説明

インピーダンス変換回路

【課題】 AM帯とFM帯における通過損失を小さくすると共に、FM帯において良好なVSWRを得る。
【解決手段】 インピーダンス変換トランスTの端子1に、FM帯において共振するコイルL1とコンデンサC1の直列共振回路を接続する。これにより、端子1はAM帯においてアースされていない状態となる。このため、AM帯の信号はインピーダンス変換トランスTを通過して端子3から出力され、コンデンサC3を介してポートPT2から出力される。また、端子1はFM帯においてアースされた状態となる。このため、FM帯の信号はインピーダンス変換トランスTでインピーダンス変換されて端子3から出力され、コンデンサC3を介してポートPT2から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、50Ωと75Ωの相互間のインピーダンス変換を行うことができるインピーダンス変換回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
欧州のカーラジオ及びアンテナは、FM帯におけるインピーダンスを主に50Ωで規定しており、日本国内のカーラジオ及びアンテナは、FM帯におけるインピーダンスを主に75Ωで規定している。この場合、アンテナおよびカーラジオを共通して使用する場合には、50Ωインピーダンスのカーラジオと75Ωインピーダンスのアンテナとの組み合わせ、もしくは、75Ωインピーダンスのカーラジオと50Ωインピーダンスのアンテナとの組み合わせで使用することになる。しかし、インピーダンスが異なったカーラジオとアンテナの組み合わせになることから、50Ω→75Ω、あるいは、75Ω→50Ωへのインピーダンス変換をして整合を取ることが必要になる。
【0003】
インピーダンス変換をする手段としてインピーダンス変換トランスが従来から知られており、インピーダンス変換トランスTの構成の一例を図14に示す。
図14に示すインピーダンス変換トランスTは、コアに線材を巻くことにより構成されており、巻き線の中途に中間タップが設けられている。図14において巻線の始端が端子[1]とされ、中間タップが端子[2]とされ、終端が端子[3]とされている。端子1−2間の巻き線数を5ターン、端子2−3間の巻き線数を1ターンとした時に、端子1−2間のインピーダンスが50Ωとなり、端子1−3間のインピーダンスが75Ωとなる。そこで、このインピーダンス変換トランスTの端子1−2に50Ωインピーダンスのアンテナを接続すると共に、端子1−3に75Ωインピーダンスのカーラジオを接続することにより、75Ωインピーダンスのカーラジオと50Ωインピーダンスのアンテナとの組み合わせで使用することができる。また、インピーダンス変換トランスTの端子1−3に75Ωインピーダンスのアンテナを接続すると共に、端子1−2に50Ωインピーダンスのカーラジオを接続することにより、50Ωインピーダンスのカーラジオと75Ωインピーダンスのアンテナとの組み合わせで使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−186029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
50Ω→75Ωあるいは75Ω→50Ωに変換する際には、カーラジオが受信できるAM帯およびFM帯において低損失でインピーダンス変換する事が必要となる。ここで、図14に示すインピーダンス変換トランスTの挿入損失(Loss)の周波数特性を図15に示す。図15を参照すると、76MHz〜108MHzのFM帯においては約−0.5dB以下の低損失とされているが、0.5MHz〜23.1MHzのAM帯においては−4dB以上の損失となっていることが分かる。また、アンテナには増幅器が組み込まれてアンテナ用電源を必要とするアンテナが多くされているが、欧州のカーラジオの多くはRF信号ラインにアンテナ用電源を重畳する設定が多くされ、日本国内のカーラジオの多くはアンテナ用電源をRF信号ラインとは別のラインでアンテナ用電源を供給する設定とされている。
【0006】
これらを解決する従来考えられているインピーダンス変換回路の構成を示す回路図を図5に示す。
