説明

インフレーション装置

【課題】プロフィール表示の高速化とピンチロールが360度回転しない場合でも全幅の測定を可能としたインフレーション装置を実現することを目的とする。
【解決手段】リングダイで成形されたブローンフィルムをピンチロールで折り畳み、折り畳んだブローンフィルムを巻取り機によって巻き取るインフレーション装置において、前記リングダイもしくは前記ピンチロールの少なくとも一方を回動する回動手段と、前記回動手段によって回動されると共に、折り畳まれて合わされたブローンフィルムの特性値を測定するセンサ第1,第2センサと、これら第1,第2センサで得られた特性値と前記ブローンフィルムを折り畳んだ位置情報から、前記ブローンフィルムのプロファイルを演算する演算手段と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空のブローンフィルムを成膜するインフレーション装置に関し、さらに詳しくは、オンラインで正確にブローンフィルムの特性値(例えば厚さ)プロファイルを測定し、均一なブローンフィルムを成膜するインフレーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなインフレーションに関する先行技術としては、例えば下記のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平2004−001379号公報
【0004】
図7は、上記特許文献に開示された従来のインフレーション装置の基本構成図である。図7において、押出機1から押し出されたプラスティック原料は、リングダイ2で円筒状に成膜されたブローンフィルム3aに成形される。4は給排気装置である。
【0005】
この円筒状のブローンフィルムはピンチロール5で折り畳まれる。折り畳まれて2枚重ねにフラット化されたブローンフィルム3bは、適当な定置ロール6を経由してP方向に移送され、巻取り機(図示省略)に巻取られる。
【0006】
このような円筒状のブローンフィルムの膜厚を均一に制御するためには、膜の厚さを測定しなければならない。厚さ測定は、ブローンフィルムの長さ方向だけでなく、幅方向、すなわち円筒の円周方向に対しても行わなければならない。
【0007】
厚さを測定するために、厚さを測定するセンサを所定の位置に設置する。従来はピンチロール5(又はリングダイ2)を用いて、例えば360度の時計方向に回転させるときに所定の角度(例えば90度)ごとに等分した仮想的なゾーンを形成する。この形式においては所定角度90°を4回(例えば360゜)時計方向(矢印R)に回転させた後、反時計方向(矢印R´)の同一角度回転させる反転往復させることにより各ゾーンの所定位置で畳まれて合わされるブローンフィルムの特性値をセンサで測定していた。
【0008】
そのため、各ゾーンにおけるブローンフィルムの特性値をセンサで測定する位置を、折り畳まれたブローンフィルムのエッジ部の所定位置Sにおいて、2枚重ねの特性(厚さ)を測定していた。
【0009】
図7において、10はオッシレーション位置情報部であり、ピンチロール5の回動情報を保持する。11は折り畳み位置情報部であり、回動情報に基づいてブローンフィルムの折り畳まれる仮想的なゾーン情報を保持する。
【0010】
12は演算部であり、折り畳まれるゾーン情報と、折り畳まれたブローンフィルムのエッジ部Sにおける2枚重ねの測定値Eiを1/2する演算によりエッジ部の特性値を演算し、円周方向の特性値を推定演算する。この推定演算を全ゾーンにおいて実行し、その統計処理(例えば平均値)で、ブローンフィルム3aの円周方向の特性値を演算している。
【0011】
図8は円筒状のブローンフィルム3aの断面を示したものであり、ピンチロール5(又はリングダイ2)を時計方向(矢印R)、反時計方向(矢印R´)に反転往復させてブローンフィルムの円周を4等分(90°づつ回転)した仮想的なゾーンZ1,Z2,Z3,Z4を形成させた例を示している。
【0012】
ゾーンZ1からZ4までの測定後、ピンチロールの反転でゾーンZ4からZ1の順で測定が実行され、この測定パターンが周期的に繰り返され、各ゾーンの特性値のプロファイル測定が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、このような構成のインフレーション装置においては、厚さを測定するためのセンサが一つしかないため、ブローンフィルム3aの全幅を測定するためにはピンチロール5の回転角度が360度反復回転する必要があった。
また、ピンチロールが360度回転しないと全幅の測定ができないので時間がかかるという問題があった。
【0014】
さらに、インフレーション装置の種類によってはピンチロール5の回転角度が360度まで回転せず例えば180度や270度程度しか回転しないものもあり、その場合は全幅の測定ができないという問題があった。
従って本発明が解決しようとする課題は、センサをブローンフィルムの両端に2個設けることによりプロフィール表示の高速化とピンチロールが360度回転しない場合でも全幅の測定を可能としたインフレーション装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載のインフレーション装置の発明は、 リングダイで成形されたブローンフィルムをピンチロールで折り畳み、折り畳んだブローンフィルムを巻取り機によって巻き取るインフレーション装置において、前記リングダイもしくは前記ピンチロールの少なくとも一方を回動する回動手段と、前記回動手段によって回動されると共に、折り畳まれて合わされたブローンフィルムの特性値を測定するセンサ第1,第2センサと、これら第1,第2センサで得られた特性値と前記ブローンフィルムを折り畳んだ位置情報から、前記ブローンフィルムのプロファイルを演算する演算手段と、を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項2においては、請求項1に記載のインフレーション装置において、
