説明

インフルエンザウイルスH5亜型またはN1亜型からのヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼに特異的なモノクローナル抗体ならびにそれらの使用

トリインフルエンザウイルス(AIV)のH5亜型のエンベロープ糖タンパク質またはN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体および関連する結合タンパク質を提供する。モノクローナル抗体および関連する結合タンパク質は、H5N1を含むAIVのH5およびN1亜型の検出に有用であり、危険なウイルス感染症の診断、監視および処置のための手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トリインフルエンザウイルス(AAIV@)の検出および処置のための抗体および関連する結合タンパク質に関する。より詳細には、この発明は、AIVの高病原性H5およびN1亜型の検出および処置に有用なモノクローナル抗体および関連する結合タンパク質に、ならびに動物およびヒトにおけるAIV感染症の診断、監視および処置のための方法および製品に関する。
【背景技術】
【0002】
H5N1トリインフルエンザウイルスは、次のインフルエンザの世界的流行(pandemic)の原因になる可能性がある。インフルエンザA感染の例年の大発生は進行中の公衆衛生の脅威であり、ヒトがそれに対してほとんど免疫を持たず、結果として破壊的な世界的流行をもたらす新規のインフルエンザ株が周期的に発生する可能性がある。H1N1インフルエンザウイルスにより引き起こされた1918年のスペイン風邪(ASpanish flu@)の世界的流行は、世界中で4000万人を超える人々を殺した。H1N1の起源は直接トリからヒトへ至った可能性があり、またはそれは中間宿主、例えばブタもしくは別のまだ同定されていない動物宿主における潜伏(incubation)を含んでいた可能性がある(1)(参考文献一覧は開示の最後に提供する)。それぞれH2N2およびH3N2インフルエンザウイルスにより引き起こされた1957年の世界的流行および1968年の世界的流行は、両方とも、一方、または両方のヒトに適応したウイルス表面タンパク質がトリインフルエンザ株からのタンパク質により置き換えられた再集合(reassortments)に由来していたようである(2)。
【0003】
H5N1ウイルスは、肉食動物を含む前例のない範囲の宿主に感染する能力を有している。AIV H5N1がヒトに感染する最初に確認された例は、1997年に起きた。高病原性H5N1感染症が家禽およびヒトの両方において発生した。これがトリインフルエンザウイルスのトリからヒトへの直接の伝染が見つかった最初の時であった。その後、世界保健機構(WHO)によると、ヒトのH5N1の症例の総数は2003年に起きた東南アジアにおける最初の大発生以来281件に達しており、169件の死亡を伴っている。インドネシアは、2005年の6月にH5N1ウイルスにより引き起こされたトリインフルエンザのその最初のヒトの症例を報告した。現在までに、それは2007年における症例を報告している唯一の国であり、2007年3月現在で確認されたヒトの症例は81件で、その内の63件が死に至った。
【0004】
インフルエンザウイルスはそれらの核タンパク質およびマトリックスタンパク質の抗原特異性に従って分類される。これらのウイルスは主にA、BおよびC血清型に類別され、タイプAは8個のRNA分節を有し、それは10個のウイルスタンパク質をコードしている。全ての既知のタイプAインフルエンザウイルスは鳥類に由来していた。このカテゴリーのウイルスは他の種、例えばウマ、ブタ、フクロウおよびアザラシに感染することができ、ヒトにも同様に脅威を与えている(23)。インフルエンザAウイルスはさらにエンベロープの糖タンパク質、ヘマグルチニン類(AHA類@)、H1〜H16、およびノイラミニダーゼ類(ANA類@)、N1〜N9(24、25、26)の抗原性の性質によって亜型へと分けられる。HAタンパク質のHA1−HA2接合部におけるタンパク質分解による切断はトリの株における病原性と関連しており、この切断部位周辺の疎水性アミノ酸の存在はH5亜型に特徴的であると信じられている。加えて、HAタンパク質は宿主細胞のシアロシド受容体への付着およびそれに続く膜融合による侵入を仲介していると信じられており(27)、HAタンパク質は中和抗体のための主要な標的として機能していると考えられている(26)。
【0005】
急性呼吸器疾患の大発生の間の検査は、インフルエンザがその原因かどうかを決定することができる。インフルエンザの季節の間、インフルエンザと矛盾しない呼吸器の疾病を示す選択された患者の検査は、インフルエンザが特定の患者集団の中に存在するかどうかを確証するのを助け、医療提供者が呼吸器の疾病を診断および処置するために彼らの臨床判断をどのように使うかを決定するのを助けることができる。迅速なインフルエンザ検査は、抗ウイルス薬物療法を使うかどうかの決定における助けとなる。一部の検査、例えばウイルス培養、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)および血清検査は決まりきった方法であるが、結果が臨床家を助けるのに時宜を得た方式で得られない可能性がある(3)。現在、一般に用いられている迅速な診断検査法のほとんどはモノクローナル抗体を基にした免疫アッセイである(3、4、5)。免疫蛍光法(蛍光抗体染色)は迅速なインフルエンザ診断検査法の選べる手段であり、それは多くの病院の実験室で用いることができ、一般に2〜4時間で検査結果を出すことができる。とりわけ、特異的なモノクローナル抗体の生成は、ほとんどの一般に用いられている迅速、高感度で費用効果のある診断法の基礎となっている。
【0006】
地域的に異なる亜系列(sublineages)の同定は、H5N1ウイルスが地理的に幅広く、大きな遺伝的および抗原性の多様性を有していることを示した。インドネシアからの全てのウイルスがH5N1遺伝子型Zウイルスの異なる亜系列を形成していることを示す系統発生的分析は、この大発生が単一の導入に由来し、それが国中くまなく広がっていることを示唆している(14、15)。インドネシアインフルエンザ分離株を特異的に認識する利用可能なモノクローナル抗体があれば非常に有用であろう。さらに、ベトナムおよびシンガポールインフルエンザ分離株にも及ぶ利用可能なそのmAb類があれば有用であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の目的
この発明の目的は、AIVのH5およびN1亜型に、特にH5およびN1インドネシアAIV分離株に特異的に結合するモノクローナル抗体(AmAb類@)および関連する結合タンパク質を提供することである。モノクローナル抗体反応の特異性は、有効な診断試薬のための基礎を提供する。それらに由来するmAb類および結合タンパク質は、療法薬としても有用である可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って、H5亜型のヘマグルチニン糖タンパク質の線状および三次元(conformational)エピトープまたはN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質の線状および三次元エピトープに特異的なモノクローナル抗体および関連する結合タンパク質を提供する。線状H5エピトープに対するmAb類は、変性した標本、例えばホルマリンで固定された組織標本においてH5N1および他のH5亜型ウイルス株を優れた特異性および感度で検出することができ、一方でH5またはN1の三次元エピトープを標的とするmAb類は、前処理されていない組織、例えば凍結された組織標本ならびに他の生物学的組織および流体においてH5N1および他のN1亜型ウイルスを検出するのに有用である。H5エピトープに対するmAb類およびN1エピトープに対するmAb類は、H5N1ウイルス分離株を特異的に診断するために組み合わせて用いることができる。
【0009】
特に、5A5と名付けられたmAbはH5亜型ヘマグルチニンの線状エピトープを標的としている。5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1および3H11と名付けられた他のmAb類は、H5亜型ヘマグルチニンの三次元エピトープを標的としている。8H12と名付けられたmAbはN1亜型のノイラミニダーゼの線状エピトープを標的としており、6C6および3D4と名付けられた2種類のさらなる抗体は、N1亜型のノイラミニダーゼの三次元エピトープを標的としている。
【0010】
従って、この発明は、実質的にmAb 5A5のそれらのような線状H5亜型ヘマグルチニンエピトープへの免疫学的結合特性を有する結合タンパク質および実質的にmAb 8H12のそれらのような線状N1亜型ノイラミニダーゼエピトープへの免疫学的結合特性を有する結合タンパク質を含む。本発明はさらに、実質的にmAb 5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1および3H11のそれらのような三次元H5亜型ヘマグルチニンエピトープへの免疫学的結合特性を有する結合タンパク質を含む。本発明は、実質的にmAb 6C6または3D4のそれらのような三次元N1亜型ノイラミニダーゼエピトープへの免疫学的結合特性を有する結合タンパク質も含む。
【0011】
別の観点において、本発明は、標本においてH5亜型AIVを検出するための方法であって、AIVの、実質的にmAb 5A5、5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1または3H11の免疫学的結合特性を有するmAbまたは結合タンパク質との結合を検出することを含む方法を含む。本発明は、標本においてN1亜型AIVを検出するための方法であって、AIVの、実質的にmAb 6C6、3D4または8H12の免疫学的結合特性を有するmAbまたは結合タンパク質との結合を検出することを含む方法も含む。特に、本発明は、その結合タンパク質を利用する免疫蛍光アッセイ、免疫組織化学的アッセイおよびELISA法に関する。H5亜型AIVを認識する抗体は、H5N1ウイルスを検出するために、N1亜型AIVを認識する抗体と組み合わせて用いることができる。
【0012】
別の観点において、本発明は、実質的にmAb 5A5、5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11.9C1、3H11、8H12、3D4および/または6C6の免疫学的結合特性を有する結合タンパク質を含むAIVの検出のためのキットに関する。
【0013】
本発明はさらに、H5 AIV株、例えばH5N1 AIV株に感染した対象を処置する方法であって、その対象に有効量の実質的にmAb 5C5、2D9、4F8、2F11、9C1、3H11、8H12、3D4または6C6の免疫学的結合特性を有する1種類以上のモノクローナル抗体または結合タンパク質を投与することを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1A〜1Dは、AIV H5N1に感染したMDCK細胞をウイルス感染無しのMDCK細胞に対して比較した代表的なIFA画像である。図1Aは、MDCK細胞においてH5N1が検出されている画像である。図1Bでは、紫外線と通常の光の合併が、感染していない細胞と比較した、ウイルスに感染した個々の細胞を示した。図1Cに示したように、ウイルス感染の無いMDCK細胞には蛍光シグナルは無い。図1Dは、図1Cと同じ細胞における紫外線と通常の光の合併を示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、MDCK細胞における、モノクローナル抗体のインフルエンザウイルスの中和活性を示す。図2Aでは、MDCK細胞はモノクローナル抗体がH5N1ウイルス感染を中和した後FITC蛍光で染色された。図2Bでは、MDCK細胞はモノクローナル抗体のH5N1ウイルス感染の中和無しにFITC蛍光で染色された。
【図3】図3Aおよび3Bは、mAb類と線状にした組み換えHA1の間の結合を確認するためのSDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングを示す。図3Aでは、HA1は約37kDであり、発現したGSTタグを有するHA1はSDS−PAGEゲルにおいて約61kDである。GST単独は26kDである。図3Bでは、ウエスタンブロッティングが組み換えHA1がmAb 5A5と反応することを示した。61kDにある主要なバンド以外に、より小さいバンドが存在し、それはGST−HA1をE.coliにおいて発現させた際の分解を示唆していた。レーン1、IPTGに誘導される発現無しのE.coliの試料;レーン2および3、E.coliにおいて発現させたIPTGに誘導されるGST−HA1;レーン4、精製したGSTの試料。