図5に示すインピーダンス変換回路100においては、図14に示すインピーダンス変換トランスTを用いている。第1ポートPT1のホット側(+)は、コイルL13を介してコンデンサC12の一端と、コイルL15の一端と、コイルL14の一端に接続されている。コンデンサC12の他端はアースされており、コイルL15の他端はポートPT3に接続されており、コイルL14の他端はコンデンサC13の一端に接続されている。コンデンサC13の他端はポートPT2のホット側(+)に接続されている。コイルL13とコイルL14はAM帯の信号は通過させるがFM帯の信号は阻止するチョークコイルとされている。また、第1ポートPT1のホット側(+)は、コイルL10とコンデンサC10の直列回路を介してインピーダンス変換トランスTの端子2に接続されている。さらに、この端子2とアース間にコイルL11が接続されている。このコイルL10,コンデンサC10,コイルL11によりフィルタが形成され、このフィルタはFM帯の信号は通過させるがAM帯の信号の通過を阻止している。
【0007】
インピーダンス変換トランスTの端子1はアースされており、端子3はコイルL12の一端とコンデンサC11の一端に接続されている。コイルL12の他端はアースされており、コンデンサC11の他端はポートPT2に接続されている。このコイルL12,コンデンサC11によりフィルタが形成され、このフィルタはFM帯の信号は通過させるがAM帯の信号の通過を阻止している。また、コイルL15はAM帯の信号の伝達を阻止するチョークコイルであり、ポートPT3とアース間に接続されているコンデンサC14はバイパスコンデンサとされている。ポートPT1とポートPT2のコールド側(−)はアースされている。
【0008】
上記したインピーダンス変換回路100において、例えば、ポートPT1に入力されたAM帯の信号はコイルL13とコイルL14とコンデンサC13の直列回路を通過してポートPT2から出力される。なお、AM帯においてはインピーダンス変換はされていない。また、ポートPT1に入力された50ΩのアンテナからのFM帯の信号は、コイルL10とコンデンサC10を介してインピーダンス変換トランスTの端子2に入力され、端子3から出力される。この端子1−3間のインピーダンスは75Ωであり、端子1−2間のインピーダンスは50Ωである。端子3から出力された50Ω→75Ωにインピーダンス変換されたFM帯の信号はコンデンサC11を介してポート2から出力される。このように、インピーダンス変換回路100のポートPT1に50Ωのアンテナを接続すると共に、ポートPT2に75Ωのカーラジオを接続することにより、インピーダンス整合されたFM帯の信号とAM帯の信号を、50Ωのアンテナから75Ωのカーラジオに供給することができる。この場合、ポートPT3から供給されたアンテナ用電源はコイルL15およびコイルL13を介してポートPT1から出力されて、RF信号ラインにアンテナ用電源が重畳される50Ωのアンテナに供給されるようになる。
【0009】
また、上記したインピーダンス変換回路100において、例えば、ポートPT2に入力されたAM帯の信号はコンデンサC13とコイルL14とコイルL13との直列回路を通過してポートPT1から出力される。また、ポートPT2に入力された75ΩのアンテナからのFM帯の信号は、コンデンサC11を介してインピーダンス変換トランスTの端子3に入力され、端子2から出力される。この端子1−3間のインピーダンスは75Ωであり、端子1−2間のインピーダンスは50Ωである。端子2から出力された75Ω→50Ωにインピーダンス変換されたFM帯の信号はコンデンサC10とコイルL10とを介してポート1から出力される。このように、インピーダンス変換回路100のポートPT2に75Ωのアンテナを接続すると共に、ポートPT1に50Ωのカーラジオを接続することにより、インピーダンス整合されたFM帯の信号とAM帯の信号を、75Ωのアンテナから50Ωのカーラジオに供給することができる。この場合、ポートPT1から供給されたアンテナ用電源はコイルL13およびコイルL15を介してポートPT3から出力されて、RF信号ラインと別のラインでアンテナ用電源が供給される75Ωのアンテナに供給されるようになる。
【0010】
次に、インピーダンス変換回路100の電気的特性を図6ないし図8に示す。図6は、インピーダンス変換回路100の76MHz〜108MHzのFM帯における電圧定在波比(VSWR)の周波数特性を示す図である。S11はPT1におけるVSWR特性であり、S22はPT2におけるVSWR特性である。図6のVSWR特性を参照すると、PT1におけるVSWRは76MHzにおいて約2.3、92MHzにおいて約2.4、108MHzにおいて約2.4の全帯域においてほぼ一定のVSWRが得られている。また、PT2におけるVSWRは76MHzにおいて約1.9、92MHzにおいて約2.4、108MHzにおいて約2.3の76MHz近辺において良好となるが、全帯域においてほぼ一定のVSWRが得られている。このように、インピーダンス変換回路100においてはFM帯において1.5以下の良好なVSWR特性が得られていない。
【0011】
