説明

インフルエンザウイルスの検出方法

a)ウイルスおよび/またはウイルス粒子を、グリコホリン、a1−酸性糖タンパク質、a2−マクログロブリン、オボムコイドのような糖タンパク質およびその組み合わせと結合しているかまたはそれとの組成物中にある天然または合成オリゴ糖から成る群から選択される少なくとも1種類の糖質受容体を含む担体と結合させるが、その糖質受容体はウイルスおよび/またはウイルス粒子のヘマグルチニン成分と結合する;
b)結合したウイルスおよび/またはウイルス粒子のノイラミニダーゼ成分を標識酵素基質と反応させ、検出可能なシグナルを発生させる;および
c)段階b)で発生したシグナルを検出する
段階を含む、ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼ成分を含むインフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の迅速検出の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスおよび/またはウイルス粒子のヘマグルチニン成分に結合する担体への特異的結合分子によるウイルスおよび/またはウイルス粒子の結合、および、結合したウイルスおよび/またはウイルス粒子を、ノイラミニダーゼ成分を酵素基質と反応させて検出可能なシグナルを結果として生じることによる検出を含む、ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼ成分を含むインフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の迅速検出の方法に関する。本発明はさらに、本発明に記載の方法を使用するインフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の迅速検出のための検出系、および本発明に記載の検出系の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
すべての鳥インフルエンザ(AI)ウイルスは、オルトミクソウイルス(Orthomyxoviridae)科ウイルスのA型インフルエンザウイルスであり、およびインフルエンザAウイルスのすべての既知の株は鳥類に感染する。A型インフルエンザウイルスは、ウイルス中心核から突き出るヘマグルチニン(H)およびノイラミニダーゼ(N)タンパク質に基づいて亜型に細分される。16種類のH型および最大9種類のN亜型が存在し、144種類の異なるHおよびNの組み合わせが可能である。
【0003】
鳥インフルエンザ(別名鳥インフル、鳥かぜ、インフルエンザウイルスAかぜ、A型かぜ、またはA属かぜ)は、鳥類を宿主とする一種のインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザであるが、数種の哺乳類に感染しうる。
【0004】
インフルエンザ大流行は、1918年のスペインかぜのような、インフルエンザウイルスの大規模な流行である。世界保健機関(WHO)は、今後数年以内にインフルエンザ大流行の相当なリスクがあると警告している。最も有力な候補の一つが、鳥インフルエンザのA(H5N1)亜型である。
【0005】
H5N1は、抗原変異によって多数の高病原性変異株に変異している鳥インフルエンザウイルス(鳥インフルウイルス)の一種であり、しかしすべてが現在、鳥インフルエンザウイルスH5N1のZ遺伝子型に属する。Z遺伝子型は、最初に中国で1996年に鳥類に、および香港で1997年にヒトに出現した、以前のH5N1の高病原性遺伝子型の遺伝子再集合から2002年に出現した。2004年および2005年に単離された、ヒト感染由来のH5N1ウイルスおよび近縁の鳥ウイルスは、しばしばZ遺伝子型と呼ばれる単一の遺伝子型に属する。
【0006】
ヒトで確認されている鳥インフルエンザ亜型は、既知の死亡者数の順に次の通りである:スペインかぜの原因のH1N1、アジアかぜの原因のH2N2、香港かぜの原因のH3N2、H5N1、H7N7、H9N2、H7N2、H7N3、H10N7。
【0007】
変異したおよび毒性の、ヒトからヒトへの感染が可能な新しいインフルエンザ株が出現した際に、迅速に対応できるためには、動物またはヒトがウイルスに感染しているかどうかを判定するための迅速なおよび信頼できる方法が必要である。環境試料、動物試料および患者試料からのウイルスの検出のための現行の検査法は、困難であり、かつ時間がかかる。
【0008】
US−B−6,503,745は、インフルエンザウイルスを検出するための方法における使用と共に提供されるシクロペンタンおよびシクロペンテン化合物を開示する。ウイルスはフェチュインコーティングされた表面を用いて捕捉され、および検出はノイラミニダーゼと結合する標識化合物を用いて実施される。
【0009】