【図4】図4Aおよび4Bは、mAb 5A5の線状エピトープのマッピングを図説している。図4Aはヘマグルチニンタンパク質HA1の概略図であり、様々な長さのHA1断片の発現のためのクローンコンストラクトおよびそれらのmAb 5A5との反応性を示している。図4Bは変異体ヘマグルチニンHA1断片の概略図であり、HA1断片上の様々な変異の発現のためのクローンコンストラクトおよびそれらのmAb 5A5との反応性を示している。
【図5】図5Aおよび5Bは、mAb 6C6または3D4と発現させた組み換えN1の間の典型的な反応を示す。図5Aは、Sf9細胞において検出されている発現させた組み換えN1を示す。図5Bでは、紫外線と通常の光の合併が個々の細胞を示した。
【図6】図6Aおよび6Bは、発現させたNAを確認するためのSDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングを示す。
【図7】図7A、7Bおよび7Cは、MDCK細胞における、モノクローナル抗体のインフルエンザウイルスの中和活性を示す。図7Aでは、モノクローナル抗体がH5N1ウイルス感染を中和した後にMDCK細胞を顕微鏡検査により観察した。図7Bでは、CPE陽性対照として、モノクローナル抗体のH5N1ウイルス感染の中和無しにMDCK細胞を顕微鏡検査により観察した。図7Cでは、CPE陰性対照として、MDCK細胞をウイルスおよびmAb共に無しで示した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、AIVのH5亜型のヘマグルチニン糖タンパク質またはAIVのN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質に特異的に結合するmAb類および関連する抗原結合タンパク質に向けられている。特に、そのmAbまたは関連する抗原結合タンパク質は、次のものの免疫学的結合特性を有する:2007年7月10日にアメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)に寄託され、受け入れ番号PTA−8528を割り当てられた、ハイブリドーマ5A5により産生されるmAb 5A5、2007年7月10日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−8529を割り当てられた、ハイブリドーマ5C5により産生されるmAb 5C5、2007年7月10日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−8526を割り当てられた、ハイブリドーマ6C6により産生されるmAb 6C6、2008年7月29日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−9396を割り当てられた、ハイブリドーマ2D9により産生されるmAb 2D9、2008年7月29日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−9397を割り当てられた、ハイブリドーマ4F8により産生されるmAb 4F8、2008年7月29日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−9398を割り当てられた、ハイブリドーマ1C1により産生されるmAb 1C1、2008年7月29日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−9399を割り当てられた、ハイブリドーマ3B6により産生されるmAb 3B6、2008年7月29日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−9395を割り当てられた、ハイブリドーマ3D4により産生されるmAb 3D4、2008年7月29日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−9394を割り当てられた、ハイブリドーマ8H12により産生されるmAb 8H12、2008年7月16日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−9373を割り当てられた、ハイブリドーマ2F11により産生されるmAb 2F11、2008年7月16日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−9372を割り当てられた、ハイブリドーマ9C1により産生されるmAb 9C1、または、2008年7月16日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−9374を割り当てられた、ハイブリドーマ3H11により産生されるmAb 3H11。全ての寄託は、ブタペスト条約の規定に従ってなされた。本発明はさらに、これらのハイブリドーマを包含し、本発明のmAb類および結合タンパク質の継続的な源を提供する。
【0016】
本発明はさらに、H5亜型AIVの感染の検出および診断のための方法ならびに本発明のmAb類または結合タンパク質を含むアッセイキットに関する。本発明はさらに、H5またはN1 AIV株に感染した対象の、有効量の本発明の1種類以上の抗体または関連する結合タンパク質の投与による処置の方法に関する。特に、この態様において、対象はAIVのH5N1亜型のインドネシア分離株に感染している。この発明の抗体は、起こり得るインフルエンザの大発生の到来の際に予防策として対象に投与することもできる。この場合、投与される抗体の有効量は、H5またはN1 AIV感染症を処置するのに用いられる量の約半分である。
【0017】
様々な用語が本明細書で用いられ、それは下記の意味を有する:
mAbまたは関連する結合タンパク質の”免疫学的結合特性”という用語は、その文法形式の全てにおいて、mAbまたは結合タンパク質のその抗原に対する特異性、親和性および交叉反応性を指す。
【0018】
用語”線状エピトープ”は、抗体結合部位を形成する約4から約12アミノ酸までの連続した配列を指す。この発明のmAb類の線状エピトープは、好ましくはHA1ウイルス遺伝子によりコードされるヘマグルチニンタンパク質のおよそアミノ酸260からおよそアミノ酸269までの領域の中にある。mAbまたは結合タンパク質に結合する形の線状エピトープは、実質的に三次構造を失っている変性したタンパク質の中にあってよい。
【0019】
用語:三次元エピトープ(Aconformational epitope@)は、H5亜型ヘマグルチニン糖タンパク質またはN1亜型ノイラミニダーゼ糖タンパク質の中に、その未変性の三次元の形で存在する、mAbまたは関連する結合タンパク質の結合部位を指す。
【0020】
用語:結合タンパク質(Abinding protein@)は、本発明のmAbまたは本発明のmAbの免疫学的結合特性を有するmAbの抗原結合部位を含むタンパク質を指し、下記で記述するそれらを含む。
【0021】
本発明は好都合なことに、動物をAIV亜型H5N2(A/ニワトリ/シンガポール/98)で免疫することによりmAb 5A5の結合特性を有するモノクローナル抗体を調製する、動物をAIV亜型H5N2(A/ニワトリ/シンガポール/98)で免疫することによりmAb 5C5の結合特性を有するモノクローナル抗体を調製する、または動物をAIV亜型H7N1(A/ニワトリ/シンガポール/94)で免疫することによりmAb 6C6の結合特性を有するモノクローナル抗体を調製するための方法を提供する。本発明はさらに好都合なことに、動物をAIV亜型H5N2(A/ニワトリ/シンガポール/98)で免疫することによりmAb 2D9の、およびmAb 3B6の結合特性を有するモノクローナル抗体を調製するための方法を提供する。本発明は、動物をアミノ酸205におけるリシンからメチオニンへの変異を有する親トリインフルエンザウイルスA/ベトナム/1203/2004/H5N1からの回避変異体で免疫することによりmAb 2F11もしくは9C1の結合特性を有するモノクローナル抗体を調製する、または動物をAIV亜型A/インドネシア/CDC669/2206/H5N1で免疫することによりmAb 3H11の結合特性を有するモノクローナル抗体を調製するための方法も提供する。加えて、本発明は、動物をAIV亜型H7N1(A/ニワトリ/シンガポール/94)で免疫することによりmAb 3D4の、およびmAb 8H12の結合特性を有するモノクローナル抗体を調製するための方法、ならびに動物をAIV亜型H5N2(A/ニワトリ/シンガポール/98で免疫することによりmAb類4F8および1C1を調製するための方法を提供する。あらゆるその抗原は、望まれる免疫学的結合特性を有する抗体を生じさせるための免疫原として用いることができる。その抗体には、mAb 5A5、5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1、3H11、8H12、6C6または3D4の抗原結合配列を含むモノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、およびタンパク質が含まれるが、それらに限定されない。
【0022】
本発明のmAb類は、培養中の連続継代性細胞株(continuous cell lines in culture)による抗体分子の産生を提供するあらゆる技法により産生することができる。その方法には、元は1975年にKohlerおよびMilsteinにより開発されたハイブリドーマの技法(Nature 256:495-497)、さらにトリオーマの技法、ヒトB細胞ハイブリドーマの技法(Kozbor et al., 1983, Immunology Today 4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV−ハイブリドーマの技法(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96(1985)における)が含まれるが、それらに限定されない。ヒトの抗体を用いることができ、それはヒトのハイブリドーマを用いることにより(Cote et al., 1983, Proc. Nat =l. Acad. Sci. U.S.A., 80:2026-2030)、またはインビトロでヒトB細胞をEBVウイルスを用いて形質転換することにより(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp. 77-96における)得ることができる。さらに、本発明のマウス抗体分子、例えばmAb 5C5、5A5、6C6、2D9、4F8、1C1、3B6、3D4、8H12、2F11、9C1または3H11からの配列を導入して適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にすることによる”キメラ抗体”または”ヒト化抗体”の産生のために開発された技法(Morrison et al., 1984, J. Bacteriol. 159-870; Neuberger et al., 1984, Nature 312:604-608; Takeda et al., 1985, Nature 314:452-454)を用いることができる。キメラ抗体は、ヒトのFc部分およびマウス(または他のヒト以外)のFv部分を含む抗体である。ヒト化抗体は、マウス(または他のヒト以外)の相補性決定領域(CDR)がヒト抗体の中に組み込まれた抗体である。キメラおよびヒト化抗体は共にモノクローナルである。そのヒトまたはヒト化キメラ抗体は、ヒトの疾患または障害のインビボ診断または療法における使用に好ましい。
【0023】
本発明に従って、単鎖抗体の産生に関して記述された技法(米国特許第4,946,778号)を、本発明の単鎖抗体を提供するように適合させることができる。本発明の追加の態様は、Fab発現ライブラリーの構築に関して記述された技法(Huse et al., 1989, Science 246: 1275-1281)を利用して、本発明の抗体、またはその誘導体、もしくは類似体に望ましい特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能とする。
【0024】
