
前記波形合成手段は、前記第2窓掛手段による処理後の各補間ブロックを使用して前記新規インパルス応答を生成する
請求項7のインパルス応答加工装置。
【請求項9】
前記波形合成手段は、相前後する前記各基礎ブロックの間に複数の補間ブロックを配置することで前記新規インパルス応答を生成する
請求項1から請求項8の何れかのインパルス応答加工装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れかのインパルス応答加工装置と、
前記インパルス応答加工装置が生成した新規インパルス応答と音響信号との畳込み演算を実行する残響付与手段と
を具備する残響付与装置。
【請求項11】
インパルス応答を時間軸上で複数の基礎ブロックに区分する波形区分処理と、
相前後する各基礎ブロックの時間差を拡大する時間調整処理と、
補間ブロックを生成する補間処理処理と、
前記時間調整処理の実行後の各基礎ブロックの間に前記補間ブロックを配置することで新規インパルス応答を生成する波形合成処理と
をコンピュータに実行させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−288697(P2009−288697A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143509(P2008−143509)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]