D.E.ノヨラ(Noyola)他はJournal of Clinical Microbiology,2000,p.1161 − 1165で、フェチュインでコーティングされたビーズについて報告している。フェチュインはまた、ノイラミニダーゼの基質として作用し,および 検出は凝集を用いて実施される。
【0010】
US−A−2003/0129618は、ポリマー材料への分析物の選択的結合に応答してポリマー材料に生じる蛍光を用いる、検出物の検出のための方法および組成物を開示する。特に、本発明は、メンブレン修飾反応およびそのような修飾の原因となる分析物の蛍光検出、および作用阻害因子のスクリーニングを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US−B−6,503,745
【特許文献2】US−A−2003/0129618
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Journal of Clinical Microbiology,2000,p.1161−1165
【発明の概要】
【0013】
すべての公知のおよび利用可能な迅速現地手法は、ウイルスエピトープに対する抗体の使用、または単純なノイラミニダーゼ(NA)試験のどちらかに基づく。
【0014】
側方流動(ラテラルフロー)法または他の種類の検定法に基づく抗体法の主な短所は、抗体試薬の不安定性である。さらに、これまでに利用可能な免疫検定法の大多数は、A型インフルエンザには特異性を示すが、H5N1には特異性を示さない。さらに、抗体の使用は、不可避的に検定コストの上昇に繋がる。
【0015】
インフルエンザウイルスに特異的なNA検査の主な短所は、最新技術で使用される必須の高価な基質試薬であり、それは部分メチル化されているべきである。
【0016】
本発明はこれらの問題を、インフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の迅速検出のための方法、前記方法を使用する検出系、および請求項に定義される通りの前記検出系の使用を提供することによって解決する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】側方流動検査のための試験片の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書では下記の略語を使用する。3’SLN=Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcHA=ヘマグルチニン;HAR=赤血球凝集反応;LOD=検出限界;NA=ノイラミニダーゼ;TCID=組織培養感染量;TN緩衝液=0.1M NaClを含む0.02Mトリス−HCl(pH7.2)
【0019】
本発明によると、インフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の迅速検出の方法が使用され、その方法は下記の段階を含む:
a)ウイルスおよび/またはウイルス粒子を、グリコホリン、a1−酸性糖タンパク質、a2−マクログロブリン、オボムコイドのような糖タンパク質およびその組み合わせと結合しているか、またはそれとの組成物中にある天然または合成オリゴ糖から成る群から選択される少なくとも1種類の糖質受容体を含む担体と結合させるが、その糖質受容体はウイルスおよび/またはウイルス粒子のヘマグルチニン成分と結合する;
b)結合したウイルスおよび/またはウイルス粒子のノイラミニダーゼ成分を標識酵素基質と反応させ、検出可能なシグナルを発生させる;および
c)段階b)で発生したシグナルを検出する。
【0020】
特に、すべての既知の鳥インフルエンザ(AI)亜型を含むインフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子が検出される。
【0021】
本発明の別の一実施形態では、インフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子は、特定の一亜型、または亜型のグループを含む。本方法は、高病原性変異株を含むインフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子を検出するのに適する。
【0022】
本発明は、特に、クロマトグラフィー用ペーパーまたはメンブレンである担体を用いて実施されうる。そのような材料は当業者によく知られている。本発明によると、上記で言及される通りの糖質受容体を担体へ共有結合または物理的に吸着することが可能である。
【0023】
本発明は、特に、α2−3Gal部分を含む糖質受容体を使用する。本発明の一実施形態(ドットブロット法)によると、ウイルスおよび/またはウイルス粒子の結合は、ウイルスおよび/またはウイルス粒子を含む試料を、担体へスポットとして負荷することによって行われる。本発明によると、ウイルスおよび/またはウイルス粒子の結合は、ウイルスおよび/またはウイルス粒子を含む試料を、前記担体へいわゆる側方流動法(lateral flow approach)の形で浸漬することによって行われる。本発明の別の一実施形態では、ノイラミニダーゼ成分の標識酵素基質が、結合したウイルスおよび/またはウイルス粒子の位置に沈着する。