抗体分子のイディオタイプを含む抗体断片は既知の技法により生成することができる。例えば、その断片は次のものを含むがそれらに限定されない:抗体分子のペプシン消化により生成することができるF(ab=)断片;F(ab=)断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成することができるFab=断片、ならびに抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することにより生成することができるFab断片。その抗体断片は、本発明のポリクローナルまたはモノクローナル抗体のいずれから生成することもできる。
【0025】
抗体の産生において、望ましい抗体のスクリーニングは当分野で既知の技法、例えば放射性免疫アッセイ、ELISA(酸素結合免疫吸着アッセイ)、”サンドイッチ”免疫アッセイ、免疫放射定量アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチュ免疫アッセイ(例えば金コロイド、酵素または放射性同位体標識を用いる)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えばゲル凝集アッセイ、血球凝集アッセイ)、免疫蛍光アッセイおよび免疫電気泳動アッセイ等により成し遂げることができる。1態様において、抗体の結合は一次抗体上の標識を検出することにより検出される。別の態様において、一次抗体は二次抗体または他の試薬の一次抗体への結合を検出することにより検出される。さらに別の態様において、二次抗体は標識されている。免疫アッセイにおいて結合を検出するための手段は当分野で既知であり、本発明の範囲内である。
【0026】
前述の抗体を、AIVのH5またはN1亜型の検出または位置測定に関して当分野で既知の方法、例えば、ウェスタンブロッティング、ELISA、放射性免疫アッセイ、免疫蛍光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、および同様のものにおいて用いることができる。本明細書で開示される技法は、AIVのH5亜型の質的および定量的測定に、ならびにそのウイルスに感染した動物またはヒトの診断および監視に適用することができる。
【0027】
本発明には、AIVのH5亜型の質的および/または定量的測定のためのアッセイおよび検査キットも含まれる。そのアッセイ系および検査キットは、例えば放射性原子、蛍光性の基または酵素を用いた標識、本発明のmAbもしくは関連する結合タンパク質への、またはその結合パートナーへの標識のカップリングにより調製される標識された構成要素を含んでいてよい。そのアッセイまたは検査キットは、さらに使用のための免疫アッセイの技法の技術者に周知の試薬、希釈剤および説明書を含んでいてよい。
【0028】
本発明の特定の態様において、そのキットは、選択された方法、例えば”競合的”、サンドウィッチ””、”DASP”および同様のものに依存して、少なくとも本発明のmAbまたは関連する結合タンパク質、生物学的試料中のAIVへのそのmAbまたは関連する結合タンパク質の免疫特異的結合の検出のための手段、および使用のための説明書を含むであろう。キットは陽性および陰性対照を含んでいてもよい。それらは自動化された分析器または自動化された免疫組織化学的スライド染色機器と共に使用されるように設計されてもよい。
【0029】
本発明のアッセイキットはさらに二次抗体または結合タンパク質を含んでいてよく、それは標識することができ、または固体支持体への付着のために提供する(または固体支持体に付着させる)ことができる。その抗体または結合タンパク質は、例えば、AIVに結合するものであってよい。その二次抗体または結合タンパク質は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であってよい。
【0030】
H5亜型ヘマグルチニンまたはN1亜型ノイラミニダーゼタンパク質に対するモノクローナル抗体は、動物をAIVまたはH5もしくはN1タンパク質またはそれらの断片で免疫することにより調製することができる。H5亜型ヘマグルチニンタンパク質に対する抗体に関して好ましい方法には、H5亜型HA1遺伝子の増幅とそれに続く遺伝子の発現、H5亜型組み換えタンパク質の回収および精製ならびに精製したタンパク質の免疫原としての使用が含まれる。例えば、H5N1 AIVを、ニワトリ胚にそのウイルスの利用可能な株を接種することにより増殖させ、続いてウイルスRNAを分離する。HA1遺伝子を逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により増幅し、次いでバキュロウイルスベクターの中にクローン化することができ、それを昆虫細胞中でH5タンパク質を発現させるために用いる。そのように生成されたタンパク質を、次いでマウスまたは他のハイブリドーマの生成に適した種を免疫するのに用いることができる。類似の手順を用いてハイブリドーマ生成のためのN1タンパク質を得ることができる。
【0031】
ハイブリドーマを、H5またはN1タンパク質に特異的に結合することができ、それらを他のAIV亜型から識別する高親和性mAb類を産生するそれらの能力に関してスクリーニングする。本発明に従って、ウイルス中和能力を有する抗体はH5亜型ヘマグルチニンタンパク質中の三次元エピトープを認識することができることが見出だされた。この発見は、それぞれの中和mAbの存在下でのメイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞またはニワトリ胚における1〜2回の選択の後の、ウイルスの回避変異体の発生の結果であった。HA1遺伝子をこれらの中和回避変異体からRT−PCRによりクローニングし、配列決定して点変異を同定した。このグループの抗体において、mAb類5C5、2F11、9C1および3H11において中和エピトープが見つかった。中和回避能力は血球凝集阻害アッセイを用いて確認した。
【0032】
HA1は、16アミノ酸のシグナルペプチドを含めて338アミノ酸を含む。タンパク質上の線状エピトープの分布を研究するためには、切り詰めた(truncated)、および変異導入した断片を、mAb類との結合に関して、例えばウェスタンブロットまたは類似の技法により試験するのが好都合である。線状エピトープは、変性したH5亜型タンパク質、例えばホルマリン固定された組織において生じる変性したH5亜型タンパク質の、免疫組織化学的染色法を用いた検出において優れた性能を示すmAb類の結合標的として同定することができる。H5亜型mAb類のこの方式でのマッピングは、感染性H5N1 AIVのさらなる研究およびより有効な臨床診断のためのプラットホームを提供する。
【0033】
本発明はまた、AIVのH5ヘマグルチニンおよびN1ノイラミニダーゼ分子の抗原構造のよりよい理解を提供した。本発明のmAb類および関連する結合タンパク質は、凍結切片および生物学的標本においてこの高病原性ウイルスを検出するための手段を提供する。
【0034】
パラフィン切片中でウイルスを検出する能力は非常に重要である。ほとんどの状況下では、感染した組織切片中のAIV抗原は固定の過程で破壊される。ホルマリンおよびエタノールは脂質のエンベロープおよびエンベロープの糖タンパク質を、ヘマグルチニンを含めて除去する可能性を有しており、従ってウイルス抗原の検出の難度を増大させる。従って、この形の診断は、AIVに感染した動物およびヒトの組織のより安全かつより正確な診断を提供する可能性を有する。
【0035】
下記の実施例において説明するように、mAb 5A5はホルマリン固定された組織中のウイルス抗原に対して非常に有効かつ感度が高い。この抗体は感染した領域を光学顕微鏡の下で容易に視認することを可能にする。抗体5A5はヘマグルチニン阻害またはウイルス中和活性を持たない;しかし、それは免疫蛍光アッセイおよびウェスタンブロット分析において陽性の結果を示し、組み換えH5N1−HAタンパク質(MW 36kDa)に対応する強いバンドが観察される。
【0036】
mAb 8H12もホルマリン固定された組織中のウイルス抗原に対して非常に有効かつ感度が高い。この抗体も、感染した領域を光学顕微鏡の下で容易に視認することを可能にする。
【0037】
それに対し、mAb類5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、6C6、3D4、2F11、9C1および3H11は凍結組織切片に対して非常に有効であるが、ホルマリン固定された組織中の抗原は検出しない。これらの結果は、2個のグループのmAb類が異なるウイルスエピトープと反応していることを意味する。エピトープマッピングによって、mAb類5A5および8H12は線状エピトープを標的としていることが明らかになった。それらは組織が強烈な熱処理を受けた場合にのみウイルス抗原を検出できた。そのきつい抗原回復法の下では、ウイルスの表面タンパク質は破壊され、ウイルスの核タンパク質が露出された。従って、線状エピトープを標的とするmAb類は、凍結組織切片に対しては同様には働かない。
【0038】
モノクローナル抗体5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、6C6、3D4、2F11、9C1および3H11は、H5N1ウイルスの三次元エピトープを標的としていることが決定された。mAb 5C5、2D9、4F8、2F11、9C1および3H11に関してこの決定をするのにはエピトープマッピングが用いられた;mAb 6C6および3D4についての決定は、その抗体がSDS−PAGEからの変性したノイラミニダーゼを認識できなかったことに基づいてなされた。これらの抗体は、組織切片の事前の処理無しでウイルス抗原に結合し、認識することができた。
【0039】
この発明は、AIVのH5およびN1亜型を検出するための便利で非常に特異的かつ感度の高い手段を提供する。その手段の1つはELISA形式である。好ましい態様において、mAb類5A5、5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1および3H11が、単独または組み合わせで、捕捉抗体として用いられる。mAb類5A5および5C5の組み合わせは、どちらかの抗体単独または本明細書で記述される他の組み合わせと比較してH5亜型AIVの検出において高い光学密度の読みを提供することが分かっている。理論に縛られるわけでは無いが、これらの結果のありうる説明は、その2種類の抗体はHA1タンパク質上で異なるエピトープと反応し、およびそれらは異なる抗体のサブクラスに属しており、従って多数の結合部位を提供する、というものである。
【0040】
もし抗体を単独で用いるのなら、選択された抗体を、例えば捕捉抗体として用いることができ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした同じ抗体を検出抗体として用いることができる。6C6、3D4および8H12抗体を同様にAIVのN1亜型株の検出のための捕捉抗体として用いることができる。
【0041】
三次元エピトープに対するモノクローナル抗体は重要な生物学的機能、例えば血球凝集の阻害および中和活性を維持しており、一方線状エピトープに対するmAb類も診断における使用に都合がよい。従って、それぞれ線状ならびに三次元エピトープに対するものであるmAb 5A5の、ならびにmAb類5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1および3H11の適用は、高い感度のELISAの手順に大きく貢献する可能性がある。同様に、それぞれN−1ノイラミニダーゼの線状ならびに三次元エピトープに対するものであるmAb 8H12の、ならびにmAb類6C6および3D4の適用は、高い感度のELISAの手順に大きく貢献する可能性がある。2種類のmAb類を用いるアプローチは、H5およびN1ウイルスを検出するための、例えばドットブロットおよびインサイチュハイブリダイゼーション形式によるような他の免疫学的方法を開発するために用いられてもよい。
【0042】
この発明の好ましいELISA検査は、H5N1 AIVに感染しているインドネシアの家禽およびヒトからのHA抗原を検出することが可能であり、これはトリおよびヒト両方のH5N1感染症の検出に本発明が有用であることを示す。
【0043】