前記回動手段は、前記リングダイもしくは前記ピンチロールを時計方向(反時計方向)に所定角度回動せしめた後反時計方向(時計方向)に戻す回動をすることを特徴とする。
【0017】
請求項3においては、請求項1又は2に記載のインフレーション装置において、
前記第1,第2センサは、前記折り畳んだブローンフィルムの両端に配置したことを特徴とする。
請求項4においては、請求項1乃至3のいずれかに記載のインフレーション装置において、
前記第1,第2センサの測定する領域が、前記折畳んだ後のブローンフィルムのエッジ部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1乃至4によれば、インフレーション装置において、リングダイもしくはピンチロールの少なくとも一方を回動する回動手段と、回動手段によって回動されると共に、折り畳まれて合わされたブローンフィルムの特性値を測定するセンサ第1,第2センサと、これら第1,第2センサで得られた特性値と前記ブローンフィルムを折り畳んだ位置情報から、前記ブローンフィルムのプロファイルを演算する演算手段と、を設けたので、プロフィール表示の高速化とピンチロールが360度回転しない場合でも全幅の測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るインフレーション装置の一例を示す要部構成図である。 図1において、なお、図7で説明した従来装置と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0020】
本発明の特徴部の第1は、各ゾーンにおけるブローンフィルムの特性値を測定する位置を、折り畳まれたブローンフィルムのエッジ部の両端のエッジに配置し、2枚重ねの特性(厚さ)を2個のセンサで測定する点にある。そして、ピンチロール5(又はリングダイ2)を例えば270度時計方向(矢印R)に回転させた後、反時計方向(矢印R´)の同一角度回転させる反転往復させることにより、各ゾーンの所定位置で畳まれて合わされるブローンフィルムの特性値をセンサで測定する点にある。
【0021】
本発明の特徴部の第2は、ピンチロール5(又はリングダイ2)の回転が例えば270度あっても360度回転した場合と同様のプロファイルが作成できる点にある。
【0022】
図1において、10はオッシレーション位置情報部であり、ピンチロール5の回動情報を保持する。11は折り畳み位置情報部であり、回動情報に基づいてブローンフィルムの折り畳まれる仮想的なゾーン情報を保持する。
【0023】
12は演算部であり、折り畳まれるゾーン情報と、折り畳まれたブローンフィルムのエッジ部Sにおける2枚重ねの測定値Ei1及びEi2を1/2する演算によりエッジ部の特性値を演算し、円周方向の特性値を推定演算する。この推定演算を270度のゾーンにおいて実行し、その統計処理(例えば平均値)で、ブローンフィルム3aの円周方向の特性値を演算する。
【0024】
図2は折り畳まれた各ゾーンにおける測定領域S1と第1センサ16および測定領域S2と第2センサ17の相対関係を示す模式図ある。(A)ではゾーンZ1の中央部位置の折り畳みエッジ部S1でセンサ16による2枚重ねの特性値測定が実行され、ゾーンZ3の中央部位置の折り畳みエッジ部S2でセンサ17による2枚重ねの特性値測定が実行される。
【0025】
そして(B)ではピンチロール5の反時計方向の回転操作でゾーンZ2のエッジ部S1でセンサ16による2枚重ねの特性値測定が実行され、ゾーンZ4のエッジ部S2でセンサ17による2枚重ねの特性値測定が実行される。
次に、第1センサでゾーンZ3の特性値測定が実行され、第2センサでゾーンZ1の特性値測定が実行される。
【0026】
上述のように第1センサ16でゾーンZ1,Z2,Z3が測定され、第2センサ17でゾーンZ3,Z4,Z1が測定された後、ピンチロールの反転でゾーンZ4からZ1の順で測定が実行され、この測定パターンが周期的に繰り返され、各ゾーンの特性値のプロファイル測定が行われる。
【0027】
図3(a〜c)は上述の関係をターンテーブル15の回転角を用いて示す説明図である。図(a,b)において、点線aは第1センサ16の測定点1の軌跡であり、−90度から180度まで270度回転した後反転する。また、点線bは第2センサ17の測定点2の軌跡であり、−180度から90度まで270度回転した後反転し、このような回転および反転動作を繰り返している。
【0028】
図3(c)は測定点1の軌跡である点線aに対して測定点2の軌跡である点線bの−90度から0度までの測定値であるZ4のゾーンの測定値を測定点1の軌跡に取り込んだ状態を示している。
このように第1センサでは測定できないゾーンの測定を第2センサでの測定結果で補完することにより実際には270度の回転しかしないにもかかわらず360度回転した場合と同じ測定結果を得ることができ、更に270度の回転で90度分早い段階でプロフアァイルを得ることができる。更にZ1とZ3のゾーンでは2つのセンサの測定結果が得られるので、平均化やスムージングの演算を行うことにより、より正確な測定結果を得ることができる。
【0029】
以上の実施例では、回動手段のオッシレーションによりピンチロール5を往復反転又は一方向連続回転させて複数のゾーンを形成する場合を説明したが、リングダイ2側を回動するようにしてもよい。一般的にはピンチロールでは往復回転、リングダイは一方向の回転形態が採用される。