【0024】
本発明のさらに別の一実施形態では、酵素基質は発色団で標識され、およびノイラミニダーゼとの反応が前記酵素基質の色変化を誘導する。酵素基質として、特に、下記のN−アセチルノイラミン酸の発色誘導体、特に5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−α−N−アセチルノイラミン酸が使用されうる。代替的に、適当な蛍光分子を標識として使用する場合、ノイラミニダーゼとの反応が特異的蛍光シグナルを誘導する。
【0025】
本発明の方法は、本発明に記載のインフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の迅速検出のための検出系を用いて有利に実施されうる。その系は、本発明の方法を用いるインフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の迅速検出のための検出系を含み、前記系は下記を含む:
a)グリコホリン、a1−酸性糖タンパク質、a2−マクログロブリン、オボムコイドのような糖タンパク質およびその組み合わせと結合しているかまたはそれとの組成物中にある天然または合成オリゴ糖から成る群から選択される少なくとも1種類の糖質受容体を含む担体であって、その糖質受容体はウイルスおよび/またはウイルス粒子のヘマグルチニン成分と結合する;
b)ノイラミニダーゼ成分と反応し、それによって検出可能なシグナルを発生する標識酵素基質。
【0026】
特に、担体は、試料および陽性対照を用いた検査結果を読み取るための窓があるプラスチックホルダーに封入される。担体は、試料中のウイルス含量の半定量的評価のための、特に少なくとも2種類の異なる量の前記特異的結合剤を含む。別の一実施形態では、担体は、異なる亜型に属するウイルスの同時検出のための、異なる亜型特異性の少なくとも2種類の特異的受容体を含む。本発明の検出系は、対象とされる特異性のウイルスおよび/またはウイルス粒子の存在を明らかにした後の、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応といった確認試験のための、試料容器および輸送ユニットとして役立つ。
【0027】
本発明によると、検出系の使用もまた、環境試料中のスワブ、糞便および血液といった動物および/またはヒトの試料中のインフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の検出のために、および/または発生する高病原性ウイルス亜型の早期警告システムとして請求される。
【0028】
ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)は、インフルエンザウイルスの表面上に存在する。HAはシアル酸を含む細胞受容体へのウイルス結合を誘導し、一方、NAは標的細胞へのウイルスの到達を促進し、および感染細胞からのウイルスの放出および天然阻害因子を促進し[マトロソビッチ(Matrosovich),M.N.,マトロソビッチ(Matrosovich),T.Y.,グレイ(Gray),T.,ロバーツ(Roberts),N.A.,クレンク(Klenk),H.D.2004: J.Virol..78(22) 12665−7]、すなわちHAは受容体に結合する一方、NAは受容体を破壊する。効率的なウイルス複製のための重要な条件は、HAおよびNAの協奏的作用であり、および異なる種についてはこれらの2つの活性の関係は異なる。鳥類から単離されたインフルエンザウイルスは、いくつかの独特な性質を示す。すべての鳥インフルエンザウイルスはHAを有し、HAはNeu5Acα2−3Gal末端を有する糖鎖に最高の親和性を有する。さらに、そのNA活性は、他の起源のウイルスと比較して高い。
【0029】
本発明に記載の検出方法および検出系では、鳥ウイルスのビリオン成分HAおよびNAの両方のこれらの性質が用いられる。インフルエンザウイルスは特異的結合分子に、好ましくはシアリル糖質を含む物質に結合し、およびメンブレンとカップリングし、次いでノイラミニダーゼ基質との反応、好ましくはノイラミニダーゼ基質の消化が起こり、メンブレン上のウイルスを含むゾーンの染色を生じる。本発明に記載のインフルエンザウイルス検出法および系は、最新技術の試験系と比較してさまざまな長所を示す:HAおよびNAの2成分を用いることは、検定の特異性を高め、および選択された特異性を有する検出系の構築を可能にする。同時に、および免疫法に基づく検出系とは対照的に、検出陽性を明らかにするための別のマーカー酵素は不要であり、なぜならウイルスノイラミニダーゼ自体がこの目的に使用されるためである。
【0030】