この発明のH5亜型およびN1亜型mAb類は、診断の手段として他の一般に行われている方法に対して利点を有する。第1に、mAb類5A5、5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1および3H11は高感染性H5亜型AIVに高度に特異的であり、9C1以外の全てのmAbはH5N1の全て、またはほぼ全ての既知のインドネシア株を認識することが示されている。加えて、mAb類6C6、3D4および8H12はN1亜型AIVに高度に特異的であり、H5N1の全て、またはほぼ全ての既知のインドネシア株を含むN1亜型ウイルスの感染症を診断するのに用いることができる。その高度に特異的なモノクローナル抗体は、トリインフルエンザの診断の分野における画期的躍進を表す。本発明の前に、全て、またはほぼ全てのインドネシアH5N1ウイルスを検出することができるモノクローナル抗体は報告されていなかった。本発明のモノクローナル抗体の1種類を除く全ては、この2年間以内にインドネシアにおいて集められたH5N1ウイルスの全て、または本質的に全てを認識することが示されている。mAb 6C6、3D4または8H12は、特定の分離株がH5N1分離株であることを正確に示すために、mAb 5A5、5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11または3H11と組み合わせて(一緒に、または連続して)用いることができる。加えて、そのmAb類の、H5ウイルス抗原を感染したホルマリン固定された組織において、ならびに血清検査、例えばHIおよびIFAにおいて検出し、正確に位置を測定する能力は、異なる利点を表す。さらに、これらのmAb類は、H5およびN1 AIV感染症の検出に安全かつ便利な診断アプローチを提供する。凍結切片のスライドは、極低温で長期間保管することができ、感染症のさらなる診断および監視を容易にする。従って、この発明の抗体は、H5N1感染症の診断に有用である。下記で論じるように、この発明のmAb類はH5N1感染症の処置にも有用である。従って、この発明のmAb類は、可能性のあるインフルエンザの世界的流行の抑制における非常に有用な手段であろう。
【0044】
本発明の別の態様は、H5トリインフルエンザの中和回避変異体に関する。用語:中和回避変異体(Aneutralization escape mutant@)は、H5またはN1ウイルスにおいて抗原連続変異を引き起こし、中和エピトープに影響を及ぼす、ヘマグルチニンをコードする遺伝子における点変異により高められた(raised)変異ウイルスを指す。中和回避変異体は、その親ウイルスを中和するのに有効な特定のモノクローナル抗体による中和を逃れることができる。回避変異体の手動のスクリーニングでは、親ウイルスを特定の中和抗体と共に保温し、宿主、例えばMDCK細胞またはニワトリ胚の中に接種する。2〜3回のスクリーニングの後、その中和mAbに関する回避変異体をクローニングし、HA1遺伝子の配列決定を行う。変異したアミノ酸は親ウイルスの配列とのアラインメントにより決定され、変異した部位は中和mAbにより認識される中和エピトープを構成するアミノ酸の1個を正確に示す。本発明において、5C5回避変異体はA/インドネシア/CDC669/H5N1 AIVから、5C5中和モノクローナル抗体により生じる。変異部位を下記の実施例3、表4にリストする。2F11回避変異体はA/ベトナム/1203/2004/H5N1から、2F11中和モノクローナル抗体により生じる。9C1回避変異体はA/ベトナム/1203/2004/H5N1のK189M変異体から、9C1中和モノクローナル抗体により生じる。加えて、3H11、2F9および9C1回避変異体はA/インドネシア/CDC669/2006/H5N1から生じる。変異部位を下記の実施例3、表4にリストする。
【0045】
中和回避変異体は、それらが親ウイルスに特異的に結合する特定の中和抗体ではもはや認識することができない点においてそれらの親ウイルスと異なる。これゆえに、これらの変異体は上記の教えに従う新規モノクローナル抗体の産生のためにマウスを免疫するのに用いることができる。新規mAb類の中から、変異したエピトープを正確に認識するモノクローナル抗体を選別することができ、次いでそれを用いて親ウイルス以外のトリインフルエンザウイルスへの相補的監視(complementary surveillance)を提供することができる。この過程を数世代通して繰り返すことにより、さらなる回避変異体を見つけることができ、さらなる中和抗体を得ることができる。これらの抗体を本発明の方法において用いることができる。
【0046】
本発明の別の態様において、本発明の抗体および関連する結合タンパク質は、H5 AIV感染症、特にAIVのH5N1亜型からの感染症を患う対象を処置するために投与することができる。本発明の抗体および関連する結合タンパク質は、インフルエンザの世界的流行または世界的流行の前兆の場合に予防措置として対象に投与することもできる。抗体および関連する結合タンパク質は、1回量で、または繰り返しの投与で、場合により放出が遅い形で投与することができる。投与は処置される対象の体におけるその作用部位に抗体を到達させることのできるあらゆる手段により、例えば静脈内に、筋肉内に、皮内に、経口で、または鼻に、なされることができる。通常は、抗体は医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤー、例えば無菌の水溶液中で投与され、組成物はさらに1種類以上の安定化剤、抗原性補強剤、可溶化剤、緩衝液等を含むことができる。厳密な投与の方法、組成物および個別の投与量は、治療の時に、対象の個々の必要性に依存して、対象の年齢(subject=s age)、体重、全身の健康、ならびに彼のまたは彼女の症状の性質および程度、さらに与える処置の頻度のような要素を考慮して決定され、調整されるであろう。一般に、抗体がH5 AIV感染症を患う患者を処置するために投与される場合、投与される抗体の投与量は、約0.1mg/kg〜約1mg/kg体重の範囲内である。通常、予防措置として投与される場合、投与量は約半分、すなわち約0.05mg/kg〜約0.5mg/kg体重の範囲内に低減される。
【0047】
本発明の単一の中和抗体または結合タンパク質を療法上の目的のために投与することができ、または2種類以上の組み合わせを投与することができる。もし1世代以上の中和回避変異体に対する抗体が産生された場合、その抗体および上記の本発明の抗体を治療用の抗体のカクテル(Acocktails.@)として投与することができる。療法薬としての使用に好ましい抗体には、5C5、2D9、2F11、9C1、3H11および4F8 mAb類が含まれる。
【0048】
下記の実施例を、本発明を実行する好ましい方式を説明するために提供する。本発明は実施例の詳細に限定されるのではなく、添付した特許請求の範囲の全範囲と等しい。
【実施例】
【0049】
実施例1
ハイブリドーマの生成
H5N1/PR8以外の全ての生きた野生型H5N1インフルエンザウイルスをインドネシアから得た。H5N1/PR8は疾病対策センター(米国)から得た。それは非病原性組み換えウイルスであり、それはベトナムでヒトに感染したAIV H5N1ウイルス(A/ベトナム/1203/2004)のHAおよびNA遺伝子を含む。H5N2(A/ニワトリ/シンガポール/98)およびH7N1(A/ニワトリ/シンガポール/94)を、シンガポールの農産食品&家畜管理局(AVA)から得た。これらのウイルスストックを用いて9〜11日齢の発育鶏卵(Chew=s Poultry Farm,シンガポール)に感染させ、2世代複製させた。次いで尿膜腔液を吸出し、ヘマグルチニンアッセイ(HA)を用いてウイルスの力価を測定した。不活化したH5N1(A/ガチョウ/広東/97)をRNA抽出のために用いて、RT−PCRによりHA1遺伝子を増幅した。メイディン・ダービー腎臓細胞(MDCK, ATCC CCL34)細胞は、10%FBSを含むDMEM培地中で、37EC、5%COにおいて増殖させた。
【0050】
ウイルスの精製は、ウイルスを含む尿膜腔液を10,000rpmで30分間遠心分離して破片を除去し、続いて上清を40,000rpmで3時間超遠心することにより実施した。ウイルスのペレットをPBS中で懸濁した。
【0051】
モノクローナル抗体を、透明になった流体から、プロテインA親和性カラム(Sigma Aldrich;米国ミズーリ州セントルイス)およびImmunopure7 IgM purification kit(Pierce Biotechnology;米国イリノイ州ロックフォード)を用いて、製造者の(manufacturer=s)説明書に従って精製した。抗体の濃度を、ND−1000分光光度計(NanoDrop Technologies;米国デラウェア州ウィルミントン)を用いることにより測定した。
【0052】
BALB/cマウスを、0.2mlの体積中の、オイルアジュバントMontanide ISA563(Seppic,フランス)と一緒の不活化したH5N2(A/ニワトリ/シンガポール/98)またはH7N1(A/ニワトリ/シンガポール/94)のトリインフルエンザウイルスを用いて免疫した。腹腔内注射を0、14、28および42日目において行った。De St. GrothおよびScheidiggerが記述したように、免疫したマウスからの脾細胞および骨髄腫細胞(SP2/0)を集めて融合させてハイブリドーマを生成した(16)。ピポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地を用いた選択の後、14日後に有意な増殖を示しているハイブリドーマからの培地を、免疫蛍光アッセイ(IFA)により、H5N1/PR8に感染したMDCK細胞に対する特異的な抗体の存在に関して検査した。選択されたハイブリドーマを限界希釈によりクローニングし、再同定し、二度目のクローニングを行い、IFAにより再検査した。一度確立されると、ハイブリドーマ株は組織培養で増殖され、将来の使用のために液体N中で凍結された。
【0053】
本発明の特異的なモノクローナル抗体のそれぞれが得られるハイブリドーマはこれらの一般的な手順に従って作られた。
実施例2
IFAによるmAb類のスクリーニング
免疫蛍光アッセイを用いて、抗体と抗原標的の間の相互作用を確かめた。96ウェルプレートにおいて、インフルエンザウイルス(H5N2(A/ニワトリ/シンガポール/98)またはH7N1(A/ニワトリ/シンガポール/94)で一夜感染させたMDCK細胞をPBS−T(PBS中0.05% Tween−20、pH 7.4)ですすいだ。細胞を、あらかじめ冷却した100%エタノール中でそれらを10分間保温することにより固定した。細胞をPBS−Tで3回洗浄し、次いで1%BSA、PBS−T中で30分間保温して抗体の非特異的な結合を遮断した。次いでそれらを96ウェルプレートのウェル中で100μlのハイブリドーマ培養液と共に室温で2時間、または4ECで一夜保温した。細胞をPBS−Tで洗浄し、1%BSA、PBS−T中1:100希釈の二次抗体、蛍光標識したヤギ/ウサギ抗マウス抗体(DakoCytomation,米国)と共に室温で60分間保温した。ウェルをPBS−Tで洗浄した。PBS−Tを除去し、PBS中50%グリセロールを添加した。蛍光シグナルを、顕微鏡下で紫外線を用いてチェックした。
【0054】
感染していないMDCK細胞を、陰性対照として用いた。不活化したH5N1ウイルスで免疫したマウスからの血清を陽性抗体対照として用いた。それぞれのハイブリドーマの上清と共に保温したMDCK細胞を対照と比較することにより、陽性の染色結果を与えるハイブリドーマの上清を、限界希釈によるクローニングのために選択した。安定したmAb産生ハイブリドーマをこの手順により得た。
【0055】
mAb 5A5、5C5、2D9、4F8、1C1、2F11および3B6と名づけられた抗体は、全ての25種類のインドネシアからの分離株からのH5N1ヘマグルチニンに、さらにH5N1/PR8およびH5N2に結合することが分かった。mAb 3H11は、25種類のインドネシアの分離株のほぼ全てからのヘマグルチニンに結合するが、H5N1/PR8およびH5N2には結合しない。mAb類6C6、3D4および8H12はインドネシアからのH5N1分離株の全て、さらにH5N1/PR8およびH7N1からのノイラミニダーゼに結合することが分かった。mAb 9C1は、H5N1の特定のインドネシア株に結合することが示されている;この抗体は特定の株の回避変異体から生じたため、それはH5の205番目のアミノ酸がリシンではないAIVクレード1の株に特異的に結合する。9C1 mAbのこの独特の特性は、療法的使用においてウイルスの回避の心配無しにそれを他の205−リシン特異的mAb類と組み合わせることを可能にする。
【0056】
この発明のmAb類と反応するAIV株を、下記の表1にリストする。
代表的なIFA画像を図1に示す。
表1.
【0057】
【表1−1】