【0030】
ブローンフィルムの特性値としては、実施例のようにフィルム厚さ測定が一般であるが、それ以外のフィルム特性値、例えば色、地合、透過率等も同様の方法でプロファイル測定が可能である。
【0031】
なお、本発明が適用されるブローンフィルムの原材料は、ポリプロピレン、ポリエチレンで代表されるポリオレフィンが一般的であるが、吹き上げ法により中空のチューブを成膜することができる原材料であれば他の原材料であってもよい。
【0032】
ところで、図1に示すようなインフレーションマシンでは、図4に示すように、回転するアクチュエータ(ダイ)から筒状に原料を吐出し、エアーを使って風船状にし、その筒状のものを重ねて製品を製造している。
その場合、原料の吹き出し口はリングダイ2上に円環状に多数のノズル(図示省略)が配置されており、ノズルからの噴出量は装置本体とは別に設けた制御装置からケーブル回線を介して制御されている。
【0033】
そのため従来では、リングダイ2がピンチロール5の回転に伴って回転し、その回転によってケーブルも動くので配線が困難となりプロファイル制御が行われにくいという問題があった。
【0034】
図5はこのような問題点を解決したもので、インフレーションマシンのリングダイ2に直接制御ユニットと無線LANをつけることによりケーブル配線をなくした概略構成図である。図5において20はn点のノズルの噴出口から原量の噴出し量を制御する噴出し制御手段であり、その制御信号は本体装置とは別に設けた制御用パソコン21から無線により出力される。
【0035】
図6はプロファイルデータに基づいてノズル噴出し量の制御を無線により行う1つでもよい)で検出されたフィルムの厚さは制御用パソコン21に送られる。
制御用パソコン21では測定されたデータを時系列に並べてプロファイルデータを作成する。このデータは制御手段20に送信されてプロファイル制御が行われる。また、アドバンス制御手段22によって適応制御を行うことによりリングダイ2の回転によりねじれた位置が動的に補正されて自動位置補正が実現される。このプロファイルデータ、補正された位置対応データは無線インターフェース23を介して制御手段20に送信される。
【0036】
制御手段20ではPI制御/ファジー制御/有限制定制御のいずれかの出力演算を行ってノズルの噴出口からの原量の噴出し量を制御する。
このような構成とすることにより、配線が不要な制御が可能となりケーブルの絡みなどのトラブルのないインフレーション装置を実現することができる。
【0037】
以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るインフレーション装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】折り畳まれた各ゾーンにおける測定領域S1と第1センサおよび測定領域S2と第2センサの相対関係を示す模式図ある。
【図3】各ゾーンと第1,第2センサの関係をターンテーブルの回転角を用いて示す説明図である。
【図4】原料の噴出し制御の従来例を示す図である。
【図5】無線通信を用いた制御の一例を示す概略構成図である。
【図6】無線通信を用いた制御の一例を示すブロック構成図である。
【図7】ブローンフィルムを作成する従来のインフレーション装置の基本構成図である。
【図8】円筒状のブローンフィルムの断面を示したものである。
【符号の説明】
【0039】
1 押出機
2 リングダイ
3a ブローンフィルム(円筒状)
3b ブローンフィルム(2枚重ね)
4 給排気装置
5 ピンチロール
6 定置ロール
8 センサ
10 オッシレーション位置情報部
11 折り畳み位置情報部
12 演算部
16 第1センサ
17 第2センサ
20 噴出し量制御手段
21 制御用パソコン
22 アドバンス制御手段
23 無線インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングダイで成形されたブローンフィルムをピンチロールで折り畳み、折り畳んだブローンフィルムを巻取り機によって巻き取るインフレーション装置において、前記リングダイもしくは前記ピンチロールの少なくとも一方を回動する回動手段と、前記回動手段によって回動されると共に、折り畳まれて合わされたブローンフィルムの特性値を測定するセンサ第1,第2センサと、これら第1,第2センサで得られた特性値と前記ブローンフィルムを折り畳んだ位置情報から、前記ブローンフィルムのプロファイルを演算する演算手段と、を設けたことを特長とするインフレーション装置。
【請求項2】
前記回動手段は、前記リングダイもしくは前記ピンチロールを時計方向(反時計方向)に所定角度回動せしめた後反時計方向(時計方向)に戻す回動をすることを特徴とする請求項1記載のインフレーション装置。
【請求項3】
前記第1,第2センサは、前記折り畳んだブローンフィルムの両端に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のインフレーション装置。
【請求項4】
前記第1,第2センサの測定する領域が、前記折畳んだ後のブローンフィルムのエッジ部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインフレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−245546(P2007−245546A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72507(P2006−72507)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】