糖質受容体分子の徹底的に選択された型のさまざまな変異は、型および亜型とは無関係にすべてのインフルエンザウイルスを回収し、およびH5N1のような高病原性変異株の同時特異的検出が可能である。
【0031】
本発明に記載の検出方法の結果は、洗練された装置の使用を必要とせずに得ることができる。
【0032】
本発明に記載の方法は、インフルエンザウイルスの0.1から2時間以内の検出を可能にする。
【0033】
本発明は下記の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0034】
実施例1:
特異的糖質受容体分子の調製のための3’SLN三糖のポリアクリルアミドゲル複合体の合成
MW〜1000kDaのN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて完全に活性化されたポリアクリル酸1.7mg(10μmol)を含むDMSO 200μlの溶液、およびジイソプロピルエチルアミン4μlを、3’SLN−O(CH23NH21.46mg(2μmol)を含むDMSO 200μlの溶液に加え、混合物を37℃にて48時間保持し、25%アンモニア水溶液40μlまたはエタノールアミン40μlを加え、および溶液を18時間室温に保ち、次いでセファロースLHでゲル浸透クロマトグラフィーを実施し、収率は〜90%であった。
【0035】
実施例2:
本発明に記載の方法および試験系を用いることによる尿膜液中のインフルエンザウイルスの検出
実施例−キット:
1.試験片
2.プローブ緩衝液 緩衝液#1
3.コントラスト緩衝液 緩衝液#2
4.洗浄緩衝液A 緩衝液#3
5.洗浄緩衝液B 緩衝液#4
6.染色緩衝液 緩衝液#5
7.ダブルストリップ(8ウェル2列)または96ウェルプレート
8.ハサミまたはメス
9.ピンセット
10.試験片洗浄用プレート
11.展開バイアル
12.サーモスタット(または代用品)
13.クロマトグラフィー手順用カメラ(または試験片入り96ウェルプレートを覆うための蓋)。
【0036】
材料
試験片:ニトロセルロース、吸収体、試料パッド、米国ワットマン社(Whatman)から入手。
1.特異的試薬(フェチュイン、シグマ社(Sigma))は新鮮鶏卵から単離した。
2.緩衝液#1:3M NaClおよび0.5%ツイーン(Tween)20を含む0.2Mトリス−HCl(pH7.2)
3.緩衝液#2:0.3M NaClおよび0.05%ツイーン20を含む0.02Mトリス−HCl(pH7.2)
4.緩衝液#3:0.1M NaClおよび0.05%ツイーン20を含む0.02Mトリス−HCl(pH7.2)
5.緩衝液#4:0.1M NaClを含む0.02Mトリス−HCl(pH7.2)(TN緩衝液)
6.緩衝液#5:0.01M CaCl2を含む4mM Neu−XのTN緩衝液溶液
TN緩衝液は別の適する緩衝液、たとえばリン酸緩衝生理食塩水、または生理食塩水で代替されうる。
【0037】
試験片(図1)は3つのゾーン、浸漬、検出および吸収ゾーンに分割される。糖質受容体分子の線(検査線)および対照線が検出ゾーンに位置する。試験片は吸収体および試料パッドから組み立てられる。糖質受容体分子(1mg/mL溶液の1マイクロリットル)を検出ゾーンに負荷し、その後、試験片を乾燥および洗浄する。次いで試験片を、密閉したフラスコ内で18〜25℃にて保存する。
【0038】
検出
1.試料調製。分析直前に1/10部(v/v)の緩衝液#1をプローブへ加え、およびよく振とうする。これがプローブ#1(P#1)である。
【0039】
2.検出手順は数段階を含む(表1)。
【0040】
第1段階で、試験片の試料パッドを80〜100μlのP#1に入れる。毛管力の作用に際して試料からの液体が吸い上げられ、およびウイルス粒子が糖質受容体分子へ結合する検出ゾーンを経て、吸収ゾーンへ入る。この手順の持続時間は、試料粘度に依存するが、しかし15分を超えてはならない。緩衝液#2をプレートの同一ウェルに加える(代替的に、緩衝液#2で満たした別のウェルへ試験片を移すことが可能である)。10分後、試験片をウェルから取り出す。
【0041】
第2段階で、試験片の浸漬部分を切る(ハサミで)。試験片部分の吸収ゾーンを注意深く除去後(たとえばピンセットを用いて)、検査ゾーンを緩衝液#3で、および次いで緩衝液#4で洗浄する。続いて吸収ゾーンも切る。
【0042】
第3段階。検査ゾーンの残りを緩衝液#5の入ったフラスコへ入れる。フラスコを密栓し、および暗所で37〜40℃にて静置する。試料中のインフルエンザウイルスの存在は、糖質受容体分子ゾーンの暗青色の染色として検出される。この段階の持続時間は、試料中のウイルス濃度に依存し、および、ウイルスが赤血球凝集反応(HAR力価約2)によって検出できるまでに20分から60分を要しうる。原則としてこれらの試料はTCID/ml値が約105である。10および100倍少ないウイルス含量(104〜103TCID/ml)のプローブについては、染色は数時間後に出現しうる。この手順の後、試験片を溶液から取り出し、次いで反応結果を目視で評価する。