また、図7はインピーダンス変換回路100の76MHz〜108MHzのFM帯における通過損失の周波数特性を示す図である。S21はインピーダンスを50Ωから75Ωへ変換(PT1→PT2の通過損失)する場合の通過損失特性であり、S12はインピーダンスを75Ωから50Ωへ変換(PT2→PT1の通過損失)する場合の通過損失特性である。ただし、S21およびS12を測定する場合の入出力のインピーダンスを等しくして測定していることから図13に示すようにインピーダンス変換回路aとインピーダンス変換回路bをインピーダンス変換回路100で置き換えて2台従属に接続することにより、第1端子P1と第2端子P2のインピーダンスを50Ωあるいは75Ωとして測定している。このため、通過損失は2台分の通過損失とされている。
図7を参照すると、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失は76MHzにおいて約−1.9dB、92MHzにおいて約−1.7dB、108MHzにおいて約−1.5dBの周波数が高くなるにつれて低損失となる通過損失特性が得られている。また、75Ωから50Ωへ変換する場合の通過損失は、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失とほぼ同様の通過損失特性となる。このように、インピーダンス変換回路100においてはFM帯において−0.5dB以下の良好な通過損失特性が得られていない。
【0012】
さらに、図8はインピーダンス変換回路100の通過損失の0.5MHz〜23.1MHzのAM帯における周波数特性を示す図である。S21はインピーダンスを50Ωから75Ωへ変換(PT1→PT2の通過損失)する場合の通過損失特性であり、S12はインピーダンスを75Ωから50Ωへ変換(PT2→PT1の通過損失)する場合の通過損失特性である。ただし、上記図13に示すようにインピーダンス変換回路100を2台従属に接続することにより、第1端子P1と第2端子P2のインピーダンスを50Ωあるいは75Ωとして測定している。このため、通過損失は2台分の通過損失とされている。
図8を参照すると、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失は0.5MHzにおいて約−0.8dBの低損失が得られているが、11.8MHzにおいて急激に増加して約−5.5dBの通過損失となり、23.1MHzにおいて約−7.4dBの周波数が高くなるにつれて損失が増加する通過損失特性が得られている。また、75Ωから50Ωへ変換する場合の通過損失は、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失とほぼ同様の通過損失特性となる。このように、インピーダンス変換回路100においてはAM帯において−3dB以下の良好な通過損失特性が得られていない。
【0013】
次に、従来考えられているインピーダンス変換回路の他の構成を示す回路図を図9に示す。
図9に示すインピーダンス変換回路200においても、図14に示すインピーダンス変換トランスTを用いている。第1ポートPT1のホット側(+)は、コイルL22を介してコンデンサC22の一端と、コイルL23の一端と、コイルL24の一端に接続されている。コンデンサC22の他端はアースされており、コイルL24の他端はポートPT3に接続されており、コイルL23の他端はコンデンサC23の一端に接続されている。コンデンサC23の他端はポートPT2のホット側(+)に接続されている。コイルL22とコイルL23はAM帯の信号は通過させるがFM帯の信号の通過を阻止するチョークコイルとされている。また、第1ポートPT1のホット側(+)は、コンデンサC20を介してコイルL20と抵抗R20の並列回路の一端に接続され、この並列回路の他端はインピーダンス変換トランスTの端子2に接続されている。このコイルL20とコンデンサC20の直列共振回路はFM帯のほぼ中心周波数(93MHz)に共振しており、Qダンプ抵抗である抵抗R20により共振特性がブロード化されている。この直列共振回路により、FM帯の信号は通過させるがAM帯の信号の通過は阻止されている。
【0014】
インピーダンス変換トランスTの端子1はアースされており、端子3はコイルL21と抵抗R21の並列回路の一端に接続されている。この並列回路の他端はコンデンサC21を介してポートPT2に接続されている。このコイルL21とコンデンサC21の直列共振回路はFM帯のほぼ中心周波数(93MHz)に共振しており、Qダンプ抵抗である抵抗R21により共振特性がブロード化されている。この直列共振回路により、FM帯の信号は通過させるがAM帯の信号の通過は阻止されている。また、コイルL24はAM帯の信号の伝達を阻止するチョークコイルであり、ポートPT3とアース間に接続されているコンデンサC24はバイパスコンデンサとされている。ポートPT1とポートPT2のコールド側(−)はアースされている。