【0058】
【表1−2】

【0059】
注釈:”+”は陽性を意味し、”−”は陰性を示し、”N.T.”は検査が行われなかったことを意味する。
実施例3
H5およびN1亜型mAb類の特性づけ
mAb類のアイソタイプ同定。mouse mAb isotyping kit(Amersham Bioscience,イギリス)を用いて、キットと一緒に与えられたプロトコルに従ってアイソタイプ同定を実施した(データは示していない)。mAb類5A5、6C6、2D9、4F8、1C1、3B6、3D4、8H12、9C1および3H11は全てIgG1であると決定された。mAb 5C5はIgG2aであると決定され、mAb 2F11はIgMであると決定された。
【0060】
血球凝集阻害試験(HI)。一定量の血球凝集(HA)抗原を微量定量プレート(NUNC)中のそれぞれのウェルに添加した。次いで検査する抗体を1番目のウェル中に入れ、系列希釈した。プレートを1時間保温し、次いでニワトリの赤血球(RBC)をそれぞれのウェルに添加した。もし抗体が検査血清中に存在したならば、RBCはHA抗原と共に凝集しなかったであろう。HI陰性のウェルは、ウェルの底を覆う凝集したRBCの広がったシートを有したであろう。HI陽性のウェルは、凝集していないRBCの十分に境界を定められたボタン(well−circumscribed button)を有したであろう。
【0061】
培養液中のmAb類5C5、2D9、2F11および4F8は全てのインドネシアのH5N1分離株について、およびH5N1/PR8について、16から64までのHI活性を有していた。mAb類9C1および3H11はこれらのインドネシアのH5N1分離株のいくつかについてHI活性を有していた。mAb 3H11により標的とされる抗原エピトープに基づいて、その抗体は特異的かつ高感度にクレード2.1.3のH株を認識することができる。mAb類5A5、1C1および3B6はHI活性を有していなかった。
【0062】
ウイルスマイクロ中和アッセイ。MDCK細胞を、50%組織培養感染量(TCID50)の決定に用いた。2倍系列希釈した抗体を96ウェル細胞培養プレートに入れた。希釈した抗体を、インフルエンザウイルスを100TCIS50/ウェルで含む等体積の希釈液と混合した。5%COの湿気のある雰囲気中で37ECにおいて2時間保温した後、1.5×10/mlのMDCK細胞100μlをそれぞれのウェルに添加した。プレートを37ECおよび5%COにおいて18時間保温した。単層をPBSで洗浄し、100%エタノール中で10分間固定した。ウイルスタンパク質の存在を、インフルエンザH5N1に対するマウス血清を用いるELISAにより検出した。
【0063】
ELISAを室温で実施した。固定されたプレートをPBS−T(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄した。1%ウシ血清アルブミンを含むPBS−T中で1/500希釈したマウス血清抗体をそれぞれのウェルに添加し、室温で1時間保温した。プレートを洗浄緩衝液中で4回洗浄し、1/2000希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン(DakoCytomation,米国)100μlをそれぞれのウェルに添加した。プレートを室温で1時間保温し、次いで洗浄緩衝液で6回洗浄した。100μlの新しく調製した基質(0.03%過ホウ酸ナトリウムを含むpH5.0の0.05Mリン酸クエン酸緩衝液20mlにつき10mgのo−フェニレンジアミン二塩酸塩)をそれぞれのウェルに添加し、プレートを室温でおおよそ5分間保温した。反応を50μlの2N硫酸で停止した。吸光度を490nmにおいて(A490)、自動化されたプレート分光光度計(Mitenyi Biotec)を用いて測定した。
【0064】
表2
【0065】
【表2】

【0066】
表2に示したように、mAb 5C5は感染したMDCK細胞上でH5N1分離株を中和した。モノクローナル抗体の存在下で、ELISAの読みの結果は、抗体の非存在下の細胞から得られたそれらの約2分の1まで減少しており、これはウイルス粒子が中和されていたことを示している。
【0067】
ELISAの読みが高いバックグラウンドを有していた一方でIFAは視認できるので、モノクローナル抗体の中和能力を確証するため、IFAの検出法によりMDCK細胞上で中和試験を行った。mAb 5C5は全てのH5N1分離株の感染を中和することができた。これらの結果はIFAの試験結果と一致していた。
【0068】
図2Aおよび2Bは、AIVに感染したMDCK細胞上でのmAbの中和活性を図説している。図2Aおよび2Bはそれぞれ、mABのウイルス感染の中和の後に、およびmAbの中和無しで、FITC蛍光で染色したMDCK細胞を示している。
【0069】
MDCK細胞上での、およびニワトリ胚中でのウイルス中和の力価測定(Titration)。MDCK細胞および10日齢の胚を、それぞれ50%組織培養感染量(TCID50)および50%胚感染量(EID50)の測定のために用いた。MDCK細胞(2x10/ml)を、70%〜90%コンフルエンスまで増殖させた。
【0070】
ニワトリ胚を、10−1から10−8までの一連の希釈比を用いて、それぞれのウイルスに感染させ、その後の尿膜腔液を、TCID50およびEID50に関して検査した。次いでそのウイルスを、それらの対数期(ウイルス感染に最も感受性が高い)にあるMDCK細胞および10日齢のニワトリ胚の両方に感染させるのに用いた。感染していないMDCK細胞および尿膜腔液を陰性対照として用いた。細胞を35ECで培養し、CPEを観察した。ReedおよびMuenchの数学的技法(17)を用いて、感染価をTCID50/100μlおよび1000EID50/200μlとして表し、それぞれのウイルスを、それぞれ50μlおよび100μl中に100TCID50および500EID50を有するようにそれぞれ希釈した。
【0071】
系列希釈したmAb 5C5は、感染したMDCK細胞および胚中で終濃度100TCID50および500EID50のウイルス(例えばA/インドネシア/DCD669/H5N1)を中和することができた。表3参照。表3における数は、感染したMDCK細胞およびニワトリ胚中でウイルスの終濃度100TCID50および500EID50において、mAbがウイルスをなお検出および中和することができた最も高いH5N1ウイルスの希釈率を表している。
【0072】
表3
【0073】
【表3】