【0043】
検出ゾーンのノイラミニダーゼの対照線は、検定の機能性の評価に用いられる。対照ゾーンの暗青色の染色が生じなければならない。
【0044】
結果は下記の通り解釈される。
1)均一に染色された線が観察される場合、陽性、すなわちプローブがウイルスを含むと考えられる。色強度は対照線の強度と同等となるべきである。
2)薄く染色された線が観察される場合、試料は曖昧でない検出には不十分な濃度でウイルスを含み、および緩衝液#5での試験片の発色は一夜延長すべきであるかまたは試験をもう一度繰り返してもよい。
3)着色した線が無いことは、試料中にウイルスが無いこと、またはウイルスの濃度が最小検出レベル未満であることを意味する。
4)陽性対照線に着色した線が無いことは、実験が誤って行われたか、または 対照線のNAが破壊されていることを意味する。その場合、新しい検査キットを用いて標本を再検査することが推奨される。
【0045】
検査感度についてのデータを表2に示す。
【表1】


【0046】
実施例3:
本発明に記載の検出系を用いるニワトリ糞便中のインフルエンザウイルスの検出
この実施例では、実施例2と同一の材料および方法を使用した。
【0047】
1.健常ニワトリ糞便の懸濁液(緩衝液10ml当たり乾重2g)で、ウイルス含有プローブの連続希釈を実施した。糞便はこの検査を用いたインフルエンザウイルス検出の感度および特異性に影響しないことが実証された。
2.ニワトリ新鮮糞便へ、1/10部(v/v)のA/duck/Alberta/76ウイルス(HAR力価1:10)を添加し、および混合物をホモジナイズした。緩衝液#2をホモジネートへ添加後(1:1v/v)、結果として生じた懸濁液の一部を採取して検定に使用した。検査ゾーンに暗青色の染色が2時間後に出現した。検査手順の開始前に表1からの試料へニワトリ糞便が添加された場合に検査結果への顕著な影響は観察されなかった。
【0048】
実施例4:
本発明に記載の検出系を用いる死亡ニワトリの肺組織中のインフルエンザウイルスの検出
この実施例では、実施例2と同一の材料および方法を使用した。
【0049】
インフルエンザウイルスH5N1の感染で死亡したニワトリ由来の肺組織を、シリン(silin)緩衝液で抽出して分析した(採集:クリミア/2006年1月)。インフルエンザウイルスは分析したニワトリ死体の肺で信頼性高く検出できることを示すことができた。
【表2】

a_これはA/Vietnam/1194/04病原ウイルス由来のHAおよびNA遺伝子、およびA/PuertoRico/2/34由来のすべての内部タンパク質遺伝子を有するワクチン株である。
ウイルスは脊髄性小児麻痺およびウイルス脳炎協会(Institute of Poliomyelitis and Viral Encephalitis)(モスクワ) およびインフルエンザ協会(Institute of Influenza)(サンクトペテルブルク)から入手した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ウイルスおよび/またはウイルス粒子を、グリコホリン、a1−酸性糖タンパク質、a2−マクログロブリン、オボムコイドのような糖タンパク質およびその組み合わせと結合しているか、またはそれとの組成物中にある天然または合成オリゴ糖から成る群から選択される少なくとも1種類の糖質受容体を含む担体と結合させるが、その糖質受容体はウイルスおよび/またはウイルス粒子のヘマグルチニン成分と結合する;
b)結合したウイルスおよび/またはウイルス粒子のノイラミニダーゼ成分を標識酵素基質と反応させ、検出可能なシグナルを発生させる;および
c)段階b)で発生したシグナルを検出する
段階を含む、ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼ成分を含むインフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の迅速検出の方法。
【請求項2】
インフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子がすべての既知の鳥インフルエンザ(AI)亜型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
インフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子が特定の一亜型、または亜型のグループを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
インフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子が高病原性変異株を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