【0015】
上記したインピーダンス変換回路200において、例えば、ポートPT1に入力されたAM帯の信号はコイルL22とコイルL23とコンデンサC23の直列回路を通過してポートPT2から出力される。このように、AM帯においてはインピーダンス変換はされていない。また、ポートPT1に入力された50ΩのアンテナからのFM帯の信号は、コンデンサC20とコイルL20と抵抗R20の並列回路とを介してインピーダンス変換トランスTの端子2に入力され、端子3から出力される。この端子1−3間のインピーダンスは75Ωであり、端子1−2のインピーダンスは50Ωである。端子3から出力された50Ω→75Ωにインピーダンス変換されたFM帯の信号はコイルL21と抵抗R21の並列回路とコンデンサC21との直列回路を介してポート2から出力される。このように、インピーダンス変換回路200のポートPT1に50Ωのアンテナを接続すると共に、ポートPT2に75Ωのカーラジオを接続することにより、インピーダンス整合されたFM帯の信号とAM帯の信号を、50Ωのアンテナから75Ωのカーラジオに供給することができる。この場合、ポートPT3から供給されたアンテナ用電源はコイルL24およびコイルL22を介してポートPT1から出力されて、RF信号ラインにアンテナ用電源が重畳される50Ωのアンテナに供給されるようになる。
【0016】
また、上記したインピーダンス変換回路200において、例えば、ポートPT2に入力されたAM帯の信号はコンデンサC23とコイルL23とコイルL22との直列回路を通過してポートPT1から出力される。また、ポートPT2に入力された75ΩのアンテナからのFM帯の信号は、コンデンサC21とコイルL21と抵抗R21の並列回路とを介してインピーダンス変換トランスTの端子3に入力され、端子2から出力される。この端子1−3間のインピーダンスは75Ωであり、端子1−2間のインピーダンスは50Ωである。端子2から出力された75Ω→50Ωにインピーダンス変換されたFM帯の信号はコイルL20と抵抗R20の並列回路とコンデンサC20との直列回路を介してポート1から出力される。このように、インピーダンス変換回路200のポートPT2に75Ωのアンテナを接続すると共に、ポートPT2に50Ωのカーラジオを接続することにより、インピーダンス整合されたFM帯の信号とAM帯の信号を、75Ωのアンテナから50Ωのカーラジオに供給することができる。この場合、ポートPT1から供給されたアンテナ用電源はコイルL22およびコイルL24を介してポートPT3から出力されて、RF信号ラインと別のラインでアンテナ用電源が供給される75Ωのアンテナに供給されるようになる。
【0017】
次に、インピーダンス変換回路200の電気的特性を図10ないし図12に示す。図10は、インピーダンス変換回路200の電圧定在波比(VSWR)の76MHz〜108MHzのFM帯における周波数特性を示す図である。S11はPT1におけるVSWR特性であり、S22はPT2におけるVSWR特性である。図10のVSWR特性を参照すると、PT1におけるVSWRは76MHzにおいて約2.0が得られ、約82MHzにおいてピークの約1.2が得られている。約82MHzより周波数が高くなるとVSWRは悪化していき、92MHzにおいて約2.3、108MHzにおいて6以上のVSWRとなる。また、PT2におけるVSWRも同じ傾向を示しており、76MHzにおいて約2.0が得られ、約82MHzにおいてピークの約1.3が得られている。約82MHzより周波数が高くなるとVSWRは悪化していき、92MHzにおいて約2.3、108MHzにおいて約5.7のVSWRとなる。このように、インピーダンス変換回路200においてはFM帯において1.5以下の良好なVSWR特性が得られる帯域が狭くなっている。
【0018】
また、図11はインピーダンス変換回路200の通過損失の76MHz〜108MHzのFM帯における周波数特性を示す図である。S21はインピーダンスを50Ωから75Ωへ変換(PT1→PT2の通過損失)する場合の通過損失特性であり、S12はインピーダンスを75Ωから50Ωへ変換(PT2→PT1の通過損失)する場合の通過損失特性である。ただし、上記図13に示すようにインピーダンス変換回路200を2台従属に接続することにより、第1端子P1と第2端子P2のインピーダンスを50Ωあるいは75Ωとして測定している。このため、通過損失は2台分の通過損失とされている。