【0074】
mAb類2D9、3H11、9C1、2F11および4F8はmAb 5C5に類似しており、H5の三次元エピトープを認識し、MDCK細胞上でインフルエンザウイルス感染を中和する能力を有している。ウイルスの中和および50%組織培養感染量(TCID50)の決定を、上記でmAb 5C5に関して記述したように実施した。MDCK細胞(2 x 104/ml)を70%〜90%コンフルエンスまで増殖させた。次いでウイルスA/インドネシア/CDC669/H5N1を用いてそれらの対数期(ウイルス感染に最も感受性が高い)にあるMDCK細胞を感染させた。感染していないMDCK細胞を、細胞変性作用(CPE)の陰性対照として、感染させた細胞をCPEの陽性対照として用いた。細胞を35度Cで培養し、CPEを毎日チェックした。結果を図7A、7Bおよび7Cに示す。モノクローナル抗体の存在下ではMDCK細胞はCPEを示さず、従ってこれはそのmAbが中和能力を有することを示している。
【0075】
mAb類1C1および3B6は、それらもH5の三次元エピトープを認識するが、類似の分析により、MDCK細胞上でインフルエンザウイルス感染を中和する能力を欠いていることが示された。
【0076】
エピトープの特徴およびマッピング
1a.mAb 5A5の線状エピトープのマッピング。図4Aおよび4Bに示したように、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびウェスタンブロッティングを用いてモノクローナル抗体5A5の線上エピトープを同定し、位置測定した。SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングは、Ausubel et al.により記述された(18)ように実施した。GSTタグを有する、H5N1からの組み換えHA1を発現させ、10%SDS−PAGEで処理した。組み換えHA1は約32kDであり、発現したGSTタグを有するHA1は約57kDである。タンパク質試料を試料緩衝液と混合することによりタンパク質試料を調製し、100ECで5分間加熱した。短時間の遠心分離の後、全細胞溶解産物をロードした。SDS−PAGEにより分離されたタンパク質を、クマシーブルー(0.25%クーマシーブリリアントブルーR−250、40%メタノールおよび10%氷酢酸)での30分間の染色により可視化し、次いで脱染溶液(40%メタノールおよび10%氷酢酸)中で一夜脱染した。ウェスタンブロットのため、Transblot Cell(Bio−Rad)を用いてタンパク質をゲルからニトロセルロース膜に転写した。電気転写(electrotransfer)の後、膜をPBS−T中5%脱脂乳(Bio−Rad)でブロッキングし、上記のドットブロットと同じ方式で処理した。膜を、0.05%Tween−20を含むPBS(PBS−t)中5%脱脂乳(Bio−Rad,カナダ)で60分間ブロッキングした。ブロッキングの後、希釈していないmAb類を含むハイブリドーマ培養液を膜と一緒に60分間保温し、PBS−Tで洗浄し、次いでヤギ抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート抗体(1:2000希釈)(DakoCytomation)と一緒に60分間保温した。膜を洗浄し、次いでECL Western blotting detection reagent(Amersham Biosciences)を用いて現像し、KODAK Scientific imaging film(KODAK BioMAX 米国ミシシッピ州)に感光させた。
【0077】
mAb 5A5は変性した組み換えHA1と反応し、それはmAb 5A5のエピトープが線状であることを示唆していた。mAb 5C5は変性した組み換えHA1と反応することができず、それはこのmAbのエピトープが三次元であることを示していた。
【0078】
mAb 5A5の線状エピトープの位置を見つけるため、H5亜型のHA1をPCRにより3種類の重なり合う断片に切り分け、6−ヒスチジンタグ融合タンパク質として発現させた。mAb 5A5を用いたウェスタンブロットにより、そのエピトープは主に断片BおよびCの重なり合う領域(aa201〜271)中に見出された。ウェスタンブロッティングによるさらなるマッピングのために5種類の切り詰めた断片を設計し(図4A)、エピトープをアミノ酸258〜271に狭めた。線状エピトープの正確なアミノ酸配列を見出すため、別個のアミノ酸点変異を有する9種類の変異体を構築した。HA1上のアミノ酸259〜264および268〜271のそれぞれを、アミノ酸269を除いて、特定のプライマーにより、個別にアラニンに変えた;アミノ酸269はアラニンからプロリンに変えた(図4B)。図4Bに示したウェスタンブロッティングの結果から、mAb5A5により標的とされる線状エピトープの配列は、H5亜型のヘマグルチニン上のアミノ酸260〜269、AsnGlyAsnPhelleAlaProGluTyrAla(NGNFIAPEYA)である。
【0079】
1b.mAb 8H12の線状エピトープの決定。上記の第1a節でmAb 5A5に関して述べた手順に従って、ドデシル硫酸ポリアクリルアミドナトリウムゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびウェスタンブロッティングを用いてmAb 8H12の線状エピトープを確かめた。H5N1からのMBTタグを有する組み換えNA1を発現させ、10%SDS−PAGEで処理した。組み換えNA1は約36kDであり、発現したMBTタグを有するNA1はおおよそ82kDである。mAb 8H12は変性したNA1と反応し、それはその抗体のエピトープが線状であることを示唆していた。
【0080】
1c.三次元エピトープ2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1および3H11の決定。上記の第1a節の手順を、mAb類2D9、4F8、3B6、1C1、2F11、9C1および3H11のそれぞれを用いて実施した。これらの抗体で変性したHA1と反応したものは無く、それはこれらのmAb類のエピトープが三次元であることを示していた。
【0081】
1d.mAb6C6および3D4の三次元エピトープの決定。上記の第1b節の手順を、mAb6C6および3D4を用いて実施した。どちらの抗体も変性したNA1とは反応せず、それはこれら2種類の抗体のエピトープが三次元であることを示していた。
【0082】
2.H5亜型mAb類の回避変異体の選択および三次元/中和エピトープのマッピング。
親ウイルスA/インドネシア/CDC669/2006(H5N1)の10倍系列希釈液を等体積のmAbと混合した。室温で1時間保温した後、混合物を200μg/mlのTPCK処理トリプシン(Sigma)および0.001% DEAE−デキストラン(Sigma)を含むDMEM培地中のMDCK細胞の単層の上に接種した。35ECにおいて7日間の後、ウイルス上清を集めてさらなる選択を行った。回避変異体はまた、親株を過剰量のmAbと共に室温で少なくとも0.5時間保温する代わりの方法を用いて生成された。次いで混合物を10日齢のニワトリ胚の中に接種した。35℃において2または3日間の後、ウイルス上清を集めてさらなる選択を行った。いずれかの方法の後、回避変異体をクローニングし、RNA抽出のために集めた。mAbによる中和に対する耐性の原因である点変異を、親ウイルスとの配列アラインメントにより決定した。変異体ウイルスがmAbによる中和を逃れることを可能にするこの変異の能力を、中和アッセイおよびヘマグルチニン阻害アッセイにより確かめた。
【0083】
中和mAb 5C5を用いていくつかの回避変異体を選択した。回避変異体をクローニングし、RNA抽出のために集めた。配列によると、点変異はそれぞれHA配列(GenBankで入手可能な配列;GenBank受け入れ番号CY014481;GenBank GI # 113497155)上のヌクレオチド524、503および602において起きている。ヌクレオチド524AC@はAT,@に変わっており、それは結果としてアミノ酸175におけるスレオニンからイソロイシンへの変異をもたらす。ヌクレオチド503”A”は”T,”に変わっており、それは結果としてアミノ酸168におけるリシンからイソロイシンへの変異をもたらす。ヌクレオチド602”C”は”A,”に変わっており、それは結果としてアミノ酸201におけるアラニンからグルタミン酸への変異をもたらす。その変異は、変異体ウイルスがmAb 5C5からの抗体による中和を逃れることを可能にし、それは中和アッセイおよびヘマグルチニン阻害アッセイにより確かめられる。この結果は、mAb 5C5がヘマグルチニン上のアミノ酸168、175および201を含むエピトープを標的としていることを示した。結果を表4に示し、それはAIV(A/インドネシア/CDC669/H5N1)のヘマグルチニン分子上のmAb中和エピトープの位置を示す。
【0084】
表4に示したように、他のmAb類に関する点変異を同様に決定した。
表4
【0085】
【表4−1】

【0086】
【表4−2】

【0087】
mAb類6C6、3D4および8H1はH5N1からのノイラミニダーゼを認識する。
1.バキュロウイルス/Sf9系において発現させた組み換えノイラミニダーゼを用いてmAb 6C6およびノイラミニダーゼの間の反応を確かめた
【0088】
ウイルスのRNAをウイルスに感染したMDCK細胞から、LS Trizol試薬(Invitrogen)を用いて、製造業者により指定されるように単離した。逆転写およびPCRを実施し、プライマーN1(エントリー)F(CACCATGAATCCAAATCAGAAGATAACAACC)およびN1(エントリー)R(CTTGTCAATGGTGAATGGCAA)を用いてノイラミニダーゼ遺伝子H5N1/PR8を増幅した。PCR産物を、製造業者の(manufacturer=s)説明書に従ってpGEM−T Easyクローニングベクター(Promega,米国ウィスコンシン州)の中にクローニングした。ノイラミニダーゼをコードする配列を含む組み換えプラスミドの配列を決定し、データベースの参照配列と一致していることを確認した。ノイラミニダーゼ遺伝子を一時的な工程としてpENTR/TEV/D−TOPOのベクターの中にサブクローニングし、次いで供給者(Invitrogen,米国カリフォルニア州)からのGateway Systemガイドに従ってバキュロウイルスに挿入した。ノイラミニダーゼ遺伝子を有する組み換えバキュロウイルスを用いて、供給者(Invitrogen)に教えられるようにSf9昆虫細胞を形質移入し(transfect)、発現させた。上記で教えたMDCK細胞に関するIFAの手順で、発現したノイラミニダーゼを有するSf9昆虫細胞を固定しmAb 6C6を用いてIFAを行った。
【0089】
図5Aおよび5Bは、mAb 6C6と発現させた組み換えN1の間の典型的な反応を示す。mAb 3B4と発現させた組み換えN1の反応は類似している。図5Aは、Sf9細胞において検出されている発現させた組み換えN1を示す。図5Bにおいて、紫外線と通常の光の合併が個々の細胞を示した。
【0090】
2.mAb類6C6および3B4のエピトープは線状ではなく三次元である
Sf9昆虫細胞を、NAの挿入を有するバキュロウイルスにより感染させ、28ECで96時間培養した。細胞を集め、試料緩衝液と混合し、それぞれクマシーブルーによる染色およびmAb6C6またはmAb 3D4(の抗H5N1マウス血清)を用いるウェスタンブロッティングのために、SDS−PAGEゲルにロードした。ウェスタンブロッティングはSf9細胞における組み換えNAの発現を確かめた。ウェスタンブロッティングによるmAb 6C6または3D4に関するシグナルバンドが無く、これはmAb類6C6および3D4のエピトープが三次元であることを示した。
【0091】
図6Aおよび6Bは、発現したNAを確かめるためのSDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングを示す。図6Aは、NAの分子量がSDS−PAGEゲル上で約49kDaであることを示している。図6Bでは、ウェスタンブロッティングが、組み換えNAが抗体としての抗H5N1マウス血清と反応することを示した。
【0092】
予防および療法
mAb 5C5のMDCK細胞およびニワトリ胚の両方においてH5N1を中和する能力ならびにそのIgG2aイソ型に基づいて、mAb 5C5およびその抗体の可変領域を含む組み換え抗体は、予防および療法の両方に有用である。中和IgG抗体は予防的および療法的能力の両方を有することが、マウスでの研究(19、20、21)に基づいて、一般的に受け入れられている。
【0093】
同様に、mAb類2D9、2F11、3H11、9C1および4F8の、MDCK細胞上でH5N1を中和する能力およびそれらのIgG1またはIgMイソ型を考慮すると、これらのmAb類およびそれらの抗体の可変領域を含む組み換え抗体は、予防および療法の両方に有用である。
【0094】
以下の試験は、mAb 5C5の予防的および療法的特徴を説明する:
6匹のメスのBALB/cマウス(6〜8週齢)のグループを動物モデルとして用いて、mAb 5C5を投与することによる、ウイルスの致死的負荷からの保護を試験した。マウスの接種および血液の採取は、バイオセーフティーキャビネット中で、電動式空気浄化呼吸装置(powered air purifying respirators)を着用した人員により行われた。インフルエンザに感染した動物は、バイオセーフティーレベル3(BSL3)の動物施設の中に収容した。
【0095】
モノクローナル抗体の予防薬としての(すなわちウイルス感染の前の)有効性を動物モデルにおいて評価するため、精製したmAb 5C5を腹膜内に(i.p.)10mg/kgの用量でマウスの中に投与した。腹膜内投与の24時間後、H5N1によるHI力価の測定のためにマウスの血を抜き、次いで20μl中10 LD50のA/インドネシア/CDC669/H5N1で鼻腔内(i.n.)に負荷をかけた(challenged)。対照グループ(全部で6匹のマウス)は、細菌C.ジェジュニ(C. jejuni)に対して作られた社内のマウスモノクローナル抗体であるmAb 5C4のIgG1を与えられた。マウスを14日間毎日生存分析に関して観察した。対照グループでは、6匹のマウスの内の6匹が感染後10日以内に死んだ。それに対し、mAb 5C5で処置したマウスは有意に保護されていた−−そのグループの6匹のマウス全てが14日間の観察の期間が終わってもまだ生きていた。mAb 5C5を投与されたマウスからの血清は、A/インドネシア/CDC669/H5N1に関して64を超えるHI力価を有していた。これらのデータは、mAb 5C5のIgG2aの投与はマウスの血液中に浸透して最終的にはマウスの体内におけるウイルスのクリアランスを促進することができることを示した。
【0096】
mAb 5C5の療法的処置に関する有効性を評価するため、抗体をウイルス感染の後に投与した。致死量である20μL中10 LD50のA/インドネシア/CDC669/H5N1を6匹のマウスのそれぞれに投与した1日(24時間)後、mAb 5C5を10mg/kgで腹腔内注射により投与した。対照グループ(6匹のマウス)はC.ジェジュニに対して作られた社内の抗体であるmAb 5C4のIgG1を与えられた。対照グループでは、6匹のマウスの内の6匹が感染後10日以内に死んだ。mAb 5C5のグループでは、14日目において6匹のマウスの内の5匹がウイルス負荷を生き延びていた。
【0097】
これらのデータは、mAb 5C5がウイルス感染の後の投与によってさえも有効であることを示し、これはその抗体が予防的および療法的な目的の両方に用いることができることを示している。
【0098】
実施例4
N1亜型に対するmAb6C6およびH5亜型に対するmAb5C5の組み合わせを用いる、H5N1亜型AIVの同定のための抗原捕捉ELISA(AC−ELISA)
上記のように、H5N1ウイルスを含む試料は、mAb 5C5またはmAb 5A5を用いてH5亜型と、および別にmAb 6C6を用いてN1亜型と同定することができる。試料は、前者の抗体の一方および後者の抗体の組み合わせの使用によりH5N1と同定することもできる。AC−ELISAはH5N1ウイルスを検出するために設計された。mAb 5C5を、96ウェルプレート(U96 MaxiSorp NUNC−immuno plate)中の100μl PBS中の、100μl/ウェル中の0.5μg/ウェルで、4ECにおいて一夜保温した。プレートをPBS−Tですすいだ後、コートしたプレートを1%ウシ血清アルブミン(BSA)で、室温において1時間ブロッキングした。次いでブロッキング溶液を除去し、100μl中20HA単位でPBS中で希釈した不活化したH5N1分離株をそれぞれのウェルに添加し、2時間保温した。
【0099】
プレートを洗浄緩衝液PBS−Tで4回洗浄し、100μlの1/500希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識mAb 6C6をそれぞれのウェルに添加した。プレートをさらに室温で1時間保温し、次いで洗浄緩衝液で6回洗浄した。100μlの新しく調製した基質(0.03%過ホウ酸ナトリウムを含むpH5.0の0.05Mリン酸クエン酸緩衝液20mlにつき10mgのo−フェニレンジアミン二塩酸塩)をそれぞれのウェルに添加し、プレートを室温でおおよそ5分間保温した。反応を50μlの2N硫酸で停止した。吸光度を490nmにおいて(A490)、自動化されたプレート分光光度計(Mitenyi Biotec)を用いて測定した。H5N1ウイルスは有意なA490の読みを与え、一方でH7N1ウイルスは陰性対照と同じくらい低い読みを与えた。表5に示した結果は、mAb 5C5およびmAb 6C6の組み合わせがH5N1 AIVの同定に有用であることを示した。H5N1 AIVを含む試料は、mAb 5C5およびmAb 6C6を別々に用いて同定することができるが、抗体を組み合わせて用いることは、必要とされる試料の量を制限する手段を提供する。
【0100】
同様に、mAb 5A5およびmAb 6C6の組み合わせ、またはこの発明のmAb類の他の適切な組み合わせも、H5N1 AIVの同定に用いることができるであろう。
表5
H5N1を同定するための、mAb 5C5およびmAb 6C6の組み合わせを用いるAC−ELISAの結果
【0101】
【表5】