担体がクロマトグラフィー用ペーパーまたはメンブレンである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
糖質受容体が担体と共有結合しているかまたは担体に物理的に吸着されている、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
糖質受容体がアルファ2−3Galモチーフを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ウイルスおよび/またはウイルス粒子の結合が、ウイルスおよび/またはウイルス粒子を含む試料の、担体へスポットとしての負荷(ドットブロット法)によって行われる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ウイルスおよび/またはウイルス粒子の結合が、ウイルスおよび/またはウイルス粒子を含む試料を、担体に沿って浸漬すること(側方流動法)によって行われる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ノイラミニダーゼ成分の標識酵素基質が、結合したウイルスおよび/またはウイルス粒子の位置に沈着する、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
酵素基質が発色団で標識され、およびノイラミニダーゼとの反応が酵素基質の色変化を誘導する、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
酵素基質がN−アセチルノイラミン酸の発色誘導体、特に5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−α−N−アセチルノイラミン酸である、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ノイラミニダーゼとの反応が特異的蛍光シグナルを誘導する、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
a)グリコホリン、a1−酸性糖タンパク質、a2−マクログロブリン、オボムコイドのような糖タンパク質およびその組み合わせと結合しているかまたはそれとの組成物中にある天然または合成オリゴ糖から成る群から選択される少なくとも1種類の糖質受容体を含む担体であって、その糖質受容体はウイルスおよび/またはウイルス粒子のヘマグルチニン成分と結合する;
b)ノイラミニダーゼ成分と反応し、それによって検出可能なシグナルを発生する標識酵素基質
を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法を使用する、インフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の迅速検出のための検出系。
【請求項15】
担体が、試料および陽性対照を用いた検査結果を読み取るための窓があるプラスチックホルダーに封入されている、請求項14に記載の検出系。
【請求項16】
担体が、試料中のウイルス含量の半定量的評価のための、少なくとも2種類の異なる量の特異的結合剤を含む、請求項14および/または15に記載の検出系。
【請求項17】
担体が、異なる亜型に属するウイルスの同時検出のための、異なる亜型特異性の少なくとも2種類の特異的受容体を含む、請求項14および/または16に記載の検出系。
【請求項18】
対象とされる特異性のウイルスおよび/またはウイルス粒子の存在を明らかにした後の系が、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応といった確認試験のための、試料容器および輸送ユニットとして役立つ、請求項16〜17のいずれかに記載の検出系。
【請求項19】
環境試料中のスワブ、糞便および血液といった動物および/またはヒトの試料中のインフルエンザウイルスおよび/またはウイルス粒子の検出のための、および/または発生する高病原性ウイルス亜型の早期警告システムとしての、請求項14 から18のいずれかに記載の検出系の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−537128(P2009−537128A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510469(P2009−510469)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054835
【国際公開番号】WO2007/135099
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508337662)ヴェテリネールメディツィニッシェ ウニヴェルジテート ウィーン (1)
【Fターム(参考)】