図11を参照すると、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失は76MHzにおいて約−2.1dBとされ、約82MHzにおいてピークの約−1.7dBが得られている。約82MHzより周波数が高くなると通過損失が悪化していき、92MHzにおいて約−2.6dB、108MHzにおいて−5dB以上の通過損失となる。また、75Ωから50Ωへ変換する場合の通過損失は、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失とほぼ同様の通過損失特性となる。このように、インピーダンス変換回路200においてはFM帯において−1.7dB以上の通過損失とされて、−0.5dB以下の良好な通過損失特性が得られていない。
【0019】
さらに、図12はインピーダンス変換回路200の通過損失の0.5MHz〜23.1MHzのAM帯における周波数特性を示す図である。S21はインピーダンスを50Ωから75Ωへ変換(PT1→PT2の通過損失)する場合の通過損失特性であり、S12はインピーダンスを75Ωから50Ωへ変換(PT2→PT1の通過損失)する場合の通過損失特性である。ただし、上記図13に示すようにインピーダンス変換回路200を2台従属に接続することにより、第1端子P1と第2端子P2のインピーダンスを50Ωあるいは75Ωとして測定している。このため、通過損失は2台分の通過損失とされている。
図12を参照すると、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失は0.5MHzにおいて約−8.8dBの大きな通過損失となるが、約2.8MHzにおいてピークの約−0.8dBが得られている。約2.8MHzより周波数が高くなると、通過損失が悪化していき、11.8MHzにおいて約−4.9dB、23.1MHzにおいて−10dB以上の悪化した通過損失となる。また、75Ωから50Ωへ変換する場合の通過損失は、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失とほぼ同様の通過損失特性となる。このように、インピーダンス変換回路200においてはAM帯において−3dB以下の良好な通過損失が得られる帯域が狭くなっている。
【0020】
上記したように従来のインピーダンス変換回路では、AM帯とFM帯における通過損失を小さくすることができないと共に、FM帯において良好なVSWRが得られないと云う問題点があった。
そこで、本発明はAM帯とFM帯における通過損失を小さくすることができると共に、FM帯において良好なVSWRが得られるインピーダンス変換回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明は、巻線の始端の第1端子と、前記巻線の中間タップの第2端子と、前記巻線の終端の第3端子とを有し、前記第1端子と前記第2端子間の第1インピーダンスと、前記第1端子と前記第3端子間の前記第1インピーダンスより大きい第2インピーダンスとの間でインピーダンス変換を行えるインピーダンス変換トランスと、前記インピーダンス変換トランスの前記第1端子とアースとの間に接続されたFM帯のほぼ中心周波数に共振する直列共振回路と、前記インピーダンス変換トランスの前記第2端子に接続された第1ポートと、前記インピーダンス変換トランスの前記第3端子がFM帯およびAM帯の信号を通過できるコンデンサを介して接続された第2ポートとを備え、前記第1ポートに前記第1インピーダンスの第1デバイスが接続され、前記第2ポートに前記第2インピーダンスの第2デバイスが接続されて、前記第1デバイスと前記第2デバイス間のインピーダンス変換を行うようにしたことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、インピーダンス変換トランスの第1端子とアースとの間にFM帯の約中心周波数に共振する直列共振回路を接続することにより、AM帯とFM帯における通過損失を小さくすることができると共に、FM帯において良好なVSWRが得られるインピーダンス変換回路とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例にかかるインピーダンス変換回路の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例にかかるインピーダンス変換回路のVSWRの周波数特性を示す図である。
【図3】本発明の実施例にかかるインピーダンス変換回路のFM帯における通過特性を示す図である。
【図4】本発明の実施例にかかるインピーダンス変換回路のAM帯における通過特性を示す図である。