【0102】
実施例5
mAb類2F11、9C1および3H11の活性
mAb類2F11、9C1および3H11のそれぞれの結合活性を、H5N1−AIVに感染したMDCK細胞を用いた間接的免疫蛍光アッセイ(IFA)、ウェスタンブロット(WB)、ヘマグルチニン阻害(HI)およびウイルス中和(VN)アッセイにおいて評価した。
【0103】
アッセイの結果を下記の表6〜8に示す:
表6
H5N1 AIV(A/ベトナム/1203/2004/H5N1)からの回避変異体K205Mとの結合活性
【0104】
【表6】

【0105】
表7
H5N1 AIV(A/インドネシア/CDC669/2206/H5N1)からの回避変異体K205Mとの結合活性
【0106】
【表7】

【0107】
回避変異体K205Mは、H5N1 AIV(A/ベトナム/1203/2004/H5N1)から、2007年3月20日にアメリカ培養細胞系統保存機関にATCC CRL PTA−8246として寄託されたモノクローナル抗体mAb 6B8を用いたスクリーニングから生み出された。mAb 9C1および2F11とこれらのK205変異体の特異的相互作用は、これらの2種類のmAb類の、mAb 6B8と一緒での回避変異体の発生の抑制における使用の可能性を示唆している。
【0108】
実施例6
mAb 2F11および9C1の療法的使用
2F11および9C1は共にH5株A/ベトナム/1203/2004/H5N1のK205M回避変異体から生み出され、そのようなものとして、同じ変異体を標的とするが野生型の株に結合することができない、またはより低い活性で結合する別のモノクローナル抗体、例えばmAb 6B8(ハイブリドーマ6B8により産生され、2007年3月20日にブタペスト条約に従ってATCCに寄託され、受け入れ番号はCRL PTA−8246である)、VN1203株中の野生型205K株を標的とするmAbと、療法薬として組み合わせることができる。mAb 9C1はK205M変異体を認識するが、野生型の株VN1203には結合できず、それはそのmAbが株VN1203の205メチオニンのエピトープを標的としていることを示している。mAb類9C1および6B8を含むモノクローナル抗体カクテルはインビトロおよびインビボでH5N1の感染を効果的に抑制し、回避変異体が生じるのを妨げることができる。
【0109】
表9:mAb類6B8および9C1のHI活性の比較
【0110】
【表8】

【0111】
6B8および9C1mAb類の活性を説明するため、16HA単位のAIVを下の表に示したようなmAb類と共に、室温で少なくとも30分間保温した。混合物を10日齢のニワトリ胚の中に接種した。胚のHA力価および生存率を毎日評価した。結果を下の表10に示す:
表10
【0112】
【表9】

【0113】
”−”はHA試験における陰性またはニワトリ胚の死を示した。
”+”はHA試験における陽性またはニワトリ胚の生存を示した。
p.i.は感染後を示した。
【0114】
参考文献
【0115】
【化1】