【図5】従来従来考えられているインピーダンス変換回路の構成を示す回路図である。
【図6】図5に示すインピーダンス変換回路のVSWRの周波数特性を示す図である。
【図7】図5に示すインピーダンス変換回路のFM帯における通過特性を示す図である。
【図8】図5に示すインピーダンス変換回路のAM帯における通過特性を示す図である。
【図9】従来考えられているインピーダンス変換回路の他の構成を示す回路図である。
【図10】図9に示すインピーダンス変換回路のVSWRの周波数特性を示す図である。
【図11】図9に示すインピーダンス変換回路のFM帯における通過特性を示す図である。
【図12】図9に示すインピーダンス変換回路のAM帯における通過特性を示す図である。
【図13】インピーダンス変換回路の通過特性を測定する場合の構成を示す図である。
【図14】インピーダンス変換トランスの構成の一例を示す回路図である。
【図15】インピーダンス変換トランスの挿入損失の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施例にかかるインピーダンス変換回路の構成を示す回路図を図1に示す。
図1に示す本発明にかかるインピーダンス変換回路1においては、図14に示すインピーダンス変換トランスTを用いている。第1ポートPT1のホット側(+)は、インピーダンス変換トランスTの端子2に直接接続されている。インピーダンス変換トランスTの端子1はコイルL1とコンデンサC2との直列回路を介してアースに接続されている。この直列回路はFM帯のほぼ中心周波数である約93MHzに共振している。インピーダンス変換トランスTの端子3はコンデンサC3を介してポートPT2のホット側(+)に接続されている。コンデンサC3は、AM帯およびFM帯の信号を通過させるに十分な値の容量値とされ、例えば0.01μFとされている。なお、インピーダンス変換トランスTの端子1−3間のインピーダンスは75Ωであり、端子1−2間のインピーダンスは50Ωである。
【0025】
インピーダンス変換トランスTの端子3はコイルL2とコイルL3の直列回路を介してポートPT3に接続されている。コイルL2はFM帯の信号の通過を阻止するチョークコイルであり、コイルL3はAM帯の信号の通過を阻止するチョークコイルである。このように、FM帯のチョークコイルとAM帯のチョークコイルとを直列に接続しているのは、コイルには浮遊容量があって自己共振周波数を有しており、AM帯用のチョークコイルによりFM帯の信号を阻止することが不十分になることがあるからである。また、ポートPT3とアース間に接続されているコンデンサC2はバイパスコンデンサとされており、容量値は例えば0.01μFとされている。ポートPT1とポートPT2のコールド側(−)はアースされており、ポートPT3は直流電源用のポートとされている。
【0026】
上記した本発明にかかるインピーダンス変換回路1において、例えば、ポートPT1に入力されたAM帯の信号はインピーダンス変換トランスTの端子2に供給される。この場合、インピーダンス変換トランスTの端子1に接続されている直列共振回路はFM帯において共振することから、端子1はAM帯においてハイインピーダンスとされてアースされていない状態となる。このため、AM帯の信号はインピーダンス変換トランスTによりインピーダンス変換されることなく、インピーダンス変換トランスTを通過して端子3から出力され、コンデンサC3を介してポートPT2から出力される。このように、AM帯の信号はインピーダンス変換トランスTとコンデンサC3を経由して、インピーダンス変換されることなくポートPT2から出力される。
【0027】
また、ポートPT1に入力された50ΩのアンテナからのFM帯の信号も、インピーダンス変換トランスTの端子2に入力される。この場合、インピーダンス変換トランスTの端子1に接続されている直列共振回路はFM帯において共振してローインピーダンスとなることから、端子1はFM帯において電気的にアースされている状態となる。このため、FM帯の信号はインピーダンス変換トランスTでインピーダンス変換されて端子3から出力される。インピーダンス変換トランスTの端子1−2間のインピーダンスは50Ωであり、端子1−3間のインピーダンスは75Ωであり、端子3から出力された50Ω→75Ωにインピーダンス変換されたFM帯の信号は、コンデンサC3を介してポートPT2から出力される。このように、インピーダンス変換回路1のポートPT1に50Ωのアンテナを接続すると共に、ポートPT2に75Ωのカーラジオを接続することにより、インピーダンス整合されたFM帯の信号とAM帯の信号を、50Ωのアンテナから75Ωのカーラジオに供給することができる。この場合、ポートPT3から供給されたアンテナ用電源は、コイルL3およびコイルL2を介すると共に、インピーダンス変換トランスTの端子3−端子1を経由してポートPT1から出力され、RF信号ラインにアンテナ用電源が重畳されるポートPT1に接続されている50Ωのアンテナに供給されるようになる。
【0028】
また、上記したインピーダンス変換回路1において、例えば、ポートPT2に入力されたAM帯の信号はコンデンサC3を介してインピーダンス変換トランスTの端子3に供給される。この場合、上記したように端子1はAM帯においてハイインピーダンスとされてアースされていない状態となる。このため、AM帯の信号はインピーダンス変換トランスTを通過して端子2から出力され、ポートPT1から出力される。なお、AM帯の信号はインピーダンス変換トランスTを通過するが、インピーダンス変換はされていない。
【0029】
また、ポートPT2に入力された50ΩのアンテナからのFM帯の信号も、コンデンサC3を介してインピーダンス変換トランスTの端子3に入力される。この場合、インピーダンス変換トランスTの端子1はFM帯において電気的にアースされている状態となる。このため、FM帯の信号はインピーダンス変換トランスTでインピーダンス変換されて端子1から出力される。インピーダンス変換トランスTの端子1−3間のインピーダンスは75Ωであり、端子1−2間のインピーダンスは50Ωであり、端子1から出力された75Ω→50Ωにインピーダンス変換されたFM帯の信号は、ポートPT1から出力される。このように、インピーダンス変換回路1のポートPT2に75Ωのアンテナを接続すると共に、ポートPT1に50Ωのカーラジオを接続することにより、インピーダンス整合されたFM帯の信号とAM帯の信号を、75Ωのアンテナから50Ωのカーラジオに供給することができる。この場合、ポートPT1から供給されたアンテナ用電源はインピーダンス変換トランスTの端子2−端子3を経由すると共に、コイルL2およびコイルL3を介してポートPT3から出力され、RF信号ラインと別のラインでアンテナ用電源が供給される75Ωのアンテナに供給されるようになる。
【0030】
次に、本発明にかかるインピーダンス変換回路1の電気的特性を図2ないし図4に示す。この場合、コイルL1は約270nHとされ、コンデンサC1は約13pFとされ、コンデンサC2、C3は約0.01μFとされ、コイルL2は約1.5μHとされ、コイルL3は約1mHとされている。
図2は、インピーダンス変換回路1の76MHz〜108MHzのFM帯における電圧定在波比(VSWR)の周波数特性を示す図である。S11はPT1におけるVSWR特性であり、S22はPT2におけるVSWR特性である。図2のVSWR特性を参照すると、PT1におけるVSWRは76MHzにおいて約1.2、92MHzにおいても約1.2、108MHzにおいて約1.3の全帯域においてほぼ一定のきわめて良好なVSWRが得られている。また、PT2におけるVSWRは76MHzにおいて約1.2、92MHzにおいて約1.1、108MHzにおいても約1.1の全帯域においてほぼ一定のきわめて良好なVSWRが得られている。このように、本発明にかかるインピーダンス変換回路1においては、FM帯において1.3以下の良好なVSWR特性が得られるようになる。
【0031】
また、図3はインピーダンス変換回路1の76MHz〜108MHzのFM帯における通過損失の周波数特性を示す図である。S21はインピーダンスを50Ωから75Ωへ変換(PT1→PT2の通過損失)する場合の通過損失特性であり、S12はインピーダンスを75Ωから50Ωへ変換(PT2→PT1の通過損失)する場合の通過損失特性である。ただし、S21およびS12を測定する場合の入出力のインピーダンスを等しくして測定していることから図13に示すようにインピーダンス変換回路aとインピーダンス変換回路bをインピーダンス変換回路1で置き換えて2台従属に接続することにより、第1端子P1と第2端子P2のインピーダンスを50Ωあるいは75Ωとして測定している。このため、通過損失は2台分の通過損失とされている。
図3を参照すると、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失は76MHzにおいて約−0.4dB、92MHzにおいても約−0.4dB、108MHzにおいても約−0.4dBの全帯域においてほぼ一定のきわめて低損失の通過損失特性が得られている。また、75Ωから50Ωへ変換する場合の通過損失は、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失とほぼ同様の通過損失特性となり、全帯域においても約−0.4dB以下のきわめて低損失の通過損失特性が得られている。このように、本発明にかかるインピーダンス変換回路1においては、FM帯において−0.4dB以下の良好な通過損失特性が得られるようになる。