【0116】
【化2】

【0117】
【化3】

【0118】
【化4】

【0119】
【化5】

【図1A−1D】

【図2A−2B】

【図3A】

【図3B】

【図5A−5B】

【図6A】

【図6B】

【図7A】

【図7B】

【図7C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリインフルエンザウイルスのH5亜型のヘマグルチニンエンベロープ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合する結合タンパク質であって、実質的にモノクローナル抗体5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1または3H11の免疫学的結合特性を有する結合タンパク質。
【請求項2】
モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項3】
モノクローナル抗体である、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項4】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−8529で寄託されたハイブリドーマ5C5により産生されるモノクローナル抗体5C5。
【請求項5】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9396で寄託されたハイブリドーマ2D9により産生されるモノクローナル抗体2D9。
【請求項6】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9397で寄託されたハイブリドーマ4F8により産生されるモノクローナル抗体4F8。
【請求項7】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9398で寄託されたハイブリドーマ1C1により産生されるモノクローナル抗体1C1。
【請求項8】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9399で寄託されたハイブリドーマ3B6により産生されるモノクローナル抗体3B6。
【請求項9】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9373で寄託されたハイブリドーマ2F11により産生されるモノクローナル抗体2F11。
【請求項10】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9372で寄託されたハイブリドーマ9C1により産生されるモノクローナル抗体9C1。
【請求項11】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9374で寄託されたハイブリドーマ3H11により産生されるモノクローナル抗体3H11。
【請求項12】
トリインフルエンザウイルスのH5亜型のヘマグルチニンエンベロープ糖タンパク質の線状エピトープに特異的に結合する結合タンパク質であって、実質的にモノクローナル抗体5A5の免疫学的結合特性を有する結合タンパク質。
【請求項13】
モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項12に記載の結合タンパク質。
【請求項14】
モノクローナル抗体である、請求項12に記載の結合タンパク質。
【請求項15】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−8528で寄託されたハイブリドーマ5A5により産生されるモノクローナル抗体5A5。
【請求項16】
トリインフルエンザウイルスのN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合する結合タンパク質であって、実質的にモノクローナル抗体6C6または3D4の免疫学的結合特性を有する結合タンパク質。
【請求項17】
モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項16に記載の結合タンパク質。
【請求項18】
モノクローナル抗体である、請求項16に記載の結合タンパク質。
【請求項19】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−8526で寄託されたハイブリドーマ6C6により産生されるモノクローナル抗体6C6。
【請求項20】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9395で寄託されたハイブリドーマ3D4により産生されるモノクローナル抗体3D4。
【請求項21】
トリインフルエンザウイルスのN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質の線状エピトープに特異的に結合する結合タンパク質であって、実質的にモノクローナル抗体8H12の免疫学的結合特性を有する結合タンパク質。
【請求項22】
モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項21に記載の結合タンパク質。
【請求項23】
モノクローナル抗体である、請求項16に記載の結合タンパク質。
【請求項24】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9394で寄託されたハイブリドーマ8H12により産生されるモノクローナル抗体8H12。
【請求項25】
生物学的標本においてH5亜型トリインフルエンザウイルスを検出するための方法であって、標本を、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合する結合タンパク質と接触させることを含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1または3H11の免疫学的結合特性を有する方法。
【請求項26】
結合タンパク質がモノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−8529で寄託されたハイブリドーマ5C5により産生される抗体5C5である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9396で寄託されたハイブリドーマ2D9により産生される2D9である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9397で寄託されたハイブリドーマ4F8により産生される抗体4F8である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9398で寄託されたハイブリドーマ1C1により産生される抗体1C1である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9399で寄託されたハイブリドーマ3B6により産生される抗体3B6である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9373で寄託されたハイブリドーマ2F11により産生される抗体2F11である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9372で寄託されたハイブリドーマ9C1により産生される抗体9C1である、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9374で寄託されたハイブリドーマ3H11により産生される抗体3H11である、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
生物学的標本においてH5亜型トリインフルエンザウイルスを検出するための方法であって、標本を、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の線状エピトープに特異的に結合する結合タンパク質と接触させることを含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体5A5の免疫学的結合特性を有する方法。
【請求項37】
結合タンパク質がモノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−8528で寄託されたハイブリドーマ5A5により産生される抗体5A5である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項27に記載の方法であって、標本をトリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質に特異的に結合する第2の結合タンパク質と接触させることを含み、第1の結合タンパク質が捕捉結合タンパク質であり、第2の結合タンパク質が、検出可能な要素を含む、またはそれにコンジュゲートした検出結合タンパク質である方法。
【請求項41】
第1および第2結合タンパク質の少なくとも一方がモノクローナル抗体である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
第1および第2結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
第1結合タンパク質が固体表面上に固定される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
第2結合タンパク質が放射性原子を含む、蛍光性の分子にコンジュゲートしている、または酵素にコンジュゲートしている、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
生物学的標本においてN1亜型トリインフルエンザウイルスを検出するための方法であって、標本を、トリインフルエンザウイルスのN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合する結合タンパク質と接触させることを含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体6C6または3D4の免疫学的特性を有する方法。
【請求項46】
結合タンパク質がモノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−8526で寄託されたハイブリドーマ6C6により産生される抗体6C6である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−9395で寄託されたハイブリドーマ3D4により産生される抗体3D4である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
生物学的標本においてN1亜型トリインフルエンザウイルスを検出するための方法であって、標本を、トリインフルエンザウイルスのN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質の線状エピトープに特異的に結合する結合タンパク質と接触させることを含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体8H12の免疫学的特性を有する方法。
【請求項51】
請求項45に記載の方法であって、標本をトリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質に特異的に結合する第2の結合タンパク質と接触させることを含み、第1の結合タンパク質が捕捉結合タンパク質であり、第2の結合タンパク質が、検出可能な要素を含む、またはそれにコンジュゲートした検出結合タンパク質である方法。
【請求項52】
第1および第2結合タンパク質の少なくとも一方がモノクローナル抗体である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
第1および第2結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
第1結合タンパク質が固体表面上に固定される、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
第2結合タンパク質が放射性原子を含む、蛍光性の分子にコンジュゲートしている、または酵素にコンジュゲートしている、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
生物学的標本においてH5N1亜型トリインフルエンザウイルスを検出するための方法であって、標本を、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の線状または三次元エピトープに特異的に結合する第1の結合タンパク質と、およびトリインフルエンザウイルスのN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質に特異的に結合する第2の結合タンパク質と接触させることを含み、その第1の結合タンパク質がそれぞれ実質的にモノクローナル抗体5A5の、またはモノクローナル抗体5C5、2D9、4F8 1C1、3B6、2F11、9C1もしくは3H11の免疫学的結合特性を有し、その第2の結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体6C6もしくは3D4の、またはモノクローナル抗体8H12の免疫学的結合特性を有する方法。
【請求項57】
生物学的標本においてH5亜型トリインフルエンザウイルスを検出するためのキットであって、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合する結合タンパク質を、その結合タンパク質のそのエンベロープ糖タンパク質への結合を検出するための少なくとも1種類の試薬と共に含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1または3H11の免疫学的結合特性を有するキット。
【請求項58】
生物学的標本においてH5亜型トリインフルエンザウイルスを検出するためのキットであって、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の線状エピトープに特異的に結合する結合タンパク質を、その結合タンパク質のそのエンベロープ糖タンパク質への結合を検出するための試薬と共に含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体5A5の免疫学的結合特性を有するキット。
【請求項59】
請求項57または58に記載のキットであって、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質に特異的に結合する第2の結合タンパク質を含み、第1の結合タンパク質が捕捉結合タンパク質であり、第2の結合タンパク質が、検出可能な要素を含む、またはそれにコンジュゲートした検出結合タンパク質であるキット。
【請求項60】
第1および第2結合タンパク質の少なくとも一方がモノクローナル抗体である、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
第1および第2結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項59に記載のキット。
【請求項62】
第1結合タンパク質が固体表面上に固定される、請求項59に記載のキット。
【請求項63】
第2結合タンパク質が放射性原子を含む、蛍光性の分子にコンジュゲートしている、または酵素にコンジュゲートしている、請求項59に記載のキット。
【請求項64】
生物学的標本においてN1亜型トリインフルエンザウイルスを検出するためのキットであって、トリインフルエンザウイルスのN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合する結合タンパク質を、その結合タンパク質のそのノイラミニダーゼ糖タンパク質への結合を検出するための試薬と共に含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体6C6または3D4の免疫学的結合特性を有するキット。
【請求項65】
生物学的標本においてN1亜型トリインフルエンザウイルスを検出するためのキットであって、トリインフルエンザウイルスのN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質の線状エピトープに特異的に結合する結合タンパク質を、その結合タンパク質のそのノイラミニダーゼ糖タンパク質への結合を検出するための試薬と共に含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体8H12の免疫学的結合特性を有するキット。
【請求項66】
請求項64または65に記載のキットであって、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質に特異的に結合する第2の結合タンパク質を含み、第1の結合タンパク質が捕捉結合タンパク質であり、第2の結合タンパク質が、検出可能な要素を含む、またはそれにコンジュゲートした検出結合タンパク質であるキット。
【請求項67】
第1および第2結合タンパク質の少なくとも一方がモノクローナル抗体である、請求項66に記載のキット。
【請求項68】
第1および第2結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項66に記載のキット。
【請求項69】
第1結合タンパク質が固体表面上に固定される、請求項66に記載のキット。
【請求項70】
第2結合タンパク質が放射性原子を含む、蛍光性の分子にコンジュゲートしている、または酵素にコンジュゲートしている、請求項66に記載のキット。
【請求項71】
H5亜型トリインフルエンザウイルスに感染した対象を処理する方法であって、その対照に有効量の、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合し、実質的にモノクローナル抗体5C5、2D9、4F8、1C1、3B6、2F11、9C1または3H11の免疫学的結合特性を有する結合タンパク質を投与することを含む方法。
【請求項72】
結合タンパク質がモノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
H5亜型トリインフルエンザウイルスに感染した固定された組織標本を、有効量の結合タンパク質で処理する方法であって、それがトリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の線状エピトープに特異的に結合し、実質的にモノクローナル抗体5A5の免疫学的結合特性を有する方法。
【請求項75】
結合タンパク質がモノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
結合タンパク質がモノクローナル抗体5A5である、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
トリインフルエンザウイルス株A/インドネシア/CDC669/2006(H5N1)の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体5C5により認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような変異を含む中和回避変異体。
【請求項79】
その変異がアミノ酸175におけるものである、請求項78に記載の中和回避変異体。
【請求項80】
その変異がアミノ酸168におけるものである、請求項78に記載の中和回避変異体。
【請求項81】
その変異がアミノ酸201におけるものである、請求項78に記載の中和回避変異体。
【請求項82】
トリインフルエンザウイルス株A/インドネシア/CDC669/2006(H5N1)の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体3H11により認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような変異を含む中和回避変異体。
【請求項83】
その変異がアミノ酸155におけるものである、請求項82に記載の中和回避変異体。
【請求項84】
トリインフルエンザウイルス株A/インドネシア/CDC669/2006(H5N1)の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体2F11により認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような変異を含む中和回避変異体。
【請求項85】
その変異がアミノ酸258におけるものである、請求項84に記載の中和回避変異体。
【請求項86】
その変異がアミノ酸210におけるものである、請求項84に記載の中和回避変異体。
【請求項87】
トリインフルエンザウイルス株A/インドネシア/CDC669/2006(H5N1)の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体9C1により認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような変異を含む中和回避変異体。
【請求項88】
その変異がアミノ酸200におけるものである、請求項87に記載の中和回避変異体。
【請求項89】
トリインフルエンザウイルス株A/インドネシア/CDC669/2006(H5N1)の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体2D9より認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような少なくとも1個の変異を含む中和回避変異体。
【請求項90】
その変異がアミノ酸239におけるものである、請求項89に記載の中和回避変異体。
【請求項91】
その変異がアミノ酸205および239におけるものである、請求項89に記載の中和回避変異体。
【請求項92】
その変異がアミノ酸157および239におけるものである、請求項89に記載の中和回避変異体。
【請求項93】
トリインフルエンザウイルス株A/インドネシア/CDC669/2006(H5N1)の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体4F8より認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような少なくとも1個の変異を含む中和回避変異体。
【請求項94】
その変異がアミノ酸171および239におけるものである、請求項93に記載の中和回避変異体。
【請求項95】
その変異がアミノ酸171におけるものである、請求項93に記載の中和回避変異体。
【請求項96】
トリインフルエンザウイルス株A/ベトナム/1203/2004/H5N1の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体2F11より認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような少なくとも1個の変異を含む中和回避変異体。
【請求項97】
その変異がアミノ酸210におけるものである、請求項96に記載の中和回避変異体。
【請求項98】
その変異がアミノ酸258におけるものである、請求項96に記載の中和回避変異体。
【請求項99】
トリインフルエンザウイルス株A/ベトナム/1203/2004/H5N1の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体2D9より認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような少なくとも1個の変異を含む中和回避変異体。
【請求項100】
その変異がアミノ酸234におけるものである、請求項99に記載の中和回避変異体。
【請求項101】
トリインフルエンザウイルス株A/ベトナム/1203/2004/H5N1の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体4F8より認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような少なくとも1個の変異を含む中和回避変異体。
【請求項102】
その変異がアミノ酸205におけるものである、請求項101に記載の中和回避変異体。
【請求項103】
トリインフルエンザウイルス株A/ベトナム/1203/2004/H5N1の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体9C1より認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような少なくとも1個の変異を含む中和回避変異体。
【請求項104】
その変異がアミノ酸205におけるものである、請求項103に記載の中和回避変異体。
【請求項105】
モノクローナル抗体6B8およびモノクローナル抗体9C1を含むキット。

【図4】
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【公表番号】特表2010−539162(P2010−539162A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524824(P2010−524824)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000347
【国際公開番号】WO2009/035420
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(509312422)テマセック・ライフ・サイエンシズ・ラボラトリー・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】