【0032】
さらに、図4はインピーダンス変換回路1の0.5MHz〜23.1MHzのAM帯における通過損失の周波数特性を示す図である。S21はインピーダンスを50Ωから75Ωへ変換(PT1→PT2の通過損失)する場合の通過損失特性であり、S12はインピーダンスを75Ωから50Ωへ変換(PT2→PT1の通過損失)する場合の通過損失特性である。図4を参照すると、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失は0.5MHzにおいて約−0.2dBのきわめて低い通過損失が得られており、11.8MHzにおいては若干増加して約−0.7dBの低い通過損失が得られ、23.1MHzにおいて約−2.8dBの低い通過損失が得られている。このように、AM帯の全帯域において−3dB以下の良好な通過損失特性が得られている。また、75Ωから50Ωへ変換する場合の通過損失は、50Ωから75Ωへ変換する場合の通過損失とほぼ同様の通過損失特性となり、AM帯の全帯域において−3dB以下の良好な通過損失特性が得られている。このように、本発明にかかるインピーダンス変換回路1においてはAM帯において−3dB以下の良好な通過損失特性が得られるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明した本発明にかかるインピーダンス変換回路は、FM帯におけるVSWR特性を良好にすることができると共に、AM帯とFM帯における通過損失特性を良好にすることができる。このように、本発明にかかるインピーダンス変換回路は、FM帯においてお互いの信号に対してアイソレーションを考慮したインピーダンス変換回路とすることができる。また、本発明にかかるインピーダンス変換回路は、アンテナとカーラジオに限るものではなく、他のインピーダンスの異なるデバイス間におけるインピーダンス変換回路に適用することができる。
なお、インピーダンス変換トランスの巻き数を所定数に設定することにより、巻き数に応じた任意のインピーダンス間のインピーダンス変換を行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0034】
1 インピーダンス変換回路、100 インピーダンス変換回路、200 インピーダンス変換回路、PT1 ポート、PT2 ポート、PT3 ポート、T インピーダンス変換トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線の始端の第1端子と、前記巻線の中間タップの第2端子と、前記巻線の終端の第3端子とを有し、前記第1端子と前記第2端子間の第1インピーダンスと、前記第1端子と前記第3端子間の前記第1インピーダンスより大きい第2インピーダンスとの間でインピーダンス変換を行えるインピーダンス変換トランスと、
前記インピーダンス変換トランスの前記第1端子とアースとの間に接続されたFM帯のほぼ中心周波数に共振する直列共振回路と、
前記インピーダンス変換トランスの前記第2端子に接続された第1ポートと、
前記インピーダンス変換トランスの前記第3端子がFM帯およびAM帯の信号を通過できるコンデンサを介して接続された第2ポートとを備え、
前記第1ポートに前記第1インピーダンスの第1デバイスが接続され、前記第2ポートに前記第2インピーダンスの第2デバイスが接続されて、前記第1デバイスと前記第2デバイス間のインピーダンス変換を行うようにしたことを特徴とするインピーダンス変換回路。
【請求項2】
前記インピーダンス変換トランスの前記第3端子にチョークコイルを介して接続された第3ポートを備え、該第3ポートから供給された直流電源が前記第1ポートから出力されて前記第1デバイスに供給可能とされ、前記第1ポートから供給された直流電源が前記第3ポートから出力されて前記第2デバイスに別のラインから供給可能とされていることを特徴とする請求項1記載のインピーダンス変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−231283(P2012−231283A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98064(P2011−98064)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000165848)原田工業株式会社 (78)